(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】換気装置、調理システムおよび換気制御装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240911BHJP
F24F 13/28 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F24F7/06 101Z
F24F13/28
(21)【出願番号】P 2021004744
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 朋大
(72)【発明者】
【氏名】小松 俊明
(72)【発明者】
【氏名】足立 和久
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-033256(JP,A)
【文献】特開2019-066073(JP,A)
【文献】特開2006-097982(JP,A)
【文献】特開2012-229840(JP,A)
【文献】特開2010-091223(JP,A)
【文献】特開2020-118423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0163975(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0021139(KR,A)
【文献】特開2011-247503(JP,A)
【文献】特開2011-163576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を行う換気装置であって、
前記調理部の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換える換気制御部と
を備え
、
前記待機状態は、前記加熱部が第1温度に制御される第1待機状態を含み、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記調理状態であることを示す調理状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第1排出口から前記調理部の空気を排出し、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記第1待機状態であることを示す第1待機状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第2排出口から前記調理部の前記空気を排出する換気装置。
【請求項2】
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前
記調理状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第1排出口から前記調理部の空気を屋外に排出する、請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前
記第1待機状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第2排出口から前記調理部の前記空気を屋内に排出する、請求項2に記載の換気装置。
【請求項4】
前記待機状態は、前記第1待機状態と、前記加熱部が前記第1温度よりも高い第2温度に制御される第2待機状態とを含み、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記第2待機状態であることを示す第2待機状態情報であるとき、前記第1排出口から前記調理部の空気を屋外に排出する、請求項3に記載の換気装置。
【請求項5】
前記調理部と前記第1排出口との間の第1排気路に設けられるとともに、前記第1排気路を遮断可能な第1遮断部と、
前記調理部と前記第2排出口との間の第2排気路に設けられるとともに、前記第2排気路を遮断可能な第2遮断部とをさらに有し、
前記換気制御部は、前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記第1遮断部および前記第2遮断部を制御する、請求項3または4に記載の換気装置。
【請求項6】
前記換気制御部は、
前記調理部の空気の排出を前記第2排出口から前記第1排出口に切り替えるとき、前記第1遮断部による前記第1排気路の遮断を解除した後、前記第2遮断部により前記第2排気路を遮断し、
前記調理部の空気の排出を前記第1排出口から前記第2排出口に切り替えるとき、前記第2遮断部による前記第2排気路の遮断を解除した後、前記第1遮断部により前記第1排気路を遮断する、請求項5に記載の換気装置。
【請求項7】
前記第2排気路には、前記調理部の空気に含まれる汚染物質を除去するフィルターが設けられている、請求項5または6に記載の換気装置。
【請求項8】
前記換気制御部は、前記第1待機状態の取得に基づいて、前記調理部の空気の排出を前記第1排出口から前記第2排出口に切り替えるとき、前記第1待機状態情報が取得されてから所定の時間、前記第1排出口を介して前記調理部の空気を排出させた後、前記第2排出口を介して前記調理部の空気を排出させる、請求項3~7のいずれかに記載の換気装置。
【請求項9】
前記調理部は、前記加熱部が加熱されない停止状態をさらに有し、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記停止状態であることを示す停止状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記調理部の換気を停止する、請求項3~8のいずれかに記載の換気装置。
【請求項10】
前記換気制御部は、前記停止状態情報を取得してから所定の時間、前記第1排出口または前記第2排出口を介して前記調理部の空気を排出させた後、前記調理部の換気を停止する、請求項9に記載の換気装置。
【請求項11】
前記取得部は、前記調理部から出力される信号に基づいて前記状態情報を取得する、請求項1~10のいずれかに記載の換気装置。
【請求項12】
ユーザーからの指示を受け付ける受付部をさらに有し、
前記取得部は、前記受付部における前記指示に関する指示情報をさらに取得し、
前記換気制御部は、前記取得部によって取得された前記指示情報に基づいて、前記調理部の換気を制御する、請求項1~11のいずれかに記載の換気装置。
【請求項13】
前記換気制御部は、前記指示情報に基づいて前記調理部の換気を制御しているときに、前記取得部により前記状態情報が取得された場合、前記指示情報に基づく前記調理部の換気の制御を継続する、請求項12に記載の換気装置。
【請求項14】
前記換気制御部は、前記指示情報に基づいて前記調理部の換気を所定の期間制御した後、前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて前記調理部の換気を制御する、請求項13に記載の換気装置。
【請求項15】
前記取得部が前記指示情報を取得したとき、
前記換気制御部は、即時に前記指示情報に基づいて、前記調理部の換気を制御する、請求項12~14のいずれかに記載の換気装置。
【請求項16】
加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を行う換気装置であって、
前記調理部の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換える換気制御部と
を備え、
前記待機状態は、前記加熱部が第1温度に制御される第1待機状態を含み、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記調理状態であることを示す調理状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第1排出口から前記調理部の空気を屋外に排出し、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記第1待機状態であることを示す第1待機状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第2排出口から前記調理部の前記空気を屋内に排出し、
前記換気制御部は、前記第1待機状態の取得に基づいて、前記調理部の空気の排出を前記第1排出口から前記第2排出口に切り替えるとき、前記第1待機状態情報が取得されてから所定の時間、前記第1排出口を介して前記調理部の空気を排出させた後、前記第2排出口を介して前記調理部の空気を排出させる、換気装置。
【請求項17】
加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を行う換気装置であって、
ユーザーからの指示を受け付ける受付部と、
前記調理部の状態に関する状態情報と、前記受付部における前記指示に関する指示情報とを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換えるとともに、前記取得部によって取得された前記指示情報に基づいて、前記調理部の換気を制御する換気制御部と
を備え、
前記換気制御部は、前記指示情報に基づいて前記調理部の換気を制御しているときに、前記取得部により前記状態情報が取得された場合、前記指示情報に基づいて前記調理部の換気を所定の期間制御した後、前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて前記調理部の換気を制御する、換気装置。
【請求項18】
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記調理状態であることを示す調理状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第1排出口から前記調理部の空気を屋外に排出する、請求項17に記載の換気装置。
【請求項19】
前記取得部は、前記調理部から出力される信号に基づいて前記状態情報を取得する、請求項17または18に記載の換気装置。
【請求項20】
前記取得部が前記指示情報を取得したとき、
前記換気制御部は、即時に前記指示情報に基づいて、前記調理部の換気を制御する、請求項17~19のいずれかに記載の換気装置。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれかに記載の換気装置と、
前記調理部と
を備える、調理システム。
【請求項22】
加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部と、
前記調理部の換気を行う換気装置と、
を備える調理システムであって、
前記換気装置は、
前記調理部の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換える換気制御部と
を含み、
前記調理状態は、前記加熱部を用いて前記対象物を加熱する調理実行状態と、前記調理実行状態の前の調理準備状態とを含み、
前記調理部が前記調理準備状態であるとき、前記換気装置は前記第1排出口を介した前記調理部の空気の排出を開始する
、調理システム。
【請求項23】
前記換気装置および前記調理部は配線により接続されている、請求項
21または22に記載の調理システム。
【請求項24】
加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を制御する換気制御装置であって、
前記調理部の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換える換気制御部と
を備え
、
前記待機状態は、前記加熱部が第1温度に制御される第1待機状態を含み、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記調理状態であることを示す調理状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第1排出口から前記調理部の空気を排出し、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記第1待機状態であることを示す第1待機状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第2排出口から前記調理部の前記空気を排出する、換気制御装置。
【請求項25】
加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を制御する換気制御装置であって、
前記調理部の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換える換気制御部と
を備え、
前記待機状態は、前記加熱部が第1温度に制御される第1待機状態を含み、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記調理状態であることを示す調理状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第1排出口から前記調理部の空気を屋外に排出し、
前記取得部によって取得された前記状態情報が、前記調理部が前記第1待機状態であることを示す第1待機状態情報であるとき、前記換気制御部は、前記第2排出口から前記調理部の前記空気を屋内に排出し、
前記換気制御部は、前記第1待機状態の取得に基づいて、前記調理部の空気の排出を前記第1排出口から前記第2排出口に切り替えるとき、前記第1待機状態情報が取得されてから所定の時間、前記第1排出口を介して前記調理部の空気を排出させた後、前記第2排出口を介して前記調理部の空気を排出させる、換気制御装置。
【請求項26】
加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を制御する換気制御装置であって、
ユーザーからの指示を受け付ける受付部と、
前記調理部の状態に関する状態情報と、前記受付部における前記指示に関する指示情報とを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換えるとともに、前記取得部によって取得された前記指示情報に基づいて、前記調理部の換気を制御する換気制御部と
を備え、
前記換気制御部は、前記指示情報に基づいて前記調理部の換気を制御しているときに、前記取得部により前記状態情報が取得された場合、前記指示情報に基づいて前記調理部の換気を所定の期間制御した後、前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて前記調理部の換気を制御する、換気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気装置、調理システムおよび換気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア、スーパーおよびデパート等では、店舗内のフロアに調理部を設置しておき、調理部で調理された料理を客に提供することがある。調理部では、たとえば、高温の油等を用いて加熱調理がなされ、揚げ物等の調理済み品が客に提供される。
【0003】
この調理部では、加熱調理に伴って油煙、臭気および水蒸気等が発生するおそれがある。この油煙、臭気および水蒸気等は、たとえば、換気装置によって屋外に排出される(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような調理部が設けられた店舗等の建物内では、たとえば、空調設備により温度等の空気調整がなされている。このため、建物内の空気を屋外に排出すると、空調エネルギーの損失が発生する。したがって、空調エネルギーの損失を抑えつつ、加熱調理に伴う油煙、臭気および水蒸気等を排気することが望ましい。
【0006】
そこで、本発明では、空調エネルギーの損失を抑えつつ、加熱調理に伴う油煙、臭気および水蒸気等を排気することが可能な換気装置、調理システムおよび換気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る換気装置は、加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を行う換気装置であって、前記調理部の状態に関する状態情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換える換気制御部とを備える。
【0008】
本発明に係る調理システムは、上記本発明に係る換気装置と、前記調理部とを備える。
【0009】
本発明に係る換気制御装置は、加熱部を用いて対象物を調理するための調理状態と、前記加熱部が所定の温度に制御されるとともに前記調理状態とは異なる待機状態とを有する調理部の換気を制御する換気制御装置であって、前記調理部の状態に関する状態情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記状態情報に基づいて、前記調理部の空気を第1排出口から排出するか、前記第1排出口とは異なる第2排出口から排出するかを切り換える換気制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る換気装置、調理システムおよび換気制御装置は、排気制御部を備えているので、調理部の状態に関する状態情報に基づいて、第1排出口および第2排出口が切り替えられる。たとえば、調理部での油煙、臭気および水蒸気等の発生状態に応じて、第1排出口を介した屋外への排出、第2排出口を介した屋内への排出を切り替えることが可能となる。したがって、空調エネルギーの損失を抑えつつ、加熱調理に伴う油煙、臭気および水蒸気等を排気することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る調理システムの構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した調理部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示した換気装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示した換気装置の内部の構成の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図3に示した制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図3に示した制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示した調理システムの動作の一例について説明するための図である。
【
図8】
図7に示した調理システムの動作の他の例について説明するための図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る調理システムの動作の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、以下の説明では、重力方向の上下を、単に上下と称する。
【0013】
<第1実施形態>
〔調理システム1の構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る調理システム1の概略構成を示す斜視図である。調理システム1は、たとえば、支持部10、調理部20および換気装置30をこの順に有している。調理システム1は、たとえば、コンビニエンスストア、スーパーおよびデパート等の店舗内、即ち、建物内に設置されている。調理部20の一部には開口20Mが設けられており、この開口20Mを介してユーザーは調理部20内での作業を実施する。この調理システム1では、調理部20を用いて、肉、魚および野菜等の対象物の加熱調理がなされ、調理部20で発生する油煙、臭気および水蒸気等が換気装置30により調理部20の外に排出される。
【0014】
(支持部10)
支持部10は、調理部20および換気装置30を支持している。支持部10は、調理部20の下部に設けられている。支持部10は、たとえば、コンビニエンスストア、スーパーおよびデパート等の店舗の床面に配置されている。
【0015】
(調理部20)
支持部10上の調理部20では、たとえば、肉、魚および野菜等の対象物が、加熱部210により加熱調理される。たとえば、対象物の入った調理籠220が、加熱部210に挿入されることにより、加熱調理がなされる。この調理部20は、加熱部210を用いて対象物を調理するための調理状態と、加熱部210が所定の温度に制御されるとともに調理状態とは異なる待機状態と、加熱部210が加熱されない停止状態とを有している。たとえば、調理部20は、加熱部210の電源がオンされているとき、調理状態または待機状態となり、加熱部210の電源がオフされているとき、停止状態となる。後述するように、調理状態は、たとえば、加熱部210により対象物を加熱する調理実行状態と、調理実行状態の前の調理準備状態とを含む。調理部20が調理状態に加えて、待機状態を有していることにより、加熱部210の温度が調理温度に達するまでの時間を短縮することができる。
【0016】
図2は、調理部20の構成の一例を表している。調理部20は、たとえば、加熱部210、調理籠220、通信部230、操作部240および制御部250を有している。調理部20の各構成要素は、バス260を介して相互に接続されている。
【0017】
加熱部210は、たとえば、調理部20に設けられた凹部である。たとえば、調理部20には2つの加熱部210が設けられている(
図1)。たとえば、この凹部に高温の食用油が設けられることにより、対象物の加熱調理がなされる。凹部の平面形状は、たとえば、矩形である。調理部20が調理状態および待機状態であるとき、加熱部210は、たとえば、170度程度に制御されている。
【0018】
調理籠220は、たとえば、略直方体の形状を有し(
図1)、調理籠220の大きさは、加熱部210の大きさよりも小さくなっている。調理籠220は、たとえば、上下方向に移動可能に構成されており、下位置で加熱部210内に挿入され、上位置で加熱部210の外側に配置される。
【0019】
通信部230は、たとえば、換気装置30と通信するためのインターフェースである。調理部20と換気装置30とは、たとえば、配線を介して接続されている。有線で調理部20と換気装置30とを接続することにより、より確実な調理部20と換気装置30との間の情報伝達が可能となる。調理部20と換気装置30とは、たとえば、赤外線通信やbluetooth(登録商標)通信等の無線通信により接続されていてもよい。
【0020】
操作部240は、たとえば、複数のボタンにより構成されている。たとえば、ユーザーは、この操作部240のボタンを用いて、電源、加熱部210および調理籠220等を制御することができる。たとえば、操作部240には、調理開始の指示ボタンおよび調理時間の設定ボタン等が設けられている。たとえば、ユーザーが、調理開始の指示ボタンを選択することにより、調理部20が調理状態となり、調理籠220が下降して加熱部210に挿入される。この後、ユーザーにより設定された調理時間が経過すると、調理部20が待機状態となり、調理籠220が加熱部210の外側に上昇する。
【0021】
制御部250は、調理部20の各部の動作を制御する。制御部250は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を含むコンピュータにより構成されている。CPUがROMに予め格納されている各種プログラムをそれぞれRAMに読み出して実行することにより、所定の動作制御が実施される。たとえば、操作部240が受け付けたユーザーの操作に基づいて、制御部250が加熱部210および調理籠220の動作制御を実施する。たとえば、制御部250は、調理部20の状態に関する信号を、通信部230を介して換気装置30に送信する。制御部250は、換気装置30から出力された信号に基づく情報を取得してもよい。
【0022】
(換気装置30)
調理部20上の換気装置30は、調理部20を間にして支持部10に支持されている(
図1)。換気装置30は、たとえば、略立方体形状を有しており、調理部20側の下部30Bと、下部30Bに対向する上部30Uと、下部30Bと上部30Uとの間に設けられた一対の側部30SA,30SBと、側部30SAと側部30SBとの間に設けられた前部30Fとを含んでいる。
【0023】
本実施形態では、この換気装置30に第1排出口E1および第2排出口E2が設けられており、調理部20の状態に応じて、調理部20から吸入した空気の排出口が切り替えられる。具体的には、調理部20が調理状態であるとき、調理部20から吸入した空気は第1排出口E1から排出され、調理部20が待機状態であるとき、調理部20から吸入した空気は第2排出口E2から排出される。詳細は後述するが、これにより、店舗等の建物内での空調エネルギーの損失を抑えつつ、加熱調理に伴う油煙、臭気および水蒸気等を排気することが可能となる。
【0024】
たとえば、第1排出口E1は上部30Uに設けられている。第1排出口E1は、たとえば、ダクト(図示せず)を介して建物の外に接続されている。即ち、第1排出口E1は、調理部20の空気を屋外に排出する。第2排出口E2は、第1排出口E1と異なる位置に設けられており、たとえば、前部30Fに配置されている。第2排出口E2は、たとえば、前部30Fに露出された開口であり、調理部20の空気を屋内に排出して循環させる。たとえば、下部30Bには、調理部20の空気を吸入する吸入口(図示せず)が設けられており、この吸入口を介して換気装置30に流入した空気が、第1排出口E1または第2排出口E2から排出される。
【0025】
図3は、換気装置30の構成の一例を表すブロック図であり、
図4は、換気装置30の内部の構成の一例を表す斜視図である。この
図3および
図4を用いて換気装置30のより具体的な構成を説明する。換気装置30は、たとえば、送風部310、第1遮断部320、第2遮断部330、フィルター部340、通信部350、操作部360および制御部370を有している。送風部310、第1遮断部320、第2遮断部330、通信部350、操作部360および制御部370等は、バス380を介して相互に接続されている。
【0026】
送風部310は、ファン等の送風機を含んでいる。この送風部310により、下部30Bの吸入口から第1排出口E1または第2排出口E2に向かう気流が形成される。送風部310は、たとえば、風量の大きさを切替可能に構成されている。
【0027】
第1遮断部320は、調理部20(具体的には、換気装置30の下部30Bの吸入口)と第1排出口E1との間の排気路(以下、第1排気路という。)に設けられており、この第1排気路を開閉する役割を担っている。第1遮断部320は、たとえば、ダンパーにより構成されており、ダンパー筒と、ダンパー筒の内部に設けられたダンパー翼とを含んでいる。たとえば、ダンパー翼は、ダンパー筒を閉鎖する状態と、ダンパー筒を開放する状態との間で変位可能に構成されている。ダンパー翼によりダンパー筒が閉鎖されているとき、第1排気路が遮断され、ダンパー翼によりダンパー筒が開放されているとき、第1排出口E1を介した屋外への空気の排出が可能となる。
【0028】
第2遮断部330は、調理部20(具体的には、換気装置30の下部30Bの吸入口)と第2排出口E2との間の排気路(以下、第2排気路という。)に設けられており、この第2排気路を開閉する役割を担っている。第2遮断部330は、たとえば、ダンパーにより構成されており、ダンパー筒と、ダンパー筒の内部に設けられたダンパー翼とを含んでいる。たとえば、ダンパー翼は、ダンパー筒を閉鎖する状態と、ダンパー筒の開放する状態との間で変位可能に構成されている。ダンパー翼によりダンパー筒が閉鎖されているとき、第2排気路が遮断され、ダンパー翼によりダンパー筒が開放されているとき、第2排出口E2を介した屋内への空気の排出が可能となる。
【0029】
フィルター部340は、たとえば、第2排気路、より具体的には第2遮断部330と第2排出口E2との間に設けられている。このフィルター部340は、調理部20から吸入された空気に含まれる汚染物質を除去する役割を担っており、たとえば複数のフィルターを有している。フィルター部340は、たとえば、脱臭フィルター、エアフィルターおよび脱煙フィルター等を含んでいる。第2排気路に、このようなフィルター部340を設けることにより、第2排出口E2から屋内に排出される空気に起因する臭い、塵および煙等の影響を抑えることが可能となる。
【0030】
脱臭フィルターは、たとえば、活性炭等を含んでおり、脱臭フィルターを通過する空気中に含まれる臭いを吸着する。これにより、第2排出口E2から排出される空気の臭いが抑えられる。脱臭フィルターは、さらに、消臭機能を有していてもよい。フィルター部340は、たとえば、複数の脱臭フィルターを有している。エアフィルターは、エアフィルターを通過する空気中に含まれる細かい塵およびごみ等を除去する。たとえば、脱臭フィルターと第2排出口E2との間の排気路にエアフィルターを設けることにより、脱臭フィルターの通過時に空気中に混入した異物を除去することが可能となる。脱煙フィルターは、脱煙フィルターを通過する空気中に含まれる煙を除去する。フィルター部340は、脱臭フィルター、エアフィルターおまたは脱煙フィルターに加えて、油吸着フィルター等の他のフィルターを有していてもよい。フィルター部340は、1つのフィルターにより構成されていてもよく、複数のフィルターを有していてもよい。
【0031】
通信部350は、たとえば、調理部20と通信するためのインターフェースである。通信部350は、たとえば、調理部20の通信部230との間で通信を実行する。
【0032】
操作部360は、たとえば、前部30Fに設けられており、複数のボタンにより構成されている。たとえば、ユーザーが、この操作部360のボタンを操作することにより、電源、送風部310、第1遮断部320および第2遮断部330等が動作する。たとえば、操作部360には、第1排出口E1および第2排出口E2を選択するボタン等が設けられている。たとえば、ユーザーが、このボタンにより第1排出口E1を選択すると、第2遮断部330により第2排気路が遮断され、調理部20から換気装置30に吸入された空気は、第1排出口E1を介して屋外に排出される。操作部360には、排気時間の設定ボタン等が設けられていてもよい。ここでは、この操作部360が、本発明の受付部の一具体例に対応する。
【0033】
制御部370は、換気装置30の各部の動作を制御する。制御部370は、たとえば、CPU、RAMおよびROM等を含むコンピュータにより構成されている。ここでは、この制御部370が、本発明の換気制御装置の一具体例に対応する。
【0034】
図5は、制御部370の機能構成の一例を表している。たとえば、制御部370では、CPUがROMに予め格納されている各種プログラムをそれぞれRAMに読み出して実行することにより、取得部371および換気制御部372として機能する。
【0035】
取得部371は、たとえば、調理部20から出力される信号に基づいて、調理部20の状態に関する状態情報を取得する。取得部371が取得する状態情報は、たとえば、調理状態情報、待機状態情報および停止状態情報である。調理状態情報は調理部20が調理状態であることを示す情報であり、待機状態情報は調理部20が待機状態であることを示す情報であり、停止状態情報は調理部20が停止状態であることを示す情報である。取得部371は、操作部360において受け付けられたユーザーの指示に関する指示情報を取得してもよい。
【0036】
換気制御部372は、取得部371によって取得された状態情報に基づいて、調理部20の空気を第1排出口E1から排出するか、第2排出口E2から排出するかを切り換える。具体的には、取得部371により調理状態情報が取得されたとき、換気制御部372は第1排出口E1から調理部20の空気を排出し、取得部371により待機状態情報が取得されたとき、換気制御部372は第2排出口E2から調理部20の空気を排出する。取得部371によって取得された状態情報が停止状態情報であるときには、換気制御部372は、たとえば、送風部310の送風を停止することにより、調理部20の換気を停止する。
【0037】
図6は、制御部370において実行される処理の手順、即ち、制御部370による換気の制御方法を示すフローチャートである。
【0038】
まず、制御部370は、指示情報を取得しているか否かを判断する(ステップS101)。たとえば、操作部360において、ユーザーによって第1排出口E1または第2排出口E2を選択する操作が行われたとき、制御部370は、指示情報を取得する(ステップS101:YES)。一方、操作部360において何らの操作も行われないとき、制御部370は、指示情報を取得しない(ステップS101:NO)。
【0039】
制御部370は、指示情報を取得していないとき(ステップS101:NO)、状態情報を取得する(ステップS102)。具体的には、制御部370は、調理部20から調理状態情報、待機状態情報または停止状態情報を取得する。
【0040】
状態情報を取得した後、制御部370は、ステップS102で取得された状態情報に基づいて調理部20の換気を制御する(ステップS103)。ステップS103の処理を行った後、制御部370は、ステップS106の処理に進む。
【0041】
一方、ステップS101で指示情報を取得しているとき(ステップS101:YES)、制御部370は、指示情報に基づいて調理部20の換気を制御する(ステップS104)。たとえば、制御部370は、指示情報に基づいて、即時に、調理部20の空気を第1排出口E1または第2排出口E2から排出する。たとえば、所定の期間は、制御部370で状態情報が取得されても、指示情報に基づく調理部20の換気の制御が継続される。
【0042】
制御部370は、指示情報に基づいて調理部20の換気を制御した後、所定の期間が経過したか否かを判断する(ステップS105)。所定の期間が経過していないと判断したとき(ステップS105:NO)、制御部370は、指示情報に基づいた調理部20の換気を継続する(ステップS104)。所定の期間が経過したと判断したとき(ステップS105:YES)、制御部370は、状態情報を取得し(ステップS102)、取得された状態情報に基づいて、調理部20の換気を制御する(ステップS103)。
【0043】
制御部370は、ステップS103の処理の後、処理終了の指示を受け付けているか否かを判断し(ステップS106)、受け付けていなければ(ステップS106:NO)、ステップS101の処理に戻り、受け付けていれば(ステップS106:YES)、処理を終了する。
【0044】
〔調理システム1の動作〕
次に、調理システム1の動作について説明する。
【0045】
【0046】
時間t0では、調理部20の電源がオフされている。このとき、調理部20は停止状態であり、調理籠220は加熱部210の外側の上位置に配置されている。換気装置30では、送風部310の送風が停止されており、第1遮断部320および第2遮断部330は、各々、第1排気路および第2排気路を遮断している。
【0047】
次に、時間t1で、ユーザーが調理部20の電源をオンすると、調理部20は待機状態となる。これにより、換気装置30は、待機状態情報を取得し、第2遮断部330による遮断を解除する。この後、時間t2で、換気装置30は、送風部310の運転を開始する。即ち、換気装置30は、時間t1で第2排気路を開放した後、時間t2で送風を開始する。また、調理部20では、待機状態となることで、加熱部210の温度が上昇する。加熱部210の温度は、たとえば、時間t1または時間t2から上昇する。
【0048】
次に、時間t3で、ユーザーが調理を指示するボタン操作を行うと、調理部20は調理準備状態となる。これにより、換気装置30は、調理状態情報を取得し、第1遮断部320による遮断を解除する。この時間t3で、換気装置30は、調理部20の空気を第1排出口E1から屋外に排出し始める。この後、時間t4で、換気装置30は、第2遮断部330により第2排気路を遮断する。即ち、時間t4で、調理部20の空気の排出口が、第2排出口E2から第1排出口E1へと切り替えられる。
【0049】
時間t4で、調理部20の空気の排出口が第2排出口E2から第1排出口E1へと切り替えられた後、時間t5で、調理籠220が下位置に下降し、調理部20は調理実行状態となる。この調理実行状態では、調理籠220に入った対象物が、加熱部210により加熱調理される。この加熱調理の間、換気装置30は、調理部20の空気を第1排出口E1から屋外に排出し続ける。
【0050】
予め設定された調理時間が経過し、時間t6で、調理部20は待機状態となり、調理籠220が上位置に上昇する。これにより、換気装置30は、待機状態情報を取得する。換気装置30は、時間t6で待機状態情報を取得した後、時間t7まで第1排出口E1による屋外への排気を継続し、時間t7で第2遮断部330による遮断を解除する。この後、時間t8で、換気装置30は、第1遮断部320により第1排気路を遮断する。即ち、時間t8で、調理部20の空気の排出口が、第1排出口E1から第2排出口E2へと切り替えられる。このように、換気装置30は、時間t6での待機状態情報の取得に基づいて、調理部20の空気の排出を第1排出口E1から第2排出口E2に切り替えるとき、待機状態情報が取得されてから所定の時間(時間t6から時間t7まで)、第1排出口E1を介して調理部20の空気を排出させた後、第2排出口E2を介して調理部20の空気を排出させる。
【0051】
この後、時間t9で、ユーザーが調理部20の電源をオフすると、調理部20は停止状態となる。これにより、換気装置30は、停止状態情報を取得する。換気装置30は、時間t9で停止状態情報を取得した後、時間t10まで第2排出口E2による屋内への排気を継続し、時間t10で送風部310の運転を停止する。即ち、時間t10で、調理部20の換気が停止される。このように、換気装置30は、時間t9での待機状態情報の取得に基づいて、調理部20の換気を停止するとき、停止状態情報が取得されてから所定の時間(時間t9から時間t10まで)、第2排出口E2による調理部20の換気を継続した後、調理部20の換気を停止する。この後、時間t11で、換気装置30は、第2遮断部330により第2排気路を遮断し、調理システム1の一連の動作が終了する。
【0052】
図8は、調理システム1の動作の他の例を表している。
【0053】
時間t0から時間t5までは、上記
図7で説明したのと同様に動作する。
【0054】
この後、時間t6で、ユーザーが調理部20の電源をオフすると、調理部20は停止状態となり、調理籠220が上位置に上昇する。これにより、換気装置30は、停止状態情報を取得する。換気装置30は、時間t6でこの停止状態情報を取得した後、時間t7まで第1排出口E1による屋外への排気を継続し、時間t7で送風部310の運転を停止する。即ち、時間t7で、調理部20の換気が停止される。このように、換気装置30は、時間t6での停止状態情報の取得に基づいて、調理部20の換気を停止するとき、停止状態情報が取得されてから所定の時間(時間t6から時間t7まで)、第1排出口E1による調理部20の換気を継続した後、調理部20の換気を停止する。この後、時間t8で、換気装置30は、第1遮断部320により第1排気路を遮断し、調理システム1の一連の動作が終了する。
【0055】
〔換気装置30および調理システム1の作用効果〕
本実施形態の調理システム1の換気装置30では、制御部370により、調理部20の状態に関する状態情報が取得され、この状態情報に基づいて、第1排出口E1および第2排出口E2が切り替えられる。具体的には、調理部20が調理状態であるとき、第1排出口E1から調理部20の空気を屋外に排出し、調理部20が待機状態であるとき、第2排出口E2から調理部20の空気を屋内に排出する。これにより、空調エネルギーの損失を抑えつつ、加熱調理に伴う油煙、臭気および水蒸気等を排気することが可能となる。以下、この作用効果について詳細に説明する。
【0056】
調理部20が調理状態であるときには、対象物の加熱調理に伴い、調理部20から油煙、臭気および水蒸気等が発生しやすい。一方、調理部20が待機状態であるときには、たとえば、調理籠220が上位置に配置されており、対象物が加熱されないので、調理部20での油煙、臭気および水蒸気等の発生は、比較的少なくなる。
【0057】
このとき、換気装置の排出口が切り替えられないと、調理部が調理状態および待機状態のどちらの場合にも、たとえば、調理部の空気は屋外に排出される。即ち、油煙、臭気および水蒸気等の発生が比較的少ないときにも、空調設備等により空気調整がなされた建物内の空気が屋外に排出されるので、空調エネルギーの損失が大きくなりやすい。一方、調理部が調理状態および待機状態のどちらの場合にも、調理部の空気が屋内に排出されると、対象物の加熱調理に伴う油煙、臭気および水蒸気等に起因して建物内の空気が汚染されるおそれがある。
【0058】
これに対し、調理システム1の換気装置30では、調理部20の状態に応じて、第1排出口E1および第2排出口E2が切り替えられる。これにより、調理部20が調理状態であるときには、調理部20の空気を第1排出口E1から屋外に排出し、調理部20が待機状態であるときには、調理部20の空気を第2排出口E2から屋内に排出することが可能となる。したがって、調理部20が待機状態であるときには、空気が建物内で循環されるので空調エネルギーの損失が抑えられ、かつ、調理部20が調理状態であるときには、油煙、臭気および水蒸気等が屋外に排出されるので店舗内の空気の汚染が抑えられる。
【0059】
以上のように、本実施形態の換気装置30および調理システム1では、調理部20の状態に関する状態情報に基づいて、第1排出口E1および第2排出口E2が切り替えられるので、調理部20での油煙、臭気および水蒸気等の発生状態に応じて、たとえば、第1排出口E1を介した屋外への排出、第2排出口E2を介した屋内への排出を切り替えることが可能となる。したがって、空調エネルギーの損失を抑えつつ、加熱調理に伴う油煙および臭気等を排気することが可能となる。
【0060】
また、換気装置30は、調理部20の空気の排出を第2排出口E2から第1排出口E1に切り替えるとき、たとえば、時間t3で第1遮断部320による第1排気路の遮断を解除した後、時間t4で第2遮断部330により第2排気路を遮断する(
図7)。調理部20の空気の排出を第1排出口E1から第2排出口E2に切り替えるときには、たとえば、時間t7で第2遮断部330による第2排気路の遮断を解除した後、時間t8で第1遮断部320により第1排気路を遮断する(
図7)。このように動作することにより、第1排出口E1および第2排出口E2の切り替えに起因する送風部310の吐出抵抗の上昇が抑えられ、送風部310での騒音および異音の発生等を抑えることができる。
【0061】
また、換気装置30は、待機状態情報の取得に基づいて、調理部20の空気の排出を第1排出口E1から第2排出口E2に切り替えるとき、待機状態情報を取得してから所定の時間(たとえば、
図7の時間t6から時間t7までの間)、第1排出口E1を介して調理部20の空気を排出させた後、第2排出口E2を介して調理部20の空気を排出させる。停止状態情報の取得に基づいて、調理部20の換気を停止するときには、停止状態情報を取得してから所定の時間(たとえば、
図7の時間t9から時間t10までの間、または
図8の時間t6から時間t7までの間)、第1排出口E1または第2排出口E2を介して調理部20の空気を排出させた後、調理部20の換気を停止する。このように動作することにより、調理部20の状態変更後に調理部20内に残存する油煙、臭気および水蒸気等を調理部20から排出することができる。
【0062】
また、調理部20が停止状態のとき、換気装置30は調理部20の換気を停止する。これにより、より効果的に空調エネルギーの損失を抑えることができる。さらに、換気装置30の消費電力および送風部310の負荷を低減することができる。
【0063】
また、換気装置30は、ユーザーからの指示に関する指示情報を取得し、この指示情報に基づいて、調理部20の換気を制御する。たとえば、所定の期間は、状態情報が取得されても、指示情報に基づく調理部20の換気の制御が継続される。これにより、調理部20の状態に関わらず、ユーザーは、柔軟に換気方法を選択することができる。換気装置30は、指示情報を取得したとき、即時に指示情報に基づいて、調理部20の換気を制御することが好ましい。これにより、ユーザー自身が継時的に調理部20の状態を判断し、第1排出口E1および第2排出口E2を切り替えることが可能となる。
【0064】
また、換気装置30は、指示情報に基づいて調理部20の換気を所定の期間制御した後、取得された状態情報に基づいて調理部20の換気を制御する。これにより、ユーザーからの指示が途切れた場合にも、調理部20の状態に応じた換気がなされる。
【0065】
また、換気装置30は、調理部20が調理実行状態の前の調理準備状態であるとき、第1排出口E1を介した調理部20の空気の排出を開始する。これにより、調理実行状態のときに発生する油煙、臭気および水蒸気等を、より確実に屋外に排出することが可能となる。
【0066】
以下、上記第1実施形態で説明した調理システム1の他の実施形態を説明する。なお、以下では、説明の重複を避けるため、上記第1実施形態で説明した調理システム1の各構成と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0067】
<第2実施形態>
調理システム1では、調理部20が複数の待機状態を有していてもよく、複数の待機状態に応じて、換気装置30の第1排出口E1および第2排出口E2が切り替えられてもよい。この点を除き、第2実施形態で説明する調理システム1は、上記第1実施形態で説明した調理システム1と同様の構成を有しており、同様の作用効果を奏する。
【0068】
調理部20の待機状態は、たとえば、第1待機状態および第2待機状態を含んでいる。第1待機状態および第2待機状態では、たとえば、加熱部210の温度が互いに異なっている。調理部20が第1待機状態であるとき、加熱部210は第1温度に制御され、調理部20が第2待機状態であるとき、加熱部210は第1温度よりも高い第2温度に制御される。この第2待機状態の第2温度は、加熱部210が調理状態であるときの加熱部210の温度とほぼ同じ温度であり、たとえば、170度程度である。第1待機状態の第1温度は、たとえば、第2温度よりも20度程度低い温度であり、150度程度である。
【0069】
たとえば、ユーザーによって調理部20の電源がオンされると、調理部20は、まず、第2待機状態となる。この後、ユーザーによって所定の時間、調理が行われない場合、即ち、調理部20が所定の時間、調理状態とならない場合、調理部20は第1待機状態となる。調理部20が、このような複数の待機状態を有していることにより、たとえば消費電力等が抑えられ、エコロジーに配慮した調理システム1の使用が可能となる。
【0070】
図9は、本実施形態に係る調理システム1の動作の一例を表している。
【0071】
時間t0では、調理部20の電源がオフされている。このとき、調理部20は停止状態であり、調理籠220は加熱部210の外側の上位置に配置されている。換気装置30では、送風部310の運転が停止されており、第1遮断部320および第2遮断部330は、各々、第1排気路および第2排気路を遮断している。
【0072】
次に、時間t1で、ユーザーが調理部20の電源をオンすると、調理部20は第2待機状態となる。これにより、換気装置30は、調理部20が第2待機状態であることを示す第2待機状態情報を取得し、第1遮断部320による遮断を解除する。この後、時間t2で、換気装置30は、送風部310の運転を開始する。即ち、換気装置30は、時間t1で第1排気路を開放した後、時間t2で送風を開始する。また、調理部20では、第2待機状態となることで、加熱部210の温度が第2温度に上昇する。加熱部210の温度は、たとえば、時間t1または時間t2から上昇する。
【0073】
次に、時間t2から所定の時間経過後の時間t3となると、調理部20は第1待機状態となり、加熱部210が第1温度に制御される。このとき、換気装置30は、調理部20が第1待機状態であることを示す第1待機状態情報を取得し、第2遮断部330による遮断を解除する。この時間t3で、換気装置30は、調理部20の空気を第2排出口E2から屋内に排出し始める。この後、時間t4で、換気装置30は、第1遮断部320により第1排気路を遮断する。即ち、時間t4で、調理部20の空気の排出口が、第1排出口E1から第2排出口E2へと切り替えられる。
【0074】
次に、時間t5で、ユーザーが調理部20に調理開始を指示すると、調理部20は調理準備状態となる。これにより、換気装置30は、調理状態情報を取得し、第1遮断部320による遮断を解除する。この時間t5で、換気装置30は、調理部20の空気を第1排出口E1から屋外に排出し始める。この後、時間t6で、換気装置30は、第2遮断部330により第2排気路を遮断する。即ち、時間t6で、調理部20の空気の排出口が、第2排出口E2から第1排出口E1へと切り替えられる。加熱部210の温度は、たとえば、時間t5または時間t6から上昇する。
【0075】
時間t6で、調理部20の空気の排出口が第2排出口E2から第1排出口E1へと切り替えられた後、時間t7で、調理部20の調理籠220が下位置に下降し、調理部20は調理実行状態となる。この調理実行状態では、調理籠220に入った対象物が、加熱部210により加熱調理される。この加熱調理の間、換気装置30は、調理部20の空気を第1排出口E1から屋外に排出し続ける。
【0076】
この後、予め設定された調理時間が経過し、時間t8で、調理部20は第2待機状態となり、調理籠220が上位置に上昇する。これにより、換気装置30は、第2待機状態情報を取得し、第1排出口E1による屋外への排気を継続する。
【0077】
次に、時間t8から所定の時間経過後の時間t9となると、調理部20は第1待機状態となり、加熱部210が第1温度に制御される。このとき、換気装置30は、第1待機状態情報を取得し、第2遮断部330による遮断を解除する。この時間t9で、換気装置30は、調理部20の空気を第2排出口E2から屋内に排出し始める。この後、時間t10で、換気装置30は、第1遮断部320により第1排気路を遮断する。即ち、時間t10で、調理部20の空気の排出口が、第1排出口E1から第2排出口E2へと切り替えられる。
【0078】
この後、時間t11で、ユーザーが調理部20の電源をオフすると、調理部20は停止状態となる。これにより、換気装置30は、停止状態情報を取得する。換気装置30は、時間t11でこの停止状態情報を取得した後、時間t12まで第2排出口E2による屋内への排気を継続し、時間t12で送風部310の運転を停止する。この後、時間t13で、換気装置30は、第2遮断部330により第2排気路を遮断し、調理システム1の一連の動作が終了する。
【0079】
このように、本実施形態に係る調理システム1は、調理部20が調理状態および第2待機状態のとき、第1排出口E1から調理部20の空気を屋外に排出し、調理部20が第1待機状態のとき、第2排出口E2から調理部20の空気を屋内に排出する。本実施形態に係る調理システム1も、上記第1実施形態で説明したのと同様に、空調エネルギーの損失を抑えつつ、加熱調理に伴う油煙、臭気および水蒸気等を排気することが可能となる。
【0080】
以上、実施形態において本発明の換気装置および調理システムについて説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができる。たとえば、上記実施形態で説明した換気装置および調理システムの各部の構成、形状および大きさ等は一例であり、他の構成、形状および大きさ等であってもよい。
【0081】
たとえば、第1排出口および第2排出口は、換気装置30の外部において分岐したダクトにより構成されていてもよい。
【0082】
また、たとえば、上記実施形態では、調理部20が、調理準備状態を経て、調理実行状態となる例を説明したが、調理部20は、調理準備状態を経ずに、調理実行状態となってもよい。
【0083】
また、たとえば、上記実施形態では、調理部20から出力される信号に基づいて、換気装置30(より具体的には制御部370)が、状態情報を取得する例について説明したが、換気装置30は、調理部20以外の構成または装置等から出力される信号に基づいて状態情報を取得してもよい。
【0084】
また、たとえば、調理部20の状態に応じて、排出口とともに、他の構成要素が切り換えられてもよい。たとえば、調理部20の状態に応じて、送風部310の風量が切り替えられてもよい。
【0085】
また、上記第2実施形態では、調理部20の待機状態が2つの待機状態を含む例について説明したが、調理部20の待機状態は、3つ以上の待機状態を含んでいてもよい。また、複数の待機状態では、加熱部210の温度とともに、他の条件が異なっていてもよく、加熱部210の温度に代えて、他の条件が異なっていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、調理部20で高温の油を用いた調理がなされる例を説明したが、調理部20での調理方法は、これに限定されない。たとえば、調理部20ではオーブン等を用いた調理がなされてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、換気装置30がフィルター部340を有する例を説明したが、換気装置30は、フィルター部を有していなくてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、換気装置30が、調理部20を介して支持部10に支持されている例を示したが、換気装置30の設置形態は、これに限定されない。たとえば、換気装置30は、ねじ止め等により建物内の壁に固定されていてもよく、あるいは、吊りボルト等により建物の天井に固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 調理システム、
10 支持部
20 調理部、
210 加熱部、
220 調理籠、
230、350 通信部、
240、360 操作部、
250、370 制御部、
30 換気装置、
30U 上部、
30B 下部、
30SA、30SB 側部、
30F 前部、
310 送風部、
320 第1遮断部、
330 第2遮断部、
340 フィルター部、
E1 第1排出口、
E2 第2排出口。