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特許7553961バッテリーパック、バッテリーアセンブリ、バッテリーパックの形成方法、バッテリーアセンブリの形成方法、及び、バッテリーパック用エンドプレート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】バッテリーパック、バッテリーアセンブリ、バッテリーパックの形成方法、バッテリーアセンブリの形成方法、及び、バッテリーパック用エンドプレート
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/507 20210101AFI20240911BHJP
   H01M 50/526 20210101ALI20240911BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240911BHJP
   H01M 50/514 20210101ALI20240911BHJP
   H01M 50/524 20210101ALI20240911BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20240911BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240911BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240911BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240911BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240911BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240911BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/526
H01M50/204 401H
H01M50/514
H01M50/524
H01M50/522
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6551
H01M10/6556
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021540846
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 AU2020050018
(87)【国際公開番号】W WO2020154759
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】2019900253
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521309499
【氏名又は名称】ナラバンダ テクノロジー ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NARRABUNDAH TECHNOLOGY HOLDINGS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】7 Dalrymple Street Narrabundah, ACT, 2604 (AU)
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロー ケン ヨン
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0162839(US,A1)
【文献】特開2013-025952(JP,A)
【文献】特開2011-253641(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156001(WO,A1)
【文献】特表2017-521846(JP,A)
【文献】特開2006-216471(JP,A)
【文献】特開平09-007564(JP,A)
【文献】特開2015-088493(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107452906(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01M 10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の離間したエンドプレート、その間に介在する複数のセル、および、複数のセルリンクを備えるバッテリーパックであって、
各エンドプレートは
第1および第2の表面を有するプレート状に構成された第1の部品であって
離間した関係で形成されて配列されたセル収容切抜部、および
前記セル収容切抜部間に設けられて配列された流体流通開口部
を備える第1の部品と、
前記第1の部品の前記第1の表面に重畳され、積層構成とされ、導電性材料製のバスプレートであって、
離間した関係で形成され、かつ、前記第1の部品の前記セル収容切抜部と位置合わせされて配列されたセル接続孔、および
前記第1の部品の前記流体流通開口部と位置合わせされて形成されて配列された流体流通オリフィス
を備えるバスプレートと
を備え、
各セルは、第1の端部および第2の端部を備え、前記第1の端部は、一方の前記エンドプレートのセル収容切抜部に動作可能に係合され、および、前記第2の端部は、他方の前記エンドプレートのセル収容切抜部に動作可能に係合され;
各セルリンクは、前記セルの各々のそれぞれの末端部分の電極を、そのそれぞれのエンドプレートのバスプレートと導通接続し;ならびに
各セル収容切抜部は、各セルの周縁のみが各エンドプレートの各セル収容切抜部に係合することで前記セルを前記エンドプレートに保持するような形状とされている、
バッテリーパック。
【請求項2】
各セル収容切抜部は、使用状態で、前記第1の部品の前記第2の表面を介して収容されたセルの進入が制限されるような形状であって、前記各セルの末端部分の各々が、前記第1の部品の前記第1の表面から離間するような形状とされている、請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項3】
前記セル収容切抜部の側壁の少なくとも一部分が、
肩部、
リップ部、
段部、および
傾斜部
のいずれか一つまたは組み合わせを備える、請求項1または2に記載のバッテリーパック。
【請求項4】
前記第1の部品は背中合わせに位置された一対の絶縁性パネルを備え、第1の絶縁性パネルにおいて、各セル収容切抜部は、セルの末端部分がその中に嵌合可能であるような寸法とされ、および、第2の絶縁性パネルにおいて、各セル収容切抜部は、前記セルの前記末端部分のそれぞれによるその中への嵌合が妨げられて、前記セルの前記末端部分の周縁と当たるような寸法とされる、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリーパック。
【請求項5】
前記セル収容切抜部は、その中へのセルの挿入に適応したセルを受容する形状であって、特にこれらに限定されないが、断面が、円形、正方形、矩形またはいずれかの他のものなどの形状である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリーパック。
【請求項6】
各流体流通オリフィスおよび各流体流通開口部は一緒になって流体流通路の一部を形成するように位置合わせされた形状である、請求項1~5のいずれか一項に記載のバッテリーパック。
【請求項7】
前記第1の部品は少なくとも部分的に、特にこれらに限定されないが、ポリカーボネート、ガラス繊維強化ポリアラミド6/6、PTFE、PEEKなどの非導電性材料から形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のバッテリーパック。
【請求項8】
前記第1の部品は少なくとも部分的に60℃を超える温度に耐えることが可能な非導電性材料から形成される請求項7に記載のバッテリーパック。
【請求項9】
前記第1の部品は少なくとも部分的に難燃性の非導電性材料から形成される請求項7または8に記載のバッテリーパック。
【請求項10】
前記バスプレートは、銅、アルミニウム、ニッケル等などの金属のいずれか一つもしくは組み合わせを含む導電性材料または超伝導性材料から形成され、または、特にこれらに限定されないが、グラフェン、導電性ポリマーもしくはセラミック材料などの非金属導電性材料から形成される、請求項1~のいずれか一項に記載のバッテリーパック。
【請求項11】
直列および/または並列で接続された、請求項1~10のいずれか一項に記載のバッテリーパックを複数備える、バッテリーアセンブリ。
【請求項12】
隣接して位置されたバッテリーパックのバスプレートを接続するリンクプレートを備える、請求項11に記載のバッテリーアセンブリ。
【請求項13】
一対のエンドプレート間に複数のバッテリーセルを介在させるステップを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のバッテリーパックの形成方法。
【請求項14】
セルリンクを取り付けて各セルを各エンドプレートのバスプレートと接続するステップをさらに含む、請求項13に記載のバッテリーパックの形成方法。
【請求項15】
2つ以上のバッテリーパックをリンクコンポーネントを用いて接続するステップを含む、請求項13または14に記載のバッテリーアセンブリの形成方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか一項に記載のバッテリーパックに用いられるエンドプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパック、特に可搬式軽量バッテリーパックに関する。
【0002】
特に、本発明は、バッテリーセルを機械的に強固に収容し、ならびに、熱設計および良好な電気性能に最適化されている特別に設計されたエンドプレートの構成に関する。本発明はまた、バッテリーパックアセンブリ、システム、ならびに、エンドプレート、バッテリーパックおよび/またはバッテリーアセンブリの形成方法に関する。
【0003】
本発明は、特にこれらに限定されないが、電気自動車およびその道路での使用における補助、キャンプ、鉱業および数多くの産業用途等における使用などの、小型で軽量、および/または、可搬式のエネルギー供給装置を使用することが望ましい広く多様な用途において有用である。
【背景技術】
【0004】
本明細書における公知の従来技術への参照はいずれも、反する指摘がなされていない限り、本出願の日において、このような従来技術が、本発明が関連する分野における当業者によって一般的に知られていると認めるものではない。
【0005】
特に可搬式用途のバッテリーパックでは、導電性、温度制御、機械的強度、重量およびエネルギー体積密度を含む、時に相反する一連の性能要件が求められる。
【0006】
温度制御に係るソリューションのための種々の試みがなされているが、しかしながら、多くにおいては可搬式用途のためには重量が過大となっていた。例えば、いくつかにおいては、密閉された流体路を流れる液体が用いられている。これらにおいてはセルからの熱エネルギーの効率的で高いスループットが強制的な対流によって実現されているが、これらは、機能するために追加のタンク、圧送構成要素、および、液体から熱を放散させるための構造(ラジエータ)を必要とする。液体自体の重量、および、これらの追加の構成要素の重量によって、システムの総重量が大幅に増加してしまう。液体の大きい熱容量によって、顕著な加熱を伴うことなく突発的な熱エネルギーが効果的に吸収可能であるために、液体のクーラントの使用は、過渡的負荷が高い電気自動車または他のデバイスにおける使用について、顕著な利点を有している。しかしながら、この利点はバッテリーパックが連続的な負荷下にある場合にはその恩恵を得られない。この場合、液体の熱容量は飽和し、熱性能は、液体から熱を放散させるために用いられる構成要素(ラジエータ)によって限定される。それ故、液体クーラント系のシステムによる費用対効果は限定的である。
【0007】
時々、周囲の環境への直接的な熱の放散は、固体構造を用いて、または、代わりに、セルとは別の構造であって環境への熱の放散に最適化されたものに熱を逃す、セルに取り付けられる「ヒートパイプ」を用いて行われている。同様に、いくつかの設計では、熱の放散を向上するためにセルまたはバッテリーパックの構造に直接組み込まれた構造が用いられる。
【0008】
最大のエネルギー-体積密度および最低の重量を追求する種々の試みがなされており、ここで、バッテリーは、冷却構造またはバッテリーセル間の空間をまったく伴うことなく単純にパッキングしたセルである。これはエネルギー-体積密度が最大化されるが、バッテリーパックの熱性能が著しく限定されてしまう。
【0009】
セルを機械的に接続すると共にセル間の相対位置を維持するために、セルの逆側の端部でセルが配設された2つのプレート状構造体からなるフレーム構造といった種々の他の試みがなされており、これは、米国特許第5578392号明細書および米国特許第7189473号明細書に記載されている。これらのシステムは共に、これらのフレーム構造中に追加の孔を備えており、熱制御のためにセル間の空間およびバッテリーパックを通る流体の流れを実現しているが、しかしながら、これらの設計は最適ではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来技術の少なくともいくつかの欠点を克服しようとするものである。
【0011】
本発明はまた、従来技術に係るバッテリーパックおよびエンドプレートの設計を超える差異および利点を有する、バッテリーパック、特にそのためのエンドプレートを提供しようとするものである。
【0012】
本発明はまた、軽量であり、従って、特にこれらに限定されないが、電気自動車における使用などの可搬式用途に適切であるバッテリーパック、特にそのためのエンドプレートを提供しようとするものである。
【0013】
本発明はまた、効率的な熱的特徴、および、他の操作的特徴を有するバッテリーパック、特にそのためのエンドプレートを提供しようとするものである。
【0014】
本発明は、セルの端部に取り付けられた、特別に設計されたエンド-プレート-フレームによって、電気的および機械的に接続された2つ以上の電気エネルギーセルを備えるバッテリーパックを提供しようとするものである。エンド-プレート-フレームは、バッテリーパックによる導電性要求、温度制御および重量間においてバランスが最適化されるよう設計される。同時に、機械的強度およびセル換気に係る要求が満たされる。最低限の重量コストによる温度制御は、バッテリーパックと熱制御に用いられる流体との間における熱の効率的な移動、および、バッテリーパック中における流体の効率的な流れを一緒になって実現する、エネルギーセルの本体間の空間と、エンド-フレーム-プレートに形成された複数の孔とによって形成された相互に接続された流体通路によって達成される。エンド-フレーム-プレートへ電気的接続用コンポーネントを組み込む設計は、流体通路システムの孔およびセルからの換気をするための孔の周囲における導電性を最大化させる。設計の機械的コンポーネントは、重量を最低限としつつ上記を実現する。
【0015】
幅広い一形態において、本発明は、バッテリーパック用のエンドプレートであって、
第1および第2の表面を有する実質的にプレート状に構成された第1の部品であって
離間した関係で形成されて配列されたセル収容切抜部、および
前記セル収容切抜部間に設けられて配列された流体流通開口部
を備える第1の部品と、
前記第1の部品の前記第1の表面に実質的に重畳され、実質的に積層構成とされ、導電性材料製のバスプレートであって、
離間した関係で形成され、かつ、前記第1の部品の前記セル収容切抜部と実質的に位置合わせされて配列されたセル接続孔;および
前記第1の部品の前記流体流通開口部と実質的に位置合わせされて形成されて配列された流体流通オリフィス
を備えるバスプレートと
を備えるエンドプレートを提供する。
【0016】
好ましくは、各セル収容切抜部は、使用状態で、前記第1の部品の第2の表面を介して収容されたセルの進入が制限されるような形状とされている。
【0017】
さらに好ましくは、セル収容切抜部の側壁の少なくとも一部分は、
肩部、
リップ部、
段部、および
傾斜部
のいずれか一つまたは組み合わせを備える。
【0018】
好ましくは、セル収容切抜部は、その中への挿入に適応したセルの形状であって、特にこれらに限定されないが、断面が、円形、正方形、矩形またはいずれかの他のものなどの形状に対して、実質的に適合する形状のものである。
【0019】
さらに好ましくは、各流体流通開口部および各流体流通オリフィスは、一緒になって流体流通路の一部を形成する実質的に類似の形状のものである。
【0020】
さらに好ましくは、前記第1の部品は、特にこれらに限定されないが、ポリカーボネート、ガラス繊維強化ポリアラミド6/6、PTFE、PEEK等などの、好ましくは60℃を超える温度に耐えることが可能であり、且つ、引火性が低い非導電性材料から少なくとも部分的に形成されている。
【0021】
さらに好ましくは、各流体流通開口部および各流体流通オリフィスは、一緒になって流体流通路の一部を形成する実質的に類似の形状のものである。
【0022】
さらに好ましくは、前記バスプレートは、特にこれらに限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル等などの金属などの高導電性材料、または、特にこれらに限定されないが、グラフェン、導電性ポリマーもしくはセラミック材料などの非金属製コンダクタのいずれか一種または組み合わせから形成される。
【0023】
さらなる幅広い形態において、本発明は、一対の離間したエンドプレート、その間に介在する複数のセル、および、複数のセルリンクを備えるバッテリーパックであって、
各エンドプレートは
第1および第2の表面を有する実質的にプレート状に構成された第1の部品であって、
離間した関係で形成されて配列されたセル収容切抜部、および
前記セル収容切抜部間に設けられて配列された流体流通開口部
を備える第1の部品と、
前記第1の部品の前記第1の表面に実質的に重畳され、実質的に積層構成とされ、導電性材料製のバスプレートであって、
離間した関係で形成され、かつ、前記第1の部品の前記セル収容切抜部と実質的に位置合わせされて配列されたセル接続孔;および
前記第1の部品の前記流体流通開口部と実質的に位置合わせされて形成されて配列された流体流通オリフィス
を備えるバスプレートと
を備え、
各セルは、第1の端部および第2の端部を備え、第1の端部は、一方の前記エンドプレートのセル収容切抜部に動作可能に係合され、および、第2の端部は、他方の前記エンドプレートのセル収容切抜部に動作可能に係合され;ならびに
各セルリンクは、前記セルの各々のそれぞれの末端部分の電極を、そのそれぞれのエンドプレートのバスプレートと導通接続する、バッテリーパックを提供する。
【0024】
好ましくは、各セル収容切抜部は、使用状態で、前記第1の部品の第2の表面を介して収容されたセルの進入が制限されるような形状であって、バッテリーの末端部分の各々が、前記第1の部品の第1の表面から離間するような形状とされている。
【0025】
さらに好ましくは、セル収容切抜部の側壁の少なくとも一部分は、
肩部、
リップ部、
段部、および
傾斜部
のいずれか一つまたは組み合わせを備える。
【0026】
好ましくは、前記第1の部品は背中合わせに位置された一対の絶縁性パネルを備え、ここで、第1の絶縁性パネルにおいて、各セル収容切抜部は、セルの末端部分がその中に嵌合可能であるような寸法とされ、および、第2の絶縁性パネルにおいて、各セル収容切抜部は、セルの末端部分のそれぞれによるその中への嵌合が妨げられて、セルの端部の周縁と当たるような寸法とされる。
【0027】
さらに好ましくは、セル収容切抜部は、その中への挿入に適応したセルの形状であって、特にこれらに限定されないが、断面が、円形、正方形、矩形またはいずれかの他のものなどの形状に対して、実質的に適合する形状のものである。
【0028】
好ましくは、各流体流通オリフィスおよび各流体流通開口部は、実質的に類似の形状のものであって、且つ、実質的に位置合わせされており、一緒になって流体流通路の一部を形成する。
【0029】
好ましくは、前記第1の部品は少なくとも部分的に、特にこれらに限定されないが、ポリカーボネート、ガラス繊維強化ポリアラミド6/6、PTFE、PEEK等などの、好ましくは60℃を超える温度に耐えることが可能であり、且つ、引火性が低い非導電性材料から形成されている。
【0030】
好ましくは、前記バスプレートは、特にこれらに限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル等などの金属などの高導電性材料、または、特にこれらに限定されないが、グラフェン、導電性ポリマーもしくはセラミック材料などの非金属製コンダクタのいずれか一種または組み合わせから形成される。
【0031】
さらなる幅広い形態において、本発明は、直列および/または並列で接続された本明細書中上記に記載されている複数のバッテリーパックを備えるバッテリーアセンブリを提供する。
【0032】
好ましくは、バッテリーアセンブリは、隣接して位置されたバッテリーパックのバスプレートを接続するリンクプレートを備える。
【0033】
さらなる幅広い形態において、本発明は、一対のエンドプレート間に複数のバッテリーセルを介在させるステップを含む、バッテリーパックの形成方法を提供する。
【0034】
好ましくは、この方法は、セルリンクを取り付けて各セルを各エンドプレートのバスプレートと接続するステップをさらに含む、バッテリーパックを形成する方法を含む。
【0035】
さらなる幅広い形態において、本発明は、2つ以上のバッテリーパックをリンクコンポーネントを用いて接続するステップを含む、バッテリーアセンブリの形成方法を提供する。
【0036】
本発明は、添付の面に関連して記載されている、好ましいが非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明に係るバッテリーパックの好ましい実施形態の斜視図を示す。
図2図2は、図1の実施形態の分解組立図を示す。
図3図3は、本発明の代替的な好ましい実施形態の分解組立図を示す。
図4図4は、バッテリーパックのエンドプレートコンポーネントの好ましい実施形態の斜視図を示す。
図5図5は、図4に示されているエンドプレートコンポーネントの切欠図を示す。
図6図6は、図1に示されているバッテリーパックの切欠図を示す。
図7図7は、セル切抜部の好ましい配列および流体流通開口部/オリフィスパターンの平面図を示す。
図8図8は、図7の孔の配列をどのように定義し得るかを示す。
図9図9は、孔の配列の比較分析を示す。
図10図10は、代替的な三角形の孔の配列を示す。
図11図11は、代替的な六角形の孔の配列を示す。
図12図12は、バッテリーパックのセルリンクコンポーネントの好ましい実施形態の斜視図を示す。
図13図13は、セルリンクを含むバッテリーパックの上面図を示す。
図14(a)】図14(a)は、バスプレートをセルと接続するセルリンクを示す断面透視図を示す。
図14(b)】図14(b)は、バスプレートをセルと接続するセルリンクを示す断面透視図を示す。
図15図15は、セルリンク配列の代替的な実施形態を示す。
図16図16は、マルチバッテリーパックのアセンブリを示す。
図17図17は、導電性結合プレートにより接続された一対のバッテリーパックを示す。
図18図18は、バスプレートへの接続に用いられたアイ/リングクリンプ配列を示す。
図19図19は、図17の一対のバッテリーパックの端部斜視図を示し、バッテリーパックの装着に用いられるねじ込みインサートが示されている。
図20図20は、分割バスプレートを備える本発明の変形例の斜視図を示す。
図21図21は、図20の実施形態の分解組立図を示す。
図22図22は、代替的な矩形セルの配列を示す。
図23(a)】図23(a)は、図22の孔の配列の詳細を示す。
図23(b)】図23(b)は、図22の孔の配列の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面全体を通して、別段の記載がない限り、同様の機構を識別するために同様の符号が用いられる。
【0039】
図1~3に示されているとおり、本発明のバッテリーパック1は、一対の離間したエンドプレート2および3と、複数の電気エネルギーセル4(本明細書においては、単にセル4として称される)と、これらの間に介在する複数のセルリンク5とを備える。
【0040】
エンドプレート2の各々は、第1の部品6およびバスプレート11を備えて構成されることが好ましい。
【0041】
第1の部品6の各々は、少なくとも部分的に非導電性または絶縁性材料から形成されていてもよく、説明を容易とするために、第1の表面7および第2の表面8を備えると定義されてもよい。各エンドプレート2の各第1の部品6は、好ましくは、離間した関係で形成されて配列されたセル収容切抜部9、および、セル収容切抜部9間に設けられて配列された流体流通開口部10を備える。
【0042】
好ましくは実質的に積層構成とされ、および、導電性材料製のバスプレート11は、実質的に前記第1の部品6の第1の表面7に重畳される。
【0043】
好ましくは、バスプレート11は、前記第1の部品6の前記セル収容切抜部9と実質的に位置合わせされた、離間した関係で形成されて配列されたセル接続孔12を備える。好ましくは、バスプレート11はまた、前記絶縁性の第1の部品6の前記流体流通開口部10と実質的に位置合わせされて形成されて配列された流体流通オリフィス13を備え、ここで、オリフィス13および開口部10はそれぞれ一緒になって流体流通路21の一端を画定する。
【0044】
図6に示すとおり、各流体流通路21は上方および下方のエンドプレート2の間において、セル4間の空隙に延在する。流体流通路21は、流体がセル4を流過することを許容して、セル4の熱制御を補助する。
【0045】
エンドプレート2は、セル4が相互に離間するようセル4を機械的に支持するよう位置され、これにより、セルの最適化された熱制御をもたらし、従って、バッテリーパック1の最適化された性能をもたらす。
【0046】
各セル4は、説明を容易とするために、第1の端部14および第2の端部15を備えると定義し得る。好ましくは、セルの第1の端部14は一方の前記エンドプレート6のセル収容切抜部9に動作可能に係合し、および、好ましくは、セルの第2の端部15は、他方の前記エンドプレート6のセル収容切抜部9に動作可能に係合する。
【0047】
図12に詳細に記載されているセルリンク5の各々は、好ましくは、前記セル4の各々端部14または15のそれぞれにおける電極29を、各エンドプレート2のバスプレート11に導通接続する。これは図13、14(a)および14(b)に示されている。
【0048】
図4および5に示されているとおり、各セル収容切抜部9は、使用状態で、前記第1の部品6の第2の表面を介して収容されたセル4の進入が制限され、従って、バッテリー4の末端部分14または15の各々が、前記第1の部品6の第1の表面7から離間するような形状とされていることが好ましい。
【0049】
好ましくは、セル収容切抜部9の側壁の少なくとも一部分は、肩部16、段部、傾斜部、リップ部等のいずれか一つまたは組み合わせを備える。これによりセル4の進入が制限されると共に、セル4を第1の部品6の第1の表面7から離間されたままとされ、従って、バスプレート11から分離されたままとされる。このセル4のセル収容切抜部9への圧入または締りばめにより、本発明の一実施形態において、バッテリーパック1の迅速で容易な組立が促進され得る。他の実施形態において、接着剤を用いてセル4をエンドプレート2に接着することが望ましい場合がある。
【0050】
図3の実施形態において示されているとおり、第1の部品6は、一形態において、別個に形成されており、次いで、背中合わせに位置されている一対のパネル17および18とされていてもよい。すなわち、第1のパネル17において、各セル収容切抜部9は、セル4の末端部分14がその中に嵌合可能であるような寸法とされ、および、第2のパネル18において、各セル収容切抜部9は、セル4の末端部分14のそれぞれによるその中への嵌合が妨げられ、むしろ、セル4の端部の周縁と当たるような寸法とされる。
【0051】
第1の部品6は、全体が、または、部分的にのみ非導電性または絶縁性材料から形成されていてもよい。第1の部品6の重要な一態様は、バスプレート11に隣接して導電性ではないことであり、すなわち、本コンポーネント全体について電気の伝導を妨げる非導電性バリアを備えている。第1の部品6の残りの部分は従って、電気的に伝導性であり得る材料で形成され得、または、半導電性材料で形成され得る。
【0052】
セル収容切抜部9は、例えば、セル4の各々を切抜部9に押し込むことでそのまま保持されるよう、形状を適合させてセル4を適切に嵌合させるいずれかの所望の形状であり得る。図6の実施形態は円形のセル4に適合する断面円形のセル収容切抜部9を示すが、セル/切抜部は、正方形、矩形またはいずれかの他の適合する断面形状のものであり得る。
【0053】
また、好ましい形態において、各流体流通開口部10および各流体流通オリフィス13は、実質的に類似の形状のものであって、且つ、これらは、相互に実質的に位置合わせされて、エンドプレート2の各々を介して流体流通路21の一部を画定する。
【0054】
好ましくは、バッテリーパック1は、第1の部品6が、好ましくは60℃を超える温度に耐えることが可能であり、且つ、引火性が低い非導電性材料から少なくとも部分的に形成されることによって、実現される。例としては、これらに限定されないが、ポリカーボネート、ガラス繊維強化ポリアラミド6/6、PTFE、PEEK等が挙げられ得る。
【0055】
第1の部品6は、全体が非導電性材料から形成されていることが可能であり、または、代替的には、特にこれらに限定されないが、非導電性の薄いプラスチックシートが積層されたシート金属などの、本コンポーネントについて全体として電気の伝導を妨げるために用いられる非導電性バリアを有する導電性材料を用いて、形成可能である。
【0056】
好ましくは、バスプレート11は、特にこれらに限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル等などの金属などの高導電性材料、または、特にこれらに限定されないが、グラフェン、導電性ポリマーもしくはセラミック材料などの非金属製コンダクタのいずれか一種または組み合わせから形成される。
【0057】
液体または気体を含むいずれかの流体を熱制御に使用し得るが、本発明は、好ましくは、空気を「流体」として用いる。これにより、バッテリーパックの重量が最低限とされる。
【0058】
使用状態で、複数のバッテリーパック1は、直列および/または並列で接続されて、図16および17に示されているバッテリーアセンブリ20を形成し得る。これは、隣接して位置されたバッテリーパック1のバスプレート11をリンクプレート19を用いて接続することでなされ得る。
【0059】
図20および21はそれぞれ、バッテリーパック1の片側におけるバスプレート11が電気的に分離された2つの区画11aおよび11bに分割されており、および、2つのサブセットの電圧が加算されるよう2つのサブセット4aおよび4bに配列されたセル4を有する、本発明の他の好ましい実施形態のバッテリーパック1の斜視図および分解組立図を示す。この実施形態において、セル4aおよび4bは、より高い出力電圧が達成されるよう事実上直列に接続されている。
【0060】
本発明はバッテリーパックに関するものとして本明細書中上記に記載されているが、本発明はまた、特にバッテリーパック1のエンドプレート2を含むバッテリーパックの個々のコンポーネントに関することが認識されるであろう。本発明の個々のコンポーネントは、以下により詳細に説明する。
【0061】
電気エネルギーセル
バッテリーパック1は、電気的に、および、機械的に接続された複数の電気エネルギーセル4から構成される。これらの電気エネルギーセル4は、電気エネルギーを出力可能な独立型のユニットであり、これらに限定されないが、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、ニッケル金属電池または鉛酸電池、フロー電池などの電気化学電池、および、プロトン交換メンブラン燃料電池などの燃料電池であり得る。フロー電池および燃料電池の場合には、換気機能は代わりに、反応化学物質の投入および反応生成物の排出に利用される。
【0062】
好ましい実施形態は円筒形セル4を用いて示されているが、本発明はまた、矩形または他の角柱形状のセルを用いて実装可能である。セルの機械的構造を利用する設計のために、セル4は、好ましくは、機械的負荷に耐えることが可能である剛性の本体を有する。「ポーチ」セルを利用する実施形態は、バッテリーパック構造を維持するためのセルまたは外部フレームの補強を備えているであろう。
【0063】
エンド-プレート-フレーム
エネルギーセル4は、単にエンドプレート2とも称されるエンド-プレート-フレーム構造2によって、所定の位置に機械的に維持される。これらは、セル4が嵌合すると共に保持される複数の孔を有するプレート状構造2から構成される。セル4は、前記一対のエンド-プレート-フレーム2の間に挟持される。孔9の端部の外面の表面7における孔9の縁部周囲のリップ部16が、孔9の中へのセル4の侵入を制限し、および、セル4の端部と、エンド-プレート-フレーム2の外面に組み込まれているバスプレート11との間に間隙を形成する。セル4を配置すると共に機械的に固定する孔9は、設置されるセル4が互いに接触することなく、且つ、セル4間の隙間の空隙が相互に連結されるよう、相互の間に間隙を形成して配置され、位置される。
【0064】
エンド-プレート-フレーム2は、作動中に生じる60℃を超える温度に耐えることも可能であり、且つ、低い引火性を有する非導電性材料(例えばポリカーボネート、ガラス繊維強化ポリアラミド6/6、PTFE、PEEK)から少なくとも部分的に形成されることが好ましい第1の部品6を備える。エンド-プレート-フレーム2の第1の部品6は、全体が非導電性材料から形成されていることが可能であり、または、代替的には、特にこれらに限定されないが、非導電性の薄いプラスチックシートが積層された既製のシート金属などの、本コンポーネントについて全体として電気の伝導を妨げるために用いられる非導電性バリアを有する導電性材料を用いて、形成可能である。
【0065】
エンド-プレート-フレーム2はまたバスプレート11を備える。バスプレート11は、好ましくは実質的に積層構成のものであり、かつ、導電性材料製のものであり、実質的に前記第1の部品6の第1の表面7に重ねられる。
【0066】
セル4は、接着剤によってエンド-フレーム-プレート2に機械的に接着されるか、または、エンド-フレーム-プレート2に圧入もしくは締りばめされて、外部フレーム構造を用いてエンド-フレーム-プレート2が保持され、セル4はその間に挟持されている。
【0067】
エンド-フレーム-プレート2は、セル4の陽極または陰極に取り付けられているものとして、エンド-フレーム-プレート2の識別を助けるために着色されてもよい。
【0068】
隙間熱制御流体流通路および孔
エンドプレート2上のセル切抜部9間の隙間空隙中には、流体流通路21の端部を形成する流体流通孔24が存在している。各通路21は、一緒になって流体流通孔24を形成する、整列された流体流通開口部10およびエンドプレートの流体流通オリフィス13と、セル4に隣接するエンドプレート間の空間と、によって形成される。流体流通路21により、セル4間の隙間空隙を通る流体の流れが許容される。流体流通路21により熱制御(主に冷却であるが、加熱にも使用可能である)が可能となる。すなわち、流体流通路21によって、セル4の軸方向に沿った熱制御流体の流れが許容される。
【0069】
図7、8、9、10および11に示されているとおり、流体流通開口部10および流体流通オリフィス13により構成される流体流通孔24の形状は、隣接する仮想オフセット形状30の周縁が重なるようなオフセットでセル切抜部9の周縁に沿う仮想の「オフセット形状」30によって形成され得る。流体流通孔は、重畳する仮想オフセット形状30間の中央の隙間領域によって形成される。
【0070】
図7および8に示されているものなどの正方形充填配列で配列された円形のセル切抜部9の場合、これは、凹状に湾曲した辺を有するほぼ菱形の形状となる。流体流通孔24の角は、エンドプレート2のひび割れをもたらす可能性がある応力集中を防止するために「丸められて」いてもよい。流体流通孔24の幾何学的形状を定義するこの方法では、セル切抜部9の周囲における材料の一定の厚さを維持しながら可能な限り最大の表面積を有する孔が形成され、これにより、軽量化し、且つ、流体流れの効率を最大限としながら機械的完全性が保持される。
【0071】
バスプレート
バスプレート11はエンドプレート2に組み込まれる。このバスプレート11は、複数のセルから電流を集めることにより、セル4を電気的に接続するために用いられる導電性材料から形成される。バスプレート11は、特にこれらに限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル等などの金属などの高導電性材料、または、特にこれらに限定されないが、グラフェン、導電性ポリマーもしくはセラミック材料などの非金属製コンダクタのいずれか一種または組み合わせから形成される。
【0072】
オリフィス13は、共に流体流通孔24を形成する下層の絶縁性のエンド-フレーム-プレートコンポーネントの流体流通開口部10と合致するよう、バスプレート11に設けられている。セル装着孔9の上方に位置する孔または切抜部12は、典型的には、下層のセル切抜部9と異なる大きさである。バスプレート11はセル4に直接接続されていない。代わりに、セル切抜部9の上方に位置する切抜部12は、バスプレート11と、バスプレート11の表面に対してオフセットしている平面上のセル4の電極とを接続するセルリンク5に対する位置合わせを提供する。このオフセットおよびリンク孔12は、セル4から換気される気体の経路を維持するために重要である。気体を換気するための経路を形成することなく、バスプレート11をセル4に直接接続した場合、これは、気体が閉じ込められてしまうことによる安全上の問題を生じさせる可能性がある。この経路はまた、燃料電池およびフロー電池といったいくつかの種類のエネルギーセルで消費および生成される化学物質の供給および除去に使用可能である。セルリンク5を設置するための十分なアクセスを許容すると共に、セル4の換気を許容しつつ、バスプレート11の表面積を最大限とし、それ故、導電性を最大限とするために、セルリンク孔12の大きさは最低限とされることが好ましい。
【0073】
バスプレート11は、オーバーモールディングまたは接着剤によってエンド-プレート-フレーム2に組み込まれることが可能である。セル4からの気体を換気するための経路を許容するために、セル切抜部9の直上のバスプレート11を支持するエンド-フレーム-プレート材料は存在しない。バスプレート11下の他の領域においては、バスプレート11下にエンド-プレート-フレームが存在していることで、バスプレート11の構造的完全性の維持が補助される。
【0074】
バスプレート11の熱性能は、バスプレート11の表面から突出するか、または、隙間流体流通開口部10に侵入して、バスプレート11と熱制御流体流との熱結合をより良好とする「フィン」によりさらに向上が可能である。しかしながら、これには、複雑さ、重量および占有される空間の増大という欠点も伴う。
【0075】
セルリンク
好ましくは、本設計では、可溶性セルリンク5が設けられている。可溶性リンクは、バスプレート11との接続用のパッド25、セル電極29との接続用のパッド26、および、これらの2つの間の可溶性コンダクタ27を備えていてもよい。バスプレート接続パッド25は、ハンダ付けにより、または、抵抗溶接、レーザ溶接もしくは超音波溶接プロセスを用いる直接的な溶接により、バスプレート11に接続することが可能である。バスプレート接続パッド25は、応力集中を低減させ、および、バスプレート接続パッド25の周縁を長くし、これにより、バスプレート接続パッド25に沿った直線の縁部を用いる場合と比して、特にハンダ付けまたは抵抗溶接する際の接着効率を高めるよう蛇行する縁部を特徴としているが、これは必須ではない。バスプレート接続パッド25およびセル電極接続パッド26の平面は平行であり、その一方で、これらの間の可溶性コンダクタ27には、既述のとおり、気体を換気し、または、電気エネルギーセル4との間における化学物質の供給および除去のために、バスプレート接続パッド25およびセル電極接続パッド26の平面間にオフセットを形成するよう角度がつけられている。セル接続パッド26は、典型的な使用状態で想定される電流の流れの方向に対して平行な裂け目を示す。この裂け目は、任意選択により、セル接続パッド26のセル4電極への抵抗溶接を補助するよう含まれていてもよいが、レーザ溶接、超音波溶接またはパルスアーク溶接などの代替的な接着方法では必須とはされない。
【0076】
セルリンク5の可溶性コンダクタ区画27は、断面積が狭くなったコンダクタの区画からなる。この狭まった断面積は電流が集中する領域をもたらし、これは、短絡不良が生じた場合に、オーム加熱による可溶性コンダクタ区画の破壊を生じさせるに足りるものであり、これにより、接続したセルへの電気接続を切断すると共に、ヒューズの典型的な作用のように、接続したセルおよびバッテリーパックへの損傷を制限する。
【0077】
可溶性セルリンクはまた、ネジ式端子セルとの接続のための孔を有するセル接続パッドを備えたリンクを用いることで製造され得る。図15に示すとおり、シート材料ではなく可溶性ワイヤを用いて可溶性セルリンク5を実装することも可能である。
【0078】
安全性は犠牲になるが、「溶断」するよう設計されていない平坦なセルリンクを実施形態において実装することも可能である。最新の商品化されたリチウムイオンセル設計のほとんどが、短絡または他の不良事象下における安全性を確保するために、正の温度係数(PTC)コンポーネントおよび電流遮断デバイス(CID)などの内部デバイスを組み込んでいる。このような電気エネルギーセルを用いて本発明を実装する場合、可溶性セルリンクを用いることで安全性が冗長化される。
【0079】
本明細書においては接着されたリンク5を本発明の好ましい実施形態における使用について説明したが、セル4に強固に接着されていないセルリンクを使用可能であることが認識されるであろう。しかし、これは、偏りのあるセルリンク配列を用いて導電性が高い接触が維持されるよう設計可能であり、これにより、振動または衝撃を受ける条件下でも接触の維持が確保される。
【0080】
熱制御流体流の生起
温度を制御するためのバッテリーパック1を通る空気または他の流体(液体または気体を含む)などの流体の流れは、自然対流および強制対流の両方によって達成が可能である。流体流通路21内におけるセル4の高い流れ効率および大きい露出面積を得るためのバッテリーパック1の設計は、熱制御流体流が、自然対流によりバッテリーパック1中で自己生起型であることが可能であることを意味する。重力に対して垂直に整列された対向する面に流体流通孔24を有するようバッテリーパック1が配向されている場合に、自然対流はもっとも効率的に生じ、これにより、バッテリーパックを通る、垂直の自然対流により生起される流体流が促進される。異なる向きのバッテリーパック1でも自然対流は生じるが、効率は落ちてしまう。
【0081】
バッテリーパック1中に十分な熱制御流体流を生起させるために自然対流が不十分である場合には、強制対流を使用することが可能である。強制対流は、単にファンを近接して配置して、バッテリー中に流体の流れを引き起こすか、または、誘起させることにより実現可能である。強制対流はまた、バッテリーパック中に構成流体流を導くマニホルドシステムによっても実現可能である。
【0082】
バッテリーパックの電気的接続
図17および18に示されているとおり電流および電源を引き出すためのバッテリーパック1への電気接続は、従来のバスプレートまたはバスバーコネクタ28の取り付けを可能とするネジ孔を有するバスプレート11上の領域により行われる。
【0083】
バスプレート接続領域は、マルチバッテリーパック1を接続するための手段ともされる。一のバッテリーパック1の陽極バスプレートを、他のバッテリーパック1の陰極バスプレートに接続して、これら二つのバッテリーパックの電圧を加算することが可能である。あるいは、バッテリーパック1は陽極と陽極で接続して、2つのバッテリーパック1の電流容量を加算することが可能である。
【0084】
バッテリーパックの両側のエンドプレート2は、対向するプレートのバスプレート接続領域がバッテリーパック1の対向する角に位置されるよう配向される。上下の電極に係る対向する角におけるバスプレート接続領域の位置により、2つ以上のバッテリーパックの直列での効率的な接続が可能とされる。
【0085】
バッテリーパックの機械的接続
図19に示されているとおり、バッテリーパックがその中で用いられる筐体/システムに対するバッテリーパック1の機械的接続は、エンドプレートフレームに埋設されたねじ込みインサート22にねじ込むことで達成される。ねじ込みインサート22は、オーバーモールディングまたは接着剤によってエンドフレームプレート2中の孔に挿入される。図16に示されているとおり、次いで、バッテリーパック1を装着するためのフレーム構造23を、ねじ込みインサート22を介してエンド-フレーム-プレートにねじ込むことが可能である。
【0086】
代替的実施形態
より簡素な幾何学的形状を有する代替的な実施形態が図3に示されており、エンドプレート2の第1の部品6が、セルスペーサパネル17と、バスプレート孤立パネル18とに分割されて、シートの2D切断(例えばルーティング、ウォータージェット切断、レーザカット)による製造が可能とされている。
【0087】
代替的なセルパッキング配列
セルパッキング配列の代替的な構成が、図10、11、22および23に示されている。
【0088】
図10は三角形の配列を示し、および、図11は六角形の配列を示し、ここでは、円形のセル4が用いられ、一方で、図22および23は、矩形セル4を用いた代替的な配列を示す。
【0089】
図10に示されている三角形のセルパッキング実施形態は、バッテリーパックのセル密度を向上させるが、熱制御流体流効率を低減させる。隙間流体流通路21および孔24は、より小型でなければならない。バッテリーパック密度の向上のために、熱性能が犠牲となっている。
【0090】
図11に示されているとおり、規則的なセルパッキングもまた六角形の配列を用いて実現可能である。この実装では、流体流に利用可能な断面積が大きくなると共に、セル密度が顕著に低減してしまう。これは熱性能を向上させるが、バッテリーパック密度が大きく犠牲となってしまう。
【0091】
図22および23は、矩形セル4を用いる異なるセルパッケージング配列を示すものであり、図22は、矩形セル切抜部4を用いるエンドプレート幾何学的形状を示し、および、図23(a)(b)は、矩形セルの配列に係る流体流通路の画定に用いられるオフセット形状30を示す流体流通孔を詳細に示す。
【0092】
当業者によって理解されるであろうとおり、任意に所望される形状のセル4が本発明において使用され得、従って、種々の形状の流体流通路21が結果的に、バッテリーパック1の熱性能特徴を最適化するために選択され得る。
【0093】
より高い電圧のための直列セル
上記における本明細書に記載の実施形態はすべて個々のセルが連続する構成である。すなわち、バッテリーパックにおいて、すべてのセル4は、セルの陽極が他の陽極のみに接続されており、および、陰極が他の陰極のみに接続されて配列されている。これにより、高電流容量であるが、電圧出力が単に個々のセル4と同等であるバッテリーパック1がもたらされる。より電圧が高いバッテリーパックを構成するためには、セルは「直列」に接続される、すなわち、セル4のサブセットの陽極は、セル4の他のサブセットの陰極に接続される。これは、「バッテリーパックの電気的接続」の見だし下において本明細書中上記に記載の別々のバッテリーパック1を接続することで達成可能であるが、バッテリーパック1中において、電流容量を犠牲にしてバッテリーパック1の出力を高めることによっても達成可能である。
【0094】
より高電圧のバッテリーパック1を製造するために、バスプレート11は、バッテリーパックの片側または両側に2つ以上の電気的に分離された区画に分割され得る。セルの「直列」サブセットの各々は、すべて電気的に接続された陽極と、個別に、バッテリーパックの反対側のすべて電気的に接続された陰極とを有する。「直列」サブセットの陽極は他の隣接する直列サブセットの陰極にも接続されている。同様に、直列サブセットの陰極は、他の隣接する直列サブセットの陽極にも接続されている。バッテリーパック中において直列サブセットを交互に反転した向きとすることにより、バッテリーパックの一方側における陽極と陰極、または、陰極と陽極の接続が可能となる。これにより、直列サブセットは、直列サブセットの各々の電圧が加算されてより高い電圧が得られるよう、「直列」で順次に接続される。直列に接続されたセル4aおよび4bの2つのサブセットを用いるこの高電圧バッテリーパックの実施形態は、図20および図21に示されている。
【0095】
いくつかの種類の電気エネルギーセルに係る反応体-生成物化学経路
本明細書中に上記のとおり、本設計は、密閉された電気化学電池の使用に際していくつかの状況において生成される可能性があるセル4からの気体を換気することを主な目的とするセル電極への解放された経路を特徴とする。バスプレートリンク孔12、エンド-フレーム-プレートセル孔リップ部16およびセルリンク5により形成されたこの経路はまた、いくつかの種類の電気エネルギーセルによって消費される反応化学物質の供給および除去、ならびに、これらによって生成される生成/廃棄化学物質に係る経路として使用可能である。例えば、水素燃料電池またはフロー電池の実装においては、配管を追加し、および、リンク孔12を広げて、電気エネルギーセルの運用に必要とされる化学物質の供給および除去を許容することが可能である。
【0096】
本発明は一般に、セル4の端部に取り付けられた特別に設計されたエンド-プレート-フレーム2によって、電気的および機械的に接続された2つ以上電気エネルギーセル4を備えるバッテリーパック1に関する。エンド-プレート-フレーム2は、バッテリーパックによる導電性要求、温度制御間においてバランスが最適化されるよう設計される。同時に、機械的強度およびセル換気に係る要求が満たされる。
【0097】
重量による代価が最低限とされた温度制御は、バッテリーパック1と熱制御に用いられる流体との間における熱の効率的な移動、および、バッテリーパック中における流体の効率的な流れを一緒になって実現する、エネルギーセル4の本体間の空間と、エンド-フレーム-プレートに形成された複数の孔とによって形成された相互に接続された流体通路によって達成される。エンド-フレーム-プレートへ電気的接続用コンポーネントを組み込む設計は、流体通路システムの孔およびセルからの換気をするための孔の周囲における導電性を最大化させる。設計の機械的コンポーネントは、重量を最低限としつつ上記を実現する。
【0098】
本明細書を通して、「プレート状」という用語が、エンドプレートの構成を説明するために用いられている。「プレート状」という用語は、長さ、幅および高さを有する任意の三次元的形状であると解釈されるべきである。すなわち、特にこれらに限定されないが、厚さの要素をも伴う正方形、矩形、円形等などの任意の二次元的形状のものであり得る。本発明は、正方形または矩形の形状のものとして好ましい実施形態において記載されているが、この形状は、容易に理解されるであろうとおり、種々のものであり得る。
【0099】
本明細書を通して、「積層」という用語もまた、バスプレートの構成を説明するために用いられている。これは、接着剤により固定されているか、または、そうでなければ、物理的に取り付けられて固定されているか、または、エンドプレートの絶縁性部分の一面に重ねられるのみで実際には取り付けられていないかにかかわらず、エンドプレートの上に、または、エンドプレートに近接して配設されている、任意の比較的薄いシート状の構造体を意味することが意図されている。
【0100】
使用される場合、「を含む(comprising)」という用語は、「オープン」な意味で、すなわち、「を含む(including)」の意味で理解されるべきであり、それ故、「クローズド(closed)」な意味で、すなわち、「~のみからなる(consisting only of)」の意味に限定されない。「を含む(comprise)」、「を含む(comprised)」および「を含む(comprises)」という対応する用語が表記されている場合には、対応する意味を有するものとする。
【0101】
本発明は、1つ以上の特定的に開示された実施形態を参照して、本明細書中上記に記載されている。当業者に明らかになる本発明のすべての変形および変更は、本明細書中上記に広く記載されていると共に本明細書中以下に特許請求されている本発明の主旨および範囲に属すると解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23(a)】
図23(b)】