(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240911BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20240911BHJP
【FI】
F25B1/00 304F
F25B1/00 304S
F24F11/84
(21)【出願番号】P 2021139501
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 梨乃
(72)【発明者】
【氏名】三浦 脩
(72)【発明者】
【氏名】西谷 恵介
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102295(JP,A)
【文献】特開2005-147541(JP,A)
【文献】特開2013-096642(JP,A)
【文献】特開2008-215648(JP,A)
【文献】特開昭58-205057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)、熱源側熱交換器(13)、減圧機構(14)、前記圧縮機(11)を駆動する電装品(31)を冷却する冷却部(15)及び利用側熱交換器(18)が冷媒配管(40)によってこの順に接続された冷媒回路(4)と、
前記減圧機構(14)の開度を、所定の下限開度よりも大きな開度で制御する制御部(5)と、
を備え、
前記制御部(5)は、前記利用側熱交換器(18)を蒸発器として機能させる場合、前記減圧機構(14)の前記下限開度を、前記圧縮機(11)の周波数に基づき、前記電装品(31)
における結露
の発生を抑制できる範囲で変更する、冷凍装置(1)。
【請求項2】
前記制御部(5)は、前記圧縮機(11)の周波数が所定の第1閾値よりも高くなった場合、前記下限開度を所定の第1開度よりも小さくする、
請求項1に記載の冷凍装置(1)。
【請求項3】
前記制御部(5)は、前記圧縮機(11)の周波数が高くなるに従い、前記下限開度を小さくする、
請求項1に記載の冷凍装置(1)。
【請求項4】
前記制御部(5)は、外気温を検出するセンサ(33)の検出温度に基づいて、前記下限開度を変更する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷凍装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍装置は、冷凍装置の各部を制御するパワー半導体などの電装品を有している。電装品は駆動の際に発熱するため、冷却する必要がある。特許文献1には、冷媒回路を循環する冷媒によって電装品を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒により電装品を冷却することで、電装品を適温に保つことができる。一方で、冷却により電装品に結露が発生すると、電装品に不具合が生じるおそれがある。このため、電装品における結露の発生を抑制する必要がある。
【0005】
本開示は、電装品における結露の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の冷凍装置は、圧縮機、熱源側熱交換器、減圧機構、前記圧縮機を駆動する電装品を冷却する冷却部及び利用側熱交換器が冷媒配管によってこの順に接続された冷媒回路と、前記減圧機構の開度を、所定の下限開度よりも大きな開度で制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記利用側熱交換器を蒸発器として機能させる場合、前記減圧機構の前記下限開度を、前記圧縮機の周波数に基づき変更する、冷凍装置である。
【0007】
電装品の発熱は、圧縮機の周波数に応じて変化する。本開示の冷凍装置によれば、圧縮機の周波数に基づいて減圧機構の下限開度を変更することで、熱源側熱交換器におけるサブクール(過冷却度)を電装品の発熱状況に適した状態に調整することができる。これにより、電装品における結露の発生を抑制することができる。
【0008】
(2)好ましくは、前記制御部は、前記圧縮機の周波数が所定の第1閾値よりも高くなった場合、前記下限開度を所定の第1開度よりも小さくする。
【0009】
圧縮機の周波数が所定の閾値を上回る場合、電装品における発熱が強まりやすく、電装品は結露しにくくなる。本開示の冷凍装置によれば、このような場合に、減圧機構の下限開度を所定の第1開度よりも小さくすることで、熱源側熱交換器におけるサブクール(過冷却度)を大きくしやすくする。これにより、電装品における結露を抑制できる範囲で、冷凍装置の能力を維持することができる。
【0010】
(3)好ましくは、前記制御部は、前記圧縮機の周波数が高くなるに従い、前記下限開度を小さくする。
【0011】
圧縮機の周波数が高いほど、電装品における発熱が強まりやすく、電装品は結露しにくくなる。本開示の冷凍装置によれば、このような場合に、減圧機構の下限開度を小さくすることで、熱源側熱交換器におけるサブクール(過冷却度)を大きくしやすくする。これにより、電装品における結露を抑制できる範囲で、冷凍装置の能力を維持することができる。
【0012】
(4)好ましくは、前記制御部は、外気温を検出するセンサの検出温度に基づいて、前記下限開度を変更する。
【0013】
外気温が高いほど、電装品は結露しやすくなる。本開示の冷凍装置によれば、圧縮機の周波数に加えて、外気温に応じて変化する検出温度に基づいて減圧機構の下限開度を変更することで、熱源側熱交換器におけるサブクール(過冷却度)を電装品の発熱状況に適した状態に調整することができる。これにより、電装品における結露の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る冷凍装置の構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る冷凍装置の機能ブロック図である。
【
図3】比較例に係る冷凍装置の制御例を説明するタイムチャートである。
【
図4】実施形態に係る冷凍装置の第1の制御例を説明するタイムチャートである。
【
図5】第1の制御例に係る下限開度と周波数との関係を示すグラフである。
【
図6】第2の制御例に係る下限開度と周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しつつ、本開示の実施形態を説明する。
【0016】
[実施形態]
[冷凍装置の構成]
図1は、実施形態に係る冷凍装置1の構成を概略的に示す図である。
図2は、実施形態に係る冷凍装置1の機能ブロック図である。
以下、
図1及び
図2を参照して、冷凍装置1の構成を説明する。
【0017】
冷凍装置1は、部屋R1の空調を行う空気調和装置としての機能を有し、部屋R1に設置される室内ユニット2と、屋外に設置される室外ユニット3と、内部を冷媒が循環する冷媒回路4と、制御部5とを備える。冷媒は、例えばR32である。
【0018】
冷媒回路4は、圧縮機11と、切換機構12と、熱源側熱交換器13と、第1減圧機構14(本開示の「減圧機構」の一例)と、冷却部15と、レシーバ16と、第2減圧機構17と、利用側熱交換器18と、アキュムレータ19と、これら各部11~19を接続する冷媒配管40とを有する。冷媒配管40は、熱源側熱交換器13が凝縮器として機能する場合に(すなわち、冷凍装置1が冷房運転をする場合に)、圧縮機11から吐出された冷媒が、切換機構12、熱源側熱交換器13、第1減圧機構14、冷却部15、レシーバ16、第2減圧機構17、利用側熱交換器18、切換機構12及びアキュムレータ19の順に流れて圧縮機11へ戻るように、各部11~19を接続している。
【0019】
冷媒配管40は、各部11~19をそれぞれ接続する領域41~46を有する。冷媒配管40は、レシーバ16から領域46へバイパスするバイパス管47をさらに有する。冷媒回路4は、バイパス管47における冷媒の流通を制御する電磁弁35をさらに有する。
【0020】
制御部5は、互いに通信線によって接続された室内制御部5a及び室外制御部5bを有する。
図2に示すように、室内制御部5aはプロセッサ52a及びメモリ53aを有する。メモリ53aに含まれているプログラムに基づいてプロセッサ52aが各種の演算及び制御を行うことで、室内制御部5aは室内ユニット2を制御する。室外制御部5bはプロセッサ52b及びメモリ53bを有する。メモリ53bに含まれているプログラムに基づいてプロセッサ52bが各種の演算及び制御を行うことで、室外制御部5bは室外ユニット3を制御する。
【0021】
室内ユニット2は、冷媒回路4のうち利用側熱交換器18と冷媒配管40の一部とを収容している。室内ユニット2は、室内制御部5aと、室内ファン21とをさらに収容している。利用側熱交換器18は、例えばクロスフィンチューブ型の熱交換器である。室内ファン21は、例えばクロスフローファンである。室内ファン21が稼働すると、部屋R1内の空気が室内ユニット2の吸込口(図示省略)から吸い込まれ、利用側熱交換器18において冷媒と熱交換した調和空気が室内ユニット2の吹出口(図示省略)から部屋R1内へ供給される。
【0022】
室内ユニット2にはリモートコントロールユニット51(以下、「リモコン51」と称する。)が付帯されている。リモコン51は、室内制御部5aと有線又は無線により通信可能な状態で部屋R1内に設けられ、ユーザの操作に応じて室内制御部5aに制御信号を送信する。
【0023】
室外ユニット3は、冷媒回路4のうち圧縮機11、切換機構12、熱源側熱交換器13、第1減圧機構14、冷却部15、レシーバ16、第2減圧機構17、アキュムレータ19及び電磁弁35と、冷媒配管40の一部とを収容している。室外ユニット3は、室外制御部5bと、電装品31と、室外ファン32と、センサ33とをさらに収容している。
【0024】
圧縮機11は、例えば容量可変式圧縮機である。電装品31は、圧縮機11を駆動するための電子機器である。電装品31は、パワー半導体及びコンデンサ等の素子と、これらの素子が装着された基板と、これらの素子及び基板によって形成される各種の回路(例えば、インバータ回路)とを含む。電装品31は、
図2に示すように制御部5(具体的には、室外制御部5b)と電気的に接続している。電装品31は、制御部5の動作指令に基づいて、圧縮機11の回転周波数(以下、単に「周波数」と称する。)を制御する。
【0025】
熱源側熱交換器13は、例えばクロスフィンチューブ型の熱交換器である。第1減圧機構14は、例えば電磁弁(膨張弁)であり、冷媒配管40を流れる冷媒の圧力及び流量を調節する。冷却部15は、冷媒配管40の一部であり、内部を流れる冷媒によって電装品31を冷却するように、電装品31に当接又は近接した状態で設置されている。
【0026】
レシーバ16は、熱源側熱交換器13又は利用側熱交換器18が蒸発器として機能する場合に、当該蒸発器において蒸発に寄与しないガス状態の冷媒をバイパス管47に分離するための気液分離器である。第2減圧機構17は、例えば電磁弁(膨張弁)であり、冷媒配管40を流れる冷媒の圧力及び流量を調節する。アキュムレータ19は、圧縮機11の保護のために冷媒の気液分離を行う装置である。
【0027】
切換機構12は、冷媒配管40内の冷媒の流れ方向を切り換える弁である。切換機構12は、4個のポートP1~P4を有する。ポートP1は、冷媒配管40の領域41を介して圧縮機11に接続されている。ポートP1は、圧縮機11により吐出された高圧冷媒を受け入れる高圧ポートである。ポートP2は、冷媒配管40の領域45を介して利用側熱交換器18に接続されている。ポートP3は、冷媒配管40の領域46を介してアキュムレータ19に接続されている。ポートP3はアキュムレータ19を介して圧縮機11により冷媒が吸引される低圧ポートである。ポートP4は、冷媒配管40の領域42を介して熱源側熱交換器13に接続されている。
【0028】
切換機構12は、制御部5の制御により、第1状態(
図1の実線)と、第2状態(
図1の破線)とに切り換えられる。第1状態は、ポートP1とポートP4とが連通し、ポートP2とポートP3とが連通する状態である。第1状態の場合、圧縮機11から領域41に吐出された冷媒は、領域42を通って熱源側熱交換器13に送られる。この場合、熱源側熱交換器13は凝縮器として機能し、利用側熱交換器18は蒸発器として機能する。
【0029】
第2状態は、ポートP1とポートP2とが連通し、ポートP3とポートP4とが連通する状態である。第2状態の場合、圧縮機11から領域41に吐出された冷媒は、領域45を通って利用側熱交換器18に送られる。この場合、熱源側熱交換器13は蒸発器として機能し、利用側熱交換器18は凝縮器として機能する。
【0030】
室外ファン32は、例えばプロペラファンである。室外ファン32が稼働すると、室外の空気(外気)が室外ユニット3の吸込口(図示省略)から吸い込まれ、熱源側熱交換器13において冷媒と熱交換した後の空気が室外ユニット3の排気口(図示省略)から室外空間へ排出される。
【0031】
センサ33は、例えば室外ユニット3の吸込口付近に設置され、外気温を検出する温度センサである。センサ33は室外制御部5bと電気的に接続し、検出信号を室外制御部5bへ出力する。
【0032】
[運転モードについて]
制御部5は、リモコン51が受け付けた指示に基づいて、冷凍装置1を冷房運転又は暖房運転させる。冷房運転では、制御部5は切換機構12を第1状態とする。この状態で制御部5が圧縮機11を稼働させると、熱源側熱交換器13が凝縮器となり、利用側熱交換器18が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0033】
より具体的には、圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、領域41、切換機構12のポートP1,P4及び領域42を通過して熱源側熱交換器13に入り、室外の空気と熱交換して凝縮する。凝縮した冷媒は第1減圧機構14を通過する際に減圧され、冷却部15を通って電装品31を冷却する。冷却部15を通った冷媒はレシーバ16によって気液分離され、液冷媒は第2減圧機構17及び領域44を通って利用側熱交換器18に入り、ガス冷媒はバイパス管47及び領域46を通ってアキュムレータ19に入る。
【0034】
利用側熱交換器18に入った液冷媒は、部屋R1内の空気と熱交換して蒸発する。冷媒により冷却された調和空気は、室内ファン21によって部屋R1内に吹き出される。利用側熱交換器18を出た冷媒は、領域45、切換機構12のポートP2,P3及び領域46を通過してアキュムレータ19に入り、気液分離がなされた後に圧縮機11に吸入される。
【0035】
暖房運転では、制御部5は切換機構12を第2状態とする。この状態で制御部5が圧縮機11を稼働させると、熱源側熱交換器13が蒸発器となり、利用側熱交換器18が凝縮器となる冷凍サイクルが行われる。
【0036】
より具体的には、圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、領域41、切換機構12のポートP1,P2及び領域45を通過して利用側熱交換器18に入り、部屋R1内の空気と熱交換して凝縮する。冷媒により加温された調和空気は、室内ファン21によって部屋R1内に吹き出される。凝縮した冷媒は第2減圧機構17を通過する際に減圧された後、レシーバ16に入る。冷媒はレシーバ16によって気液分離され、液冷媒は冷却部15を通過した後に第1減圧機構14及び領域43を通って熱源側熱交換器13に入り、ガス冷媒はバイパス管47及び領域46を通ってアキュムレータ19に入る。
【0037】
熱源側熱交換器13に入った冷媒は、屋外の空気と熱交換して蒸発する。熱源側熱交換器13を出た冷媒は、領域42、切換機構12のポートP4,P3及び領域46を通過してアキュムレータ19に入り、気液分離がなされた後に圧縮機11に吸入される。
【0038】
[電装品の結露について]
電装品31は、圧縮機11を駆動する際に発熱するため、冷却することで適温に保つ必要がある。本実施形態の電装品31は、冷却部15を流通する冷媒によって冷却される。一方で、電装品31を過度に冷却して電装品31の温度が露点を下回ると、電装品31に結露が発生する場合がある。電装品31に結露が発生すると、電装品31にショート等の不具合が生じるおそれがある。
【0039】
特に、電装品31の結露は外気温及び湿度の高い夏季に生じやすい。このため、以下では冷凍装置1が冷房運転する際の電装品31の結露防止について説明する。冷凍装置1が冷房運転する場合(利用側熱交換器18が蒸発器として機能する場合)、冷却部15を流れる冷媒の温度は、第1減圧機構14の開度によって調整される。第1減圧機構14の開度は、制御部5が制御する。
【0040】
具体的には、制御部5が第1減圧機構14の開度をより小さく制御すると、領域43から冷却部15へ流れる冷媒が過冷却状態(サブクール)となって、冷却部15の冷媒温度が低下する。これにより、冷却部15を流れる冷媒によって電装品31を効率的に冷却できる一方で、電装品31に結露が発生するおそれがある。
【0041】
これに対し、制御部5が第1減圧機構14の開度をより大きく制御すると、領域43から冷却部15へ流れる冷媒が過冷却状態とならず、冷却部15の冷媒温度は過冷却状態となる場合と比べて高くなる。この場合でも、圧縮機11の駆動によって電装品31が冷媒よりも高温となっているときには、冷却部15を流れる冷媒により電装品31を冷却できる。しかしながら、冷媒が過冷却状態とならない場合、冷凍装置1の冷房運転における冷媒効率が低下する(冷房能力が低下する)。
【0042】
以上により、電装品31の結露を抑制する観点からは、第1減圧機構14の開度をより大きくしたほうが好適である一方で、冷凍装置1の冷房能力を維持する観点からは、第1減圧機構14の開度をより小さくしたほうが好適である。例えば、外気温が高く(例えば摂氏30度以上)、電装品31に結露が発生しやすい環境下では、第1減圧機構14の開度をより大きくして結露を抑制する一方で、外気温が低く(例えば摂氏30度未満)、電装品31に結露が発生しにくい環境下では、第1減圧機構14の開度をより小さくして冷房能力を維持することが考えられる。
【0043】
発明者らは、さらに、圧縮機11の周波数が高いほど圧縮機11を駆動する電装品31がより高い温度で発熱することに着目した。例えば、外気温が高い場合であっても、圧縮機11の周波数が高ければ、電装品31の発熱が激しくなり、電装品31が過度に冷却されにくくなることで電装品31に結露が発生しにくい。
【0044】
このため、本実施形態の制御部5は、電装品31の結露に関する下記(A)及び(B)の観点によって第1減圧機構14の開度の下限値(以下、「下限開度」と称する。)を決定する。これにより、電装品31の結露抑制と冷凍装置1の冷房能力の維持とをより好適に両立させることができる。
【0045】
(A)圧縮機11の周波数が高い場合、電装品31に結露が発生しにくいため、第1減圧機構14の下限開度をより小さい値とすることで冷房能力を維持する。
(B)外気温が高い場合、電装品31に結露が発生しやすいため、第1減圧機構14の下限開度をより大きい値とすることで結露を抑制する。
【0046】
以下、冷凍装置1の具体的な制御例を説明する。
【0047】
[比較例]
はじめに、冷凍装置1の制御の比較例を説明する。この比較例は、外気温のみに基づいて第1減圧機構14の下限開度を決定する例であり、上記の(B)の観点のみを考慮した制御例である。
【0048】
図3は、冷凍装置1の制御の比較例を説明するタイムチャートである。
図3の上段は第1減圧機構14の開度を示し、
図3の中段は圧縮機11の周波数を示し、
図3の下段はセンサ33が検出する温度を示している。なお、
図3において、第1減圧機構14の開度と、圧縮機11の周波数と、センサ33の検出温度とは、各値の関係を説明するための模式的なチャート形状として示しており、制御部5によって実際に制御される際の形状とは異なる場合がある。
【0049】
制御部5は、センサ33の検出温度にかかわらず、開度の上限値(以下、「上限開度」と称する。)を開度V3(例えば100%)に決定する。また、制御部5は、センサ33の検出温度に基づいて第1減圧機構14の下限開度を決定する。冷房運転中、制御部5は、決定した下限開度及び上限開度の範囲内で第1減圧機構14の開度を制御する。
【0050】
具体的には、制御部5は、センサ33の検出温度が温度Th2(例えば、摂氏30度)未満の場合に第1減圧機構14の下限開度を所定の開度V1(例えば25%)に決定し、センサ33の検出温度が温度Th2以上の場合に第1減圧機構14の下限開度を開度V1よりも大きい開度V2(例えば50%)に決定する。すなわち、制御部5は、センサ33の検出温度が高いほど、第1減圧機構14の下限開度を大きい値に決定する。
【0051】
図3を参照する。時刻t1から時刻t2まで、圧縮機11は周波数F1で運転し、センサ33の検出温度は温度Th2よりも低い温度Th1(例えば、摂氏20度)である。このため、時刻t1から時刻t2まで、制御部5は第1減圧機構14を下限開度V1及び上限開度V3の範囲内で制御する。
【0052】
制御部5は、例えば、リモコン51によって設定された設定温度、及び室内ユニット2に設置された温度センサ(図示省略)の検出温度等に基づいて、下限開度V1及び上限開度V3の範囲内で第1減圧機構14を制御する。第1減圧機構14は下限開度V1よりも大きい開度にて制御されるため、電装品31の結露発生を抑制することができる。
【0053】
時刻t2に、圧縮機11の周波数は周波数F1よりも高い周波数F2となる。しかしながら、本比較例において制御部5は第1減圧機構14の下限開度について圧縮機11の周波数を参酌しないため、時刻t2以降も制御部5は第1減圧機構14を下限開度V1及び上限開度V3の範囲内で制御する。
【0054】
時刻t3に、圧縮機11の周波数は周波数F1に低下し、センサ33の検出温度は温度Th2に上昇する。このため、時刻t3以降、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を開度V1から開度V2に増加させる。そして、制御部5は、第1減圧機構14を下限開度V2及び上限開度V3の範囲内で制御する。第1減圧機構14は下限開度V2よりも大きい開度にて制御されるため、電装品31の結露発生を抑制することができる。
【0055】
時刻t4に、圧縮機11の周波数は再び周波数F2となるが、制御部5は引き続き第1減圧機構14を下限開度V2及び上限開度V3の範囲内で制御する。
【0056】
本比較例では、外気温が高い場合に、第1減圧機構14の下限開度をより高い値とすることで、電装品31の結露発生を抑制している。しかしながら、下限開度の決定において圧縮機11の周波数を考慮していないため、例えば時刻t4以降、圧縮機11の周波数がより高くなって電装品31の結露発生のおそれが低い場合でも、下限開度をより高い値としている。これにより、結露対策をしなくてもよい環境下において無駄に結露対策を講じてしまうことで、第1減圧機構14の調整幅が狭くなる。この結果、冷凍装置1の冷房能力が低下する。
【0057】
[冷凍装置の第1の制御例]
次に、本実施形態における冷凍装置1の第1の制御例を説明する。この制御例は、圧縮機11の周波数と、センサ33の検出温度との両方に基づいて第1減圧機構14の下限開度を決定する例であり、上記の(A)及び(B)の観点を考慮した制御例である。
【0058】
図4は、冷凍装置1の第1の制御例を説明するタイムチャートである。
図4の上段は第1減圧機構14の開度を示し、
図4の中段は圧縮機11の周波数を示し、
図4の下段はセンサ33が検出する温度を示している。本制御例では、圧縮機11の周波数及びセンサ33の検出温度が
図3の比較例と同様に変動する例を挙げて説明する。
【0059】
制御部5は、比較例と同様に上限開度を開度V3に決定する。また、制御部5は、圧縮機11の周波数と、センサ33の検出温度とに基づいて第1減圧機構14の下限開度を決定する。冷房運転中、制御部5は、当該下限開度及び上限開度の範囲内で第1減圧機構14の開度を制御する。
【0060】
図5は、センサ33の検出温度が温度Th1である場合において、圧縮機11の周波数と、制御部5が決定する第1減圧機構14の下限開度との関係を示すグラフである。
図5の横軸は圧縮機11の周波数を示し、
図5の縦軸は制御部5が決定する第1減圧機構14の下限開度を示している。
【0061】
図5に示すように、圧縮機11の周波数が所定の第1閾値Fth以下の場合、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を所定の第1開度V1に決定する。また、圧縮機11の周波数が所定の第1閾値Fthよりも高い場合、電装品31はより高く発熱して結露しにくい状態となるため、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を第1開度V1よりも小さい開度V1aに決定する。開度V1aは、例えば第1開度V1よりも所定値A1だけ小さい値である(V1a=V1-A1)。
【0062】
センサ33の検出温度が温度Th1と異なる場合にも、制御部5は圧縮機11の周波数に基づいて第1減圧機構14の下限開度を決定する。例えば、センサ33の検出温度が温度Th2で、かつ圧縮機11の周波数が所定の第1閾値Fth以下の場合、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を所定の第1開度V2(但し、V2>V1)に決定する。また、センサ33の検出温度が温度Th2で、かつ圧縮機11の周波数が所定の第1閾値Fthよりも高い場合、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を第1開度V2よりも所定値A2だけ小さい開度V2aに決定する(V2a=V2-A2)。
【0063】
センサ33の検出温度及び圧縮機11の周波数にそれぞれ対応する第1減圧機構14の下限開度は、例えばメモリ53b(
図2)にテーブル形式にて格納されている。制御部5は、センサ33の検出温度及び圧縮機11の周波数を取得して、メモリ53bに格納されているテーブルを参照することで、第1減圧機構14の下限開度を決定する。なお、第1減圧機構14の下限開度は、センサ33の検出温度及び圧縮機11の周波数をそれぞれ変数とする関数形式にてメモリ53bに格納されていてもよい。
【0064】
また、上記ではセンサ33の検出温度ごとに、第1開度V1,V2からそれぞれ所定値A1,A2だけ小さい開度を下限開度V1a,V2aとして採用するが、センサ33の検出温度にかかわらず一定の所定値A3を第1開度V1,V2から減算することで下限開度V1b,V2bを算出してもよい(V1b=V1-A3、及びV2b=V2-A3)。
【0065】
図4を参照する。時刻t1から時刻t2まで、圧縮機11は第1閾値Fthよりも低い周波数F1で運転し、センサ33の検出温度は温度Th1である。このため、時刻t1から時刻t2まで、制御部5は第1減圧機構14を下限開度V1及び上限開度V3の範囲内で制御する。
【0066】
時刻t2から時刻t3まで、圧縮機11の周波数は第1閾値Fthよりも高い周波数F2で運転する。このため、時刻t2から時刻t3まで、制御部5は第1減圧機構14を第1開度V1よりも所定値A1だけ小さい下限開度V1a及び上限開度V3の範囲内で制御する。
【0067】
時刻t3に、圧縮機11の周波数は第1閾値Fthよりも小さい周波数F1に低下し、センサ33の検出温度は温度Th2に上昇する。このため、時刻t3以降、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を開度V1aから開度V2に増加させる。そして、制御部5は、第1減圧機構14を下限開度V2及び上限開度V3の範囲内で制御する。
【0068】
時刻t4以降、圧縮機11の周波数は再び周波数F2で運転する。このため、時刻t4以降、制御部5は第1減圧機構14を第1開度V2よりも所定値A2だけ小さい下限開度V2a及び上限開度V3の範囲内で制御する。
【0069】
本制御例では、圧縮機11の周波数に基づいて第1減圧機構14の下限開度を変更することで、熱源側熱交換器13におけるサブクール(過冷却度)を電装品31の発熱状況に適した状態に調整することができる。具体的には、圧縮機11の周波数が所定の第1閾値Fthよりも高くなり、電装品における発熱が強まった場合に、制御部5が第1減圧機構14の下限開度を所定の第1開度V1(又は第1開度V2)よりも小さくする。これにより、電装品31における結露発生を抑制できる範囲で、第1減圧機構14の調整幅を確保することができる。この結果、電装品31の結露発生を抑制しつつ、冷凍装置1の冷媒能力を維持することができる。
【0070】
さらに、制御部5は、センサ33の検出温度に基づいて、下限開度を変更する。具体的には、制御部5はセンサ33の検出温度が高いほど、下限開度を大きくする。これにより、より確実に電装品31における結露の発生を抑制することができる。
【0071】
[冷凍装置の第2の制御例]
上記の第1の制御例では、
図5に示すように第1閾値Fthを境として制御部5は第1減圧機構14の下限開度を開度V1と開度V1aとにステップ状に変更する。しかしながら、制御部5の制御はこれに限られず、圧縮機11の周波数に応じて第1減圧機構14の下限開度を徐々に変更してもよい。
【0072】
図6は、センサ33の検出温度が温度Th1である場合において、圧縮機11の周波数と、制御部5が決定する第1減圧機構14の下限開度との関係を示すグラフである。
図6に示すように、圧縮機11の周波数がF1未満の場合、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を所定の第1開度V1に決定する。また、圧縮機11の周波数がF2(但し、F2>F1)よりも高い場合、制御部5は第1減圧機構14の下限開度を第1開度V1よりも所定値A1だけ小さい開度V1aに決定する。
【0073】
圧縮機11の周波数がF1以上F2以下の場合、制御部5は圧縮機11の周波数が高くなるに従い、第1減圧機構14の下限開度を小さくする。
図6では一次関数的に第1減圧機構14の下限開度を小さくする例を挙げているが、これは一例であり、第1減圧機構14の下限開度が単調減少するのであれば、周波数と下限開度の関係は一次関数的でなくてもよい。
【0074】
[変形例]
本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。以下の変形例において、上記の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0075】
上記の制御例では、制御部5は圧縮機11の周波数と、センサ33の検出温度とに基づいて、第1減圧機構14の下限開度を決定する。しかしながら、制御部5は、センサ33の検出温度を考慮せず、圧縮機11の周波数のみに基づいて第1減圧機構14の下限開度を決定してもよい。当変形例は、前述の(A)の観点のみを考慮した制御例である。
【0076】
例えば圧縮機11の駆動に伴う電装品31の発熱が顕著である場合には、電装品31の発熱と比べて外気温による結露への影響は軽微となる。このような場合に、圧縮機11の周波数のみに基づいて第1減圧機構14の下限開度を決定するように制御部5を構成することで、電装品31の結露発生を抑制しつつ、制御部5における演算処理の負荷を低減することができる。
【0077】
[その他]
上記の各実施形態及び変形例については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。
【0078】
[実施形態の作用効果]
(1)実施形態に係る冷凍装置1は、圧縮機11、熱源側熱交換器13、減圧機構14、圧縮機11を駆動する電装品31を冷却する冷却部15及び利用側熱交換器18が冷媒配管40によってこの順に接続された冷媒回路4と、減圧機構14の開度を、所定の下限開度よりも大きな開度で制御する制御部5と、を備え、制御部5は、利用側熱交換器18を蒸発器として機能させる場合、減圧機構14の前記下限開度を、圧縮機11の周波数に基づき変更する、冷凍装置1である。
【0079】
電装品の発熱は、圧縮機11の周波数に応じて変化する。実施形態に係る冷凍装置1によれば、圧縮機11の周波数に基づいて減圧機構14の下限開度を変更することで、熱源側熱交換器13におけるサブクール(過冷却度)を電装品31の発熱状況に適した状態に調整することができる。これにより、電装品31における結露の発生を抑制することができる。
【0080】
(2)実施形態に係る制御部5は、圧縮機11の周波数が所定の第1閾値よりも高くなった場合、前記下限開度を所定の第1開度よりも小さくする。
【0081】
圧縮機11の周波数が所定の第1閾値を上回る場合、電装品31における発熱が強まりやすく、電装品31は結露しにくくなる。実施形態に係る冷凍装置1によれば、このような場合に、減圧機構14の下限開度を所定の第1開度よりも小さくすることで、熱源側熱交換器13におけるサブクール(過冷却度)を大きくしやすくする。これにより、電装品31における結露を抑制できる範囲で、冷凍装置1の能力を維持することができる。
【0082】
(3)実施形態に係る制御部5は、圧縮機11の周波数が高くなるに従い、前記下限開度を小さくする。
【0083】
圧縮機11の周波数が高いほど、電装品31における発熱が強まりやすく、電装品31は結露しにくくなる。実施形態に係る冷凍装置1によれば、このような場合に、減圧機構14の下限開度を小さくすることで、熱源側熱交換器13におけるサブクール(過冷却度)を大きくしやすくする。これにより、電装品31における結露を抑制できる範囲で、冷凍装置1の能力を維持することができる。
【0084】
(4)実施形態に係る制御部5は、外気温を検出するセンサ33の検出温度に基づいて、前記下限開度を変更する。
【0085】
外気温が高いほど、電装品31は結露しやすくなる。実施形態に係る冷凍装置1によれば、圧縮機11の周波数に加えて、外気温に応じて変化する検出温度に基づいて減圧機構14の下限開度を変更することで、熱源側熱交換器13におけるサブクール(過冷却度)を電装品31の発熱状況に適した状態に調整することができる。これにより、電装品31における結露の発生を抑制することができる。
【0086】
[補記]
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0087】
1:冷凍装置、11:圧縮機、12:切換機構、13:熱源側熱交換器、14:第1減圧機構(減圧機構)、15:冷却部、16:レシーバ、17:第2減圧機構、18:利用側熱交換器、19:アキュムレータ、2:室内ユニット、21:室内ファン、3:室外ユニット、31:電装品、32:室外ファン、33:センサ、35:電磁弁、4:冷媒回路、40:冷媒配管、41:領域、42:領域、43:領域、44:領域、45:領域、46:領域、47:バイパス管、5:制御部、5a:室内制御部、5b:室外制御部、51:リモートコントロールユニット(リモコン)、52a:プロセッサ、52b:プロセッサ、53a:メモリ、53b:メモリ、P1:ポート、P2:ポート、P3:ポート、P4:ポート、V1:開度(下限開度、第1開度の一例)、V1a:開度(下限開度)、V1b:開度(下限開度)、V2:開度(下限開度、第1開度の一例)、V2a:開度(下限開度)、V2b:開度(下限開度)、V3:開度(上限開度)、A1:所定値、A2:所定値、A3:所定値、Th1:温度、Th2:温度、t1:時刻、t2:時刻、t3:時刻、t4:時刻、F1:周波数、F2:周波数、Fth:第1閾値、R1:部屋