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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】はんだ付け用弾性体
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/19 20060101AFI20240911BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20240911BHJP
   H01R 12/57 20110101ALI20240911BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20240911BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B23K1/19 Z
H01R11/01 501A
H01R12/57
H01R43/02 A
H01R11/01 501C
H01B1/22 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020060264
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154379
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中村 達哉
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-190950(JP,A)
【文献】特許第5340485(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0232090(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/19
H01R 11/01
H01R 12/57
H01R 43/02
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱温度が200℃以上である耐熱性ゴムからなる絶縁性ゴムを含む絶縁弾性体と、
扁平状の芯材にSn又はSn合金からなるSn膜を被覆したものであり、かつ前記絶縁弾性体中に含有されるSn膜付きフィラーとを備え、
前記絶縁弾性体の表面と、前記表面から露出した前記Sn膜付きフィラーとからなり、相手側とはんだ付け可能なはんだ付け面を備え、
Sn膜付きフィラーの含有率(質量%)が、55質量%以上75質量%以下であり、
前記Sn膜付きフィラーの平均長軸径は、5μm~50μmであり、前記Sn膜付きフィラーの平均短軸径は、0.2μm~1.1μmであるはんだ付け用弾性体。
【請求項2】
前記絶縁性ゴムが、シリコーンゴムである請求項1に記載のはんだ付け用弾性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け用弾性体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、配線基板上に実装され、かつその配線基板とケース等との間で導通を図る導電コンタクト部材が知られている。この導電コンタクト部材は、薄板状の金属材料で形成されたベース部と、シリコーン等のエラストマーに導電フィラーを充填して成形されたコンタクト部とを組み合わせたものからなる。前記導電コンタクト部材は、金属製のベース部がリフローソルダリングによって、配線基板上の回路パターンにはんだ付けされる。
【0003】
また、特許文献2に示されるように、表面実装技術に基づくはんだ付け実装が可能な導電性ゴム部品が知られている。この導電性ゴム部品は、ラジカル反応硬化型シリコーンゴムに、銀コートガラス粉からなる導電性フィラーが混合されてなる導電ゴム単体を備えている。そして、その導電ゴム単体の一部の表面(圧縮面)には、配線基板に対して、はんだ付けにより電気的に接続可能な金属被膜が形成されている。前記金属被膜は、2層以上であり、最外層は金で構成される。このような金属被膜は、導電ゴム単体に対して、スパッタリング法によって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-168507号公報
【文献】特許第5340485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記導電コンタクト部材は、導電性や、はんだ付け性に優れるものの、ベース部とコンタクト部との2部品で構成されるため、部品点数の削減や製造コストの観点で改善の余地があった。
【0006】
また、前記導電性ゴム部品は、配線基板に対するはんだ付け性を確保するために、導電ゴム単体とは別に用意された金属被膜を使用するため、製造コストが高く、しかも製造工程も煩雑である。
【0007】
本発明の目的は、1部品として構成可能であり、少なくともはんだ付け性を備えたはんだ付け用弾性体を提供することである。また、他の本発明の目的は、更に、導電性を備えたはんだ付け用弾性体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、絶縁性ゴムを含む絶縁弾性体の表面から、芯材にSn又はSn合金からなるSn膜を被覆したものであるSn膜付きフィラーを露出させ、その露出したSn膜付きフィラーを含む面が、相手側に対して、はんだ付けが可能であることを見出し、本願発明の完成に至った。
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 絶縁性ゴムを含む絶縁弾性体と、芯材にSn又はSn合金からなるSn膜を被覆したものであり、かつ前記絶縁弾性体中に含有されるSn膜付きフィラーとを備え、前記絶縁弾性体の表面と、前記表面から露出した前記Sn膜付きフィラーとからなり、相手側とはんだ付け可能なはんだ付け面を備えることを特徴とするはんだ付け用弾性体。
【0010】
<2> Sn膜付きフィラーの含有率(質量%)が、55質量%以上である前記<1>に記載のはんだ付け用弾性体。
【0011】
<3> 前記絶縁性ゴムは、耐熱温度が200℃以上である耐熱性ゴムからなる前記<1>又は<2>に記載のはんだ付け用弾性体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1部品として構成可能であり、少なくともはんだ付け性を備えたはんだ付け用弾性体を提供することができる。また、他の本発明によれば、更に、導電性を備えたはんだ付け用弾性体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係るはんだ付け用弾性体の構成を模式的に表した斜視図
図2】はんだ付け用弾性体の底面を模式的に表した説明図
図3】Sn膜付きフィラーの模式的に表した断面図
図4】はんだ付け用弾性体の断面の一部を模式的に表した説明図
図5】配線基板の表面に設けられた配線層上に、はんだ付け用弾性体をはんだ付けにより固定した状態を示す説明図
図6】他の実施形態に係る立方体状及びシート状の各はんだ付け用弾性体の構成を模式的に表した斜視図
図7】他の実施形態に係るはんだ付け用弾性体の側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔はんだ付け用弾性体〕
以下、本発明の実施形態1に係るはんだ付け用弾性体1について説明する。図1は、実施形態1に係るはんだ付け用弾性体1の構成を模式的に表した斜視図であり、図2は、はんだ付け用弾性体1の底面3を模式的に表した説明図である。
【0015】
本実施形態1のはんだ付け用弾性体1は、全体的には、円柱状をなしており、上面2と、底面3と、周面4とを備えている。このようなはんだ付け用弾性体1は、絶縁性ゴムを含む円柱状をなした絶縁弾性体5中に、所定量のSn膜付きフィラー6が含有されたものからなる。
【0016】
絶縁弾性体5は、Sn膜付きフィラー6が含有される母材であり、絶縁性ゴムを主成分として含む。絶縁性ゴムは、絶縁弾性体5の全質量(100質量%)に対して、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上の割合で含まれる。なお、本明細書において、絶縁弾性体5や絶縁性ゴムにおける「絶縁性」は、組成物及び/又は硬化物の状態で、例えば、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上であることを意味する。なお、本明細書において、体積抵抗率は、JIS K 7194に準拠した測定方法により求められる。
【0017】
特に、絶縁性ゴムとしては、リフローはんだ付け工程に適用できるように、耐熱温度が200℃以上である耐熱性ゴムであることが好ましい。このような絶縁性ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素系ゴムが挙げられる。
【0018】
シリコーンゴムとしては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、Sn膜付きフィラー6と混合し易い等の観点より、ミラブル型シリコーンゴムが好ましい。ミラブル型シリコーンゴムは、硬化する前の状態が天然ゴムや通常の合成ゴムの未加硫配合ゴムに類似していて、練りロール機或いは密閉式の混合機等で可塑化・混合することができるシリコーンゴムコンパウンドである。
【0019】
ミラブル型シリコーンゴムとしては、例えば、信越化学工業株式会社製のKE-571-U、KE-1571-U、KE-951-U、KE-541-U、KE-551-U、KE-561-U、KE-961T-U、KE-1541-U、KE-1551-U、KE-941-U、KE-971T-U等を使用することができる。これらのシリコーンゴムは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
フッ素系ゴムとしては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、フルオロシリコーンゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンゴム、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンゴム、フッ素化ポリエーテル等を使用することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
なお、絶縁弾性体5は、本発明の目的を損なわない限り、絶縁性ゴム以外に、母材となるゴム成分や樹脂成分を含んでもよい。また、絶縁弾性体5は、必要に応じて、加硫剤、硬化剤、可塑剤、発泡剤等を含んでも良い。
【0022】
図2に示されるように、はんだ付け用弾性体1の底面3では、絶縁弾性体5の表面50から、多数のSn膜付きフィラー6が面状に点在するように露出している。このような底面3は、絶縁弾性体5の表面50と、その表面50から露出する多数のSn膜付きフィラー6とからなり、後述するように、相手側とはんだ付け可能なはんだ付け面3を構成する。なお、本実施形態の場合、はんだ付け用弾性体1の上面2や周面4においても、底面3と同様、多数のSn膜付きフィラー6が面状に点在するように絶縁弾性体5の表面50から露出している。特に、上面2は、底面3と同様、はんだ付けが可能なはんだ付け面となり得る。
【0023】
図3は、Sn膜付きフィラー6の模式的に表した断面図である。Sn膜付きフィラー6は、芯材61にSn又はSn合金からなるSn膜62を被覆したものである。
【0024】
芯材61は、一般的なフィラーの形状をなした導電性又は非導電性の素材である。芯材61の形状としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、針状、球状、扁平状、塊状、円盤状、デンドライト状等が挙げられる。また、導電性の芯材61としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、銅粉、銅合金粉、銀粉、銀合金粉等の金属・合金粉が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
芯材61の形状としては、例えば、絶縁弾性体5内において、Sn膜付きフィラー6同士を確実に接触させ易い等の観点より、扁平状が好ましい。扁平状の芯材61を作製する方法としては、例えば、球状の金属粉(例えば、銅粉)を機械的に扁平状に加工して扁平状の金属粉を得ることができる。
【0026】
また、非導電性の芯材61としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、プラスチック粉、ガラス粉等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような芯材61の表面を被覆するように、Sn(スズ)又はSn(スズ)合金からなる導電性を備えたSn膜62が形成される。
【0027】
芯材61の表面にSn膜62を形成する方法としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、芯材となる銅粉の表面にSnを被覆する場合、無電解Snめっき法が用いられてもよい。無電解Snめっきとしては、下地である銅粉(芯材)の溶出に伴ってめっき液中のSnイオンが還元析出する置換型Snめっきと、めっき液中のSnイオンが還元剤によって還元してSn被覆を行う還元型Snめっきと、Snイオンの不均化反応によって金属Snとなることを利用してSn被覆を行う不均化反応型Snめっき等が挙げられる。
【0028】
また、Sn合金めっきによって、Sn合金を被覆する場合には、置換型Snめっき液、還元型Snめっき液又は不均化反応型Snめっき液の中に、合金を構成する銀やビスマス、亜鉛等の可溶性塩を加え、Snと同時にそれら金属を析出させることによって、Sn合金の被膜を形成することができる。
【0029】
Sn膜付きフィラー6が球状、塊状等の場合、その粒径(平均粒径)は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、10μm~20μmであってもよい。前記粒径(平均粒径)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により求められる体積基準の平均粒径(D50)である。
【0030】
また、Sn膜付きフィラー6が、針状、扁平状等の場合、その粒径(平均粒径)は、平均長軸径と、平均短軸径とで表現される。Sn膜付きフィラー6の平均長軸径は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、5μm~50μmであってもよい。また、Sn膜付きフィラー6の平均長軸径は、その平均短軸径の4倍~30倍であってもよい。Sn膜付きフィラー6の平均短軸径は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、0.2μm~1.1μmであってもよい。
【0031】
Sn膜付きフィラー6の平均長軸径及び平均短軸径は、走査電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により取得された画像に基づいて、100個のSn膜付きフィラー6における長軸径(最大径)及び短軸径を測定し、それぞれ平均値として求められる。なお、Sn膜付きフィラー6の短軸径は、長軸径に対して垂直に交わる方向の軸の長さとした。
【0032】
Sn膜付きフィラー6は、少なくとも、はんだ付け用弾性体1におけるはんだ付け性を確保することを考慮した所定の割合で、絶縁弾性体5中に配合される。はんだ付け用弾性体1(100質量%)において、Sn膜付きフィラーの含有率(質量%)は、55質量%以上であることが好ましい。Sn膜付きフィラーの含有率がこのような範囲であると、はんだ付け用弾性体1のはんだ付け性を確保し易い。
【0033】
なお、はんだ付け性を確保することに加えて、更に、導電性を確保することを考慮して、Sn膜付きフィラーの含有率(質量%)が設定されてもよい。Sn膜付きフィラーの含有率(質量%)は、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましい。なお、Sn膜付きフィラーの含有率(質量%)の上限は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、はんだ付け用弾性体1を成形し易い等の観点より、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0034】
図4は、はんだ付け用弾性体1の断面の一部を模式的に表した説明図である。図4には、はんだ付け用弾性体1を上下方向に沿って切断した断面の一部が示されている。図4に示されるように、絶縁弾性体5の内部には、Sn膜付きフィラー6同士が繋がった導電路7が形成されている。このような導電路7が、絶縁弾性体5の内部に数多く形成されていると、はんだ付け用弾性体1の導電性が確保される。導電路7が形成される向きは、様々であり、はんだ付け用弾性体1の導電性は、等方性である。はんだ付け用弾性体1は、例えば、上面2と底面3の間で導電性を確保するために利用される。なお、導電路7は、はんだ付け用弾性体1の表面(上面2、底面3、周面4)に形成されてもよい。
【0035】
はんだ付け用弾性体1は、本発明の目的を損なわない限り、Sn膜付きフィラー6以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、難燃剤等の他の成分を含んでもよい。
【0036】
はんだ付け用弾性体1は、例えば、以下の方法により作製することができる。流動性を備えた絶縁性ゴム(例えば、シリコーンゴム)と、Sn膜付きフィラー6とを混合することにより、絶縁性ゴムにSn膜付きフィラー6を充填する。絶縁性ゴムとSn膜付きフィラー6との混合方法としては、真空脱泡ミキサー等の機械を用いて混練する方法、押し出し、2本ロール、ニーダ、及びバンバリーミキサー等を用いて混練する方法等が挙げられる。なお、流動性を備えた絶縁性ゴムには、必要に応じて、硬化遅延剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤等が添加されてもよい。なお、他の実施形態においては、Sn膜付きフィラー6と混合する絶縁性ゴムとして、ペレット状等の半固形状のものを用いてもよい。
【0037】
次に、流動性を有する絶縁性ゴムとSn膜付きフィラー6とを混合した混合組成物を成形する。成形方法としては、プレス成形、射出成形、押し出し成形、コーター、カレンダロール等の公知の成形方法が挙げられる。図1に示されるはんだ付け用弾性体1は、例えば、所定の成形型を利用したプレス成形により製造される。
【0038】
図5は、配線基板の表面に設けられた配線層E上に、はんだ付け用弾性体1をはんだ付けにより固定した状態を示す説明図である。図5には、はんだ付け用弾性体1の断面が模式的に示されている。はんだ付け用弾性体1の底面3は、はんだ付け可能なはんだ付け面3となっており、そのはんだ付け面3が配線層Eに対してはんだ層8を介して接合される。このようなはんだ付けの際、はんだ付け面3から露出しているSn膜付きフィラー6のSn膜62が溶けて、はんだ層8に対して接合する。また、配線層(銅箔)Eは、はんだ層8との間で合金層を形成しつつ接合する。なお、部分的には、はんだ付け面3から露出しているSn膜付きフィラー6のSn膜62が溶けたものが、直接、配線層(銅箔)Eと接合してもよい。はんだ付け用弾性体1のはんだ付け面(底面)3の周りには、はんだによるフィレット9が形成される。このようにして、相手側である配線層Eに対して、はんだ付け用弾性体1がはんだ付けされる。なお、図5では、説明の便宜上、底面3付近に存在するSn膜付きフィラー6のみを模式的に示した。
【0039】
このようなはんだ付け用弾性体1は、表面実装技術(SMT:Surface Mount Technology)によるはんだ付け実装が可能であり、例えば、電子機器等の配線基板(プリント配線基板等)に実装される。はんだ付け用弾性体1をはんだ付けする工程は、フローはんだ付け工程であってもよいし、リフローはんだ付け工程であってもよい。
【0040】
はんだ付け用弾性体1は、上下方向で圧縮されるように挟み付けられた状態で使用されてもよい。例えば、はんだ付け用弾性体1の底面(はんだ付け面)3を配線基板上に実装し、上面2を、配線基板を収容する筐体(グランド)に接触させてもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態のはんだ付け用弾性体1は、1部品として構成可能であり、しかも、配線基板等の相手側に対してはんだ付けが可能である(半田付け性を備えている)。更に、本実施形態のはんだ付け用弾性体1は、上述したように導電性も備えている。
【0042】
なお、はんだ付け用弾性体1が導電性を備える場合、体積抵抗率は、例えば、1×1010Ω・cm未満であることが好ましい。
【実施例
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
絶縁性ゴム(耐熱性ゴム)として、シリコーンゴム(商品名「KE-941-U」、信越化学工業株式会社製)を用意した。また、Sn膜付きフィラーとして、扁平状の銅粉の表面にSnめっきを施したSnめっき付き銅粉を用意した。Snめっき付き銅粉は、扁平状であり、平均長軸径が7μm、平均短軸径が1μmである。Snめっき付き銅粉におけるSnめっきの含有率は、26.03質量%である。このようなこのシリコーンゴム100質量部に対して、扁平状のSnめっき付き銅粉129.6質量部、及び加硫剤1質量部を混合し、得られた混合組成物を、プレス成形することで、実施例1のはんだ付け用弾性体(直径9mm×高さ10mm、円柱形状)を得た。
【0045】
〔実施例2〕
Snめっき付き銅粉の配合量を、194.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のはんだ付け用弾性体を作製した。
【0046】
〔比較例1〕
Snめっき付き銅粉の配合量を、116.6質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のはんだ付け用弾性体を作製した。
【0047】
〔実装試験〕
実施例1,2及び比較例1の各はんだ付け用弾性体について、以下の方法で実装試験を行った。
【0048】
表面に銅箔製の配線パターンが形成された基板(ポリイミド基板)を用意した。その基板の配線パターン上にはんだペーストを塗布し、更に、そのはんだペースト上に、底面が接触する形で、はんだ付け用弾性体を載せた。はんだ付け用弾性体が載せられた基板を、所定の加熱炉内に入れ、220℃から250℃まで昇温させつつ、30~60秒間(250℃では、5~10秒間)加熱した。その後、加熱炉から前記基板を取り出し、空冷することで、はんだ付け用弾性体が実装された基板(以下、「実装品」と称する)を得た。
【0049】
(実装実験A)
上記のようにして得られた実装品について、先ず、はんだ付け用弾性体が下側を向くように配置し、その状態で300秒間維持した。そして、その維持された状態において、実装品のはんだ付け用弾性体が自重により基板から剥がれて落下するか否か確認した。
【0050】
(実装実験B)
次いで、はんだ付け用弾性体が側方を向きつつ、基板面(実装面)が鉛直方向に沿うように(つまり、はんだ付け用弾性体が横倒しの形となるように)実装品を配置し、その状態で300秒間維持した。そして、その維持された状態において、実装品のはんだ付け用弾性体が、自重により基板から剥がれて落下するか否かを確認した。
【0051】
上記実装実験A,Bの何れの場合について、はんだ付け用弾性体が基板から剥離しなかった場合、実装実験の結果は良好であり、表1において、「〇」と表す。また、上記実装実験A,Bの何れか一方について、はんだ付け用弾性体が基板から剥離した場合、実装実験の結果は、良くなく、表1において、「×」と表す。結果は、表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるように、実施例1,2の各はんだ付け用弾性体は、はんだ付け性に優れることが確かめられた。これに対して、比較例1のはんだ付け用弾性体は、実施例1,2よりもSnめっき付き銅粉の含有率が低い場合であり、十分なはんだ付け性が得られないことが確かめられた。具体的には、上記実装実験Bの際に、はんだ付け用弾性体が基板から剥がれる結果となった。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
(1)上記実施形態では、円柱状に成形されたはんだ付け用弾性体を例示したが、本発明はこれに限られず、用途等に応じて、はんだ付け用弾性体は様々な形状であってもよい。例えば、図6に示されるように、立方体状のはんだ付け用弾性体1Aや、シート状のはんだ付け用弾性体1Bであってもよい。更に他の実施形態においては、例えば、図7に示されるように、円柱の周面が括れたような形状のはんだ付け用弾性体1Cであってもよい。このはんだ付け用弾性体1Cは、上下方向で圧縮された際に、括れた部分が外側へ広がるように変形しても、上面や底面よりも外側へはみ出すことが抑制される。
【0056】
(2)はんだ付け用弾性体をはんだ付けする際に使用されるはんだは、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、錫や鉛を含む一般的なものや、鉛フリーはんだ等を利用することができる。
【0057】
(3)はんだ付け用弾性体において、Sn膜付きフィラーは、本発明の目的を損なわない限り、絶縁弾性体中に均一に分散されてもよいし、部分的に偏在するように含有されてもよい。例えば、絶縁弾性体の表面付近にのみ、Sn膜付きフィラーが偏在するように、絶縁弾性体中に含有されてもよいし、絶縁弾性体中において、特定の方向に沿ってSn膜付きフィラーが集まるように含有されてもよい。
【0058】
(4)上記実施形態1では、はんだ付け用弾性体のはんだ付け面において、Sn膜付きフィラーは面状に点在するように露出していたが、本発明はこれに限られず、例えば、全体として、規則的又は不規則なパターン状をなすような形(同心円状、モザイク状)で多数のSn膜付きフィラーが露出するような状態であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…はんだ付け用弾性体、2…上面、3…底面(はんだ付け面)、4…周面、5…絶縁弾性体、6…Sn膜付きフィラー、61…芯材、62…Sn膜、7…導電路、8…はんだ層、9…フィレット、E…配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7