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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】椅子付き浴槽用底板およびその昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
A61H33/00 310N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023151892
(22)【出願日】2023-09-20
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135398
【氏名又は名称】株式会社ヤエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 勢
(72)【発明者】
【氏名】新山 秀邦
(72)【発明者】
【氏名】藤川 浩之
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3073871(JP,U)
【文献】特開2006-326227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内で昇降させる矩形状の底板本体と、座部および背もたれ部を有する椅子と、前記底板本体の上面に設けられて前記椅子を鉛直方向に延びる回転軸周りに回動可能に支持する支持部とを備え、
前記椅子は、前記背もたれ部が前記底板本体の長辺に対向する方向と、前記背もたれ部が前記底板本体の短辺に対向する方向との間で回動し、
前記回転軸は、軸線が前記座部よりも後方で前記背もたれ部を貫通する椅子付き浴槽用底板。
【請求項2】
前記椅子は、前記座部および背もたれ部が水平軸周りに一体的に回動可能となるように、前記支持部に支持されている請求項1に記載の椅子付き浴槽用底板。
【請求項3】
前記椅子は、前記背もたれ部が前記底板本体の長辺に対向する状態で、前記座部の前端が前記底板本体の長辺からはみ出すように、前記支持部に支持されている請求項1に記載の椅子付き浴槽用底板。
【請求項4】
前記椅子は、前記背もたれ部が前記底板本体の長辺に対向する状態で、前記座部の前端が前記底板本体の長辺からはみ出す位置と、前記座部の前端が前記底板本体の長辺からはみ出さない位置との間で往復動可能となるように、前記支持部に支持されている請求項3に記載の椅子付き浴槽用底板。
【請求項5】
請求項1に記載の椅子付き浴槽用底板と、
前記椅子付き浴槽用底板を昇降する昇降装置本体とを備える椅子付き浴槽用底板の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子付き浴槽用底板およびその昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入浴装置として、昇降装置により上下動する底板を浴槽内に配置し、上昇位置において入浴者を車椅子ごと底板に搭載した後、底板を降下させることにより入浴者が入浴可能な昇降式入浴装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された昇降式入浴装置は、高齢者や要介護者等が車椅子ごと入浴することを想定しているため、車椅子を使用せずに入浴する場合には、底板昇降時の入浴者の姿勢が不安定になり易く、入浴者が安心して入浴することができないおそれがあった。
【0004】
また、特許文献2には、入浴者が座部に座った姿勢で浴室の洗い場からバスタブに移動することができる装置が開示されているが、装置構成が複雑であるために製造コストが高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-290414号公報
【文献】特許第6714182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成により入浴者が安心して入浴することができる椅子付き浴槽用底板およびその昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、浴槽内で昇降させる矩形状の底板本体と、座部および背もたれ部を有する椅子と、前記底板本体の上面に設けられて前記椅子を鉛直方向に延びる回転軸周りに回動可能に支持する支持部とを備え、前記椅子は、前記背もたれ部が前記底板本体の長辺に対向する方向と、前記背もたれ部が前記底板本体の短辺に対向する方向との間で回動し、前記回転軸は、軸線が前記座部よりも後方で前記背もたれ部を貫通する椅子付き浴槽用底板により達成される。
【0008】
この椅子付き浴槽用底板において、前記椅子は、前記座部および背もたれ部が水平軸周りに一体的に回動可能となるように、前記支持部に支持されていることが好ましい。
【0009】
前記椅子は、前記背もたれ部が前記底板本体の長辺に対向する状態で、前記座部の前端が前記底板本体の長辺からはみ出すように、前記支持部に支持されていることが好ましい。更に、前記椅子は、前記背もたれ部が前記底板本体の長辺に対向する状態で、前記座部の前端が前記底板本体の長辺からはみ出す位置と、前記座部の前端が前記底板本体の長辺からはみ出さない位置との間で往復動可能となるように、前記支持部に支持されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記目的は、上述した椅子付き浴槽用底板と、前記椅子付き浴槽用底板を昇降する昇降装置本体とを備える椅子付き浴槽用底板の昇降装置により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な構成により入浴者が安心して入浴することができる椅子付き浴槽用底板およびその昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る椅子付き浴槽用底板を備える昇降装置の平面図である。
図2図1の要部を示す斜視図である。
図3図1の他の要部を分解状態で示す斜視図である。
図4図1の更に他の要部を示す断面図である。
図5図4の要部拡大図である。
図6図5の側面図である。
図7図5の平面図である。
図8図4に示す要部の作動後の状態を示す断面図である。
図9図1に示す椅子付き浴槽用底板の作動を説明するための概略断面図である。
図10図9に示す椅子付き浴槽用底板の変形例を示す側面図である。
図11図9に示す椅子付き浴槽用底板の他の変形例を示す側面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る椅子付き浴槽用底板を備える昇降装置の概略断面図である。
図13図12の平面図である。
図14】本発明の更に他の実施形態に係る椅子付き浴槽用底板を備える昇降装置の平面図である。
図15】本発明の更に他の実施形態に係る椅子付き浴槽用底板の要部側面図である。
図16図15に示す椅子付き浴槽用底板を備える昇降装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る椅子付き浴槽用底板の昇降装置(以下、単に「昇降装置」という)の平面図である。また、図2は、図1に示す昇降装置の斜視図であり、一部を切り欠いて示している。
【0014】
図1および図2に示すように、昇降装置1は、椅子付き浴槽用底板10と、椅子付き浴槽用底板10を昇降する昇降装置本体20と、昇降装置本体20を収容する収容部30とを備えており、椅子付き浴槽用底板10を浴槽50の内部で昇降させることができる。
【0015】
椅子付き浴槽用底板10は、矩形状の底板本体11と、底板本体11の両側のそれぞれに設けられた第1の係合部12および第2の係合部13とを備えている。底板本体11は平板状に形成されており、上面側に椅子60が設けられている。底板本体11の矩形状は、必ずしも完全な長方形に限定されず、例えば、角部にアールまたは面取りを施した形状、先細となるように若干のテーパを有する形状、各辺が僅かに湾曲する形状なども含まれる。椅子60は、入浴者Uが座ることができる座部61と、入浴者Uの背中を支持面62a側で支える背もたれ部62とを備えており、後述する支持部により、鉛直方向に延びる回転軸R周りに回動自在に支持されている。座部61は、平板状に形成されているが、その形状は特に限定されるものではなく、例えば、下に凸となるように円弧状に形成してもよい。椅子60は、図1に破線で示すように背もたれ部62が底板本体11の長辺11aに対向する方向から、図1に実線で示すように背もたれ部62が底板本体11の短辺11bに対向する方向まで、90度回動させることができる。椅子60の回動範囲は、約90度となるようにストッパ等により規制することが好ましい。
【0016】
図1に示すように、第1の係合部12および第2の係合部13は、底板本体11の両側の長辺縁部における両端部近傍の2か所(合計4か所)にそれぞれ設けられている。第1の係合部12および第2の係合部13は、いずれも筒状のローラからなり、回転軸が長辺縁部に沿うように配置されて、回転自在に支持されている。
【0017】
図2に示すように、浴槽50は、内壁51と外壁53とが上縁部52において連結された形状を有している。内壁51と外壁53との間には全周にわたって隙間が形成されており、この隙間によって収容部30の空間部31が構成されている。空間部31には、後述する昇降装置本体20が収容される。
【0018】
収容部30の空間部31は、浴槽50内に面する側が内壁51によって画定される。空間部31は、水が浸入しないように密閉空間であることが好ましいが、水がかからない一部において外壁53の外部と連通してもよい。内壁51には、椅子付き浴槽用底板10の第1の係合部12および第2の係合部13に対応する箇所(図1に示す合計4か所)に、仕切部材40が設けられている。
【0019】
図3に斜視図で示すように、仕切部材40は、上下に延びる帯状のシート体41の周縁に枠部42を備えており、浴槽50の内壁51に形成された切欠部54に枠部42を嵌め込むことにより、仕切部材40が切欠部54を水密状態で覆うように設けられている。仕切部材40は、椅子付き浴槽用底板10の昇降による第1の係合部12および第2の係合部13の上下方向の可動範囲全体にわたって設けられていればよく、本実施形態においては、内壁51の側部の下部から上縁部52にわたって設けられているが、内壁51の側部にのみに設けることも可能である。
【0020】
シート体41は、弛みをもたせることで、椅子付き浴槽用底板10の昇降に伴い変形可能とされている。シート体41は、変形を容易にするため、弾性変形可能な材料により形成されることが好ましく、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のゴム材により形成することができる。シート体41の表裏面には、摩擦係数を低減させるためにコーティング等を施してもよい。
【0021】
昇降装置本体20は、収容部30内において椅子付き浴槽用底板10の短辺方向両側にそれぞれ配置されており、図2においては、収容部30の手前側の一部を切り欠くことで、一方の昇降装置本体20の全体を露出させた状態で示している。図2に示すように、昇降装置本体20は、パンタグラフ式の公知の機構を備えており、水平方向に互いに平行に延びるベース部21と可動部22との間が、互いに交差する一対の連結部材23,24により連結されている。ベース部21および可動部22は、椅子付き浴槽用底板10の長辺縁部に沿って延びる断面コ字状のレール状の部材であり、連結部材23,24の一端側に設けられたガイドローラ231,241が、それぞれベース部21および可動部22に沿って往復動可能に設けられている。
【0022】
一対の連結部材23,24は、回動部25において互いに回動可能とされており、水圧シリンダ等からなるアクチュエータ26の作動によりガイドローラ231をベース部21に沿って進退させることで、可動部22を上下動させることができる。可動部22の昇降ストロークは、例えば45cm±20cm程度であり、任意の高さ位置で可動部22を停止させることができる。
【0023】
可動部22の上面側の両端部近傍には、椅子付き浴槽用底板10の第1の係合部12および第2の係合部13に対応する位置に、椅子付き浴槽用底板10を支持する支持部27が設けられている。支持部27は、筒状のローラからなり、回転軸が底板本体11の長辺縁部に沿うように配置されて、回転自在に支持されている。
【0024】
図4は、昇降装置1の収容部30の断面図である。図4に示すように、第1の係合部12は支持部27の上方に配置されており、第2の係合部13は支持部27の内方に配置されている。第1の係合部12および第2の係合部13は、支持部27との間で仕切部材40を挟持する。
【0025】
図5は、図4の要部拡大図である。また、図6図5の側面図であり、図7図6の平面図である。構成の理解を容易にするため、図6および図7においては、仕切部材40の図示を省略している。図5から図7に示すように、第1の係合部12および第2の係合部13は、軸方向の中央部が、底板本体11の長辺縁部から外方に張り出す平板状のブラケット14に、ベアリング(図示せず)を介して回転自在に支持されている。
【0026】
図6に示すように、第1の係合部12の軸方向両側には、第1の係合部12の両端部から中央部に向けてテーパ状に広がるテーパ部12a,12aがそれぞれ形成されており、第1の係合部12の回転軸方向の中央部に、隣接するテーパ部12a,12aの部位よりも小径となる縮径部12bが形成されている。第2の係合部13は、全体が円筒状に形成されている。
【0027】
支持部27は、軸方向の両端部が、可動部22の上面に固定されたベース部28から起立する一対の起立片28a,28aに、ベアリング(図示せず)を介して回転自在に支持されている。図6に示すように、支持部27が第1の係合部12のテーパ部12a,12aと対向する位置には、支持部27の両端側から中央部に向けてテーパ状に窄まるテーパ部27a,27aがそれぞれ形成されており、支持部27の回転軸方向の中央部に、隣接するテーパ部27a,27aの部位よりも大径となる拡径部27bが形成されている。拡径部27bおよび縮径部12bは、図5に示す仕切部材40を介して、径方向に互いに係合する。
【0028】
上記の構成を備える昇降装置1は、図4に示すように、椅子付き浴槽用底板10が上昇位置にある状態から、アクチュエータ26(図2参照)の作動により可動部22を降下させると、図8に示すように、可動部22に支持された椅子付き浴槽用底板10が下降位置まで下降する。可動部22が上昇位置と下降位置との間で移動する間は、仕切部材40の変形によって、第1の係合部12および第2の係合部13が支持部27との間で仕切部材40を挟持した状態が維持される。
【0029】
図9は、図1に示す椅子付き浴槽用底板10の作動を説明するための概略断面図である。図9(a)に示すように、椅子付き浴槽用底板10は、底板本体11の上面に設けられて、鉛直方向に延びる回転軸R周りに椅子60を回動自在に支持する支持部70を備えている。
【0030】
支持部70は、基板71と、基板71および底板本体11を回動自在に連結する回動連結部72とを備えている。基板71は、水平方向両側から起立する一対の取付部71a,71aが設けられており、一対の取付部71a,71aの間に水平軸63を介して椅子60が回動自在に取り付けられている。椅子60は、座部61に背もたれ部62が固定されており、解除レバー(図示せず)の操作によりロック解除されて、座部61および背もたれ部62が水平軸63周りに一体的に回動する。
【0031】
図9(a)に示す椅子60は、背もたれ部62の支持面62aが底板本体11の長辺に対向しており、図1に破線で示す背もたれ部62の方向に対応する。入浴者は、この状態で、洗い場等の浴槽50の外部から椅子60に腰掛けることができる。
【0032】
ついで、椅子60を回転軸R周りに矢示方向に90度回動させると、図9(b)に示すように、背もたれ部62の支持面62aが底板本体11の短辺11bに対向する。これにより、入浴者の脚を含めた身体全体を、底板本体11の直上に位置させることができる。
【0033】
次に、図9(c)に示すように、解除レバー(図示せず)の操作により、座部61に設けられたロックピン64と、基板71に設けられた係合部65との係合を解除することで、椅子60を水平軸63周りに矢示方向に回動させる。これにより、座部61が傾斜して入浴者の大腿部が持ち上げられると共に背もたれ部62が倒れることで、入浴者の姿勢を楽にすることができる。水平軸63周りの椅子60の回動を促すため、座部61と基板71との間にばね部材66を介在させてもよい。座部61は、入浴者の臀部が沈み込むように、下に凸となる弓状に形成することで、リラックス効果を高めることができる。
【0034】
この後、椅子付き浴槽用底板10を図8に示す下降位置まで下降させることで、背もたれ部62の背面側が浴槽50の内壁51に沿って摺動し、入浴者が入浴することができる。このように、本実施形態の椅子付き浴槽用底板10は、入浴者が椅子60に座ってから入浴するまで不安定な姿勢になるおそれがないため、入浴者が安心して入浴することができる。
【0035】
椅子60の構造は、特に限定されるものではなく、例えば、図10(a)に示すように、座部61および支持板71の中央部から突出するようにそれぞれ設けられた取付部61a,71a同士を、水平軸63を介して連結することで、図10(b)に示すように、座部61の中央部で椅子60を回動させることができる。この構成によれば、椅子60を傾斜させた際に、背もたれ部62の後方への突出量を抑制することができるので、底板本体11の下降時に背もたれ部62が浴槽50に干渉するのを回避し易くすることができる。図10(a)に示す構成においては、ばね部材66を水平軸63の前後にそれぞれ配置することが好ましい。なお、図10において、図9と同様の機能を果たす構成要素には、同一の符号を付している(以下に説明する図面においても同様)。
【0036】
図9および図10に示す椅子60のように、座部61および背もたれ部62は、水平軸63周りに一体的に回動するように構成することが好ましいが、図11(a)および(b)に示すように、ラチェット機構67のレバー67aの操作により、座部61を水平に維持したまま背もたれ部62のみが傾斜するように構成することもできる。
【0037】
図9に示す椅子60は、鉛直方向に延びる回転軸Rが座部61を貫通するように配置することで、入浴者の身体が回転時に過度に振られるのを抑制することができるが、図12(a)および(b)の概略断面図、ならびに、図13(a)および(b)の平面図に示すように、回転軸Rが座部61よりも後方で背もたれ部62を貫通するように、椅子60を配置してもよい。この構成によれば、図12(a)および図13(a)に示すように、背もたれ部62が底板本体11の長辺11aに対向する状態で、座部61の前端61aが底板本体11の長辺11aからはみ出す一方、図12(b)および図13(b)に示すように、背もたれ部62が底板本体11の短辺11bに対向する状態で、座部61の全体が底板本体11の直上に位置するように、椅子60を支持部70により回動自在に支持することができる。図13(a)に示すように、底板本体11の長辺11aからはみ出した座部61の前端61aは、浴槽50の外壁53に略一致することが好ましく、入浴者が浴槽50外部の長辺側から、より容易に腰掛けることができる。
【0038】
図12および図13に示す椅子60は、図14(a)および(b)に示すように、背もたれ部62を、支持面62aと座部61との間に水平部62bを備える構成にすることで、入浴者の身体が回転時に振られる程度を緩和することができる。
【0039】
また、図15(a)および(b)に示すように、基板71の上面に形成されたガイドレール71aに沿って、座部61が往復動可能となるように構成することで、支持部70が椅子60を回動可能かつ往復動可能に支持することができる。この構成によれば、図16(a)に示すように、背もたれ部62が底板本体11の長辺11aに対向する状態で、座部61の前端61aが底板本体11の長辺11aからはみ出す位置から、椅子60を矢示方向に後退させることで、図16(b)に示すように、座部61の前端が底板本体11の長辺からはみ出さない位置に椅子60が移動する。この状態から、椅子60を矢示方向に回動させることで、図16(c)に示すように、背もたれ部62が底板本体11の短辺11bに対向する状態になる。
【0040】
図15および図16に示す構成によれば、図16(a)に示す状態で入浴者が椅子60に座るのを容易にしつつ、図16(c)に示す状態では入浴者が十分に脚を伸ばすことができるので、入浴者が安全且つ快適に入浴することができる。
【0041】
また、本実施形態の昇降装置1は、昇降装置本体20が収容される収容部30の空間部31が、変形可能な仕切部材40によって浴槽50内との間で仕切られているため、昇降装置本体20が浴槽50内の水に浸漬されるおそれがない。したがって、昇降装置本体20のアクチュエータ26等に対して高い水密性が要求されないため、昇降装置1の低コスト化、長寿命化を図ることができる。昇降装置本体20のアクチュエータ26は、水圧シリンダ以外に、電力や磁力等を動力源とするものであってもよく、例えば、ギヤドモータ、ソレノイド等を挙げることができる。また、昇降装置本体20を浴槽50の内壁51の外側に設けることで、浴槽50内の清掃や昇降装置本体20のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0042】
また、第1の係合部12が支持部27の上方に配置され、第2の係合部13が支持部27の内方に配置されて、第1の係合部12および第2の係合部13が支持部27との間で仕切部材40を挟持することにより、椅子付き浴槽用底板10の短辺方向両側にそれぞれ配置された昇降装置本体20の支持部27の間に、椅子付き浴槽用底板10を確実に保持することができるので、椅子付き浴槽用底板10の短辺方向の位置ずれを抑制しながら椅子付き浴槽用底板10を昇降させることができる。
【0043】
本実施形態においては、第1の係合部12の回転軸が支持部27の回転軸の直上に位置し、第2の係合部13の回転軸が支持部27の回転軸と同じ高さに位置することで、図8に示す第1の係合部12および支持部27の軸重心を結ぶ直線L1と、第2の係合部13および支持部27の軸重心を結ぶ直線L2とが互いに直交するように構成されており、これによって、椅子付き浴槽用底板10の位置ずれ防止の効果を高めている。但し、直線L1,L2は必ずしも直交する必要はなく、例えば、直線L1は、鉛直方向から左右にそれぞれ約30度まで傾斜してもよく、直線L2は、水平方向から上下にそれぞれ約30度まで傾斜してもよい。
【0044】
支持部27、第1の係合部12および第2の係合部13は、本実施形態のように回転自在に配置されたローラであることが好ましく、これによって椅子付き浴槽用底板10のスムーズな昇降を促すことができる。但し、支持部27、第1の係合部12および第2の係合部13は、必ずしもローラである必要はなく、例えば、可動部22または底板本体11に回転不能に固定された円柱状等の部材であってもよい。
【0045】
また、縮径部12bと拡径部27bとが仕切部材40を介して径方向に係合する構成にすることで、椅子付き浴槽用底板10の短辺方向の位置ずれが規制されるだけでなく、椅子付き浴槽用底板10の長辺方向の位置ずれも規制されるため、椅子付き浴槽用底板10の昇降をより確実に行うことができる。本実施形態においては、第1の係合部12に縮径部12bを形成し、支持部27に拡径部27bを形成しているが、第1の係合部12に拡径部を形成し、支持部27に縮径部を形成してもよい。拡径部および縮径部の形成位置は、第1の係合部12および支持部27の軸方向中央部に限定されるものではなく、他の位置であってもよい。
【0046】
本実施形態の収容部30は、浴槽50の内壁51と外壁53との間に形成される空間部31に昇降装置本体20を収容する構成としているが、昇降装置本体20が浴槽50内の水に浸漬されることなく椅子付き浴槽用底板10を支持可能であれば、他の構成であってもよく、浴槽50の形状や大きさ、配置等に応じて適宜の位置に収容部30を設けることが可能である。空間部31は、浴槽50の内壁51によって画定されることが好ましいが、必ずしもこの構成には限定されない。
【0047】
本実施形態の仕切部材40は、椅子付き浴槽用底板10の側縁部に沿って複数設けられているが、単一であってもよい。また、本実施形態の昇降装置本体20は、椅子付き浴槽用底板10の短辺方向両側を支持するように配置しているが、椅子付き浴槽用底板10の長辺方向両側を支持する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 椅子付き浴槽用底板の昇降装置
10 椅子付き浴槽用底板
11 底板本体
50 浴槽
60 椅子
61 座部
62 背もたれ部
70 支持部
【要約】
【課題】 簡素な構成により入浴者が安心して入浴することができる椅子付き浴槽用底板を提供する。
【解決手段】 浴槽50内で昇降させる矩形状の底板本体11と、座部61および背もたれ部62を有する椅子60と、底板本体11の上面に設けられて椅子60を鉛直方向に延びる回転軸R周りに回動可能に支持する支持部とを備え、椅子60は、背もたれ部62が底板本体11の長辺11aに対向する方向と、背もたれ部62が底板本体11の短辺11bに対向する方向との間で回動する椅子付き浴槽用底板10である。
【選択図】 図1
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