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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】発泡体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20240101AFI20240911BHJP
【FI】
A61F13/00 301J
A61F13/00 301M
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022205530
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2018125355の分割
【原出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2023024664
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大智
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-509701(JP,A)
【文献】特開平7-313585(JP,A)
【文献】特表2008-504412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/0246
A61L15/42、24/00、27/56、29/14、31/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域部と第2領域部とを備え、
第1領域部の外周囲に第2領域部が配され、
該第1領域部が第1の気泡構造を有し、該第2領域部が第2の気泡構造を有し、
該第1領域部と該第2領域部とが同一の樹脂を含み、
該第1の気泡構造と該第2の気泡構造とが互いに異なる構造であり、
前記第1領域部の、前記第2領域部と同一の樹脂からなる部分が前記第1の気泡構造を構成し、
該第1の気泡構造が連続気泡構造を有し、該第1の気泡構造における連続気泡構造の割合が、該第2の気泡構造における連続気泡構造の割合よりも大きい発泡体。
【請求項2】
第1領域部と第2領域部とを備え、
第1領域部の外周囲に第2領域部が配され、
該第1領域部が第1の気泡構造を有し、該第2領域部が第2の気泡構造を有し、
該第1領域部と該第2領域部とが同一の樹脂からなり、
該第1の気泡構造と該第2の気泡構造とが互いに異なる構造であり、
該第1の気泡構造が連続気泡構造を有し、該第1の気泡構造における連続気泡構造の割合が、該第2の気泡構造における連続気泡構造の割合よりも大きい発泡体。
【請求項3】
前記第1領域部と前記第2領域部とが、該第1領域部の厚さ方向において積層していない、請求項1又は2に記載の発泡体。
【請求項4】
前記気泡構造における連続気泡構造の割合とは、気泡構造中の独立気泡の数と連続気泡の数との合計数に対する該連続気泡の数である、請求項1からのいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項5】
前記気泡構造における連続気泡構造の割合とは、気泡構造中の独立気泡の体積と連続気泡の体積との合計体積に対する該連続気泡の体積である、請求項1からのいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項6】
前記同一の樹脂が、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物と親水性ポリマーとの混合物を発泡させて作製されるウレタン樹脂である、請求項1からのいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項7】
前記第1領域部の厚さが前記第2領域部の厚さよりも厚い、請求項1からのいずれかに記載の発泡体。
【請求項8】
前記第1の気泡構造が連続気泡構造を有し、前記第2の気泡構造が独立気泡構造を有する、請求項1からのいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項9】
前記第1の気泡構造が第1の連続気泡構造を有し、
前記第2の気泡構造が第2の連続気泡構造を有し、
前記第1の気泡構造に対する前記第1の連続気泡構造の割合が、前記第2の気泡構造に対する前記第2の連続気泡構造の割合よりも大きい、請求項1からのいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項10】
前記第1の気泡構造が第1の独立気泡構造を有し、
前記第2の気泡構造が第2の独立気泡構造を有し、
前記第1の気泡構造に対する前記第1の独立気泡構造の割合が、前記第2の気泡構造に対する前記第2の独立気泡構造の割合よりも小さい、請求項1からのいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項11】
前記第1領域部及び/又は前記第2領域部が粘着性を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項12】
前記第1領域部が有する気泡の数が、前記第2領域部が有する気泡の数よりも多い、請求項1から11のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項13】
前記第1領域部が有する単位体積あたりの吸水量が、前記第2領域部が有する単位体積あたりの吸水量よりも大きい、請求項1から12のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項14】
前記第1領域部の比重が、前記第2領域部の比重よりも小さい、請求項1から13のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項15】
前記第1領域部の弾性率が、前記第2領域部の弾性率よりも大きい、請求項1から14のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項16】
前記第1領域部が前記発泡体の略中央部に配され、前記第2領域部が前記発泡体の周辺部に配される、請求項1から15のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項17】
親水性ポリマーを少なくとも含み、
前記第1領域部が含有する単位体積あたりの該親水性ポリマーの量が、前記第2領域部が含有する単位体積あたりの該親水性ポリマーの量よりも多い、請求項1から16のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の発泡体を備えた、排泄物収容装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体は皮膚に接する様々な製品への応用がなされている。製品としては、例えば、創傷被覆材が挙げられ、創傷被覆材は、外傷の手当てや外科手術の創傷の手当てに用いられる。創傷被覆材は基本的に、創傷面を物理的に保護することで外部からの感染を防止する機能を備える。創傷被覆材は様々な種類があり、創傷の状態や処置の目的に応じて適宜選択して用いられる。
【0003】
創傷被覆材の一例として、疎水性ポリマー中に親水性ポリマーを分散させた、いわゆるハイドロコロイド材がある。ハイドロコロイド材中の親水性ポリマーは創傷面からの滲出液を吸収してゾル化ないしゲル化する。これが創傷面の湿潤環境を保って創傷の治癒を促し、疼痛を緩和するといわれている。ハイドロコロイド材は人工肛門用装具の皮膚用粘着剤としても用いられている。
【0004】
また、創傷被覆材の例として、樹脂の発泡体を備える、いわゆるポリウレタンフォーム材が提案されている(特許文献1を参照)。以下、ポリウレタンフォーム材を単にフォーム材ないしフォームということもある。フォーム材はウレタンを発泡させた多孔質の発泡体を備える。発泡体を創傷面に適用すると、多孔質の部分が滲出液を吸収する。
【0005】
また、創傷被覆材の例として、フォーム領域および圧縮領域を有する、成形物品であって、フォーム層を圧縮することによって圧縮領域を得、このフォーム層およびフォーム領域が、アニオン性親水化ポリウレタン水性分散体を含有する組成物の発泡および乾燥によって得られたポリウレタン材料を含む、成形物品が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-175958号公報
【文献】特表2012-500737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されるようなハイドロコロイド材は、比較的弾性のある疎水性ポリマー等の影響で創傷面との密着性が十分でなかったり、フォーム材に比べると吸水速度や吸水量も低かったりすることがある。また、特許文献2で提案されるようなフォーム材も、比較的弾性・反発性のあるセル構造を有するため、創傷面とフォームとの界面では創傷とフォームとの密着性が十分でなく、創傷面の湿潤環境を保って創傷の治癒を促すような機能が十分発揮されない場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、創傷や皮膚表面に対する密着性が良好で、創傷や皮膚表面からの滲出液や汗などの水分を効率的に処理することができる発泡体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、第1領域部と第2領域部とを備え、第1領域部の外周囲に第2領域部が配され、該第1領域部が第1の気泡構造を有し、該第2領域部が第2の気泡構造を有し、該第1の気泡構造と該第2の気泡構造とが互いに異なる構造である、発泡体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、創傷や皮膚表面に対する密着性が良好で、創傷や皮膚表面からの滲出液や汗などの水分を効率的に処理することができる発泡体が提供され得る。そして、本発明に係る発泡体によれば、例えば、創傷への適用時に創傷適用面にゾルが形成され、創傷や皮膚表面に対する密着性が良好となるので、そこからの滲出液や汗などの水分を効率的に処理することができる創傷被覆材が提供され得る。また、本発明に係る発泡体によれば、例えば、発汗量が多いオストミー装具の装着者向けとして、皮膚表面に対する高い密着性等を有し、ストーマからの排泄物や汗などの水分を効率的に処理することができるオストミー装具に用いられる部材が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る実施形態の発泡体の構成例を示す断面図である。
図2図2は、本発明に係る実施形態の発泡体の構成例を示す断面図である。
図3図3は、本発明に係る実施形態の発泡体を備える創傷被覆材の構成例を示す図である。
図4図4は、本発明に係る実施形態の発泡体を備える排泄物収容装具の構成例を示す図である。
図5図5は、本発明に係る実施形態の発泡体が有する気泡構造の模式図である。
図6図6は、本発明に係る実施形態の発泡体が有する気泡構造の模式図である。
図7図7は、実施例1で作製された発泡体が有する気泡構造のビデオマイクロスコープの写真である。
図8図8は、実施例2で作製された発泡体が有する気泡構造のビデオマイクロスコープの写真である。
図9図9は、実施例1及び2で作製された発泡体の複素弾性率の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下の説明は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
本発明に係る実施形態の発泡体は、第1領域部と第2領域部とを備え、第1領域部の外周囲に第2領域部が配され、第1領域部が第1の気泡構造を有し、第2領域部が第2の気泡構造を有し、第1の気泡構造と第2の気泡構造とが互いに異なる構造である、発泡体である。本発明に係る実施形態の発泡体においては、第1領域部が発泡体の略中央部に配されてよく、第2領域部が発泡体の周辺部に配されてよい。
【0014】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1領域部の厚さが第2領域部の厚さよりも厚いほうが好ましい。例えば、第1領域部の厚さを1,000μm~5,000μmの範囲とし、第2領域部の厚さを100μm~500μmの範囲とすればよく、さらに第1領域部の厚さを2,000μm~3,800μmの範囲とし、第2領域部の厚さを200μm~350μの範囲とすることが好ましい。
【0015】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1の気泡構造が連続気泡構造を有してよく、第2の気泡構造が独立気泡構造を有してよい。第1の気泡構造が連続気泡構造を有することにより、第1領域部において、吸水速度が上昇し例えば体液を速やかに吸収でき、通気性、透湿性、水分の蒸散性等が向上し、皮膚の浸軟が生じにくくなる。また、第2の気泡構造が独立気泡構造を有することにより、第2領域部において、吸水速度や吸水量が抑えられ、外部(発泡体の周縁部や辺縁部)からの水分の侵入を抑え、耐水性が向上し本発明に係る実施形態の発泡体が剥がれ難くなり、また、第1領域部で吸水した過剰な滲出液などがその周囲に広がり、健常皮膚の浸軟をおこすことを抑えることができる。
【0016】
連続気泡構造とは、連続気泡からなる構造であり、連続気泡とは、例えば、近接する気泡と接続して、少なくとも2つの気泡から構成されるものをいう。独立気泡構造とは、独立気泡からなる構造であり、独立気泡とは、例えば、近接する気泡と接続していない気泡をいう。
【0017】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1の気泡構造が第1の連続気泡構造を有してよく、第2の気泡構造が第2の連続気泡構造を有してよく、第1の気泡構造に対する第1の連続気泡構造の割合が、第2の気泡構造に対する第2の連続気泡構造の割合よりも大きくてよい。第1の気泡構造に対する第1の連続気泡構造の割合が、第2の気泡構造に対する第2の連続気泡構造の割合よりも大きいことにより、第1領域部の吸水速度が第2領域部の吸水速度に比べて速いため、第2領域部に比べて、第1領域部は、より速やかに、滲出液、血液、汗等の体液を吸収できる。
【0018】
第1の気泡構造に対する第1の連続気泡構造の割合及び第2の気泡構造に対する第2の連続気泡構造の割合は、数の割合でもよいし、体積の割合でもよい。数の割合の場合は、第1の気泡構造中の独立気泡の数と連続気泡の数との合計数に対する第1の連続気泡構造中の連続気泡の数であり、第2の気泡構造中の独立気泡の数と連続気泡の数との合計数に対する、第2の連続気泡構造中の連続気泡の数である。体積の割合の場合は、第1の気泡構造中の独立気泡の体積と連続気泡の体積との合計体積に対する第1の連続気泡構造中の連続気泡の体積であり、第2の気泡構造中の独立気泡の体積と連続気泡の体積との合計体積に対する、第2の連続気泡構造中の連続気泡の体積である。なお、第1の連続気泡構造とは、連続気泡からなる構造であり、第2の連続気泡構造とは、連続気泡からなる構造であり、連続気泡とは、例えば、近接する気泡と接続して、少なくとも2つの気泡から構成されるものをいう。
【0019】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1の気泡構造が第1の独立気泡構造を有してよく、第2の気泡構造が第2の独立気泡構造を有してよく、第1の気泡構造に対する第1の独立気泡構造の割合が、第2の気泡構造に対する第2の独立気泡構造の割合よりも小さくてよい。第1の気泡構造に対する第1の独立気泡構造の割合が、第2の気泡構造に対する第2の独立気泡構造の割合よりも小さいことにより、第1領域部に対して第2領域部の吸水速度や吸水量はより抑えられ、外部(発泡体の周縁部や辺縁部)からの水分の侵入を抑え、第2領域部の耐水性が向上し、本発明に係る実施形態の発泡体は剥がれ難くなり、また、第1領域部で吸水した過剰な滲出液などが周囲に広がり、健常皮膚の浸軟をおこすことを抑えることができる。
【0020】
第1の気泡構造に対する第1の独立気泡構造の割合及び第2の気泡構造に対する第2の独立気泡構造の割合は、数の割合でもよいし、体積の割合でもよい。数の割合の場合は、第1の気泡構造中の独立気泡の数と連続気泡の数との合計数に対する第1の独立気泡構造中の独立気泡の数であり、第2の気泡構造中の独立気泡の数と連続気泡の数との合計数に対する、第2の独立泡構造中の独立気泡の数である。体積の割合の場合は、第1の気泡構造中の独立気泡の体積と連続気泡の体積との合計体積に対する第1の独立気泡構造中の独立気泡の体積であり、第2の気泡構造中の独立気泡の体積と連続気泡の体積との合計体積に対する、第2の独立気泡構造中の独立気泡の体積である。なお、第1の独立気泡構造とは、独立気泡からなる構造であり、第2の独立気泡構造とは、独立気泡からなる構造であり、独立気泡とは、例えば、近接する気泡と接続していない気泡をいう。
【0021】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1領域部及び/又は前記第2領域部が粘着性を有することが好ましく、第1領域部及び前記第2領域部の両方が粘着性を有することがさらに好ましい。第1領域部及び/又前記第2領域部が粘着性を有することで、発泡体を適用したときに、皮膚や創傷などの体表面と密着性が良好となるので、そこからの滲出液や汗などの水分も速やかに処理することができる。第1領域部の粘着性を第2領域部の粘着性に対して低くし、第2領域部の粘着性を高くすることにより、本発明に係る実施形態の発泡体は、剥がれ難い構成となる。
【0022】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1領域部が有する気泡の数が、前記第2領域部が有する気泡の数よりも多くてよい。なお、連続気泡の場合の気泡の数は、連続気泡を構成する気泡の数をいい、例えば、2つの気泡から構成される連続気泡の数は2つである。第1領域部が有する気泡の数が、前記第2領域部が有する気泡の数よりも多いことにより、第1領域部の吸水速度が上昇し、本発明に係る実施形態の発泡体は、速やかに、例えば体液を吸収でき、一方、第2領域部は、吸水速度や吸水量がより抑えられ、外部(発泡体の周縁部や辺縁部)からの水分の侵入が抑えられ、第2領域部の耐水性が向上するため発泡体は剥がれ難くなり、また、第1領域部で吸水した過剰な滲出液などが周囲に広がり、健常皮膚の浸軟をおこすことを抑えることができる。
【0023】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1領域部が有する単位体積あたりの吸水量が、第2領域部が有する単位体積あたりの吸水量よりも大きくてよい。第1領域部が有する単位体積あたりの吸水量が、第2領域部が有する単位体積あたりの吸水量よりも大きいことにより、第2領域部は外部からの水に強く剥離しにくく(入浴時など)、吸水をしにくく、第2領域部の耐久性が高く、第1領域部は滲出液等を吸いやすく、第1領域部において、皮膚浸軟が起こり難い。
【0024】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1領域部の比重が、第2領域部の比重よりも小さくてよい。気泡の数と気泡構造の違いにより、第1領域部と第2領域部の比重を調整することができる。例えば連続気泡構造の数又は体積の割合を増やすことにより、第1領域部の比重を第2領域部の比重よりも小さくすることができ、第1領域部と第2領域部の吸水特性などを変化させることができる。
【0025】
本発明に係る実施形態の発泡体において、第1領域部の弾性率が、第2領域部の弾性率よりも大きくてよい。第1領域部の弾性率が、第2領域部の弾性率よりも大きいことにより、第1領域部は、第2領域部に比べて、より強く、体表面(例えば皮膚)に対して圧迫することができる。本発明に係る実施形態の発泡体は、創傷、術創圧迫により、止血効果、成形作用、瘢痕形成抑制効果が奏され、ストーマ装具においては、ストーマ周囲の体表面に対してより強く密着することができ、ストーマ周囲縁の皮膚凹凸に沿うので、尿、便等の排泄物が漏れ難い。
【0026】
以下、図1及び図2を参照しながら、本発明に係る実施形態の発泡体を更に詳細に説明する。図1及び図2は、本発明に係る実施形態の発泡体の構成例を示す断面図である。なお、本発明に係る第1の実施形態の発泡体は、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲内で、図1及び図2に示される本発明に係る実施形態の発泡体の構成例に限定されるものではない。
【0027】
まず、図1を用いて、本発明に係る実施形態の発泡体について説明をする。図1(a)に示される発泡体1(1-1)は、第1領域部2(2-1)と第2領域部3(3-1-1及び3-1-2)とを備える。第2領域部3-1-1及び3-1-2は、第1領域部2-1の外周囲に配されている。図1(a)に示されるT-1-1は、第2領域部3-1-1の皮膚接触面であり、T-2-1は、第1領域部2-1の皮膚接触面であり、T-3-1は第2領域部3-1-2の皮膚接触面である。
【0028】
図1(a)に示されるように、第1領域部2-1の厚み(図1中の上下方向。以下同じ。)は、第2領域部3-1-1及び3-1-2の厚み(図1中の上下方向。以下同じ。)に対して略同等~大きい。第1領域部2-1は、第2領域部3-1-1及び3-1-2に対して凸状であり、第1領域部2-1の厚みは略一定であり、第1領域部2-1の断面形状は略矩形形状である。なお、第1領域部2-1の厚みは一定でなくてもよい。
【0029】
そして、図1(a)に示されるように、第2領域部3-1-1及3-1-2の厚みは、第1領域部から離れるに従って小さくなり、第2領域部3-1-1及び3-1-2の先端部で第2領域部3-1-1及び3-1-2の厚みは収束し、第2領域部3-1-1及3-1-2の断面形状は略三角形形状である。
【0030】
第2領域部3-1-1の皮膚接触面T-1-1、第1領域部2-1の皮膚接触面T-2-1及び第2領域部3-1-2の皮膚接触面T-3-1は平坦部を有した平面状でもよいし、曲面状でもよい。
【0031】
図1(b)は、図1(a)に示される、第2領域部3-1-1の一部であるP-1と、第1領域部2-1の一部であるP-2と、P-1及びP-2の境界部L-1とを拡大した図である。図1(b)に示されるように、第2領域部3-1-1の一部であるR-1(P-1の拡大図)には、独立気泡i-1-b-1が存在し、第1領域部2-1の一部であるR-2(P-2の拡大図)には、連続気泡c-1-b-1が存在する。第1領域部2-1と第2領域部3-1-1との境界部L-2(L-1)は、第1領域部2-1の厚み変化率と第2領域部3-1-1の厚み変化率とが異なるところであるか、又は第1領域部2-1の厚みと第2領域部3-1-1の厚みとが略同等か若しくは異なるところであり、そして、気泡構造が変化するところである。
【0032】
図1(c)は、図1(a)に示される、第1領域部2-1の一部であるQ-1と第2領域部3-1-2の一部であるQ-2と、Q-1及びQ-2の境界部M-1とを拡大した図である。図1(c)に示されるように、第1領域部2-1の一部であるS-1(Q-1の拡大図)には、連続気泡c-1-c-1が存在し、第3領域部3-1-2の一部であるS-2(Q-2の拡大図)には、独立気泡i-1-c-1が存在する。第1領域部2-1と第2領域部3-1-2との境界部M-2(M-1)は、第1領域部2-1の厚み変化率と第2領域部3-1-2の厚み変化率とが異なるところであるか、又は第1領域部2-1の厚みと第2領域部3-1-2の厚みとが略同等か若しくは異なるところであり、そして、気泡構造が変化するところである。
【0033】
図2を用いて、本発明に係る実施形態の発泡体について更に説明をする。
【0034】
図2(a)に示される発泡体1-2-aは、第1領域部2-2-aと第2領域部3-2-a-1及び3-2-a-2とを備える。第2領域部3-2-a-1及び3-2-a-2は、第1領域部2-2-aの外周囲に配されている。図2(a)に示されるT-1-2-aは、第2領域部3-2-a―1の皮膚接触面であり、T-2-2-aは、第2領域部2-2-aの皮膚接触面であり、T-3-2-aは第2領域部3-2-a-2の皮膚接触面である。
【0035】
図2(a)に示されるように、第1領域部2-2-aの厚み(図2(a)中の上下方向。以下同じ。)は、第2領域部3-2-a-1及び3-2-a-2の厚み(図2(a)中の上下方向。以下同じ。)に対して略同等~大きい。第1領域部2-2-aは、第2領域部3-2-a-1及び3-2-a-2に対して凸状であり、第1領域部2-2-aの厚みは、第2領域部3-2-a-1及び3-2-a-2の領域に近づくに従って小さくなり、第1領域部2-2-aの断面形状は略半円形状である。
【0036】
そして、図2(a)に示されるように、第2領域部3-2-a-1及3-2-a-2の厚みは、略一定であり、第2領域部3-2-a-1及3-2-a-2の断面形状は略矩形形状である。
【0037】
第2領域部3-2-a-1の皮膚接触面T-1-2-a、第1領域部2-2-aの皮膚接触面T-2-2-a及び第2領域部3-2-a-2の皮膚接触面T-3-2-aは平坦部を有した平面状でもよいし、曲面状でもよい。
【0038】
図2(b)に示される発泡体1-2-bは、第1領域部2-2-bと第2領域部3-2-b-1及び3-2-b-2とを備える。第2領域部3-2-b-1及び3-2-b-2は、第1領域部2-2-bの外周囲に配されている。図2(b)に示されるT-1-2-bは、第2領域部3-2-b-1の皮膚接触面であり、T-2-2-bは、第2領域部2-2-bの皮膚接触面であり、T-3-2-bは第2領域部3-2-b-2の皮膚接触面である。
【0039】
図2(b)に示されるように、第1領域部2-2-bの厚み(図2(b)中の上下方向。以下同じ。)は、第2領域部3-2-b-1及び3-2-b-2の厚み(図2(b)中の上下方向。以下同じ。)に対して略同等~大きい。第1領域部2-2-bは、第2領域部3-2-b-1及び3-2-b-2に対して凸状であり、第1領域部2-2-bの厚みは、第1領域部の中央部では略一定であるが、第2領域部3-2-b-1及び3-2-b-2の領域に近づくに従って小さくなり、第1領域部2-2-bの断面形状はテーパ形状である。なお、図示はされていないが、第1領域部2-2-cの断面形状は逆テーパ形状でもよい。
【0040】
そして、図2(b)に示されるように、第2領域部3-2-b-1及3-2-b-2の厚みは、略一定であり、第2領域部3-2-b-1及3-2-b-2の断面形状は略矩形形状である。
【0041】
第2領域部3-2-b-1の皮膚接触面T-1-2-b、第1領域部2-2-cの皮膚接触面T-2-2-b及び第2領域部3-2-c-2の皮膚接触面T-3-2-bは平坦部を有した平面状でもよいし、曲面状でもよい。
【0042】
図2(c)に示される発泡体1-2-cは、第1領域部2-2-cと第2領域部3-2-c-1及び3-2-c-2とを備える。第2領域部3-2-c-1及び3-2-c-2は、第1領域部2-2-cの外周囲に配されている。図2(c)に示されるT-1-2-cは、第2領域部3-2-c-1の皮膚接触面であり、T-2-2-cは、第2領域部2-2-cの皮膚接触面であり、T-3-2-cは第2領域部3-2-c-2の皮膚接触面である。
【0043】
図2(c)に示されるように、第1領域部2-2-cの厚み(図2(c)中の上下方向。以下同じ。)は、第2領域部3-2-c-1及び3-2-c-2の厚み(図2(c)中の上下方向。以下同じ。)に対して略同等~大きい。第1領域部2-2-cは、第2領域部3-2-c-1及び3-2-c-2に対して凸状であり、第1領域部2-2-cの厚みは略中央部を最大にして、第2領域部3-2-c-1及び3-2-c-2に近づくに従って小さくなり、第1領域部2-2-cの断面形状は略矩形形状である。
【0044】
そして、図2(c)に示されるように、第2領域部3-2-c-1及3-2-c-2の厚みは、第1領域部から離れるに従って小さくなり、第2領域部3-2-c-1及び3-2-c-2の先端部で第2領域部3-2-c-1及び3-2-c-2の厚みは収束し、第2領域部3-2-c-1及3-2-c-2の断面形状は略三角形形状である。
【0045】
第2領域部3-2-c-1の皮膚接触面T-1-2-c、第1領域部2-2-cの皮膚接触面T-2-2-c及び第2領域部3-2-c-2の皮膚接触面T-3-2-cは平坦部を有した平面状でもよいし、曲面状でもよい。
【0046】
本発明に係る実施形態の発泡体が有する気泡構造について、図5及び図6を参照しながら詳細に説明する。
【0047】
まず、図5を用いて、本発明に係る実施形態の発泡体が有する気泡構造について説明する。図5(a)は、本発明に係る実施形態の発泡体が備える第1領域部が有する第1の気泡構造の第1例を示す模式図である。図5(b)は、本発明に係る実施形態の発泡体が備える第2領域部が有する第2の気泡構造の第1例を示す模式図である。
【0048】
図5(a)に示されるように、第1の気泡構造は、連続気泡c-5-a-1~c-5-a-4から構成される第1の連続気泡構造を有する。図5(b)に示されるように、第2の気泡構造は、独立気泡i-5-b-1~i-5-b-4から構成される第2の独立気泡構造を有し、さらに、連続気泡c-5-b-1から構成される第2の連続気泡構造を有する。
【0049】
図5に示されるように、第1の気泡構造に対する第1の連続気泡構造の割合が、第2の気泡構造に対する第2の連続気泡構造の割合よりも大きい。当該割合は気泡の個数の割合でもよいし、気泡の体積の割合でもよい。また、図5に示されるように、第1の気泡構造に対する第1の独立気泡構造-1の割合(図5a)が、第2の気泡構造に対する第2の独立気泡構造の割合よりも小さい。当該割合は気泡の個数の割合でもよいし、気泡の体積の割合でもよい。
【0050】
次に、図6を用いて、本発明に係る実施形態の発泡体が有する気泡構造について説明する。図6(a)は、本発明に係る実施形態の発泡体が備える第1領域部が有する第1の気泡構造の第2例を示す模式図である。図6(b)は、本発明に係る実施形態の発泡体が備える第2領域部が有する第2の気泡構造の第2例を示す模式図である。
【0051】
図6(a)に示されるように、第1の気泡構造は、連続気泡c-6-a―1~c-6-a-5から構成される第1の連続気泡構造を有し、さらに、独立気泡i-6-a-1~i-6-a-3から構成される第1の独立気泡構造を有する。図6(b)に示されるように、第2の気泡構造は、独立気泡i-6-b-1~i-6-b-5から構成される第2の独立気泡構造を有し、さらに、連続気泡c-6-b-1から構成される第2の連続気泡構造を有する。
【0052】
図6に示されるように、第1の気泡構造に対する第1の連続気泡構造の割合が、第2の気泡構造に対する第2の連続気泡構造の割合よりも大きい。当該割合は気泡の個数の割合でもよいし、気泡の体積の割合でもよい。また、図6に示されるように、第1の気泡構造に対する第1の独立気泡構造の割合が、第2の気泡構造に対する第2の独立気泡構造の割合よりも小さい。当該割合は気泡の個数の割合でもよいし、気泡の体積の割合でもよい。
【0053】
本発明に係る実施形態の発泡体は、創傷被覆材の部材として用いられてよい。本発明に係る実施形態の発泡体が、創傷被覆材又は創傷被覆材の部材として用いられることによって、以下の効果が期待される。
・創傷を圧迫固定できる為、止血効果が奏される。
・術創跡の圧迫固定により、肥厚性瘢痕の発生を抑える。
・第1領域部の吸水量に比べて第2領域部の吸水量が低いので、入浴等の外部水分による影響を受けない。
【0054】
以下、図3を参照しながら、本発明に係る実施形態の発泡体を備える創傷被覆材について説明する。図3(a)は、本発明に係る実施形態の発泡体を備える創傷被覆材の構成例を示す上面図である。図3(b)は、本発明に係る実施形態の発泡体を備える創傷被覆材の構成例を示す断面図である。なお、本発明に係る実施形態の発泡体を備える創傷被覆材は、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲内で、図3に示される本発明に係る実施形態の発泡体を備える創傷被覆材の構成例に限定されるものではない。
【0055】
図3(a)に示されるように、創傷被覆材4-3-aは、創傷被覆材4-3-aの上部に基材5-3-aを備える。
【0056】
次に、図3(b)を参照する。創傷被覆材4-3-bは、剥離フィルム6-3-bと発泡体1-3-bと基材5-3-bとがこの順で積層されている。発泡体1-3-bは、第1領域部2-3-bと第2領域部3-3-b-1及び3-3-b-2とを備える。第2領域部3-3-b-1及び3-3-b-2は、第1領域部2-3-bの外周囲に配されている。そして、剥離フィルム6-3-b側が皮膚接触面側である。
【0057】
なお、上記で説明をした以外は、図1~2及び図5~6の内容が、創傷被覆材に用いられる本発明に係る実施形態の発泡体にそのまま適用され得る。
【0058】
本発明に係る実施形態の発泡体は、皮膚保護剤として、排泄物収容装具(オストミー装具ということがある。)の面板の一部材としても用いられてもよい。排泄物収容装具(オストミー装具)は、例えば、人工肛門用装具、人工膀胱用装具、イレオストミー装具等が挙げられる。本発明に係る実施形態の発泡体が、排泄物収容装具(オストミー装具)の面板の一部材として用いられることによって、以下の効果が奏される。
・オストミー用装具の面板として、ストーマ周囲の皮膚に密着し、漏れを防止することができる。特に、陥没ストーマや皮膚の凹凸がある皮膚に対しては好適である。
・長時間貼付したとしても、汗や排泄物からの水分を速やかに吸収して皮膚の浸軟や剥がれを防止することができる。
【0059】
以下、図4を参照しながら、本発明に係る実施形態の発泡体を備える排泄物収容装具(オストミー装具)について説明する。図4(a)は、本発明に係る実施形態の発泡体を備える排泄物収容装具の構成例を示す上面図である。図4(b)は、本発明に係る実施形態の発泡体を備える排泄収容装具の構成例を示す断面図である。なお、本発明に係る実施形態の発泡体を備える排泄物収容装具は、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲内で、図4に示される本発明に係る実施形態の発泡体を備える排泄物収容装具の構成例に限定されるものではない。
【0060】
図4(a)には、排泄物収容装具7-4-aが示されている。図4(a)に示されるように、排泄物収容装具7-4-aが備えるパウチ9-4-aはプラスチックフィルムを使用して密閉された袋状に形成され、上部に面板8-4-aが設けられ、面板8-4-aを介して患者の造設開口部(ストーマ)に装着され、排泄物は面板8-4-aの開口部10-4-aを通ってパウチ9-4-a内に排出される。
【0061】
次に、図4(b)を参照する。排泄物収容装具7-4-bは、パウチ9-4-b上に面板8-4-bが配され、面板8-4-bは開口部10-4-bを有し、パウチ9-4-b側から、基材5-4-b-1及び5-4-b-2と、発泡体1-4-b-1及び1-4-b-2と、剥離フィルム6-4-b-1及び6-4-b-2とがこの順で積層されている。発泡体1-4-b-1は、第1領域部2-4-b-1と第2領域部2-4-b-1とを備える。発泡体1-4-b-2は、第1領域部2-4-b-2と第2領域部2-4-b-2とを備える。第2領域部2-4-b-1及び2-4-b-2は、第1領域部2-4-b-1及び2-4-b-2の外周囲に配されている。そして、剥離フィルム6-4-b-1及び6-4-b-2側が皮膚接触面側である。
【0062】
なお、上記で説明をした以外は、図1~2及び図5~6の内容が、排泄物収容装具に用いられる本発明に係る実施形態の発泡体にそのまま適用され得る。
【0063】
以下、本発明に係る発泡体の製造に用いられる材料について説明する。
【0064】
(ウレタン)
本発明に係る発泡体は、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物と親水性ポリマーとの混合物を発泡させて作製されるウレタン樹脂を含む。効率的な発泡のためには発泡剤を含むことが好ましい。本発明においては、後述するように、発泡剤を含有した親水性ポリマーの存在下、少なくとも一種のポリオールと少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物とを反応させ発泡させることが好ましい。少なくとも一種のポリオールと少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物とは無溶剤系の材料を使用すると均質な発泡体を作製でき、好ましい。本発明に係る発泡体において、ポリオールのOH当量及び少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物のNCO当量との関係において、NCO/OHの比は任意でよいが、0.5以上1.0以下であることが好ましい。ポリオールのOH当量は1000以上が好ましく、ポリイソシアネートのNCO当量は100以上であることが好ましい。
【0065】
(ポリオール)
ポリウレタン発泡体作製用のポリオールを用いて、本発明に係る発泡体を作製することができる。当該ポリオールとしては特に限定されず、市販のものを用いることができる。本発明に係るフォーム材を人体に適用した際の安全性を高める観点から、医療用製品向けのポリオールを用いるのが好ましい。
【0066】
ポリオールの配合量は、発泡前の材料の混合物の全質量に対して25~80質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましい。
【0067】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、叉はポリカーボネートポリオールが挙げられる。そして、ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレングリコールがあげられる。ポリエステルポリオールとしては、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトングリコールが挙げられる。叉、ポリカーボネートポリオールとしては、1,6-ヘキサンポリカーボネートジオールが挙げられる。通常これらの化合物は単独で用いられるが、2種以上を併用してもかまわない。
【0068】
(少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物)
ポリウレタン発泡体作製用の少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物(以下、イソシアネートと省略して称する場合がある。)を用いて、本発明に係る発泡体を作製することができる。当該イソシアネートとしては特に限定されず、市販のものを用いることができる。本発明に係るフォーム材を人体に適用した際の安全性を高める観点から、医療用製品向けのイソシアネートを用いるのが好ましい。
【0069】
一般に、ウレタン発泡体を作製するためのイソシアネートとしては、芳香族系、脂環式、脂肪族系とがある。適切な発泡倍率やフォーム材として適切な特性を発揮することができれば、これらのいずれを用いてもよい。また、当該イソシアネートは1分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物であってもよい。また、当該イソシアネートは複数のイソシアネート基を有するモノマーを予め重合させたプレポリマーでもよい。
【0070】
少なくとも1つのイソシアネート基を含む化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-およびp-フェニレンジイソシアネート、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4-4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。通常これらの化合物は単独で用いられるが、2種以上を併用してもかまわない。
【0071】
脂肪族ポリイソシアネート類として具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、ブテンジイソシアネート(BDI)、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート及びそれらの変性体等が用いられる。脂環族ポリイソシアネート類として具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート〔水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)〕、水添キシレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が用いられる。
【0072】
ポリイソシアネート類としては、上記の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート類のほか、リジンエステルトリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネート類も用いることができる。これらポリイソシアネート類のうち、リジンエステルトリイソシアネート及び1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネートが好ましい。これらのポリイソシアネート類は、前記のジイソシアネートとともに用いることができ、その配合量はポリイソシアネート類中60質量%以下であることが好ましい。
【0073】
本発明に係る発泡体を製造するために、イソシアネートとして好ましいものは、脂肪族系イソシアネートモノマーを予め重合させておいたポリイソシアネートプレポリマーであって、末端にイソシアネート基を有するものである。
【0074】
イソシアネートの配合量は、発泡前の材料の混合物の全質量に対して5~30質量%が好ましく、8~30質量%がより好ましい。
【0075】
(発泡剤)
本発明に係る発泡体を作製するにあたり、適切に発泡させるために、発泡剤が用いられる。発泡剤としては、水や有機溶媒を用いることができる。
【0076】
発泡剤として水を用いる場合、後述する親水性ポリマーに吸湿させた状態でポリオール及びイソシアネートと混合させると好ましい。その場合、親水性ポリマーが自然に含有している水分を活用することもできる。当該混合物を加熱することで本発明に係るフォームとして適切な、多孔質かつ親水性ポリマーが分散した発泡体を作製することができる。ポリオールとイソシアネートとを反応させ、架橋させる場合、発泡剤として水を用いると、イソシアネートと水が反応してしまう為、架橋反応は生じないが、本発明は親水成分中に水分を保持する事により、架橋反応を進めつつ、水による発泡体作製を可能とした。
【0077】
有機溶媒としては発泡後に残留しないものが好ましく、例えばエタノール、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、アセトン、ジクロロメタン等を使用することができる。
【0078】
(親水性ポリマー)
本発明に係る発泡体の特徴の一つは、親水性ポリマーを含有していることである。発泡体が親水性ポリマーを含んでいることで、創傷面にフォーム材を適用して吸収した滲出液が親水性ポリマーに吸収される。これにより創傷面への適用時、吸水後にフォーム材が圧迫されたり伸縮したりしても、滲出液が創傷面に戻ることを防止することができる。
【0079】
本発明に係る実施形態の発泡体は、第1領域部が含有する単位体積あたりの親水性ポリマーの量が、第2領域部が含有する単位体積あたりの親水性ポリマーの量よりも多いことが好ましい。
【0080】
例えば、粉末状や繊維状の形状の親水性ポリマーを親水性ポリマーとして用いた場合、本発明に係る発泡体は、滲出液等の水分を吸収すると当該フォーム材の創傷面がゾル化する。当該ゾルは創傷面を物理的に保護するだけでなく、痛みの軽減にも役立つといわれている。
【0081】
親水性ポリマーの配合量は、発泡前の材料の混合物の全質量に対して5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0082】
親水性ポリマーの含水量は、任意の量でよいが、発泡倍率の観点から10質量%以上が好ましい。この好ましい態様により、本発明に係る発泡体は、所定の粘着性を有することができる。親水性ポリマーは膨潤性で水溶性でもよく、膨潤性と非水溶性でもよく、非膨潤性で水溶性でもよく、非膨潤性で非水溶性でもよい。本発明に係る発泡体では、少なくとも1以上の水溶性の親水性ポリマーを含むことが好ましい。本発明に係る発泡体では、少なくとも2以上の親水性ポリマーを含むことが更に好ましく、そのうち少なくとも1以上は水溶性の親水性ポリマーを含み、少なくとも1以上は膨潤性の親水性ポリマーを含むことが特に好ましい。このように、水溶性の親水性ポリマーと、膨潤性の親水性ポリマーとを含むことにより、親水性ポリマーは発泡体表面にゾル状物質を形成し、膨潤性ポリマーは水を保持することができるので発泡体の製造工程においてイソシアネートの水による架橋阻害を抑制しながら加熱時の水の揮発により発泡体の形成を行うことができる。本発明に係る親水性ポリマーとしては、吸水後にゾル状となるものが好ましく、発泡体中で吸水後にゾル状となり発泡体から流動するものが好ましい。
【0083】
親水性ポリマーとしては、特に限定されず、天然、半合成又は合成の親水性ポリマーを用いることができる。なお、「半合成」とは、部分化学合成とも称され、例えば植物材料、微生物又は細胞培養物等の天然資源から単離された化合物を出発物質として使用する化学合成をいう。
【0084】
天然親水性ポリマーの具体例としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、及びデンプン(例えば、コメ、トウモロコシ、バレイショ並びにコムギのデンプン)等の植物系ポリマー;キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、サクシノグルカン、マンナン、ローカストビーンガム 、及びプルラン等の微生物系ポリマー;カゼイン、アルブミン、及びゼラチン等の動物系ポリマー等が挙げられる。ペクチンとしては柑橘系ペクチンが好ましい。
【0085】
半合成親水性ポリマーの具体例としては、例えば、デンプン系ポリマー(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系ポリマー(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム等);アルギン酸系ポリマー(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0086】
合成親水性ポリマーの具体例としては、ビニル系ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);アクリル系ポリマー(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0087】
上記の各親水性ポリマーは、1種を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。上記の各親水性ポリマーのうち、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ペクチン、カラヤガム、マンナン、グアガム、 ローカストビーンガム、及びゼラチンから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。上記各親水性ポリマーのうち、アルギン酸系ポリマーを用いる場合、本発明に係る発泡体が創傷面の止血作用を発揮することがある。
【0088】
(触媒)
本発明に係るポリオールとイソシアネートを効率よく反応させるため、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、ポリウレタン発泡体に用いられるものであればよく、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛、炭酸亜鉛等の金属系触媒を用いることができる。
【0089】
(その他)
本発明に係る発泡体は、親水性ポリマーと混合するその他の成分を含むことができる。例えば、抗菌性の付与を意図して銀化合物を含むことができる。吸水性の向上を期待して、セラミド等のスフィンゴ脂質、ヒアルロン酸、アスタキチン酸等の生理活性物質の成分を含むことができる。また、pH調整剤として無水クエン酸ナトリウム等の緩衝作用を示す化合物を含むこともできる。本発明に係る発泡体は、界面活性剤を含んでもよいが、界面活性剤を含まないことが好ましい。本発明に係る発泡体は、界面活性剤を含まなくても吸水するからである。また、本発明に係る発泡体は、界面活性剤を含まないことにより、皮膚刺激の低減をより図ることができる。
【0090】
本発明に係る発泡体は、滲出液等の水分を吸収すると、発泡体の表面がゾル化する。発泡体に含まれる親水性ポリマーが吸水してゾル化するためである。
【0091】
(基材)
本発明に係る発泡体に基材を加えてもよい。当該基材としては、市販の樹脂製フィルムを用いることができる。
【0092】
前記樹脂製フィルムとしては、例えば、ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリプロピレン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;シリコーンなどから選ばれるものを挙げることができる。これらは一種類で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0093】
(発泡体の製造方法)
本発明に係る実施形態の発泡体の製造方法について説明をする。
【0094】
まず、型を作製する。そして、その型に、少なくともポリオール、イソシアネート及び親水性ポリマー、触媒等を入れて、それらを混合した上で、加熱して、本発明に係る実施形態の発泡体を製造することができる。
【実施例
【0095】
以下、実施例に基づいて本発明に係る発泡体をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明に係る発泡体の代表的な実施例を示したものである。これにより本発明に係る発泡体の範囲が狭く解釈されることはない。
【0096】
<実施例1>
ポリオール37.8g、ポリイソシアネート5.4g、亜鉛系触媒31.8g、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム15.0gを混合し、型に入れ、110℃で30分間加熱して、発泡体1を作製した。
【0097】
<実施例2>
ポリオール25.2g、ポリイソシアネート3.6g、亜鉛系触媒1.2g、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム10.0gを混合し、型に入れ、90℃で60分間加熱して、発泡体2を作成した。
【0098】
[評価方法及び結果]
(ビデオマイクロスコープ写真の観察)
実施例1で作製された発泡体1の気泡構造及び実施例2で作製された発泡体2をビデオマイクロスコープで観察した。ビデオマイクロスコープによる観察結果を図7に示す。図7(a)は、発泡体1が備える第1領域部-1が有する第1の気泡構造-1のビデオマイクロスコープ写真である。図7(b)は、発泡体1が備える第2領域部-1が有する第2の気泡構造-1のビデオマイクロスコープ写真である。図8(a)は、発泡体2が備える第1領域部-2が有する第1の気泡構造-2のビデオマイクロスコープ写真である。図8(b)は、発泡体2が備える第2領域部-2が有する第2の気泡構造-2のビデオマイクロスコープ写真である。
【0099】
まず、図7について説明をする。図7(a)に示されるように、第1の気泡構造―1は、例えば連続気泡1~3から構成される第1の連続気泡構造-1を有する。なお、図7(a)に示されるように、第1の連続気泡構造-1には、連続気泡1~3以外の連続気泡も存在している。図7(b)に示されるように、第2の気泡構造―1は、例えば独立気泡1~3から構成される第2の独立気泡構造-1を有し、さらに、例えば連続気泡4から構成される第2の連続気泡構造-1を有する。なお、図7(b)に示されるように、第2の独立気泡構造-1には、独立気泡1~3以外の独立気泡も存在し、第2の連続気泡構造-1には、連続気泡4以外の連続気泡も存在している。
【0100】
図7に示されるように、第1の気泡構造-1に対する第1の連続気泡構造-1の割合が、第2の気泡構造-1に対する第2の連続気泡構造-1の割合(図7では気泡の個数の割合)よりも大きいことが理解できる。また、図7に示されるように、第1の気泡構造-1に対する第1の独立気泡構造-1の割合(図7(a)では独立気泡構造は観察されていない。)が、第2の気泡構造-1に対する第2の独立気泡構造-1の割合(図7では気泡の個数の割合)よりも小さいことが理解できる。
【0101】
次に、図8について説明をする。図8(a)に示されるように、第1の気泡構造―2は、例えば連続気泡5~7から構成される第1の連続気泡構造-2を有し、さらに、例えば独立気泡3から構成される第1の独立気泡構造-2を有する。なお、図8(a)に示されるように、第1の連続気泡構造-2には、連続気泡5~7以外の連続気泡も存在し、第1の独立気泡構造-2には、独立気泡3以外の独立気泡も存在している。図8(b)に示されるように、第2の気泡構造―2は、例えば独立気泡4~6から構成される第2の独立気泡構造-2を有し、さらに、例えば連続気泡8から構成される第2の連続気泡構造-2を有する。なお、図8(b)に示されるように、第2の独立気泡構造-2には、独立気泡4~6以外の独立気泡も存在し、第2の連続気泡構造-2には、連続気泡8以外の連続気泡も存在している。
【0102】
図8に示されるように、第1の気泡構造-2に対する第1の連続気泡構造-2の割合が、第2の気泡構造-2に対する第2の連続気泡構造-2の割合(図8では気泡の個数の割合)よりも大きいことが理解できる。また、図8に示されるように、第1の気泡構造-2に対する第1の独立気泡構造-2の割合が、第2の気泡構造-2に対する第2の独立気泡構造-2の割合(図8では気泡の個数の割合)よりも小さいことが理解できる。
【0103】
(吸水量の測定)
実施例1で作製された発泡体1及び実施例2で作製された発泡体2のそれぞれの発泡体から、厚みが0.3~1.4mm、直径30mmの円柱状の試験片を作製し、実施例1で作製された発泡体1の第1領域部及び第2領域部、並び実施例2で作製された発泡体2の第1領域部及び第2領域部のそれぞれの領域部の試験片の厚み(円柱の高さ)重量を測定した(当該重量を吸水前試験片重量1とする。)。当該試験片の円形の面は略平坦である。当該試験片を37℃の生理食塩水中に浸漬した。一定時間経過毎(1hr、24hr、48hr)に試験片を取り出し、試験片に付着した水分を拭取った後、重量を測定した(当該重量を吸水後試験片重量1とする。)。吸水量は下記式(1)により算出した。πは円周率である。発泡体1及び発泡体2のそれぞれの発泡体の吸水量の測定結果を下記の表1に示す。
【数1】
【0104】
(発泡体の厚みの測定)
実施例1で作製された発泡体1の第1領域部及び第2領域部、並びに実施例2で作製された発泡体2の第1領域部及び第2領域部のそれぞれの領域部の厚みをシックネスゲージで測定した。発泡体1及び発泡体2のそれぞれの発泡体の厚みの測定結果を下記の表1に示す。
【0105】
(粘着力の測定)
実施例1で作製された発泡体1の第1領域部及び第2領域部、並びに実施例2で作製された発泡体2の第1領域部及び第2領域部のそれぞれの領域部の粘着力をTACKINESS TESTER(RHESCA社製)で測定をした。条件は、23℃、impression speed:30mm/min、Press time:20sec、Test speed:600mm/min、Preload:10gfとした。発泡体1及び発泡体2のそれぞれの発泡体の粘着力の測定結果を下記の表1に示す。
【0106】
(みかけ比重の測定)
実施例1で作製された発泡体1の第1領域部及び第2領域部、並びに実施例2で作製された発泡体2の第1領域部及び第2領域部のそれぞれの領域部のみかけ比重を、検体を30mmφに抜き、重量、及び、厚さ(シックネスゲージにより測定)より算出した。発泡体1及び発泡体2のそれぞれの発泡体のみかけ比重の測定結果を下記の表1に示す。
【0107】
(粘弾性の測定)
実施例1で作製された発泡体1の第1領域部及び第2領域部、並びに実施例2で作製された発泡体2の第1領域部及び第2領域部のそれぞれの領域部の粘弾性をレオメーター(アントンパール社製)で測定、複素せん断弾性率の結果より比較をした。発泡体1及び発泡体2のそれぞれの発泡体の複素せん断弾性率の測定結果を下記の図9に示す。図9のグラフには、発泡体1の第1領域部及び第2領域部並びに発泡体2の第1領域部及び第2領域部のそれぞれについて、0.1Hz、1Hz、10Hz及び100Hzの複素弾性率の結果が示されている。なお、図9の縦軸は複素弾性率の値(Pa)を示す。
【0108】
(考察)
発泡体1及び発泡体2において、第1領域部は、第2領域部と比較して、比重は低かったが、粘弾性は高く、粘着力が低く、吸収速度が速かった。このことより、第1領域部では、滲出液等の水分処理能力が高く、適切な圧迫を加えられる。一方、第2領域部は、外部からの水分による吸水が少なく、粘着力がある為、汗や滲出液に対する耐久性が高い。さらに、柔軟性がある為、皮膚に物理的刺激が少ない。中央部(第1領域部)に吸水性が必要で、周囲(第2領域部)に固定力が必要な用途には最適であると考えられる。
【0109】
【表1】
【0110】
また、本発明は、以下のような構成を取ることができる。
[1]
第1領域部と第2領域部とを備え、
第1領域部の外周囲に第2領域部が配され、
該第1領域部が第1の気泡構造を有し、該第2領域部が第2の気泡構造を有し、
該第1の気泡構造と該第2の気泡構造とが互いに異なる構造である、発泡体。
[2]
前記第1領域部の厚さが前記第2領域部の厚さよりも厚い、[1]に記載の発泡体。
[3]
前記第1の気泡構造が連続気泡構造を有し、前記第2の気泡構造が独立気泡構造を有する、[1]又は[2]に記載の発泡体。
[4]
前記第1の気泡構造が第1の連続気泡構造を有し、
前記第2の気泡構造が第2の連続気泡構造を有し、
前記第1の気泡構造に対する前記第1の連続気泡構造の割合が、前記第2の気泡構造に対する前記第2の連続気泡構造の割合よりも大きい、[1]から[3]のいずれか1つに記載の発泡体。
[5]
前記第1の気泡構造が第1の独立気泡構造を有し、
前記第2の気泡構造が第2の独立気泡構造を有し、
前記第1の気泡構造に対する前記第1の独立気泡構造の割合が、前記第2の気泡構造に対する前記第2の独立気泡構造の割合よりも小さい、[1]から[4]のいずれか1つに記載の発泡体。
[6]
前記第1領域部及び/又は前記第2領域部が粘着性を有する、[1]から[5]のいずれか1項に記載の発泡体。
[7]
前記第1領域部が有する気泡の数が、前記第2領域部が有する気泡の数よりも多い、[1]から[6]のいずれか1つに記載の発泡体。
[8]
前記第1領域部が有する単位体積あたりの吸水量が、前記第2領域部が有する単位体積あたりの吸水量よりも大きい、[1]から[7]のいずれか1つに記載の発泡体。
[9]
前記第1領域部の比重が、前記第2領域部の比重よりも小さい、[1]から[8]のいずれか1項に記載の発泡体。
[10]
前記第1領域部の弾性率が、前記第2領域部の弾性率よりも大きい、[1]から[9]のいずれか1つに記載の発泡体。
[11]
前記第1領域部が前記発泡体の略中央部に配され、前記第2領域部が前記発泡体の周辺部に配される、[1]から[10]のいずれか1つに記載の発泡体。
[12]
親水性ポリマーを少なくとも含み、
前記第1領域部が含有する単位体積あたりの該親水性ポリマーの量が、前記第2領域部が含有する単位体積あたりの該親水性ポリマーの量よりも多い、[1]~[11]のいずれか1つに記載の発泡体。
【符号の説明】
【0111】
1(1-1、1-2-a、1-2-b、1-2-c、1-3-b、1-4-b-1、1-4-b-2)・・・発泡体、
2(2-1、2-2-a、2-2-b、2-2-c、2-3-b、2-4-b-1、2-4-b-2)・・・第1領域部、
3(3-1-1、3-1-2、3-2-a-1、3-2-a-2、3-2-b-1、3-2-b-2、3-2-c-1、3-2-c-2、3-3-b-1、3-3-b-2、3-4-b-1、3-4-b-2)・・・第2領域部、
4-3-a、4-3-b・・・創傷被覆材、
7-4-a、7-4-b・・・排泄物収容装具、
T(T-1-1、T-2-1、T-3-1、T-1-2-a、T-2-2-a、T-3-2-a、T-1-2-b、T-2-2-b、T-3-2-b、T-1-2-c、T-2-2-c、T-3-2-c)・・・皮膚接触面、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9