(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】プラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電構造
(51)【国際特許分類】
F02B 23/10 20060101AFI20240911BHJP
F02B 67/00 20060101ALI20240911BHJP
F02P 15/04 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F02B23/10 M
F02B67/00 J
F02P15/04
(21)【出願番号】P 2021088471
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2021-05-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】202010453985.9
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521228916
【氏名又は名称】北京▲ぼー▼徳恒激光科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing BDH Laser Science & Technology Inc. Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 2-720, 6F, Building 2, No.35 Shangdi East Road, Haidian District, 100085 Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジユエン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ジャンシン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイピン
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】特表昭63-501520(JP,A)
【文献】特開2006-132518(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107061102(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 23/10
F02B 67/00
F02P 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電構造であって、
ピストンの最上部に設けられ、第1組み合わせ形状及び第1可動電極構造を有する可動電極と、
前記ピストンの最上部に設けられ、前記ピストンの上面及び前記第1可動電極構造から形成される分散型マルチキャビティ構造燃焼室と、
シリンダブロックの最上部又はシリンダヘッドの底部に設けられ、第2組み合わせ形状及び第2構造を有する固定電極と、
前記可動電極と前記固定電極によって構成される間隔可変放電領域と、を含み、
前記可動電極は少なくとも1つの第1放電電極を含み、前記少なくとも1つの第1放電電極は前記ピストンの最上部に設けられ、前記第1組み合わせ形状及び前記第1可動電極構造を有し、前記少なくとも1つの第1放電電極は前記ピストンと一体に設けられ、前記少なくとも1つの第1放電電極は前記ピストンに追従して往復運動し、
前記ピストンは前記エンジンのクランクロッドに接続され、前記ピストンは前記エンジンのクランクロッドを介して共通アースに接続され、
前記可動電極としてオープン放電リングを含み、前記固定電極として前記オープン放電リングと同数の閉ループ放電リングを含み、
前記オープン放電リング及び前記閉ループ放電リングが、それぞれ放電面を含み、
前記オープン放電リング及び前記閉ループ放電リングが対向し、その軸線が重なることで、前記オープン放電リングの前記放電面
と前記閉ループ放電リングの前記放電面が互いに対向し、
前記分散型マルチキャビティ構造燃焼室が燃焼室メインキャビティと燃焼室サブキャビティを含み、
前記燃焼室メインキャビティは、前記オープン放電リングの内側の領域であり、
前記燃焼室サブキャビティは、前記オープン放電リングの外側の領域である、プラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電構造。
【請求項2】
前記可動電極は1グループのオープン放電リングを含み、
前記1グループのオープン放電リングは、前記ピストンの最上部に設けられ、ピストンの上面の幾何学的中心と同心であり、前記ピストンの上面は、前記固定電極に面する前記ピストンの最上部の端面であり、
前記1グループのオープン放電リングは、第1最内層放電リング、第1最外層放電リング、及び前記第1最内層放電リングと前記第1最外層放電リングとの間に位置する少なくとも1つの第1中間層放電リングを含み、前記第1最内層放電リングは第1高さを有し、前記第1最内層放電リングの径方向に沿った前記第1最内層放電リングの断面は上狭下広の台形であり、前記第1最内層放電リングの上端狭面は放電面であり、前記少なくとも1つの第1中間層放電リングの上端狭面は放電面であり、前記第1最外層放電リングの上端狭面は放電面であり、前記第1最内層放電リングの放電面はまた前記ピストンの上面とされ、前記1グループのオープン放電リングの複数の放電面は高さが同じであり、
前記1グループのオープン放電リングの径方向に沿った前記1グループのオープン放電リングのそれぞれの幅の範囲は0.5~5mmであり、
前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の範囲は1~9.5mmであり、前記第1最内層放電リングの外側から前記第1最内層放電リングに隣接する第1中間層放電リングの内側までの距離は、前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の2倍であり、前記1グループのオープン放電リングのうち隣接する2つの放電リングの対向する両側の間の距離も、前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の2倍であり、
前記第1最外層放電リングの外側からピストントップランドの内縁までの距離は、前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離に等しく、
前記可動電極は複数のノッチをさらに含み、前記複数のノッチは、円周を均等に分割するように前記1グループのオープン放電リングに分布し、前記複数のノッチのそれぞれの幅の範囲は2~10mmであり、
前記1グループのオープン放電リングのそれぞれの放電リングに設けられた少なくとも1つのノッチの数は、前記第1最内層放電リングから前記第1最外層放電リングに向かってリング1つずつ増加し、前記第1最内層放電リングに設けられた前記少なくとも1つのノッチは、前記第1最内層放電リングの径方向に沿って位置合わせるように、前記1グループのオープン放電リングのそれぞれの放電リングに設けられ、
前記第1最内層放電リングに隣接する第1中間層放電リングには、前記第1最内層放電リングの少なくとも1つのノッチからずらされた少なくとも1つのノッチがさらに設けられ、前記第1最内層放電リングに隣接する第1中間層放電リングに増設された前記少なくとも1つのノッチの数は、前記第1最内層放電リングの少なくとも1つのノッチの数と同じであり、
前記第1最外層放電リングには、前記第1最外層放電リングに隣接する第1中間層放電リングに設けられた少なくとも1つのノッチからずらされた少なくとも1つのノッチがさらに設けられ、前記第1最外層放電リングに増設された前記少なくとも1つのノッチの数は、前記第1最外層放電リングに隣接する第1中間層放電リングに設けられた前記少なくとも1つのノッチの数と同じであり、
前記少なくとも1つの第1放電電極は、前記1グループのオープン放電リングを有する、請求項1に記載のピストン放電構造。
【請求項3】
前記分散型マルチキャビティ構造燃焼室は、前記第1最内層放電リングの内側、前記1グループのオープン放電リングの隣接する2つの放電リングの間、及び前記第1最外層放電リングの外側の凹領域を含み、
前記燃焼室メインキャビティは、前記第1最内層放電リングの内側の平らな「ω」字形に凹んだ領域であり、前記燃焼室メインキャビティの凹部の直径は前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の2倍であり、前記燃焼室メインキャビティの最大深さの範囲は0.5~5mmであり、
前記ピストン放電構造はスキッシュ流ガイド突起及びスキッシュ流ガイドリッジをさらに含み、
前記スキッシュ流ガイド突起は前記燃焼室メインキャビティの凹み中心に設けられ、前記凹み中心は前記ピストンの上面の幾何学的中心と重なり、前記スキッシュ流ガイド突起の縦断面は「ベル型」であり、前記スキッシュ流ガイド突起の底面積は前記燃焼室メインキャビティの底面積の20%~50%であり、前記スキッシュ流ガイド突起の高さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの50%~70%であり、
前記燃焼室サブキャビティは、前記固定電極から前記可動電極への方向において前記可動電極に対して下方に凹んだ領域を有し、前記凹んだ領域は
、前記1グループのオープン放電リングの隣接する2つの放電リングの間
、及び前記第1最外層放電リングの外側
と前記ピストントップランドの内縁の間に位置し、前記燃焼室サブキャビティの凹み深さは、前記ピストントップランドから前記ピストンの上面の幾何学的中心に向かって徐々に大きくなり、前記燃焼室サブキャビティの凹み深さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの30%~70%であり、
前記スキッシュ流ガイドリッジは、前記燃焼室サブキャビティと前記可動電極の複数のノッチとの交差位置に設けられ、前記スキッシュ流ガイドリッジは前記交差位置の中心に位置し、前記スキッシュ流ガイドリッジの長さは前記1グループのオープン放電リングの径方向に沿い、前記スキッシュ流ガイドリッジの幅は前記1グループのオープン放電リングの円周方向に沿い、前記スキッシュ流ガイドリッジは「ベル型」の断面を有し、前記スキッシュ流ガイドリッジのリッジ高さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの30%~70%であり、前記スキッシュ流ガイドリッジの長手方向の両側にガイドスロープが対称的又は非対称的に設けられ、前記スキッシュ流ガイドリッジの短手方向の両側にガイドスロープが対称的又は非対称的に設けられる、請求項2に記載のピストン放電構造。
【請求項4】
前記固定電極は、前記シリンダブロックの最上部又はシリンダヘッドの底部に固定され、前記第2組み合わせ形状及び前記第2構造を有する少なくとも1つの第2放電電極であり、前記少なくとも1つの第2放電電極は前記可動電極の真上に位置し、前記可動電極の放電面に面する前記少なくとも1つの第2放電電極の端面は放電面とされ、前記可動電極が死点位置に位置する場合、前記少なくとも1つの第2放電電極と前記可動電極との間には、前記ピストンの
最上面に垂直な方向に固定ギャップがあり、
前記少なくとも1つの第2放電電極は外部電源に接続され、且つ前記少なくとも1つの第2放電電極と前記可動電極は、軸線が重なる、請求項2又は3に記載のピストン放電構造。
【請求項5】
前記固定電極は1グループの閉ループ放電リングを含み、前記1グループの閉ループ放電リングは、前記可動電極の1グループのオープン放電リングと同じ幾何学的中心を有し、第2最内層放電リング、第2最外層放電リング、及び第2最内層放電リングと第2最外層放電リングとの間に位置する少なくとも1つの第2中間層放電リングを含み、
前記第2最内層放電リングの厚さの範囲は1~8mmであり、前記第2最内層放電リングの断面は矩形であり、前記第1最内層放電リングの放電面に向かう前記第2最内層放電リングの端面は放電面とされ、前記第2最内層放電リングの上
端面と前記第1最内層放電リングの上端狭面は平行であり、且つ中心線は位置合わせるように設けられ、前記第2最内層放電リングの幅の範囲は0.2~4mmであり、
前記ピストン放電構造は、少なくとも1つの円筒形給電接続ポート、複数グループの直線形径方向接続インダクタ、及び複数の湾曲形固定支持インダクタをさらに含む、請求項4に記載のピストン放電構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記可動電極の中心位置に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートはねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースを有する円筒体であり、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートの厚さ及び直径の範囲は3~10mmであり、
前記複数グループの直線形径方向接続インダクタのそれぞれの厚さは前記第2最内層放電リングの厚さの60%~85%であり、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタのそれぞれの幅の範囲は1~9mmであり、
前記複数グループの直線形径方向接続インダクタは、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートと前記第2最内層放電リングを連通する第1グループの直線形径方向接続インダクタ、及び前記1グループの閉ループ放電リングの隣接する2つごとの閉ループ放電リングを連通する少なくとも1つの第2グループの直線形径方向接続インダクタを含み、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタの各グループの数は異なり、前記複数グループの各グループにおける直線形径方向接続インダクタの数は、前記ピストンの上面の幾何学的中心から前記ピストントップランドに向かう方向に沿って直前のグループにおける直線形径方向接続インダクタの数の2倍であり、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタに含まれる各グループは円周を均等に分割するようにずらして分布し、
前記複数の湾曲形固定支持インダクタの厚さ及び幅の範囲は1~9mmであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタは円周を均等に分割するように分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記第2最外層放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結され、
又は
前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記第2最外層放電リングと前記第2最外層放電リングに接続された第2グループの直線形径方向接続インダクタのうちの1つとの交差位置に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートはねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースとして設けられ、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタは前記1グループの閉ループ放電リングと連通し、前記1グループの閉ループ放電リングの中心で交差し、
前記複数の湾曲形固定支持インダクタは円周を均等に分割するように分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記第2最外層放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結される、請求項5に記載のピストン放電構造。
【請求項7】
前記間隔可変放電領域は前記第1最内層放電リングの放電面と前記第2最内層放電リングの放電面との間により形成され、
前記ピストンとともに動く前記第1最内層放電リングの放電面の異なる位置又は時刻に基づいて、前記間隔可変放電領域は第1予備イオン化領域、第2イオン化領域及び第3強化燃焼領域にさらに細分され、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さであり、
前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さの範囲は0.2~1mmであり、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さの範囲は0.02~0.09mmであり、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さの範囲は0.1~0.5mmである、請求項5又は6に記載のピストン放電構造。
【請求項8】
前記ピストンの直径≦20mmである場合、前記可動電極は1つのオープン放電リングを含み、前記1つのオープン放電リングの上端面は放電面であり、前記1つのオープン放電リングの径方向における前記1つのオープン放電リングの放電面の幅の範囲は0.3~2mmであり、
前記1つのオープン放電リングは3つのノッチを含み、前記3つのノッチは円周を均等に分割するように前記1つのオープン放電リングに分布し、前記3つのノッチのそれぞれの幅の範囲は2~5mmであり、
前記1つのオープン放電リングの内側からピストンの上面の幾何学的中心までの距離の範囲は1~3mmであり、前記1つのオープン放電リングの外側から前記ピストンのトップランドの内縁までの距離は、前記1つのオープン放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離に等しく、前記ピストンの上面は、前記固定電極に面する前記ピストンの最上部の端面であり、
前記分散型マルチキャビティ構造燃焼室は分散型2キャビティ構造であり、前記分散型2キャビティ構造は燃焼室メインキャビティ及び燃焼室サブキャビティを含み、
前記燃焼室メインキャビティは、前記固定電極から前記可動電極への方向において前記可動電極に対して下方に凹んだ領域を有し、前記凹んだ領域は前記1つのオープン放電リングの内側から構成される球面形状を有し、前記燃焼室メインキャビティの直径の範囲は2~5mmであり、前記燃焼室メインキャビティの最大深さの範囲は0.2~2mmであり、
前記燃焼室サブキャビティは、前記1つのオープン放電リングの外側から前記トップランドの内縁までの範囲
で凹んだ領域を含み、前記燃焼室サブキャビティの凹み深さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの5%~40%である、請求項1に記載のピストン放電構造。
【請求項9】
前記固定電極は1つの閉ループ放電リングを含み、前記1つの閉ループ放電リングは前記1つのオープン放電リングと同じ幾何学的中心を有し、前記1つの閉ループ放電リングの厚さの範囲は1~10mmであり、前記1つの閉ループ放電リングの断面は矩形であり、前記1つのオープン放電リングの放電面に向かう前記1つの閉ループ放電リングの端面は放電面であり、前記1つの閉ループ放電リングの放電面の幅の範囲は0.2~2mmであり、
前記ピストン放電構造は、少なくとも1つの円筒形給電接続ポート、複数の直線形径方向接続インダクタ、及び複数の湾曲形固定支持インダクタをさらに含み、
前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記1つの閉ループ放電リングの中心に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートはねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースを有する円筒体であり、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートの厚さは前記1つの閉ループ放電リングの厚さに等しく、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートの直径の範囲は2~3mmであり、
前記複数の直線形径方向接続インダクタの数は3つ又は4つであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタのそれぞれの厚さは前記1つの閉ループ放電リングの厚さの60%~85%であり、前記複数の直線形径方向接続インダクタのそれぞれの幅の範囲は1~3mmであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタは、円周を均等に分割するように、前記1つの閉ループ放電リングと前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートとの間に分布し、且つ前記複数の直線形径方向接続インダクタは前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートと前記1つの閉ループ放電リングを連通し、
前記複数の湾曲形固定支持インダクタの数は3つであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタのそれぞれの厚さは前記1つの閉ループ放電リングの厚さに等しく、前記複数の湾曲形固定支持インダクタのそれぞれの幅の範囲は1~9mmであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタは、円周を均等に分割するように、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記1つの閉ループ放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結され、
又は
前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記1つの閉ループ放電リングと前記複数の直線形径方向接続インダクタのうちの1つとの交差位置に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートは1つのねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースであり、
前記複数の直線形径方向接続インダクタの数は3つ又は4つであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタは円周を均等に分割するように、前記1つの閉ループ放電リングの内側に分布し、前記複数の直線形径方向接続インダクタは前記1つの閉ループ放電リングの中心で交差し、
前記複数の湾曲形固定支持インダクタの数は3つであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタは、円周を均等に分割するように、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記1つの閉ループ放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結される、請求項8に記載のピストン放電構造。
【請求項10】
前記間隔可変放電領域は、前記可動電極の1つのオープン放電リングの放電面と前記固定電極の1つの閉ループ放電リングの放電面との間の間隔可変放電領域であり、
前記ピストンの運動に追従する前記可動電極の1つのオープン放電リングの放電面の異なる位置又は時刻に基づいて、前記間隔可変放電領域は、第1予備イオン化領域、第2イオン化領域及び第3強化燃焼領域に細分され、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さであり、
前記可動電極の1つのオープン放電リングに垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さの範囲は0.2~1mmであり、前記可動電極の1つのオープン放電リングに垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さの範囲は0.02~0.09mmであり、前記可動電極の1つのオープン放電リングに垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さの範囲は0.1~0.5mmである、請求項9に記載のピストン放電構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年5月26日に提出された中国特許出願第202010453985.9号の優先権を主張し、上記中国特許出願で開示されている全内容は本願の一部として援用されている。
【0002】
本開示の実施例は、プラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電構造に関する。
【背景技術】
【0003】
今日の世界では、生産力の急速な発展に伴い、エネルギー消費量が日々増加しており、一次エネルギーが徐々に枯渇し、生態環境の継続的な悪化が人類の生存を深刻に脅し、「生態環境を保護し、緑豊かで美しい家を一緒に建てる」ことは急務となっている。均質燃焼技術は、この時代の要求に応じて、燃料の清潔化、燃焼の精密化、制御のインテリジェント化、さらなる高効率化、省エネ化及びより低排出化の「グリーン燃焼」への発展が期待される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の少なくとも1つの実施例はプラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電機構を提供し、該ピストン放電構造は、可動電極、分散型マルチキャビティ構造燃焼室、固定電極及び間隔可変放電領域を含む。可動電極はピストンの最上部に設けられ、第1組み合わせ形状及び第1可動電極構造を有し、分散型マルチキャビティ構造燃焼室は前記ピストンの最上部に設けられ、固定電極はシリンダブロックの最上部又はシリンダヘッドの底部に設けられ、第2組み合わせ形状及び第2構造を有し、間隔可変放電領域は前記可動電極と前記固定電極によって構成される。
【0005】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記可動電極は少なくとも1つの第1放電電極を含み、前記少なくとも1つの第1放電電極は前記ピストンの最上部に設けられ、前記第1組み合わせ形状及び前記第1可動電極構造を有し、前記少なくとも1つの第1放電電極は前記ピストンと一体に設けられ、前記少なくとも1つの第1放電電極は前記ピストンに追従して往復運動し、前記ピストンは前記エンジンのクランクロッドに接続され、前記ピストンは前記エンジンのクランクロッドを介して共通アースに接続され、前記少なくとも1つの第1放電電極と前記固定電極とは、形状が同じであり、軸線が重なる。
【0006】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記可動電極は1グループのオープン放電リングを含み、前記1グループのオープン放電リングは、前記ピストンの最上部に設けられ、ピストンの上面の幾何学的中心と同心であり、前記ピストンの上面は、前記固定電極に面する前記ピストンの最上部の端面であり、前記1グループのオープン放電リングは、第1最内層放電リング、第1最外層放電リング、及び前記第1最内層放電リングと前記第1最外層放電リングとの間に位置する少なくとも1つの第1中間層放電リングを含み、前記第1最内層放電リングは第1高さを有し、前記第1最内層リングの径方向に沿った前記第1最内層放電リングの断面は上狭下広の台形であり、前記第1最内層放電リングの上端狭面は放電面であり、前記少なくとも1つの第1中間層放電リングの上端狭面は放電面であり、前記第1最外層放電リングの上端狭面は放電面であり、前記第1最内層放電リングの放電面はまた前記ピストンの上面とされ、前記1グループのオープン放電リングの複数の放電面は高さが同じであり、平行であり、前記1グループのオープン放電リングの径方向に沿った前記1グループのオープン放電リングのそれぞれの幅の範囲は0.5~5mmであり、前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の範囲は1~9.5mmであり、前記第1最内層リングの外側から前記第1最内層放電リングに隣接する第1中間層放電リングの内側までの距離は、前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の2倍であり、前記1グループのオープン放電リングのうち隣接する2つの放電リングの対向する両側の間の距離も、前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の2倍であり、前記第1最外層放電リングの外側からピストントップランドの内縁までの距離は、前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離に等しく、前記可動電極は複数のノッチをさらに含み、前記複数のノッチは、円周を均等に分割するように前記1グループのオープン放電リングに分布し、前記複数のノッチのそれぞれの幅の範囲は2~10mmであり、前記1グループのオープン放電リングのそれぞれの放電リングに設けられた少なくとも1つのノッチの数は、前記第1最内層放電リングから前記第1最外層放電リングに向かってリング1つずつ増加し、前記第1最内層放電リングに設けられた前記少なくとも1つのノッチは、前記第1最内層放電リングの径方向に沿って位置合わせるように、前記1グループのオープン放電リングのそれぞれの放電リングに設けられ、前記第1最内層放電リングに隣接する第1中間層放電リングには、前記第1最内層放電リングの少なくとも1つのノッチからずらされた少なくとも1つのノッチがさらに設けられ、前記第1最内層放電リングに隣接する第1中間層放電リングに増設された前記少なくとも1つのノッチの数は、前記第1最内層放電リングの少なくとも1つのノッチの数と同じであり、前記第1最外層放電リングには、前記第1最外層放電リングに隣接する第1中間層放電リングに設けられた少なくとも1つのノッチからずらされた少なくとも1つのノッチがさらに設けられ、前記第1最外層放電リングに増設された前記少なくとも1つのノッチの数は、前記第1最外層放電リングに隣接する第1中間層放電リングに設けられた前記少なくとも1つのノッチの数と同じである。
【0007】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記分散型マルチキャビティ構造燃焼室は、前記第1最外層放電リングの内側、前記1グループのオープン放電リングの隣接する2つの放電リングの間、及び前記第1最外層放電リングの外側の凹領域を含み、前記分散型マルチキャビティ構造燃焼室は燃焼室メインキャビティ及び燃焼室サブキャビティを含み、前記燃焼室メインキャビティは、前記第1最外層放電リングの内側の平らな「ω」字形に凹んだ領域であり、前記燃焼室メインキャビティの凹部の直径は前記第1最内層放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離の2倍であり、前記燃焼室メインキャビティの最大深さの範囲は0.5~5mmであり、前記ピストン放電構造はスキッシュ流ガイド突起及びスキッシュ流ガイドリッジをさらに含み、前記スキッシュ流ガイド突起は前記燃焼室メインキャビティの凹み中心に設けられ、前記凹み中心は前記ピストンの上面の幾何学的中心と重なり、前記スキッシュ流ガイド突起の縦断面は「ベル型」であり、前記スキッシュ流ガイド突起の底面積は前記燃焼室メインキャビティの底面積の20%~50%であり、前記スキッシュ流ガイド突起の高さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの50%~70%であり、前記燃焼室サブキャビティは、前記1グループのオープン放電リングの隣接する2つの放電リングの間及び前記第1最外層放電リングの外側に、前記第1最外層放電リングの径方向に沿って球面状に凹んだ領域を含み、前記燃焼室サブキャビティの凹み深さは、前記ピストントップランドから前記ピストンの上面の幾何学的中心に向かって徐々に大きくなり、前記燃焼室サブキャビティの凹み深さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの30%~70%であり、前記スキッシュ流ガイドリッジは、前記燃焼室サブキャビティと前記可動電極の複数のノッチとの交差位置に設けられ、前記スキッシュ流ガイドリッジは前記交差位置の中心に位置し、前記スキッシュ流ガイドリッジの長さは前記1グループのオープン放電リングの径方向に沿い、前記スキッシュ流ガイドリッジの幅は前記1グループのオープン放電リングの円周方向に沿い、前記スキッシュ流ガイドリッジは「ベル型」の断面を有し、前記スキッシュ流ガイドリッジのリッジ高さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの30%~70%であり、前記スキッシュ流ガイドリッジの長手方向の両側にガイドスロープが対称的又は非対称的に設けられ、前記スキッシュ流ガイドリッジの短手方向の両側にガイドスロープが対称的又は非対称的に設けられる。
【0008】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記固定電極は、前記シリンダブロックの最上部又はシリンダヘッドの底部に固定され、前記第2組み合わせ形状及び前記第2構造を有する少なくとも1つの第2放電電極であり、前記少なくとも1つの第2放電電極は前記可動電極の真上に位置し、前記可動電極の放電面に面する前記少なくとも1つの第2放電電極の端面は放電面とされ、前記可動電極が死点位置に位置する場合、前記少なくとも1つの第2放電電極と前記可動電極との間には、前記固定電極に垂直な方向に固定ギャップがあり、前記少なくとも1つの第2放電電極は外部電源に接続され、且つ前記少なくとも1つの第2放電電極と前記可動電極は、形状が同じであり且つ軸線が重なる。
【0009】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記固定電極は1グループの閉ループ放電リングを含み、前記1グループの閉ループ放電リングは、前記可動電極の1グループのオープン放電リングと同じ幾何学的中心を有し、第2最内層放電リング、第2最外層放電リング、及び第2最内層放電リングと第2最外層放電リングとの間に位置する少なくとも1つの第2中間層放電リングを含み、前記第2最内層放電リングの厚さの範囲は1~8mmであり、前記第2最内層放電リングの断面は矩形であり、前記第1最内層放電リングの放電面に向かう前記第2最内層放電リングの端面は放電面とされ、前記第2最内層放電リングの上端面と前記第1最内層放電リングの上端狭面は平行であり、且つ中心線は位置合わせるように設けられ、前記第2最内層放電リングの幅の範囲は0.2~4mmであり、前記ピストン放電構造は、少なくとも1つの円筒形給電接続ポート、複数グループの直線形径方向接続インダクタ、及び複数の湾曲形固定支持インダクタをさらに含む。
【0010】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記可動電極の中心位置に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートはねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースを有する円筒体であり、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートの厚さ及び直径の範囲は3~10mmであり、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタのそれぞれの厚さは前記第2最内層放電リングの厚さの60%~85%であり、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタのそれぞれの幅の範囲は1~9mmであり、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタは、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートと前記第2最内層放電リングを連通する第1グループの直線形径方向接続インダクタ、及び前記1グループの閉ループ放電リングの隣接する2つごとの閉ループ放電リングを連通する少なくとも1グループの第2グループの直線形径方向接続インダクタを含み、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタの各グループの数は異なり、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタは、前記ピストントップランドから前記ピストンの上面の幾何学的中心の方向に向かって1グループずつ一倍を増やし、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタに含まれる各グループは円周を均等に分割するようにずらして分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの厚さ及び幅の範囲は1~9mmであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタは円周を均等に分割するように分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記第2最外層放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結され、又は前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記第2最外層放電リングと前記第2最外層放電リングに接続された第2グループの直線形径方向接続インダクタのうちの1つとの交差位置に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートはねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースとして設けられ、前記複数グループの直線形径方向接続インダクタは前記1グループの閉ループ放電リングと連通し、前記1グループの閉ループ放電リングの中心で交差し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタは円周を均等に分割するように分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記第2最外層放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結される。
【0011】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記間隔可変放電領域は前記第1最内層放電リングの放電面と前記第2最内層放電リングの放電面との間により形成され、前記ピストン運動に追従する前記第1最内層放電リングの放電面の異なる位置又は時刻に基づいて、前記間隔可変放電領域は第1予備イオン化領域、第2イオン化領域及び第3強化燃焼領域にさらに細分され、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さであり、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さの範囲は0.2~1mmであり、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さの範囲は0.02~0.09mmであり、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さの範囲は0.1~0.5mmである。
【0012】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記ピストンの直径≦20mmである場合、前記可動電極は1つのオープン放電リングを含み、前記1つのオープン放電リングの上端面は放電面であり、前記1つのオープン放電リングの径方向における前記1つのオープン放電リングの放電面の幅の範囲は0.3~2mmであり、前記1つのオープン放電リングは3つのノッチを含み、前記3つのノッチは円周を均等に分割するように前記1つのオープン放電リングに分布し、前記3つのノッチのそれぞれの幅の範囲は2~5mmであり、前記1つのオープン放電リングの内側からピストンの上面の幾何学的中心までの距離の範囲は1~3mmであり、前記1つのオープン放電リングの外側から前記ピストンのトップランドの内縁までの距離は、前記1つのオープン放電リングの内側から前記ピストンの上面の幾何学的中心までの距離に等しく、前記ピストンの上面は、前記固定電極に面する前記ピストンの最上部の端面であり、前記分散型マルチキャビティ構造燃焼室は分散型2キャビティ構造であり、前記分散型2キャビティ構造は燃焼室メインキャビティ及び燃焼室サブキャビティを含み、前記燃焼室メインキャビティは、前記1つのオープン放電リングの内側の球面状に凹んだ領域を含み、前記燃焼室メインキャビティの直径の範囲は2~5mmであり、前記燃焼室メインキャビティの最大深さの範囲は0.2~2mmであり、前記燃焼室サブキャビティは、前記1つのオープン放電リングの外側から前記トップランドの内縁までの範囲で球面状に凹んだ領域を含み、前記燃焼室サブキャビティの凹み深さは前記燃焼室メインキャビティの最大深さの5%~40%である。
【0013】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記固定電極は1つの閉ループ放電リングを含み、前記1つの閉ループ放電リングは前記1つのオープン放電リングと同じ幾何学的中心を有し、前記1つの閉ループ放電リングの厚さの範囲は1~10mmであり、前記1つの閉ループ放電リングの断面は矩形であり、前記1つのオープン放電リングの放電面に向かう前記1つの閉ループ放電リングの端面は放電面であり、前記1つの閉ループ放電リングの放電面の幅の範囲は0.2~2mmであり、前記ピストン放電構造は、少なくとも1つの円筒形給電接続ポート、複数の直線形径方向接続インダクタ、及び複数の湾曲形固定支持インダクタをさらに含み、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記1つの閉ループ放電リングの中心に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートはねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースを有する円筒体であり、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートの厚さは前記1つの閉ループ放電リングの厚さに等しく、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートの直径の範囲は2~3mmであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタの数は3つ又は4つであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタのそれぞれの厚さは前記1つの閉ループ放電リングの厚さの60%~85%であり、前記複数の直線形径方向接続インダクタのそれぞれの幅の範囲は1~3mmであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタは、円周を均等に分割するように、前記1つの閉ループ放電リングと前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートとの間に分布し、且つ前記複数の直線形径方向接続インダクタは前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートと前記1つの閉ループ放電リングを連通し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの数は3つであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタのそれぞれの厚さは前記1つの閉ループ放電リングの厚さに等しく、前記複数の湾曲形固定支持インダクタのそれぞれの幅の範囲は1~9mmであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタは、円周を均等に分割するように、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記1つの閉ループ放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結され、又は前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートが前記1つの閉ループ放電リングと前記複数の直線形径方向接続インダクタのうちの1つとの交差位置に設けられる場合、前記少なくとも1つの円筒形給電接続ポートは1つのねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタの数は3つ又は4つであり、前記複数の直線形径方向接続インダクタの数は円周を均等に分割するように、前記1つの閉ループ放電リングの内側に分布し、前記複数の直線形径方向接続インダクタは前記1つの閉ループ放電リングの中心で交差し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの数は3つであり、前記複数の湾曲形固定支持インダクタは、円周を均等に分割するように、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に分布し、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの一端は、前記1つの閉ループ放電リングに接続され、前記複数の湾曲形固定支持インダクタの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、前記シリンダブロックの最上部又は前記シリンダヘッドの底部に締結される。
【0014】
例えば、本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電機構において、前記間隔可変放電領域は、前記可動電極の1つのオープン放電リングの放電面と前記固定電極の1つの閉ループ放電リングの放電面との間の間隔可変放電領域であり、前記ピストン運動に追従する前記可動電極の1つのオープン放電リングの放電面の異なる位置又は時刻に基づいて、前記間隔可変放電領域は、第1予備イオン化領域、第2イオン化領域及び第3強化燃焼領域に細分され、前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さ>前記第1最内層放電リングの放電面に垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さであり、前記可動電極の1つのオープン放電リングに垂直な方向における前記第1予備イオン化領域の長さの範囲は0.2~1mmであり、前記可動電極の1つのオープン放電リングに垂直な方向における前記第2イオン化領域の長さの範囲は0.02~0.09mmであり、前記可動電極の1つのオープン放電リングに垂直な方向における前記第3強化燃焼領域の長さの範囲は0.1~0.5mmである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の図面を簡単に説明し、当然ながら、以下に説明される図面は、本開示の実施例の一部に過ぎず、本開示を制限するものではない。
【
図1A】
図1Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電構造の模式図である。
【
図1B】
図1Bは本開示の少なくとも別の実施例に係るピストン放電構造の模式図である。
【
図1C】
図1Cは本開示の少なくともさらに別の実施例に係るピストン放電構造の模式図である。
【
図2】
図2は本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極の模式図である。
【
図3A】
図3Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極の、
図2のA1-B1線に沿った断面模式図である。
【
図3B】
図3Bは本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極の、
図2のA2-B2線に沿った断面模式図である。
【
図4】
図4は本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の模式図である。
【
図5A】
図5Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図4のA3-B3線に沿った断面模式図である。
【
図5B】
図5Bは本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図4のA4-B4線に沿った断面模式図である。
【
図6】
図6は本開示の少なくとも1つの実施例に係る別の固定電極の模式図である。
【
図7】
図7は本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図6のA5-B5線に沿った断面模式図である。
【
図8】
図8は本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極と固定電極の対応関係の模式図である。
【
図9A】
図9Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係る別の可動電極の模式図である。
【
図9B】
図9Bは本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極の、
図9AのC1-D1線に沿った断面模式図である。
【
図10A】
図10Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係るさらに別の固定電極の模式図である。
【
図11A】
図11Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係るさらに別の固定電極の模式図である。
【
図12】
図12は本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極と固定電極の対応関係の模式図である。
【
図13】
図13は本開示の少なくとも1つの実施例に係る可変放電間隔の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本開示の実施例の図面を参照しながら、本開示の実施例の技術案を明確且つ完全に説明する。勿論、説明される実施例は本開示の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。説明される本開示の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を必要とせずに得られるすべての他の実施例は、本開示の保護範囲に属する。
【0017】
特に定義しない限り、本開示に使用されている技術用語又は科学用語は当業者が理解できる通常の意味を有する。本開示に使用されている「第1」、「第2」、「第3」、「第4」及び類似する用語は、いずれの順序、数又は重要性も示すものではなく、異なる構成要素を区別するためのものに過ぎない。同様に、「1つ」、「1」又は「該」等の類似する用語は数を制限するものではなく、少なくとも1つあることを示すものである。「含む」又は「備える」等の類似する用語は、「含む」又は「備える」の前に記載された素子又は部材が「含む」又は「備える」の後に挙げられる素子又は部材及びその同等物を含むことを意味する。「接続」又は「連結」等の類似する用語は、物理的又は機械的接続に限定されず、直接接続されるか間接的に接続されるかに関わらず、電気的接続を含んでもよい。「上」、「下」等は、相対位置関係を示すだけであり、説明対象の絶対位置が変わると、該相対位置関係もその分変化する可能性がある。
【0018】
周知のように、燃焼は、物理的・化学的変化が動的に結合され、相互作用する複雑な過程である。火炎は弱イオン化現象であり、熱エネルギー伝導、分子拡散は火炎の正常な伝播にとって重要な要素である。初期の試験によると、ガスが強い電磁場の作用下で、火炎中のイオンが加速し、中性粒子を駆動して乱流を形成させる。均質燃焼は、熱力学的燃焼とは異なり、燃料の化学エネルギーを機械エネルギー(運動エネルギー)に変換して仕事を実現し、従って、均質燃焼は、間欠(パルス)式であり、排気量が小さく、時間が短く(最小はmsレベル)、空間が制限される(シリンダ制約)等の基本的な特徴を有する。省エネ・排出削減の最初の段階はエネルギー形態の変換を最大限に実現することである。
【0019】
内燃機関は、100年以上の発展を通じて、技術が進歩しているが、現在では以下の問題が存在している。(1)点火又は圧縮点火という従来の着火方式は燃焼室の構造を決めており、燃焼室をメインキャビティ、サブキャビティに分けるための改良はいくつかあり、メイン燃焼室を弱いスワール流薄板型、中スワール流盤型、ω型、凹み型、強いスワール流M型等の複数の形状に設計するが、燃焼室の共通の特徴は「シングルキャビティ型」の構造であり、理想的な着火及び燃焼の多発性及び均一性を実現しにくいことが証明された。(2)燃焼という重要な過程で、従来の設計理念は「点火又は圧縮点火後のことを放任する」という簡単な方式を採用し、一回の間欠(パルス)式燃焼の全過程管理を考慮せず、特に、燃焼発展過程中のガス分子密度、圧力勾配、温度勾配及び酸素濃度等の重要パラメータの動的変化の影響を深く考慮せず、さらに対応する有効な解決策を提案していない。勿論、従来の燃焼室のキャビティ形、点火装置又は圧縮点火装置及び着火方式では、パラメータの動的変化の影響を考慮したくても、実現できない。(3)プラズマ点火(着火)を採用する従来の特許技術の多くは、「電火点火(着火)」及び「点火又は圧縮点火後のことを放任する」という古い技術に限定され、根本的な技術革新がない。(4)省エネ・排出削減の標準がますます厳しくなる中、世界の各大手自動車会社はこれまで以上に新しい燃焼技術を重要視し、均質圧縮着火(Homogeneous Charge Compression Ignition、HCCI)技術は、時代に応じて登場し、トレンドになっており、点火、圧縮点火は均質圧縮着火へ発展する傾向を示す。これまで、均質圧縮自己着火燃焼エンジンPCCI、複合燃焼式エンジンCCS等の複数のバージョンが発売されている。しかし、上記エンジンを実際に使用した結果、HCCI運転モードは、エンジンの全負荷範囲内の狭い中負荷域のみで信頼できる圧縮点火及び燃焼を実現でき、低負荷域、高負荷域では、理想的な燃焼は言うまでもなく、信頼できる圧縮点火さえも実現できず、ひいては燃焼が困難であり、従って、アイドリング(又は起動)、高速加速、高速運転時にこの技術革新を使用せずに、従来のスパークプラグ点火を補充として使用しなければならない。そのため、実際のHCCIは、均質燃焼のより効率的な省エネ・排出削減の問題を根本的に解決できず、妥協案に過ぎず、その効果は設計当初の意図からはるかに遠い。
【0020】
以上のように、内燃機関技術の発展はまだ多くの余地があり、より高度な技術的改良をさらに探求する必要があり、実際の市場でも、内燃機関技術の改良が急務となっている。
【0021】
本開示の実施例は以下の目的を実現するためのものである。(1)「均質」に基づき多発的で均一な着火を本格的に追求し、燃焼遅延が短く、反応速度が正常で、発展状態が均一で、残存物がなく、仕事効率が高い理想的な燃焼をさらに追求し、このような理想的な燃焼は「均一燃焼」と略称される。(2)ピストン運動の特徴を組み合わせて、特殊な放電構造及びそれとマッチングする燃焼室キャビティ形を設計し、電気エネルギーが点火(着火)にしか用いられないという従来の理念を打ち破る。「面放電」の方法で、放電エネルギー(イオン化度)及びタイミング(又は時刻)を正確に制御し、さまざまなイオン化強度及び複数のステップで放電を実行する。先ず、圧縮過程での低圧均質ガスを予備イオン化し、ガス分子の運動活性を向上させ、次に、圧縮後の高圧均質ガスをイオン化し、所定形状の大体積プラズマ雲(プラズマ)を発生させる。プラズマ雲(プラズマ)の光エネルギー、射線エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー等の放射作用、即ち雲の励起を利用し、多発的で均一な着火を確実に実現し、燃焼の開始及び発展のために、単一の「自己着火温度」よりも有利な「自己着火温度+プラズマ雲励起」の二重の有益な条件を提供する。(3)「点火又は圧縮点火後のことを放任する」という古い技術を革新し、一回の間欠(パルス)式燃焼に対して時間次元上の全過程、空間次元上の全(燃焼室)領域の精細な制御(全過程全領域制御と略称する)を実行する。特に、燃焼発展の中期、後期に適度な放電エネルギーを維持し続けて、燃焼を強化し、「均一燃焼」状態を実現し、さらに必要な電磁エネルギー場という「ソフト条件」を提供する。(4)特殊な放電構造に合わせるために、元の「シングルキャビティ型」を「分散型マルチキャビティ」構造に改良するように燃焼室のキャビティ形を革新し、理想的な多発的で均一な着火及び均一燃焼を確実に実現するために、爆燃の発生を回避し、さらに必要な機械的構造という「ハード条件」を提供する。(5)上記の技術革新の思想を十分に実行し、これらの抜本的な改革を堅持しないと、従来の電気スパークプラグ、圧縮点火装置、燃焼室構造及び作動モードは、「全過程全領域制御」を実現できず、また、理想的な多発的で均一な着火及び均一燃焼も実現できない。(6)燃焼効率、バーンアウト率及び有効仕事を最大限に向上させ、より厳しい省エネ・排出削減標準を満たし、次世代エンジンの研究のために、適切で実行し得る技術案を提供し、強固な産業基盤を構築する。
【0022】
本開示の少なくとも1つの実施例はプラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電機構を提供し、該ピストン放電構造は、可動電極、分散型マルチキャビティ構造燃焼室、固定電極及び間隔可変放電領域を含む。可動電極はピストンの最上部に設けられ、第1組み合わせ形状及び第1可動電極構造を有し、分散型マルチキャビティ構造燃焼室はピストンの最上部に設けられ、固定電極はシリンダブロックの最上部又はシリンダヘッドの底部に設けられ、第2組み合わせ形状及び第2構造を有し、間隔可変放電領域は前記可動電極と前記固定電極によって構成される。
【0023】
本開示の実施例に係るプラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電機構(Plasma Exciting Homogeneous Charge Uniform Combustion)は、「雲エンジン」又はPEHCUCと略称され、該ピストン放電機構の作動原理は、関連する均質圧縮着火技術とは異なる。該ピストン放電機構は、エンジンの多発的で均一な着火及び均一燃焼を実現し、燃焼効率を大幅に向上させ、より高い省エネ排出標準を満たすことができ、さらに、気相均質が完全であり、全燃焼室領域及び全燃焼過程の制御が正確であり、予備イオン化が均質ガス分子の運動活性を向上させ、プラズマ雲が多発的な着火及び燃焼を励起させ、ポストイオン化が燃焼の発展を強化し、燃焼残存がないという技術的効果を有する。
【0024】
以下、図面を参照しながら本開示の実施例及びいくつかの例を詳細に説明する。
【0025】
図1Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係るピストン放電構造の模式図であり、
図1Bは本開示の少なくとも別の実施例に係るピストン放電構造の模式図であり、
図1Cは本開示の少なくともさらに別の実施例に係るピストン放電構造の模式図である。
【0026】
例えば、
図1A、
図1B及び
図1Cに示すように、ピストン放電構造は、可動電極1、分散型マルチキャビティ構造燃焼室2、固定電極3及び間隔可変放電領域4を含む。可動電極1はピストン13の最上部131に設けられ、第1組み合わせ形状及び第1可動電極構造を有する。分散型マルチキャビティ構造燃焼室2はピストンの最上部131に設けられ、分散型マルチキャビティ構造燃焼室2はピストンの上面132及び可動電極1の第1可動電極構造から形成される。固定電極3はシリンダブロック221の最上部222に設けられてもよく(
図1B及び
図1C参照)、シリンダヘッド121の底部122に設けられてもよい(
図1A参照)。固定電極3と可動電極1は、ピストン13に垂直な方向に対向して設けられ、エンジンの作動過程で、固定電極3と可動電極1の対向する端面の間に放電現象が発生する。間隔可変放電領域4は、可動電極1と固定電極3によって構成され、即ち、間隔可変放電領域4は可動電極1と固定電極3との間の空間であり、間隔可変放電領域4の間のガスはガスイオン化現象が発生し、それにより、プラズマ気流が発生する。該ピストン放電機構は、エンジンの多発的で均一な着火及び均一燃焼を実現し、燃焼効率を大幅に向上させ、より高い省エネ排出標準を満たすことができる。
【0027】
なお、第1可動電極構造は複数の放電電極からなる複合構造であってもよく、第1組み合わせ形状とは、第1可動電極構造の複数の放電電極からなる複合構造の形状を指し、後で図面を参照して詳細に説明する。可動電極1及び固定電極3に記載の「移動」及び「固定」という2つの用語は本開示の実施例を制限するものではない。いくつかのエンジンでは、固定電極3が移動可能であり、可動電極1が固定して設けられる可能性もある。分散型マルチキャビティ構造燃焼室2について記載の「分散型マルチキャビティ構造」は本開示の実施例を制限するものではない。間隔可変放電領域4について記載の「間隔可変放電」は本開示の実施例を制限するものではなく、間隔可変放電領域4の間隔変化は、エンジンが作動する時の運動時刻に対するものである。
【0028】
例えば、可動電極は少なくとも1つの第1放電電極を含む。少なくとも1つの第1放電電極はピストンの最上部に設けられ、第1組み合わせ形状及び第1可動電極構造を有し、少なくとも1つの第1放電電極はピストンと一体に設けられる。少なくとも1つの第1放電電極はピストンに追従して往復運動でき、ピストンはエンジンのクランクロッドに接続され、ピストンはエンジンのクランクロッドを介して共通アースに接続される。
図1A、
図1B及び
図1Cに示すように、可動電極1は複数の第1放電電極を含む。複数の第1放電電極はピストンの最上部131に設けられ、第1組み合わせ形状及び第1可動電極構造を有し、複数の第1放電電極はピストン13と一体に設けられる。複数の第1放電電極の上端面は、ピストンの上面132の部分である。複数の第1放電電極はピストン13に追従して往復運動でき、ピストン13はエンジンのクランクロッドに接続され、ピストン13はエンジンのクランクロッドを介して共通アースに接続される。つまり、可動電極1は接地される。
【0029】
例えば、ピストン13の直径は110mm~130mmであってもよく、例えば120mmである。
【0030】
例えば、
図2は本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極の模式図である。
図2に示すように、可動電極1は1グループのオープン放電リング1-1-Nを含み、1グループのオープン放電リング1-1-Nはピストンの最上部131に設けられ、ピストンの上面132の幾何学的中心と同心である。ピストンの上面132は、固定電極2に面するピストンの最上部131の端面である。「少なくとも1グループのオープン放電リング」の「オープン」という用語は、
図2に示すように、1グループのオープン放電リングの平面形状が円周において不連続であることを示す。
【0031】
例えば、
図2に示すように、1グループのオープン放電リング1-1-Nは、第1最内層放電リング1-1-1、第1最外層放電リング1-1-3、及び第1最内層放電リング1-1-1と第1最外層放電リング1-1-3との間に位置する少なくとも1つの第1中間層放電リング1-1-2を含む。例えば、少なくとも1つの第1中間層放電リング1-1-2の数が1つであることを例とすると(
図2)、1グループのオープン放電リング1-1-Nは3つの放電リングを含む。第1最内層放電リング1-1-1、第1最外層放電リング1-1-3及び第1中間層放電リング1-1-2は同心の円環状である。可動電極1の1グループのオープン放電リング1-1-Nの入れ子構造は、エンジン内のガスイオン化の均一性に有益である。
【0032】
例えば、他の実施例では、第1中間層放電リング1-1-2の数は2つ、3つ等であってもよく、エンジンのピストンのサイズに基づいて1グループのオープン放電リング1-1-Nの放電リングの数を設計することができ、本開示の実施例はこれに限定されない。
【0033】
例えば、
図3Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極の、
図2のA1-B1線に沿った断面模式図であり、
図3Bは本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極の、
図2のA2-B2線に沿った断面模式図である。
図3A及び
図3Bに示すように、第1最内層放電リング1-1-1は第1高さを有し(例えば、第1最内層放電リング1-1-1は、ピストントップランド133の内縁134に対して固定電極2の方向に向かって突出する)、第1最内層リング1-1-1の径方向に沿った第1最内層放電リング1-1-1の断面は上狭下広の台形である。ピストントップランド133とはピストンの側縁を指す。内縁とはピストンの上面の幾何学的中心X0に接近するエッジを指す。該台形の底面はトップランド133の上面と同じ平面に位置する。同様に、1グループのオープン放電リング1-1-Nの径方向に沿った第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3の断面形状は、第1最内層リング1-1-1の径方向に沿った第1最内層放電リング1-1-1の断面形状と同じである。1グループのオープン放電リング1-1-Nは複数の放電面1-2-Nを含む。第1最内層放電リング1-1-1の上端狭面は放電面1-2-1であり、即ち、第1最内層放電リング1-1-1の固定電極2に接近する端面は放電面1-2-1である。第1最内層放電リング1-1-1の放電面は固定電極2と対向して設けられる。第1最内層放電リング1-1-1の放電面はまたピストンの上面132とされる。例えば、1グループのオープン放電リング1-1-Nはピストン13と一体に形成され、例えばピストンの上面132の部分は放電面1-2-Nである。同様に、第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3の上端狭面は放電面1-2-2及び放電面1-2-3である。1グループのオープン放電リング1-1-Nの複数の放電面1-2-Nは高さが同じであり、平行である。1グループのオープン放電リング1-1-Nの径方向に沿った1グループのオープン放電リング1-1-Nのそれぞれの幅W1の範囲は0.5~5mmであり、例えば幅W1は1.5mmである。第1最内層リング1-1-1の径方向に沿った第1最内層放電リング1-1-1の断面の底面の幅は、例えば3mmである。なお、ここでの幅とは、1グループのオープン放電リング1-1-Nの径方向に沿った1グループのオープン放電リング1-1-Nの放電面1-2-Nの幅を指す。
【0034】
例えば、他の実施例では、第1中間層放電リング1-1-2の数は2、3、4等であってもよいが、本開示の実施例はこれに限定されない。1グループのオープン放電リング1-1-Nの径方向に沿った第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3の断面形状は、第1最内層リング1-1-1の径方向に沿った第1最内層放電リング1-1-1の断面形状と互いに異なってもよい。例えば、1グループのオープン放電リング1-1-Nの径方向に沿った第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3の断面の側辺は円弧状に設けられる。1グループのオープン放電リング1-1-Nの複数の放電面1-2-Nは高さが同じではないように設けられてもよい。例えば、ピストン13の中心X0からピストン13のエッジに向かう方向に、第1最内層放電リング1-1-1、第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3の高さは徐々に増加し、又は徐々に減少する。
【0035】
例えば、
図2及び
図3Aに示すように、第1最内層放電リング1-1-1の内側からピストンの上面の幾何学的中心X0までの距離D1の範囲は1~9.5mmであり、例えば9mmである。内側はピストンの上面の幾何学的中心X0に接近する側を示す。第1最内層リング1-1-1の外側から第1最内層放電リング1-1-1に隣接する第1中間層放電リング1-1-2の内側までの距離D11は、第1最内層放電リング1-1-1の内側からピストンの上面132の幾何学的中心X0までの距離D1の2倍であり、例えば18mmである。外側はピストンの上面の幾何学的中心X0から離れた側を示す。1グループのオープン放電リング1-1-Nのうち隣接する2つの放電リングの対向する両側の間の距離D12(例えば、第1中間層放電リング1-1-2の外側と第1最外層放電リング1-1-3の内側)も、第1最内層放電リング1-1-1の内側からピストンの上面の幾何学的中心X0までの距離D1の2倍であり、例えば18mmである。第1最外層放電リング1-1-3の外側からピストントップランド133の内縁134までの距離D13は、第1最内層放電リング1-1-1の内側からピストンの上面の幾何学的中心X0までの距離D1に等しく(例えば、ほぼ等しい)、例えば9mmである。
【0036】
例えば、ピストントップランド133の幅は2~3mmであり、例えば2.5mmである。
【0037】
例えば、
図2及び
図3Bに示すように、可動電極1は複数のノッチK1をさらに含む。複数のノッチK1は、円周を均等に分割するように1グループのオープン放電リング1-1-Nに分布する。複数のノッチK1のそれぞれの幅M1の範囲は2~10mmであり(例えば、1グループのオープン放電リング1-1-Nの円周方向に沿ったノッチK1の幅)、例えば幅M1は6mmである。1グループのオープン放電リング1-1-Nのそれぞれの放電リングに少なくとも1つのノッチK1が設けられる。例えば、
図2に示すように、複数のノッチK1が設けられ、ノッチK1の数は第1最内層放電リング1-1-1からリング1つずつ増加する。つまり、第1最内層放電リング1-1-1、第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3に開けられたノッチK1の数は徐々に増加する。第1最内層放電リング1-1-1に設けられたノッチK1は、第1最内層放電リング1-1-1の径方向に沿って位置合わせるように、1グループのオープン放電リング1-1-Nのそれぞれの放電リングに設けられる。つまり、第1最内層放電リング1-1-1に設けられたノッチK1は、対応して、第1最外層放電リング1-1-3及び第1中間層放電リング1-1-2に開けられる。例えば、第1最内層放電リング1-1-1には円周を均等に分割するように3つのノッチK1が設けられ、3つのノッチK1間の夾角は60°である。第1最内層放電リング1-1-1の径方向に沿って、第1最内層放電リング1-1-1の3つのノッチK1に対応する位置に、それぞれ第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3に3つのノッチK1が開けられる。第1最内層放電リング1-1-1に隣接する第1中間層放電リング1-1-2には、第1最内層放電リング1-1-1の3つのノッチK1からずらされた3つのノッチK1がさらに設けられ、第1中間層放電リング1-1-2に増設されたノッチK1の数は、第1最内層放電リング1-1-1のノッチK1の数と同じであり、例えば3つである。即ち、第1中間層放電リング1-1-2のノッチK1の数は、第1最内層放電リング1-1-1のノッチK1の数の2倍である。第1中間層放電リング1-1-2に設けられた6つのノッチK1は円周を均等に分割するように分布し、隣接する2つのノッチK1間の夾角は30°である。第1最外層放電リング1-1-3には、第1最外層放電リング1-1-3に隣接する第1中間層放電リング1-1-2に設けられた複数のノッチK1からずらされた複数のノッチK1がさらに設けられ、第1最外層放電リング1-1-3に増設されたノッチK1の数は、第1中間層放電リング1-1-2に設けられたノッチK1の数と同じであり、例えば6つである。即ち、第1最外層放電リング1-1-3のノッチK1の数は第1中間層放電リング1-1-2のノッチK1の数の2倍である。第1最外層放電リング1-1-3に設けられた12個のノッチK1は円周を均等に分割するように分布し、隣接する2つのノッチK1間の夾角は15°である。上記の規則にしたがって、1グループのオープン放電リング1-1-Nのそれぞれの放電リングにノッチK1が設けられる。ノッチK1は1グループのオープン放電リング1-1-Nのそれぞれの放電リングをマルチセグメント構造に分割し、ガスイオン化の均一性に有益であり、さらにエンジンの多発的で均一な着火及び均一燃焼の実現に寄与する。
【0038】
例えば、他の実施例では、第1最内層放電リング1-1-1に設けられたノッチK1の数は4つ等であってもよい。そのような場合に対応して、第1中間層放電リング1-1-2に設けられたノッチK1の数は8つ等であってもよく、第1最外層放電リング1-1-3に設けられたノッチK1の数は16個等であってもよい。
【0039】
例えば、
図3A及び
図3Bに示すように、分散型マルチキャビティ構造燃焼室2は、第1最外層放電リング1-1-1の内側、1グループのオープン放電リング1-1-Nの隣接する2つの放電リングの間(例えば、第1最内層放電リング1-1-1の外側と第1中間層放電リング1-1-2の内側との間、第1中間層放電リング1-1-2の外側と第1最外層放電リング1-1-3の内側との間)、及び第1最外層放電リング1-1-3の外側の凹領域(例えば、第1最外層放電リング1-1-3の外側とピストントップランドの内縁134との間)を含む。分散型マルチキャビティ構造燃焼室2は燃焼室メインキャビティ2-1及び燃焼室サブキャビティ2-2を含む。
【0040】
例えば、
図3A及び
図3Bに示すように、燃焼室メインキャビティ2-1は、第1最外層放電リング1-1-1の内側の平らな「ω」字形に凹んだ領域であり、燃焼室メインキャビティ2-1の凹部の直径は第1最内層放電リング1-1-1の内側からピストンの上面の幾何学的中心X0までの距離の2倍である。燃焼室メインキャビティの最大深さH1(
図3Aに示される)の範囲は0.5~5mmであり、例えば最大深さH1は2.3mmである。燃焼室サブキャビティ2-2は、1グループのオープン放電リング1-1-Nの隣接する2つの放電リングの間(例えば、第1最内層放電リング1-1-1の外側と第1中間層放電リング1-1-2の内側との間、第1中間層放電リング1-1-2の外側と第1最外層放電リング1-1-3の内側との間)及び第1最外層放電リング1-1-3の外側の凹領域(例えば、第1最外層放電リング1-1-3の外側とピストントップランドの内縁134との間)を含む。燃焼室サブキャビティ2-2の凹み深さは、ピストントップランド134からピストンの上面の幾何学的中心X0に向かって徐々に大きくなる。例えば、第1最内層放電リング1-1-1の外側と第1中間層放電リング1-1-2の内側との間の深さH11>第1中間層放電リング1-1-2の外側と第1最外層放電リング1-1-3の内側との間の深さH12>第1最外層放電リング1-1-3の外側とピストントップランドの内縁134との間の深さH13である。燃焼室サブキャビティ2-2の凹み深さ(例えば、深さH11、深さH12又は深さH13)は燃焼室メインキャビティの最大深さの30%~70%である。
【0041】
例えば、第1最内層放電リング1-1-1の外側と第1中間層放電リング1-1-2の内側との間の深さH11の範囲は、例えば2.0~2.2mmであり、例えば2.1mmである。例えば、第1中間層放電リング1-1-2の外側と第1最外層放電リング1-1-3の内側との間の深さH1の範囲は、例えば1.8~2.0mmであり、例えば1.9mmである。例えば、第1最外層放電リング1-1-3の外側とピストントップランドの内縁134との間の深さH13の範囲は、例えば1.6~1.8mmであり、例えば1.7mmである。
【0042】
例えば、
図2及び
図3Aに示すように、ピストン放電構造はスキッシュ流ガイド突起2-1-1をさらに含む。スキッシュ流ガイド突起2-1-1は燃焼室メインキャビティ2-1の凹み中心に設けられ、凹み中心はピストンの上面の幾何学的中心X0と重なる。スキッシュ流ガイド突起2-1-1の縦断面は「ベル型」である。なお、「ベル型」とは、スキッシュ流ガイド突起2-1-1の縦断面の輪郭形状の上半が放物線に類似することを指す。スキッシュ流ガイド突起2-1-1の底面積は燃焼室メインキャビティ2-1の底面積の20%~50%である。例えば、スキッシュ流ガイド突起2-1-1の底面の幅は5.4mであり、スキッシュ流ガイド突起2-1-1の高さH2は燃焼室メインキャビティの最大深さH1の50%~70%であり、例えば高さH2は1.3mmである。
【0043】
なお、スキッシュ流ガイド突起2-1-1に記載の「スキッシュ流ガイド」は本開示の実施例を制限するものではなく、異なる技術的特徴の名称を区別するためのものに過ぎない。
【0044】
例えば、
図2及び
図3Bに示すように、ピストン放電構造は複数グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nをさらに含む。複数グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nは、燃焼室サブキャビティ2-2と可動電極1の複数のノッチK1との交差位置に設けられ、スキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nは交差位置の中心に位置する。例えば、複数グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nは、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3を含む。第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の数は、それぞれ第1最内層放電リング1-1-1、第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3のノッチK1の数と同じであり、即ち、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1の数は3つであり、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2の数は6つであり、第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の数は12個である。1グループのオープン放電リング1-1-Nの径方向に沿った第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の長さは同じである(例えば、ほぼ同じである)。1グループのオープン放電リング1-1-Nの円周方向に沿った第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の幅は同じである(例えば、ほぼ同じである)。それにより、プラズマの流れは、第1最内層放電リング1-1-1、第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3の間でより均一である。
【0045】
例えば、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジの高さは同じではなく、又は同じである。
図3Bに示すように、スキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nのリッジ高さは、燃焼室メインキャビティの最大深さH1の30%~70%である。例えば、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1のリッジ高さH3は、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1の上端面(即ち、固定電極3に接近する表面)から第1最内層放電リング1-1-1の内側の最低点までの距離であり、例えば、リッジ高さH3は1.25mmである。例えば、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2のリッジ高さH4は、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2の上端面(即ち、固定電極3に接近する表面)から第1最内層放電リング1-1-1の外側と第1中間層放電リング1-1-2の内側との間の領域の最低点までの距離であり、例えばリッジ高さH4は1.15mmである。例えば、第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3のリッジ高さH5は、第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の上端面(即ち、固定電極3に接近する表面)から第1中間層放電リング1-1-2の外側と第1最外層放電リング1-1-3の内側との間の領域の最低点までの距離であり、例えばリッジ高さH5は1.12mmである。例えば、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の上端面は面一である。例えば、スキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nは「ベル型」の断面を有する。スキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nの長手方向の両側にガイドスロープが対称的又は非対称的に設けられ、スキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nの短手方向の両側にガイドスロープが対称的又は非対称的に設けられる。それにより、プラズマの流れは、第1最内層放電リング1-1-1、第1中間層放電リング1-1-2及び第1最外層放電リング1-1-3の間でより均一であり、ガスイオン化の均一性に有益であり、エンジンの多発的で均一な着火及び均一燃焼の実現に寄与する。
【0046】
例えば、
図2に示すように、燃焼室メインキャビティ2-1及び燃焼室サブキャビティ2-2は複雑な「ラビリンス型」に形成され、その結果、エンジン内のガスイオン化はより十分であり、燃焼はより均一である。
【0047】
なお、複数グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nについて記載の「スキッシュ流ガイド」は本開示の実施例を制限するものではなく、本開示の実施例では、「スキッシュ流ガイド」は別の技術特徴の名称を区別することに用いられる。
【0048】
例えば、他の実施例では、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1の数は4つ等であってもよい。このような場合に対応して、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2の数は8つ等であってもよく、第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の数は16個等であってもよい。
【0049】
例えば、他の実施例では、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の上端面は、面一ではなくてもよい。例えば、ピストン13の中心からピストン13のエッジに向かう方向に、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1、第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2及び第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3の上端面は互いにずれる。
【0050】
例えば、他の実施例では、ピストン放電構造は第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3を含まなくてもよく、即ち、第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1及び第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2のみが設けられ、本開示の実施例はこれに限定されない。
【0051】
例えば、固定電極は、シリンダブロックの最上部又はシリンダヘッドの底部に固定され、第2組み合わせ形状及び第2構造を有する少なくとも1つの第2放電電極である。
図1A、
図1B及び
図1Cに示すように、固定電極3は、シリンダブロックの最上部222又はシリンダヘッドの底部122に固定され、第2組み合わせ形状及び第2構造を有する複数の第2放電電極である。複数の第2放電電極は可動電極1の真上に位置し、可動電極1の放電面に向かう複数の第2放電電極の端面は放電面とされる。可動電極1が上死点TDC位置にある場合、複数の第2放電電極と可動電極1との間には、固定電極3に垂直な方向に固定ギャップがあり、複数の第2放電電極は外部電源に接続されて、固定電極3と可動電極1との間に電圧差を形成する。
【0052】
なお、第2構造は複数の第2放電電極からなる複合構造であってもよく、第2組み合わせ形状とは、第2構造の複数の第2放電電極からなる複合構造の形状を指し、後で図面を参照して詳細に説明する。上死点TDC位置とは、エンジン作動過程で、ピストン13が上下往復移動の過程でシリンダヘッド121と最も近い位置を指す。
【0053】
例えば、
図4は本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の模式図である。
図4に示すように、固定電極3は1グループの閉ループ放電リング3-1-Nを含み、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nは、可動電極1の1グループのオープン放電リング1-1-Nと同じ幾何学的中心を有し且つ形状の輪郭が類似する。1グループの閉ループ放電リング3-1-Nは、第2最内層放電リング3-1-1、第2最外層放電リング3-1-3、及び第2最内層放電リング3-1-1と第2最外層放電リング3-1-3との間に位置する少なくとも1つの第2中間層放電リング3-1-2を含む。例えば、少なくとも1つの第2中間層放電リング3-1-2の数が1つであることを例とすると(
図4)、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nは3つの放電リングを含む。第2最内層放電リング3-1-1、第2最外層放電リング3-1-3及び第2中間層放電リング3-1-2は同心の円環状である。固定電極3の1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの入れ子構造は、エンジン内のガスイオン化の均一性に有益であり、ガスイオン化の均一性に有益であり、エンジンの多発的で均一な着火及び均一燃焼の実現に寄与する。
【0054】
例えば、他の実施例では、第2中間層放電リング3-1-2の数は2つ、3つ等であってもよいが、本開示の実施例はこれに限定されない。
【0055】
例えば、
図5Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図4のA3-B3線に沿った断面模式図であり、
図5Bは本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図4のA4-B4線に沿った断面模式図であり、
図5A及び
図5Bに示すように、第2最内層リング3-1-1の径方向に沿った第2最内層放電リング3-1-1の断面は矩形であり、第2最内層放電リング3-1-1の厚さH21(
図5A参照)(即ち、第2最内層リング3-1-1の径方向に沿った幅)の範囲は1~8mmであり、例えば厚さH21は4mmである。同様に、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの径方向に沿った第2中間層放電リング3-1-2及び第2最外層放電リング3-1-3の断面形状は、第2最内層リング3-1-1の径方向に沿った第2最内層放電リング3-1-1の断面形状と同じである。1グループの閉ループ放電リング3-1-Nは複数の放電面3-2-Nを含む。第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1に向かう第2最内層放電リング3-1-1の端面は放電面3-2-1とされる。同様に、第2中間層放電リング3-1-2及び第2最外層放電リング3-1-3の端面はそれぞれ放電面3-2-2及び放電面3-2-3である。1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの複数の放電面3-2-Nは高さが同じであり(例えば、ほぼ同じである)且つ平行である。第2最内層放電リング3-1-1の幅W21(
図5A参照)(即ち、第2最内層放電リング3-1-1の放電面3-2-1の幅)の範囲は0.2~4mmであり、例えば幅W21は2mmである。
【0056】
例えば、他の実施例では、第2中間層放電リング3-1-2の数は2、3、4等であってもよいが、本開示の実施例はこれに限定されない。1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの径方向に沿った第2中間層放電リング3-1-2及び第2最外層放電リング3-1-3の断面形状は、第2最内層リング3-1-1の径方向に沿った第2最内層放電リング3-1-1の断面形状と互いに異なってもよい。例えば、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの径方向に沿った第2中間層放電リング3-1-2及び第2最外層放電リング3-1-3の断面の側辺は円弧状に設けられる。1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの複数の放電面3-2-Nは高さが同じではないように設けられてもよい。例えば、ピストン13の中心からピストン13のトップランド133に向かう方向に、第2最内層放電リング3-1-1、第2中間層放電リング3-1-2及び第2最外層放電リング3-1-3の高さは徐々に増加し、又は徐々に減少する。
【0057】
例えば、
図2及び
図4に示すように、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nと1グループのオープン放電リング1-1-Nとは、放電リングの数が同じであり、位置が対向し(即ち、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nと1グループのオープン放電リング1-1-Nとの軸線は重なる)、その結果、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nと1グループのオープン放電リング1-1-Nとの放電面を互いに対向させ、それにより、作動過程でのエンジンのガスイオン化能力を向上させる。
【0058】
例えば、
図6は本開示の少なくとも1つの実施例に係る別の固定電極の模式図である。
図4及び
図6に示すように、ピストン放電構造は、少なくとも1つの円筒形給電接続ポート3-3、複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-L、及び複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nをさらに含む。例えば、少なくとも1つの円筒形給電接続ポート3-3は、数が1つであり、給電導入端子17(
図1A、
図1B及び
図1C参照)に接続して、外部電源に接続することに用いられる。
【0059】
例えば、
図7は本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図6のA5-B5線に沿った断面模式図である。
図6及び
図7に示すように、円筒形給電接続ポート3-3が可動電極1の中心位置、即ち固定電極2の中心位置に設けられる場合、円筒形給電接続ポート3-3はねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースを有する円筒体であり、円筒形給電接続ポート3-3の厚さH34(
図7参照)及び直径の範囲は3~10mmである。例えば、円筒形給電接続ポート3-3の厚さは4mmであり、円筒形給電接続ポート3-3の直径は5mmである。
【0060】
例えば、
図5Bに示すように、複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lは、第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-L、第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-L、及び第3グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-3-Lを含む。複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lのそれぞれの厚さは第2最内層放電リング3-1-Nの厚さW21の60%~85%であり、例えば、複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lのそれぞれの厚さは3.5mmである。複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lのそれぞれの幅W32の範囲は1~9mmであり、例えば幅W32は2mmである。
【0061】
例えば、
図6に示すように、複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lは、第2最内層放電リング3-1-1の内側に位置する第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-L(円筒形給電接続ポート3-3が固定電極3の中心に設けられる場合、
図6に示すように、第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lは円筒形給電接続ポート3-3と第2最内層放電リング3-1-1を連通する)、第2最内層放電リング3-1-1と第2中間層放電リング3-1-2を連通する第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-L、及び第2中間層放電リング3-1-2と第2最外層放電リング3-1-3を連通する第3グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-3-Lを含む。複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lの各グループの数は異なり、例えば、第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-L、第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-L及び第3グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-3-Lの数は互いに異なる。複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lは、ピストントップランド133からピストンの上面132の幾何学的中心の方向に向かって1グループずつ一倍を増やす。つまり、第3グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-3-Lの数は、第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-Lの数の2倍であり、第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-Lの数は、第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lの数の2倍である。例えば、第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lと第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1との位置は対向し、且つ第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lと第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1との数は同じである。例えば、第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-Lと第2グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-2とは位置が対向し、且つ数が同じである。例えば、第3グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-3-Lと第3グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-3とは位置が対向し、且つ数が同じである。複数グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-Nの分布形態を参照し、複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lに含まれる各グループは円周を均等に分割するように千鳥状に分布する。例えば、
図6に示すように、第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lの数は3つであり、第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-Lの数は6つであり、第3グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-3-Lの数は12個である。複数グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-N-Lによって、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの放電面3-2-Nの放電量をより均一にすることができる。
【0062】
例えば、他の実施例では、第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lの数は4つであってもよい。このような場合に対応して、第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-Lの数は8つであってもよく、第3グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-3-Lの数は16個であってもよい。
【0063】
なお、本開示の実施例に記載の「位置が対向する」とは、例えば、ピストン13に垂直な方向における第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lの正投影と、ピストン13に垂直な方向における第1グループのスキッシュ流ガイドリッジ2-2-1の正投影とは、軸線が重なり且つ形状が同じであることを指す。
【0064】
例えば、
図4及び
図5Bに示すように、複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nは円周を均等に分割するように分布する3つの湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nを含む。なお、「湾曲形」は絶対的なものではなく、湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nは直線形であってもよく、本開示の実施例はこれに限定されない。例えば、湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nの数は4、5、6等であってもよく、本開示はこれに限定されない。複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nはインピーダンス整合の役割を果たすことができる。
【0065】
例えば、
図4及び
図5Bに示すように、湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nの厚さH31及び幅W33の範囲は1~9mmである。例えば、湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nの厚さH31は4mmであり、湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nの幅W33は4mmである。複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nの隣接する2つの間の夾角は60°である。複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nの一端は、第2最外層放電リング3-1-3に接続され、複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-Nの他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、シリンダブロックの最上部222又はシリンダヘッドの底部122に締結される。
【0066】
例えば、別の実施例では、
図4に示すように、円筒形給電接続ポート3-3が第2最外層放電リング3-1-3と第2最外層放電リング3-1-3に接続された第2グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-2-Lのうちの1つとの交差位置に設けられる場合、円筒形給電接続ポート3-3はねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースを有する円筒体であり、円筒形給電接続ポート3-3の厚さH34(
図7に示される)及び直径の範囲は3~10mmである。例えば、円筒形給電接続ポート3-3の厚さは4mmであり、円筒形給電接続ポート3-3の直径は5mmである。第1グループの直線形径方向接続インダクタ3-4-1-Lは1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの中心交差箇所に連通する。
【0067】
例えば、
図8に示すように、間隔可変放電領域4は第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1と第2最内層放電リング3-1-1の放電面3-2-1との間により形成され、即ち、1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの放電面3-2-Nと1グループのオープン放電リング1-1-Nの放電面1-2-Nとの間により形成される。例えば、少なくとも1つの第1放電電極と固定電極3とは、形状が同じであり、軸線が重なる。少なくとも1つの第2放電電極と可動電極1は、形状が同じであり、且つ軸線が重なる。例えば、第2最内層放電リング3-1-1の上端面と第1最内層放電リング1-1-1の上端狭面は平行し、且つ第2最内層放電リング3-1-1と第1最内層放電リング1-1-1との中心線X1は位置合わせるように設けられる。例えば、第2中間層放電リング3-1-2の上端面と第1中間層放電リング1-1-2の上端狭面は平行であり、且つ第2中間層放電リング3-1-2と第1中間層放電リング1-1-2との中心線X2は位置合わせるように設けられる。例えば、第2最外層放電リング3-1-3の上端面と第1最外層放電リング1-1-3の上端狭面は平行であり、且つ第2最外層放電リング3-1-3と第1最外層放電リング1-1-3との中心線X3は位置合わせるように設けられる。
【0068】
例えば、
図13は本開示する一実施例に係る可変放電間隔の模式図である。
図13に示すように、ピストン13の運動に追従する第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1の異なる位置又は時刻に基づいて、間隔可変放電領域4は第1予備イオン化領域4-1、第2イオン化領域4-2及び第3強化燃焼領域4-3にさらに細分される。第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1に垂直な方向に沿った第1予備イオン化領域4-1の長さS11>第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1に垂直な方向に沿った第3強化燃焼領域4-3の長さS13>第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1に垂直な方向に沿った第2イオン化領域4-2の長さS12である。第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1に垂直な方向に沿った第1予備イオン化領域4-1の長さS11の範囲は0.2~1mmであり、例えば長さS11は0.3mmである。第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1に垂直な方向に沿った第2イオン化領域4-2の長さS12の範囲は0.02~0.09mmであり、例えば長さS12は0.03mmである。第1最内層放電リング1-1-1の放電面1-2-1に垂直な方向に沿った第3強化燃焼領域4-3の長さS13の範囲は0.1~0.5mmであり、例えば長さS13は0.15mmである。上記のように設計されたサイズは、エンジンの全負荷域で、7MPa気圧以下で、多発的で均一な着火及び点火を確実に実現することができる。その後、異なる間隔での燃焼過程について詳細に説明する。
【0069】
例えば、ピストン13の直径が20mm未満である場合、可動電極1及び固定電極3の電極の数を減少して設計することができ、後で詳細に説明する。
【0070】
例えば、
図9Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係る別の可動電極の模式図であり、
図9Bは本開示する一実施例に係る可動電極の、
図9AのC1-D1線に沿った断面模式図である。
図9A及び
図9Bに示すように、可動電極1は1つのオープン放電リング1-1を含む。1つのオープン放電リング1-1の上端面は放電面1-2、即ち、固定電極3に接近するオープン放電リング1-1の端面である。1つのオープン放電リング1-1の径方向に沿った1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2の幅W0の範囲は0.3~2mmである。1つのオープン放電リング1-1は3つのノッチKを含む。3つのノッチKは円周を均等に分割するように1つのオープン放電リング1-1に分布し、隣接する2つのノッチKの夾角は60°である。3つのノッチKのそれぞれの幅Mの範囲は2~5mmである。1つのオープン放電リング1-1の内側の深さはH01であり、1つのオープン放電リング1-1の外側からピストントップランドの内縁134までの領域の深さはH02であり、1つのオープン放電リング1-1の内側の深さH01>1つのオープン放電リング1-1の外側からピストントップランドの内縁134までの領域の深さH02である。1つのオープン放電リング1-1の内側縁からピストンの上面の幾何学的中心X01までの距離D0の範囲は1~3mmである。1つのオープン放電リング1-1の外側縁からピストンのトップランドの内縁134までの距離D01は、1つのオープン放電リング1-1の内側縁からピストンの上面の幾何学的中心X01までの距離D0に等しい。
【0071】
例えば、
図9A及び
図9Bに示すように、分散型マルチキャビティ構造燃焼室2は分散型2キャビティ構造であり、分散型2キャビティ構造2は燃焼室メインキャビティ2-1及び燃焼室サブキャビティ2-2を含む。燃焼室メインキャビティ2-1は、オープン放電リング1-1の内側の球面状に凹んだ領域を含み、燃焼室メインキャビティ1-1の直径の範囲は2~5mmである(例えば、燃焼室メインキャビティ1-1の直径は、1つのオープン放電リング1-1の内側からピストンの上面の幾何学的中心X01までの距離D0の2倍である)。燃焼室メインキャビティ1-1の最大深さH01(即ち、1つのオープン放電リング1-1の内側の深さ)の範囲は0.2~2mmである。燃焼室サブキャビティ2-2は、1つのオープン放電リング1-1の外側からトップランドの内縁134までの範囲で球面状に凹んだ領域を含む。燃焼室サブキャビティ2-2の凹み深さH02(即ち、1つのオープン放電リング1-1の外側からピストントップランドの内縁134までの領域の深さ)は燃焼室メインキャビティ1-1の最大深さH01の5%~40%である。
【0072】
図10Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係るさらに別の固定電極の模式図であり、
図10Bは本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図10AのC2-D2線に沿った断面模式図である。
図11Aは本開示の少なくとも1つの実施例に係るさらに別の固定電極の模式図であり、
図11Bは本開示の少なくとも1つの実施例に係る固定電極の、
図11AのC3-D3線に沿った断面模式図である。
【0073】
例えば、
図10A及び
図10Bに示すように、固定電極3は1つの閉ループ放電リング3-1を含む。閉ループ放電リング3-1と1つのオープン放電リング3-2とは、形状が同じであり、軸線が重なる。1つの閉ループ放電リング3-1の厚さH210の範囲は1~10mmである。1つの閉ループ放電リング3-1の断面は矩形であり、それにより、閉ループ放電リング3-1が圧縮応力に耐える能力を向上させる。1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2に向かう1つの閉ループ放電リング3-1の端面は放電面3-2である。1つの閉ループ放電リング3-1の放電面3-2の幅W210の範囲は0.2~2mmである。
【0074】
例えば、他の実施例では、1つの閉ループ放電リング3-1の断面は台形、正方形等であってもよく、本開示の実施例はこれに限定されない。
【0075】
例えば、ピストン放電構造は、少なくとも1つの円筒形給電接続ポート、複数の直線形径方向接続インダクタ、及び複数の湾曲形固定支持インダクタをさらに含む。
図10A及び
図11Aに示すように、ピストン放電構造は、1つの円筒形給電接続ポート3-3-0、複数の直線形径方向接続インダクタ3-4-0-L及び複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0をさらに含む。
図10Aに示される複数の直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lの数は3つであり、複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0の数は3つである。例えば、隣接する2つの直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lの間の夾角は60°である。例えば、隣接する2つの湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0の夾角は60°である。例えば、直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lは円周を均等に分割するように1つの閉ループ放電リング3-1の内側に分布する。例えば、湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0は円周を均等に分割するようにシリンダブロックの最上部222又はシリンダヘッドの底部122に分布する。例えば、湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0の一端は、1つの閉ループ放電リング3-1に接続され、湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0の他端は、ねじ穴又は貫通穴が設けられ、シリンダブロックの最上部222又はシリンダヘッドの底部122に締結される。
【0076】
例えば、他の実施例では、複数の直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lの数は4つ、5つ等であってもよく、複数の湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0の数は4つ、5つ等であってもよい。例えば、円筒形給電接続ポート3-3-0の数は複数であってもよく、例えば2つ、3つ等である。
【0077】
例えば、
図10Aに示すように、円筒形給電接続ポート3-3-0は1つの閉ループ放電リング3-1と直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lのうちの1つとの交差位置に設けられ、円筒形給電接続ポート3-3-0は1つのねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースである。例えば、直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lは1つの閉ループ放電リング3-1の中心で交差する。
【0078】
例えば、別の実施例では、
図11Aに示すように、円筒形給電接続ポート3-3-0が1つの閉ループ放電リング3-1の中心に設けられる場合、円筒形給電接続ポート3-3-0はねじ山又はマウント又はプラグインインタフェースを有する円筒体である。直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lは、円周を均等に分割するように、1つの閉ループ放電リング3-1と円筒形給電接続ポート3-3-0との間に分布し、直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lは円筒形給電接続ポート3-3-0と1つの閉ループ放電リング3-1を連通する。
【0079】
例えば、
図11Bに示すように、円筒形給電接続ポート3-3-0の厚さは1つの閉ループ放電リング3-1の厚さH210に等しく、円筒形給電接続ポート3-3-0の直径の範囲は2~3mmである。
【0080】
例えば、
図10A及び
図10Bに示すように、直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lのそれぞれの厚さH310は1つの閉ループ放電リング3-1の厚さH210の60%~85%であり、直線形径方向接続インダクタ3-4-0-Lのそれぞれの幅W20の範囲は1~3mmである。
【0081】
例えば、
図10A及び
図10Bに示すように、湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0のそれぞれの厚さH310は1つの閉ループ放電リング3-1の厚さH210に等しく、湾曲形固定支持インダクタ3-5-N-0のそれぞれの幅W30の範囲は1~9mmである。
【0082】
例えば、
図12は本開示の少なくとも1つの実施例に係る可動電極と固定電極の対応関係の模式図である。
図12に示すように、閉ループ放電リング3-1と1つのオープン放電リングは同じ幾何学的中心を有し、間隔可変放電領域4は、1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2と固定電極3の1つの閉ループ放電リング3-1の放電面3-2との間により形成される。例えば、1つのオープン放電リング1-1と1つの閉ループ放電リング3-1とは、形状が同じであり、軸線が重なる。例えば、1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2と1つの閉ループ放電リング3-1の放電面3-2は平行し、且つ1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2と1つの閉ループ放電リング3-1の放電面3-2との中心線X11は位置合わせるように設けられる。
【0083】
例えば、
図13に示すように、ピストン13の運動に追従する可動電極1の1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2の異なる位置又は時刻に基づいて、間隔可変放電領域4は第1予備イオン化領域4-1、第2イオン化領域4-2及び第3強化燃焼領域4-3にさらに細分される。1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2に垂直な方向に沿った第1予備イオン化領域4-1の長さS11>1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2に垂直な方向に沿った第3強化燃焼領域4-3の長さS13>1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2に垂直な方向に沿った第2イオン化領域4-2の長さS12である。1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2に垂直な方向に沿った第1予備イオン化領域4-1の長さS11は0.2~1mmであり、例えば0.3mmである。1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2に垂直な方向に沿った第2イオン化領域4-2の長さS12は0.02~0.09mmであり、例えば0.03mmである。1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2に垂直な方向に沿った第3強化燃焼領域4-3の長さS13の範囲は0.1~0.5mmであり、例えば0.15mmである。上記のように設計されたサイズは、エンジンの全負荷域で、7MPa気圧以下で、多発的で均一な着火及び点火を確実に実現することができる。その後、異なる間隔での燃焼過程について詳細に説明する。
【0084】
本開示の実施例を理解しやすくするために、上記の技術案及び該技術案によるエンジンの燃焼過程への改善効果を提供する。従って、ピストン放電構造の作動過程をさらに説明するが、本開示の制限を構成するものではない。
【0085】
本開示の実施例は主に基本的な燃焼法則及びガス放電原理に依拠する。以下のように示す。
【0086】
【0087】
式(1)では、knは定量的因子、Aは燃焼物、Bは酸化物、C、Eは燃焼生成物である。順方向及び逆方向の化学反応速度は単位時間、単位体積燃料及び酸素の消費量で示すことができ、順方向及び逆方向の化学反応速度は反応物の濃度に比例する。
【0088】
2)アレニウスの法則(Arrenius)
【数2】
【0089】
式(2)では、Gは反応速度m3/(s.mol)、g0は衝撃頻度又は回数因子m3/(s.mol)、Eは反応物活性化エネルギーkj/mol、Rは一般ガス定数8.314×103kj/(mol.K)、Tは温度Kであり、化学反応速度は、均一な濃度条件において反応物活性化エネルギー、温度と指数関数的に関連する。
【0090】
【0091】
式(3)では、Vsは絶縁破壊電圧、Pはガス放電の放電気圧、dはガス放電の放電間隔、A、B、yはガス性質、ガス放電の電極材料、ガス放電の電極形状及び電極構造(電界分布)に関連する係数である。パッシェンの法則から分かるように、ガスイオン化の絶縁破壊電圧Vsは積pdの関数であり、電極材料、電極形状、電極構造が決められた場合、p、dが変化しても、積pdが変化しない限り、絶縁破壊電圧Vsは変化せず、10MPaレベルの気圧範囲に適用する。
【0092】
例えば、
図1A及び
図13に示すように、エンジンのピストン13の運動中の異なる位置又は時刻に基づいて、エンジンの均質ガス圧縮過程で、可動電極1の1グループのオープン放電リング1-1-Nの放電面1-2-N(又は1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2)が所定のある上死点前(BTCD)の位置に運動し、且つ放電面3-2-Nとの間の間隔が広い場合、放電面1-2-Nは弱い放電エネルギーを印加し始め、弱強度の電磁エネルギー場を形成する。この段階で、先ず、完全に圧縮されていないエンジン内の低圧均質ガスを予備イオン化し始め、ガス分子の運動活性を向上させ、可動電極1は運動過程で徐々にスキッシュ乱流を生成する。放電面1-2-Nが上死点(TDC)の位置に運動し、放電面1-2-Nと固定電極3の1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの放電面3-2-N(又は1つの閉ループ放電リング3-1の放電面3-2)との間に所定の非常に狭いギャップを形成する場合、エンジン内の気圧の増加に伴って、放電エネルギーは徐々に強化し、ピークに達し、さらに高強度の電磁エネルギー場を形成する。エンジン内の非常に狭いギャップに圧縮後の高圧均質ガスがイオン化され、それにより、マルチリング・マルチセグメント・大体積のプラズマ雲(プラズマ)を発生させ、この時、信頼できる多発的で均一な着火を広範囲において実現し、また、スキッシュ乱流も最も強く、プラズマ雲が放電領域(即ち、放電面1-2-Nと放電面3-2-Nの間)外の他の部分の圧縮ガスを励起させて燃焼を開始するのを助け、燃焼の発展のために、単一の「自己着火温度」よりも有益な「自己着火温度+プラズマ雲励起」の二重の有益な条件を提供する。エンジンの燃焼発展の中期、後期に、放電面1-2-Nが上死点(TDC)を離れ、所定のある上死点後(ATDC)の位置に移動し始める場合、依然として適当な放電エネルギーを維持し続け、燃焼を強化し、燃焼効率、バーンアウト率及び有効仕事を最大限に向上させる。放電面1-2-Nが所定のある上死点後(ATDC)の位置を離れ、放電面1-2-Nと放電面3-2-Nとの間の距離が再び所定値に広がる時、放電を停止し(即ち、給電導入端子17に電気エネルギーを提供しなくなる)、一回の間欠(パルス)式燃焼の全過程の精細な管理を終了する。作動過程全体は、具体的に広い間隔の予備イオン化、狭いギャップのイオン化、プラズマ雲励起、中等間隔の強化燃焼(予備イオン化、イオン化、雲励起、強化と略称される)という4つのステップ(段階)に分けられ、以下のように詳述した。
【0093】
予備イオン化段階では、予備イオン化を事前に制御し、均質ガス分子の運動活性を大幅に向上させ、その後のイオン化のために十分に準備する。可動電極1の1グループのオープン放電リング1-1-Nの放電面1-2-N(又は1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2)(即ち、ピストンの上面131)が所定のある上死点前(BTDC)の位置に移動し、間隔可変放電領域4が第1予備イオン化領域4-1である場合、所定の初期放電時刻(均質ガスの稀薄度に基づいて異なる初期放電時刻t0を設定できる)に、固定電極3に低い予備イオン化電気エネルギー(例えば、電圧vと電流iの積である初期放電エネルギーj)を印加して(即ち、給電導入端子17に電気エネルギーを提供する)低強度の電磁エネルギー場を形成する。先ず、圧縮過程での低圧均質ガスを第1予備イオン化領域4-1で予備イオン化し、活性分子の数、平均運動エネルギー、効果的な衝撃頻度及び衝撃回数等を向上させ、所定の変化率で放電エネルギーを徐々に増加し、設けられた放電構造は、広範囲(基本的に燃焼室の全領域をカバーする)の予備イオン化及び後のイオン化、励起、強化の効果を確保することができる。可動電極1の運動過程で、分散型マルチキャビティ構造燃焼室2の燃焼室メインキャビティ2-1、燃焼室サブキャビティ2-2はスキッシュ乱流を徐々に形成する。初期放電時刻t0に、第1予備イオン化領域4-1内の気圧(p)は低く、間隔S11(即ち、式(3)の距離d)は大きく、気圧と間隔の積(pd)(即ち、絶縁破壊電圧Vs)は過渡定数であり、圧縮過程での気圧の急激な増加及び間隔の急激な減少の動的変化に従って急激に変化することがない。設定された初期放電時刻t0、初期放電エネルギーj、放電エネルギー変化率dj/dtという3つのデータは非常に重要であり、特にjの絶縁破壊電圧Vsは、予備イオン化段階でランダム着火を発生させずにガス分子の運動活性のみを活性化することを確保し、次のイオン化を確実に実現するためのキーポイントである。
【0094】
イオン化段階では、多発的で均一な着火を実現し、燃焼の開始及び発展のためにより優れる条件を提供する。可動電極1の1グループのオープン放電リング1-1-Nの放電面1-2-N(又は1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2)が上死点(TDC)の位置に運動し、間隔可変放電領域4が第2予備イオン化領域4-2である場合、固定電極3の放電エネルギーをある所定のピーク(負荷に応じて、異なるピークが設定される)に増加し、高強度の電磁エネルギー場を形成し、第2予備イオン化領域4-2で完全に圧縮された高圧均質ガスは、設定された特定の形状(
図2に示される可動電極1はマルチリング・マルチセグメントの形状を有する)の非常に狭いギャップにマルチリング、マルチセグメント、大体積のプラズマ雲(プラズマ)を発生させ、それにより、信頼できる多発的で均一な着火を実現し、着火範囲(又は体積)及び均一性は点火、圧縮点火よりも明らかに優れている。この時、プラズマ雲(プラズマ)は燃焼室メインキャビティ2-1及び燃焼室サブキャビティ2-2内に分布している未燃焼の均質ガスを包み、燃焼の開始及び発展のために、単一の「自己着火温度」よりも有益な「自己着火温度+プラズマ雲励起」の二重の有益な条件を提供する。また、スキッシュ乱流は最高強度に達し、燃焼の開始及び発展を助ける。第2予備イオン化領域4-2、及び固定電極3の1グループの閉ループ放電リング3-1-Nの放電面3-2-N(又は1つの閉ループ放電リング3-1の放電面3-2)と対向するスキッシュ流ガイド突起2-1-1、ガイドリッジ2-2-Nとの間の非イオン化領域は、いずれも強い電磁エネルギー場の作用にあり、着火の火炎のイオンの移動速度を加速し、中性粒子を駆動して運動に参加させ、新しい乱流を形成し、燃焼の開始及び発展により有益である。この時、第2予備イオン化領域4-2内の気圧値は非常に高く(例えば、MPaレベルに達する)、第2予備イオン化領域4-2の間隔d値は非常に狭く(例えば、μsレベルである)、気圧と間隔の積(pd)(即ち、絶縁破壊電圧V
s)は基本的に安定し、イオン化に必要なエネルギーは増加するが、絶縁破壊電圧V
sは変化しない。本開示に設定されるイオン化ギャップ値は、10MPaレベルの範囲で高圧均質ガスを確実にイオン化することを確保することができ、新型エンジンの設計ニーズを満たすことができる。
【0095】
励起段階では、均一燃焼を実現する。マルチリング・マルチセグメント・大体積のプラズマ雲(プラズマ)の各セグメントは、各セグメントの周辺に光エネルギー、射線エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー等を放射する。可動電極1の1グループのオープン放電リング1-1-Nの放電面1-2-N(又は1つのオープン放電リング1-1の放電面1-2)が上死点後(BTDC)の位置に運動し、間隔可変放電領域4が第3予備イオン化領域4-3である場合、放電面1-2-Nと放電面3-2-Nとの間のプラズマ雲は、燃焼室メインキャビティ2-1及び燃焼室サブキャビティ2-2内の未燃焼の高圧均質ガス(燃焼室のほぼ全領域を占める)を包み、「自己着火温度+プラズマ雲励起」の二重作用下で燃焼の開始及び発展を励起させる。ピストン放電構造と分散型マルチキャビティ構造燃焼室2とのマッチングにより、励起(放射)作用の距離はどこでもほぼ等しくなり、従って、良好な多発的で均一な着火のため、燃焼の均一性は点火式の均質燃焼、圧縮点火式の拡散燃焼よりも明らかに優れ、基本的に均一燃焼を実現する。分散型マルチキャビティ構造燃焼室2のガイド突起2-1-1、ガイドリッジ2-2-Nは、強いスキッシュ乱流及びクロスフローを形成し、分散型マルチキャビティ構造燃焼室2の複雑な「ラビリンス型」キャビティ壁はガス分子の衝撃、回転の頻度を増加し、キャビティ電磁エネルギー場の作用下でイオンが加速して中性粒子を運動駆動して形成する乱流は、さらに非定常ガス媒体場に混合し、気圧、温度、分子密度、酸素濃度等の動的変化の悪影響を打ち消し、高エネルギー密度(サブ)渦の形成の邪魔となり、燃焼を促進するとともに爆燃のリスクを効果的に回避する。
【0096】
強化段階では、事前制御及び全領域制御に基づき、さらに全過程制御を完了し、それにより、燃焼効率、バーンアウト率及び有効仕事を大幅に向上させる。エンジンの燃焼開始後に、「点火又は圧縮点火後のことを放任する」ことではなく、燃焼発展の中期、末期に、適当な放電エネルギーを印加し続け、電磁エネルギー場の作用を維持し、燃焼火炎のイオン化度を補強し、イオンが加速して中性粒子を駆動して新しい乱流を形成させる過程を継続し、未燃焼の均質ガスの分子密度、酸素濃度等の分布を均一化し、燃焼を強化し、燃焼効率、バーンアウト率を最大限に向上させ、有効仕事を強化する。ピストン13が所定の上死点後(ATDC)の位置を離れ、又は仕事ストローク開始後の所定の時刻に、放電エネルギーを除去し(即ち、給電導入端子17に電気エネルギーを提供しなくなる)、一回の完全な「雲」励起過程を終了し、後続のストロークが継続し、このように繰り返す。
【0097】
本開示の実施例に係るプラズマ雲励起均質均一燃焼型エンジン用のピストン放電機構は、可変放電間隔、マルチリング・マルチセグメント構造放電領域、分散型マルチキャビティ構造の「ラビリンス型」燃焼室等の構造上の特徴を有する。該ピストン放電機構は、全領域全過程を正確に制御する燃焼制御モードを採用し、予備イオン化、イオン化、雲励起、強化燃焼の4つのステップを実行し、燃焼室の全領域、一回の間欠(パルス)式燃焼の全過程を精細に制御し、RF放電を利用してプラズマ雲(プラズマ)の光、射線、電磁、熱エネルギー等の放射作用、即ち「雲励起」を発生させ、多発的で均一な着火及び均一燃焼を確実に実現し、燃焼効率、バーンアウト率、有効仕事を大幅に向上させ、全負荷の範囲で確実に作動でき、より高い省エネ排出標準を満たし、例えば、ガソリン、ディーゼル、燃料ガス(CNG、LNG、LPG等)、ジメチルエーテル(DME)、メタノール(CH3OH)等の複数の燃料に適用する。さらに、該ピストン放電機構は、構造がコンパクトで、コストが低く、工業的に実現されやすく、内燃機関の製造産業に幅広く使用でき、特に、新型のクリーンなメタノール燃料の均質燃焼の大規模な応用を促進する。
【0098】
なお、本開示の実施例に関する具体的な設計パラメータ、例えば放電リングの幅等については、簡略化のため公差を示していないが、すべての設計パラメータは、その値の、例えば±15%、また例えば±25%の範囲内で変動できる。
【0099】
なお、
(1)本開示の実施例の図面は、本開示の実施例に関する構造のみに関し、他の構造は通常の設計を参照すればよい。
(2)矛盾のない場合、本開示の実施例及び実施例の特徴を互いに組み合わせて新しい実施例を得ることができる。
【0100】
以上は本開示の具体的な実施形態に過ぎず、本開示の保護範囲を制限するものではない。当業者が本開示に開示された技術的範囲内で容易に想到し得る変更や置換は、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。従って、本開示の保護範囲は、請求項の保護範囲に準じるべきである。