(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20240911BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G06F1/16 312Z
G06F1/16 312F
H05K7/20 B
(21)【出願番号】P 2023034508
(22)【出願日】2023-03-07
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518133201
【氏名又は名称】富士通クライアントコンピューティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-112573(JP,A)
【文献】特開2008-269412(JP,A)
【文献】特開平10-333782(JP,A)
【文献】特開平09-034590(JP,A)
【文献】特開平10-289036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16- 1/18
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に発熱体が搭載され
、底面に開口部を有する第1の筐体と、
ディスプレイが搭載されたディスプレイ面を有し、前記ディスプレイ面が前記第1の筐体の上面に対向する第1の状態から、前記ディスプレイ面が前記上面から離間する方向に回動するように、前記第1の筐体に対して回動可能な状態で連結された第2の筐体と、
前記
開口部を覆う底面カバーと、
前記第1の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが密着し、前記第1の状態から前記第2の筐体が回動した第2の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが離間するように、前記第1の筐体と前記底面カバーとの間隔を変化させる間隔可変機構と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記間隔可変機構は、前記第1の筐体と前記底面カバーとの間隔を、前記第2の筐体の回動に応じて機械的に変化させる、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記間隔可変機構は、前記第2の筐体が回動する際の回動軸を中心として、前記第2の筐体の回動に連動して回動する回動部材を含み、
前記回動部材は、前記回動軸からの径方向の厚さが第1の値である第1外周部と、前記厚さが前記第1の値より大きい第2の値である第2外周部とを有し、前記底面カバー上で上側を向いている所定の接触面に対して、前記第1の状態では前記第1外周部が接触し、前記第2の状態では前記第2外周部が接触して前記第1の筐体と前記底面カバーとを離間させる、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記回動部材は、前記第2の筐体と一体に形成されている、
請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
内部に発熱体が搭載された第1の筐体と、
ディスプレイが搭載されたディスプレイ面を有し、前記ディスプレイ面が前記第1の筐体の上面に対向する第1の状態から、前記ディスプレイ面が前記上面から離間する方向に回動するように、前記第1の筐体に対して回動可能な状態で連結された第2の筐体と、
前記第1の筐体の底面を覆う底面カバーと、
前記第1の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが密着し、前記第1の状態から前記第2の筐体が回動した第2の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが離間するように、前記第1の筐体と前記底面カバーとの間隔を変化させる間隔可変機構と、
前記第1の筐体と前記底面カバーとの間隔を、前記第2の状態における当該間隔の最大値以下に規制する規制部材と、
を有する情報処理装置。
【請求項6】
前記規制部材は、水平方向に突出する凸部と、前記凸部が係合して前記凸部の高さ方向の移動を前記最大値以下に規制する凹部とを含み、
前記第1の筐体と前記底面カバーのうち、一方に前記凸部が設けられ、他方に前記凹部が設けられる、
請求項5記載の情報処理装置。
【請求項7】
内部に発熱体が搭載された第1の筐体と、
ディスプレイが搭載されたディスプレイ面を有し、前記ディスプレイ面が前記第1の筐体の上面に対向する第1の状態から、前記ディスプレイ面が前記上面から離間する方向に回動するように、前記第1の筐体に対して回動可能な状態で連結された第2の筐体と、
前記第1の筐体の底面を覆う底面カバーと、
前記第1の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが密着し、前記第1の状態から前記第2の筐体が回動した第2の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが離間するように、前記第1の筐体と前記底面カバーとの間隔を変化させる間隔可変機構と、
前記第1の状態において磁力によって前記第1の筐体と前記底面カバーとを密着状態に保持する保持部材と、
を有する情報処理装置。
【請求項8】
内部に発熱体が搭載された第1の筐体と、
ディスプレイが搭載されたディスプレイ面を有し、前記ディスプレイ面が前記第1の筐体の上面に対向する第1の状態から、前記ディスプレイ面が前記上面から離間する方向に回動するように、前記第1の筐体に対して回動可能な状態で連結された第2の筐体と、
前記第1の筐体の底面を覆う底面カバーと、
前記第1の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが密着し、前記第1の状態から前記第2の筐体が回動した第2の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが離間するように、前記第1の筐体と前記底面カバーとの間隔を変化させる間隔可変機構と、
前記第1の筐体と前記底面カバーとが互いに近づく方向に付勢するバネ部材と、
を有する情報処理装置。
【請求項9】
内部に発熱体が搭載された第1の筐体と、
ディスプレイが搭載されたディスプレイ面を有し、前記ディスプレイ面が前記第1の筐体の上面に対向する第1の状態から、前記ディスプレイ面が前記上面から離間する方向に回動するように、前記第1の筐体に対して回動可能な状態で連結された第2の筐体と、
前記第1の筐体の底面を覆う底面カバーと、
前記第1の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが密着し、前記第1の状態から前記第2の筐体が回動した第2の状態において前記第1の筐体と前記底面カバーとが離間するように、前記第1の筐体と前記底面カバーとの間隔を変化させる間隔可変機構と、
を有
し、
前記底面カバーは、前記第1の筐体における前記第2の筐体との連結部に向かって前部と後部とに分割され、
前記前部は、前記第1の筐体に固定され、
前記後部は、前記前部に対して回動可能な状態で連結され、前記後部の後端部と前記第1の筐体の後端部との間隔が前記間隔可変機構によって変化する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PC(Personal Computer)などの情報処理装置では、CPU(Central Processing Unit)などの発熱体が動作に応じて発熱し、温度が上昇する。このような情報処理装置では、ヒートパイプ、ヒートシンク、送風ファンなどを含む冷却モジュールを備えたものがある。また、温度の計測結果やディスプレイの開閉状態に応じて送風ファンを制御する情報処理装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-012590号公報
【文献】特開2022-86837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の情報処理装置では、薄型化の要求により、発熱体や冷却モジュールと筐体面との距離が近くなっている。このため、筐体面の温度が上がってしまうという問題がある。特に、ノート型PCでは、使用者の膝の上に乗せて使用される場合があることから、筐体の底面の温度上昇が大きな問題となる。
【0005】
1つの側面では、本発明は、筐体底面の温度上昇を抑制可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの案では、第1の筐体、第2の筐体、底面カバーおよび間隔可変機構を有する情報処理装置が提供される。第1の筐体は、内部に発熱体が搭載される。第2の筐体は、ディスプレイが搭載されたディスプレイ面を有し、ディスプレイ面が第1の筐体の上面に対向する第1の状態から、ディスプレイ面が上面から離間する方向に回動するように、第1の筐体に対して回動可能な状態で連結される。底面カバーは、第1の筐体の底面を覆う。間隔可変機構は、第1の状態において第1の筐体と底面カバーとが密着し、第1の状態から第2の筐体が回動した第2の状態において第1の筐体と底面カバーとが離間するように、第1の筐体と底面カバーとの間隔を変化させる。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、筐体底面の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】情報処理装置における第1の拡大斜視図である。
【
図7】情報処理装置における第2の拡大斜視図である。
【
図9】筐体および底面カバーの側壁付近を拡大して示す断面図である。
【
図10】情報処理装置の背面の一部を拡大した拡大図である。
【
図12】情報処理装置の変形例における右側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る情報処理装置について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、X方向およびY方向に平行な平面(XY平面)を水平面とし、このXY平面に情報処理装置が載置されるものとする。また、X方向を情報処理装置の右方向とし、-X方向を情報処理装置の左方向とし、Y方向を情報処理装置の後ろ方向とし、-Y方向を情報処理装置の前方向とし、Z方向を情報処理装置の上方向とし、-Z方向を情報処理装置の下方向とする。
【0010】
図1は、情報処理装置の外観を示す斜視図である。
図2は、情報処理装置の第1の分解斜視図である。
図3は、情報処理装置の第2の分解斜視図である。
【0011】
情報処理装置1は、クラムシェル型のラップトップPC(いわゆるノート型PC)であり、キーボード11aおよびタッチパッド11bが搭載された筐体10と、ディスプレイ21が搭載されたディスプレイ筐体20を備える。筐体10の後方側とディスプレイ筐体20の後方側とは、ヒンジ部40,50によって相対的に回動可能な状態で連結されている。
【0012】
ディスプレイ筐体20は、ディスプレイ21の搭載面が筐体10の上面に対向する状態をとり得る。この状態では、例えば、ディスプレイ筐体20におけるディスプレイ21の外枠部分の少なくとも一部が筐体10の上面に接触し、ディスプレイ筐体20が閉じた状態となる。
図2は、このようにディスプレイ筐体20が閉じた状態を示している。この状態から、ディスプレイ筐体20が筐体10に対して回動する(すなわち、ディスプレイ筐体20が開かれる)ことで、ディスプレイ21が露出し、ディスプレイ21をユーザが視認可能な状態となる。
図1は、ディスプレイ筐体20が90度程度開かれた状態を示している。
【0013】
なお、キーボード11aおよびタッチパッド11bは、筐体10の上面に設けられている。また、ディスプレイ21は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイである。
【0014】
情報処理装置1はさらに、筐体10の底面を覆う底面カバー30を備えている。
図2および
図3は、理解しやすくするために、筐体10と底面カバー30とが分離した状態を示している。
図2は、このような状態を情報処理装置1の後方側から見た場合の分解斜視図を示しており、
図3は、このような状態を情報処理装置1の下側から見た場合の分解斜視図を示している。詳しくは後述するが、筐体10と底面カバー30とは、互いが密着した状態と、互いの間に隙間が空く状態とをとり得る。
【0015】
次に、
図3を参照して、発熱体および冷却モジュールについて説明する。
筐体10の内部には、CPU12、メモリ13a,13bおよびバッテリ14が搭載されている。CPU12は、情報処理装置1の制御や処理に関する演算を実行する。なお、CPU12は、実際にはマザーボード上に実装されている。メモリ13a,13bは、情報処理装置1の主記憶装置として使用される不揮発性記憶装置であり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。バッテリ14は、情報処理装置1の電源となる充電池である。
【0016】
CPU12やメモリ13a,13bは、情報処理装置1の稼働時に発熱する。すなわち、CPU12やメモリ13a,13bは、発熱体の一例である。特にCPU12は、稼働時の発熱量が大きい。このため、筐体10の内部には、CPU12から発生した熱を筐体10の外に排出するための冷却モジュールが設けられている。
【0017】
冷却モジュールは、ヒートパイプ15、ヒートシンク16a,16bおよび送風ファン17a,17bを含む。ヒートパイプ15は、扁平な金属パイプ内の密閉空間に作動流体を封入することで形成された熱輸送デバイスである。
図3の例では、ヒートパイプ15の中央部がマザーボードに接続し、ヒートパイプ15の両端がヒートシンク16a,16bに接続されている。ヒートシンク16a,16bは、金属製のプレート状のフィンが複数並列した構造を有している。ヒートシンク16a,16bの前側には、それぞれ送風ファン17a,17bが配置され、ヒートシンク16a,16bにおいては送風ファン17a,17bから送られた空気がフィンの間を通過するようになっている。これにより、CPU12から発生した熱は、ヒートパイプ15を介してヒートシンク16a,16bに輸送された後、送風ファン17a,17bの送風によって筐体10の外部に排出される。
【0018】
なお、筐体10の内部に搭載される発熱体の他の例としては、GPU(Graphics Processing Unit)や、バッテリ14の充放電を行う電源回路などが考えられる。特に、GPUはCPU12と同様に発熱量が大きい。GPUは、CPU12とともにマザーボードに実装されることがあり、この場合にはGPUからの熱も上記の冷却モジュールによって筐体10の外部に排出される。
【0019】
ところで、ノート型PCに対する薄型化の要求から、情報処理装置1では、CPU12などの発熱体と外装部品(筐体10の上面や底面カバー30)との距離が近くなっている。また、ヒートパイプ15やヒートシンク16a,16bと外装部品との距離も近くなっている。このため、情報処理装置1の稼働時には、発熱体から発生した熱が外装部品にも伝わりやすくなり、外装部品の温度が上昇してしまう。特に、ノートPCはユーザの膝の上に乗せた状態で使用されることがあるため、底面カバー30の温度上昇は安全上の観点から大きな問題となる。
【0020】
底面カバー30の温度上昇を抑制する方法としては、例えば、温度を検出し、検出された温度が過大になった場合にCPU12のパフォーマンス(例えば、クロック周波数)を制限して発熱を抑制する方法が考えられる。しかし、この方法は、情報処理装置1の処理性能が低下するという問題がある。また、熱拡散部材を追加する方法も考えられるが、製造コストが高くなるという問題がある。
【0021】
このような問題に対して、本実施の形態の情報処理装置1では、ディスプレイ筐体20が閉じた状態から開いた状態に変化すると、筐体10と底面カバー30との間に隙間が生じ、発熱体と底面カバー30との距離が大きくなるような構造が設けられる。
【0022】
図4は、情報処理装置の右側面図を示す。
図4の上側はディスプレイ筐体20が閉じた状態を示し、
図4の下側はディスプレイ筐体20が開いた状態の一例を示す。以下、
図3および
図4を参照して、筐体10と底面カバー30との隙間を生じさせる構造の概要について説明する。
【0023】
図3に示すように、筐体10の裏面の前端付近にはネジ穴18a~18dが設けられている。また、底面カバー30の前端付近には、それぞれネジ穴18a~18dに対応する固定穴31a~31dが設けられている。下側から固定穴31a~31dを貫通した図示しないネジがそれぞれネジ穴18a~18dに締め付けられることで、筐体10の前端部と底面カバー30の前端部とが固定される。このため、
図4に示すように、筐体10の前端部と底面カバー30の前端部とは、ディスプレイ筐体20の回動状態に関係なく、常に密着した状態となる。一方、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部とは、常に密着するようには固定されない。
【0024】
図4の上側に示すように、ディスプレイ筐体20が閉じた状態では、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部とは密着した状態となる。この状態から、ディスプレイ筐体20が回動していくのに連れて、底面カバー30の後端部が上方向に持ち上がっていき、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との高さ方向の間隔が大きくなっていく。
図4の下側の状態では、底面カバー30の後端部に対して筐体10の後端部は高さHだけ持ち上がり、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間に高さH分の隙間が空いた状態になっている。
【0025】
このように、ディスプレイ筐体20が開いた状態では、閉じた状態と比較して筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔が大きくなり、筐体10内の発熱体と底面カバー30との距離が大きくなる。これにより、ディスプレイ筐体20が開き、ユーザがディスプレイ21を視認して情報処理装置1を使用する状態になったときに、発熱体から発生した熱による底面カバー30の温度上昇を抑制できる。
【0026】
なお、本実施の形態では、ディスプレイ筐体20が閉じた状態から開いていくのに連れて、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔が徐々に大きくなっていく。この場合、ユーザがディスプレイ21を視認しながら使用する際にディスプレイ筐体20がとる可能性の高い角度の範囲において、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔が最大になればよい。このような角度の例として、90度~120度の範囲が考えられる。
【0027】
また、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔が、ディスプレイ筐体20が所定角度以上開いた状態になったときに、閉じた状態より大きくなるようにしてもよい。例えば、ディスプレイ筐体20が90度以上開いた場合に、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔が大きくなるようにしてもよい。
【0028】
次に、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔を可変する間隔可変機構について説明する。
【0029】
図5は、間隔可変機構の例を示す断面図である。この
図5は、
図1のX1矢視での筐体10、ディスプレイ筐体20および底面カバー30の断面図を示している。
図5において、状態C1はディスプレイ筐体20が閉じた状態を示し、状態C2は状態C1からディスプレイ筐体20が90度程度開いた状態を示し、状態C3は状態C2からディスプレイ筐体20がさらに30度程度開いた状態を示している。
【0030】
情報処理装置1においては、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔を可変する間隔可変機構が、ヒンジ部40に設けられる。
図5の例では、このような間隔可変機構として、回動軸41を中心として回動する回動部材42が設けられている。なお、回動軸41は、筐体10に対してディスプレイ筐体20が回動する際の回動軸である。回動部材42は、回動軸41の周囲に位置する外周部43と、外周部43から突出する突出部44を含む。突出部44の先端部分はディスプレイ筐体20に固定されており、これによって回動部材42はディスプレイ筐体20の回動に連動して回動する。
【0031】
回動部材42の外周部43は、回動軸41からの径方向の厚さが部分的に異なっている。
図5の例では、外周部43において連続する位置43a,43b,43cの順に厚さが大きくなっている。また、外周部43の位置43a~43cは、底面カバー30上で上側を向いている接触面32に接触する。
【0032】
ディスプレイ筐体20が閉じている状態C1では、外周部43の位置43aが接触面32に接触する。この状態C1では、例えば、筐体10の後端部付近の部位の下面19と、底面カバー30の後端部付近の部位の上面33とが接触している。なお、この状態C1では、情報処理装置1の後背面において回動部材42の位置43bが外側に露出している(
図2にも記載)。
【0033】
図5の例では、外周部43の厚さは位置43aから位置43bを経て位置43cに達するまで連続的に大きくなっている。このため、状態C1からディスプレイ筐体20が回動して開かれるのに連れて、底面カバー30の接触面32に接触する位置における回動部材42の外周部43の厚さが大きくなっていく。例えば、状態C2では厚さが位置43aより厚い位置43bが接触面32に接触し、状態C3では厚さがさらに厚い位置43cが接触面32に接触する。このため、ディスプレイ筐体20の回動に連れて筐体10が上方向に持ち上がっていき、筐体10の下面19と底面カバー30の上面33とが離間してそれらの間隔が大きくなっていく。
【0034】
このような構造により、ユーザがディスプレイ21を視認しながら使用可能な状態C2,C3では、状態C1と比較して筐体10と底面カバー30との間に大きな間隔が生じる。その結果、状態C2,C3では、状態C1と比較して筐体10に搭載された発熱体と底面カバー30との距離が大きくなる。したがって、状態C2,C3での底面カバー30の温度上昇を抑制できる。
【0035】
図6は、情報処理装置における第1の拡大斜視図である。
図7は、情報処理装置における第2の拡大斜視図である。
図6は、筐体10における
図3の領域Cを拡大して示した斜視図であり、
図7は、底面カバー30における
図2の領域Aを拡大して示した斜視図である。
【0036】
図6に示すように、筐体10には、ヒンジ部40の一部として、回動軸41を筐体10に固定するブラケット45が設けられている。回動部材42は、ブラケット45によって筐体10に固定された回動軸41を中心として、ディスプレイ筐体20と連動して回動する。一方、
図7に示すように、底面カバー30には、回動部材42が接触する接触面32が設けられているとともに、この接触面32に接続する補強リブ34a,34bが設けられている。
図7の例では、接触面32および補強リブ34a,34bは底面カバー30と一体成型されている。接触面32には回動部材42の回動によって筐体10を持ち上げるための力がかかるが、補強リブ34a,34bによって接触面32が破損しないように補強される。
【0037】
次に、筐体10と底面カバー30との間隔を所定値以下に規制して、筐体10から底面カバー30が離脱することを防止する規制部材について説明する。
図6に示すように、筐体10の左右の後端部(
図6では右後端部)には、筐体10の側壁面から内側に対して水平方向に突出した凸部101が設けられている。一方、
図7に示すように、底面カバー30の左右の後端部(
図7では右後端部)には、筐体10の凸部101が外側から係合する凹部35が設けられている。
【0038】
図8は、規制部材を拡大して示す断面図である。この
図8は、
図1のX2矢視での筐体10および底面カバー30の断面図を示している。
【0039】
図8の状態では、底面カバー30の凹部35は情報処理装置1の背面側に開口しており、凹部35の開口部に対して背面側から筐体10の凸部101が係合する。凹部35の高さ方向の開口幅は、凸部101の高さ方向の厚さより薄くなっている。このため、凹部35の開口部において凸部101は上下に移動可能になっている。
【0040】
図8の上側に示すように、ディスプレイ筐体20が閉じた状態では、凸部101の下面が凹部35の開口部の下端に接触する。一方、ディスプレイ筐体20が開かれると、凹部35の開口部内で凸部101が上方向に移動する。そして、ディスプレイ筐体20の回動に伴い、筐体10が最も高い位置に達したとき、
図8の下側のように凸部101の上面が凹部35の開口部の上端に接触する。
【0041】
このように、凸部101の上下の移動幅が、筐体10と底面カバー30との間隔の最大値となる。すなわち、凹部35は、凸部101の上下方向の移動、すなわち筐体10の上下方向の移動を、筐体10と底面カバー30との間隔の最大値以下に規制する。これとともに、筐体10と底面カバー30とが分離することが防止される。
【0042】
次に、
図6~
図8を参照して、ディスプレイ筐体20が閉じた状態において底面カバー30が筐体10に密着した状態を保持するようにする保持部材について説明する。本実施の形態に係る情報処理装置1には、磁力によって密着状態を保持する保持部材が設けられている。
【0043】
図7に示すように、底面カバー30上で上側を向いた面に、上面が平らな磁石36が設けられている。一方、
図6に示すように、筐体10には回動軸41を筐体10に固定するブラケット45が設けられている。ブラケット45は、フェライト系ステンレスなどの磁性体によって形成される。また、ブラケット45における底面カバー30に対向する面は平板状になっており、この面における領域45aが底面カバー30の磁石36と対向する位置となっている。
【0044】
図8の上側に示すように、ディスプレイ筐体20が閉じた状態では、ブラケット45の領域45aに底面カバー30の磁石36が近接し、ブラケット45を底面カバー30の方向に付勢する磁力が生じる。これにより、筐体10と底面カバー30とが密着する状態が保持され、底面カバー30が筐体10から離脱することが防止される。
【0045】
図9は、筐体および底面カバーの側壁付近を拡大して示す断面図である。この
図9は、
図1のY1矢視での筐体10および底面カバー30の断面図を示している。
【0046】
筐体10の側壁102は、底面カバー30の側壁37の外側に位置する。ディスプレイ筐体20が閉じた状態から回動して開くのに連れて、底面カバー30の側壁37に対して筐体10の側壁102が上側に移動する。このとき、側壁102の内側面102aと側壁37の外側面37aとの両方が底面に対して垂直になっていると、筐体10が上下に移動したときに側壁102の内側面102aの下端と側壁37の外側面37aの上端とが接触しやすくなり、筐体10の移動がスムーズではなくなる。また、側壁102の内側面102aと側壁37の外側面37aとの接触を回避するためにこれらの距離を離した場合、筐体10と底面カバー30との間に大きな隙間が空くことになり、筐体10の内部に埃が入りやすくなるなどの問題がある。
【0047】
そこで、本実施の形態では、底面カバー30の側壁37の上側が薄くなるように、側壁37の外側面37aに傾斜がつけられる。これにより、筐体10が上下動した際に側壁102の内側面102aの下端と側壁37の外側面37aの上端とが接触しにくくなり、筐体10の上下動がスムーズになる。なお、上記の構成に限らず、例えば、筐体10の側壁102の下側が薄くなるように、側壁102の内側面102aに傾斜がつけられてもよい。
【0048】
<変形例>
図10は、情報処理装置の背面の一部を拡大した拡大図である。
図10を参照して、筐体10の後端部と底面カバー30の後端部との間隔を可変する間隔可変機構の変形例について説明する。
【0049】
上記の実施の形態では、間隔可変機構として回動部材42が設けられていた。上記の実施の形態において、この回動部材42はディスプレイ筐体20とは別の部材として設けられていたが、回動部材42がディスプレイ筐体20と一体に形成されていてもよい。
【0050】
図10の例では、情報処理装置1のヒンジ部50において、ディスプレイ筐体20の一部が回動部材42の外周部43と同様の機能を果たすようになっている。具体的には、ディスプレイ筐体20の後端には側壁22が設けられている。側壁22の領域22aの内側には、ヒンジ部50の回動軸(図示せず)を受ける軸受け部が形成され、ディスプレイ筐体20はこの回動軸を中心として回動するようになっている。これにより、側壁22の領域22aがヒンジ部50の一部を形成している。
【0051】
また、側壁22の領域22aでは、回動軸に対する外周面が形成されている。この外周面として、上記の回動部材42の外周部43の面のうち、少なくとも位置43aから位置43cまでの領域の形状が形成されている。すなわち、位置43a,43b,43cにそれぞれ対応する位置の順に、回動軸からの径方向の厚さが大きくなっている。そして、
図5の状態C1のようにディスプレイ筐体20が閉じた状態では、位置43aに対応する位置が底面カバー30の接触面に接触する。また、
図5の状態C2のようにディスプレイ筐体20が開かれた状態では、位置43bに対応する位置が底面カバー30の接触面に接触する。さらに、
図5の状態C3のようにディスプレイ筐体20が開かれた状態では、位置43cに対応する位置が底面カバー30の接触面に接触する。
【0052】
以上のように、回動部材42がディスプレイ筐体20と一体に形成されることで、情報処理装置1の製造コストを抑制でき、組み立て工程を簡略化できる。
【0053】
なお、
図10の例では、側壁22の領域22aの外周面が接触する底面カバー30の接触面に、金属製または樹脂製の受け部品38が取り付けられている。これにより、接触面が破損する可能性が低減される。
【0054】
図11は、保持部材の変形例を示す断面図である。この
図11は、
図1のX2矢視での筐体10および底面カバー30の断面図を示している。この
図11を参照して、ディスプレイ筐体20が閉じた状態において底面カバー30が筐体10に密着した状態を保持するようにする保持部材の変形例について説明する。
【0055】
図11では、底面カバー30に対する筐体10の上下の移動幅を規制する規制部材に、保持部材をさらに設けた例を示している。具体的には、規制部材の凹部35内に、保持部材としてコイルばね60が設けられている。コイルばね60は、凹部35の開口部上端の下面と、凸部101の上面とを接続し、ディスプレイ筐体20が閉じられ、凸部101が凹部35の開口部の下端に位置しているときに、凸部101を下側に付勢する。これにより、筐体10と底面カバー30とが密着する状態が保持され、底面カバー30が筐体10から離脱することが防止される。
【0056】
図12は、情報処理装置の変形例における右側面図を示す。
図12の上側はディスプレイ筐体20が閉じた状態を示し、
図12の下側はディスプレイ筐体20が開いた状態の一例を示す。
【0057】
上記の実施の形態では、
図4に示したように、底面カバー30全体が一体に形成され、底面カバー30の前端部が常に密着した状態となり、底面カバー30の後端部がディスプレイ筐体20の回動に応じて筐体10と離間する構成となっていた。これに対して、
図12の例では、底面カバー30が前側カバー30aと後ろ側カバー30bとに分割されている。
【0058】
前側カバー30aは、ディスプレイ筐体20の回動状態に関係なく、常に筐体10と密着している。後ろ側カバー30bは、前側カバー30aとの連結部を中心として、前側カバー30aに対して回動可能な状態で連結している。そして、ディスプレイ筐体20が閉じた状態から回動すると、後ろ側カバー30bの後端部が筐体10と離間していく。
【0059】
図3に例示したように、最も大きな発熱源となるCPU12は筐体10の後ろ側に配置されている。この場合、
図12のように、底面カバー30のうち後ろ側カバー30bのみが回動可能とされ、ディスプレイ筐体20が開いたときに後ろ側カバー30bの後端部が筐体10と離間する構成であっても、CPU12と底面カバー30(後ろ側カバー30b)との距離を離すことが可能となる。このため、底面カバー30の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0060】
以上説明したように、情報処理装置1は、ディスプレイ筐体20が閉じた状態では筐体10と底面カバー30とが密着し、ディスプレイ筐体20が開いた状態では筐体10と底面カバー30とが離間するように、筐体10と底面カバー30との間隔を変化させる間隔可変機構を備える。これにより、ディスプレイ筐体20が閉じた状態と比較して、開いた状態ではCPU12などの発熱体と底面カバー30との距離を離すことが可能となる。したがって、情報処理装置1の底面の温度上昇を抑制できる。
【0061】
なお、上記の実施の形態およびその変形例では、間隔可変機構として、ディスプレイ筐体20の回動に応じて上記の間隔を機械的に変化させる機構とした。しかし、これに限定されず、間隔可変機構は上記の間隔を電気的に変化させる機構であってもよい。例えば、情報処理装置1は、ディスプレイ筐体20の回動角度をセンサによって検出し、検出された回動角度が0度より大きい所定角度以上となった場合に、モータなどの動力によって上記の間隔を拡大させる。この場合でも、ディスプレイ筐体20が開いた状態では発熱体と底面カバー30との距離を離すことが可能となり、その結果、情報処理装置1の底面の温度上昇を抑制できる。
【符号の説明】
【0062】
1 情報処理装置
10 筐体
11a キーボード
11b タッチパッド
12 CPU
13a,13b メモリ
14 バッテリ
15 ヒートパイプ
16a,16b ヒートシンク
17a,17b 送風ファン
18a~18d ネジ穴
19 下面
20 ディスプレイ筐体
21 ディスプレイ
30 底面カバー
31a~31d 固定穴
32 接触面
33 上面
40,50 ヒンジ部
41 回動軸
42 回動部材
43 外周部
43a~43c 位置
44 突出部
【要約】
【課題】筐体底面の温度上昇を抑制する。
【解決手段】第1の筐体は、内部に発熱体が搭載される。第2の筐体は、ディスプレイが搭載されたディスプレイ面を有し、ディスプレイ面が第1の筐体の上面に対向する第1の状態から、ディスプレイ面が上面から離間する方向に回動するように、第1の筐体に対して回動可能な状態で連結される。底面カバーは、第1の筐体の底面を覆う。間隔可変機構は、第1の状態において第1の筐体と底面カバーとが密着し、第1の状態から第2の筐体が回動した第2の状態において第1の筐体と底面カバーとが離間するように、第1の筐体と底面カバーとの間隔を変化させる。
【選択図】
図1