(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】打球パラメータ測定装置及び打球パラメータ測定方法
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
(21)【出願番号】P 2024086625
(22)【出願日】2024-05-28
【審査請求日】2024-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511037447
【氏名又は名称】株式会社GPRO
(73)【特許権者】
【識別番号】524201918
【氏名又は名称】ピーティーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】永井 郷一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雅信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭広
【審査官】酒井 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-178292(JP,A)
【文献】特開2014-062882(JP,A)
【文献】国際公開第2022/254996(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0188353(US,A1)
【文献】米国特許第6456232(US,B1)
【文献】特開2003-210638(JP,A)
【文献】特開2009-153930(JP,A)
【文献】特開2010-022739(JP,A)
【文献】特開2010-253238(JP,A)
【文献】特開2011-089907(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/045496(JP,A1)
【文献】特開2021-071387(JP,A)
【文献】特開2017-169950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/36
A63B 71/06
G01S 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフプレイヤーがゴルフクラブのヘッドでゴルフボールを打撃する打席に向けてマイクロ波を発射するドップラーセンサを用いて、発射されたマイクロ波と、当該打席の動体からの反射波を受信するセンサ制御部と、
前記受信されたマイクロ波と反射波とに基づいて、前記受信の時刻における速度毎の信号強度の分布を示す分布データを生成する生成制御部と、
前記生成される分布データのうち、一部の速度の信号強度が、予め設定された取得開始閾値を超過すると、経時的に生成される分布データの蓄積を開始する蓄積制御部と、
前記蓄積される分布データのうち、全ての速度の信号強度が、予め設定された解析開始閾値未満になると、当該信号強度が前記解析開始閾値未満となった分布データの時刻から、過去に向かって、経時的に蓄積された分布データを逆経時的に再生する逆再生制御部と、
前記逆経時的に再生される分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すピークをボールピークとして特定し、当該特定したボールピークに基づいて、前記ゴルフボールの速度を算出するBS算出制御部と、
前記逆経時的に再生される分布データのうち、前記ボールピークが消失した時刻の分布データを特定し、当該特定した分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すヘッドピークに基づいて、前記ゴルフクラブのヘッドの速度を算出するHS算出制御部と、
を備える打球パラメータ測定装置。
【請求項2】
前記解析開始閾値は、前記取得開始閾値よりも低く設定される、
請求項1に記載の打球パラメータ測定装置。
【請求項3】
前記ボールピークが出現する直前の時刻を、前記ゴルフプレイヤーが前記ゴルフクラブのヘッドで前記ゴルフボールを打撃するトリガー時刻として取得するトリガー制御部
を更に備える、
請求項1に記載の打球パラメータ測定装置。
【請求項4】
ゴルフプレイヤーがゴルフクラブのヘッドでゴルフボールを打撃する打席に向けてマイクロ波を発射するドップラーセンサを用いて、発射されたマイクロ波と、当該打席の動体からの反射波を受信するセンサ制御工程と、
前記受信されたマイクロ波と反射波とに基づいて、前記受信の時刻における速度毎の信号強度の分布を示す分布データを生成する生成制御工程と、
前記生成される分布データのうち、一部の速度の信号強度が、予め設定された取得開始閾値を超過すると、経時的に生成される分布データの蓄積を開始する蓄積制御工程と、
前記蓄積される分布データのうち、全ての速度の信号強度が、予め設定された解析開始閾値未満になると、当該信号強度が前記解析開始閾値未満となった分布データの時刻から、過去に向かって、経時的に蓄積された分布データを逆経時的に再生する逆再生制御工程と、
前記逆経時的に再生される分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すピークをボールピークとして特定し、当該特定したボールピークに基づいて、前記ゴルフボールの速度を算出するBS算出制御工程と、
前記逆経時的に再生される分布データのうち、前記ボールピークが消失した時刻の分布データを特定し、当該特定した分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すヘッドピークに基づいて、前記ゴルフクラブのヘッドの速度を算出するHS算出制御工程と、
を備える打球パラメータ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打球パラメータ測定装置及び打球パラメータ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ練習場やゴルフ場において、ゴルフプレイヤーがゴルフクラブのヘッドでゴルフボールを打撃した際のゴルフボールの速度(ボールスピードともいう)やゴルフクラブのヘッドの速度(ヘッドスピードともいう)を測定する技術が存在する。例えば、特開2003-210638号公報(特許文献1)には、超音波センサと、DSPと、表示器とを備える運動測定装置が開示されている。ここで、超音波センサは、ゴルフクラブフェースに対向させて設置され、DSPは、その検出した音圧をA/D変換し、そのディジタル信号を周波数解析する。又、表示器は、解析結果を数値表示する。更に、運動測定装置は、超音波センサでとらえた信号をウェーブレット変換により時間-周波数解析することで、クラブヘッドの速度と加速度の測定を行う。これにより、スイング時におけるゴルフクラブヘッドの運動、つまり速度と加速度を測定することに関し、測定装置自体を携帯可能な大きさにすることと、正確な測定を行うことができるとしている。
【0003】
又、特開2009-153930号公報(特許文献2)には、ゴルフボール固定手段と、ドップラーセンサと、速度算出制御手段と、打撃検出手段と、を備えたヘッドスピード計測装置が開示されている。ここで、ゴルフボール固定手段は、ゴルフボールを所定の位置に固定するための固定面を片端側に備え、水平面(地面)に設置される。又、ドップラーセンサは、ゴルフクラブをスイングしたとき、ゴルフクラブ先端のヘッドの移動状態を周波数に換算し、検知信号として外部に出力する。更に、速度算出制御手段は、検知信号を記憶し、記憶された検知信号に基づいて、ヘッドスピードを算出する。又、打撃検出手段は、ゴルフボール固定手段からゴルフボールが離れたことを検知し、離遠信号を速度算出制御手段へ入力する。そして、速度算出制御手段は、離遠信号が入力された直前の検知信号の電圧ピーク値を基準としてヘッドスピードを算出する。これにより、ゴルフクラブをスイングした時、ヘッドがゴルフボールに衝突するインパクトの瞬間のヘッドスピードを計測することができるとしている。
【0004】
又、特開2010-022739号公報(特許文献3)には、ヘッドスピード計測手段と、ボールスピード計測手段と、ミート率算出手段と、報知手段と、を備えるゴルフ支援システムが開示されている。ここで、ヘッドスピード計測手段は、ゴルフクラブのスイングに伴い移動するクラブヘッドのヘッドスピードを求め、ボールスピード計測手段は、スイングに伴いクラブヘッドにて打ち出されたボールのボールスピードを求める。又、ミート率算出手段は、ヘッドスピード計測手段とボールスピード計測手段でそれぞれ求めたヘッドスピードとボールスピードとに基づきミート率を求める。更に、報知手段は、求めたミート率と、あらかじめ設定された基準ミート率とを比較し、ミート率が基準ミート率を超えた場合に、ナイスショットを報知する。これにより、実際にボールを打った際のミート率に関する情報(ミート率の履歴情報の表示やナイスショットの報知等)を、わかりやすくユーザに提供することができるとしている。
【0005】
又、特開2010-253238号公報(特許文献4)には、ドップラーセンサと、速度算出制御手段と、を備えたヘッドスピード計測装置が開示されている。ここで、ドップラーセンサは、ゴルフボールを所定の位置に固定するための固定面を片端に有し、水平面(地面)に設置されたゴルフボール固定手段と、電波ビームを放射する放射面を有し、ゴルフクラブをスイングしたとき、ゴルフクラブ先端のヘッドの移動状態を周波数に換算し、検知信号として外部に出力する。又、速度算出制御手段は、検知信号の周波数に基づいてヘッドスピードを算出し、放射面は、ゴルフクラブをスイングしたときのスイング経路の直下に相当する水平面よりも下方側で、且つ、ゴルフボール固定手段を基準としてヘッドが離遠する側において略天頂方向に向けて配置され、放射面から放射される電波ビームの少なくともいずれかは、ゴルフボール固定手段の方向に鉛直方向から傾けて放射される。これにより、スイングスピード計測装置を地中に隠蔽した状態で計測することを可能にするとしている。
【0006】
又、特開2011-089907号公報(特許文献5)には、ドップラーセンサと、検出部と、蓄積部と、判定部と、期間設定部と、演算部と、表示部と、制御部と、を備える移動体の速度計測装置が開示されている。ここで、ドップラーセンサは、移動体に向けて送信波を送信するとともに、移動体で反射された反射波を受信し、ドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する。又、検出部は、ドップラー信号を、ドップラー周波数に対応付けられた中間データに変換するとともに、中間データを予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。更に、蓄積部は、検出部でサンプリングされた中間データを時間経過に従って順番に蓄積し、判定部は、蓄積部に蓄積された中間データが時間経過とともにN個(Nは2以上の自然数)連続して数値が増加あるいは減少したか否かを判定する。そして、期間設定部は、判定部による判定結果が肯定である場合に、中間データがN個連続して数値が増加あるいは減少した時点を境界点とし、中間データの先頭データのサンプリング時点から境界点までの期間を第1期間とし、境界点から中間データの最終データのサンプリング時点までの期間を第2期間として設定する。又、演算部は、第1期間における中間データの最小値あるいは最大値に基づいて最高速度としての第1速度データを求める第1演算動作と、第2期間における中間データの平均値に基づいて平均速度としての第2速度データを求める第2演算動作とを行う。そして、表示部は、第1速度データおよび第2速度データの双方を表示可能な表示領域を有し、制御部は、第1速度データおよび第2速度データの一方または双方を表示領域に表示させる。これにより、移動体の最高速度と平均速度との双方の計測および表示を的確に行うことができるとしている。
【0007】
又、再表2014/045496号公報(特許文献6)には、単一のアンテナと、ドップラーセンサと、信号強度分布データ生成部と、速度演算部と、移動方向演算部と、を備える移動体の計測装置が開示されている。ここで、単一のアンテナは、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて移動体に向けて送信波を送信するとともに、移動体で反射された反射波を受信して受信信号を生成する。又、ドップラーセンサは、アンテナに送信信号を供給するとともに、アンテナから供給される受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する。又、信号強度分布データ生成部は、ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成する。ここで、速度演算部は、信号強度分布データに基づいて、移動体の移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、検出したドップラー周波数成分に基づいて速度を算出する。又、移動方向演算部は、予め実測され得られている基準時刻における移動体の速度と基準時刻から所定時間経過後における移動体の速度との差分と、移動体の移動方向との相関関係に基づいて、速度演算部で算出された速度から移動方向を算出する。これにより、単一のアンテナのみを用いて移動体の移動方向および移動速度を計測することができ、計測装置の低コスト化および小型化を図ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-210638号公報
【文献】特開2009-153930号公報
【文献】特開2010-022739号公報
【文献】特開2010-253238号公報
【文献】特開2011-089907号公報
【文献】再表2014/045496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、ゴルフクラブのヘッドによるゴルフボールの打撃時のボールスピードやヘッドスピード、これらを用いて算出されるミート率は、打球パラメータとも呼ばれ、ゴルフプレイヤーのプレイの良し悪しを示している。そのため、打球パラメータは、ゴルフプレイヤーにとって極めて興味のある値であり、ゴルフプレイヤーは、打球パラメータを精度高く測定する打球パラメータ測定装置を常に求めている。
【0010】
一方、打球パラメータ測定装置は、通常、打席の後ろにドップラーセンサを設置することで、ボールスピードやヘッドスピードを測定する。ここで、ドップラーセンサは、打席にマイクロ波を発射し、打席に存在する動体のゴルフクラブのヘッドやゴルフボールに照射して反射されたマイクロ波の反射波を受信する。そして、打球パラメータ測定装置は、ドップラーセンサから、発射したマイクロ波の周波数と、受信したマイクロ波の周波数との差分に基づいて、動体のボールスピードやヘッドスピードを算出する。
【0011】
ここで、ドップラーセンサは、打席で動く全ての動体からのマイクロ波の反射波を受信するため、ゴルフクラブのヘッドやゴルフボールだけでなく、ゴルフプレイヤーの体の動きに関係するマイクロ波の反射波を受信し、これらの動きに関係する速度もノイズとして算出する。そのため、どの速度が、ボールスピードか、ヘッドスピードかを識別することが難しく、ヘッドスピードやボールスピードを精度高く測定することが出来ないという課題がある。
【0012】
特に、ヘッドスピードについて、ドップラーセンサは、ゴルフクラブのヘッドの動きからのマイクロ波の反射波とともに、ゴルフクラブを操作するゴルフプレイヤーの手の動きや腕の動きからのマイクロ波の反射波を受信する。このことから、打球パラメータ測定装置は、ヘッドスピードを算出する際に、ゴルフプレイヤーの手や腕の動きに関係する速度も合わせて算出することになり、ヘッドスピードにノイズが常に含まれ、ヘッドスピードの特定が困難となる。
【0013】
ここで、特許文献1に記載の技術では、ウェーブレット変換を用いているが、この場合であっても、超音波センサでとらえた信号に、体の動きに関係する信号が含まれると、上述と同様の課題が生じる。又、特許文献2に記載の技術では、ゴルフボールが離れたことを示す離遠信号を用いて、離遠信号が入力された直前の検知信号の電圧ピーク値を基準としてヘッドスピードを算出するが、直前の検知信号の電圧ピーク値が、ゴルフクラブのヘッドの動きに正確に対応しているか不明である。又、特許文献3に記載の技術では、ゴルフクラブのスイングに伴い移動するクラブヘッドのヘッドスピードを算出することが出来ることを前提としており、ヘッドスピードが正確か否かは不明である。又、特許文献4に記載の技術では、ゴルフクラブ先端のヘッドの移動状態を周波数に換算しているが、ゴルフクラブの種類が変われば、その移動状態の周波数も変わる可能性があり、ヘッドスピードを常に正確に算出することが出来るか不明である。又、特許文献5に記載の技術では、ドップラー周波数に対応付けられた中間データのうち、第1期間における中間データの最小値あるいは最大値に基づいて最高速度を求め、第2期間における中間データの平均値に基づいて平均速度を求めるが、ヘッドスピードを直接、且つ、正確に算出することが出来るか不明である。更に、特許文献6に記載の技術では、ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成し、信号強度分布データに基づいて、移動体の移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出するが、この場合でも、ゴルフプレイヤーの手や腕の動きに関係するノイズとなるドップラー周波数成分の検出を避けることが出来ない。そのため、特許文献1-6に記載の技術では、ボールスピードやヘッドスピードを精度高く測定することが出来ない。
【0014】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ボールスピードとヘッドスピードを精度高く測定することが可能な打球パラメータ測定装置及び打球パラメータ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る打球パラメータ測定装置は、センサ制御部と、生成制御部と、蓄積制御部と、逆再生制御部と、BS算出制御部と、HS算出制御部と、を備える。センサ制御部は、ゴルフプレイヤーがゴルフクラブのヘッドでゴルフボールを打撃する打席に向けてマイクロ波を発射するドップラーセンサを用いて、発射されたマイクロ波と、当該打席の動体からの反射波を受信する。生成制御部は、前記受信されたマイクロ波と反射波とに基づいて、前記受信の時刻における速度毎の信号強度の分布を示す分布データを生成する。蓄積制御部は、前記生成される分布データのうち、一部の速度の信号強度が、予め設定された取得開始閾値を超過すると、経時的に生成される分布データの蓄積を開始する。逆再生制御部は、前記蓄積される分布データのうち、全ての速度の信号強度が、予め設定された解析開始閾値未満になると、当該信号強度が前記解析開始閾値未満となった分布データの時刻から、過去に向かって、経時的に蓄積された分布データを逆経時的に再生する。BS算出制御部は、前記逆経時的に再生される分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すピークをボールピークとして特定し、当該特定したボールピークに基づいて、前記ゴルフボールの速度を算出する。HS算出制御部は、前記逆経時的に再生される分布データのうち、前記ボールピークが消失した時刻の分布データを特定し、当該特定した分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すヘッドピークに基づいて、前記ゴルフクラブのヘッドの速度を算出する。
【0016】
又、本発明に係る打球パラメータ測定方法は、センサ制御工程と、生成制御工程と、蓄積制御工程と、逆再生制御工程と、BS算出制御工程と、HS算出制御工程と、を備える。ここで、打球パラメータ測定方法の各制御工程は、打球パラメータ測定装置の各制御部に対応する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ボールスピードとヘッドスピードを精度高く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る打球パラメータ測定装置の概略図である。
【
図2】本発明に係る打球パラメータ測定装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明に係る打球パラメータ測定方法の実行手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明に係る打球パラメータ測定装置のドップラーセンサと測定装置と表示装置と画像撮影装置の一例を示す図(
図4A)と、ドップラーセンサによる第一の時刻での第一の分布データの一例を示す図(
図4B)と、である。
【
図5】第一の時刻での第一の分布データと第二の時刻での第二の分布データの一例を示す図(
図5A)と、第三の時刻での第三の分布データとメモリへの蓄積の一例を示す図(
図5B)と、である。
【
図6】第四の時刻での第四の分布データと第五の時刻での第五の分布データの一例を示す図(
図6A)と、第六の時刻での第六の分布データと第七の時刻での第七の分布データの一例を示す図(
図6B)と、である。
【
図7】逆経時的に再生される分析データでボールスピードを算出する場合の一例を示す図(
図7A)と、逆経時的に再生される分析データでヘッドスピードを算出する場合の一例を示す図(
図7B)と、である。
【
図8】様々なヘッドピークの形状の一例を示す図(
図8A)と、トリガー時刻を利用した打席の画像とゴルフボールの軌跡の一例を示す図(
図8B)と、である。
【
図9】打球パラメータ測定装置の実施例の一例を示す図(
図9A)と、ゴルフプレイヤーのスイングの画像の一例を示す図(
図9B)と、である。
【
図10】取得開始閾値を示した第三の時刻での第三の分布データの一例を示す図(
図10A)と、解析開始閾値を示した第七の時刻での第七の分布データの一例を示す図(
図10B)と、である。
【
図11】第六の時刻での第六の分布データでボールスピードを算出する場合の一例を示す図(
図11A)と、第四の時刻での第四の分布データでヘッドスピードを算出する場合の一例を示す図(
図11B)と、である。
【
図12】参考例と実施例のボールスピードとヘッドスピードの算出結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0020】
本発明に係る打球パラメータ測定装置1は、
図1に示すように、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃する打席100に設けられ、ドップラーセンサ10と、測定装置11と、を備える。
【0021】
ここで、ドップラーセンサ10は、内部に発信部10aと受信部10bとを備え、発信部10aで打席100の上にマイクロ波を発射する。すると、マイクロ波が、打席100の上に存在する動体(例えば、ゴルフクラブのヘッドH、ゴルフボールB、ゴルフプレイヤーP等)に照射して反射し、ドップラーセンサ10は、反射されたマイクロ波の反射波を受信部10bで受信する。
【0022】
又、測定装置11は、ドップラーセンサ10と通信可能に接続され、ドップラーセンサ10から発射されたマイクロ波の周波数と、受信したマイクロ波の反射波の周波数とに基づいて、ゴルフボールBの速度(ボールスピード)やゴルフクラブのヘッドHの速度(ヘッドスピード)を算出する(後述する)。
【0023】
又、打球パラメータ測定装置1は、表示装置12を備えても良い。表示装置12は、測定装置11と通信可能に接続され、測定装置11が算出したボールスピードやヘッドスピード等を表示する。ここで、測定装置11は、表示装置12を兼ねても良いく、例えば、測定装置11と、表示装置12とを一体とした端末装置や携帯端末装置であっても良い。
【0024】
又、打球パラメータ測定装置1は、画像撮影装置13を備えても良い。画像撮影装置13は、測定装置11と通信可能に接続され、打席100上の画像を撮影する。測定装置11は、画像撮影装置13からの画像と、算出したボールスピードやヘッドスピードとを活用して、ボールBの軌跡やゴルフプレイヤーPの動きを画像内に表示する。ここで、画像撮影装置13は、例えば、高解像度で高速に連続撮影を可能にする高性能カメラを採用することが出来る。又、画像撮影装置13は、基本的に1台のカメラであるが、複数台(例えば、2台)のカメラとしても構わない。
【0025】
ここで、ドップラーセンサ10と、測定装置11と、表示装置12と、画像撮影装置13との構成に特に限定は無いが、例えば、全ての装置を、端末装置や携帯端末装置として構成しても良いし、ドップラーセンサ10と、画像撮影装置13とを打席100に設置し、測定装置11を、ネットワーク上のクラウドとし、表示装置12や画像撮影装置13を、ゴルフプレイヤーが現場に携帯する携帯端末装置としても良い。
【0026】
尚、ドップラーセンサ10と、測定装置11とは、図示しないCPU(GPU)、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。又、表示装置12と、画像撮影装置13とが存在する場合は、表示装置12と、画像撮影装置13とは、同様に、CPU(GPU)、ROM、RAM等を内蔵する。又、後述する各制御部についても、CPUがプログラムを実行することで、当該各制御部を実現する。
【0027】
次に、
図2-
図7を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、ゴルフプレイヤーPが、ゴルフ練習場やゴルフ場に訪れて、
図4Aに示すように、打席100に設けられた打球パラメータ測定装置1のドップラーセンサ10と測定装置11の電源を投入する。すると、ドップラーセンサ10と測定装置11とが起動する(
図3:S101)。
【0028】
ここで、打球パラメータ測定装置1のドップラーセンサ10と測定装置11との形態に特に限定は無い。例えば、ドップラーセンサ10と測定装置11とは、無線通信接続可能であり、ドップラーセンサ10は、打席100の後方に予め設置されている。そして、ゴルフプレイヤーPは、ドップラーセンサ10の電源を投入して、ドップラーセンサ10が起動すると、ドップラーセンサ10は、打席100に向けてマイクロ波を発射する。そして、打席100上に動体が存在する場合は、マイクロ波が動体に反射して、反射波となり、ドップラーセンサ10は、当該打席100上に存在する動体からの反射波を受信する。
【0029】
又、測定装置11は、例えば、打席100に予め設けられた端末装置であったり、ゴルフプレイヤーPが携帯した携帯端末装置であったりする。そして、ゴルフプレイヤーPは、測定装置11に予めダウンロードされたソフトウェア(アプリ)を起動することで、測定装置11のセンサ制御部201が、ドップラーセンサ10と無線通信を開始する。ここで、ドップラーセンサ10は、マイクロ波を打席100に向けて発射したり、打席100の上に存在する動体からの反射波を受信したりすると、センサ制御部201は、ドップラーセンサ10との通信によって、ドップラーセンサ10から発射されたマイクロ波と、打席100上の動体からの反射波との受信を可能とする。
【0030】
尚、打球パラメータ測定装置1に表示装置12が備えられている場合は、ゴルフプレイヤーPが表示装置12を起動すると、表示装置12は、測定装置11と無線通信を開始する。表示装置12は、例えば、打席100の側面部に設けられ、打席100の上でスイングしたゴルフプレイヤーPは、その後に測定されたボールスピードやヘッドスピード等を表示装置12で直ぐに確認することが出来る。
【0031】
又、打球パラメータ測定装置1に画像撮影装置13が備えられている場合は、ゴルフプレイヤーPが画像撮影装置13を起動すると、画像撮影装置13は、測定装置11と無線通信を開始する。画像撮影装置13は、例えば、打席100の後方に設けられ、打席100の周辺を撮影し、ゴルフプレイヤーPは、画像撮影装置13で撮影した画像や動画を測定装置11や表示装置12で直ぐに確認することが出来る。
【0032】
さて、
図4Bに示すように、ゴルフプレイヤーPが、打席100の上に立ち、ゴルフボールBを打席100に置くと、センサ制御部201は、ドップラーセンサ10を用いて、発射されたマイクロ波と、ゴルフプレイヤーPからの反射波とを受信する(
図3:S102)。これにより、ドップラーセンサ10を用いて、打席100上のゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBをスイングすることを監視することが出来る。
【0033】
さて、センサ制御部201がマイクロ波と反射波とを受信すると、次に、測定装置11の生成制御部202は、受信されたマイクロ波と反射波とに基づいて、受信の時刻における速度毎の信号強度の分布を示す分布データを生成する(
図3:S103)。
【0034】
ここで、生成制御部202の生成方法に特に限定は無い。例えば、生成制御部202は、発信のマイクロ波と、受信の反射波とに対して所定の周波数解析の処理を行うことで、
図4Bに示すように、速度V(m/s)毎の信号強度I(-)の分布を示す分布データD1を生成する。ここで、周波数解析に特に限定は無いが、例えば、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)や複素高速フーリエ変換を挙げることが出来る。
【0035】
ここで、生成される分布データD1には、受信されたマイクロ波と反射波以外に、ドップラーセンサ10の装置特有のノイズが発生する場合がある。そのような場合、生成制御部202は、生成される分布データD1に所定のフィルタを行い、分布データD1から装置特有のノイズを除去しても良い。これにより、ボールスピードBSやヘッドスピードHSを精度高く算出することが出来る。
【0036】
そして、生成制御部202は、予め設けられているタイマーから、マイクロ波と反射波とを受信した第一の時刻t1(s)を取得し、当該取得した第一の時刻t1を、生成した第一の分布データD1に対応付けることで、第一の時刻t1での第一の分布データD1を生成する。これにより、打席100の上のゴルフプレイヤーPの動きを、速度V(m/s)毎の信号強度I(-)の分布で表現するとともに、時刻と分布とを関連付けておくことが可能となる。
【0037】
さて、生成制御部202が第一の分布データD1を生成すると、次に、測定装置11の蓄積制御部203は、生成される第一の分布データD1のうち、一部の速度V(m/s)の信号強度I(-)が、予め設定された取得開始閾値Ts(-)を超過するか否かを判定する(
図3:S104)。そして、第一の分布データD1のうち、一部の速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過すると(
図3:S104YES)、蓄積制御部203は、経時的に生成される分布データDの蓄積を開始する(
図3:S105)。
【0038】
ここで、蓄積制御部203の蓄積方法に特に限定は無い。例えば、蓄積制御部203は、
図5Aに示すように、第一の分布データD1の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)に対して取得開始閾値Ts(-)を設定して、当該第一の分布データD1の一部の速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過するか否かを判定する(
図3:S104)。
【0039】
ここで、取得開始閾値Ts(-)は、打席100の環境やゴルフプレイヤーPの種類、ゴルフクラブの種類等に応じて適宜設定されるものの、例えば、ゴルフプレイヤーPが打席100の上でスイングする時の分布データDを予め取得しておき、当該取得した分布データDの信号強度I(-)のうち、最大信号強度や最大信号強度から所定の値だけ減算させた減算値を取得開始閾値Ts(-)として設定すると好ましい。
【0040】
さて、判定の結果、第一の分布データD1の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過しない場合、つまり、第一の分布データD1の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)以下の場合、蓄積制御部203は、未だ第一の分布データD1の蓄積を開始しないと判定する(
図3:S104NO)。この場合、S102へ戻って、センサ制御部201が、マイクロ波と反射波とを受信し(
図3:S102)、生成制御部202が、次の時刻における分布データを生成する(
図3:S103)。
【0041】
このように、分布データDの全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過しない場合は、ゴルフプレイヤーPが打席100の上で激しく動いておらず、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでスイングしていないことを意味する。この場合、蓄積制御部203が、分布データDの蓄積を開始しないことで、ボールスピードBSやヘッドスピードHSの算出に関係が無い分布データDの蓄積を防止することが可能となる。
【0042】
特に、ゴルフプレイヤーPのスイング時間は、数秒と短いことから、数秒のスイング時間を捕獲するために、分析データDを長期間蓄積すると、必要なメモリ容量が膨大となって、現実的ではない。本発明では、分布データDの蓄積の開始タイミングを効率化することで、無駄な分布データDの蓄積を回避することが出来る。
【0043】
さて、例えば、
図5Aに示すように、ゴルフプレイヤーPが打席100の上でスイングの準備をした場合、S103において、第二の時刻t2(s)で第二の分析データD2が生成される。この場合も、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでスイングしていないことから、S104において、第二の分布データD2の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過しない(
図3:S104NO)。そのため、この場合も、S102へ戻ることになる。
【0044】
一方、例えば、
図5Bに示すように、ゴルフプレイヤーPが打席100の上でスイングをしようとした場合、S103において、第三の時刻t3(s)で第三の分析データD3が生成される。この場合は、ゴルフプレイヤーPが打席100の上でゴルフクラブのヘッドHを振り回すことから、ゴルフプレイヤーPが激しく動く。そのため、第三の時刻t3(s)の第三の分析データD3のうち、特定の速度V(m/s)の信号強度I(-)が著しく高くなって、第三の分布データD3の一部の速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過する。
【0045】
つまり、S104において、判定の結果、第三の分布データD3の一部の速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過する場合、蓄積制御部203は、第三の分布データD3の蓄積を開始すると判定する(
図3:S104YES)。この場合、蓄積制御部203は、予め設けられた所定のメモリMに、第三の時刻t3(s)での第三の分析データD3を記憶させて、分布データDの蓄積を開始する(
図3:S105)。これにより、ゴルフプレイヤーPが打席100の上でスイングをしようとする時点から、分布データDの蓄積を開始することが可能となり、ボールスピードBSやヘッドスピードHSの算出に関係が有る分布データDを効率よく蓄積することが可能となる。
【0046】
さて、蓄積制御部203が分布データDの蓄積を開始すると、次に、測定装置11の逆再生制御部204は、蓄積される分布データDのうち、全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が、予め設定された解析開始閾値Ta(-)未満になるか否かを判定する(
図3:S106YES)。そして、蓄積される分布データDのうち、全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満になると(
図3:S106YES)、逆再生制御部204は、当該信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満となった分布データDの時刻から、過去に向かって、経時的に蓄積された分布データDを逆経時的に再生する(
図3:S107)。
【0047】
ここで、逆再生制御部204の逆経時的な再生方法に特に限定は無い。例えば、第三の時刻t3(s)に続けて、
図6Aに示すように、ゴルフプレイヤーPが打席100の上でスイングして、ゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃した場合、第四の時刻t4(s)で第四の分析データD4が生成され、第四の分析データD4がメモリMに蓄積される。すると、逆再生制御部204が、第四の分析データD4の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)に対して解析開始閾値Ta(-)を設定して、当該第四の分布データD4の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満になるか否かを判定する(
図3:S106)。
【0048】
ここで、解析開始閾値Ta(-)は、取得開始閾値Ts(-)と同様に、打席100の環境やゴルフプレイヤーPの種類、ゴルフクラブの種類等に応じて適宜設定されるものの、例えば、ゴルフプレイヤーPが打席100の上でスイングを完了した時の分布データDを予め取得しておき、当該取得した分布データDの信号強度I(-)のうち、最小信号強度や最小信号強度から所定の値だけ加算させた加算値を解析開始閾値Ta(-)として設定すると好ましい。
【0049】
又、解析開始閾値Ta(-)は低く設定され、取得開始閾値Ts(-)は高く設定されると好ましい。つまり、解析開始閾値Ta(-)は、取得開始閾値Ts(-)よりも低く設定されると好ましい。これにより、解析開始閾値Ta(-)が低いと、後述する分析データDの解析の開始タイミングを、ゴルフプレイヤーPのスイングの完了時に近づけることが可能となり、分析データDを効率よく蓄積することが可能となる。又、取得開始閾値Ts(-)が高いと、分析データDの蓄積の開始タイミングを、ゴルフプレイヤーPのスイングの直前の時に近づけることが可能となり、分析データDを効率よく蓄積することが可能となる。
【0050】
さて、判定の結果、第四の分布データD4の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満でない場合、つまり、第四の分布データD4の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)以上である場合、逆再生制御部204は、未だ分析データDの解析を開始しないと判定する(
図3:S106NO)。この場合、S105へ戻って、蓄積制御部203が、次の時刻の分析データDを蓄積する(
図3:S105)。
【0051】
このように、分布データDの全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満でない場合は、ゴルフプレイヤーPがスイング中である可能性が高い。この場合、逆再生制御部204が、分布データDの解析を開始しないことで、ボールスピードBSやヘッドスピードHSの算出に関係がある動作の分布データDを継続的に蓄積することが可能となる。
【0052】
さて、例えば、
図6Aに示すように、ゴルフプレイヤーPがスイング中の場合、第五の時刻t5(s)で第五の分析データD5が生成されて、メモリMに蓄積される。この場合の第五の分布データD5は、ゴルフボールBが飛んだ直後を示しており、ゴルフプレイヤーPの動作速度やゴルフクラブのヘッドHの動作速度よりも速い速度で、信号強度I(-)のピークがゴルフボールBのピークとして現れる。この場合も、ゴルフプレイヤーPが未だスイング中であることから、S106において、第五の分布データD5の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満とならない(
図3:S106NO)。そのため、この場合も、S105へ戻ることになる。
【0053】
更に、例えば、
図6Bに示すように、ゴルフプレイヤーPがスイングした後の場合、第六の時刻t6(s)で第六の分析データD6が生成されて、メモリMに蓄積される。この場合の第六の分析データD6は、ゴルフボールBが更に飛行した時を示しており、先ほどと変わらない速度で、ゴルフボールBのピークが強く現れる。この場合も、ゴルフプレイヤーPが未だスイング中であることから、S106において、第六の分布データD6の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満とならない(
図3:S106NO)。この場合も、S105へ戻る。
【0054】
一方、例えば、
図6Bに示すように、ゴルフプレイヤーPがスイングを終えて体を止めた場合、第七の時刻t7(s)で第七の分析データD7が生成されて、メモリMに蓄積される。この場合の第七の分布データD7は、ゴルフボールBが遠くまで飛んでいる時で、且つ、ゴルフプレイヤーPが体を止めた時を示している。そのため、第七の分布データD7では、先ほどと変わらない速度で、ゴルフボールBのピークは弱く現れる。又、ゴルフプレイヤーPが体を止めているため、第七の分析データD7の信号強度I(-)は、全ての速度において全体的に弱くなって、第七の分布データD7の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満となる。
【0055】
つまり、S106において、判定の結果、第七の分布データD7の全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満の場合、逆再生制御部204は、分析データDの解析を開始すると判定する(
図3:S106YES)。この場合、逆再生制御部204は、メモリMに蓄積された分析データDを参照し、当該信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満となった第七の分布データD7の第七の時刻t7(解析開始時刻)から、過去に向かって、経時的に蓄積された分布データDを逆経時的に再生する(
図3:S107)。ここで、再生とは、経時的に並んだデータを最初から順番に参照する(読み取る)ことを意味するが、本発明での逆再生は、経時的に並んだ分布データDを解析開始時刻tから逆の順番に(逆経時的に)参照することを意味する。これにより、ゴルフプレイヤーPがスイングを終えたタイミングから、分布データDの解析を開始することが可能となり、分布データDを効率よく解析することが可能となる。
【0056】
ここで、蓄積される分布データDのうち、全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満になった場合、蓄積制御部203が、分析データDの蓄積を終了しても良い。これにより、ゴルフプレイヤーPがスイングを終えた後の分析データDの蓄積を回避することが可能となる。
【0057】
さて、逆再生制御部204が分布データDを逆経時的に再生すると、次に、測定装置11のBS算出制御部205は、逆経時的に再生される分布データDの信号強度I(-)のピークのうち、最大速度を示すピークBPをボールピークとして特定し、当該特定したボールピークBPに基づいて、ボールスピードBS(m/s)を算出する(
図3:S107)。
【0058】
ここで、BS算出制御部205の算出方法に特に限定は無い。例えば、
図7Aに示すように、メモリMに基づいて、第七の分布データD7の第七の時刻t7から、過去に向かって、直前の第六の時刻t6の第六の分布データD6が再生(参照)され、更に前の第五の時刻t5の第五の分布データD5が再生される。すると、第七の分布データD7と、第六の分布データD6と、第五の分布データD5の信号強度I(-)のうち、最大速度を示すボールピークBPが存在する。このボールピークBPは、ゴルフボールBに起因するピークであることから、幅の狭いピークとして現れる。これは、ゴルフプレイヤーPのスイングにおいて、最も早い速度となる動体がゴルフゴールBになるからである。そこで、BS算出制御部205は、逆経時的に再生される分布データDの各速度V(m/s)の信号強度I(-)から、最大速度を示すボールピークBPを特定する。
【0059】
ここで、BS算出制御部205のゴルフピークBPの特定方法に特に限定は無いが、例えば、BS算出制御部205は、逆経時的に再生される分布データDのうち、ボールピークBPの信号強度I(-)が最も強い時刻tの分布データD(例えば、第六の時刻t6の第六の分布データD6)を特定し、当該特定した分布データD6からボールピークBPを特定すると、ボールスピードBS(m/s)を算出し易くなるため、好ましい。
【0060】
次に、BS算出制御部205は、特定したボールピークBPを用いて、ボールスピードBS(m/s)を決定する。ここで、ボールピークBPの形状に応じて、決定されるボールスピードBS(m/s)が多少変動することから、BS算出制御部205は、後述するボールスピードBS(m/s)の決定方法を適宜採用することが出来る。
【0061】
例えば、
図7Aに示すように、ボールピークBPのうち、ピークトップPTを示す速度V(m/s)をボールスピードBS(m/s)として決定しても良い。又、ボールピークBPのうち、ピークスタートPSと、ピークエンドPEとを特定し、ピークスタートPSとピークエンドPEとの中間値を示す速度V(m/s)をボールスピードBS(m/s)として決定しても良い。更に、ピークトップPTと、ピークスタートPSと、ピークエンドPEとを特定し、ピークトップPTと、ピークスタートPSと、ピークエンドPEと、ボールピークBPの高さとを用いて、ボールピークBPのピーク面積を算出し、ボールピークBPのピーク面積の中心値を示す速度V(m/s)をボールスピードBS(m/s)として決定しても良い。
【0062】
このように、分布データDを逆経時的に再生することで、ボールピークBPを直ぐに特定することが可能となり、ボールスピードBS(m/s)を容易に算出することが可能となる。
【0063】
さて、BS算出制御部205がボールスピードBS(m/s)を算出すると、次に、測定装置11のHS算出制御部206は、逆経時的に再生される分布データDのうち、ボールピークBPが消失した時刻tの分布データDを特定し、当該特定した分布データDの信号強度I(-)のピークのうち、最大速度を示すヘッドピークHPに基づいて、ヘッドスピードHS(m/s)を算出する(
図3:S108)。尚、ボールピークBPが消失した時刻tは、ボールピークBPが出現する直前の時刻tと考えることも出来る。
【0064】
ここで、HS算出制御部206の算出方法に特に限定は無い。例えば、
図7Bに示すように、メモリMに基づいて、ボールピークBPを特定した第六の分布データD6の第六の時刻t6から、過去に向かって、前の第五の時刻t5の第五の分布データD5が再生され、更に前の第四の時刻t4の第四の分布データD4が再生される。すると、第六の分布データD6から第四の分布データD4に再生される際に、ボールピークBPの信号強度I(-)が徐々に弱くなり、第四の分布データD4では、ボールピークBPが消失する。これは、ゴルフプレイヤーPのスイングにおいて、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃した直前を意味する。そこで、HS算出制御部206は、逆経時的に再生される分布データDの信号強度I(-)のうち、ボールピークBPが消失した第四の時刻t4の第四の分布データD4を特定する。
【0065】
ここで、HS算出制御部206の分布データDの特定方法に特に限定は無いが、例えば、HS算出制御部206は、逆経時的に再生される分布データDのうち、ボールピークBPの信号強度I(-)に着目して、当該ボールピークBPの信号強度I(-)が徐々に弱くなってゼロになるか否かを判定し、ボールピークBPの信号強度I(-)がゼロになった場合に、HS算出制御部206は、ボールピークBPの信号強度I(-)が消失したと推定して、ボールピークBPが消失した時刻tの分布データD(例えば、第四の時刻t4の第四の分布データD4)を特定すると、次のヘッドスピードHS(m/s)を算出し易くなるため、好ましい。又、分布データDによっては、信号強度I(-)が完全にゼロにならない場合もあることから、例えば、HS算出制御部206は、逆経時的に再生される分布データDのうち、ボールピークBPの信号強度I(-)が、予め設定された下限閾値未満になるか否かを判定し、ボールピークBPの信号強度I(-)が下限閾値未満になった場合に、HS算出制御部206は、ボールピークBPの信号強度I(-)が消失したと推定して、その時刻tの分布データDを特定しても構わない。
【0066】
次に、HS算出制御部206は、特定した第四の分布データD4の信号強度I(-)のピークのうち、最大速度を示すヘッドピークHPを特定する。
【0067】
ここで、ゴルフプレイヤーPのスイングにおいて、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃した直前では、最大速度を示す動体は、ゴルフクラブのヘッドHとなる。言い換えると、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃した直後の最大速度は、ボールスピードBS(m/s)であるが、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃する直前の最大速度は、ヘッドスピードHS(m/s)である。そこで、ボールピークBPが消失した時刻tを、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃した直前の時刻に推定し、その時刻において、最も早い動体をゴルフクラブのヘッドHに推定することで、ボールスピードBS(m/s)とヘッドスピードHS(m/s)とを適切に特定することが出来るのである。
【0068】
ここで、ゴルフクラブのヘッドHに起因するヘッドピークHPは、
図7Bに示すように、ゴルフボールBに起因するボールピークBPと異なり、ゴルフプレイヤーPの腕や脚に起因するピークと合体して現れることが多い。そのため、HS算出制御部206は、ボールピークBPが消失した第四の時刻t4の第四の分布データD4において、最大速度V(m/s)を含み、幅の広いピークをヘッドピークHPとして特定する。
【0069】
そして、HS算出制御部206は、当該特定したヘッドピークHPを用いて、ヘッドスピードHS(m/s)を決定する。ここで、ヘッドピークHPの形状に応じて、決定されるヘッドスピードHS(m/s)が多少変動することから、HS算出制御部206は、後述するヘッドスピードBS(m/s)の決定方法を適宜採用することが出来る。
【0070】
例えば、
図7Bに示すように、ヘッドピークHPと、遅い速度を示す大きなピークPとが合体しているものの、ヘッドピークHPのピークトップPTを確認することが出来る場合、ヘッドピークHPのうち、ピークトップPTを示す速度HV(m/s)をヘッドスピードHS(m/s)として決定しても良い。又、ヘッドピークHPのうち、ピークエンドPEを特定し、ピークエンドPEを示す速度HV(m/s)をヘッドスピードHS(m/s)として決定しても良い。更に、ピークトップPTと、ピークエンドPEとを特定し、ピークトップPTと、ピークエンドPEとの中間値HV(m/s)をヘッドスピードHS(m/s)として決定しても良い。
【0071】
このように、分布データDを逆経時的に再生することで、ボールピークBPの消失を直ぐに特定することが可能となり、ヘッドスピードHS(m/s)を容易に算出することが可能となる。
【0072】
ところで、打席100の環境やゴルフプレイヤーPの種類、ゴルフクラブの種類等に応じて、ヘッドピークHPの形状が、
図8Aに示すように、ボールピークBPのように幅の狭いピークであったり、弱いピークであったり、遅い速度を示す大きなピークPに合体していたりする。これらの場合は、ヘッドピークHPの形状に応じて、ヘッドスピードHSの決定方法を変更したり、どのようなヘッドピークHPの形状であっても、共通してヘッドスピードHSを決定することが出来る共通決定方法を採用したりしても構わない。
【0073】
例えば、ヘッドピークHPの形状が、ボールピークBPのように幅の狭いピークの場合は、ヘッドスピードBS(m/s)の決定方法は、ボールスピードBS(m/s)の決定方法と同様に、ヘッドピークHPのうち、ピークトップPTを示す速度V(m/s)をヘッドスピードBS(m/s)として決定しても良い。又、ヘッドピークHPのうち、ピークスタートPSと、ピークエンドPEとを特定し、ピークスタートPSとピークエンドPEとの中間値を示す速度V(m/s)をヘッドスピードBS(m/s)として決定しても良い。更に、ピークトップPTと、ピークスタートPSと、ピークエンドPEとを特定し、ピークトップPTと、ピークスタートPSと、ピークエンドPEと、ヘッドピークHPの高さとを用いて、ヘッドピークHPのピーク面積を算出し、ヘッドピークHPのピーク面積の中心値を示す速度V(m/s)をヘッドスピードBS(m/s)として決定しても良い。
【0074】
又、ヘッドピークHPの形状が、弱いピークの場合は、ヘッドスピードBS(m/s)の決定方法は、上述の決定方法のうち、ヘッドピークHPのうち、ピークトップPTを示す速度V(m/s)をヘッドスピードBS(m/s)として決定しても良い。更に、ヘッドピークHPの形状が、遅い速度を示す大きなピークPに合体している場合は、ヘッドスピードBS(m/s)の決定方法は、上述の決定方法のうち、ピークエンドPEを示す速度HV(m/s)をヘッドスピードHS(m/s)として決定しても良い。又、どのようなヘッドピークHPの形状であっても、適用可能な共通決定方法は、例えば、ピークエンドPEを示す速度HV(m/s)をヘッドスピードHS(m/s)として決定しても良い。
【0075】
さて、HS算出制御部206がヘッドスピードHS(m/s)を算出すると、測定装置11の表示制御部207は、算出されたボールスピードBS(m/s)と、ヘッドスピードHS(m/s)とを表示する(
図3:S109)。
【0076】
ここで、表示制御部207の表示方法に特に限定は無いが、例えば、表示制御部207は、測定装置11に接続された表示装置12にボールスピードBS(m/s)と、ヘッドスピードHS(m/s)とを表示する。これにより、ゴルフプレイヤーPは、スイングに関係するボールスピードBS(m/s)と、ヘッドスピードHS(m/s)を容易に確認することで、スイングの調子や向上を図ることが可能となる。
【0077】
又、表示制御部207は、ボールスピードBS(m/s)からヘッドスピードHS(m/s)を除算した除算値(-)をミート率として算出し、当該算出したミート率(-)を表示装置12に表示する。これにより、ゴルフプレイヤーPは、スイングに関係するミート率を容易に確認することが可能となる。
【0078】
又、打球パラメータ測定装置1に画像撮影装置13が設けられている場合、センサ制御部201が、ドップラーセンサ10からのマイクロ波と反射波とを受信する際に、画像撮影装置13からの打席100の画像を取得し、表示制御部207が、取得された打席100の画像を表示装置12にそのまま表示するか、ボールスピードBS(m/s)とヘッドスピードHS(m/s)とともに打席100の画像を表示しても良い。
【0079】
ここで、本発明では、ボールピークBPが出現する直前の時刻tを、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃するトリガー時刻として取得するトリガー制御部208を更に備えても良い。つまり、経時的に蓄積される分析データDのうち、ボールピークBPが出現する直前の時刻tは、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃する時刻に対応する。そこで、S108において、HS算出制御部206は、逆経時的に再生される分布データDのうち、ボールピークBPが出現する直前の時刻tの分布データDを特定した際に、トリガー算出制御部208が、ボールピークBPが出現する直前の時刻tをトリガー時刻として取得する。ここで、一般的に、トリガー時刻を取得する場合は、ゴルフプレイヤーPのスイングの前後の画像を時刻とともに画像撮影装置13で撮影し、撮影された画像において、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃する画像を特定し、その画像の時刻をトリガー時刻として取得していた。本発明では、ゴルフプレイヤーPのスイングの前後の画像を画像撮影装置13で撮影したり、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃する画像を特定したりする必要が無く、分布データDの解析により、トリガー時刻を精度高く取得することが可能となる。
【0080】
ここで、トリガー時刻tは、例えば、画像撮影装置13が撮影する画像のうち、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃する画像や、ゴルフプレイヤーPがゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃した後の画像を特定する際に用いられる。例えば、センサ制御部201が、画像撮影装置13からの打席100の画像を取得し、トリガー制御部208が、トリガー時刻t(例えば、第四の時刻t4)を取得すると、表示制御部207が、
図8Bに示すように、トリガー時刻t4以降の打席100の画像を表示装置12に表示する。これにより、ゴルフプレイヤーPは、自身のスイングを簡単に確認することが可能となる。
【0081】
又、表示制御部207は、トリガー時刻tを取得することで、トリガー時刻t以降の打席100の画像のうち、経時的に撮影される画像内のゴルフボールBを特定し、特定した経時的なゴルフボールBの間を線Lで接続して、ゴルフボールBと線Lで構成されたゴルフボールBの軌跡を表示装置12に表示する。これにより、ゴルフプレイヤーPは、自身のスイングによるゴルフボールBの軌跡を簡単に確認することが可能となる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例等によって本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0083】
先ず、
図1-
図8に基づいて打球パラメータ測定装置1を試作し、この打球パラメータ測定装置1を実施例とした。実施例の打球パラメータ測定装置1は、
図9Aに示すように、ドップラーセンサ10と、測定装置11とを備える。ドップラーセンサ10は、打席100の後方に設置され、打席100の上にマイクロ波を発射した。又、打席100には、ボールスピードBSとヘッドスピードHSとを測定可能な市販品を設置し、この市販品を参考例とした。
【0084】
そして、
図9Bに示すように、ゴルフプレイヤーPが打席100の上に立ち、ゴルフクラブのヘッドHでゴルフボールBを打撃した際に、ドップラーセンサ10が、ゴルフプレイヤーPのスイングの反射波を受信し、測定装置11のセンサ制御部201が、ドップラーセンサ10からマイクロ波とゴルフプレイヤーPからの反射波とを受信した。
【0085】
次に、測定装置11の生成制御部202は、受信されたマイクロ波と反射波とに基づいて、受信の時刻での分布データを生成し、測定装置11の蓄積制御部203は、生成される分布データDのうち、一部の速度V(m/s)の信号強度I(-)が、予め設定された取得開始閾値Ts(-)を超過するか否かを判定した。
【0086】
ここで、第三の時刻t3での第三の分布データD3では、
図10Aに示すように、一部の速度V(m/s)の信号強度I(-)が取得開始閾値Ts(-)を超過したため、蓄積制御部203は、経時的に生成される分布データDの蓄積を開始した。第三の時刻t3以降の分析データDが経時的に蓄積された。
【0087】
更に、測定装置11の逆再生制御部204は、蓄積される分布データDのうち、全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が、予め設定された解析開始閾値Ta(-)未満になるか否かを判定した。
【0088】
ここで、第七の時刻t7での第七の分布データD7では、
図10Bに示すように、全ての速度V(m/s)の信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満になったため、逆再生制御部204は、当該信号強度I(-)が解析開始閾値Ta(-)未満となった分布データDの時刻から、過去に向かって、経時的に蓄積された分布データDを逆経時的に再生した。次に、測定装置11のBS算出制御部205は、逆経時的に参照される分布データDの信号強度I(-)のピークのうち、最大速度を示すピークBPをボールピークとして特定し、当該特定したボールピークBPに基づいて、ボールスピードBS(m/s)を算出した。
【0089】
ここで、逆再生された第六の時刻t6での第六の分布データD6では、
図11Aに示すように、最大速度を示すボールピークBPが特定され、ボールピークBPに基づいて、ボールスピードBS(m/s)が算出された。
【0090】
又、測定装置11のHS算出制御部206は、逆経時的に再生される分布データDのうち、ボールピークBPが消失した時刻tの分布データDを特定し、当該特定した分布データDの信号強度I(-)のピークのうち、最大速度を示すヘッドピークHPに基づいて、ヘッドスピードHS(m/s)を算出した。
【0091】
ここで、逆再生された第四の時刻t4での第四の分布データD4では、
図11Bに示すように、ボールピークBPが消失し、その際の最大速度を示すヘッドピークHPが特定され、ヘッドピークHPに基づいて、ヘッドスピードHS(m/s)が算出された。
【0092】
ここで、算出されたボールスピードBS(m/s)とヘッドスピードHS(m/s)を確認すると、
図12に示すように、実施例のヘッドスピードHS(m/s)は、41.1m/sであり、参考例のヘッドスピードHS(m/s)は、40m/sであり、実施例のヘッドスピードHS(m/s)は、参考例のヘッドスピードHS(m/s)とほぼ同じ値になった。又、実施例のボールスピードBS(m/s)は、55.0m/sであり、参考例のボールスピードBS(m/s)は、55m/sであり、実施例のボールスピードBS(m/s)は、参考例のボールスピードBS(m/s)とほぼ同じ値になった。これにより、本発明では、ボールスピードBS(m/s)とヘッドスピードHS(m/s)を精度高く測定することが出来ることを確認した。
【0093】
尚、本発明の実施形態では、打球パラメータ測定装置1が各制御部を備えるよう構成したが、当該各制御部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを装置に読み出させ、当該装置が各制御部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が、本発明の作用効果を奏する。さらに、各制御部が実行する制御工程をハードディスクに記憶させる方法として提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明に係る打球パラメータ測定装置及び打球パラメータ測定方法は、ボールを取り扱うあらゆる分野においてボールスピードとヘッドスピードを測定する装置及び方法として有効であり、ボールスピードとヘッドスピードを精度高く測定することが可能な打球パラメータ測定装置及び打球パラメータ測定方法として有効である。
【符号の説明】
【0095】
1 打球パラメータ測定装置
10 ドップラーセンサ
11 測定装置
12 表示装置
13 画像撮影装置
201 センサ制御部
202 生成制御部
203 蓄積制御部
204 逆再生制御部
205 BS算出制御部
206 HS算出制御部
207 表示制御部
208 トリガー制御部
【要約】
【解決手段】センサ制御部201は、ドップラーセンサを用いて、発射されたマイクロ波と、当該打席の動体からの反射波を受信する。生成制御部202は、受信の時刻における速度毎の信号強度の分布を示す分布データを生成する。蓄積制御部203は、経時的に生成される分布データの蓄積を開始する。逆再生制御部204は、信号強度が解析開始閾値未満となった分布データの時刻から、過去に向かって、経時的に蓄積された分布データを逆経時的に再生する。BS算出制御部205は、逆経時的に再生される分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すピークをボールピークとして特定し、ゴルフボールの速度を算出する。HS算出制御部206は、逆経時的に再生される分布データのうち、ボールピークが消失した時刻の分布データを特定し、当該特定した分布データの信号強度のピークのうち、最大速度を示すヘッドピークに基づいて、ゴルフクラブのヘッドの速度を算出する。
【選択図】
図1