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特許7553760角度調節装置及び角度調節装置を備えた乗物用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】角度調節装置及び角度調節装置を備えた乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/235 20060101AFI20240911BHJP
   A47C 1/025 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B60N2/235
A47C1/025
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020001261
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021109486
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 昌男
(72)【発明者】
【氏名】立川 陽一
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-307182(JP,A)
【文献】特開2018-192921(JP,A)
【文献】特開2000-158986(JP,A)
【文献】特開2017-065579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0036570(US,A1)
【文献】独国特許発明第102009043140(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 1/02 - A47C 1/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間に介装され、前記第1部材に対して前記第2部材を回転可能に支持すると共に、前記第1部材に対して前記第2部材を任意の角度に維持可能な角度調節装置であって、
前記第1部材に結合される第1回転体と、
前記第1回転体に回転可能に支持されると共に、前記第2部材に結合される第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体及び前記第2回転体の両方に係合して前記第1回転体及び前記第2回転体の相対回転を規制するロック位置と、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方から離れ、前記第1回転体及び前記第2回転体の相対回転を可能にする解除位置との間で移動可能なロック部材と、
前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材と、
初期位置と操作位置との間で変位可能に前記第2回転体に設けられ、前記初期位置から前記操作位置に移動することによって、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ロック部材を前記解除位置に移動させる操作部と、
前記第2部材に回転可能に支持され、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が所定の第1角度範囲にあるときに前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持する第1当接部と、
前記第1部材に設けられ、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲にあるときに前記第1当接部に当接し、前記第1当接部を回転させる第2当接部とを有し、
前記第1当接部は、自身の回動軸から半径方向に延びた扇形のプレートを有し、
前記プレートの回動軸は、前記操作部の回動軸と平行に配置され、
前記プレートは、前記プレートの回動軸を中心とした円弧部と、前記プレートの半径方向に延びる一対の側縁部とを有し
前記操作部は、前記操作部の回動軸と平行に延びる当接ピンを有し、
前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲にあるときに、前記円弧部が前記当接ピンに当接し、
前記プレートの前記円弧部が前記当接ピンに当接した状態において、前記操作部が前記操作位置に維持されると共に、前記円弧部が前記当接ピンに対して摺動することによって前記第1部材に対する前記第2部材の回転阻害されない角度調節装置。
【請求項2】
前記第2当接部と前記側縁部との当接部は、前記当接ピンと前記円弧部との当接部よりも前記プレートの回動軸側に配置されている請求項1に記載の角度調節装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記初期位置と前記操作位置との間で回動可能に設けられ、
前記第1当接部は、前記操作部から離れた離間位置と前記操作部を前記操作位置に押圧可能な押圧位置との間で回動可能に前記第2部材に設けられ、
前記第2当接部は、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲にあるときに前記第1当接部に当接し、前記第1当接部を前記押圧位置側に押す請求項1に記載の角度調節装置。
【請求項4】
前記第1当接部を前記離間位置側に付勢する第2付勢部材を有する請求項3に記載の角度調節装置。
【請求項5】
前記第1回転体又は前記第2回転体は、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲と異なる角度範囲を含む第2角度範囲にあるときに、前記ロック部材に当接して前記ロック部材を前記解除位置に維持する規制部を有する請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載の角度調節装置。
【請求項6】
前記操作部は、
前記第1回転体及び前記第2回転体の間に配置され、前記ロック部材を前記ロック位置に押す第1回転位置と、前記ロック位置を前記解除位置に押す第2回転位置との間で回転可能なカムと、
前記カムの回転軸に沿って延び、前記第2回転体の外方に突出した第1シャフトと、
前記第1シャフトの先端に設けられ、前記第1シャフトの径方向に延びる操作レバーとを有し、
前記プレートは前記操作レバーに当接する請求項1に記載の角度調節装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の角度調節装置を備え、
前記第1部材はフロアに設けられたベース、又は前記フロアに設けられたシートクッションフレームであり、
前記第2部材はシートバックフレームである乗物用シート。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の角度調節装置を備え、
前記第1部材はフロアにスライド装置を介して設けられたベースであり、
前記第2部材はシートバックフレームである乗物用シート。
【請求項9】
前記シートバックフレームが、前記フロアに対して所定の前傾状態にあるときに、前記第1当接部が前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持する請求項7又は請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シートバックフレームが、前記フロアに対して前側への回動限界位置にあるときに、前記第1当接部が前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持する請求項9に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記第1部材は、前記シートバックフレーム側に突出したストッパを有し、
前記シートバックフレームは、前記ストッパに当接することによって前記シートバックフレームの後側への回動限界位置を定める凸部を有し、
前記ストッパは、前記シートバックフレームの回転軸に沿った方向から見て前記シートバックフレームと重なりを有するように前記第1部材に配置されている請求項7~請求項10のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項12】
前記ストッパ及び前記凸部は、前記シートバックフレームが起立位置にあるときに、前記シートバックフレームの回転軸を中心とした径方向において前記第1当接部の回動軸よりも外方かつ下方に配置されている請求項11に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度調節装置及び角度調節装置を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗物用シートのシートクッションとシートバックとの角度を調節するための角度調節装置が開示されている。角度調節装置は、シートクッションに結合されるベースプレートと、ベースプレートに回転可能に支持されると共に、シートクッションに結合されるギヤプレートと、ベースプレートとギヤプレートとの間に設けられ、ベースプレート及びギヤプレートの両方に係合してベースプレート及びギヤプレートの相対回転を規制するロック位置と、ベースプレート及びギヤプレートの一方から離れ、ベースプレート及びギヤプレートの相対回転を可能にする解除位置との間で移動可能なロックギヤと、初期位置と操作位置との間で変位可能にベースプレートに設けられ、初期位置から操作位置に移動することによって、ロックギヤの解除位置への移動を許容するカムと、カムを初期位置に付勢するばねと、カムに結合された操作レバーとを有する。使用者が操作レバーを操作するときに、ロックギヤがロック位置から解除位置に移動し、ベースプレート及びギヤプレートの相対回転が回能になる。
【0003】
また、ロックギヤは突起部を有し、ギヤプレートは突起部支持部を有する。ベースプレートに対するギヤプレートの角度が所定の角度範囲にあるとき、突起部は突起部支持部と係合してロック位置への移動が規制される。その結果、角度調節装置は、ベースプレートに対するギヤプレートの角度が所定の角度範囲にあるときロックが解除された状態に維持される。これにより、例えばシートクッションに対してシートバックが所定の前傾状態にあるときに、角度調節装置はロックが解除された状態となり、シートバックの傾動を容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-192921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る角度調節装置は、ロックが解除された状態に維持される角度範囲を変更するために、角度調節装置の内部の突起部支持部の形状を変更する必要がある。そのため、特許文献1に係る角度調節装置では、ロックが解除された状態に維持される角度範囲を変更することが困難である。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、角度調節装置において、ロックが解除された状態に維持される角度範囲の変更を容易にすることを課題とする。また、ロックが解除された状態に維持される角度範囲の変更が容易な角度調節装置を備えた乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、第1部材(18)と第2部材(21)との間に介装され、前記第1部材に対して前記第2部材を回転可能に支持すると共に、前記第1部材に対して前記第2部材を任意の角度に維持可能な角度調節装置(14)であって、前記第1部材に結合される第1回転体(41)と、前記第1回転体に回転可能に支持されると共に、前記第2部材に結合される第2回転体(42)と、前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体及び前記第2回転体の両方に係合して前記第1回転体及び前記第2回転体の相対回転を規制するロック位置と、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方から離れ、前記第1回転体及び前記第2回転体の相対回転を可能にする解除位置との間で移動可能なロック部材(43)と、前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材(44)と、初期位置と操作位置との間で変位可能に前記第2回転体に設けられ、前記初期位置から前記操作位置に移動することによって、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ロック部材を前記解除位置に移動させる操作部(45)と、前記第1部材又は前記第2部材に設けられ、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が所定の第1角度範囲にあるときに前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持する第1当接部(71)とを有する。
【0008】
この態様によれば、第1部材に対する第2部材の角度が第1角度範囲にあるときに操作部が第1当接部に当接して操作位置に維持され、ロック部材が解除位置に維持される。第1当接部は、第1部材又は第2部材に設けられる部材であり、取り付け及び変更が容易である。そのため、角度調節装置において、ロックが解除された状態に維持される角度範囲の変更を容易にすることができる。
【0009】
上記の態様において、前記操作部は、前記初期位置と前記操作位置との間で回動可能に設けられ、前記第1当接部は、前記操作部から離れた離間位置と前記操作部を前記操作位置に押圧可能な押圧位置との間で回動可能に前記第2部材に設けられ、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲にあるときに前記第1当接部に当接し、前記第1当接部を前記押圧位置側に押す第2当接部(75)とを有するとよい。
【0010】
この態様によれば、操作部及び第1当接部の少なくとも一方のサイズを小さくすることができる。
【0011】
上記の態様において、前記第1当接部は、自身の回動軸から半径方向に延びた扇形のプレート(71A)を有し、前記プレートの回動軸(B)は、前記操作部の回動軸(A)と平行に配置され、前記プレートの半径方向に延びる側縁部(71D)が前記第2当接部に当接し、前記プレートの円弧部(71C)が前記操作部に当接した状態において、前記操作部が前記操作位置に維持されるとよい。
【0012】
この態様によれば、第1当接部が第2当接部に当接した状態で、第1当接部が第2部材に対して回転することによって、第2部材は第1部材に対して回転することができる。また、第1当接部が円弧部において操作部と摺接するため、第1当接部は操作部と摺接した状態で第2部材に対して回転することができる。これにより、第1当接部が操作部に当接した状態を維持しつつ、第2部材は第1部材に対して回転することができる。
【0013】
上記の態様において、前記第1当接部を前記離間位置側に付勢する第2付勢部材(73)を有するとよい。
【0014】
この態様によれば、第1当接部の位置が定まり、第1当接部の振動及び第1当接部と他の部材との衝突を抑制することができる。
【0015】
上記の態様において、記第1回転体又は前記第2回転体は、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲と異なる角度範囲を含む第2角度範囲にあるときに、前記ロック部材に当接して前記ロック部材を解除位置に維持する規制部を有するとよい。
【0016】
この態様によれば、ロックが解除される角度の範囲を延長することができる。
【0017】
上記の態様において、前記操作部は、前記第1回転体及び前記第2回転体の間に配置され、前記ロック部材を前記ロック位置に押す第1回転位置と、前記ロック位置の前記解除位置に押す第2回転位置との間で回転可能なカム(47)と、前記カムの回転軸に沿って延び、前記第2回転体の外方に突出した第1シャフト(48)と、前記第1シャフトの先端に設けられ、前記第1シャフトの径方向に延びる操作レバー(49)とを有し、前記プレートは前記操作レバーに当接するとよい。
【0018】
この態様によれば、プレート及び操作レバーは第1回転体および第2回転体の外方に配置されるため、角度調節装置の構造を簡素にすることができる。
【0019】
上記の態様において、前記操作レバーは、前記第1シャフトと平行に延びる当接ピン(49B)を有し、前記第1当接部は、前記当接ピンにおいて前記円弧部に摺接するとよい。
【0020】
この態様によれば、第1当接部と操作レバーとの当接部の構造を簡素にすることができる。
【0021】
本発明の他の態様は、上記の角度調節装置(14)を備え、前記第1部材はフロア(15)に設けられたベース(18)、又は前記フロアに設けられたシートクッションフレームであり、前記第2部材はシートバックフレーム(5)である乗物用シート(1)である。
【0022】
この態様によれば、乗物用シートにおいて、シートクッションフレームに対するシートバックの角度が所定の角度範囲にあるときにロックを解除された状態に維持することができる。
【0023】
上記の態様において、前記シートバックフレームが、前記フロアに対して所定の前傾状態にあるときに、前記第1当接部が前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持するとよい。
【0024】
この態様によれば、乗物用シートにおいて、シートバックが前傾状態にあるときにロックを解除された状態に維持することができる。
【0025】
上記の態様において、前記シートバックフレームが、前記フロアに対して前側への回動限界位置にあるときに、前記第1当接部が前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持するとよい。
【0026】
この態様によれば、乗物用シートにおいて、シートバックが前側への回転限界位置にあるときにロックを解除された状態に維持することができる。
【0027】
上記の態様において、前記第1部材は、前記シートバックフレーム側に突出したストッパ(81)を有し、前記シートバックフレームは、前記ストッパに当接することによって前記シートバックフレームの後側への回動限界位置を定める凸部(82)を有し、前記ストッパは、前記シートバックフレームの回転軸に沿った方向から見て前記シートバックフレームと重なりを有するように前記第1部材に配置されているとよい。
【0028】
この態様によれば、ストッパが第1部材と第2部材との間に配置されるため、第1部材及び第2部材の結合構造を小型化することができる。これにより、第1部材及び第2部材の結合構造を覆うカバーを小型化することができる。
【0029】
上記の態様において、前記ストッパ及び前記凸部は、前記シートバックフレームが起立位置にあるときに、前記シートバックフレームの回転軸を中心とした径方向において前記第1当接部の回動軸よりも外方かつ下方に配置されているとよい。
【0030】
この態様によれば、ストッパがシートバックフレームの回転軸から離れて配置されるため、ストッパと凸部との当接によってシートバックフレームが所定の位置に確実に維持される。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、第1部材(18)と第2部材(21)との間に介装され、前記第1部材に対して前記第2部材を回転可能に支持すると共に、前記第1部材に対して前記第2部材を任意の角度に維持可能な角度調節装置(14)であって、前記第1部材に結合される第1回転体(41)と、前記第1回転体に回転可能に支持されると共に、前記第2部材に結合される第2回転体(42)と、前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体及び前記第2回転体の両方に係合して前記第1回転体及び前記第2回転体の相対回転を規制するロック位置と、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方から離れ、前記第1回転体及び前記第2回転体の相対回転を可能にする解除位置との間で移動可能なロック部材(43)と、前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材(44)と、初期位置と操作位置との間で変位可能に前記第2回転体に設けられ、前記初期位置から前記操作位置に移動することによって、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ロック部材を前記解除位置に移動させる操作部(45)と、前記第1部材又は前記第2部材に設けられ、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が所定の第1角度範囲にあるときに前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持する第1当接部(71)とを有する。この態様によれば、第1部材に対する第2部材の角度が第1角度範囲にあるときに操作部が第1当接部に当接して操作位置に維持され、ロック部材が解除位置に維持される。第1当接部は、第1部材又は第2部材に設けられる部材であり、取り付け及び変更が容易である。そのため、角度調節装置において、ロックが解除された状態に維持される角度範囲の変更を容易にすることができる。
【0032】
前記操作部は、前記初期位置と前記操作位置との間で回動可能に設けられ、前記第1当接部は、前記操作部から離れた離間位置と前記操作部を前記操作位置に押圧可能な押圧位置との間で回動可能に前記第2部材に設けられ、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲にあるときに前記第1当接部に当接し、前記第1当接部を前記押圧位置側に押す第2当接部(75)とを有するとよい。この態様によれば、操作部及び第1当接部の少なくとも一方のサイズを小さくすることができる。
【0033】
前記第1当接部は、自身の回動軸から半径方向に延びた扇形のプレート(71A)を有し、前記プレートの回動軸(B)は、前記操作部の回動軸(A)と平行に配置され、前記プレートの半径方向に延びる側縁部(71D)が前記第2当接部に当接し、前記プレートの円弧部(71C)が前記操作部に当接した状態において、前記操作部が前記操作位置に維持されるとよい。この態様によれば、第1当接部が第2当接部に当接した状態で、第1当接部が第2部材に対して回転することによって、第2部材は第1部材に対して回転することができる。また、第1当接部が円弧部において操作部と摺接するため、第1当接部は操作部と摺接した状態で第2部材に対して回転することができる。これにより、第1当接部が操作部に当接した状態を維持しつつ、第2部材は第1部材に対して回転することができる。
【0034】
前記第1当接部を前記離間位置側に付勢する第2付勢部材(73)を有するとよい。この態様によれば、第1当接部の位置が定まり、第1当接部の振動及び第1当接部と他の部材との衝突を抑制することができる。
【0035】
記第1回転体又は前記第2回転体は、前記第1部材に対する前記第2部材の角度が前記第1角度範囲と異なる角度範囲を含む第2角度範囲にあるときに、前記ロック部材に当接して前記ロック部材を解除位置に維持する規制部を有するとよい。この態様によれば、ロックが解除される角度の範囲を延長することができる。
【0036】
前記操作部は、前記第1回転体及び前記第2回転体の間に配置され、前記ロック部材を前記ロック位置に押す第1回転位置と、前記ロック位置の前記解除位置に押す第2回転位置との間で回転可能なカム(47)と、前記カムの回転軸に沿って延び、前記第2回転体の外方に突出した第1シャフト(48)と、前記第1シャフトの先端に設けられ、前記第1シャフトの径方向に延びる操作レバー(49)とを有し、前記プレートは前記操作レバーに当接するとよい。この態様によれば、プレート及び操作レバーは第1回転体および第2回転体の外方に配置されるため、角度調節装置の構造を簡素にすることができる。
【0037】
前記操作レバーは、前記第1シャフトと平行に延びる当接ピン(49B)を有し、前記第1当接部は、前記当接ピンにおいて前記円弧部に摺接するとよい。この態様によれば、第1当接部と操作レバーとの当接部の構造を簡素にすることができる。
【0038】
上記の角度調節装置(14)を備え、前記第1部材はフロア(15)に設けられたベース(18)、又は前記フロアに設けられたシートクッションフレームであり、前記第2部材はシートバックフレーム(5)である乗物用シート(1)である。この態様によれば、乗物用シートにおいて、シートクッションフレームに対するシートバックの角度が所定の角度範囲にあるときにロックを解除された状態に維持することができる。
【0039】
前記シートバックフレームが、前記フロアに対して所定の前傾状態にあるときに、前記第1当接部が前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持するとよい。この態様によれば、乗物用シートにおいて、シートバックが前傾状態にあるときにロックを解除された状態に維持することができる。
【0040】
前記シートバックフレームが、前記フロアに対して前側への回動限界位置にあるときに、前記第1当接部が前記操作部に当接して前記操作部を前記操作位置に維持するとよい。この態様によれば、乗物用シートにおいて、シートバックが前側への回転限界位置にあるときにロックを解除された状態に維持することができる。
【0041】
前記第1部材は、前記シートバックフレーム側に突出したストッパ(81)を有し、前記シートバックフレームは、前記ストッパに当接することによって前記シートバックフレームの後側への回動限界位置を定める凸部(82)を有し、前記ストッパは、前記シートバックフレームの回転軸に沿った方向から見て前記シートバックフレームと重なりを有するように前記第1部材に配置されているとよい。この態様によれば、ストッパが第1部材と第2部材との間に配置されるため、第1部材及び第2部材の結合構造を小型化することができる。これにより、第1部材及び第2部材の結合構造を覆うカバーを小型化することができる。
【0042】
前記ストッパ及び前記凸部は、前記シートバックフレームが起立位置にあるときに、前記シートバックフレームの回転軸を中心とした径方向において前記第1当接部の回動軸よりも外方かつ下方に配置されているとよい。この態様によれば、ストッパがシートバックフレームの回転軸から離れて配置されるため、ストッパと凸部との当接によってシートバックフレームが所定の位置に確実に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施形態に係るシートの斜視図
図2】シートのフレームの斜視図
図3】シートのフレームの左側面図
図4】リクライニング装置の分解斜視図
図5】第1回転体の内面側を示す平面図
図6】ロック状態におけるリクライニング装置の内部構造を示す説明図
図7】ロック解除状態におけるリクライニング装置の内部構造を示す説明図
図8】起立状態におけるリクライニング装置の側面図
図9】第1当接部と第2当接部とが当接した前傾状態を示すリクライニング装置の側面図
図10】第1当接部によって操作部が操作位置に維持された前傾状態を示すリクライニング装置の側面図
図11】リクライニング装置の斜視図
図12】変形例に係るリクライニング装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。乗物用のシートは、例えば自動車の2列目又は3列目等の後部座席に適用されるシートである。
【0045】
図1及び図2に示すように、シート1は、シートクッション2と、シートバック3とを有する。シートクッション2は、シートクッションフレーム5と、シートクッションフレーム5に支持されたパッド6と、パッド6を覆う表皮材7とを有する。シートバック3は、シートバックフレーム9と、シートバックフレーム9に支持されたパッド10と、パッド10を覆う表皮材11とを有する。
【0046】
シートバックフレーム9は、スライド装置13及びリクライニング装置14を介して自動車のフロア15に取り付けられている。これにより、シートバックフレーム9は、フロア15に対してスライド可能、かつスライド装置13に対して回動(傾倒)可能になっている。シートクッションフレーム5は、チップアップ装置16を介してシートバックフレーム9に回動可能に取り付けられている。
【0047】
図3に示すように、フロア15は、スライド装置13が設置される高位部15Aと、高位部15Aの前側かつ下方に形成された低位部15Bとを有する。スライド装置13は、高位部15Aに設けられ、前後に延びる左右一対のロアレール13Aと、ロアレール13Aのそれぞれに変位可能に支持された左右一対のアッパレール13Bとを有する。左右のアッパレール13Bのそれぞれの上部には、ベース18が設けられている。図2に示すように、左右のベース18は、左右に延びる連結部材19によって互いに連結されている。左右のベース18は、それぞれ金属板をプレス成形等することによって形成されている。連結部材19は、左右の端部において対応するベース18に結合されている。
【0048】
図2に示すように、シートバックフレーム9は、上下に延びる左右一対のバックサイドメンバ21と、左右に延び、左右のバックサイドメンバ21の上端同士を連結するアッパメンバ22と、アッパメンバ22の下方において左右に延び、左右のバックサイドメンバ21の中間部端同士を連結するロアメンバ23とを有する。本実施形態では、左右のバックサイドメンバ21の上部、アッパメンバ22、及びロアメンバ23は、縦長の長方形の枠状に形成されたパイプフレームによって形成されている。左右のバックサイドメンバ21の下部は、板金によって形成されている。
【0049】
左右のバックサイドメンバ21の下部は、左右方向を向く側面を有する。左右のベース18の後部は、左右方向を向く側面を有する。各バックサイドメンバ21の下部は、左右において対応するベース18の後部とリクライニング装置14を介して左右方向に対向している。各バックサイドメンバ21の下部は、左右において対応するベース18の後部とリクライニング装置14を介して回転可能に連結されている。左右のバックサイドメンバ21の回転軸は、左右に延び、互いに同軸に配置されている。
【0050】
シートクッションフレーム5は、前後に延びる左右のクッションサイドメンバ26と、左右に延び、左右のクッションサイドメンバ26の前端間を連結するフロントメンバ27と、左右に延び、左右のクッションサイドメンバ26の後部間を連結するリヤメンバ28とを有している。左右のクッションサイドメンバ26の後端部は、左右において対応するバックサイドメンバ21に回動可能に取り付けられている。左右のクッションサイドメンバ26の回動軸は、それぞれ左右に延び、互いに同軸に配置されている。
【0051】
左右のベース18は、前後方向における中間部に上方に突出した支持部31を有する。左右のクッションサイドメンバ26の下部は、互いに近づく方向に延出した延出部を有する。延出部の下部が左右において対応するベース18の支持部の上面に当接することによって、シートクッション2は左右のベース18に下方から支持され、左右のクッションサイドメンバ26が略水平に延在した着座位置に配置される。
【0052】
左右のリクライニング装置14は同様の構成であるため、以下に左側のリクライニング装置14について説明する。リクライニング装置14は、第1部材としてのベース18と第2部材としてのバックサイドメンバ21の下端の間に介装される。リクライニング装置14は、ベース18に対してバックサイドメンバ21を回転可能に支持すると共に、ベース18に対してバックサイドメンバ21を任意の角度に維持可能な角度調節装置である。
【0053】
図4に示すように、リクライニング装置14は、ベース18に結合される第1回転体41と、第1回転体41に回転可能に支持されると共に、バックサイドメンバ21に結合される第2回転体42と、第1回転体41と第2回転体42との間に設けられ、第1回転体41及び第2回転体42の両方に係合して第1回転体41及び第2回転体42の相対回転を規制するロック位置と、第1回転体41及び第2回転体42の一方から離れ、第1回転体41及び第2回転体42の相対回転を可能にする解除位置との間で移動可能なロック部材43と、ロック部材43をロック位置に向けて付勢する付勢部材44と、初期位置と操作位置との間で変位可能に第2回転体42に設けられ、初期位置から操作位置に移動することによって、付勢部材44の付勢力に抗してロック部材43を解除位置に移動させる操作部45とを有する。
【0054】
図4及び図8に示すように、操作部45は、第1回転体41及び第2回転体42の間に配置され、ロック部材43をロック位置に押す第1回転位置と、ロック位置の解除位置への移動を許容する第2回転位置との間で回転可能なカム47と、カム47の回転軸に沿って延び、第2回転体42の外方に突出した第1シャフト48と、第1シャフト48の先端に設けられ、第1シャフト48の径方向に延びる操作レバー49とを有する。本実施形態では、カム47は、中央カム51と、カムプレート52とを含む。
【0055】
図4及び図5に示すように、第1回転体41は、円板状の本体部41Aと、本体部41Aの縁に沿って突設された円筒形の縁壁41Bとを有する。縁壁41Bの内周面には、環状の内歯41Cが形成されている。第2回転体42は、円板状に形成されている。第2回転体42は、縁壁41Bの内側に第1回転体41と同軸に回転可能に受容される。第1回転体41及び第2回転体42の外周部は、筒状のカバー54に受容されている。カバー54は、第1回転体41に対する第2回転体42の軸線方向への相対移動を規制する。カバー54によって、第2回転体42は第1回転体41に組み付けられる。
【0056】
図4及び図6に示すように、第2回転体42は、その第1回転体41の本体部41Aと対向する面に、径方向に延びる4つのガイド溝42Aを有する。4つのガイド溝42Aは、90°間隔で配置されている。各ガイド溝42Aには、ロック部材43が径方向にスライド移動可能に配置される。第2回転体42は、その第1回転体41の本体部41Aと対向する面の中央に、中央カム51を回転可能に受容する中央溝42Cを有する。中央溝42Cは、各ガイド溝42Aと接続している。
【0057】
各ガイド溝42Aに配置されるロック部材43は、第2回転体42の径方向に沿って延び、その径方向外端にギヤ部43Aを有し、その径方向内側にカム面43Bを有する。中央溝42Cに配置される中央カム51は、板カムであり、第2回転体42と同軸に配置されている。中央カム51は、外周部にカム面51Aを有し、カム面51Aにおいて各ロック部材43のカム面43Bと摺接している。中央カム51は、第1回転位置と第2回転位置との間で回転可能である。中央カム51が第1回転位置にあるとき、各ロック部材43は中央カム51に径方向外方に押されてロック位置に位置する。各ロック部材43がロック位置にあるとき、各ロック部材43のギヤ部43Aは第1回転体41の内歯41Cと噛み合う。中央カム51が第2回転位置にあるとき、中央カム51は各ロック部材43のカム47面から離れ、各ロック部材43はロック位置に対して径方向内方に位置する解除位置に位置することができる。各ロック部材43が解除位置にあるとき、各ロック部材43のギヤ部43Aは第1回転体41の内歯41Cから離れる。
【0058】
カムプレート52は、円板状に形成され、第1回転体41の本体部41Aと第2回転体42との間に配置されている。カムプレート52は、中央カム51と一体に回転するように、中央カム51に結合されている。本実施形態では、カムプレート52は第1シャフト48を介して中央カム51に結合され、カムプレート52、シャフト、及び中央カム51は一体に回転する。各ロック部材43は、カムプレート52側の面に凸部43Cを有する。カムプレート52は各凸部43Cを受容する複数のカム孔52Aを有する。カムプレート52は、中央カム51と共に第1回転位置及び第2回転位置の間で回転可能である。カムプレート52が第1回転位置にあるとき、各カム孔52Aは対応する凸部43Cのロック位置への移動を許容し、各ロック部材43はロック位置に位置することができる。カムプレート52が第2回転位置にあるとき、各カム孔52Aは対応する凸部43Cのロック位置への移動を規制し、各ロック部材43は解除位置に配置される。
【0059】
中央カム51及びカムプレート52によって、中央カム51及びカムプレート52が第1回転位置にあるとき、各ロック部材43はロック位置に配置され、中央カム51及びカムプレート52が第2回転位置にあるとき、各ロック部材43は解除位置に配置される。
【0060】
本実施形態では、付勢部材44は、2つの捩りばねである。各付勢部材44は、第2回転体42に係止された一端と、中央カム51に係止された他端とを有する。各付勢部材44は、第2回転体42に対して中央カム51を第1回転位置に付勢する。これにより、各付勢部材44は、中央カム51を介して各付勢部材44をロック位置に付勢する。
【0061】
図8に示すように、第1シャフト48は、第2回転体42の中央及び、バックサイドメンバ21を貫通し、バックサイドメンバ21の外方に突出する。操作レバー49は第1シャフト48の外端から径方向に延びている。操作レバー49は初期位置と操作位置との間で回転可能である。操作レバー49が初期位置にあるとき中央カム51及びカムプレート52は第1回転位置にある。操作レバー49が操作位置にあるとき中央カム51及びカムプレート52は第2回転位置にある。
【0062】
図5に示すように、第1回転体41の本体部41Aの第2回転体42側の面は、規制壁41D(規制部)が設けられている。本実施形態では、規制壁41Dは一対設けられている。規制壁41Dは、第1回転体41の中心を基準とした円弧状に形成され所定の角度範囲を有する。一対の規制壁41Dは、内歯41Cよりも径方向内側に配置されている。一対の規制壁41Dは、第1回転体41の中心を基準とした回転対称位置に設けられている。第1回転体41に対する第2回転体42の回転角が所定の角度範囲(以下、規制角度範囲(第2角度範囲)という)にあるときに、各規制壁41Dは対応する凸部43Cの径方向外方に配置され、ロック部材43のロック位置への移動を規制する。すなわち、凸部43Cが規制壁41Dと当接することによって、ロック部材43は解除位置に維持される。2つのロック部材43が解除位置に維持されることで、中央カム51及びカムプレート52が第2回転位置に維持され、残りの2つのロック部材43も解除位置に維持される。規制角度範囲は、ベースサイドに対するバックサイドメンバ21の起立位置より前側への回転に対応して設定されるとよい。
【0063】
図6に示すように、リクライニング装置14は、初期状態において、付勢部材44の付勢力によって、中央カム51及びカムプレート52が第1回転位置に位置し、ロック部材43がロック位置に位置し、操作レバー49が初期位置に位置する。この状態では、ロック部材43のギヤ部43Aが第1回転体41の内歯41Cに噛み合うことによって、第1回転体41と第2回転体42との相対回転がロックされる。図7に示すように、操作レバー49が付勢部材44の付勢力に抗して使用者又は他の構造体に押され、操作位置に移動すると、中央カム51及びカムプレート52が第2回転位置に移動し、ロック部材43が解除位置に移動する。この状態では、ロック部材43のギヤ部43Aが第1回転体41の内歯41Cから離れ、第1回転体41と第2回転体42との相対回転が可能になる。また、第1回転体41に対する第2回転体42の回転角が規制角度範囲にあるとき、2つのロック部材43の凸部43Cが径方向において規制壁41Dと当接する。これにより、各ロック部材43は解除位置に維持され、中央カム51及びカムプレート52が第1回転位置に維持され、操作レバー49が操作位置に維持される。この状態では、ロック部材43のギヤ部43Aが第1回転体41の内歯41Cから離れ、第1回転体41と第2回転体42との相対回転が可能になる。
【0064】
図8に示すように、第1回転体41は、ベース18の後端に結合されている。第2回転体42は、バックサイドメンバ21の下端に結合されている。リクライニング装置14は、ベース18及びバックサイドメンバ21に結合された状態で、回転軸が左右方向に延在する。バックサイドメンバ21は、その下端部のリクライニング装置14側と相反する側面にブラケット61を有する。ブラケット61は板状に形成され、バックサイドメンバ21に沿って配置されている。ブラケット61は、バックサイドメンバ21のリクライニング装置14側と相反する外側面を構成する。リクライニング装置14の第1シャフト48は、バックサイドメンバ21を貫通して、バックサイドメンバ21のベース18側と相反する外側面、すなわちブラケット61から突出している。
【0065】
本実施形態では、ベース18に対してバックサイドメンバ21が起立位置にあるときに、初期位置にある操作レバー49は第1シャフト48から前方かつ上方に延びている。他の実施形態では、ベース18に対してバックサイドメンバ21が起立位置にあるときに、操作レバー49は第1シャフト48から前方に水平に延びてもよく、前方かつ下方に傾斜して延びてもよい。操作レバー49の使用位置は、初期位置に対してバックサイドメンバ21の後傾回転と同じ回転方向に位置する。図8において、シートバック3の後傾回転の方向は時計回り方向であり、シートバック3の前傾回転の方向は反時計回り方向である。
【0066】
操作レバー49は、コントロールケーブル63によって操作入力装置65に接続されている。図1に示すように、操作入力装置65は、使用者が操作するための入力装置であり、例えばシートバック3の上端の肩部に設けられた操作ノブであってよい。他の実施形態では、操作入力装置65は、シートバック3から延出したストラップであってもよい。乗員は操作入力装置65を操作することによって、操作レバー49を初期位置から操作位置に回転させることができる。
【0067】
図8に示すように、ブラケット61には、第1当接部71が設けられている。第1当接部71は、操作レバー49の回転軸Aと平行に配置された回転軸Bを中心として回転可能にブラケット61に支持されている。第1当接部71は、自身の回転軸Bから半径方向に延びた扇形のプレート71Aを有する。プレート71Aは、ブラケット61に突設された第2シャフト71Bに回転可能に支持されているとよい。第2シャフト71Bは、第1シャフト48と平行に延び、第1シャフト48よりも短く設定されている。プレート71Aは、回転軸Bを中心とした円弧部71Cと、回転軸Bから円弧部71Cに半径方向に延びる一対の側縁部71Dとを有する。
【0068】
操作レバー49は、第1シャフト48から径方向に延びる板状の本体部49Aと、本体部49Aの先端部から第1シャフト48と平行にバックサイドメンバ21及び第2回転体42側に延びる当接ピン49Bとを有する。当接ピン49Bは、円柱状に形成されているとよい。
【0069】
第1当接部71のプレート71Aは、当接ピン49Bから離れた離間位置と、当接ピン49Bを押圧可能な押圧位置との間で回転軸Bを中心として回動する。ブラケット61は、プレート71Aの回動位置を規制するストッパ61Aを有する。プレート71Aがストッパ61Aに当接しているとき、プレート71Aは操作レバー49の位置に関わらず当接ピン49Bから離れている。すなわち、プレート71Aは離間位置にある。プレート71Aとブラケット61の間には、プレート71Aをストッパ61A側(離間位置側)に付勢する付勢部材73が設けられている。付勢部材73は、第2シャフト71Bの周囲に設けられたねじりコイルばね等のばねであるとよい。付勢部材73によって、プレート71Aの位置が定まるため、プレート71Aの振動及びプレート71Aと他の部材との衝突が抑制される。
【0070】
図8に示すように、回転軸Aに沿った方向から見て、バックサイドメンバ21の下端は回転軸Aを中心とした半円形に形成されている。プレート71Aは、回転軸Aに沿った方向から見て、バックサイドメンバ21の下端の外周縁よりも回転軸Aの径方向外方に突出している。ベース18には、回転軸Aと平行にバックサイドメンバ21側に突出した第2当接部75が設けられている。本実施形態では、第2当接部75は、回転軸Aと平行に延びる円柱状のピンである。ベース18に対するバックサイドメンバ21の角度が所定の角度範囲にあるとき、第2当接部75は第1当接部71のプレート71Aに当接し、プレート71Aを押圧位置側に押す。第2当接部75はプレート71Aの側縁部71Dに当接し、プレート71Aを回転軸B周りに回転させる。
【0071】
図11に示すように、ベース18は、バックサイドメンバ21側に突出したストッパ81を有する。ストッパ81は、例えば樹脂等から形成されたブロックであり、ねじ等の締結部材によってベース18のバックサイドメンバ21側の側面に固定されているとよい。バックサイドメンバ21は、ストッパ81に当接することによってシートバックフレーム9の後側への回動限界位置を定める凸部82を有する。凸部82は、バックサイドメンバ21と一体に形成されているとよい。凸部82は、バックサイドメンバ21の下端部の外周縁から回転軸Aと平行にベース18側に延びているとよい。ストッパ81は、回転軸Bに沿った方向から見てバックサイドメンバ21と重なりを有するようにベース18に配置されているとよい。ストッパ81がベース18とバックサイドメンバ21との間に配置されるため、ベース18及びバックサイドメンバ21の結合構造を小型化することができる。これにより、ベース18及びバックサイドメンバ21の結合構造を覆うカバーを小型化することができる。
【0072】
ストッパ81及び凸部82は、シートバックフレーム9が起立位置にあるときに、回転軸Aを中心とした径方向において第1当接部71の回動軸Bよりも外方かつ下方に配置されているとよい。ストッパ81がバックサイドメンバ21の回転軸Bから離れて配置されるため、ストッパ81と凸部82との当接によってシートバックフレーム9が所定の位置に確実に維持される。
【0073】
以上のように構成したリクライニング装置14及びシート1の作動及び効果について説明する。図8は、所定の起立状態におけるベース18及びバックサイドメンバ21の回動部を示す側面図である。使用者は、操作入力装置65を操作することによって、左右のリクライニング装置14の操作レバー49を初期位置から操作位置に移動させることができ、リクライニング装置14をロック解除状態にすることができる。使用者が操作入力装置65を操作し続ける間、リクライニング装置14はロック解除状態に維持される。リクライニング装置14がロック解除状態のとき、使用者はベース18に対してバックサイドメンバ21を回動させることができる。起立状態では、使用者が操作入力装置65の操作を止めると、付勢部材44の付勢力によってリクライニング装置14はロック状態に復帰すると共に、操作レバー49は操作位置から初期位置に復帰する。
【0074】
図8に示すバックサイドメンバ21の起立状態からバックサイドメンバ21が前側に回動すると、図9に示すようにベース18に対するバックサイドメンバ21の角度が所定の角度となったときに第2当接部75が第1当接部71のプレート71Aの一方の側縁部71Dに当接する。図9に示す状態では、第1当接部71のプレート71Aは、操作レバー49から離れているため、使用者が操作入力装置65の操作を止めると、操作レバー49は初期位置に戻る。
【0075】
その後、更にバックサイドメンバ21が前側に回動すると、第2当接部75が付勢部材73の付勢力に抗してプレート71Aを押圧位置側に押し、プレート71Aが回転する。図10に示すように、ベース18に対してバックサイドメンバ21が前側に更に回動し、ベース18に対するバックサイドメンバ21の角度が所定の第1角度範囲になると、プレート71Aは押圧位置に到達する。この状態では、使用者が操作入力装置65の操作を止めても、プレート71Aと当接ピン49Bとの当接によって、操作レバー49は操作位置に維持される。すなわち、リクライニング装置14はロック解除状態に維持される。このとき、プレート71Aは、円弧部71Cにおいて当接ピン49Bと当接する。この状態では、バックサイドメンバ21の前側の回動に応じてプレート71Aが更に回転しても、プレート71Aの円弧部71Cは当接ピン49Bに対して摺動し、当接ピン49Bを更に押すことはない。これにより、ベース18に対するバックサイドメンバ21の回動が阻害されることはない。
【0076】
ベース18に対するバックサイドメンバ21の角度が所定の第1角度範囲になるまでの角度範囲は、凸部43Cと規制壁41Dとの当接によってリクライニング装置14をロック解除状態に維持してもよい。
【0077】
バックサイドメンバ21が後側に回動すると、プレート71Aは第2当接部75の位置に応じて離間位置に復帰し、操作レバー49は操作位置から初期位置に復帰可能になる。この状態で使用者が操作入力装置65の操作を止めると、リクライニング装置14はロック状態になる。
【0078】
第1当接部71は、ベース18又はバックサイドメンバ21に設けられる部材であり、取り付け及び変更が容易である。そのため、リクライニング装置14において、ロックが解除された状態に維持される角度範囲の変更を容易にすることができる。通常、リクライニング装置はユニットとして供給される場合が多く、ロックが解除された状態に維持される角度範囲を変更するためには、リクライニング装置の内部の配置された、例えば規制壁41D等の形状を変更する必要がある。本実施形態に係るリクライニング装置14では、規制壁41Dの形状に関わらず、外部に配置される第1当接部71及び第2当接部75の形状や位置を変更することによって、ロックが解除された状態に維持される角度範囲を容易に変更することができる。
【0079】
プレート71Aがバックサイドメンバ21に対して回動可能に設けられ、円弧部71Cにおいて当接ピン49Bに摺接するため、第1当接部71と第2当接部75との当接、及び第1当接部71と操作レバー49との当接によってバックサイドメンバ21のベース18に対する回動が阻害されない。
【0080】
第1回転体41の規制壁41Dとロック部材43の凸部43Cとが当接することによっても、リクライニング装置14をロック解除状態に維持することができる。規制壁41Dと凸部43Cとが当接するときのベース18に対するバックサイドメンバ21の角度範囲が、第1当接部71が操作レバー49を操作位置に維持するときの角度範囲と異なる角度範囲を含むことによって、ロック解除状態になる角度範囲を延長することができる。
【0081】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。第1回転体41がバックサイドメンバ21に結合され、第2回転体42がベース18に結合されてもよい。この場合、第1当接部71がベース18に設けられ、第2当接部75がバックサイドメンバ21に設けられるとよい。また、リクライニング装置14は、ベース18とバックサイドメンバ21との回動部に限らず、シートクッション2とシートバック3との回動部に設けられてもよい。
【0082】
第1当接部71が操作レバー49と当接して操作レバー49を操作位置に維持する、ベース18に対するバックサイドメンバ21の角度範囲は、バックサイドメンバ21がフロア15に対して前傾状態にある角度範囲や、バックサイドメンバ21がフロア15に対して前側への回動限界位置にある角度範囲に設定されるとよい。
【0083】
プレート71Aの形状を調節することによって、第1当接部71が操作レバー49を操作位置に押すときのバックサイドメンバ21の角度を変更することができる。例えば、図12に示すように、プレート71Aの回動軸Bを中心とした角度幅を小さくすることによって、第1当接部71が操作レバー49を操作位置に押すときのバックサイドメンバ21の前方への角度を大きくすることができる。また、プレート71Aの回動軸Bを中心とした角度幅を大きくすることによって、第1当接部71が操作レバー49を操作位置に押すときのバックサイドメンバ21の前方への角度を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :シート
14 :リクライニング装置
15 :フロア
18 :サイドベース(第1部材)
21 :バックサイドメンバ(第2部材)
41 :第1回転体
41D :規制壁
42 :第2回転体
43 :ロック部材
43C :凸部
44 :付勢部材
45 :操作部
47 :カム
48 :第1シャフト
49 :操作レバー
49B :当接ピン
51 :中央カム
52 :カムプレート
71 :第1当接部
71A :プレート
71B :第2シャフト
71C :円弧部
71D :側縁部
73 :付勢部材
75 :第2当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12