(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】太陽光発電システム、太陽光発電管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20240911BHJP
H02S 50/15 20140101ALI20240911BHJP
H02S 40/12 20140101ALI20240911BHJP
【FI】
H02S50/00
H02S50/15
H02S40/12
(21)【出願番号】P 2020200046
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-10-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年10月12日ZOOMによるWEB開催された社団法人電気学会 電子・情報・システム部門の情報システム研究会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】泉井 良夫
(72)【発明者】
【氏名】夏梅 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田畑 浩数
(72)【発明者】
【氏名】西田 義人
(72)【発明者】
【氏名】松井 康浩
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007311(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022052(WO,A1)
【文献】特開2018-148741(JP,A)
【文献】特開2020-129858(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109743019(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00-50/15
H02S 40/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルの設置場所を含む地域の天気情報に基づいて、太陽電池パネルの発電量を予測する発電量予測部と、
前記太陽電池パネルによる発電量を取得する発電量取得部と、
前記発電量予測部により予測された発電量と、前記発電量取得部により取得された発電量とに基づいて、前記太陽電池パネルの故障の可能性を判定する故障可能性診断部と、
前記太陽電池パネルから放射される赤外線を撮影する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラにより撮影された画像に基づいて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断するパネル診断部と
を有し、
前記発電量予測部は、前記パネル診断部により診断された故障個所と、天気情報とに基づいて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する
太陽光発電システム。
【請求項2】
蓄電池と、
前記蓄電池から供給される直流電力を前記太陽電池パネルに供給して、この太陽電池パネルに赤外線を放射させる診断電力供給手段
をさらに有し、
前記赤外線カメラは、前記診断電力供給手段により直流電力が前記太陽電池パネルに供給されている時に、前記太陽電池パネルを撮影する
請求項
1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記発電量予測部は、積雪に関する情報が含まれた天気情報に基づいて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記パネル診断部は、故障箇所の有無の教師データに基づいて構築された深層学習のモデルを用いて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断する
請求項
1に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記パネル診断部は、疑似的に生成された画像データと、故障箇所の有無との組合せからなる教師データに基づいて、深層学習のモデルを構築し、構築されたモデルを用いて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断する
請求項
4に記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記発電量予測部は、太陽電池パネルの故障箇所と、天気情報と、太陽電池パネルの発電量とからなる教師データに基づいて構築された深層学習のモデルを用いて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する
請求項
1に記載の太陽光発電システム。
【請求項7】
前記発電量予測部は、疑似的に生成された太陽電池パネルの故障箇所と、天気情報と、太陽電池パネルの発電量とからなる教師データに基づいて深層学習のモデルを構築し、構築された深層学習のモデルを用いて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する
請求項
6に記載の太陽光発電システム。
【請求項8】
前記診断電力供給手段は、前記太陽電池パネルに積雪した場合に、この太陽電池パネルに対して直流電力を供給する
請求項
2に記載の太陽光発電システム。
【請求項9】
コンピュータが、太陽電池パネルの設置場所を含む地域の天気情報に基づいて、太陽電池パネルの発電量を予測する発電量予測ステップと、
コンピュータが、前記太陽電池パネルによる発電量を取得する発電量取得ステップと、
コンピュータが、前記発電量予測ステップにより予測された発電量と、前記発電量取得ステップにより取得された発電量とに基づいて、前記太陽電池パネルの故障の可能性を判定する故障可能性診断ステップと、
赤外線カメラが、前記太陽電池パネルから放射される赤外線を撮影する撮影ステップと、
コンピュータが、前記赤外線カメラにより撮影された画像に基づいて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断するパネル診断ステップと
を有し、
前記発電量予測ステップは、前記パネル診断ステップにより診断された故障個所と、天気情報とに基づいて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する
太陽光発電管理方法。
【請求項10】
太陽電池パネルの設置場所を含む地域の天気情報に基づいて、太陽電池パネルの発電量を予測する発電量予測ステップと、
前記太陽電池パネルによる発電量を取得する発電量取得ステップと、
前記発電量予測ステップにより予測された発電量と、前記発電量取得ステップにより取得された発電量とに基づいて、前記太陽電池パネルの故障の可能性を判定する故障可能性診断ステップと、
赤外線カメラに、前記太陽電池パネルから放射される赤外線を撮影させる撮影ステップと、
前記赤外線カメラにより撮影された画像に基づいて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断するパネル診断ステップと
をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記発電量予測ステップは、前記パネル診断ステップにより診断された故障個所と、天気情報とに基づいて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システム、太陽光発電管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、交流の電力供給網に接続された太陽電池パネルにおいて、診断時に交流網から一旦切り離して診断装置を接続し、電圧を発電方向と逆方向に印加することによりEL(Electro Luminescence)発光させ、太陽電池パネルの故障診断を行う方法が考案されている。
非特許文献1には、設置場所で太陽電池モジュールを取り外さずに、日中にEL検査を実施できる屋外太陽光下での検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】大内雅之,「太陽電池モジュールの検査方法と不具合事例」,電気設備学会誌,Vol.37,No.6,pp.346-349(2017-6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、必要なタイミングで太陽電池パネルの故障診断を行うことができる太陽光発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る太陽光発電システムは、太陽電池パネルの設置場所を含む地域の天気情報に基づいて、太陽電池パネルの発電量を予測する発電量予測部と、前記太陽電池パネルによる発電量を取得する発電量取得部と、前記発電量予測部により予測された発電量と、前記発電量取得部により取得された発電量とに基づいて、前記太陽電池パネルの故障の可能性を判定する故障可能性診断部とを有する。
【0006】
好適には、前記太陽電池パネルから放射される赤外線を撮影する赤外線カメラと、前記赤外線カメラにより撮影された画像に基づいて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断するパネル診断部とをさらに有し、前記発電量予測部は、前記パネル診断部により診断された故障個所と、天気情報とに基づいて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する。
【0007】
好適には、蓄電池と、前記蓄電池から供給される直流電力を前記太陽電池パネルに供給して、この太陽電池パネルに赤外線を放射させる診断電力供給手段をさらに有し、前記赤外線カメラは、前記診断電力供給手段により直流電力が前記太陽電池パネルに供給されている時に、前記太陽電池パネルを撮影する。
【0008】
好適には、前記発電量予測部は、積雪に関する情報が含まれた天気情報に基づいて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する。
好適には、前記パネル診断部は、故障箇所の有無の教師データに基づいて構築された深層学習のモデルを用いて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断する。
好適には、前記パネル診断部は、疑似的に生成された画像データと、故障箇所の有無との組合せからなる教師データに基づいて、深層学習のモデルを構築し、構築されたモデルを用いて、前記太陽電池パネルの故障箇所を診断する。
【0009】
好適には、前記発電量予測部は、太陽電池パネルの故障箇所と、天気情報と、太陽電池パネルの発電量とからなる教師データに基づいて構築された深層学習のモデルを用いて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する。
好適には、前記発電量予測部は、疑似的に生成された太陽電池パネルの故障箇所と、天気情報と、太陽電池パネルの発電量とからなる教師データに基づいて深層学習のモデルを構築し、構築された深層学習のモデルを用いて、前記太陽電池パネルの発電量を予測する。
好適には、前記診断電力供給手段は、前記太陽電池パネルに積雪した場合に、この太陽電池パネルに対して直流電力を供給する。
【0010】
また、本発明に係る太陽光発電管理方法は、コンピュータが、太陽電池パネルの設置場所を含む地域の天気情報に基づいて、太陽電池パネルの発電量を予測する発電量予測ステップと、コンピュータが、前記太陽電池パネルによる発電量を取得する発電量取得ステップと、コンピュータが、前記発電量予測ステップにより予測された発電量と、前記発電量取得ステップにより取得された発電量とに基づいて、前記太陽電池パネルの故障の可能性を判定する故障可能性診断ステップとを有する。
【0011】
また、本発明に係るプログラムは、太陽電池パネルの設置場所を含む地域の天気情報に基づいて、太陽電池パネルの発電量を予測する発電量予測ステップと、前記太陽電池パネルによる発電量を取得する発電量取得ステップと、前記発電量予測ステップにより予測された発電量と、前記発電量取得ステップにより取得された発電量とに基づいて、前記太陽電池パネルの故障の可能性を判定する故障可能性診断ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、必要なタイミングで太陽電池パネルの故障診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】太陽光発電システム1の全体構成を例示する図である。
【
図2】太陽光発電システム1のコンセプトを説明するための図である。
【
図3】管理装置2のハードウェア構成を例示する図である。
【
図5】太陽光発電システム1における太陽電池管理処理(S10)を説明するフローチャートである。
【
図6】(A)は、重回帰分析による発電量の予測結果を示し、(B)は、深層学習による発電量の予測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、太陽光発電システム1の全体構成を例示する図である。なお、本例では、直流電力を活用した小規模需要家用電力供給網に接続した時価消費モデルに適用した場合を具体例として説明するが、これに限定されるものではなく、交流網においても適用可能である。
図1に例示するように、太陽光発電システム1は、太陽電池パネル10、蓄電池12、電気自動車13、電力供給器14、管理装置2、及び、赤外線カメラ3を含む。
太陽電池パネル10は、太陽光発電を行うパネルである。例えば、太陽電池パネル10は、半導体素子である太陽電池素子が電気的に複数接続された太陽電池モジュールを含む。
蓄電池12は、太陽電池パネル10により発電された電力を蓄電する蓄電池である。本例の蓄電池12は、電力供給器14を介して、太陽電池パネル10により発電された直流電力をそのまま蓄電する。さらに、本例の蓄電池12は、電力供給器14を介して、太陽電池パネル10に対して、蓄電されている直流電力をEL診断用電力として供給する。
電気自動車13は、太陽電池パネル10により発電された電力を蓄電する蓄電池を内蔵し、この蓄電池の電力で駆動する電気自動車である。
【0015】
電力供給器14は、太陽電池パネル10と蓄電池12の間に設けられ、管理装置2からの制御に応じて、太陽電池パネル10により発電された電力を蓄電池12又は電気自動車13に供給し、あるいは、蓄電池12に蓄電された電力を太陽電池パネル10に供給する。
管理装置2は、太陽電池パネル10を管理するコンピュータ端末である。本例の管理装置2は、太陽電池パネル10の発電量を監視しながら、太陽電池パネル10の故障診断を行う。さらに、管理装置2は、太陽電池パネル10の将来の発電量を予測して、発電された電力の供給先(蓄電池12又は電気自動車13など)を決定する。
赤外線カメラ3は、赤外線画像を撮影する赤外線カメラである。本例の赤外線カメラ3は、太陽電池パネル10の赤外線画像を撮影し、撮影された画像を管理装置2に送信する。
【0016】
上記構成によって、本例の太陽光発電システム1は、
図1及び
図2に例示するように、蓄電池12から供給される直流電力を使用することで、オンデマンドでの常時の太陽電池パネル10の故障診断が可能になる。従来の交流電力を使用する方式では、太陽電池パネル10の運転を一旦停止し、オフライン状態で診断装置を別途接続して実施する必要があり、オンデマンドでの診断が困難であった。
また、本例の太陽光発電システム1は、積雪を含む天気情報に加えて、太陽電池パネル10の故障診断結果を活用することで、太陽電池パネル10の発電電力を効率的に自家消費するために必要な太陽電池の発電量の高精度な予測を可能にする。従来は発電量予測とパネル故障診断が分離されていたため、パネル故障による発電量低下も発電量予測の誤差となっており、発電量予測の精度が必ずしも十分でなかった。
また、本例の太陽光発電システム1は、
図2に示すように、高精度な発電量の予測結果と実際の発電量を比較することで、太陽電池パネル10の故障予兆等の診断が可能となり、効率的な故障診断の実施を可能にする。従来は、故障予兆とは無関係に、定期的にオフライン状態で診断装置を別途接続して実施する必要があり、必ずしも効率的ではなかった。また、発電した電量を有効に消費することができるようになる。
【0017】
図3は、管理装置2のハードウェア構成を例示する図である。
図3に例示するように、管理装置2は、CPU200、メモリ202、HDD204、ネットワークインタフェース206(ネットワークIF206)、表示装置208、及び、入力装置210を有し、これらの構成はバス212を介して互いに接続している。
CPU200は、例えば、中央演算装置である。
メモリ202は、例えば、揮発性メモリであり、主記憶装置として機能する。
HDD204は、例えば、ハードディスクドライブ装置であり、不揮発性の記録装置としてコンピュータプログラム(例えば、
図4の管理プログラム5)やその他のデータファイルを格納する。
ネットワークIF206は、有線又は無線で通信するためのインタフェースであり、例えば、赤外線カメラ3や電力供給器14との通信を実現する。
表示装置208は、例えば、液晶ディスプレイ(LCDパネル)である。
入力装置210は、例えば、タッチパネルである。
【0018】
図4は、管理装置2の機能構成を例示する図である。
図4に例示するように、本例の管理装置2には、管理プログラム5がインストールされ、動作する。管理プログラム5は、例えば、CD-ROM等の記録媒体に格納されており、この記録媒体を介して、管理装置2にインストールされる。
管理プログラム5は、診断電力供給部500、カメラ制御部502、撮影画像取得部504、天気情報取得部506、パネル診断部508、診断学習データベース509、発電量予測部510、発電予測学習データベース511、発電実績取得部512、故障可能性診断部514、融雪電力供給部516、及び供給先決定部518を有する。
なお、管理プログラム5の一部又は全部は、ASICなどのハードウェアにより実現されてもよく、また、OS(Operating System)の機能を一部借用して実現されてもよい。
【0019】
管理プログラム5において、診断電力供給部500は、電力供給器14を制御して、蓄電池12から供給される直流電力を太陽電池パネル10に供給して、この太陽電池パネル10に赤外線を放射させる。本例の診断電力供給部500は、故障可能性診断部514により決定されたタイミングで、蓄電池12に蓄電されている直流電力を、太陽電池パネル10の発電方向とは逆方向に印加する。
【0020】
カメラ制御部502は、赤外線カメラ3を制御して、電力供給器14により直流電力が太陽電池パネル10に供給されている時に、太陽電池パネル10の赤外線画像を撮影させる。
撮影画像取得部504は、赤外線カメラ3により撮影された画像を取得する。
【0021】
天気情報取得部506は、太陽電池パネル10が設置された地域の天気情報を取得する。例えば、天気情報取得部506は、太陽電池パネル10が設置された地域の天気予報を、天気予報を提供するウェブサイトから取得する。
【0022】
パネル診断部508は、赤外線カメラ3により撮影された画像に基づいて、太陽電池パネル10の故障箇所を診断する。本例のパネル診断部508は、診断学習データベース509に格納されている教師データに基づいて深層学習のモデルを構築し、構築された深層学習のモデルと、撮影画像取得部502により取得された画像とに基づいて、太陽電池パネル10の故障箇所を特定する。
【0023】
診断学習データベース509は、故障箇所の有無の教師データを格納している。故障箇所の有無の教師データとは、例えば、故障箇所の有る太陽電池パネルの赤外線画像と、故障箇所を示す情報とのセット、及び、故障箇所の無い太陽電池パネルの赤外線画像と、故障箇所が無いことを示す情報とのセットである。故障箇所の有無の教師データが少ない場合には、疑似的に教師データを生成することが望ましい。本例の診断学習データベース509は、実際に撮影された赤外線画像に基づく故障箇所の有無の教師データと、疑似的に生成された故障箇所の有無の教師データとの両方を格納している。
【0024】
発電量予測部510は、積雪に関する情報が含まれた天気情報と、パネル診断部508による診断結果(故障箇所)とに基づいて、太陽電池パネル10の発電量を予測する。特に、太陽電池パネル10の故障箇所の分布によって、発電量が大きく変動する。太陽電池パネル10内の、故障箇所と太陽電池素子の接続関係(直列/並列)によって発電可能な領域が変化するからである。また、晴天であったとしても、積雪の有無によっても発電量が大きく変動する。そのため、発電量予測部510は、故障箇所の分布と、積雪の有無とを加味して、太陽電池パネル10の発電量を予測する。
本例の発電量予測部510は、発電予測学習データベース511に格納されている教師データに基づいて、深層学習のモデルを構築し、構築されたモデルと、天気情報取得部506により取得された天気情報と、パネル診断部508により診断された故障箇所とに基づいて、太陽電池パネル10の発電量を予測する。
【0025】
発電予測学習データベース511は、太陽電池パネルの故障箇所と、天気情報と、太陽電池パネルの発電量とからなる教師データを格納している。発電量の教師データが少ない場合には、疑似的に教師データを生成することが望ましい。本例の発電予測学習データベース511は、実測値である発電量、天気情報及び故障箇所からなる教師データと、疑似的に生成された発電量、天気情報及び故障箇所からなる教師データとの両方を格納している。
【0026】
発電実績取得部512は、太陽電池パネル10による発電量を取得する。本例の発電実績取得部512は、電力供給部14から、各時間帯の発電量を取得する。
故障可能性診断部514は、発電量予測部510により予測された発電量と、発電量取得部512により取得された発電量とに基づいて、太陽電池パネル10の故障の可能性を判定し、判定結果に基づいて、パネル診断部508によるEL診断のタイミングを決定する。例えば、故障可能性診断部514は、発電量予測部510により予測された発電量と、発電量取得部512により取得された発電量とを比較し、これらの差が基準値よりも大きくなった場合に、太陽電池パネル10の故障の可能性が高まったと判定し、パネル診断部508によるEL診断を行うよう指示する。
【0027】
融雪電力供給部516は、太陽電池パネル10に積雪した場合に、この太陽電池パネル10に対して直流電力を供給するよう電力供給器14を制御する。例えば、融雪電力供給部516は、天気情報取得部506により取得された天気情報に基づいて太陽電池パネル10に積雪したと判断された場合に、この太陽電池パネル10に対して直流電力を供給するよう電力供給器14を制御する。電力供給器14は、蓄電池12に蓄電された直流電力を、太陽電池パネル10の発電方向とは逆方向に印加して、太陽電池パネル10に赤外線を放射させる。太陽電池パネル10が赤外線を放射すると、積雪した雪の一部が融け、太陽電池パネル10の傾斜によって落雪することが期待できる。
【0028】
供給先決定部518は、発電量予測部510により予測された発電量に応じて、太陽電池パネル10により発電された電力の供給先を決定する。本例の供給先決定部518は、発電量予測部510により予測された発電量に応じて、太陽電池パネル10により発電された電力の供給先を蓄電池12又は電気自動車13に決定する。
【0029】
図5は、太陽光発電システム1における太陽電池管理処理(S10)を説明するフローチャートである。
図5に示すように、ステップ100(S100)において、管理装置2のパネル診断部508(
図4)は、故障可能性診断部514により決定されたEL診断のタイミングが到来したか否かを判断し、EL診断のタイミングが到来した場合に、S105の処理に移行し(S100:Yes)、EL診断のタイミングが未到来である場合に、S120の処理に移行する(S100:No)。
【0030】
ステップ105(S105)において、パネル診断部508は、診断電力供給部500に対して、EL診断用の電力を供給するよう指示する。診断電力供給部500は、これに応じて、電力供給器14を制御して、電力供給器14を制御して、蓄電池12から供給される直流電力を太陽電池パネル10に供給して、太陽電池パネル10に赤外線を放射させる。
【0031】
ステップ110(S110)において、パネル診断部508は、カメラ制御部502に対して、撮影を指示する。カメラ制御部502は、これに応じて、赤外線カメラ3を制御し、太陽電池パネル10の赤外線画像を撮影させる。
撮影画像取得部504は、赤外線カメラ3により撮影された太陽電池パネル10の赤外線画像を取得し、取得された赤外線画像をパネル診断部506に出力する。
【0032】
ステップ115(S115)において、パネル診断部506は、診断学習データベース509に格納されている教師データに基づいて深層学習のモデルを構築し、構築された深層学習のモデルと、撮影画像取得部502により取得された赤外線画像とに基づいて、太陽電池パネル10の故障箇所を特定する。
【0033】
ステップ120(S120)において、天気情報取得部506は、太陽電池パネル10の設置場所の天気予報(積雪及び融雪に関連する予報を含む)をウェブサイトから取得する。
発電量予測部510は、発電予測学習データベース511に格納されている教師データに基づいて、深層学習のモデルを構築し、構築されたモデルと、天気情報取得部506により取得された天気情報と、パネル診断部508により診断された故障箇所とに基づいて、太陽電池パネル10の発電量を予測する。
【0034】
ステップ125(S125)において、供給先決定部518は、発電量予測部510により予測された発電量に応じて、太陽電池パネル10により発電された電力の供給先を蓄電池12又は電気自動車13に決定する。
【0035】
ステップ130(S130)において、発電実績取得部512は、電力供給部14から、太陽電池パネル10による各時間帯の発電量を収集する。
ステップ135(S135)において、管理プログラム5は、発電量予測部510により予測された発電量の予測期間が経過した場合に、S140の処理に移行し(S135:Yes)、予測期間が経過していない場合に、S130の処理に戻る(S135:No)。
【0036】
ステップ140(S140)において、故障可能性診断部514は、発電量予測部510により予測された発電量と、発電量取得部512により取得された発電量とに基づいて、太陽電池パネル10の故障の可能性を判定する。
ステップ145(S145)において、故障可能性診断部514は、故障可能性の判定結果に基づいて、パネル診断部508によるEL診断のタイミングを決定する。
【0037】
図6(A)は、重回帰分析による発電量の予測結果を示し、
図6(B)は、深層学習による発電量の予測結果を示すグラフである。
図6(A)に示すように、重回帰分析による予測では、2月に大きく予測を外している日が何日かあることがわかる。2月の予測値と実績値との絶対誤差と、気象データから、積雪のある日の誤差が大きいことに加えて、積雪のない日でも
図6(B)に比較して絶対誤差が大きい日がある。つまり、重回帰分析では、積雪を加味したとしても、発電量の予測が困難であると考えられる。
一方、
図6(B)に示すように、深層学習による予測では、積雪の有無に関わらず、
図6(A)よりも高い精度で発電量を予測できている。
なお、
図6(B)の結果は、最もシンプルなディープニューラルネットワークを採用し、入力層が4ユニットで入力データである平均気温、日照時間、降水量、最深積雪の4つ、出力層は、1ユニットで、発電量の1つとし、中間層については層数を8、ユニット数を14としたものである。活性化関数には、ReLU(Rectified Linear Unit)を使用し、予測モデルの構築には、誤差逆伝搬法を用い、最適化関数には、Adamを使用した。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の太陽光発電システム1によれば、蓄電池12から供給される直流電力を使用することで、オンデマンドでの太陽電池パネル10の故障診断が可能になる。
また、本例の太陽光発電システム1によれば、積雪を含む天気情報に加えて、太陽電池パネル10の故障診断結果を活用することで、太陽電池パネル10の発電電力を効率的に自家消費するために必要な太陽電池の発電量の高精度な予測を可能にする。特に、深層学習を用いた発電量予測が、積雪のある地域では有効である。
また、本例の太陽光発電システム1は、高精度な発電量の予測結果と実際の発電量を比較することで、太陽電池パネル10の故障予兆等の診断が可能となり、効率的な故障診断の実施を可能にする。
【0039】
なお、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 太陽光発電システム
2 管理装置
3 赤外線カメラ
5 管理プログラム
10 太陽電池パネル
12 蓄電池
14 電力供給器