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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】窒化ガリウム半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240911BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240911BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240911BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240911BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20240911BHJP
   C30B 33/04 20060101ALI20240911BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
H01L21/68 N
H01L21/304 601B
B23K26/53
C30B29/38 D
C30B33/04
C30B25/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020073159
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021170596
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-332681(JP,A)
【文献】特開2008-294379(JP,A)
【文献】特開2008-252069(JP,A)
【文献】特開2015-153826(JP,A)
【文献】特開2014-103397(JP,A)
【文献】特表2012-504875(JP,A)
【文献】特開2016-215231(JP,A)
【文献】特開2020-1081(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188879(WO,A1)
【文献】特開2002-185039(JP,A)
【文献】特開2009-221056(JP,A)
【文献】特開2000-101139(JP,A)
【文献】特開2005-93988(JP,A)
【文献】特開2006-173582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/683
B23K 26/53
C30B 29/38
C30B 33/04
C30B 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記加工ウェハを構成することは、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上に、前記エピタキシャル成長膜の一部を構成する第1窒化ガリウム層(3a)を形成することと、
前記第1窒化ガリウム層における前記窒化ガリウムウェハと反対側の一面となる表面に、前記エピタキシャル成長膜の一部を構成する第2窒化ガリウム層(3b)を形成することと、を含み、
前記変質層を形成することでは、前記エピタキシャル成長膜のうちの前記第1窒化ガリウム層に前記変質層を形成し、前記分割することの後にも前記第1窒化ガリウム層が前記チップ構成ウェハに残り、前記他面側構成部分を形成する際に、前記裏面側プロセスが前記第1窒化ガリウム層に対して行われる、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記変質層を形成することは、前記レーザ光の照射によって窒化ガリウムを窒素と液状のガリウムにすることである、請求項に記載の窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項3】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記加工ウェハを構成することは、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上に、前記エピタキシャル成長膜の一部を構成する第1窒化ガリウム層(3a)を形成することと、
前記第1窒化ガリウム層における前記窒化ガリウムウェハと反対側の一面となる表面に、前記エピタキシャル成長膜の一部を構成する第2窒化ガリウム層(3b)を形成することと、を含み、
前記変質層を形成することでは、前記エピタキシャル成長膜のうちの前記第1窒化ガリウム層と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に前記変質層を形成し、
前記加工ウェハを構成することの後、かつ、前記分割することの前に、前記第2窒化ガリウム層の表面側に支持部(20)を配置することを含み、
さらに、前記他面側構成部分を形成することの後に、前記支持部を前記加工ウェハから剥離することを含む、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記変質層を形成することは、前記レーザ光の照射によって窒化ガリウムを窒素と液状のガリウムにすることである、請求項3に記載の窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項5】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記窒化ガリウムウェハを用意することでは、前記窒化ガリウムウェハとして、前記窒化ガリウムウェハにおける前記他面側の外縁部において、該外縁部よりも内側に位置する内周部側から外周側に向かうほど厚みが薄くなるテーパ部(1d)を備え、かつ、該窒化ガリウムウェハを径方向に沿って切断した断面において前記該テーパ部が直線状になるものを用意し、
前記変質層を形成することでは、前記窒化ガリウムウェハの前記外縁部について、前記テーパ部を透過させて前記レーザ光を照射する、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項6】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記窒化ガリウムウェハを用意することでは、前記窒化ガリウムウェハとして、前記窒化ガリウムウェハにおける前記他面側の外縁部において、該外縁部よりも内側に位置する内周部側よりも厚みが薄くされ、かつ、該窒化ガリウムウェハの平面方向に沿う表面とされた段差部(1e)を有するものを用意し、
前記変質層を形成することでは、前記窒化ガリウムウェハの前記外縁部について、前記段差部の表面を透過させて前記レーザ光を照射する、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項7】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記分割することは、前記変質層を形成することの前または後に、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方における外周面のうち前記変質層を形成する部分と対応する位置に、該外周面の一周もしくはその少なくとも一部に切欠き(10d)を形成することを含み、前記切欠きおよび前記変質層にて、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割する、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項8】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記変質層を形成することの前または後に、前記窒化ガリウムウェハのうち前記エピタキシャル成長膜が配置された表面側の外縁部を切り欠いて、該表面よりも凹ませた段差部(10f)を形成することを含み、
前記変質層を形成することでは、前記段差部と対応する位置に前記変質層が形成されるようにし、
前記分割することでは、前記段差部において、前記変質層にて、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割する、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項9】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記変質層を形成することの前または後に、前記窒化ガリウムウェハのうち前記エピタキシャル成長膜が配置された表面側の外縁部に溝部(10e)を形成することを含み、
前記変質層を形成することでは、前記溝部の底と対応する位置に前記変質層が形成されるようにし、
前記分割することでは、前記変質層にて、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割すると共に、前記溝部の内側に位置する前記チップ構成ウェハを前記溝部から取り出す、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項10】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、前記半導体素子のうち前記チップ構成ウェハの前記他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハ側からレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記変質層を形成することでは、前記エピタキシャル成長膜の厚み方向において段階的に前記レーザ光を照射し、前記厚み方向の中間位置が該厚み方向における前記加工ウェハの前記一面側および該一面の反対面となる他面(10b)側よりも外周側まで前記変質層が形成されるようにする、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)にて構成されるGaN半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハにエピタキシャル膜を形成して加工ウェハを形成し、当該加工ウェハに半導体素子を形成した後にチップ単位に分割することで半導体チップを製造する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この製造方法では、加工ウェハのうちのエピタキシャル膜側の面を一面とし、加工ウェハのうちの半導体ウェハ側の面を他面とすると、まず、加工ウェハの一面側に拡散層や表面電極等の半導体素子の一面側の部分を構成する一面側素子構成部分を形成する。次に、加工ウェハの他面側を研削して所定の厚さまで薄くし、加工ウェハの他面側に、裏面電極等の半導体素子の他面側の部分を構成する他面側素子構成部分を形成する。その後、加工ウェハをチップ単位に分割する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-207908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、バンドギャップが広く、電子の飽和速度が大きい等の利点を有するGaNを含むチップ構成基板を用いた半導体チップについて検討している。そして、このような半導体チップを上記製造方法を利用して製造する場合、以下のようになる。
【0005】
すなわち、半導体ウェハとしてGaNウェハを用意し、GaNウェハ上にGaNで構成されるエピタキシャル膜を成長させて加工ウェハを構成する。そして、加工ウェハに一面側素子構成部分を形成した後、加工ウェハの他面から研削する。その後、他面側素子部分を形成し、加工ウェハをチップ単位に分割する。
【0006】
しかしながら、この製造方法では、加工ウェハを他面から研削する。つまり、GaNウェハを研削する。このため、半導体チップを製造する毎にGaNウェハを用意する必要があり、生産性が低くなる可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、生産性の向上を図ることができるGaN半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、GaNで構成される半導体素子を形成するGaN半導体装置の製造方法であって、一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有するGaNウェハ(1)を用意することと、GaNウェハの一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、GaNウェハとエピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、加工ウェハにおけるエピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、表面側プロセスを行った後に、加工ウェハのうちのGaNウェハを剥離することで、加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)とGaNウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、分割することの後に、チップ構成ウェハのうちの表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、半導体素子のうちチップ構成ウェハの他面側に対する半導体プロセスとなる裏面側プロセスを行うことで他面側構成部分(60)を形成することと、を含んでいる。そして、分割することは、加工ウェハのうちのGaNウェハ側からレーザ光(L)を照射して、エピタキシャル成長膜に変質層(15)を形成することと、変質層を形成することの後に、加工ウェハをチップ構成ウェハとリサイクルウェハとに分割することと、を含んでいる。また、加工ウェハを構成することは、窒化ガリウムウェハの一面上に、エピタキシャル成長膜の一部を構成する第1窒化ガリウム層(3a)を形成することと、第1窒化ガリウム層における窒化ガリウムウェハと反対側の一面となる表面に、エピタキシャル成長膜の一部を構成する第2窒化ガリウム層(3b)を形成することと、を含み、変質層を形成することでは、エピタキシャル成長膜のうちの第1窒化ガリウム層に変質層を形成し、分割することの後にも第1窒化ガリウム層がチップ構成ウェハに残り、他面側構成部分を形成する際に、裏面側プロセスが第1窒化ガリウム層に対して行われるようにしている。
【0009】
このように、加工ウェハにレーザ照射を行って変質層を形成し、変質層にて加工ウェハからGaNウェハを分割している。これにより、GaNウェハをリサイクルウェハとして再利用することが可能となる。このため、半導体チップを製造する度にGaNウェハを新たに用意する必要がなく、GaNウェハを有効利用できる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】第1実施形態における半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1B図1Aに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1C図1Bに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1D図1Cに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1E図1Dに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1F図1Eに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1G図1Fに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1H図1Gに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1I図1Hに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1J図1Iに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1K図1Fに続くリサイクルウェハの製造工程を示す断面図である。
図2A】チップ用変質層が内周部にしか形成されない場合の様子を示した加工ウェハの断面図である。
図2B】チップ用変質層が内周部にしか形成されない場合の様子を示した加工ウェハの正面図である。
図2C図2Bの状態でチップ構成ウェハとリサイクルウェハとに分割した場合の様子を示した図である。
図3】第2実施形態で説明する加工ウェハの断面図である。
図4】第3実施形態で説明する加工ウェハの断面図である。
図5】加工ウェハのうちの外縁部でのレーザ照射の様子を模式的に示した拡大断面図である。
図6A】第3実施形態の変型例で説明する加工ウェハの断面図である。
図6B図6Aに示す加工ウェハを斜め下方から見た斜視図である。
図7A】第4実施形態で説明する加工ウェハの断面図である。
図7B図7Aに示す加工ウェハからチップ構成ウェハを剥離した様子を示した図である。
図8】第5実施形態で説明する加工ウェハの断面図である。
図9】第6実施形態で説明する加工ウェハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、半導体材料としてGaNを用いて半導体素子を形成したGaN半導体装置の製造方法について説明する。
【0014】
まず、図1Aに示されるように、一面1aおよび他面1bを有し、バルクウェハ状とされるGaNウェハ1を用意する。例えば、GaNウェハ1は、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~5×1019cm-3とされた高不純物濃度のn型ウェハが用いられる。GaNウェハ1の厚みについては任意であるが、例えば400μm程度のものを用意している。そして、必要に応じ、GaNウェハ1の他面1b等に、酸化膜等で構成される保護膜を形成する。なお、本実施形態のGaNウェハ1は、一面1aがGa面とされ、他面1bがN面とされている。また、このGaNウェハ1は、下記半導体チップ100の製造工程を行った後では、後述する図1Kのリサイクルウェハ40を再利用することで用意される。
【0015】
次に、図1Bに示されるように、GaNウェハ1の一面1a上に、10~60μm程度のGaNで構成されるエピタキシャル膜3を形成することにより、複数のチップ形成領域RAを有する加工ウェハ10を用意する。本実施形態では、エピタキシャル膜3は、第1GaN層に相当するn型エピタキシャル層3aと、第2GaN層に相当するn型エピタキシャル層3bとがGaNウェハ1側から順に成膜されて構成される。例えば、n型エピタキシャル層3aは、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~1×1018cm-3程度とされる。n型エピタキシャル層3bは、シリコン等がドーパントされ、不純物濃度が1×1017~4×1017cm-3程度とされる。ここでは、n型エピタキシャル層3aについては電極材料とオーミック接触させられる不純物濃度とされ、n型エピタキシャル層3bよりも高不純物濃度とされている。
【0016】
なお、n型エピタキシャル層3bは、後述する拡散層12等の一面側素子構成部分11が形成される部分であり、例えば、厚さが8~10μm程度とされる。n型エピタキシャル層3aは、例えば、厚さが40~50μm程度とされる。n型エピタキシャル層3aとn型エピタキシャル層3bとの厚みの大小については任意であるが、ここでは半導体チップ100の厚みを確保できるようにn型エピタキシャル層3aをn型エピタキシャル層3bよりも厚くしてある。以下では、加工ウェハ10のうちのエピタキシャル膜3側の面を加工ウェハ10の一面10aとし、加工ウェハ10のうちのGaNウェハ1側の面を加工ウェハ10の他面10bとする。また、一面10aと他面10bとの間を側面10cとする。そして、各チップ形成領域RAは、加工ウェハ10の一面10a側に構成される。
【0017】
次に、図1Cに示されるように、一般的な半導体製造プロセスのうちの一面10a側に対するプロセスである表面側プロセスを行う。具体的には、表面側プロセスとして、各チップ形成領域RAに、拡散層12やゲート電極13、図示しない表面電極や配線パターンやパッシベーション膜等の半導体素子における一面側素子構成部分11を形成する工程を行う。なお、ここでの半導体素子は、種々の構成のものが採用され、例えば、縦型MOSトランジスタ等のパワーデバイスや、発光ダイオード等の光半導体素子、半導体レーザ等が採用される。その後、必要に応じ、加工ウェハ10の一面10a側に、レジスト等で構成される表面保護膜を形成する。
【0018】
続いて、図1Dに示されるように、加工ウェハ10の一面10a側に支持部20を配置する。ここでは、支持部20を支持台21と接着層22とによって構成しており、接着層22を介して支持台21を加工ウェハ10に貼り付けることで構成している。支持台21は、加工ウェハ10が薄厚になった後にもハンドリングできるように加工ウェハ10を支持するためのものであり、製造工程中に反り難い材料、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成される。接着層22は、加工ウェハ10への支持台21の貼り付けと、加工ウェハ10からの支持台21の剥離を行える材料であればどのようなものでも良く、例えばUV(Ultra Violet)硬化樹脂、ワックス、両面テープなどとされる。ここでは接着層22をUV樹脂接着剤としている。
【0019】
続いて、図1Eに示されるように、加工ウェハ10の他面10bからレーザ光Lを照射し、加工ウェハ10の一面10aから所定深さDとなる位置に、加工ウェハ10の面方向に沿ったウェハ用変質層15を形成する。
【0020】
具体的には、レーザ光Lを発振するレーザ光源、レーザ光の光軸、すなわち光路の向きを変えるように配置されたダイクロイックミラーおよびレーザ光を集光するための集光用レンズ、すなわち集光光学系、変位可能なステージ等を有するレーザ装置を用意する。そして、ウェハ用変質層15を形成する際には、レーザ光Lの集光点が加工ウェハ10の面方向に沿って相対的に走査されるように、ステージ等の位置を調整する。これにより、加工ウェハ10には、面方向に沿ったウェハ用変質層15が形成される。より詳しくは、レーザ光Lを照射することにより、窒素がガスとして蒸発すると共にガリウムが析出されたウェハ用変質層15が形成される。
【0021】
なお、特に限定されるものではないが、本実施形態では、ウェハ用変質層15を形成する際には、レーザ光Lとして、固体レーザ光であって、波長が532nmのグリーンレーザが用いられる。そして、本実施形態では、レーザ光Lは、加工点出力が2μJ、パルス幅が500ps、加工速度が500mm/sとされて照射される。但し、これらの条件は一例であり、本発明者らは、レーザ光Lの加工点出力がさらに低い場合やパルス幅がさらに短い場合等においても、適切にウェハ用変質層15が形成されることを確認している。また、本発明者は、レーザ光Lの加工点出力がさらに高い場合やパルス幅がさらに長い場合等においても、適切にウェハ用変質層15が形成されることを確認している。
【0022】
また、ウェハ用変質層15を形成する際の所定深さDは、半導体チップ100のハンドリングのし易さや耐圧等に応じて設定され、10~200μm程度とされる。この場合、ウェハ用変質層15は、エピタキシャル膜3の厚さに応じて形成される場所が変更され、エピタキシャル膜3の内部、エピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界、またはGaNウェハ1の内部のいずれかに形成される。なお、図1E中では、エピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界にウェハ用変質層15を形成する例を示している。
【0023】
但し、後述するように、加工ウェハ10におけるGaNウェハ1の少なくとも一部は、リサイクルウェハ40として再利用される。このため、ウェハ用変質層15は、エピタキシャル膜3の内部、またはエピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界に形成されることが好ましい。また、ウェハ用変質層15がGaNウェハ1の内部に形成される場合には、ウェハ用変質層15は、GaNウェハ1の一面1a側に形成されることが好ましい。
【0024】
なお、ウェハ用変質層15がエピタキシャル膜3の内部に形成される場合、ウェハ用変質層15は、半導体素子を構成するn型エピタキシャル層3bではなく、n型エピタキシャル層3aの内部に形成される。以下では、加工ウェハ10のうちのウェハ用変質層15より一面10a側の部分をチップ構成ウェハ30とし、加工ウェハ10のうちのウェハ用変質層15より他面10b側の部分をリサイクルウェハ40として説明する。
【0025】
次に、図1Fに示されるように、加工ウェハ10の他面10b側に補助部材50を配置する。補助部材50は、図1Fでは簡略化して示しているが、例えば、基材と、粘着力を変化させることのできる粘着剤とで構成される。この場合、補助部材50における基材は、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成され、補助部材50における粘着剤は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。そして、支持台21および補助部材50を把持して加工ウェハ10の厚さ方向に引張力等を印加し、ウェハ用変質層15を境界、すなわち分岐の起点としてチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割する。つまり、ウェハ用変質層15にて、n型エピタキシャル層3aからGaNウェハ1を剥離する。このとき、上記したように、ウェハ用変質層15は、GaNへのレーザ照射によって形成されており、窒素がガスとして蒸発し、ガリウムが析出されて構成されている。このため、引張力等を印加することでチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割できる。
【0026】
なお、以下では、チップ構成ウェハ30のうちの一面側素子構成部分11が形成されている側の面を一面30aとし、チップ構成ウェハ30のうちの分割された面側を他面30bとし、リサイクルウェハ40のうちの分割された面側を一面40aとして説明する。また、図1G以降の各図では、チップ構成ウェハ30の他面30bおよびリサイクルウェハ40の一面40aに残存するウェハ用変質層15等を適宜省略して示している。
【0027】
その後、図1Gに示されるように、残りの半導体製造プロセスとして、チップ構成ウェハ30の他面30bに、裏面電極を構成する金属膜61等の半導体素子における他面側素子構成部分60を形成するという裏面側プロセスを行う。
【0028】
なお、この他面側素子構成部分60を形成する工程の前に、必要に応じて、CMP(chemical mechanical polishingの略)法等でチップ構成ウェハ30の他面30bを平坦化する工程を行うようにしてもよい。図1Gは、チップ構成ウェハ30の他面30bを平坦化した場合の図を示している。また、他面側素子構成部分60を形成する工程を行った後、必要に応じて、金属膜61とチップ構成ウェハ30の他面30bとをオーミック接触とするためのレーザアニールなどの加熱処理を行うようにしてもよい。
【0029】
続いて、図1Hに示されるように、チップ構成ウェハ30のうちの他面30b側、つまり金属膜61側に保持部材51を配置する。保持部材51には、例えば、基材52と粘着剤53とを有するダイシングテープ等が用いられる。なお、粘着剤53は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。
【0030】
その後、図1Iに示されるように、チップ構成ウェハ30のうちの他面30b側に貼り付けてある支持台21を剥離する。ここでは、支持台21をチップ構成ウェハ30に貼り付けている接着層22の接着力を低下させる処理、例えば接着層22をUV樹脂接着材で構成している場合にはUV照射を行う。
【0031】
続いて、図1Jに示されるように、ダイシングソーもしくはレーザダイシングなどにより、チップ構成ウェハ30をチップ単位に個片化することで、各半導体チップ100を構成する。このとき、チップ構成ウェハ30をチップ単位に分割しつつも、保持部材51については切断されること無く繋がったままの状態となるように、ダイシング深さを調整している。
【0032】
この後の工程については図示しないが、保持部材51をエキスパンドし、ダイシングカットした部分にて各半導体チップ100の間隔を広げる。その後、加熱処理や光を照射する等して粘着剤53の粘着力を弱まらせ、半導体チップ100をピックアップする。これにより、半導体チップ100が製造される。
【0033】
上記のように製造される半導体チップ100は、一面110a、一面と反対側の他面110b、一面110aと他面110bとを繋ぐ側面110cを有するチップ構成基板110を備えた構成となる。また、チップ構成基板110は、GaNで構成されるエピタキシャル膜3を有し、一面110a側に一面側素子構成部分11が形成され、他面110b側の他面側素子構成部分60が形成されている。
【0034】
また、図1Kに示されるように、図1Fで構成されたリサイクルウェハ40には、一面40aに対して研磨装置70等を用いたCMP法を行うことにより、当該一面40aを平坦化する。そして、平坦化したリサイクルウェハ40をGaNウェハ1とし、再び上記図1A以降の工程を行う。これにより、GaNウェハ1は、半導体チップ100を構成するのに複数回利用されることができる。
【0035】
以上説明した本実施形態によれば、加工ウェハ10をチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割し、リサイクルウェハ40を再びGaNウェハ1として利用する。このため、半導体チップ100を製造する度にGaNウェハ1を新たに用意する必要がなく、GaNウェハ1を有効利用できることから、生産性の向上を図ることができるGaN半導体装置の製造方法とすることが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40との分割方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
上記第1実施形態では、GaNウェハ1の形状を一面1aおよび他面1bを有したバルクウェハ状のもの、つまり単なる円盤状のものとして説明したが、形状によってはチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40との分離が難しい場合がある。このため、本実施形態では、よりチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40との分離が容易に行えるようにする。
【0038】
一般的には、シリコンウェハなどの半導体ウェハは、外縁部がベベリング処理によって丸められた状態となっており、半導体ウェハの一面と他面が外縁部において同様に丸まった形状となっている。そして、半導体ウェハのうち最も外径が大きい外周端位置から一面や他面のうちの平坦面となる部分まで丸まった状態になっている。このように、一面と他面における外縁部を丸めることで、半導体素子の形成の際に、パターニング用に塗布するレジストが外縁部において堰き止められることが抑制され、外縁部において内周部よりもレジストが厚くなることを抑制できる。また、半導体ウェハの一面や他面の外縁部の角部を無くすことで、ハンドリング時のチッピングの抑制を図ることもできる。
【0039】
しかしながら、図2Aに示したように、仮に、GaNウェハ1の外縁部がベベリング処理で丸まった状態であると、加工ウェハ10の外縁部ではウェハ用変質層15を的確に形成できないことがある。具体的には、図2Aに示すように、加工ウェハ10のうちのGaNウェハ1側からレーザ光Lを照射しても、丸まった外縁部において焦点を結ぶことができず、加工ウェハ10の外縁部にウェハ用変質層15が形成できないことがある。このため、図2B中にハッチングで示したように、加工ウェハ10のうちの内周部にはウェハ用変質層15が形成されるが、外縁部にはウェハ用変質層15が形成されていないような状態になる。したがって、図2Cに示すように、ウェハ用変質層15を境界としてチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割する際に、内周部のみが剥離し、外縁部が上手く剥離させられないことがある。
【0040】
これに対して、本実施形態では、図3に示すように、加工ウェハ10の側面10cのうちウェハ用変質層15と対応する位置に、切欠き溝10dを形成する。切欠き溝10dについては、ウェハ用変質層15の形成前もしくは後に、先端が尖った砥石を用意し、加工ウェハ10の外周を1周するように砥石を移動させることで形成可能である。
【0041】
このように、切欠き溝10dを形成すれば、チップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とを分割する際に、切欠き溝10dとウェハ用変質層15とが繋がり易くなり、容易に分割することが可能となる。
【0042】
なお、図3では、見やすいように、一面1a側が外周側まで平坦面とされている状態を示したが、上記した通り、一面1a側の外周部がベベリング処理によって丸まった状態のままであっても良い。
【0043】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してGaNウェハ1の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0044】
上記第1実施形態では、GaNウェハ1の形状を一面1aおよび他面1bを有したバルクウェハ状のもの、つまり単なる円盤状のものとして説明したが、本実施形態では、GaNウェハ1の外縁部の形状をGaNウェハ1のリサイクルに適した形状にする。
【0045】
具体的には、本実施形態では、図4に示すように、GaNウェハ1のうちの少なくとも他面1b側の外縁部に、外縁部よりも内側に位置する内周部側から外周側に向かうほど厚みが薄くなるテーパ部1dを備えるようにしている。換言すれば、他面1b側が外縁部において、内周側から外周側に向かうほど一面1a側に近づくような傾斜面によりテーパ部1dが構成されている。テーパ部1dとなっている部分の幅、つまり外縁部のうち最も外周側に位置している部分から他面1bのうちテーパ部1dよりも内側となる内周部までの距離が所定幅、例えば100~200μmとされている。テーパ部1dは、図4のようなGaNウェハ1の中心から径方向に沿って切断した断面において、直線状になっている。このようなテーパ部1dについては、例えばGaNウェハ1の外縁部に斜めに砥石を押し当てて研磨することによって形成可能である。
【0046】
また、本実施形態では、他面1bの外縁部にテーパ部1dを設け、テーパ部1dの断面形状が直線状となるようにしている。このため、GaNウェハ1側からレーザ照射を行ったときに、図5に示すように焦点を結ぶことができ、ウェハ用変質層15を的確に形成できる。このため、加工ウェハ10のうちの内周部だけでなく外縁部にも的確にウェハ用変質層15が形成される。したがって、ウェハ用変質層15を境界としてチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割する際に、内周部だけでなく外縁部も上手く剥離させることが可能となる。よって、チップ構成ウェハ30を円盤状に維持できると共に、リサイクルウェハ40の外縁部にチップ構成ウェハ30の外縁部が残ってしまうことが抑制され、リサイクルに適した形状にできる。
【0047】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態では、GaNウェハ1の外縁部にテーパ部1dを形成した。これに対して、図6Aおよび図6Bに示すように、GaNウェハ1の少なくとも他面1b側の外縁部において、外縁部よりも内側に位置する内周部側より厚みが薄くされ、かつ、GaNウェハ1の平面方向に沿う表面とされた段差部1eを備えるようにしても良い。このような段差部1eについても、例えばGaNウェハ1の外縁部に砥石を押し当てて研磨することによって形成可能である。
【0048】
このように、表面が平坦な段差部1eを備えるようにしても、レーザ光Lの焦点が結ばれるようにでき、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40との分割方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
第2実施形態で説明したように、GaNウェハ1がベベリング処理されていて外縁部が丸みを帯びた形状になっている場合、加工ウェハ10の外縁部にウェハ用変質層15を的確に形成できないことがある。
【0051】
このため、本実施形態では、図7Aに示すように、加工ウェハ10のうちの外縁部と内周部との境界における一面10a側にレーザ光Lを照射することで、溝部10eを形成し、ウェハ用変質層15に溝部10eが届くようにしている。溝部10eを形成するためのレーザ照射のタイミングについては任意であり、ウェハ用変質層15を形成する前でも後でも構わない。そして、図7Bに示すように、加工ウェハ10の一面10a側から溝部10eの内側の部分をチップ構成ウェハ30として取り出す。
【0052】
このようにしても、チップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とを分割することができる。この場合、溝部10eの形状を円盤状、好ましくはオリエンテーションフラットもしくはノッチを形作った円盤状とすることで、チップ構成ウェハ30を円盤状としたまま、この後のプロセスで取り扱うことができる。
【0053】
なお、チップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とを分割した後、リサイクルウェハ40の外縁部にチップ構成ウェハ30よりも外側に位置している部分が残るが、リサイクルウェハ40を再利用する際には、平坦化によりその部分を除去すれば良い。
【0054】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対してチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40との分割方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
本実施形態では、図8に示すように、加工ウェハ10の一面10a側において外縁部を切り欠いて段差部10fを形成している。段差部10fについては、例えばリング状砥石を用いて研磨することなどによって形成可能である。段差部10fの形成タイミングについては任意であり、段差部10fを形成してからウェハ用変質層15を形成するためのレーザ照射を行っても良いし、ウェハ用変質層15を形成した後に段差部10fを形成しても良い。
【0056】
このように、段差部10fを形成するようにしても、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、段差部10fの深さについては、ウェハ用変質層15の形成位置と合わせるようにしても良いし、ウェハ用変質層15の形成位置よりも深くしても良い。段差部10fの深さをウェハ用変質層15の形成位置よりも深くする場合、段差部10fを残したままリサイクルウェハ40として再利用しても良い。
【0057】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対してチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40との分割方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
本実施形態では、図9に示すように、ウェハ用変質層15が外周部において尖った形状となるようにする。ここではウェハ用変質層15が厚み方向の中間位置において最も外径が大きくなり、加工ウェハ10の一面10a側および他面10bにおいて中間位置よりも外径が小さくなるようにしている。このような形状のウェハ用変質層15については、レーザ照射を深さ方向において段階的に行い、各段でのレーザ照射範囲を調整することによって形成可能である。
【0059】
このように、ウェハ用変質層15が外周部において尖った形状となるようにすれば、その部分から亀裂が入りやすくなり、チップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40との分割を容易に行うことが可能となる。
【0060】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0061】
例えば、上記各実施形態において、エピタキシャル膜3は、n型エピタキシャル層3aのみで構成されていてもよい。
【0062】
また、上記各実施形態において、図1Gの工程では、チップ構成ウェハ30の他面30bを研磨せずに金属膜61を形成するようにしてもよい。例えば、半導体素子として光半導体素子等を形成する場合には、他面30b側に凹凸構造が残るようにすることにより、他面30b側から効果的に光を取り出すことが可能となる。
【0063】
さらに、上記各実施形態において、図1Bのエピタキシャル膜3を形成する工程では、GaNウェハ1の他面1b側にもエピタキシャル膜が形成されるようにしてもよい。これによれば、例えば、ウェハ用変質層15をGaNウェハ1内に形成する場合においても、リサイクルウェハ40として所定以上の厚さを残し易くなり、再利用できる回数の増加を図ることができる。
【0064】
また、上記第1、第2実施形態において、図1Dの支持部20を配置する工程の前に、図1Eのウェハ用変質層15を形成する工程を行うようにしてもよい。この場合、レーザ光Lは、加工ウェハ10の一面10a側から照射するようにしてもよい。但し、加工ウェハ10の一面10aからレーザ光Lを照射する場合、一面10a側に形成される表面電極や配線パターン等によってレーザ光Lの集光点の位置がばらつく可能性がある。このため、加工ウェハ10の他面10bからレーザ光を照射することが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1 GaNウェハ
1a 一面
1b 他面
3a n型エピタキシャル層
3b n型エピタキシャル層
10 加工ウェハ
11 一面側素子構成部分
15 ウェハ用変質層
60 他面側素子構成部分
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9