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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】カーポートの天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20240911BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E04B1/343 U
E04H6/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024026787
(22)【出願日】2024-02-26
【審査請求日】2024-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504275409
【氏名又は名称】昭和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】松村 亨
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159129(JP,A)
【文献】特開2019-127758(JP,A)
【文献】特開2019-173302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/343
9/06-9/16
E04H6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根材を支持する梁材と、前記梁材に設けられた柱材と、前記梁材の下方に配置される天井材とを備えるカーポートの天井構造であって、
前記柱材の周囲における前記天井材との境界部には横断面形状がコの字形の挿込片が設けられ、
前記挿込片のコの字形における開口部に前記天井材が挿し込まれて固定されていることを特徴とする、カーポートの天井構造。
【請求項2】
前記柱材は支柱であり、前記支柱の上方に配置される梁材と、前記梁材の下方に配置される天井材とを備えるカーポートの天井構造であって、
前記支柱の周囲における前記天井材との境界部には横断面形状がコの字形の挿込片が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のカーポートの天井構造。
【請求項3】
前記柱材は束材であり、地面に対して垂直に設けられた一対の支柱と、前記一対の支柱間に設けられた第一の梁材と、前記第一の梁材に設けられた前記束材と、前記束材に支持されるとともに屋根材を支持する第二の梁材と、前記第二の梁材の下方に配置される天井材とを備えるカーポートの天井構造であって、
前記束材の周囲における前記天井材との境界部には横断面形状がコの字形の挿込片が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のカーポートの天井構造。
【請求項4】
前記第二の梁材の下方には複数の母屋材と複数の補助梁材の何れかまたは両方が設けられ、
前記挿込片は複数の母屋材または複数の補助梁材に対して取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載のカーポートの天井構造。
【請求項5】
前記束材は横断面四角形であり、前記挿込片は前記束材の周囲に前記開口部が外側を向くようにそれぞれ設けられ、
前記挿込片の取り付け時おいて前記第一の梁材と対向する側の面は長手方向の両端部が45度となっていることを特徴とする、請求項3または4に記載のカーポートの天井構造。
【請求項6】
前記天井材は桁方向に延びるサイディング材であり、
幅方向に隣り合う天井材の対向する側端部の一部が切り欠かれ、
切り欠かれた部分が前記挿込片の開口部に挿し込まれて固定されていることを特徴とする、請求項5に記載のカーポートの天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車した自動車や乗降する人を日光や風雨から防護するために設置されるカーポートの天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や事業所には自動車の駐車場にカーポートを設置する場合がある。カーポートは自動車や乗降する人を日光や風雨から防護する役割や、降雪時の自動車への積雪を防止する役割等、様々な実用的機能を有する。
【0003】
一方で、カーポートは住宅等とは独立した建築物であり、住宅等の建物の前方や周囲といった比較的目に触れやすい位置に建てられる。このように、比較的目に触れやすい位置にカーポートが建てられることで、カーポートそれ自体が備える支柱等が視界の妨げになったり、住宅等のデザインが阻害されたりする等、外観上の問題が生じ得る。
【0004】
そこで、従来では、外観のよいカーポートとするために、天井材と梁材等の構造材とが分離して見えるようにすることで、天井材の下面全体が視認できるように構成してすっきりした印象を持たせることで外観を向上させる技術が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、図9に示すように、片持ち構造のカーポート800であって、天井材81を屋根体82から吊り下げることで天井材81の下面83をフラットに形成したカーポートが開示されている。特許文献1のカーポート800では、梁である屋根体82の下方に天井材81が配置されており、下側から見上げたときに天井材81のみが視認されるため、外観が良い。
【0006】
また、特許文献2では、図10に示すように、第一の梁91に束材92を立設して、束材92に第二の梁93を設けるとともに、第二の梁93を挟持するように屋根材94及び天井材95を設けることで、第一の梁91の上方に天井材95が配置された構成のカーポート900の技術が開示されている。特許文献2のカーポート900では、第二の梁93の下方に天井材95が配置されているため、2つの梁のうち、第一の梁91は天井材95の内部に隠れて視認されない。そのため、十分な強度を有しながらも、下から見上げたときには、第二の梁93と天井材95しか視認されないため、外観が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2022-160553号公報
【文献】特開2020-101009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1のカーポートでは、天井材81における支柱に隣接する部分では、支柱と天井材81とは固定されておらず、あくまで天井材81は屋根体82のみに固定されている。そのため、支柱と天井材81との境界部には隙間があると解され、外観上不体裁である。また、天井材81にかかる積雪等による荷重は、屋根体82との固定部によってのみ支持されるため、強度に不安が残る。
【0009】
一方、特許文献2のカーポートでは、第一の梁材に立設した束材に第二の梁材が設けられており、その第二の梁材に屋根材及び天井材が設けられている。そのため、屋根材に積雪があったとしても、積雪の重量は第二の梁材、束材及び第一の梁材により支持されることから強度が高い。そのうえ、天井材は第一の梁材の上方に配置されているため、第一の梁材は天井材に隠れて見えず、あたかも第一の梁材のみで屋根材と天井材とを支持しているかのように見せることができる。
【0010】
ところが、特許文献2のカーポートでは、束材は天井材に設けられた穴を貫通するような構造となっており、束材と天井材との境界部については止水部材でシーリングされた後、化粧部材で塞がれている。化粧部材の固定について詳細な記載はないが、図面等からボルト等によって梁材に固定しているものと解される。
このような構造であると、化粧部材の固定に手間がかかるうえ、固定のためのボルト等が視認されて外観上不体裁であるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、柱材周辺部の強度の低下を防止することができるうえ、外観にも優れるカーポートの天井構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明のカーポートの天井構造は、屋根材を支持する梁材と、前記梁材に設けられた柱材と、前記梁材の下方に配置される天井材とを備えている。
また、前記柱材の周囲における前記天井材との境界部には横断面形状がコの字形の挿込片が設けられ、前記挿込片のコの字形における開口部に前記天井材が挿し込まれて固定されている。
ここで、梁材とは、カーポートにおける幅方向に平行な屋根支持構造材をいう。
【0013】
カーポートには、支柱や中柱、束材等、地面に対して略垂直方向に設けられる種々の柱材を備えている。また、カーポートにおいては、屋根材の下側に天井材を設けることで、内側から上方を見上げたときの外観を良くして付加価値を向上させているものがある。
このような構成のカーポートにおいては、前記柱材の周囲に天井材が配された形となることがある。柱材の周囲に天井材が配されていると、柱材の周囲と天井材との境界部が目立ち、外観上不体裁となる場合がある。また、束材の周囲においては、天井材の形状が不連続となるため、天井構造全体としての強度が低下する場合がある。
【0014】
本発明では、これら垂直な柱材が天井材と交差する境界部において、挿込片のコの字形における開口部に天井材を挿し込んで固定することで、柱材と天井材との境界部を挿込片によって外観良く仕上げることができる。
また、コの字形の開口部に天井材を挿入して固定することができるため、天井材に加わる荷重を、挿込片を介してしっかりと受けることができ、柱材の周囲における強度の低下を防止することができる。
【0015】
課題解決のために採用し得る手段においては、前記柱材を支柱とし、前記支柱の上方に配置される梁材と、前記梁材の下方に配置される天井材とを備えるように構成することも可能である。
支柱は、地面に対して設けられる一対の支柱が奥行方向に複数設けられる場合がある。また、これら一対の支柱の間に、中柱として、複数の支柱が設けられる場合もある。
本発明における支柱とは、これら一対の支柱や中柱等、地面や土台などに対して設けられて梁材等を支持する柱材をいう。
【0016】
上記の構成であれば、支柱という比較的目立つ構造物と天井材との境界部を、挿込片によって外観良く仕上げることができ、支柱の周囲における強度の低下を防止することができる。
【0017】
課題解決のために採用し得る手段においては、下記の構成とすることも可能である。この構成では、前記柱材を束材とし、地面に対して垂直に設けられた一対の支柱と、前記一対の支柱間に設けられた第一の梁材と、前記第一の梁材に設けられた前記束材と、前記束材に支持されるとともに屋根材を支持する第二の梁材と、前記第二の梁材の下方に配置される天井材とを備える構成とする。
また、前記束材の周囲における前記天井材との境界部には横断面形状がコの字形の挿込片が設けられており、前記挿込片のコの字形における開口部に天井材が挿し込まれて固定されている。
【0018】
本発明においては、第一の梁材と第二の梁材の二つの梁材を備え、梁材同士を束材で支持する構成であり、第二の梁材の上に屋根材が載置されている。これにより、積雪の重量を二つの梁材と束材とによって支持でき、耐雪強度を高くすることができる。
【0019】
上記のような屋根材を二つの梁材と束材とで支える構造においては、第二の梁材の下方に天井材が配置される。そのため、天井材を貫通するかのように束材が配置されることとなる。また、複数の束材が設けられる場合もある。
このような構成においては、束材の周囲と天井材との境界部が目立ち、外観上不体裁となる場合がある。また、束材の周囲においては、天井材の形状が不連続となるため、天井構造全体としての強度が低下する場合がある。
【0020】
上記構成であれば、横断面形状がコの字形の挿込片を設け、前記挿込片のコの字形における開口部に天井材を挿し込む構成としたことにより、束材と天井材との境界部を挿込片によって外観良く仕上げることができる。
また、コの字形の開口部に天井材を挿入して固定することができるため、天井材に加わる荷重を、挿込片を介してしっかりと受けることができ、束材の周囲における強度の低下を防止することができる。
【0021】
課題解決のために採用し得る手段においては下記の手段を用いることも可能である。
本発明では、前記第二の梁材の下方に複数の母屋材と複数の補助梁材の何れかまたは両方を設け、前記挿込片を複数の母屋材または複数の補助梁材に対して取り付けることも可能である。
【0022】
束材の幅は、第一の梁材及び第二の梁材の幅と同程度の幅となる場合がある。挿込片を第二の梁材に対して取り付ける場合には、束材の周囲に配置した複数の挿込片の一部においては、その上部が第二の梁材のない空間である場合がある。この場合、挿込片の取り付け強度に不安が残る。それに対して、上記構成では、第二の梁材の下方に複数の母屋材または複数の補助梁材を設けており、それらの何れかに挿込片を取り付けることで、全ての挿込片をしっかりと取り付けられ、十分な取付け強度を確保することができる。
【0023】
課題解決のために採用し得る他の手段としては下記の手段を用いることも可能である。
本発明では、前記束材を横断面四角形とし、前記挿込片を前記束材の周囲に前記開口部が外側を向くようにそれぞれ設け、前記挿込片の取り付け時おいて前記第一の梁材と対向する側の面(外観側の面)は長手方向の両端部を45度とすることも可能である。束材が横断面四角形であって、その周囲に4つの挿込片を配置する場合、外観側の面の45度の両端部が対向するように4つの挿込片を組み合わせて束材3の周囲に配置することができる。このように配置することで、束材の周囲全体に、外側を向く開口部を隙間なく構成することができる。
【0024】
課題解決のために採用し得る他の手段としては、前記天井材を桁方向に延びるサイディング材とし、幅方向に隣り合う天井材の対向する側端部の一部を切り欠き、切り欠かれた部分を前記挿込片の開口部に挿し込んで固定することも可能である。
なお、桁方向とは、梁材と直角であってカーポートにおける奥行方向に平行な方向をいう。
【0025】
上記構成においては、挿込片に対して切り欠かれた天井材を挿入することで、挿込片が固定と見切りの両方の役割を果たし、束材周りに天井材を体裁良く取り付けることができる。
また、隣り合う天井の対向する側端部における一部を切り欠かくことで、2つの天井材で束材を挟持するように両側から挿し込むことができるため、天井材を容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のカーポートの天井構造は、柱材の周囲に横断面形状がコの字形の挿込片を設け、挿込片のコの字形における開口部に天井材を挿し込む構成としたことにより、柱材の周囲の強度の低下を防止するとともに、束材と天井材との境界部を体裁良く処理することができる。
【0027】
このように、本発明のカーポートの天井構造は、柱材と天井材との境界部において挿込片を用いて天井材を固定することができるため、柱材周辺部の強度の低下を防止することができるうえ、外観にも優れるカーポートの天井構造を作製することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のカーポートを表す正面図、側面図及び断面図である。
図2】本発明のカーポートの天井構造の前方部分の拡大断面図である。
図3】本発明のカーポートの屋根支持構造の束材周辺の拡大断面図である。
図4】本発明のカーポートの屋根支持構造の組み立て手順を表す説明図である。
図5】本発明のカーポートの天井構造の束材周辺の拡大図である。
図6】本発明のカーポートの天井構造の挿込片の三面図である。
図7】本発明の変形例1を表す断面図である。
図8】本発明の変形例2を表す断面図である。
図9】特許文献1の従来例を表す模式図である。
図10】特許文献2の従来例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、図1から図6に基づいて以下に説明する。
なお、以下の説明において、図は説明を簡略化するために模式的に記載しており、例えば束やボルトの数等は実施よりも少なく図示されている。
【0030】
[カーポートの基本構造]
まず、基本構造について説明する。本発明のカーポートの天井構造を採用したカーポート100は、図1に示すように、自動車を駐車することができる住宅用のカーポートである。図1のカーポート100は、2台用のカーポートであり、地面に対して垂直に設けられた一対の柱材である支柱1・1が、前後方向にそれぞれ3列配置されている。
支柱1は所定の断面形状を有する金属製の中空の部材であり、コンクリートを打設した基礎に対して設置されている。
なお、支柱1の数や配置は、要求される耐雪強度や駐車台数によって適宜調整される。
【0031】
カーポート100は、図1の断面図に示すように、一対の支柱1・1間に設けられた第一の梁材21・21…と、第一の梁材21・21…に設けられた複数の束材3・3…と、複数の束材3・3…に支持されるとともに屋根材4を支持する第二の梁材22・22…とを備えている。屋根材4はいわゆる折板屋根であり、後方から前方にかけて僅かに下向きに傾斜している。これにより、雨水を一方向に流すことができる。
なお、第二の梁材22・22…の上部には、所定間隔で第二の桁材52・52…も設けられており、折板屋根の凸の部分はこの第二の桁材52・52…で支持している。
【0032】
また、屋根材4を支持する第二の梁材22・22…の下方には、複数の第一の桁材51・51…が所定間隔で設けられている。そして、第一の桁材51・51…の下方に補助梁材23・23…が設けられ、補助梁材23・23…に天井材6・6…が設けられている。
すなわち、カーポート100を下から見上げると、第一の梁材21・21…と束材3・3…とが視認できる一方で、第二の梁材22・22…は天井材6・6…によって覆い隠されて視認できないようになっており、二つの梁材2で屋根材4を支持しているのに、一見して第一の梁材21・21…のみで天井材6・6…を支持しているかのように見える。
【0033】
これら第一の梁材21・21…、第二の梁材22・22…、束材3・3…、桁材5・5…は、支柱1同様金属製の中空の部材を用いることができるが、繊維強化樹脂等を用いてもよい。
また、天井材6は、図1の形態ではサイディング材を用いているが、印刷やプレス加工で模様が施された樹脂板を用いてもよい。
【0034】
上記構成では、梁材について、2つの梁材21・22を用い、それらの間に柱材である複数の束材3・3…を備えた構成としているが、必ずしも2つの梁材と束材とから構成されている必要はなく、屋根材を支持する梁材と、梁材に設けられた支柱等の柱材と、梁材の下方に配置される天井材とから構成されていてもよい。
【0035】
[傾斜天井構造]
次に、カーポート100の天井構造について詳細に説明する。カーポート100の天井構造は、自動車を駐車するスペースの直上部分の天井と、自動車が侵入してくる前方の間口部分とで、構成が異なっている。
前方部分(自動車が出入りする側)に着目してみると、駐車スペース直上の第一の天井材61・61…は、屋根材4に対して略平行に配置されているのに対し、前方部分では、第二の天井材62・62…が前方に向かって上方に傾斜した構成となっている。
【0036】
この前方部分の構造について詳述すると、図2に示すように、前方部分の構造は、屋根4を支持する第二の梁材22と、前記第二の梁材22の下方に配置される第一の桁材51と、前記第二の梁材22の上方に配置される第二の桁材52と、前記第二の桁材52の下方であって前記第二の梁材22よりも前方に取り付けられる傾斜用梁材23とを備えている。
【0037】
また、第一の天井材61と第二の天井材62の間には、他の部材を介して見切材7が設けられている。この見切材7は、第一の天井材61と略平行な第一の面71と、第二の天井材62と略平行な第二の面72とを備える。なお、見切材7は、他の部材を介することなく、第一の天井材61と第二の天井材62とに直接設けられてもよい。
【0038】
第一の桁材51・51…は、駐車スペースの直上部分から後方に至るまで、屋根材4に対して略平行に配置されており、その下方に第一の天井材61・61…が配置されることで、屋根材4と略平行な天井を形成している。
【0039】
見切材7の固定構造については、図2に示す形態では、第二の梁材22に対して、複数の部品を介して固定部材8に係合させて見切材7が設けられている。固定部材8は一体の部品であってもよいが、図2の形態では、第一の固定部材81と第二の固定部材82とに分けている。すなわち、見切材7は、第一の固定部材81及び第二の固定部材82に係合して取り付けられている。
【0040】
ここで、第一の固定部材81の横断面形状は後方側に開口する略コの字形であり、第二の固定部材82の横断面形状は前方側に開口する略コの字形である。
見切材7は、一部が第一の面71から延びて第一の固定部材81における開口側から係合可能であるとともに、別の一部が第二の面72から延びて第二の固定部材82における開口側から係合可能に構成されている。
【0041】
また、図2の形態では、第一の固定部材81の開口部と第二の固定部材82の開口部に、見切材7と第一の天井材61及び第二の天井材62をともに挿しこんでいる。これにより、第一の天井材61及び第二の天井材62を確実に固定するとともに、見切材7の取り付けの容易さを損なわない。
【0042】
ところで、傾斜した天井部分には、所定間隔でダウンライト等の照明Lが設けられている。この照明Lは、傾斜した第二の天井材62・62に垂直な方向に光を照射するように取り付けられている。これにより、夜間に自動車を駐車する際に、カーポート100の前方を広く照らすことができるようになる。そのため、地面に垂直に光を照射する場合と比較して、夜間の駐車がしやすくなり、事故の防止にもつながる。
なお、照明Lは、屋根材4と平行な天井部分に設けてもよく、第一の天井材61・61…に対して垂直な方向に光を照射するようにすることで、カーポート100内を全体的に明るくすることができる。そのため、夜間における乗降がしやすくなる。
【0043】
以上のように、屋根材4に平行な第一の天井材61と、第一の天井材61に対して傾斜した第二の天井材62との間に見切材7が設けられることで、第一の天井材61と第二の天井材62との隙間を体裁良く隠すことができる。また、見切材7の外観を第一の天井材61及び第二の天井材62と同一のものとすることで、カーポート100を正面視したときに、第一の天井材61と第二の天井材62とがひとつの天井を形成しているように見えるとともに、屋根材4と第二の天井材62との厚さが薄く見えるため、すっきりとした外観とすることができる。
【0044】
[屋根支持構造]
次に、カーポート100の屋根支持構造について詳細に説明する。前述したように、カーポート100の屋根支持構造は、地面に対して垂直に設けられた一対の支柱1・1と、一対の支柱1・1間に設けられた第一の梁材21・21…と、第一の梁材21・21…に設けられた複数の束材3・3…と、複数の束材3・3…に支持されるとともに屋根材4を支持する第二の梁材22・22…とを備えている。また、屋根材4を支持する第二の梁材22・22…の下方には、複数の第一の桁材51・51…が所定間隔で設けられている。そして、第一の桁材51・51…の下方に第一の天井材61・61…が設けられている。
【0045】
図3は、梁材2の位置における断面を表している。第一の梁材21と束材3とは、束材3の内部に固定された断面コの字形の金具A・A…を介して固定されている。同様に、第二の梁材22と束材3も、束材3の内部に固定された断面コの字形の金具A・A…を介して固定されている。金具Aには、締結用穴A1・A1…が3面それぞれに設けられており、対向する2面の締結用穴A1・A1…はバーリング処理が施されて雌ねじが切られているが、他の1面の締結用穴A1・A1…は雌ねじの切られていない通常の穴である。
【0046】
束材3と第二の梁材22との固定については、第二の梁材22に設けられた貫通穴221と、金具Aに設けられた締結用穴A1とが、ナット及び第二の梁材22の内側に挿入されたボルトで締結されている。
ここで、図3に図示する形態では、第二の梁材22に長手方向に伸びるレール部222が設けられており、ボルトを板材に固定した連結ボルトBをレールに沿って挿入することができる。このレールは抜け止め構造となっており、端部から連結ボルトBを挿入して長手方向にスライドさせることで、第二の梁材22から連結ボルトBが脱落することなく、所定の位置に配置することができる。
【0047】
一方、束材3と第一の梁材22との固定については、第一の梁材21に設けられた貫通穴211と、金具Aに設けられた締結用穴A1とが、ナットを用いることなく締結可能なボルトを用いて締結されている。ナットを用いることなく締結可能なボルトとは、例えばルーフボルトRを挙げることができる。
第一の梁材21も長手方向に伸びるレール部212が設けられているが、図3に示すように、レール部212は下向きとなるように配置しており、束材3が固定される上面側はレール部212を備えていない。
【0048】
ルーフボルトRを用いることで、レール部212の無い第一の梁材21の上面側であっても、内部にナットを挿入してボルトで締結する必要がない。
一般的に、ナットに対するボルトの締結時には、ナットが第一の梁材21の内部に落下してしまうことを防ぐために、手やスパナ等でナットを押さえながらボルトを締める必要がある。しかし、第一の梁材21の両端部から1m以上離れた手の届かない位置に束材3・3…を設置する場合には、手やスパナ等でナットを押さえることができない。
そこで、ルーフボルトRを用いることで、手の届かない位置であったとしても、一般的なナットを用いることなく、外側からスパナでルーフボルトRを締め込むだけで金具Aと第二の梁材22とを締結させることができる。
【0049】
そして、束材3と金具Aとの固定に関しては、束材3の対向する2面に設けられたボルト穴31・31…にボルト(図示せず)が挿通され、金具Aの雌ねじ加工された締結用穴A1に対して固定されている。
【0050】
ここで、第一の梁材21においても、上面側に第二の梁材22のようなレール部221が設けられた中空の部材を用いれば、ボルトを板材に固定した連結ボルトBを脱落させることなく配置することができるのではないかと思われる。たしかに、レール部が設けられた中空の部品は、カーポートの分野では一般的に用いられるものである。
【0051】
しかし、一般的にカーポートに用いられる中空の部品は、一方にのみレールを備えているものであり、両側にレールを備えているものはない。ここで、第一の梁材21は、支柱1・1…との締結のために連結ボルトBを用いて締結する(図示せず)。
そのため、第一の梁材21は、レール部221が下向きになるように配置せざるを得ず、上面側はレール部212が無い状態となる。この場合、上面部に固定される束材3は、連結ボルトBを用いることができない。
【0052】
そこで、第一の梁材21には、ナットを用いることなく締結可能なルーフボルトRを用いて束材3と第一の梁材21とを固定する。
一方、屋根材4を支持する第二の梁材22には、レール部222が設けられた中空の部材を用い、連結ボルトBと一般的なナットを用いて束材3と第二の梁材22とを固定するようにする。
【0053】
このような構成とすることで、梁材2が長スパンであるようなカーポートであったとしても、第一の梁材21の両端部から1m以上離間した位置に束材3・3…を設置させて、全体として強度の高いカーポートとすることができる。
また、第一の梁材21と第二の梁材22とを用いた高強度の構造であるにも関わらず、第二の梁材22は天井材6によって視認されないように構成されているため、視認される無骨な梁材2が少なく、外観にも優れる。
【0054】
[屋根支持構造の組み立て手順]
上述の屋根支持構造は、図4に示す手順に従って組み立てられる。
まず、図4(a)に示すように第二の梁材22の所定の位置に、金具Aをボルトとナットで取り付ける。前述のように、第二の梁材22に設けられているレール部222に端部から連結ボルトBを挿入し、金具Aの締結用穴A1と第二の桁材の貫通穴221とが対応する位置で金具Aを固定する。
【0055】
次に、図4(b)に示すように、第二の梁材22と同様、第一の梁材21の所定の位置に、金具Aを取り付ける。このとき、一般的なボルトとナットではなく、ルーフボルトRを金具Aの締結用穴A1から第一の梁材21の貫通穴221を介して挿入する。
そして、ルーフボルトRの軸にねじ込まれたナットをルーフドライバー等で回すことで、ルーフボルトR先端の金具が開脚し、第一の梁材21の内側に抜け止めを形成し、固定することができる。
【0056】
そして、図4(c)に示すように、金具Aを取り付けた第一の梁材21及び第二の梁材22の間に、束材3を挟み込んで設置する。
具体的には、最初に、支柱1・1に対して第一の梁材21が取り付けられるため、束材3は、まず、第一の梁材21に対して取り付けられる。このとき、束材3の中空部に、第一の梁材21の金具Aが挿入されるようにして挿し込む。
【0057】
次に、金具Aの対向する2面に設けられた雌ねじ加工済みの締結用穴A1・A1…と、束材3の対応する位置に設けられたボルト穴31・31…とを位置合わせし、ボルト穴31・31…に対してボルトを挿入して固定する。
【0058】
最後に、金具Aを取り付けた第二の梁材22を束材3上に載置し、同様に、金具Aの対向する2面に設けられた雌ねじ加工済みの締結用穴A1・A1…と、束材3の対応する位置に設けられたボルト穴31・31…とを位置合わせし、ボルト穴31・31…に対してボルトを挿入して固定する。
【0059】
以上の手順により、第一の梁材21の両端部から1m以上離れた位置に束材3を取り付ける必要がある場合であっても、容易に高強度の屋根支持構造を組み立てることができる。
【0060】
[束材周りの天井構造]
次に、カーポート100における柱材である束材3周りの天井構造について詳細に説明する。図5は、カーポート100の天井を下から見上げたときの、束材3周辺の状態を表す図である。前述したように、カーポート100の屋根支持構造は、地面に対して垂直に設けられた一対の支柱1・1と、一対の支柱1・1間に設けられた第一の梁材21・21…と、第一の梁材21・21…に設けられた複数の束材3・3…と、複数の束材3・3…に支持されるとともに屋根材4を支持する第二の梁材22・22…とを備えている。
【0061】
図5に示す形態では、束材3の周囲であって第二の梁材22側に、横断面形状がコの字形の挿込片9が取り付けられている。この挿込片9の開口部91には、天井材6を挿し込んで固定することができる。
ここで、第二の梁材22の下方には複数の母屋材53・53…が設けられ、複数の母屋材53・53…の下方には、複数の補助梁材24・24…が設けられている。挿込片9は複数の補助梁材24・24…に対して取り付けられている。
【0062】
挿込片9は、図6に示すように、金属製や樹脂製の薄板をコの字形に折り曲げて形成されている。取り付け時に第一の梁材21と対向する面である外観面92は、両端部が45度になっており、45度の両端部が対向するように4つの挿込片9・9…を組み合わせて束材3の周囲に配置する。このように配置することで、束材3の周囲全体に、外側を向く開口部を隙間なく構成することができる。
【0063】
また、外観面92は、天井材6と同様の外観となるように表面処理されている。たとえば、天井材6が木目調のサイディング材であるならば、挿込片9の外観面92も木目調となるように印刷等の表面処理が施されている。
【0064】
一方、挿込片9における外観面92の反対側の面は、補助梁材24・24…に対する取付面93である。取付面93は、外観面92よりも大きな面積を有しており、穴をあけることでビス(図示せず)等を用いて補助梁材24・24…に固定することができる。このとき、隣り合う挿込片9における取付面93と干渉しないような形状となっている。
【0065】
上記のような挿込片9・9…を4つ組み合わせて束材3の周囲に配置した状態で、外側を向く開口部に天井材6が挿入されている。このとき、隣り合う天井材6・6の対向する側端部における一部が切り欠かれ、切り欠かれた部分が挿込片9の開口部に挿し込まれて固定されている。
【0066】
上記構成では、柱材としての束材3の周辺部における構成について説明したが、挿込片9は束材3の周辺部だけでなく、柱材としての支柱1の周辺部においても同様に構成することもできる。
柱材としての支柱1の周辺部において、挿込片9を用いる場合、特に中柱(図示せず)に対して適用するのが好適である。中柱は、駐車可能台数の多いカーポートにおいて、耐雪強度を向上させる際に、左右一対の支柱1・1の間に追加の支柱として設けるものである。
【0067】
中柱においても、天井材6との境界部においては、取り付け時に第一の梁材21と対向する面である外観面92の45度の両端部が対向するように4つの挿込片9・9…を組み合わせて中柱の周囲に配置する。このように配置することで、中柱の周囲全体に、外側を向く開口部を隙間なく構成することができる。
ただし、中柱だけでなく、左右の支柱1・1の周辺部においても適用することができる。
【0068】
このように、束材3や支柱1・1等の柱材の周囲に挿込片9・9…を取り付けて、その挿込片9・9…に切り欠かれた天井材6・6…を挿入することで、挿込片9・9…が固定と見切りの両方の役割を果たし、束材3周りに天井材6を体裁良く取り付けることができる。
また、隣り合う天井材6・6の対向する側端部における一部を切り欠かくことで、2つの天井材6・6で束材3を挟持するように両側から挿し込むことができるため、天井材6の取り付けが容易である。
【0069】
『変形例1』
本発明は、上記の形態に限られず、他の形態を採用することもできる。
図2の形態では、前方に向かって上方に傾斜している第二の天井材62・62…が、傾斜用梁材23に直接固定されていた。それに対して、図7に示すカーポート101の天井構造では、傾斜用梁材23に対して傾斜用桁材54が固定され、傾斜用桁材54に第二の天井材62が固定されている点が異なっている。
【0070】
本変形例では、第二の天井材62を丈夫な傾斜用桁材54に固定し、傾斜用桁材54が添え木を介して第二の桁材52に固定されている。これにより、屋根材4に積雪等の荷重が作用したとしても、その荷重を傾斜用桁材54で支えることができるため、傾斜した第二の天井材62が傾いたり歪んだりすることを防止することができる。
【0071】
『変形例2』
本発明は、上記に加え、更に別の形態を採用することもできる。
図8に示すカーポート102では、第二の天井材62の端部が第二の梁材22の側面に接しており、第二の梁材22の中間部に設けた固定部材8によって、第二の梁材22の側面から前方に向かって傾斜している点が異なる。
【0072】
耐雪強度を向上させるためには、第二の梁材22の高さを高いものにしなければならない。しかし、第二の梁材22の高さを高くすると、第二の天井材62の傾斜角度が大きくなってしまい、屋根部分が分厚くなったように見えてしまう。
【0073】
本変形例では、第二の梁材22が高いものであったとしても、第二の梁材22の側面に第二の天井材62の端部が接するように固定することで、カーポート102を正面視したときに、傾斜している第二の天井材62の見える範囲を小さくすることができ、高強度でありながらも、薄くすっきりした屋根であるかのような外観とすることができる。
【0074】
以上のように、本発明は、耐雪強度が高いうえ、外観にも優れるカーポートの天井構造を安価に構成することができるものであるが、本発明は以上の実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、見切材7は、固定部材8に対して取り付けるのではなく、桁材5に直接取り付けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0075】
100,101,102 カーポート
1 支柱
2 梁材
21 第一の梁材
211 貫通穴
212 レール部
22 第二の梁材
221 貫通穴
222 レール部
23 傾斜用梁材
24 補助梁材
3 束材
31 ボルト穴
4 屋根材
5 桁材
51 第一の桁材
52 第二の桁材
53 母屋材
54 傾斜用桁材
6 天井材
61 第一の天井材
62 第二の天井材
7 見切材
71 第一の面
72 第二の面
8 固定部材
81 第一の固定部材
82 第二の固定部材
挿込片
91 開口部
92 外観面
93 取付面
A 金具
A1 締結用穴
B 連結ボルト
L 照明
【要約】
【課題】柱材周辺部の強度の低下を防止することができるうえ、外観にも優れるカーポートの天井構造を提供すること。
【解決手段】
屋根材4を支持する梁材2と、前記梁材2に設けられた柱材1・1と、前記梁材2の下方に配置される天井材6・6…とを備えるカーポート100の天井構造であって、前記柱材1・1の周囲における前記天井材6との境界部には横断面形状がコの字形の挿込片9・9…が設けられ、前記挿込片9・9…のコの字形における開口部に前記天井材6・6…が挿し込まれて固定されている構成とした。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10