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特許7553992品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240911BHJP
   A01K 61/00 20170101ALI20240911BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01K61/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023173846
(22)【出願日】2023-10-05
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2023-0109911
(32)【優先日】2023-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523379708
【氏名又は名称】株式会社オドン
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ヨン ヒ
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-112368(JP,A)
【文献】特許第7211602(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/02
A01K 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT:Artificial Intelligence of Things)システムにおいて、
内臓された少なくとも1つ以上のセンサーを用いて養殖場の飼育環境データを定期的に収集して提供し、前記AIOTシステムにおけるエッジサーバとして機能する少なくとも1つのスマートブイ、
人工知能を用いて、前記スマートブイから受信される前記養殖場の飼育環境データ及び関連機関から提供される気象及び海洋情報データに基づいて、前記養殖場における飼育されている品種に関する推奨環境データを提供し、前記推奨環境データを構築するために必要な意思決定の支援及び必要な消耗品のターゲット広告を提供するメインサーバ、及び
前記推奨環境データに関するカスタマイズ動作を実行し、前記ターゲット広告を用いて前記消耗品を購入するユーザー端末を含むことを特徴とする品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項2】
前記養殖場の飼育環境データは、水温、塩分、溶存酸素量、pH、アンモニア総量、クロロフィルa、硝酸塩及び貧酸素水塊のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項3】
前記スマートブイは、
前記養殖場の飼育環境データを収集する少なくとも1つのセンサー、
前記AIOTシステムを構成する前記ユーザー端末及び前記メインサーバと互いに連結する5Gバックボーンネットワークとの通信を可能にする通信インターフェース、
前記養殖場の飼育環境データを用いて分析データを生成するエッジコンピューティングを実行し、前記分析データを前記ユーザー端末に直接提供するエッジサーバ及び
太陽光を用いて自己発電を行って前記センサー、前記通信インターフェース及び前記エッジサーバのうちの少なくとも1つに電力を供給する太陽光パネルを含むことを特徴とする請求項2に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項4】
前記スマートブイは、
前記センサー、前記通信インターフェース及び前記エッジサーバのうちの少なくとも1つに補助電力を供給する補助バッテリー、及び
前記ユーザー端末及び前記メインサーバを連結するネットワーク上で通信中継機能を実行する通信中継パネルを含むことを特徴とする請求項3に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項5】
前記センサー、前記通信インターフェース、前記エッジサーバ、前記バッテリー及び前記通信中継パネルは、防水及び水密処理が行われることを特徴とする請求項4に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項6】
前記関連機関は、気象庁、環境省及び海上保安庁のうちの少なくとも1つを含み、
前記関連機関から提供される気象及び海洋情報データは、気象、海水、赤潮、潮時、潮流に関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項7】
前記メインサーバは、前記関連機関から提供される気象及び海洋情報データ及び前記養殖場の飼育環境データのデータ構造を統一するためのデータ加工を実行することを特徴とする請求項6に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項8】
前記推奨環境データを構築するために必要な意思決定は、人工知能の機械学習(machine learning)を用いて前記推奨環境データを前記養殖場に構築するために要求される手順を順次提供し、前記推奨環境データは、前記養殖場における飼育されている魚種に応じて異なることを特徴とする請求項7に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項9】
前記推奨環境データに関するカスタマイズ動作は、ユーザー端末を通じてユーザーにアラームを提供するためのアラーム通知範囲を設定する動作を含み、前記アラーム通知範囲は、前記推奨環境データにより提示された推奨範囲内に存在することを特徴とする請求項1に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【請求項10】
前記意思決定は、
異常水温や赤潮現象発生時に状況対処のために要求される対応策を順次的に提示する対応手順を含み、前記対応手順は、ウェブ(WEB)、またはアプリ(APP)の形態で提供するように構成されることを特徴とする請求項8に記載の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖場の環境管理システムに係り、より詳しくは、品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT:Artificial Intelligence of Things )システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国内の養殖産業は、量的、環境にやさしい成長のために養殖固有の技術開発のみならず、IoT(Internet of Things)技術及び第4次産業の融合が切実な実情である。
既存の経験に依存した養殖管理方法としては、統計、技術の共有及び伝播が困難である。それを克服するためには、クラウドサービスを通じて養殖関連データを情報化及び分析して活用し、中、長期的な気象予測を活用して先制的な対応が可能にするシステムに関する要求がある。
また、地球温暖化による海水の温度上昇により、国内の養殖場における養殖できる魚種の種類が変化しているため、様々な魚種に対して適切な飼育環境を自動的に提供できるシステムに関する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0083829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT)システムを提供することである。
本発明の課題は、上記で言及した課題に限定されず、言及されない他の課題は後述の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT:Artificial Intelligence of Things)システムは、
内臓された少なくとも1つ以上のセンサーを用いて養殖場の飼育環境データを定期的に収集して提供し、前記AIOTシステムにおけるエッジサーバとして機能する少なくとも1つのスマートブイ、
人工知能を用いて、前記スマートブイから受信される前記養殖場の飼育環境データ及び関連機関から提供される気象及び海洋情報データに基づいて、前記養殖場における飼育されている品種に関する推奨環境データを提供し、前記推奨環境データを構築するために必要な意思決定の支援及び必要な消耗品のターゲット広告を提供するメインサーバ、及び
前記推奨環境データに関するカスタマイズ動作を実行し、前記ターゲット広告を用いて前記消耗品を購入するユーザー端末を含む。
【0006】
また、前記養殖場の飼育環境データは、水温、塩分、溶存酸素量、pH、アンモニア総量、クロロフィルa、硝酸塩及び貧酸素水塊のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
前記スマートブイは、
前記養殖場の飼育環境データを収集する少なくとも1つのセンサー、
前記AIOTシステムを構成する前記ユーザー端末及び前記メインサーバと互いに連結する5Gバックボーンネットワークとの通信を可能にする通信インターフェース、
前記養殖場の飼育環境データを用いて分析データを生成するエッジコンピューティングを実行し、前記分析データを前記ユーザー端末に直接提供するエッジサーバ、及び
太陽光を用いて自己発電を行って前記センサー、前記通信インターフェース及び前記エッジサーバのうちの少なくとも1つに電力を供給する太陽光パネルを含む。
【0008】
前記スマートブイは、
前記センサー、前記通信インターフェース及び前記エッジサーバのうちの少なくとも1つに補助電力を供給する補助バッテリー及び
前記ユーザー端末及び前記メインサーバを連結するネットワーク上で通信中継機能を実行する通信中継パネルを含む。
また、前記センサー、前記通信インターフェース、前記エッジサーバ、前記バッテリー及び前記通信中継パネルは防水及び水密処理が行われる。
【0009】
また、前記関連機関は、気象庁、環境省及び海上保安庁のうちの少なくとも1つを含み、
前記関連機関から提供される気象及び海洋情報データは、気象、海水、赤潮、潮時、潮流に関する情報を含む。
また、前記メインサーバは、前記関連機関から提供される気象及び海洋情報データ及び前記養殖場の飼育環境データのデータ構造を統一するためのデータ加工を実行する。
【0010】
また、前記推奨環境データを構築するために必要な意思決定は、人工知能の機械学習(machine learning)を用いて、前記推奨環境データを前記養殖場に構築するために要求される手順を順次提供し、前記推奨環境データは、前記養殖場における飼育されている魚種に応じて異なることを特徴とする。
また、前記推奨環境データに関するカスタマイズ動作は、ユーザー端末を通じてユーザーにアラームを提供するためのアラーム通知範囲を設定する動作を含み、前記アラーム通知範囲は、前記推奨環境データにより提示された推奨範囲内に存在する。
【0011】
また、前記意思決定は、
異常水温や赤潮現象発生時に状況対処のために要求される対応策を順次的に提示する対応手順を含み、前記対応手順は、ウェブ(WEB)、またはアプリ(APP)の形態で提供するように構成される。
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0012】
本発明による品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステムによれば、養殖場における飼育されている魚種に応じてより最適の飼育環境を提供する。
また、本発明による品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステムは、スマートブイにエッジコンピューティングの能力を有するエッジサーバの機能を付与するので、既存のIoTシステムに比べてはるかに高速、安定したネットワークを構成する。
【0013】
本発明による品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステムによれば、養殖場の最適な管理に必要な意思決定に役立つ順次的な手順を提供することにより、ユーザーの利便性を最大化する。
但し、本発明の効果は上記の言及した効果に限定されず、言及されない他の効果は後述の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT:Artificial Intelligence of Things)システムの概略的な構成図を示す図である。
図2】本発明のスマートブイの斜視図を示す図である。
図3】本発明のスマートブイ内に内臓されたコンポネントの概略図を示す図である。
図4】本発明のメインサーバにより提供される魚種に応じた推奨環境データを示す図である。
図5】本発明のユーザー端末において実行される推奨環境データに関するカスタマイズ動作の一例を示す図である。
図6】本発明の様々な装置及び/またはシステムを具現する例示的なコンピューティング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の長所及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述される実施例を参照すれば明らかになる。しかしながら、本発明は、後述の開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態として具現されることができ、但し、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。明細書全体にわたって、同じ参照符号は同じ構成要素を指す。
【0016】
本明細書における記述する実施例は、本発明の理想的な例示図の断面図及び/または平面図を参照して説明される。図面における構成らの厚さは、技術的内容の効果的な説明のために誇張されたものである。従って、図面における例示される構成らは概略的な属性を有し、図面における例示される構成らの形状は、構成の特定の形態を例示するためのものであり、発明の範疇を制限するためのものではない。本明細書の様々な実施例において、第1、第2、第3などの用語が様々な構成要素を説明するために使用されているが、これらの構成要素がこのような用語により限定されるべきではない。これらの用語は、単にある構成要素を他の構成要素と区別させるために使用されただけである。ここにおける説明、例示される実施例は、それの相補的な実施例も含む。
【0017】
本明細書における使用される用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は、文句で特に言及しない限り、複数形も含む。明細書における使用される「含む(Comprises)」及び/または「含む(含んでいる)(Comprising)」は、言及した構成要素、段階、動作及び/または素子に1つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
他の定義がなければ、本明細書において使用されるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解し得る意味として使用される。また、一般的に使用される辞書で定義されている用語は、特に明確に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の概念及びそれによる実施例に関して詳細に説明する。
図1は、本発明の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT:Artificial Intelligence of Things)システムの概略的な構成図を示す図である。
本発明における使用される用語の知能型モノインターネット(AIOT:Artificial Intelligence of Things)は、「ある問題を解決したり目標を達成したりするためにデータを収集し、人工知能を開発してモノに搭載または融合し、活用するために必要な技術と力量、そして、産業の総体」である。ここにおけるモノ(Things)は、「物理的なモノ、デジタルのモノ、そして、生物学的な存在を総称」する。
【0019】
AIOTは、「人工知能融合技術(AI Convergence Technology)」を意味し、「Artificial Intelligence of Things」と「AI of Things」との略語である。世界は、3次産業革命のIT時代から4次産業革命のAIoT時代へ変化しており、その変化は融合(Convergence)に基づく質的な変化である。AIOTは、情報技術に基づいて連結性と知能性を拡張、融合する過程から作られる融合技術である。 AIOTは、4次産業革命を代表する核心技術として、4次産業革命の超連結性(Hyperconnectivity)、超知能性(Superintelligence)、そして、超融合性(Hyperconvergence)を特徴とする。
【0020】
本発明における使用される「エッジ(edge)」という用語は、エッジサーバ、ユーザーのコンピュータまたはIoTデバイスを意味する。データセンターの核心から離れてデータ処理及びデータを分散してデータと意思決定をユーザー及びデバイスにもっと近い位置に移動させてより良いユーザーの経験を提供する所である。エッジコンピューティングとは、ユーザーまたはデータソースの物理的な位置やその近所でコンピューティングを実行することを意味する。ユーザーの端末装置に近い位置でコンピューティングサービスを処理すると、ユーザーにはより高速、安定したサービスが提供され、柔軟なハイブリッドクラウドコンピューティングの長所を得る。エッジコンピューティングは、複数の位置で共通のリソースプールを使用してデータの演算及び処理を分散させる方法の1つである。
【0021】
エッジは、核心データセンターからユーザー及びデータに近い物理的な場所に至るまでの一貫した環境を拡張するための戦略である。エッジコンピューティングは、より高速、安定しながら、安価なサービスが可能なことを意味する。ユーザーは、エッジコンピューティングを通じてより高速であり、より一貫した経験をする。エッジコンピューティングは、情報貯蔵及びコンピューティング能力を、該情報を生成するデバイスと、それを消費するユーザーにもっと近く提供するプロセスである。
伝統的に、アプリケーションは、センサー及びスマートフォンのようなスマートデバイスから中央データセンターにデータを伝送して処理してきた。しかしながら、データの前例のない複雑さと規模は、ネットワーク性能を上回ることになった。エッジコンピューティングシステムは、処理機能をユーザー及びデバイスにもっと近く転換することにより、アプリケーションの性能を大きく改善し、帯域幅の要件を減らしながら、より高速のリアルタイムインサイトを提供する。
【0022】
本発明の品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT:Artificial Intelligence of Things)システム(100)は、少なくとも1つのスマートブイ(111)、ユーザー端末(120)及びメインサーバ(130)を含む。
少なくとも1つのスマートブイ(111)は、内臓された少なくとも1つ以上のセンサーを用いて養殖場(110)の飼育環境データを定期的に収集してユーザー端末(120)及び/またはメインサーバ(130)に提供する。
養殖場の飼育環境データは、水温、塩分、溶存酸素量、pH、アンモニア総量、クロロフィルa、硝酸塩及び貧酸素水塊のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
海水中に溶けている酸素量を溶存酸素量といい、溶存酸素濃度が低い水塊を貧酸素水塊(hypoxia water mass)という。
貧酸素水塊の酸素濃度の定義に関してはまだ議論の余地が残っているが、水塊(water mass)内の溶存酸素濃度により化学的、生物学的反応が現れるため、それに基づいて海水中の溶存酸素濃度が2.5mL/L以下になると、海底堆積物に生息する底生動物の斃死が起こるので、それ以下では貧酸素水塊といい、0.025mL/L以下では還元反応が起こるので、その以下では無酸素水塊(anoxia water mass)という。
【0024】
図1においては、4つのスマートブイ(111)が養殖場(110)の4つの四角コーナーに配置されることを示しているが、それは一例を示したものである。本発明のAIOTシステム(100)は、必要に応じてスマートブイ(111)の数を増加させる。
本発明のスマートブイ(111)は、従来の養殖場管理システムとは異なり、AIOTシステム(100)でエッジサーバとして機能する。
本発明による品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能なAIOTシステムは、スマートブイにエッジコンピューティングの能力を有するエッジサーバの機能を付与することにより、既存のIoTシステムに比べてはるかに高速、安定したネットワークを構成する。
【0025】
スマートブイ(111)がエッジサーバのエッジコンピューティング機能を有することにより、本発明のAIOTシステム(100)は、通信の切断、途絶などに積極的に対応する。
スマートブイ(111)がエッジサーバの機能を実行することにより、バックボーンネットワークでの通信途絶の場合にもユーザー端末と連結が維持され続けることにより、より堅牢なネットワーク構成が可能である。
本発明のメインサーバ(130)は、人工知能を用いてスマートブイ(111)から受信される養殖場(110)の飼育環境データ及び関連機関から提供される気象及び海洋情報データに基づいて養殖場(110)における飼育されている品種に関する推奨環境データを提供し、推奨環境データを構築するために必要な意思決定の支援及び必要な消耗品のターゲット広告を提供する。
【0026】
メインサーバ(130)は、図1に示すように、AI API(Application Programming Interface)(131)及びDBサーバ(132)を含む。
メインサーバ(130)は、人工知能を活用して養殖場運営の安定性の検証及び予測を実行する。
ユーザー端末(120)は、養殖場(110)の推奨環境データに関するカスタマイズ動作を実行し、ターゲット広告を用いて消耗品を購入するように構成される。
従来の養殖場管理システムとは異なり、本発明のAIOTシステム(100)は、個々の魚種に関する推奨環境データを導出するために、養殖場(110)の環境データのみならず、関連機関から提供される気象及び海洋情報データの追加を考慮する。気象及び海洋情報データは、気象、海水、赤潮、潮時、潮流に関する情報を含む。
【0027】
本発明における関連機関は、気象庁、環境省及び海上保安庁のうちの少なくとも1つを含む。
本発明のメインサーバ(130)は、関連機関から提供される気象及び海洋情報データ及び養殖場の飼育環境データのデータ構造を統一するためのデータ処理を行う。データ加工の一例は、単位を一致させたり、小数点の四捨五入の位を統一させたりするなどを含む。
本発明のメインサーバ(130)により支援される推奨環境データを構築するために必要な意思決定は、人工知能の機械学習(machine learning)を用いて推奨環境データを養殖場に構築するために要求される手順を順次提供する。
【0028】
本発明における使用される用語「意思決定」は、推奨環境データを構築するために要求される詳細な手順を提示する動作を意味する。
本発明のメインサーバ(130)により支援される意思決定の一例は、海水温の低下が予想される場合、水温を高めるための手順をとるように通知する動作を指す。
本発明のメインサーバ(130)により支援される意思決定の他の例は、塩分の低下が予想される場合に塩分を高めるために、塩水を噴霧するための手順をとるように通知する動作を指す。
本発明のメインサーバ(130)により支援される意思決定の他の例は、pH上昇が予想される場合にpHを下げるために、養殖場に給餌を減らす手順をとるように通知する動作を指す。
本発明のメインサーバ(130)により支援される意思決定の他の例は、酸性度の上昇が予想される場合に酸性度を下げるために、清浄塩水を噴霧する手順をとるように通知する動作を指す。
本発明のメインサーバ(130)により支援される推奨環境データは、養殖場(110)における飼育されている魚種に応じて異なる。
魚種に応じた推奨環境データの具体的な例示は図4に示す。
【0029】
本発明のメインサーバ(130)により支援される意思決定の一例は、異常水温や赤潮現象発生時、状況対処のために要求される対応策を順次提示する対応手順を含み、対応手順はウェブ(WEB)、またはアプリ(APP)の形態で提供するように構成される。
本発明のメインサーバ(130)により支援される意思決定の他の例は、漁民らが危険因子に対処するための手順をデータ化して提供するものである。
即ち、如何なる状況では、如何に対処するという意思決定を支援する。
例えば、本発明のメインサーバ(130)は、「午後0時から高水温警報が予想されます。氷の投下と酸素供給器を準備してください」という意思決定を通知する。
メインサーバ(130)は、氷の投下と酸素供給器を準備しなければならないという意思決定の判断内容を提供した場合、氷と酸素筒の提供企業のターゲット広告をユーザー端末(120)に露出させる。
【0030】
本発明のメインサーバ(130)を構成するDBサーバ(132)は、ロードされた海洋環境情報を含むデータをWEB/APPを通じて時系列的にユーザー端末(120)に提供する。
DBサーバ(132)にロードされたデータは、上記で言及したように、スマートブイ(111)から受信される飼育環境データ及び関連機関から提供される気象及び海洋情報データを含む。
図2は、本発明の一実施例によるスマートブイの斜視図を示す図である。
図2は、本発明のスマートブイ(200)を示す。本発明のスマートブイ(200)は、内臓されたコンポネントに対して防水及び水密処理が行われる。
スマートブイ(200)の上部には、透明カバー(210)を備える。透明カバー(210)は、下部の半球に防水及び水密処理を行う。
【0031】
本発明のスマートブイ(200)は、太陽光を用いた自己発電のための太陽光パネル(220)を含む。本発明のスマートブイ(200)に備える具体的なコンポネントに関しては、図3を参照して詳細に検討する。
本発明のスマートブイ(200)は、海洋の海にアンカー(anchor)(240)を連結し得るチェーン(230)を含む。
図3は、本発明の一実施例によるスマートブイ内に内臓されたコンポネントの概略図を示す図である。
本発明のスマートブイ(300)は、センサー(310)、通信インターフェース(330)、エッジサーバ(320)及び太陽光パネル(340)を含む。
本発明のスマートブイ(300)は、追加で通信中継パネル(350)及び補助バッテリー(360)をさらに含む。
スマートブイ(300)に搭載されたセンサー(310)は、様々なタイプの海洋環境水質測定センサーであり得る。
【0032】
センサー(310)は、少なくとも1つ以上から構成されることができ、養殖場の飼育環境データを収集する。
一例として、海洋環境水質測定センサーは、pH(hydrogen exponent)測定センサー、DO(Dissolved Oxygen)測定センサー、塩度(Natrium)測定センサー、温度測定センサー、濁度測定センサー、アンモニア測定センサー、亜硝酸測定センサー及び硝酸測定センサーなどを含む。
エッジサーバ(320)は、養殖場の飼育環境データを用いて分析データを生成するエッジコンピューティングを実行し、分析データをユーザー端末に直接提供する。
本発明のスマートブイ(300)は、エッジサーバ(320)機能が搭載されているので、RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)とクラウドソリューションの連携により環境指標測定頻度(測定時間)の遠隔調整、遠隔再起動、データ再伝達要求、FOTA(遠隔地ファームウェアアップデート)が可能である。
【0033】
本発明のスマートブイ(300)のエッジサーバ(320)端で予め収集したデータ(情報欠落データ)を後ほど再送信することができ、測定エラー発生時に既存のデータを補間して伝達したり、隣接するスマートブイデバイス情報を参照情報として提供したりする。
本発明のスマートブイ(300)は、エッジサーバ(320)機能が搭載されているので、PLC(Programmable Logic Controller)及びRTU(Remote Terminal Unit)などの設定を変更して、直接養殖場に訪問することなく遠隔制御が可能に構成される。
PLC(Programmable Logic Controller)は、デジタル入力、デジタル出力、アナログ入力及びアナログ出力が連結されたプログラミングが可能な論理コントローラである。PLCは、内部に存在する通信プロトコルを用いて通信する。
【0034】
RTU(Remote Terminal Unit)は、コンパクトなサイズのPLCの一タイプである。RTUは、遠隔位置からプロセスをモニタリングして制御する。
本発明のスマートブイ(300)は、MODBUSプロトコルを支援して多様なセンサーの同時設置及び運営が可能であり、MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)を活用する。
モードバス(MODBUS)は、シリアル通信プロトコルとして、データ交換及びピーエルシー(PLC)システムら間の通信情報のための標準である。MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)は、ISO規格(ISO/IEC PRF 20922)発行-購読基盤のメッセージングプロトコルとして、TCP/IPプロトコルの上で動作する。
【0035】
本発明のスマートブイ(300)は、GNSS(Global Navigation Satellite System)ソリューション及び通信網基盤の位置情報の確保により海上の設置位置に関する情報を提供する。
本発明のスマートブイ(300)は、データ伝達の場合、ASKIコード、HEXコードなどのデータ伝達によりデータの整合性判断が可能であり、データ通信パケット量を低減させる。
本発明のスマートブイ(300)は、LTE CATM1、NB - IOTなどのソリューションを支援してそれぞれのブイの個別通信が可能である。
本発明のスマートブイ(300)を用いて組み合わせ型養殖場や単位設置が多く行われる地域の場合、LoRa網や内部Wifi網の活用によりそれぞれのデータを内部処理及びプロセシングを進めるエッジサーバ(320)に伝達し、エッジサーバ(320)は、単一の通信網を通じてAWSクラウドに自動的にデータを伝達するように構成される。
【0036】
本発明のスマートブイ(300)は、エッジコンピューティング機能を通じて複数のスマートブイ(300)の情報を内部プロセシングして、クラウド連携のDB自動リストアップ及びAPI化の進行が可能である。
通信インターフェース(330)は、本発明のAIOTシステム(100)を構成するユーザー端末(120)及びメインサーバ(130)と互いに連結する5Gバックボーンネットワークとの通信を可能にする。
太陽光パネル(340)は、太陽光を用いて自己発電を行ってセンサー(310)、通信インターフェース(330)及びエッジサーバ(320)のうちの少なくとも1つに電力を供給する。
【0037】
本発明のスマートブイ(300)は、補助バッテリー(360)及び通信中継パネル(350)をさらに含む。補助バッテリー(360)は、リン酸鉄バッテリーとして、センサー(310)、通信インターフェース(330)及びエッジサーバ(320)に補助電力を供給する。
通信中継パネル(350)は、ユーザー端末(120)及びメインサーバ(130)を連結するネットワーク上で通信中継機能を実行する。
【0038】
図4は、本発明のメインサーバにより提供される魚種に応じた推奨環境データを示す図である。
図4は、メインサーバ(130)により提供される各魚種に応じた推奨環境データを示す。
上記で言及したように、本発明のメインサーバ(130)は、人工知能を用いてスマートブイ(111)から受信される養殖場(110)の飼育環境データ及び関連機関から提供される気象及び海洋情報データに基づいて養殖場(110)における飼育されている品種に関する推奨環境データを提供する。
例えば、関連機関は、気象庁、環境省及び海上保安庁を含むことができ、関連機関から提供される気象及び海洋情報データは、気象、海水、赤潮、潮時、潮流に関する情報を含む。
【0039】
図4に示すように、例えば、光魚/ヒラメ(410)の場合、推奨環境データは以下の通りである。
温度:17.5~24℃、
塩分:27~36パーミル、
pH:8.1~7.5、
溶存酸素:4.0~9.6mg/L、
アンモニア性窒素濃度:0.1~0.4mg/L、
図4から分かるように、推奨環境データは、養殖場における飼育されている魚種に応じて変化する。
【0040】
図5は、本発明のユーザー端末で実行される推奨環境データに関するカスタマイズ動作の一例を示す図である。
例えば、カスタマイズ動作は、ユーザー端末を通じてユーザーにアラームを提供するためのアラーム通知範囲(最大値:510、最小値:520)を設定する動作を指す。
アラーム通知範囲は、ユーザーの選択により異なって設定することができ、図5に示す例においては、推奨環境データにより提示された推奨範囲(最大値:530、最小値:540)内に存在する。
図5には、品種別ユーザーの平均設定値(最大値:550、最小値:560)を追加で示している。
【0041】
図6は、本発明の様々な実施例による装置及び/またはシステムを具現する例示的なコンピューティング装置を示す図である。 図6を参照して、本開示のいくつかの実施例による装置を具現する例示的なコンピューティング装置(600)をより具体的に説明する。
ンピューティング装置(600)は、1つ以上のプロセッサ(610)、バス(650)、通信インターフェース(670)、プロセッサ(610)により実行されるコンピュータプログラム(691)をロード(load)するメモリ-(630)と、コンピュータプログラム(691)を貯蔵するストレージ(690)とを含む。但し、図6には、本開示の実施例に関連する構成要素のみを示している。
【0042】
従って、本開示が属する技術分野における通常の技術者であれば、図6に示した構成要素以外に他の汎用構成要素がさらに含まれ得ることが分かる。
プロセッサ(610)は、コンピューティング装置(600)の各構成の全体的な動作を制御する。プロセッサ(610)は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、または本開示の技術分野において周知の任意形態のプロセッサ(610)を含んで構成される。また、プロセッサ(610)は、本開示の方法を実行するための少なくとも1つのアプリケーション、またはプログラムに関する演算を実行する。コンピューティング装置(600)は、1つ以上のプロセッサ(610)を備える。コンピューティング装置(600)は、人工知能(AI)を指す。
【0043】
メモリ-(630)は、様々なデータ、命令及び/または情報を貯蔵する。メモリ-(630)は、本開示の実施例による方法を実行するためにストレージ(690)から1つ以上のプログラム(691)をロードする。メモリ-(630)は、RAMのような揮発性メモリ-で具現されるが、本開示の技術的範囲はそれに限定されるものではない。
バス(650)は、コンピューティング装置(600)の構成要素間の通信機能を提供する。バス(650)は、アドレスバス(Address Bus)、データバス(Data Bus)及び制御バス(Control Bus)などの様々な形態のバスで具現される。
通信インターフェース(670)は、コンピューティング装置(600)の有無線インターネット通信を支援する。また、通信インターフェース(670)は、インターネット通信以外の様々な通信方式を支援することもできる。このために通信インターフェース(670)は、本開示の技術分野において周知の通信モジュールを含んで構成される。
いくつかの実施例によると、通信インターフェース(670)は省略されることもできる。
【0044】
ストレージ(690)は、1つ以上のプログラム(691)と様々なデータとを非一時的に貯蔵する。
ストレージ(690)は、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ-などのような不揮発性メモリ-、ハードディスク、リムーバブルディスク、または本開示が属する技術分野における周知の任意形態のコンピュータで読み取られる記録媒体を含んで構成される。コンピュータプログラム(691)は、メモリ-(630)にロードされる時、プロセッサ(610)により本開示の様々な実施例による方法/動作を実行するようにする1つ以上の命令を含む。即ち、プロセッサ(610)は、前記1つ以上の命令を実行することにより、本開示の様々な実施例による方法/動作を実行する。
【0045】
以上では、本発明に関して示して説明したが、本発明は前述した特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により様々な変形実施が可能なことは勿論であり、そのような変形実施は、本発明の技術的な思想や見通しから個別に理解してはいけない。
【符号の説明】
【0046】
100:AIOT システム
110:養殖場
111、200、300:スマートブイ
120:ユーザー端末
130:メインサーバ
131:AI API
132:DBサーバ
210:透明カバー
220:太陽光パネル
230:チェーン
240:アンカー(anchor)
310:センサー
320:エッジサーバ
330:通信インターフェース
340:太陽光パネル
350:通信中継パネル
360:補助バッテリー
600:コンピューティング装置
610:プロセッサ
630:メモリ-
670:通信インターフェース
690:ストレージ
691:コンピュータプログラム
【要約】      (修正有)
【課題】品種別データ基盤養殖場の適正な飼育環境管理及び意思決定支援が可能な人工知能型モノインターネット(AIOT)システムを提供する。
【解決手段】AIOTシステム100は、内臓された少なくとも1つ以上のセンサーを用いて養殖場の飼育環境データを定期的に収集して提供し、AIOTシステムにおけるエッジサーバとして機能する少なくとも1つのスマートブイ111、人工知能を用いてスマートブイで受信する養殖場の飼育環境データ及び関連機関から提供される気象及び海洋情報データに基づいて、養殖場における飼育されている品種に関する推奨環境データを提供し、推奨環境データを構築するために必要な意思決定の支援及び必要な消耗品のターゲット広告を提供するメインサーバ130及び推奨環境データに関するカスタマイズ動作を実行し、ターゲット広告を用いて消耗品を購入するユーザー端末120を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6