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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】油圧ユニット及び油圧装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20240911BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F15B11/00 H
F15B11/028 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021043978
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143465
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】中村 博一
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 均
(72)【発明者】
【氏名】井上 峰雄
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-256623(JP,A)
【文献】特開2019-49204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
F15B 11/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータ(3)と流体的に接続される油圧回路(10)と、
上記油圧回路(10)を制御する制御装置(20)と
を備え、
上記油圧回路(10)は、
作動油を貯留する作動油タンク(11)と、
作動油を上記作動油タンク(11)から上記油圧アクチュエータ(3)に供給する油圧ポンプ(12)と、
上記油圧ポンプ(12)の吐出側と上記油圧アクチュエータ(3)とを流体的に接続する吐出流路(14)と、
上記吐出流路(14)の作動油の流れを遮断するバルブ(15)と、
上記吐出流路(14)のうち上記バルブ(15)と上記油圧ポンプ(12)との間の流路部分(14a)内の作動油の圧力を検出する圧力センサ(16)と、
上記流路部分(14a)と上記作動油タンク(11)とを流体的に接続する漏らし流路(17)と
を備え、
上記制御装置(20)は、上記圧力センサ(16)が検出する圧力を所定圧力に保持するように上記油圧ポンプ(12)を制御する圧力制御を実行可能であり、
上記漏らし流路(17)には、上記漏らし流路(17)を流れる作動油の流量を調整する調整部(30)が設けられ、
上記制御装置(20)は、上記バルブ(15)が作動油の流れを許容している状態で上記圧力制御を実行した場合における上記油圧ポンプ(12)の第1回転数(N1)が所定の第1判定回転数(Nr1)を上回っているとき、かつ、上記バルブ(15)が作動油の流れを遮断している状態で上記圧力制御を実行した場合における上記油圧ポンプ(12)の第2回転数(N2)が所定の第2判定回転数(Nr2)を下回っているときに、上記漏らし流路(17)を流れる作動油の流量を調整する、油圧ユニット(1,101,201)。
【請求項2】
上記調整部(30)は、
第1固定絞り弁(33)と、
上記第1固定絞り弁(33)の絞り量と異なる絞り量を有する第2固定絞り弁(34)と、
上記流路部分(14a)から上記作動油タンク(11)へ流れる作動油が上記第1固定絞り弁(33)を流れる第1切換位置と、上記流路部分(14a)から上記作動油タンク(11)へ流れる作動油が上記第2固定絞り弁(34)を流れる第2切換位置とを切り替え可能な電磁弁(31)と
を備え、
上記制御装置(20)は、上記電磁弁(31)の上記第1切換位置と上記第2切換位置とを切り替えることで上記漏らし流路(17)を流れる作動油の流量を調整する、請求項1に記載の油圧ユニット(1)。
【請求項3】
上記調整部(30)は、電磁比例制御弁(131)を備え、
上記制御装置(20)は、上記電磁比例制御弁(131)の開度を調整することで上記漏らし流路(17)を流れる作動油の流量を調整する、請求項1に記載の油圧ユニット(101)。
【請求項4】
上記調整部(30)は、可変絞り弁(231)を備え、
上記制御装置(20)は、ユーザに上記可変絞り弁(231)の手動調整を促す旨の報知を行う、請求項1に記載の油圧ユニット(201)。
【請求項5】
上記制御装置(20)は、上記第1回転数(N1)と上記第2回転数(N2)との差(N1-N2)が大きいほど、上記漏らし流路(17)を流れる作動油の流量を少なくする、請求項1から4のいずれか1項に記載の油圧ユニット(1,101,201)。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧ユニット(1,101,201)と、
上記油圧ユニット(1,101,201)から作動油が供給される上記油圧アクチュエータ(3)を備えた主機(2)と
を備え、
上記制御装置(20)は、上記漏らし流路(17)を流れる作動油の流量を調整した場合に上記差(N1-N2)が所定値を超えるときに、ユーザに上記主機(2)における作動油の漏れの改善を促す旨の報知を行う、油圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ユニット及び油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ユニットとしては、流体タンク、流体タンクの流体を流体圧アクチュエータに供給する流体圧ポンプ、及び流体圧ポンプを駆動する可変速モータを有する油圧回路を備えるものがある(特許文献1参照)。この油圧ユニットは、吐出圧力が一定値に制御される状態(保圧状態)における可変速モータの回転数が予め定めた基準値を超えると、異常を警告する異常警告部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-95324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の油圧ユニットでは、油圧回路の吐出側に工作機械又はプレス機械のような主機の油圧回路が接続される。このため、主機の油圧回路に減圧弁のような漏れが無視できない機器が設けられている場合には、油圧ユニットの油圧回路又は主機の油圧回路のいずれにも異常がないときでも、保圧状態での油圧ポンプの回転数が上昇し、省エネ性が低下するという問題がある。
【0005】
本開示は、省エネ性を改善できる油圧ユニットを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の油圧ユニットは、
油圧アクチュエータと流体的に接続される油圧回路と、
上記油圧回路を制御する制御装置と
を備え、
上記油圧回路は、
作動油を貯留する作動油タンクと、
作動油を上記作動油タンクから上記油圧アクチュエータに供給する油圧ポンプと、
上記油圧ポンプの吐出側と上記油圧アクチュエータとを流体的に接続する吐出流路と、
上記吐出流路の作動油の流れを遮断するバルブと、
上記吐出流路のうち上記バルブと上記油圧ポンプとの間の流路部分内の作動油の圧力を検出する圧力センサと、
上記流路部分と上記作動油タンクとを流体的に接続する漏らし流路と
を備え、
上記制御装置は、上記圧力センサが検出する圧力を所定圧力に保持するように上記油圧ポンプを制御する圧力制御を実行可能であり、
上記漏らし流路には、上記漏らし流路を流れる作動油の流量を調整する調整部が設けられ、
上記制御装置は、上記バルブが作動油の流れを許容している状態で上記圧力制御を実行した場合における上記油圧ポンプの第1回転数が所定の第1判定回転数を上回っているとき、かつ、上記バルブが作動油の流れを遮断している状態で上記圧力制御を実行した場合における上記油圧ポンプの第2回転数が所定の第2判定回転数を下回っているときに、上記漏らし流路を流れる作動油の流量を調整する。
【0007】
本開示によれば、油圧ポンプの第1回転数と第2回転数から油圧アクチュエータ側での作動油の漏れ量が多いことを特定できる。この場合に、漏らし流路からの漏れ量を抑制することで、圧力制御において油圧ポンプの回転数が上昇することを抑制でき、省エネ性を改善できる。
【0008】
一実施形態の油圧ユニットでは、
上記調整部は、
第1固定絞り弁と、
上記第1固定絞り弁の絞り量と異なる絞り量を有する第2固定絞り弁と、
上記流路部分から上記作動油タンクへ流れる作動油が上記第1固定絞り弁を流れる第1切換位置と、上記流路部分から上記作動油タンクへ流れる作動油が上記第2固定絞り弁を流れる第2切換位置とを切り替え可能な電磁弁と
を備え、
上記制御装置は、上記電磁弁の上記第1切換位置と上記第2切換位置とを切り替えることで上記漏らし流路を流れる作動油の流量を調整する。
【0009】
一実施形態の油圧ユニットでは、
上記調整部は、電磁比例制御弁を備え、
上記制御装置は、上記電磁比例制御弁の開度を調整することで上記漏らし流路を流れる作動油の流量を調整する。
【0010】
一実施形態の油圧ユニットでは、
上記調整部は、可変絞り弁を備え、
上記制御装置は、ユーザに上記可変絞り弁の手動調整を促す旨の報知を行う。
【0011】
一実施形態の油圧ユニットでは、
上記制御装置は、上記第1回転数と上記第2回転数との差が大きいほど、上記漏らし流路を流れる作動油の流量を少なくする。
【0012】
圧力制御を実行したときの油圧ポンプの回転数は、油圧ユニット側での作動油の漏れ量、又は油圧ユニットから作動油が供給される油圧アクチュエータ側での作動油の漏れ量によって決まる。具体的には、第1回転数は、油圧ユニット側での作動油の漏れ量と油圧アクチュエータ側での作動油の漏れ量とによって決まる。一方で、第2回転数は、油圧アクチュエータ側での作動油の漏れ量に関わらず、油圧ユニット側での作動油の漏れ量によって決まる。このため、第1回転数と第2回転数との差は、油圧アクチュエータ側の漏れ量を反映している。具体的には、第1回転数と第2回転数との差が大きいほど、油圧アクチュエータ側での作動油の漏れ量は多い。上記実施形態によれば、第1回転数と第2回転数との差が大きいほど、つまり油圧アクチュエータ側での作動油の漏れ量が多いほど、漏らし流路を流れる作動油の流量を少なくする。これにより、圧力制御における油圧ポンプの回転数の上昇を抑制でき、省エネ性を改善できる。
【0013】
本開示の油圧装置は、
上記油圧ユニットと、
上記油圧ユニットから作動油が供給される上記油圧アクチュエータを備えた主機と
を備え、
上記制御装置は、上記漏らし流路を流れる作動油の流量を調整した場合に上記差が所定値を超えるときに、ユーザに上記主機における作動油の漏れの改善を促す旨の報知を行う。
【0014】
漏らし流路を流れる作動油の流量を調整した場合に第1回転数と第2回転数との差が所定値を超えるとき、主機側での作動油の漏れ量が多く、漏らし流路を流れる作動油の流量の調整では圧力制御における油圧ポンプの回転数の上昇を抑制できない。上記実施形態では、漏らし流路を流れる作動油の流量を調整した場合に第1回転数と第2回転数との差が所定値を超えるときにユーザに主機における作動油の漏れの改善を促す報知を行うことで、主機における作動油の漏れの改善を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の第1実施形態に係る油圧装置の構成を示す回路図である。
図2】第1実施形態に係る油圧ユニットの構成を示す回路図である。
図3】第1実施形態に係る油圧ポンプの吐出圧力-吐出流量特性図である。
図4】第1実施形態に係る制御装置の作動油漏れの診断制御を説明するためのフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る油圧ユニットの構成を示す回路図である。
図6】第3実施形態に係る油圧ユニットの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態に係る油圧ユニットを説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係る油圧装置の構成を示す回路図である。
【0018】
図1を参照すると、本実施形態の油圧装置は、例えば、油圧ユニット1と、主機2とを備える。
【0019】
本実施形態の油圧ユニット1は、主機2に流体的に接続されている。油圧ユニット1は、主機2に作動油を供給する。
【0020】
本実施形態の主機2は、工作機械(例えば、マシニングセンタ)である。主機2は、3台の油圧アクチュエータ3A~3Cを備える。以下の説明において、3台の油圧アクチュエータ3A~3Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に油圧アクチュエータ3という場合がある。
【0021】
油圧アクチュエータ3は、油圧シリンダや油圧モータのような油圧アクチュエータ本体3aと、方向切換弁3bと、減圧弁3cとを有する油圧回路を備える。油圧アクチュエータ本体3aは、方向切換弁3b及び減圧弁3cを介して油圧ユニット1と流体的に接続されている。油圧アクチュエータ本体3aは、油圧ユニット1から作動油を供給されて、駆動される。なお、本実施形態では、油圧アクチュエータ3A~3Cのそれぞれが、油圧アクチュエータ本体3aと、方向切換弁3bと、減圧弁3cとを有する油圧回路を備えたが、本開示に係る主機の構成はこれに限られない。
【0022】
図2は、本実施形態の油圧ユニット1の構成を示す回路図である。
【0023】
図2を参照すると、油圧ユニット1は、油圧アクチュエータ3(図1に示す)と流体的に接続された油圧回路10と、油圧回路10を制御する制御装置20とを備える。
【0024】
(油圧回路)
油圧回路10は、作動油を貯留する作動油タンク11と、作動油を作動油タンク11から油圧アクチュエータ3(図1に示す)に供給する油圧ポンプ12と、油圧ポンプ12を駆動するモータ13とを備える。また、油圧回路10は、油圧ポンプ12の吐出側と油圧アクチュエータ3とを流体的に接続する吐出流路14を備える。油圧回路10は、吐出流路14の作動油の流れを遮断するバルブ15と、吐出流路14のうちバルブ15と油圧ポンプ12との間の流路部分14a内の作動油の圧力を検出する圧力センサ16を備える。また、油圧回路10は、吐出流路14の流路部分14aと作動油タンク11とを流体的に接続する漏らし流路17を備える。
【0025】
本実施形態の油圧ポンプ12は、作動油タンク11内の作動油を吸入して吐出する固定容量型ポンプである。
【0026】
本実施形態のモータ13は、油圧ポンプ12に機械的に接続され、油圧ポンプ12を駆動する可変速モータである。本実施形態のモータ13は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータである。本実施形態のモータ13には、パルスジェネレータ18が接続されている。パルスジェネレータ18は、モータ13の回転速度を表すパルス信号を出力する。
【0027】
吐出流路14は、油圧アクチュエータ3(図1に示す)に流体的に接続されている。また、油圧ポンプ12とバルブ15とによって吐出流路14のうちの流路部分14aが画定されている。言い換えれば、吐出流路14の流路部分14aは、吐出流路14のうちの油圧ポンプ12とバルブ15との間の部分である。
【0028】
本実施形態のバルブ15は、電磁ソレノイド式のシャットオフバルブである。バルブ15は、ソレノイド15aの消磁時に吐出流路14内の作動油の流れを許容し、ソレノイド15aの励磁時に吐出流路14内の作動油の流れを遮断する。本実施形態のバルブ15は、吐出流路14上に設けられている。また、本実施形態のバルブ15は、バルブ15の動作状態を表すモニタ信号を出力する。
【0029】
圧力センサ16は、吐出流路14の流路部分14a内の作動油の圧力を検出して、圧力信号を出力する。言い換えれば、圧力センサ16は、油圧ポンプ12の吐出圧力を検出して、圧力信号を出力する。
【0030】
漏らし流路17は、油圧ポンプ12から吐出された作動油の一部が、油圧アクチュエータ3(図1に示す)に供給されずに、作動油タンク11に流れるように構成されている。漏らし流路17には、調整部30が設けられている。調整部30は、漏らし流路17によって作動油タンク11に流れる作動油の流量を調整する。
【0031】
本実施形態の調整部30は、電磁弁31と、可変絞り弁32と、第1固定絞り弁33と、第2固定絞り弁34とを備える。第1固定絞り弁33の絞り量と、第2固定絞り弁34の絞り量とは、異なる。本実施形態では、第2固定絞り弁34の絞り量は、第1固定絞り弁33の絞り量よりも多い。すなわち、第2固定絞り弁34は、第1固定絞り弁33よりも絞り開度が小さい。
【0032】
電磁弁31は、第1ソレノイド31aが励磁かつ第2ソレノイド31bが非励磁の場合、上側の第1切換位置となる。第1切換位置では、可変絞り弁32は、第1固定絞り弁33を介して作動油タンク11と流体的に接続される。この場合、漏らし流路17により作動油タンク11に流れる作動油の流量は、可変絞り弁32と第1固定絞り弁33とによって調整される。
【0033】
電磁弁31は、第1ソレノイド31aが非励磁かつ第2ソレノイド31bが励磁の場合、下側の第2切換位置となる。第2切換位置では、可変絞り弁32は、第2固定絞り弁34を介して作動油タンク11と流体的に接続される。この場合、漏らし流路17により作動油タンク11に流れる作動油の流量は、可変絞り弁32と第2固定絞り弁34とによって調整される。
【0034】
電磁弁31は、第1ソレノイド31aが非励磁かつ第2ソレノイド31bが非励磁の場合、中立位置となる。中立位置では、可変絞り弁32は、作動油タンク11と流体的に接続される。この場合、漏らし流路17により作動油タンク11に流れる作動油の流量は、可変絞り弁32によって調整される。
【0035】
本実施形態の調整部30は、電磁弁31を第1切換位置、第2切換位置、又は中立位置のいずれかに切り替えることにより、漏らし流路17を流れる作動油の流量を少なくとも3段階に調整できる。具体的には、漏らし流路17を流れる作動油の流量は、中立位置、第1切換位置、及び第2切換位置の順で多い。
【0036】
(制御装置)
本実施形態の制御装置20は、PQ制御部21と、速度検出部22と、速度制御部23と、インバータ24と、診断部25と、補正部26と、報知部27とを備える。
【0037】
PQ制御部21には、圧力センサ16によって検出された圧力信号と、主機2(図1に示す)のコントローラなどからの圧力指令信号と流量指令信号とが入力される。PQ制御部21は、入力された圧力信号と、圧力指令信号と、流量指令信号と、図3に示す吐出圧力-吐出流量特性(以下、P-Q特性という)とに基づいて、速度指令を出力する。PQ制御部21には、圧力センサ16によって検出された圧力信号と、予め油圧ユニット1のコントローラ(図示せず)で設定され、制御装置20に記憶されている圧力目標値と流量目標値とが入力されてもよい。この場合、PQ制御部21は、入力された圧力信号と、圧力目標値と、流量目標値と、図3に示す吐出圧力-吐出流量特性(以下、P-Q特性という)とに基づいて、速度指令を出力する。
【0038】
速度検出部22には、パルスジェネレータ18からパルス信号が入力される。速度検出部22は、パルス信号の入力間隔を測定することにより、モータ13の単位時間当たりの回転数(以下、回転速度という)を現在回転速度として検出して、速度信号を出力する。また、速度検出部22は、パルスジェネレータ18を用いずにモータ13の回転速度を演算により求めてもよい。この場合、速度検出部22は、演算により算出されたモータ13の回転速度に応じた速度信号を出力する。また、この場合には、油圧ユニット1は、パルスジェネレータ18を有していなくてもよい。
【0039】
速度制御部23には、PQ制御部21から速度指令が入力され、速度検出部22から速度信号が入力される。速度制御部23は、入力された速度指令信号と速度信号とを用いて速度制御演算を行い、インバータ24に電流指令信号を出力する。
【0040】
インバータ24は、速度制御部23から入力された電流指令に基づいて、モータ13に駆動信号を出力することにより、モータ13の回転数を制御する。
【0041】
診断部25は、圧力センサ16から圧力信号(吐出圧力)が入力され、速度検出部22から速度信号(モータ13の回転数)が入力される。診断部25は、入力された吐出圧力と、入力されたモータ13の回転数から得られる油圧ポンプ12の回転数とにより、油圧ユニット1の油圧回路10又は主機2の油圧回路からの作動油の漏れの状態を診断する。また、本実施形態の診断部25は、油圧ポンプ12の回転数を記憶する記憶部25aを有する。
【0042】
本実施形態の診断部25は、バルブ15のソレノイド15aを駆動する励磁信号を出力する。一方で、診断部25には、バルブ15の動作状態を表すモニタ信号がバルブ15から入力される。
【0043】
本実施形態の補正部26には、作動油の漏れの状態についての診断結果が診断部25から入力される。補正部26は、上記診断結果に基づいて、電磁弁31の第1ソレノイド31aを駆動する励磁信号と、電磁弁31の第2ソレノイド31bを駆動する励磁信号とを出力して、漏らし流路17に流れる作動油の流量を調整する。
【0044】
本実施形態の報知部27には、作動油の漏れの状態についての診断結果が診断部25から入力される。報知部27は、例えば、主機2(図1に示す)の油圧回路における作動油の漏れ量が所定量よりも多いときに、その旨をユーザに報知する。本実施形態の報知部27は、油圧ユニット1の操作パネル(図示せず)のような表示部である。また、報知部27は、油圧ユニット1のスピーカ(図示せず)のような音声出力部であってもよい。また、例えば、報知部27は、上記診断結果を外部(例えば主機2側のコントローラ)へ出力してもよい。
【0045】
本実施形態の制御装置20は、圧力指令信号と流量指令信号を受けて、図3に示すP-Q特性に基づいて、油圧ポンプ12の流量制御と、圧力制御とを切り換えて行う。図3は、本実施形態の油圧ユニット1の吐出圧力-吐出流量特性を示す図である。
【0046】
図3を参照すると、流量制御では、油圧ポンプ12の吐出流量が流量設定値Qaとなるように、モータ13の回転数(油圧ポンプ12の回転数)が制御される。本実施形態では、油圧ポンプ12が固定容量ポンプであるので、油圧ポンプ12の吐出流量は、ポンプ容量(1回転当たりの吐出流量)とモータ13の回転数の積で求められる。
【0047】
流量制御では、各吐出圧力において、油圧ポンプ12の吐出流量が流量設定値Qaとなるように、モータ13の回転数(油圧ポンプの回転数)が設定されており、モータ13の回転数は、その設定された回転数になるように制御される。
【0048】
圧力制御では、油圧ポンプ12の吐出圧力が圧力設定値Paとなるようにモータ13の回転数(油圧ポンプ12の回転数)が制御される。
【0049】
圧力制御における油圧ポンプ12の回転数の増加(例えば、図3におけるA点からB点への遷移)は、油圧ユニット1の油圧回路10又は主機2の油圧回路における作動油の漏れ量の増加に起因する。油圧ユニット1の油圧回路10又は主機2の油圧回路における作動油の漏れ量が増加すると、吐出流路14における作動油の圧力が低下し、圧力設定値Paを下回る。これにより、油圧ポンプ12の吐出圧力を圧力設定値Paに保持するために、油圧ポンプ12の回転数が増加する。
【0050】
(作動油漏れ診断制御)
本開示に係る制御装置20は、油圧ユニット1の油圧回路10又は主機2の油圧回路における作動油漏れの診断制御を実行可能である。図4は、上記診断制御のフローチャートである。以下、図4に従って、作動油漏れの診断制御を説明する。
【0051】
まず、ステップS1では、制御装置20は、バルブ15が吐出流路14内の作動油の流れを許容している場合において圧力制御(保圧制御)を実行したときの油圧ポンプ12の第1回転数N1を取得する。このとき、記憶部25aは、第1回転数N1を記憶する。
【0052】
次に、ステップS2に進み、第1回転数N1が所定の第1判定回転数Nr1を上回ると判定すると、ステップS3に進む一方、第1回転数N1が所定の第1判定回転数Nr1以下であると判定するとステップS7に進む。第1回転数N1が所定の第1判定回転数Nr1を超えると判定した場合、油圧ユニット1の油圧回路10又は主機2の油圧回路のいずれか(又は両方)において作動油の漏れがあることを示している。例えば、第1判定回転数Nr1は、制御装置20が圧力制御を実行したときに、油圧ユニット1側で温度以上のような内部アラームの発生が想定される油圧ポンプ12の回転数である。
【0053】
ステップS7では、油圧ユニット1の油圧回路10での作動油の漏れ量及び主機2の油圧回路での作動油の漏れ量が許容範囲であると診断して、作動油漏れの診断制御を終了する。
【0054】
ステップS3では、制御装置20は、バルブ15が吐出流路14内の作動油の流れを遮断している場合において圧力制御(保圧制御)を実行したときの油圧ポンプ12の第2回転数N2を取得する。具体的には、まず、診断部25が、バルブ15に励磁信号を出力する。励磁信号によりソレノイド15aが励磁されると、バルブ15により吐出流路14内の作動油の流れが遮断される。この状態で、制御装置20が圧力制御を実行し、油圧ポンプ12の第2回転数N2を取得する。このとき、記憶部25aは、第2回転数N2を記憶する。ここで、第2回転数N2は、第1回転数N1以下である。
【0055】
次に、ステップS4に進み、第2回転数N2が所定の第2判定回転数Nr2を下回ると判定すると、ステップS5に進む一方、第2回転数N2が所定の第2判定回転数Nr2以上であると判定するとステップS8に進む。ここで、本実施形態の第2判定回転数Nr2は、第1判定回転数Nr1以下である。例えば、第2判定回転数Nr2は、制御装置20が圧力制御を実行したときに、油圧ポンプ12の効率低下によりポンプ交換が必要と判断される油圧ポンプ12の回転数である。
【0056】
ステップS5では、主機2の油圧回路において作動油の漏れがあると診断する。このとき、報知部27は、主機2の油圧回路において作動油の漏れがあることをユーザに報知してもよい。
【0057】
次に、ステップS6に進み、漏らし流路17からの作動油の漏れ量を調整して、作動油漏れの診断制御を終了する。ステップS6において、本実施形態では、補正部26は、記憶部25aに記憶された第1回転数N1と第2回転数N2とから差(N1-N2)を算出する。補正部26は、上記差(N1-N2)が大きいほど、漏らし流路17を流れる作動油の流量を少なくする。本実施形態では、上記差(N1-N2)が所定の第1の閾値よりも大きい場合には、電磁弁31を第2切換位置にする。上記差(N1-N2)が所定の第1の閾値以下、かつ、上記差(N1-N2)が所定の第2の閾値(<第1の閾値)よりも大きい場合には、電磁弁31を第1切換位置にする。また、上記差(N1-N2)が所定の第2の閾値以下の場合には、電磁弁31を中立位置にする。
【0058】
本実施形態の制御装置20は、漏らし流路17からの作動油の漏れ量を調整した場合に、再度第1回転数N1を取得する。再度取得した第1回転数N1と第2回転数N2とにより算出した上記差(N1-N2)が、所定の第1閾値を依然として超えている場合には、報知部27は、ユーザに主機2の油圧回路の漏れ量の改善を促す警告メッセージを報知する。
【0059】
ステップS8では、油圧ユニット1の油圧回路10において作動油の漏れがあると診断し、作動油漏れの診断制御を終了する。このとき、報知部27は、油圧ユニット1の油圧回路10において作動油の漏れがあることをユーザに報知してもよい。
【0060】
本実施形態の油圧ユニット1及び油圧装置は、以下の機能を有する。
【0061】
バルブ15が作動油の流れを許容している状態で圧力制御を実行した場合における油圧ポンプ12の第1回転数N1が第1判定回転数Nr1を上回っているとき、油圧ユニット1の油圧回路10又は主機2の油圧回路において作動油の漏れがあることがわかる。一方で、バルブ15が作動油の流れを遮断している状態で圧力制御を実行した場合における油圧ポンプ12の第2回転数N2が第2判定回転数Nr2を下回っているとき、油圧ユニット1の油圧回路10における作動油の漏れ量が多くないことがわかる。つまり、第1回転数N1が第1判定回転数Nr1を上回っているとき、かつ、第2回転数N2が第2判定回転数Nr2を下回っているとき、主機2の油圧回路において作動油の漏れがあることを特定できる。この場合に、漏らし流路17を流れる作動油の流量を低下させることで、圧力制御における油圧ポンプ12の回転数の上昇を抑制でき、省エネ性を改善できる。
【0062】
圧力制御を実行したときの油圧ポンプ12の回転数は、油圧ユニット1の油圧回路10での作動油の漏れ量又は主機2の油圧回路での作動油の漏れ量によって決まる。具体的には、第1回転数N1は、油圧ユニット1の油圧回路10での作動油の漏れ量と主機2の油圧回路での作動油の漏れ量とによって決まる。一方で、第2回転数N2は、主機2の油圧回路での作動油の漏れ量に関わらず、油圧ユニット1の油圧回路10での作動油の漏れ量によって決まる。このため、第1回転数N1と第2回転数N2との差(N1-N2)は、主機2の油圧回路での作動油の漏れ量を反映している。具体的には、第1回転数N1と第2回転数N2との差(N1-N2)が大きいほど、主機2の油圧回路での作動油の漏れ量は多い。上記実施形態によれば、第1回転数N1と第2回転数N2との差(N1-N2)が大きいほど、つまり主機2の油圧回路での作動油の漏れ量が多いほど、漏らし流路17を流れる作動油の流量を少なくする。これにより、油圧ポンプ12の回転数を適切に低下でき、省エネ性を改善できる。
【0063】
漏らし流路17を流れる作動油の流量を調整した場合に第1回転数N1と第2回転数N2との差(N1-N2)が所定値を超えるとき、主機2側での作動油の漏れ量が過大である。この場合、漏らし流路17を流れる作動油の流量の調整では、圧力制御における油圧ポンプ12の回転数の上昇を抑制できない。上記実施形態では、漏らし流路17を流れる作動油の流量を調整した場合に第1回転数N1と第2回転数N2との差(N1-N2)が所定の第1閾値を超えるときにユーザに主機2での作動油の漏れの改善を促す報知を行うことで、主機2における作動油の漏れの改善を図れる。
【0064】
油圧ポンプ12の回転数が過度に高いとき、油圧ポンプ12を駆動するモータ13の温度、及びモータ13に電力を供給するインバータ24を含む制御装置20の温度が過度に上昇し、モータ13又は制御装置20の他の機器に影響を及ぼす場合がある。この場合、上述したように、ユーザに主機2における作動油の漏れの改善を促す報知を行い、ユーザがメンテナンスを実行することで、モータ13及び制御装置20の温度が過度に上昇することを抑制できる。
【0065】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の油圧ユニット101の構成を示す回路図である。第2実施形態の油圧装置及び油圧ユニット101は、調整部130の構成を除いて、第1実施形態の油圧装置及び油圧ユニット1と同様の構成を有しており、図1,3,4を援用する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
図5を参照すると、本実施形態の調整部130は、電磁比例制御弁131を備える。本実施形態の電磁比例制御弁131は、電磁比例絞り弁である。電磁比例制御弁131の第1ポート131aは、油圧ポンプ12の吐出側に接続されており、電磁比例制御弁131の第2ポート131bは、作動油タンク11に接続されている。電磁比例制御弁131のソレノイド131cが非励磁の場合、左側の切換位置となって、第1ポート131aと第2ポート131bは閉鎖状態となる。一方、電磁比例制御弁131のソレノイド131cの励磁力に比例して第1ポート131aと第2ポート131bとの通路の開度が設定される。
【0067】
本実施形態では、図4に示す作動油漏れの診断制御のステップS6において、補正部26は、第1回転数N1と第2回転数N2との差(N1-N2)に比例してソレノイド131cの励磁力を大きくすることで、漏らし流路17の絞り量を大きくする、つまり漏らし流路17を流れる作動油の流量を少なくする。
【0068】
第2実施形態の油圧ユニット1及び油圧装置は、第1実施形態の油圧ユニット1及び油圧装置と同様の機能を有する。
【0069】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態の油圧ユニット201の構成を示す回路図である。第3実施形態の油圧装置及び油圧ユニット201は、調整部230の構成を除いて、第1実施形態の油圧装置及び油圧ユニット1と同様の構成を有しており、図1,3,4を援用する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
図6を参照すると、本実施形態の調整部230は、開度を手動で調整可能な可変絞り弁231を有する。
【0071】
本実施形態では、図4に示す作動油漏れの診断制御のステップS6において、報知部27は、記憶部25aに記憶された第1回転数N1と第2回転数N2とから差(N1-N2)を算出する。報知部27は、上記差(N1-N2)が、所定値を超えるときに、ユーザに可変絞り弁231の手動調整を促す旨の報知を行うことで、漏らし流路17からの作動油の漏れ量の調整を図る。
【0072】
第2実施形態の油圧ユニット1及び油圧装置は、第1実施形態の油圧ユニット1及び油圧装置と同様の機能を有する。
【0073】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0074】
1…油圧ユニット
2…主機
3,3A~3C…油圧アクチュエータ
3a…油圧アクチュエータ本体
3b…方向切換弁
3c…減圧弁
11…作動油タンク
12…油圧ポンプ
13…モータ
14…吐出流路
14a…流路部分
15…バルブ
15a…ソレノイド
16…圧力センサ
17…漏らし流路
18…パルスジェネレータ
20…制御装置
21…PQ制御部
22…速度検出部
23…速度制御部
24…インバータ
25…診断部
26…補正部
27…報知部
30…調整部
31…電磁弁
31a…第1ソレノイド
31b…第2ソレノイド
32…可変絞り弁
33…第1固定絞り弁
34…第2固定絞り弁
101…油圧ユニット
130…調整部
131…電磁比例制御弁
131a…第1ポート
131b…第2ポート
131c…ソレノイド
201…油圧ユニット
230…調整部
231…可変絞り弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6