(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】空調関連機器及び空調システム
(51)【国際特許分類】
H04L 61/5007 20220101AFI20240911BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240911BHJP
F24F 11/88 20180101ALI20240911BHJP
H04L 61/2596 20220101ALI20240911BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20240911BHJP
【FI】
H04L61/5007
F24F11/63
F24F11/88
H04L61/2596
F24F11/54
(21)【出願番号】P 2022061067
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】井浦 努
(72)【発明者】
【氏名】村上 友樹
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/180800(WO,A1)
【文献】特開2000-286889(JP,A)
【文献】特開2013-236205(JP,A)
【文献】特開2016-092628(JP,A)
【文献】国際公開第2021/005651(WO,A1)
【文献】特開2009-014281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
H04L 41/00-101/695
F24F 11/54
F24F 11/63
F24F 11/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に固有の識別情報に基づいて、前記識別情報よりも大きいデータ領域を備えるIPアドレスを生成する生成部を備え、
前記IPアドレスは、上位アドレスと、前記識別情報からなる下位アドレスとを含み、
前記生成部は、
通信系統に拡張機が存在するか否かに応じて異なる上位アドレスを付与した前記IPアドレスを生成
し、
前記拡張機が存在する場合、前記拡張機に応じた上位アドレスであって、前記通信系統に存在する拡張機に固有の識別情報に基づいて生成される上位アドレスを付与した前記IPアドレスを生成する
空調関連機器。
【請求項2】
前記生成部は、前記拡張機が存在しない場合、所定の上位アドレスを付与した前記IPアドレスを生
成する
請求項1に記載の空調関連機器。
【請求項3】
前記機器に対応付けられる通信装置のMACアドレス又は機番を所定ルールに基づいて変換することにより、前記機器に固有の識別情報を生成する
請求項1
又は請求項
2に記載の空調関連機器。
【請求項4】
室内機又は換気装置を含む
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の空調関連機器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空調関連機器と、前記空調関連機器と拡張機との通信系統の間に設けられる室外機とを備える
空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調関連機器及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の室内機及び室外機と、それら室外機及び室内機を集中制御する集中機器とから構成され、通信線を介して各機器が通信を行う空調システムがある(例えば、特許文献1)。空調システムにおける各機器は、各機器に設定される通信アドレスを用いて通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煩雑な通信アドレスの設定作業は、設置業者に負担を要し、また設定ミスも生じ易いといった問題がある。
【0005】
本開示の目的は、通信アドレスの設定作業の効率性を向上させることのできる空調関連機器等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る空調関連機器は、機器に固有の識別情報に基づいて、前記識別情報よりも大きいデータ領域を備えるIPアドレスを生成する生成部を備え、前記IPアドレスは、上位アドレスと、前記識別情報からなる下位アドレスとを含み、前記生成部は、通信系統に拡張機が存在するか否かに応じて異なる上位アドレスを付与した前記IPアドレスを生成する。
【0007】
本開示によれば、通信アドレスの設定作業の効率性を向上できる。
【0008】
本開示の一態様に係る空調関連機器は、前記生成部は、前記拡張機が存在しない場合、所定の上位アドレスを付与した前記IPアドレスを生成し、前記拡張機が存在する場合、前記拡張機に応じた上位アドレスを付与した前記IPアドレスを生成する。
【0009】
本態様にあっては、空調関連機器は、空調関連機器の属する通信系統における拡張機の有無に応じて異なる上位アドレスと、空調関連機器に固有の識別情報に基づき生成される下位アドレスとを含むIPアドレスを生成する。従って、通信系統の構成に応じて異なるIPアドレスを用いた通信が可能となり、通信ネットワークを好適に形成できる。上位アドレスは、所定値又は拡張機に応じた上位アドレスを付与することで容易に生成し得るため、IPアドレスの生成処理が簡易となる。
【0010】
本開示の一態様に係る空調関連機器は、前記拡張機に応じた上位アドレスは、前記拡張機に固有の識別情報に基づいて生成される。
【0011】
本態様にあっては、上位アドレスに一意のデータである拡張機の識別情報を用いることで、上位アドレスの生成が容易となる。また、拡張機を含む通信ネットワーク構成を、空調関連機器のIPアドレスに適正に反映し得る。
【0012】
本開示の一態様に係る空調関連機器は、前記機器に対応付けられる通信装置のMACアドレス又は機番を所定ルールに基づいて変換することにより、前記機器に固有の識別情報を生成する。
【0013】
本態様にあっては、空調関連機器に対応付けられる通信装置のMACアドレス及び機番の少なくとも1つを用いて容易に機器に固有の識別情報を生成できる。通常、一意の値となるよう設定される通信装置のMACアドレス又は機番を用いることで、空調関連機器に固有の識別情報を容易且つ適正に生成できる。空調関連機器に対し一意のデータとなる識別情報に基づきIPアドレスが生成されるため、空調関連機器とIPアドレスとを確実に対応付けることができる。
比較として、複数の空調関連機器を備える通信ネットワーク内において、空調関連機器の総数や空調関連機器の接続順等を用いて空調関連機器に対するアドレスを設定する場合を検討する。この場合、いずれかの空調関連機器の取外しや新たな空調関連機器の追加に応じて、空調関連機器に対するアドレスの再設定が必要となることがある。アドレスの再設定により、過去にアドレスに対応付けて記録された空調関連機器の履歴データとの対応関係が解消されてしまうおそれがある。本態様によれば、他装置の状況に応じた空調関連機器のIPアドレスの変更を不要とし、継続的なIPアドレスの使用が可能となる。
【0014】
本開示の一態様に係る空調関連機器は、室内機又は換気装置を含む。
【0015】
本態様にあっては、室内機又は換気装置がIPアドレスを自己生成できるため、通信アドレスの設定における作業工数を削減できる。
【0016】
本開示の一態様に係る空調システムは、上述のいずれかに記載の空調関連機器と、前記空調関連機器と拡張機との通信系統の間に設けられる室外機とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】空調システムの集中機器、室外機、室内機及び拡張機の構成例を示すブロック図である。
【
図3】空調システムの通信ネットワーク構成を説明する説明図である。
【
図4】リンクローカルユニキャストアドレスの生成方法を説明する図である。
【
図5】ユニークローカルユニキャストアドレスの生成方法を説明する図である。
【
図6】空調システムが実行するアドレス生成の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、実施形態の空調システムSの概要図である。空調システムSは、例えばオフィスビル、商業ビル、公共施設などにおける空調制御を行うためのシステムである。空調システムSは、集中機器1と、複数の空調関連機器2とを備える。集中機器1及び各空調関連機器2は、通信線3を介して通信可能に接続されており、通信ネットワークを構成する。
【0020】
集中機器1は、複数の空調関連機器2の動作を制御する機器であり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、量子コンピュータ等である。集中機器1は、制御対象の空調関連機器2へ制御信号を送信することによって、制御対象の空調関連機器2の動作を制御する。空調関連機器2は、空調制御を行うための機器であり、例えば室外機21、室内機22、換気装置23及び拡張機24等を含んでよい。なお、集中機器1、室外機21、室内機22、換気装置23及び拡張機24のそれぞれを「機器」と称することがある。
【0021】
集中機器1には、通信線3を介して複数の室外機21が接続されている。室外機21は、直接的に集中機器1に接続されてもよく、拡張機24を介して間接的に集中機器1に接続されてもよい。拡張機24は、集中機器1に接続する機器の数を拡張するための機器(アダプタ)である。通常、集中機器1には、直接的に接続可能な室外機の最大数が決められている。集中機器1に拡張機24を接続し、当該拡張機24に複数の室外機21を接続させることで、空調システムSを構成する室外機21及び室内機22の総数を増加することができる。拡張機24は、集中機器1からの通信を、自器の下流に接続される室外機21又は室内機22へ中継するための中継装置として機能する。ここで、下流とは、拡張機24等の空調関連機器2からみて集中機器1方向の逆方向を意味し、上流とは、空調関連機器2からからみて集中機器1方向を意味する。
【0022】
各室外機21には、通信線3を介して1つ以上の室内機22が接続されている。室外機21には、通信線3を介して1つ以上の換気装置23が接続されていてもよい。室外機21、室内機22、換気装置23は、通信線3を介してバス型に接続されていてもよい。室外機21は、集中機器1から受信した制御信号に基づいて、自器の動作を制御する。また、室外機21は、集中機器1から自器の下流に接続される室内機22又は換気装置23を宛先とする制御信号を受信した場合、宛先の室内機22又は換気装置23へ制御信号を伝送する。室内機22又は換気装置23は、集中機器1から室外機21を介して又は直接に受信した制御信号に基づいて、空気調和のための制御を行う。
【0023】
1つの室外機21と、当該室外機21に接続される室内機22及び換気装置23とにより、1つの冷媒系統が構成される。同一の冷媒系統に属する各機器の間で冷媒が循環する。同一の冷媒系統に属する室内機22及び換気装置23間はそれぞれ、通信線3を介し接続されており、相互通信が可能である。
【0024】
空調システムSでは、各機器を備える通信ネットワークにおいて、例えばEthernet(登録商標)、HD-PLC(High Definition Power Line Communication)等の通信プロトコルによるIP通信が行なわれる。以下では、通信ネットワークを介した各機器間の通信はHD-PLCにより行われ、通信線3としてPLC通信に対応した電力線、特に弱電用電力線を用いる例を説明する。
【0025】
空調システムSの通信ネットワークにおいて、複数の冷媒系統を含むネットワーク全体の機器間での通信が行われる範囲を全体ネットワーク、冷媒系統内における空調関連機器2間での通信が行われる範囲を系統内ネットワークとする。さらに全体ネットワークにおいて、拡張機24の上流側の通信が行われる範囲を第1ネットワーク、拡張機24の下流側の通信が行われる範囲を第2ネットワークとする。空調システムSにおけるネットワーク構成の詳細は後述する。
【0026】
図2は、空調システムSの集中機器1、室外機21、室内機22及び拡張機24の構成例を示すブロック図である。
【0027】
集中機器1は、制御部11、記憶部12、入出力部13、第1通信部14、及び第2通信部15等を備える。
【0028】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を備える演算処理装置である。制御部11は、内蔵するROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、ROMや記憶部に格納された各種プログラムを実行し、上述したハードウェア各部の動作を制御する。
【0029】
記憶部12は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置を備える。記憶部12は、制御部11が参照するプログラム及びデータを記憶する。記憶部12は、複数の記憶装置により構成されていてもよく、集中機器1に接続された外部記憶装置であってもよい。記憶部12に記憶されるデータには、例えば後述する自器の識別情報、自器及び自器と通信接続される各機器のIPアドレス等が含まれる。
【0030】
記憶部12に記憶されるプログラム(プログラム製品)は、当該プログラムを読み取り可能に記録した不図示の非一時的な記録媒体により提供されてもよい。記録媒体は、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カード等の可搬型メモリである。制御部11は、図示しない読取装置を用いて、上記記録媒体から所望のコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部12に記憶させる。代替的に、上記コンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。
【0031】
入出力部13は、自器に接続される外部装置を接続するための入出力デバイスを備える。外部装置には、例えば不図示の表示装置や入力装置が含まれてよい。
【0032】
第1通信部14は、第1の通信プロトコルによる通信に関する処理を行うための通信モジュール(例えば、Network Interface Card:NIC)を備える。本実施形態において、第1の通信プロトコルはEthernetであり、第1通信部14は、Ethernet通信モジュールを備える。第1通信部14には、通信線3を介し第2通信部15が接続されている。
【0033】
第2通信部15は、第2の通信プロトコルによる通信に関する処理を行うための通信モジュール(例えば、NIC)を備える。本実施形態において、第2の通信プロトコルはHD-PLCであり、第2通信部15はHD-PLC通信モジュールを備える。第2通信部15は、不図示のCPU及びメモリ等を備えてもよい。HD-PLC通信モジュールには、機器固有の識別情報であるMACアドレス又は機番が予め付与されている。なお、第2通信部15は、第1通信部14を介し接続されるものに限定されず、内部バス等を介し制御部11に接続されるものであってもよい。第2通信部15は、集中機器1の外側に配されてもよく、集中機器1を構成するケーシング内に配されてもよい。
【0034】
第2通信部15は、電力供給に関する処理を行うものとしても機能する。第2通信部15は、不図示の電力ケーブルを介し配策されており、外部装置から供給された電力を制御部11などを含むマイコンへ駆動電力として供給する。
【0035】
制御部11は、第1通信部14及び第2通信部15を通して、各機器との間で情報及び電力の送受信を行う。具体的には、制御部11は、第1通信部14を通して、IPアドレスを用いてEthernetプロトコルによる通信データを外部機器へ送信する。第1通信部14は、受け付けた通信データを第2通信部15へ送信する。第2通信部15は、受け付けた通信データをHD-PLCのメモリ(バッファ)等にコピーし、HD-PLCプロトコルにより外部機器へ伝送する。通信データの受信元である外部機器は、逆の手順により、受信したHD-PLCプロトコルの通信データをEthernet通信にて受信する。
【0036】
室外機21は、集中機器1と同様のハードウェア構成であり、制御部211、記憶部212、入出力部213、第1通信部214及び第2通信部215等を備える。記憶部212は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置を備え、制御部211が参照する各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータには、例えば自器の識別情報、自器及び自器と通信接続される各機器の識別情報又はIPアドレス等が含まれる。室外機21はその他、圧縮機、ファン、弁等の空調制御を行うための各種機構を備えてよい。
【0037】
記憶部212に記憶されるプログラム(プログラム製品)は、当該プログラムを読み取り可能に記録した不図示の非一時的な記録媒体により提供されてもよい。制御部211は、図示しない読取装置を用いて、記録媒体から所望のコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部212に記憶させる。代替的に、上記コンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。
【0038】
室内機22は、集中機器1と同様のハードウェア構成であり、制御部221、記憶部222、入出力部223、第1通信部224及び第2通信部225等を備える。記憶部222は不揮発性記憶装置を備え、制御部221が参照する各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部222に記憶されるプログラムには、IPアドレスの生成に関する処理を制御部221に実行させるためのプログラム22Pが含まれる。記憶部222に記憶されるデータには、例えば自器の識別情報、自器及び自器と通信接続される各機器の識別情報又はIPアドレス等が含まれる。室内機22はその他、センサ、ファン、弁、リモコン等の空調制御を行うための各種機構を備えてよい。
【0039】
記憶部222に記憶されるプログラム(プログラム製品)は、当該プログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体22Aにより提供されてもよい。制御部221は、図示しない読取装置を用いて、記録媒体22Aから所望のコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部222に記憶させる。代替的に、上記コンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。
【0040】
拡張機24は、制御部241、記憶部242、入出力部243、第1通信部244及び第2通信部245等を備える。
【0041】
記憶部242には各種のプログラム及びデータが記憶される。記憶部242に記憶されるプログラムには、IPアドレスの生成に関する処理を制御部241に実行させるためのプログラム24Pが含まれる。記憶部242に記憶されるデータには、例えば自器の識別情報、自器及び自器と通信接続される各機器のIPアドレスやルーティングテーブル、後述するIPアドレスの生成に用いるネットワークプレフィックス等が含まれる。
【0042】
記憶部242に記憶されるプログラム(プログラム製品)は、当該プログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体24Aにより提供されてもよい。制御部241は、図示しない読取装置を用いて、記録媒体24Aから所望のコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部242に記憶させる。代替的に、上記コンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。
【0043】
図2に示すように、拡張機24は、2つの第1通信部244と、各第1通信部244に接続される2つの第2通信部245とを備える。一方の第2通信部245が集中機器1の第2通信部15と通信接続され、他方の第2通信部245が室外機21の第2通信部215と通信接続されている。2つの第2通信部245は、第1通信部244及び制御部241を介して接続されている。2つの第2通信部245は内部バスを介し接続されていてもよい。制御部241は、一方の第1通信部244及び第2通信部245を通して、第1ネットワークにおける集中機器1側との通信を行う。また制御部241は、他方の第1通信部244及び第2通信部245を通して、第2ネットワークにおける室外機21側との通信を行う。拡張機24の他のハードウェア構成は集中機器1と同様である。
【0044】
図2では、拡張機24を介し室外機21と集中機器1とが接続される例を示したが、室外機21は集中機器1に直接接続されるものであってもよい。また
図2では図示を省略したが、換気装置23も室内機22と同様のハードウェア構成であり、制御部、記憶部、入出力部、第1通信部及び第2通信装置等を備えるものであってよい。
【0045】
上記のハードウェア構成を備える空調システムSにおける通信方式及びアドレス生成方法について説明する。以下の具体例では、IPアドレスの生成対象となる空調関連機器2が室内機22であり、室内機22の各制御部221がIPアドレスを生成する生成部として機能する場合を挙げて説明する。集中機器1の下流に室外機21及び室内機22(空調関連機器2)が設けられ、必要に応じて集中機器1と室外機21との間に拡張機24が設けられる。
【0046】
図3は、空調システムSの通信ネットワーク構成を説明する説明図である。上述の通り、空調システムSの通信ネットワークは、全体ネットワーク及び系統内ネットワークを含む。各機器は、機器毎に生成されるIPv6アドレスを用いて、全体ネットワーク及び系統内ネットワークにおける通信を行う。以下では、IPv6アドレスを単にIPアドレスとも称する。
【0047】
系統内ネットワークは、冷媒系統内における機器間の通信を行う通信ネットワークである。詳細には、系統内ネットワークは、同一の冷媒系統に属する室外機21と各室内機22との間の通信を行う。全体ネットワークは、通信ネットワーク全体、すなわち系統内ネットワークを超えて空調システムSに含まれる各機器の間における通信を行う通信ネットワークである。
【0048】
空調システムSでは、上述の通り必要に応じて、集中機器1と室外機21との間に拡張機24が設けられる。拡張機24は、2つのHD-PLC通信モジュールを備えることにより、全体ネットワークを上流側の第1ネットワークと、下流側の第2ネットワークとの2つのセグメントに分割する。第1ネットワークは、集中機器1、室外機21及び室内機22の間、又は集中機器1、拡張機24、室外機21及び室内機22の間の通信を行う。第2ネットワークは、拡張機24と、該拡張機24の下流に設けられる室外機21又は室内機22等の空調関連機器との間の通信を行う。各空調関連機器は、同一セグメント内における通信を行う場合には系統内ネットワークを用い、セグメント(拡張機24)をまたいで通信を行う場合には全体ネットワークを用いる。
【0049】
集中機器1による最大制御台数を拡張するために拡張機24を用いた場合、通信ネットワーク内における機器の接続台数の拡大により、ネットワーク帯域が不足するおそれがある。空調システムSでは、拡張機24によって通信ネットワークのセグメントを分割し、異なるセグメント間の通信をHD-PLC通信モジュール間で中継することで、安定的な通信を実現する。
【0050】
図3に示すように、室外機21は直接又は拡張機24を介して集中機器1に接続される。空調関連機器2は、自器の属する通信系統における拡張機24の有無に応じて異なる種類のIPアドレスを生成する。
図3中、上側は通信系統の上流に拡張機24を含まない冷媒系統の例を示し、下側は通信系統の上流に拡張機24を含む冷媒系統の例を示している。
【0051】
図3の上側に示すように、集中機器1と室外機21との間に拡張機24が存在しない場合、室外機21の下流に配される各室内機22aは、通信ネットワーク内で一意のIPアドレスであるリンクローカルユニキャストアドレスを生成する。
図3中の破線で示すように、室内機22aは、当該リンクローカルユニキャストアドレスを用いて系統内ネットワークにおける通信を行い、室外機21及び冷媒系統内の他の室内機22aとの間でデータを送受信する。また
図3中の実線で示すように、室内機22aは、同じリンクローカルユニキャストアドレスを用いて全体ネットワークにおける通信を行い、室外機21を介し又は直接的に集中機器1との間でデータを送受信する。
【0052】
図3中の下側に示すように、集中機器1と室外機21との間に拡張機24が存在する場合、室外機21の下流に配される各室内機22bは、上述のリンクローカルユニキャストアドレスに加え、ユニークローカルユニキャストアドレスを生成する。ユニークローカルユニキャストアドレスは、通信ネットワーク内で一意のIPアドレスであり、リンクローカルユニキャストアドレスとは異なるアドレスである。
図3中の破線で示すように、室内機22bは、上記と同様にリンクローカルユニキャストアドレスを用いて系統内ネットワークにおける通信を行う。また
図3中の実線で示すように、室内機22bは、ユニークローカルユニキャストアドレスを用いて全体ネットワークにおける通信を行い、室外機21及び拡張機24を介し集中機器1との間でデータを送受信する。
【0053】
なお室内機22aは、
図3の上側に示すように、室内機22aの属する通信系統に拡張機24が存在する場合、上述のリンクローカルユニキャストアドレスに加えユニークローカルユニキャストアドレスを生成してもよい。室内機22aは、室内機22aの属する冷媒系統の室外機21と集中機器1との間に拡張機24が存在しない場合であっても、室内機22aの属する通信ネットワーク内の他の冷媒系統の上流に拡張機24が存在する場合、ユニークローカルユニキャストアドレスを生成することができる。室内機22aは、ユニークローカルユニキャストアドレスを用いて全体ネットワークにおける通信を行い、拡張機24を介して、拡張機24の下流にある室外機21や室内機22bとの間でデータを送受信する。
【0054】
リンクローカルユニキャストアドレス及びユニークローカルユニキャストアドレスはいずれもIPv6アドレスである。IPv6アドレスは、128ビットのビット長をアドレス領域として有する。IPv6アドレスは、ネットワークを規定する64ビットのネットワークプレフィックス部と、ホストを規定する64ビットのインタフェース識別子とにより構成される。ネットワークプレフィックス部は、上位アドレスに対応する。インタフェース識別子は、下位アドレスに対応する。同一の室内機22に対するリンクローカルユニキャストアドレス及びユニークローカルユニキャストアドレスにおいて、インタフェース識別子は共通しており、ネットワークプレフィックス部は異なる。
【0055】
ユニークローカルユニキャストアドレスにおけるネットワークプレフィックスは、室内機22の属するネットワークセグメントに応じて異なる。室内機22aは、第1ネットワークに対応する上流側ネットワークプレフィックスを含むユニークローカルユニキャストアドレス(以下、上流側ユニークローカルユニキャストアドレスとも称する)を用いて、第1ネットワークにおける通信を行う。また室内機22bは、第2ネットワークに対応する下流側ネットワークプレフィックスを含むユニークローカルユニキャストアドレス(以下、下流側ユニークローカルユニキャストアドレスとも称する)を用いて、第2ネットワークにおける通信を行う。
【0056】
図4はリンクローカルユニキャストアドレスの生成方法を説明する図であり、
図5はユニークローカルユニキャストアドレスの生成方法を説明する図である。
図4及び
図5を用いて、IPアドレスの生成方法を具体的に説明する。
【0057】
図4に示すように、リンクローカルユニキャストアドレスは、所定値であるネットワークプレフィックスを含むネットワークプレフィックス部と、各室内機22に固有の識別情報に基づくインタフェース識別子とにより構成される。リンクローカルユニキャストアドレスにおけるネットワークプレフィックスは、例えば「fe80::/64」等の固有値を用いることができる。ネットワークプレフィックスは、空調システムS内で共通の値であれば限定されるものではなく、他のランダムな値が用いられてもよい。ネットワークプレフィックスは、例えば、製品出荷時に設定され又は空調システムSの設置者等により設定され、各室内機22の記憶部222に記憶される。
【0058】
インタフェース識別子は、室内機22固有の識別子であるMACアドレスを用いて生成される。具体的には、インタフェース識別子は、室内機22の備える第2通信部225のHD-PLC通信モジュールの有するMACアドレスに基づいて生成される。室内機22は、予め記憶する48ビットのMACアドレスを読み出す。予め設定されるHD-PLC通信モジュールのMACアドレスが48ビットでない場合には、所定ルールによりビット数を変換してよい。なお、インタフェース識別子は、室内機22の機番、具体的には室内機22の備える第2通信部225のHD-PLC通信モジュールの有する機番に基づいて生成されてもよい。機番は、例えば製造番号であってもよく、シリアルナンバーであってもよい。
【0059】
室内機22は、HD-PLC通信モジュールのMACアドレスを所定ルールに従い変換する。室内機22は、MACアドレスを引数とする関数を用いてアドレス変換するものであってもよい。アドレス変換のための関数は、MACアドレスに対し重複しない値を返す関数である。一例として、室内機22は、HD-PLC通信モジュールのMACアドレスにおける所定ビット列のビットを反転(例えば0→1)させる。ビットの反転を初めとするアドレス変換処理は必須ではないが、アドレス変換を行うことで、室内機22とHD-PLC通信モジュールとのMACアドレスの重複によるコンフィグレーションの不具合の発生を抑制できる。室内機22は、HD-PLC通信モジュールのMACアドレスを加工することなく、そのまま使用するものであってもよい。
【0060】
室内機22は、ビット反転後のMACアドレスを、室内機22のEthernet通信のためのMACアドレスとして適用する。換言すれば、室内機22は、ビット反転後のMACアドレスを自器のマイコンに対応するMACアドレスとして記憶する。室内機22は、当該48ビットのMACアドレスを用いて、64ビットのインタフェース識別子を生成する。MACアドレスからインタフェース識別子を生成する手法は、公知のEUI-64方式を用いてよい。
【0061】
なお、インタフェース識別子は室内機22におけるHD-PLC通信モジュールのMACアドレスを用いて生成されるものに限定されず、室内機22におけるEthernet通信モジュールのMACアドレスを用いて生成されてもよい。
【0062】
得られたインタフェース識別子をアドレス領域における所定の下位領域に付与し、ネットワークプレフィックスを所定の上位領域に付与することで、リンクローカルユニキャストアドレスが生成される。
【0063】
次に、ユニークローカルユニキャストアドレスの生成方法を説明する。
図5に示すように、ユニークローカルユニキャストアドレスは、室内機22に通信接続される拡張機24に応じて異なるネットワークプレフィックスを含むネットワークプレフィックス部と、室内機22のMACアドレスに基づくインタフェース識別子とにより構成される。
【0064】
ユニークローカルユニキャストアドレスにおけるインタフェース識別子の生成方法は、リンクローカルユニキャストアドレスにおけるインタフェース識別子の生成方法と同様である。
【0065】
ユニークローカルユニキャストアドレスにおけるネットワークプレフィックスは、室内機22の属するネットワークに存在する拡張機24固有の識別子を用いて生成する。具体的には、拡張機24の備えるマイコンのMACアドレスを用いて生成される。拡張機24の備えるマイコンのMACアドレスは、上記と同様の手法により、拡張機24の備えるHD-PLC通信モジュールのMACアドレスに基づいて生成するものであってよい。なおネットワークプレフィックスは、拡張機24の備えるHD-PLC通信モジュールの機番に基づき生成してもよい。
【0066】
上述の通り、拡張機24は2つのHD-PLC通信モジュールを備える。一方のHD-PLC通信モジュールは、第1ネットワークにおける通信を行う上流側HD-PLC通信モジュールとして機能する。他方のHD-PLC通信モジュールは、第2ネットワークにおける通信を行う下流側HD-PLC通信モジュールとして機能する。HD-PLC通信装置にはそれぞれ一意のMACアドレスが予め設定されている。上流側HD-PLC通信及び下流側HD-PLC通信モジュールそれぞれのMACアドレスに基づいて、2つのネットワークプレフィックスが生成される。ネットワークプレフィックスは、例えば拡張機24により生成されてもよい。
【0067】
上流側HD-PLC通信モジュールのMACアドレスの所定ビット列をビット変換することにより、拡張機24のマイコンに対する上流側MACアドレスが生成される。なお、拡張機24は、上流側HD-PLC通信モジュールのMACアドレスを加工することなくそのまま使用するものであってもよい。生成された48ビットの上流側MACアドレスの先頭に、上流側又は下流側を識別するための8ビットの識別子を追加する。識別子は、例えば上流側を示す「01」又は下流側を示す「02」を含む。
【0068】
さらに、識別子を含む上流側MACアドレスの先頭に8ビットの所定値を追加する。所定値は、例えば生成されるIPアドレスを使用する通信ネットワークの範囲を規定するための情報を含むものであってよい。本実施形態では、所定値として「FD」が追加される。これにより、64ビットの上流側ネットワークプレフィックスが生成される。
【0069】
得られた上流側ネットワークプレフィックスをアドレス領域における所定の上位領域に付与し、インタフェース識別子をアドレス領域における所定の下位領域に付与することで、室内機22の上流側ユニークローカルユニキャストアドレスが生成される。
【0070】
同様の手法により、拡張機24の下流側HD-PLC通信装置のMACアドレスに基づいて、下流側ネットワークプレフィックスが生成される。下流側ネットワークプレフィックスとインタフェース識別子とを統合することで、室内機22の下流側ユニークローカルユニキャストアドレスが生成される。
【0071】
拡張機24は、生成した上流側ネットワークプレフィックスを、第1ネットワークに属する室内機22(
図3に示す例にて室内機22a)へ送信する。第1ネットワークに属する室内機22は、拡張機24から受信した上流側ネットワークプレフィックスと、自器のMACアドレスに基づくインタフェース識別子とを用いて、上流側ユニークローカルユニキャストアドレスを生成する。また拡張機24は、生成した下流側ネットワークプレフィックスを、第2ネットワークに属する室内機22(
図3に示す例にて室内機22b)へ送信する。第2ネットワークに属する室内機22は、拡張機24から受信した下流側ネットワークプレフィックスと、自器のMACアドレスに基づくインタフェース識別子とを用いて、下流側ユニークローカルユニキャストアドレスを生成する。
【0072】
図6は、空調システムSが実行するアドレス生成の処理手順の一例を示すシーケンス図である。以下の処理は、室内機22の記憶部222に記憶されるプログラム22Pに従って制御部221により実行されるとともに拡張機24の記憶部242に記憶されるプログラム24Pに従って制御部241により実行されてもよく、制御部221及び制御部241それぞれに備えられた専用のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)により実現されてもよく、それらの組合せによって実現されてもよい。
【0073】
室内機22の制御部221は、自器のマイコンに対応付けられる第2通信部225のHD-PLC通信装置に係るMACアドレスを所定ルールに従い変換することにより、自器のマイコンに対応するMACアドレスを生成する(ステップS201)。制御部221は、インタフェース識別子を生成する(ステップS202)。制御部221は、例えばEUI-64方式の手法により、得られたMACアドレスに基づきインタフェース識別子を生成してよい。
【0074】
制御部221は、予め記憶する所定値をネットワークプリフィックスとして上位アドレス領域に付与し、インタフェース識別子を下位アドレス領域に付与することにより、リンクローカルユニキャストアドレスを生成する(ステップS203)。制御部221は、例えば室外機21等の外部機器から送信されるネットワークプリフィックスを受信することにより、ネットワークプリフィックスを取得してもよい。
【0075】
拡張機24の制御部241は、自器のマイコンに対応する上流側MACアドレス及び下流側MACアドレスを生成する(ステップS101)。具体的には、制御部241は、自器のマイコンに対応付けられる上流側及び下流側それぞれの第2通信部245のHD-PLC通信装置に係るMACアドレスを所定ルールに従い変換することにより、自器のマイコンに対応する上流側MACアドレス及び下流側MACアドレスを生成する。
【0076】
制御部241は、所定ルールに従い拡張ビットを追加し、上流側MACアドレスに基づいて上流側ネットワークプリフィックスを生成するとともに、下流側MACアドレスに基づいて下流側ネットワークプリフィックスを生成する(ステップS102)。制御部241は、生成した上流側ネットワークプリフィックス及び下流側ネットワークプリフィックスを記憶部242に記憶する(ステップS103)。
【0077】
制御部241は、記憶部242に記憶する情報に基づいて、上流側ネットワークプリフィックス又は下流側ネットワークプリフィックスを、室内機22へ送信する(ステップS104)。この場合において制御部241は、上流側(第1ネットワーク)の室内機22に対し上流側ネットワークプリフィックスを送信し、また下流側(第2ネットワーク)の室内機22に対し下流側ネットワークプリフィックスを送信する。
【0078】
制御部241は、RA(Router Advertisement:ルータ広告)により、当該拡張機24と同じネットワークセグメントに属する全ての室内機22へネットワークプリフィックスを一斉送信するものであってよい。制御部241は、室内機22から送信されるRS(Router Solicitation:ルータ要請)への応答としてRAを送信するものであってもよい。
【0079】
室内機22の制御部221は、上流側ネットワークプリフィックス又は下流側ネットワークプリフィックスのいずれかを受信する(ステップS204)。なお、室内機22の属する通信系統に拡張機24が存在しない場合、ステップS101からステップS104及びステップS204の処理は省略されてよい。
【0080】
制御部221は、通信系統に拡張機24が存在するか否かを判定する(ステップS205)。ネットワークプリフィックスを受信していないことにより、拡張機24が存在しないと判定した場合(ステップS205:NO)、制御部221は、処理をステップS207に進める。制御部221は、拡張機24が存在しないこと示す情報を室外機21等から受信することにより、拡張機24が存在しないと判定してもよい。
【0081】
ネットワークプリフィックスを受信したことにより、拡張機24が存在すると判定した場合(ステップS205:YES)、制御部221は、受信したネットワークプリフィックスを用いて、ユニークローカルユニキャストアドレスを生成する(ステップS206)。詳細には、制御部221は、受信した上流側ネットワークプリフィックスを上位アドレス領域に付与し、ステップS202にて取得したインタフェース識別子を下位アドレス領域に付与することにより、上流側ユニークローカルユニキャストアドレスを生成する。あるいは制御部221は、下流側ネットワークプリフィックスを上位アドレス領域に付与し、インタフェース識別子を下位アドレス領域に付与することにより、下流側ユニークローカルユニキャストアドレスを生成する。
【0082】
制御部221は、生成した各IPアドレスを記憶部222に記憶し(ステップS207)、一連の処理を終了する。なお制御部221は、例えば拡張機24、室外機21又は集中機器1等の各機器へ生成したIPアドレスを送信してもよい。
【0083】
以降、制御部221は、生成したユニークローカルユニキャストアドレスを用いて全体ネットワークにおける通信を実行するとともに、リンクローカルユニキャストアドレスを用いて系統内ネットワークにおける通信を実行することができる。
【0084】
上述した各処理の主体は限定されるものではない。例えば拡張機24が実行する処理の一部を室内機22又は室外機21が実行してもよく、室内機22が実行する処理の一部を拡張機24又は室外機21が実行してもよい。上記では、拡張機24がネットワークプリフィックスの生成処理を実行する例を説明したが、例えば室内機22又は室外機21が実行してもよい。室内機22又は室外機21は、拡張機24から送信される拡張機24の上流側又は下流側のMACアドレスを受信する。室内機22又は室外機21は、受信した上流側又は下流側のMACアドレスに基づいてネットワークプリフィックスを生成する。
【0085】
上記では、IPアドレスの生成対象が室内機22であり、当該室内機22がIPアドレスの生成処理を実行する例を説明した。IPアドレスの生成対象となり得る空調関連機器2は室内機22に限定されず、換気装置23、室外機21及び拡張機24のいずれであってもよい。
【0086】
IPアドレスの生成対象となる機器と、IPアドレスの生成処理を行う機器とは独立であってよい。例えば、拡張機24が室内機22のIPアドレスを生成してもよい。拡張機24は、室内機22から送信される室内機22のMACアドレス又はインタフェース識別子を受信する。拡張機24は、受信したMACアドレス又はインタフェース識別子と、室内機22の属する通信ネットワークに応じたネットワークプリフィックスとに基づいて室内機22のIPアドレスを生成する。拡張機24は、生成したIPアドレスを室内機22へ送信する。
【0087】
上述の処理において、拡張機24と室内機22との通信は室外機21を介して実行されるものであってもよい。
【0088】
拡張機24は、冷媒系統内に新たな室内機22が増設される度、新たな室内機22との間で
図6に示した処理を実行する。新たな室内機22は、拡張機24のMACアドレスに応じたネットワークプリフィックスと、自器のMACアドレスとに基づいて、IPアドレスを生成する。冷媒系統内に既に設置されている室内機22は、新たな室内機22が追加された場合であっても、設定済みのIPアドレスを変更することなく継続して使用できる。
【0089】
本実施形態によれば、空調システムSにおける通信ネットワークを構成する空調関連機器によりIPアドレスが自己生成されるため、人手によるアドレス設定作業を不要とし、通信アドレスの設定作業の効率性を向上できる。各空調関連機器は、IPアドレスを用いて通信ネットワーク内の外部機器と広くデータの送受信が可能となるため、特定の機器間にのみ有効な専用アドレスを用いて特定の機器間で通信を行う場合に比べて、効率的な通信が可能となる。
【0090】
通信ネットワークにおける通信は、弱電用電力線を用いたHD-PLCプロトコルにより実行されるため、通信ネットワークの配策を簡素化しつつ電力及び通信データを良好に伝送し得る。IPアドレスとしてIPv6アドレスを用いることで、アドレス領域として十分なデータ領域が確保されるため、2つの異なる機器のMACアドレスに基づいたIPアドレスの生成が可能となる。
【0091】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上述の各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
なお、上述の各実施形態に示すシーケンスは限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各処理手順はその順序を変更して実行されてもよく、また並行して複数の処理が実行されてもよい。各処理の処理主体は限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各装置の処理を他の装置が実行してもよい。
【0092】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0093】
S 空調システム
1 集中機器
21(2) 室外機(空調関連機器)
22(2) 室内機(空調関連機器)
23(2) 換気装置(空調関連機器)
24(2) 拡張機(空調関連機器)
11,211,221,241 制御部
12,212,222,242 記憶部
13,213,223,243 入出力部
14,214,224,244 第1通信部
15,215,225,245 第2通信部
22P,24P プログラム
22A,24A 記録媒体