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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240911BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D25/20 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021030071
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131230
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 健二
(72)【発明者】
【氏名】河村 力
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-023529(JP,A)
【文献】特開2020-079014(JP,A)
【文献】特開2019-177830(JP,A)
【文献】特開2016-117339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維間に合成樹脂が含侵されると共に長手方向以外の方向に比べて長手方向の割合が多くなるように繊維を配向した繊維強化樹脂により形成された連結部材と、この連結部材よりも曲げ剛性が高く形成されて前記連結部材の長手方向両端側部分に夫々固定された1対の固定部材と、車室とその前側のエンジンルームとを区画するダッシュパネルの上部に配設された車幅方向に延びるカウル部材とを備えた車両の車体構造において、
前記連結部材は、前記カウル部材の前方で前記カウル部材に沿って車幅方向に延びるように、前記1対の固定部材によって前記カウル部材に固定され、
前記連結部材の長手方向両端側部分における前記1対の固定部材との境界部は、前記1対の固定部材から前記連結部材に曲げ荷重が入力されたとき前記連結部材の曲げモーメントの中立面と前記連結部材の横断面との交線で規定された中立軸方向に延びると共に、これら境界部の間の後側境界部間距離が前側境界部間距離よりも小さくなるように、後側ほど車幅方向内側に移行する傾斜状に形成されたことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
前記固定部材は、固定部材アウタと、この固定部材アウタと協働して前記長手方向に延びる閉断面を形成する固定部材インナとを有し、
前記固定部材アウタと固定部材インナの前記境界部に対応する端部が、夫々傾斜状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
前記連結部材は、断面略コ字状のアウタ部材と、このアウタ部材に嵌合させて前記長手方向に延びる閉断面を形成する断面略コ字状のインナ部材とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
前記固定部材の前記連結部材側部分は、前記連結部材の閉断面内に差し込まれたことを特徴とする請求項3に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
前記連結部材の長手方向両端側部分には、前記繊維強化樹脂により形成された1対の第1連結部材であって、エンジンルーム内に膨出するように形成された1対のストラットタワーに一端部が夫々固定された1対の第1連結部材の他端部が、対応する前記固定部材を介して固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維間に合成樹脂材料を含侵させた繊維強化樹脂製連結部材と、この連結部材を車体に固定する1対の固定部材とを備えた車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に設けられたサスペンションタワー部材の上側頂部(以下、サスタワー頂部と表す)は、車両のサスペンション装置のダンパ機構を支持しているため、車体が、ダンパ機構を介した大きな荷重の入力により撓み変形することが知られている。
特に、車両旋回走行時、サスタワー頂部が上下変位することに起因して車体捩りモードが生じることから、車両の操安性や乗員の乗り心地が低下する虞がある。
【0003】
特許文献1の車両の前部車体構造は、サスタワー頂部の上下変位を抑制することを目的として、車室とエンジンルームとを区画するダッシュパネルと、このダッシュパネルに設置されたカウル部材と、ダッシュパネルの左右両端側部分から車体前後方向前方に延びる左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの車幅方向外側部分に夫々接合されると共にサスペンション装置のダンパの上部を支持するために上方に突出するように夫々形成された左右1対のサスペンションタワー部材とを備え、カウル部材とサスペンションタワー部材とを連結する左右1対の金属製サスタワーバーを設けている。
【0004】
近年、繊維強化樹脂、例えば、炭素繊維が含侵された炭素繊維強化樹脂(Carbon-Fiber-Reinforced-Plastic: CFRP)は、高比強度(強度/比重)と高比剛性(剛性/比重)、所謂軽さと強度・剛性とを併せ持つ物質的性質を有するため、航空機や車両等の構造材料として広く使用に供されている。この炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維が強度等の力学的特性を分担し、母材樹脂(マトリックス)が炭素繊維間の応力伝達機能と繊維の保護機能を分担しているため、繊維が延びる繊維方向と非繊維方向(所謂、負荷の掛かる方向)によって物性が大きく異なる異方性材料を構成する。
【0005】
車体剛性と軽量化を両立させるため、繊維強化樹脂を用いる技術が提案されている。
特許文献2のサスタワーバーは、左右1対のサスペンションタワー部材のサスタワー頂部同士、或いは1対のサスタワー頂部とダッシュ部材(例えば、カウル部材)とを連結するサスタワーバーを設け、このサスタワーバーの本体部が繊維強化樹脂製板材で形成され、この繊維強化樹脂製板材は、繊維配向角度が0°/90°のFRPシートと45°/-45°のFRPシートが交互に積層するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-029162号公報
【文献】特開2010-173546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
荒れた路面走行時、サスペンションタワー部材が内倒れすると共にカウル部材が弓形に上下変位するため、サスタワー頂部とカウル部材を含むダッシュ部材との間には捩れ変位が生じる。このサスタワー頂部とダッシュ部材間の捩れ変位に起因してフロアパネル等のパネル部材に膜振動モードが生じることから、車両の走行時の振動減衰性能が悪化する虞がある。特許文献1,2の技術のようなサスペンションタワーバーでは、振動減衰機能を備えていないため、サスタワーバーの曲げ剛性により車体捩りモードを抑制することができても膜振動モードを抑制することはできない。
【0008】
素材を変更することにより、捩れ変位によって振動減衰可能な機能を有するストラットタワーバーを形成し、固定部材を介してカウル部材に取り付けることが考えられる。
しかし、上下変位するカウル部材の前面に沿ってストラットタワーバーを配設した場合、ストラットタワーバーには、構造上、車体の膜振動モードにおいて捩れ変位ではなく曲げ変形しか生じないことから、自身の振動減衰機能を十分に発揮することができない。
即ち、カウル部材のような曲げ入力場であっても振動減衰機能を発揮可能な連結部材を確保することは容易ではない。
【0009】
本発明の目的は、入力場に拘りなく振動減衰機能を発揮可能な車両の車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、繊維間に合成樹脂が含侵されると共に長手方向以外の方向に比べて長手方向の割合が多くなるように繊維を配向した繊維強化樹脂により形成された連結部材と、この連結部材よりも曲げ剛性が高く形成されて前記連結部材の長手方向両端側部分に夫々固定された1対の固定部材と、車室とその前側のエンジンルームとを区画するダッシュパネルの上部に配設された車幅方向に延びるカウル部材とを備えた車両の車体構造において、前記連結部材は、前記カウル部材の前方で前記カウル部材に沿って車幅方向に延びるように、前記1対の固定部材によって前記カウル部材に固定され、前記連結部材の長手方向両端側部分における前記1対の固定部材との境界部は、前記1対の固定部材から前記連結部材に曲げ荷重が入力されたとき前記連結部材の曲げモーメントの中立面と前記連結部材の横断面との交線で規定された中立軸方向に延びると共に、これら境界部の間の後側境界部間距離が前側境界部間距離よりも小さくなるように、後側ほど車幅方向内側に移行する傾斜状に形成されたことを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、前記1対の固定部材連結部材長手方向両端側部分に夫々固定されているため、固定部材によって車幅方向に延びるカウル部材の前方でカウル部材に沿うように固定した車幅方向に延びる連結部材を、長手方向両側から両持ち状態で支持させることができる。そして、前記1対の固定部材から前記連結部材に曲げ荷重が入力されたとき、連結部材とその両端の1対の固定部材との境界部であって、前記連結部材の曲げモーメントの中立面と前記連結部材の横断面との交線で規定された中立軸方向に延びる左右の境界部の間で、後側境界部間距離が前側境界部間距離よりも小さくなるように傾斜状に形成されているため、曲げ入力場であっても、連結部材の後端側に作用する曲げモーメントと端側に作用する曲げモーメントを異ならせることができ、連結部材に作用する上下変位を捩れ変位に変換して連結部材に捩れ変形を生じさせることができる。
【0012】
【0013】
また、前記中立軸方向に延びる境界部が傾斜状に形成されたことにより、境界部に沿って曲げモーメントが徐々に変化するため、連結部材に対する荷重の局所集中を回避することができ、境界部近傍部分を振動減衰に寄与させることができる。従って、膜振動モードによるカウル部材の上下変位を連結部材の捩れ変位に変換して、連結部材の振動減衰機能を発揮させることができ、乗員の乗り心地を改善することができる。
【0014】
請求項の発明は、請求項の発明において、前記固定部材は、固定部材アウタと、この固定部材アウタと協働して前記長手方向に延びる閉断面を形成する固定部材インナとを有し、前記固定部材アウタと固定部材インナの境界部に対応する端部が、夫々傾斜状に形成されたことを特徴としている。
この構成によれば、簡単な構成で連結部材に作用する上下変位を捩れ変位に確実に変換することができる。
【0015】
【0016】
請求項の発明は、請求項1又は2の発明において、前記連結部材は、断面略コ字状のアウタ部材と、このアウタ部材に嵌合させて前記長手方向に延びる閉断面を形成する断面略コ字状のインナ部材とを有することを特徴としている。
この構成によれば、閉断面で連結部材の曲げ剛性の増加を促進し、長手方向寸法の違いで形成される開断面で連結部材の振動減衰性能の増加を促進することができる。
【0017】
請求項の発明は、請求項の発明において、前記固定部材の前記連結部材側部分は、前記連結部材の閉断面内に差し込まれたことを特徴としている。
この構成によれば、固定部材と連結部材との境界部の部品点数を削減しつつ、連結部材の捩れ変位を誘発することができる。
【0018】
請求項の発明は、請求項の発明において、前記連結部材の長手方向両端側部分には、前記繊維強化樹脂により形成された1対の第1連結部材であって、エンジンルーム内に膨出するように形成された1対のストラットタワーのうちの対応するストラットタワーに一端部が夫々連結された1対の第1連結部材の他端部が、対応する前記固定部材を介して固定されたことを特徴としている。
この構成によれば、膜振動モードによるカウル部材の上下変位を、1対の固定部材を介して連結部材と1対の第1連結部材に曲げ荷重として入力し、捩れ変位に変換することが可能である。それ故、これら連結部材と1対の第1連結部材の振動減衰機能を発揮させることができ、乗員の乗り心地を改善することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両の車体構造によれば、連結部材と固定部材との境界部における曲げモーメントを中立軸方向で異ならせることにより、入力場に拘りなく振動減衰機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1に係る車両を斜め上方から視た図である。
図2】前部車体構造の斜視図である。
図3】前部車体構造の平面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】車体モードの説明図であって、(a)は、車体捩りモード、(b)は、膜振動モードの説明図である。
図6】ストラットタワーバーの斜視図である。
図7】ストラットタワーバーの平面図である。
図8】第1連結部材アウタの斜視図である。
図9】第1連結部材インナの斜視図である。
図10】前側固定部材アウタの斜視図である。
図11】前側固定部材インナの斜視図である。
図12】後側固定部材アウタの斜視図である。
図13】後側固定部材インナの斜視図である。
図14図7のXIV-XIV線断面図である。
図15図7のXV-XV線断面図である。
図16図7のXVI-XVI線断面図である。
図17図7のXVII-XVII線断面図である。
図18】第1連結部材アウタの断面拡大図である。
図19】第1連結部材及び前側固定部材の分解斜視図である。
図20】検証で用いるモデルの平面図である。
図21】モデル1の検証結果を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、縦断面図を示す。
図22】モデル2の検証結果を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、縦断面図を示す。
図23】第2連結部材と後側固定部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両の下部車体構造に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施例1について図1図22に基づいて説明する。
まず、車両Vの全体構成について説明する。
図1図4に示すように、車両Vは、モノコック式ボディで構成され、車室Rの底面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの前端部から上方へ立ち上がるように形成され且つエンジンルームEと車室Rとを車幅方向に仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の前面から前方に延びる左右1対のフロントサイドフレーム2と、フロアパネルの後端側部分から後方に延びる左右1対のリヤサイドフレーム(図示略)とを備えている。
【0023】
また、この車両Vは、ダッシュパネル1の上部に形成されると共に車幅方向に延びるカウル部材3と、エンジンルームE内に膨出するように形成された左右1対のストラットタワー4(サスペンションタワー部材)等を備えている。尚、この車両Vは、独立懸架タイプのストラット式サスペンションが搭載されている。以下、矢印F方向を前方とし、矢印L方向を左方とし、矢印U方向を上方として説明する。
【0024】
カウル部材3は、鋼板をプレス成形することにより桶状に形成されている。
このカウル部材3は、カウルパネル5と、このカウルパネル5の前端部から前方に張り出すと共にカウルパネル5と協働して桶状構造体を構成するカウルメンバ6と、カウルパネル5とカウルメンバ6の上部を部分的に覆うカウルグリル7とを主な構成要素としている。
【0025】
図4に示すように、カウルメンバ6の前壁部の左右両端側部分には、前方に張り出した左右1対の取付ブラケット8が配設されている。これら1対の取付ブラケット8は、平面視にて略部分楕円状に形成され、その上面から鉛直上方に延びるスタッドボルト9が夫々設けられている。
【0026】
図1図4に示すように、1対のストラットタワー4は、上方に突出するように夫々形成されている。具体的には、ストラットタワー4は、前後に延びるエプロンレインフォースメント10とフロントサイドフレーム2との間に掛け渡されたホイールエプロン(図示略)からエンジンルームE内に膨出するように形成されている。この車両Vの構成は、略左右対称構造であるため、以下、右側部材及び右側構造について主に説明する。
【0027】
ストラットタワー4は、後側程上方に移行する軸心を有する中空状の円筒部4aと、この円筒部4aの上端部を塞ぐ円環状の頂部4bとを備えている。頂部4bには、上方に延びる複数のスタッドボルト11が立設されている。このストラットタワー4には、フロントサスペンション装置(図示略)のダンパ機構(ダンパ、スプリング等)の上部が部分的に収容されている。ダンパ機構の上端部分に結合されたスプリングシートが、マウントラバーを介して複数の締結部材により頂部4bに締結固定されている(何れも図示略)。
【0028】
次に、ストラットタワーバー20について説明する。
図1図4に示すように、この車両Vには、1対のストラットタワー4とカウルメンバ6とを複数の締結部材を介して構造的に連結するストラットタワーバー20が設けられている。このストラットタワーバー20は、平面視にて略U字状に形成され、乗り心地に影響を与える車体の挙動モード(車体捩れモード、膜振動モード)を抑制可能に構成されている。
【0029】
ここで、車体の挙動モードについて説明する。
車体捩れモードは、車両旋回走行時の挙動モードである。
図5(a)の矢印に示すように、車両旋回走行時、ダンパ機構の伸縮動作に伴いストラットタワー4の頂部4bが上下方向に変位する。この頂部4bの上下変位に起因して車体中心軸回りの車体捩りモードが生じ、操縦安定性が悪化する要因になっている。
【0030】
膜振動モードは、荒れた路面走行時の挙動モードである。
図5(b)の矢印に示すように、荒れた路面走行時、ストラットタワー4が車幅方向内側に内倒れする一方、カウル部材3が弓形に上下方向に変位する。この頂部4bとカウル部材3間の捩れ変位に起因してパネル部材、特に面積が大きいフロアパネルに膜振動モードが生じ、乗り心地が悪化する要因になっている。
【0031】
ストラットタワーバー20の説明に戻る。
図6図7に示すように、ストラットタワーバー20は、後側程車幅方向内側に移行する左右1対の第1連結部材30と、車幅方向に延びて1対の第1連結部材30の後端部間を連結する第2連結部材40(連結部材)と、1対の第1連結部材30の前端部を1対のストラットタワー4の頂部4bから立設されたスタッドボルト11に締結部材23を介して夫々固定する左右1対の前側固定部材50と、1対の第1連結部材30の後端部と第2連結部材40の左右両端部を夫々接続すると共にこれら接続部分をスタッドボルト9と締結部材(図示略)を介して取付ブラケット8に締結固定する左右1対の後側固定部材60(固定部材)とを主な構成要素としている。
【0032】
第1,第2連結部材30,40は、強化材、例えば、炭素繊維に合成樹脂、例えば、熱硬化性エポキシ系合成樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂(CFRP)を主な材料としている。
炭素繊維は、第1,第2連結部材30,40の長手方向の一端から他端に亙って連続して一様に延びる単繊維が所定数束ねられた繊維束(トウ)で構成されている。
前側固定部材50及び後側固定部材60は、アルミニウム合金材料にて構成されている。
それ故、前側固定部材50及び後側固定部材60は、第1,第2連結部材30,40よりも曲げ剛性及び捩り剛性が共に大きくなるように構成されている。
【0033】
第1,第2連結部材30,40の板材は、3種類の層部分によって構成されている。
図18に示すように、第1,第2連結部材30,40は、厚さ方向中央部に配置された中央層部分L1と、この中央層部分L1を挟み込むように配置された本体層部分L2と、この本体層部分L2の表面を覆う表面層部分L3によって構成されている。表面層部分L3は、耐食性(電蝕性)確保のために設けられている。
【0034】
中央層部分L1は、炭素繊維が長手直交方向に延びるように配列された配向90°の繊維強化樹脂層である。本体層部分L2は、前述した炭素繊維が長手方向に延びるように配列された配向0°の繊維強化樹脂層である。表面層部分L3は、織り込まれたガラス繊維に合成樹脂を含侵させたガラス繊維強化樹脂(GFRP)層である。各層の体積割合は、例えば、L1:L2:L3=7:80:13に設定されている。
【0035】
次に、第1連結部材30について説明する。
図8図9図14図15に示すように、第1連結部材30は、長手方向直交断面略コ字状の第1連結部材アウタ31と、第1連結部材アウタ31と協働して長手方向中間部分に長手方向に延びる閉断面C1を形成する断面略コ字状の第1連結部材インナ32とを備えている。第1連結部材アウタ31は、長手方向両端部分に開断面を有している。閉断面C1は、長手方向直交断面において断面中心線Cに対して非対称に構成されている。
【0036】
これにより、第1連結部材30に曲げ荷重が入力された場合、第1連結部材30の捩れ変位に変換している。第1連結部材30による捩れ変位は、歪エネルギーと運動エネルギーに変換され、この歪エネルギーは第1連結部材30の合成樹脂材料に剪断歪として一旦蓄えられる。その後、蓄積された歪エネルギー(剪断歪)は、運動エネルギーに再び変換され、その一部が熱エネルギーとして散逸される。
【0037】
第1連結部材アウタ31は、上壁部31sと、上壁部31sの長手方向に平行な両端部から下方に延びる1対の側壁部31tとを備えている。
側壁部31tのうち長手方向前側部分と後側部分とは、中間部分よりも幅(上下寸法)が大きくなるように設定されている。1対の側壁部31tの前側部分には、前から順に開口部31a,31bが夫々形成され、1対の側壁部31tの後側部分には、前から順に開口部31c,31dが夫々形成されている。上壁部31sの前側部分には、開口部31aに対応した位置に開口部pが形成され、上壁部31sの後側部分には、開口部31dに対応した位置に開口部31qが形成されている。上壁部31sの後側途中部には、上方に突出して左右方向に延びる屈曲部31xが形成されている。
【0038】
第1連結部材インナ32は、第1連結部材アウタ31よりも長手方向寸法が短く構成されている。第1連結部材インナ32は、上壁部32sと、上壁部32sの長手方向に平行な両端部から下方に延びる1対の側壁部32tとを備えている。
側壁部32tのうち長手方向前側部分と後側部分とは、中間部分よりも幅が大きくなるように設定されている。1対の側壁部32tの前側部分には、開口部31bに対応した位置に開口部32bが夫々形成され、1対の側壁部32tの後側部分には、開口部31cに対応した位置に開口部32cが夫々形成されている。上壁部32sの後側途中部には、屈曲部31xに対応した位置に上方に突出して左右方向に延びる屈曲部32xが形成されている。第1連結部材インナ32の長手方向両端部には、断面略コ字状の調整部材21が夫々配設されている。
【0039】
次に、第2連結部材40について説明する。
図16図17に示すように、第2連結部材40は、第1連結部材30と同様の材料で構成され、長手方向直交断面略コ字状の第2連結部材アウタ41と、第2連結部材アウタ41と協働して長手方向中間部分に長手方向に延びる閉断面C2を形成する断面略コ字状の第2連結部材インナ42とを備えている。第2連結部材アウタ41は、長手方向両端部分に開断面を有している。閉断面C2は、長手方向直交断面において断面中心線に対して対称且つ略台形状に構成されている。これにより、第2連結部材40の曲げ剛性を高くしている。
【0040】
第2連結部材アウタ41は、上壁部41sと、上壁部41sの長手方向に平行な両端部から下方に延びる1対の側壁部41tとを備えている。
側壁部41tのうち長手方向左側部分と右側部分とは、中間部分よりも幅が大きくなるように設定されている。1対の側壁部41tの右側部分及び左側部分には、車幅方向外側開口部41a及び車幅方向内側開口部41bが夫々形成され、上壁部41sの右端部分及び左端部分には、開口部41aに対応した位置に開口部41pが夫々形成されている(図6参照)。
【0041】
図17に示すように、第2連結部材インナ42は、第2連結部材アウタ41よりも長手方向寸法が短く構成されている。第2連結部材インナ42は、上壁部42sと、上壁部42sの長手方向に平行な両端部から下方に延びる1対の側壁部42tとを備えている。側壁部のうち長手方向前側部分と後側部分とは、中間部分よりも幅が大きくなるように設定されている。1対の側壁部の前側部分には、開口部41bに対応した位置に開口部42bが夫々形成されている(図6参照)。第2連結部材インナ42の長手方向両端部には、断面略コ字状の調整部材22が夫々配設されている。
【0042】
次に、前側固定部材50について説明する。
図10図11図15に示すように、前側固定部材50は、長手方向直交断面略ハット状の前側固定部材アウタ51と、前側固定部材アウタ51と協働して長手方向前側部分に長手方向に延びる閉断面C3を形成する断面略コ字状の前側固定部材インナ52とを備えている。前側固定部材アウタ51は、前側固定部材インナ52よりも長手方向寸法が短く構成されている。前側固定部材50の閉断面C3は、長手方向に延びると共に第1連結部材30の開断面領域S1bに対応するように配置されている。前側固定部材50の開断面は、閉断面C3の後側に連なると共に第1連結部材30の閉断面領域S1aが対応するように配置されている。
【0043】
前側固定部材アウタ51は、上壁部51sと、上壁部51sの軸心に平行な両端部から下方に延びた後に軸心から離隔方向に延びる1対の側壁部51tとを備えている。
側壁部51tのうち閉断面構成壁部に相当する鉛直部分には、前から順に開口部51m,51aが夫々形成され、フランジ部に相当する水平部分には、開口部51eが夫々形成されている。上壁部51sには、開口部51m,51aに対応した位置に開口部51n,51pが夫々形成されている。尚、開口部51eには、スタッドボルト11が挿通される。
【0044】
前側固定部材インナ52は、上壁部52sと、上壁部52sの長手方向に平行な両端部から下方に延びる1対の側壁部52tとを備えている。側壁部52tには、開口部51mに対応した位置に開口部52m、開口部51aに対応した位置に開口部52a、この開口部52aの後側位置で且つ開口部31b(開口部32b)に対応した位置に開口部52bが夫々形成されている。上壁部52sの前側部分には、開口部51nに対応した位置に開口部52nが形成されている。
【0045】
次に、後側固定部材60について説明する。
図12図13図15図17に示すように、後側固定部材60は、長手方向直交断面略コ字状の後側固定部材アウタ61と、後側固定部材アウタ61と協働して長手方向に延びる閉断面C4を形成する断面略コ字状の後側固定部材インナ62とを備えている。後側固定部材アウタ61は、後側固定部材インナ62よりも長手方向寸法が短く構成されている。後側固定部材60の閉断面C4の車幅方向外側部分は、第1連結部材30の開断面領域S1bに対応するように配置され、後側固定部材60の閉断面C4の車幅方向内側部分は、第2連結部材40の開断面領域S2bに対応するように配置されている。
また、後側固定部材60の車幅方向外側開断面は、第1連結部材30の閉断面領域S1aに対応するように配置され、後側固定部材60の車幅方向内側開断面は、第2連結部材40の閉断面領域S2aに対応するように配置されている。
【0046】
後側固定部材アウタ61は、上壁部61sと、上壁部61sの長手方向に平行な両端部から下方に延びる1対の側壁部61tとを備えている。
側壁部61tには、車幅方向外側に開口部31dに対応した開口部61d、車幅方向内側に開口部41aに対応した開口部61aが夫々形成されている。
上壁部61sには、開口部31qに対応した開口部61qと、開口部41pに対応した開口部61pと、途中部に配置されたスタッド穴61rが夫々形成されている。
【0047】
後側固定部材インナ62は、上壁部62sと、上壁部62sの長手方向に平行な両端部から下方に延びる1対の側壁部62tとを備えている。側壁部62tには、車幅方向外側から順に、開口部31cに対応した開口部62c、開口部31dに対応した開口部62d、開口部41aに対応した開口部62a、開口部41bに対応した開口部62bが夫々形成されている。上壁部62sには、スタッド穴61rに対応したスタッド穴62rが設けられている。尚、開口部61r,62rには、スタッドボルト9が挿通される。
【0048】
図12図13に示すように、後側固定部材アウタ61の車幅方向内側端部と後側固定部材インナ62の車幅方向内側端部は、平面視にて略平行になるように形成されている。
図17に示すように、後側固定部材アウタ61の車幅方向内側端部と第2連結部材アウタ41との境界部B1は、後側固定部材インナ62の車幅方向内側端部と第2連結部材インナ42との境界部B2よりも平面視にて車幅方向外側に配設されている。
【0049】
図7に示すように、左右1対の境界部B1(B2)は、傾斜状に形成されている。
ストラットタワーバー20を車体に取り付けた状態でカウル部材3が弓形に上下方向に変位したとき、中立軸Aに対して境界部B1(B2)は、所定角度θで交差するように設定されている。1対の境界部B1(B2)の境界部間距離は、カウル部材3に最も近接した後側境界部間距離D1が最も短く、カウル部材3から最も離隔した前側境界部間距離D2が最も長くなるように形成されている。尚、中立軸Aは、第2連結部材40の中立面と長手方向直交断面が交差する線である。
【0050】
次に、ストラットタワーバー20の組立工程について説明する。
図19に示すように、第1連結部材30は、開口部31b,31cと開口部32b,32cを夫々位置合わせした後、第1連結部材アウタ31に第1連結部材インナ32を接着剤を用いて閉断面C1を形成するように嵌合固着されている。第1連結部材インナ32の長手方向一端側及び他端側には、1対の調整部材21が夫々配置される。調整部材21の上壁部には開口部21p、側壁部には21aが夫々形成されている。
1対の調整部材21は、第1連結部材アウタ31の開口部31a,31dに開口部21aが対応し、開口部31p,31qに開口部21pが対応するように位置決めされる。
【0051】
第2連結部材40についても、第2連結部材アウタ41と第2連結部材インナ42が略同様の手順で閉断面C2を形成するように嵌合固着されている。
第2連結部材インナ42の長手方向一端側及び他端側には、1対の調整部材22が夫々配置される。調整部材22の上壁部には開口部22p、側壁部には22aが夫々形成されている。1対の調整部材22は、第2連結部材アウタ41の開口部41aに開口部22aが対応し、開口部41pに開口部22pが対応するように位置決めされる。
【0052】
前側固定部材アウタ51は、第1連結部材アウタ31の端部を上方から覆い、前側固定部材インナ52は、調整部材21と第1連結部材インナ32を下方から覆うことで、前側固定部材アウタ51と前側固定部材インナ52は、閉断面C3と開断面とを形成している。前側固定部材50は、第1連結部材30を外周から囲繞しているため、第1連結部材30よりも断面積が大きく、断面二次モーメント及び断面二次極モーメントが大きくなるように構成されている。
【0053】
このとき、開口部51nと開口部52n、開口部51mと開口部52mが夫々一致している。前側固定部材アウタ51の開口部51a,51p及び前側固定部材インナ52の開口部52a,52bは、ビス(図示略)等を介して第1連結部材30に固定されるため、固定部に相当している。開口部51a,51p,52aは、第1連結部材30の開断面領域S1bに対応するように形成され、開口部52bは、第1連結部材30の閉断面領域S1aに対応するように形成されている。
【0054】
後側固定部材アウタ61は、第1連結部材アウタ31の端部を上方から覆い、後側固定部材インナ62は、調整部材25と第1連結部材インナ32を下方から覆うことで、後側固定部材アウタ61と後側固定部材インナ62は、閉断面C4と開断面とを形成している。後側固定部材60は、第1連結部材30を外周から囲繞しているため、第1連結部材30よりも断面積が大きく、断面二次モーメント及び断面二次極モーメントも大きくなるように構成されている。後側固定部材アウタ61の開口部61d,61q及び後側固定部材インナ62の開口部62c,62dは、ビス(図示略)等を介して第1連結部材30に固定されるため、固定部に相当している。
【0055】
また、後側固定部材アウタ61は、第2連結部材アウタ41の端部を上方から覆い、後側固定部材インナ62は、調整部材27と第2連結部材インナ42を下方から覆うことで、後側固定部材アウタ61と後側固定部材インナ62は、閉断面C4と開断面とを形成している。後側固定部材60は、第2連結部材40を外周から囲繞しているため、第2連結部材40よりも断面積が大きく、断面二次モーメント及び断面二次極モーメントも大きくなるように構成されている。
【0056】
後側固定部材アウタ61の開口部61a,61p及び後側固定部材インナ62の開口部62a,62bは、ビス(図示略)等を介して第2連結部材40に固定されるため、固定部に相当している。開口部61a,61p,62aは、第2連結部材40の開断面領域S2bに対応するように形成され、開口部62bは、第2連結部材40の閉断面領域S2aに対応するように形成されている。
【0057】
図17に示すように、ストラットタワーバー20は、第2連結部材40の長手方向途中部では、第2連結部材アウタ41と第2連結部材インナ42の2枚、これより車幅方向外側部分では、第2連結部材アウタ41と第2連結部材インナ42と後側固定部材インナ62の3枚、更に車幅方向外側部分では、後側固定部材アウタ61と第1連結部材アウタ31と第2連結部材インナ42と後側固定部材インナ62の4枚の板厚を有している。更に車幅方向外側部分では、ストラットタワーバー20は、後側固定部材アウタ61と第1連結部材アウタ31と調整部材27と後側固定部材インナ62の4枚、更に車幅方向外側部分では、後側固定部材アウタ61と第1連結部材アウタ31と後側固定部材インナ62の3枚、更に車幅方向外側部分では、後側固定部材アウタ61と後側固定部材インナ62の2枚の板厚を有している。
【0058】
以上により、ストラットタワーバー20は、長手方向に沿って板厚の変化を視たとき、2枚以上変化することがない。換言すれば、ストラットタワーバー20は、長手方向に沿った部材の剛性変化を抑制しているため、車体挙動モードに起因した局所変位の発生を抑制することができる。
【0059】
次に、本実施例の車両Vの車体構造における作用、効果について説明する。
作用、効果の説明に当り、膜振動モードにおける車両Vの変形挙動についてCAE(Computer Aided Engineering)による解析を行った。
【0060】
図20(a)に示すように、ストラットタワーバーモデルM1は、材料、寸法、剛性、強度等性能が本実施形態と同じ仕様になるように構成されている。
第2連結部材40に相当する連結部材40Aと後側固定部材60に相当する固定部材60Aの境界部B1は、中立軸Aに対して角度θで交差し、前側境界部間距離D2が後側境界部間距離D1よりも長くなるように設定されている。
【0061】
図20(b)に示すように、ストラットタワーバーモデルM2は、連結部材40Bと固定部材60Bの境界部B3を除き、モデルM1と同じ仕様になるように構成されている。
境界部B3は中立軸Aに対して平行になるように形成されているため、前側境界部間距離と後側境界部間距離は等しく境界部間距離D3に設定されている。
モデルM1,M2はカウル部材3の前側近傍位置に側面視にて片持ち状に配置されると共にスタッドボルト9(取付ブラケット8)に固定された状態で、荒れた路面走行時の挙動を夫々解析した。
【0062】
図21及び図22に解析結果を示す。
図21(a)に示すように、連結部材40Aは、膜振動モードのカウル部材3による上下変位に伴って上下変形する。このとき、連結部材40Aにはカウル部材3から一様な荷重が入力されるため、両端部には矢印に示すような曲げモーメントが生じる。
図21(b)に示すように、前側境界部間距離D2が後側境界部間距離D1よりも長いため、カウル部材3(車体)に近い境界部B1の後側端部に曲げモーメントに起因した歪δが発生する。換言すれば、カウル部材3の上下変位を連結部材40Aの捩れ変位に変換することにより、連結部材40Aに捩れ変形を誘発している。尚、交差角度θが大きい程、変換効率が高くなり、振動減衰性能が向上する。
【0063】
図22(a)に示すように、連結部材40Bは、膜振動モードのカウル部材3による上下変位に伴って上下変形して両端部に矢印に示すような曲げモーメントが生じる。
図22(b)に示すように、前側境界部間距離と後側境界部間距離は等しく境界部間距離D3に設定されているため、境界部B3の前側端部と後側端部に両者の歪差は生じない。
従って、連結部材40Bに捩れ変形は発生しない。
【0064】
この車両Vの車体構造によれば、1対の後側固定部材60と第2連結部材40との境界部B1が第2連結部材40の長手方向両端側部分に夫々形成されているため、車体に対して第2連結部材40を長手方向両側から両持ち状態で支持させることができる。1対の後側固定部材60から第2連結部材40に曲げ荷重が入力されたとき、第2連結部材40の曲げモーメントの中立面と第2連結部材40の横断面との交線で規定された中立軸A方向に延びる境界部B1のうち後側境界部間距離D1と前側境界部間距離D2が異なるように設定されているため、曲げ入力場であっても、境界部B1のうち後端側に作用する曲げモーメントと前端側に作用する曲げモーメントを異ならせることができ、第2連結部材40に作用する上下変位を捩れ変位に変換して第2連結部材40に捩れ変形を生じさせることができる。
【0065】
境界部B1の後端部が車体に近接して配置されると共に境界部B1の前端部が車体から離隔して配置され、後側境界部間距離D1が前側境界部間距離D2よりも小さいことを特徴としている。この構成によれば、車体の側方に配置された第2連結部材40であっても、後側固定部材60と第2連結部材40との境界部B1の後端部に作用する曲げモーメントと前端部に作用する曲げモーメントを異ならせることができる。また、後側境界部間距離D1が前側境界部間距離D2よりも小さいため、第2連結部材40の捩れ変位を増すことができる。
【0066】
中立軸A方向に延びる境界部B1が、傾斜状に形成されている。
これにより、境界部B1に沿って曲げモーメントが徐々に変化するため、第2連結部材40に対する荷重の局所集中を回避することができる。また、境界部B1近傍部分を振動減衰に寄与させることができる。
【0067】
後側固定部材60は、後側固定部材アウタ61と、この後側固定部材アウタ61と協働して長手方向に延びる閉断面C4を形成する後側固定部材インナ62とを有し、後側固定部材アウタ61と後側固定部材インナ62の境界部B1,B2は、夫々傾斜状に形成されているため、簡単な構成で第2連結部材40に作用する上下変位を捩れ変位に確実に変換することができる。
【0068】
第2連結部材40は、断面略コ字状の第2連結部材アウタ41と、この第2連結部材アウタ41に嵌合させて長手方向に延びる閉断面C2を形成する断面略コ字状の第2連結部材インナ42とを有するため、閉断面C2で第2連結部材40の曲げ剛性の増加を促進し、長手方向寸法の違いで形成される開断面で第2連結部材40の振動減衰性能の増加を促進することができる。
【0069】
車幅方向に延びて車室RとエンジンルームEとを区分するダッシュパネル1と、ダッシュパネル1の上部に配設されたカウル部材3とを有し、第2連結部材40は、カウル部材3の車幅方向一端側部分と他端側部分とに連結されたため、膜振動モードによるカウル部材3の上下変位を第2連結部材40の捩れ変位に変換することにより、第2連結部材40の振動減衰機能を発揮させることができ、乗員の乗り心地を改善することができる。
【0070】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、後側固定部材アウタ61と第2連結部材アウタ41との境界部B1と後側固定部材インナ62と第2連結部材インナ42との境界部B2とが車幅方向にオフセット配置された例を説明したが、両者が重畳するように車幅方向で同じ位置に配置しても良い。
【0071】
2〕前記実施形態においては、第2連結部材40が第2連結部材アウタ41と第2連結部材インナ42とからなり、断面矩形状に構成された例を説明したが、単一部材からなる中実の板材で構成しても良い。従って、長手直交方向の断面形状が、円形、又は多角形の閉断面或いは開断面形状を採用しても良い。断面内に発泡充填剤等の充填材料を配設しても良い。また、閉断面或いは開断面形状は、アウタ及びインナの2部材で構成しても良く、3部材以上で構成しても良い。断面形状及び構成部材は、任意に設定可能である。
【0072】
3〕前記実施形態においては、後側固定部材アウタ61と第2連結部材アウタ41との境界部B1であって中立軸A方向に延びる境界部B1が傾斜状に形成された例を説明したが、境界部の形状を任意に設定可能である。
図23(a)に示すように、境界部をステップ状に形成しても良い。これにより、後側境界部間距離D1と前側境界部間距離D2を異ならせることができ、境界部の形状により固定部材60Cと連結部材40Cとの境界部のうち一端側に作用する曲げモーメントと他端側に作用する曲げモーメントを異ならせることができる
【0073】
図23(b)に示すように、固定部材60Dと連結部材40Dとの境界部を湾曲状に形成しても良い。これにより、後側境界部間距離D1と前側境界部間距離D2を異ならせることができ、境界部の形状を滑らかに形成することができる。
また、図23(c)に示すように、固定部材60Eと連結部材40Eとの境界部を2段傾斜状に形成しても良い。これにより、曲げモーメントの変化傾向を多段階に変更することができる。
【0074】
図23(d)に示すように、固定部材60Fと連結部材40Fとの境界部を連結部材40Fの閉断面内に形成しても良い。固定部材60Fの連結部材40F側延長部分60Gを連結部材40Fの閉断面内に挿入している。これにより、固定部材60Fと連結部材40Fとの境界部の部品点数を削減しつつ、連結部材40Fの捩れ変位を誘発することができる。
【0075】
4〕前記実施形態においては、ストラット式サスペンションの例を説明したが、少なくとも、上方に突出した円筒状のタワー部材を有していれば良く、スイングアーム式或いはマルチリンク式サスペンションを備えた車両に適用しても良い。
【0076】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0077】
1 ダッシュパネル
3 カウル部材
40 第2連結部材
41 第2連結部材アウタ
42 第2連結部材インナ
60 後側固定部材
61 後側固定部材アウタ
62 後側固定部材インナ
V 車両
B1 (アウタ側)境界部
B2 (インナ側)境界部
C2 (第2連結部材)閉断面
C4 (後側固定部材)閉断面
D1 後側境界部間距離
D2 前側境界部間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23