(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】エア工具用システム及びエア工具用プログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20240911BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2021009340
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】中田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜晴
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-020977(JP,A)
【文献】実開昭53-117683(JP,U)
【文献】特開2002-370177(JP,A)
【文献】特開平06-015579(JP,A)
【文献】特開2005-125418(JP,A)
【文献】特開平08-071942(JP,A)
【文献】米国特許第03434547(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B25B 21/00
B25B 23/14
B23P 19/06
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通のエア源から複数のエア工具にエアを供給可能なエア工具用システムであって、
前記エア源からのエアが供給される根元管と、
前記根元管から分岐して前記エア工具にエアを供給する複数の分岐管と、
前記根元管と前記分岐管との間に介在して、前記根元管のエア圧である元圧を、前記分岐管から前記エア工具に供給するエア圧である供給圧に調圧する調圧弁と、
前記元圧を検出する元圧センサと、
前記エア工具に供給されるエアの供給圧又は供給流量を検出する供給圧センサ又は供給流量センサと、
前記元圧センサの検出値である第1検出値、及び、前記供給圧センサ又は前記供給流量センサの検出値である第2検出値を取得して、これらの第1検出値及
び第2検出値が所定条件を満たした場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントするカウント部とを備える、エア工具用システム。
【請求項2】
前記第2検出値が、前記供給圧センサの検出値である、請求項1記載のエア工具用システム。
【請求項3】
前記カウント部が、前記第1検出値が所定の第1閾値を上回り、且つ、前記第2検出値が所定の第2閾値を下回る場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントする、請求項2記載のエア工具用システム。
【請求項4】
前記第2検出値が前記第2閾値を下回った時間を計測するタイマをさらに備え、
前記カウント部が、前記第1検出値が所定の第1閾値を上回り、且つ、前記第2検出値が所定の第2閾値を下回り、且つ、前記タイマによる計測時間が所定の下限時間を超えた場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントする、請求項3記載のエア工具用システム。
【請求項5】
前記タイマによる計測時間が所定の上限時間を超えた場合に、そのことを報知する報知部をさらに備える、請求項4記載のエア工具用システム。
【請求項6】
共通のエア源から複数のエア工具にエアを供給可能なエア工具用システムに用いられるエア工具用プログラムであって、前記エア工具用システムが、前記エア源からのエアが供給される根元管と、上流端部が前記根元管に接続されるとともに、下流端部が前記エア工具に接続された複数の分岐管と、前記根元管と前記分岐管との間に介在して、前記根元管のエア圧である元圧を、前記分岐管から前記エア工具に供給するエア圧である供給圧に調圧する調圧弁と、前記元圧を検出する元圧センサと、前記エア工具に供給されるエアの供給圧又は供給流量を検出する供給圧センサ又は供給流量センサとを備えており、
前記元圧センサの検出値である第1検出値、及び、前記供給圧センサ又は前記供給流量センサの検出値である第2検出値を取得して、これらの第1検出値及
び第2検出値が所定条件を満たした場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントするカウント部としての機能をコンピュータに発揮させる、エア工具用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインパクトレンチ等のエア工具に用いられるエア工具用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のエア工具用システムとしては、特許文献1に示すように、エア源からエア工具にエアを供給する流路に流量センサを設けて、この流量センサによりエアが流れたことを検出することで、エア工具の駆動回数、すなわちネジの締付本数をカウントするように構成されたものがある。
【0003】
ところで、従来のエア工具用システムとしては、共通のエア源から分岐管を介して複数のエア工具にエアを供給できるように構成されたものがある。
【0004】
かかる構成において、エア工具の駆動回数を上述したようにカウントしようとすると、カウント対象とは別のエア工具が例えば大きなエア圧で駆動した際に、カウント対象のエア工具に接続されている分岐管内の空気が引っ張られてしまうことがある。
【0005】
そうすると、カウント対象のエア工具を駆動させていないにもかかわらず、カウント数が増えてしまい、エア工具の駆動回数を正しくカウントすることができないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明は、共通のエア源から複数のエア工具にエアを供給可能なエア工具用システムにおいて、エア工具の駆動回数を正しくカウントできるようすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本願発明に係るエア工具用システムは、共通のエア源から複数のエア工具にエアを供給可能なエア工具用システムであって、前記エア源からのエアが供給される根元管と、前記根元管から分岐して前記エア工具にエアを供給する複数の分岐管と、前記根元管と前記分岐管との間に介在して、前記根元管のエア圧である元圧を、前記分岐管から前記エア工具に供給するエア圧である供給圧に調圧する調圧弁と、前記元圧を検出する元圧センサと、前記エア工具に供給されるエアの供給圧又は供給流量を検出する供給圧センサ又は供給流量センサと、前記元圧センサの検出値である第1検出値、及び、前記供給圧センサ又は前記供給流量センサの検出値である第2検出値を取得して、これらの第1検出値及び第2検出値が所定条件を満たした場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントするカウント部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成されたエア工具用システムによれば、元圧センサを設けてあるので、根元管の元圧を監視することができる。これにより、カウント対象とは別のエア工具が駆動して、カウント対象に接続された分岐管内のエアが逆流すれば、その逆流を元圧の変動(減少)として検出することができる。そして、この元圧センサの検出値である第1検出値が、カウント部によりエア工具の駆動回数をカウントする所定条件に含まれているので、別のエア工具の駆動による逆流を誤カウントしてしまうことを防ぐことができ、エア工具の駆動回数を正しくカウントすることができる。
【0010】
前記第2検出値が、前記供給圧センサの検出値であることが好ましい。
これならば、供給流量センサを設ける場合に比べて、システムのコンパクト化やコストの低減を図れる。
【0011】
上述したように、別のエア工具の駆動による逆流が生じた場合には第1検出値が減少する。このことに鑑みれば、前記カウント部が、前記第1検出値が所定の第1閾値を上回り、且つ、前記第2検出値が所定の第2閾値を下回る場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントすることが好ましい。
このような構成であれば、逆流が生じた場合には第1検出値が第1閾値を下回るので、その逆流を誤カウントすることなく、エア工具の駆動回数を正しくカウントすることができる。
【0012】
エア工具を用いた作業現場では、例えばネジ締結の前にエア工具が正常に駆動するか試してみるところ、この駆動をカウントしてしまうと、エア工具の駆動回数とネジの締結本数とは一致せず、締結本数を正しくカウントすることができない。
そこで、前記第2検出値が前記第2閾値を下回った時間を計測するタイマをさらに備え、前記カウント部が、前記第1検出値が所定の第1閾値を上回り、且つ、前記第2検出値が所定の第2閾値を下回り、且つ、前記タイマによる計測時間が所定の下限時間を超えた場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントすることが好ましい。
このような構成であれば、タイマによる計測時間が所定の下限時間を超えることが、カウント部によりエア工具の駆動回数をカウントする所定条件に含まれているので、例えば上述した試し駆動のような短時間の駆動をカウントしてしまうことを防ぐことができ、ネジの締結本数をより正確にカウントすることが可能となる。
【0013】
前記タイマによる計測時間が所定の上限時間を超えた場合に、そのことを報知する報知部をさらに備えることが好ましい。
このような構成であれば、ネジの締付過ぎを作業者に報知することができる。
【0014】
また、本発明に係るエア工具用プログラムは、共通のエア源から複数のエア工具にエアを供給可能なエア工具用システムに用いられるものであって、前記エア工具用システムが、前記エア源からのエアが供給される根元管と、前記根元管から分岐して前記エア工具にエアを供給する複数の分岐管と、前記根元管と前記分岐管との間に介在して、前記根元管のエア圧である元圧を、前記分岐管から前記エア工具に供給するエア圧である供給圧に調圧する調圧弁と、前記元圧を検出する元圧センサと、前記エア工具に供給されるエアの供給圧又は供給流量を検出する供給圧センサ又は供給流量センサとを備えており、前記元圧センサの検出値である第1検出値、及び、前記供給圧センサ又は前記供給流量センサの検出値である第2検出値を取得して、これらの第1検出値及第2検出値が所定条件を満たした場合に、そのことを前記エア工具の駆動回数としてカウントするカウント部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするものである。
このようなエア工具用プログラムによっても、上述したエア工具用システムと同様の作用効果を奏し得る。
【0015】
さらに、本発明に係るエア工具用システムは、共通のエア源から複数のエア工具にエアを供給可能なエア工具用システムであって、前記エア源からのエアが供給される根元管と、前記根元管から分岐して前記エア工具にエアを供給する複数の分岐管と、前記分岐管から前記根元管へのエアの逆流を抑制する逆流抑制機構と、少なくとも1つの前記エア工具の駆動回数をカウントするカウントユニットとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
このように構成されたエア工具用システムによれば、カウント対象とは別のエア工具が例えば大きなエア圧で駆動したとしても、カウント対象のエア工具に接続されている分岐管内の空気の逆流を逆流抑制機構が抑制するので、エア工具の駆動回数を正しくカウントすることができる。
【0017】
このような逆流抑制機構の具体的な態様としては、逆止弁又は調圧弁を挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、共通のエア源から複数のエア工具にエアを供給可能なエア工具用システムにおいて、エア工具の駆動回数を正しくカウントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態におけるエア工具用システムの構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態の情報処理部の機能を示す機能ブロック図。
【
図3】同実施形態のエア工具用システムの動作を示すフローチャート。
【
図4】その他の実施形態におけるエア工具用システムの構成を示す模式図。
【
図5】その他の実施形態におけるエア工具用システムの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係るエア工具用システムの一実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態のエア工具用システム100は、
図1に示すように、エア源Oからのエアをエア工具Xに供給して、そのエア工具Xを駆動させるものであり、共通のエア源Oからのエアを複数のエア工具Xに供給可能に構成されている。なお、エア工具Xとしては、例えばインパクトレンチ、エアブローガン、エア式のリフタ、エア式の工作機械等を挙げることができる。
【0022】
具体的にこのエア工具用システム100は、
図1に示すように、エア源Oからのエアが供給される根元管L1と、根元管L1から分岐してエア工具Xにエアを供給する複数の分岐管L2と、根元管L1と分岐管L2との間に介在する調圧弁Rと、エア工具Xの駆動回数をカウントするカウントユニット10とを備えている。
【0023】
根元管L1は、エア源Oに接続されるものであり、上流端部がエア源Oに接続されるとともに、下流端部が分岐管L2に接続されるものである。
【0024】
分岐管L2は、複数のエア工具Xそれぞれに対応して設けられており、上流端部が根元管L1に接続されるとともに、下流端部がエア工具Xに接続されるものである。なお、分岐管L2の上流側端部は、カプラ等の第1継手Z1を介して根元管L1に着脱可能に接続されており、分岐管L2の下流端部は、カプラ等の第2継手Z2を介してエア工具Xに着脱可能に接続されている。
【0025】
調圧弁Rは、根元管L1のエア圧である元圧を、分岐管L2からエア工具Xに供給するエア圧である供給圧に調圧するものである。本実施形態では、複数の分岐管L2それぞれに調圧弁Rが設けられており、各調圧弁Rは、元圧を減圧してそれぞれのエア工具Xに対応した供給圧に調圧する。
【0026】
カウントユニット10は、エア工具Xの駆動回数を、このエア工具Xを用いて締結した締結具の締結本数としてカウントするものであり、一部又は全部のエア工具Xそれぞれに対して設けられている。
【0027】
そして、このカウントユニット10は、根元管L1に設けられた元圧センサP1と、分岐管L2に設けられた供給圧センサP2と、これらの元圧センサP1及び供給圧センサP2の検出値を取得して、エア工具Xの駆動回数をカウントする情報処理部Cとを備えている。
【0028】
元圧センサP1は、根元管L1内の元圧を検出・監視するものであり、その検出値である第1検出値Paを情報処理部Cに出力する。なお、元圧センサP1は、必ずしも根元管L1に設けられている必要はなく、エア源Oと調圧弁Rとの間であれば分岐管L2に設けられていても良い。
【0029】
供給圧センサP2は、分岐管L2内の供給圧を検出・監視するものであり、その検出値である第2検出値を情報処理部Cに出力する。
【0030】
情報処理部Cは、物理的にはCPU、メモリ、AD変換器等を備えたマイコンボード等のコンピュータである。そして、この情報処理部Cは、前記メモリに格納されているエア工具用プログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することにより、
図2に示すように、少なくともエア工具Xの駆動回数をカウントするカウント部11としての機能を発揮するものであり、ここでは、作業情報受付部12、表示部13、閾値記憶部14、及び報知部15としての機能をも発揮するように構成されている。
【0031】
以下、各部の説明を兼ねて、本実施形態のエア工具用システム100の動作を
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0032】
まず、カプラ等の第1継手Z1を介して根元管L1に分岐管L2を接続するとともに、カプラ等の第2継手Z2を介して分岐管L2にエア工具Xを接続する(S1)。この接続作業は、使用する複数のエア工具Xそれぞれに対して行われる。
【0033】
上述した接続作業を終えた後、作業者は、予め定められている種々の作業内容の中から目的のものを選択する(S2)。この作業内容は、例えば締結するべき締結具(ネジやボルト)の本数(以下、目標本数という)などを含むものであり、選択された作業内容を示す作業内容情報が情報処理部Cに入力される。より具体的には、
図2に示すように、作業者が例えば情報処理部Cと通信可能なパソコンや携帯端末などの入力手段Iを介して作業内容を選択することで、その選択された作業内容を示す作業内容情報が情報処理部Cに送信される。
【0034】
情報処理部Cに入力された作業内容情報は、作業情報受付部12により受け付けられる。そして、この実施形態では、
図2に示すように、表示部13が、作業内容情報に含まれる目標本数をディスプレイの所定領域に設定された目標本数表示欄D1に表示する(S3)。
【0035】
次いで、情報処理部Cは、エア工具Xの駆動前において供給圧センサP2により検出される第2検出値Pbを取得し、その値を設定供給圧Pb0として前記メモリの所定領域に設定された閾値記憶部14に記憶させる(S4)。
【0036】
この設定供給圧Pb0は、上述した調圧弁Rの設定により決まる圧力であり、エア工具Xの駆動前において元圧センサP1により検出される元圧Pa0よりは低圧である。そこで、情報処理部Cとしては、エア工具Xの駆動前に、元圧Pa0>設定供給圧Pb0であることを確認して、システムの異常の有無を判断するように構成されていても良い(S5)。なお、元圧Pa0<設定供給圧Pb0の場合に推定される異常としては、例えば配管からのエア漏れ等を挙げることができ、この場合は例えば締結作業を終了する。
【0037】
そして、作業者はエア工具Xによる締結具の締付作業を開始する(S6)。
以下では、説明の便宜上、駆動回数のカウント対象となるエア工具Xをカウント対象工具と呼び、このカウント対象工具とは別のエア工具Xを別工具と呼ぶ。
【0038】
ここで、カウント対象工具により締結作業が行われると、分岐管L2内のエアがカウント対象工具に供給されることにより、分岐管L2内の圧力が低下することから、第2検出値Pbは減少する。一方、締結作業時において、通常、根元管L1内は上述した元圧Pa0又はその近傍の圧力に維持されるので、第1検出値Paは変動しない又は変動したとしても僅かである。
【0039】
これに対して、カウント対象工具は駆動されておらず、例えば別工具が大きなエア圧で駆動された場合、或いは、いくつもの別工具が同時に駆動された場合を考える。これらの場合、根元管L1内の圧力が低下してしまい、第1検出値Paは減少する。そして、根元管L1内の圧力が上述した設定供給圧Pb0を下回ると、カウント対象工具が接続された分岐管L2内のエアが根元管L1に逆流してしまう。これにより、カウント対象工具の締結作業時と同じく、分岐管L2内の圧力が低下し、第2検出値Pbは減少する。
【0040】
そこで、本実施形態のカウント部11は、元圧センサP1により検出される第1検出値Pa、及び、供給圧センサP2により検出される第2検出値Pbを取得して、これらの第1検出値Pa及び第2検出値Pbが所定条件を満たした場合に、そのことをカウント対象工具の駆動回数としてカウントするように構成されている。
【0041】
より具体的に説明すると、このカウント部11は、第1検出値Paが所定の第1閾値を上回り、且つ、第2検出値Pbが所定の第2閾値を下回る場合に、そのことをエア工具Xの駆動回数としてカウントするように構成されている。すなわち、本実施形態の所定条件には、第1検出値Paが所定の第1閾値を上回り、且つ、第2検出値Pbが所定の第2閾値を下回ることが少なくとも含まれている。
【0042】
第1閾値及び第2閾値は、上述した閾値記憶部14に記憶されており、この実施形態では、第1閾値は設定供給圧Pb0であり、第2閾値も設定供給圧Pb0である。すなわち、本実施形態のカウント部11は、第1検出値Pa>設定供給圧Pb0、且つ、第2検出値Pb<設定供給圧Pb0であるか否かを判断する(S7)。
【0043】
ところで、エア工具Xを用いた作業現場では、例えばネジ締結の前にエア工具Xが正常に駆動するか試してみる(空ぶかす)ことがあり、この駆動をカウントしてしまうと、締結具の締結本数を正しくカウントすることができない。
【0044】
そこで、本実施形態のエア工具用システム100は、
図2に示すように、第
2検出値Pbが第2閾値を下回った時間を計測するタイマTを備えており、カウント部11は、このタイマTにより計測された計測時間を取得するとともに、取得した計測時間が所定の下限時間を超えているか否かを判断する(S8)。
【0045】
また、この計測時間が長すぎると、締結具を締め付け過ぎている恐れや、空ぶかし或いは仮締め時のねじ送りが行われている可能性があることから、この実施形態では、
図2に示すように、計測時間が所定の上限時間を上回った場合に、そのことを報知する報知部15としての機能をさらに備えている。
【0046】
具体的にこの報知部15は、計測時間が上限時間を超えているか否かを判断し(S9)、計測時間が上限時間を上回った場合にそのことを報知する(S10)。なお、この実施形態では、計測時間が上限時間を上回ったことが報知された場合に締結作業を終了するようにしてあるが、次の締結具の締結作業に進んでも構わない。
【0047】
そして、カウント部11は、S8の比較において、計測時間が下限時間を超え、且つ、S9の比較において、計測時間が上限時間を下回っている場合に、エア工具Xの駆動回数としてカウントし、そのカウント数を更新する(S11)。すなわち、本実施形態の所定条件には、第1検出値Pa>設定供給圧Pb0、且つ、第2検出値Pb<設定供給圧Pb0であることに加えて、計測時間が下限時間を超え、且つ、計測時間が上限時間を下回ることも含まれている。
【0048】
このように、カウント部11によりカウント数が更新されると、その締結具の締結作業を終了する(S12)。そして、
図1に示すように、表示部13が、そのカウント数をディスプレイの所定領域に設定された実績本数表示欄D2に実績本数として表示する。なお、この実施形態では、実績本数をクリアするクリアボタンBを設けてある。
【0049】
そして、作業者は、実績値が目標値に達したか否かを判断し(S13)、未達の場合は、次のネジ締結を開始して、再びS7~S12までが繰り返され、実績値が目標値に達したら締付作業を終了する。
【0050】
このように構成されたエア工具用システム100によれば、カウント部11が、少なくとも第1検出値Pa>設定供給圧Pb0、且つ、第2検出値Pb<設定供給圧Pb0である場合に、そのことをカウント対象工具の駆動回数としてカウントするので、別工具の駆動による逆流を誤カウントしてしまうことを防ぐことができ、カウント対象工具の駆動回数を正しくカウントすることができる。
【0051】
また、分岐管L2のエアの変動を供給圧センサP2により検出しているので、後述する供給流量センサを分岐管L2に設ける構成に比べて、システムのコンパクト化やコストの低減を図れる。しかも、既存の設備にカウントユニット10の構成要素(この実施形態では、元圧センサP1や供給圧センサP2やカウント部11等)を取り付けるだけで、設備の設計を変更することなくエア工具Xの駆動回数をカウントすることができ、所謂レトロフィットな対応を取り得る。
【0052】
また、タイマTによる計測時間が所定の下限時間を超えることが、カウント部11によりエア工具Xの駆動回数をカウントする所定条件に含まれているので、例えば締結作業とは別の短時間の駆動をカウントしてしまうことを防ぐことができ、ネジの締結本数をより正確にカウントすることが可能となる。
【0053】
さらに、報知部15が、タイマTによる計測時間が所定の上限時間を超えた場合に、そのことを報知するので、作業者はネジの締付過ぎを把握することができる。
【0054】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば、前記実施形態では、供給圧センサP2による検出値を第2検出値Pbとして用いているが、この供給圧センサP2に代えて或いはこの供給圧センサP2に加えて、分岐管L2にエア工具Xへのエアの供給量を検出する供給流量センサを設け、この供給流量センサによる検出値を第2検出値Pbといて用いても良い。
この場合のカウント部11としては、第1検出値Paが所定の第1閾値を上回り、且つ、第2検出値Pbが所定の第2閾値を上回る場合に、そのことをエア工具Xの駆動回数としてカウントするように構成されたものを挙げることができる。なお、この場合の第2閾値としては、例えばエア工具Xを駆動させるために必要な予め設定された供給流量などを挙げることができる。
【0056】
また、本発明に係るエア工具用システム100としては、
図4及び
図5に示すように、分岐管L2から根元管L1へのエアの逆流を防止する逆流抑制機構20を備えたものであっても良い。
この逆流抑制機構20は、根元管L1と分岐管L2との間に介在しており、具体的には、例えば
図4に示す逆止弁20Aや、
図5に示す逆流抑制効果を発揮する調圧弁20Bなどを挙げることができる。なお、
図4において、逆止弁20Aに加えて調圧弁を直列的に設けても良い。
このように構成されたエア工具用システム100によれば、逆流抑制機構20が分岐管L2から根元管L1への逆流を抑制するので、カウント対象とは別のエア工具Xが例えば大きなエア圧で駆動したとしても、カウント対象のエア工具Xに接続されている分岐管L2内の空気の逆流を抑制することができ、エア工具Xの駆動回数を正しくカウントすることができる。
【0057】
さらに、前記実施形態のカウント部11は、エア工具Xの駆動回数を締結具の締結本数としてカウントするものであったが、エア工具Xの駆動回数を締結具の取り外し本数としてカウントしても良いし、締結具の本数とは関係なく、単にエア工具Xの駆動回数そのものをカウントしても良い。
【0058】
そのうえ、カウントユニット10としては、カウント部11による駆動回数のカウントをキャンセルするキャンセル部を備えていても良い。
これならば、例えば仮締めのねじ送りがカウントされてしまった場合などに、そのカウントをキャンセルすることができ、締結具の締結本数などをより正しくカウントすることができる。
【0059】
また、前記実施形態では、第1閾値及び第2閾値が設定供給圧Pb0である場合について説明したいが、第1閾値及び第2閾値の一方又は双方が、例えば設定供給圧Pb0よりも低い圧力であっても良い。
【0060】
加えて、前記実施形態の元圧Pa0は、元圧センサP1により検出される値として説明していたが、エア工具用システム100に対して予め設定された設定値や固定値を元圧Pa0としても良く、これらの値は閾値記憶部14に記憶されていても良いし、外部メモリや外部のサーバ等から取得されても良い。
【0061】
さらに加えて、前記実施形態の設定供給圧Pb0は、エア工具Xの駆動前において供給圧センサP2により検出される第1検出値としていたが、調圧弁Rの設定値を設定供給圧Pb0としても良い。
【0062】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
100・・・エア工具用システム
X ・・・エア工具
O ・・・エア源
L1 ・・・根元管
L2 ・・・分岐管
R ・・・調圧弁
10 ・・・カウントユニット
P1 ・・・元圧センサ
P2 ・・・供給圧センサ
C ・・・情報処理部
11 ・・・カウント部
12 ・・・作業情報受付部
13 ・・・表示部
14 ・・・閾値記憶部
15 ・・・報知部
20 ・・・逆流抑制機構
20A・・・逆止弁
20B・・・調圧弁