(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】推定装置、推定モデル作成装置、推定方法、推定モデル作成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 25/14 20060101AFI20240911BHJP
H02P 31/00 20060101ALI20240911BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20240911BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240911BHJP
【FI】
H02P25/14
H02P31/00
G06F30/27
G06F30/10
(21)【出願番号】P 2024529606
(86)(22)【出願日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2024005741
【審査請求日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2023032145
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】本間 励
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-135775(JP,A)
【文献】特開2021-135774(JP,A)
【文献】特開2022-151370(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194401(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/168708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/14
H02P 31/00
G06F 30/27
G06F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定する推定装置であって、
前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布を取得する説明変数取得部と、
前記ギャップにおける磁束密度分布と、前記評価指標と、の関係性を学習することにより作成された推定モデルを用いて、前記磁束密度分布に応じた前記評価指標の推定値を算出する評価指標算出部と、
を備え
、
前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む、推定装置。
【請求項2】
前記磁束密度分布は、前記ロータの周方向に沿った複数の位置のそれぞれにおける磁束密度の集合であり、
前記磁束密度のそれぞれは、前記ギャップの半径方向における規定位置での磁束密度である、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定モデルは、学習データを用いて機械学習を行うことにより作成された学習済みモデルであり、
前記学習データは、前記磁束密度分布と、前記評価指標の実績値と、が相互に対応付けられたデータである、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定モデルは、学習データを用いて機械学習を行うことにより作成された学習済みモデルであり、
前記学習データは、簡略化回転電機における前記磁束密度分布と、前記評価指標の実績値と、が相互に対応付けられたデータであり、
前記簡略化回転電機は、前記評価指標の算出対象の回転電機のステータが簡略化された回転電機であり、
前記評価指標の実績値は、前記評価指標の算出対象の回転電機における実績値であり、
前記説明変数取得部は、前記簡略化回転電機における前記磁束密度分布を取得する、請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記簡略化の対象は、ステータコイルと、ステータコアのティースと、のうちの少なくとも一方である、請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記説明変数取得部は、前記簡略化回転電機に対する電磁界解析を行うことにより、前記磁束密度分布を算出し、
前記電磁界解析は、一時刻における解析、または、一周期未満内の期間の複数の時刻における解析である、請求項4に記載の推定装置。
【請求項7】
前記説明変数取得部は、前記磁束密度分布を、電磁界解析を行うことにより算出する、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項8】
前記磁束密度分布を構成する複数の磁束密度の各々のデータは、磁束密度ベクトルの成分値で構成される、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項9】
ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定するための推定モデルを作成する推定モデル作成装置であって、
前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布と、前記評価指標と、の関係性を学習することにより前記推定モデルを作成する作成部を備え
、
前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む、推定モデル作成装置。
【請求項10】
前記磁束密度分布は、前記ロータの周方向に沿った複数の位置のそれぞれにおける磁束密度の集合であり、
前記磁束密度のそれぞれは、前記ギャップの半径方向における規定位置での磁束密度である、請求項9に記載の推定モデル作成装置。
【請求項11】
前記磁束密度分布と前記評価指標の実績値とを対応付けた学習データを取得する学習データ取得部を有し、
前記作成部は、前記学習データを用いて機械学習を行うことにより前記推定モデルを作成する、請求項9または10に記載の推定モデル作成装置。
【請求項12】
前記学習データ取得部は、簡略化回転電機における前記磁束密度分布と、前記評価指標の実績値とを対応づけた学習データを取得し、
前記簡略化回転電機は、前記評価指標の算出対象の回転電機のステータが簡略化された回転電機であり、
前記評価指標の実績値は、前記評価指標の算出対象の回転電機における実績値である、請求項11に記載の推定モデル作成装置。
【請求項13】
前記簡略化の対象は、ステータコイルと、ステータコアのティースと、のうちの少なくとも一方である、請求項12に記載の推定モデル作成装置。
【請求項14】
前記学習データ取得部は、前記簡略化する前のステータを備える回転電機に対する電磁界解析を行うことにより、前記評価指標の実績値を算出する、請求項12に記載の推定モデル作成装置。
【請求項15】
前記学習データ取得部は、前記簡略化回転電機に対する電磁界解析を行うことにより、前記磁束密度分布を算出し、
前記電磁界解析は、一時刻における解析、または、一周期未満内の期間の複数の時刻における解析である、請求項12に記載の推定モデル作成装置。
【請求項16】
前記学習データ取得部は、前記磁束密度分布を、電磁界解析を行うことにより算出する、請求項11に記載の推定モデル作成装置。
【請求項17】
前記磁束密度分布を構成する複数の磁束密度のデータは、磁束密度ベクトルの成分値で構成される、請求項9または10に記載の推定モデル作成装置。
【請求項18】
ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定する推定方法であって、
前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布を取得する説明変数取得工程と、
前記ギャップにおける磁束密度分布と前記評価指標との関係性を学習することにより作成された推定モデルを用いて、前記磁束密度分布に応じた前記評価指標の推定値を算出する評価指標算出工程と、
を備え
、
前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む、推定方法。
【請求項19】
ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定するための推定モデルを作成する推定モデル作成方法であって、
前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布と、前記評価指標と、の関係性を学習することにより前記推定モデルを作成する作成工程を備え
、
前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む、推定モデル作成方法。
【請求項20】
請求項1または2に記載の推定装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項21】
請求項9または10に記載の推定モデル作成装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定モデル作成装置、推定方法、推定モデル作成方法およびプログラムに関する。本願は、2023年3月2日に日本に出願された特願2023-032145号に基づき優先権を主張し、その内容を全てここに援用する。
【背景技術】
【0002】
回転電機(モータおよび発電機)の特性を推定する手法として、非特許文献1には、CNN(Convolutional Neural Network)を用いる手法が開示されている。具体的には、グレースケール画像をCNNの入力とする。グレースケール画像の各画素の値は、ロータ内の磁束密度の絶対値に対応する値である。また、ロータ内の磁束密度の絶対値は、ロータの機械角が固定された状態での値である。、非特許文献1に記載の技術では、このようなグレースケール画像が入力されたCNNを用いて、モータの平均トルクおよびトルクリプルを推定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】H. Sasaki, Y. Hidaka and H. Igarashi, "Prediction of IPM Machine Torque Characteristics Using Deep Learning Based on Magnetic Field Distribution," in IEEE Access, vol. 10, pp. 60814-60822, 2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、学習済みモデルに対する入力が画像であるため、説明変数の次元(情報量)が膨大になる。したがって、CNNの学習に使用する学習データの数が多くなる。よって、特に回転電機の評価指標を推定する推定モデルの学習時の計算負荷が高くなる虞がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、回転電機の評価指標を推定する推定モデルの学習時の計算負荷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の推定装置は、ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定する推定装置であって、前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布を取得する説明変数取得部と、前記ギャップにおける磁束密度分布と、前記評価指標と、の関係性を学習することにより作成された推定モデルを用いて、前記磁束密度分布に応じた前記評価指標の推定値を算出する評価指標算出部と、を備え、前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む。
本発明の推定モデル作成装置は、ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定するための推定モデルを作成する推定モデル作成装置であって、前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布と、前記評価指標と、の関係性を学習することにより前記推定モデルを作成する作成部を備え、前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
本発明の推定方法は、ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定する推定方法であって、前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布を取得する説明変数取得工程と、前記ギャップにおける磁束密度分布と前記評価指標との関係性を学習することにより作成された推定モデルを用いて、前記磁束密度分布に応じた前記評価指標の推定値を算出する評価指標算出工程と、を備え、前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む。
本発明の推定モデル作成方法は、ロータおよびステータを有する回転電機の評価指標を推定するための推定モデルを作成する推定モデル作成方法であって、前記ロータと前記ステータとの間のギャップにおける磁束密度分布と、前記評価指標と、の関係性を学習することにより前記推定モデルを作成する作成工程を備え、前記評価指標は、トルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
本発明のプログラムの第1の例は、前記推定装置の各部としてコンピュータを機能させる。
本発明のプログラムの第2の例は、前記推定モデル作成装置の各部としてコンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、推定モデル作成装置および推定装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、IPMSMの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、簡略化モータの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、説明変数に含める磁束密度により構成される磁束密度分布の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1説明変数データの一例を概念的に示す図である。
【
図6】
図6は、学習データ群の一例を概念的に示す図である
【
図7】
図7は、推定モデル作成方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、推定方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、推定モデル作成装置のハードウェアの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
なお、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。また、各図において、x-y-z座標は、各図における向きの関係を示すものである。x-y-z座標において、白丸(〇)の中に黒丸(●)が付されている記号は、紙面の奥側から手前側に向かう方向が正の方向である矢印線を示す記号である。
【0011】
図1は、推定モデル作成装置110および推定装置120の機能的な構成の一例を示す図である。推定モデル作成装置110および推定装置120のハードウェアは、例えば、例えば、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、および各種のユーザインターフェースを備える情報処理装置を用いることにより実現される。また、推定モデル作成装置110および推定装置120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されても良い。また、本実施形態では、推定モデル作成装置110および推定装置120が別々の装置である場合を例示する。しかしながら、推定モデル作成装置110および推定装置120のうちの一方の装置が有する機能の少なくとも一部を、他方の装置が備えていても良い。
【0012】
推定装置120は、回転電機の評価指標を推定する。推定モデル作成装置110は、回転電機の評価指標を推定するための推定モデルを作成する。本実施形態では、推定装置120が、推定モデル作成装置110で作成された推定モデルを用いて、回転電機の評価指標を推定する場合を例示する。
【0013】
推定モデルは、説明変数に基づいて目的変数を算出する学習済みモデルである。推定モデルは、説明変数と目的変数との関係性を学習することにより作成される。学習済みモデルを推定モデルとすることにより、種々の構造の回転電機の評価指標を、実際に回転電機を製造しなくても推定することが出来る。したがって、評価指標によって高い評価が得られる回転電機(ロータ)の構造を、実際に回転電機を製造しなくても探索することが出来る。例えば、高いトルクが得られるモータの構造を、実際にモータを製造しなくても探索することが出来る。また、実際に製造した回転電機の運転中に、センサを用いた測定を行う必要もなくなる。
【0014】
本実施形態では、推定モデルの目的変数に、回転電機の評価指標が含まれる場合を例示する。また、本実施形態では、推定モデルの説明変数に、複数の磁束密度が含まれる場合を例示する。これらの複数の磁束密度は、ロータとステータとの間に形成されるエアギャップの少なくとも一部の領域における磁束密度分布を表す。磁束密度分布は、例えば、ロータの回転軸の所定位置で当該回転軸に垂直にロータを切断した場合の切断面に現れるエアギャップ内の磁束密度分布である。ただし、磁束密度分布は、エアギャップとして形成される三次元空間内の磁束密度分布でも良い。なお、以下の説明では、エアギャップを、必要に応じてギャップと略称する。
【0015】
また、本実施形態では、推定モデルが、教師あり学習を行うことにより作成される場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。推定モデルは、教師なし学習を行うことにより作成されても良い。この場合、本実施形態で説明する正解ラベルは不要になる。また、推定モデルは、強化学習を行うことにより作成されても良い。
【0016】
ここで、本発明者は、モータなどの回転電機の評価指標は、ロータ外周部付近の磁束密度分布による影響が非常に大きいとの知見を得ている。より具体的には、回転電機の評価指標は、ロータとステータとの間のギャップにおける磁束密度分布(ギャップを通過する磁束密度の分布)によって主に決定付けられる。よって、本発明者は、ギャップにおける磁束密度分布から、回転電機の評価指標を推定することが出来ると考えた。
【0017】
また、一般に、回転電機の運転時の磁束密度分布は有限要素法などで電磁界解析を行うことにより算出される。この場合、磁束密度分布を算出するのに比較的長時間を要する。ここで、本発明者は、ロータにおける磁束密度分布と、ステータにおける磁束密度分布と、は、回転電機の運転条件が同じであれば、ロータにおける磁極(例えば永久磁石)の配置と、ロータに形成されるフラックスバリアの形状と、により凡そ決定付けられるとの知見を得ている。また、ステータを簡略化した解析モデルを用いて算出した磁束密度分布と、ステータを簡略化しない解析モデルを用いて算出した磁束密度分布と、には相関がある。そして、ステータを簡略化した解析モデルを用いて電磁界解析を行えば、ステータを簡略化しない解析モデルを用いて電磁界解析を行う場合よりも、磁束密度分布の算出をより短時間で行うことが出来る。よって、本発明者は、ステータを簡略化した解析モデルを用いることで、ギャップにおける磁束密度分布の電磁界解析をより短時間で行えるため、回転電機の評価指標の推定をより短時間で行えると考えた。
【0018】
例えば非特許文献1に記載のように、ロータの1極を構成する領域の画像データを推定モデルへの入力とすると、回転電機の評価指標への関連性が低い(または無い)領域の磁束密度や、回転電機の評価指標の正確な算出の妨げとなる領域の磁束密度が、説明変数に含まれ得る。さらに、ロータの1極を構成する領域の画像データを推定モデルへの入力とすると、画像データにおける各画素における磁束密度を説明変数とすることになるので、説明変数の次元(情報量)が膨大になる。このため、推定モデルの高精度化には説明変数を構成する入力値の多様な組み合わせが必要になる。したがって、多量の学習データが必要になると共に、学習データの準備に多くの時間を要する(なお、非特許文献1には、学習データの数として5222が示されている)。そこで、本実施形態では、推定モデルに説明変数として入力されるデータ(ギャップにおける磁束密度のデータ)が画像データではない場合を例示する。本実施形態の説明において、特に断りがない限り、説明変数(磁束密度)のデータは、画像データではないものとする。
【0019】
また、本実施形態では、回転電機がIPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である場合を例示する。ここで、IPMSMについて概説する。
図2は、IPMSM200の構成の一例を示す図である。
図2では、ロータの磁極としての永久磁石がV字状に配置された、いわゆるV字型IPMSMを例示する。また、
図2では、IPMSM200(ロータ210)の極数が8極である場合を例示する(なお、IPMSM200の極数は限定されない)。
図2において、両矢印線の範囲がIPMSM200の1極を構成する部分である。なお、IPMSM200(ロータ210)の極数がn極である場合、IPMSM200は、概ね、IPMSM200の回転軸線0を回転対称軸とするn回対称の回転対称性の関係を有する。nは2以上の整数である。
図2に示す例ではnは8である(n=8)。
図2は、IPMSM200の回転軸線0に垂直にIPMSM200を切った場合に現れる切断面を4等分した4つの領域のうちの一つの領域を示す。したがって、
図2は、IPMSM200の領域のうち、ロータ210の2極を構成する領域を示す。これら4つの領域は、概ね、IPMSM200の回転軸線0を回転対称軸とする4(=8極÷2)回対称の関係を有する。したがって、
図2において、IPMSM200の中心線を回転軸線0として
図2に示す領域を90°ずつ回転させることにより、IPMSM200の回転軸線0に垂直にIPMSM200を切った場合に現れる切断面の全体の構成が得られる。以下の説明では、IPMSM200の回転軸線0に垂直にIPMSM200を切った場合に現れる切断面を、必要に応じて、モータ断面と称する。
【0020】
図2において、IPMSM200は、ロータ210と、ステータ220と、を備える。
ステータ220は、ステータコア221と、不図示のステータコイルと、を備える。ステータ220は、回転磁界を発生させる。なお、
図2では、ステータ220が備えるステータコイルの図示を省略する。不図示のステータコイルは、ステータコア221の各スロット222に配置される(表記の都合上、
図2では一つのスロットのみに符号を付す)。ステータコイルの巻線方法は、限定されない。ステータコイルの巻線方法は、分布巻きであっても良いし、集中巻きであっても良い。
【0021】
ロータ210は、IPMSM200の回転軸線0を回転軸線として回転する。したがって、ロータ210の回転軸線0と、IPMSM200の回転軸線0と、は一致する。
ロータ210は、ロータコア211と、複数の永久磁石と、を備える。
図2では、1極当たりの永久磁石の数が2個である場合を例示する(
図2に示す2個の永久磁石212a~212bを参照)。なお、1極当たりの永久磁石の数は限定されない。1極当たりの永久磁石の数は、1個であっても良いし、3個以上であっても良い。ロータコア211は、軟磁性材料を用いて構成される。例えば、ロータコア211は、複数の電磁鋼板を積層することにより構成される。
【0022】
前述したように
図2では、1極当たり複数の永久磁石212a~212bがロータコア211に設置される場合を例示する。したがって、ロータコア211には、ロータコア211の回転軸線0に平行な方向に沿って、1極当たり複数の磁石穴が形成される(以下の説明では、回転軸線0に平行な方向を、必要に応じてz軸方向と称する)。当該磁石穴は、z軸方向に貫通する貫通穴である。複数の永久磁石212a~212bは、それぞれ、ロータコア211に形成された前記磁石穴に挿入されることによって、ロータコア211内に設置(埋設)される。前述したように
図2では、IPMSM200の領域のうち、ロータ210の2極を構成する領域を示す。
図2では、1極当たり2個の永久磁石212a~212bがロータコア211に埋設される場合を例示する。したがって、ロータコア211には合計で16個の永久磁石が埋設される。なお、
図2では、表記の都合上、ロータ210の2極を構成する部分のうち、ロータ210の1極を構成する部分にのみに符号を付す。
【0023】
ロータコア211に形成された前記磁石穴において、永久磁石212a~212bが存在しない空間は、フラックスバリア213a~213dである。フラックスバリア213a~213dは、磁束が通らない領域、または、当該フラックスバリア213a~213dの周囲の領域よりも磁束が通りづらい領域である。ここでは、フラックスバリア213a~213dに有体物が存在しない場合を例示する(すなわち、フラックスバリア213a~213dが空隙部(空気の領域)である場合を例示する)。しかしながら、フラックスバリア213a~213dに非磁性体が設置されていても良い。また、フラックスバリアは、永久磁石212a~212bに隣接する位置に形成されていなくても良い(すなわち、フラックスバリアは、前記磁石穴の一部でなくても良い)。フラックスバリアは、永久磁石212a~212bに隣接する位置に加えてまたは代えて、永久磁石212a~212bに隣接しない位置に形成されていても良い。
なお、IPMSM自体は、公知のIPMSMで良く、
図2に例示するIPMSM200に限定されない。例えば、ロータコアおよびステータコアの少なくとも一方に対して、スキュー(skew)が施されても良い。
【0024】
以上のように本実施形態では、回転電機がモータである場合を例示する。そこで、以下の説明では、回転電機の評価指標を、必要に応じて、モータ評価指標と称する。ただし、回転電機はモータに限定されず、発電機であっても良い。また、モータは、
図2に例示するIPMSMに限定されず、その他のモータであっても良い。また、モータは、
図2に例示するインナーロータ型のモータに限定されず、アウターロータ型のモータであっても良い。また、モータは、
図2に例示するラジアルギャップ型のモータに限定されず、アキシャルギャップ型のモータであっても良い。
【0025】
ここで、本実施形態では、ギャップが、ロータ210の対向面からステータ220の対向面までの領域である場合を例示する。ロータ210の対向面は、ロータ210(ロータコア211)の表面のうち、ステータ220と間隔を有した状態で対向する面である。
図2に例示するインナーロータ型のモータでは、ロータ210の対向面は、ロータ210の外周面214になる。また、アウターロータ型のモータでは、ロータの対向面は、ロータの内周面になる。ステータ220の対向面は、ステータ220のティース223の先端面224である。このように、本実施形態では、ギャップが、ロータ210の対向面およびステータ220の対向面を含む場合を例示する。
【0026】
<推定モデル作成装置110>
以下に、推定モデル作成装置110が有する機能の一例を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態では、推定モデル作成装置110が、学習データ取得部111と、作成部112と、記憶部113と、出力部114とを備える場合を例示する。
【0027】
<<学習データ取得部111>>
学習データ取得部111は、学習データを取得する。学習データは、推定モデルを作成(学習)するために用いられるデータである。前述したように本実施形態では、推定モデルが、教師あり学習を行うことにより作成される場合を例示する。この場合、学習データは、例えば、第1説明変数データと、第1目的変数データと、を含む。第1説明変数データは、推定モデルを作成(学習)する際に用いられる説明変数のデータである。前述したように本実施形態では、複数の磁束密度のデータが、推定モデルの説明変数に含まれる場合を例示する。複数の磁束密度は、ギャップの少なくとも一部の領域における磁束密度分布を表す。したがって、本実施形態では、このような複数の磁束密度が、第1説明変数データに含まれる場合を例示する。第1目的変数データは、推定モデルを作成(学習)する際に用いられる目的変数(いわゆる正解ラベル)のデータである。前述したように本実施形態では、モータ評価指標が、推定モデルの目的変数に含まれる場合を例示する。したがって、本実施形態では、モータ評価指標が、第1目的変数データに含まれる場合を例示する。モータ評価指標(評価指標)は、モータの評価に用いることが可能な指標であれば良い。例えば、モータ評価指標は、平均トルクなどのトルク、トルクリプル、鉄損、および効率のうちの少なくとも1つである。
【0028】
説明変数を構成する複数の磁束密度のデータは、例えば、同一時刻における、ギャップの全部または一部における磁束密度分布を表すデータである。また、説明変数を構成する複数の磁束密度のデータは、ギャップの全部のみ、または、ギャップの一部のみにおける磁束密度分布を表すデータでも良い。ただし、説明変数を構成する複数の磁束密度のデータは、例えば、ギャップ以外のコア部分における磁束密度の値(分布)を含んでいても良い。ギャップ以外のコア部分は、例えば、ロータ210のコア部分のうちのギャップ周辺のコア部分(ロータコア211のギャップ周辺の部分)と、ステータ220のコア部分のうちのギャップ周辺のコア部分(ステータコア221のギャップ周辺の部分)と、のうちの少なくとも一方を含む。このように、説明変数を構成する複数の磁束密度のデータには、ギャップ以外の部分における磁束密度の値(分布)が含まれていても良い。この場合、説明変数を構成する複数の磁束密度のデータは、ギャップにおける磁束密度分布を示す領域が、その他の部分における磁束密度分布を示す領域よりも広くなるように構成されるのが好ましい。また、説明変数を構成する複数の磁束密度のデータは、ギャップにおける磁束密度分布を示す領域が、その他の部分における磁束密度分布を示す領域と同じまたは同程度になるように構成されるのも好ましい。なお、当該同程度には、ギャップにおける磁束密度分布を示す領域が、その他の部分における磁束密度分布を示す領域よりも広い場合と、狭い場合と、のうちのいずれ場合も含まれる。
【0029】
なお、前述したように推定モデルは、教師なし学習を行うことにより作成されても良い。この場合、学習データ取得部111により取得される学習データには、第1説明変数データが含まれ、第1目的変数データ(正解ラベル)が含まれなくても良い。
【0030】
学習データ取得部111が学習データを取得する形態は限定されない。例えば、学習データ取得部111は、推定モデル作成装置110の内部の記憶媒体に記憶されている学習データを読み出すことにより取得しても良い。また、学習データ取得部111は、外部装置から学習データを受信することにより取得しても良い。また、オペレータが、推定モデル作成装置110に接続された入力装置130を操作することによって学習データを示す数値を推定モデル作成装置110に入力しても良い。この場合、学習データ記憶部111は、このようにして入力された学習データを取得しても良い。また、第1目的変数データに含まれるモータ評価指標のデータと、第1説明変数データに含まれる複数の磁束密度のデータと、のうち少なくとも一方は、例えば、測定値であっても良い。しかしながら、様々なモータを作製して測定を行うよりも、有限要素法などの数値解析を行う方が効率的である。そこで、本実施形態では、学習データ取得部111が以下のようにして学習データを算出することにより取得する場合を例示する。
【0031】
<<<第1目的変数データの算出>>>
まず、学習データ取得部111が、第1目的変数データを算出する手法の一例を説明する。本実施形態では、学習データ取得部111が、モータに対する電磁界解析(数値解析)を行うことにより、モータ評価指標を第1目的変数データとして算出する場合を例示する。
【0032】
前述した本発明者の知見のように、トルクなどのモータ評価指標は、ロータ210の構成そのものよりも、ギャップにおける磁束密度分布に大きく依存する。そこで、本実施形態では、複数の学習データを作成するために、ロータ210の少なくとも一部の構成が相互に異なる複数のモータを、第1目的変数データ(モータ評価指標)の算出対象のモータとする場合を例示する。以下の説明では、学習時にモータ評価指標を算出する対象のモータを、必要に応じて学習用モータと称する。また、
図2に示すIPMSM200は、学習用モータの一つとなり得る。したがって、以下の説明では、必要に応じて、学習用モータに対する符号として
図2に付した符号を付して説明を行う。
【0033】
本実施形態では、複数の学習用モータ200において相互に異ならせるロータ210の構成が、永久磁石212a~212bの形状および数のうちの少なくとも一方と、フラックスバリア213a~213dの形状および数のうちの少なくとも一方と、ロータ210の対向面の形状と、のうちの少なくとも1つである場合を例示する。
図2に示す例では、ロータ210の対向面は、ロータ210の外周面214である。なお、複数の学習用モータ200において相互に異ならせるロータ210の構成は、これらに限定されない。
【0034】
ただし、ロータ210の所定の属性は、少なくとも一部の学習用モータ200において同じでも良い。ロータ210の所定の属性は、例えば、モータ評価指標への影響度(当該属性を同じにしないとモータ評価指標の精度に大きく影響するか否か)に基づいて定められても良い。ロータ210の所定の属性は、例えば、外径、内径、および極数のうちの少なくとも1つを含む。以下の説明では、ロータ210の所定の属性を、必要に応じてロータ固定属性と称する。なお、前述の例において、例えば、外径、内径、および極数のうちの2以上の属性を、少なくとも一部の学習用モータ200において同じにする場合、当該2以上の属性の組でロータ固定属性が表される。すなわち、この場合、ロータ固定属性が同じであるとは、当該2以上の属性の全てが同じであることを指す。一方、ロータ固定属性が異なるとは、2以上の属性のうちの1以上の属性が異なることを指す。
【0035】
本実施形態では、推定装置120でモータ評価指標を推定する対象の複数のモータのロータ固定属性が相互に異なる場合、当該複数のモータのモータ評価指標を、別の推定モデルで推定する場合を例示する。すなわち、本実施形態では、推定モデル作成装置110が、ロータ固定属性ごとに推定モデルを作成する場合を例示する。なお、以下の説明では、推定装置120でモータ評価指標を推定する対象のモータを、必要に応じて推定用モータと称する。また、以下の説明では、1つの推定モデルを作成(学習)するために用いる複数の学習用モータの数を、必要に応じてs個と表記する。
【0036】
学習データ取得部111は、第1目的変数データ(モータ評価指標)を算出するために必要な情報として、学習用モータ200の駆動条件情報DIと、学習用モータ200のモータ構成情報MIと、を入力する。
【0037】
学習用モータ200の駆動条件情報DIは、当該学習用モータ200の駆動条件を示す情報である(以下の説明では、モータの駆動条件を、必要に応じて駆動条件と略称する)。駆動条件には、例えば、回転数、ステータ電流(励磁電流)の振幅、および進角が含まれる。
【0038】
学習用モータ200のモータ構成情報MIは、当該学習用モータ200の構成を示す情報である。学習用モータ200の構成を示す情報には、例えば、学習用モータ200の構成部品の情報が含まれる。構成部品には、例えば、ロータコア211、永久磁石212a~212b、およびステータコア221が含まれる。また、構成部品の情報には、例えば、当該構成部品の、数、位置、大きさ、形状、および材質(物性値)を、当該構成部品ごとに示す情報が含まれる。学習用モータ200のモータ構成情報MIには、s個の学習用モータ200の構成のそれぞれを示す情報が含まれていても良い。また、学習用モータ200のモータ構成情報MIには、例えば、或る1つまたはs未満の複数の学習用モータ200の構成を示す情報と、当該1つまたはs未満の複数の学習用モータ200に対し、ロータ210の構成をどのように変更するのかを示す情報と、が含まれていても良い。
【0039】
学習データ取得部111は、学習用モータ200のモータ構成情報MIに基づいて、s個の学習用モータ200のそれぞれの形状データを作成する。モータの形状データには、例えば、モータの各構成部品が座標平面(または座標空間)において占める領域(座標範囲)を示す情報が含まれる(このことは、学習用モータ200以外のモータの形状データについても同じである)。
【0040】
この他、学習データ取得部111は、解析条件情報AIを入力する。解析条件情報AIは、有限要素法などの電磁界解析の手法を行う際に設定する必要がある情報である。例えば、解析条件情報AIには、微小領域(メッシュ)の位置、大きさ、および形状の情報が含まれる。微小領域(メッシュ)は、例えば、モータの領域を含む解析対象領域に設定される。解析対象領域は、座標平面(または座標空間)に設定される。また、微小領域(メッシュ)には、当該微小領域が設定された領域の物性値などが設定される。
【0041】
なお、本実施形態では、オペレータが、推定モデル作成装置110に接続された入力装置130を操作することによって、これらの情報(駆動条件情報DI、モータ構成情報MI、解析条件情報AI)を示す数値を推定モデル作成装置110に入力する場合を例示する。この場合、学習データ取得部111は、このようにして入力された数値を、駆動条件情報DI、モータ構成情報MI、および解析条件情報AIとして取得する。しかしながら、これらの情報の入力形態は限定されない。例えば、学習データ取得部111は、外部装置からこれらの情報を受信しても良いし、記憶媒体からこれらの情報を読み出しても良い。
【0042】
学習データ取得部111は、s個の学習用モータ200のそれぞれを同じ駆動条件で駆動(回転)した場合のモータ評価指標を、有限要素法などの手法による電磁界解析(数値解析)を行うことにより算出する。
【0043】
そのために、まず、学習データ取得部111は、例えば、マックスウェルの方程式に基づき、有限要素法などを用いて、学習用モータ200を駆動(回転)させた場合の学習用モータ200の各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを算出することを、s個の学習用モータ200のそれぞれについて同じ駆動条件で行う。
【0044】
本実施形態では、学習データ取得部111が、このような磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを、所定の時間ステップの各時刻において少なくとも一周期分算出する場合を例示する。
【0045】
そして、学習データ取得部111は、各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルのうちの少なくとも一方に基づいて、モータ評価指標を算出する。例えば、モータ評価指標にトルクが含まれる場合、学習データ取得部111は、例えば、マックスウェル応力をトルクとして算出する。
【0046】
本実施形態では、学習用モータ200および後述する簡略化モータ300を含む各モータにおいて、モータ断面の構成が、高さ方向(z軸方向)において変わらない場合を例示する。したがって、電磁界解析として、モータ断面における二次元解析を行う場合を例示する。よって、前述したモータの形状データには、例えば、モータの各構成部品が座標平面において占める領域(座標範囲)を示す情報が含まれる。しかしながら、電磁界解析として、モータ断面の方向(x軸方向およびy軸方向)および高さ方向(z軸方向)おける解析(三次元解析)が行われても良い。この場合、前述したモータの形状データには、例えば、モータの各構成部品が座標空間において占める領域(座標範囲)を示す情報が含まれる。
【0047】
なお、有限要素法による電磁界解析の手法自体は、一般的な手法であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0048】
学習データ取得部111は、以上のようにして、s個の学習用モータ200のそれぞれのモータ評価指標として、s個の学習用モータ200の駆動条件が同じである場合のモータ評価指標を算出する。また、駆動条件ごとに推定モデルを作成する場合、学習データ取得部111は、複数の駆動条件のそれぞれにおいて、s個の学習用モータ200のそれぞれのモータ評価指標を算出する。また、推定モデルを前述のロータ固定属性ごとに作成する場合、学習データ取得部111は、ロータ固定属性ごとに、s個の学習用モータ200のそれぞれのモータ評価指標を算出する。以上のように、本実施形態では、ロータ固定属性ごと、駆動条件ごと、および学習用モータごとに、第1目的変数データとしてのモータ評価指標が、回転電機の評価指標の実績値の一例として算出される場合を例示する。
【0049】
<<<第1説明変数データの算出>>>
次に、学習データ取得部111が、第1説明変数データを算出する手法の一例を説明する。
<<<第1目的変数データの算出>>>の項で前述したように、トルクなどのモータ評価指標は、ロータ210とステータ220との間のギャップを通過する磁束密度分布から決定されるため、当該ギャップにおける磁束密度分布に大きく依存する。また、駆動条件が同一であれば、ロータ210の対向面付近およびステータ220の対向面付近の磁束密度分布は、ロータ210の磁極(
図2に示す例では永久磁石212a~212b)と、ロータコア211に形成されるフラックスバリア213a~213dと、により凡そ決定付けられる。モータの駆動時の磁束密度分布を正確に得るために通常は、学習用モータ200に対する測定や、学習用モータ200に対する電磁界解析(数値解析)が行われる。
【0050】
しかしながら、前述したように、ステータ220が簡略化されたモータに対して算出されたギャップにおける磁束密度分布と、ステータ220が簡略化されていないモータに対して算出された磁束密度分布と、には相関がある。本発明者は、このことに着目し、モータ評価指標の算出対象のモータに対し、ステータの構成の少なくとも一部を簡略化したモータで発生する磁束密度のデータを用いて、学習に用いる説明変数のデータ(第1説明変数データ)を取得することを着想した。以下の説明では、ステータを簡略化したモータを、必要に応じて簡略化モータと称する。
【0051】
図3は、簡略化モータ300の構成の一例を示す図である。
図3において、簡略化モータ300は、ロータ210と、ステータ320と、を備える。
図3では、学習用モータ200のロータ210と、簡略化モータ300のロータ210と、が同じである場合を例示する。ただし、学習用モータ200のロータ210と、簡略化モータ300のロータ210と、は同じでなくても良い。この場合、簡略化モータ300のロータの磁極から発生する磁束密度分布と、学習用モータ200のロータ210の磁極(永久磁石212a~212b)から発生する磁束密度分布と、に相関があるのが好ましい。
【0052】
図3において、本実施形態では、簡略化モータ300のステータ320が、ステータコア321を備え、ステータコイルを備えない場合を例示する。また、本実施形態では、ステータコア321が、学習用モータ200のステータコア221に対し、スロット222の領域を、ステータコア321を構成する軟磁性材料の領域とすることにより、ステータコア321にティース223が存在しない場合を例示する。この場合、ステータコア321の形状は、例えば、中空円柱形状である。なお、ステータコア321の内径、外径、および高さ(z軸方向の長さ)は、ステータコア221のものと同じである。また、
図3において、両矢印線の範囲が簡略化モータ300の1極を構成する部分である。
【0053】
学習データ取得部111は、簡略化モータ300に対する電磁界解析(数値解析)を行うことにより、簡略化モータ300のギャップにおける磁束密度ベクトルを算出する。学習データ取得部111は、簡略化モータ300のギャップにおける磁束密度ベクトルを算出するために必要な情報として、学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIを入力する。学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIは、当該学習用モータ200のステータ220を簡略化した簡略化モータ300のステータ320の構成を示す情報である。簡略化モータ300のステータ320の構成を示す情報には、例えば、ステータ320の構成部品の、数、位置、大きさ、形状、および材質(物性値)を、当該ステータ320の構成部品ごとに示す情報が含まれる。学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIには、ステータ320の構成そのものの情報が含まれていなくても良い。例えば、学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIには、学習用モータ200のステータ220をどのように変更するのかを示す情報が含まれていても良い。
【0054】
なお、本実施形態では、オペレータが、推定モデル作成装置110に接続された入力装置130を操作することによって、学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIを示す数値を推定モデル作成装置110に入力する場合を例示する。この場合、学習データ取得部111は、このようにして入力された数値を、簡略化ステータ情報SIとして取得する。しかしながら、前述した駆動条件情報DI等と同様に、学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIの入力形態も限定されない。
【0055】
学習データ取得部111は、例えば、学習用モータ200のモータ構成情報MIと、当該学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIと、に基づいて、簡略化モータ300の形状データを作成する。
【0056】
電磁界解析は、例えば、学習用モータ200に対する電磁界解析と同様に、マックスウェルの方程式に基づき、有限要素法などを用いることにより行われる。前述したようにこの場合、各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルが算出される(なお、有限要素法においては磁束密度ベクトルに加えて渦電流ベクトルも算出され得る)。ただし、簡略化モータ300のステータ320は、ステータコイルを備えない。したがって、学習データ取得部111は、簡略化モータ300が回転している状態での電磁界解析を行う必要はない。よって、学習データ取得部111は、例えば、学習用モータ200に対する電磁界解析時に駆動条件として用いられる、回転数、ステータ電流の振幅、および進角を0(零)として電磁界解析を行う。この場合、ロータ210が静止している状態でロータ210の永久磁石212a~212bから発生する磁束密度分布が算出される。ロータ210が回転しない場合、磁束密度分布は、時間変化しない。また、ステータ320が中空円柱形状のステータコアのみである場合、磁束密度分布は、ロータ210の本来の回転方向(周方向)における永久磁石212a~212bの位置に依存しない。したがって、学習データ取得部111は、簡略化モータ300の磁束密度ベクトルの算出を、一時刻において行えば良い。本実施形態では、計算負荷の最小化のために、学習データ取得部111が、簡略化モータ300の磁束密度ベクトルの算出を、一時刻において行う場合を例示する。ただし、簡略化モータ300の磁束密度ベクトルの算出は、例えば、一周期未満内の期間の複数の時刻において行われても良いし、一周期または一周期を上回る期間の複数の時刻において行われても良い。なお、電磁界解析における一周期は、電気角が0[rad]から2π[rad]になるまでの範囲である。
【0057】
本実施形態では、簡略化モータ300が、ステータコイルおよびティース223(スロット222)を備えない場合を例示する。また、本実施形態では、ステータ320が、簡略化モータ300の中心線(ロータ210の本来の回転軸線0)を回転対称軸とするq回対称の回転対称性の関係を有する場合を例示する(qは任意の正数)。これらのようにすれば、簡略化モータ300の磁束密度ベクトルの算出を、一時刻において行えば良い。したがって、計算負荷を大きく低減することが出来るので好ましい。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、簡略化モータのステータは、ティース223(スロット222)を備え、ステータコイルを備えていなくても良い。また、簡略化モータのステータは、ステータコイルを備え、ティース223(スロット222)を備えていなくても良い(なお、この場合には、ステータコイルはステータコアに埋め込まれる)。また、簡略化モータのステータのティースの数を、学習用モータ200のティース223の数よりも少なくすることと、1つのティース223の一部の構成をなくことと、のうちの少なくとも一方によりステータ220が簡略化されても良い。1つのティース223の一部の構成をなくことには、例えば、ティース223の先端面224においてスロット222側に出ている部分をなくすことが含まれても良い。また、例えば、ステータコイルの巻回数を減らすことにより、ステータコイルが簡略化されても良い。また、ステータコイルおよびティース223(スロット222)の全部または一部の構成をなくすことに加えてまたは代えて、ステータコイルおよびティース223(スロット222)の全部または一部の構成を変更することにより、ステータ220が簡略化されても良い。例えば、モータ断面において、ステータコイルおよびティース223のうちの少なくとも一方の輪郭線を直線または一定の曲率の曲線に近似することにより、ステータ220が簡略化されても良い。なお、このようにする場合、例えば、微小領域(メッシュ)を粗くすることにより計算負荷の低減を図ることが出来る。
【0058】
また、モータ(例えばIPMSM200)の構成部品のうち、ステータ220以外の構成部品が簡略化されても良い。ただし、モータの構成部品のうち、ステータ220以外の構成部品が簡略化される場合よりも、ステータ220が簡略化される場合の方が、簡略化前のモータの磁束密度分布に対する簡略化後のモータの磁束密度分布の変化の度合いが大きくなるように、簡略化が行われるのが好ましい。例えば、簡略化される構成部品のうち、ステータ220のみが簡略化される場合の方が、簡略化される構成部品のうち、ステータ220以外の全ての構成部品が簡略化される場合よりも、簡略化前のモータの磁束密度分布に対する簡略化後の回転電機の磁束密度分布の変化の度合いが大きくなるように、簡略化が行われても良い。また、簡略化される構成部品のうち、ステータ220のみが簡略化される場合の方が、簡略化される構成部品のうち、ステータ220以外の任意の1つまたは複数の構成部品が簡略化される場合よりも、簡略化前のモータの磁束密度分布に対する簡略化後のモータの磁束密度分布の変化の度合いが大きくなるように、簡略化が行われても良い。
【0059】
また、ステータ220の簡略化によって、磁束密度分布の回転対称性を利用することなどにより、一周期分の電磁界解析を行わなくても簡略化モータの一周期分の磁束密度分布が算出される場合、学習データ取得部111は、一周期未満内の期間の複数の時刻において、簡略化モータ300の磁束密度分布を算出しても良い。
【0060】
また、ステータ220の簡略化によりロータ210が回転しない場合であって、ロータ210の本来の回転方向における永久磁石212a~212bの位置によって、簡略化モータの磁束密度分布が変わる場合、学習データ取得部111は、その位置においてのみ、簡略化モータの磁束密度分布を算出しても良い。
【0061】
また、簡略化前のモータに対して電磁界解析を行う際の時間ステップよりも時間ステップを長くしても、磁束密度分布の回転対称性を利用することなどにより、簡略化モータの一周期分の磁束密度分布を、簡略化前のモータに対して電磁界解析を行う場合と同程度の精度で算出することが出来る場合、学習データ取得部111は、当該長くした時間ステップの各時刻において、簡略化モータの磁束密度分布を算出しても良い。以上のように磁束密度分布の回転対称性を利用する場合には、例えば、簡略化モータのステータが、簡略化モータの中心線(ロータ210の本来の回転軸線0)を回転対称軸とするn回対称の回転対称性の関係を有するのが好ましい(前述したようにnは、ロータ210の極数である)。
【0062】
以上のように、簡略化モータ300のステータ320は、ステータコイルを備えていなくても良い。この場合、簡略化モータ300の磁束密度ベクトルとして、簡略化モータ300が運転されていない状態(すなわちロータ210が回転しない状態)での磁束密度ベクトルが算出される。また、簡略化モータ300のステータは、ステータコイルを備えても良い。この場合、簡略化モータ300の磁束密度ベクトルとして、簡略化モータ300が運転されている状態(すなわちロータ210が回転している状態)での磁束密度ベクトルが算出される。以上のように、簡略化モータ300の磁束密度ベクトルを算出する際に、簡略化モータ300の運転の有無は問わない。少なくともロータの磁極(例えば、永久磁石212a~212b)から磁束が発生している状態での磁束密度分布が、簡略化モータ300のギャップにおける磁束密度分布として取得されれば良い。
【0063】
本実施形態では、学習データ取得部111が、以上のような簡略化モータ300のギャップにおける磁束密度ベクトルに基づいて、第1説明変数データを算出する場合を例示する。
図4は、説明変数に含める複数の磁束密度により構成される磁束密度分布の一例を説明する図である。なお、
図4において、r、θは、それぞれ、極座標(円座標)における動径、偏角を表す。また、
図4では、表記が複雑になることを避けるため、断面であることを示すハッチングを省略する。
【0064】
図4では、モータ断面での回転軸線0の位置が、極座標およびx-y-z座標の原点0である場合を例示する。また、原点0から外側に向かう方向が動径方向(モータの半径方向)の正の方向であるものとする(以下の説明では、モータの半径方向を、必要に応じて半径方向と略称する)。また、紙面に向かって反時計回りの方向が偏角の正の方向であるものとする。なお、外側とは、ロータコア211の外周面214が存在する側である。また、前述したように本実施形態では、電磁界解析として、モータ断面における二次元解析が行われる場合を例示する。電磁界解析として、モータ断面の方向(x軸方向およびy軸方向)および高さ方向(z軸方向)における解析(三次元解析)が行われる場合、極座標として、例えば、円筒座標が使用される。
【0065】
図4において、本実施形態では、説明変数に含まれる複数の磁束密度により構成される磁束密度分布が、ギャップ中心領域410の磁束密度分布である場合を例示する。ギャップ中心領域410は、ギャップGの中心を通り、且つ、ロータ210の本来の回転方向に沿う領域である。ギャップGの中心の位置は、ロータ210(ロータコア211)の外周面214(対向面)からの距離と、ステータ320(ステータコア321)の内周面322(対向面)からの距離と、が同じである位置である。本実施形態では、ギャップ中心領域410における磁束密度分布が、ロータ210の周方向に沿った複数の位置のそれぞれにおける磁束密度の集合の一例である。前述したように本実施形態では、電磁界解析として、モータ断面における二次元解析が行われる場合を例示する。したがって、ギャップ中心領域410の形状は、例えば、円または円弧である。また、ギャップ中心領域410は、ロータ210の本来の回転方向に沿った曲線領域である。なお、電磁界解析として、モータ断面の方向(x軸方向およびy軸方向)および高さ方向(z軸方向)における解析(三次元解析)が行われる場合、ギャップ中心領域410の形状は、例えば、直円柱の側面、または、底面が扇形の直柱の側面の形状である。また、この場合、ギャップ中心領域410は、ロータ210の本来の回転方向に沿った曲面領域である。
【0066】
図4に示すようにギャップ中心領域410における磁束密度分布を構成する複数の磁束密度のデータが説明変数に含まれる場合、学習データ取得部111は、ギャップ中心領域410の各位置iの磁束密度ベクトルB
iに基づいて、第1説明変数データを算出する。ギャップ中心領域410の各位置iの動径r
gc(原点0からの動径方向の距離)は、位置iによらず変わらない。一方、ギャップ中心領域410の各位置iの偏角θ
iは、位置iによって変わる。ギャップ中心領域410の各位置iは、電磁界解析において離散化計算が行われる位置に対応して定められる。電磁界解析の手法として有限要素法が用いられる場合、例えば、ギャップ中心領域410を含む各微小領域に対し1つずつ位置iが定められる。本実施形態では、原点0からの動径方向の距離がr
gcの位置が、ギャップの半径方向における規定位置である場合を例示する。
【0067】
なお、
図4では表記の都合上、ギャップ中心領域410の各位置の符号であるiを1つだけ示す。本実施形態では、学習データ取得部111は、ギャップ中心領域410の各位置iの磁束密度ベクトルB
iのr方向成分(半径方向成分)B
irおよびθ方向成分(周方向成分)B
iθが、第1説明変数データに含まれる場合を例示する。
図4では、白抜き矢印線の先に示す四角形の領域に、
図4に示す位置i付近を拡大して、磁束密度ベクトルB
iのr方向成分B
irおよびθ方向成分B
iθを図示する。本実施形態では、磁束密度ベクトルB
iのr方向成分B
irおよびθ方向成分B
iθが、磁束密度ベクトルの成分値の一例である。なお、直交座標系で磁束密度ベクトルの方向成分を分解する場合、磁束密度ベクトルB
iのr方向成分B
irおよびθ方向成分B
iθに代えて、磁束密度ベクトルB
iのx軸方向成分およびy軸方向成分が、第1説明変数データに含まれていても良い。
【0068】
なお、ギャップ中心領域410に加えまたは代えて、ギャップGの中心以外のギャップG内の位置を通る1つまたは複数の領域であって、ロータ210の本来の回転方向に沿った1つまたは複数の領域における磁束密度分布が、説明変数に含まれる複数の磁束密度のデータを構成する磁束密度分布として含まれていても良い。例えば、ロータ210(ロータコア211)の外周面214(対向面)の位置においてロータ210の本来の回転方向に沿った領域における磁束密度分布が、説明変数に含まれる複数の磁束密度のデータを構成する磁束密度分布として含まれていても良い。また、ギャップGの領域のうち、空隙部(空気の領域)のみにおいて、ロータ210の本来の回転方向に沿った領域における磁束密度分布が、説明変数に含まれる磁束密度のデータを構成する磁束密度分布として含まれていても良い。なお、ギャップGの領域に含まれる空隙部は、例えば、ギャップGの領域のうち、ロータ210(ロータコア211)の外周面214(対向面)の領域以外の領域と、ステータ320(ステータコア321)の内周面322(対向面)の領域以外の領域と、からなる。
【0069】
以上のように本実施形態では、簡略化モータ300のギャップ中心領域410の各位置iにおける磁束密度ベクトルBiのr方向成分Birおよびθ方向成分Biθが、第1説明変数データに含まれる場合を例示する。
【0070】
図5は、第1説明変数データ500の一例を概念的に示す図である。
図5では、ギャップ中心領域410の位置iの数がN個(i=1~N)である場合を例示する。例えば、B
r1、B
θ1は、ギャップ中心領域410の位置i(=1)の磁束密度ベクトルB
1のr方向成分、θ方向成分であることを示す。
図5では、第1説明変数データ500に含まれる各データが一次元配列で格納される場合を例示する。ただし、第1説明変数データ500に含まれる各データは二次元以上の多次元配列で格納されても良い。以下の説明では、磁束密度ベクトルのr方向成分およびθ方向成分を、必要に応じて、磁束密度ベクトルの方向成分と総称する。なお、前述したように、例えば、ギャップG内の半径方向における複数の位置のそれぞれにおいて、ロータ210の本来の回転方向に沿うように定められる複数の領域における磁束密度分布が、説明変数に含まれる複数の磁束密度のデータを構成する磁束密度分布として含まれても良い。この場合においても、第1説明変数データ500に含まれる各データは、一次元配列で格納されても良いし、多次元配列で格納されても良い。
【0071】
また、本実施形態では、第1説明変数データ500に含まれる磁束密度ベクトルの方向成分Bir、Biθの値が、磁束密度の単位(例えば、SI単位系ではテスラ、CGS単位系ではガウス)で表される場合を例示する。ただし、第1説明変数データ500に含まれる磁束密度ベクトルの方向成分Bir、Biθの値は、磁束密度の単位に換算可能な値でも良い。例えば、第1説明変数データ500に含まれる磁束密度ベクトルの方向成分Bir、Biθの値は正規化された値でも良い。この場合、第1説明変数データ500に含まれる磁束密度ベクトルの方向成分Bir、Biθは、無次元量である。なお、本実施形態では、第1説明変数データ500は、画像データではないので、第1説明変数データ500に含まれる磁束密度ベクトルの方向成分Bir、Biθの値は、画素の値(例えば、8ビット画像における0~255の整数値)ではないものとする。
【0072】
第1説明変数データ500に含まれる磁束密度のデータは、磁束密度ベクトルBiの方向成分Bir、Biθのデータに限定されない。第1説明変数データ500に含まれる磁束密度のデータは、例えば、磁束密度の空間高調波の位相および振幅であっても良い。磁束密度の空間高調波の位相および振幅の値は、磁束密度の方向成分(例えば、r方向成分およびθ方向成分)のそれぞれにおいて算出されるのが好ましい。なお、空間高調波の次数m(mの値)は限定されない。また、空間高調波の次数mの数も限定されない。また、第1説明変数データ500に含まれる磁束密度のデータは、磁束密度ベクトルBi自体でも良いし、磁束密度ベクトルBiの絶対値でも良い。また、第1説明変数データ500に含まれる磁束密度のデータは、非特許文献1に記載のように簡略化モータ300全体の磁束密度分布を表す画像データ(各画素値が磁束密度に対応するデータ)に基づくデータでも良い。この場合、学習データ取得部111は、ギャップ中心領域410の位置など、説明変数に含める複数の磁束密度のデータのそれぞれの位置(画素)の画素データを抽出し、当該画素データに基づく磁束密度のデータを第1説明変数データ500に含めても良い。
【0073】
学習データ取得部111は、以上のようにして、s個の学習用モータ200のステータ220を簡略化したs個の簡略化モータ300のそれぞれについて第1説明変数データ500を算出する。また、推定モデルを、駆動条件ごとに作成する場合、学習データ取得部111は、複数の駆動条件のそれぞれにおいて、s個の簡略化モータ300のそれぞれについての第1説明変数データ500を算出する。なお、本実施形態では、簡略化モータ300の第1説明変数データ500が、駆動条件によって変わらない場合を例示する。よって、1つの駆動条件におけるs個の簡略化モータ300の第1説明変数データ500を、全ての駆動条件におけるs個の簡略化モータ300の第1説明変数データ500としても良い。この場合、駆動条件ごとの第1説明変数データ500の算出は不要になる。ただし、簡略化モータ300の第1説明変数データ500は、駆動条件によって変わっても良い。また、推定モデルを前述のロータ固定属性ごとに作成する場合、学習データ取得部111は、ロータ固定属性ごとに、s個の簡略化モータ300のそれぞれについての第1説明変数データ500を算出する。以上のように、本実施形態では、ロータ固定属性ごと、駆動条件ごと、および学習用モータごとに、第1説明変数データ500が算出される場合を例示する。
【0074】
<<<学習データの作成>>>
<<<第1目的変数データの算出>>>の項および<<<第1説明変数データの算出>>>の項で前述したように、本実施形態では、第1目的変数データ(モータ評価指標)および第1説明変数データ500が、それぞれ、ロータ固定属性ごと、駆動条件ごと、および学習用モータごとに算出される場合を例示する。そこで、学習データ取得部111は、第1目的変数データ(モータ評価指標)および第1説明変数データ500のうち、ロータ固定属性、駆動条件、および学習用モータが同一の第1目的変数データおよび第1説明変数データ500を相互に関連付けて1つの学習データとする。
図6は、学習データ群600の一例を概念的に示す図である。
図6において、「***」は、情報(数値など)が格納されていることを示す。また、縦に並ぶ「・・・」は、その上下に示す欄と同様の欄が存在することを示す。
【0075】
<<<第1目的変数データの算出>>>の項および<<<第1説明変数データの算出>>>の項で前述したように、
図6において、1つのロータ固定属性に対して複数の駆動条件がある場合、当該複数の駆動条件のそれぞれについて、s個の学習用モータ200が用いられる。また、この場合、当該s個の学習用モータ200について、第1目的変数データ(モータ評価指標)および第1説明変数データ500が算出される。
【0076】
本実施形態では、ロータ固定属性および駆動条件が同一の複数の学習データ610a、610b、610cまたは610dを用いて、1つの推定モデルが算出される場合を例示する(
図6において太線で囲む部分が学習データ群である)。なお、ロータ固定属性および駆動条件のうちの少なくとも一方は1つであっても良い。
【0077】
図1では、以上のようにして学習データ取得部111により取得される学習データの符号をLDと表記する。以下の説明において、学習データ取得部111により取得される学習データの符号として、必要に応じてLDを用いる。
【0078】
<<作成部112>>>
作成部112は、ギャップにおける磁束密度を説明変数として含み、モータ評価指標を目的変数として含む推定モデルを作成する。本実施形態では、作成部112が、学習データ取得部111により取得された学習データ610a~610dを用いた教師あり学習を機械学習の一例として行うことにより推定モデルを作成する場合を例示する。また、本実施形態では、ロータ固定属性ごとおよび駆動条件ごとに、推定モデルが作成される場合を例示する。
【0079】
作成部112が推定モデルを作成する手法は、限定されない。作成部112は、例えば、サポートベクター回帰、重回帰分析、ニューラルネットワーク、およびディープラーニング等、各種の機械学習の手法で推定モデルを作成すれば良い。推定モデルを作成する手法自体は公知の技術で実現することが出来るので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0080】
作成部112は、学習条件情報LIを入力する。学習条件情報LIは、推定モデルの学習を行うために事前に設定することが必要な情報である。学習条件情報LIには、例えば、学習率などのハイパーパラメータが含まれる。なお、本実施形態では、オペレータが、推定モデル作成装置110に接続された入力装置130を操作することによって、学習条件情報LIを示す数値を推定モデル作成装置110に入力する場合を例示する。この場合、作成部112は、このようにして入力された数値を、学習条件情報LIとして取得する。しかしながら、<<<第1目的変数データの算出>>>の項および<<<第1説明変数データの算出>>>の項で前述した駆動条件情報DI、モータ構成情報MI、解析条件情報AI、および簡略化ステータ情報SIと同様に、学習条件情報LIの入力形態も限定されない。
【0081】
<<記憶部113>>>
記憶部113は、推定モデル情報をEI記憶する。推定モデル情報EIは、推定モデルの内容を示す情報である。例えば、推定モデル情報EIには、目的変数を算出するために必要な情報のうち、説明変数の具体的な値以外の情報(例えば、説明変数と目的変数との関係式)が含まれる。
【0082】
本実施形態では、ロータ固定属性ごとおよび駆動条件ごとに、推定モデルが作成される場合を例示する。したがって、記憶部113は、推定モデル情報EIが、どのロータ固定属性の、どの駆動条件における推定モデルであるのかを特定するための情報(例えば、ロータ固定属性の識別情報および駆動条件の識別情報)を、当該推定モデル情報に関連付けて記憶するのが好ましい。
【0083】
<<出力部114>>
出力部114は、記憶部113に記憶されている推定モデル情報EIを出力する。推定モデル情報EIの出力形態は限定されない。例えば、出力部114は、推定モデル情報EIを、推定装置120に送信しても良い。この場合、推定モデル作成装置110および推定装置120の通信は、無線通信で行われても良いし、有線通信で行われても良い。また、推定モデル作成装置110および推定装置120の通信は、ネットワークを介して行われても良い。また、出力部114は、推定装置120以外の外部装置または記憶媒体に推定モデル情報EIを出力しても良い。このようにする場合、推定モデル情報EIは、当該外部装置または記憶媒体から推定装置120に入力される。また、出力部114は、推定装置120からの要求に応じて、推定モデル情報EIを出力しても良いし、自発的に推定モデル情報EIを出力しても良い。自発的に推定モデル情報EIを出力する場合、例えば、出力部114は、推定モデル情報EIが記憶部113により新たに記憶されるたびに当該推定モデル情報EIを出力しても良い。また、出力部114は、推定モデル情報EIが、どのロータ固定属性の、どの駆動条件における推定モデルであるのかを特定するための情報(例えば、ロータ固定属性および駆動条件の識別情報)を出力するのが好ましい。
【0084】
次に、推定装置120が有する機能の一例を詳細に説明する。
<推定装置120>
<<説明変数取得部121>>
説明変数取得部121は、第2説明変数データEDを取得する。第2説明変数データEDの内容(データ項目)は、<<学習データ取得部111>>の項で説明した第1説明変数データと同じ内容になる。
図5に例示したように、第1説明変数データ500が磁束密度ベクトルの方向成分B
ir、B
iθを含む場合、第2説明変数データEDも磁束密度ベクトルの方向成分B
ir、B
iθを含む。<<学習データ取得部111>>の項で前述した第1説明変数データ500と同様に、第2説明変数データEDに含まれるギャップにおける磁束密度のデータは、例えば、測定値であっても良い。しかしながら、様々なモータを作製して測定を行うよりも、有限要素法などの数値解析を行う方が効率的である。
【0085】
そこで、本実施形態では、説明変数取得部121が、第2説明変数データEDを算出することにより取得する場合を例示する。第2説明変数データEDを算出する手法は、例えば、第1説明変数データ500を算出する手法と同じ手法で良い。ただし、第2説明変数データEDを算出する際には、説明変数取得部121は、モータ構成情報MIとして、学習用モータ200ではなく、推定用モータの構成を示す情報を入力する。推定用モータのモータ構成情報MIは、推定用モータの構成を示す情報である。
【0086】
また、説明変数取得部121は、推定用モータに対する簡略化ステータ情報SIを入力する。推定用モータに対する簡略化ステータ情報SIは、推定用モータのステータを簡略化した簡略化モータのステータの構成を示す情報である。当該簡略化モータのステータの構成を示す情報には、例えば、当該ステータの構成部品の、数、位置、大きさ、形状、および材質(物性値)を、当該ステータの構成部品ごとに示す情報が含まれる。推定用モータに対する簡略化ステータ情報SIも、学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIと同様に、ステータの構成そのものの情報でなくても良い。例えば、推定用モータに対する簡略化ステータ情報SIには、推定用モータのステータをどのように変更するのかを示す情報が含まれていても良い。
【0087】
推定用モータのステータの簡略化の具体例は、変形例を含め、<<<第1説明変数データの算出>>>の項で前述した学習用モータ200のステータ220の簡略化の具体例と同じであるので、ここではその詳細な説明を省略する。例えば、推定用モータが
図2に示すIPMSM200である場合、推定用モータのステータを簡略化した簡略化モータは、例えば、
図3に示す簡略化モータ300になる。
【0088】
説明変数取得部121は、推定用モータのモータ構成情報MIと、当該推定用モータに対する簡略化ステータ情報SIと、に基づいて、電磁界解析を行う簡略化モータの形状データを作成する。
【0089】
また、説明変数取得部121は、推定用モータの駆動条件情報DIを入力する。そして、説明変数取得部121は、例えば、推定用モータのステータを簡略化した簡略化モータのギャップにおける磁束密度のデータを算出する。例えば、推定用モータが
図2に示すIPMSM200である場合、例えば、
図4に示すギャップ中心領域410の各位置iの磁束密度ベクトルB
iの方向成分B
ir、B
iθが算出される。その他、説明変数に含める複数の磁束密度のデータのそれぞれの位置の具体例は、変形例を含め<<<第1説明変数データの算出>>>の項で前述した説明変数に含める複数の磁束密度のデータのそれぞれの位置の具体例と同じであるので、ここではその詳細な説明を省略する。また、学習データ取得部111が簡略化モータ300の磁束密度ベクトルを算出する場合と同様に、説明変数取得部121は、簡略化モータの磁束密度ベクトルの算出を少なくとも一時刻において行えば良い。本実施形態では、学習データ取得部111と同様に説明変数取得部121が、簡略化モータの磁束密度ベクトルの算出を、一時刻において行う場合を例示する。磁束密度ベクトルの算出方法の具体例は、変形例を含め<<<第1説明変数データの算出>>>の項で前述した磁束密度ベクトルの算出方法の具体例と同じであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0090】
なお、本実施形態では、オペレータが、推定装置120に接続された入力装置140を操作することによって、モータ構成情報MI、駆動条件情報DI、解析条件情報AI、および簡略化ステータ情報SIを示す数値を推定装置120に入力する場合を例示する。この場合、説明変数取得部121は、このようにして入力された数値を、モータ構成情報MI、駆動条件情報DI、解析条件情報AI、および簡略化ステータ情報SIとして取得する。しかしながら、これらの情報の入力形態は限定されない。例えば、説明変数取得部121は、外部装置からこれらの情報を受信しても良いし、記憶媒体からこれらの情報を読み出しても良い。
【0091】
<<評価指標算出部122>>
評価指標算出部122は、推定モデル作成装置110で作成された推定モデルと、説明変数取得部121で取得された第2説明変数データEDと、に基づいて、推定用モータのモータ評価指標を算出する。<<作成部112>>>の項で前述したように、本実施形態では、ロータ固定属性ごとおよび駆動条件ごとに、推定モデルが作成される場合を例示する。そこで、本実施形態では、評価指標算出部122は、例えば、推定用モータのモータ構成情報MIに基づいて、ロータ固定属性(例えば、ロータの外径、内径、および極数)を特定すると共に、推定用モータの駆動条件情報DIに基づいて、推定用モータの駆動条件を特定する。そして、評価指標算出部122は、特定したロータ固定属性および駆動条件に対応する推定モデルの推定モデル情報EIを、推定モデル作成装置110(出力部114)から入力する。評価指標算出部122は、当該推定モデルに第2説明変数データEDを与えることにより、当該推定モデルにおける目的変数(第2目的変数データ)としてのモータ評価指標を算出する。なお、ロータ固定属性および駆動条件のうちの少なくとも一方が複数ある場合、評価指標算出部122は、それぞれの場合についてのモータ評価指標を、回転電機の評価指標の推定値の一例として算出する。
【0092】
なお、本実施形態では、オペレータが、推定装置120に接続された入力装置140を操作することによって、モータ構成情報MIおよび駆動条件情報DIを示す数値を推定装置120に入力する場合を例示する。この場合、評価指標算出部122は、このようにして入力された数値を、モータ構成情報MIおよび駆動条件情報DIとして取得する。しかしながら、これらの情報の入力形態は限定されない。例えば、評価指標算出部122は、外部装置からこれらの情報を受信しても良いし、記憶媒体からこれらの情報を読み出しても良い。
【0093】
<<出力部123>>
出力部123は、評価指標情報IIを出力する。評価指標情報IIは、評価指標算出部122により算出された第2目的変数データ(推定用モータのモータ評価指標)を示す情報である。本実施形態では、出力部123が、評価指標情報IIを、推定装置120に接続された出力装置150が備えるコンピュータディスプレイに表示させる場合を例示する。しかしながら、評価指標情報IIの出力形態は、コンピュータディスプレイへの表示に限定されない。例えば、出力部123は、コンピュータディスプレイへの表示に加えてまたは代えて、外部装置への送信と、推定装置120の内部または外部の記憶媒体への記憶と、のうちの少なくとも一方を行っても良い。
【0094】
<フローチャート>
図7は、推定モデル作成装置110を用いることにより行われる推定モデル作成方法の一例を説明するフローチャートである。
図8は、推定装置120を用いることにより行われる推定方法の一例を説明するフローチャートである。
図7および
図8では、説明を簡単にするため、ロータ固定属性が1つである場合を例示する。
【0095】
<<推定モデル作成方法>>
まず、
図7のフローチャートを参照しながら、本実施形態の推定モデル作成方法の一例を説明する。
ステップS701において、学習データ取得部111は、学習用モータ200のモータ構成情報MIと、学習用モータ200の駆動条件情報DIと、解析条件情報AIと、学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIと、を入力する。また、作成部112は、学習条件情報LIを入力する。なお、駆動条件情報DIは1以上の駆動条件を示す情報を含んでいれば良い。また、簡略化ステータ情報SIはなくても良く、この場合には後述のステップS706の処理は省略されても良い。
【0096】
次に、ステップS702において、学習データ取得部111は、学習用モータ200の駆動条件情報DIにより特定される学習用モータ200の駆動条件を1つ選択する。なお、学習用モータ200の駆動条件情報DIにより特定される学習用モータ200の駆動条件が1つである場合、ステップS702および後述するステップS711の処理は省略されても良い。
【0097】
次に、ステップS703において、学習データ取得部111は、学習用モータ200のモータ構成情報MIにより構成が特定される学習用モータ200の形状データを1つ作成する。
【0098】
次に、ステップS704において、学習データ取得部111は、ステップS702で選択した駆動条件で学習用モータ200を駆動(回転)させた場合の学習用モータ200の各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを一周期分算出する。なお、学習用モータ200の形状は、ステップS703で作成された形状データに基づいて特定される。そして、学習データ取得部111は、このようにして算出した磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルのうちの少なくとも一方に基づいて、第1目的変数データとしてのモータ評価指標を算出する。
【0099】
次に、ステップS705において、学習データ取得部111は、ステップS704で算出したモータ評価指標を、当該モータ評価指標を算出した際の駆動条件に関連付けて記憶する。つまり、ステップS703~S705においては、簡略化されていないモータに対して電磁界解析が行われることにより、ステップS702で選択された駆動条件に応じたモータ評価指標が算出される。
【0100】
次に、ステップS706において、学習データ取得部111は、学習用モータ200に対する簡略化ステータ情報SIに基づいて、当該学習用モータ200のステータ220を簡略化した簡略化モータ300の形状データを作成する。なお、当該学習用モータ200は、ステップS703における形状データの作成対象の学習用モータ200である。
【0101】
次に、ステップS707において、学習データ取得部111は、簡略化モータ300の各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルを一時刻において算出する。なお、簡略化モータ300の形状は、ステップS706で作成された形状データに基づいて特定される。そして、学習データ取得部111は、このようにして算出した一時刻での各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルに基づいて、第1説明変数データ500(例えば、ギャップ中心領域410の各位置iの磁束密度ベクトルの方向成分Bir、Biθ)を算出する。つまり、ステップS706~S708においては、ステータ220が簡略化された簡略化モータ300に対して電磁界解析が行われことにより、ギャップにおける磁束密度分布が算出される。
【0102】
次に、ステップS708において、学習データ取得部111は、ステップS707で算出した第1説明変数データ500を、ステップS705で記憶した第1目的変数データ(モータ評価指標)に関連付けて記憶する。このようにして相互に関連付けられた第1説明変数データ500および第1目的変数データ(モータ評価指標)の組が1つの学習データLDになる。すなわち、前述した通り、ステータ220が簡略化されたモータ(例えば簡略化モータ300)に対して算出されたギャップにおける磁束密度分布と、ステータ220が簡略化されていないモータ(例えば学習用モータ200)に対して算出された磁束密度分布と、には相関がある。また、評価対象のモータのギャップにおける磁束密度分布の計算は、ステータが簡略化されていないモータに対して行われる場合よりも、ステータが簡略化されたモータに対して行われる場合の方が短時間で終了する。よって、本実施形態では、ステータが簡略化されたモータに対して算出されたギャップにおける磁束密度分布と、ステータが簡略化されていないモータに対して算出されたモータ評価指標と、を相互に関連付けることで、学習データを作成する場合を例示する。
【0103】
次に、ステップS709において、学習データ取得部111は、学習用モータ200のモータ構成情報MIにより構成が特定される全ての学習用モータ200の形状データを作成したか否かを判定する。この判定の結果、全ての学習用モータ200の形状データを作成していない場合(ステップS709でNOの場合)、ステップS703の処理が再び行われる。そして、ステップS703において、未作成の学習用モータ200の形状データが1つ作成され、当該学習用モータ200に対するステップS704~S708の処理が再び行われる。
【0104】
そして、ステップS709において、全ての学習用モータ200の形状データを作成したと判定されると(ステップS709でYESの場合)、ステップS710の処理が行われる。ステップS710の処理が開始される時点で、駆動条件ごとおよび学習用モータごとに、s個の学習データが作成される(
図6を参照)。なお、前述したように本フローチャートでは、ロータ固定属性が1つである場合を例示するので、s個の学習データは、ロータ固定属性ごとには作成されない。
【0105】
ステップS710において、作成部112は、駆動条件が同一のs個の学習データ(例えば、
図6に示す複数の学習データ610a)を用いて、当該駆動条件の推定モデルを作成する。そして、記憶部113は、作成部112で作成された推定モデルの推定モデル情報EIを記憶する。
【0106】
次に、ステップS711において、推定モデル作成装置110は、学習用モータ200の駆動条件情報DIにより特定される全ての駆動条件を選択したか否かを判定する。この判定の結果、全ての駆動条件を選択していない場合(ステップS711でNOの場合)、ステップS702の処理が再び行われる。そして、ステップS702において、未選択の駆動条件が選択され、当該駆動条件に対するステップS703~S710の処理が再び行われる。
そして、ステップS711において、全ての駆動条件が選択されたと判定されると、
図7のフローチャートによる処理は終了する。これにより、1つのロータ固定属性における駆動条件ごとの推定モデルが作成される。ロータ固定属性ごとに推定モデルを作成する場合、例えば、ステップS702~S711の処理を、各ロータ固定属性について繰り返し行えば良い。
【0107】
<<推定方法>>
次に、
図8のフローチャートを参照しながら、本実施形態の推定方法の一例を説明する。
図8では、説明を簡単にするため、推定用モータの駆動条件が1つである場合を例示する。
まず、ステップS801において、説明変数取得部121は、推定用モータのモータ構成情報MIと、解析条件情報AIと、推定用モータに対する簡略化ステータ情報SIと、を入力する。また、評価指標算出部122は、推定用モータのモータ構成情報MIと、推定用モータの駆動条件情報DIと、を入力する。
【0108】
次に、ステップS802において、説明変数取得部121は、推定用モータのモータ構成情報MIにより構成が特定される推定用モータの形状データを作成する。そして、説明変数取得部121は、推定用モータに対する簡略化ステータ情報SIに基づいて、当該推定用モータのステータを簡略化した簡略化モータの形状データを作成する。
【0109】
次に、ステップS803において、説明変数取得部121は、推定用モータのステータを簡略化した簡略化モータの各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルを一時刻において算出する。なお、当該簡略化モータの形状は、ステップS802で作成した形状データに基づいて特定される。そして、説明変数取得部121は、このようにして算出した一時刻での各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルに基づいて、第2説明変数データED(例えば、ギャップ中心領域の各位置iの磁束密度ベクトルの方向成分)を算出する。
【0110】
次に、ステップS804において、評価指標算出部122は、推定用モータの駆動条件情報DIにより特定される駆動条件に対応する推定モデルの推定モデル情報EIを、推定モデル作成装置110(出力部114)から入力する。この際、評価指標算出部122は、当該駆動条件を示す情報を含めて、推定モデル情報EIの取得を推定モデル作成装置110に要求しても良い。この場合、推定モデル作成装置110の出力部114は、要求に含まれる情報に示される駆動条件の推定モデル情報EIを記憶部113から入力して推定装置120(評価指標算出部122)に出力しても良い。なお、
図7のフローチャートにおいて、ロータ固定属性ごとに推定モデルが作成されている場合、例えば、評価指標算出部122は、推定用モータのモータ構成情報MIに基づいて、推定用モータのロータ固定属性を特定し、特定したロータ固定属性の推定モデル情報EIを、推定モデル作成装置110(出力部114)から入力すれば良い。
【0111】
次に、ステップS805において、評価指標算出部122は、ステップS804で入力した推定モデル情報EIにより得られる推定モデルに、ステップS803で算出した第2説明変数データEDを与えることにより、当該推定モデルにおける目的変数を示す第2目的変数データ(モータ評価指標)を算出する。
【0112】
次に、ステップS806において、出力部123は、ステップS805で算出された第2目的変数データ(モータ評価指標)を示す評価指標情報IIを出力する。ステップS806の処理が終了すると、
図8のフローチャートによる処理は終了する。
【0113】
図8のフローチャートを繰り返すことにより、複数の推定用モータのそれぞれにおける第2目的変数データ(モータ評価指標)が算出されても良い。この場合、例えば、推定用モータのモータ構成情報MIのうち、ステータ220以外の少なくとも1つの構成部品(例えば、ロータコアおよびロータの磁極(例えば永久磁石))の情報が変更されても良い。具体的には、例えば、ロータコアに形成されるフラックスバリアの数、位置、形状、大きさ、および物性値のうちの少なくとも1つが変更されても良い。また、ロータの外径が変更されても良い(なお、この場合、ギャップの大きさも変更される)。また、ロータの磁極の数、位置、大きさ、および物性値のうちの少なくとも1つが変更されても良い。以下の説明では、ステータ220以外の少なくとも1つの構成部品を、必要に応じて設計対象部品と称する。
【0114】
以上のようにして算出された複数の推定用モータのそれぞれにおける第2目的変数データ(モータ評価指標)に基づいて、設計対象部品を製造しても良い。また、当該設計対象部品を備える回転電機を製造しても良い。
【0115】
例えば、推定装置120の出力部123は、複数の推定用モータのそれぞれにおける第2目的変数データ(モータ評価指標)のうち、所定の条件を満たす第2目的変数データの算出の際に用いられたモータ構成情報MIに含まれる設計対象部品の構成を示す情報を出力しても良い。所定の条件は、例えば、最も評価が高いことを示す値を有する第2目的変数データ(モータ評価指標)であることでも良い。また、所定の条件は、例えば、評価が1番目~u番目(uは2以上の整数)に高いu個の第2目的変数データ(モータ評価指標)であることでも良い。この場合、設計対象部品の構成を示す情報として、複数組の情報が出力される。
【0116】
また、第2目的変数データ(モータ評価指標)が複数種類の目的変数を含む場合(例えば、トルクおよび鉄損を含む場合)、複数種類の目的変数の値を総合的に考慮することにより、最も評価が高いことを示す値を有する第2目的変数データ(モータ評価指標)が選択されても良い。この場合、所定の条件は、例えば、複数種類の目的変数の値の加重平均値が最大または最小になる第2目的変数データ(モータ評価指標)であることでも良い。なお、加重平均は、重み付き平均とも称される。
【0117】
また、第2目的変数データ(モータ評価指標)が複数種類の目的変数を含む場合(例えば、トルクおよび鉄損を含む場合)、最も評価が高いことを示す値を有する第2目的変数データ(モータ評価指標)は、目的変数の種類ごとに選択されても良い。この場合、設計対象部品の構成を示す情報として、複数組の情報が出力される。
【0118】
そして、出力部123により出力された設計対象部品の情報に基づいて設計対象部品を製造しても良い。
出力部123により出力された設計対象部品の情報が1組である場合、当該設計対象部品の情報により示される構成を備える設計対象部品を製造しても良い。
【0119】
出力部123により出力された設計対象部品の情報が複数組である場合、複数組の情報のうちの1組の情報により示される構成を有する設計対象部品を製造しても良い。例えば、第2目的変数データ(モータ評価指標)による評価の高さと、製造のし易さと、製造コストの低さと、を総合的に考慮することにより、複数組の情報のうちの1組の情報を、オペレータ(例えば設計者)が選択しても良い。なお、この選択は、例えば、推定装置120によって行われても良い。この場合、例えば、推定装置120は、第2目的変数データ(モータ評価指標)による評価の高さと、製造のし易さと、製造コストの低さと、のそれぞれを指標化した指標値を算出することと、当該指標値の加重平均値を算出することと、当該加重平均値に基づいて、複数組の情報のうちの1組の情報を選択することと、を行っても良い。
そして、以上のようにして選択された計対象部品の情報により示される構成を備える設計対象部品を製造しても良い。
【0120】
また、設計対象部品の情報により示される構成に対して、製造のし易さなどの観点から、変更が加えられても良い。
そして、以上のようにして製造される設計対象部品を備える回転電機を製造しても良い。
なお、設計対象部品および回転電機の製造方法自体は公知の技術で実現されるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0121】
前述したように、本実施形態の適用対象の回転電機は限定されない。しかしながら、本実施形態の適用対象の回転電機は、永久磁石を有するロータを備える回転電機であるのが好ましい。例えば、ロータコアと、ロータの磁極と、のうちの少なくとも一方が設計対象部品に含まれる場合、ロータの磁極が永久磁石により定められれば、設計対象部品の構成の変更パターンとして種々のパターンを容易に作成することが出来る。
【0122】
<ハードウェア>
次に、推定モデル作成装置110のハードウェアの一例について説明する。
図9において、推定モデル作成装置110は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、通信回路904、信号処理回路905、画像処理回路906、I/F回路907、ユーザインターフェース908、ディスプレイ909、およびバス910を有する。
【0123】
CPU901は、推定モデル作成装置110の全体を統括制御する。CPU901は、主記憶装置902をワークエリアとして用いて、補助記憶装置903に記憶されているプログラムを実行する。主記憶装置902は、データを一時的に格納する。補助記憶装置903は、CPU901によって実行されるプログラムの他、各種のデータを記憶する。
【0124】
通信回路904は、推定モデル作成装置110の外部との通信を行うための回路である。通信回路904は、推定モデル作成装置110の外部と無線通信を行っても有線通信を行っても良い。
【0125】
信号処理回路905は、通信回路904で受信された信号や、CPU901による制御に従って入力した信号に対し、各種の信号処理を行う。
画像処理回路906は、CPU901による制御に従って入力した信号に対し、各種の画像処理を行う。この画像処理が行われた信号は、例えば、ディスプレイ909に出力される。
ユーザインターフェース908は、オペレータが推定モデル作成装置110に対して指示を行う部分である。ユーザインターフェース908は、例えば、ボタン、スイッチ、およびダイヤルなどを有する。また、ユーザインターフェース908は、ディスプレイ909を用いたグラフィカルユーザインターフェースを有していても良い。
【0126】
ディスプレイ909は、画像処理回路906から出力された信号に基づく画像を表示する。I/F回路907は、I/F回路907に接続される装置との間でデータのやり取りを行う。
図9では、I/F回路907に接続される装置として、ユーザインターフェース908およびディスプレイ909を示す。しかしながら、I/F回路907に接続される装置は、これらに限定されない。例えば、可搬型の記憶媒体がI/F回路907に接続されても良い。また、ユーザインターフェース908の少なくとも一部およびディスプレイ909は、推定モデル作成装置110の外部にあっても良い。
【0127】
なお、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、信号処理回路905、画像処理回路906、およびI/F回路907は、バス910に接続される。これらの構成要素間の通信は、バス910を介して行われる。また、推定モデル作成装置110のハードウェアは、前述した推定モデル作成装置110の機能を実現することができれば、
図9に示すハードウェアに限定されない。例えば、CPU901に代えてまたは加えてGPUがプロセッサとして用いられても良い。また、推定装置120のハードウェアも、例えば、
図9に示す推定モデル作成装置110のハードウェアと同じハードウェアで実現される。したがって、ここでは、推定装置120のハードウェアの具体例の詳細な説明を省略する。
【0128】
<計算例>
次に、本実施形態で説明した手法による計算例を説明する。表1に、本計算例における解析条件を示す。
【0129】
【0130】
表1に示すように本計算例では、極数が8極のV字型IPMSM(
図2に示すIPMSM200)を推定用モータとして用いた。表1には、電流振幅が20A、電流進角が40°、回転数が1000rpmの駆動条件で当該V字型IPMSMを駆動させた場合の計算結果を示す。
【0131】
また、表1に示すように本計算例では、機械学習モデルの一つであるサポートベクター回帰モデルを推定モデルとして用いた。当該サポートベクター回帰モデルの目的変数として、当該V字型IPMSMのトルクを用いた。また、当該サポートベクター回帰モデルの説明変数として、磁束密度ベクトルのr方向成分(半径方向成分)の0~13次空間高調波の位相および振幅と、磁束密度ベクトルのθ方向成分(周方向成分)の0~13次空間高調波の位相および振幅と、を用いた。表1においては、これらの0~13次空間高調波の位相および振幅を、空間高調波の位相および振幅と表記する。また、本計算例の説明において、これらの0~13次空間高調波の位相および振幅を、必要に応じて空間高調波の位相および振幅と略称する。
【0132】
V字型IPMSM(
図2に示すIPMSM200)に対し、ロータ210の構成が相互に異なる300個のV字型IPMSMを学習用モータとして用いた。これら300個の学習用モータのそれぞれについて、本実施形態で説明したようにして、第1説明変数データと、第1目的変数データ(正解ラベル)と、を算出して300組の学習データ群を作成した。
【0133】
学習データ(第1説明変数データ)の算出に際し、
図3に示すように、ステータコイルおよびティース(スロット)が存在しない中空円柱形状のステータコアのみからステータが構成されるようにステータを簡略化した。そして、これら300個の学習データを用いて教師あり学習を行うことによりサポートベクター回帰モデルを作成した。当該サポートベクター回帰モデルのハイパーパラメータであるγ値、C値、ε値として、それぞれ表1に示す値を用いた。
また、学習データと同様に、本実施形態で説明したようにして700個のテストデータを算出した。
【0134】
図10Aおよび
図10Bは、本計算例における解析結果を示す図である。
図10Aに示す学習データトルクは、前述の300個の学習データに含まれる平均トルク(正解ラベル)である。
図10Aに示す推定トルクは、学習データに含まれる第1説明変数データをサポートベクター回帰モデルに与えることにより算出された平均トルクである。
図10Bに示すテストデータトルクは、前述の700個のテストデータに含まれる平均トルク(正解ラベル)である。
図10Bに示す推定トルクは、テストデータに含まれる説明変数データをサポートベクター回帰モデルに与えることにより算出された平均トルクである。
【0135】
図10A示す結果では決定係数R
2は0.953であった。
図10Bに示す結果では決定係数R
2は0.847であった。このように本実施形態で説明した手法を用いることにより、学習データの数が少なくても、モータ評価指標を高精度に推定することが出来ることが分かる。
【0136】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、推定モデル作成装置110は、ロータ210とステータ320との間のギャップGにおける磁束密度分布を取得する。推定モデル作成装置110は、ギャップGにおける磁束密度分布とモータ評価指標との関係性を学習することにより作成された推定モデルを用いて、取得した磁束密度分布に応じたモータ評価指標の推定値を算出する。したがって、説明変数の次元(情報量)を低減させることが出来る。よって、学習データの数が多量になることを抑制することが出来る。これらのことにより、推定モデルの学習時における計算負荷を低減することが出来る。
【0137】
また、本実施形態では、推定モデルの説明変数に含める磁束密度により構成される磁束密度分布を、ロータ210の周方向に沿った複数の位置のそれぞれにおける磁束密度の集合とする。これらの磁束密度は、同時刻における磁束密度であるのが好ましい。また、これらの磁束密度のそれぞれは、ロータ210とステータ320との間のギャップGの半径方向(回転電機の半径方向)における規定位置での磁束密度である。規定位置は、半径方向における回転軸線0からの距離が一定となる位置であるのが好ましい(
図4に示す動径r
gcを参照)。したがって、説明変数のデータとして、モータ評価指標を適切に反映した説明変数のデータを用いることが出来る。本実施形態では、かかる複数の位置が、ギャップ中心領域410である場合を例示した。かかる複数の位置は、必ずしもギャップGの半径方向の中心の位置である必要はないが、ギャップGの半径方向における規定位置での値であるのが好ましい。そうでない場合、磁束密度の半径方向における位置が、周方向の位置によって変わる虞がある。例えば、或る周方向の位置では、磁束密度の半径方向における位置が、ロータ210付近の位置になるのに対し、別の周方向の位置では、磁束密度の半径方向における位置が、ステータ320付近の位置になる。このような磁束密度のデータが説明変数のデータとして使用されるなどすると、説明変数のデータに、モータ評価指標との関連性が低い特定の位置の情報に含まれやすくなる。したがって、モータ評価指標の推定精度が低下する虞がある。
【0138】
また、本実施形態では、推定モデルを、教師あり学習により作成した学習済みモデルとする。したがって、推定精度を満足する推定モデルを容易に作成することが出来る。
【0139】
また、本実施形態では、推定モデル作成装置110は、簡略化モータ300におけるギャップGの磁束密度分布と、モータ評価指標と、を対応付けた学習データを用いて教師あり学習を行う。簡略化モータ300は、IPMSM200(学習用モータ、推定用モータ)に対しステータ220を簡略化したモータである。簡略化の対象は、例えば、ステータコイルと、ステータコアのティースと、のうち、少なくとも一方である。したがって、説明変数のデータ(第1説明変数データおよび第2説明変数データ)の取得に用いるモータの構成を簡略化することが出来る。よって、説明変数のデータの取得が容易になる。
【0140】
また、本実施形態では、推定モデル作成装置110および推定装置120は、簡略化モータ300に対する電磁界解析を行うことにより、ロータ210とステータ320との間のギャップGにおける磁束密度分布を算出する。この際、推定モデル作成装置110および推定装置120は、電磁界解析として、一時刻における解析、または、一周期未満内の期間の複数の時刻における解析を行う。したがって、説明変数のデータ(第1説明変数データおよび第2説明変数データ)をより高速に取得することが出来る。
【0141】
また、本実施形態では、推定モデル作成装置110および推定装置120は、ロータ210とステータ320との間のギャップGにおける磁束密度分布を、電磁界解析を行うことにより算出する。したがって、説明変数のデータ(第1説明変数データおよび第2説明変数データ)の精度を上げることと、説明変数のデータを高速に取得することと、を実現することが出来る。
【0142】
また、本実施形態では、説明変数に含める磁束密度分布を構成する複数の磁束密度の各々のデータを、磁束密度ベクトルの成分値で構成する。したがって、磁束密度のデータとして、より正確にモータ評価指標に反映されるデータを用いることが出来る。
【0143】
また、本実施形態では、推定モデル作成装置110は、簡略化する前のステータ220を備える学習用モータ200に対する電磁界解析を行うことにより、学習データ(第1目的変数データ)に含めるモータ評価指標を算出する。したがって、学習データ(第1目的変数データ)の精度を上げることと、学習データ(第1目的変数データ)を高速に取得することと、を実現することが出来る。
【0144】
(その他の実施形態)
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することが出来る。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することが出来る。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることが出来る。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、例えば、回転電機の性能を評価することに利用することが出来る。
【要約】
推定モデル作成装置(110)は、ロータ(210)とステータ(320)との間のギャップ(G)における磁束密度分布を取得する。推定モデル作成装置(110)は、ギャップ(G)における磁束密度分布とモータ評価指標との関係性を学習することにより作成された推定モデルを用いて、磁束密度分布に応じたモータ評価指標の推定値を算出する。