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特許7553805無線機、無線通信制御方法および無線通信制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】無線機、無線通信制御方法および無線通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20240911BHJP
   H04M 1/60 20060101ALI20240911BHJP
   H04M 3/56 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H04M1/00 S
H04M1/60 Z
H04M3/56 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020219878
(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公開番号】P2022104741
(43)【公開日】2022-07-11
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 久晃
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/068666(WO,A1)
【文献】特開平03-053724(JP,A)
【文献】特開2000-236280(JP,A)
【文献】特表2007-505563(JP,A)
【文献】特開2008-104117(JP,A)
【文献】特表2007-531366(JP,A)
【文献】特開平09-326725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B1/38-1/58
7/24-7/26
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して音声パケットを送信および受信する通信部と、
音声パケットの送信時に操作される送信スイッチと、
マイクと、
スピーカと、
判定部と、
前記マイクと前記通信部とを接続または遮断するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続または遮断する接続遮断部と、
前記接続遮断部を制御する接続遮断制御部と、
を備え、
前記通信部は、送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によって送信されたことを示す第1符号、および前記送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によらずに送信されたことを示す第2符号のいずれか一方が付与されている前記音声パケットを、送信または受信し、
前記判定部は、前記通信部によって受信された前記音声パケットに前記第1符号および前記第2符号のいずれか一方が付与されていることを判定し、
前記接続遮断制御部は、前記送信スイッチが操作されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するように前記接続遮断部を制御する一方、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていると前記判定部に判定されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続するように前記接続遮断部を制御する、無線機。
【請求項2】
前記接続遮断制御部は、前記送信スイッチが操作されていないときに、受信された前記音声パケットに前記第2符号が付与されていると判定されると、前記マイクと前記通信部とを遮断するように前記接続遮断部を制御する請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
前記音声パケットの受信が検知され、かつ前記第2符号が前記音声パケットに付与されているとき、前記スピーカが報知音を発するための報知音声信号を発生する報知部をさらに備えている請求項2に記載の無線機。
【請求項4】
前記送信スイッチの操作を無効にする操作無効部をさらに備え、
前記接続遮断制御部は、前記送信スイッチの操作が無効にされているときに、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていても、前記音声パケットを送信できないように前記マイクと前記通信部とを遮断する請求項1から3のいずれか1項に記載の無線機。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか1項に記載の無線機における各部として機能させるための無線通信制御プログラム。
【請求項6】
ネットワークを介して音声パケットを送信および受信する通信部と、音声パケットの送信時に操作される送信スイッチと、マイクと、スピーカと、前記マイクと前記通信部とを接続または遮断するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続または遮断する接続遮断部と、を備える無線機の通信を制御する無線通信制御方法であって、
前記通信部によって、送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によって送信されたことを示す第1符号、および前記送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によらずに送信されたことを示す第2符号のいずれか一方が付与されている前記音声パケットを、送信または受信する受信ステップと、
前記通信部によって受信された前記音声パケットに前記第1符号および前記第2符号のいずれ一方が付与されていることを判定する判定ステップと、
前記接続遮断部によって、前記通信部による前記音声パケットの送信時に操作される送信スイッチが操作されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続する一方、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていると判定されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続する接続遮断ステップと、を含んでいる無線通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンズフリー機能を備えた無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機で通話を行うには、通常、PTT(Push to Talk)スイッチの操作が必要である。自動車の運転時などに、そのような操作から開放されるために、ハンズフリー通話が可能な無線機が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スケルチ信号を受信していないことを検知するとパルスを出力し、そのパルスに応じてプレス起動することにより、ハンズフリー機能を有効にする無線通信方式が開示されている。上記の無線通信方式では、半二重通信を行う無線機にハンズフリー機能が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-108224号公報(1992年4月9日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯電話網などの通信網を介して通信を可能にしたIP(Internet Protocol)無線機の普及が進んでいる。また、2019年12月より、改正道路交通法が施行され、運転中の無線機の操作は厳しく罰せられるようになった。そのため、運転中のIP無線機でPTTスイッチの操作に依らない音声の送信への需要は高まっている。
【0006】
本発明の一態様は、ハンズフリー機能を備えたIP無線機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線機は、ネットワークを介して音声パケットを送信および受信する通信部と、音声パケットの送信時に操作される送信スイッチと、マイクと、スピーカと、判定部と、前記マイクと前記通信部とを接続または遮断するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続または遮断する接続遮断部と、前記接続遮断部を制御する接続遮断制御部と、マイクと、スピーカと、を備え、前記通信部は、送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によって送信されたことを示す第1符号、および前記送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によらずに送信されたことを示す第2符号のいずれか一方が付与されている前記音声パケットを、送信または受信し、前記判定部は、前記通信部によって受信された前記音声パケットに前記第1符号および前記第2符号のいずれか一方が付与されていることを判定し、前記接続遮断制御部は、前記送信スイッチが操作されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するように前記接続遮断部を制御する一方、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていると前記判定部に判定されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続するように前記接続遮断部を制御する。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線通信制御方法は、ネットワークを介して音声パケットを送信および受信する通信部と、音声パケットの送信時に操作される送信スイッチと、マイクと、スピーカと、前記マイクと前記通信部とを接続または遮断するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続または遮断する接続遮断部と、を備える無線機の通信を制御する無線通信制御方法であって、前記通信部によって、送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によって送信されたことを示す第1符号、および前記送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によらずに送信されたことを示す第2符号のいずれか一方が付与されている前記音声パケットを、送信または受信する受信ステップと、前記通信部によって受信された前記音声パケットに前記第1符号および前記第2符号のいずれ一方が付与されていることを判定する判定ステップと、前記接続遮断部によって、前記通信部による前記音声パケットの送信時に操作される送信スイッチが操作されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続する一方、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていると判定されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続する接続遮断ステップと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ハンズフリー機能を備えたIP無線機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2】上記通信システムにおける無線機の構成を示すブロック図である。
図3】上記通信システムにおいて送信される音声パケットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図3を参照して説明すれば、以下の通りである。
【0012】
[通信システムの構成]
図1は、本実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、通信システムでは、ネットワーク30を介して複数の無線機10が相互に通信を行う。ネットワーク30は、携帯電話網が用いられ、特にLTE(Long Term Evolution)ネットワークが好適に用いられる。ネットワーク30としては、LTEネットワークに限定されず、IEEE802.3、IEEE802.11などが用いられてもよい。このようなネットワーク30には、複数の基地局40、サーバ装置50および管理装置60が接続されている。
【0014】
無線機10は、基地局40と通信することにより、ネットワーク30にアクセスすることができる。無線機10は、基地局40を介して音声パケットを送受信する無線ネットワーク機器(IP無線機)として機能する。
【0015】
サーバ装置50は、無線機10(自局)と、他局としての、無線機10またはネットワーク30にアクセス可能な他の通信機器との間のネットワーク30を介した相互通信を中継する中継装置として機能する。具体的には、サーバ装置50は、自局である無線機10が音声パケットをネットワーク30に送出すると、その音声パケットを受信して、通信相手となる他局の無線機10に転送する。
【0016】
管理装置60は、管理プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータなどで構成されている。管理装置60は、サーバ装置50にアクセスし、サーバ装置50が無線機10を管理するための無線機テーブルと、サーバ装置50がグループを管理するためのグループテーブルとをサーバ装置50に設定する。また、管理装置60は、これらのテーブルに、無線機10、ユーザグループなどを登録する。登録のためのサーバ装置50の操作は、サーバ装置50の管理者によって行われる。
【0017】
無線機10は、サーバ装置50の無線機テーブルに登録され、かつ、後述する記憶部15(図2参照)に情報が記憶されることによって、使用(通信)することができる。記憶部15への情報の書き込みは、無線機10の起動時に、サーバ装置50にアクセスすることにより情報を取得して行われるが、これに限定されず、図示しない設定装置によって行われても良い。その場合、設定装置は、具体的には、パーソナルコンピュータに専用のアプリケーションプログラムを実行させることによって実現される。情報の書き込みのための設定装置の操作は、ユーザによって行われる。
【0018】
上記の通信システムにおいて、サーバ装置50は、無線機10から送信されてくる音声パケット(RTPパケット)を受信し、この音声パケットに含まれている通信制御情報に基づいて、送信先の無線機10のアドレスを認識する。そして、サーバ装置50は、この音声パケットをその送信先の無線機10に転送する。これにより、ネットワーク30を介した音声通信であるにもかかわらず、SIP(Session Initiation Protocol)手順のような通信確立手順を不要にしている。
【0019】
それゆえ、通信システムによれば、ユーザが、無線機10の後述するPTTスイッチ21を押してマイク5に対して発話すれば、その音声が通信相手の無線機10に伝送される。したがって、ユーザは、電話で行うダイヤリングのような呼び出し操作をしなくても、従来のトランシーバと同じような使用感でネットワーク30を介した音声通信を行うことができる。
【0020】
上記の通信システムにおいて、無線機10が実行可能な通信形態は、個別通信、グループ通信および全体通信である。個別通信は、1台の無線機10が他の1台の無線機10を呼び出して行う、一対一の通信形態である。グループ通信は、呼び出しを行う無線機10が、サーバ装置50の上述したグループテーブルに登録されたグループを呼び出し、そのグループに所属する無線機10間で相互に通信する通信形態である。全体通信は、全ての無線機10を対象としたグループ通信であり、呼び出しを行う無線機10が全体の無線機10を呼び出し、全ての無線機10間で相互に通信する。
【0021】
[無線機の詳細な構成]
続いて、無線機10について詳細に説明する。図2は、無線機10の構成を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、無線機10は、制御部1と、操作部2と、表示部3と、オーディオ回路4と、マイク5と、スピーカ6と、ネットワーク通信部7(通信部)とを備えている。無線機10は、通常応答モードと自動応答モードとで動作する。通常応答モードは、後述するPTTスイッチ21の押下(操作)によって応答することができる応答モードである。具体的には、通常応答モードでは、PTTスイッチ21の押下によって送信し、PTTスイッチ21の離上によって送信を終了する。自動応答モードは、PTTスイッチ21の押下によらずに自動的に応答することができる応答モードである。
【0023】
送信先の無線機10は、通常応答モードで動作しているとき、送信元の無線機10から送信される音声パケットを受信すると、当該音声パケットに付与されているフラグがOFF(第1符号)であれば、動作モードを通常応答モードから自動応答モードへ切り替える。これにより、送信先の無線機10は自動応答モードで動作する。送信先の無線機10は、通常応答モードで動作しているとき、送信元の無線機10から送信される音声パケットを受信すると、当該音声パケットに付与されているフラグがON(第2符号)であれば、通常応答モードを維持する。
【0024】
上記の通常応答モードから自動応答モードへの切り替え(以降、適宜「モード切り替え」と称する)を有効にするか無効にするかは、ユーザによって選択することが可能である。モード切り替えが有効である場合、無線機10は、受信した音声パケットのフラグがOFFであれば、動作モードを通常応答モードから自動応答モードに移行する。一方、モード切り替えが無効である場合、無線機10は、受信した音声パケットのフラグがOFFであっても、動作モードを通常応答モードから自動応答モードに移行しない。
【0025】
制御部1は、ファームウェアの更新によって機能の追加または変更が可能な処理装置であって、無線機10の動作を制御する。制御部1は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備えたMPUやDSP(Digital Signal Processor)のようなプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)のようなプログラマブルなLSIによって構成される。制御部1の詳細については後に説明する。
【0026】
操作部2は、操作のための各種のスイッチおよびキーを有している。操作部2は、主要なスイッチとして、送信のためのPTTスイッチ21(送信スイッチ)を有している。また、操作部2は、キーとして、ロックキー22と、モード切替キー23とを有している。ロックキー22は、後述するPTTロック部16によるPTTロック機能の有効と無効とを切り替えるためのキーである。PTTロック機能は、PTTスイッチ21の押下による操作を受け付けずに無効にする機能である。モード切替キー23は、上述したモード切り替えを有効にするか無効にするかを設定するためのキーである。
【0027】
なお、PTTロック機能、モード切り替えの有効・無効を設定する機能などの各種の機能は、単一のキーの操作に限らず、複数のキーの操作の組み合わせによって実現されてもよい。
【0028】
表示部3は、液晶ディスプレイなどの平板型のディスプレイを有している。表示部3は、操作部2へのユーザの操作に応じた情報などの各種の表示情報、例えば通信相手の識別番号、着信した通信相手の識別番号などを表示する。
【0029】
オーディオ回路4は、マイク5に入力された音声信号およびスピーカ6に出力する音声信号の処理を行う回路である。また、オーディオ回路4は、ミュートスイッチ41,42(接続遮断部)を有している。
【0030】
オーディオ回路4は、マイク5から入力されたアナログの音声信号を増幅し、さらにデジタルに変換して制御部1に出力する。また、オーディオ回路4は、制御部1(後述する信号変換部14)によって音声パケットから変換されたデジタルの音声信号をアナログに変換し、さらに増幅してスピーカ6に出力する。
【0031】
ミュートスイッチ41は、マイク5からの音声信号の伝送経路に設けられており、制御部1(後述するオーディオ制御部13)による指令に基づいて、音声信号の通過および遮断を行う。ミュートスイッチ42は、制御部1からの音声信号の伝送経路に設けられており、制御部1(後述するオーディオ制御部13)による指令に基づいて、導通時に音声信号を通過させる一方、開放時に音声信号を遮断する。
【0032】
オーディオ回路4は、図示はしないがVOX機能を実現するためのVOX回路を有している。VOX機能は、マイク5の入力レベルと、マイク5から出力される音声信号の持続時間とに基づいて、ユーザの音声が入力されたか否かを判定し、音声が入力されたと判定したときに、ミュートスイッチ41をPTTスイッチ21が押下されたときと同じ状態に切り替える機能である。これにより、全二重通信を行う無線機10が無音の音声パケットを送信し続けることがないように、PTTスイッチ21が押下されたときと同様に、音声が入力されたときのみ音声パケットを送信することができる。
【0033】
ネットワーク通信部7は、携帯電話網に準拠した通信方式で無線通信を行う回路を有している。当該回路は、携帯電話網がLTE網である場合、FDD-LTE(Frequency Division Duplex Long Term Evolution)に準拠した通信方式で無線通信を行う。ネットワーク通信部7は、制御部1から送出された音声パケットを基地局40に送信する。
【0034】
制御部1は、表示制御部11と、受信監視部12と、オーディオ制御部13(接続遮断制御部,報知部)と、信号変換部14(判定部)と、記憶部15と、PTTロック部16(操作無効部)とを有している。
【0035】
表示制御部11は、操作部2への操作内容および無線機10の動作状態に応じた表示情報を表示部に与える。表示部3は、与えられた表示情報を所定の表示形態で表示する。
【0036】
受信監視部12は、ネットワーク通信部7による音声パケットの受信状況を監視する。受信監視部12は、ネットワーク通信部7から音声パケットを受けると、音声パケットを受信したことを通知する受信通知を、音声パケットを受けている期間にオーディオ制御部13に与える。
【0037】
オーディオ制御部13は、ミュートスイッチ41を開放させるときにミュート開始信号をミュートスイッチ41に与える一方、ミュートスイッチ41を導通させるときにミュート解除信号をミュートスイッチ41に与える。また、オーディオ制御部13は、ミュートスイッチ42を開放させるときにミュート開始信号をミュートスイッチ42に与える一方、ミュートスイッチ42を導通させるときにミュート解除信号をミュートスイッチ42に与える。
【0038】
オーディオ制御部13は、PTTスイッチ21が押下されたとき、もしくは後述する信号変換部14からの非自動送信通知を受けたときに、ミュートスイッチ41,42にミュート解除信号を与える。これにより、マイク5による音声入力を有効にするとともに、スピーカ6による音声出力を有効にする。また、オーディオ制御部13は、押下されているPTTスイッチ21が離上されたときに、ミュートスイッチ41にミュート開始信号を与えるとともに、ミュートスイッチ42にミュート解除信号を与える。これにより、マイク5による音声入力を無効にするとともに、スピーカ6による音声出力を有効にする。
【0039】
信号変換部14は、ミュートスイッチ41を介してオーディオ回路4から出力されるデジタルの音声信号を音声パケットに変換する。また、信号変換部14は、ネットワーク通信部7から送出される音声パケットをデジタルの音声信号に変換して、オーディオ回路4に送出する。
【0040】
信号変換部14は、後述する記憶部15に記憶されている上述したモード切り替えの設定が有効であるときに、受信監視部12からの受信通知を受けると、受信された音声パケットに設けられたフラグ(図3参照)を確認(判定)する。OFFのフラグは、送信された音声パケットが、通常応答モードで動作している送信元の無線機10から送信されたことを示す。ONのフラグは、送信された音声パケットが、自動応答モードで動作している送信元の無線機10から送信されたことを示す。
【0041】
信号変換部14は、後述する記憶部15に記憶されている上述したモード切り替えの設定が有効であるときに、フラグがONであることを判定すると、受信された音声パケットが自動応答モードで動作している無線機10から送信されたことをオーディオ制御部13に通知する(自動送信通知)。また、信号変換部14は、フラグがOFFであることを判定すると、受信された音声パケットが自動応答モードで動作していない無線機10から送信されたことをオーディオ制御部13に通知する(非自動送信通知)。また、信号変換部14は、モード切り替えの設定が無効であるときに、フラグの状態を確認せず、かつオーディオ制御部13への通知(自動送信通知および非自動送信通知の両方)を行わない。
【0042】
信号変換部14は、無線機10が自動応答モードで動作している状態で、音声パケットを送信するときに、音声パケットにおけるフラグをONする。また、信号変換部14は、無線機10が通常応答モードで動作している状態で、音声パケットを送信するときに、音声パケットにおけるフラグをOFFする。
【0043】
記憶部15は、図示しない複数の記憶エリアを有している。記憶部15は、無線機番号、グループ番号およびグループに属する無線機番号を、個別に異なる記憶エリアに記憶している。また、記憶部15は、上述したモード切り替えの設定を専用の記憶エリアに記憶している。モード切り替えの設定は、上述したモード切替キー23の操作によって書き替えられる。
【0044】
無線機番号は、無線機10のそれぞれに付与された識別情報であり、1桁または複数桁の数値で表現されている。無線機番号は、サーバ装置50に設定された上述の無線機テーブルに登録される番号と対応しており、無線機10から変更できない。グループ番号は、グループ通信を行う場合にグループを指定するための識別情報である。また、そのグループに所属する無線機10の無線機番号が、グループ番号毎に記憶部15に記憶される。
【0045】
PTTロック部16は、PTTスイッチ21の操作を受け付けないPTTロック機能を有効または無効にする。具体的には、PTTロック部16は、無線機10の電源投入時における初期状態などのPTTロック機能が無効である状態において、上述したロックキー22が操作されること(例えば所定時間以上の押下)によって、PTTスイッチ21の操作を無効にする。また、PTTロック部16は、PTTロック機能を無効にしている状態において、ロックキー22が操作されることによって、PTTロック機能を有効にする。なお、PTTロック部16は、PTTスイッチ21の押下だけでなく、操作部2における一部のキーの操作を受け付けないようにしてもよい。
【0046】
PTTロック部16は、PTTロック機能を有効にするとき、モード切り替え無効指示を信号変換部14に与える。モード切り替え無効指示は、記憶部15に記憶されているモード切り替えの設定に関わらず、その設定を無効として扱う指示である。また、PTTロック部16は、PTTロック機能を無効にするとき、モード切り替え参照指示を信号変換部14に与える。モード切り替え参照指示は、記憶部15に記憶されているモード切り替えの設定を参照して、その設定にしたがった動作を信号変換部14にさせる指示である。
【0047】
[音声パケットの詳細]
ここで、上記の音声パケットの詳細について説明する。図3は、通信システムにおいて送信される音声パケットの構成を示す図である。
【0048】
図3に示すように、音声パケットは、ヘッダおよびデータ本体(ペイロード)からなる。ヘッダには、送信先のIPアドレス、送信先のポート番号、送信元のIPアドレスおよび送信元のポート番号が含まれている。
【0049】
無線機10からサーバ装置50に送信される音声パケットにおいて、送信先のIPアドレスはサーバ装置50のIPアドレスであり、送信元のIPアドレスは無線機10のIPアドレスである。また、サーバ装置50から無線機10に送信される音声パケットにおいて、送信先のIPアドレスは無線機10のIPアドレスであり、送信元のIPアドレスはサーバ装置50のIPアドレスである。
【0050】
ポート番号は、各機器において、この音声通信を行うプログラムに対応している。データ本体には、デジタル化された音声信号とともに、通信制御情報が含まれている。通信制御情報は、呼出種別、呼出ID、発信ID、ユーザグループ番号およびフラグを含んでいる。
【0051】
呼出種別は、音声パケットの通信種別(個別通信、グループ通信、全体通信)を識別する情報である。呼出IDは、通信相手を識別する情報であり、個別通信の場合、通信相手の無線機10の無線機番号が用いられ、グループ通信の場合、通信相手のグループのグループ番号が用いられる。
【0052】
発信IDは、音声信号の発信元(送信元)を示す情報である。無線機10からサーバ装置50に送信される音声パケットにおいて、発信IDには、その無線機10の無線機番号が書き込まれる。無線機10から送信された音声パケットの音声データは、サーバ装置50によって別の音声パケットに移されて通信相手の無線機10に転送される。通信相手の無線機10においても、受信した音声パケットの送信元を識別できるように、サーバ装置50から転送される音声パケットの発信IDには、その音声パケットを送信してきた無線機10のIDが書き込まれる。
【0053】
グループ通信の場合、グループ通信に参加している複数の無線機10から受信した音声データをミキシングして、グループ通信に参加している無線機10に転送する。音声パケットを送信した無線機10に自局が送信した音声パケットが返送されないように、ミキシングは無線機10ごとに個別に行われる。具体的には、サーバ装置50は、音声パケットを送信していない無線機10に対しては、受信した全ての音声パケットの音声データをミキシングした音声データを含む音声パケットを転送する。また、サーバ装置50は、音声パケットを送信してきた無線機10に対して、その無線機10が送信した音声パケットの音声データを除外して、その他の無線機10からの音声データをミキシングした音声データを含む音声パケットを転送する。これにより、無線機10が自ら送信した音声パケットの音声データによってエコーが生じることを防止することができる。
【0054】
フラグは、上述したように、フラグが設けられた音声パケットが、自動応答モードによって通信を行う無線機10から送信された音声パケットであることを示すために設けられている。フラグは、ONであるときに、音声パケットが自動応答モードによって通信を行う無線機10から送信された音声パケットであることを示す符号として音声パケットに付与される。一方、フラグは、OFFであるときに、音声パケットが、自動応答モードではない動作モード、すなわち通常応答モードによって通信を行う無線機10から送信された音声パケットであることを示す符号として音声パケットに付与される。このように、音声パケットは、ONであるフラグおよびOFFであるフラグのいずれかが付与されている。
【0055】
[無線機の通常応答モード時の動作]
上記のように構成される無線機10の動作について説明する。最初に、自動応答モードに切り替わらず、通常応答モードのみで動作する場合の無線機10の動作について説明する。
【0056】
まず、自局の無線機10は、電源スイッチが投入されてから、PTTスイッチ21が押下されていないとき、オーディオ制御部13には、PTTスイッチ21からの操作信号が入力されない。このため、オーディオ制御部13は、ミュートスイッチ41に対してミュート開始信号を与える一方、ミュートスイッチ42に対してミュート解除信号を与える。これにより、ミュートスイッチ41は開放され、ミュートスイッチ42は導通する。
【0057】
モード切り替えが有効である場合、この状態から、発信局である無線機10から音声パケットが自局の無線機10に送信されると、自局の無線機10のネットワーク通信部7によって音声パケットが受信される。受信監視部12は、ネットワーク通信部7からの音声パケットを受けると、受信通知をオーディオ制御部13に与える。
【0058】
信号変換部14は、音声パケットにおけるフラグの状態を確認する。信号変換部14は、フラグがONであると、オーディオ制御部13に自動送信通知を行う。信号変換部14は、フラグがOFFであると、オーディオ制御部13に非自動送信通知を行う。また、信号変換部14は、音声パケットにおける音声データを連続したデジタルの音声信号に変換してオーディオ回路4に送出する。
【0059】
オーディオ制御部13は、受信通知および自動送信通知を受けると、ミュートスイッチ42にミュート解除信号を与える。ミュートスイッチ42は、ミュート解除信号によって導通する一方、ミュートスイッチ41は、ミュート解除信号が与えられないので非導通のままとなる。これにより、自局の無線機10は、他局の無線機10からの音声パケットを受信したときに、音声を出力する。ただし、オーディオ制御部13は、音声パケットが受信中であっても、PTTスイッチ21が操作されると、ミュートスイッチ41にもミュート解除信号を与える。これにより、自局の無線機10は、PTTスイッチ21の操作による通常の送信動作が可能になる。
【0060】
このようにして、無線機10は、音声パケットに付されたフラグがONであって、自動応答モードにて動作している無線機10と通信するとき、PTTスイッチ21の操作によって送信し、PTTスイッチ21の非操作によって送信を無効にする通常応答モードで動作する。通常応答モードでは、スピーカ6による音声出力が常に有効であるので、送信相手との同時通話が可能になる。
【0061】
モード切り替えが無効である場合、信号変換部14は、受信した音声パケットのフラグの状態に関わらずフラグの状態を確認しないため、オーディオ制御部13へ自動送信通知および非自動送信通知のいずれの通知も行わない。オーディオ制御部13は、受信監視部12からの受信通知を受けると、ミュートスイッチ42にミュート解除信号を与える。ミュートスイッチ42は、ミュート解除信号によって導通する一方、ミュートスイッチ41は、ミュート解除信号が与えられないので非導通のままとなる。これにより、自局の無線機10は、他局の無線機10からの音声パケットを受信したときに、音声を出力する一方、他局の無線機10へ音声パケットを送信できない。
【0062】
なお、後述する自動応答モードの状態からPTTスイッチ21が押下されると、オーディオ制御部13は、PTTスイッチ21からの操作信号を受けて、ミュートスイッチ41,42にミュート解除信号を与える。これにより、ミュートスイッチ41,42が導通状態を維持する。この状態では、自動応答モードが解除され、通常応答モードに移行する。
【0063】
送信時、信号変換部14は、PTTスイッチ21からの操作信号を受けると、音声パケットのフラグをOFFに書き替える。これにより、送信される音声パケットが通常応答モードで動作している無線機10から送信されたことを、送信先の無線機10で認識することができる。
【0064】
[無線機の自動応答モード時の動作]
続いて、通常応答モードから自動応答モードへ切り替わる場合の無線機10の動作について説明する。
【0065】
モード切り替えが有効である場合、オーディオ制御部13は、通常応答モード時に受信通知および非自動送信通知を受けると、ミュートスイッチ41,42にミュート解除信号を与える。ミュートスイッチ41,42は、ミュート解除信号によって導通する。ミュートスイッチ41,42が導通することにより、マイク5による音声入力が有効になるとともに、スピーカ6による音声出力が有効になる。これにより、自局の無線機10は、自動応答モードで動作するようになる。
【0066】
また、オーディオ制御部13は、受信通知および非自動送信通知を受けると、動作モードが自動応答モードに移行したことを報知するための、デジタルの報知音声信号をオーディオ回路4に与える。この報知音声信号は、オーディオ回路4におけるミュートスイッチ42側の入力端子に入力される。オーディオ回路4は、この報知音声信号をアナログに変換してミュートスイッチ42を介してスピーカ6に出力する。これにより、スピーカ6は、報知音声信号を報知音に変換して出力する。
【0067】
自動応答モードでは、オーディオ回路4は、信号変換部14からの音声信号をアナログに変換して所定の処理を施した後、アナログの音声信号を導通状態にあるミュートスイッチ42を介してスピーカ6に出力する。一方、オーディオ回路4は、マイク5からの音声信号に所定の処理を施してデジタルの音声信号に変換した後、導通状態にあるミュートスイッチ41を介して信号変換部14に出力する。
【0068】
送信時、信号変換部14は、オーディオ回路4からのデジタルの音声信号を音声パケットに変換して、ネットワーク通信部7に送出する。信号変換部14は、音声信号の音声パケットへの変換時にフラグをONする。ネットワーク通信部7は、信号変換部14からの音声パケットを、ネットワーク30を介して送信先の無線機10に宛てて送信する。
【0069】
自局の無線機10は、上記のように通常応答モードで動作しているとき、送信局の無線機10からの音声パケットを受信すると、その音声パケットのフラグがOFFであることが、信号変換部14によって認識される。これにより、自局の無線機10は、自動応答モードに移行する。自局の無線機10を通常応答モードに戻す場合、その無線機10を扱うユーザが、PTTスイッチ21を操作すればよい。
【0070】
[PTTロック機能の無効時および有効時における無線機の動作]
PTTロック機能がロックキー22の操作によって無効に設定されているとき、PTTロック部16は、PTTスイッチ21の押下による操作信号をオーディオ制御部13に伝達するとともに、上述したモード切り替え参照信号を信号変換部14に与える。これにより、オーディオ制御部13は、上述したように、PTTスイッチ21の押下に伴って、ミュートスイッチ42を導通させる。また、信号変換部14は、記憶部15に記憶されているモード切り替えの設定を参照して、上述したように、設定が有効である場合または設定が無効である場合の動作を行う。
【0071】
一方、PTTロック機能がロックキー22の操作によって有効に設定されているとき、PTTロック部16は、PTTスイッチ21の押下による操作信号をオーディオ制御部13に伝達しないとともに、上述したモード切り替え無効信号を信号変換部14に与える。これにより、PTTスイッチ21の押下は無効になる。また、信号変換部14は、記憶部15に記憶されているモード切り替えの設定が有効であっても、モード切り替えを無効として扱うため、上述したモード切り替えが無効である場合と同様に動作する。この場合、信号変換部14は、ミュートスイッチ41を道通させない。この結果、マイク5とネットワーク通信部7との間が遮断されることにより、音声パケットの送信ができない。
【0072】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施形態に係る無線機10は、マイク5と、スピーカ6と、ネットワーク通信部7と、受信監視部12と、オーディオ制御部13と、PTTスイッチ21と、ミュートスイッチ41,42とを備えている。
【0073】
ネットワーク通信部7は、ネットワーク30を介して音声パケット受信および送信する。PTTスイッチ21は、ネットワーク通信部7による音声パケットの送信時に操作される。受信監視部12は、ネットワーク通信部7による音声パケットの受信を検知する(検知ステップ)。ミュートスイッチ41は、マイク5とネットワーク通信部7とを、マイク5と信号変換部14との間で接続または遮断する(接続遮断ステップ)。ミュートスイッチ42は、スピーカ6とネットワーク通信部7とを、スピーカ6と信号変換部14との間で接続または遮断する(接続遮断ステップ)。
【0074】
オーディオ制御部13は、PTTスイッチ21が操作されると、マイク5とネットワーク通信部7とを接続するようにミュートスイッチ41を制御する。また、オーディオ制御部13は、音声パケットの受信が検知されると、マイク5とネットワーク通信部7とを接続するとともに、スピーカ6とネットワーク通信部7とを接続するようにミュートスイッチ41,42を制御する。
【0075】
上記の構成によれば、自局の無線機10は、送信局の無線機10から音声パケットを受信すると、ミュートスイッチ41,42が導通する。これにより、マイク5からオーディオ回路4への音声信号の入力と、オーディオ回路4からスピーカ6への音声信号の出力が可能になる。それゆえ、自局の無線機10は、送信局の無線機10からの送信に対して、PTTスイッチ21の操作によらずに自動的に送信(応答)が可能になる。したがって、自局の無線機10は、音声パケットの受信によってハンズフリーによる通話が可能になる。よって、ハンズフリー機能を備えたIP無線機を実現することができる。
【0076】
また、オーディオ制御部13は、受信した音声パケットのフラグがONであるとき、すなわちPTTスイッチ21の操作によらずに送信されたことを示す符号が付与されているとき、ミュートスイッチ41を開放するように制御する。これにより、マイク5とネットワーク通信部7とが遮断される。
【0077】
送信元の無線機10がPTTスイッチ21の操作によらずに音声パケットを送信する場合、送信元の無線機10は、自らの送信を停止できない。このため、送信先の無線機10が送信元の無線機10から音声パケットを受信することにより、PTTスイッチ21の操作によらずに送信可能になると、送信先の無線機10も送信を停止することができなくなる。このため、相互に自動応答モードで動作している双方の無線機10が送信を停止できないという不都合が生じる。
【0078】
これに対し、上記の構成によれば、送信元の無線機10からの音声パケットのフラグがONであると、送信先の無線機10は、自動応答モードで動作している無線機10からの音声パケットを受信したときに、動作モードを通常応答モードに切り替える。これにより、送信元および送信先の無線機10がともに送信を停止できないという事態を回避することができる。
【0079】
また、オーディオ制御部13は、受信監視部12からの受信通知および信号変換部14からの非自動送信通知を受けると、スピーカ6が報知音を発するための報知音声信号を発生する。すると、オーディオ回路4は、ミュートスイッチ42を介して報知音声信号をスピーカに出力する。スピーカ6は、報知音声信号に基づいて報知音を発する。
【0080】
これにより、通常応答モードで動作している無線機10からの音声パケットが受信されると、ユーザは、自局の無線機10が自動応答モードによる動作が可能になったことを知ることができる。
【0081】
〔ソフトウェアによる実現例〕
無線機10の制御ブロック(特に受信監視部12、オーディオ制御部13および信号変換部14)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0082】
後者の場合、無線機10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラム(無線通信制御プログラムを含む)の命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサ(制御部1を構成するプロセッサ)を備えているとともに、上記プログラムを記憶したコンピュータで読み取り可能な記録媒体を備えている。
【0083】
そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。
【0084】
上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0085】
〔実施形態の総括〕
本実施形態の一態様に係る無線機は、ネットワークを介して音声パケットを送信および受信する通信部と、音声パケットの送信時に操作される送信スイッチと、マイクと、スピーカと、判定部と、前記マイクと前記通信部とを接続または遮断するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続または遮断する接続遮断部と、前記接続遮断部を制御する接続遮断制御部と、を備え、前記通信部は、送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によって送信されたことを示す第1符号、および前記送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によらずに送信されたことを示す第2符号のいずれか一方が付与されている前記音声パケットを、送信または受信し、前記判定部は、前記通信部によって受信された前記音声パケットに前記第1符号および前記第2符号のいずれか一方が付与されていることを判定し、前記接続遮断制御部は、前記送信スイッチが操作されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するように前記接続遮断部を制御する一方、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていると前記判定部に判定されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続するように前記接続遮断部を制御する。
【0086】
本実施形態の一態様に係る無線通信制御方法は、ネットワークを介して音声パケットを送信および受信する通信部と、音声パケットの送信時に操作される送信スイッチと、マイクと、スピーカと、前記マイクと前記通信部とを接続または遮断するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続または遮断する接続遮断部と、を備える無線機の通信を制御する無線通信制御方法であって、前記通信部によって、送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によって送信されたことを示す第1符号、および前記送信元の無線機から前記送信スイッチの操作によらずに送信されたことを示す第2符号のいずれか一方が付与されている前記音声パケットを、送信または受信する受信ステップと、前記通信部によって受信された前記音声パケットに前記第1符号および前記第2符号のいずれ一方が付与されていることを判定する判定ステップと、前記接続遮断部によって、前記通信部による前記音声パケットの送信時に操作される送信スイッチが操作されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続する一方、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていると判定されると、前記音声パケットの送信が可能となるように前記マイクと前記通信部とを接続するとともに、前記スピーカと前記通信部とを接続する接続遮断ステップと、を含んでいる。
【0087】
上記の構成によれば、音声パケットの受信が検知されると、マイクからの音声信号による音声パケットの通信部への出力および受信された音声パケットによる音声信号のスピーカへの出力が有効になる。これにより、送信スイッチの操作によらずに、送信信号の送信および音声パケットの受信を行う全二重通信が可能になる。したがって、ハンズフリー機能を備えたIP無線機を実現することができる。
【0088】
前記無線機において、前記接続遮断制御部は、前記送信スイッチが操作されていないときに、受信された前記音声パケットに前記第2符号が付与されていると判定されると、前記マイクと前記通信部とを遮断するように前記接続遮断部を制御してもよい。
【0089】
送信元の無線機が送信スイッチの操作によらずに音声パケットを送信する場合、送信元の無線機は、自らの送信を停止できない。このため、送信先の無線機が、送信元の無線機から音声パケットを受信することにより、送信スイッチの操作によらずに送信可能になると、当該無線機も送信を停止することができなくなる。
【0090】
これに対し、上記の構成によれば、送信元の無線機からの音声パケットに第2符号が付与されていると、送信先の無線機は、送信スイッチの操作によらずに送信が可能となっている無線機からの音声パケットを受信しても、送信が可能にならない。これにより、送信元および送信先の無線機がともに送信を停止できないという事態を回避することができる。
【0091】
前記無線機は、前記音声パケットの受信が検知され、かつ前記第2符号が前記音声パケットに付与されているとき、前記スピーカが報知音を発するための報知音声信号を発生する報知部をさらに備えていてもよい。
【0092】
上記の構成によれば、送信スイッチの操作によらず送信可能な無線機からの音声パケットが受信されると、スピーカは、報知音声信号に基づいて報知音を発する。したがって、ユーザは、音声パケットが受信されて、送信スイッチの操作によらずに送信が可能になったことを知ることができる。
【0093】
前記無線機は、前記送信スイッチの操作を無効にする操作無効部をさらに備え、前記接続遮断制御部は、前記送信スイッチの操作が無効にされているときに、受信された前記音声パケットに前記第1符号が付与されていても、前記音声パケットを送信できないように前記マイクと前記通信部とを遮断してもよい。
【0094】
上記の構成によれば、送信イッチの操作を無効にすることで、第1符号が付与されている音声パケットを受信しても、送信スイッチの操作によらない送信信号の送信を可能にしないことを意図的に行うことができる。
【0095】
前記無線機はコンピュータによって実現されてもよい。この場合には、コンピュータを上記無線機が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記無線機をコンピュータにて実現させる無線通信制御プログラムも、本発明の範疇に入る。
【0096】
〔付記事項〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
5 マイク
6 スピーカ
7 ネットワーク通信部(通信部)
10 無線機
13 オーディオ制御部(接続遮断制御部,報知部)
14 信号変換部(判定部)
16 PTTロック部(操作無効部)
21 PTTスイッチ(送信スイッチ)
30 ネットワーク
41,42 ミュートスイッチ(接続遮断部)
図1
図2
図3