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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】半たわみ性舗装用組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240911BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240911BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240911BHJP
   E01C 7/10 20060101ALI20240911BHJP
   E01C 7/30 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/06 Z
C04B22/08 Z
E01C7/10
E01C7/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020179509
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070441
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】小島 克仁
(72)【発明者】
【氏名】岸良 竜
(72)【発明者】
【氏名】河野 克哉
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-292579(JP,A)
【文献】特開平10-230515(JP,A)
【文献】特開2012-233331(JP,A)
【文献】特開平10-265251(JP,A)
【文献】特開2002-265252(JP,A)
【文献】特開平11-228195(JP,A)
【文献】特開2017-124950(JP,A)
【文献】特開2017-186238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
E01C 7/10
E01C 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半たわみ性舗装用組成物1m に対し30~50kgの膨張材、エコセメントを含む半たわみ性舗装用注入材、および、水を、少なくとも含有する、半たわみ性舗装用組成物。
【請求項2】
前記半たわみ性舗装用注入材の含有量が、前記半たわみ性舗装用組成物1mに対し1500~1900kgである、請求項1に記載の半たわみ性舗装用組成物。
【請求項3】
前記膨張材が、石灰系膨張材およびカルシウムサルホアルミネート系膨張材から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の半たわみ性舗装用組成物。
【請求項4】
前記水の含有量が、前記半たわみ性舗装用組成物1mに対し330~460kgである、請求項1~のいずれか1項に記載の半たわみ性舗装用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ強度が高い半たわみ性舗装用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半たわみ性舗装は、開粒度アスファルト混合物の空隙に、セメントミルク(半たわみ性舗装用セメント注入材のスラリー)を充填した舗装である。そして、開粒度アスファルト混合物は、追従性、およびたわみ性が高く、また、セメントミルクの硬化体は剛性が高いため、これらから成る半たわみ性舗装は、アスファルト舗装と比べ、塑性変形抵抗性、および耐用性等に優れる。そして、セメントミルクの水粉体比を小さくすると、セメントミルクの硬化体の曲げ強度が高まり、半たわみ性舗装の塑性変形抵抗性が向上する傾向にある。
【0003】
従来、いくつかの半たわみ性舗装材、および半たわみ性舗装用注入材が提案されている。
特許文献1に記載の混合式半たわみ性舗装材は、100重量部の骨材に対し、3~15重量部のアスファルトが被着されたアスファルト被着骨材と、前記アスファルト被着骨材の容積比が60~90、セメントペーストの容積比が40~10となるように配合されたセメントペーストと、添加剤としてのセメント用ポリマーを混合してなる舗装材である。
また、特許文献2に記載の半たわみ性舗装材は、セメント、急硬材、および非再乳化型微粉末弾性ポリマーを含有してなる半たわみ性舗装材であって、急硬材が、カルシウムアルミネートと硫酸塩を含有してなり、セメントと急硬材の合計100重量部中、10~25重量部であり、非再乳化型微粉末弾性ポリマーが、セメントと急硬材の合計100重量部に対して、2~10重量部である舗装材である。
また、特許文献3に記載の半たわみ性舗装用注入材は、セメント、炭酸カルシウム粉末、再乳化型粉末樹脂、および減水剤を含有する注入材である。
【0004】
しかし、従来の半たわみ性舗装は、大型車両の駐停車等の交通荷重が著しく大きい箇所では、劣化が進行し易い。また、セメントミルクの水粉体比を小さくしても、エコセメントを用いたタイプ(表1中のP2)のセメントミルクでは、必ずしも、その硬化体の曲げ強度が高くないため(表2中の比較例)、該セメントミルクを用いた半たわみ性舗装材では曲げ強度が十分とは云えない。
ところで、エコセメントは、ポルトランドセメントの原料である石灰石、粘土、および、けい石等の天然原料に代えて、都市ごみ焼却灰や汚泥等の各種廃棄物を用いて製造したセメントであり、これらの廃棄物を資源化して、ごみ処理の負荷等の環境負荷を軽減するという利点があり、環境保護の観点から有益である。したがって、エコセメントを含むセメントミルクの使用量を増やすことができれば、環境負荷の軽減に大いに資すると期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-302516号公報
【文献】特開平11-228205号公報
【文献】特開平11-278901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、エコセメントを用いても曲げ強度が高い、半たわみ性舗装用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的にかなう半たわみ性舗装用組成物を検討したところ、下記の構成を有する半たわみ性舗装用組成物の硬化体は、曲げ強度が高いことを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]半たわみ性舗装用組成物1m に対し30~50kgの膨張材、エコセメントを含む半たわみ性舗装用注入材、および、水を、少なくとも含有する、半たわみ性舗装用組成物。
[2]前記半たわみ性舗装用注入材の含有量が、前記半たわみ性舗装用組成物1mに対し1500~1900kgである、前記[1]に記載の半たわみ性舗装用組成物。
[3]前記膨張材が、石灰系膨張材およびカルシウムサルホアルミネート系膨張材から選ばれる1種以上である、前記[1]または[2]に記載の半たわみ性舗装用組成物。
[4]前記水の含有量が、前記半たわみ性舗装用組成物1mに対し330~460kgである、前記[1]~[]のいずれかに記載の半たわみ性舗装用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半たわみ性舗装用組成物は、曲げ強度が高い。また、本発明の半たわみ性舗装用組成物は、エコセメントの用途を拡大できるため、環境負荷の低減に寄与できる。
【0009】
以下、本発明の半たわみ性舗装用組成物について詳細に説明する。
本発明の半たわみ性舗装用組成物は、前記の通り、膨張材および収縮低減剤から選ばれる1種以上、エコセメントを含む半たわみ性舗装用注入材、並びに、水を、少なくとも含有する、セメント用組成物である。
そして、半たわみ性舗装用注入材中のエコセメントの含有率は、半たわみ性舗装用注入材を100質量%として、好ましくは10~50質量%である。エコセメントの含有率が前記範囲であれば、半たわみ性舗装用組成物の曲げ強度は高い。なお、エコセメントの含有率は、より好ましくは30~40質量%である。
【0010】
また、前記半たわみ性舗装用組成物中の、半たわみ性舗装用注入材の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、好ましくは、1500~1900kgである。半たわみ性舗装用注入材の含有量が前記範囲にあれば、半たわみ性舗装用組成物の充填性と曲げ強度が高い。なお、半たわみ性舗装用注入材の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、より好ましくは1550~1850kg、さらに好ましくは1650~1800kgである。
また、前記半たわみ性舗装用注入材は、セメントと石灰石を主成分とし、市販品では、ウルトラパックHや高強度半たわみ性舗装用セメント注入材-エコセメントタイプ(いずれも、秩父コンクリート工業社製)等がある。
【0011】
また、膨張材の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、好ましくは10~60kgである。膨張材の含有量が10kg未満では、セメントミルクの膨張が小さいため、セメントミルクの膨張に対する開粒度アスファルト混合物の拘束力が小さく、また、膨張材の含有量が60kgを超えると、セメントミルクの膨張が大きすぎて、セメントミルクの膨張に対する開粒度アスファルト混合物の拘束力が過大になるため、いずれの場合も、半たわみ性舗装の曲げ強度は小さい。なお、膨張材の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、より好ましくは20~50kg、さらに好ましくは20~40kg、特に好ましくは30~40kgである。
膨張材は半たわみ性舗装用注入材に対し内割で添加するのが好ましい。内割で添加すれば総粉体量が増加しないため、開粒度アスファルト混合物中への半たわみ性舗装用組成物の充填性は良好である。
前記膨張材は、石灰系膨張材およびカルシウムサルホアルミネート系膨張材が挙げられる。これらの市販品として、石灰系膨張材は太平洋エクスパン(登録商標、太平洋マテリアル社製)等があり、カルシウムサルホアルミネート系膨張材はデンカCSA(デンカ社製)等がある。
【0012】
また、前記半たわみ性舗装用組成物中の収縮低減剤の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、好ましくは3~15kgである。収縮低減剤の含有量が前記範囲にあれば、収縮低減によるひび割れの抑制効果が高い。なお。収縮低減剤の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、より好ましくは、4~12kg、さらに好ましくは、6~9kgである。
前記収縮低減剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを有効成分とし、半たわみ性舗装の乾燥収縮を低減する効果を有する。そして該化合物は、具体的には、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0013】
また、前記半たわみ性舗装用組成物中の水の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、好ましくは、330~460kgである。水の含有量が前記範囲にあれば、半たわみ性舗装用組成物の充填性と曲げ強度が高い。なお、水の含有量は、半たわみ性舗装用組成物1mに対し、より好ましくは、340~410kg、さらに好ましくは、360~380kgである。
【実施例
【0014】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.セメントミルクの調製とセメントミルクのフロー(流動性)の測定
表1に示す半たわみ性舗装用組成物の各成分を用いて、表2に示す配合に従い、各材料をハンドミキサで練混ぜて、セメントミルクを調製した。
次に、JSCE-F521「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法」(Pロート法)に準拠して、前記セメントミルクのフローを測定した。表2に示すように、すべての配合のセメントミルクのフローが、目標流下時間である20~30秒を満たす。
【0015】
2.セメントミルクの膨張量の測定
縦10cm、横10cm、長さ40cmの鋼製型枠の内側にポリエステルフィルムを設置し、フィルムの両端を厚さ1mm程度のポリスチレンボードと木板で挟み込むとともに、摩擦を軽減させるため、型枠の底面にテフロン(登録商標)シートを設置した。次に、前記型枠に測温機能付き埋め込み型ひずみ計(KM-100BT、東京測器研究所製)を、結束線を用いて固定した後、前記セメントミルクを流し込み、20℃で封緘養生して、セメントミルクの膨張量を測定した。その結果を表2に示す。
【0016】
3.供試体の作製と曲げ強度の測定
縦30cm、横30cm、高さ5cmの型枠内において、設計空隙率が25%のアスファルト母材を、タンパを用いて締固めた後、該アスファルト母材中に前記セメントミルクを、テーブルバイブレータを用いて浸透させた。次に、材齢1日で脱型した後、20℃で材齢7日まで湿空養生して硬化体を得た。さらに、該硬化体から、縦150mm、横100mm、厚さ50mmの大きさの供試体を切り出して、供試体を作製した。
次に、東京都の土木材料仕様書に準拠して、前記供試体の曲げ強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
5.曲げ強度の測定結果について
表2に示すように、エコセメントを含む半たわみ性舗装用注入材を含有する半たわみ性舗装用組成物の曲げ強度は、膨張材および/または収縮低減剤を含有する組成物(実施例1~42)の方が、膨張材および収縮低減剤を含有しない組成物(比較例)よりも、最大で2倍程度高く、エコセメントを含まない半たわみ性舗装用注入材を含有する半たわみ性舗装用組成物(参考例)の曲げ強度と同程度以上である。