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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240911BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A47J27/00 103A
A47J27/00 103R
H05B6/12 319
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021079156
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172860
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 和教
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025523(WO,A1)
【文献】特開2012-150892(JP,A)
【文献】特開2011-103248(JP,A)
【文献】実開平07-042232(JP,U)
【文献】特開2017-091925(JP,A)
【文献】特開2005-152400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
H05B 6/02、6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設置される内鍋と、
前記内鍋の外側に設置される誘導加熱コイルと、
前記内鍋と前記筐体との間に設置される電子基板と、
前記誘導加熱コイルと前記電子基板との間の空間に設置されるシールド機構と、
を備える炊飯器であって、
前記シールド機構は、
第1シールド部材と、
第2シールド部材と、
を備え、
前記第1シールド部材は、前記電子基板と前記誘導加熱コイルとの間の領域に配置されており、
前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材と前記誘導加熱コイルとの間の領域に配置されており、
前記電子基板は、平板状であり、かつ、前記電子基板を包囲するシールド部材がない状態で設置されており、
前記第1シールド部材は、平板状であり、
前記第2シールド部材は、平板状であり、
前記第1シールド部材および前記第2シールド部材は、前記電子基板と略平行となるように配置されており、
前記第2シールド部材は、前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記第2シールド部材の一端が、前記第1シールド部材の一端よりも外側となり、かつ、前記第2シールド部材の他端が、前記第1シールド部材の他端よりも内側となるように、配置されている、
炊飯器
【請求項2】
前記第1シールド部材は、前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記電子基板を覆うように配置されている、
請求項に記載の炊飯器
【請求項3】
前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材よりも小さい、
請求項またはに記載の炊飯器
【請求項4】
前記第2シールド部材は、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記誘導加熱コイルの導線部の一端から他端までの領域を覆うことができる形状を有しており、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記誘導加熱コイルの導線部の一端から他端までの領域を覆うように配置されている、
請求項からのいずれかに記載の炊飯器
【請求項5】
前記第2シールド部材は、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記電子基板上の導線パターンであって、前記誘導加熱コイルの導線部と略平行な前記導線パターンを覆うことができる形状を有しており、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記電子基板上の導線パターンであって、前記誘導加熱コイルの導線部と略平行な前記導線パターンを覆うように配置されている、
請求項からのいずれかに記載の炊飯器
【請求項6】
前記第1シールド部材および前記第2シールド部材の少なくとも一方は、接地されている、
請求項1からのいずれかに記載の炊飯器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱方式による加熱調理器等の装置において、誘導加熱コイルより発生する高周波磁界を外部に漏らさないようにシールドする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に、「本体(1)と、本体(1)に着脱自在に収納する内釜(2)と、本体(1)内の内釜(2)底部に設けた誘導コイル(7)と、誘導コイル(7)の下方に設けた誘導コイル(7)への通電を制御する電子基板(9)とよりなる炊飯器において、
前記誘導コイル(7)と電子基板(9)との間に受け皿状に形成したアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる防磁板(10)を設けたことを特徴とする炊飯器(例えば、特開平7-246156号公報参照)」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-246156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁加熱において、誘導加熱コイル(IHコイル(IH:Induction Heating))からの電磁波放射により周辺の電子基板へのノイズの結合が発生し、その結果、雑音端子電圧および放射電界強度のEMI試験(EMI:Electro Magnetic Interference)の合格が難しくなる。
【0005】
この対策として、電子部品を用いてノイズフィルタを形成し、当該ノイズフィルタにより不要電磁輻射の影響を低減させる方法(対策)や、誘導加熱コイルと周辺の部品とを電磁気的に分離するシールドにより不要電磁輻射の影響を低減させる方法(対策)や、電子基板上の配線において、ノイズ吸収材料を配置し、当該ノイズ吸収材料により不要電磁輻射により発生するノイズを低減させる方法(対策)等を実施しなければならない。特に、雑音端子電圧測定にて、150kHz~500kHzの周波数領域(低周波領域)のノイズの低減させる安価で実現でき、かつ、効果的な方法を実現することは困難である。
【0006】
上記低周波領域(150kHz~500kHzの周波数領域)では、磁界が支配的なため、シールドによる効果が期待できるが、シールド材として、透磁率の高い材料を選定する必要があるため、材料費と材料厚の観点から、(1)高価である、(2)発熱が大きい、(3)出力電力の低下がある等の問題があり、また、誘導加熱源の対策として不向きな対策であるという問題がある。
【0007】
上記従来技術の方法は、シールドにより不要電磁輻射の影響を低減させる方法であるが、この方法を採用する場合においても以下の問題がある。つまり、上記従来技術のように、誘導加熱コイルと電子基板との間に受け皿状に形成したアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる防磁板を設ける構成では、誘導加熱コイルから発生する不要な電磁波を遮断するために、誘導加熱コイルと電子基板との間にサイズの大きな防磁板(上記従来技術では、受け皿状に形成した防磁板)を設ける必要がある。さらに、上記従来技術の構成では、防磁板をアルミニウムあるいはアルミニウム合金のような金属を用いて構成する必要がある。つまり、上記従来技術の構成では、ある程度の厚みがある金属製の防磁板を採用する必要がある。このため、サイズの大きな金属製の防磁板を配置する空間を確保する必要があり、また、ある程度の厚みがある金属製の防磁板を採用する必要があるので、コストが高くなってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、低コストで実現でき、かつ、IHコイルからの電磁波放射に起因するノイズが周辺の電子基板に与える影響を効果的に低減するシールド機構、および、当該シールド機構を有する炊飯器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、
誘導加熱コイルにより電子基板上に誘発されるノイズを低減させるためのシールド機構であって、
第1シールド部材と、
第2シールド部材と、
を備え、
前記第1シールド部材は、前記電子基板と前記誘導加熱コイルとの間の領域に配置されており、
前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材と前記誘導加熱コイルとの間の領域に配置されている、
シールド機構である。
【0010】
このシールド機構では、第1シールド部材および第2シールド部材の二重シールド構造により、誘導加熱コイルからの電磁波放射に起因するノイズが周辺の電子基板に与える影響を効果的に低減させることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明であって、
前記電子基板は、平板状であり、
前記第1シールド部材は、平板状であり、
前記第2シールド部材は、平板状であり、
前記第1シールド部材および前記第2シールド部材は、前記電子基板と略平行となるように配置されている。
【0012】
これにより、このシールド機構では、平板状の第1シールド部材および第2シールド部材を用いて、二重シールド構造を実現することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明であって、
前記第1シールド部材は、前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記電子基板を覆うように配置されている。
【0014】
これにより、このシールド機構では、第1シールド部材により前記電子基板の全体をシールドすることができる。
【0015】
第4の発明は、第2または第3の発明であって、
前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材よりも小さい。
【0016】
このシールド機構では、第1シールド部材よりも小さい第2シールド部材を用いるので、第2シールド部材を配置する領域が少なくてすみ、また、第2シールド部材のコストを安価にすることができる。
【0017】
第5の発明は、第2から第4のいずれかの発明であって、
前記第2シールド部材は、前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記第2シールド部材の一端が、前記第1シールド部材の一端よりも外側となるように、配置されている。
【0018】
これにより、このシールド機構では、誘導加熱コイルからの不要電磁波が第2シールド部材を回り込んで、電子基板へと到達しにくくなる。その結果、誘導加熱コイルからの不要電磁波により電子基板上に誘発されるノイズを効果的に低減させることができる。
【0019】
第6の発明は、第2から第5のいずれかの発明であって、
前記第2シールド部材は、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記誘導加熱コイルの導線部の一端から他端までの領域を覆うことができる形状を有しており、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記誘導加熱コイルの導線部の一端から他端までの領域を覆うように配置されている。
【0020】
これにより、このシールド機構では、第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、誘導加熱コイルの導線部と平行となる領域であって、電子基板と重なる領域を、第2シールド部材でシールドすることができる。つまり、第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、誘導加熱コイルの導線部と平行となる領域であって、電子基板と重なる領域が、第2シールド部材および第1シールド部材でシールドされる(覆われる)ので、上記領域を重点的にシールドすることができる。その結果、誘導加熱コイルからの不要電磁波により電子基板上に誘発されるノイズを効果的に低減させることができる。
【0021】
第7の発明は、第2から第6のいずれかの発明であって、
前記第2シールド部材は、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記電子基板上の導線パターンであって、前記誘導加熱コイルの導線部と略平行な前記導線パターンを覆うことができる形状を有しており、
前記第2シールド部材の表面の法線方向から見た平面視において、前記電子基板上の導線パターンであって、前記誘導加熱コイルの導線部と略平行な前記導線パターンを覆うように配置されている。
【0022】
このシールド機構では、電子基板の導線パターンのうち、誘導加熱コイルの導線部に略平行に配置されている導線パターンを含む領域を、第2シールド部材が覆うように、第2シールド部材が配置される。これにより、第2シールド部材のシールド機能により、誘導加熱コイルに電流が流れた場合であっても、電子基板の導線パターンのうち、誘導加熱コイルの導線部に略平行に配置されている導線パターンに誘導電流が流れにくくなり、その結果、誘導電流により誘発されるノイズを劇的に低減させることができる。
【0023】
第8の発明は、第1から第7のいずれかの発明であって、
前記第1シールド部材および前記第2シールド部材の少なくとも一方は、接地されている。
【0024】
これにより、さらに、シールド効果を向上させることができる。
【0025】
第9の発明は、第1から8のいずれかに発明であるシールド機構を備える炊飯器である。
【0026】
これにより、第1から8のいずれかに発明であるシールド機構を用いた炊飯器を実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、低コストで実現でき、かつ、IHコイルからの電磁波放射に起因するノイズが周辺の電子基板に与える影響を効果的に低減するシールド機構、および、当該シールド機構を有する炊飯器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の外観を示す図(斜視図)。
図2】第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の上面図。
図3】第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の内部構成を示す図(側面断面図(図2のA-A線による断面図))。
図4】第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の内部構成の一部(シールド機構1の周辺部分)を示す図(斜視断面図)。
図5】第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)と基板カバーCvr1の斜視図(左図)、および、第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)の斜視図(右図)。
図6】第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)と基板カバーCvr1の分解斜視図。
図7】第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)の正面図(x軸正方向からx軸負方向に見たときの正面図(平面図))。
図8】第1実施形態に係るシールド機構1のシールド効果を説明するための図。
図9】シールド板が1枚であるシールド機構のシールド効果を説明するための図。
図10】第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)の正面図(x軸方向から見た正面図)(上図)、および、フィルタ基板CB1の導線パターン(一例)とコイル側シールド部材12の輪郭とを示した図(下図)。
図11】第1実施形態に係るシールド機構1のシールド効果(誘導電流の低減効果)を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0030】
本実施形態では、誘導加熱方式の炊飯器(高圧交流電源(例えば、商用100V交流電源)に接続されて使用される機器の一例)に用いられるシールド機構を一例として、説明する。
【0031】
図1は、第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の外観を示す図(斜視図)である。
【0032】
図2は、第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の上面図である。
【0033】
図3は、第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の内部構成を示す図(側面断面図(図2のA-A線による断面図))である。
【0034】
図4は、第1実施形態に係るシールド機構1が用いられる炊飯器1000の内部構成の一部(シールド機構1の周辺部分)を示す図(斜視断面図)である。
【0035】
図5は、第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)と基板カバーCvr1の斜視図(左図)、および、第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)の斜視図(右図)である。
【0036】
図6は、第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)と基板カバーCvr1の分解斜視図である。
【0037】
図7は、第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)の正面図(x軸正方向からx軸負方向に見たときの正面図(平面図))である。
【0038】
図8は、第1実施形態に係るシールド機構1のシールド効果を説明するための図である。
【0039】
図9は、シールド板が1枚であるシールド機構のシールド効果を説明するための図である。
【0040】
図10は、第1実施形態に係るシールド機構1(基板側シールド部材11、コイル側シールド部材12)の正面図(x軸方向から見た正面図)(上図)、および、フィルタ基板CB1の導線パターン(一例)とコイル側シールド部材12の輪郭とを示した図(下図)である。
【0041】
図11は、第1実施形態に係るシールド機構1のシールド効果(誘導電流の低減効果)を説明するための図である。
【0042】
<1:炊飯器1000の構成>
本実施形態のシールド機構1が用いられる炊飯器1000は、図1図3に示すように、本体B1と、蓋体L1とを備える。蓋体L1は、本体B1の上方の開口部を開閉可能な状態で覆っている。以下では、炊飯器1000において、蓋体L1が設けられている側を炊飯器1000の上方側とし、その反対側を炊飯器1000の下方側とする。
【0043】
≪本体B1≫
本体B1は、筐体B10、内鍋InP1、前面パネル部B11、ヒンジ部B1_h、電源ユニットB12、誘導加熱コイルB13a~B13b、誘導加熱コイルB14a~B14b、フィルタ基板CB1(電子基板)、シールド機構1、および、電源プラグPL1などを備えている。以下では、炊飯器1000において、前面パネル部B11が設けられている側を炊飯器1000の前方側とし、ヒンジ部B1_hが設けられている側を炊飯器1000の後方側とする。
【0044】
筐体B10は、本体B1の外形を主に構成している。筐体B10の内部には、内鍋InP1、電源ユニットB12、誘導加熱コイルB13a~B13b、誘導加熱コイルB14a~B14b、フィルタ基板CB1、基板カバーCvr1、シールド機構1などが収容されている。
【0045】
内鍋InP1は、上方に開口する椀状の鍋である。内鍋InP1は、種々のアルミニウム合金およびステンレス合金の多層体(クラッド材)で形成される。内鍋InP1は、誘導加熱コイルB13a~B13b、誘導加熱コイルB14a~B14bによって誘導加熱され得る。
【0046】
前面パネル部B11は、炊飯器1000の前方側に配置されている。前面パネル部B11は、開閉レバーとしても機能し、使用者により前面パネル部B11押下する(下方に押す)ことで、蓋体L1と本体B1との係止が解除され、蓋体L1が開く。
【0047】
ヒンジ部B1_hは、開閉レバーB12の反対側(すなわち、炊飯器1000の後方側)に配置されている。ヒンジ部B1_hは、蓋体L1が本体B1に対して回動自在となるように蓋体L1を本体B1に取り付けている。このヒンジ部B1_hは、蓋体L1を開方向に向かって付勢している。
【0048】
誘導加熱コイルB13a~B13bは、内鍋InP1を誘導加熱する誘導加熱源であって、内鍋InP1の外面の側壁下端部に配設されている。
【0049】
誘導加熱コイルB14a~B14bは、内鍋InP1を誘導加熱する誘導加熱源であって、内鍋InP1の底面の外側に配設されている。
【0050】
フィルタ基板CB1は、例えば、長方形の板状(平板状)の外形を有している。フィルタ基板CB1は、筐体B1内の後方側の下方に配置されている。フィルタ基板CB1は、プリント配線基板などで形成される。すなわち、フィルタ基板CB1は、絶縁性基板の表面および裏面の少なくとも何れかに、導電性材料で形成された回路パターンを有している。フィルタ基板CB1には、マイコン(サブマイコン)、AC電源、インバータ、スイッチング電源などの種々の機能を有する回路パターン(回路素子)が実装されている。また、フィルタ基板CB1は、図4に示すように、基板カバーCvr1の内側に配設されている。
【0051】
基板カバーCvr1は、図4図6に示すように、底面と、底面から垂直に延びる側壁部とを有している。基板カバーCvr1は、図4図6に示すように、その内側にフィルタ基板CB1を配設するための部材であり、基板カバーCvr1の底面のフィルタ基板CB1側(内側の面)には、基板側シールド部材11が配置され、基板カバーCvr1の底面の誘導加熱コイルB13a側(外側の面)には、コイル側シールド部材12が配置される。
【0052】
電源ユニットB12は、電源回路基板、自動巻取式電源コードユニット等を含む。電源回路基板は、炊飯器1000の電子部品等に電力を供給する電源を実現するための電源回路を構成する基板である。自動巻取式電源コードユニットは、電源コードおよび自動巻取機構等から構成されている。電源コードは、電源回路基板の電源回路に接続されている。また、電源コードの先端に電源プラグPL1が接続されており、電源プラグPL1を商用コンセントに差し込むことで、炊飯器1000の電源回路が、電源プラグPL1、電源コードを介して、商用の交流電源に接続される。
【0053】
≪シールド機構1≫
シールド機構1は、図4図7に示すように、基板側シールド部材11(第1シールド部材)と、コイル側シールド部材12(第2シールド部材)と、を備える。
【0054】
(基板側シールド部材11)
基板側シールド部材11は、誘導加熱コイルと周辺の電子部品とを電磁気的に分離するシールドとして機能させるための部材であり、厚みの薄い平板状の部材であり、例えば、厚さが0.5mm程度の薄膜アルミニウムにより形成されている。基板側シールド部材11は、フィルタ基板CB1と誘導加熱コイルB13a、B14aとの間の領域に配置される。基板側シールド部材11は、フィルタ基板CB1と略平行に配置され、フィルタ基板CB1上に形成されている導線パターンを概ね覆うことができる形状、大きさを有している。
【0055】
基板側シールド部材11は、図4図6に示すように、基板カバーCvr1の底面の内側(フィルタ基板CB1側)の面に固定される。なお、基板側シールド部材11は、基板カバーCvr1の底面の内側(フィルタ基板CB1側)の面に、例えば、粘着剤等で固定される。また、基板側シールド部材11は、図5図6に示すように、アース用端子11_GNDを備えており、アース用端子11_GNDを介して、接地されている。
【0056】
(コイル側シールド部材12)
コイル側シールド部材12は、誘導加熱コイルと周辺の電子部品とを電磁気的に分離するシールドとして機能させるための部材であり、厚みの薄い平板状の部材であり、例えば、厚さが0.5mm程度の薄膜アルミニウムにより形成されている。コイル側シールド部材12は、フィルタ基板CB1と誘導加熱コイルB13a、B14aとの間であって、かつ、基板側シールド部材11と誘導加熱コイルB13a、B14aとの間の領域に配置される。コイル側シールド部材12は、フィルタ基板CB1および基板側シールド部材11と略平行に配置され、フィルタ基板CB1上に形成されている導線パターンの一部を覆うことができる形状、大きさを有している。コイル側シールド部材12は、基板側シールド部材11よりも小さい大きさであり、コイル側シールド部材12の下端部(z座標値)が、基板側シールド部材11の下端部よりも下になるように配置される。つまり、コイル側シールド部材12の下端部のz座標をz_l(12)とし、基板側シールド部材11の下端部のz座標をz_l(11)とすると、
z_l(12)<z_l(11)
となるように、基板側シールド部材11は、配置される(図5図7を参照)。
【0057】
コイル側シールド部材12は、図4図6に示すように、基板カバーCvr1の底面の外側(誘導加熱コイル側)の面に固定される。なお、コイル側シールド部材12は、基板カバーCvr1の底面の外側(誘導加熱コイル側)の面に、(1)粘着剤等で固定される、あるいは、(2)リブ(例えば、基板カバーCvr1に設けたリブ)により固定される。
【0058】
また、コイル側シールド部材12は、図8に示すように、以下の特徴を有する。
(A1)コイル側シールド部材12の上端部の位置が、内鍋InP1の側壁部に対向するように配置されている誘導加熱コイルB13a、B13bの上端(最上端の誘導加熱コイルの導線の位置)よりも上となるように、コイル側シールド部材12は、配置される。図8に示すように、コイル側シールド部材12の上端部の位置のz座標z_u(12)が、内鍋InP1の側壁部に対向するように配置されている誘導加熱コイルB13aの上端の位置のz座標z_u(B13a)よりも上となるように、つまり、
z_u(12)>z_u(B13a)
となるように、コイル側シールド部材12は、配置される。
(A2)コイル側シールド部材12の下端部が内鍋InP1の底部に対向するように配置されている誘導加熱コイルB14a、14bよりも下となるように、コイル側シールド部材12は、配置される。図8に示すように、コイル側シールド部材12の下端部の位置のz座標z_l(12)が、内鍋InP1の底部に対向するように配置されている誘導加熱コイルB14aの下端の位置のz座標z_l(B14a)よりも下となるように、つまり、
z_l(12)<z_l(B14a)
となるように、コイル側シールド部材12は、配置される。
【0059】
ここで、シールド機構1を上記のように構成することで、シールド効果が向上する理由について、シールド板を1枚配置した構成(図9の構成)と比較しながら説明する。
【0060】
図9に示すように、シールド板を1枚配置した構成では、誘導加熱コイルB13a等からの不要電磁輻射(不要電磁波)がシールド板(図9のシールド板11’)に入射し、フィルタ基板CB1側に透過する不要電磁波がフィルタ基板CB1上の導線パターンにノイズを誘発する。さらに、図9に示すように、シールド板を1枚配置した構成では、誘導加熱コイルB14aからの不要電磁輻射(不要電磁波)がシールド板(図9のシールド板11’)を回り込んで(図9の矢印AR1を参照)、フィルタ基板CB1上の導線パターンにノイズを誘発する。
【0061】
一方、本実施形態のシールド機構1では、図8に示すように、シールド部材を2枚配置した構成(基板側シールド部材11およびコイル側シールド部材12)となっており、さらに、コイル側シールド部材12が上記で説明したように配置されており、誘導加熱コイルB13a等からの不要電磁輻射(不要電磁波)がフィルタ基板CB1に到達するためには、コイル側シールド部材12および基板側シールド部材11を透過しなければならず、フィルタ基板CB1に到達する不要電磁波を劇的に低減させることができる。その結果、誘導加熱コイルB13a等からの不要電磁輻射(不要電磁波)によりフィルタ基板CB1の導線パターンに誘発されるノイズを劇的に低減させることができる。
【0062】
さらに、コイル側シールド部材12が、その下端部が誘導加熱コイルB14aよりも下となり、かつ、フィルタ基板CB1を覆うように配置されている基板側シールド部材11の下端部よりも下となるように配置されているので、誘導加熱コイルB14a等からの不要電磁波がコイル側シールド部材12および基板側シールド部材11を回り込んでフィルタ基板CB1に到達しにくい(図8の矢印AR2を参照)。その結果、誘導加熱コイルB14a等からの不要電磁波によりフィルタ基板CB1の導線パターンに誘発されるノイズを劇的に低減させることができる。
【0063】
さらに、コイル側シールド部材12は、以下の特徴を有していてもよい。
(B1)フィルタ基板CB1のy軸に略平行な配線パターンを覆うような形状、大きさを有している(図10の下図を参照)。例えば、図10の下図に示すように、フィルタ基板CB1にy軸方向に略平行な導線パターン(図10の場合、導線パターンptn1、ptn2の一部、および、導線パターンptn3)がある場合、コイル側シールド部材12が、当該導線パターンを覆うような形状、大きさを有することが好ましい(図10で示したコイル側シールド部材12の形状(図10の下図の点線の形状)を参照)。
(B2)コイル側シールド部材12は、接地されていない状態で配置される。
【0064】
ここで、シールド機構1を上記のように構成することで、シールド効果が向上する理由について、説明する。
【0065】
図11に示すように、誘導加熱コイル(例えば、誘導加熱コイルB13a)に方向Dir1の電流が流れると、当該電流により発生する磁界により、フィルタ基板CB1の導線パターン部分(誘導加熱コイルの導線と平行な位置に設けられている導線パターン部分)に方向Dir2(方向Dir1と同じ方向)に誘導電流が流れる。炊飯器1000の誘導加熱コイルB13aの導線部分は、図11に示すように、y軸方向に略平行な方向に配設されているので、誘導加熱コイルB13aの導線部分に電流が流れると、フィルタ基板CB1の導線パターンのうち、誘導加熱コイルB13aの導線部分に略平行に配置されている導線パターンに誘導電流が流れやすく、当該誘導電流により、フィルタ基板CB1上の導線パターンにノイズが誘発される。これを防止するために、図10図11に示すように、フィルタ基板CB1の導線パターンのうち、誘導加熱コイルB13aの導線部分に略平行に配置されている導線パターンを含む領域を、コイル側シールド部材12が覆うように、コイル側シールド部材12を配置する。これにより、コイル側シールド部材12(および基板側シールド部材11)のシールド機能により、誘導加熱コイル(例えば、誘導加熱コイルB13a)に方向Dir1の電流が流れた場合であっても、フィルタ基板CB1の導線パターンのうち、誘導加熱コイルB13aの導線部分に略平行に配置されている導線パターンに誘導電流が流れにくくなり、その結果、誘導電流により誘発されるノイズを劇的に低減させることができる。
【0066】
以上のように構成されたシールド機構1により、フィルタ基板CB1上の導線パターンに発生するノイズを劇的に低減させることができる。実験では、シールド機構1の基板側シールド部材11およびコイル側シールド部材12を0.5mm厚の薄膜アルミニウムにより形成した場合、150kHz~500kHzの周波数領域(IH特有の磁気結合によりノイズが発生しやすい周波数領域)におけるノイズレベルを、シールド部材を1枚だけ設けた場合に比べて、5dB以上低減させることができた。さらに、シールド機構1の基板側シールド部材11を接地することで、さらに2dB程度ノイズレベルを低減させることができた。
【0067】
≪まとめ≫
以上のように、炊飯器1000のシールド機構1では、基板側シールド部材11およびコイル側シールド部材12の二重シールド構造により、IHコイルからの電磁波放射に起因するノイズが周辺の電子基板に与える影響を効果的に低減させることができる。シールド機構1では、基板側シールド部材11が、フィルタ基板CB1の全体を覆うような形状、大きさを有しており、コイル側シールド部材12が、IHコイルからの不要電磁輻射(不要電磁波)の影響を効率的に排除できるような形状、大きさ(基板側シールド部材11よりも小さいサイズの大きさ)を有しており、かつ、IHコイルからの不要がフィルタ基板CB1側へと回り込まないようにする位置に配置されている。つまり、コイル側シールド部材12を、IHコイルからの不要電磁輻射(不要電磁波)の影響を効率的に排除するための最小限の大きさとすることができるため、安価で実現でき、かつ、シールド機構1を設けるために必要な領域が少なくて済む。
【0068】
さらに、基板側シールド部材11およびコイル側シールド部材12は、ともに、0.5mm厚の薄膜アルミニウムにより形成できるので、材料費も安価となる。
【0069】
このように、炊飯器1000において、シールド機構1を採用することで、低コストで、かつ、IHコイルからの電磁波放射に起因するノイズが周辺の電子基板に与える影響を効果的に低減することができる。
【0070】
[他の実施形態]
上記実施形態において、コイル側シールド部材12を接地しない場合について、説明したが、これに限定されることはなく、コイル側シールド部材12を接地するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、基板側シールド部材11およびコイル側シールド部材12は、厚さが0.5mm程度の薄膜アルミニウムにより形成される場合について説明したが、これに限定されることはない。基板側シールド部材11およびコイル側シールド部材12は、数mm以下(例えば、2~3mm以下)の厚みの薄膜アルミニウムにより形成されるものであってもよい。
【0072】
上記実施形態において、「同じ」は、概ね同じであることを含む概念である。
【0073】
また、上記実施形態において、構成部材のうち、上記実施形態に必要な主要部材のみを簡略化して示している部分がある。したがって、上記実施形態において明示されなかった任意の構成部材を備えうる。また、上記実施形態および図面において、各部材の寸法は、実際の寸法および寸法比率等を忠実に(厳密に)表したものではない部分がある。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で寸法や寸法比率等の変更は可能である。
【0074】
なお、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1000 炊飯器
1 シールド機構
11 基板側シールド部材
12 コイル側シールド部材
CB1 フィルタ基板(電子基板)
B13a、B13b、B14a、B14b 誘導加熱コイル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11