(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】インキャビンモニタリングシステムおよび車室内検知方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/80 20170101AFI20240911BHJP
B60Q 3/20 20170101ALI20240911BHJP
B60Q 3/258 20170101ALI20240911BHJP
B60Q 3/225 20170101ALI20240911BHJP
B60Q 3/283 20170101ALI20240911BHJP
B60Q 3/74 20170101ALI20240911BHJP
G06T 7/254 20170101ALI20240911BHJP
【FI】
B60Q3/80
B60Q3/20
B60Q3/258
B60Q3/225
B60Q3/283
B60Q3/74
G06T7/254 A
(21)【出願番号】P 2021058776
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】竹中 真治
(72)【発明者】
【氏名】三野 吉輝
(72)【発明者】
【氏名】帆谷 竜起
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-191053(JP,A)
【文献】特開2020-194416(JP,A)
【文献】特開2021-047606(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142852(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0293799(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/80
B60Q 3/20
B60Q 3/258
B60Q 3/225
B60Q 3/283
B60Q 3/74
G06T 7/254
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内を撮像するカメラと、
前記車室内に光を照射する光源と、
前記カメラおよび前記光源を制御する制御部と、
を備え、
前記光源は、前記カメラで人の有無を確認するときに発光する第1の光、および、前記第1の光よりも強い光である第2の光を発光可能であり、
前記制御部は、前記車両に人が乗車する前、および、前記車両から人が降車した後に、前記光源を前記第2の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像
し、
さらに、前記制御部は、前記車両のドアロック解除信号または前記車両のドアロック信号を受け付けた場合に、前記光源を前記第2の光で発光させる前に前記第1の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像し、前記車室内における人の有無を判断する
インキャビンモニタリングシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両に人が乗車する前であって前
記ドアロック解除信号を受け付けたときに、前記カメラで前記車室内を撮像し、および、前記車両から人が降車した後であって前
記ドアロック信号を受け付けたときに、前記カメラで前記車室内を撮像する
請求項1に記載のインキャビンモニタリングシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記ドアロック解除信号を受け付けて前記車室内を撮像したときの画像と、前記ドアロック信号を受け付けて前記車室内を撮像したときの画像とを比較することで、前記車室内に置かれた物の状態の違いを判断する
請求項2に記載のインキャビンモニタリングシステム。
【請求項4】
前記車室内に置かれた物の状態の違いは、前記車室内に置かれた物の有無、および、前記車室内に置かれた物の破損または汚れの有無の少なくとも1つである
請求項3に記載のインキャビンモニタリングシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記車室内に置かれた物の状態が違うと判断した場合に、異常信号を出力する
請求項3または4に記載のインキャビンモニタリングシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記車室内に人がいると判断した場合に、前記光源を前記第2の光で発光させず、前記車室内に人がいないと判断した場合に、前記光源を前記第2の光で発光させ、かつ、前記カメラで前記車室内を撮像する
請求項
1に記載のインキャビンモニタリングシステム。
【請求項7】
車両の車室内を撮像するカメラと、
前記車室内に光を照射する光源と、
前記カメラおよび前記光源を制御する制御部と、
過去に撮像した複数の画像を保存する記憶部と、
を備え、
前記光源は、前記カメラで人の有無を確認するときに発光する第1の光、および、前記第1の光よりも強い光である第2の光を発光可能であり、
前記制御部は、前記車両に人が乗車する前、および、前記車両から人が降車した後に、前記光源を前記第2の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像
し、
さらに、前記制御部は、前記記憶部に保存された前記複数の画像から、現在撮像した画像の前記車室内のレイアウトに最も近いレイアウトを有する画像を選択し、選択した前記画像と前記現在撮像した画像とを比較することで、前記車室内に置かれた物の状態の違いを判断する
インキャビンモニタリングシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記カメラを用いて過去に撮像した画像と、現在撮像した画像とを比較することで、前記車室内のメンテナンスの要否を判断する
請求項1~7のいずれか1項に記載のインキャビンモニタリングシステム。
【請求項9】
前記カメラおよび前記光源は、前記車室内の天井、オーバーヘッドコンソール、ルームミラー、ダッシュボード、ステアリングコラム、リアビューミラーまたはAピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラーに設けられている
請求項1~
8のいずれか1項に記載のインキャビンモニタリングシステム。
【請求項10】
車両の車室内を検知する車室内検知方法であって、
前記車両に人が乗車する前に、カメラで人の有無を確認するときに照射する
第1の光よりも強い
第2の光を照射して、前記車室内を撮像するステップと、
前記車両から人が降車した後に、前記カメラで人の有無を確認するときに照射する
前記第1の光よりも強い
前記第2の光を照射して、前記車室内を撮像するステップと、
前記車両に人が乗車する前に前記車室内を撮像したときの画像と、前記車両から人が降車した後に前記車室内を撮像したときの画像とを比較するステップと、
前記車両のドアロック解除信号または前記車両のドアロック信号を受け付けた場合に、前記車室内に光を照射する光源を前記第2の光で発光させる前に前記第1の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像し、前記車室内における人の有無を判断するステップと、
を含む車室内検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の車室内をモニタリングするインキャビンモニタリングシステム、および、車室内検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車室内をモニタリングするインキャビンモニタリングシステム(In-Cabin Monitoring System)が知られている。この種のインキャビンモニタリングシステムの一例として、特許文献1には、所定の光量を物体に照射して撮像したときの画像の濃淡変化と、所定の光量よりも小さな光量を物体に照射して撮像したときの画像の濃淡変化とに基づいて、物体を検知する技術が開示されている。この技術によれば、外乱光が照射された状態であっても物体を検知することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車室内に照射される外乱光は、天気、季節、時間帯、車両の向きおよび車両の内装等によって様々である。そのため、特許文献1に記載された技術では、様々な外乱光に対応した濃淡変化の分析が必要となり、車室内を検知することが複雑化するという問題がある。
【0005】
本開示は、車室内の検知を簡易に行うことができるインキャビンモニタリングシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係るインキャビンモニタリングシステムは、車両の車室内を撮像するカメラと、前記車室内に光を照射する光源と、前記カメラおよび前記光源を制御する制御部と、を備え、前記光源は、前記カメラで人の有無を確認するときに発光する第1の光、および、前記第1の光よりも強い光である第2の光を発光可能であり、前記制御部は、前記車両に人が乗車する前、および、前記車両から人が降車した後に、前記光源を前記第2の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像し、さらに、前記制御部は、前記車両のドアロック解除信号または前記車両のドアロック信号を受け付けた場合に、前記光源を前記第2の光で発光させる前に前記第1の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像し、前記車室内における人の有無を判断する。
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係るインキャビンモニタリングシステムは、車両の車室内を撮像するカメラと、前記車室内に光を照射する光源と、前記カメラおよび前記光源を制御する制御部と、過去に撮像した複数の画像を保存する記憶部と、を備え、前記光源は、前記カメラで人の有無を確認するときに発光する第1の光、および、前記第1の光よりも強い光である第2の光を発光可能であり、前記制御部は、前記車両に人が乗車する前、および、前記車両から人が降車した後に、前記光源を前記第2の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像し、さらに、前記制御部は、前記記憶部に保存された前記複数の画像から、現在撮像した画像の前記車室内のレイアウトに最も近いレイアウトを有する画像を選択し、選択した前記画像と前記現在撮像した画像とを比較することで、前記車室内に置かれた物の状態の違いを判断する。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る車室内検知方法は、車両の車室内を検知する車室内検知方法であって、前記車両に人が乗車する前に、カメラで人の有無を確認するときに照射する第1の光よりも強い第2の光を照射して、前記車室内を撮像するステップと、前記車両から人が降車した後に、前記カメラで人の有無を確認するときに照射する前記第1の光よりも強い前記第2の光を照射して、前記車室内を撮像するステップと、前記車両に人が乗車する前に前記車室内を撮像したときの画像と、前記車両から人が降車した後に前記車室内を撮像したときの画像とを比較するステップと、前記車両のドアロック解除信号または前記車両のドアロック信号を受け付けた場合に、前記車室内に光を照射する光源を前記第2の光で発光させる前に前記第1の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像し、前記車室内における人の有無を判断するステップと、を含む。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータで読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示のインキャビンモニタリングシステム等によれば、車室内の検知を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るインキャビンモニタリングシステムを車室内の側方から見た模式図である。
【
図2】実施の形態に係るインキャビンモニタリングシステムが備えるカメラおよび光源を示す図である。
【
図3】実施の形態に係るインキャビンモニタリングシステムを示すブロック構成図である。
【
図4】実施の形態に係るインキャビンモニタリングシステムの光源の発光によって照射される光を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る車室内検知方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
レンタカービジネスまたはカーシェアリングなどが普及する昨今において、車室内における携帯電話、財布などの忘れ物、および、車室内における座席の汚れ等を検知する技術が求められている。車室内の忘れ物や汚れを検知するため、例えば、インキャビンモニタリングシステムを用いて車室内の物を検知することが考えられる。
【0012】
物体を検知する方法の一例として、所定の光量を物体に照射して撮像したときの画像の濃淡変化と、所定の光量よりも小さな光量を物体に照射して撮像したときの画像の濃淡変化とに基づいて、物体を検知する従来技術がある。この技術によれば、外乱光が物体に照射される場合であっても物体の検知を行うことが可能である。
【0013】
しかしながら、車室内に照射される外乱光は、天気、季節、時間帯、車両の向きおよび車両の内装等によって様々である。そのため、従来技術では様々な外乱光に対応した濃淡変化の分析が必要となり、車室内を検知することが複雑化するという問題がある。
【0014】
本開示のインキャビンモニタリングシステムは、外乱光による影響を抑え、車室内の検知を簡易に行うことができるように、以下に示す構成を有している。
【0015】
本開示の一態様に係るインキャビンモニタリングシステムは、車両の車室内を撮像するカメラと、前記車室内に光を照射する光源と、前記カメラおよび前記光源を制御する制御部と、を備える。前記光源は、前記カメラで人の有無を確認するときに発光する第1の光、および、前記第1の光よりも強い光である第2の光を発光可能である。前記制御部は、前記車両に人が乗車する前、および、前記車両から人が降車した後に、前記光源を前記第2の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像する。
【0016】
このように、第1の光よりも強い第2の光を発光させた状態で車室内を撮像することで、外乱光による影響を抑え、車室内の検知を行うことができる。また、人が乗車する前、および、人が降車した後のそれぞれにおいて、車室内を撮像することで、乗車する前と降車した後との車室内の違いを簡易に検知することができる。
【0017】
また、前記制御部は、前記車両に人が乗車する前であって前記車両のドアロック解除信号を受け付けたときに、前記カメラで前記車室内を撮像し、および、前記車両から人が降車した後であって前記車両のドアロック信号を受け付けたときに、前記カメラで前記車室内を撮像してもよい。
【0018】
これによれば、乗車する前のドアロック解除時、および、降車した後のドアロック時のそれぞれにおいて、車室内を撮像することができる。これにより、乗車する前と降車した後との車室内の違いを簡易に検知することができる。
【0019】
また、前記制御部は、前記ドアロック解除信号を受け付けて前記車室内を撮像したときの画像と、前記ドアロック信号を受け付けて前記車室内を撮像したときの画像とを比較することで、前記車室内に置かれた物の状態の違いを判断してもよい。
【0020】
これによれば、乗車する前と降車した後との車室内の違いを簡易に検知することができる。
【0021】
また、前記車室内に置かれた物の状態の違いは、前記車室内に置かれた物の有無、および、前記車室内に置かれた物の破損または汚れの有無の少なくとも1つであってもよい。
【0022】
これによれば、車室内に置かれた物の有無、および、車室内に置かれた物の破損または汚れの有無を検知することが可能である。
【0023】
また、前記制御部は、前記車室内に置かれた物の状態が違うと判断した場合に、異常信号を出力してもよい。
【0024】
これによれば、車室内に置かれた物の状態に異常があることを、車両のユーザ等に報知することができる。
【0025】
また、前記制御部は、前記ドアロック解除信号または前記ドアロック信号を受け付けた場合に、前記光源を前記第2の光で発光させる前に前記第1の光で発光させた状態で、前記カメラで前記車室内を撮像し、前記車室内における人の有無を判断してもよい。
【0026】
このように、第2の光を発光させる前に人の有無を判断することで、強い光である第2の光が人に照射されることを回避可能となる。
【0027】
また、前記制御部は、前記車室内に人がいると判断した場合に、前記光源を前記第2の光で発光させず、前記車室内に人がいないと判断した場合に、前記光源を前記第2の光で発光させ、かつ、前記カメラで前記車室内を撮像してもよい。
【0028】
これによれば、第2の光が人に照射されるのを回避することができる。また、強い光である第2の光を発光して撮像することで、外乱光による影響を抑えて車室内を撮像することができる。
【0029】
また、インキャビンモニタリングシステムは、さらに、過去に撮像した複数の画像を保存する記憶部を備え、前記制御部は、前記記憶部に保存された前記複数の画像から、現在撮像した画像の前記車室内のレイアウトに最も近いレイアウトを有する画像を選択し、選択した前記画像と前記現在撮像した画像とを比較することで、前記車室内に置かれた物の状態の違いを判断してもよい。
【0030】
これによれば、例えば、車室内のレイアウトがユーザによって変えられた場合であっても、撮像した画像に最も近い車室内のレイアウトを有する画像を用いて、車室内に置かれた物の状態の違いを簡易に検知することができる。
【0031】
また、前記制御部は、前記カメラを用いて過去に撮像した画像と、現在撮像した画像とを比較することで、前記車室内のメンテナンスの要否を判断してもよい。
【0032】
このように、過去に撮像した画像と現在撮像した画像とを比較することで、車室内のメンテナンスの要否を適切に判断することができる。
【0033】
また、前記カメラおよび前記光源は、前記車室内の天井、オーバーヘッドコンソール、ルームミラー、ダッシュボード、ステアリングコラム、リアビューミラーまたはAピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラーに設けられていてもよい。
【0034】
これによれば、カメラおよび光源を用いて、車室内に置かれた物の状態を適切に撮像することができる。これにより、車室内に置かれた物の状態の違いを適切に検知することができる。
【0035】
本開示の一態様に係る車室内検知方法は、車両の車室内を検知する車室内検知方法であって、前記車両に人が乗車する前に、カメラで人の有無を確認するときに照射する光よりも強い光を照射して、前記車室内を撮像するステップと、前記車両から人が降車した後に、前記カメラで人の有無を確認するときに照射する光よりも強い光を照射して、前記車室内を撮像するステップと、前記車両に人が乗車する前に前記車室内を撮像したときの画像と、前記車両から人が降車した後に前記車室内を撮像したときの画像とを比較するステップと、を含む。
【0036】
このように、人の有無を確認するときに照射する光よりも強い光を照射させて車室内を撮像することで、外乱光による影響を抑え、車室内の検知を行うことができる。また、人が乗車する前、および、人が降車した後のそれぞれの車室内の画像を比較することで、乗車する前と降車した後との車室内の違いを簡易に検知することができる。
【0037】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示はこれらの実施の形態により限定されるものではない。つまり、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0038】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0039】
(実施の形態)
[インキャビンモニタリングシステムの構成]
実施の形態に係るインキャビンモニタリングシステムの構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0040】
図1は、実施の形態に係るインキャビンモニタリングシステム1を車室2内の側方から見た模式図である。
図2は、インキャビンモニタリングシステム1が備えるカメラ20および光源30を示す図である。
図3は、インキャビンモニタリングシステム1を示すブロック構成図である。
【0041】
図1~
図3に示すように、インキャビンモニタリングシステム1は、カメラ20と、光源30と、カメラ20および光源30を制御する制御部50と、を備える。また、インキャビンモニタリングシステム1は、筐体10を備える。
【0042】
筐体10は、車室2内の天井7の中央に設けられている。筐体10は、樹脂製のケースであり、開口部11を有している。筐体10の開口部11には、カメラ20および光源30が配置され、筐体10の内部には、制御部50が配置されている。なお、筐体10は、ウィンドシールド4の上方に位置するオーバーヘッドコンソールに設けられていてもよい。また、筐体10は、ルームミラー、ダッシュボード、ステアリングコラム、リアビューミラーまたはAピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラーに設けられていてもよい。すなわち、カメラ20および光源30は、乗員3やシートを撮影できる位置に設けられていればよい。
【0043】
光源30は、車室2内に光を照射する装置である。光源30は、可視光もしくは近赤外光を出射する複数の発光素子を有する。光源30は、筐体10の開口部11に設けられ、かつ、座席、足元フロアおよび乗員3に可視光もしくは近赤外光を照射可能な向きで配置されている。光源30は、第1の光L1および第2の光L2を発光可能である。
【0044】
図4は、インキャビンモニタリングシステム1の光源30の発光によって照射される光を示す図である。
図4の(a)には、光源30が第1の光L1を発光している様子が示され、
図4の(b)には、光源30が第2の光L2を発光している様子が示されている。なお、
図4の(a)および(b)には、車室2内に忘れ物等がなく、また、乗員3がいない状態が示されている。
【0045】
光源30は、カメラ20で車室2内における人の有無を確認するときに第1の光L1を発光する。第1の光L1の強さは、通常、人を撮像するときに発光する強さである。第1の光L1によって照射される光の照度は、例えば、可視光であれば、100ルクス以上2000ルクス未満であり、近赤外光で940nmの波長であれば、0.1W/m2以上1W/m2未満の発光強度である。また、光源30は、カメラ20で車室2内を撮像する時に外乱光の影響を抑えるために第2の光L2を発光する。第2の光L2は、第1の光L1よりも強い光(発光強度の強い光)である。第2の光L2によって照射される光の照度は、例えば、可視光であれば、2000ルクス以上100000ルクス以下、近赤外光で940nmの波長であれば1W/m2以上10W/m2以下の発光強度である。光源30は、後述する制御部50からの発光指令に基づいて、第1の光L1または第2の光L2を発光する。
【0046】
カメラ20は、車室2内または乗員3を撮像する装置である。カメラ20は、筐体10の開口部11に設けられている。カメラ20は、カメラ20のレンズ画角α内に座席、足元フロアおよび乗員3が位置するように、すなわち座席、足元フロアおよび乗員3を撮像可能な向きで配置される。
【0047】
カメラ20は、例えば、可視光を検出する可視光カメラ、近赤外光を検出する近赤外光カメラ、或いは、両者が検出可能なカメラである。カメラ20としては、GS(グローバルシャッター)方式のCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサを用いることができる。カメラ20は、制御部50からの撮像指令に基づいて、車室2内または乗員3を撮像する。制御部50は、例えば、強い光である第2の光L2の発光時間およびカメラ20の露光時間を短くすることで、外乱光の影響を抑えて車室2内を撮像することが可能である。
【0048】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを有する記憶部53と、記憶部53に格納されたプログラムとによって構成されている。制御部50が有する機能的な構成は、上記プログラムを実行することで実現される。制御部50は、筐体10の内部に設けられているが、それに限られず、筐体10の外部に設けられていてもよい。制御部50は、車両9のECU(Electronic Control Unit)90と通信しながら、カメラ20、光源30等の動作を制御する。
【0049】
制御部50は、車両9のドアのロックを開閉する信号であるドアロック解除信号s1およびドアロック信号s2を取得する。ドアロック解除信号s1は、車両9に人が乗車する前に制御部50に入力される。ドアロック信号s2は、車両9から人が降車した後に制御部50に入力される。例えば、ドアロック解除信号s1およびドアロック信号s2は、車両9のユーザの操作入力によってECU90に入力され、ECU90を介して制御部50に入力される。制御部50が取得するドアロック解除信号s1およびドアロック信号s2は、ECU90が受け付けた信号そのものであってもよいし、ECU90が受け付けた信号に連動してECU90から出力された信号であってもよい。
【0050】
本実施の形態では、車両9に人が乗車する前、および、車両9から人が降車した後のそれぞれの場面において、第2の光L2を用いて車室2内を撮像する。ただし、制御部50は、人に対して強い光を与え過ぎないようにするため、第2の光L2を発光させる前に、車室2内における人の有無を確認する。具体的には制御部50は、第2の光L2よりも弱い第1の光L1を発光させた状態で、カメラ20で車室2内を撮像する。制御部50は、第1の光L1で撮像した画像に基づいて、車室2内における人の有無を判断する。画像に基づく人の有無の判断は、周知技術によって実現可能である。
【0051】
制御部50は、車室2内に人がいると判断した場合に、光源30を第2の光L2で発光させず、また、車室2内の撮像を行わない。制御部50は、第1の光L1で撮像した画像に基づいて車室2内に人がいないと判断した場合に、光源30を第2の光L2で発光させ、かつ、カメラ20で車室2内を撮像する。
【0052】
例えば制御部50は、車両9に人が乗車する前であってドアロック解除信号s1を受け付けたときに、光源30を第2の光L2で発光させた状態で、カメラ20で車室2内を撮像する。また、制御部50は、車両9から人が降車した後であって、ドアロック信号s2を受け付けたときに、光源30を第2の光L2で発光させた状態で、カメラ20で車室2内を撮像する。
【0053】
制御部50は、ドアロック解除信号s1を受け付けて車室2内を撮像したときの第1の画像im1と、ドアロック信号s2を受け付けて車室2内を撮像したときの第2の画像im2とを比較することで、車室2内に置かれた物の状態の違いを判断する。具体的には制御部50は、第1の画像im1および第2の画像im2の差分(例えば、画像を構成する複数の画素の色、明るさ等の違い)を取得することで、車室2内に置かれた物の状態の違いを判断する。
【0054】
物の状態の違いとは、車室2内に置かれた物の有無、および、車室2内に置かれた物の破損または汚れの有無の少なくとも1つである。車室2内に置かれた物は、携帯電話、財布、ごみなどのように外から車室2内に持ち込まれた物であってもよいし、座席、足元フロアなどのように車室2内に予め配置されている物であってもよい。なお、本実施の形態では、物の物品名まで特定する必要はなく、少なくとも、画像im1およびim2に違いがあるか否かで物の状態の違いを判断すればよい。
【0055】
制御部50は、車室2内に置かれた物の状態が違うと判断した場合に、異常であることを示す異常信号を出力し、車両9のユーザに報知する。
【0056】
本実施の形態のインキャビンモニタリングシステム1では、光源30が、カメラ20で人の有無を確認するときに発光する第1の光L1、および、第1の光L1よりも強い光である第2の光L2を発光可能であり、車両9に人が乗車する前、および、車両9から人が降車した後に、光源30を第2の光L2で発光させた状態で、カメラ20で車室2内を撮像する。
【0057】
このように、第1の光L1よりも強い第2の光L2を発光させた状態で、車室2内を撮像することで、外乱光による影響を抑え、車室2内の検知を行うことができる。また、人が乗車する前、および、人が降車した後のそれぞれにおいて、車室2内を撮像することで、乗車する前と降車した後との車室2内の違いを簡易に検知することができる。
【0058】
[車室内検知方法]
実施の形態に係る車室内検知方法について、
図5を参照しながら説明する。
【0059】
図5は、実施の形態に係る車室内検知方法を示すフローチャートである。
【0060】
ここでは、インキャビンモニタリングシステム1を用いて、車室2内の物の状態を検出する例について説明する。車室2内の物の状態の検知は、車両9が駐車しているときに実行される。
【0061】
インキャビンモニタリングシステム1は、人が車両9に乗車する前にドアロック解除信号s1を受け付ける(ステップS11)。例えば、制御部50は、ユーザのキー操作により、ECU90を介してドアロック解除信号s1を受け付ける。
【0062】
制御部50は、ドアロック解除信号s1を受け付けると、車室2内における人の有無を確認する。具体的には、制御部50は、光源30を第1の光L1で発光させて車室2内に光を照射し、カメラ20で車室2内を撮像する(ステップS12)。第1の光L1の発光時間は、例えば、0.1ms以上10ms以下である。
【0063】
制御部50は、第1の光L1を発光した際に取得した画像を用いて、車室2内に人がいるか否かを判断する(ステップS13)。
【0064】
制御部50は、車室2内に人がいると判断した場合(S13にてYes)、光源30を第2の光L2で発光させず、また、車室2内の撮像を行わず、ステップS11へ戻る。このとき制御部50は、車室2内の人が車室2外へ出るように催促する信号をECU90へ出力し、ECU90は、車室2内の音響機器等を用いて、車室2内の人に対して車室2外へ出るように通知してもよい。
【0065】
制御部50は、車室2内に人がいないと判断した場合(S13にてNo)、光源30を第2の光L2で発光させて車室2内に光を照射し、カメラ20で車室2内を撮像する(ステップS14)。第2の光L2の発光時間は、例えば、0.1ms以上10ms以下である。
【0066】
制御部50は、第2の光L2を発光した際に取得した画像を、第1の画像im1として記憶部53に保存させる(ステップS15)。第1の画像im1は、車両9の利用期間において最初に撮像された静止画像であり、撮像日時もあわせて記憶部53に保存される。
【0067】
次に、ユーザが車両9の走行を終えた後について説明する。
【0068】
インキャビンモニタリングシステム1は、人が車両9から降車した後にドアロック信号s2を受け付ける(ステップS16)。例えば、制御部50は、ユーザのキー操作により、ECU90を介してドアロック信号s2を受け付ける。
【0069】
制御部50は、ドアロック信号s2を受け付けると、車室2内における人の有無を確認する。具体的には、制御部50は、光源30を第1の光L1で発光させて車室2内に光を照射し、カメラ20で車室2内を撮像する(ステップS17)。第1の光L1の発光時間は、例えば、0.1ms以上10ms以下である。
【0070】
制御部50は、第1の光L1を発光した際に取得した画像を用いて、車室2内に人がいるか否かを判断する(ステップS18)。
【0071】
制御部50は、車室2内に人がいると判断した場合(S18にてYes)、光源30を第2の光L2で発光させず、また、車室2内の撮像を行わず、ステップS16へ戻る。このとき制御部50は、車室2内の人が車室2外へ出るように催促する信号をECU90へ出力し、ECU90は、車室2内の音響機器等を用いて、車室2内の人に対して車室2外へ出るように通知してもよい。
【0072】
制御部50は、車室2内に人がいないと判断した場合(S18にてNo)、光源30を第2の光L2で発光させて車室2内に光を照射し、カメラ20で車室2内を撮像する(ステップS19)。第2の光L2の発光時間は、例えば、0.1ms以上10ms以下である。
【0073】
制御部50は、第2の光L2を発光した際に取得した画像を、第2の画像im2として記憶部53に保存させる(ステップS20)。第2の画像im2は、車両9の利用期間において最後に撮像された静止画像であり、撮像日時もあわせて記憶部53に保存される。
【0074】
次に、制御部50は、第1の画像im1と第2の画像im2とを比較し、車室2内の物の状態の違い判断する(ステップS21)。
【0075】
制御部50は、車室2内の物の状態に違いがあると判断した場合(S21にてYes)に、異常があることを示す異常信号をECU90に出力する(ステップS22)。また、制御部50は、車室2内の物の状態に違いがないと判断した場合(S21にてNo)に、異常がないことを示す正常信号をECU90に出力する(ステップS23)。異常信号および正常信号に基づく情報は、例えばインターネット通信によって、または、Bluetooth(登録商標)による通信によって、ユーザの通信端末に提示される。
【0076】
これらのステップS11~S23を実行することで、インキャビンモニタリングシステム1における車室内検知方法が実現される。
【0077】
本実施の形態の車室内検知方法は、車両9に人が乗車する前に、カメラ20で人の有無を確認するときに照射する光よりも強い光を照射して、車室2内を撮像するステップと、車両9から人が降車した後に、カメラ20で人の有無を確認するときに照射する光よりも強い光を照射して車室2内を撮像するステップと、車両9に人が乗車する前に車室2内を撮像したときの画像im1と、車両9から人が降車した後に車室2内を撮像したときの画像im2とを比較するステップと、を含む。
【0078】
このように、人の有無を確認するときに照射する光よりも強い光を照射させて車室2内を撮像することで、外乱光による影響を抑え、車室2内の検知を行うことができる。また、人が乗車する前、および、人が降車した後のそれぞれの車室2内の画像を比較することで、乗車する前と降車した後との車室2内の違いを簡易に検知することができる。
【0079】
次に、実施の形態の変形例について説明する。
【0080】
上記の記憶部53には、第1の画像im1および第2の画像im2が保存されるが、記憶部53に保存される画像はこれに限られない。例えば、記憶部53には、新車時に撮像した画像など、過去に撮像した複数の画像が蓄積して保存されてもよい。複数の画像には、座席の位置または背もたれの角度など、車室2内のレイアウトを変えた状態の画像が含まれていてもよい。そして制御部50は、記憶部53に保存された複数の画像から、現在撮像した画像の車室2内のレイアウトに最も近いレイアウトを有する画像を選択し、選択した画像と現在撮像した画像とを比較することで、車室2内に置かれた物の状態の違いを判断してもよい。
【0081】
また、上記の制御部50は、車両9の利用期間の最初および最後に撮像した画像に基づいて、車室2内の物の状態の違いを判断しているが、それに限られない。例えば、制御部50は、カメラ20を用いて過去に撮像した画像と、現在撮像した画像とを比較することで、車室2内のメンテナンスの要否を判断してもよい。過去に撮像した画像は、例えば、新車時に撮像した画像である。車室2内のメンテナンスは、例えば、シートカバー、フロアマットなどの修繕、交換である。制御部50は、メンテナンスの要否の判断結果をユーザに通知してもよい。
【0082】
(その他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態および実施の形態の変形例を説明した。しかしながら、実施の形態および実施の形態の変形例における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記各実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0083】
上記の実施の形態では、制御部50が、ドアロック解除信号s1およびドアロック信号s2のそれぞれを受け付けたときに、カメラ20で車室2内を撮像する例を示したが、それに限られない。例えば、制御部50は、ドアロック解除信号s1の代わりに事前撮像指示信号を受け付け、および、ドアロック信号s2の代わりに事後撮像指示信号を受け付け、それぞれの信号を受け付けたときに、カメラ20で車室2内を撮像してもよい。
【0084】
上記の実施の形態では、カメラ20および光源30が天井7に設けられている例を示したが、それに限られない。カメラ20および光源30は、車室2内の天井7、オーバーヘッドコンソール、ルームミラー、ダッシュボード、ステアリングコラム、リアビューミラーおよびAピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラーの少なくとも1つに設けられていればよい。光源30は、車室2内に複数設けられていてもよい。カメラ20は、車室2内に複数設けられていてもよい。
【0085】
また、本開示に係る実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、上述した装置や各処理部の機能は、コンピュータプログラムにより実現され得る。
【0086】
上述した機能をプログラムにより実現するコンピュータは、タッチパッドなどの入力装置、ディスプレイやスピーカなどの出力装置、プロセッサまたはCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)やUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの記録媒体から情報を読み取る読取装置、ネットワークを介して通信を行うネットワークカードなどを備え、各部はバスにより接続される。
【0087】
そして、読取装置は、上記プログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置に記憶させる。あるいは、ネットワークカードが、ネットワークに接続されたサーバ装置と通信を行い、サーバ装置からダウンロードした上記各装置の機能を実現するためのプログラムを記憶装置に記憶させる。
【0088】
そして、プロセッサまたはCPUが、記憶装置に記憶されたプログラムをRAMにコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAMから順次読み出して実行することにより、上記各装置の機能が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示のインキャビンモニタリングシステムは、車室内をモニタリングする場合等に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 インキャビンモニタリングシステム
2 車室
3 乗員
4 ウィンドシールド
7 天井
9 車両
10 筐体
11 開口部
20 カメラ
30 光源
50 制御部
53 記憶部
90 ECU
im1、im2 画像
L1 第1の光
L2 第2の光
s1 ドアロック解除信号
s2 ドアロック信号
α レンズ画角