(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】脱水システム、単板処理システム、単板の脱水方法および単板の処理方法
(51)【国際特許分類】
B27D 3/00 20060101AFI20240911BHJP
B27K 5/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B27D3/00 B
B27K5/00 Z
(21)【出願番号】P 2024541110
(86)(22)【出願日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2024009362
【審査請求日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2023076027
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155182
【氏名又は名称】株式会社名南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 伸一
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-046802(JP,A)
【文献】特開平11-223459(JP,A)
【文献】特開2008-018643(JP,A)
【文献】特開2010-240887(JP,A)
【文献】特表2012-517364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/00-5/00
B27K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥処理の前に単板を脱水処理する脱水システムであって、
発熱可能な熱板である第1熱板を含む第1挟持部材と、
発熱可能な熱板である第2熱板を含む第2挟持部材と、
前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とのうち少なくとも一方を押圧機構に押圧させることが可能な駆動部と、
前記第1熱板および前記第2熱板を加熱可能な加熱部と、
脱水処理の際に、前記第1挟持部材および前記第2挟持部材により前記単板が圧締された状態となるように前記駆動部を制御すると共に、前記第1熱板の温度が、前記第2熱板の温度よりも低くなるように前記加熱部を制御する制御部とを備え、
前記第1挟持部材および前記第2挟持部材は、その面が上下方向と平行に延在しており、前記単板の面と上下方向とが平行な状態で前記単板を圧締することが可能であり、
前記第1挟持部材は、前記第1熱板に取り付けられ、脱水処理の際に前記第1熱板と前記単板との間に介在する介在板を備え、
前記介在板の前記単板と当接する一方の面には、上下方向に対して斜めに延在する複数の斜め溝が形成されている
ことを特徴とする脱水システム。
【請求項2】
前記介在板における前記斜め溝が形成された前記一方の面とは反対側の面であって、前記第1熱板と当接する他方の面には、上下方向に延在する複数の上下溝が形成され、
前記介在板において、前記一方の面に形成された前記斜め溝と、前記他方の面に形成された前記上下溝とが交差する地点には前記介在板を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の脱水システム。
【請求項3】
前記介在板の前記他方の面に形成された前記上下溝に、上方から空気を送出可能な送出機を更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載の脱水システム。
【請求項4】
前記介在
板において、前記上下溝の幅が、前記斜め溝の幅に比べて広い
ことを特徴とする請求項2に記載の脱水システム。
【請求項5】
前記制御部は、脱水処理の際に、前記第2熱板の温度が、前記第2熱板の発熱に由来して前記単板の水分の蒸発が始まる温度に近い温度となり、前記第1熱板の温度が、前
記第1熱板の発熱に由来して前記単板の水分の蒸発が生じない温度となるように前記加熱部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の脱水システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の脱水システムと、前記脱水システムにより脱水処理された単板を乾燥処理する乾燥装置とを備える単板処理システムであって、
前記乾燥装置は、
発熱可能な熱板である第1乾燥側熱板を含む第1乾燥側挟持部材と、
発熱可能な熱板である第2乾燥側熱板を含む第2乾燥側挟持部材と、
前記第1乾燥側挟持部材と前記第2乾燥側挟持部材とのうち少なくとも一方を押圧機構に押圧させることが可能な乾燥側駆動部と、
前記第1乾燥側熱板および前記第2乾燥側熱板を加熱可能な乾燥側加熱部とを備え、
前記制御部は、
前記乾燥処理の際に、前記第1乾燥側挟持部材および前記第2乾燥側挟持部材により前記単板が保持された状態となるように前記乾燥側駆動部を制御すると共に、前記第1乾燥側熱板の温度が、前記第2乾燥側熱板の温度よりも低くなるように前記乾燥側加熱部を制御する
ことを特徴とする単板処理システム。
【請求項7】
前記第1乾燥側挟持部材は、前記第1乾燥側熱板に取り付けられ、前記乾燥処理の際に前記第1乾燥側熱板と前記単板との間に介在する第1乾燥側介在板を備え、
前記第1乾燥側介在板の前記単板と当接する一方の面には、上下方向に対して交わる方向に延在する複数の溝が形成され、
前記第2乾燥側挟持部材は、前記第2乾燥側熱板に取り付けられ、前記乾燥処理の際に前記第2乾燥側熱板と前記単板との間に介在する第2乾燥側介在板を備え、
前記第2乾燥側介在板の前記単板と当接する一方の面には、上下方向に対して交わる方向に延在する複数の溝が形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の単板処理システム。
【請求項8】
前記第1乾燥側介在板の前記第1乾燥側熱板と当接する他方の面には、上下方向に延在する複数の溝が形成され、
前記第1乾燥側介在板において、一方の面に形成された上下方向に対して交わる方向に延在する溝と、他方の面に形成された上下方向に延在する溝とが交差する地点には前記第1乾燥側介在板を厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記第2乾燥側介在板の前記第2乾燥側熱板と当接する他方の面には、上下方向に延在する複数の溝が形成され、
前記第2乾燥側介在板において、一方の面に形成された上下方向に対して交わる方向に延在する溝と、他方の面に形成された上下方向に延在する溝とが交差する地点には前記第2乾燥側介在板を貫通する貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の単板処理システム。
【請求項9】
発熱可能な熱板である第1熱板を含む第1挟持部材と、発熱可能な熱板である第2熱板を含む第2挟持部材と、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とのうち少なくとも一方を押圧機構に押圧させることが可能な駆動部と、前記第1熱板および前記第2熱板を加熱可能な加熱部とを備える脱水システムによる単板の脱水方法であって、
前記第1挟持部材および前記第2挟持部材は、その面が上下方向と平行に延在しており、前記単板の面と上下方向とが平行な状態で前記単板を圧締することが可能であり、
前記第1挟持部材は、前記第1熱板に取り付けられ、脱水処理の際に前記第1熱板と前記単板との間に介在する介在板を備え、
前記介在板の前記単板と当接する一方の面には、上下方向に対して斜めに延在する複数の斜め溝が形成され、
制御部が前記第1挟持部材および前記第2挟持部材により前記単板が保持されるように前記駆動部を制御するステップと、
前記制御部が、前記第1挟持部材および前記第2挟持部材により前記単板が圧締された状態となるように前記駆動部を制御すると共に、前記第1熱板の温度が、前記第2熱板の温度よりも低くなるように前記加熱部を制御するステップとを含む
ことを特徴とする単板の脱水方法。
【請求項10】
発熱可能な熱板である第1熱板を含む第1挟持部材と、発熱可能な熱板である第2熱板を含む第2挟持部材と、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とのうち少なくとも一方を押圧機構に押圧させることが可能な駆動部と、前記第1熱板および前記第2熱板を加熱可能な加熱部とを有する脱水システム、および、発熱可能な熱板である第1乾燥側熱板を含む第1乾燥側挟持部材と、発熱可能な熱板である第2乾燥側熱板を含む第2乾燥側挟持部材と、前記第1乾燥側挟持部材と前記第2乾燥側挟持部材とのうち少なくとも一方を押圧機構に押圧させることが可能な乾燥側駆動部と、前記第1乾燥側熱板および前記第2乾燥側熱板を加熱可能な乾燥側加熱部とを有する乾燥システムを備える単板処理システムによる単板の処理方法であって、
前記第1挟持部材および前記第2挟持部材は、その面が上下方向と平行に延在しており、前記単板の面と上下方向とが平行な状態で前記単板を圧締することが可能であり、
前記第1挟持部材は、前記第1熱板に取り付けられ、脱水処理の際に前記第1熱板と前記単板との間に介在する介在板を備え、
前記介在板の前記単板と当接する一方の面には、上下方向に対して斜めに延在する複数の斜め溝が形成され、
制御部が、前記脱水システムの前記第1挟持部材および前記第2挟持部材により前記単板が圧締された状態となるように前記駆動部を制御すると共に、前記第1熱板の温度が、前記第2熱板の温度よりも低くなるように前記加熱部を制御するステップと、
前記制御部が、前記乾燥システムの前記第1乾燥側挟持部材および前記第2乾燥側挟持部材により前記単板が保持された状態となるように前記乾燥側駆動部を制御すると共に、前記第1乾燥側熱板の温度が、前記第2乾燥側熱板の温度よりも低くなるように前記乾燥側加熱部を制御するステップとを含む
ことを特徴とする単板の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含んだ単板を脱水処理する脱水システム、当該脱水システムを含む単板処理システム、当該脱水システムによる単板の脱水方法、および、当該単板乾燥システムによる単板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、単板は自然物である。このため同一単板内でも部位によって組織構造や含水率、乾燥による収縮率に差があり、実用十分な含水率まで乾燥させると反りや曲がりが生じる。また単板は部位によって含水率に差がある。このため熱風等によって単板を乾燥する際には比較的含水率の低い組織が先に乾燥してしまい、比較的含水率の高い組織が十分乾燥する頃には過剰な乾燥状態となって、反りや曲がり、単板強度の低下を更に助長する原因となっていた。
【0003】
反りや曲がりの大きな単板は、積層接着して合板製品等を製造する際に、反りや曲がりによって膨れた部分が製造機械内に引っかかり詰まる原因になる。また詰まった際に単板が粉砕してしまうと、その単板を除去するために機械を長時間に渡り停止させる必要が生じる。更に、過剰に乾燥してしまうと単板組織に多数の割れが入り、それによる強度低下によって製造機械内や製造機械までの搬送中に破損、粉砕してしまう事もあった。
【0004】
また単板は、密度や木質繊維の方向などを由来とする伸縮の異方性によって収縮の程度が箇所によって異なる。このため、熱板乾燥によって単板を挟持固定した状態で乾燥し、乾燥完了時に単板に曲がりなどを有しない真直性が高い状態で乾燥を終えた場合でも、その後大気中の水分を吸湿することで箇所によって異なる寸法変化が起こり、反り曲がり等の変形が起こるという課題があった。
【0005】
従来では、これら単板の反りや曲がり、乾燥速度の差を軽減するために、乾燥しながら単板の形状を規制できる熱板による挟持乾燥が望ましいとされおり、この場合、単板表面の平滑性も良好に乾燥できた。
【0006】
更に、乾燥処理に先立って脱水処理をすることで、上記の同一単板内における含水率の差を減らすことができるため、脱水処理を挟むことで乾燥後も反りや曲がりの少ない単板とすることができる。
【0007】
この脱水処理に関し、特許第7007787号(特許文献1)には、以下の単板の脱水方法が提案されている。すなわち複数枚の単板の繊維方向が交差するように積層された積層状単板を、互いに対向するように配置された上下一対の定盤間に搬入する。そして積層状単板を積層方向の両方向から加圧して圧縮することによって単板の含有水分を脱水する。以上の単板の脱水方法が提案されている。特許文献1の脱水方法によれば、繊維方向の異なる単板同士を押圧することによって、繊維方向と直行方向の単板の伸びを単板同士の摩擦によって規制し、単板を機械的に圧縮し脱水することによる寸法変化に起因する割れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献1に記載された脱水方法によって乾燥処理の前に脱水処理をした場合、以下の課題があった。すなわち特許文献1では、常温の平盤によるプレスで単板の厚み方向へと積層状単板を圧締する為、単板が高い圧縮率で圧縮されることになる。そして単板が高い圧縮率で圧縮されることによって木材の組織が破壊されてしまい、単板の強度が低下すると共に圧力解放後に厚さ寸法が十分に復元しきらず厚み不足が発生するという課題があった。このような単板の強度の低下、および、厚み不足の発生は、単板に基づいて合板等の製品を製造した際における強度不足や厚み不良の原因となり得るものである。この課題を解決するため、脱水処理時の圧縮率を小さくすると、今度は木材が十分に脱水されず、脱水処理の本来の目的が果たされないことになってしまう。
【0010】
本発明は上記に鑑みて為されたものであり、単板の脱水に関し、単板の強度の低下および厚み不足の発生を抑制しつつ、十分な脱水を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明に係る脱水装置は、発熱可能な熱板である第1熱板を含む第1挟持部材と、発熱可能な熱板である第2熱板を含む第2挟持部材と、第1挟持部材と第2挟持部材とのうち少なくとも一方を押圧機構に押圧させることが可能な駆動部と、第1熱板および第2熱板を加熱可能な加熱部と、脱水処理の際に、第1挟持部材および第2挟持部材により単板が圧締された状態となるように駆動部を制御すると共に、第1熱板の温度が、第2熱板の温度よりも低くなるように加熱部を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、一対の挟持部材により単板が加熱されつつ、これら一対の挟持部材に単板が圧締されて脱水処理が行われる。このように脱水処理時に単板が加熱されるため、単板の繊維の柔軟性・弾性を向上し、繊維の弾性範囲を拡大させた状態で、単板を圧締することができる。この単板の繊維の柔軟性・弾性の向上により単板の圧締により生じ得る繊維の破壊を抑制することができ、単板の強度の低下を抑制することができる。更に、この単板の繊維の弾性範囲の拡大により、圧締から解放されたときに単板の厚さが十分に復元する大きな復元力を付与することができ、単板の厚み不足の発生を抑制することができる。
【0013】
更に本発明によれば、脱水処理の際に、単板を挟持する一対の挟持部材のうち、一方の挟持部材の熱板の温度が、他方の挟持部材の熱板の温度よりも低い状態とされる。これにより脱水処理の際に、単板内で温度が高い側の面から温度の低い側の面へ向かう一貫した水分の移動が形成されつつ、温度の低い側の面から水分が押し出されて排出されることになり、単板中の水分を効率よく排出することが可能となる。そして、この水分の効率的な排出により、残留する水分の少ない十分な脱水が実現される。
【0014】
すなわち本発明によれば、単板の脱水に関して、単板の強度の低下および厚み不足の発生抑制しつつ、十分な脱水を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例1に係る単板処理システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る脱水装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、脱水装置を
図1の矢印V10から見た図である。
【
図7】
図7の(A)は介在板を
図6の矢印F1から見た図であり、(B)は(A)のA部拡大図である。
【
図8】
図8の(A)は介在板を
図6の矢印B1から見た図であり、(B)は(A)のB部拡大図である。
【
図10】
図10は、規制状態のときの脱水装置を示す図である。
【
図15】
図15の(A)は乾燥側介在板を
図14の矢印F2から見た図であり、(B)は(A)のC部拡大図である。
【
図16】
図16の(A)は乾燥側介在板を
図14の矢印B2から見た図であり、(B)は(A)のD部拡大図である。
【
図19】
図19は、実施例1に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施例2に係る単板処理システムの構成例を示す図である。
【
図31】
図31は、実施例2に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例に係る単板処理システム1の構成例を示すブロック図である。単板処理システム1は、単板Vを脱水し、乾燥するシステムである。
図1に示すように単板処理システム1は、生単板GVを脱水処理する脱水装置10(
図3も併せて参照)と、脱水装置10により脱水処理された脱水単板DVを乾燥処理する乾燥装置15(
図11も併せて参照)と、脱水装置10及び乾燥装置15を制御する制御装置2とを含んで構成されている。脱水装置10と制御装置2とにより脱水システム1aが構成される。また乾燥装置15と制御装置2とにより乾燥システム1bが構成される。なお本実施例及び後述する他の実施例では説明の便宜のため、脱水装置10によって行われる脱水に関する処理を「脱水処理」といい、乾燥装置15によって行われる乾燥に処理を「乾燥処理」といい、脱水装置10による脱水処理と乾燥装置15による乾燥処理との組合せを「一連処理」という。
【0017】
本実施例において単板Vは、ベニヤレースを用いて原木から桂剥き状に切り出されて生成された板状木材である。
図2は、単板Vの一例を模式的に示す図である。単板Vは、主面に直交する方向から見たときの形状が矩形である。そして単板Vは、その繊維方向が単板Vの外周縁を画定する2組の辺のうちの1組の辺に概ね平行となっている。
図2に示す単板Vは、その繊維方向が、1組の辺Hに対して略平行に延在している。なお生単板GVは、脱水装置10による脱水処理が施される前の単板Vを便宜的に表現するものである。また脱水単板DVは、脱水装置10による脱水処理が施された後、乾燥装置15による乾燥処理が施される前の単板Vを便宜的に表現するものである。なお本実施例で示す単板Vは一例であり、単板処理システム1によって乾燥される対象となる板状木材の全てが「単板」となり得る。
【0018】
制御装置2は、脱水装置10及び乾燥装置15を制御する機能を少なくとも有するコンピュータである。
図1に示すように制御装置2は、機能ブロックとして制御部2aを備えている。制御部2aは、CPU(プロセッサ)と、一次記憶装置と、補助記憶装置とを含んで構成されている。CPUは、制御機構、演算機構、レジスタ及びキャッシュメモリを含んで構成される。ただしCPUの構成はこれに限定されるものではなく、必要な演算処理機能/情報処理機能を実現できるものであればよい。一次記憶装置は、DRAM等の揮発性メモリを含んで構成され、CPUが直接読み書きするデータを一時的に記憶する。補助記憶装置は、ROM等の不揮発性メモリを含んで構成され、各種データを不揮発的に記憶する。制御部2aは、CPUが、補助記憶装置に記憶されたプログラムを一次記憶装置に読み出して実行することによって各種処理を実行する。ただし制御部2aの構成は本実施形態で例示する構成に限られず、ハードウェアとソフトウェアとの協働により各種処理を実行可能な構成であればよい。
【0019】
<脱水装置10の構成>
次に脱水装置10の構成について説明する。
図3は、本変形例に係る脱水装置10の斜視図である。
図4は、脱水装置10を
図3の矢印V10に向かって見た図である。以下の説明では脱水装置10を基準とした前後方向、上下方向及び左右方向を
図3、4で示したように定義する。上下方向は、脱水装置10が通常の使用態様で設置された状態における鉛直方向と一致する。ただし脱水装置10を基準とする上下方向と、鉛直方向とが完全に一致した状態でなくてもよい。すなわち、脱水装置10を基準とする上下方向が鉛直方向に対して若干傾いた状態で、脱水装置10が設置される構成でもよい。このことは、乾燥装置15についても同様であり、また、他の実施例に係る脱水装置および乾燥装置についても同様である。
【0020】
図3、4に示すように脱水装置10は、フレーム100を備えている。フレーム100は、土台として機能する基台100aと、基台100aの上面の左部に立設された支持壁100bと、当該上面の右部に立設された支持壁100cとを備えている。また脱水装置10は、支持壁100bと支持壁100cとの間で互いに対向するように配置された、一対の第1挟持部材101と第2挟持部材102とを備えている。
【0021】
図5は、第1挟持部材101の斜視図である。
図3~5に示すように第1挟持部材101は、直方体形状の第1熱板101aを備えている。第1熱板101aには、平滑な面である裏面101U(
図5)が形成されている。第1熱板101aの裏面101Uは、支持壁100bの内側の面の所定の位置に固着される。第1熱板101aの裏面101Uが支持壁100bの内側の面に固着されることによって、第1挟持部材101が支持壁100bに対して強固に固定されている。第1熱板101aにおいて、その裏面101Uと反対側には、平滑な面である表面101F(
図5)が形成されている。
【0022】
第1熱板101aは、発熱可能な部材である。
図1に示すように脱水装置10は、加熱部3を備えている。加熱部3は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで第1熱板101aを加熱することができる。以下、第1熱板101aについて設定された目標温度を「第1目標温度」という。加熱部3による第1熱板101aの加熱方式は、蒸気加熱方式である。すなわち第1熱板101a内に蒸気路が設けられ、制御部2aの制御の下、加熱部3により当該蒸気路に飽和蒸気が供給されることによって第1熱板101aが加熱される。
【0023】
加熱部3は、加熱部3の各部を制御する制御基板、蒸気路に飽和蒸気を供給する機構、その他の第1熱板101aを第1目標温度まで加熱するために必要な要素を備えている。また
図1に示すように脱水装置10は、第1熱板101aに対応して設けられた温度検出センサの検出結果に基づいて、第1熱板101aの温度を検出し、温度を示す信号を加熱部3及び制御部2aに出力する温度検出部3aを備えている。加熱部3は、制御部2aの制御の下、温度検出部3aからの入力に基づいて、第1熱板101aの温度を調整する。なお第1熱板101aの温度の調整は、公知の手段によって実行される。以上の加熱部3に関する事項は、後述する第2熱板102aについても同様であり、また後述する乾燥側加熱部5についても同様であり、また他の実施例についても同様である。
【0024】
なお加熱部3の加熱方式は蒸気加熱方式に限られない。例えば第1熱板101aに電気ヒータを設け、加熱部3により電気ヒータを駆動することによって第1熱板101aが加熱される加熱方式でもよい。また例えば、熱媒油の流路を第1熱板101aに設け、加熱部3により当該流路に熱媒油が供給されることによって第1熱板101aが加熱される加熱方式でもよい。この場合において熱媒油はどのような方法で加熱されてもよい。
【0025】
図5に示すように第1熱板101aの上面には、2つの規制部材121が前後方向に間隔をあけて設けられている。同様に第1熱板101aの下面には、2つの規制部材121が前後方向に間隔をあけて設けられている。規制部材121の機能については後述する。
【0026】
図3~5に示すように第1挟持部材101において、第1熱板101aの表面101Fには、脱水処理の際に第1熱板101aと生単板GVとの間に介在する介在板111が取り付けられている。
図6は、介在板111の斜視図である。
図7の(A)は、介在板111を
図6の矢印F1に向かって見た図である。
図7の(B)は、(A)のA部拡大図である。
図8の(A)は、介在板111を
図6の矢印B1に向かって見た図である。
図8の(B)は、(A)のB部拡大図である。
【0027】
介在板111は、必要な剛性と熱伝導性を持った材料(例えば金属)によって構成されている。この点は後述する乾燥側介在板161についても同様であり、また他の実施例についても同様である。
図6~8に示すように介在板111には、第1熱板101aの表面101Fに当接する裏面111U(
図6、8)と、裏面111Uの反対側の表面111F(
図6、7参照)とが形成されている。後に明らかとなる通り表面111Fは、脱水処理の際に生単板GVと当接する面である。
【0028】
図6、7に示すように介在板111の表面111Fには、上下方向に対して斜めに延在する介在板表溝111a(溝)が複数(8個)、形成されている。介在板表溝111aは、一定の幅及び一定の深さを持つ溝(切欠き)である。本実施例では、介在板表溝111aのそれぞれは、上下方向に対して約45°傾いて形成されている。介在板表溝111aの両端はそれぞれ介在板111の表面111Fの外周縁を画定する辺に至っている。介在板111の表面111Fにおいて介在板表溝111aのそれぞれは、等間隔に並んで形成されている。
【0029】
一方、
図8に示すように介在板111の裏面111Uには、上下方向に延在する介在板裏溝111b(溝)が複数(4個)、形成されている。介在板裏溝111bは、一定の幅及び一定の深さを持つ溝(切欠き)である。介在板裏溝111bの上端は、介在板111の裏面111Uの上辺に至っている。介在板裏溝111bの下端は、介在板111の裏面111Uの下辺に至っている。介在板111の裏面111Uにおいて介在板裏溝111bのそれぞれは、等間隔に並んで形成されている。
【0030】
図7(特に
図7(B))及び
図8(特に
図8(B))に示すように介在板111において、表面111Fに形成された介在板表溝111aと、裏面111Uに形成された介在板裏溝111bとが交差する地点には介在板111を厚み方向に貫通する貫通孔ap1が形成されている。ここで介在板表溝111aのそれぞれ及び介在板裏溝111bのそれぞれは、介在板表溝111aと介在板裏溝111bとが交差する地点において互いの溝部が連結するような深さとなっており、これにより各地点に貫通孔ap1が形成される。
【0031】
図9は、第2挟持部材102の斜視図である。
図9に示すように第2挟持部材102は、直方体形状の第2熱板102aを備えている。第2熱板102aには、表面102Fと、表面102Fの反対側の裏面102Uとが形成されている。表面102F及び裏面102Uはそれぞれ、平滑な面である。表面102Fは、脱水処理の際に生単板GVと当接する面である。第2挟持部材102において、第2熱板102aには、介在板111に相当する部材が設けられていない。
【0032】
図1に示すように加熱部3は、制御部2aの制御の下で、温度検出部3aからの入力に基づいて、設定された目標温度まで第2熱板102aを加熱することができる。以下、第2熱板102aについて設定された目標温度を「第2目標温度」という。つまり加熱部3は、第1熱板101aと、第2熱板102aとをそれぞれ異なる目標温度となるように加熱することができる。
【0033】
図9に示すように第2熱板102aの上面には、2つの規制部材122が前後方向に間隔をあけて設けられている。同様に第2熱板102aの下面には、2つの規制部材122が前後方向に間隔をあけて設けられている。第1挟持部材101の4つの規制部材121のそれぞれと、第2挟持部材102の4つの規制部材122のそれぞれとは、左右方向において互いに対向する位置に配置されている。規制部材121及び規制部材122は、脱水処理の際に、第1挟持部材101と第2挟持部材102との離間距離が一定距離となると接触し、これら部材のそれ以上の近接を規制する。以下、規制部材によって、相対する挟持部材の近接が規制された状態を「規制状態」という。
図10は、規制状態のときの脱水装置10を示している。すなわち
図10では、規制部材121と規制部材122とが接触し、第1挟持部材101と第2挟持部材102とがこれ以上、近接することが規制されている。
【0034】
図3、4に示すように支持壁100cの所定の位置には、流体シリンダ131(押圧機構)が設けられている。流体シリンダ131は、第2挟持部材102を押圧可能に構成された油圧式のシリンダである。
図4に示すように流体シリンダ131は、左右方向に移動可能なピストンロッド131aを有する。ピストンロッド131aの先端には、平板状の固定部材131bを介して第2挟持部材102が固定されている。より詳細には、第2挟持部材102の第2熱板102aの裏面102Uに、ピストンロッド131aの先端の固定部材131bが固着されている。
【0035】
図1に示すように脱水装置10は、駆動部4を備えている。駆動部4は、制御部2aの制御の下で、流体シリンダ131を駆動し、ピストンロッド131aを左方に向かって移動させることによって第2挟持部材102を押圧することができる。駆動部4は、駆動部4の各部を制御する制御基板、油圧ポンプ、油圧ポンプを駆動する電動機、計器、その他の流体シリンダ131を駆動するために必要な要素を備えている。駆動部4に関する以上の事項は後述する乾燥側駆動部6及び他の実施例についても同様である。また
図1に示すように脱水装置10は、圧力検出部4aを備えている。圧力検出部4aは、第1挟持部材101と第2挟持部材102とで生単板GVが挟持された状態のときに、脱水装置10に設けられた圧力検出センサの検出結果に基づいて、生単板GVに加わる圧力を検出し、検出した圧力を示す信号を駆動部4及び制御部2aに出力する。なお単板Vが挟持された状態とは、単板Vに加わる圧力にかかわらず、2つの挟持部材により単板Vが挟まれつつ支持されている状態をいう。
【0036】
特に駆動部4は、以下の処理を実行することができる。すなわち駆動部4は、制御部2aの制御の下、第1挟持部材101と第2挟持部材102とで生単板GVを“保持する”ことができる。生単板GVを保持するとは、流体シリンダ131により第2挟持部材102に弱い圧力を加えて、第1挟持部材101と第2挟持部材102とで生単板GVが挟まれて支持された状態を構築することを意味する。弱い圧力は、第1挟持部材101及び第2挟持部材102と生単板GVとの間で働く摩擦力によって生単板GVが支持された状態が維持されるのに十分な程度の弱い圧力を意味する。以下、2つの挟持部材により単板Vが保持された状態を「保持状態」という場合がある。なお“保持する”との表現は、“挟持する”及び“圧締する”という表現と区別するために用いる便宜上の表現である。
【0037】
更に駆動部4は、保持状態から、制御部2aの制御の下で流体シリンダ131を駆動し、生単板GVに更なる圧力を加えることができる。特に駆動部4は、制御部2aの制御の下、生単板GVに加わる圧力が目標圧力に達した状態に至るか、或いは規制状態に至るように、流体シリンダ131を駆動することができる。以下、生単板GVに加わる圧力が目標圧力に達した状態及び規制状態を総称して「圧締状態」という。
図10は、規制状態のときの脱水装置10を示している。制御部2aは、制御部2aの制御の下で流体シリンダ131を駆動し、圧締状態を一定時間、維持することができる。
【0038】
<乾燥装置15の構成>
次に乾燥装置15の構成について説明する。
図11は、本実施例に係る乾燥装置15の斜視図である。
図12は、乾燥装置15を
図11の矢印V15に向かって見た図である。以下の説明では、乾燥装置15を基準とした前後方向、上下方向及び左右方向を
図11、12で示したように定義する。上下方向は、乾燥装置15が通常の使用態様で設置された状態における鉛直方向と一致する。
【0039】
乾燥装置15の構成は、脱水装置10の第1挟持部材101に代えて第1乾燥側挟持部材151を備えている点、及び、脱水装置10の第2挟持部材102に代えて第2乾燥側挟持部材152を備えている点以外は、脱水装置10の構成と基本的に同じである。すなわち乾燥装置15は、フレーム150を備える。フレーム150は、基台150aと、基台150aに立設された一対の支持壁150b、150cとを備える。支持壁150bには、第1乾燥側挟持部材151が固定される。第1乾燥側挟持部材151については後述する。第1乾燥側挟持部材151の右方であって、第1乾燥側挟持部材151に対向する位置には第2乾燥側挟持部材152が設けられる。第2乾燥側挟持部材152については後述する。支持壁150cには、第2乾燥側挟持部材152を押圧するための乾燥側流体シリンダ181が設けられる。乾燥側流体シリンダ181は、ピストンロッド181aを備えている。
【0040】
図13は、第1乾燥側挟持部材151の斜視図である。
図13に示すように第1乾燥側挟持部材151は、直方体形状の熱板である第1乾燥側熱板151aを備えている。第1乾燥側熱板151aには、規制部材121に相当する部材は設けられていない。
図13に示すように第1熱板101aの表面151F(
図13)には、乾燥処理の際に第1乾燥側熱板151aと脱水単板DVとの間に介在する乾燥側介在板161が取り付けられている。
図14は、乾燥側介在板161の斜視図である。
図15の(A)は、乾燥側介在板161を
図14の矢印F2に向かって見た図である。
図15の(B)は、(A)のC部拡大図である。
図16の(A)は、乾燥側介在板161を
図14の矢印B2に向かって見た図である。
図16の(B)は、(A)のD部拡大図である。
図14~16に示すように乾燥側介在板161には、第1乾燥側熱板151aの表面151Fに当接する裏面161Uと、裏面161Uの反対側の表面161Fとが形成されている。後に明らかとなる通り表面161Fは、乾燥処理の際に脱水単板DVと当接する面である。
【0041】
図14に示すように乾燥側介在板161の表面161Fには、上下方向に対して垂直に交わる方向に延在する乾燥側介在板表溝161a(溝)が複数(12本)、形成されている。乾燥側介在板表溝161aは、一定の幅及び一定の深さを持つ溝(切欠き)である。乾燥側介在板表溝161aの両端はそれぞれ、乾燥側介在板161の表面161Fの外周縁を画定する辺(上下方向に延在する一対の辺)に至っている。乾燥側介在板161の表面161Fにおいて乾燥側介在板表溝161aのそれぞれは、等間隔に並んで形成されている。
【0042】
一方、
図16に示すように乾燥側介在板161の裏面161Uには、上下方向に延在する乾燥側介在板裏溝161b(溝)が複数(4本)、形成されている。乾燥側介在板裏溝161bは、一定の幅及び一定の深さを持つ溝(切欠き)である。乾燥側介在板裏溝161bの両端はそれぞれ、乾燥側介在板161の裏面161Uの外周を確定する辺(左右方向に延在する一対の辺)に至っている。乾燥側介在板161の裏面161Uにおいて乾燥側介在板裏溝161bのそれぞれは、等間隔に並んで形成されている。
【0043】
図15、16(特に
図15(B)、
図16(B))に示すように乾燥側介在板161において、表面161Fに形成された乾燥側介在板表溝161aと、裏面161Bに形成された乾燥側介在板裏溝161bとが交差する地点には乾燥側介在板161を厚み方向に貫通する貫通孔ap2が形成されている。ここで乾燥側介在板表溝161aのそれぞれ及び乾燥側介在板裏溝161bのそれぞれは、乾燥側介在板表溝161aと乾燥側介在板裏溝161bとが交差する地点において互いの溝部が連結するような深さとなっており、これにより各地点に貫通孔ap2が形成される。
【0044】
図17は、第2乾燥側挟持部材152の斜視図である。
図17に示すように第2乾燥側挟持部材152は、直方体形状の熱板である第2乾燥側熱板152aを備えている。第2乾燥側熱板152aには、規制部材122に相当する部材は設けられていない。第2乾燥側熱板152aの表面152Fには、乾燥処理の際に第2乾燥側熱板152aと脱水単板DVとの間に介在する乾燥側介在板161が取り付けられている。乾燥側介在板161の構成は上述した通りである。
【0045】
図1に示すように乾燥装置15は、乾燥側加熱部5を備えている。また乾燥装置15は、温度検出部5aを備えている。温度検出部5aは、第1乾燥側熱板151aに対応して設けられた温度検出センサの検出結果に基づいて第1乾燥側熱板151aの温度を検出する。また温度検出部5aは、第2乾燥側熱板152aに対応して設けられた温度検出センサの検出結果に基づいて第2乾燥側熱板152aの温度を検出する。乾燥側加熱部5は、制御部2aの制御の下で、温度検出部5aからの入力に基づいて、設定された目標温度まで第1乾燥側熱板151aを加熱することができる。以下、第1乾燥側熱板151aについて設定された目標温度を「第1乾燥側目標温度」という。同様に乾燥側加熱部5は、制御部2aの制御の下で、温度検出部5aからの入力に基づいて、設定された目標温度まで第2乾燥側熱板152aを加熱することができる。以下、第2乾燥側熱板152aについて設定された目標温度を「第2乾燥側目標温度」という。
【0046】
図1に示すように乾燥装置15は、乾燥側駆動部6を備えている。乾燥側駆動部6は、制御部2aの制御の下で、乾燥側流体シリンダ181を駆動し、ピストンロッド181aを左方に向かって移動させることによって第2乾燥側挟持部材152を押圧することができる。また
図1に示すように乾燥装置15は、圧力検出センサの検出結果に基づいて、挟持部材に挟持される脱水単板DVに加わる圧力を検出する圧力検出部6aを備えている。乾燥側駆動部6は、制御部2aの制御の下で流体シリンダ131を駆動し、第1挟持部材101と第2挟持部材102とで生単板GVを保持することができる。
図18は、保持状態の乾燥装置15を示している。
【0047】
<単板処理システム1の動作>
次にある1枚の単板Vに注目し、単板Vが生単板GVとして脱水装置10に脱水処理され、更に脱水単板DVとして乾燥装置15に乾燥処理されるときの単板処理システム1の動作について
図19のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
図19に示すように、まず生単板GVが脱水装置10の第1挟持部材101と第2挟持部材102との間に配置される(ステップSX1)。このとき生単板GVの繊維方向と、上下方向(=鉛直方向)とが一致した状態とされる。これは生単板GVの設置方向の強度の関係で、生単板GVの繊維方向を、鉛直方向と一致させるためである。なおステップSX1の処理は、ベルトコンベア、産業用ロボット、その他の機器により自動で行われてもよい。またこの処理は、その一部或いは全部が人為的な手段により行われてもよい。以下のステップSA1~SA3の処理は脱水装置10を対象として実行される。
【0049】
次いで制御部2aは、保持処理を実行する(ステップSA1)。詳述すると制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ131を駆動し、第2挟持部材102を左方へ向かって押圧し、第1挟持部材101と第2挟持部材102とで生単板GVを保持する。この段階では、生単板GVに対して、挟持部材により挟持された状態が維持されるのに十分な程度の弱い圧力が加えられる。
【0050】
次いで制御部2aは、加熱処理を実行する(ステップSA2)。詳述すると本実施例では、第1挟持部材101の第1熱板101aについての第1目標温度に設定する値(以下「第1設定値TA1」という)が、以下の観点で事前に定められている。
(観点KX1)第1目標温度が、第2挟持部材102の第2熱板102aについての第2目標温度よりも低くなるようにする。
(観点KX2)生単板GVの繊維(組織)は、ある温度帯では、その温度が高くなるほど柔軟性・弾性が向上し、弾性範囲が拡大する。これを踏まえ、第1目標温度が、「主脱水処理(後述)において第1熱板101aの発熱に由来して、生単板GVの繊維に必要な柔軟性・弾性が生じ、かつ必要な弾性範囲の拡大を得られる温度」以上の温度となるようにする。
(観点KX3)第1目標温度が、「主脱水処理(後述)において第1熱板101aの発熱に由来して生単板GVの水分の蒸発が生じない温度(つまり第1熱板101aの発熱に由来して生単板GVの水分の蒸発が始まる温度よりも十分に低い温度)となるようにする。
なお観点KX2の「必要な柔軟性及び弾性」及び「必要な弾性範囲の拡大」については後に明らかとなる。
ステップSA2の加熱処理において制御部2aは、加熱部3を制御して、第1熱板101aの温度が第1設定値TA1(=第1目標温度として設定される値)となるように第1熱板101aを加熱する。
【0051】
また第2挟持部材102の第2熱板102aについての第2目標温度に設定する値(以下「第2設定値TA2」という)が、以下の観点で事前に定められている。
(観点KY1)第2目標温度が、第1挟持部材101の第1熱板101aについての第1目標温度よりも高くなるようにする。
(観点KY2)第2目標温度が、「主脱水処理において第2熱板102aの発熱に由来して生単板GVの水分の蒸発が始まる温度」に近い温度となるようにする。
なお第2目標温度は、第1目標温度よりも高いため、第2熱板102aの発熱に由来して、必要な柔軟性・弾性及び必要な弾性範囲の拡大が生単板GVの繊維に当然に生じる。
ステップSA2の加熱処理において制御部2aは、加熱部3を制御して、第2熱板102aの温度が第2設定値TA2(=第1目標温度として設定される値)となるように第2熱板102aを加熱する。
【0052】
なお加熱処理を開始するタイミングは、本実施例で例示するタイミングに限られない。一例として保持処理の開始前に加熱処理が開始されてもよい。
【0053】
次いで制御部2aは、主脱水処理を実行する(ステップSA3)。詳述すると制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ131を駆動し、流体シリンダ131によって第2挟持部材102を押圧し、圧締状態とする。上述したように圧締状態は、生単板GVに加わる圧力が目標圧力に達した状態か、規制状態(規制部材により挟持部材の近接が規制された状態)である。
図10は、規制状態の脱水装置10を示している。この圧締状態では、生単板GVの厚みが、40~50%程度という圧縮率で圧縮される程度の圧力が生単板GVに加わる(このような圧縮率となるよう目標圧力が定められる)。更に制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ131を駆動し、予め定められた所定時間、圧締状態を維持する。なお所定時間は、固定値でもよく、各種センサの検出結果によって制御部2aによって値が変更される可変値でもよい。所定時間が経過すると、制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ131を駆動し、保持状態となるまで、流体シリンダ131から第2挟持部材102へ加わる押圧力を徐々に小さくする。流体シリンダ131から第2挟持部材102へ加わる押圧力が徐々に小さくなる過程で、生単板GVに加わる押圧力が徐々に小さくなり、保持状態となったときに生単板GVに加わる押圧力はほとんどなくなる。
【0054】
この主脱水処理では、以下のようにして生単板GVの脱水が実現されると共に、以下の効果を奏する。すなわち主脱水処理では、生単板GVは、上述の通り40~50%程度の圧縮率で圧縮される。まず、このような高い圧縮率で生単板GVが圧縮されることによって、生単板GVから水分が十分に絞り出され、高い脱水効果の下、生単板GVの脱水が実現される。その上で生単板GVは、第1熱板101a及び第2熱板102aで加熱されつつ押圧される。このように生単板GVが加熱されることによって、生単板GVの繊維の柔軟性・弾性が高まり、弾性範囲が拡大する。このため、高い圧縮率で圧縮されるのにもかかわらず、柔軟性・弾性の向上に起因して、繊維の破壊が抑制される。これにより常温で単板Vを圧締して脱水を行っていた従来の技術と比して、単板の強度の低下を効果的に抑制できる。更に生単板GVが高い圧縮率で圧縮されるのにもかかわらず、繊維の弾性範囲の拡大に起因して、第1挟持部材101及び第2挟持部材102による押圧から解放されたときに単板GVの厚さ寸法が十分に復元するおおきな復元力が得られる。これにより常温で単板Vを圧締して脱水を行っていた従来の技術と比して、厚み不足の発生を抑制することができる。
【0055】
ここで第1目標温度に設定される第1設定値TA1は、観点KX2:『第1目標温度が、「第1熱板101aの発熱に由来して、生単板GVの繊維に必要な柔軟性・弾性が生じ、必要な弾性範囲の拡大を得られる温度」以上の温度となるようにする。』という観点を反映して定められる。この観点KX2における「必要な柔軟性・弾性」とは、単板の強度の低下を有効に抑制できるような柔軟性・弾性を意味する。また「必要な弾性範囲の拡大」とは、厚み不足の発生を有効に抑制できるような弾性範囲の拡大を意味する。
【0056】
更に主脱水処理の際、第1挟持部材101(第1熱板101a)の温度の方が、第2挟持部材102(第2熱板102a)の温度よりも低い状態とされる。その上で温度の高い側の第2挟持部材102には溝が形成された介在板111に相当する部材が設けられず、平滑な面である「第2熱板102aの表面102F」が生単板GVに当接する構成である。更に温度の低い側の第1挟持部材101には介在板111が設けられ、介在板表溝111aが形成された「介在板111の表面111F」が生単板GVに当接する構成である。以上の構成ため主脱水処理の際に、挟持部材に挟持されている生単板GVにおいて、温度が高い方の第2挟持部材102側で水分が膨張し、発生した蒸気が第1挟持部材101側に押し出される。これにより生単板GV内で、第2挟持部材102側から第1挟持部材101側へ向かう一貫した水分の移動が形成されつつ第1挟持部材101側の面から水分が押し出されて排出されることになり、生単板GV中の水分が効率よく外部に排出される。そして、この水分の効率的な排出により、残留する水分の少ない十分な脱水が実現される。
【0057】
ここで第1目標温度に関する観点KX1及び観点KX3と、第2目標温度に関する観点KY1及び観点KY2は、以上の生単板GVの水分の効率的な排出を実現するための観点である。
【0058】
また主脱水処理において、生単板GVから脱水された液体状の水分(以下「処理水」という)には、ヤニ、その他の不純物(以下「ヤニ等」という)が含まれている。主脱水処理において、この処理水は、上述した第2挟持部材102側から第1挟持部材101側へ向かう水分の流れに従って、その大部分が、生単板GVの面のうち「第1挟持部材101の介在板111」に当接する面(以下「排出面」という)から排出される。この排出面から排出された処理水の多くは、介在板111の表面111Fに形成された介在板表溝111aへ進入する。そして介在板表溝111aへ進入した処理水の一部は、重力に従って介在板表溝111a内を流れ、当該溝の端部から放出される。また介在板表溝111aへ進入した処理水の一部は貫通孔ap1を介して介在板裏溝111bへ進入し、重力に従って介在板裏溝111b内を下方に向かって流れ、当該溝の端部から放出される。このように生単板GVの排出面から排出された処理水は、介在板表溝111a及び介在板裏溝111bを通って、生単板GVとの接触が抑制されつつ速やかに第1挟持部材101から放出される。このため第1挟持部材101と処理水とが接触した状態で、処理水が蒸発することを大幅に低減でき、第1挟持部材101へのヤニ等の堆積を大幅に軽減することができる。
【0059】
ここで仮に第1挟持部材101に介在板111を設けず、脱水処理の際に、平滑な面である「第1熱板101aの表面101F」が生単板GVに当接するようにした場合、以下の問題が生じ得る。すなわち、生単板GVの排出面から排出された処理水が、第1熱板101aの表面101Fにて蒸発し、処理水に含まれるヤニ等が徐々に表面101F上に残留し、固着、堆積する。この表面101Fに堆積したヤニ等が、表面101Fと生単板GVとの接触を阻害してしまい、熱伝導効率の低下や、それに伴う脱水効率の低下等を招く可能性がある。更に生単板GVの表面にヤニ等の堆積物による凹みが生じるという問題や、単板Vの搬入搬出時にヤニ等の堆積物によって、単板Vのスムーズな搬入搬出が行えなくなるといった問題が生じる可能性がある。一方で、本実施例の構成によれば、介在板111の存在により、第1挟持部材101へのヤニ等の堆積を大幅に軽減することができるため、上述した問題を効果的に解決することができる。
【0060】
また本実施例では、生単板GVは、その繊維方向が上下方向と一致した状態で挟持部材に挟持される。そして介在板111の表面111Fには、上下方向に対して斜めに延在する介在板表溝111aが複数、形成されている。このため生単板GVが圧締されている間、介在板表溝111aが延在する方向と生単板GVの繊維方向とが一致した状態とならずに、「介在板表溝111aが延在する方向の傾き」(約45°)だけ交わった状態となる。仮に介在板表溝111aが延在する方向と、繊維方向とが一致した状態のまま生単板GVが圧締された場合、介在板表溝111aの縁の生単板GVへの“めり込み”が生じやすくなる。しかしながら本実施例では、介在板表溝111aが延在する方向と繊維方向とが交わった状態となるため、このような“めり込み”の発生を効果的に抑制できる。
【0061】
更に介在板表溝111aは、上下方向に対して傾いた方向に延在している。つまり介在板表溝111aは、上下方向に対して垂直に交わる方向に延在するのではなく、下方(=鉛直方向の下方)の成分を含む方向に延在している。上述したように、主脱水処理の際に生単板GVからは、液体状の処理水が排出され介在板表溝111aへ流入するが、介在板表溝111aが下方(=鉛直方向の下方)の成分を含む方向に延在しているため、介在板表溝111aへ流入した液体状の処理水を効率よく放出できる。更に介在板表溝111aと介在板裏溝111bとが交差する地点には貫通孔ap1が形成されており、介在板表溝111aに進入した液体の一部は、貫通孔ap1を介して介在板裏溝111bへ進入し、介在板裏溝111bを通って外部へ放出される。このため、介在板表溝111a内で処理水が溢れるということを抑制でき、これにより処理水の更なる効率的な放出、及び、第1挟持部材101への堆積物の堆積のより効果的な抑制を実現できる。
【0062】
なお本変形例では、「介在板表溝111aが延在する方向の上下方向に対する傾き」を45°としているが、傾きは45°に限られない。すなわち、「介在板表溝111aは、鉛直下方の成分を含み、挟持される生単板GVの繊維方向と交わる方向であればよい。
【0063】
なお第1目標温度に設定する第1設定値TA1の実際の温度は、主脱水処理において圧締状態とする時間の長さや、目標圧力、介在板111の熱伝導率、環境温度、その他の要因によって変化させるべきものであるが、一例として60~150℃の範囲内の温度とされる。また第1設定値TA1は、脱水処理ごとに変更されてもよい。また制御部2aが、脱水処理の最中に、生単板GVの状態によって、第1設定値TA1を動的に変更する構成でもよい。この場合、生単板GVの状態を検出するためのセンサ(温度センサや、カメラ等)が適切に設けられる。同様に第2目標温度に設定する第2設定値TA2の実際の温度は、各種要因によって変化させるべきものであるが、一例として60~150℃の範囲内の温度とされる。第2設定値TA2の値は、脱水処理ごとに変更されてもよく、脱水処理の最中に代わる可変値であってもよい。
【0064】
さて
図19を参照し、ステップSA3の主脱水処理の終了後、脱水単板DVが脱水装置10から取り外されて、乾燥装置15の第1乾燥側挟持部材151と第2乾燥側挟持部材152との間に配置される(ステップSX2)。このとき、脱水単板DVの繊維方向と、上下方向(=鉛直方向)とが一致した状態とされる。これは脱水単板DVの強度の関係で、脱水単板DVの繊維方向を、鉛直方向と一致させるためである。なおステップSX2の処理は、ベルトコンベア、産業用ロボット、その他の機器により自動で行われてもよい。またこの処理は、その一部或いは全部が人為的な手段により行われてもよい。以下のステップSA4~ステップSA6の処理は乾燥装置15を対象として実行される。
【0065】
次いで制御部2aは、乾燥側保持処理を実行する(ステップSA4)。詳述すると制御部2aは、乾燥側駆動部6を制御して乾燥側流体シリンダ181を駆動し、第2乾燥側挟持部材152を左方へ向かって押圧し、第1乾燥側挟持部材151と第2乾燥側挟持部材152とで脱水単板DVを保持する。この段階では、脱水単板DVに対して、挟持部材により挟持された状態が維持されるのに十分な程度の弱い圧力が加えられる。
【0066】
次いで制御部2aは、乾燥側加熱処理を実行する(ステップSA5)。詳述すると第1乾燥側挟持部材151の第1乾燥側熱板151aについての第1乾燥側目標温度に設定する値(以下「第1乾燥側設定値TB1」という)、及び、第2乾燥側挟持部材152の第2乾燥側熱板152aについての第2乾燥側目標温度に設定する値(以下「第2乾燥側設定値TB2」)が、以下の観点で事前に定められている。
(観点KZ1)第1乾燥側目標温度を第2乾燥側目標温度よりも十分に低くする。
(観点KZ2)第1乾燥側目標温度及び第2乾燥側目標温度を、主乾燥処理において脱水単板DVに残留する水分を蒸気化して排出できる温度とする一方、過度な乾燥が発生しない温度とする。
ステップSA5の乾燥側加熱処理において制御部2aは、乾燥側加熱部5を制御して、第1乾燥側熱板151aの温度が第1乾燥側設定値TB1(=第1乾燥側目標温度として設定される値)となるように第1乾燥側熱板151aを加熱する。また制御部2aは、乾燥側加熱部5を制御して、第2乾燥側熱板152aの温度が第2乾燥側設定値TB2(=第2乾燥側目標温度として設定される値)となるように第2乾燥側熱板152aを加熱する。
【0067】
なお加熱処理を開始するタイミングは、本実施例で例示するタイミングに限られない。一例として乾燥側保持処理の開始前に加熱処理が開始されてもよい。
【0068】
次いで制御部2aは、主乾燥処理を実行する(ステップSA6)。詳述すると制御部2aは、挟持部材により脱水単板DVを保持した状態を所定時間の間、継続する。主乾燥処理が継続している間、脱水単板DVは、第1乾燥側設定値TB1で発熱する第1乾燥側熱板151a、及び、第2乾燥側設定値TB2で発熱する第2乾燥側熱板152aにより加熱され、内部の水分が蒸気として排出され、これにより脱水単板DVの乾燥が実現される。
【0069】
上述した構造的特徴の下、乾燥装置15により以上の乾燥処理が実行されるため、以下の効果が生じる。すなわち主乾燥処理では、挟持部材に保持される脱水単板DVは、熱板の発熱により加熱され、その内部の水分が蒸気として排出される。そして脱水単板DVから発生する蒸気は、第1乾燥側挟持部材151の乾燥側介在板161の乾燥側介在板表溝161a、及び、第2乾燥側挟持部材152の乾燥側介在板161の乾燥側介在板表溝161aを伝い速やかに排出される。これにより、排出された蒸気が停滞するのを防ぎ、第1乾燥側挟持部材151及び第2乾燥側挟持部材152に蒸気に混じったヤニ等が付着し、堆積することを抑制ことができる。
【0070】
ここで主乾燥処理において脱水単板DVの第1乾燥側挟持部材151側の面から排出された蒸気は、乾燥側介在板161の表面161Fに形成された乾燥側介在板表溝161aに流入すると共に、その一部は貫通孔ap2を介して乾燥側介在板裏溝161bに進入し、乾燥側介在板裏溝161bを経由して放出される。この構成のため、乾燥側介在板表溝161a内で蒸気が溢れるということを抑制でき、これにより蒸気の更なる効率的な放出、及び、第1乾燥側挟持部材151における堆積物の堆積のより効果的な抑制を実現できる。脱水単板DVの第2乾燥側挟持部材152側の面から排出された蒸気についても同様である。
【0071】
更に乾燥側介在板161の乾燥側介在板表溝161aは、上下方向に対して垂直に交わる方向、換言すれば挟持された脱水単板DVの繊維方向と垂直に交わる方向に延在する。このため、介在板表溝111aの縁の脱水単板DVへの“めり込み”の発生を効果的に抑制できる。ただし主乾燥処理では、第2乾燥側挟持部材152に加わる圧力は小さいため、この点からも介在板表溝111aの縁の脱水単板DVへの“めり込み”は極めて生じにくい。なお、乾燥側介在板表溝161aが延在する方向は、上下方向に対して“垂直に”交わる方向に限られない。すなわち上下方向(=挟持された脱水単板DVの繊維方向)に対して交わる方向であればよい。
【0072】
また、主乾燥処理において一対の第1乾燥側挟持部材151及び第2乾燥側挟持部材152がそれぞれ異なる温度となるように加熱されている。これにより主乾燥処理において脱水単板DVを保持し乾燥した際に、脱水単板DVに於ける第1乾燥側挟持部材151側の面と、第2乾燥側挟持部材152側の面とで乾燥速度に差ができる。この乾燥速度の差によってドライングセット効果を起こし、乾燥及び乾燥後の吸脱湿による変形を抑制できる。
【0073】
なお第1目標温度、第2目標温度、第1乾燥側目標温度および第2乾燥側目標温度に設定する温度は、特定の温度或いは特定の範囲に限定されるものではない。また。各目標温度を設定するときの観点の一例を挙げたが、各目標温度が例示した観点とは異なる観点で設定されてもよい。すなわち第1目標温度および第2目標温度については、「第1目標温度<第2目標温度」という関係があり、かつ脱水処理において上述した効果を享受でき或いは効果を享受できる傾向があればよい。また第1乾燥目標温度および第2乾燥目標温度については、「第1乾燥目標温度<第2乾燥目標温度」という関係があり、かつ乾燥処理において上述した効果を享受でき或いは効果を享受できる傾向があればよい。以上のことは他の実施形態についても同様である。
【0074】
なおステップSA1~SA3の処理の一部或いは全部は「単板の脱水方法」に相当する。またステップSA4~SA6の処理の一部或いは全部は「単板の乾燥方法」に相当する。またステップSA1~SA6の処理の一部或いは全部は「単板の処理方法」に相当する。
【0075】
以上の通り、本実施例では、脱水処理→乾燥処理という順番で単板Vが乾燥される。このため、熱板乾燥の利点である平滑性を持ちながらも、強度を保ったまま、且つ乾燥後の吸湿等による変形の少ない高品質な単板Vを、安定して生産することができる。
【実施例2】
【0076】
次に実施例2について説明する。以下の実施例2の説明において、実施例1と同一或いは同一の特徴により同一の機能を果たす要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図20は、本実施例に係る単板処理システム1-2の機能構成例を示すブロック図である。
図20に示すように、単板処理システム1-2は、脱水装置20と乾燥装置25と制御装置2とを備えている。脱水装置20と制御装置2とにより脱水システム1a-2が構成される。また乾燥装置25と制御装置2とにより乾燥システム1b-2が構成される。
【0078】
<脱水装置20の構成>
図21は、本実施例に係る脱水装置20の斜視図である。
図22は、脱水装置20を
図21の矢印V20に向かって見た図である。以下の説明では、脱水装置20を基準とした前後方向、前後方向、上下方向及び左右方向を
図21、22で示したように定義する。上下方向は、脱水装置20が通常の使用態様で設置された状態における鉛直方向と一致する。
【0079】
図21、22に示すように脱水装置20は、フレーム200を備えている。フレーム200は、基台200aと、基台200aに立設された一対の支持壁200b、200cとを備えている。支持壁200bと支持壁200cとの間には、これら部材に懸架された、左右方向に延在する4個のレール200dが設けられている。レール200dの機能については後述する。
【0080】
支持壁200bには、第1挟持部材201が固定されている。第1挟持部材201は、直方体形状の第1熱板201aを備えている。第1熱板201aには、支持壁200bに対向し、支持壁200bに固着される裏面と、裏面の反対側の表面とが形成されている。第1熱板201aの表面および裏面はそれぞれ、平滑な面である。第1熱板201aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように加熱部3は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで第1熱板201aを加熱することができる。以下、第1熱板201aについて設定された目標温度を、実施例1と同様「第1目標温度」という。第1熱板201aの上面及び下面には、第1挟持部材201と高温挟持部材204との近接を規制する規制部材221が設けられている。第1挟持部材201において、第1熱板201aの表面には、介在板111が取り付けられている。介在板111の構成は実施例1で説明した通りである。また第1熱板201aと介在板111との構造的関係は、実施例1における第1熱板101aと介在板111との構造的関係と同様である。このことは、熱板に介在板が取り付けられている他のケースについても同様である。
【0081】
第1挟持部材201の右方において、第1挟持部材201と対向する位置には、高温挟持部材204が設けられている。高温挟持部材204は、第1挟持部材201と後述する低温挟持部材203との間に位置している。
図23は、高温挟持部材204の斜視図である。
図23に示すように高温挟持部材204は、直方体形状の高温熱板204aを備えている。高温熱板204aは、第1挟持部材201に対向する一面204Uと、一面204Uの反対側の他面204Fとが形成されている。他面204Fは、低温挟持部材203に対向する。高温熱板204aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように加熱部3は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで高温熱板204aを加熱することができる。以下、高温熱板204aについて設定された目標温度を「高温目標温度」という。高温挟持部材204は介在板111に相当する部材を備えていない。
【0082】
高温熱板204aの上面及び下面には、高温挟持部材204と第1挟持部材201との近接を規制し、かつ、高温挟持部材204と低温挟持部材203との近接を規制する規制部材224が設けられている。
図21、22に示すように4つのレール200dは、高温挟持部材204を支持する。また4つのレール200dは、高温挟持部材204が左右方向にのみ移動するように、高温挟持部材204の移動を規制する。詳述すると4つのレール200dのそれぞれには適切な位置にガイド溝が形成されている。高温挟持部材204の規制部材224のそれぞれは、レール200dに対応する位置に設けられ、対応するレール200dのガイド溝のそれぞれに嵌合している。そして対応するレール200dのガイド溝のそれぞれに規制部材224が嵌合していることによって、高温挟持部材204の移動方向が左右方向のみとなるように、高温挟持部材204の移動が規制される。
【0083】
高温挟持部材204の右方において、高温挟持部材204と対向する位置には、低温挟持部材203が設けられている。低温挟持部材203は、高温挟持部材204と第2挟持部材202との間に位置している。
図24は、低温挟持部材203の斜視図である。
図24に示すように低温挟持部材203は、直方体形状の低温熱板203aを備えている。低温熱板203aには、高温挟持部材204に対向する一面203Uと、一面203Uの反対側の他面203Fとが形成されている。他面203Fは、第2挟持部材202と対向する。
低温熱板203aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように加熱部3は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで低温熱板203aを加熱することができる。以下、低温熱板203aについて設定された目標温度を「低温目標温度」という。
【0084】
図24に示すように、低温挟持部材203の一面203Uには介在板111が取り付けられている。また低温挟持部材203の他面203Fには介在板111が取り付けられている。介在板111の構成は実施例1で説明した通りである。
【0085】
低温熱板203aの上面及び下面には、低温挟持部材203と高温挟持部材204との近接を規制し、かつ、低温挟持部材203と第2挟持部材202との近接を規制する規制部材223が設けられている。4つのレール200dは、低温挟持部材203を支持する。また4つのレール200dは、低温挟持部材203が左右方向にのみ移動するように、低温挟持部材203の移動を規制する。レール200dと低温挟持部材203との構造的な関係は、レール200dと高温挟持部材204との構造的な関係と同様である。
【0086】
図21、22に示すように低温挟持部材203の右方において、低温挟持部材203と対向する位置には、第2挟持部材202が設けられている。第2挟持部材202は、直方体形状の第2熱板202aを備えている。第2熱板202aには、低温挟持部材203に対向する表面と、表面の反対側の裏面とが形成されている。第2熱板202aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように加熱部3は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで第2熱板202aを加熱することができる。以下、第2熱板202aについて設定された目標温度を、実施例1と同様「第2目標温度」という。
【0087】
第2熱板202aの上面及び下面には、第2挟持部材202と低温挟持部材203との近接を規制する規制部材222が設けられている。4つのレール200dは、第2挟持部材202を支持する。また4つのレール200dは、第2挟持部材202が左右方向にのみ移動するように、第2挟持部材202の移動を規制する。レール200dと第2挟持部材202との構造的な関係は、レール200dと高温挟持部材204との構造的な関係と同様である。
【0088】
支持壁200cには、第2挟持部材202を押圧可能な流体シリンダ231が設けられている。流体シリンダ231は作用軸であるピストンロッド231aを備える。ピストンロッド231aの先端は、第2挟持部材202と接続されている。
図20に示すように駆動部4は、制御部2aの制御の下で流体シリンダ231を駆動し、流体シリンダ231に第2挟持部材202を押圧させることができる。
【0089】
本実施例に係る脱水装置20は、3つの生単板GVを同時に圧締することができる。より詳細には脱水装置20は、第1挟持部材201と高温挟持部材204とで生単板GVを圧締し、高温挟持部材204と低温挟持部材203とで生単板GVを圧締し、低温挟持部材203と第2挟持部材202とで生単板GVを圧締することができる。以下、第1挟持部材201と高温挟持部材204とで挟持される生単板GVを「第1生単板GV1」といい、高温挟持部材204と低温挟持部材203とで挟持される生単板GVを「第2生単板GV2」といい、低温挟持部材203と第2挟持部材202とで挟持される生単板GVを「第3生単板GV3」という。
【0090】
詳述すると第1挟持部材201と高温挟持部材204との間に第1生単板GV1が位置し、高温挟持部材204と低温挟持部材203との間に第2生単板GV2が位置し、低温挟持部材203と第2挟持部材202との間に第3生単板GV3が位置した状態で流体シリンダ131により第2挟持部材202が左方へ向かって押圧されると、これに連動して低温挟持部材203及び高温挟持部材204も左方へ向かって押圧される。第2挟持部材202に対する押圧が進むと、第1~第3生単板GV1~GV3が挟持部材により保持された状態に至る。保持状態から、第2挟持部材202への押圧が更に進むと第1~第3生単板GV1~GV3のそれぞれは、両側に位置する挟持部材により圧締される。第2挟持部材202への押圧に応じて、第2挟持部材202、低温挟持部材203及び高温挟持部材204はそれぞれ左方へ移動する一方、規制状態となるとそれ以上、左方へ向かう移動は規制される。
図25は、規制状態の脱水装置20を示している。
【0091】
<乾燥装置25の構成>
図26は、本実施形態に係る乾燥装置25の斜視図である。
図27は、乾燥装置25を
図26の矢印V25に向かって見た図である。以下の説明では、乾燥装置25を基準とした前後方向、上下方向及び左右方向を
図26、27で示したように定義する。上下方向は、乾燥装置25が通常の使用態様で設置された状態における鉛直方向と一致する。
【0092】
図26、27に示すように乾燥装置25は、フレーム250を備える。フレーム250は、基台250aと、基台250aに立設された一対の支持壁250b、250cとを備える。支持壁250bと支持壁250cと間には、左右方向に延在する4個のレール250dが懸架されている。
【0093】
支持壁250bには、第1乾燥側挟持部材251が固定されている。第1乾燥側挟持部材251は、直方体形状の第1乾燥側熱板251aを備えている。第1乾燥側熱板251aには、支持壁250bに対向し、支持壁250bに固着される裏面と、裏面の反対側の表面とが形成されている。第1乾燥側熱板251aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように乾燥側加熱部5は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで第1乾燥側熱板251aを加熱することができる。以下、第1乾燥側熱板251aについて設定された目標温度を、実施例1と同様「第1乾燥側目標温度」という。第1乾燥側熱板251aの表面には乾燥側介在板161が設けられている。乾燥側介在板161の構成は実施例1で説明した通りである。
【0094】
第1乾燥側挟持部材251の右方において、第1乾燥側挟持部材251と対向する位置には、乾燥側高温挟持部材254が設けられている。乾燥側高温挟持部材254は、第1乾燥側挟持部材251と後述する乾燥側低温挟持部材253との間に位置している。
図28は、乾燥側高温挟持部材254の斜視図である。
図28に示すように乾燥側高温挟持部材254は、直方体形状の乾燥側高温熱板254aを備えている。乾燥側高温熱板254aは、第1乾燥側挟持部材251に対向する一面254Uと、一面254Uの反対側の他面254Fとが形成されている。乾燥側高温熱板254aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように乾燥側加熱部5は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで乾燥側高温熱板254aを加熱することができる。以下、乾燥側高温熱板254aについて設定された目標温度を「乾燥側高温目標温度」という。
【0095】
図28に示すように乾燥側高温熱板254aの一面254Uには乾燥側介在板161が設けられている。また他面254Fにも乾燥側介在板161が設けられている。乾燥側介在板161の構成は実施例1で説明した通りである。
【0096】
乾燥側高温熱板254aの上面及び下面には、乾燥側高温挟持部材254の移動方向を規制する移動部材274が設けられている。移動部材274のそれぞれは、対応するレール250dのガイド溝に嵌合する。
【0097】
乾燥側高温挟持部材254の右方において、乾燥側高温挟持部材254と対向する位置には、乾燥側低温挟持部材253が設けられている。乾燥側低温挟持部材253は、乾燥側高温挟持部材254と第2乾燥側挟持部材252との間に位置している。
図26、27に示すように乾燥側低温挟持部材253は、直方体形状の乾燥側低温熱板253aを備えている。乾燥側低温熱板253aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように乾燥側加熱部5は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで乾燥側低温熱板253aを加熱することができる。以下、乾燥側低温熱板253aについて設定された目標温度を「乾燥側低温目標温度」という。乾燥側低温熱板253aの一面及び他面には乾燥側介在板161が設けられている。
【0098】
乾燥側低温熱板253aの上面及び下面には、乾燥側低温挟持部材253の移動方向を規制する移動部材273が設けられている。移動部材273のそれぞれは、対応するレール250dのガイド溝に嵌合する。
【0099】
乾燥側低温挟持部材253の右方において、乾燥側低温挟持部材253と対向する位置には、第2乾燥側挟持部材252が設けられている。
図29は、第2乾燥側挟持部材252の斜視図である。
図29に示すように第2乾燥側挟持部材252は、直方体形状の第2乾燥側熱板252aを備えている。第2乾燥側熱板252aは、発熱可能な部材である。
図20に示すように乾燥側加熱部5は、制御部2aの制御の下で、設定された目標温度まで第2乾燥側熱板252aを加熱することができる。以下、第2乾燥側熱板252aについて設定された目標温度を、実施例1と同様「第2乾燥側目標温度」という。第2乾燥側熱板252aの表面252Fには、乾燥側介在板161が設けられる。
【0100】
第2乾燥側熱板252aの上面及び下面には、第2乾燥側挟持部材252の移動方向を規制する移動部材272が設けられている。移動部材272のそれぞれは、対応するレール250dのガイド溝に嵌合する。
【0101】
支持壁250cには、第2乾燥側挟持部材252を押圧可能な乾燥側流体シリンダ281が設けられている。乾燥側流体シリンダ281は作用軸であるピストンロッド281aを備える。
図20に示すように駆動部4は、制御部2aの制御の下で乾燥側流体シリンダ281を駆動し、乾燥側流体シリンダ281に第2乾燥側挟持部材252を押圧させることができる。
【0102】
乾燥装置25は、3つの脱水単板DVを同時に保持することができる。より詳細には乾燥装置25は、第1乾燥側挟持部材251と乾燥側高温挟持部材254とで脱水単板DVを保持し、乾燥側高温挟持部材254と乾燥側低温挟持部材253とで脱水単板DVを保持し、乾燥側低温挟持部材253と第2乾燥側挟持部材252とで脱水単板DVを保持することができる。
図30は、保持状態の乾燥装置25を示している。以下、第1乾燥側挟持部材251と乾燥側高温挟持部材254とで挟持される脱水単板DVを「第1脱水単板DV1」といい、乾燥側高温挟持部材254と乾燥側低温挟持部材253とで挟持される脱水単板DVを「第2脱水単板DV2」といい、乾燥側低温挟持部材253と第2乾燥側挟持部材252とで挟持される脱水単板DVを「第3脱水単板DV3」という。
【0103】
<単板処理システム1-2の動作>
次に脱水装置20による脱水処理及び乾燥装置25による乾燥処理が行われるときの単板処理システム1-2の動作について
図31のフローチャートを用いて説明する。
【0104】
図31に示すように、第1生単板GV1が脱水装置20の第1挟持部材201と高温挟持部材204との間に配置され、第2生単板GV2が高温挟持部材204と低温挟持部材203との間に配置され、第3生単板GV3が低温挟持部材203と第2挟持部材202との間に配置される(ステップSY1)。このとき、第1~第3生単板GV1~GV3のそれぞれについて、脱水単板DVの繊維方向と、上下方向(=鉛直方向)とが一致した状態とされる。以下のステップSB1~SB3の処理は脱水装置20を対象として実行される。
【0105】
次いで制御部2aは、保持処理を実行する(ステップSB1)。詳述すると制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ131を駆動し、第2挟持部材202を左方へ向かって押圧し、第1挟持部材201と高温挟持部材204とで第1生単板GV1を保持し、高温挟持部材204と低温挟持部材203とで第2生単板GV2を保持し、低温挟持部材203と第2挟持部材202とで第3生単板GV3を保持する。
【0106】
次いで制御部2aは、加熱処理を実行する(ステップSB2)。詳述すると制御部2aは、第1挟持部材201の第1熱板201aについての第1目標温度を、実施例1で説明した第1設定値TA1とする。更に制御部2aは、高温挟持部材204の高温熱板204aについての高温目標温度を、実施例1で示した第2設定値TA2(>第1設定値TA1)とする。更に制御部2aは、低温挟持部材203の低温熱板203aについての低温目標温度を、実施例1で示した第1設定値TA1とする。更に制御部2aは、第2挟持部材202の第2熱板202aについての第2目標温度を、実施例1で示した第2設定値TA2(>第1設定値TA1)とする。まとめると以下である。
・第1目標温度=低温目標温度=第1設定値TA1(<第2設定値TA2)
・高温目標温度=第2目標温度=第2設定値TA2(>第1設定値TA1)
【0107】
ステップSB2の加熱処理において制御部2aは、加熱部3を制御して、第1熱板201a、高温熱板204a、低温熱板203a及び第2熱板202aのそれぞれについて、対応する目標温度となるように熱板のそれぞれを加熱する。
【0108】
次いで制御部2aは、主脱水処理を実行する(ステップSB3)。詳述すると制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ231を駆動し、第2挟持部材202を押圧し、圧締状態とする。圧締状態は、第1~第3生単板GV1~GV3に加わる圧力が目標圧力に達した状態か、規制状態となった状態である。
図30は、規制状態の脱水装置20を示している。なお圧締状態では、第1~第3生単板GV1~GV3のそれぞれの厚みが、40~50%程度という圧縮率で圧縮される程度の圧力が第1~第3生単板GV1~GV3のそれぞれに加わる。目標圧力の値は、この観点から事前に定められている。更に制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ231を駆動し、予め定められた所定時間、圧締状態を維持する。所定時間が経過すると、制御部2aは、駆動部4を制御して流体シリンダ231を駆動し、保持状態となるまで、流体シリンダ231から第2挟持部材202へ加わる押圧力を徐々に小さくする。流体シリンダ231から第2挟持部材202へ加わる押圧力が徐々に小さくなる過程で、第1~第3生単板GV1~GV3に加わる押圧力が徐々に小さくなり、保持状態となったときに第1~第3生単板GV1~GV3に加わる押圧力はほとんどなくなる。
【0109】
この主脱水処理では、第1~第3生単板GV1~GV3のそれぞれは、実施例1の生単板GVと同様の状態で脱水される。すなわち第1生単板GV1に着目すると、第1生単板GV1は、第1挟持部材201と高温挟持部材204で圧締された状態で主脱水処理が行われる。このとき第1生単板GV1に対して、第1挟持部材201は実施例1に係る第1挟持部材101と同じ役割を果たし、また高温挟持部材204は、実施例1に係る第2挟持部材102と同じ役割を果たす。従って第1生単板GV1について、実施例1と同等の効果を享受しつつ脱水を行うことができる。
【0110】
また第2生単板GV2に着目すると、第2生単板GV2は、高温挟持部材204と低温挟持部材203とで圧締された状態で主脱水処理が行われる。このとき第2生単板GV2に対して、低温挟持部材203は実施例1に係る第1挟持部材101と同じ役割を果たし、また高温挟持部材204は、実施例1に係る第2挟持部材102と同じ役割を果たす。従って第2生単板GV2について、実施例1と同等の効果を享受しつつ脱水を行うことができる。また第3生単板GV3に着目すると、第3生単板GV3は、低温挟持部材203と第2挟持部材202とで圧締された状態で主脱水処理が行われる。このとき第3生単板GV3に対して、低温挟持部材203は実施例1に係る第1挟持部材101と同じ役割を果たし、また第2挟持部材202は、実施例1に係る第2挟持部材102と同じ役割を果たす。従って第3生単板GV3について、実施例1と同等の効果を享受しつつ脱水を行うことができる。
【0111】
本実施例に係る脱水装置20によれば、一度の動作で複数枚の生単板GVを同時に処理することができる。更に各生単板Vの両面を異なる温度に加熱する際に同一の熱板内に高温部と低温部を作る必要が無く、エネルギー効率を損ねることなく熱板を加熱することができる。
【0112】
さて
図31を参照し、ステップSB3の主脱水処理が終了後、第1~第3脱水単板DV1~DV3が脱水装置20から取り外される。そして、第1脱水単板DV1が乾燥装置25の第1乾燥側挟持部材251と乾燥側高温挟持部材254との間に配置され、第2脱水単板DV2が乾燥側高温挟持部材254と乾燥側低温挟持部材253との間に配置され、第3脱水単板DV3が乾燥側低温挟持部材253と第2乾燥側挟持部材252との間に配置される(ステップSY2)。このとき、第1~第3脱水単板DV1~DV3のそれぞれについて、脱水単板DVの繊維方向と、上下方向(=鉛直方向)とが一致した状態とされる。以下のステップSB4~SB6の処理は乾燥装置25を対象として実行される。
【0113】
次いで制御部2aは、乾燥側保持処理を実行する(ステップSB4)。詳述すると制御部2aは、乾燥側駆動部6を制御して乾燥側流体シリンダ281を駆動し、第2乾燥側挟持部材252を左方へ向かって押圧し、第1乾燥側挟持部材251と乾燥側高温挟持部材254とで第1脱水単板DV1を保持し、乾燥側高温挟持部材254と乾燥側低温挟持部材253とで第2脱水単板DV2を保持し、乾燥側低温挟持部材253と第2乾燥側挟持部材252とで第3脱水単板DV3を保持する。
【0114】
次いで制御部2aは、乾燥側加熱処理を実行する(ステップSB5)。詳述すると制御部2aは、第1乾燥側挟持部材251の第1乾燥側熱板251aについての第1乾燥側目標温度を、実施例1で示した第1乾燥側設定値TB1とする。更に制御部2aは、乾燥側高温挟持部材254の乾燥側高温熱板254aについての乾燥側高温目標温度を、実施例1で示した第2乾燥側設定値TB2(>第1乾燥側設定値TB1)とする。更に制御部2aは、乾燥側低温挟持部材253の乾燥側低温熱板253aについての乾燥側低温目標温度を、実施例1で示した第1乾燥側設定値TB1とする。更に制御部2aは、第2乾燥側挟持部材252の第2乾燥側熱板252aについての第2乾燥側目標温度を、実施例1で示した第2乾燥側設定値TB2(>第1乾燥側設定値TB1)とする。まとめると以下である。
・第1乾燥側目標温度=乾燥側低温目標温度=第1乾燥側設定値TB1(<第2乾燥側設定値TB2)
・乾燥側高温目標温度=第2乾燥側目標温度=第2乾燥側設定値TB2(>第1乾燥側設定値TB1)
【0115】
制御部2aは、加熱部3を制御して、第1乾燥側熱板251a、乾燥側高温熱板254a、乾燥側低温熱板253a及び第2乾燥側熱板252aのそれぞれについて、対応する目標温度となるように熱板のそれぞれを加熱する。
【0116】
次いで制御部2aは、主乾燥処理を実行する(ステップSB6)。詳述すると制御部2aは、挟持部材により第1~第3脱水単板DV1~DV3を保持した状態を所定時間の間、継続する。主乾燥処理が継続している間、第1~第3脱水単板DV1~DV3は第1乾燥側熱板251a、乾燥側低温熱板253a、乾燥側高温熱板254a及び第2乾燥側熱板252aにより加熱され、内部の水分が蒸気として排出され、これにより第1~第3脱水単板DV1~DV3の乾燥が実現される。
【0117】
この主乾燥処理では、第1~第3脱水単板DV1~DV3のそれぞれは、実施例1の脱水単板DVと同様の状態で乾燥が行われる。すなわち第1脱水単板DV1に着目すると、第1脱水単板DV1は、第1乾燥側挟持部材251と乾燥側高温挟持部材254で挟持された状態で主乾燥処理が行われる。このとき第1脱水単板DV1に対して、第1乾燥側挟持部材251は実施例1に係る第1乾燥側挟持部材151と同じ役割を果たし、また乾燥側高温挟持部材254は、実施例1に係る第2乾燥側挟持部材152と同じ役割を果たす。従って第1脱水単板DV1について、実施例1と同等の効果を享受しつつ乾燥を行うことができる。
【0118】
また第2脱水単板DV2に着目すると、第2脱水単板DV2は、乾燥側高温挟持部材254と乾燥側低温挟持部材253とで挟持された状態で主乾燥処理が行われる。このとき第2脱水単板DV2に対して、乾燥側低温挟持部材253は実施例1に係る第1乾燥側挟持部材151と同じ役割を果たし、また乾燥側高温挟持部材254は、実施例1に係る第2乾燥側挟持部材152と同じ役割を果たす。従って第2脱水単板DV2について、実施例1と同等の効果を享受しつつ脱水を行うことができる。また第3脱水単板DV3に着目すると、第3脱水単板DV3は、乾燥側低温挟持部材253と第2乾燥側挟持部材252で挟持された状態で主乾燥処理が行われる。このとき第3脱水単板DV3に対して、乾燥側低温挟持部材253は実施例1に係る第1乾燥側挟持部材151と同じ役割を果たし、また第2乾燥側挟持部材252は、実施例1に係る第2乾燥側挟持部材152と同じ役割を果たす。従って第3脱水単板DV3について、実施例1と同等の効果を享受しつつ脱水を行うことができる。
【0119】
本実施例に係る脱水装置20によれば、一度の動作で複数枚の脱水単板DVを同時に処理することができる。更に各生単板Vの両面を異なる温度に加熱する際に同一の熱板内に高温部と低温部を作る必要が無く、エネルギー効率を損ねることなく熱板を加熱することができる。ただしエネルギー効率を考慮しない場合には例えば、以下の構成とすることが可能である。すなわち第1挟持部材201と、第2挟持部材202との間に、熱板(以下「特別熱板」という)を設ける。そして特別熱板について、第1挟持部材201と対向する一方の面の温度と、第2挟持部材202と対向する他方の面の温度とを異ならせることが可能な構成とする。そして脱水処理の際には、特別熱板と第1挟持部材201とで生単板GVを圧締し、一方の面(第1挟持部材201と対向する側の面)の目標温度を第1設定値TA1とする。これと同時に特別熱板と第2挟持部材202とで生単板GVを圧締し、他方の面(第2挟持部材202と対向する側の面)の目標温度を第2設定値TA2とする。以上の構成とすることができる。この場合において、第1挟持部材201と第2挟持部材202との間に特別熱板を複数、設置することができる。
【0120】
なお
図21の脱水装置20に於いては第1挟持部材201と第2挟持部材202との間に設置した高温挟持部材204及び低温挟持部材203は一つずつである。しかしながら脱水装置10の構成は、これに限らない。高温挟持部材204及び低温挟持部材203をそれぞれ更に設置し、増加分に合わせフレーム200の大きさ、流体シリンダ231の動作方向への長さ、流体シリンダ231の動作量を延長してもよい。この場合一度の動作で処理できる枚数を更に増やすことができる。本実施例の場合では、第1挟持部材201、高温挟持部材204、低温挟持部材203、高温挟持部材204、低温挟持部材203、・・・、第2挟持部材202と配置されることになる。なお乾燥装置25に於いても同様に、更に複数の乾燥側高温挟持部材254及び乾燥側低温挟持部材253を設け、増加分に応じてフレーム250のサイズと乾燥側流体シリンダ281の動作量とを調整した構成としてもよい。
【0121】
更に乾燥装置25の第2乾燥側挟持部材252を乾燥側流体シリンダ281で支持するようにし、第2乾燥側挟持部材252に移動部材272を設けない構成としてもよい。
【0122】
なお実施例2に関し、脱水装置20により脱水処理を行った場合には、乾燥処理を乾燥装置25により行わなければならないということではない。一例として脱水装置20により脱水処理した3つの単板Vを、実施例1に係る乾燥装置15によって1枚ずつ乾燥処理する構成でもよい。同様に、乾燥装置25により乾燥処理を行う場合には、事前に脱水装置20により脱水処理を行わなければならないということではない。
【実施例3】
【0123】
次に実施例3について説明する。以下の実施例3の説明において、実施例1と同一或いは同一の特徴により同一の機能を果たす要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0124】
実施例3は、実施例1に係る脱水装置10の変形例である。
図32は、本実施例に係る脱水装置30の斜視図である。
図33は、脱水装置30を
図32の矢印V30から見た図である。
図3と
図32との比較、及び、
図4と
図33との比較で明らかな通り、脱水装置30は、実施例1に係る第2挟持部材102に代えて第2挟持部材302を備えている点で、実施例1に係る脱水装置10と相違している。
【0125】
図34は、第2挟持部材302の斜視図である。
図34に示すように第2挟持部材302は、第2熱板102aと、平面挟持板312とを備えている。平面挟持板312には、裏面312Uと、裏面312Uと反対側の表面312Fが形成されている。裏面312Uは、第2熱板102aの表面に当接する。表面312Fは、脱水処理の際に生単板GVの面に当接する。平面挟持板312は、第2熱板102aに対して着脱可能な状態で取り付けられている。また第2挟持部材302は、規制部材122に相当するものとして、平面挟持板312の厚みに合わせ延長された規制部材322を備える。
【0126】
本実施例によれば、以下の効果を奏する。すなわち第2熱板102aは、主脱水処理(
図19のステップSA3)に第1熱板101aと比して高温となる。ここで主脱水処理では、生単板GV内で第2熱板102a側から第1熱板101a側へと向かう水分の流れが形成される。このため実施例1では第2挟持部材102の第2熱板102aの表面102F(=生単板GVに当接する面)へのヤニ等の堆積が抑制されてはいる。しかしながら第2熱板102aの表面102Fへのヤニ等の堆積が完全に排除されるわけではない。これを踏まえ本実施例によれば、第2挟持部材302の第2熱板102aに対して着脱可能な平面挟持板312を設けることで、第2熱板102aと生単板GVが直接触れることがなくなる。このため、第2熱板102aへのヤニ等の付着を無くすことができる。更に平面挟持板312に付着したヤニ等は、平面挟持板312を適宜取り外して清掃を行うこと可能である。このため、第2挟持部材302のメンテナンス工程を更に削減することができる。
【0127】
なお介在板についても、平面挟持板312と同様に着脱可能としてもよく、そのような構成とすることで介在板が装着された熱板の清掃等のメンテナンスをより簡易にすることができる。この点は、全ての実施例について同様である。
【実施例4】
【0128】
次に実施例4について説明する。以下の実施例4の説明において、実施例2と同一或いは同一の特徴により同一の機能を果たす要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0129】
実施例4は、実施例2に係る脱水装置40の変形例である。
図35は、本実施例に係る脱水装置40の斜視図である。
図36は、脱水装置40を
図35の矢印V40から見た図である。
図21と
図35との比較、及び、
図22と
図36との比較で明らかな通り、脱水装置40は、実施例2に係る高温挟持部材204に代えて高温挟持部材404を備えている。また脱水装置40は、実施例2に係る第2挟持部材202に代えて第2挟持部材402を備えている。以上の点で、脱水装置40は、実施例2に係る脱水装置20と相違している。
【0130】
図37は、高温挟持部材404の斜視図である。
図37に示すように高温挟持部材404は、高温熱板204aを備える。高温熱板204aの一面204Uには平面挟持板412が着脱可能に設けられ、他面204Fには平面挟持板412が設けられている。平面挟持板412の構成及び機能は、実施例3に係る平面挟持板312の構成及び機能と同じである。なお高温挟持部材404の規制部材424は、平面挟持板412の厚みに合わせて適切に延長されている。
【0131】
図35、36に示すように第2挟持部材402は、第2熱板202aを備えている。第2熱板202aの表面202Fには、平面挟持板412が着脱可能に取り付けられている。平面挟持板412の構成及び機能は、実施例3に係る平面挟持板312の構成及び機能と同じである。なお第2挟持部材402の規制部材424は、平面挟持板412の厚みに合わせて適切に延長されている。
【0132】
本実施例によれば、以下の効果を奏する。すなわち高温挟持部材404について、その両面に取り付けられた平面挟持板412の存在により、高温熱板204aの面へのヤニ等の堆積を防止することができ、更に高温挟持部材404のメンテナンス性を向上できる。また第2挟持部材402について、平面挟持板412の存在により、第2熱板202aへのヤニ等の堆積を防止することができ、更に第2挟持部材402のメンテナンス性を向上できる。
【実施例5】
【0133】
次に実施例5について説明する。以下の実施例5の説明において、実施例1と同一或いは同一の特徴により同一の機能を果たす要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0134】
実施例5は、実施例1の脱水装置10の変形例である。
図38は、本実施例に係る脱水装置50の斜視図である。
図39は、脱水装置50を
図38の矢印V50から見た図である。
図40は、
図39のX-X断面図である。
図3と
図38との比較、及び、
図4と
図39との比較で明らかな通り、脱水装置50は、送出機540を備えている点で実施例1に係る脱水装置10と相違している。
【0135】
図41は、送出機540を右方から左方へ向かって見た図(
図40に示す送出機540に対応する図)である。
図42は、送出機540を前方から後方へ向かって見た図(
図39に示す送出機540に対応する図)である。送出機540は、第1挟持部材101の介在板111の介在板裏溝111bに、上方から所定の流速で空気を送り込むことが可能な機器である。
図38~42に示すように送出機540は、コンプレッサー等の送風機540aと、送出路540bと、複数の吹出口540cとを備えている。
図40に示すように吹出口540cのそれぞれは、介在板111の介在板裏溝111bの上端に対向する位置に配置されている。また送出機540は、支持壁100bの上面に固定されて、支持壁100bの上面に対して送出機540を支持する脚部540dを備えている。
【0136】
制御部2aは、送風機540aを駆動する送風機駆動部(不図示)を制御することが可能である。制御部2aの制御の下で送出機駆動部が送風機540aを駆動すると、送風機540aは空気を送り出す。送風機540aにより送り出される空気は、送出路540bを通って複数の吹出口540cに至り、吹出口540cから介在板111の介在板裏溝111bの上端へ向かって噴出される。吹出口540cから噴出された空気は、介在板裏溝111bの上端を介して介在板裏溝111b内に進入する。
【0137】
本実施例では、制御部2aは、主脱水処理(
図19のステップSA3)を実行している期間の間、送風機駆動部を制御して送風機540aを駆動し、吹出口540cのそれぞれから空気を噴出させる。これにより主脱水処理において生単板GVが圧締される期間、介在板111の介在板裏溝111bのそれぞれに流速のある空気が送り込まれる。そして介在板111の介在板裏溝111bのそれぞれに流速のある空気を送り込むことで、生単板GVから排出された処理水を押し出し、より速やかに排出することができる。更に、介在板裏溝111b内が外気と比較して流速が速い為負圧となり、処理水を介在板表溝111aから介在板裏溝111bへと貫通孔ap1を介して吸引することができる。これにより第1熱板101a及び介在板111の各溝内に処理水が残留しにくくなることで、ヤニ等が第1熱板101a及び介在板111に付着、堆積することをより効果的に防ぐことができる。
【0138】
なお本実施例では、フレーム100にコンプレッサー等を含む送風機540aが取り付けられる構成であった。この点に関し、フレーム100の外部に送風機を設け、外部の送風機から空気を送り出す構成でもよい。また送出機540に関し、吹出口540cと介在板111とが接触しているか否かは問わず、送出機540により介在板裏溝111b内に空気を送り込むことが可能な構成であればよい。また脚部540dについては、第1挟持部材101の構成によっては備えなくてもよい。また外部に露出した送出路540bを設けず、フレーム100の内部に送出路を形成する構成としてもよい。以上の点は、後述する実施例6についても同様である。
【0139】
また実施例3に係る脱水装置50に本実施例に係る送出機540(或いは同等の機器)を設置するようにしてもよい。
【実施例6】
【0140】
次に実施例6について説明する。以下の実施例6の説明において、実施例2と同一或いは同一の特徴により同一の機能を果たす要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0141】
実施例6は、実施例2の脱水装置20の変形例である。
図43は、本実施例に係る脱水装置60の斜視図である。
図44は、脱水装置60を
図43の矢印V60から見た図である。
図21と
図43との比較、及び、
図22と
図44との比較で明らかな通り、脱水装置60は、送出機640及び送出機641を備えている点で実施例2に係る脱水装置20と相違している。
【0142】
図43、44に示すように、脱水装置60は、第1挟持部材201に対応して、送出機640を備えている。送出機640の構成及び機能は、実施例5に係る送出機540と同じであるため、送出機640については簡単に説明する。送出機640は、送風機640aと、送出路640bと、複数の吹出口640cと、脚部640dとを備えている。吹出口640cのそれぞれは、介在板111の介在板裏溝111bのそれぞれの上端に対向している。送出機640は、介在板111の介在板裏溝111bに上方から空気を送り込む機能を有する。
【0143】
図45は、送出機641を右方から左方へ向かって見た図である。
図46は、送出機641を前方から後方へ向かって見た図(
図44に示す送出機641に対応する図)である。送出機641は、低温挟持部材203の一面203U側の介在板111の介在板裏溝111b及び他面203F側の介在板111の介在板裏溝111bのそれぞれに、上方から所定の流速で空気を送り込むことが可能な機器である。
図43~46に示すように送出機641は、コンプレッサー等の送風機641aと、送出路641bと、複数の吹出口641cとを備えている。複数の吹出口641cのうち4つの吹出口641cは、低温挟持部材203の一面203U側の介在板111の介在板裏溝111bのそれぞれの上端に対向する位置に配置されている。また複数の吹出口641cのうち4つの吹出口641cは、低温挟持部材203の他面203F側の介在板111の介在板裏溝111bのそれぞれの上端に対向する位置に配置されている。また送出機641は、低温挟持部材203の低温熱板203aの上面に固定されて、低温熱板203aの上面に対して送出機641を支持する脚部641dを備えている。
【0144】
制御部2aは、送風機641aを駆動する送風機駆動部(不図示)を制御することが可能である。制御部2aの制御の下で送出機駆動部が送風機641aを駆動すると、送風機641aは空気を送り出す。送風機641aにより送り出される空気は、送出路641bを通って複数の吹出口641cに至り、吹出口641cから介在板111の介在板裏溝111bの上端へ向かって噴出される。吹出口641cから噴出された空気は、介在板裏溝111bの上端を介して介在板裏溝111b内に進入する。
【0145】
本実施例では、制御部2aは、主脱水処理(
図31のステップSB3)を実行している間、送風機駆動部を制御して送風機641aを駆動し、吹出口641cのそれぞれから空気を噴出させる。これにより実施例5で説明した理由と同じ理由により、第2生単板GV2及び第3生単板GV3から排出された処理水の速やかな排出が可能となる。更に、低温熱板203a、及び、低温熱板203aの両面の介在板111に処理水が残留しにくくなり、ヤニ等がこれら部材に付着、堆積することを効果的に防ぐことができる。
【0146】
なお実施例4に係る脱水装置60に本実施例に係る送出機640、641(或いは同等の機器)を設置するようにしてもよい。
【0147】
以上、本発明の実施例を説明したが、上記各実施例は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0148】
例えば実施例1の脱水装置10では、向い合う第1挟持部材101及び第2挟持部材102のうち、第1挟持部材101をフレーム100に固定し、第2挟持部材102を流体シリンダ131に装着し作動させることで、挟持部材同士を接近させている。この点に関し、例えば流体シリンダ131をもう1つ設け、第1挟持部材101を流体シリンダ131に接続し、それぞれの挟持部材を互いに近づく側に押圧することによって、挟持部材同士を接近させる構成でもよい。また、別途シリンダやエキセン軸を用いて挟持部材同士を接近させる構成としてもよい。以上の点は、乾燥装置15についても同様であり、また他の実施例に係る脱水装置及び乾燥装置についても同様である。
【0149】
また各実施例について、介在板111の裏面には、介在板裏溝111bが形成されている。この点に関し、介在板裏溝111bが形成されない構成でもよい。この構成の場合であっても、処理水や蒸気を排出する効率は落ちるものの、同様の効果を得ることができる。
【0150】
また各実施例について、例えば実施例1の
図3、4の全体図に示したように、脱水装置及び乾燥装置に於ける各熱板は、略鉛直に立てて設けられている。しかしながら、各熱板の角度はその角度である必要はない。例えば挟持部材の生単板GVを挟持する面が鉛直方向に対し斜め45度の傾斜を持っている等、処理水や蒸気が速やかに排出されうる角度であればいずれの角度でもよい。更に排出効率は落ちるものの、略水平であっても排出の為の穴等の形成や、実施例5に於ける送出機540など、能動的に処理水や蒸気を排出する機構を備える構成としてもよい。
【0151】
また各実施例に於いてはそれぞれの挟持部材を並列に配置し、平行に移動する旨が書かれているが、各挟持部材が単板を挟持した際に挟持する面同士が並行であればいずれの角度、移動方向でもよく、例えば略扇状に移動可能に配置し、開閉する形態としてもよい。
【0152】
また、各実施例では脱水装置と乾燥装置が分かれているが、一つの筐体に両装置と同様の構成を備えた形態としてもよい。
【0153】
また各実施例において、挟持部材を押圧する押圧機構は流体シリンダであった。この点に関し押圧機構は、流体シリンダに限られない。例えば押圧機構は、電動モータの駆動を伝える動力伝達機構を含んで構成され、電動モータの駆動に応じて挟持部材を押圧する機構であってもよい。すなわち押圧機構は、制御部の制御の下で挟持部材を押圧する機能を有する全ての機構を含む概念である。
【0154】
また駆動部は、本実施形態で例示した構成に限られない。すなわち駆動部は、制御部の下で押圧機構を駆動する主体を全て含む概念である。駆動部は、押圧機構の具体的構成に応じて、制御部の制御の下で押圧機構を駆動するために必要な要素を全て含んで構成される。同様に加熱部は、本実施形態で例示した構成に限られない。すなわち加熱部は、制御部の制御の下で熱板を加熱する主体を全て含む概念である。加熱部は、熱板の具体的構成に応じて、また、加熱方式に応じて、制御部の制御の下で熱板を加熱するために必要な要素を全て含んで構成される。
【0155】
また第1実施例では、1つの制御装置2の制御部2aが脱水装置10及び乾燥装置15の双方を制御した。この点に関して、一の制御装置の制御部が脱水装置を制御し、当該一の制御装置とは異なる制御装置の制御部が乾燥装置を制御する構成でもよい。この場合、当該一の制御装置の制御部と、当該他の制御装置の制御部とが協働して「制御部」として機能する。以上の点は他の実施例についても同様である。
【0156】
また各実施例について制御部2aが実行すると説明した処理の一部を、制御装置2とは異なる外部装置の制御部が実行する構成としてもよい。この場合、制御装置2の制御部2aと、外部装置の制御部とが協働して「制御部」として機能する。外部装置は一例として、制御装置2とネットワークを介して通信可能なクラウドサーバである。
【0157】
また、制御装置2のコンピュータが実行するプログラムの提供、又は、このプログラムをコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体の提供を実施形態に含めることができる。上記記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリーデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray(登録商標)Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型の、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。
【0158】
また例えば実施例1では、図面を用いて介在板111の構成を具体的に例示した。しかしながら実施例1の介在板111の構成は、あくまで単純化した一例であり、介在板111の構成は例示した構成に限定されない。介在板111の構成は、単板Vから排出される処理水の放出のしやすさや、介在板111の加工の手間などを考慮して設計されるべきものである。例えば介在板表溝111aおよび介在板裏溝111bの個数は例示した個数に限られない。また例えば、介在板表溝111aおよび介在板裏溝111bについて、溝の上端部が介在板111の辺に至っていなくてもよい。また例えば、介在板111の面の大きさと厚さの比は図面で示した比に限られない。以上の点は、乾燥側介在板161についても同様であり、また他の実施例についても同様である。
【0159】
また実施例2では、脱水装置20において、4つのレール200dにガイド溝が形成され、ガイド溝に各挟持部材の規制部材が嵌合する構成であった。しかしながらレール200dの構成、および、レール200dに各挟持部材が支持される仕組みは、実施例2で例示した内容に限られない。例えば、レール200dにガイド溝が形成されず、規制部材のそれぞれがレール200dの面に接触し、これによりレール200dに挟持部材が支持される構成でもよい。すなわちレール200dは、各挟持部材を支持可能な構成であればよい。以上の点は、乾燥装置25についても同様である。
【符号の説明】
【0160】
1、1-2 単板処理システム
1a、1a-2 脱水システム
2a 制御部
3 加熱部
4 駆動部
5 乾燥側加熱部
6 乾燥側駆動部
10、20、30、40、50、60 脱水装置
101、201 第1挟持部材
101a、201a 第1熱板
102、202、402 第2挟持部材
102a、202a 第2熱板
111 介在板
111a 介在板表溝(溝)
111b 介在板裏溝(溝)
ap1 貫通孔
131、231 流体シリンダ(押圧機構)
15、25 乾燥装置
151、251 第1乾燥側挟持部材
151a、251a 第1乾燥側熱板
152、252 第2乾燥側挟持部材
152a、252a 第2乾燥側熱板
161 乾燥側介在板
161a 乾燥側介在板表溝(溝)
161b 乾燥側介在板裏溝(溝)
181、281 乾燥側流体シリンダ(押圧機構)
540、640、641 送出機
【要約】
脱水システム1aは、発熱可能な第1熱板101aを含む第1挟持部材101と、発熱可能な第2熱板102bを含む第2挟持部材102と、第1挟持部材101と第2挟持部材102とのうち少なくとも一方を押圧機構に押圧させることが可能な駆動部4と、第1熱板101aおよび第2熱板102aを加熱可能な加熱部3と、脱水処理の際に、第1挟持部材101および第2挟持部材102により単板が圧締された状態となるように駆動部4を制御すると共に、第1熱板101aの温度が、第2熱板102aの温度よりも低くなるように加熱部3を制御する制御部2aとを備える。