(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】断熱性能推定装置、学習済みモデル生成装置、断熱性能推定用プログラム、および学習済みモデル生成用プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240911BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240911BHJP
G01N 25/18 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06T7/00 350B
G01N25/18 B
G01N25/18 L
(21)【出願番号】P 2021026361
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-12-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年度人工知能学会全国大会(第34回)の講演予稿集,ウェブサイト掲載,2020年5月22日 https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2020/notifications
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 威夫
(72)【発明者】
【氏名】川原 慶喜
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206194(JP,A)
【文献】特開2018-132802(JP,A)
【文献】特開2011-237124(JP,A)
【文献】特開2021-018611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06T 7/00
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の建物の周辺の気温と前記検査対象の建物における電力量との相関関係を画像で表示した検査対象画像データを取得するデータ取得部と、
入力した画像データに基づいて建物の断熱性能を示す断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記検査対象画像データに対応する前記検査対象の建物の前記断熱性能指数を推定する推定部と、を備え、
前記学習済みモデルは、建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像に前記断熱性能指数をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含む
断熱性能推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱性能推定装置において、
前記画像は、建物の周辺の気温と当該建物における電力量とによって特定される点の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表したデータである
断熱性能推定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の断熱性能推定装置において、
前記断熱性能指数は、熱損失係数である
断熱性能推定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の断熱性能推定装置において、
前記推定部は、算出した前記断熱性能指数に基づいて、予め設定された、建物の断熱性能を表す複数の等級の中から一つの等級を選択し、前記検査対象の建物の断熱性能推定結果を生成する
断熱性能推定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の断熱性能推定装置において、
前記記憶部は、建物の属性毎に生成された複数の前記学習済みモデルを記憶し、
前記推定部は、前記検査対象の建物の属性に対応する前記学習済みモデルに基づいて、前記検査対象の建物の前記断熱性能指数を算出する
断熱性能推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の断熱性能推定装置において、
前記推定部は、前記検査対象の建物の属性に対応する複数の前記学習済みモデルに基づいて、前記検査対象の建物の前記断熱性能指数をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記断熱性能指数に基づいて、前記検査対象の建物の断熱性能推定結果を生成する
断熱性能推定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の断熱性能推定装置において、
前記建物の属性は、建物が存在する地域および建物の居住者の世帯種別の少なくとも一つを含む
断熱性能推定装置。
【請求項8】
建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像に当該建物の断熱性能を示す断熱性能指数をラベリングした学習用画像データを生成する学習用画像データ生成部と、
前記学習用画像データを所定のアルゴリズムに基づいて機械学習することにより、入力した画像データに基づいて前記断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部と、を備える
学習済みモデル生成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の学習済みモデル生成装置において、
前記学習用画像データ生成部は、
建物の周辺の気温と当該建物における電力量とによって特定される点の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表した画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって生成された画像に、当該画像に対応する建物の前記断熱性能指数をラベリングして、前記学習用画像データを生成するラベリング部と、を含む
学習済みモデル生成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の学習済みモデル生成装置において、
建物に設けられた計器によって計測された電力量のデータと、当該建物が存在する地域の気温のデータと、当該建物の熱損失係数を前記断熱性能指数として取得するデータ取得部を更に備え、
前記画像生成部は、前記データ取得部によって取得した前記電力量のデータと前記気温のデータとに基づいて前記画像を生成し、
前記ラベリング部は、前記データ取得部によって取得した前記熱損失係数を前記画像生成部によって生成された画像にラベリングして前記学習用画像データを生成する
学習済みモデル生成装置。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れか一項に記載の学習済みモデル生成装置において、
前記所定のアルゴリズムは、CNNである
学習済みモデル生成装置。
【請求項12】
請求項8乃至11の何れか一項に記載の学習済みモデル生成装置において、
前記学習用画像データは、建物の属性毎に分類され、
前記学習済みモデル生成部は、前記建物の属性が共通する複数の前記学習用画像データを機械学習することにより、前記建物の属性毎に前記学習済みモデルを生成する
学習済みモデル生成装置。
【請求項13】
請求項12に記載の学習済みモデル生成装置において、
前記建物の属性は、建物が存在する地域および建物の居住者の世帯種別の少なくとも一つを含む
学習済みモデル生成装置。
【請求項14】
コンピュータを、
建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を画像で表した検査対象画像データを取得するデータ取得部と、
入力した画像データに基づいて建物の断熱性能を示す断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記検査対象画像データに対応する建物の前記断熱性能指数を算出する推定部として機能させ、
前記学習済みモデルは、建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像に前記断熱性能指数をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含む
断熱性能推定用プログラム。
【請求項15】
コンピュータを、
建物の周辺の気温とそのときの当該建物における電力量との相関関係を示す画像に当該建物の断熱性能を示す断熱性能指数をラベリングした学習用画像データを生成する学習用画像データ生成部と、
前記学習用画像データを所定のアルゴリズムに基づいて機械学習することにより、入力した画像データに基づいて前記断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部として機能させる
学習済みモデル生成用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性能推定装置、学習済みモデル生成装置、断熱性能推定用プログラム、および学習済みモデル生成用プログラムに関し、例えば、学習済みモデルに基づいて建物の断熱性能を推定する断熱性能推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の断熱性能はエネルギーの使用量に影響を与えるだけでなく、ヒートショックに代表される心血管病の発症に影響を及ぼすことが認知されつつある。将来における心血管病の発症リスクを低下させるためには、住宅の温度環境を改善することが好ましい。既存住宅の流通やリフォーム促進のためには、対象となる住宅の断熱性能を評価する必要がある。
【0003】
建物の断熱性能を表す一つの指標として、熱損失係数(以下、「Q値」とも称する。)が知られている。一般に、新築住宅の場合、Q値は設計図書の断熱仕様を元に計算される。しかしながら、既存の住宅の場合、設計図書がないことが多く、施工方法および経年劣化等により、実際の断熱性能が不明であることが多い。そのため、従来、既存の住宅の室温等を実測し、その計測値に基づいてその住宅のQ値を推定する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、住宅における消費電力に基づいて、当該住宅の断熱性能を推定する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-221772号公報
【文献】特開2018-206194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に代表される従来の断熱性能の推定手法では、住宅における複数の部屋とその住宅の外部に温度計測装置をそれぞれ設置し、各部屋の温度と外気温を一定期間計測する必要があるため、居住者の日常生活に制限や支障が発生し、居住者の負担が大きい。
【0006】
また、特許文献2に開示された断熱性能の推定手法では、住宅における電力データだけでなく、築年数などの変数が必要であり、断熱性能を容易に推定することができない。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、居住者の負担を抑えつつ、より簡単に建物の断熱性能を推定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係る断熱性能推定装置は、検査対象の建物の周辺の気温と前記検査対象の建物における電力量との相関関係を画像で表示した検査対象画像データを取得するデータ取得部と、入力した画像データに基づいて建物の断熱性能を示す断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記検査対象画像データに対応する前記検査対象の建物の前記断熱性能指数を推定する推定部と、を備え、前記学習済みモデルは、建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像に前記断熱性能指数をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る断熱性能推定装置によれば、居住者の負担を抑えつつ、より簡単に建物の断熱性能を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る断熱性能推定システムの構成を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る学習済みモデル生成装置の機能ブロック構成を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る学習済みモデル生成装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像の一例を示す図である。
【
図5A】断熱性能が高い住宅の気温-電力量特性の画像の一例を示す図である。
【
図5B】断熱性能が高い住宅の気温-電力量特性の画像の一例を示す図である。
【
図6A】断熱性能が低い住宅の気温-電力量特性の画像の一例を示す図である。
【
図6B】断熱性能が低い住宅の気温-電力量特性の画像の一例を示す図である。
【
図7】検査対象画像データから建物のQ値を算出するための学習済みモデルの一例を示すモデル図である。
【
図8】第1の実施の形態に係る断熱性能推定装置の機能ブロック構成を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態に係る断熱性能推定装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図10】断熱性能推定装置による断熱性能推定結果の一例を示す図である。
【
図11】第1の実施の形態に係る断熱性能推定システムによる処理の流れを示すフロー図である。
【
図12】学習用画像データの生成処理(ステップS1)の詳細な流れを示すフロー図である。
【
図13】断熱性能推定処理(ステップS4)の詳細な流れを示すフロー図である。
【
図14】第2の実施の形態に係る断熱性能推定システムにおける学習済みモデル生成装置の機能ブロック構成を示す図である。
【
図15】第2の実施の形態に係る断熱性能推定システムにおける断熱性能推定装置の機能ブロック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る断熱性能推定装置(2,2A)は、検査対象の建物の周辺の気温と前記検査対象の建物における電力量との相関関係を画像で表示した検査対象画像データ(201)を取得するデータ取得部(21,21A)と、入力した画像データに基づいて建物の断熱性能を示す断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデル(303,303A_1~303A_p)を記憶する記憶部(22,22A)と、前記記憶部に記憶された前記学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記検査対象画像データに対応する前記検査対象の建物の前記断熱性能指数(202,202_1~202_s)を推定する推定部(23,23A)と、を備え、前記学習済みモデルは、建物(7,7_1~7_n)の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像(301,301_1~301_4)に前記断熱性能指数(43)をラベリングして生成された複数の学習用画像データ(302_1~302_n)を機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含むことを特徴とする。
【0013】
〔2〕上記〔1〕に記載の断熱性能推定装置(2,2A)において、前記画像は、建物の周辺の気温と当該建物における電力量とによって特定される点の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表したデータであってもよい。
【0014】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の断熱性能推定装置(2,2A)において、前記断熱性能指数は、熱損失係数(Q値)であってもよい。
【0015】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の断熱性能推定装置(2,2A)において、前記推定部は、算出した前記断熱性能指数に基づいて、予め設定された、建物の断熱性能を表す複数の等級(等級1~4,等級A,B)の中から一つの等級を選択し、前記検査対象の建物の断熱性能推定結果(203)を生成してもよい。
【0016】
〔5〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載の断熱性能推定装置(2A)において、前記記憶部(22A)は、建物(7)の属性毎に生成された複数の前記学習済みモデル(303A_1~303A_p)を記憶し、前記推定部は、前記検査対象の建物の属性に対応する前記学習済みモデルに基づいて、前記検査対象の建物の前記断熱性能指数を算出してもよい。
【0017】
〔6〕上記〔5〕に記載の断熱性能推定装置において、前記推定部は、前記検査対象の建物の属性に対応する複数の前記学習済みモデル(303A_1~303A_s)に基づいて、前記検査対象の建物の前記断熱性能指数(202_1~202_s)をそれぞれ算出し、算出した複数の前記断熱性能指数に基づいて、前記検査対象の建物の断熱性能推定結果(203)を生成してもよい。
【0018】
〔7〕上記〔5〕または〔6〕に記載の断熱性能推定装置において、前記建物の属性は、建物が存在する地域および建物の居住者の世帯種別の少なくとも一つを含んでもよい。
【0019】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係る学習済みモデル生成装置(3,3A)は、建物(7_1~7_n)の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像(301,301_1~301_4)に当該建物の断熱性能を示す断熱性能指数(43)をラベリングした学習用画像データ(302_1~302_n)を生成する学習用画像データ生成部(32,32A)と、前記学習用画像データを所定のアルゴリズムに基づいて機械学習することにより、入力した画像データに基づいて前記断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデル(303,303A_1~303A_p)を生成する学習済みモデル生成部(36,36A)とを備えることを特徴とする。
【0020】
〔9〕上記〔8〕に記載の学習済みモデル生成装置(3,3A)において、前記学習用画像データ生成部は、建物の周辺の気温と当該建物における電力量とによって特定される点の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表した画像を生成する画像生成部(33,33A)と、前記画像生成部によって生成された画像に、当該画像に対応する建物の前記断熱性能指数をラベリングして、前記学習用画像データを生成するラベリング部(34,34A)と、を含んでもよい。
【0021】
〔10〕上記〔9〕に記載の学習済みモデル生成装置(3,3A)において、建物に設けられた計器によって計測された電力量のデータ(41)と、当該建物が存在する地域の気温のデータ(42)と、当該建物の熱損失係数(Q値)を前記断熱性能指数(43)として取得するデータ取得部(31,31A)を更に備え、前記画像生成部は、前記データ取得部によって取得した前記電力量のデータと前記気温のデータとに基づいて前記画像(301)を生成し、前記ラベリング部は、前記データ取得部によって取得した前記熱損失係数を前記画像生成部によって生成された画像にラベリングして前記学習用画像データ(302_1~302_n)を生成してもよい。
【0022】
〔11〕上記〔8〕乃至〔10〕の何れかに記載の学習済みモデル生成装置(3,3A)において、前記所定のアルゴリズムは、CNNであってもよい。
【0023】
〔12〕上記〔8〕乃至〔11〕の何れかに記載の学習済みモデル生成装置(3A)において、前記学習用画像データは、建物の属性毎に分類され、前記学習済みモデル生成部(36A)は、前記建物の属性が共通する複数の前記学習用画像データを機械学習することにより、前記建物の属性毎に前記学習済みモデル(303A_1~303A_p)を生成してもよい。
【0024】
〔13〕上記〔12〕に記載の学習済みモデル生成装置(3A)において、前記建物の属性は、建物が存在する地域および建物の居住者の世帯種別の少なくとも一つを含んでもよい。
【0025】
〔14〕本発明の代表的な実施の形態に係る断熱性能推定用プログラム(1023)は、コンピュータを、建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を画像で表した検査対象画像データを取得するデータ取得部と、入力した画像データに基づいて建物の断熱性能を示す断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記検査対象画像データに対応する建物の前記断熱性能指数を算出する推定部として機能させるプログラムであって、前記学習済みモデルは、建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像に前記断熱性能指数をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含むことを特徴する。
【0026】
〔15〕本発明の代表的な実施の形態に係る学習済みモデル生成用プログラム(1021)は、コンピュータを、建物の周辺の気温とそのときの当該建物における電力量との相関関係を示す画像に当該建物の断熱性能を示す断熱性能指数をラベリングした学習用画像データを生成する学習用画像データ生成部と、前記学習用画像データを所定のアルゴリズムに基づいて機械学習することにより、入力した画像データに基づいて前記断熱性能指数を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部として機能させることを特徴とするプログラムである。
【0027】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、実物と異なる場合がある。
【0028】
≪第1の実施の形態≫
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る断熱性能推定システムの構成を示す図である。
同図に示される断熱性能推定システム1は、建物の周辺の気温と当該建物において消費された電力量との相関関係を表す画像データに当該建物の断熱性能を表す指標(以下、「断熱性能指数」とも称する。)をラベリングした学習用画像データ(教師データ)を機械学習によって学習して学習済みモデルを生成し、その学習済みモデルを用いて、入力された検査対象の建物の検査対象画像データから当該建物の断熱性能を推定するためのシステムである。
【0029】
図1に示すように、断熱性能推定システム1は、ネットワーク5に接続可能に構成され、ネットワーク5を介して電力データ管理装置4や建物7_1~7_n(nは2以上の整数)に設置された計器(SM)70_1~70_nと通信が可能となっている。
【0030】
ネットワーク5は、例えばインターネットに代表される広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)である。断熱性能推定システム1は、有線または無線通信によってネットワーク5と接続可能に構成されている。
【0031】
計器70_1~70_nは、各建物7_1~7_nに設置され、その建物で消費された電力を計測する電力量計である。計器70_1~70_nは、ネットワーク5に接続可能にされている。計器70_1~70_nは、例えば、ネットワーク5を介して外部と双方向通信可能なスマートメータ(SM)である。本実施の形態では、計器70_1~70_nが設置される建物7_1~7_nが「住宅」である場合を一例として説明するが、これに限られるものではない。
【0032】
計器70_1~70_nは、例えば、単位時間(例えば30分間)当たりの電力の消費量(30分電力量)を計測し、電力データ管理装置4からの要求に応じて、電力消費量の計測結果をネットワーク5を介して送信する。
【0033】
なお、以下の説明において、計器70_1~70_nや建物7_1~7_n等の接尾辞が付された参照符号で示される構成要素をそれぞれを区別しない場合には、単に「計器70」や「建物7」等と表記する場合がある。
【0034】
電力データ管理装置4は、各建物7_1~7_nに設置された計器70_1~70_nによって計測された電力量の情報を管理する装置である。電力データ管理装置4は、ネットワーク5を介して外部と双方向通信可能な情報処理装置(コンピュータ)であって、例えば、サーバである。
【0035】
電力データ管理装置4は、建物7_1~7_nに設置された計器70_1~70_nによって計測された単位時間毎の電力量の計測結果を含むデータをネットワーク5を介して各計器70_1~70_nから取得し、電力データ40_1~40_nとして記憶する。
【0036】
電力データ40_1~40_nは、例えば、各計器70を識別するための情報である計器IDと、その計器IDによって特定される計器70が計測した単位時間当たりの電力量(30分電力量)の計測結果と、計測日時の情報とを含む。電力データ管理装置4は、例えば、建物7_1~7_n(計器ID)毎に電力データ40_1~40_nを記憶して管理する。
【0037】
図1に示すように、断熱性能推定システム1は、学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成装置3と、学習済みモデルに基づいて入力された検査対象画像データに対応する建物の断熱性能を推定する断熱性能推定装置2とを備えている。
【0038】
断熱性能推定装置2と学習済みモデル生成装置3とは、所定のネットワークを介して接続されており、相互間でデータの送受信が可能となっている。例えば、断熱性能推定装置2と学習済みモデル生成装置3とは、LAN(Local Area Network)を介して有線または無線通信によって互いに接続されていてもよいし、インターネット等の広域ネットワーク(WAN)を介して互いに接続されていてもよい。
【0039】
以下、断熱性能推定装置2と学習済みモデル生成装置3について詳細に説明する。
先ず、学習済みモデル生成装置3について説明する。
【0040】
図2は、第1の実施の形態に係る学習済みモデル生成装置3の機能ブロック構成を示す図である。
図3は、第1の実施の形態に係る学習済みモデル生成装置3のハードウェア構成を示す図である。
【0041】
学習済みモデル生成装置3は、例えば、サーバやパーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置(コンピュータ)によって実現され、インストールされた学習済みモデル生成用プログラムにしたがって学習用画像データを生成するとともに、生成した学習用画像データを所定のアルゴリズムに基づいて機械学習することにより、学習済みモデルを生成する装置である。
【0042】
図2に示すように、学習済みモデル生成装置3は、学習済みモデルを生成するための機能ブロックとして、データ取得部31、学習用画像データ生成部32、記憶部35、および学習済みモデル生成部36を有している。これらの各機能ブロックは、学習済みモデル生成装置3としての情報処理装置を構成する、
図3に示すハードウェア資源が、上記情報処理装置にインストールされたソフトウエア(学習済みモデル生成用プログラムを含む各種プログラム)と協働することによって、実現される。
【0043】
図3に示すように、学習済みモデル生成装置3は、ハードウェア資源として、例えば、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F(Interface)装置104、出力装置105、およびバス106を備えている。
【0044】
演算装置101は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって構成されている。記憶装置102は、演算装置101に各種のデータ処理を実行させるためのプログラム1021と、演算装置101によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータ1022とを記憶する記憶領域を有し、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD、およびフラッシュメモリ等から構成されている。
【0045】
記憶装置102に記憶されるプログラム1021は、コンピュータを学習済みモデル生成装置3として機能させる学習済みモデル生成用プログラムを含み、例えば、記憶装置102に予めインストールされている。
【0046】
記憶装置102に記憶されるデータ1022は、例えば、後述する、電力量のデータ41、気温のデータ42、および断熱性能指数43等の各種データや、生成した学習済みモデル303等である。
【0047】
なお、プログラム1021およびデータ1022は、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROMやメモリカード等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0048】
入力装置103は、外部から情報の入力を検出する装置であり、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、またはタッチパネル等を例示することができる。I/F装置104は、外部とデータの送受信を行う装置であり、例えば、有線または無線によって通信を行うための通信制御回路や入出力ポート、アンテナ等から構成されている。
【0049】
出力装置105は、演算装置101によるデータ処理によって得られた情報等を出力する装置である。出力装置105としては、SSDやHDD等の外部記憶装置や、LCD(Liquid Crystal Display)および有機EL(Electro Luminescence)等の表示装置等を例示することができる。バス106は、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、および出力装置105を相互に接続し、これらの装置間でデータの送受信を可能にする。
【0050】
学習済みモデル生成装置3は、演算装置101が記憶装置102に記憶されたプログラム1021に従って演算を実行して、記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、出力装置105、およびバス106を制御することにより、
図2に示した学習済みモデル生成装置3の各機能ブロック(データ取得部31、学習用画像データ生成部32、記憶部35、および学習済みモデル生成部36)が実現される。
【0051】
以下、学習済みモデル生成装置3の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0052】
データ取得部31は、学習済みモデル303の生成に必要なデータを取得するための機能部である。具体的に、データ取得部31は、ネットワーク5を経由して、電力データ管理装置4を含む外部の情報処理装置等とデータの送受信を行うことにより、必要なデータを取得する。
【0053】
データ取得部31は、各建物7_1~7_nの電力量のデータ41を取得する。具体的に、データ取得部31は、電力データ管理装置4に記憶されている電力データ40_1~40_nから、各建物7における電力量のデータ41を取得する。例えば、データ取得部31は、電力データ40に基づいて一日の電力使用量を表す日電力量を建物7毎に算出し、電力量のデータ41として記憶する。なお、日電力量が電力データ管理装置4によって算出され記憶されている場合には、データ取得部31は、自ら日電力量を算出することなく、電力データ管理装置4から取得すればよい
【0054】
また、データ取得部31は、各建物7の周辺の気温のデータ42を取得する。例えば、データ取得部31は、各建物7の周辺の気温のデータ42として、各建物7が存在する地域の日平均気温の情報(例えば、メッシュデータ)を、ネットワーク5に接続されている外部サーバから取得する。ここで、外部サーバとは、各種気象データを提供するサーバであり、例えば、気象庁のサーバである。
【0055】
なお、気温のデータ42は、外部サーバから直接取得する場合に限られない。例えば、電力データ管理装置4が外部サーバから気象データを取得して気温のデータ42を管理している場合には、データ取得部31は、気温のデータ42を電力データ40とともに電力データ管理装置4から取得してもよい。
【0056】
更に、データ取得部31は、各建物7_1~7_nの断熱性能指数43の情報を取得する。断熱性能指数43は、例えば、建物7の熱損失係数(Q値)である。断熱性能指数43としてのQ値は、例えば、各建物7の設計図面から算出した値であってもよいし、建物7において実測した温度の計測値から公知の算出方法によって推定した値であってもよい。断熱性能指数43は、予め、上述した手法によって算出され、学習済みモデル生成装置3内の記憶装置102に記憶されている。
【0057】
なお、建物7の断熱性能指数43は、電力データ管理装置4やネットワーク5に接続された他の情報処理装置等に記憶されていてもよい。この場合、データ取得部31は、断熱性能指数43をネットワーク5を介して外部から取得する。
【0058】
データ取得部31は、例えば、電力量のデータ41、気温のデータ42,および断熱性能指数43を、建物7毎に記憶部35に記憶しておく。例えば、データ取得部31によって取得された各データは、各建物7に設置された計器70の計器ID毎に、記憶部35に記憶される。
【0059】
学習用画像データ生成部32は、データ取得部31によって取得した各種データに基づいて、学習用画像データ302を生成するための機能部である。学習用画像データ生成部32は、建物7の周辺の気温と当該建物7における電力量との相関関係を示す画像に当該建物7の断熱性能を示す指標(断熱性能指数)をラベリングした学習用画像データ302を生成する。
【0060】
例えば、学習用画像データ生成部32は、画像生成部33とラベリング部34を含む。
画像生成部33は、データ取得部31によって取得した電力量のデータ41と気温のテータ42とに基づいて、建物7の周辺の気温と当該建物7における電力量との相関関係を示す画像301を建物7毎に生成する。
【0061】
画像生成部33は、建物7の周辺の気温と当該建物7における電力量とによって特定される点の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表した画像を生成する。例えば、画像生成部33は、建物7の日電力量と、その日電力量が計測された日における当該建物7が存在する地域の日平均気温とを一組とするデータ対(点)を、日電力量が計測された日毎に生成し、各データ対の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表示した気温-電力量特性の画像301を生成する。
【0062】
図4は、建物7の周辺の気温と当該建物7における電力量との相関関係を示す気温-電力量特性の画像301の一例を示す図である。
例えば、
図4には、-5℃から40℃までの温度範囲を3℃毎に、0kWhから45kWhまでの電力量範囲を3kWh毎に、夫々区分けして生成した15×15ピクセルの画像が例示されている。
各単位画像(1ピクセル)の色は、上記データ対の数を正規化することによって設定されている。画像生成部33は、
図4に示すような画像301を建物7毎に生成する。
【0063】
ここで、気温-電力量特性の画像と建物の断熱性能との関係について説明する。
【0064】
図5Aおよび
図5Bは、断熱性能が高い住宅の気温-電力量特性の画像の一例を示す図である。
図6Aおよび
図6Bは、断熱性能が低い住宅の気温-電力量特性の画像の一例を示す図である。
【0065】
図5Aおよび
図5Bにおいて、気温-電力量特性の画像301_1および気温-電力量特性の画像301_2に示すように、断熱性能が高い住宅では、日平均気温が10℃未満の冬季と日平均気温が10℃以上20度未満の端境期との間の日電力量の変化の傾きが緩やかになる傾向がある。また、日電力量の分散が小さく中央に集中する傾向がある。
【0066】
一方、
図6Aにおいて気温-電力量特性の画像301_3に示すように、断熱性能が低い住宅では、冬季と端境期との間の日電力量の変化の傾きが大きくなる傾向がある。また、
図6Bにおいて気温-電力量特性の画像301_4に示すように、断熱性能が低い住宅では、全体的に電力使用量が少なく、冬季と端境期とで日電力量の変化が小さい傾向がある。
【0067】
このように、住宅の断熱性能に依存して、気温に対する電力使用量の特性が変化することが理解される。すなわち、住宅の断熱性能と気温-電力量特性との間に相関があることが理解される。そこで、本実施の形態に係る断熱性能推定システム1では、建物(住宅)の気温-電力量特性の画像301に断熱性能指数43としてのQ値を関連付けて、機械学習のための学習用画像データ302を生成する。
【0068】
具体的には、学習用画像データ生成部32において、ラベリング部34が、画像生成部33によって生成された気温-電力量特性を表す画像301に、当該画像301に対応する建物7の断熱性能指数43を正解ラベルとして付与し、学習用画像データ302を生成する。例えば、ラベリング部34は、電力データ管理装置4によって電力データが管理されている建物7_1~7_nのうち、断熱性能指数43(Q値)が登録されている建物7_1~7_m(mは2以上の整数)の気温-電力量特性の画像301にQ値を対応付けた画像データを、建物7_1~7_m毎に生成し、学習用画像データ302_1~302_mとして記憶部35に記憶する。
【0069】
学習済みモデル生成部36は、学習用画像データ生成部32によって生成された複数の学習用画像データ302_1~302_mを機械学習することにより、入力した画像データに基づいて断熱性能指標を算出するように情報処理装置(コンピュータ)を機能させるための学習済みモデル303を生成する機能部である。
【0070】
学習済みモデル303は、所定のアルゴリズムに基づく機械学習によるプログラムである。所定のアルゴリズムは、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)等のニューラルネットワークである。
【0071】
すなわち、学習済みモデル303は、入力された画像データ(検査対象画像データ201)に対して、所定の学習済みパラメータに基づく演算を行い、当該画像データに基づく建物の断熱性能を定量化した値を出力するように、情報処理装置(コンピュータ)を機能させるためのプログラムである。
【0072】
ここで、学習済みパラメータとは、学習用画像データ302_1~302_mを学習用プログラム(上記所定のアルゴリズムに基づくプログラム)に対する入力として用いて、断熱性能指数(Q値)を算出するように機械的に調整されたパラメータである。例えば、ニューラルネットワークの場合、学習済みパラメータは、重み付け係数等の変数である。
【0073】
学習済みモデル303には、上述した学習済みパラメータに加えて、推論プログラムが含まれていてもよい。推論プログラムとは、上記学習済みパラメータを組み込んで、入力された画像データに対して一定の結果を出力するためのプログラムである。
【0074】
学習済みモデル生成部36は、例えば、学習用画像データ302_1~302_mをCNNモデルにそれぞれ入力することによって算出された断熱性能指数(推定値)と正解データとしてラベリングされた断熱性能指数(正解値)との誤差を算出し、誤差逆伝搬法により、上記誤差に基づいて重み付け係数等の学習済みパラメータを逐次更新することにより、学習済みモデル303としてのCNNモデルを生成する。
【0075】
図7は、検査対象画像データ201から建物のQ値を算出するための学習済みモデル303の一例を示すモデル図である。
【0076】
図7には、例えば、学習済みモデル303としてのCNNモデルが示されている。具体的に、学習済みモデル303は、エポック数を100、バッチ数を32とし、最適化関数としてAdamを採用したCNNモデルである。
【0077】
学習済みモデル生成部36によって生成された学習済みモデル303は、記憶部35に記憶される。
【0078】
記憶部35は、学習済みモデル303を生成するために必要な学習用画像データ302_1~302_mや生成された学習済みモデル303等の各種データを記憶するための機能部である。記憶部35は、例えば、外部からアクセス可能に構成されている。例えば、断熱性能推定装置2が学習済みモデル生成装置3と通信を行うことにより、断熱性能推定装置2が記憶部35から学習済みモデル303を読み出して取得することが可能となっている。
【0079】
次に、断熱性能推定装置2について説明する。
【0080】
図8は、第1の実施の形態に係る断熱性能推定装置2の機能ブロック構成を示す図である。
図9は、第1の実施の形態に係る断熱性能推定装置2のハードウェア構成を示す図である。
【0081】
断熱性能推定装置2は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)やサーバ等の情報処理装置(コンピュータ)であって、インストールされた断熱性能推定用プログラム(学習済みモデル)にしたがって、入力された検査対象画像データの建物の断熱性能を推定する。
【0082】
図8に示すように、断熱性能推定装置2は、学習済みモデルを用いて建物の断熱性能を推定するための各種データ処理を行うための機能ブロックとして、データ取得部21、記憶部22、および推定部23を有している。これらの各機能ブロックは、断熱性能推定装置2としての情報処理装置を構成するハードウェア資源が、上記情報処理装置にインストールされたソフトウエア(断熱性能推定用プログラムを含む各種プログラム)と協働することによって、実現される。
【0083】
図9に示すように、断熱性能推定装置2は、ハードウェア資源として、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F(Interface)装置104、出力装置105、およびバス106を備えている。これらの構成要素は、上述した学習済みモデル生成装置3を構成するハードウェア資源と同様である。
【0084】
記憶装置102には、演算装置101に断熱性能推定装置2としての各種のデータ処理を実行させるためのプログラム1023と、演算装置101によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータ1024とが記憶されている。
【0085】
ここで、プログラム1023は、コンピュータ(プロセッサ)を断熱性能推定装置2として機能させるための断熱性能推定用プログラムを含み、例えば、記憶装置102に予めインストールされている。
【0086】
また、データ1024は、後述する検査対象画像データ201、学習済みモデル303、および断熱性能指数(推定値)202等を含む。
【0087】
なお、プログラム1023およびデータ1024は、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROMやメモリカード等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0088】
断熱性能推定装置2は、演算装置101が記憶装置102に記憶されたプログラム1023に従って演算を実行して、記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、出力装置105、およびバス106を制御することにより、
図8に示した断熱性能推定装置2の各機能ブロック(データ取得部21、記憶部22、および推定部23)が実現される。
【0089】
以下、断熱性能推定装置2の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0090】
データ取得部21は、検査対象の建物の断熱性能を推定するために必要な各種データや、断熱性能推定装置2としての情報処理装置を操作するユーザによって入力された指示等を取得する機能部である。
【0091】
データ取得部21は、上述したように、断熱性能推定システム1内の学習済みモデル生成装置3との間で、例えばLANやWAN等の所定のネットワークを介してデータの送受信を行う。また、データ取得部21は、ネットワーク5を介して電力データ管理装置4等の外部の情報処理装置との間でデータの送受信が可能となっている。
【0092】
データ取得部21は、建物の断熱性能を推定するために必要なデータとして、検査対象の建物の周辺の気温と検査対象の建物における電力量との相関関係を画像で表示した検査対象画像データ201を取得する。
【0093】
検査対象画像データ201は、上述した学習用画像データと同様に、検査対象の建物の日電力量と、その日電力量が計測された日における当該建物が存在する地域の日平均気温とを一組とするデータ対を、日電力量が計測された日毎に生成し、各データ対の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表示した気温-電力量特性の画像データである。
【0094】
検査対象画像データ201は、例えば、上述した学習済みモデル生成装置3によって生成される。例えば、ユーザが断熱性能推定装置2を操作して検査対象の建物7_k(kは1以上の整数)の気温-電力量特性の画像データの作成の指示を入力することにより、データ取得部21が、学習済みモデル生成装置3に対して、建物7_kの画像データの生成を要求する。学習済みモデル生成装置3の画像生成部33は、当該要求に応じて、学習用画像データ302を生成する場合と同様の手法により、検査対象の建物7_kに設置された計器70から取得した電力データ40と気象のデータ42とに基づいて、検査対象の建物7_kの気温-電力量特性の画像データを生成し、断熱性能推定装置2に送信する。断熱性能推定装置2におけるデータ取得部21は、学習済みモデル生成装置3から受信した、検査対象の建物7_kの気温-電力量特性の画像データを検査対象画像データ201として記憶部22に記憶する。
【0095】
なお、検査対象画像データ201は、学習済みモデル生成装置3が生成する場合に限られず、他の情報処理装置によって生成してもよい。また、例えば、断熱性能推定装置2が、電力データ管理装置4にアクセスして検査対象の電力データ40を取得し、自ら検査対象画像データ201を生成してもよい。
【0096】
記憶部22は、断熱性能推定装置2による建物の断熱性能推定処理に必要な各種データを記憶する機能部である。例えば、記憶部22は、上述した検査対象画像データ201の他に、学習済みモデル303および断熱性能推定結果203を記憶する。
【0097】
学習済みモデル303は、上述したように、入力された画像データ(検査対象画像データ201)に対して、所定の学習済みパラメータに基づく演算を行い、当該画像データに基づく建物の断熱性能を定量化した値を出力するように、情報処理装置(コンピュータ)を機能させるためのプログラムである。例えば、予め、断熱性能推定装置2が学習済みモデル生成装置3と通信を行うことにより、データ取得部21が、学習済みモデル生成装置3によって生成された学習済みモデル303を取得して記憶部22に記憶しておく。
【0098】
推定部23は、データ取得部21によって取得した検査対象画像データ201を入力し、学習済みモデル303を用いて、入力した検査対象画像データ201から、検査対象画像データ201に関する建物7の断熱性能指数の推定値を算出する機能部である。
【0099】
具体的に、推定部23は、検査対象画像データ201の建物の断熱性能指数202を算出し、算出した断熱性能指数202に基づいて、検査対象の建物の断熱性能推定結果203を生成する。
【0100】
推定部23は、先ず、検査対象画像データ201の建物のQ値を算出する。例えば、推定部23は、記憶部22に記憶されている15×15ピクセルのヒートマップで表された検査対象画像データ201を、学習済みモデル303としての
図7に示したCNNモデルに入力することによりQ値を算出し、断熱性能指数(推定値)202として記憶部22に記憶する。
【0101】
次に、推定部23は、算出した断熱性能指数202(Q値)に基づいて、検査対象の建物の断熱性能推定結果203を生成する。具体的に、推定部23は、算出したQ値に基づいて、予め設定された、建物の断熱性能を表す複数の等級(区分)の中から一つの等級を選択し、断熱性能推定結果203とする。
【0102】
図10は、断熱性能推定装置2による断熱性能推定結果の一例を示す図である。
例えば、
図10に示すように、国土交通省によって定められている省エネルギー対策等級に準じて、Q≦2.7の範囲を等級4、2.7<Q≦4.2の範囲を等級3、4.2<Q≦5.2の範囲を等級2、Q>5.2の範囲を等級1として予め設定しておく。そして、推定部23は、算出したQ値に対応する等級を等級1~4の中から選択し、断熱性能推定結果203として出力する。あるいは、省エネルギー対策等級よりも理解し易い指標として、Q≦4.2の範囲を等級A(良い)、Q>4.2の範囲を等級B(悪い)として設定しておく。そして、推定部23は、算出したQ値に応じた等級A(良い)または等級B(悪い)を選択し、断熱性能推定結果203として出力してもよい。
【0103】
なお、断熱性能推定結果203は、学習済みモデル303によって算出された値(Q値)に基づいた指標であればよく、断熱性能推定結果203の決定方法は上述した手法に限定されない。例えば、推定部23は、算出したQ値を断熱性能推定結果203として出力してもよい。
【0104】
推定部23から出力された断熱性能推定結果203は、例えば、断熱性能推定装置2の出力装置105としての表示装置(ディスプレイ)に表示され、また、断熱性能推定装置2のI/F装置104を介して、外部のストレージや情報処理装置等に出力される。
【0105】
次に、断熱性能推定システム1における処理の流れについて説明する。
【0106】
図11は、第1の実施の形態に係る断熱性能推定システム1による処理の流れを示すフロー図である。
【0107】
先ず、
図11に示すように、断熱性能推定システム1において、学習済みモデル生成装置3が、学習用画像データ302_1~302_mを生成する(ステップS1)。
【0108】
図12は、学習用画像データ302の生成処理(ステップS1)の詳細な流れを示すフロー図である。
【0109】
ステップS1において、先ず、学習済みモデル生成装置3が、電力データ管理装置4において電力データ40が管理されている建物7_1~7_nのうち、断熱性能指数43が予め登録されている建物7を選択する(ステップS11)。
【0110】
次に、学習済みモデル生成装置3において、データ取得部31が、上述した手法により、ステップS11で選択した建物7に関する電力量のデータ41および気温のデータ42を電力データ管理装置4等から取得する(ステップS12)。
【0111】
次に、学習済みモデル生成装置3において、画像生成部33が、上述した手法により、ステップS12で取得した電力量のデータ41と気温のデータ42とに基づいて、ステップS11で選択した建物7の気温-電力量特性を表す画像301を生成する(ステップS13)。
【0112】
次に、学習済みモデル生成装置3において、ラベリング部34が、ステップS11において選択された建物7の断熱性能指数43を取得する(ステップS14)。
【0113】
次に、ラベリング部34が、ステップS13において生成された画像301に、ステップS14で取得した断熱性能指数43を正解ラベルとして付与し、学習用画像データ302を生成する(ステップS15)。
【0114】
次に、学習済みモデル生成装置3は、学習済みモデル303を生成するために必要な数の学習用画像データ302が生成されたか否かを判定する(ステップS16)。例えば、学習済みモデル生成装置3には、学習済みモデル303を生成するために必要な学習用画像データ302の画像数が予め設定されており、学習済みモデル生成装置3は、学習用画像データ302を生成する度に、生成回数をカウントしておく。そして、学習済みモデル生成装置3は、カウントした生成回数が予め設定された画像数に到達したか否かを判定することにより、必要な数の学習用画像データ302が生成されたか否かを判定する。
【0115】
必要な数の学習用画像データ302が生成されてない場合には(ステップS16:No)、学習済みモデル生成装置3は、ステップS11に戻り、新たな建物7を選択して、当該建物7に関する学習用画像データ302を生成することを繰り返す(ステップS12~S16)。
【0116】
一方、必要な数の学習用画像データ302が生成された場合には(ステップS16:No)、学習済みモデル生成装置3は、学習用画像データ302の生成処理(ステップS1)を終了する。
【0117】
ステップS1が終了した後、学習済みモデル生成装置3は、
図11に示すように、ステップS1で生成した複数の学習用画像データ302を用いて、学習済みモデル303を生成する(ステップS2)。具体的には、学習済みモデル生成部36が、上述した手法により、ステップS1で作成された複数の学習用画像データ302を所定のアルゴリズム(例えば、CNN)に基づいて機械学習することにより、学習済みモデル303を作成する。
【0118】
そして、学習済みモデル303について充分な精度が得られた場合には、その学習済みモデル303を記憶部35に記憶する。学習済みモデル303について充分な精度が得られたか否かの判定は、以下のように行えばよい。例えば、断熱性能推定装置2の推定部23と同様の機能を有する演算部を学習済みモデル生成装置3に設けておき、その演算部にいくつかのサンプルデータを学習済みモデル303に入力して断熱性能指数を算出する。そして、演算部によって算出した断熱性能指数の正解率が所定の閾値を超えた場合に、学習済みモデル303について十分な検出精度が得られたと判定し、その検査結果の正解率が所定の閾値を超えない場合には、引き続き、学習用画像データ302の機械学習を進めればよい。
【0119】
次に、ステップS2において学習済みモデル生成装置3によって生成された学習済みモデル303を、断熱性能推定装置2に登録する(ステップS3)。例えば、ユーザによる断熱性能推定装置2または学習済みモデル生成装置3の入力装置103(キーボードやマウス等)の操作に応じて、学習済みモデル生成装置3が、記憶部35に記憶された学習済みモデル303を断熱性能推定装置2に送信し、断熱性能推定装置2が、受信した学習済みモデル303を記憶部22に記憶する。
【0120】
次に、断熱性能推定装置2が、断熱性能推定処理を実行する(ステップS4)。
例えば、ユーザが断熱性能推定装置2の入力装置103(キーボードやマウス等)を操作して、特定の建物7に関する断熱性能の推定を行うことを指示した場合に、断熱性能推定装置2がその指示に応じて断熱性能推定処理を開始する。
【0121】
図13は、断熱性能推定処理(ステップS4)の流れを示すフロー図である。
【0122】
ステップS4において、先ず、断熱性能推定装置2のデータ取得部21が、ユーザによって指定された建物7の検査対象画像データ201を取得する(ステップS41)。
【0123】
例えば、予め、検査対象の建物7の検査対象画像データ201が断熱性能推定装置2の記憶部22に格納されている場合には、データ取得部21は、記憶部22から検査対象画像データ201を取得する。一方、検査対象の建物7の検査対象画像データ201が断熱性能推定装置2の記憶部22に格納されていない場合には、上述したように、断熱性能推定装置2が、指定された検査対象の建物7の気温-電力量特性の画像データの生成を学習済みモデル生成装置3に要求し、学習済みモデル生成装置3が、当該要求に応じて、検査対象の建物7の気温-電力量特性の画像データを生成して、断熱性能推定装置2に送信する。
【0124】
断熱性能推定装置2のデータ取得部21は、学習済みモデル生成装置3から受信した画像データを、検査対象画像データ201として記憶部22に記憶しておく。
【0125】
次に、断熱性能推定装置2において、推定部23が記憶部22に記憶された学習済みモデル303と、ステップS41で取得した検査対象画像データ201とに基づいて、検査対象の建物7の断熱性能指数を算出する(ステップS42)。具体的には、上述したように、推定部23が、
図7に示すようなCNNモデルに検査対象画像データ201を入力することによって断熱性能指数202としてのQ値を算出する。
【0126】
次に、推定部23は、断熱性能推定結果203を出力する(ステップS43)。例えば、推定部23は、ステップS42において算出したQ値に基づいて、
図10に示す断熱性能を示す複数の等級の中から一つの等級を選択して、断熱性能推定結果203として出力する。断熱性能推定結果203は、例えば、断熱性能推定装置2の出力装置105としての表示装置(ディスプレイ)に表示される。
【0127】
以上の処理手順により、断熱性能推定システム1において、断熱性能を推定するための学習済みモデル303の生成と学習済みモデル303を用いた断熱性能の推定が行われる。
【0128】
なお、上記フロー図において、断熱性能推定処理(ステップS4)は、学習済みモデル303を生成して登録するまでの処理(ステップS1~S3)に連続して行われる必要はない。断熱性能推定処理(ステップS4)を実行する前に、学習済みモデル303を生成して登録するまでの処理(ステップS1~S3)が完了していればよい。
【0129】
以上、第1の実施の形態に係る断熱性能推定装置2は、建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す画像に断熱性能指数をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含む学習済みモデル303に、検査対象の建物の周辺の気温と当該建物における電力量との相関関係を示す検査対象画像データ201を入力することにより、検査対象の建物の断熱性能指数を推定する。
【0130】
これによれば、例えば、ユーザが検査対象の建物の電力量と気温との相関関係を示す画像を用意して断熱性能推定装置2に入力するだけで、その建物の断熱性能を容易に推定することが可能となる。
また、学習用画像データ302および検査対象画像データ201を生成するために必要な電力量のデータ41は、建物に設置されているスマートメータに代表されるデータの送受信が可能な計器70によって容易に取得することができ、また、気温のデータ42も容易に取得することができることから、建物の居住者に大きな負担を強いることはない。
【0131】
このように、第1の実施の形態に係る断熱性能推定装置2によれば、上述した従来の断熱性能の推定手法に比べて、居住者の負担を抑えつつ、より簡単に建物の断熱性能を推定することが可能となる。
【0132】
また、学習用画像データ302の基になる画像301は、建物の周辺の気温と当該建物における電力量とによって特定される点の密度の分布を単位画像毎にヒートマップで表したデータである。
これによれば、学習用画像データ302が、各建物の気温-電力量特性の特徴量をより明確に表現した画像データとなるので、断熱性能の推定精度の高い学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0133】
また、学習済みモデルを生成するための機械学習のアルゴリズムとして、CNNを採用することにより、気温-電力量特性を表す画像の特徴量をより適切に反映した学習済みモデルを生成することができるので、断熱性能の推定精度を更に高めることが可能となる。
【0134】
また、断熱性能指数として熱損失係数(Q値)を用いることにより、断熱性能を適切に推定することが可能となる。また、上述したように、近年の新築住宅の場合、Q値は設計図書の断熱仕様を元に計算できるので、気温-電力量特性の画像301にラベリングする正解データを容易に入手することが可能となる。
【0135】
また、断熱性能推定装置2は、算出した断熱性能指数に基づいて、予め設定された、建物の断熱性能を表す複数の等級の中から一つの等級を選択し、検査対象の建物の断熱性能推定結果として出力する。
これによれば、例えば、検査対象の建物の居住者等にその建物の断熱性能を伝える際に、断熱性能指数としての熱損失係数(Q値)等の数値を単に提示する場合に比べて、その建物の断熱性能の良し悪しを、より直観的に理解してもらうことが可能となる。
【0136】
≪第2の実施の形態≫
図14は、第2の実施の形態に係る断熱性能推定システム1Aにおける学習済みモデル生成装置3Aの機能ブロック構成を示す図である。
図15は、第2の実施の形態に係る断熱性能推定システム1Aにおける断熱性能推定装置2Aの機能ブロック構成を示す図である。
【0137】
第2の実施の形態に係る断熱性能推定システム1Aは、建物の属性毎に学習済みモデルを生成するとともに、検査対象の建物の属性に対応する学習済みモデルを用いて断熱性能を推定する点において、第1の実施の形態に係る断熱性能推定システム1と相違し、その他の点においては断熱性能推定システム1と同様である。
【0138】
第2の実施の形態に係る断熱性能推定システム1Aは、第1の実施の形態に係る断熱性能推定システム1と同様に、ネットワーク5を介して電力データ管理装置4等と通信が可能となっている(
図1参照)。
【0139】
断熱性能推定システム1Aは、学習済みモデル生成装置3Aと断熱性能推定装置2Aを有している。
【0140】
先ず、断熱性能推定システム1Aにおける学習済みモデル生成装置3Aについて説明する。
図14に示すように、学習済みモデル生成装置3Aにおいて、データ取得部31Aは、電力量のデータ41、気温のデータ42、および断熱性能指数43に加えて、建物の属性を示す建物属性情報44を取得する。
【0141】
建物属性情報44は、例えば、建物が存在する地域の情報、および建物の居住者の世帯種別の情報である。なお、建物属性情報44は、上記の例に限られず、建物の構造等の他の情報であってもよい。
【0142】
建物が存在する地域の情報とは、建物の所在地に関する情報であり、例えば、都道府県、市町村、または郵便番号等の情報である。建物の居住者の世帯種別の情報とは、建物の世帯人数に関する情報であり、例えば、単身世帯か否か等の情報である。
【0143】
建物が存在する地域の情報および建物の居住者の世帯種別の情報は、例えば、電力使用の契約において計器IDに紐づけられており、電力データ管理装置4またはネットワーク5に接続された他の情報処理装置内に記憶され、管理されている。
【0144】
データ取得部31Aは、例えば、ネットワーク5を介して電力データ管理装置4または他の情報処理装置から、建物が存在する地域の情報および建物の居住者の世帯種別の情報の少なくとも一つを建物属性情報44として取得し、電力量のデータ41等とともに、建物毎に記憶部35Aに記憶する。
【0145】
学習用画像データ生成部32Aは、学習用画像データ302を生成する。生成された学習用画像データ302は、建物の属性毎に分類される。
【0146】
具体的に、学習用画像データ生成部32Aにおいて、画像生成部33Aは、第1の実施の形態に係る画像生成部33と同様に、データ取得部31Aによって取得した電力量のデータ41と気温のテータ42とに基づいて、建物7の周辺の気温と当該建物7における電力量との相関関係を示す画像301を建物7毎に生成する。
【0147】
ラベリング部34Aは、画像生成部33Aによって生成された気温-電力量特性を表す画像301に、当該画像301に対応する建物7の断熱性能指数43を正解ラベルとして付与し、学習用画像データ302を生成する。
【0148】
ラベリング部34Aは、生成した学習用画像データ302に、建物属性情報44を関連付けて記憶部35Aに記憶する。例えば、ラベリング部34Aは、建物が存在する地域の情報と建物の居住者の世帯種別の情報の少なくとも一つを各学習用画像データ302にタグ付けして記憶部35Aに記憶する。
【0149】
学習済みモデル生成部36Aは、建物の属性が共通する複数の学習用画像データ302を機械学習することにより、建物の属性毎に学習済みモデル303を生成する。
具体的に、学習済みモデル生成部36Aは、学習用画像データ生成部32Aによって生成された学習用画像データ302_1~302_mのうち同一の建物属性情報44がタグ付けされた学習用画像データ302を記憶部35Aから読み出して機械学習することにより、各建物の属性に対応する学習済みモデル303A_1~303A_p(pは2以上の整数)をそれぞれ生成する。
【0150】
例えば、学習済みモデル生成部36Aは、同一の地域に存在する建物の学習用画像データ302を用いて、地域毎(例えば、都道府県、市町村、郵便番号毎)の学習済みモデル303Aを生成し、記憶部35Aに記憶する。また、例えば、学習済みモデル生成部36Aは、世帯毎の学習用画像データ302を用いて、単身世帯の学習済みモデル303Aと複数世帯の学習済みモデル303Aをそれぞれ生成し、記憶部35Aに記憶する。
【0151】
次に、断熱性能推定システム1Aにおける断熱性能推定装置2Aについて説明する。
断熱性能推定装置2Aにおいて、データ取得部21Aは、予め、学習済みモデル生成装置3によって建物の属性毎に生成された学習済みモデル303A_1~303A_pを取得して記憶部22Aに記憶しておく。
【0152】
データ取得部21Aは、断熱性能の検査対象の建物に関する検査対象画像データ201と当該建物の建物属性情報204を取得する。推定部23Aは、データ取得部21Aによって取得した検査対象画像データ201および建物属性情報204と、検査対象の建物の属性に対応する学習済みモデル303Aとに基づいて、検査対象の建物の断熱性能指数202を算出する。
【0153】
具体的には、推定部23Aは、記憶部22Aに記憶されている複数の学習済みモデル303A_1~303A_pのうち、建物属性情報204によって特定される属性に対応する学習済みモデル303A_1~303A_s(s≦p)に検査対象画像データ201をそれぞれ入力することにより、検査対象の建物の断熱性能指数(推定値)202_1~202_sを複数算出し、算出した複数の断熱性能指数202_1~202_sに基づいて、検査対象の建物の断熱性能推定結果203を生成する。
【0154】
ここで、一例として、検査対象の建物の属性が、“X県Y市”且つ“複数世帯”である場合を考える。
【0155】
この場合、先ず、推定部23Aは、例えば、X県Y市内の建物に基づく学習用画像データ302に基づいて生成された学習済みモデル303Aに検査対象画像データ201を入力して、検査対象の建物のQ値を算出し、算出したQ値を断熱性能指数(推定値)202_1として記憶部22Aに記憶する。また、推定部23Aは、複数世帯の建物に基づく学習用画像データ302に基づいて生成された学習済みモデル303に検査対象画像データ201を入力して、検査対象の建物のQ値を算出し、算出したQ値を断熱性能指数(推定値)202_2として記憶部22Aに記憶する。
【0156】
次に、推定部23Aは、算出した複数の断熱性能指数202_1,202_2に基づいて、検査対象の建物の断熱性能推定結果203を生成する。例えば、推定部23Aは、断熱性能指数202_1と断熱性能指数202_2の平均値を算出し、その平均値に基づいて
図10に示した等級を決定し、断熱性能推定結果203として出力する。
【0157】
なお、断熱性能推定結果203としての断熱性能の等級は、複数の断熱性能指数を用いて算出されていればよく、上述した手法に限定されない。例えば、3つ以上の学習済みモデル303を用いて断熱性能指数を算出した場合には、推定部23Aは、最も数の多い等級(断熱性能指数の範囲)を、検査対象の建物の断熱性能推定結果203として出力してもよい。
以上、第2の実施の形態に係る断熱性能推定装置2Aは、検査対象の建物の属性に対応する複数の学習済みモデル303Aに基づいて、検査対象の建物の断熱性能指数を複数算出し、算出した複数の断熱性能指数に基づいて、検査対象の建物の断熱性能推定結果203を生成する。
【0158】
これによれば、検査対象の建物の属性に応じてより適切な学習済みモデルを用いて断熱性能指数を算出することができるので、より高精度な断熱性能の推定が可能となる。特に、建物の属性の情報として、建物が存在する地域の情報や建物の居住者の世帯種別の情報を用いることにより、居住環境や居住者の生活スタイルを考慮した、より高精度な断熱性能の推定が可能となる。
【0159】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0160】
例えば、上記実施の形態では、断熱性能推定装置2と学習済みモデル生成装置3とが一つの断熱性能推定システム1を構成する場合を例示したが、これに限られない。例えば、断熱性能推定に係るサービスの提供者が学習済みモデル303をサービスの受け手であるユーザ(例えば、検査対象の建物の居住者)に提供し、そのユーザが、自ら所持するPCやタブレット端末等の情報処理装置にそれらをインストールすることにより、学習済みモデル生成装置3とは独立して、そのユーザが所有する情報処理装置を断熱性能推定装置2として機能させてもよい。
【0161】
この場合、断熱性能推定装置2としてのユーザが所有するPCやタブレット端末等は、サービス提供者の学習済みモデル生成装置3とインターネットを含むネットワーク5を介して学習済みモデル303を取得してもよいし、予め学習済みモデル303をメモリカード等の記憶媒体に記憶してユーザに提供し、ユーザが学習済みモデル303を自ら所有する情報処理装置にインストールしてもよい。
【0162】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0163】
1,1A…断熱性能推定システム、2,2A…断熱性能推定装置、3,3A…学習済みモデル生成装置、4…電力データ管理装置、5…ネットワーク、7,7_1~7_n…建物、21,21A…データ取得部、22,22A…記憶部、23,23A…推定部、31,31A…データ取得部、32,32A…学習用画像データ生成部、33,33A…画像生成部、34,34A…ラベリング部、35,35A…記憶部、36,36A…学習済みモデル生成部、40,40_1~40_n…電力データ、41…電力量のデータ、42…気温のデータ、43…断熱性能指数、44…建物属性情報、70,70_1~70_n…計器(SM)、101…演算装置、102…記憶装置、103…入力装置、104…I/F装置、105…出力装置、106…バス、201…検査対象画像データ、202…断熱性能指数(推定値)、203…断熱性能推定結果、204…建物属性情報、301,301_1~301_4…画像、302,302_1~302_m…学習用画像データ、303,303A,303A_1~303A_p,303A_s…学習済みモデル、1021…プログラム(学習済みモデル生成用プログラム)、1022,1024…データ、1023…プログラム(断熱性能推定用プログラム)。