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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】組織病変治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20240911BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 31/726 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20240911BHJP
   A61K 35/35 20150101ALI20240911BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240911BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240911BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240911BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240911BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240911BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K9/08
A61K9/72
A61K31/726
A61K35/19
A61K35/35
A61K38/18
A61K47/36
A61P11/00
A61P17/02
A61P25/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017561737
(86)(22)【出願日】2016-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2016061906
(87)【国際公開番号】W WO2016189088
(87)【国際公開日】2016-12-01
【審査請求日】2019-03-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】15305807.8
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517407279
【氏名又は名称】オルガンズ ティシューズ リジェネレーション リパレーション レムプレースメント - オーティーアール3
(73)【特許権者】
【識別番号】517408209
【氏名又は名称】バリトー デニス
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】バリトー デニス
【合議体】
【審判長】吉田 佳代子
【審判官】齋藤 恵
【審判官】松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0257449(US,A1)
【文献】MULLANGI C,NEW AGENT, REGENERATING AGENT (RGTA) AND BONE MARROW DERIVED CD34+ LINEAGE STEM CELLS 以下備考,INDIAN JOURNAL OF THORACIC AND CARDIOVASCULAR SURGERY,2006年 3月,VOL:22, NR:1,PAGE(S):71,TRANSPLANTATION FOR THE TREATMENT OF ACUTE MYOCARDIAL INFARCTION,URL,http://dx.doi.org/10.1007/s12055-006-0631-8
【文献】GUILHEM FRESCALINE,GLYCOSAMINOGLYCAN MIMETIC ASSOCIATED TO HUMAN MESENCHYMAL STEM CELL-BASED SCAFFOLDS 以下備考,TISSUE ENGINEERING PART A,米国,2013年 7月,VOL:19, NR:13-14,PAGE(S):1641 - 1653,INHIBIT ECTOPIC BONE FORMATION, BUT INDUCE ANGIOGENESIS IN VIVO,URL,http://dx.doi.org/10.1089/ten.tea.2012.0377
【文献】Wound Rep Reg., 2008, Vol.16, p.294-299
【文献】J Biomed Matr Res A., 2006, Vol.80, p.75-84
【文献】Plast Reconstr Surg., 2011, Vol.127, p.541-550
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00,A61P
JSTPLUS、JMEDPLUS、JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動機能低下を伴う脊髄病変、肺粘膜病変、及び、肛門周囲瘻孔よりなる群から選択される組織病変の予防及び/又は治療用医薬キットであって、前記医薬キットが、
下記一般式(I)又は(II)
AaXxYy(I)
AaXxYyZz(II)
(式中、
Aはグルコースであるモノマーであり、
Xは-RCOOR基であり、
Yは、R SOで表される基であり、
Zは酢酸基であり、ここで、
は、分枝状及び/又は不飽和であってもよく、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素鎖であり、R及びRは、独立に、水素原子又はアルカリ金属カチオンであり、Rは結合であり、
aはモノマーの数であり、aは、前記式(I)又は(II)のポリマーの分子量が2000ダルトンを超えるような数であり、
xは、基Xによる前記モノマーAの置換度であり、xは20%~150%であり、
yは、基Yによる前記モノマーAの置換度であり、yは30%~150%であり、
zは、基Zによる前記モノマーAの置換度であり、zは0%~50%である)
の生体適合性ポリマーと、
間葉細胞、脂肪組織細胞及び骨髄細胞から選択される真核細胞と
を含む、医薬キット。
【請求項2】
さらに、血小板抽出物及び/又は血小板溶解物を含む、請求項1に記載の医薬キット。
【請求項3】
さらに、少なくとも1種の増殖因子を含む、請求項1に記載の医薬キット。
【請求項4】
前記生体適合性ポリマーが組織病変の治療において
- 静脈内若しくは筋肉内に0.1~5mg/kg体重の用量で
- 局所注射によって1~100マイクログラム/ミリリットルの用量で、
- 経口的に1日当たり2~5回の均等な摂取量で、1日合計10μg~5mg/kg体重の量で、
- 舌下に食前に1~100mg/mlの濃縮水溶液で、又は
- 経鼻エアロゾル又は噴霧剤として溶液の投与によって、
投与され、
前記真核細胞が、組織病変の治療において、前記生体適合性ポリマーの最初の摂取後5分~24時間の期間内に注射によって投与される、
請求項1に記載の医薬キット。
【請求項5】
線維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)、血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)、血小板由来増殖因子(PDGF:platelet-derived growth factor)又はそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1種の増殖因子を更に含む、請求項1又は2に記載の医薬キット。
【請求項6】
血小板抽出物及び/又は血小板溶解物を更に含む、請求項1又は3に記載の医薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織病変の予防及び/又は治療用医薬品としてのその適用のための医薬組成物に関する。
【0002】
本発明は、組織病変の予防及び/又は治療用医薬キットにも関する。
【0003】
本発明は、組織病変の治療用医薬品を製造するための医薬組成物の使用にも関する。
【0004】
本発明は、特に医薬品及び獣医学分野において使用することができる。
【0005】
以下の記述において、括弧( )内の参考文献は、明細書の最後に示した参考文献のリストを指す。
【背景技術】
【0006】
治療目的の細胞、組織又は器官の移植は、医学における主要な課題である。1世紀近くにわたる多数の研究から、多数の適用例及び数々の技術におけるこれらの移植の治療効果によって、試料の品質、その貯蔵及び保存、又はそれを移植する前若しくはそれをレシピエント患者に再導入する前のその増大を制御し、向上させることが可能になったことが示された。同様に、再導入後にレシピエント患者に治療効果をもたらす目的で、方法、装置及び製品に使用される器官、組織又は細胞の性能レベル及び性質に対して多数の改善がなされた。最後に、この再導入に時折付随する有害反応の知識及び制御の向上によっても、より良好な成功を保証することが可能になった。
【0007】
しかし、細胞投与後、その組込みに関する収率及び/又は治療効率は、投与された細胞の数を考えると、極めて低いままであり、したがって治療を繰り返す必要があり、極めて高い治療費を必要とする。さらに、低い収率と高い費用のため、これらの方法によって治療可能な病態及び/又は患者が制限される。
【0008】
したがって、先行技術において、これらの方法及び/又はそれらの使用を最適化するために使用される生物学的ツールを更に改善することができ、治療上の適用分野を拡張できることが真に必要である。
【0009】
組織環境を改善可能な化合物、例えば、「Heparan Binding Growth Factor Protectors and Potentiators:HBGFPP」として知られるポリマーが先行技術に存在する。これらのHBGFPPは、ヘパリン(FGF、TGFbなど)に対して親和性を有する増殖因子をプロテアーゼによる分解から保護し、さらに、使用用量で意味のある抗凝固活性を示さずにこれらの因子の活性を増強する、それらの性質によって定義された。これらのHBGFPPは、特に特許文献1又は2に示されるように、筋組織、神経組織及び消化管組織病変の修復に対して驚くべき性質を示し、さらに、炎症反応に対して活性も示した。これらのポリマーは、化学的にも定義され、皮膚、骨、角膜及び虚血性組織病変の前臨床モデルにおいて組織再生剤として説明された。それらは、抗線維化作用、虚血モデルにおける酸化ストレスの作用に対して保護する単一能力(single capacities)、加齢及び神経変性に対する保護作用も示し、一般に、再生プロセスを促進する。HBGFPPの特別な一形態であるRGTAは、その使用中に、組織病変、例えば、皮膚、角膜、骨又は筋肉の修復を加速し、改善し、ことによっては、瘢痕、より一般的には線維症の減少を示した(非特許文献1の概説参照)。RGTAは、照射(非特許文献2)、照射に起因する病変の場合には酸化ストレス(非特許文献3)、虚血中の酸化ストレス(非特許文献4)又は組織老化の場合の酸化ストレス(非特許文献5)に起因する有害作用に対して保護することも知られている。
【0010】
別の治療分野においては、RGTAの別の効果も、特に疼痛及びかゆみの治療、並びに効果が極めて急速であり、したがって実施にはるかに長い時間を要する修復又は再生プロセスとは無関係であるので、当業者が組織修復又は再生プロセスとの関連を予見できなかった治療において、認められた。
【0011】
RGTAは、特に病変部位に存在する増殖因子及び細胞間情報伝達の保護並びに治療患者に存在する細胞の補充による病変組織の修復に対して記述され、使用されてきた。例えば、刊行物は、造血前駆細胞などの内在幹細胞、若しくは血液由来幹細胞(非特許文献6)の動員に対する、又はインビトロ若しくはインビボにおける間葉幹細胞の増殖、クローン原性、移動及び/又は分化に対する、RGTAの効果を示している。
【0012】
骨髄細胞と一緒にベンジルアミンを含むRGTAの使用は、側副血管新生の形成を増加させる心筋梗塞の治療に対して特許文献3に予見されている。しかし、この開示は、実験も科学的結果も含まない。したがって、前記文献に含まれる要素は、記述された要素を再生することができず、どのような治療も予見不可能である。特に、非特許文献7の報告によれば、ヒヒにおいて下行冠動脈の結紮後に同じ日に骨髄から採取され梗塞領域に直接注射された間葉細胞と同時注入されたRGTAは、この筋肉に単独で注射されたRGTAよりも機能効率が高くなく、したがってRGTA単体が心筋梗塞後の回復を改善する高い能力を有することを示した非特許文献8の観察を再現している。したがって、細胞とRGTAの同時注入は、RGTA単体の使用と比較して、心筋梗塞後の回復に関して更なる有益な効果を示さない。換言すれば、細胞とRGTAを注射しても更なる有益な効果が認められない/示されない。
【0013】
文献は、病変組織又は機能の損なわれた組織の領域に再びコロニーを形成するために、起源及び性質の異なる細胞を様々な方法によって移植することを目的にした多数の細胞療法研究にも言及している。これらの研究すべてから、標的領域に移植された細胞を生存させることが極めて困難であり、その空間のコロニーを形成することが更に困難であり、こうして再びコロニーを形成した器官又は組織の機能を次第に回復させることが更に困難であることが明らかになった。この問題は、まだ満足に解決されていない真の難題として依然残っている。
【0014】
したがって、組織病変の治療及び/又は細胞療法の効率を改善可能な新規化合物及び/又は方法を見出すことが真に必要である。
【0015】
骨代用生体材料と混合されたRGTAの使用は、先行技術に記載されている(Billyら、特許文献4)。前記文献は、骨代用材の移植及びコロニー形成を促進しようとして、この(三カルシウム)生体材料をRGTAではなく幹細胞と組合せることも予見するが、可能な実施、ステップなどに関する説明も記述もない。さらに、この開示は、実験も科学的結果も含まない。したがって、前記文献及びその教示に記載の要素は、骨代用生体材料と細胞のいかなる組合せの再生も発生も、いかなる組合せのいかなる使用も可能にすることができない。
【0016】
特に加齢に起因する多数の病態は、組織及び/又は細胞変性現象、例えば、アルツハイマー病、黄斑変性症、及び/又は組織/細胞の酸素添加の減少などの生物学的現象に起因するものなどを含む。
【0017】
これらの病態では、上述したように、有効な治療を見いだすこと、及び/又は特に既存の治療、特に細胞療法に関する治療を改善することが先行技術において大いに必要とされる。
【0018】
特に、治療が実質的に存在しない、又はあまり有効でない不十分な組織及び/又は細胞機能を含む多数の遺伝的病態も存在する。これらの病態では、1つの治療経路は細胞療法からなる。しかし、特に注射後の細胞移植が不十分であり、及び/又はこれらの治療の費用が極めて高いので、これらの療法の効率は疑問視されている。
【0019】
したがって、組織病変をその起源にかかわらず治療することができる、及び/又は公知の組成物及び/又は細胞療法の治療効率をそれらの費用を同時に削減しながら高める、新規な組成物及び治療を見出すことが真に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公開第1995/026739号
【文献】米国特許第7998922号
【文献】国際公開第2003/101201号
【文献】米国特許出願公開第2006/0257449号
【非特許文献】
【0021】
【文献】Van Neckら「Heparan Sulfate Proteoglycan Mimetics Promote Tissue Regeneration:An Overview chapter 4 in Tissue Regeneration-From Basic Biology to Clinical Application」ISBN978-953-51-0387-5、Jamie Davies編
【文献】Mangoni Mら;Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.2009,74,1242~1250
【文献】Yue X-Lら;Cell Death and Differentiation 2009、1~12
【文献】Desgrangesら;FASEB J.1999 Apr;13(6):761~6
【文献】Larramendy-Gozalo C,Dら;J Gen Virol.2007、88:1062~7
【文献】Albanesら、Experimental Hematology2009;37:1072~1083
【文献】Mullanghiら、Coronary;22:71
【文献】Yamauchi Hら、FASEB J.2000(14):2133~4
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の目的は、特に、組織病変の予防及び/又は治療用医薬品としてのその適用のための医薬組成物を提供することによってこれらの必要を満たすことであり、前記組成物は、
下記一般式(I)
AaXxYy(I)
(式中、
Aはモノマーであり、
Xは-RCOOR又は-R(C=O)R10基であり、
Yは、次式-ROSO、-RNSO、-RSOの1つに対応するO-又はN-スルホン酸基であり、
ここで、
、R、R及びRは、独立に、分枝状及び/又は不飽和であってもよく、1個以上の芳香環を含んでもよい、脂肪族炭化水素鎖であり、R、R、R及びRは、独立に、水素原子又はカチオンであり、
及びR10は、独立に、結合、又は分枝状及び/若しくは不飽和であってもよい、脂肪族炭化水素鎖であり、
「a」はモノマーの数であり、
「x」は、基XによるモノマーAの置換度であり、
「y」は、基YによるモノマーAの置換度である)
の生体適合性ポリマーと
真核細胞と
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0023】
有利なことに、本発明者らは、驚くべきことに、先行技術の教示に反して、本明細書においてRGTAとも表す上で定義した一般式(I)の生体適合性ポリマーと細胞の組合せが、例えばレシピエント患者の、組織及び器官の調製又は調節を可能にし、例えばレシピエント患者における、外部細胞の、及び/又は器官及び/又は組織移植片(transplant)の、移植、増殖及びコロニー形成の促進を可能にすることを示した。
【0024】
特に、本発明者らは、驚くべきことに、細胞、器官、血小板抽出物と組み合わせた一般式(I)の生体適合性ポリマーの使用が、有利かつ驚くべきことに、こうして治療された組織及び/又は器官の損なわれた機能の回復を著しく改善でき、患者の大きな利益になることを示した。
【0025】
さらに、本発明者らは、本発明に係る一般式(I)の生体適合性ポリマーと細胞の組合せを多数の病態/病変などに使用/適用できることを示した。実際、本発明は、病変/移植又はグラフト組織又は器官にかかわらず、使用される、例えば注射される細胞にかかわらず、例えば、単独で又は例えば血小板溶解物と組み合わせて、例えば、増殖因子で、又は例えば精製増殖因子、特にRGTA又はヘパラン硫酸に親和性を有する増殖因子の注射で、強化して、適用することができる。
【0026】
本発明者らは、驚くべきことに、治療した組織の機能回復で得られる効果が、RGTA単独で、又は細胞単独で、又は単独で移植若しくは注射された組織、器官、生体材料、血小板溶解物若しくは純粋な増殖因子で、別々に得られる効果よりも大きいことも示した。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、予想外に、組成物の投与の治療スキームである投与計画が、有利なことに、治療効果の最適化を可能にし、治療した組織又は器官の機能及び治癒回復で認められた強力な相乗効果を有することも示した。
【0028】
本発明に従って使用される細胞は、それらが移植され得る組織又は器官に存在する細胞とは異なる性質及び起源を有し得るので、認められた結果はいっそう予想外である。驚くべきことに、本発明に係る組成物は、移植細胞が異なる表現型及び異なる組織起源であり得ることにもかかわらず、例えば、やはり機能的である組織又は器官が認められる程度に、これらの移植細胞のコロニー形成を促進する。さらに、これは、コロニーが形成される組織又は器官の細胞の分化経路に既に託された多能性幹細胞又は幹細胞の発生を実験的に誘導する必要がない。
【0029】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明に係るRGTAの使用が、新しい予想外の技術的/治療効果を得ること、すなわち、特に移植領域を用意することによる病変部位の調節を可能にし、特に細胞、組織又は器官の細胞処置の効率及び/又は移植能力に関して、RGTAが単独で使用されて得られるものよりも、及び/又は単独で使用される細胞よりも、高い細胞の移植/治療処置の有効性を得るのを可能にすることを示した。
【0030】
すなわち、本発明者らは、驚くべきことに、予想外に、本発明が、採用されるRGTAの例えば逐次投与によって、すなわち投与計画に従って、例えば数分から数日の期間後に、選択された任意の性質及び/又は起源の細胞の投与によって、有利なことに、起源、それらの発生状態、及び調製方法にかかわらず、適切な場合は、レシピエントの免疫系に関連する拒絶の側面が抑制されるという条件で、これらの移植片の生着又はこれらの細胞の機能移植を予想外に促進できることを示した。
【0031】
さらに、本発明者らは、特に実施例において、本発明を、起源にかかわらず任意のタイプの組織病変、及び任意のタイプの組織又は器官にも適用でき、特に本発明に係る組成物によって治療可能な病変を、起源にかかわらず任意のタイプの組織病変、及び任意のタイプの組織又は器官とすることができることを示した。特に、当業者は、多様な病変が効果的に治療される下記実施例に照らして、本発明によって治療可能な他の組織病変を容易に理解し、この知識に照らして、本発明によって治療可能な他の組織病変を推定することができる。
【0032】
本明細書では「組織病変」という用語は、当業者に知られている哺乳動物の任意の生体組織の任意の病変を意味するものとする。それは、例えば、結合組織、筋組織、神経組織、骨組織、軟骨組織及び/又は上皮組織病変であり得る。それは、例えば、当業者に知られている任意の哺乳動物器官又は細胞小器官の任意の病変であり得る。それは、例えば、消化管の組織、胃腸管の組織、消化器系及び排泄系、生殖器官、生殖器系、目、嗅覚系又は聴覚系、感覚系、循環系及び/又は心血管系、呼吸器系、筋肉系又は運動器官系の病変であり得る。それは、例えば、胃組織の病変、頬病変、角膜の病変、鼓室の病変、蝸牛の病変、皮膚病変、例えば、創傷、慢性創傷、例えば、糖尿病性創傷、潰瘍性創傷、褥瘡、皮膚火傷、壊死性創傷、静脈病変、虚血性病変、例えば、虚血性壊死、梗塞に起因する病変、例えば、心筋梗塞、骨病変、例えば、骨折、骨欠損を伴う骨折、骨壊死(「癒着不良骨折」)、骨軟骨性病変、軟骨病変、腱病変、外科的病変、外科的処置に起因する病変、医学的処置、例えば、放射線治療に起因する病変、神経組織病変、例えば、脳病変、例えば、腫瘍の切除に起因する病変、脊髄病変、神経線維病変、例えば、運動系及び/又は感覚系病変、呼吸器系病変、例えば、肺病変、循環系病変、例えば、動脈及び/又は血管の病変、消化器系、腎臓系、泌尿器系の病変であり得る。
【0033】
本明細書ではモノマーという用語は、例えば、糖、エステル、アルコール、アミノ酸又はヌクレオチドを含む群から選択されるモノマーを意味するものとする。
【0034】
本明細書においては、式Iのポリマーの基本的要素を構成するモノマーAは、同じでも、異なってもよい。
【0035】
本明細書においては、モノマーの連結によって、ポリマー骨格、例えば、ポリエステル、多価アルコール若しくは多糖の種類の、又は核酸若しくはタンパク質タイプの、ポリマー骨格を形成することが可能になる。
【0036】
本明細書においては、ポリエステルの中で、それらは、例えば、生合成又は化学合成コポリマー、例えば、脂肪族ポリエステル、又は天然起源のポリエステル、例えば、ポリヒドロキシアルカノアートとすることができる。
【0037】
本明細書においては、多糖及びその誘導体は、細菌、動物、真菌及び/又は植物起源とすることができる。例えば、それらは、単鎖多糖、例えば、ポリグルコース、例えば、デキストラン、セルロース、ベータ-グルカン、又はより複雑な単位を含む別のモノマー、例えば、キサンタンガム、例えば、グルコース、マンノース及びグルクロン酸、又はグルクロナン及びグルコグルクロナンとすることができる。
【0038】
本明細書においては、植物起源の多糖は、単鎖、例えば、セルロース(グルコース)、ペクチン(ガラクツロン酸)、フカン若しくはデンプン、又はより複雑な、例えば、アルギナート(グルロン(galuronic)及びマンヌロン酸)とすることができる。
【0039】
本明細書においては、真菌起源の多糖は、例えば、ステログルカン(steroglucan)とすることができる。
【0040】
本明細書においては、動物起源の多糖は、例えば、キチン又はキトサン(グルコサミン)とすることができる。
【0041】
式(I)において「a」で定義されるモノマーAの数は、前記式(I)のポリマーの重量が(10グルコースモノマーに相当する)約2000ダルトンを超えるようなものとすることができる。式(I)において「a」で定義されるモノマーAの数は、前記式(I)のポリマーの重量が(10000グルコースモノマーに相当する)約2000000ダルトン未満であるようなものとすることができる。有利には、前記式(I)のポリマーの重量を2~100kダルトンとすることができる。
【0042】
本明細書においては、Xである-RCOOR基においては、RをC~Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル又はペンチル、好ましくはメチル基とすることができ、Rを結合、C~Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル若しくはペンチル、又はR2122基とすることができ、式中、R21はアニオンであり、R22はアルカリ金属の群から選択されるカチオンである。
【0043】
好ましくは、基Xは式-RCOORの基であり、式中、Rはメチル基-CH-であり、RはR2122基であり、R21はアニオンであり、R22はアルカリ金属の群から選択されるカチオンであり、好ましくは、基Xは式-CH-COOの基である。
【0044】
本明細書においては、Xである-R(C=O)R10基においては、RをC~Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル又はペンチル、好ましくはメチル基とすることができ、R10を結合、又はC~Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル又はヘキシルとすることができる。
【0045】
本明細書においては、次式-ROSO、-RNSO及び-RSOの1つに対応し、基Yである基においては、Rを結合、C~Cアルキル、好ましくはメチル、エチル、ブチル、プロピル又はペンチル、例えばメチル基とすることができ、Rを結合、C~Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル又はペンチル、好ましくはメチル基とすることができ、Rを結合、C~Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル又はペンチル、好ましくはメチル基とすることができ、R、R及びRを独立に水素原子又はカチオンMとすることができ、例えば、Mをアルカリ金属とすることができる。
【0046】
好ましくは、基Yは式-RSOの基であり、式中、Rは結合であり、Rは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムを含む群から選択されるアルカリ金属である。好ましくは、基Yは-SO Na基である。
【0047】
一般式(I)において「y」で定義された基YによるモノマーAのすべての置換度は、30%~150%、好ましくは約100%とすることができる。
【0048】
本明細書においては、上記置換度の定義においては、「100%の置換度「x」」という用語は、本発明のポリマーの各モノマーAが基Xを統計的に含むことを意味するものとする。同様に、「100%の置換度「y」」という用語は、本発明のポリマーの各モノマーが基Yを統計的に含むことを意味するものとする。100%を超える置換度は、各モノマーが、当該タイプの1個を超える基を統計的に有することを示し、逆に、100%未満の置換度は、各モノマーが、当該タイプの1個未満の基を統計的に有することを示す。
【0049】
ポリマーは、X及びYとは異なるZで表わされる官能化学基を含むこともできる。
【0050】
本明細書においては、基Zは、同じでも異なってもよく、アミノ酸、脂肪酸、脂肪アルコール、セラミド若しくはそれらの誘導体又は標的ヌクレオチド配列を含む群から独立に選択することができる。
【0051】
基Zは、同じでも異なってもよい活性剤を表すこともできる。それらは、例えば、治療薬、診断薬、抗炎症薬、抗菌剤、抗生物質、増殖因子、酵素とすることができる。
【0052】
本明細書においては、基Zは、有利には、飽和又は不飽和脂肪酸とすることができる。それは、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、トランス-バクセン酸、リノール酸、リノールエライジン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、クルパノドン酸又はドコサヘキサエン酸を含む群から選択される脂肪酸とすることができる。好ましくは、脂肪酸は酢酸である。
【0053】
本明細書においては、基Zは、有利には、アラニン、アスパラギン、芳香族鎖、例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロキシン又はヒスチジンを含む群から選択されるL又はD系列のアミノ酸とすることができる。
【0054】
有利には、基Zは、更なる生物学的又は物理化学的性質をポリマーに付与することができる。例えば、基Zは、前記ポリマーの溶解性又は親油性を高め、例えば、組織拡散又は浸透を改善することができる。
【0055】
Zが存在するポリマーは、下式IIに該当する。
AaXxYyZz
式中、A、X、Y、a、x及びyは上で定義した通りであり、zは基Zによる置換度である。
【0056】
本明細書においては、「z」で表される基Zによる置換度は、0~50%とすることができ、好ましくは30%に等しい。
【0057】
基X、Y及びZは、独立にモノマーAに結合することができ、及び/又は独立に互いに結合することができる。基X、Y及びZの少なくとも1個が独立に最初の物とは異なる基X、Y及びZに結合するときには、前記基X、Y又はZの1個はモノマーAに結合する。
【0058】
したがって、基Zは、モノマーAに直接共有結合することができ、又は基X及び/又はYに共有結合することができる。
【0059】
本明細書においては、組成物は、組成物の総重量に対して0.01マイクログラム~100mg重量の濃度の生体適合性ポリマーを含むことができる。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して10マイクログラム~10ミリグラム重量を含むことができる。
【0060】
本明細書においては、組成物は、その投与に応じて処方することができ、及び/又は適合させることができる。例えば、静脈内又は筋肉内投与の場合、組成物は、0.1~5mg/キログラム体重の用量の生体適合性ポリマーを送達するために投与することができ、又は経口投与の場合、組成物は、例えば体重100kgの成体の場合、例えば1日当たり2~5回の均等な摂取量で1日の総量で、例えば1~500mg、例えば10μg~5mg/kgの生体適合性ポリマー、例えば10μg~5mg/kgを、数日から数週間投与することができる。例えば、頭蓋内投与の場合、それは、1~5mlの単回投与、又はミニポンプによる数日間の投与を含むことができ、組成物は、濃度0.001~1mg.ml-1の生体適合性ポリマー、又は舌下投与の場合、例えば、毎日1~5mlを含むことができ、組成物は、濃度0.1~100mg.ml-1の生体適合性ポリマーを含むことができ、又は局所投与の場合、組成物は、0.1~5mgの生体適合性ポリマー/キログラム体重の用量の前記ポリマーを送達するために投与することができる。
【0061】
例えば、経口投与の場合、ポリマーは、溶液状態、例えば、当業者に知られている経口投与に適切な水又は任意の溶媒中とすることができる。組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、又は当業者に知られている経口摂取に適合した任意の他の剤形とすることもできる。それは、例えば濃度0.1mg.ml-1のポリマーを溶液中に含む、体積10~50mlの水溶液とすることができる。例えば、全身投与の場合、ポリマーは、例えば多糖、例えばヘパリンを含む、生理食塩水、例えば、注射用品質の生理食塩水、又は注射に適合した任意の他の形、例えば、グルコース及び/又は当業者に知られている別の適切な賦形剤を含む溶液の溶液状態とすることができる。例えば、ポリマーは、例えば静脈内(IV)及び/又は筋肉内(IM)投与の場合、濃度0.1~5mg.kg-1、好ましくは1~2.5mg.kg-1とすることができる。
【0062】
本発明によれば、組成物は、増殖因子も含むことができる。それらは、細胞増殖を促進又は刺激可能である当業者に知られている任意の増殖因子とすることができる。それらは、例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)、例えば、FGF1又はFGF2、血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)、血小板由来増殖因子(PDGF:platelet-derived growth factor)又はそれらの混合物を含む群から選択される増殖因子とすることができる。本発明によれば、組成物は、10ナノグラム.ml-1~100μg.ml-1の増殖因子を含むことができる。
【0063】
本発明によれば、組成物は、粗製又は増殖因子を多く含む血小板抽出物又は溶解物も含むことができる。それは、例えば、当業者に既知及び/又は市販の任意の血小板抽出物又は溶解物とすることができる。
【0064】
本明細書では「真核細胞」という用語は、当業者に知られている任意の真核細胞を意味するものとする。それは、例えば、哺乳動物の真核細胞、例えば、動物又はヒト真核細胞とすることができる。それは、例えば、その分化段階にかかわらず、任意の真核細胞、例えば、成体又は胎児の真核細胞、胚性幹細胞及び成体幹細胞を含む群から選択される細胞とすることができる。それらは、例えば、臍帯血、骨髄細胞、脂肪組織細胞、間葉細胞からの真核細胞とすることができる。それらは、移植組織(graft)及び/又は器官からの細胞の一群とすることもできる。
【0065】
真核細胞は、例えば、個体に対して異種、同種又は自己の細胞とすることができる。好ましくは、細胞は自己細胞である。
【0066】
それは、多能性若しくは全能性幹細胞、又は分化経路に託された細胞、例えば、間葉幹細胞とすることもできる。それは、胚性幹細胞を除く多能性又は全能性幹細胞とすることもできる。
【0067】
有利なことに、細胞が自己のものであるときには、本発明に係る組成物が調節性、安全性、実現性、効率及び経済性の理由で好ましいこともある。
【0068】
有利には、細胞が自己のものであるときには、それらは、好ましくは、個体から単離され、他の追加なしに除去及び単離後24時間以内に、本発明に係る組成物に使用され、及び/又は処置に使用される。有利なことに、この単回投与によって、規制要件/制約を乗り越え、それに従うことが可能になる。
【0069】
本明細書においては、組成物に含まれる細胞の量を1~5×10細胞とすることができる。
【0070】
有利なことに、本発明者らは、治療が細胞型、その起源、並びに細胞の選択、増幅、調節及び改変に使用される手段と無関係であることを示した。特に、本発明者らは、驚くべきことに、RGTAの投与が有利なことに、特にそれを細胞の投与と組み合わせたときに、細胞に適した微小環境の生成/形成を可能にし、有利なことにRGTAと細胞の相乗的協同作用を可能にし、細胞移植の増加を可能にする限り、本発明がしたがってすべての細胞にそれらの起源及び細胞を分化又は脱分化経路に託す選択操作にかかわらずに適合することを示した。
【0071】
本発明によれば、組成物が、移植組織若しくは移植器官又は移植可能な材料を含むとき、ポリマーと移植組織若しくは器官又は移植可能な材料の投与を同時にすることができる。例えば、移植される器官又は移植可能な材料に、例えば、それを生体高分子を含む溶液に浸漬することによって、又は潅流によって、又は噴霧若しくは当業者に知られている任意の他の適切な方法によって、含浸させることができる。移植可能な材料の場合には、ポリマーは、早ければ移植可能な材料の製造に組み込まれ、有利にはプレインキュベーション又は含浸を可能にすることができる。
【0072】
本発明によれば、含浸時間は数分から数時間、例えば、1分~18時間、5分~16時間、終夜とすることができる。
【0073】
有利なことに、移植組織又は器官に5分を超える時間、例えば16時間含浸させると、含浸は移植片移植の効率も向上させることができる。これは、本発明者らが、驚くべきことに、移植組織及び/又は器官を保存する溶液中のポリマーの存在が有利なことに保護効果及び抗アポトーシス効果を有することを示したからである。
【0074】
有利には、ポリマーを含浸した移植組織、器官又は材料は、移植時又はその後に投与される細胞によるコロニー形成を促進するために、再移植又は移植の前又は後に、増殖因子又は血小板抽出物の投与を受けることができる。
【0075】
本明細書では「医薬組成物」という用語は、当業者に知られている任意の形の医薬組成物を意味するものとする。本明細書においては、医薬組成物は、例えば、例えば局所又は全身注射用の、例えば生理食塩水中の、注射用グルコース溶液中の、賦形剤、例えばデキストランの存在下の、例えば当業者に既知の濃度の、例えば1マイクログラム~数ミリグラム/mlの、注射液とすることができる。
【0076】
医薬組成物は、例えば、液剤、経口発泡性投薬計画剤形、経口散剤、多成分系及び口腔内崩壊ガレヌス剤形を含む群から選択される、経口投与用医薬品とすることができる。
【0077】
例えば、医薬組成物が経口投与用であるときには、それは、溶液、シロップ、懸濁液及び乳濁液を含む群から選択される液剤の形とすることができる。医薬組成物が経口発泡性投薬計画剤形の形であるときには、それは、錠剤、顆粒剤及び散剤を含む群から選択される剤形とすることができる。医薬組成物が経口散剤又は多粒子系の形であるときには、それは、ビーズ剤、顆粒剤、小型錠剤及び微粒剤を含む群から選択される剤形とすることができる。医薬組成物が口腔内崩壊投薬計画剤形の形であるときには、それは、口腔内崩壊錠剤、凍結乾燥ウエハ剤、薄膜剤、咀嚼錠剤、錠剤、カプセル剤又は医用チューインガム剤を含む群から選択される剤形とすることができる。
【0078】
本発明によれば、医薬組成物は、例えばバッカル錠又は舌下錠、ロゼンジ、ドロップ及び噴霧液剤を含む群から選択される、経口投与、例えば頬及び/又は舌下投与用医薬組成物とすることができる。
【0079】
本発明によれば、医薬組成物は、例えば軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、貼剤及び泡剤を含む群から選択される、局所、経皮投与用医薬組成物とすることができる。
【0080】
本発明によれば、医薬組成物は、例えば点鼻薬、経鼻噴霧剤及び経鼻散剤を含む群から選択される、経鼻投与用医薬組成物とすることができる。
【0081】
本発明によれば、医薬組成物は、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内又は髄腔内投与用医薬組成物とすることができる。
【0082】
本発明の組成物は、例えば、用いるガレヌス製剤に応じて、同時の、別々の、又はある期間にわたる逐次的な使用のために、少なくとも1種の別の活性成分、特に別の治療有効成分も含むことができる。この別の成分は、例えば組織病変を有する患者で発症し得る日和見疾患の治療において、使用される活性成分とすることができる。
【0083】
本明細書においては、生体適合性ポリマーと細胞の投与は、同時、連続又は付随することができる。
【0084】
本発明によれば、少なくとも1回の投与を経口的に又は注射によって行うことができる。2回の投与を同様に又は異なって行うことができる。例えば、生体適合性ポリマーと細胞の投与を注射によって行うことができ、生体適合性ポリマーの投与を経口的に行うことができ、細胞を局所注射によって行うことができる。投与は、病変の部位にも左右され得る。
【0085】
本発明によれば、真核細胞の使用、特にその投与は、前記生体適合性ポリマーの最初の投与から5分~1週間後に行うことができる。
【0086】
組織若しくは器官の移植、又はポリマーを予備含浸した移植可能な材料の使用の場合には、細胞の投与は、移植前又はその直後、例えば時間内に行うことができる。
【0087】
本発明によれば、組成物は、例えば、毎日、毎日2回又は毎週投与することができる。それは、例えば、1日1回、1日2回以上投与することができる。
【0088】
本発明によれば、組成物は、例えば、1日~3か月、例えば2か月の期間投与することができる。例えば、組成物は、15日間ごとの投与頻度で3か月間投与することができる。
【0089】
本発明によれば、生体高分子は、例えば、1日~3か月、例えば2か月の期間、例えば1日1回の頻度で、投与することができ、投与される真核細胞は、同じ又は異なる期間、例えば1日~3か月の期間、週1回の頻度で投与することができる。
【0090】
本発明によれば、ポリマーの投与と細胞の投与が連続するときには、各投与の投与計画は、ポリマーの投与に続いて細胞の投与とすることができる。例えば、細胞は、ポリマーの投与後1分~24時間、ポリマーの投与後30分~12時間、ポリマーの投与後45分~6時間、又はポリマーの投与後1時間で投与することができる。
【0091】
本発明によれば、組成物は、血小板抽出物も含むことができる。それは、例えば、哺乳動物への投与に適した当業者に知られている任意の血小板抽出物とすることができる。それは、例えば、市販血小板抽出物、又は文献D R Knightonら、Ann Surg.Sep 1986;204(3):322~330「Classification and treatment of chronic nonhealing wounds.Successful treatment with autologous platelet-derived wound healing factors(PDWHF)」又は文献Everts,P.A.Mら「Autologous platelet gel growth factor release and leukocyte kinetics using three devices」Transf.Med.、2006、16(5)、363~368又は「Is Use of Autologous Platelet-Rich Plasma Gels in Gynecologic,Cardiac,and General,Reconstructive Surgery Beneficial?」Pharmaceutical Biotechnology、2012、Vol.13 No.13)に記載のプロセスによって得られた血小板抽出物とすることができる。それは、例えば、ゲル剤、クリーム剤、噴霧剤の中又は上、及び/又は病変組織中の、例えば局所的に投与することができる、注射することができる、又は様々な担体に堆積することができる、増殖因子活性で強化された血小板溶解物に対応する血小板抽出物とすることができる。本発明によれば、血小板抽出物は、治療される個体に対して自己又は異種である抽出物とすることができる。好ましくは、血小板抽出物は自己抽出物である。それは、例えば当業者に既知及び/又は市販のプロセス及び/又はキットによって、濃縮された血小板抽出物及び/又は溶解物とすることができる。
【0092】
本発明によれば、組成物は、0.1ml~100mlの血小板抽出物及び/又は溶解物を含むことができる。
【0093】
有利には、血小板抽出物は、細胞の移植の助けになる「環境」の形成を促進する増殖因子を含む。これらの因子を血小板抽出物に添加することができ、又は抽出物なしで単独で使用することができる。本発明によれば、FGF1、FGF2、VEGF、TGFベータ1、BMP因子又は別の増殖因子、好ましくは因子FGF1、FGF2、VEGF、TGFベータ1又はBMPを含む群から選択される少なくとも1種の因子を添加することができる。本発明によれば、血小板抽出物に含まれる因子を濃度10ng~100μg/ml抽出物で添加することができる。
【0094】
本発明によれば、組成物投与前に、例えば、病変を再び開くことによって、擦過によって、又はメスを用いた機械的浄化によって、病変組織を「再活性化する」ことができる。再活性化は、例えば、古い創傷、例えば、固定された骨折、古い瘢痕又は慢性創傷に対して行われる。
【0095】
本発明の一主題は、組織病変の予防及び/又は治療用医薬品としてのその適用のための医薬組成物又は皮膚科用組成物でもあり、前記組成物は、式AaXxYy又はAaXxYyZzの生体高分子及び少なくとも1種の血小板抽出物を含む。
【0096】
本発明によれば、血小板抽出物は、上で定義した通りである。
【0097】
本発明によれば、式AaXxYy又はAaXxYyZzの生体高分子は、上で定義した通りである。
【0098】
本発明によれば、医薬組成物又は皮膚科用組成物は、上で定義した通りである。
【0099】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与頻度は、上で定義した通りとすることができる。
【0100】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与の方法及び/又は経路は、上で定義した通りとすることができる。
【0101】
本発明の一主題は、組織病変の予防及び/又は治療用医薬品としてのその適用のための医薬組成物又は皮膚科用組成物でもあり、前記組成物は、式AaXxYy又はAaXxYyZzの生体高分子及び少なくとも1種の増殖因子を含む。
【0102】
本発明によれば、増殖因子は、上で定義した通りである。本発明によれば、式AaXxYy又はAaXxYyZzの生体高分子は、上で定義した通りである。
【0103】
医薬組成物又は皮膚科用組成物は、上で定義した通りである。
【0104】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与頻度は、上で定義した通りとすることができる。
【0105】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与の方法及び/又は経路は、上で定義した通りとすることができる。
【0106】
本発明は、以下のステップを任意の順序で含む、組織病変患者を治療するプロセスにも関する。
i.少なくとも1種の生体適合性ポリマーの投与、及び
ii.少なくとも1種の真核細胞の投与。
【0107】
ここで、投与は、付随して、連続して、又は交互している。
【0108】
生体適合性ポリマーは、上で定義した通りである。
【0109】
真核細胞は、上で定義した通りである。
【0110】
本発明によれば、患者は、任意の哺乳動物とすることができる。それは、例えば、動物又はヒトとすることができる。
【0111】
本発明によれば、投与する真核細胞は、前記患者に対して異種又は同種である細胞とすることができる。
【0112】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与の方法及び/又は経路は、上で定義した通りとすることができる。
【0113】
本発明によれば、細胞の投与の方法及び/又は経路は、上で定義した通りとすることができる。
【0114】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与頻度は、上で定義した通りとすることができる。
【0115】
本発明によれば、真核細胞の投与頻度は、上で定義した通りとすることができる。
【0116】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与と細胞の投与が連続するときには、各投与の投与計画は、生体適合性ポリマーの投与に続いて細胞の投与とすることができる。例えば、細胞は、生体適合性ポリマーの投与後1分~48時間、ポリマーの投与後30分~12時間、ポリマーの投与後45分~6時間、又はポリマーの投与後1時間で投与することができる。
【0117】
有利には、真核細胞は間葉成体幹細胞である。
【0118】
本発明は、以下のステップを任意の順序で含む、組織病変患者を治療するプロセスにも関する。
i.少なくとも1種の生体適合性ポリマーの投与、及び
ii.少なくとも1種の血小板抽出物及び/又は溶解物の投与。
【0119】
ここで、投与は、付随して、連続して、又は交互している。
【0120】
生体適合性ポリマーは、上で定義した通りである。
【0121】
血小板抽出物及び/又は溶解物は、上で定義した通りである。
【0122】
本発明によれば、患者は、任意の哺乳動物とすることができる。それは、例えば、動物又はヒトとすることができる。
【0123】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与の方法及び/又は経路は、上で定義した通りとすることができる。
【0124】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与頻度は、上で定義した通りとすることができる。
【0125】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与と血小板抽出物及び/又は溶解物の投与が連続するときには、各投与の投与計画は、生体適合性ポリマーの投与に続いて血小板抽出物及び/又は溶解物の投与とすることができる。例えば、血小板抽出物及び/又は溶解物は、生体適合性ポリマーの投与、例えば局所投与、又は注射の後、すぐに、すなわち同時に、又は数分、好ましくは10分~数時間、例えば1分~120分、好ましくは10~60分で、例えば経口生体適合性ポリマーの投与後、数時間、好ましくは4時間~24時間後に、投与することができる。
【0126】
本発明は、以下のステップを任意の順序で含む、組織病変患者を治療するプロセスにも関する。
i.少なくとも1種の生体適合性ポリマーの投与、及び
ii.少なくとも1種の増殖因子の投与。
【0127】
ここで、投与は、付随して、連続して、又は交互している。
【0128】
生体適合性ポリマーは、上で定義した通りである。
【0129】
増殖因子は、上で定義した通りである。
【0130】
本発明によれば、患者は、任意の哺乳動物とすることができる。それは、例えば、動物又はヒトとすることができる。
【0131】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与の方法及び/又は経路は、上で定義した通りとすることができる。
【0132】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与頻度は、上で定義した通りとすることができる。
【0133】
本発明によれば、生体適合性ポリマーの投与と前記少なくとも1種の増殖因子の投与が連続するときには、各投与の投与計画は、生体適合性ポリマーの投与に続いて前記少なくとも1種の増殖因子の投与とすることができる。例えば、前記少なくとも1種の増殖因子は、生体適合性ポリマーの投与、例えば局所投与、又は注射の後、すぐに、すなわち同時に、又は例えば1分~数時間、例えば1分~120分、好ましくは10~60分で、経口生体適合性ポリマーの投与後、数時間、好ましくは4時間~24時間後に、投与することができる。
【0134】
換言すれば、本明細書では組成物に言及するものの、組成物の化合物の各々は、(例えば、単一組成物又は2種の組成物として)別の化合物と同時に投与することができ(これらの組成物の各々は上記成分の1種以上を含み、化合物又は組成物(単数又は複数)の各々の投与の方法は、同じでも異なってもよい)、又は互いに無関係に、例えば連続的に、例えば生体適合性ポリマーの独立した投与と真核細胞の独立した投与で、投与することができ、これらの投与は、1人の同じ患者に、同時に、連続的に又は交互に、上記順序又は別の順序で、行われることが明瞭に理解される。これらの個々の投与は、互いに無関係に、又は関連して(組成物又は同時投与)、同じ又は異なる投与方法(注射、摂取、局所適用など)によって、週1回以上、連続又は不連続の1週間以上、行うことができる。
【0135】
本発明の一主題は、以下を含む、組織病変の予防及び/又は治療用医薬キットでもある。
i.生体適合性ポリマー、及び
ii.少なくとも1種の真核細胞。
【0136】
生体適合性ポリマーは、上で定義した通りである。
【0137】
真核細胞は、上で定義した通りである。
【0138】
本発明の一主題は、以下を含む、組織病変の予防及び/又は治療用医薬キットでもある。
i.生体適合性ポリマー、及び
ii.少なくとも1種の血小板抽出物及び/又は溶解物。
【0139】
生体適合性ポリマーは、上で定義した通りである。
【0140】
抽出物及び/又は溶解物は、上で定義した通りである。
【0141】
本発明の一主題は、組織病変の治療用医薬品を製造するための、
i.生体適合性ポリマー、及び
ii.少なくとも1種の増殖因子
を含む医薬組成物の使用でもある。
【0142】
生体適合性ポリマーは、上で定義した通りである。
【0143】
増殖因子は、上で定義した通りである。
【0144】
この実施形態においては「医薬品」という用語は、上で定義した医薬組成物を意味するものとする。
【0145】
有利なことに、本発明者らは、RGTAと数分から数日の一定期間後の細胞の逐次投与が、それらの性質及び起源にかかわらず、有利なことに、予想外に、前記細胞の機能移植又は移植片移植の程度を増進できることを示した。さらに、本発明者らは、上記利点も、使用される細胞の起源、発生段階及び/又は調製方法にかかわらず認められたことも示した。
【0146】
有利なことに、本発明は、したがって、先行技術において真の持続的な要求が存在する、複雑な技術的問題の一般的な単純な答えを提供する。それは、特に、当業者が起源にかかわらず任意のタイプの組織病変、及び任意のタイプの組織又は器官にも容易に外挿することができる下記実施例において非限定的に説明される。
【0147】
特に、本発明者らは、本発明が、特に、病変部位のレベルにおける細胞及び細胞外基質の破壊を含む組織病変のある種の共通特性に基づいて、すべての組織病変に一般化され得ることを示した。
【0148】
本発明の一主題は、生体適合性ポリマーを含む溶液中での移植組織及び/又は移植される器官の含浸を含む、移植片を調製する生体外プロセスでもある。
【0149】
本発明の一主題は、移植組織及び/又は器官を生体外で調製するための、上で定義した式AaXxYy又はAaXxYyZzの生体高分子の使用でもある。
【0150】
生体適合性ポリマーは、上で定義した通りである。
【0151】
本発明によれば、含浸は、当業者に知られている任意のプロセスによって行うことができる。それは、例えば、器官を浸漬すること、及び/又はそれを生体高分子を含む溶液に浸漬すること、又は潅流、又は噴霧を含むことができる。
【0152】
本発明の一主題は、移植可能な生体材料をインビトロ及び/又は生体外で調製するための、上で定義した式AaXxYy又はAaXxYyZzの生体高分子の使用でもある。
【0153】
例えば、移植可能な生体材料の場合、生体適合性ポリマーを、例えば組織又は器官の、生体材料の製造後の含浸によって、添加することができる。それは、例えば、生体材料の製造中に最初から添加することもでき、例えば、下で定義される式AaXxYy又はAaXxYyZzの生体高分子を、例えば3D印刷と同様に、連続層で添加することができる。
【0154】
本明細書では「移植可能な生体材料」という用語は、当業者に既知及び/又は市販の任意の移植可能な生体材料を意味するものとする。移植可能な生体材料は、例えば、生分解性、架橋又は非架橋、好ましくはコロニー形成可能などの任意の性質の、例えば、適合性の移植可能な材料とすることができる。移植可能な生体材料は、タンパク質、例えば、コラーゲン、フィブリン、多糖、例えばデキストラン、キチン、ヒアルロン酸、アルギナート、セルロース及びそれらの誘導体の架橋に基づく移植可能な生体材料、並びにグリコール酸、乳酸、リンゴ酸又は例えば、温度制御可能な重合によって、又は酵素、照射若しくは別のプロセスによって、液体-ゲル転移を起こし得るポリマーに基づく生分解性及び生体適合性コポリマーとすることができる。それは、例えば、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンシリコーンに基づく、又は無機塩、例えばリン酸カルシウム若しくはヒドロキシアパタイトに基づくポリマーとすることができる。移植可能な生体材料は、例えば、セラミック、金属、例えば、アルミニウム、スチール、チタレン(titalen)及び/又はそれらのアロイに基づく、又はそれらでできた材料とすることができる。有利なことに、材料がセラミック及び/又は金属に基づく、又はそれらでできた材料であると、含浸によって、材料の外面を被覆することができ、含浸は、有利には、噴霧によって行うことができる。
【0155】
本発明によれば、含浸溶液は、濃度0.1μg.ml-1~1mg.ml-1の上で定義した生体適合性ポリマーを含むことができる。
【0156】
本発明によれば、含浸時間を5分~24時間とすることができる。有利には、含浸時間は、移植可能な移植組織及び/又は器官及び/又は材料の構造に依存し得る。
【0157】
有利なことに、含浸は、移植片移植の効率を向上させることもできる。実際、本発明者らは、驚くべきことに、移植組織及び/又は器官を保存する溶液中のポリマーの存在が有利なことに保護効果及び抗アポトーシス効果を有することを示した。
【0158】
含浸は、有利には、上述したように、生体適合性ポリマーの含浸後、増殖因子及び/又は血小板抽出物の含浸によって完了することができる。本発明によれば、増殖因子及び/又は血小板抽出物含浸時間を5分~24時間とすることができる。
【0159】
含浸は、有利には、生体外及び/又はインビトロ含浸、及び/又は生体適合性ポリマーを含浸させた移植可能な生体材料上の細胞の堆積によって完了することができる。
【0160】
本発明によれば、細胞は、上で定義した通りである。
【0161】
本発明によれば、細胞の含浸及び/又は堆積のための溶液は、濃度数千から数百万の細胞、好ましくは10000~1000000の細胞を含むことができる。
【0162】
本発明によれば、細胞の生体外及び/又はインビトロ含浸及び/又は堆積の時間は、5分~24時間とすることができる。
【0163】
本明細書においては、生体適合性ポリマーを含浸させた移植可能な生体材料上の細胞の含浸及び/又は堆積は、当業者に知られている任意の適切なプロセスによって行うことができる。
【0164】
さらに、本発明によれば、移植可能な生体材料の含浸は、有利には、少なくとも1種の増殖因子の含浸による、生体適合性ポリマーの含浸、及び/又は細胞の生体外及び/又はインビトロ含浸又は堆積後に完了することができる。
【0165】
本発明によれば、少なくとも1種の増殖因子を含浸させた移植可能な生体材料上の含浸は、当業者に知られている任意の適切なプロセスによって行うことができる。
【0166】
本発明によれば、増殖因子は、上で定義した通りである。
【0167】
本発明によれば、少なくとも1種の増殖因子の含浸溶液は、濃度10ng/ml~100μg/mlの増殖因子を含むことができる。
【0168】
本発明によれば、血小板抽出物及び/又は血小板溶解物は、上で定義した通りである。それは、例えば、当業者に知られている市販血小板濃縮キット、例えば、Curasan(登録商標)、Plateltex(登録商標)、GPS(登録商標)II及びRegenLab(登録商標)キットの使用による、例えば5~100mlの血液の、例えば濃縮血小板抽出物とすることができる。
【0169】
本発明によれば、含浸溶液は、濃度0.1~6mlの血小板抽出物を含むことができる。
【0170】
別の利点は、添付図によって示され、例として示された、下記実施例を読むことによって、当業者に更に想起されるであろう。
【実施例
【0171】
実施例1:RGTAの調製及び投与の方法:
RGTA合成は、先行技術、例えば、「PROCEDE DE SULFONATION DE COMPOSES COMPRENANT DES GROUPEMENTS HYDROXYLES(OH) LIBRES OU DES AMINES PRIMAIRES OU SECONDAIRES[PROCESS FOR SULFONATION OF COMPOUNDS COMPRISING FREE HYDROXYL(OH) GROUPS OR PRIMARY OR SECONDARY AMINES]」と題する特許、及び参考文献:Yasunori I.ら、Biomaterials 2011、32:769e776)、及びPetit E.ら、Biomacromolecules.2004 Mar-Apr;5(2):445~52にも広範に記載されている。
【0172】
下記実施例においては、幾つかの公知の記述されたRGTAを使用した。そのうち、OTR4120(Khammari-Chebbiら、J Fr Ophtalmol.2008 May;31(5):465~71に記載)及びOTR4131(Frescaline G.ら、Tissue Eng Part A.2013 Jul;19(13~14):1641~53.doi:10.1089/ten.TEA.2012.0377に記載)は市販されている。さらに、化合物OTR4131は、脂肪酸であるZラジカルを含む化合物、すなわち、Virginie Coudryら「Long-Term Follow-up of Superficial Digital Flexor Tendonitis Treated by a Single Intralesional Injection of a ReGeneraTing Agent in 51 Horses」Journal of Equine Veterinary Science 34(2014)1357~1360に記載の酢酸であり、特許文献2及び米国特許第8790631号に記載のZがフェニルアラニンなどのアミノ酸である化合物も下記実施例に使用した。
【0173】
下記実施例においては、投与を上述したように行った。換言すれば、RGTAを細胞と単一の溶液中で混合しないときには、前記RGTAをこの化合物の公知の投与方法に従って投与した。
【0174】
有利なことに、RGTAを独立した組成物を介して投与するときには、得られる効果の1つは、RGTAと細胞の組合せによってより効率的で相乗的な組織修復及び再生を可能にする選択された細胞による移植、コロニー形成及び増殖を促進するために治療される組織又は器官の調製であり得る。
【0175】
投与の頻度は、コロニー形成の成功、及び細胞の注射/投与の必要数、移植前の微小環境の調製に要する時間に応じて、毎週、15日ごと、更には毎月、まれに数か月の全期間、1回又は繰り返しとすることができる。
【0176】
投与するRGTAの濃度及び用量は、局所又は全身投与剤形、頻度、治療する組織、器官又は領域、及び病変の体積又は表面積に依存した。
【0177】
下記実施例においては、投与を経口的に行うときには、RGTAは、水溶液、又は任意の他の経口投与剤形だけでなく、錠剤、ゲルカプセル剤、又は経口摂取に適合した任意の他の剤形とすることができる。さらに、有利なことに、経口投与RGTAは、酸及び消化液による分解に対して顕著な耐性を示す。有利には、生成物は、食味がなく、水に完全に可溶であり、好ましい摂取量は、水溶液の形で、体積10~25ml及び濃度0.1mg.ml-1であり、量は1回の摂取当たり1~2.5mgであり、1日2~5回である。大部分の実施例においては、これらの摂取量は、朝の食前及び夕方の就寝時の、患者体重50~100kgの場合であり、用量及び頻度はことによると変動し、したがって、全体として、毎日の摂取量は1~500mg/日であった。この投与の期間は、有害作用が認められない数か月とすることができる。特に、個体による1年を超える25mg/日の摂取は、障害も注目すべき副作用も誘発しない。
【0178】
病変を修復及び再生するための細胞による消化管の治療の場合には、RGTAの量は、有利なことに削減することができる。これは、RGTA分子が、有利なことに病変組織と直接的に再集合し、例えば、微小環境を再構築し、有利なことに細胞の移植を改善し、適切な場合は、それらの増殖の促進を可能にするからである。消化管の治療中に使用される用量は、例えば、100μg.ml-1/日で1~50mlとすることができる。それらは、例えば、胃潰瘍又は消化性潰瘍の治療の場合には、例えば、文献Meddahiら、J Biomed Mater Res 60:497~501 2002に記載のものと同じ又は類似の用量とすることができ、クローン病の治療の場合には、文献Alexakisら、Gut 2004;53:85~90に記載のものと同じ又は類似の用量とすることができ、照射後の病変組織の場合には、文献Alexakisら、FASEB J.2001、15、1546~1554に記載のものと同じ又は類似の用量とすることができる。
【0179】
下記実施例においては、投与を全身注射によって行うときには、RGTAは、好ましくは、注射品質の生理食塩水溶液、又は注射に適合した任意の他の形、特にグルコース若しくはヘパリンなどの多糖では通例の別の賦形剤を含む溶液であり、又は別の活性成分との相互作用のリスクが評価されているという条件で、別の性質を有する治療用製品と混合された。RGTAを濃度0.1~5mg.kg-1、好ましくは1~2.5mg.ml-1で静脈内(IV)又は筋肉内(IM)に使用した。この注射経路の場合、注射は、単回、毎日又は毎週注射とすることができる。
【0180】
下記実施例においては、可能であれば、病変組織又は部位における又はその付近における局所投与が好ましい。特に、この投与経路は、内視鏡的な血管若しくは心臓アクセスを有する粘膜、例えば、頬、膣、尿道、消化粘膜に好ましく、及び/又は骨髄、網膜周囲領域、脳室内領域、肺気道など、又は直接アクセスをもたらす手術中、又はカテーテル、針若しくは適切な内視鏡を用いた別の組織若しくは器官を直接介して、アクセスがより困難であるが直接到達することができる領域において好ましかった。
【0181】
RGTAは、単離細胞、シート状細胞、又は既存若しくは将来の細胞コロニー形成の担体である移植材料中で含浸させた細胞の移植の場合には、噴霧剤として組織表面に投与することもできる。
【0182】
気道に関して、投与は、吸入によることも予見することができる。
【0183】
消化管、子宮筋又は靱帯の粘膜及び/又は壁に関して、直腸又は膣経路は、アクセス可能なときに好ましかった。
【0184】
眼組織の治療の場合、好ましい投与剤形は、例えば、例えば角膜の治療の場合、洗眼液であり、例えばデスメ膜の治療において、眼球の底部を覆う組織の治療において、例えば視覚障害の治療の場合、又は例えば聴覚に関連する細胞の病変の治療の場合、例えば蝸牛繊毛細胞の移植の場合、経角膜注射であった。
【0185】
実施例においては、局所投与又は注射は、単回、毎日又は毎週とすることができ、そのときの用量は病変の表面積又は体積に関連し得る。特に、実施例においては、RGTA濃度は、好ましくは、好ましい濃度である100μg/mlであり、使用される体積は、病変表面積を覆うように、又は病変の体積を含浸させるように、選択される。すなわち、組織若しくは器官又は部位へのRGTA0.1~0.5mlの病変周囲の注射は、5~100倍の体積の組織を含浸させることができる。表面への適用又は噴霧剤としての適用においては、RGTAが吸着によって浸透する場合、病変域の被覆が十分であった。したがって、病変から距離5cmで各々140mlの3、4回の「噴霧」が、表面積10cmを含浸させるのに十分であり、あるいは数ミリリットルのクリーム又はゲル若しくは軟膏が病変又は周辺に広がり、したがってRGTAにアクセスすることができる。クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、泡剤、乳濁液剤、粉末ペースト剤などのガレヌス製剤は、当業者に既知のものであり、多糖、例えばヒアルロン酸に適合したそれらの親水性及び保湿性のために好ましくは選択される。
【0186】
実施例においては、使用するRGTAの別の投与方法は、例えば、吻合領域と移植領域の両方における、腎臓、肝臓、心臓、肺、皮膚、角膜、鼓膜、筋肉、神経、腱、靱帯、骨、血管又は腸、結腸、膀胱などの組織又は器官の移植の場合、組織の含浸のそれであるが、このリストは網羅的なものではない。すべての組織及び移植組織に対して使用することができるこの実施形態においては、移植される器官は、例えば、それをRGTAの溶液に浸漬することによって、又は潅流によって、又は噴霧若しくは当業者に知られている任意の他の方法によって、含浸させることができる。有利なことに、組織の含浸は、上述したように、有利なことに、組織微小環境を再構築可能にする。実際、RGTAは、有利なことに、病変後に利用可能であって移植組織の収集又は移植レシピエントの用意によって誘導される、ヘパラン結合部位に特異的に結合する。有利なことに、この結合は、細胞によるコロニー形成を促進する微小環境の再構築を可能にする。RGTAの好ましい濃度は、0.01~100マイクログラム(mg)/mlであった。含浸時間は、数分で十分なので、短かった。有利なことに、数時間又は1日若しくは数日の含浸は、先行技術に記載のように、RGTAを保存溶液に添加することができ、RGTAが保護剤及び抗アポトーシス剤であることを立証できるので、手順の単純化を可能にする(Barritault D.、Caruelle J-P.BIP121532、「POLYMERES BIOCOMPATIBLES,LEUR PROCEDE DE PREPARATION ET LES COMPOSITIONS LES CONTENANT[BIOCOMPATIBLE POLYMERS,PROCESS FOR PREPARING SAME AND COMPOSITIONS CONTAINING SAME]」、及びYue X-L、Lehri S、Li P、Barbier-Chassefiere V、Petit V、Huang Q-F、Albanese P、Barritault D、Caruelle J-P、Papy-Garcia D及びMorin C.「Insights on a new path of pre-mitochondrial apoptosis regulation by a glycosaminoglycan mimetic」、Yue X-Lら、Cell Death and Differentiation、2009、1~12)。次いで、移植前又は後に、所望の特異性の細胞を適宜多く含む溶液又は懸濁液に組織をさらした。増殖因子を多く含む血小板抽出物又は溶解物をこの技術に追加することができる。
【0187】
移植前又は後に、自己細胞に移植組織を添加し、有利なことに、宿主-移植組織接合領域のコロニー形成を容易にし、移植片移植を促進することができる。この方法によって移植片移植を可能にし、壊死を予防し、機能回復を増大させる。
【0188】
実施例においては、血小板抽出物を、RGTA投与後に単独で投与し、又はRGTAと一緒に投与した。この場合、生理食塩水1mlに懸濁された10個の血小板から得られた血小板の溶解物がトロンビンの存在下に置かれるようなRGTA/PRP抽出物比で、又は100mgのRGTAで、混合物を調製した。血小板脱顆粒の最後に、溶液を低速で遠心分離した。次いで、血小板因子及びRGTAを含む上清を病変部位に投与した。
【0189】
別の一実施形態においては、RGTA単独、又は血小板抽出物(PRP)若しくは単離因子と混合されたRGTAに治療細胞を注射した。
【0190】
実施例においては、遅くとも細胞の最初の投与の時間に、又は好ましくはその数時間若しくは数日前に、RGTAの投与を行った。すなわち、RGTAの経口摂取の場合には、細胞療法の1週間前の毎日1回以上の摂取は、最終組織再生結果を増加させることが認められ、そのときの好ましい用量は、25mlのRGTA OTR4120を100mg/mlで朝の食前及び夕方の就寝前に少なくとも1週間飲むことであった。RGTAのIV又は局所注射のときには、細胞療法をRGTA投与後の時間内に行うことができた。
【0191】
後述する実施例においては、細胞は自己由来であり、好ましくは、それらが採取された日と同じ日に投与される。
【0192】
実施例2:ネズミモデルにおけるRGTA及び間葉幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)の投与による組織病変の処置の実施例
本実施例においては、使用したマウスは、10匹のマウスの7群に分割されたCharles Riverからの70匹の10週齢雌性(C57/BL6)マウスであり、先行技術において認められたマウスモデルに対応する。
【0193】
皮膚創傷は、マウスの背中に(臨床的に生検で使用される)直径6mmの穿孔器を用いて付けられ、次いで創傷を戸外で放置した。4つの創傷を各動物に付けた。
【0194】
使用したポリマーはOTR4120であり、それを皮下(SC)注射によって(正反対の)2箇所において25マイクロリットル(μl)の溶液の割合で100μlで投与した。「A protocol for isolation and culture of mesenchymal stem cells from mouse bone marrow」、Soleimani M、Nadri S.Nat Protoc.2009;4(1):102~6に記載されたものなどの従来の手順に従って単離された骨髄(脛骨)由来の間葉幹細胞(MSC)を、リン酸緩衝食塩水PBSに濃度1×10細胞/mlで懸濁させ、1つの創傷当たり50μlの2回の注射の割合で(対称的に、RGTAに直交する)2箇所に様々な回数で注射し、次いで、創傷を傷害後3、5、7及び10日目に測定した。
【0195】
実験中、各マウスに幾つかの創傷を作り、以下を比較した。
- 創傷に対して正反対のRGTAの2回の注射、
- 創傷に対して正反対のMSCの2回の注射、及び
- RGTAとMSCをつなぐ4つの主要な箇所における4回の注射。
【0196】
マウスの種々の群を上記プロセスに従って投与した組成物によって定義し、以下に詳細に記述する。
- 群1 対照(プラセボ):創傷/病変後15分以内に生理食塩水の投与。
- 群2 MSCの投与:傷害から24時間後にRGTA注射部位と反対の対称的な2箇所における1回の投与当たり百万個のMSC。
- 群3:傷害後のRGTAの投与。
- 群4:MSCと混合されたRGTAの投与(同時注入)。
- 群5:傷害後のRGTAの投与、続いて5分後のMSCの投与。
- 群6:傷害後のRGTAの投与、続いて6時間後のMSCの投与。
- 群7:傷害後のRGTAの投与、続いて12時間後のMSCの投与。
- 群8:傷害後のRGTAの投与、続いて24時間後のMSCの投与。
【0197】
下表に、各動物で処置に従って%単位で測定された創閉鎖動力学に関する結果を要約する。時間ゼロでは、病変の表面積は、各動物で定義上100%であり、創傷が閉じると、値は0%に等しい。
【0198】
【表1】
【0199】
表1によれば、MSC及びRGTAの投与は、組織修復の改善を可能にし、特に治癒の著しい加速を可能にする。特に、RGTAから24時間後に細胞を投与すると、RGTA単独又はMSC単独で得られるよりも創傷の閉鎖をはるかに良好にすることができる。
【0200】
同腹のマウスの脂肪細胞由来の細胞を用いて類似の効果が得られた。
【0201】
臨床実務で観察された本発明の実施例
下記の臨床実務で行われた多数の実施例は、本発明の効果を説明するものである。その市販形態OTR4120又はCACIPLIQ(登録商標)のRGTA製品は、容易に入手可能である。一方、客観化は不可能であり、臨床観察のみが本発明の効果を証明するものである。
【0202】
実施例3:慢性創傷治癒におけるRGTA及び自己間葉幹細胞(MSC)を用いた併用治療の効果
これらの実施例においては、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、虚血性潰瘍、褥瘡、火傷、移植片移植などの様々な病因の種々の慢性創傷を有する患者が、数か月の治療不全を経験している。製造者の推奨に従ってCACIPLIQ(登録商標)(RGTA OTR4120)を用いた局所療法を含めて、幾つかの処置が試みられたが、成功しなかった。
【0203】
この臨床医は、RGTA技術を血小板抽出物と組み合わせるのにも、又は同意患者の胸骨由来の骨髄5mlを採取することによって得られた自己MSCを用いて細胞療法を行うのにも、使用された。MSCについて記述された技術に従って濾過し、遠心分離によって濃縮した試料を、生理食塩水1.5mlに懸濁させ、細胞溶液を創傷の端部に皮下注射し、創傷の中央にも注射した。全部で、潰瘍の周囲に(潰瘍を時計の方位になぞらえ、時間の各位置で注射するイメージに従って)0.1mlの約12回の注射を行った。この臨床医によれば、RGTA単体又は細胞療法単独では、創傷治癒できなかった。
【0204】
RGTAと細胞の本発明に係る併用投与も行った。CACIPLIQ(登録商標)をCACIPLIQ製品に推奨された手順に従って局所適用した。すなわち、CACIPLIQ(登録商標)(RGTA OTR4120)100μlを含む5mlの溶液を15×15cm圧迫ガーゼに注ぎ、含浸させた圧迫ガーゼを、十分清潔にした創傷に5分間適用し、次いで除去した。次いで、MSCをRGTA適用後1時間以内に上述したように(実施例1)注射した。次いで、CACIPLIQ(登録商標)を週2回局所投与した。数名の患者では、第2の骨髄試料を3週間後に採取し、患者を再度MSC注射により前のように処置した。すべての潰瘍の閉鎖が6週間未満で認められ、結果は極めて急激であった。
【0205】
CACIPLIQ(登録商標)(RGTA)の注射、次いで細胞の試料採取後1時間(細胞を調製する時間)以内の細胞の注射によって、別の一連の臨床試験を別の患者でも行った。すると、すべての患者が1か月未満で完全に治癒することができ、結果は更に驚くべきものであった。さらに、彼は、前記創傷が改善の徴候なしに数か月続いたものであったにもかかわらず、これらの患者の一部がそれらの創傷の閉鎖を15日で経験したことも述べた。こうした速さは、適用した処置にかかわらず、特にCACIPLIQ(登録商標)単独又はMSC単独による処置中には、この臨床医によって認められなかった。
【0206】
したがって、この実施例は、本発明に係る組成物が、有利なことに、また驚くべきことに、組織病変、特に慢性創傷を効果的に治療することができ、有利なことに治癒をかなり加速できることを明瞭に示している。
【0207】
さらに、この実施例は、本発明に係る組成物が、先行技術において解決策がなかった問題に新規な解決策を提供することを明瞭に示している。
【0208】
さらに、より良好でないとしても類似の効果が、RGTA、PRP及び細胞の同時投与によって患者で認められた。好ましい一実施形態においては、RGTAの投与に続いてPRP、次いで細胞を注射し、前記投与は、調節上の理由により、同じ操作期間中に行われた。RGTAを単独で(100mg/mlのOTR4120 1ml)、PRP(患者からの血液試料からの血小板の溶解物に由来する、例えば50ml)と一緒に又はそれに続いて、例えば、ただしこれに限定されないが、様々な組織源からの、間葉自己細胞と一緒に又はそれに続いて、投与した。
【0209】
別の一実施形態においては、間葉幹細胞の試料を、処置する患者の脂肪組織から脂肪吸引によって採取した。MSCを単離する方法は、上記実施例1に記載の方法と同じであった。
【0210】
本発明に係る組成物を用いた処置の別の一実施例においては、患者は、大きいつま先を含めた足の下部の一部を覆い、つま先の下部の少なくとも半分に壊死の可視領域を含む、深い創傷を起こした。診察室では分解の強い匂いがした。患者の胸骨からの骨髄に直接由来する間葉細胞合計1mlの場合の創傷周囲の数箇所における0.1mlの注射を用いた細胞療法による第1の処置は、失敗し、さらに創傷の状態が悪化した。CACIPLIQ(登録商標)のみの局所投与による第2の処置も創傷を改善できず、より大きな劣化を予防し、創傷の進行及び増悪に関して現状を「維持」し、即時の切断を回避できるにすぎなかった。これらの失敗の後、つま先のまだ健常な領域と壊死領域の間の接合部において0.1μg.ml-1~100μg.ml-1のRGTA(CACIPLIQ)を5箇所に0.5ml注射し、1時間後、胸骨の穿刺による細胞0.5mlの更なる試料に直接由来する細胞を各0.1mlで5回注射した。本発明に係る組成物の投与後、創傷の軽減が認められ、切断を回避することができ、創傷の完全な回復に向かった。特に、壊死領域が完全に除去され、次いで創傷が完全に覆われるまで、創傷に隣接するまだ健常な組織に由来する芽(budding)で置換された。この実施例では、単回投与の連続(RGTA、次いで間葉自己細胞)が、この患者の処置に十分であり、前記患者の創傷を閉鎖することができた。
【0211】
実施例4:骨組織治癒におけるRGTAと細胞療法を用いた併用治療の効果
この実施例においては、癒着不良骨折配置(non union fracture placing)の処置を本発明に係る組成物を用いて行った。
【0212】
同様に、先行技術は、すなわち、細胞療法と一緒のRGTAの投与の無効な制止的な組合せを記述し、先行技術において行ったが、数か月後に骨折の改善を得ることはできなかった。開放創の結果は、治癒プロセスの著しい加速を得ることを可能にした。
【0213】
RGTA単体の適用によっても、又は上記技術の手順、若しくはHernigou P、Homma Y、Flouzat-Lachaniette CH、Poignard A、Chevallier N、Rouard H.「Cancer risk is not increased in patients treated for orthopaedic diseases with autologous bone marrow cell concentrate」J Bone Joint Surg Am.2013;95:2215~21に記述されたものに従った、骨髄由来の細胞の投与後でも、うまく改善しなかった脛骨の癒着不良骨折患者。
【0214】
RGTA単独での処置にも骨髄から直接採取された自己細胞による処置にも反応しなかった患者を本発明に係る組成物で処置した。驚くべきことに、予想外に、特に先行技術の教示に照らして、本発明に係る組成物の使用、特にRGTAと骨髄由来の細胞の組合せは、これらの患者における治癒プロセスを起動させることができ、処置が単独ではうまく得られなかったものを得ることができ、したがって本発明の効果を示している。特に、治療不全を経験した3名の患者は、本発明に係る組成物で処置され、この二重処置の恩恵を受けることができた。これらの例では、癒着不良の領域における局所注射による1mlのRGTA、及び患者の胸骨の穿刺によって採取され、他の処理ステップなしに癒着不良骨折の領域に再注入された、1mlの間葉細胞の投与から1時間後に、骨髄由来の細胞を投与した。
【0215】
血小板抽出物を更に含む組合せも実施し、それをRGTAと細胞の投与の間に使用すると、優れた結果をもたらす。特に、RGTAと1時間後のPRP、次いで細胞の投与によって極めてポジティブな結果が得られた。
【0216】
この別の実施例においては、骨の維持に対する本発明に係る組成物の効果、及び大腿骨頭の虚血性壊死に対する作用も検討した。RGTA及び細胞、又はRGTA、PRP及び細胞を用いた処置を行った。かなりの疼痛を引き起こす強度の壊死前に初期段階の大腿骨頭虚血の症例を呈した患者の進行が始まった。本発明に係るRGTA及び細胞を用いた処置によって、大腿骨頭の破壊を予防することができ、プロテーゼを移植するために外科的処置を行う必要性を阻止することができた。処置は、病変に近い骨膜虚血領域における10μg.ml-1のRGTA OTR4131 1mlの局所注射と、その30分後の、同じ日に腸骨窩から採取された骨髄由来の自己細胞5mlの局所注射からなった。
【0217】
別の例においては、PRPを用いた同時処置を行った。PRPを通常の方法に従って末梢血10mlの試料から調製し、試料の細胞の数分前に局所注射した。これら2つの処置によって得られた結果は、大腿骨頭の維持を示した。既に始まった組織壊死を呈するこれらの患者の数名においては、壊死が完全に消失し、壊死組織の再生及び置換のプロセスを示唆していることに留意されたい。RGTAと自己細胞の組合せによって、有利なことに、PRPの注射によって改善される、相乗的な驚くべき効果を有するこの再生を得ることができる。この実施例では、感染後の骨壊死の場合における骨破壊の治療における本発明に係る組成物の効果を検討した。
【0218】
骨組織破壊は、通常は長期間にわたって抗生物質で処置される感染性細菌起源の骨髄炎に続く慢性創傷の処置の頻繁な結果及び合併症である。本発明に係る組成物/方法を使用し、骨組織を保持し、再編成することができた。細胞療法によって補充されたRGTAの相乗作用によって、RGTA単独又は細胞療法単独では認められなかった病変骨組織の再生が可能になった。壊死領域周囲の健常組織部における0.1mlのCACIPLIQ(OTR4120 100μg.ml-1)の数回の局所注射と、それに続く他の調製なしに患者の胸骨から採取された同じ体積の間葉細胞の注射によってこうして処置された数名の患者は、こうして、骨組織を完全に破壊される前に回復することができ、それはこの療法なしでは不可能であると思われた。この処置は、抗生物質処置を維持しながら施され、しかし、複合的な骨再成長は認められず、処置が保持又は回復さえ可能にするが、完全に破壊された骨の無からの再成長を可能にすることはないことに留意されたい。
【0219】
実施例4:本発明に係る組成物の一例による関節及び腱病変の処置
先行技術は、スポーツ及び競走馬における腱及び関節病変の治療におけるRGTA単体、特にOTR4131の注射の効果を記述している(Coudry Vら、Journal of Equine Veterinary Science、2014、34、1357~1360ページ、David Carnicer、研究報告書「Preliminary report:ultrasonographic evolution of tendon lesions treated with RGTA in horses」ecole nationale veterinaire de [national veterinary school of] Maison Alfort)。細胞療法、特にウマの腸骨窩又はより一般的には胸骨から採取された間葉細胞の使用の場合も同じである(Pechayre M.及びBetizeau C.S0704、AVAC Conference、2011年12月2~4日.Lyon annual conference)。
【0220】
PRPは、同じ徴候にも使用された(http://fr.slideshare.net/dvmfun/platelet-rich-plasma-prp-therapy)。
【0221】
本発明に係るRGTAと細胞、RGTAとPRP、又はRGTA、PRP及び細胞療法を組み合わせて処置されたウマを用いて、細胞のみを用いた処置と比較して、比較研究を行った。
【0222】
この実施例においては、ウマは、腱病変(SDF腱のレベル)又は関節病変(離断性骨軟骨症、軟骨下骨嚢胞、半月板の病変)を呈した。すべての場合において、併用RGTA及び間葉細胞処置によって、競走馬の回復をはるかに速くすることができた(約5~6か月で復帰、すなわち、RGTA単独又は細胞処置単独で処置後の回復時間と比較して1~2か月の改善)。この回復は、跛行からの回復の点で評価され、処置したウマのほぼすべてが訓練及び以前の能力により早く復帰した。これらのウマでは、超音波検査による腱病変後1週間以内にRGTAをまず注射した。細胞の注射を同じ日のRGTAの注射後(最も一般的には、細胞を調製するのに必要な時間に相当する約30分~1時間)に適宜行った。RGTA注射の数分後にPRPの注射、次いで自己細胞の注射が続くことも時にはあった。
【0223】
RGTA、細胞及びPRPの量は、それぞれOTR4131 1ml、(採取された血液10mlからの)PRP溶解物1.5ml及び自己細胞1mlであり、PRP及び細胞の投与をRGTAの最初の注射から1時間後に行った。
【0224】
最高の結果は、関節病変の場合、細胞をコラーゲン、ヒアルロン酸又は2つの組合せなどの生体材料と混合して注射すると得られた。これらの例では、これらの生成物は、(ヒトにおけるしわ又は関節の形成外科に使用される)溶液状態で注射品質であり、注射前に細胞の溶液に直接添加された。次いで、細胞溶液を約2倍希釈した:細胞1ml及び生体材料の溶液1ml、好ましくは0.1~3mg.ml-1
【0225】
別の一実施形態においては、RGTA及び細胞、又はRGTA、PRP及び細胞を含むボーラスとして投与を行った。得られた結果によれば、処置は、上記要素の1つのみの投与を含む処置と比較して効果的に大いに改善された。さらに、更に驚くべき結果は、RGTA及び細胞の投与を30~60分から数時間(好ましくは同じ)空けることによって得られた。
【0226】
現在、患者における関節病変及び苦痛の処置は、細胞療法、特に骨髄又は脂肪組織に由来する自己間葉細胞の局所注射によって行われる。
【0227】
しかし、この処置は、有効な処置を得ることができず、失敗する。したがって、特にRGTAを滑液に投与(注射)し、続いて自己間葉細胞又は脂肪細胞を注射する、本発明に係る組成物による処置を、細胞療法単独での失敗を経験した数名の患者で行った。このために、RGTA及び細胞の量は、それぞれ100μg.ml-1で1ml、遠心分離によって脂肪細胞間葉細胞が濃縮された自己細胞1~5mlであり、同じ日に、一般にRGTAの注射から30分~1時間後に、注射された。細胞の注射による投与のタイミングは、RGTAの注射又は2種の溶液の注射、RGTAの1種とすぐに続いて細胞の注射、又は単一溶液によるRGTAと細胞の同時投与から時間内に行われた。
【0228】
RGTAの注射後かつ細胞の注射前又は注射と一緒のヒアルロン酸の添加、及び2型コラーゲンなどの別の生体材料との組合せも、ある患者では更に良好な結果をもたらした。
【0229】
この処置後、驚くべきことに、病変及び付随する苦痛が吸収され、有利なことに患者は、人工膝関節を移植する必要がなく疼痛もなく徐々に再び歩くことができた。
【0230】
特に、その動きが極めて損なわれ、疼痛によっても極めて損なわれ、以前に細胞による処置に失敗し、RGTA単独でも失敗した、骨軟骨性病変の約12名の患者においては、上記処置後、そのうち8名は、RGTAとそれに続く自己細胞の二重の処置によって運動能力を回復することができ、本発明に係る組成物の驚くべき予想外の効果を明白に示した。
【0231】
実施例5:本発明に係る組成物による消化器系組織病変の処置
先行技術は、消化管粘膜、頬粘膜(Morvanら、Am J Pathol.2004 Feb;164(2):739~46)、歯肉粘膜(Escartinら、FASEB J.2003 Apr;17(6):644~51)及び胃又は腸における潰瘍形成(Meddahiら、J Biomed Mater Res.2002、60(3):497~501)に対するRGTAの性質、並びにコラーゲン合成に、正常な又は照射された単離細胞(Alexakis C.ら、FASEB J.2001 Jul;15(9):1546~54)に、さらにはクローン病患者からの組織由来の生検材料(Alexakis C.ら、Gut.2004 Jan;53(1):85~90)にも作用することによって、線維症を軽減するその能力も記述している。しかし、消化器系組織病変に対するRGTAの効果は、特に可能な病変修復に関しては、観察も確認もされていない。
【0232】
この実施例においては、本発明に係る組成物、すなわちRGTA及び細胞を用いた処置を、数年間クローン病及び会陰瘻を患う患者に適用した。この実施例においては、濃度100μg.ml-1で使用されたRGTA0.5mlを瘻孔近くに注射し(注射1回当たり0.1ml及び3箇所)、続いて注射の30分以内に、10ml脂肪吸引試料由来の細胞が濃縮された画分を注射した)(注射1回当たり細胞0.1ml、2又は3箇所)。
【0233】
本発明に係る組成物の投与は、肛門周囲瘻孔を閉じることができたのに対して、RGTA単独もこれらの同じ細胞の投与もこの閉鎖及び回復を得ることができなかった。
【0234】
括約筋に極めて近い類表皮癌の外科的切除、続いて化学放射線療法を受ける、括約筋の機能を失った第2の患者は、数箇所のRGTA OTR4120の局所注射(100μg.ml-1で0.1ml)、続いて30分後に自己脂肪細胞の局所注射(初期脂肪吸引体積10ml由来の1回の注射当たり100μl)の恩恵を受けることができた。この投与後、病変部位の細胞の急速なコロニー形成が観察され、患者は、不可能であると思われなかった括約筋の機能回復を経験することができた。
【0235】
実施例6:本発明に係る組成物の投与を含む組織病変の処置:
これらの実施例においては、各例が関連せず独特であり、効果(単数又は複数)を客観化できなかったので、RGTAと細胞療法を組み合わせる相加作用の客観化は存在しなかった。観察され、検討可能な唯一の判定基準は、患者が処置後に改善したか否かである。
【0236】
この実施例においては、肺再生における本発明に係る組成物の効果を検討した。火災の有毒な蒸気への曝露に起因する肺粘膜の病変を患う患者は、気化器に入ったRGTA OTR4120を吸入し、自己脂肪細胞をその同じ日の吸入から1時間後に注射した。気化器は100μg.ml-1のOTR4120の溶液を含み、吸入は10分間であり、約5mlを吸入することができた。続く30分以内に、その同じ日に脂肪吸引によって採取された自己細胞(濃縮なし)を注射した(5ml、IV)。処置された患者は治療不全を数か月経験していたが、この投与によって、驚くべきことに、予想外に、患者の急速な機能回復が可能になり、すなわち呼吸が改善された。
【0237】
この実施例においては、ステントの移植後の病変組織に対する本発明に係る組成物の効果が認められた。このために、RGTAの経口投与をステントの移植の日に行い、24時間後に(50ml脂肪吸引に由来する)自己脂肪細胞をIV投与した。RGTA OTR4120の経口摂取は、100μg.ml-1の溶液50mlの量であり、1か月維持された。細胞の注射を10日及び20日後に繰り返した。
【0238】
ステントの移植後の病変領域後のコロニー再形成が文書化されていないが認められ、驚くべきことに、RGTA単独又は細胞単独では決して認められなかったステントの移植の領域の再内皮化を示した。
【0239】
この実施例においては、病変組織、この場合、偶発的に照射され、その機能の機能低下を受けた筋肉に対する本発明に係る組成物の効果。このために、RGTAの経口投与を行い、すなわち、100mg/mlで25mlを2日間、続いて筋肉の照射領域における、細胞の投与、すなわち、同じ日に腸骨窩から採取され、次いで遠心分離によって濃縮され、生理食塩水5mlに懸濁された骨髄試料50ml由来の細胞の溶液1mlの5回の注射を行った。投与後、その機能活性の評価を行った。驚くべきことに、予想外に、処置によって、不可能であると思われた機能性運動が回復できた。
【0240】
この実施例においては、角膜の再上皮化に対する本発明に係る組成物の効果を検討した。このために、患者の頬粘膜から採取された細胞の試料を、同じ日に、角膜1つ当たり2滴のRGTAで局所的に前処理された角膜に播いた。この処置によって、病変組織を修復することができ、特に効果は、CACICOL単体の投与によってかなり増加した。
【0241】
最後に、脊髄病変に対する本発明に係る組成物の一例の効果の評価も行った。20歳の患者は、最近の脊髄の病変後に運動機能が衰え、下肢が麻痺した。RGTA及び細胞の量がそれぞれOTR4120の100mg/ml溶液の経口的に25ml/日のRGTA及び腸骨窩からの骨髄の50ml穿刺由来の細胞1mlの4箇所の局所注射(脊髄病変周辺の領域)である本発明に係る組成物の一例を使用した3日間の処置。この注射を10及び20日間繰り返し、RGTAの毎日の経口摂取を2か月間維持した。
【0242】
予想外に、極めてポジティブに、患者は、処置の日の最初の3日後にわずかな神経運動機能を回復し始め、運動回復まで徐々に顕著に改善し始めた。