(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】移動式土留装置、およびその移動式土留装置を用いた埋設工法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/06 20060101AFI20240911BHJP
E02D 17/04 20060101ALI20240911BHJP
E02D 7/00 20060101ALI20240911BHJP
F16L 1/028 20060101ALN20240911BHJP
【FI】
E02D5/06
E02D17/04 Z
E02D7/00 A
F16L1/028 Z
(21)【出願番号】P 2023135454
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591149849
【氏名又は名称】株式会社光建
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】正田 要一
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-131188(JP,A)
【文献】特開平09-316860(JP,A)
【文献】特開平07-217377(JP,A)
【文献】特開昭60-159299(JP,A)
【文献】特開平09-291537(JP,A)
【文献】特開2002-061492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00 -17/20
E21D 9/00 - 9/14
E02D 5/00 - 7/30
F16L 1/028- 1/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削された溝を掘削方向に移動させつつ、埋設管を敷設するための作業領域が内側に形成された移動式土留装置であって、
所定距離をおいて対向した状態で保持され、前記作業領域を形成する一対の土留めパネルと、
前記一対の土留めパネルのそれぞれの移動方向に沿った前方側に設けられた刃部材と、
前記一対の土留めパネルのそれぞれの外側面の一部分に設置され、当該移動式土留装置が前記溝の側壁間を移動する際に前記外側面に対して静止状態が保持されるプレートと、を備え、
前記プレートの外側面と土との摩擦係数は、前記土留めパネルの外側面と土との摩擦係数よりも低く、
各刃部材の先端に、前記移動方向に沿った前方側に突出した爪部が設けられ、
各土留めパネルの外側面と各刃部材の外側面との間に、前記一対の土留めパネルが対向する方向外向きに突出する段差部が当該間の高さ方向全長に亘って形成され、
前記段差部から形成された前記刃部材
の外側面と、前記プレートの外側面と
は同一平面上に含ま
れ、
前記刃部材の外側面、および前記プレートの外側面は、前記土留めパネルの外側面よりも、前記一対の土留めパネルが対向する方向において外側に形成されていることを特徴とする移動式土留装置。
【請求項2】
請求項1に記載された移動式土留装置であって、
前記一対の土留めパネルのそれぞれの前記移動方向に沿った後方側先端には、少なくとも撓むことが可能な程度の柔軟性を有し、当該移動式土留装置の移動に伴って前記作業領域に敷設されている埋設管に先端部で接触しながら移動する板状部材が、前記一対の土留めパネルが対向する方向において所定距離をおいて設けられていることを特徴とする移動式土留装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された移動式土留装置であって、
前記刃部材の前方側端部のそれぞれに跨がって、当該移動式土留装置を牽引するためのひも状体が接続され、前記ひも状体は、全体として、前方へ向けて投げることができる程度の重量を有することを特徴とする移動式土留装置。
【請求項4】
請求項1に記載された移動式土留装置を用いた埋設工法であって、
前記溝内に設置された前記移動式土留装置の内部に形成された前記作業領域で埋設管を敷設する配管工程と、
前記配管工程の後に、当該移動式土留装置の前方側を掘削する先掘り工程と、
前記先掘り工程の後に、当該移動式土留装置を外部の駆動手段、または内部の推進手段を用いて前記溝内を前方側に移動させる移動工程と、を有する埋設工法。
【請求項5】
請求項3に記載された移動式土留装置を用いた埋設工法であって、
前記溝内に設置された前記移動式土留装置の内部に形成された前記作業領域で埋設管を敷設する配管工程と、
前記配管工程の後に、当該移動式土留装置の前方側を掘削する先掘り工程と、
前記先掘り工程の後に、当該移動式土留装置の前方に前記ひも状体を投げ出す牽引準備工程と、
前記牽引準備工程の後に、前記ひも状体を外部の駆動手段に連結させ、当該外部の駆動手段を用いて当該移動式土留装置を、前記溝内を前方側に移動するように牽引する牽引工程と、を有する埋設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル保護管などの埋設管を敷設する工事(埋設工事)に際し、掘削した溝の側壁を保護しつつ、内部空間内で配管作業を行うことができる移動式土留装置、およびその移動式土留装置を用いた埋設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブル保護管などの埋設管を敷設する工事(埋設工事)に際し、掘削した溝の側壁を保護しつつ、内部空間内で配管作業を行うことができる移動式土留装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1に記載の移動式土留装置は、掘削された溝の側壁に接して、土留めする一対の矢板ユニットと、矢板ユニット同士を連結する連結部材などを備える。
【0003】
埋設工事においては、最初に、移動式土留装置を設置するための溝を掘削し、その溝に移動式土留装置を設置する。次に、移動式土留装置の内部の作業領域に埋設管を投入し、先に敷設した埋設管に連結する。最後に、移動式土留装置の前方を掘削し、バックホウで移動式土留装置を牽引して前進させ、移動式土留装置の後方を埋め戻す。埋設工事において、この一連のサイクルが繰り返し行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、移動式土留装置を牽引して前進させるが、牽引時における矢板ユニットの外側面と溝の側壁と摩擦が大きく、牽引に支障を来すという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、牽引を含む前方側への移動に対する支障を軽減する移動式土留装置、およびその移動式土留装置を用いた埋設工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る移動式土留装置は、上記課題を解決するために、
掘削された溝を掘削方向に移動させつつ、埋設管を敷設するための作業領域が内側に形成された移動式土留装置であって、
所定距離をおいて対向した状態で保持され、前記作業領域を形成する一対の土留めパネルと、
前記一対の土留めパネルのそれぞれの移動方向に沿った前方側に設けられた刃部材と、
前記一対の土留めパネルのそれぞれの外側面の一部分に設置され、当該移動式土留装置が前記溝の側壁間を移動する際に前記外側面に対して静止状態が保持されるプレートと、を備え、
前記プレートの外側面と土との摩擦係数は、前記土留めパネルの外側面と土との摩擦係数よりも低く、
各刃部材の先端に、前記移動方向に沿った前方側に突出した爪部が設けられ、
各土留めパネルの外側面と各刃部材の外側面との間に、前記一対の土留めパネルが対向する方向外向きに突出する段差部が当該間の高さ方向全長に亘って形成され、
前記段差部から形成された前記刃部材の外側面と、前記プレートの外側面とは同一平面上に含まれ、
前記刃部材の外側面、および前記プレートの外側面は、前記土留めパネルの外側面よりも、前記一対の土留めパネルが対向する方向において外側に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、牽引を含む前方側への移動に対する支障を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】移動式土留装置の斜め前方からの斜視図である。
【
図2】移動式土留装置の斜め後方からの斜視図である。
【
図9】右側の下側土留めパネルの下側刃部材との接続付近を平面視で模式的に表した部分拡大図である。
【
図10】埋設管敷設サイクル工程のフローチャートである。
【
図11】埋設管が両方の土砂流入防止板状部材の内側面に接触している様子を表す具体例である。
【
図12】土留装置の内部で既設の埋設管に新しい埋設管を連結させた後に、牽引用ひも状体を介してバックホウで土留装置を牽引する様子を表す具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下に、本発明の実施形態に係る移動式土留装置について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る移動式土留装置の斜め前方からの斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係る移動式土留装置の斜め後方からの斜視図である。
【0011】
第1実施形態に係る移動式土留装置100は、電力ケーブル保護管などの埋設管を敷設する工事(埋設工事)に際し、掘削した溝の側壁を保護しつつ、移動式土留装置100の内部に形成された作業領域Wにて配管作業を行うために用いられる。また、後述するように、移動式土留装置100を前方側に移動させながら、埋設工事が進んでいく。なお、移動式土留装置100は、深さ1.5~2.0mの溝が掘削され、φ125~200mmの埋設管が敷設される規模の埋設工事で使用されることが想定されている。ただし、埋設工事に係る各種規模(溝の深さや埋設管の直径等)は特に限定されず適宜に設定してもよい。
【0012】
以下において、移動式土留装置100のことを単に「土留装置100」と称する。また、以下において、便宜上、
図1乃至
図2に記載された「前」・「右」・「上」に基づいて前後方向、左右方向、および上下方向を特定する。しかし、これらの方向と土留装置100との向きとの関係は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、
図1乃至
図2に記載された「上」は、絶対的な鉛直方向ではなく、作業場所の地面に対する垂直方向を表している。
【0013】
土留装置100の立体形状は、全体的に略直方体である。直方体の土留装置100において、左右方向に直交する両面側は閉鎖され、前後方向に直交する両面側、および上下方向に直交する両面側は開放されている。そして、閉鎖されている左右方向に直交する両面が溝の側壁に対向し(土留めとして機能し)、開放されている前方が進行方向である。また、土留装置100において溝の側壁に対向する両面で挟まれた空間が作業領域Wを構成する。
【0014】
土留装置100に係る直方体を構成する面は全て矩形状である。そして、土留装置100に係る直方体の前後方向長さが最も長く、左右方向長さが最も短く、上下方向長さは、左右方向よりも長く前後方向長さよりも短い。ただし、各方向長さの大小関係は適宜に設定可能であり、特に限定されない。
【0015】
土留装置100は、下側ユニット1と、上側ユニット2と、で組み立て可能(分離可能)に構成されている。使用状態において、下側ユニット1は作業場所に載置され、上側ユニット2は下側ユニット1の上に載置されている。下側ユニット1と、上側ユニット2と、は、下側ユニット1と上側ユニット2との間で構成される不図示の固定構造を用いて上下方向に密着した状態で固定されている。当該固定構造として、例えば、下側ユニット1には、所定のチェーンを介して棒状のピンが連結されており、上側ユニット2の当該ピンが届く箇所に、ピンが嵌合可能な嵌合穴が形成されている。そして、下側ユニット1のピンを上側ユニット2の嵌合穴に嵌合することで、下側ユニット1と上側ユニット2とを固定することができる。なお、下側ユニット1と上側ユニット2との間で構成される固定構造の具体的な内容は適宜に設定可能であり、特に限定されない。
【0016】
図3は下側ユニット1の右側面図であり、
図4は下側ユニット1の底面図であり、
図5は下側ユニット1の正面図であり、
図6は上側ユニット2の右側面図であり、
図7は上側ユニット2の平面図であり、
図8は上側ユニット2の正面図である。なお、以下において、
図3乃至
図8についても、
図1乃至
図2に記載された「前」・「右」・「上」に基づいて前後方向、左右方向、および上下方向を特定する。
【0017】
次に、
図1乃至
図8を用いて下側ユニット1、および上側ユニット2について説明する。最初に、下側ユニット1について説明する。下側ユニット1は、下側土留めパネル10と、下側水平支持体11と、下側刃部材13と、下側側面樹脂プレート14と、下側吊金具15と、牽引用ひも状体16と、土砂流入防止板状部材17と、下側底面樹脂プレート18と、位置決め凸部19と、を有する。
【0018】
下側ユニット1は、2枚の下側土留めパネル10を有する。下側土留めパネル10は横長矩形状に成形されている。2枚の下側土留めパネル10は、下側水平支持体11によって一方側の平面同士が所定距離をおいて対向した状態で固定されている。したがって、固定された2枚の下側土留めパネル10の間には空間が形成されている。この空間は、作業者が、埋設管の敷設に係る作業を行うための作業領域Wの一部(下側)を構成している。
【0019】
また、固定された2枚の下側土留めパネル10同士の長辺方向、および短辺方向はそれぞれ平行である。さらに、固定された2枚の下側土留めパネル10同士の前方側先端、後方側先端、上方側先端、および下方側先端は、それぞれ左右方向において揃っている。
【0020】
下側土留めパネル10は、使用状態において(埋設工事の際)、掘削された溝の側壁に対する土留めの役割を有する。そのため、下側土留めパネル10は、所要土圧に対応する曲げ応力を与えられた鋼材で構成されている。ただし、所要土圧に対応する曲げ応力が与えられているのであれば、下側土留めパネル10の材料は適宜に設定可能である。
【0021】
また、下側土留めパネル10の外側面の上端部には、前後方向に長く延びた一対の2本の下側レール部10aが、上下方向に所定距離をおいて平行に並設されている。同様に、下側土留めパネル10の外側面の上下方向略中央からやや上方寄り、および下端部からやや上方寄りには、前後方向に長く延びた一対の2本の下側レール部10aが、上下方向に所定距離をおいて平行に並設されている。各一対の2本の下側レール部10aの上下方向の間隔は同一である。そして、各一対の2本の下側レール部10aの上下方向の間隔は、後述する下側側面樹脂プレート14の短辺方向長さに略一致している。
【0022】
なお、下側レール部10aは、下側土留めパネル10の略前方側先端付近から略後方側先端付近まで形成されている。また、各一対の2本の下側レール部10aの前方側先端と後方側先端とは上下方向において揃っている。さらに、相対的に上側に配置された一対の2本の下側レール部10aの下側と相対的に中央に配置された一対の2本の下側レール部10aの上側との上下方向間の距離と、相対的に中央に配置された一対の2本の下側レール部10aの下側と相対的に下側に配置された一対の2本の上側との上下方向間の距離と、は略同一である。
【0023】
また、下側レール部10aの前後方向(延設方向)に直交する断面形状は、前後方向に沿って一定である。当該断面形状は、左右方向を長辺方向とし、上下方向を短辺方向とする略矩形状である。
【0024】
各一対の2本の下側レール部10aの間には、5つの下側仕切り部10bが前後方向に沿って等間隔で並設されている。各5つの下側仕切り部10bのうち最も前方側に配置された下側仕切り部10bは下側レール部10aの前方側先端に配置され、各5つの下側仕切り部10bのうち最も後方側に配置された下側仕切り部10bは下側レール部10aの後方側先端に配置されている。そして、各5つの下側仕切り部10bの前後方向に隣り合うもの同士の間隔は、後述する下側側面樹脂プレート14の長辺方向長さに略一致している。
【0025】
また、下側仕切り部10bは、一対の2本の上側に配置された下側レール部10aから下側に配置された下側レール部10aにわたって形成されている。そして、下側仕切り部10bの上下方向に直交する断面形状は、上下方向に沿って一定である。当該断面形状は、前後方向を長辺方向とし、左右方向を短辺方向とする略矩形状である。
【0026】
なお、下側レール部10aの左右方向長さ(下側土留めパネル10の外側面から下側レール部10aの外側先端まで長さ)と、下側仕切り部10bの左右方向長さ(下側土留めパネル10の外側面から下側仕切り部10bの外側先端まで長さ)と、は略同一である。
【0027】
そして、各一対の2本の下側レール部10aと、前後方向に隣り合う各2つの下側仕切り部10bと、下側土留めパネル10の外側面と、で形成された空間は、下側側面樹脂プレート14が嵌合する下側嵌合凹部10cを構成する。したがって、下側土留めパネル10の外側面の上端部、上下方向略中央よりやや上方寄り、および下端部付近よりやや上方寄りにおいて、5つの下側嵌合凹部10cが前後方向に並設されていることになる。
【0028】
下側ユニット1は、2つの下側水平支持体11を有する。一方の下側水平支持体11は、2枚の下側土留めパネル10の前方側先端部、且つ、上側の間に配設され、他方の下側水平支持体11は、2枚の下側土留めパネル10の後方側先端部、且つ、上側の間に配設されている。下側水平支持体11は、双方の下側土留めパネル10の内側面に固定されている。したがって、下側水平支持体11の左右方向の長さ分、2枚の下側土留めパネル10の間の距離が保持されている。
【0029】
下側水平支持体11は、下側土留めパネル10に土圧が作用した際に、下側土留めパネル10が内側に倒壊することを防止する役割を有する。そのため、下側水平支持体11は、所要土圧に対応する左右方向に沿った軸力(圧縮強度)を与えられた鋼材で構成されている。また、下側水平支持体11は、全体的に左右方向に沿った長さを調子可能に構成されている。
【0030】
なお、下側水平支持体11の具体的な構造は、所要土圧に対応する左右方向に沿った軸力(圧縮強度)に耐えられる範囲で適宜に設定可能であるが、下側水平支持体11は、上下方向に所定距離をおいて配された2本の水平柱状部11aと、2本の水平柱状部11aを連結する2枚のリブ部11bと、を有する。また、所要土圧に対応する左右方向に沿った軸力(圧縮強度)を与えられているのであれば、下側水平支持体11の材料は適宜に設定可能である。
【0031】
下側ユニット1は、15枚の下側側面樹脂プレート14を有する。下側側面樹脂プレート14は、左右方向から見た下側嵌合凹部10cと略同一の横長矩形状に成形されている。そして、下側側面樹脂プレート14は、下側土留めパネル10の外側面に形成された下側嵌合凹部10cに嵌合されている。したがって、下側土留めパネル10の上端部、上下方向略中央からやや上方寄り、および下端部からやや上方寄りにおいて、5枚の下側側面樹脂プレート14がその長辺方向に沿って並設されている。
【0032】
また、下側側面樹脂プレート14の厚さは、下側レール部10aの左右方向長さ(下側土留めパネル10の外側面から下側レール部10aの外側先端まで長さ)、および下側仕切り部10bの左右方向長さ(下側土留めパネル10の外側面から下側仕切り部10bの外側先端まで長さ)より少し長い。そして、下側嵌合凹部10cに嵌合した下側側面樹脂プレート14は、内側面全体で下側土留めパネル10の外側面に接着している。したがって、下側側面樹脂プレート14は、下側レール部10a、および下側仕切り部10bの左右方向先端よりも外側に少し突出していることになる。
【0033】
埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際には、下側土留めパネル10よりも左右方向外側に位置する下側側面樹脂プレート14と溝の側壁とが接触する。そして、下側側面樹脂プレート14は、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に下側土留めパネル10の外側面全体が溝の側壁と接触する場合に比べて、掘削された溝の側壁(土)との間の摩擦力を低減する役割を有する。したがって、下側側面樹脂プレート14は、土との間の静止摩擦係数、および動摩擦係数が下側土留めパネル10よりも低い材料で構成されている。さらに、第1実施形態では、下側側面樹脂プレート14は、耐摩耗性が高い材料で構成されている。第1実施形態では、下側側面樹脂プレート14は、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)で構成されている。ただし、下側側面樹脂プレート14の材料は、土との間の静止摩擦係数、および動摩擦係数が下側土留めパネル10よりも低く、耐摩耗性が高いという条件を満たす範囲で適宜に設定してもよい。また、下側側面樹脂プレート14は単一の材料で構成されていても、複数の材料からなる化合物や混合物で構成されていてもよい。
【0034】
また、下側側面樹脂プレート14は、所定の下側ボルト14aが下側側面樹脂プレート14の内部に外側から挿入した状態で係止すると共に、下側土留めパネル10に螺合することによって下側土留めパネル10に着脱可能に固定されている。詳細には、所定の下側ボルト14aのねじ山が形成されている部分は、下側側面樹脂プレート14の厚さ(左右方向長さ)よりも長い。また、下側側面樹脂プレート14の上下方向略中央で前後方向両先端から少し中央に寄った2箇所に所定の下側ボルト14aを挿入する挿入孔(図示なし)が形成されている。挿入孔(図示なし)は下側側面樹脂プレート14の厚さ方向に貫通している。一方、下側土留めパネル10の外側面には、所定の下側ボルト14aが螺合する螺合穴(図示なし)が形成されている。下側側面樹脂プレート14が下側嵌合凹部10cに嵌合したときの挿入孔と螺合穴とは連通する。
【0035】
なお、下側側面樹脂プレート14における所定の下側ボルト14aの挿入孔(図示なし)は、ねじ山が形成されている部分を挿入させるが頭部は挿入させないねじ山挿入部(図示なし)と、頭部を収納しつつ係止させる収納係止部(図示なし)と、を有する。挿入孔の収納係止部(図示なし)の軸線方向長さは、所定の下側ボルト14aの頭部の軸線方向長さよりも長い。したがって、所定の下側ボルト14aが下側土留めパネル10に螺合され、下側側面樹脂プレート14の内部で係止している状態で、所定の下側ボルト14aの頭部の外側先端は、下側側面樹脂プレート14の外側面から突出していない。なお、下側側面樹脂プレート14の下側土留めパネル10への固定方法は適宜に設定可能である。
【0036】
各下側土留めパネル10の前方側先端には、下側刃部材13が固定されている。下側刃部材13の上端、および下端は、前後方向において、下側土留めパネル10の上端、および下端と揃っている。下側刃部材13は、上下方向全長にわたって、下側土留めパネル10の外側面に平行な下側刃部材外側面13Aと、下側刃部材外側面13Aの前方側先端から後方側に向けて徐々に左右方向長さが大きくなる下側刃部材内斜面13Bと、を有する。
【0037】
下側刃部材13、および後述する上側ユニット2の上側刃部材23は、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に、土留装置100よりも狭い箇所がある場合、溝の側壁を切削する役割を有する。上下方向に沿って形成される下側刃部材外側面13Aと下側刃部材内斜面13Bとの交線部分、および後述する上側刃部材外側面23Aと上側刃部材内斜面23Bとの交線部分で、溝の側壁が切削される。
【0038】
下側刃部材13の下端部には、下側切欠部13Cが形成されている。下側切欠部13Cは、下側刃部材外側面13Aの前方側先端であって下側刃部材13の下端から上方へ所定距離おいた箇所と下側刃部材外側面13Aの後方側下端とを結ぶ直線を下側刃部材外側面13Aに垂直に切断するような平面で構成されている。
【0039】
また、下側刃部材13の下側切欠部13Cより上側の部分は上下方向に直交する断面形状が一定となるように構成されている。この断面形状は、辺の長さが相互に異なる直角三角形である。この直角三角形のうち斜辺は下側刃部材内斜面13Bで構成され、長い方の辺は下側刃部材外側面13Aで構成される。
【0040】
下側刃部材13の前方側先端には、3つの下側爪部13aが設けられている。下側爪部13aは上下方向に沿って略等間隔で並設されている。3つの下側爪部13aは、それぞれ、各一対の2本の下側レール部10aの上側をそのまま前方側に延ばした位置に設けられている。下側爪部13aは、土留装置100を前進させる際に下側刃部材13の先端よりも先に溝の側壁に刺さらせることで、下側刃部材13の先端全体(下側刃部材外側面13Aと下側刃部材内斜面13Bとの交線部分)で確実に溝の側壁を切削させる役割を有する。したがって、下側爪部13aの前方側略半分は、下側刃部材13の先端よりも前方側に突出している。一方、下側爪部13aの後方側略半分は、下側刃部材外側面13Aと下側刃部材内斜面13Bとを挟み込むように形成されている。
【0041】
各下側刃部材内斜面13Bの下側切欠部13Cより少し上の箇所に、連結治具13bが設けられている。各連結治具13bには、1本の牽引用ひも状体16の両端のそれぞれがシャックルなどを介して連結されている。牽引用ひも状体16の長さは、下側土留めパネル10の短辺方向の約1.5倍~2.0倍である。なお、埋設工事の際には、牽引用ひも状体16の中央あたりに、バックホウのバケット先端を引っ掛けさせて、当該バックホウで土留装置100を前方側に牽引して土留装置100を前進させる。
【0042】
牽引用ひも状体16を介して土留装置100を牽引するので、牽引用ひも状体16は、少なくとも土留装置100を前方側に移動する際の静止摩擦力に耐える強度を有する材料、および構造を有するものとする。第1実施形態では、牽引用ひも状体16は鋼製のくさりで鋼製されている。なお、土留装置100を牽引していないとき、牽引用ひも状体16は、長さ方向略中央部分で前方側の下側水平支持体11に設けられた鈎形の留め金具11cに引っ掛けられている。
【0043】
下側ユニット1は、2枚の土砂流入防止板状部材17を有する。土砂流入防止板状部材17は、所定の取付け金具Kを介して、各下側土留めパネル10の後端に接続されている。下側土留めパネル10に接続されている土砂流入防止板状部材17は、縦長矩形状に成形されている。下側土留めパネル10に接続されている土砂流入防止板状部材17の上端、および下端は、それぞれ左右方向に沿って揃っている。なお、土砂流入防止板状部材17の厚さは3~10mmが好適であり、さらには5~7mmが好適である。
【0044】
土砂流入防止板状部材17同士の間には、所定長さの隙間Sが形成されている。前述の通り、下側水平支持体11は左右方向長さを調整可能に構成されているが、下側水平支持体11の左右方向長さが最小のときにも土砂流入防止板状部材17同士の間には、所定長さの隙間Sが形成されている。すなわち、土砂流入防止板状部材17の短辺方向長さは、下側土留めパネル10同士が最も接近したときの左右方向距離の半分よりも短い。
【0045】
また、基本的には、土留装置100の内側において、埋設管は、左右方向略中央で前後方向に沿って配置される。そして、土砂流入防止板状部材17同士の隙間よりも、埋設工事の対象となる埋設管の直径の方が大きい。したがって、土砂流入防止板状部材17と埋設管とは相互に干渉する。そこで、土砂流入防止板状部材17は、全体として、平面視で外側先端が拘束された状態で、内側先端付近が埋設管の表面に当接しながら内側先端が後方側にたわむことができるような柔軟性を有する材料で構成されている。その反面、土砂流入防止板状部材17は、後方側で埋め戻される土砂が土留装置100の内側に流入することを防止する役割を有する。したがって、土砂流入防止板状部材17を構成する材料は、一定以上の硬度を必要とする。例えば、土砂流入防止板状部材17が、天然ゴム、または合成ゴムなどの弾性ゴム(弾性を有する高分子化合物)で構成されている場合、弾性ゴムの硬度は、10以上100以下であることが好ましい。
【0046】
下側ユニット1は、10枚の下側底面樹脂プレート18を有する。下側底面樹脂プレート18は、横長矩形状に成形されている。厚さ、および短辺方向長さについては、下側底面樹脂プレート18と下側側面樹脂プレート14とは略同一である。長辺方向長さについては、下側側面樹脂プレート14よりも下側底面樹脂プレート18の方が短い。
【0047】
各下側土留めパネル10の底面において、5枚の下側底面樹脂プレート18が、前後方向に沿って等間隔で並設されている。各下側底面樹脂プレート18は、一方側の側面全体で下側土留めパネル10の底面に接着されている。また、下側底面樹脂プレート18は、下側側面樹脂プレート14と同様に、所定の下側ボルト18cによって、前後方向に沿った2箇所で下側土留めパネル10に着脱可能に固定されている。
【0048】
また、下側底面樹脂プレート18は、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に下側土留めパネル10の底面全体が溝の側壁と接触する場合に比べて、掘削された溝の側壁(土)との間の摩擦力を低減する役割を有する。したがって、下側底面樹脂プレート18は、土との間の静止摩擦係数、および動摩擦係数が下側土留めパネル10よりも低い材料で構成されている。さらに第1実施形態では、下側底面樹脂プレート18は、耐摩耗性が高い材料で構成されている。第1実施形態では、下側底面樹脂プレート18は、下側側面樹脂プレート14と同一の材料、具体的には超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)で構成されている。ただし、下側底面樹脂プレート18の材料は、土との間の静止摩擦係数、および動摩擦係数が下側土留めパネル10よりも低く、耐摩耗性が高いという条件を満たす範囲で適宜に設定してもよい。また、下側底面樹脂プレート18は単一の材料で構成されていても、複数の材料からなる化合物や混合物で構成されていてもよい。さらには、下側底面樹脂プレート18と下側側面樹脂プレート14とは異なる材料で構成されていてもよい。
【0049】
下側ユニット1は、6つの位置決め凸部19を有する。位置決め凸部19は、下側ユニット1と上側ユニット2との間の相対的な左右方向のズレを防止する役割を有する。下側土留めパネル10の上面において、3つの位置決め凸部19が、前後方向に沿って等間隔で並設されている。位置決め凸部19は、前後方向に延びて形成されている。位置決め凸部19の前後方向に直交する断面形状は一定である。この断面形状は、上方が凸状のV字形状である。
【0050】
次に、上側ユニット2について説明する。上側ユニット2は、上側土留めパネル20と、上側水平支持体21と、上側刃部材23と、上側側面樹脂プレート24と、位置決め凹部29と、を有する。役割、機能、用途として、上側土留めパネル20、上側水平支持体21、上側刃部材23、および上側側面樹脂プレート24は、下側土留めパネル10、下側水平支持体11、下側刃部材13、および下側側面樹脂プレート14に対応している。
【0051】
上側ユニット2は、2枚の上側土留めパネル20を有している。上側土留めパネル20は、横長矩形状に成形されている。上側土留めパネル20の長辺方向長さと、下側土留めパネル10の長辺方向長さと、は略同一である。上側土留めパネル20の短辺方向長さは、下側土留めパネル10の短辺方向長さより短い。
【0052】
2枚の上側土留めパネル20は、上側水平支持体21によって一方側の平面同士が所定距離をおいて対向した状態で固定されている。したがって、固定された2枚の上側土留めパネル20の間には空間が形成されている。この空間は、作業者が、埋設管の敷設に係る作業を行うための作業領域Wの一部(上側)を構成している。なお、上側土留めパネル20同士の離間距離と、下側土留めパネル10同士の離間距離と、は略同一である。
【0053】
また、固定された2枚の上側土留めパネル20同士の長辺方向、および短辺方向はそれぞれ平行である。さらに、固定された2枚の上側土留めパネル20同士の前方側先端、後方側先端、上方側先端、および下方側先端は、それぞれ左右方向において揃っている。
【0054】
上側土留めパネル20は、使用状態において(埋設工事の際)、掘削された溝の側壁に対する土留めの役割を有する。そのため、上側土留めパネル20は、所要土圧に対応する曲げ応力を与えられた鋼材で構成されている。なお、第1実施形態において、上側土留めパネル20の材料と、下側土留めパネル10の材料と、は同一であるものとする。
【0055】
また、上側土留めパネル20の上下方向略中央からやや上方寄りには、前後方向に長く延びた一対の2本の上側レール部20aが、上下方向に所定距離をおいて平行に並設されている。同様に、上側土留めパネル20の上下方向略中央からやや下方寄りには、前後方向に長く延びた一対の2本の上側レール部20aが、上下方向に所定距離をおいて平行に並設されている。
【0056】
なお、一対の2本の上側レール部20aに係る上下方向の離間距離は、一対の2本の下側レール部10aに係る上下方向の離間距離と略同一である。また、各一対の2本の上側レール部20aの前方側先端、および後方側先端は上下方向において、各一対の2本の下側レール部10aの前方側先端、および後方側先端と揃っている。
【0057】
さらに、相対的に上側に配置された一対の2本の上側レール部20aの下側と相対的に下側に配置された一対の2本の上側レール部20aの上側との上下方向間の離間距離は、相対的に上側に配置された一対の2本の下側レール部10aの下側と相対的に真ん中に配置された2本の下側レール部10aの上側との上下方向間の離間距離などと略同一である。
【0058】
また、上側レール部20aの前後方向(延設方向)に直交する断面形状は、前後方向に沿って一定である。当該断面形状は、下側レール部10aの前後方向(延設方向)に直交する断面形状と略同一である。
【0059】
各一対の2本の上側レール部20aの間には、5つの上側仕切り部20bが前後方向に沿って等間隔で並設されている。各5つの上側仕切り部20bのうち最も前方側に配置された上側仕切り部20bは上側レール部20aの前方側先端に配置され、各5つの上側仕切り部20bのうち最も後方側に配置された上側仕切り部20bは上側レール部20aの後方側先端に配置されている。そして、各5つの上側仕切り部20bの前後方向に隣り合うもの同士の間隔は、下側仕切り部10bの前後方向に隣り合うもの同士の間隔と略同一であり、後述する上側側面樹脂プレート24の長辺方向長さに略一致している。
【0060】
また、上側仕切り部20bは、上側に配置された上側レール部20aから下側に配置された上側レール部20aにわたって形成されている。そして、上側仕切り部20bの上下方向に直交する断面形状は、上下方向に沿って一定である。当該断面形状は、下側仕切り部10bの上下方向に直交する断面形状と略同一である。
【0061】
なお、上側レール部20aの左右方向長さ(上側土留めパネル20の外側面から上側レール部20aの外側先端までの長さ)と、上側仕切り部20bの左右方向長さ(上側土留めパネル20の外側面から上側仕切り部20bの外側先端までの長さ)と、は略同一である。
【0062】
そして、各一対の2本の上側レール部20aと、前後方向に隣り合う各2つの上側仕切り部20bと、上側土留めパネル20の外側面と、で形成された空間は、上側側面樹脂プレート24が嵌合する上側嵌合凹部20cを構成する。したがって、上側土留めパネル20の外側面の上下方向略中央よりやや上方寄り、および上下方向略中央よりやや下方寄りにおいて、5つの上側嵌合凹部20cが前後方向に並設されていることになる。
【0063】
上側ユニット2は、1つの上側水平支持体21を有する。上側水平支持体21は、双方の上側土留めパネル20の内側面に固定されている。したがって、上側水平支持体21の左右方向の長さ分、2枚の上側土留めパネル20の間の距離が保持されている。上側水平支持体21の左右方向長さは、下側水平支持体11の左右方向長さと略同一である。
【0064】
上側水平支持体21は、下側水平支持体11と同様に、上側土留めパネル20に土圧が作用した際に、上側土留めパネル20が内側に倒壊することを防止する役割を有する。そのため、上側水平支持体21は、所要土圧に対応する左右方向に沿った軸力(圧縮強度)を与えられた鋼材で構成されている。また、上側水平支持体21は、全体的に左右方向に沿った長さを調子可能に構成されている。
【0065】
なお、上側水平支持体21の具体的な構造は、所要土圧に対応する左右方向に沿った軸力(圧縮強度)に耐えられる範囲で適宜に設定可能であるが、上側水平支持体21は、上下方向に所定距離をおいて配された2本の水平柱状部21aと、2本の水平柱状部21aを連結する2本の垂直柱状部21bと、を有する。また、所要土圧に対応する左右方向に沿った軸力(圧縮強度)を与えられているのであれば、上側水平支持体21の材料は適宜に設定可能である。
【0066】
上側ユニット2は、10枚の上側側面樹脂プレート24を有する。上側側面樹脂プレート24は、左右方向から見た上側嵌合凹部20cと略同一の横長矩形状に成形されている。そして、上側側面樹脂プレート24は、上側土留めパネル20の外側面に形成された上側嵌合凹部20cに嵌合されている。したがって、上側土留めパネル20の上下方向略中央からやや上方寄り、および上下方向略中央からやや下方寄りにおいて、5枚の上側側面樹脂プレート24がその長辺方向に沿って並設されている。
【0067】
なお、上側側面樹脂プレート24の長辺方向長さ、短辺方向長さ、および厚さは、下側側面樹脂プレート14の長辺方向長さ、短辺方向長さ、および厚さと略同一である。そして、下側側面樹脂プレート14と同様に、上側側面樹脂プレート24は、左右方向において、上側レール部20a、および上側仕切り部20bの先端よりも外側に少し突出している。
【0068】
上側側面樹脂プレート24は、下側側面樹脂プレート14と同様に、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に上側土留めパネル20の外側面全体が溝の側壁と接触する場合に比べて、掘削された溝の側壁(土)との間の摩擦力を低減する役割を有する。そして、第1実施形態において、上側側面樹脂プレート24の材料は、下側側面樹脂プレート14の材料と同一であるものとする。
【0069】
さらに、上側側面樹脂プレート24は、下側側面樹脂プレート14と同様に、上側土留めパネル20に着脱可能に構成されている。すなわち、上側側面樹脂プレート24は、所定の上側ボルト24aによって上側土留めパネル20に着脱可能に構成されている。
【0070】
各上側土留めパネル20の前方側先端には、上側刃部材23が固定されている。上側刃部材23の上端、および下端は、前後方向において、上側土留めパネル20の上端、および下端と揃っている。上側刃部材23は、上下方向全長にわたって、上側土留めパネル20の外側面に平行な上側刃部材外側面23Aと、上側刃部材外側面23Aの前方側先端から後方側に向けて徐々に左右方向長さが大きくなる上側刃部材内斜面23Bと、を有する。
【0071】
上側刃部材23は、下側ユニット1の下側刃部材13の共に、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に、土留装置100よりも狭い箇所がある場合、溝の側壁を切削する役割を有する。上下方向に沿って形成される下側刃部材外側面13Aと下側刃部材内斜面13Bとの交線部分、および後述する上側刃部材外側面23Aと上側刃部材内斜面23Bとの交線部分で、溝の側壁が切削される。
【0072】
上側刃部材23の上下方向に直交する断面形状は、上下方向に沿って一定である。この断面形状は、下側刃部材13の下側切欠部13Cより上側の部分の上下方向に直交する断面形状と同一である。したがって、上側刃部材外側面23Aの形状、および上側刃部材内斜面23Bの形状は、下側切欠部13Cより上の部分の下側刃部材外側面13Aの形状、および下側刃部材内斜面13Bの形状と同一である。また、平面視での上側刃部材外側面23Aと上側刃部材内斜面23Bとの角度は、下側切欠部13Cより上の部分の下側刃部材外側面13Aと下側刃部材内斜面13Bとの角度と同一である。すなわち、下側刃部材外側面13Aと下側刃部材内斜面13Bとの交線部分と、上側刃部材外側面23Aと上側刃部材内斜面23Bとの交線部分と、は上下方向に沿った同一直線上に形成されている。
【0073】
また、上側刃部材23の前方側先端には、2つの上側爪部23aが設けられている。2つの上側爪部23aは、それぞれ、各一対の2本の上側レール部20aの上側をそのまま前方側に延ばした位置に設けられている。上側爪部23aは、下側爪部13aと同様に、土留装置100を前進させる際に上側刃部材23の先端よりも先に溝の側壁に刺さらせることで、上側刃部材23の先端全体(上側刃部材外側面23Aと上側刃部材内斜面23Bとの交線部分)で確実に溝の側壁を切削させる役割を有する。上側爪部23aの形状等を含む構造は、下側爪部13aの形状等を含む構造と同一である。
【0074】
また、各上側土留めパネル20の下端面には、位置決め凸部19に篏合する位置決め凹部29が前後方向に沿って形成されている。位置決め凹部29の前方側先端、および後方側先端は、上側土留めパネル20の前方側先端、および後方側先端に揃っている。位置決め凹部29の底面には、位置決め凸部19に係る凸状のV字形状に篏合する凹状のV字形状が前後方向に沿って形成されている。
【0075】
次に、下側土留めパネル10の外側面と、下側側面樹脂プレート14の外側面と、下側刃部材外側面13Aとの位置関係について説明する。
図9は、右側の下側土留めパネル10の下側刃部材13との接続付近を平面視で模式的に表した部分拡大図である。
【0076】
図9に示すように、下側側面樹脂プレート14は、左右方向において、下側レール部10a、および下側仕切り部10bから外側に少し突出している。そして、平面視において、下側側面樹脂プレート14の外側面と下側刃部材外側面13Aとは同一直線上に並んでいる。言い換えると、下側刃部材外側面13Aと下側側面樹脂プレート14の外側面とは、前後方向、および上下方向を2軸とする同一の平面上に含まれる。そして、下側側面樹脂プレート14の外側面、および下側刃部材外側面13Aは、下側土留めパネル10の外側面から下側側面樹脂プレート14の厚さ分、左右方向における外側に形成されている。言い換えると、下側土留めパネル10と下側刃部材13との間には、下側側面樹脂プレート14の厚さ分の段差Dが形成されている。そして、実質的には、土留装置100全体では、下側刃部材外側面13A、および下側側面樹脂プレート14の外側面が左右方向において最も外側に形成されていることになる。
【0077】
前述の通り、下側刃部材13は、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に、土留装置100よりも狭い箇所がある場合、溝の側壁を切削する役割を有する。そして、土留装置100全体では、下側刃部材外側面13A、および下側側面樹脂プレート14の外側面が左右方向において最も外側に形成されている。したがって、土留装置100が前進する際には、上下方向に沿って形成される下側刃部材外側面13Aと下側刃部材内斜面13Bとの交線部分で溝の側壁を切削しつつ、下側刃部材外側面13Aの前後方向に沿った後方に形成される下側側面樹脂プレート14で、切削された溝の側壁を摺動させることになる。
【0078】
なお、
図9において、下側刃部材13と下側側面樹脂プレート14との間に記載された一点鎖線は、下側側面樹脂プレート14の外側面と下側刃部材外側面13Aとが同一直線上に並んでいることを示す補助的な線であり、実際には表れていない。
【0079】
また、
図9は、右側の下側土留めパネル10の下側刃部材13との接続付近を平面視で模式的に表しているが、
図9を用いて説明した下側刃部材外側面13Aと下側側面樹脂プレート14の外側面と下側土留めパネル10の外側面との位置関係は、左側の下側土留めパネル10についても同様である。さらには、上側ユニット2の両方の上側土留めパネル20についても同様である。
【0080】
次に、土留装置100を用いた埋設工法について説明する。埋設工法では、最初に、土留装置沈設工程を行い、続いて、埋設管敷設工程を行い、最後に、土留装置撤去工程を行う。
【0081】
最初に、土留装置沈設工程について説明する。土留装置沈設工程では、最初に、土留装置100用の溝(設置用溝)を掘削する。次に、例えば、バックホウなどの所定の重機を用いて、設置用溝に下側ユニット1を据え付ける。続いて、下側ユニット1の上に上側ユニット2を載置する。さらには、下側ユニット1と上側ユニット2とを所定の固定構造によって相互に固定し、一体化させる。そして、土留装置沈設工程としては、最後に、土留装置100の内側を所望の深さ(埋設管を敷設する深さ)まで掘削し、土留装置100を沈設する。
【0082】
なお、設置用溝の形状・寸法は、土留装置100を当該設置用溝内で設置できる範囲で極力大きくならないことが望ましい。したがって、土留装置沈設工程を終えたときには、特に、土留装置100の左右方向の側面(下側側面樹脂プレート14、および上側側面樹脂プレート24の外側面、ならびに下側刃部材外側面13A、および上側刃部材外側面23A)、および後方の端と、それらに対向する設置用溝の側壁との間にはほとんど隙間がない状況である。例えば、この設置用溝の寸法の一例としては、前後方向長さが4.0mであり、左右方向長さが1.1mであり、深さが1.5mである。
【0083】
次に、土留装置撤去工程について説明する。土留装置撤去工程では、最初に、土留装置100の内側の一部に砂を充填する。続いて、土留装置100の前側と後側とを交互に引き上げて上昇させる。さらには下側ユニット1と上側ユニット2との固定を解除する。そして、土留装置撤去工程としては、最後に、土留装置100の内側に順次砂を充填しながら、上側ユニット2、および下側ユニット1を引き抜く。
【0084】
次に、埋設管敷設工程について説明する。土留装置沈設工程や土留装置撤去工程よりも小さい単位からなる複数の工程を含む埋設管敷設サイクル工程が複数回繰り返し行われる。
図10は、埋設管敷設サイクル工程のフローチャートである。
図10に示すように、埋設管敷設サイクル工程は、配管工程、先掘り・補充工程、牽引準備工程、および牽引・埋め戻し工程を含む。
【0085】
配管工程では、土留装置100の内部であって溝の底面に、電力ケーブル保護管などの当該埋設工法の対象となる埋設管を配置する。なお、1回目の埋設管敷設サイクル工程、言い換えると土留装置沈設工程の直後の埋設管敷設サイクル工程においては埋設物が配置されると当該配管工程が終了する。一方、2回目以降の埋設管敷設サイクル工程においては、最初に埋設物を配置し、続いて、1回前の埋設管敷設サイクル工程で設置された埋設管と当該配置した埋設管とを接続させる。
【0086】
先掘り・補充工程では、次に配置する埋設管の前後方向長さ分、土留装置100の前方側を先掘りする。ここで、2回目以降の埋設管敷設サイクル工程であれば、後述するように、土留装置100の後方側には、1回前の埋設管敷設サイクル工程に係る牽引・埋め戻し工程で土留装置100が前進した分の空間が形成されているので、先掘り・補充工程として、さらにこの空間内に川砂を、土留装置100の内部に流入しない範囲で補充する。「土留装置100の内部に流入しない範囲」とは、少なくとも、土留装置100の後方側先端での川砂の上下方向高さが、土砂流入防止板状部材17の上下方向高さ位置を超えない範囲である。
【0087】
牽引準備工程では、土留装置100の内部にいる作業者が、内部にいる状態を保ちながら留め金具11cに引っ掛けられている牽引用ひも状体16を外して、牽引用ひも状体16全体を土留装置100の前方側に、好ましくは、牽引用ひも状体16の長さ方向略中央が最も前方へ位置するように、放り投げる。次いで、バックホウのオペレーターの操作によって、土留装置100の前方側に放り投げられて地面に載置されている牽引用ひも状体16を直接、バックホウのバケット先端で引っ掛ける。
【0088】
牽引・埋め戻し工程では、牽引用ひも状体16を介して土留装置100に連結されたバックホウで土留装置100を前方側に牽引し、土留装置100を前進させる。それと共に、土留装置100の後方側に、埋め戻し用の川砂を補充しつつ、土留装置100の後方に埋め戻された川砂を後方側に配置されたバックホウによって適宜に締め固める。また、牽引用ひも状体16の牽引が終了した後には、例えば、バックホウのオペレーターの操作によって、バケットを動かすことでバケットを牽引用ひも状体16から取り外す。さらには、バックホウのオペレーターの操作によって、土留装置100の前方側に配置されている牽引用ひも状体16をバケットの先端等で土留装置100の内部に押し込む。そして、土留装置100の内部にいる作業者は、牽引用ひも状体16を留め金具11cに引っ掛ける。このような牽引・埋め戻し工程が終了すると、1回分の埋設管敷設サイクル工程が終了したことになり、予定の埋設管が完成するまで、埋設管敷設サイクル工程を繰り返し行う。予定の埋設物が完成すると、土留装置撤去工程を行う。なお、
図11は、少なくとも1回以上土留装置100の牽引が行われて、埋設管Mが両方の土砂流入防止板状部材17の内側面に接触している様子を表す具体例である。また、
図12は、土留装置100の内部で既設の埋設管M1に新しい埋設管M2を連結させた後に、牽引用ひも状体16を介してバックホウで土留装置100を牽引する様子を表す具体例である。
【0089】
以上のように、土留装置100によれば、所定距離をおいて対向した状態で保持され、作業領域Wを形成する一対の土留めパネル(下側土留めパネル10、上側土留めパネル20)と、一対の土留めパネルのそれぞれの移動方向に沿った前方側に設けられた刃部材(下側刃部材13、上側刃部材23)と、一対の土留めパネルのそれぞれの外側面の一部分に設置されたプレート(下側側面樹脂プレート14、上側側面樹脂プレート24)と、を備え、プレート(下側側面樹脂プレート14、上側側面樹脂プレート24)の外側面と土との摩擦係数は、土留めパネル(下側土留めパネル10、上側土留めパネル20)の外側面と土との摩擦係数よりも低く、刃部材(下側刃部材13、上側刃部材23)には、プレート(下側側面樹脂プレート14、上側側面樹脂プレート24)の外側面と同一平面上に含まれる外側面(下側刃部材外側面13A、上側刃部材外側面23A)が形成され、刃部材の外側面(下側刃部材外側面13A、上側刃部材外側面23A)、およびプレート(下側側面樹脂プレート14、上側側面樹脂プレート24)の外側面は、土留めパネル(下側土留めパネル10、上側土留めパネル20)の外側面よりも、一対の土留めパネル(下側土留めパネル10、上側土留めパネル20)が対向する方向において外側に形成されている。したがって、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に土留めパネル(下側土留めパネル10、上側土留めパネル20)の外側面全体が溝の側壁と接触する場合に比べて、掘削された溝の側壁(土)との間の摩擦力が低減し、前方側への移動に対する支障を抑えることができる。
【0090】
また、土留装置100によれば、一対の土留めパネルのそれぞれの移動方向に沿った後方側先端には、少なくとも撓むことが可能な程度の柔軟性を有する板状部材(土砂流入防止板状部材17)が、一対の土留めパネルが対向する方向において所定距離をおいて設けられている。したがって、埋め戻しによる土留装置100の内部への土砂の流入を防ぎつつ、特に前方側への移動(牽引)の際での板状部材(土砂流入防止板状部材17)の埋設管との接触による埋設管の損傷や位置ズレを防ぐことができる。さらには、土留装置100によれば、刃部材の前方側端部のそれぞれに跨がって、当該土留装置100を牽引するためのひも状体(牽引用ひも状体16)が接続され、ひも状体は、全体として、前方へ向けて投げることができる程度の重量を有する。したがって、土留装置100とバックホウとを連結させる際に、土留装置100の内部にいる作業者に対する安全性を向上させることができる。
【0091】
また、土留装置100を用いた埋設工法によれば、移動工程(牽引・埋め戻し工程)によって、埋設工事において土留装置100が牽引されて前進する際に土留めパネル(下側土留めパネル10、上側土留めパネル20)の外側面全体が溝の側壁と接触する場合に比べて、掘削された溝の側壁(土)との間の摩擦力が低減するので、前方側への移動に対する支障を抑えることができる。すなわち、施工性が向上する。さらには、牽引準備工程によって、作業者を土留装置100の内部に滞在させた状態で土留装置100とバックホウとを連結させることができるので、土留装置100の内部にいる作業者に対する安全性を向上させることができる。
【0092】
<変更例>
次に、第1実施形態に係る土留装置100の変更例について説明する。上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。例えば、土留装置100の形状は全体的に直方体であるが、当該直方体に係る前後方向長さと左右方向長さと上下方向長さとの比率は特に限定されず、適宜に変更してもよい。ただし、土留装置100は、土留めが必要な深さでの埋設工事で使用されることから、前後方向長さ>上下方向長さ>左右方向長さとなることが好ましい。
【0093】
土留装置100は、下側ユニット1と上側ユニット2とで組み立て可能に構成されているが、分割不可能に一体化されているようにしてもよい。また、土留装置100は、上下方向に3つ以上のユニットで組み立て可能に構成されていてもよい。あるいは、土留装置100は、前後方向に2つ以上のユニットで組み立て可能に構成されていてもよい。
【0094】
下側土留めパネル10には、上下方向の3箇所のそれぞれで5枚の下側側面樹脂プレート14が前後方向に並設されているが、上下方向における設置箇所、および設置枚数、ならびに前後方向における設置枚数を適宜に変更してもよい。上側側面樹脂プレート24についても同様である。
【0095】
下側土留めパネル10には、上下方向の3箇所のそれぞれで5枚の下側側面樹脂プレート14が前後方向に並設されているが、上下方向の箇所に応じて前後方向に並設される下側側面樹脂プレート14の設置枚数が異なるようにしてもよい。また、下側土留めパネル10には、上下方向の3箇所で同一の前後方向長さ(長辺方向長さ)の下側側面樹脂プレート14が前後方向に並設されているが、上下方向の箇所に応じて下側側面樹脂プレート14の前後方向長さ(長辺方向長さ)が異なるようにしてもよい。さらには、下側土留めパネル10には、上下方向の3箇所で同一の上下方向長さ(短辺方向長さ)の下側側面樹脂プレート14が前後方向に並設されているが、上下方向の箇所に応じて下側側面樹脂プレート14の上下方向長さ(短辺方向長さ)が異なるようにしてもよい。これらの前後方向に並設される下側側面樹脂プレート14の設置枚数、下側側面樹脂プレート14の上下方向長さ(短辺方向長さ)、および上下方向長さ(短辺方向長さ)の変更例については、上側側面樹脂プレート24も同様である。
【0096】
下側土留めパネル10には、上下方向の3箇所で同一の前後方向長さ(長辺方向長さ)の下側側面樹脂プレート14が前後方向に並設されているが、前後方向における設置箇所に応じて、下側側面樹脂プレート14の前後方向長さ(長辺方向長さ)が異なるようにしてもよい。例えば、前方側から後方側へ向かうにつれて下側側面樹脂プレート14の前後方向長さ(長辺方向長さ)が長くなっていくようにしてもよい。あるいは、前方側から後方側へ向かうにつれて下側側面樹脂プレート14の前後方向長さ(長辺方向長さ)が短くなっていくようにしてもよい。さらには、前後方向の両端に配置された下側側面樹脂プレート14と、それ以外の下側側面樹脂プレート14と、で下側側面樹脂プレート14の前後方向長さ(長辺方向長さ)が異なるようにしてもよい。これらの下側側面樹脂プレート14の前後方向長さ(長辺方向長さ)の変更例については、上側側面樹脂プレート24も同様である。
【0097】
下側側面樹脂プレート14の左右方向長さは、下側レール部10aの左右方向長さ、および下側仕切り部10bの左右方向長さよりも長く、左右方向において、下側側面樹脂プレート14は、下側レール部10a、および下側仕切り部10bよりも外側に突出しているが、言い換えると、下側側面樹脂プレート14の外側面は、下側レール部10a、および下側仕切り部10bの外側先端よりも外側に形成されているが、下側レール部10a、および下側仕切り部10bの何れか一方、もしくは双方の外側先端と略同一の位置に、もしくは外側先端より内側に形成されていてもよい。この下側側面樹脂プレート14と下側レール部10a、および下側仕切り部10bとの左右方向における位置関係の変更例については、上側側面樹脂プレート24と上側レール部20a、および上側仕切り部20bとも同様である。
【0098】
相対的に上側に配置された一対の下側レール部10aの下側と相対的に中央に配置された一対の下側レール部10aの上側との距離と、相対的に中央に配置された一対の下側レール部10aの上側と相対的に下側に配置された一対の下側レール部10aの下側との距離と、は略同一であるが、異なるようにしてもよい。相対的に上側に配置された一対の下側レール部10aの下側と相対的に中央に配置された一対の下側レール部10aの上側との距離などと、相対的に上側に配置された一対の上側レール部20aの下側と相対的に下側に配置された一対の上側レール部20aの上側との距離と、は略同一であるが、異なるようにしてもよい。
【0099】
下側ユニット1の後方側先端には、一対の土砂流入防止板状部材17が設置されているが、土砂流入防止板状部材17が設置されていなくてもよい。ただし、土留装置100の内部への土砂の流入を防止することによる埋設物の品質向上の効果の観点から、土砂流入防止板状部材17が設置されている方が好ましい。
【0100】
一対の土砂流入防止板状部材17の間には隙間が形成されているが、この隙間に係る左右方向長さは適宜に変更してもよい。また、一対の土砂流入防止板状部材17の間には隙間が形成されていないようにしてもよい。ただし、埋設物との接触を低減することによる埋設物の品質向上の効果の観点から、一対の土砂流入防止板状部材17の間には隙間が形成されている方が好ましい。
【0101】
各下側土留めパネル10の底面には、下側底面樹脂プレート18が設置されているが、下側底面樹脂プレート18が設置されていなくてもよい。ただし、土留装置100が牽引される際の土との摩擦力を低減することができる効果の観点から、下側底面樹脂プレート18が設置されている方が好ましい。
【0102】
下側刃部材13の下端部には、牽引用ひも状体16が連結されているが、牽引用ひも状体16の構造は、土留装置100が牽引される際の荷重に耐えられる切断荷重、およびバックホウに連結させるための長さを有し、土留装置100の前方側へ投げられ、略中間部分でバックホウのバケットの先端に引っ掛けさせることを実現できる範囲で適宜に変更してもよい。例えば、牽引用ひも状体16を、ストレート型、またはバウ型の吊り金具と、吊り金具にシンブルなどを介して連結された2本のワイヤーロープとで構成させてもよい。この場合、ワイヤーロープが、土留装置100の前方側へ投げられることを実現できる重量を有していなくても、牽引用ひも状体16を構成する吊り金具であれば土留装置100の前方側へ投げることができる。
【0103】
3つの下側爪部13aはそれぞれ、各一対の2本の下側レール部10aの上側をそのまま前方側に延ばした位置に設けられているが、この上下方向に沿った位置は適宜に変更してもよい。例えば、3つの下側爪部13aはそれぞれ、各一対の2本の下側レール部10aの下側をそのまま前方側に延ばした位置に設けられてもよい。あるいは、3つの下側爪部13aはそれぞれ、各一対の2本の下側レール部10aの上下方向略中央をそのまま前方側に延ばした位置に設けられてもよい。すなわち、3つの下側爪部13aはそれぞれ、各一対の2本の下側レール部10aの上下方向の範囲を前方側に延ばした範囲で適宜に設けられてもよい。この3つの下側爪部13aの上下方向に沿った位置と、各一対の2本の下側レール部10aの上下方向に沿った位置との関係の変更例は、2つの上側爪部23aの上下方向に沿った位置と、各一対の2本の下側レール部10aの上下方向に沿った位置との関係についても同様である。
【0104】
下側水平支持体11、および上側水平支持体21は、左右方向の長さを調整可能に構成されているが、左右方向長さは固定されているようにしてもよい。また、土留装置100は、バックホウなどの重機などによって移動可能に構成されているが、自己の推進手段を有し、溝内を自走できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…下側ユニット
2…上側ユニット
10…下側土留めパネル
10a…下側レール部
10b…下側仕切り部
10c…下側篏合凹部
11…下側水平支持体
13…下側切部材
13a…下側爪部
13b…連結治具
13A…下側刃部材外側面
13B…下側刃部材内斜面
13C…下側切欠部
14…下側側面樹脂プレート
14a…下側ボルト
15…下側吊金具
16…牽引用ひも状体
17…土砂流入防止板状部材
18…下側底面樹脂プレート
2…上側ユニット
20…上側土留めパネル
20a…上側レール部
20b…上側仕切り部
20c…上側篏合凹部
21…上側水平支持体
23…上側切部材
23a…下側爪部
23A…上側刃部材外側面
23B…上側刃部材内斜面
24…上側側面樹脂プレート
24a…上側ボルト
100…移動式土留装置
【要約】
【課題】牽引を含む前方側への移動に対する支障を軽減することができる移動式土留装置、および移動式土留装置を用いた埋設工法を提供すること。
【解決手段】所定距離をおいて対向した状態で保持され、作業領域Wを形成する一対の土留めパネルと、一対の土留めパネルのそれぞれの移動方向に沿った前方側に設けられた刃部材と、一対の土留めパネルのそれぞれの外側面の一部分に設置されたプレートと、を備え、プレートの外側面と土との摩擦係数は、土留めパネルの外側面と土との摩擦係数よりも低く、刃部材には、プレートの外側面と同一平面上に含まれる外側面が形成され、刃部材の外側面、およびプレートの外側面は、土留めパネルの外側面よりも、一対の土留めパネルが対向する方向において外側に形成されている。
【選択図】
図1