(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240911BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240911BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H01M10/48 P
H02J1/00 306B
H02J1/00 306L
(21)【出願番号】P 2020169746
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加茂 章太郎
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/145618(WO,A1)
【文献】特開2021-016241(JP,A)
【文献】国際公開第2019/103059(WO,A1)
【文献】特開2015-130732(JP,A)
【文献】特開2014-128152(JP,A)
【文献】特開2018-117472(JP,A)
【文献】米国特許第06583603(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 1/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流配電システムに連系された蓄電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記直流配電システムの直流母線電圧を取得する直流母線電圧取得部と、
前記充電率と前記直流母線電圧とに応じて、前記蓄電池の充電電力または放電電力を決定する充放電電力決定部と、
前記充放電電力決定部が決定した充電電力または放電電力に従って、前記蓄電池の充電または放電を制御する充放電制御部と、を備え
、
前記充放電電力決定部は、
前記充電率に応じた前記充電電力を、前記直流母線電圧が電圧下限値以上で電圧目標値未満のときには、前記直流母線電圧が前記電圧目標値であるときよりも抑制した値とし、
前記充電率に応じた前記放電電力を、前記直流母線電圧が前記電圧目標値を超え電圧上限値以下のときには、前記直流母線電圧が前記電圧目標値であるときよりも抑制した値とする制御装置。
【請求項2】
前記充放電電力決定部は、
前記直流母線電圧が前記電圧下限値以上かつ前記電圧上限値以下のときには、
前記充電率が第1閾値以上の場合に、前記充電電力を0とし、
前記充電率が第1閾値よりも大きい第2閾値以下の場合に、前記放電電力を0とする、請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記充放電電力決定部は、
前記直流母線電圧が前記電圧上限値を超えるときには、
前記充電率が充電率上限値以下の場合に、前記充電電力を0以外の値とする、請求項
1または
2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記充放電電力決定部は、
前記直流母線電圧が前記電圧下限値未満のときには、
前記充電率が充電率下限値以上の場合に、前記放電電力を0以外の値とする、請求項
1から
3のいずれか1項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流配電システムに含まれる蓄電池の充放電を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流送電線と当該直流送電線に接続された複数の交直変換器とを備えた直流送電システムに併設された蓄電池の制御装置が開示されている。当該制御装置は、比較判定部、制御部、およびSOC管理部(第1、第2)を備える。比較判定部は、直流送電線の直流電圧と、予め設定された不感帯とを比較する。制御部は、直流送電線の直流電圧が不感帯を逸脱する場合に、蓄電池に対する指令を生成する。SOC管理部は、蓄電池の充電率に応じて交直変換器の直流電圧指令値、あるいは不感帯の上限または下限を変更することで、蓄電池の充放電を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている制御装置は、電圧制御可能である機器が蓄電池以外に存在しない直流送電システムに対しては適用できないという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、直流配電システムにおいて、蓄電池を用いた直流母線電圧の管理と、蓄電池の充電率の適切な管理とを両立させることが可能な、蓄電池の制御装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、直流配電システムに連系された蓄電池の充電率を取得する充電率取得部と、前記直流配電システムの直流母線電圧を取得する直流母線電圧取得部と、前記充電率と前記直流母線電圧とに応じて、前記蓄電池の充電電力または放電電力を決定する充放電電力決定部と、前記充放電電力決定部が決定した充電電力または放電電力に従って、前記蓄電池の充電または放電を制御する充放電制御部と、を備える。
【0007】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、直流配電システムにおいて、蓄電池を用いた直流母線電圧の管理と、蓄電池の充電率の適切な管理とを両立させることが可能な、蓄電池の制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る制御装置が適用される直流配電システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【
図3】蓄電池のSOCに応じて充放電電力決定部が充電電力および放電電力のいずれを決定するかの例を示す図である。
【
図4】直流母線電圧が電圧下限値以上かつ電圧上限値以下であるときに充放電電力決定部が決定する、充電電力および放電電力の具体例を示すグラフである。
【
図5】実施形態に係る制御装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示した第1の充放電電圧決定処理および第2の充放電電圧決定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図7】
図5に示した第3の充放電電圧決定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図8】SOCが90%よりも大きい場合における、本実施形態に係る直流配電システムおよび比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
【
図9】SOCが40%以上かつ60%以下である場合における、本実施形態に係る直流配電システムおよび比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
【
図10】SOCが10%未満である場合における、本実施形態に係る直流配電システムおよび比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
【
図11】SOCが10%以上かつ40%未満である場合における、本実施形態に係る直流配電システムおよび比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
【
図12】SOCが60%よりも大きく、かつ90%以下である場合における、本実施形態に係る直流配電システムおよび比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
(直流配電システム1の構成)
図1は、本実施形態に係る制御装置30が適用される直流配電システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、直流配電システム1は、商用電源10、蓄電池20、制御装置30、太陽電池パネル40、直流母線50および直流負荷60を備える。
【0012】
商用電源10は、直流母線50に対してAC(Alternating Current)により電力を供給する。商用電源10は、変圧器11、AC-DC(Direct Current)コンバータ12、およびブレーカー13を介して直流母線50に接続される。変圧器11は、商用電源10から入力されるACの電圧を変圧する。AC-DCコンバータ12は、変圧器11から入力されるACをDCに変換して出力する。また、直流配電システム1は、AC-DCコンバータ12の代わりに整流回路を備えていてもよい。ブレーカー13は、AC-DCコンバータ12から入力されるDCの電流が過大になった場合に、AC-DCコンバータ12と直流母線50との間を遮断する。
【0013】
直流母線50は、商用電源10、蓄電池20、および太陽電池パネル40から供給される電力を直流負荷60へ供給する電力線である。
図1に示す例では、直流負荷60として、2つの負荷61および62が示されている。ただし、直流配電システム1における直流負荷60の数は、1または3以上であってもよい。
【0014】
蓄電池20は、電力を内部にエネルギーとして保持し、保持したエネルギーを必要に応じてDCにより直流母線50へ供給する。蓄電池20は、ブレーカー21およびDC-DCコンバータ22を介して直流母線50に接続されていてもよい。ブレーカー21は、蓄電池20から入力されるDCの電流が過大になった場合に、蓄電池20と直流母線50との間を遮断する。DC-DCコンバータ22は、制御装置30から入力される指令値に基づいて、蓄電池20から入力されるDCの電圧を変換して直流母線50へ出力するか、または直流母線50から入力されるDCの電圧を変換して蓄電池20へ出力する。
【0015】
蓄電池20は、リチウムイオン電池、NaS(ナトリウム・硫黄)電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池等の、2次電池を備えた装置であり得る。しかし蓄電池20は2次電池を備えた装置に限られるものではない。蓄電池20として、キャパシタ、超伝導電力貯蔵ユニット、フライホイール式電力貯蔵ユニット、圧縮空気式電力貯蔵ユニットなど、電気エネルギーを貯蔵する機能を備えた任意のユニットを用いることができる。
【0016】
制御装置30は、蓄電池20の充放電を制御する。制御装置30の具体的な構成については後述する。
【0017】
太陽電池パネル40は、太陽光の日射量に応じて発電した電力をDCにより直流母線50へ供給する。太陽電池パネル40は、DC-DCコンバータ41を介して直流母線50に接続される。DC-DCコンバータ41は、太陽電池パネル40から入力されるDCの電圧を変換して出力する。
【0018】
(制御装置30の構成)
図2は、本実施形態に係る制御装置30の構成を示す図である。
図2に示すように、制御装置30は、SOC(State Of Charge)取得部(充電率取得部)31と、直流母線電圧取得部32と、充放電電力決定部33と、充放電制御部34と、を備える。
【0019】
SOC取得部31は、直流配電システム1に連系された蓄電池20のSOC(充電率)を取得する。SOCとは、蓄電池20に充電可能な電力量の最大値に対する、蓄電池20に充電されている電力量の比率である。SOC取得部31は、SOCを示す信号を充放電電力決定部33へ出力する。直流母線電圧取得部32は、直流母線電圧を取得する。直流母線電圧は、直流母線50における電圧である。直流母線電圧取得部32は、直流母線電圧を検出するための直流母線電圧検出用変圧器51を介して直流母線50と接続されている。直流母線電圧取得部32は、直流母線電圧を示す信号を充放電電力決定部33へ出力する。
【0020】
充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCと直流母線50における直流母線電圧とに応じて、蓄電池20の充電電力または放電電力を決定する。充放電電力決定部33は、決定した充電電力または放電電力を充放電制御部34へ出力する。
【0021】
なお、
図2においては充放電電力決定部33を構成する回路の具体例が示されている。
図2に示す例では、充放電電力決定部33は、電力決定部331と、変動抑制部332とを備える。電力決定部331は、SOCに基づいて充電電力または放電電力を決定する。変動抑制部332は、電力決定部331が決定した充電電力または放電電力を、直流母線電圧に応じて抑制する。しかし、充放電電力決定部33の構成は、
図2に示した例に限定されない。
【0022】
充放電制御部34は、充放電電力決定部33が決定した充電電力または放電電力に従って、蓄電池20の充電または放電を制御する。具体的には、充放電制御部34は、充放電電力決定部33が決定した充電電力または放電電力に従って充電または放電が行われるようにDC-DCコンバータ22を制御するための指令値を生成して、DC-DCコンバータ22に出力する。
【0023】
直流配電システム1における直流母線50の、定格の直流母線電圧からの、許容される変動幅が定められる。許容される変動幅は例えば±10%である。許容される直流母線電圧の下限値を、電圧下限値と称する。また、許容される直流母線電圧の上限値を、電圧上限値と称する。電圧下限値と電圧上限値との間の値が定格の直流母線電圧であり、電圧目標値と称する。本実施形態では、電圧目標値は、電圧下限値と電圧上限値との中央の値である。充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値以上かつ電圧上限値以下のときには、SOCに応じた充電電力または放電電力を決定する。ただし、充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCに応じた充電電力を、直流母線電圧が電圧下限値以上で電圧目標値未満のときには、直流母線電圧が電圧目標値であるときよりも抑制した値とする。これにより、充電による直流母線電圧の低下を抑制し、かつSOCについては増加させることができる。また、充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCに応じた放電電力を、直流母線電圧が電圧目標値を超え電圧上限値以下のときには、直流母線電圧が電圧目標値であるときよりも抑制した値とする。これにより、放電による直流母線電圧の上昇を抑制し、かつSOCについては減少させることができる。したがって、直流母線電圧およびSOCの適切な管理を両立することができる。
【0024】
また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値以上かつ電圧上限値以下のときには、SOCが予め設定された第1閾値以上である場合に充電電力を0とする。また、充放電電力決定部33は、SOCが第1閾値よりも大きい第2閾値以下である場合に放電電力を0とする。すなわち、SOCが第1閾値以上かつ第2閾値以下である場合には、充放電電力決定部33は、充電電力および放電電力のいずれも0と決定する。第1閾値および第2閾値は、蓄電池20におけるSOCの適切な範囲の下限および上限である。第1閾値および第2閾値は、充電または放電が必要なSOCの範囲を考慮して適宜決定される。したがって、直流母線電圧およびSOCの両方が適切な範囲である場合に、その状態を維持することができる。
【0025】
また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧上限値を超えるときには、SOCがSOC上限値(充電率上限値)以下の場合に充電電力を0以外の値とする。SOC上限値とは、蓄電池20に充電することを許容するSOCの上限値である。これにより、制御装置30は、直流母線電圧を低下させることができる。ただし、充放電電力決定部33は、SOCがSOC上限値を超える場合には、直流母線電圧が電圧上限値を超えるときであっても、SOCの制御を優先し、充電電力を0とする。
【0026】
また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値未満のときには、SOCがSOC下限値(充電率下限値)以上の場合に放電電力を0以外の値とする。SOC下限値とは、蓄電池20から放電することを許容するSOCの上限値である。これにより、制御装置30は、直流母線電圧を上昇させることができる。ただし、充放電電力決定部33は、SOCがSOC下限値未満である場合には、直流母線電圧が電圧下限値未満のときであっても、SOCの制御を優先し、放電電力を0とする。
【0027】
(SOCの区分)
図3は、蓄電池20のSOCに応じて充放電電力決定部33が充電電力および放電電力のいずれを決定するかの例を示す図である。
図3に示す例では、第1閾値は40%であり、第2閾値は60%である。また、SOC下限値は10%であり、SOC上限値は90%である。
図3に示す例では、これらの値を境界として、SOCが領域101~105の5つに区分されている。
【0028】
領域101、すなわちSOCが90%を超える領域について以下に説明する。充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧上限値以下のときには、放電電力を直流母線電圧に応じた値に決定する。このとき充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧目標値を超える場合には、直流母線電圧が電圧目標値であるときよりも放電電力を抑制した値とする。これにより、直流母線電圧が電圧上限値を超えて上昇する事態を回避することができる。また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧上限値を超えるときには、放電電力を0とするのみであり、直流母線電圧を低下させるための充電は行わせず、また放電も行なわせない。すなわち、領域101では、充放電電力決定部33は、SOCがSOC上限値よりも高いために直流母線電圧の管理よりもSOCの管理を優先する。
【0029】
領域102、すなわちSOCが60%を超え、かつ90%以下である領域について以下に説明する。充放電電力決定部33は、放電電力を、直流母線電圧が電圧上限値以下のときには、SOCに応じた値に決定する。ただし、充放電電力決定部33は、放電電力を、直流母線電圧が電圧目標値を超え、かつ電圧上限値以下の場合には、直流母線電圧が電圧目標値であるときよりも抑制した値とする。これにより、直流母線電圧が電圧上限値を超えて上昇する事態を回避することができる。一方、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧上限値を超えるときには充電電力を0以外の値に決定する。すなわち、領域102では、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧目標値を超えるときに、SOCよりも直流母線電圧の制御を優先して、抑制された放電電力を決定、または抑制されていない充電電力を決定する。
【0030】
領域103、すなわちSOCが40%以上かつ60%以下である領域について以下に説明する。充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値以上かつ上限値以下のときには、充電電力および放電電力のいずれも0とする。また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧上限値を超えるときには、充電電力を0以外の値とする。また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値未満のときには、放電電力を0以外の値とする。すなわち、領域103では、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値以上かつ上限値以下のときには、蓄電池20を待機させる。また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧上限値を超える、または電圧下限値未満のときに、SOCよりも直流母線電圧の制御を優先して、充電電力または放電電力を決定する。
【0031】
領域104、すなわちSOCが10%以上かつ40%未満である領域について以下に説明する。充放電電力決定部33は、充電電力を、直流母線電圧が電圧下限値以上のときには、SOCに応じた値に決定する。ただし、充放電電力決定部33は、充電電力を、直流母線電圧が電圧下限値以上かつ電圧目標値未満のときには、直流母線電圧が電圧目標値であるときよりも抑制した値とする。これにより、直流母線電圧が電圧下限値よりも低下する事態を回避することができる。一方、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値未満のときには放電電力を0以外の値に決定する。すなわち、領域104では、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧目標値未満のときに、SOCよりも直流母線電圧の制御を優先して、抑制された充電電力を決定または放電電力を決定する。
【0032】
領域105、すなわちSOCが10%未満である領域について以下に説明する。充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値以上のときには、充電電力を直流母線電圧に応じた値に決定する。このとき充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧目標値未満のときには、直流母線電圧が電圧目標値であるときよりも充電電力を抑制した値とする。これにより、直流母線電圧が電圧下限値よりも低下する事態を回避することができる。また、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が電圧下限値未満のときには、充電電力を0とするのみであり、直流母線電圧を上昇させるための放電は行わせず、また充電も行わせない。すなわち、領域105では、充放電電力決定部33は、SOCがSOC下限値よりも低いために直流母線電圧の管理よりもSOCの管理を優先する。
【0033】
(充電電力および放電電力の具体例)
図4は、直流母線電圧が電圧下限値以上かつ電圧上限値以下であるときに充放電電力決定部33が決定する、充電電力および放電電力の具体例を示すグラフである。
図4において、横軸は蓄電池20のSOCを示している。また、縦軸は蓄電池20の充放電の電力を、充電される電力を正の値、放電する電力を負の値として示している。
図4には、母線電圧が540V、570V、600V、630V、および660Vである場合のそれぞれについて、蓄電池20のSOCと充放電電力との関係が示されている。
図4に示す例では、直流母線電圧の電圧下限値を540V、電圧目標値を600V、電圧上限値を660Vとしている。
【0034】
符号201は、直流母線電圧が600Vである場合における、蓄電池20のSOCに応じた充電電力を示すグラフである。この場合、充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCが10%以上かつ40%以下であるときに、充電電力をSOCの減少に応じて一次関数的に増大させる。充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCが10%未満であるときには、充電電力を蓄電池20のSOCが10%である場合のものと同じとする。蓄電池20のSOCが40%以上かつ60%以下であるとき、充放電電力決定部33は、充電電力および放電電力を0とする。充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCが60%以上かつ90%以下であるときに、放電電力をSOCの増加に応じて一次関数的に増大させる。充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCが90%以上である場合には、放電電力を蓄電池20のSOCが90%である場合のものと同じとする。
【0035】
符号202は、直流母線電圧が570Vである場合における、蓄電池20のSOCに応じた充電電力を示すグラフである。570Vという電圧は、電圧下限値以上かつ電圧目標値未満である直流母線電圧の具体例である。この場合、充放電電力決定部33は、SOCに応じた充電電力を、蓄電池20のSOCが10%以上かつ40%未満であるとき、および10%未満であるときのそれぞれにおいて、直流母線電圧が600Vである場合に同じSOCであるときよりも抑制した値としている。蓄電池20のSOCが40%以上であるとき、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が600Vである場合と同様に充電電力または放電電力を決定する。
【0036】
符号203は、直流母線電圧が540Vである場合における充電電力を示すグラフである。540Vという電圧は、電圧下限値の具体例である。この場合、充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCが40%未満であるときに、充電電力を0とする。蓄電池20のSOCが40%以上であるとき、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が600Vである場合と同様に放電電力を決定する。
【0037】
符号204は、直流母線電圧が630Vである場合における、蓄電池20のSOCに応じた放電電力を示すグラフである。630Vという電圧は、電圧目標値を超え、かつ電圧上限値以下である直流母線電圧の具体例である。この場合、充放電電力決定部33は、SOCに応じた放電電力を、(i)蓄電池20のSOCが60%を超え、かつ90%以下であるとき、および(ii)90%を超えるときのいずれについても、直流母線電圧が600Vである場合に同じSOCであるときよりも抑制した値としている。蓄電池20のSOCが60%以下であるとき、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が600Vである場合と同様に充電電力または放電電力を決定する。
【0038】
符号205は、直流母線電圧が660Vである場合における放電電力を示すグラフである。660Vという電圧は、電圧上限値の具体例である。この場合、充放電電力決定部33は、蓄電池20のSOCが60%を超えるときに、放電電力を0とする。蓄電池20のSOCが60%以下であるとき、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が600Vである場合と同様に充電電力を決定する。
【0039】
(制御装置30における処理)
図5は、制御装置30における処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートでは、直流母線電圧についての電圧目標値、電圧下限値、および電圧上限値、ならびに、SOCについての第1閾値、第2閾値、SOC下限値およびSOC上限値は、
図3および
図4に示した例における値と同じとしている。制御装置30においては、まずSOC取得部31が蓄電池20のSOCを取得し(S1)、直流母線電圧取得部32が直流母線50における直流母線電圧を取得する(S2)。ステップS1およびS2は逆の順で実行されても、同時に実行されてもよい。
【0040】
充放電電力決定部33は、直流母線電圧が540V以上かつ660V以下であるか判定する(S3)。直流母線電圧が540V以上かつ660V以下である場合(S3でYES)、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が600V未満であるか判定する(S4)。直流母線電圧が600V未満である場合(S4でYES)、充放電電力決定部33は、後述する第1の充放電電圧決定処理を実行する(S5)。直流母線電圧が600V未満でない場合(S4でNO)、充放電電力決定部33は、後述する第2の充放電電圧決定処理を実行する(S6)。また、直流母線電圧が540V以上かつ660V以下でない場合(S3でNO)、充放電電力決定部33は、後述する第3の充放電電圧決定処理を実行する(S7)。充放電制御部34は、ステップS5,S6またはS7において充放電電力決定部33が決定した充電電力または放電電力に従って、蓄電池20の充電または放電を制御する(S8)。
【0041】
図6は、
図5に示した第1の充放電電圧決定処理および第2の充放電電圧決定処理の具体例を示すフローチャートである。
図5においては、第1の充放電電圧決定処理の一例が符号6001、第2の充放電電圧決定処理の一例が符号6002で示されている。
【0042】
第1の充放電電圧決定処理では、充放電電力決定部33は、最初にSOCについて判定する(S51)。SOCが40%未満である場合(S51でSOC<40)、充放電電力決定部33は、SOCに応じた充電電力を決定する(S52)。ステップS52において決定される充電電力は、
図4において符号202または203で示したような、抑制された充電電力である。SOCが40%以上かつ60%以下である場合(S51で40≦SOC≦60)、充放電電力決定部33は、蓄電池20を待機状態とする(S53)。すなわち、充放電電力決定部33は、充電電力および放電電力のいずれも0とする。SOCが60%を超える場合(S51でSOC>60)、充放電電力決定部33は、SOCに応じた放電電力を決定する(S54)。ステップS54において決定される放電電力は、
図4において符号204で示したような、抑制されていない放電電力である。
【0043】
第2の充放電電圧決定処理では、充放電電力決定部33は、第1の充放電電圧決定処理におけるステップS51~S54と概ね同様のステップS61~64を実行する。ただし、ステップS62において充放電電力決定部33が決定する充電電力は、ステップS52において充放電電力決定部33が決定する充電電力とは異なり、
図4において符号201で示したような、抑制されていない充電電力である。また、ステップS64において充放電電力決定部33が決定する放電電力は、ステップS54において充放電電力決定部33が決定する放電電力とは異なり、
図4において符号205または206で示したような、抑制された放電電力である。
【0044】
図7は、
図5に示した第3の充放電電圧決定処理の具体例を示すフローチャートである。
図5に示したとおり、第3の充放電電圧決定処理は、ステップS3において直流母線電圧が540V以上かつ660V以下でないと判定された場合に開始される。したがって、第3の充放電電圧決定処理が開始されたとき、直流母線電圧は540V未満、または660Vを超える値である。
【0045】
第3の充放電電圧決定処理において、充放電電力決定部33は、直流母線電圧が540V未満であるか判定する(S71)。直流母線電圧が540V未満である場合(S71でYES)、充放電電力決定部33は、SOCが10%以上であるか判定する(S72)。SOCが10%以上である場合(S72でYES)、充放電電力決定部33は、放電電力を0以外の値に決定する(S73)。ステップS73において決定される放電電力は、ステップS54およびS64において決定されるものとは異なる。ステップS73において決定される放電電力は、例えば直流母線電圧に応じた比例積分制御を使用して、直流母線電圧を540Vに維持するように決定される。
【0046】
直流母線電圧が540V未満でない場合(S71でNO)、すなわち直流母線電圧が660Vを超える場合、充放電電力決定部33は、SOCが90%以下であるか判定する(S75)。SOCが90%以下である場合(S75でYES)、充放電電力決定部33は、充電電力を0以外の値に決定する(S76)。ステップS76において決定される充電電力は、ステップS52およびS62において決定されるものとは異なる。ステップS76において決定される充電電力は、例えば直流母線電圧に応じた比例積分制御を使用して、直流母線電圧を660Vに維持するように決定される。
【0047】
SOCが10%以上でない場合(S72においてNO)、またはSOCが90%以下でない場合(S75でNO)、充放電電力決定部33は、蓄電池20を待機とする(S74)。すなわち、充放電電力決定部33は、充電電力および放電電力の両方を0とする。
ステップS52~S54、S62~S64、S73、S76における、充電電力または放電電力を決定するための、充放電電力決定部33における処理の具体例は以下のとおりである。この具体例においては、放電電力を正の値とし、充電電力を負の値としている。電力決定部331は、以下の式(1)により、直流母線電圧を考慮しない場合における充電電力または放電電力Pを決定する。
P=((SOCU-60)/(90-60))×定格放電電流
+((SOCL-40)/(40-10))×定格充電電流 (1)
式(1)において、SOCUの値は、(i)SOCの値が60未満である場合には60であり、(ii)SOCの値が60以上かつ90以下である場合にはSOCの値に等しい値であり、(iii)SOCの値が90を超える場合には90である。また、式(1)において、SOCLの値は、(i)SOCの値が10未満である場合には10であり、(ii)SOCの値が10以上かつ40以下である場合にはSOCの値に等しい値であり、(iii)SOCの値が40を超える場合には40である。また、定格放電電流および定格充電電流の値は、蓄電池20への充電電流または放電電流の基準となる値である。変動抑制部332は、直流母線電圧取得部32が取得した直流母線電圧を、後述する電圧目標値で除算し、0以上1以下の値に規格化する。変動抑制部332は、正規化した直流母線電圧が(i)1以上かつ1.1以下である場合、または(ii)0.9以上1未満である場合には、SOCに基づいて、実際の充電電力または放電電力を決定する。上記の(i)および(ii)は、それぞれ順にステップS4でNOの場合、およびステップS4でYESの場合に対応する。また、正規化した直流母線電圧が0.9未満(S71でYES)、かつSOCが10%以上である場合(S72でYES)には、変動抑制部332は、直流母線電圧が540Vに維持されるように放電電力を決定する(S73)。正規化した直流母線電圧が0.9を超え(S71でNO)、かつSOCが90%以下である場合(S75でYES)には、変動抑制部332は、直流母線電圧が660Vに維持されるように充電電力を決定する(S76)。
【0048】
以上のとおり、制御装置30は、蓄電池20のSOCと、直流母線50における直流母線電圧と、に応じて蓄電池20の充電電力または放電電力を決定し、当該充電電力または放電電力に従って蓄電池20の充電または放電を制御する。したがって、制御装置30によれば、直流配電システム1において、蓄電池20を用いた直流母線電圧の管理と、蓄電池20の充電率の適切な管理とを両立させることが可能である。特に、制御装置30は、SOCおよび直流母線電圧が高い場合には蓄電池20からの放電電力を抑制し、SOCおよび直流母線電圧が低い場合には充電電力を抑制する。したがって、これらの場合における直流電圧の変動を抑制できる。また、直流母線電圧の変動を抑制しながらSOCの制御を行うことで、直流配電システム1の直流母線電圧が負荷の変動に対して敏感に変動する場合においても直流配電システム1を長期間にわたって安定的に運用することができる。
【0049】
また、直流配電システム1は、直流母線電圧の変動を抑制するように太陽電池パネル40からの出力電流を抑制する制御装置をさらに備えていてもよい。さらに、直流配電システム1は、直流母線電圧の変動を抑制するように直流負荷60に供給される電力を制御する制御装置をさらに備えていてもよい。これらの制御装置を備える場合、直流配電システム1を、より直流母線電圧を安定させて運用することができる。
【0050】
(動作の検証結果)
直流配電システム1、および比較例の直流配電システムについて、動作の検証を行った。ここでいう動作とは、各部における電流、電圧、またはSOCの動作を意味する。比較例の直流配電システムは、制御装置30の代わりに、SOCのみに基づいて充電電力または放電電力を決定する制御装置を備える点で、直流配電システム1と相違する。比較例の直流配電システムが備える制御装置における処理は、直流母線電圧が常に電圧目標値であるものとした場合の制御装置30における処理と同様である。また、この動作の検証においては、蓄電池の充放電の他に、太陽電池パネル40からの電流についても制御を行っている。また、直流母線電圧についての電圧目標値、電圧下限値、および電圧上限値、ならびに、SOCについての第1閾値、第2閾値、SOC下限値およびSOC上限値は、
図3および
図4に示した具体例におけるものと同じとしている。
【0051】
図8は、SOCが90%よりも大きい場合における、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
図8においては、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作が、それぞれ符号8001および8002に示されている。
【0052】
図9は、SOCが40%以上かつ60%以下である場合における、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
図9においては、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作が、それぞれ符号9001および9002に示されている。
【0053】
図10は、SOCが10%未満である場合における、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
図10においては、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作が、それぞれ符号10001および10002に示されている。
【0054】
図11は、SOCが10%以上かつ40%未満である場合における、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
図11においては、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作が、それぞれ符号11001および11002に示されている。
【0055】
図12は、SOCが60%よりも大きく、かつ90%以下である場合における、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作を示す図である。
図12においては、直流配電システム1および比較例の直流配電システムの、各部の動作が、それぞれ符号12001および12002に示されている。
【0056】
図8~
図12において、横軸は時間である。また、
図8~
図12において、「負荷電流」は、直流母線50から直流負荷60に流れる電流を示している。また、
図8~
図12において、「DC電圧」は直流母線電圧を示している。また、「蓄電池電流」は直流母線50から蓄電池20への充電電流を示している。蓄電池電流が負である場合には、蓄電池20からの放電電流を示している。また、
図8~
図12において、「PV電流」は、太陽電池パネル40から直流母線50へ流れる電流を示している。「PV電流」については、太陽電池パネル40から直流母線50へ流れる電流を負の値で示している。
【0057】
図8の符号8001に示すように、直流配電システム1においては、SOCが90%よりも大きい場合であっても、破線501(2箇所)で囲んだように、直流母線電圧が660V近傍まで上昇しているときには、破線502(2箇所)で囲んだように、制御装置30は蓄電池20を待機させていた。また、PV電流についても、直流母線電圧が660V近傍まで上昇しているときには、破線503(2箇所)で囲んだように、抑制されていた。したがって、直流母線電圧は、660V以下の状態で維持されていた。
【0058】
図8の符号8002に示すように、比較例の直流配電システムにおいては、SOCが90%よりも大きい場合には、直流母線電圧が660V近傍まで上昇しているときでも比較例に係る制御装置は、破線504で囲んだように、蓄電池20から放電させた。このため、比較例の直流配電システムにおいては、破線505で囲んだように、直流母線電圧が660Vを超えて上昇した。検証に用いた直流配電システムは、直流母線電圧が720Vに到達した場合にシステムを保護するために蓄電池20および太陽電池パネル40からの電流を遮断する保護装置を備えていた。比較例の直流配電システムにおいては、保護装置が作動して、破線505および506で囲んだように、蓄電池電流およびPV電流が0になった。
【0059】
図9の符号9001に示すように、直流配電システム1においては、SOCが40%以上かつ60%以下である場合には、制御装置30は蓄電池20のSOCを調整するための充電電流および放電電流を0とした。ただし、検証に用いた直流配電システムにおいては、直流母線電圧が上限値または下限値である場合に、当該上限値または下限値で直流母線電圧を一定にする制御が動作した。このため、
図9の符号9001においては、直流母線電圧の変動に応じて、蓄電池電流も若干の変動を示した。
図9の符号9002に示すように、SOCが40%以上かつ60%以下である場合の動作は、比較例の直流配電システムにおいても同様であった。
【0060】
図10の符号10001に示すように、直流配電システム1においては、SOCが10%未満である場合であっても、直流母線電圧が低下しているときには、制御装置30は蓄電池20を充電する充電電流を抑制した。このため、直流配電システム1においては、直流母線電圧が540V以上の状態で維持されていた。
【0061】
図10の符号10002に示すように、比較例の直流配電システムにおいては、SOCが10%未満である場合には、比較例に係る制御装置は充電電流を抑制せずに蓄電池20を充電した。このため、比較例の直流配電システムにおいては、破線511(2箇所)で囲んだように、直流母線電圧が540V未満に低下した。
【0062】
図11の符号11001に示すように、直流配電システム1においては、SOCが10%以上かつ40%未満である場合には、制御装置30は蓄電池20を充電した。この場合には、SOCが10%未満である場合と比較してSOCが大きいため、制御装置30は充電電流をさらに抑制した。具体的には、充電電流は50A程度であった。
【0063】
図11の符号11002に示すように、比較例の直流配電システムにおいては、SOCが10%以上かつ40%未満である場合には、比較例に係る制御装置は充電電流を抑制せずに蓄電池20を充電した。この場合には、SOCが10%未満である場合と比較してSOCが大きいため、充電電流は減少した。しかし、具体的な充電電流は100A程度であり、制御装置30が決定した充電電流のおよそ2倍である。このため、直流母線電圧は、破線521(2箇所)で囲んだように、540V未満までは低下しなかったものの、その近傍まで低下した。
【0064】
図12の符号12001に示すように、直流配電システム1においては、SOCが60%よりも大きく、かつ90%以下である場合には、制御装置30は直流母線電圧の上昇幅が大きいときに、破線531(2箇所)で囲んだように、蓄電池20を充電した。また、制御装置30は、直流母線電圧の上昇幅が小さいときに、破線532で囲んだように、放電電流を抑制して蓄電池20から放電した。これにより直流母線電圧の変動が抑制されたため、直流配電システム1においてPV電流は一定であった。
【0065】
図12の符号12002に示すように、比較例の直流配電システムにおいては、SOCが60%よりも大きく、かつ90%以下である場合には、比較例に係る制御装置は放電電流を抑制せずに蓄電池20からの放電を行った。このため、比較例の直流配電システムにおいては、直流母線電圧の変動を抑制するため、破線533(2箇所)で囲んだように、PV電流を抑制する制御が2回にわたり実行された。
【0066】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る制御装置は、直流配電システムに連系された蓄電池の充電率を取得する充電率取得部と、前記直流配電システムの直流母線電圧を取得する直流母線電圧取得部と、前記充電率と前記直流母線電圧とに応じて、前記蓄電池の充電電力または放電電力を決定する充放電電力決定部と、前記充放電電力決定部が決定した充電電力または放電電力に従って、前記蓄電池の充電または放電を制御する充放電制御部と、を備える。
【0067】
上記の構成によれば、充放電電力決定部は、充電率取得部が取得した充電率と、直流母線電圧取得部が取得した直流母線電圧とに応じて、蓄電池の充電電力または放電電力を決定する。充放電制御部は、充放電電力決定部が決定した充電電力または放電電力に従って、蓄電池の充電または放電を制御する。したがって、直流配電システムにおいて、蓄電池を用いた直流母線電圧の管理と、蓄電池の充電率の適切な管理とを両立させることができる。
【0068】
本発明の態様2に係る制御装置において、前記充放電電力決定部は、前記充電率に応じた前記充電電力を、前記直流母線電圧が電圧下限値以上で電圧目標値未満のときには、前記直流母線電圧が前記電圧目標値であるときよりも抑制した値とし、前記充電率に応じた前記放電電力を、前記直流母線電圧が前記電圧目標値を超え電圧上限値以下のときには、前記直流母線電圧が前記電圧目標値であるときよりも抑制した値とすることが好ましい。
【0069】
上記の構成によれば、充放電電力決定部は、直流母線電圧に応じて、充電電力または放電電力を抑制する。したがって、直流母線電圧の変動を抑制しながら、蓄電池の充電率を適切な範囲に近づけることができる。
【0070】
本発明の態様3に係る制御装置において、前記充放電電力決定部は、前記直流母線電圧が前記電圧下限値以上かつ前記電圧上限値以下のときには、前記充電率が第1閾値以上の場合に、前記充電電力を0とし、前記充電率が第1閾値よりも大きい第2閾値以下の場合に、前記放電電力を0とすることが好ましい。
【0071】
上記の構成によれば、充放電電力決定部は、直流母線電圧が正常な範囲内であり、かつ充電率が第1閾値以上第2閾値以下である場合に、充電電力および放電電力を0とする。したがって、直流母線電圧および充電率が適切な状態である場合に、その状態を維持することができる。
【0072】
本発明の態様4に係る制御装置において、前記充放電電力決定部は、前記直流母線電圧が前記電圧上限値を超えるときには、前記充電率が充電率上限値以下の場合に、前記充電電力を0以外の値とすることが好ましい。
【0073】
上記の構成によれば、充放電電力決定部は、充電率が充電率上限値以下の場合であれば、直流母線電圧が電圧上限値を超えるときに充電電力を0以外の値とする。したがって、直流母線電圧が電圧上限値を超えるときに、充電率が充電率上限値以下であれば、蓄電池への充電により直流母線電圧を低下させることができる。
【0074】
本発明の態様5に係る制御装置において、前記充放電電力決定部は、前記直流母線電圧が前記電圧下限値未満のときには、前記充電率が充電率下限値以上の場合に、前記放電電力を0以外の値とすることが好ましい。
【0075】
上記の構成によれば、充放電電力決定部は、充電率が充電率下限値以上の場合であれば、直流母線電圧が電圧下限値未満のときに放電電力を0以外の値とする。したがって、直流母線電圧が電圧下限値未満のときに、充電率が充電率下限値以上であれば、蓄電池からの放電により直流母線電圧を上昇させることができる。
【0076】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置30の制御ブロック(特にSOC取得部31、直流母線電圧取得部32、充放電電力決定部33、および充放電制御部34)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0077】
後者の場合、制御装置30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 直流配電システム
20 蓄電池
30 制御装置
31 SOC取得部(充電率取得部)
32 直流母線電圧取得部
33 充放電電力決定部
34 充放電制御部