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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20240911BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240911BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240911BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/34
A61K8/89
A61K8/891
A61Q5/00
A61K8/892
A61K8/31
A61K8/06
A61Q5/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020135696
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032172
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 幸一郎
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508313(JP,A)
【文献】国際公開第2004/082644(WO,A1)
【文献】特表2015-500871(JP,A)
【文献】特開2007-223930(JP,A)
【文献】特開2018-076311(JP,A)
【文献】特開2019-178108(JP,A)
【文献】特開平01-175923(JP,A)
【文献】特開2005-179337(JP,A)
【文献】国際公開第2008/132816(WO,A1)
【文献】米国特許第05997851(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/67
A61K 8/34
A61K 8/89
A61K 8/891
A61Q 5/00
A61K 8/892
A61K 8/31
A61K 8/06
A61Q 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トコフェロールまたはそのエステル(A)、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)、シリコーン(C)、および揮発性油(D)を含み、
前記トコフェロールまたはそのエステル(A)および前記直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)が0.03~1質量%であり、
前記トコフェロールまたはそのエステル(A)と前記直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)との質量比(A/B)が0.12~16.67であり、
前記シリコーン(C)の含有量が1.5~9.5質量%であり、
下記手順(1)~(3)に従って測定される前記シリコーン(C)の粘度が100~1500mPa・sである、毛髪化粧料:
(1)前記シリコーン(C)をシクロペンタシロキサンに10質量%の濃度となるように添加して測定試料を調製する;
(2)前記(1)で調製された測定試料について、B型粘度計を用いて、25℃、ローターNO.3、および回転数60rpmの条件で、粘度の計測を開始する;
(3)計測開始してから60秒後の粘度を測定する。
【請求項2】
前記トコフェロールまたはそのエステル(A)が、酢酸トコフェロールである、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記シリコーン(C)が、ジメチコンおよびジメチコノールから選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記揮発性油(D)が、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、軽質イソパラフィン、および軽質流動イソパラフィンから選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
非水系オイルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
前記揮発性油(D)の含有量が70~98.4質量%である、請求項5に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
乳化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
前記揮発性油(D)の含有量が10~60質量%である、請求項7に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
洗い流さないトリートメントである、請求項1~8のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項10】
タオルドライ後、ドライヤー乾燥前に使用するトリートメントである、請求項1~9のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷を受けた毛髪はパサつきやすいため、感触の改善が求められる。そのため、毛髪のパサつきを軽減して、しっとりとした感触へと改善するための毛髪化粧料が知られている。例えば、ドライヤーで毛髪を乾かす前などに使用する毛髪化粧料として、実質的に水を含まないオイル状のものや乳化物であるミルク状のものがあり、シリコーン等が配合されている。また、特許文献1には、すべり感、柔らかさ、艶を毛髪に付与し、その効果の持続性を高めるために、高粘度のジメチコン、環状シリコーン、安息香酸アルキル、および低粘度のジメチコンを組み合わせて配合した毛髪処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-174825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された毛髪処理剤は、感触面において充分ではない。一般的にしっとりとした質感はべたつきを生じやすく、特に高粘度のジメチコンを配合するとさらにべたつきが生じやすい。そのため、特許文献1に開示された毛髪処理剤は、しっとりとした感触とべたつきの少なさが充分に両立されているとは言えない。
【0005】
そこで、本発明は、ドライ時の毛束のばらけ感が良好で、仕上がりにしっとりさ、柔らかさ、および艶を付与しながらもべたつきを抑えて、さらにその効果が持続する毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪化粧料は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[10]である。
【0007】
[1]トコフェロールまたはそのエステル(A)、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)、シリコーン(C)、および揮発性油(D)を含み、前記トコフェロールまたはそのエステル(A)および前記直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)が0.03~1質量%であり、前記トコフェロールまたはそのエステル(A)と前記直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)との質量比(A/B)が0.12~16.67であり、前記シリコーン(C)の含有量が1.5~9.5質量%であり、下記手順(1)~(3)に従って測定される前記シリコーン(C)の粘度が100mPa・s以上である、毛髪化粧料:
(1)前記シリコーン(C)をシクロペンタシロキサンに10質量%の濃度となるように添加して測定試料を調製する;
(2)前記(1)で調製された測定試料について、B型粘度計を用いて、25℃、ローターNO.3、および回転数60rpmの条件で、粘度の計測を開始する;
(3)計測開始してから60秒後の粘度を測定する。
[2]前記トコフェロールのエステル(A)が、酢酸トコフェロールである、[1]に記載の毛髪化粧料。
[3]前記シリコーン(C)が、ジメチコンおよびジメチコノールから選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の毛髪化粧料。
[4]前記揮発性油(D)が、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、軽質イソパラフィン、および軽質流動イソパラフィンから選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[5]非水系オイルである、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[6]前記揮発性油(D)の含有量が70~98.4質量%である、[5]に記載の毛髪化粧料。
[7]乳化物である、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[8]前記揮発性油(D)の含有量が10~60質量%である、[7]に記載の毛髪化粧料。
[9]洗い流さないトリートメントである、[1]~[8]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[10]タオルドライ後、ドライヤー乾燥前に使用するトリートメントである、[1]~[9]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ドライ時の毛束のばらけ感が良好で、仕上がりにしっとりさ、柔らかさ、および艶を付与しながらもべたつきを抑えて、さらにその効果が持続する毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の毛髪化粧料について具体的に説明する。
<毛髪化粧料>
本発明の毛髪化粧料は、トコフェロールまたはそのエステル(A)(以下、単に「成分(A)」ともいう。)、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)(以下、単に「高級アルコール(B)」ともいう。)、シリコーン(C)、および揮発性油(D)を含み、前記成分(A)および前記高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)が0.03~1質量%であり、前記成分(A)と前記高級アルコール(B)との質量比(A/B)が0.12~16.67であり、前記シリコーン(C)の含有量が1.5~9.5質量%であり、下記手順(1)~(3)に従って測定される前記シリコーン(C)の粘度が100mPa・s以上である。
【0010】
(1)前記シリコーン(C)をシクロペンタシロキサンに10質量%の濃度となるように添加して測定試料を調製する;
(2)前記(1)で調製された測定試料について、B型粘度計を用いて、25℃、ローターNO.3、および回転数60rpmの条件で、粘度の計測を開始する;
(3)計測開始してから60秒後の粘度を測定する。
【0011】
本発明における各成分の含有量は、毛髪化粧料全体を100質量%とした場合の含有量を示している。
本発明の毛髪化粧料の剤型は、特に制限されないが、非水系オイルまたは乳化物であることが好ましい。
【0012】
<トコフェロールまたはそのエステル(A)>
本発明の毛髪化粧料は、トコフェロールまたはそのエステル(A)を含む。
前記成分(A)として、具体的にはdl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、dl-δ-トコフェロール、およびこれらのエステルが挙げられる。これらの中でも、入手が容易であることから、dl-α-トコフェロール、およびdl-α-トコフェロールエステルが好ましい。トコフェロールのエステルは、トコフェロールとカルボン酸のエステルであれば特に制限されないが、入手が容易であることから、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、およびリノール酸トコフェロールが好ましく、酢酸トコフェロールがより好ましい。
【0013】
前記成分(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の毛髪化粧料において、前記成分(A)と前記高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)は、0.03~1質量%であり、好ましくは0.05~0.8質量%であり、より好ましくは0.05~0.6質量%である。
【0014】
前記成分(A)と前記高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)が前記の範囲にあると、べたつきが少なく、ドライ時のばらけ感に優れる。
本発明の毛髪化粧料は、前記成分(A)と、前記高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)が0.03質量%より小さいと、べたつきを生じ、ドライ時のばらけ感が不充分となる場合がある。含有量の合計(A+B)が1質量%より大きい場合は、べたつきを生じ、ドライ時のばらけ感が不充分となることがある。
【0015】
本発明の毛髪化粧料において、前記成分(A)と、前記高級アルコール(B)の質量比(A/B)は、0.12~16.67であり、好ましくは0.16~12.5であり、より好ましくは0.2~10である。
【0016】
本発明の毛髪化粧料は、前記成分(A)と、前記高級アルコール(B)の質量比(A/B)が前記の範囲にあると、べたつきが少ない。
本発明の毛髪化粧料は、前記成分(A)と、前記高級アルコール(B)の質量比(A/B)が0.12より小さいと、べたつきを生じる場合がある。質量比(A/B)が16.67より大きいと、柔らかさが不充分となることがある。
【0017】
<直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)>
本発明の毛髪化粧料は、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20、好ましくは炭素数16~18の1価の高級アルコール(B)を含む。
前記高級アルコール(B)に含まれるアルケニル基は、直鎖および分岐鎖のどちらであってもよいが、直鎖が好ましい。
【0018】
前記高級アルコール(B)としては、具体的には、パルミトレイルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、パルミトレイルアルコールおよびオレイルアルコールが好ましく、入手が容易であることから、オレイルアルコールがより好ましい。
前記高級アルコール(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
<シリコーン(C)>
本発明の毛髪化粧料は、シリコーン(C)を含み、その含有量は1.5~9.5質量%、好ましくは2~9.5質量%、より好ましくは2~9質量%、さらに好ましくは2.5~8.5質量%である。
【0020】
本発明の毛髪化粧料は、シリコーン(C)の含有量が前記の範囲にあると、しっとりと仕上がり、効果が持続する。
本発明の毛髪化粧料は、シリコーン(C)の含有量が1.5質量%より少ないと、仕上がりの艶に欠け、効果の持続性が不充分である場合がある。シリコーン(C)の含有量が9.5質量%より多いと、柔らかさに欠け、べたつきを生じることがある。
【0021】
また、前記シリコーン(C)は、下記手順(1)~(3)に従って測定される粘度が100mPa・s以上であり、好ましくは280mPa・s以上であり、より好ましくは660mPa・s以上である。
【0022】
(1)前記シリコーン(C)をシクロペンタシロキサンに10質量%の濃度となるように添加して測定試料を調製する;
(2)前記(1)で調製された測定試料について、B型粘度計を用いて、25℃、ローターNO.3、および回転数60rpmの条件で、粘度の計測を開始する;
(3)計測開始してから60秒後の粘度を測定する。
【0023】
シリコーン(C)は、上記粘度が好ましくは1500mPa・s以下である。
シリコーン(C)の上記粘度の範囲としては、前記下限と前記上限とを任意に組み合わせた範囲を任意に設定することができ、例えば100~1500mPa・s、280~1500mPa・s、660~1500mPa・s等の範囲を設定することができる。
【0024】
本発明の毛髪化粧料は、シリコーン(C)の上記粘度が前記の範囲にあると、艶および効果の持続性に優れる。
本発明の毛髪化粧料は、シリコーン(C)の上記粘度が100mPa・sより小さいと、ドライ時のばらけ感、艶および効果の持続性が不充分であることがある。
【0025】
シリコーン(C)としては、上記粘度が100mPa・s以上であれば特に制限はなく、例えば、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン);ジフェニルジメチコン(メチルフェニルポリシロキサン);ジメチコノール;ポリエーテル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等の変性シリコーン;架橋型メチルポリシロキサン等のシリコーンゲル等が挙げられる。シリコーン(C)は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。これらの中でも、本発明の毛髪化粧料使用後の髪の手触りが滑らかであることから、ジメチコンおよびジメチコノールから選択される少なくとも1種が好ましい。
シリコーン(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<揮発性油(D)>
本発明の毛髪化粧料は、揮発性油(D)を含む。
揮発性油(D)は、25℃で揮発性を有するオイル(油分)であれば、特に制限なく用いることができる。
揮発性油(D)は、常圧において沸点が260℃以下のものが好ましく、230℃以下のものがより好ましい。
【0027】
揮発性油(D)としては、例えば、環状シリコーン油、メチルトリメチコン、エチルトリシロキサン、トリシロキサン、カプリリルメチコン、炭化水素油、25℃における粘度が0.1~2.0mm2/sであるジメチコン(ジメチルポリシロキサン)が挙げられる。
【0028】
上記環状シリコーン油としては、例えば、メチルシクロポリシロキサン、シクロテトラシロキサン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、シクロペンタシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、シクロヘキサシロキサン(ドデカメチルシクロヘキサシロキサン)が挙げられる。
【0029】
上記炭化水素油としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソヘキサデカン、ドデカン、イソドデカンが挙げられる。
【0030】
揮発性油(D)は、これらの中でも、べたつきの少なさおよびドライ時のばらけ感の観点から、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、軽質イソパラフィン、および軽質流動イソパラフィンから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0031】
本発明の毛髪化粧料が非水系オイルである場合は、揮発性油(D)の含有量は好ましくは70~98.4質量%であり、より好ましくは80~98.3質量%である。揮発性油(D)の含有量が前記の範囲にあると、べたつきが少ない。
【0032】
本発明の毛髪化粧料が乳化物である場合は、揮発性油(D)の含有量は、好ましくは10~60質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。揮発性油(D)の含有量が前記の範囲にあると、べたつきが少ない。
揮発性油(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
<水>
本発明の毛髪化粧料が非水系オイルである場合は、実質的に水を含まない。実質的に水を含まないとは、水を含む場合であっても少量であることを意味し、具体的には、毛髪化粧料100質量%中、水を通常は0~3質量%、好ましくは0~1質量%、より好ましくは0~0.5質量%含むことを意味する。
【0034】
本発明の毛髪化粧料が乳化物である場合は、水を含み、水の含有量は、好ましくは30~85質量%であり、より好ましくは50~85質量%である。
水として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水、天然水、および芳香蒸留水が挙げられ、イオン交換水が好ましい。
【0035】
<界面活性剤>
本発明の毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤は、通常化粧料に用いられている界面活性剤であれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤等が用いられる。毛髪化粧料の安定性の観点から、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤が好ましい。
【0036】
界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の毛髪化粧料が非水系オイルである場合は、実質的に界面活性剤を含まなくてもよいし、界面活性剤を配合してもよい。
【0037】
実質的に界面活性剤を含まないとは、仮に界面活性剤を含む場合であっても少量であることを意味し、具体的には、毛髪化粧料100質量%中、界面活性剤の含有量が、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%未満であることを意味する。
【0038】
本発明の毛髪化粧料が非水系オイルであって、界面活性剤を配合する場合は、界面活性剤の含有量は好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは0.01~2質量%である。
【0039】
本発明の毛髪化粧料が非水系オイルである場合、界面活性剤はHLB1~10の非イオン性界面活性剤が好ましい。
本発明の毛髪化粧料が乳化物である場合は、界面活性剤を含み、界面活性剤の含有量は好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0040】
<その他成分>
本発明の毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、油剤、粉体、増粘剤、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、および色素等の添加剤を含有することができる。
【0041】
本発明の毛髪化粧料は、例えば、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース、界面活性剤としてセトリモニウムクロリド、ラウレス―9、保湿剤としてジプロピレングリコールを用いることができる。
【0042】
<毛髪化粧料の製造等>
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、乳化、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、好ましくは加熱条件下、例えば70~90℃の加熱条件下で、本発明の毛髪化粧料を製造することが好ましい。
【0043】
<剤型>
本発明の毛髪化粧料の剤型は、特に制限されないが、毛髪に均一に塗布しやすいことから、非水系オイルまたは乳化物であることが好ましい。
前記非水系オイルとは、実質的に水を含まない油性のものをいう。実質的に水を含まないとは、水を含む場合であっても少量であることを意味し、具体的には、毛髪化粧料100質量%中、水を通常は0~3質量%、好ましくは0~1質量%、より好ましくは0~0.5質量%含むことを意味する。
【0044】
前記乳化物とは、水、油、および界面活性剤を含み、乳化状態にあるものをいう。
前記乳化物は、W/O型、O/W型でもよく、マルチプルエマルションであってもよいが、毛髪に均一に塗布しやすいことから、O/W型が好ましい。
【0045】
前記乳化物の製造方法は、特に制限されず凝集法でも分散法でも良く、機械乳化、転相乳化、液晶乳化、PIT乳化、D相乳化等を用いることができる。
本発明の毛髪化粧料の性状としては、例えば、オイル状、乳液状、クリーム状、ジェル状、ローション状が挙げられる。本発明の毛髪化粧料は、毛髪に均一に塗布しやすいことから、オイル状または乳液状であることが好ましい。
【0046】
本発明の毛髪化粧料の外観は、例えば透明または不透明な外観が挙げられる。本発明の毛髪化粧料の各種配合成分を均一に混合する観点から、不透明な乳化状態または透明な油層のみであることが好ましい。
【0047】
<用途>
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に塗布して使用することができる。
本発明の毛髪化粧料は、シャンプー等の毛髪洗浄剤で毛髪を洗浄した後に毛髪に塗布して使用すること、および整髪のために水分等を付与した後に毛髪に塗布して使用することが好ましい。
【0048】
本発明の毛髪化粧料は、洗髪等による水分等が付着した、濡れた状態の毛髪に塗布して使用することが好ましく、タオルドライ後、ドライヤー乾燥前の毛髪に塗布して使用することがより好ましい。
【0049】
本発明の毛髪化粧料は、適用する毛髪に特に制限はなく、直毛、縮毛、ヘアカラー、ブリーチ、パーマ等の処理を受けた毛髪、損傷を受けた毛髪(ダメージヘア)等に用いることができるが、損傷を受けた毛髪(ダメージヘア)に適用することが好ましい。前記損傷としては、例えば、ヘアカラー、ブリーチ、パーマ等の化学的な損傷、ヘアアイロン、ドライヤー、ブロー等による熱、ブラッシング、カット等による機械力、紫外線、乾燥等の物理的な損傷が挙げられる。
【0050】
本発明の毛髪化粧料は、ヘアカラー、ブリーチ、パーマ等の化学的な損傷を受けた毛髪に塗布して使用することが好ましく、ブリーチによる損傷を受けた毛髪に塗布して使用することがより好ましい。
【0051】
本発明の毛髪化粧料は、トリートメントであることが好ましく、洗い流さないトリートメントであることがより好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、タオルドライ後、ドライヤー乾燥前に使用するトリートメントであることが好ましく、タオルドライ後、ドライヤー乾燥前に使用する洗い流さないトリートメントであることがより好ましい。
【実施例
【0052】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0053】
〔実施例1~27、比較例1~13〕
表4~8に示す処方で各成分を混合することにより毛髪化粧料を製造し、官能評価の試料とした。なお、表4~8の処方の数値は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
実施例、および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0054】
【表1】
【0055】
ジメチコン(1)~(4)およびジメチコノール(1)~(4)に含まれるジメチコンまたはジメチコノールの純分を表2に示す。表2の全ての原料において、残分はシクロペンタシロキサンである。
【0056】
【表2】
【0057】
〔粘度の測定〕
ジメチコン(1)~(4)およびジメチコノール(1)~(4)の粘度を以下の方法で測定した。結果を表3に示す。
1.ジメチコン(1)~(4)およびジメチコノール(1)~(4)のいずれかをシクロペンタシロキサンに10質量%の濃度となるように添加して測定試料を調製した。
2.1で調製した測定試料について、B型粘度計を用いて、25℃、ローターNO.3、および回転数60rpmの条件で、粘度の計測を開始した。
3.計測開始してから60秒後の粘度を測定した。
なお、ローターNO.3では測定不能であった測定試料は、ローターNO.2を用いて同様に測定した。
【0058】
【表3】
【0059】
〔官能評価〕
専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、試料0.2gを万遍なく毛束に塗布し、各項目に記載した評価基準に従って官能評価を行った。損傷を受けた毛髪を再現するため、ブリーチ処理した毛束を用いた。各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0060】
<ブリーチ処理>
30cmの人毛黒髪毛束(BS-B3A、ビューラックス社製)10gにブリーチ120(株式会社アリミノ製)30gを塗布して25℃で30分間放置した後、40℃の流水ですすいだ。その後、シェルパ デザインサプリ シャンプー D-2(株式会社アリミノ製)1gでシャンプーし、40℃の流水ですすいだ後、タオルドライしたものを毛束として用いた。
【0061】
<評価項目および評価基準>
(1)べたつきの少なさ
試料を毛束に塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の、仕上がりのべたつきを触感で評価した。
4点:べたつきがない
3点:べたつきが少ない
2点:べたつきがある
1点:非常にべたつく
(2)しっとりさ
試料を毛束に塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の仕上がりのしっとりさを触感で評価した。
4点:潤いを感じ、しっとりしている
3点:潤いを感じ、ややしっとりしている
2点:パサついている
1点:非常にパサついている
(3)柔らかさ
試料を毛束に塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の仕上がりの柔らかさを触感で評価した。
4点:とても柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬い
1点:とても硬い
(4)ドライ時のばらけ感
試料を毛束に塗布し、ドライヤーで乾燥させているときに、毛髪がばらけているかを触感で評価した。
4点:毛髪が一本一本ばらばらになり非常に乾かしやすい
3点:毛髪がほぐれやすく乾かしやすい
2点:毛髪が束になって乾かしづらい
1点:毛髪が束になって非常に乾かしづらい
(5)艶
試料を毛束に塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の仕上がりの艶を目視で評価した。
4点:艶をとても感じる
3点:艶を感じる
2点:艶をやや感じる
1点:艶を感じない
(6)持続性
(1)~(5)の評価を行った毛束を、湿度35%、温度25℃の条件下で12時間放置した。その後、毛束についてべたつきの少なさ、しっとりさ、柔らかさ及び艶を評価した。べたつきの少なさ、しっとりさ、および柔らかさの評価点の総計を触感の評価点とした。12時間放置後の評価点を仕上がり直後の評価結果と比較した。
4点:仕上がり直後と比べ触感及び艶のいずれも同等である
3点:仕上がり直後と比べ触感又は艶の少なくともいずれかがわずかに劣っている
2点:仕上がり直後と比べ触感又は艶の少なくともいずれかが劣っている
1点:仕上がり直後と比べ触感又は艶の少なくともいずれかが非常に劣っている
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
実施例1~27で製造した毛髪化粧料は、いずれも(1)~(6)の全ての評価項目において良好な結果となった。
【0068】
本発明の毛髪化粧料は、ドライ時の毛束のばらけ感が良好で、仕上がりにしっとりさ、柔らかさ、および艶を付与しながらもべたつきを抑えて、さらにその効果が持続する。
比較例1で製造した毛髪化粧料は、トコフェロールまたはそのエステル(A)と、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)が規定量より少ないため、毛髪がべたつき、また、ドライ時のばらけ感が不充分であった。
【0069】
比較例2で製造した毛髪化粧料は、トコフェロールまたはそのエステル(A)と、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)の含有量の合計(A+B)が規定量より多いため、毛髪がべたつき、また、ドライ時のばらけ感が不充分であった。
【0070】
比較例3で製造した毛髪化粧料は、トコフェロールまたはそのエステル(A)と直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)との質量比(A/B)が規定比より小さいため、毛髪がべた付いた。
【0071】
比較例4で製造した毛髪化粧料は、トコフェロールまたはそのエステル(A)と直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)との質量比(A/B)が規定比より大きいため、柔らかさが不充分であった。
【0072】
比較例5で製造した毛髪化粧料は、シリコーン(C)の含有量が規定量より少ないため、仕上がりに艶がなく、効果の持続性も不充分であった。
比較例6で製造した毛髪化粧料は、シリコーン(C)の含有量が規定量より多いため、毛髪がべたつき、柔らかさも不充分であった。
【0073】
比較例7で製造した毛髪化粧料は、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)の代わりにオレイン酸を使用しているため、毛髪がべたつき、ドライ時のばらけ感が悪かった。
【0074】
比較例8で製造した毛髪化粧料は、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)の代わりにセタノールを使用しているため、毛髪がべたつき、しっとりさが不充分であった。
【0075】
比較例9で製造した毛髪化粧料は、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有する炭素数14~20の1価の高級アルコール(B)の代わりにステアリルアルコールを使用しているため、毛髪がべたつき、しっとりさ、柔らかさおよび効果の持続性が不充分であった。
【0076】
比較例10で製造した毛髪化粧料は、特定の測定条件下での粘度が100mPa・s以上であるシリコーン(C)の代わりに、特定の測定条件下での粘度が100mPa・sより小さいジメチコンを使用しているため、しっとりさ、ドライ時のばらけ感、艶、および効果の持続性が不充分であった。
【0077】
比較例11で製造した毛髪化粧料は、特定の測定条件下での粘度が100mPa・s以上であるシリコーン(C)の代わりに、特定の測定条件下での粘度が100mPa・sより小さいジメチコノールを使用しているため、ドライ時のばらけ感、艶および効果の持続性が不充分であった。
【0078】
比較例12で製造した毛髪化粧料は、揮発性油(D)の代わりに、不揮発性油であるジメチコン(5cs)を使用しているため、毛髪がべたつき、ドライ時のばらけ感も悪かった。
【0079】
比較例13で製造した毛髪化粧料は、揮発性油(D)の代わりに、不揮発性油である流動イソパラフィンを使用しているため、毛髪がべたつき、ドライ時のばらけ感も悪かった。