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特許7554038高エネルギーまたは高出力電池使用のための電気化学二次セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】高エネルギーまたは高出力電池使用のための電気化学二次セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/054 20100101AFI20240911BHJP
   H01G 11/04 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20240911BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240911BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20240911BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240911BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20240911BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240911BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240911BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240911BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240911BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240911BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20240911BHJP
【FI】
H01M10/054
H01G11/04
H01G11/28
H01G11/30
H01G11/38
H01G11/42
H01G11/52
H01G11/60
H01G11/62
H01G11/68
H01M4/13
H01M4/46
H01M4/58
H01M4/60
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/058
H01M50/409
【請求項の数】 117
(21)【出願番号】P 2018536345
(86)(22)【出願日】2016-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 FI2016050133
(87)【国際公開番号】W WO2017055678
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】20150270
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】518111368
【氏名又は名称】ブロードビット バッテリーズ オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コヴァーチ,アンドラス
(72)【発明者】
【氏名】アラサアレラ,タパニ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ルイズ-マルティネス,デボラ
(72)【発明者】
【氏名】オルツ-マテオ,ホセ マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス-トレグロサ,ロベルト
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】井上 信一
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-159596(JP,A)
【文献】特開2015-76400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/054
H01M 10/0568
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ナトリウム含有カソード材料およびカーボン含有カソード材料を含むカソード、
b)セルの放電状態において、表面上に本質的に金属ナトリウム活性材料を有しない導電性アノード集電体;
c)溶媒と、ナトリウム含有電解質塩とを含む、前記カソードおよび前記アノード集電体の間に配置される電解質;ならびに
d)充電状態における、前記アノード集電体上の金属ナトリウム活性材料の電着層
を含む、電気化学セル。
【請求項2】
a)その少なくとも一部がナトリウム含有電解質塩に由来しないナトリウム含有カソード材料を含むカソード、および導電性アノード集電体;
b)溶媒と、ナトリウム含有電解質塩とを含む、前記カソードおよび前記アノード集電体の間に配置される電解質;ならびに
c)充電状態における、前記アノード集電体上の金属ナトリウム活性材料の電着層
を含む、電気化学セルであって、
前記電気化学セルが組み立てられているとき、および/または前記電気化学セルが完全放電状態にあるとき、前記アノード集電体が、表面上に本質的に金属ナトリウム活性材料を有しない、電気化学セル。
【請求項3】
前記ナトリウム含有カソード材料が無機である、請求項1または2に記載のセル。
【請求項4】
前記電解質の前記溶媒が二酸化硫黄(SO)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のセル。
【請求項5】
前記電解質の前記溶媒が、アンモニア(NH)または有機アミン、あるいはそれらの混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のセル。
【請求項6】
前記有機アミンが、前記有機アミンの1種以上を含むいずれの混合物も含めて、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミンまたはメチルアミンから選択される、請求項5に記載のセル。
【請求項7】
前記ナトリウム含有電解質塩が、500℃未満の融点を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のセル。
【請求項8】
前記ナトリウム含有電解質塩が、100~300℃の融点を有する、請求項7に記載のセル。
【請求項9】
前記ナトリウム含有電解質塩がホウ素も含む、請求項8に記載のセル。
【請求項10】
前記ナトリウム含有電解質塩がカーボンも含む、請求項8~9のいずれか一項に記載のセル。
【請求項11】
前記ナトリウム含有電解質塩が窒素またはアルミニウムも含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のセル。
【請求項12】
前記ナトリウム含有電解質塩が、NaAlCl、NaBF、NaBH、NaB(CN)、NaBFCN、NaBF(CN)、NaBF(CN)またはNaAl(BH、あるいはそれらの任意の組合せの混合物を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のセル。
【請求項13】
(ナトリウム含有電解質塩):xSOのモル比xが1~4である、請求項1~12のいずれか一項に記載のセル。
【請求項14】
前記ナトリウム含有カソード材料が、Na(亜ジチオン酸ナトリウム):xNaAlCl混合物またはiNaCl:jNa(亜ジチオン酸ナトリウム):kNaAlCl混合物を含み、x、i、jおよびkがモル比を定義する、請求項1~13のいずれか一項に記載のセル。
【請求項15】
前記ナトリウム含有カソード材料が、Na(亜ジチオン酸ナトリウム):xNaAlCl混合物を含み、モル比xが0.5~2である、請求項14に記載のセル。
【請求項16】
前記ナトリウム含有カソード材料がNaClを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のセル。
【請求項17】
完全または部分的放電状態のいずれかで組み立てられる、請求項1~16のいずれか一項に記載のセル。
【請求項18】
前記ナトリウム含有カソード材料が、iNaCl:jNa(亜ジチオン酸ナトリウム):kNaAlCl混合物を含み、iが3~5であり、jが0.5~2であり、かつkが0.5~2である、請求項16~17のいずれか一項に記載のセル。
【請求項19】
a)ナトリウム含有カソード材料を含むカソード、および導電性アノード集電体;
b)SO溶媒と、ナトリウム含有電解質塩とを含む、前記カソードおよび前記アノード集電体の間に配置される電解質;ならびに
c)導電性ナトリウムである、カソードおよびアノードの間のカチオン伝導性フィルム
を含む、電気化学セル。
【請求項20】
前記アノード集電体および前記カソードの間にポーラスセパレータフィルムが提供される、請求項19に記載のセル。
【請求項21】
前記カチオン伝導性フィルムが、前記アノード集電体の上に析出されるか、あるいは、
前記セルがさらに前記アノード集電体および前記カソードの間にセパレータを含み、かつ、前記カチオン伝導性フィルムが、前記セパレータの上に析出される、請求項19~20のいずれか一項に記載のセル。
【請求項22】
前記カチオン伝導性フィルムが、塩化スルフリルの移動を阻害する、請求項19~21のいずれか一項に記載のセル。
【請求項23】
a)カソードおよび少なくとも一つのアノード集電体を含むアノード;ならびに
b)i.1種以上の窒素含有溶媒前駆体と、
ii.ナトリウムカチオン、およびスルホニル含有アニオンを含む、少なくとも1種のナトリウム含有電解質塩と
を含む、前記カソードおよび前記アノードの間に配置される電解質
を含む、電気化学セル。
【請求項24】
ナトリウム含有電解質塩モル濃度が少なくとも3モル/リットルである、請求項23に記載のセル。
【請求項25】
前記ナトリウム含有電解質塩が、NaBF、NaBH、NaPF、NaClO、NaB(CN)、NaBFCN、NaBF(CN)、NaBF(CN)、NaBHCN、NaBH(CN)、NaBH(CN)、NaAl(BH、NaBr、ナトリウムビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(NaTFSI)、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NaFSI)、ナトリウムトリフルオロメタンスルホネート(Naトリフレート)、あるいはそれらの任意の混合物または組合せを含む、請求項23~24のいずれか一項に記載のセル。
【請求項26】
窒素含有溶媒前駆体が、アンモニア(NH)、1種以上の有機アミンベース液体、1種以上のニトリルベース液体、あるいは前記窒素含有溶媒前駆体の1種以上を含有する混合物のいずれかを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載のセル。
【請求項27】
前記有機アミンが、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、メチルアミン、ピリジンまたはその混合物から選択され、かつ前記ニトリルが、アセトニトリル、プロピオノニトリル、あるいは前記有機アミンの1種以上を含有する混合物から選択される、請求項26に記載のセル。
【請求項28】
前記ナトリウム含有電解質塩濃度が、本質的に遊離溶媒分子を有さない電解質を構成するように十分高い、請求項23~27のいずれか一項に記載のセル。
【請求項29】
前記ナトリウム含有電解質塩濃度が、イオン性液体型電解質を構成するように十分高い、請求項23~27のいずれか一項に記載のセル。
【請求項30】
前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(ナトリウム含有電解質塩):xNHのモル比xが1~5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):y(有機モノアミン)のモル比yが1~5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):z(有機ジアミン)のモル比zが0.5~2.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.3~2であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):(ニトリル)のモル比kが1~5である、請求項23~29のいずれか一項に記載のセル。
【請求項31】
前記ナトリウム含有電解質塩がNaBFであり、かつ前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(ナトリウム含有電解質塩):xNHのモル比xが1~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):y(有機モノアミン)のモル比yが1~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):z(有機ジアミン)のモル比zが0.5~1.8であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.3~1.2であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):(ニトリル)のモル比kが1~3.5である、請求項12に記載のセル。
【請求項32】
前記ナトリウム含有電解質塩がNaBHであり、かつ前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(ナトリウム含有電解質塩):xNHのモル比xが2~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):y(有機モノアミン)のモル比yが2~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):z(有機ジアミン)のモル比zが1~1.8であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.7~1.2であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):(ニトリル)のモル比kが2~3.5である、請求項12に記載のセル。
【請求項33】
前記電解質が、1種以上のSEI形成アミンまたはニトリル溶媒を含む、請求項23~30のいずれか一項に記載のセル。
【請求項34】
前記電解質が、1種以上のSEI形成アミンまたはニトリル溶媒を含み、
前記SEI形成アミンまたはニトリル溶媒がエチレンジアミンであり、かつ前記ナトリウム含有電解質塩がNaBFまたはNaBHである、請求項12に記載のセル。
【請求項35】
前記ナトリウム含有電解質塩濃度が3M~5Mである、請求項33に記載のセル。
【請求項36】
前記アノード集電体上に電着される金属ナトリウム活性材料の供給源が提供される、請求項23~30、33、および35のいずれか一項に記載のセル。
【請求項37】
前記アノード集電体上に電着される金属ナトリウム活性材料が、金属ナトリウム活性材料の前記供給源を前記アノード集電体の末端と電気的に接触させることによって提供される、請求項36に記載のセル。
【請求項38】
前記カソードが、前記電気化学セルの第1の放電サイクルの間に、前記金属ナトリウム活性材料からナトリウムイオン(Na)を受け取る、請求項37に記載のセル。
【請求項39】
金属ナトリウム活性材料の前記供給源が、バルクナトリウム、金属ナトリウム箔、金属ナトリウム粉末またはそれらの混合物を含む、請求項36~38のいずれか一項に記載のセル。
【請求項40】
前記電解質より高い表面エネルギーを有するセパレータを含むか、あるいは前記電解質によるセパレータの良好な湿潤を支持する、請求項1~39のいずれか一項に記載のセル。
【請求項41】
スパンデックス、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含むセパレータを含む、請求項1~40のいずれか一項に記載のセル。
【請求項42】
前記ナトリウム含有電解質塩が、ホウ素、アルミニウム、フッ化物、塩化物および/または水素を含む、請求項1~41のいずれか一項に記載のセル。
【請求項43】
前記カソードがカーボン含有カソード材料を含み、前記カーボン含有カソード材料が、カルボニルまたはアントリミドカルバゾールを含む化合物である、請求項1~42のいずれか一項に記載のセル。
【請求項44】
前記カルボニルまたはアントリミドカルバゾールを含む化合物が、ポリ-アントラキノニル-スルフィドポリマー、AQS-オリゴマーまたはインダンスロンブルーを含む、請求項43に記載のセル。
【請求項45】
少なくとも一部の前記ナトリウム含有カソード材料が、その初期状態にあるか、または還元ナトリウム塩状態にある、請求項1~22のいずれか一項に記載のセル。
【請求項46】
前記カソードがカーボン含有カソード材料を含み、前記カーボン含有カソード材料が、CNT、フラーレン、CNB、グラフェン、グラファイト、Ketjen-Black、メソポーラスカーボン、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノフォーム、Q-カーボン、T-カーボン、Y-カーボン、ナノカーボン、カーボンナノ粒子および/またはポーラスカーボンである、請求項45に記載のセル。
【請求項47】
前記カソードが結合剤材料を含む、請求項1~46のいずれか一項に記載のセル。
【請求項48】
前記結合剤材料が、PTFE、PVDF、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)または熱処理されたポリアクリロニトリルである、請求項47に記載のセル。
【請求項49】
前記ナトリウム含有カソード材料が、導電性カソード集電体/機械的支持上に析出される、請求項1~22のいずれか一項に記載のセル。
【請求項50】
前記カソードおよび/またはアノード集電体が金属を含むか、または金属表面を有する、請求項1~49のいずれか一項に記載のセル。
【請求項51】
前記カソードおよび/またはアノード集電体が、アルミニウムAl、Cu、Ni、Cr、Pd、Pt、Auおよび/またはAg、あるいはAl、Cu、Ni、Cr、Pd、Pt、Auおよび/またはAgを含む合金を含む、請求項50に記載のセル。
【請求項52】
金属表面がカソード集電体および/または機械的支持を形成するために機械的支持上に析出される、請求項50~51のいずれか一項に記載のセル。
【請求項53】
前記カソードがカーボン含有カソード材料を含み、前記カーボン含有カソード材料が、導電性カソード集電体/機械的支持上に適用される、請求項40~52のいずれか一項に記載のセル。
【請求項54】
前記カソードが、10重量%未満の結合剤を含む、請求項1~53のいずれか一項に記載のセル。
【請求項55】
前記カソードが、4~7重量%の結合剤を含む、請求項54に記載のセル。
【請求項56】
前記金属ナトリウム活性材料が、前記電気化学セルの充電の間に、前記アノード集電体上に電着される、請求項1~18のいずれか一項に記載のセル。
【請求項57】
前記金属ナトリウム活性材料が平滑である、請求項56に記載のセル。
【請求項58】
前記カソードがトリアジン-キノンコポリマーを含む、請求項1~57のいずれか1項記載のセル。
【請求項59】
請求項1~58のいずれか一項に記載の電気化学セルを含む電池またはスーパーキャパシタ。
【請求項60】
a)ナトリウム含有カソード材料を含むカソード、および表面上に本質的に金属ナトリウム活性材料を有しない導電性アノード集電体を提供すること;
b)前記カソードおよび前記アノード集電体の間に、溶媒と、ナトリウム含有電解質塩とを含む電解質を提供すること;ならびに
c)第1の充電サイクルの間、前記アノード集電体上で金属ナトリウム活性材料を電着すること
を含む、電気化学セルの製造方法。
【請求項61】
a)ナトリウム含有カソード材料を含むカソードおよび導電性アノード集電体を提供すること;
b)前記カソードおよび前記アノード集電体の間に、溶媒と、ナトリウム含有電解質塩とを含む電解質を提供すること;ならびに
c)第1の充電サイクルの間、前記アノード集電体上で金属ナトリウム活性材料を電着すること
を含む、電気化学セルの製造方法であって、
前記電気化学セルが組み立てられているとき、および/または前記電気化学セルが完全放電状態にあるとき、前記アノード集電体が、表面上に本質的に金属ナトリウム活性材料を有しない、方法。
【請求項62】
前記ナトリウム含有カソード材料が無機である、請求項60~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記電解質の前記溶媒が二酸化硫黄(SO)を含む、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記電解質の前記溶媒が、アンモニア(NH)または有機アミン、あるいはそれらの任意の混合物を含む、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記有機アミンが、前記有機アミンの1種以上を含む混合物も含めて、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミンまたはメチルアミンから選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ナトリウム含有電解質塩が、500℃未満の融点を有する、請求項60~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記ナトリウム含有電解質塩が、100~300℃の融点を有する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ナトリウム含有電解質塩がホウ素も含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記ナトリウム含有電解質塩がカーボンも含む、請求項67~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記ナトリウム含有電解質塩が窒素またはアルミニウムも含む、請求項67~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記ナトリウム含有電解質塩が、NaAlCl、NaBF、NaBH、NaB(CN)、NaBFCN、NaBF(CN)、NaBF(CN)またはNaAl(BH、あるいはそれらの任意の混合物を含む、請求項67~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
(ナトリウム含有電解質塩):xSOのモル比xが1~4である、請求項60~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記ナトリウム含有カソード材料が、Na(亜ジチオン酸ナトリウム):xNaAlCl混合物またはiNaCl:jNa(亜ジチオン酸ナトリウム):kNaAlCl混合物を含み、x、i、jおよびkがモル比を定義する、請求項60~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記ナトリウム含有カソード材料が、Na(亜ジチオン酸ナトリウム):xNaAlCl混合物を含み、モル比xが0.5~2である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ナトリウム含有カソード材料がNaClを含み、前記セルは完全または部分的放電状態のいずれかで組み立てられる、請求項60~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記ナトリウム含有カソード材料が、iNaCl:jNa(亜ジチオン酸ナトリウム):kNaAlCl混合物を含み、iが3~5であり、jが0.5~2であり、かつkが0.5~2である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
a)ナトリウム含有カソード材料を含むカソード、および導電性アノード集電体を提供すること;
b)前記カソードおよび前記アノード集電体の間に、SO溶媒と、ナトリウム含有電解質塩とを含む電解質を提供すること;ならびに
c)導電性ナトリウムである、カソードおよびアノード集電体の間のカチオン伝導性フィルムを提供すること
を含む、電気化学セルの製造方法。
【請求項78】
前記カソードおよび前記アノード集電体の間にポーラスセパレータフィルムを提供することをさらに含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記カチオン伝導性フィルムが、前記アノード集電体の上に析出されるか、あるいは、
前記セルがさらに前記アノード集電体および前記カソードの間にセパレータを含み、かつ、前記カチオン伝導性フィルムが、前記セパレータの上に析出される、請求項77~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記カチオン伝導性フィルムが、塩化スルフリルの移動を阻害する、請求項77~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
a)カソードおよびアノード集電体を提供すること;ならびに
b)1.1種以上の窒素含有溶媒前駆体と、
2.そのうちの少なくとも1種が、ナトリウムカチオン、および塩素コアードアニオン、またはスルホニル含有アニオンを含む、1種以上のナトリウム含有電解質塩と
を含む電解質を提供すること
を含む、電気化学セルの製造方法。
【請求項82】
ナトリウム含有電解質塩モル濃度が少なくとも3モル/リットルである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記ナトリウム含有電解質塩が、NaBF、NaBH、NaPF、NaClO、NaB(CN)、NaBFCN、NaBF(CN)、NaBF(CN)、NaBHCN、NaBH(CN)、NaBH(CN)、NaAl(BH、ナトリウムビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(NaTFSI)、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NaFSI)、ナトリウムトリフルオロメタンスルホネート(Naトリフレート)、あるいは前記塩の1種以上を含有する混合物を含む、請求項81~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
窒素含有溶媒前駆体が、アンモニア(NH)、1種以上の有機アミンベース液体、1種以上のニトリルベース液体、あるいは前記窒素含有溶媒前駆体の1種以上を含有する混合物のいずれかを含む、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記有機アミンが、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、メチルアミン、ピリジンまたはその混合物から選択され、かつ前記ニトリルが、アセトニトリル、プロピオノニトリル、あるいは前記有機アミンの1種以上を含有する混合物から選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記ナトリウム含有電解質塩濃度が、局所的規則性液体型電解質を構成するように十分高い、請求項81~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記ナトリウム含有電解質塩濃度が、イオン性液体型電解質を構成するように十分高い、請求項81~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(ナトリウム含有電解質塩):xNHのモル比xが1~5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):y(有機モノアミン)のモル比yが1~5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):z(有機ジアミン)のモル比zが0.5~2.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.3~2であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):(ニトリル)のモル比kが1~5である、請求項81~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記ナトリウム含有電解質塩がNaBFであり、かつ前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(ナトリウム含有電解質塩):xNHのモル比xが1~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):y(有機モノアミン)のモル比yが1~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):z(有機ジアミン)のモル比zが0.5~1.8であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.3~1.2であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):(ニトリル)のモル比kが1~3.5である、請求項71に記載の方法。
【請求項90】
前記ナトリウム含有電解質塩がNaBHであり、かつ前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(ナトリウム含有電解質塩):xNHのモル比xが2~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):y(有機モノアミン)のモル比yが2~3.5であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):z(有機ジアミン)のモル比zが1~1.8であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.7~1.2であるか、または(ナトリウム含有電解質塩):(ニトリル)のモル比kが2~3.5である、請求項71に記載の方法。
【請求項91】
前記電解質が、1種以上のSEI形成アミンまたはニトリル溶媒を含む、請求項81~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記電解質が、1種以上のSEI形成アミンまたはニトリル溶媒を含み、
前記SEI形成アミンまたはニトリル溶媒がエチレンジアミンであり、かつ前記ナトリウム含有電解質塩がNaBFまたはNaBHである、請求項71に記載の方法。
【請求項93】
前記ナトリウム含有電解質塩濃度が3M~5Mである、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記アノード集電体のための金属ナトリウム活性材料の供給源が提供される、請求項81~88、91、および93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記金属ナトリウム活性材料が、金属ナトリウム活性材料の前記供給源を前記アノード集電体の末端と電気的に接触させることによって提供される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記カソードが、前記電気化学セルの第1の放電サイクルの間に、前記金属ナトリウム活性材料からナトリウムイオン(Na)を受け取る、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記電解質より高い表面エネルギーを有するセパレータをさらに含むか、あるいは前記電解質によるセパレータの良好な湿潤を支持する、請求項60~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
スパンデックス、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含むセパレータを含む、請求項60~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記ナトリウム含有電解質塩が、ホウ素、アルミニウム、フッ化物、塩化物および/または水素をさらに含む、請求項60~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記カソードがカーボン含有カソード材料を含み、前記カーボン含有カソード材料が、カルボニルまたはアントリミドカルバゾールを含む化合物である、請求項60~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記カルボニルまたはアントリミドカルバゾールを含む化合物が、ポリ-アントラキノニル-スルフィドポリマー、AQS-オリゴマーまたはインダンスロンブルーを含む、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
いくつか若しくは全ての前記ナトリウム含有カソード材料が、その初期状態にあるか、または還元ナトリウム塩状態にある、請求項60~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記カソードが1種以上のカーボン含有カソード材料を含む、請求項60~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記カーボン含有カソード材料が、CNT、フラーレン、CNB、グラフェン、グラファイト、Ketjen-Black、メソポーラスカーボン、活性炭、Y-カーボン、ナノカーボン、カーボンナノ粒子および/またはポーラスカーボンである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記カソードが結合剤材料を含む、請求項60~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記結合剤材料が、PTFE、PVDF、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)または熱処理されたポリアクリロニトリルである、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記ナトリウム含有カソード材料が、カソード導電性集電体/機械的支持上に析出される、請求項60~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記アノード集電体が、導電性集電体/機械的支持である、請求項60~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記カソードおよび/またはアノード集電体/機械的支持が金属を含むか、または金属表面を有する、請求項107~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記カソードおよび/またはアノード集電体/機械的支持が、アルミニウムAl、Cu、Ni、Cr、Pd、Pt、Auおよび/またはAg、あるいはAl、Cu、Ni、Cr、Pd、Pt、Auおよび/またはAgを含む合金を含む、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
金属表面がアノードまたはカソード集電体を形成するために機械的支持上に析出される、請求項109~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記カソードがカーボン含有カソード材料を含み、前記カーボン含有カソード材料が、カソード集電体/機械的支持上に適用される、請求項102~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記カソードが、10重量%未満の結合剤を含む、請求項60~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記カソードが、4~7重量%の結合剤を含む、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
金属ナトリウム活性材料が、前記電気化学セルの充電の間に、前記アノード集電体上に電着される、請求項60~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記金属ナトリウム活性材料が平滑である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
a)請求項1~59のいずれか一項に記載の電気化学セル、電池またはスーパーキャパシタを利用する、電気自動車、電気または電子デバイス、パワーユニット、バックアップエネルギーユニティ、あるいはグリッドストレージまたはスタビリゼーションユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
一般に、本発明は、再充電可能な電気化学セル、電池およびスーパーキャパシタに関する。特に、本発明は、金属ナトリウムアノード、高エネルギー密度を支持する新規カソードおよびこれらの特定の電極の両方と適合性のある電解質を利用する上記セルに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
電気自動車(EV)用電池の種々の実施および概念は、最も広く利用されているLiイオン自動車技術に基づく電池から、鉛-酸、ニッケル-カドミウム(Ni-Cd)、ニッケル金属水素化物(Ni-MH)および溶融塩などの他のものまで、多様に存在することが知られている。現代の電気自動車およびハイブリッド用電池の製造は、主にLiイオン電池技術に基づくものである。しかしながら、上記技術は、いくつかの欠点を有すると言われている。特に、Liイオン電池の高い製造費は、自動車製造業者に、範囲の制限された車両を設計することを余儀なくさせる。さらに、現在のLiイオン電池の不確実な寿命および制限された急速充電容量が、電池駆動の全電気またはプラグインハイブリッド車と、燃焼機関車両との間で選択する時に、顧客に躊躇を与える。さらに、現在のLiイオン技術の高い成熱度は、電池性能および費用効果の有意な改良には、劇的に異なる概念的アプローチが必要とされるであろうことを意味する。
【0003】
十分な比エネルギー、容量および耐久性の費用効果の高い組合せを見出すために、電池技術の分野において集約的な研究が行なわれている。多数の化合物が、電池セル用の潜在的成分として調査された。マグネシウムベースの金属アノードを含むEVセルの高い比エネルギーの可能性によって動機を与えられて、マグネシウムベースの金属アノードが集約的に研究された。しかしながら、周囲温度市販デバイスは、適切なカソード材料の欠如と関連する技術的課題および/または可逆性金属析出が可能な電解質系の課題のため、まだ導入されていない。電池研究者の一般的な総意により、ナトリウムベースの金属アノードと関連する課題は、マグネシウムベースの金属アノードを含むセルの課題よりさらに大きい。したがって、金属アノードに従事する研究者は、Mg2+/Mg電位がNa/Na電位より約0.4V高いにもかかわらず、主にマグネシウムベースの電極系に焦点を合わせているが、ナトリウムベースのセルは、Naイオンセル配合物に挿入することによって調査されている。したがって、本明細書に開示される金属ナトリウムアノードベースの電池およびスーパーキャパシタセルの発明は、高い産業的重要性を有し、そして費用効果が高く、なお高性能な電池およびスーパーキャパシタの構築のための新たなアプローチを開始する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
本発明の目的は、金属ナトリウムを含むアノードに基づく、二次高エネルギーまたは高出力電池のための高性能電気化学セルを開示することである。好ましい実施形態において、セルには、第1の充電サイクルの間に電着される固体金属アノード、本発明において開示される電極構造から選択されるカソード、および本発明において開示される電解質から選択される電解質が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、金属ナトリウムアノードの本質的に安定なサイクルを支持する電解質を開示することに関する。別の態様は、ナトリウムの本質的に平滑な、樹枝状結晶のない、そして良好に接着した電気化学的析出を支持する集電体材料を開示することに関する。本発明の一実施形態において、ナトリウムの電気化学的析出は、本発明の有効な実施のために実際的な必要条件である。この電気化学的ナトリウム析出は、放電状態において組み立てられたセルの第1の充電サイクルの間、または充電状態において組み立てられたセルのセル組立ての前のアノードナトリウム薄フィルムの調製の間のいずれにおいても生じる。そのようなナトリウム析出のための適切な集電体基板およびこの基板上での析出のための適切な電解質の識別は、相関関係を有する。言い替えれば、ナトリウム析出においてナトリウムを支持する電解質の部分集合のみが、集電体基板上のナトリウム析出を支持する。したがって、適合する電解質-集電体基板対の開示は、本発明の主な目的である。
【0006】
一実施形態において、アノードは、その放電状態において、および/または放電状態にあり得る組立ての間に本質的にナトリウムを含まない。ここで、ナトリウムの重量%が、その放電状態において、アノードの全重量の好ましくは50%未満、そしてより好ましくは30%未満、そしてより好ましくは20%未満、そしてより好ましくは10%未満、そしてより好ましくは5%未満、そしてより好ましくは3%未満、そしてより好ましくは2%未満、そしてより好ましくは1%未満、そしてより好ましくは0.5%未満、そしてより好ましくは0.3%未満、そしてより好ましくは0.2%未満、そしてより好ましくは0.1%未満、そして最も好ましくは0%である場合、アノードはナトリウムを含まない。
【0007】
アノードは、ナトリウムまたは別の導電性材料の支持/集電体を含んでもよい。一実施形態において、アノードは、純粋なナトリウムである。ここで、ナトリウムの重量%が、その放電状態において、アノードの全重量の好ましくは50%より多く、そしてより好ましくは70%より多く、そしてより好ましくは80%、そしてより好ましくは90%未満、そしてより好ましくは95%より多く、そしてより好ましくは97%より多く、そしてより好ましくは98%より多く、そしてより好ましくは99%より多く、そしてより好ましくは99.5%より多く、そしてより好ましくは99.7%より多く、そしてより好ましくは99.8%より多く、そしてより好ましくは99.1%、そして最も好ましくは100%である場合、アノードは純粋なナトリウムであると考えられる。
【0008】
一実施形態において、集電体材料上の電気化学的析出は、本質的に平滑であり、樹枝状結晶がなく、かつ/または良好に接着し得る。一実施形態において、電気化学的析出および集電体材料は、接触していてもよい。ここで、平滑とは、100ミクロン未満、より好ましくは50ミクロン未満、より好ましくは20ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満、より好ましくは2ミクロン未満、そして最も好ましくは1ミクロン未満の表面粗さを有するとして定義される。ここで、樹枝状結晶がないとは、好ましくは90%未満、より好ましくは50%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、そして最も好ましくは2%未満の樹枝状結晶としてのナトリウム析出物の全質量を有するものとして定義される。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、開示された電解質と適合性のあるカソードを開示することに関する。既知の電極材料に関してさえも、文献に記載されている何千という電極材料を考えると、同時に良好な電子伝導性、良好なイオン拡散係数を支持し、高エネルギー密度を提供し、還元、酸化または中間状態で新規の開示された電解質中に不溶性であり、かつ新規の開示された電解質の電気化学的窓と適合性のあるものを識別することは革新的である。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、特定の開示されたセル成分の利用、例えば、リチウムベースの電池電極のものなどの、異なる関連での特定の開示されたカソードの使用、またはスーパーキャパシタセルにおける特定の開示された電解質の使用を促進する。
【0011】
なおさらなる態様において、本発明は、電気自動車における、そのように提供された実施形態のいずれかによる複数のセルを含む、電気化学二次電池の使用に関する。
【0012】
なおさらなる態様において、本発明は、電気または電子デバイス、パワーユニット、バックアップエネルギーユニティまたはグリッドストレージまたはスタビリゼーションユニットにおいて上記電池を使用することに関する。
【0013】
なおさらなる態様において、高濃度塩含量を有するイオン液体または非水系液体を利用する、いずれかの用途に関する特定の開示された電解質の使用。
【0014】
ここで、安定なサイクルとは、少なくとも10サイクル、そしてより好ましくは少なくとも100サイクル、そしてより好ましくは少なくとも1000サイクル、そして最も好ましくは少なくとも10000サイクルの間の好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満、そして最も好ましくは5%未満の電解質の消費であるとして定義される。
【0015】
本発明の有用性は、質量単位あたりの高エネルギー密度、質量単位あたりの高出力密度、または改善された耐久性などの、そのそれぞれの特定の実施形態次第の種々の理由から生ずる。ここで開示された電池の費用効果の高い実行は、多くの電池駆動製品に肯定的に影響を与えるであろう。
【0016】
ナトリウムベースの金属アノードは、いずれのアノード材料中でも最も高い理論的重量容量のいくつかを提供する:ナトリウムの重量容量は、Na/Na対に関して、標準水素電極(Standard Hydrogen Electrode)(SHE)に対して-2.7Vの電位において、1100mAh/gより高い。比較のために、リチウムイオン電池の現在のグラファイトアノードは、約400mAh/gの重量容量を有する。さらに、金属アノードは、充電状態から放電状態への材料の遷移のためにイオンの固体状態拡散を必要としないが、金属の表面上/からのイオンの成功した析出/溶解のみが必要とされる。
【0017】
他に示されない限り、「セル」という用語は、本開示において、最小充てん形態の電池としての電気化学セルを示すものとして意図され、そして「電池」という用語は、セルの群(例えば、セルの積み重ね)を意味する。
【0018】
それぞれの電気化学セルは、少なくとも、アノードと、カソードと、アノードおよびカソードの間に配置される電解質とを含む。セルは、セパレータも含み得る。
【0019】
本発明の種々の実施形態は、詳細な説明および添付の図面の考察によって明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図0】スーパーアルカリカチオン形成の例を示す。左側の最初の2つの例は、対称的な形成であり、他方、右側の最後の2つの例は、非対称的な形成である。
図1】種々の液体アンモニエート(NaI・3.3NH、NaBF・2.5NHおよびNaBH・1.5NH)中でのナトリウム上でのナトリウム析出の電気化学的挙動を示す。この実験は、参照および対電極としてナトリウム金属を使用して、20mV/秒の掃引速度において3電極セル中で行なわれた。作用電極の幾何学的領域は、全3つの実験に関して、1cmである。
図2】NaI・3.3NH中でのPAQS電極に関するサイクリックボルタモグラムを示す。この実験は、参照および対電極としてナトリウム金属を使用して、20mV/秒の掃引速度において2電極スプリットセル中で行なわれた。電流は、1.1cmの幾何学的暴露領域で、PAQSの活性質量、4.8mgに対して示される。
図3】NaI・3.3NH中でのインダンスロンブルー電極に関するサイクリックボルタモグラムを示す。この実験は、参照および対電極としてナトリウム金属を使用して、20mV/秒の掃引速度において2電極スプリットセル中で行なわれた。電流は、1.1cmの幾何学的暴露領域で、インダンスロンブルーの活性質量、2mgに対して示される。
図4】NaAlCl・2SO電解質中でのナトリウム上でのナトリウム析出の電気化学的挙動を示す。この実験は、参照および対電極としてナトリウム金属を使用して、5mV/秒の掃引速度において3電極セル中で行なわれた。作用電極の幾何学的曝露領域は、1cmである。
図5】NaAlCl・2SO電解質中でのNaCl活性材料の充電/放電サイクルの間のセル電位発展を示す。容量は、カーボン質量に関して示され、そして充電限界はNaCl活性材料の完全充電に相当する。この実験は、対電極としてナトリウム金属を使用するコインセルで行なわれた。作用電極の幾何学的暴露領域は1cmである。
図6図5に示される充電/放電サイクリング測定の間に生じる、提案された化学プロセスを示す。NaCl粒子が、カーボンフレームワークから完全に脱着する必要がないことは留意すべきである。
図7】カソード電極が、3.32mgのKetjen-Blackカーボンフレームワーク中に4.08mgのNaClをすでに含有する場合の、NaAlCl・2SOカソーライトの放電の間の初期セル電位発展を示す。容量は、カーボン質量に関して示される。この実験は、対電極としてナトリウム金属を使用するコインセルで行なわれた。作用電極の幾何学的暴露領域は1cmである。
図8】NaI・3.3NH中でのIBベースの電極のサイクル数に対する容量および初期容量の間の比率を示す。この実験は、陰極としてナトリウム金属を使用して、異なるCレートにおいて2電極セルで行なわれた。活性質量は、1.1cmの幾何学的暴露領域と共に、3.5mgのインダンスロンブルーである。
図9】窒素ベースの溶媒前駆体から調製された濃縮電解質の一般的相図を示す。
図10】エチレンジアミン中4モルのNaBF塩によるナトリウム上でのナトリウム析出の電気化学的挙動を示す。この実験は、参照および対電極としてナトリウム金属を使用して、20mV/秒の掃引速度において3電極セル中で行なわれた。作用電極の幾何学的領域は1cmである。
図11】本発明によるいくつかの例のバット染料の分子構造を示す。
図12】式[CNaによって記載されることが可能であるトリアジン-キノン(Triazine-Quinone)コポリマーカソード材料の分子構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の詳細な説明
本発明の詳細な実施形態は、添付の図面を参照して、本明細書に開示される。
【0022】
次のパラグラフは、最初に、金属ナトリウムアノードの析出およびサイクリングのための集電体基板-電解質対を記載する。その後、それぞれの電解質型に関して、適合したカソード組成物が開示される。
【0023】
開示された電気化学セルは、充電-放電サイクルの間にカソード電極による金属イオンの可逆性酸化還元相互作用を可能にするように実施される。「可逆性酸化還元相互作用」という用語は、好ましくは、電極材料の有意な分解を引き起こすことなく、したがって、繰り返しサイクルにおける上記電極の性能特性に悪影響を及ぼすことなく、電極材料中への挿入および電極材料からの出発の両方のイオンの能力を意味する。
【0024】
本発明によれば、カーボンコーティング表面に関して、カーボンは、いずれの適切な形態であってもよい。カーボンの好ましい形態としては、CNT、フラーレン、CNB、グラフェン、グラファイト、Ketjen-Black、メソポーラスカーボン、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノフォーム、Q-カーボン、T-カーボン、Y-カーボン、ナノカーボン、カーボンナノ粒子および/またはポーラスカーボンを含む。カーボンの他の形態は、本発明に従って可能である。
【0025】
電解質の新規分類は、窒素含有溶媒中の高濃度ナトリウム塩に基づき、次のパラグラフで開示される。
【0026】
開示された電解質-基板対の第1の分類は、無機アンモニエート電解質に基づく。Goncalvesら[1]は、ヨウ化ナトリウム-液体アンモニエート(NaI・3.3NH)ベースの再充電可能な電池用の電解質を開示した。NaI・3.3NH電解質は、電極として、ニッケル箔、ステンレス鋼またはカーボンコーティングアルミニウム箔を使用して、Na/Naに対して2.6Vまでの電位窓を有する。しかしながら、NaI塩の高い費用およびIアニオンの重い重量が、この周知の電解質の実用性を損なわせる。したがって、金属ナトリウムアノードと適合性のある、より安く、かつより軽量の液体アンモニエートを見出すことが望ましい。外見上、必要とされる品質は、塩濃度のみに依存せず;NaSCN・3.1NH室温液体アンモニエートは電解質として試験され、そして、そのさらにより高い塩濃度にもかかわらず、金属ナトリウムと不適合であることが見出された。
【0027】
驚くべきことに、NaBF・xNHは、これまで未知の室温付近液体アンモニエートとして発見され、さらに金属ナトリウムサイクリングのために適切な電解質であることが見出された。それは、アルミニウム、ステンレス鋼またはカーボンコーティングアルミニウム箔を電極として使用して、Na/Naに対して2.9Vまでの電位窓を有する。NaBF・2.5NHの沸点は約10℃であり、イオン伝導性は80mS・cm-1の値を有する。
【0028】
さらに、NaBH・xNHは、金属ナトリウムサイクリングのための適切な電解質であることも見出された。それは、ステンレス鋼を電極として使用して、Na/Naに対して2.75Vまでの電位窓を有する。NaBH・1.5NH室温液体の存在は、以前から知られているが、おそらく、NaBHが他の溶媒中で強力および迅速な還元剤であることが知られているため、NaBH・xNHは、電解質として一度も試験されたことがなかった。したがって、一方で、この電解質の高い電位窓、および他方で、金属ナトリウムとのその適合性は、非常に驚くべき特性である。NaBH・1.5NHの沸点は約18℃であり、かつイオン伝導性は110mS・cm-1の値を有する。
【0029】
これらの新たに発見された電解質試料の性質を説明するための試みがなされた。理論によって拘束されるように意図されないが、塩含有量に対するこれらの電解質融点の実験データ、ならびに金属ナトリウム表面に対するそれらの挙動は、それらのイオン性液体または局所的規則性を示す。それらの高いイオン伝導性によって証拠づけられるように、上記電解質は、最も現在使用されている電池電解質よりも一桁低い粘度を有する、超低粘度電解質の新しい分類を表す。これらのイオン液体型または局所的規則性電解質において、6個の窒素原子が、カチオンにしっかりと結合するか、または他の様式で引き付けられ、スーパーアルカリ錯体を形成する。Ni2+などの二重荷電カチオンの場合、得られるスーパーアルカリは、高すぎる電荷密度を有するため、液体ではない。しかしながら、Li、Na、KまたはCuなどの単一荷電カチオンに関しては、反対アニオンが弱く配位する場合、および/または電解質中に不適合なカチオンサイズの混合がある場合、得られるスーパーアルカリは液相にあることが可能である。したがって、Na・3NHの一般式は、カチオンの半分が(Na・6NHスーパーアルカリ状態にある傾向があり、一方、他の半分がNaである傾向があり、これらの状態の間に、いくらかの統計変動がある。カチオン構造のサイズ不適合性および弱く配位するXアニオンの性質の組合せは、3:1のNH:塩比の付近の特定の化学量論的範囲で室温液体を得るために十分である。液体範囲化学量論の限界は、塩カチオン種の選択(Li、Na、K、Cu)、スーパーアルカリ錯体を製造することに関与するアミン種の種類、および塩アニオン種の選択の組合せに依存する。図9は、XのNH:塩比を有する記載された単純な2成分電解質に関するこれらの電解質の一般的相図を示す。本発明によれば、Xは、好ましくは0.1~10、そしてより好ましくは0.4~5、そしてより好ましくは0.7~4、そしてより好ましくは0.9~3.5、そしてより好ましくは0.95~3.2、そして最も好ましくは0.99~3.1である。本発明によれば、単純電解質は、電解質混合物を製造するために他の電解質と組み合わせることができる。電解質中の遊離アミン種の温度依存濃度がある。これらの遊離アミン種の濃度が十分に低い限り、電解質は金属ナトリウムに対して不活性である。カソード側では、遊離アミン種の濃度は、所与のアミン種の酸化電位に対して、電解質安定性に関して観察された限界過電位として表される。
【0030】
アンモニエートベースの電解質の性質についてのこの概念的な発見と一致して、電解質のこの新規分類が、アンモニアからのみならず、いずれの窒素含有溶媒前駆体からでも調製され得ることが見出された。適切な分子としては、例えば、広範囲の有機アミンおよびニトリルが含まれる。アンモニアが使用される場合、そのような電解質は、アンモニエートベースの電解質または液体アンモニエートと呼ばれ、電解質は、理想的な3:1のNH:塩比の付近、好ましくは0.1:1~100:1、そしてより好ましくは0.5:1~50:1、そしてより好ましくは1:1~20:1、そしてより好ましくは1.5:1~10:1、そしてより好ましくは2:1~5:1、そしてより好ましくは2.5:1~4:1、そしてより好ましくは2.8:1~3.5:1、そして最も好ましくは2.9:1~3.2:1のいくらかの化学量論組成で液体であり得る。同様に、好ましくは、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、メチルアミンおよびピリジンの群から選択されるモノアミンが利用される場合、電解質は、理想的な3:1のモノアミン:塩比の付近、好ましくは0.1:1~100:1、そしてより好ましくは0.5:1~50:1、そしてより好ましくは1:1~20:1、そしてより好ましくは1.5:1~10:1、そしてより好ましくは2:1~5:1、そしてより好ましくは2.5:1~4:1、そしてより好ましくは2.8:1~3.5:1、そして最も好ましくは2.9:1~3.2:1のいくらかの化学量論組成で液体であり得る。この同様の原理に従って、好ましくは、エチレンジアミンおよび1,3-ジアミノプロパンの群から選択されるジアミンが利用される場合、電解質は、理想的な1.5:1のジアミン:塩比の付近、好ましくは0.1:1~50:1、そしてより好ましくは0.4:1~20:1、そしてより好ましくは0.6:1~10:1、そしてより好ましくは0.8:1~6:1、そしてより好ましくは1:1~3:1、そしてより好ましくは1.2:1~2:1、そしてより好ましくは1.3:1~1.8:1、そして最も好ましくは1.4:1~1.6:1のいくらかの化学量論組成で液体であり得る。好ましくは、ジエチレントリアミンを含むトリアミンが利用される場合、電解質は、理想的な1:1のトリアミン:塩比の付近、好ましくは0.1:1~20:1、そしてより好ましくは0.2:1~10:1、そしてより好ましくは0.3:1~5:1、そしてより好ましくは0.4:1~3:1、そしてより好ましくは0.5:1~2:1、そしてより好ましくは0.6:1~1.4:1、そしてより好ましくは0.8:1~1.2:1、そして最も好ましくは0.9:1~1.1:1のいくらかの化学量論組成で液体であり得る。電解質の融点は、不規則なカチオン形状のため低下する可能性があり、したがって、本発明によれば、電解質の融点は、異なるアミンの混合物を使用することによって変動させることができる。例としては、限定されないが、エチレンジアミンと1,3-ジアミノプロパンとの混合物、アンモニアとアミンとの混合物、またはニトリルとアミンとの混合物が含まれ、これは、より不規則なカチオン形状をもたらす。理論によって拘束されないが、可能なスーパーアルカリ形成のいくつかの例を図0に例示する。電解質の融点および粘度を低下させるために、「尾状(tailed)」非対称カチオン構造の融点は特に有効である。したがって、溶媒混合物の適切な選択は、融点および粘度の低下を達成するために有用である。例えば、約5:1、好ましくは0.1:1~100:1、そしてより好ましくは0.5:1~50:1、そしてより好ましくは1:1~20:1、そしてより好ましくは2:1~10:1、そしてより好ましくは3:1~8:1、そしてより好ましくは4:1~6:1、そしてより好ましくは4.5:1~5.5:1、そして最も好ましくは4.8:1~5.2:1の比率でアンモニア:n-ブチルアミン溶媒混合物またはアンモニア:n-プロピルアミン溶媒混合物を利用することが、おそらく、カチオン尾部効果の結果として、電解質の融点を低下させるために特に有効であることが発見されている。非対称「尾状」スーパーアルカリ構造を達成するためのさらなる同様な溶媒混合物の使用も、本発明に従って可能である。アンモニアの代わりに有機アミンを使用することは、電解質沸点を増加させ、そして電位窓を増加させる、さらなる有用性を有する。
【0031】
電解質のこの新規分類が、ニトリルベースの溶媒を含み得るか、またはナトリウムビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどの特定の塩の種の場合、ニトリルをベースとし得ることが発見された。上記で開示された電解質構造に従って、ニトリルが利用され、本発明に従って他のニトリルも可能ではあるが、好ましくは、3:1のニトリル:塩比の付近、好ましくは0.1:1~100:1、そしてより好ましくは0.5:1~50:1、そしてより好ましくは1:1~20:1、そしてより好ましくは1.5:1~10:1、そしてより好ましくは2:1~5:1、そしてより好ましくは2.5:1~4:1、そしてより好ましくは2.8:1~3.5:1、そして最も好ましくは2.9:1~3.2:1のいくらかの化学量論組成で液体であり得る。混合電解質に関しては、最も好ましくは、ニトリル、モノアミンおよびアンモニアの間の1対1のモル濃度等量があり、これは、これらの化合物のそれぞれが、スーパーアルカリ形成のために分子あたり1個の窒素原子を寄与することを意味する。ニトリルの使用は、イオン伝導性を減少させ、そして液体電解質をもたらす塩の選択をさらに制限するということを代償として、電解質電位窓をさらに増加させる有用性を有する。有機アミンが、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、メチルアミン、ピリジンまたはその混合物から選択され、かつニトリルが、アセトニトリル、プロピオノニトリル、あるいは前記有機アミンの1種以上を含有する混合物から選択されてよい。
【0032】
Na含有塩の電気化学は、特に本発明のナトリウム電池用途に関連して、詳細に調査されてきたが、他のカチオン種も本発明に従って可能である。例えば、アンモニエートおよびアミンベースの電解質のこの性質についての概念的な発見と一致して、電解質のこの新規分類が、例えば、Li、KまたはCuおよび弱配位アニオンを含む塩から調製され得ることが発見された。利用された塩は、弱配位アニオンを含み得、したがって、一般に、低粘度電解質を製造するために利用されることが知られている。BH またはBHCNアニオンなどの、いくつかの追加的なアニオンは、驚くべきことに、この新規分類の超低粘度液体を調製するために適切であることが見出された。ナトリウム電池用途に関する追加的な基準は、金属ナトリウムに対するアニオンの安定性およびNa/Naに対して少なくとも3Vの十分に高い酸化電位レベルである。好ましいアニオンのリストには、BF 、BH 、PF 、ClO 、B(CN) 、BFCN、BF(CN) 、BF(CN) 、BHCN、BH(CN) 、BH(CN) 、Al(BH 、ビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)が含まれるが、他のアニオン種も本発明に従って可能である。単離状態のSCNアニオンは、金属ナトリウムとのその反応性のために電池用途から除外されるが、それは、この反応性を減少させるか、または否定する他の薬剤と共に使用されてもよい。
【0033】
金属ナトリウムサイクリングを支持するためのアミン:塩またはアンモニア:塩比の実行可能な範囲に関して、好ましい比率が調査された。例えば、NaBF・xNH系に関して、金属ナトリウムサイクリングのための適切な塩:アンモニア比に関して、x、NH対塩の比率は、好ましくは1~6、そしてより好ましくは1.5~5、そしてより好ましくは2~4、そしてより好ましくは2.25~3、そしてより好ましくは2.3~2.7、そしてより好ましくは2.4~2.6の範囲であることが可能であり、そして最も好ましくは、約2.5に調節される。上記比率に対して過剰量の溶媒は、融点を低下させる必要がある場合、望ましい。上記比率に対してより高いNaBF塩比は、過剰量のNaBF塩が、NH蒸発が生じる前に、スーパーアルカリ再形成を促進し得るため、より高い電解質沸点が望まれる場合に望ましい。上記比率に対して過剰量の塩は、沸点を上昇させる必要がある場合、望ましい。NHを含まない、すなわち、純粋に有機アミンベースの電解質配合物の場合、沸点は十分に高く、かつ電解質融点を最小化する塩:アミン比を見出すことが一般に有用である。本発明による過剰量のNHの場合、xは、0より高く、0.5未満、より好ましくは0より高く、1.0未満、より好ましくは0より高く、2未満、より好ましくは0より高く、2.4未満、最も好ましくは0より高く、2.5未満で変動し得る。本発明による過剰量の塩の場合、xは、10より高く100まで、より好ましくは5より高く100まで、より好ましくは3より高く100まで、より好ましくは2.6より高く100まで、最も好ましくは2.5より高く100までで変動し得る。
【0034】
同様に、NaBH・xNH系に関して、金属ナトリウムサイクリングのための適切な塩:アンモニア比に関して、x、NH対塩の比率は、好ましくは0.5~6、そしてより好ましくは0.75~5、そしてより好ましくは1~3、そしてより好ましくは1.25~2、そしてより好ましくは1.3~1.7、そしてより好ましくは1.4~1.6の範囲であることが可能であり、そして最も好ましくは、約1.5に調節される。上記比率に対して過剰量の溶媒は、融点を低下させる必要がある場合、望ましい。上記比率に対して過剰量の塩は、沸点を上昇させる必要がある場合、望ましい。NaBF・xNH系と比較して、NaBH・xNH系は、凍結する前、より高い塩比率を可能にすることができる。本発明による過剰量のNHの場合、xは、0より高く、0.5未満、より好ましくは0より高く、1.0未満、より好ましくは0より高く、1.25未満、より好ましくは0より高く、1.4未満、最も好ましくは0より高く、1.5未満で変動し得る。本発明による過剰量の塩の場合、xは、5より高く100まで、より好ましくは2より高く100まで、より好ましくは1.75より高く100まで、より好ましくは1.6より高く100まで、最も好ましくは1.5より高く100までで変動し得る。
【0035】
少なくとも1種がナトリウムと、弱配位ホウ素、アルミニウム、リンまたは塩素コアードアニオンと、アンモニアおよび有機アミンの群から選択される化合物を含む溶媒とを含む、1種以上の塩を含む他の電解質は、本発明に従って可能である。コアードとは、本明細書中、分子コア元素と呼ばれる元素を含有することを意味する。例としては、限定されないが、BF 、BH 、PF 、ClO 、B(CN) 、BFCN、BF(CN) 、BF(CN) 、BHCN、BH(CN) 、BH(CN) 、Al(BH を含む。本発明の一実施形態において、溶媒は、有機アミンの群から選択される1種以上の化合物を含み得、そして好ましくは、エチレンジアミン(EDA)を含む。電解質系がモノアミンをベースとする場合、金属ナトリウムサイクリングのための適切な塩:アミン比は、電解質系が上記高濃度状態を得るようなものであり得;そのような状態を達成するためには、モノアミン:塩の比率xは、好ましくは1~6、そしてより好ましくは2~5、そしてより好ましくは2.5~4、そしてより好ましくは2.75~2.5、そして最も好ましくは2.9~3.1で変動可能である。電解質系がジアミンをベースとする場合、金属ナトリウムサイクリングのための適切な塩:アミン比は、電解質系が上記高濃度状態を得るようなものであり得;そのような状態を達成するためには、モノアミン:塩の比率xは、好ましくは0.5~3、そしてより好ましくは1~2、そしてより好ましくは1.2~1.8、そして最も好ましくは1.4~1.6で変動可能である。電解質系がトリアミンをベースとする場合、金属ナトリウムサイクリングのための適切な塩:アミン比は、電解質系が上記高濃度状態を得るようなものであり得;そのような状態を達成するためには、モノアミン:塩の比率xは、好ましくは0.3~2、そしてより好ましくは0.5~1.5、そしてより好ましくは0.7~1.2、そして最も好ましくは0.9~1.1で変動可能である。上記電解質の混合物は本発明に従って可能であり;対応するアミン:塩比は、このパラグラフで記載された原則に従って調節され得る。前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(塩):xNH のモル比xが1~5であるか、または(塩):y(有機モノアミン)のモル比yが1~5であるか、または(塩):z(有機ジアミン)のモル比zが0.5~2.5であるか、または(塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.3~2であるか、または(塩):(ニトリル)のモル比kが1~5であってよい。塩がNaBF であり、かつ前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(塩):xNH のモル比xが1~3.5であるか、または(塩):y(有機モノアミン)のモル比yが1~3.5であるか、または(塩):z(有機ジアミン)のモル比zが0.5~1.8であるか、または(塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.3~1.2であるか、または(塩):(ニトリル)のモル比kが1~3.5であってよい。塩がNaBH であり、かつ前記電解質の1種以上を含有するいずれの混合物も含めて、(塩):xNH のモル比xが2~3.5であるか、または(塩):y(有機モノアミン)のモル比yが2~3.5であるか、または(塩):z(有機ジアミン)のモル比zが1~1.8であるか、または(塩):j(有機トリアミン)のモル比jが0.7~1.2であるか、または(塩):(ニトリル)のモル比kが2~3.5であってよい。
【0036】
驚くべきことに、塩の混合物を利用することは、溶媒が完全に、またはほぼ完全にスーパーアルカリ状態にある場合、電解質の上記新規分類に達することを促進し得ることが見出された。NaBF塩のみでは、エチレンジアミン中で得ることができる最高可能溶解塩濃度は、NaBF・3.33エチレンジアミンである。NaBr塩のみでは、エチレンジアミン中で得ることができる最高可能溶解塩濃度は、NaBr・3.15エチレンジアミンである。しかしながら、NaBF4およびNaBr塩の混合物を使用する場合、x<3である(yNaBF+(1-y)NaBr)・xエチレンジアミンの組成で、より濃縮された電解質を得ることが可能である。好ましいNaBF:NaBr比は、0.1:0.9~0.9:0.1であり、より好ましくは0.3:0.7~0.7:0.3であり、そしてもっと好ましくは0.4:0.6~0.6:0.4である。同様に、他の塩の混合物は、エチレンジアミンまたはいくつかの他の上記窒素含有溶媒による高濃度電解質を達成するために有用であり得る。好ましい実施形態において、塩濃度は、電解質が本質的に遊離溶媒分子を有さないことを確実にするために十分高い。好ましい実施形態において、電解質はイオン液体である。
【0037】
図1は、上記アンモニエートベースの電解質のための比較ナトリウム析出/ストリッピングボルタモグラムを示す。
【0038】
ほとんどの集電体材料は、上記アンモニエート電解質における平滑なナトリウム析出のためのアノード基板を促進しないが、予想外であることに、銅集電体が、上記アンモニエート電解質における平滑かつ良好に接着性のナトリウム析出を支持することが見出された。
【0039】
驚くべきことに、塩濃度が、スーパーアルカリ形成に関与する全ての溶媒分子に必要とされる最小濃度の0.5~1.0倍のみである場合でさえ、すなわち、適切なイオン液体または局所的規則性形成に必要とされるもの未満である場合でさえ、上記溶媒の部分集合が、銅集電体上での金属ナトリウムの平滑な析出およびサイクリングを支持することが発見された。したがって、電解質系は、この濃度範囲において、有意な量の遊離アミンまたはニトリルを含有し得る。理論によって拘束されないが、この挙動は、平滑な金属ナトリウム析出のために適切である利用された電解質の薄SEI成形容量、およびナトリウム溶解または反応性に対してなお比較的高い塩濃度の有益な効果によって引き起こされると思われる。エチレンジアミン溶媒または主にエチレンジアミンをベースとする溶媒の混合物の使用は、得られた電解質の非常に高いイオン伝導性および高いナトリウム析出レート容量のため、この操作領域において好ましい。次いで、アノードは、0.2V過電位において、ほぼ10mA/cmの電流を達成し得る。エチレンジアミンとのNaBFまたはNaBH塩の使用は、この操作領域において特に好ましい。この系は、4M塩濃度においてその最大イオン伝導性を達成する。図10は、上記4Mエチレンジアミンベースの電解質に関するナトリウム析出/ストリッピングボルタモグラムを示す。前記塩濃度は3M~5Mであってよい。モル塩濃度は少なくとも3であってよい。
【0040】
次の表は、本発明で開示された電解質分類の観察された品質を要約する。例えば、イオン液体型配合物であり得る、これらの液体配合物は、電池およびスーパーキャパシタの範囲を超える他の用途に関しても有用となり得る。
【0041】
【表1】
【0042】
上記電解質基板対との組合せでの使用のために適切なカソード材料に関して、いくつかの高性能カソード材料が、完全電気化学セルの構成のために以下に識別される。
【0043】
ポリ-アントラキノニルスルフィド(Poly-AnthraQuinonyl Sulphide)(PAQS)は、有機電解質における電極材料として以前に調査された[2]。しかしながら、このポリマーは、有機溶媒中でいくらかの溶解度を有し、これは、有機電解質における実際の利用を妨害する。それとは対照的に、PAQSは、サイクリングプロセスの間にアンモニエートベースの電解質中で不溶性であることが見出され、そして適切なエネルギー密度、高い出力密度およびサイクリング安定性に関して、良好な電気化学的性能を示した。この材料の理論的な達成可能容量は、(活性材料を参照して)約210mAh/gであることが見出される。
【0044】
図2は、NaI・3.3NH液体アンモニエート中のPAQSベースの電極に関するサイクリックボルタモグラムを示す。
【0045】
さらに、今まで未知のアントラキノニルスルフィドオリゴマー(AQS-オリゴマー)が、上記液体中のPAQSと同じ不溶性を維持することが見出された。
【0046】
一般に、高分子量を有するアントラキノン誘導体、特に、アントリミドカルバゾールの系統、ならびにそれらの混合物をベースとするバット染料が、良好なカソード性能を有し、そして上記電解質中でのそれらの不溶性のため、容量のわずかな損失を伴う長期サイクリングを可能にすることが見出された。これらの材料は着色および発色のために広く使用されているが[3]、電極物質としてのそれらの潜在的な使用は、今まで未知であった。これらの材料の理論的達成可能容量は、活性材料質量に対して約240mAh/gである。これらの染料のいくつかの例は、インダンスロンブルー(IB、Pigment Blue 60、Vat Blue 4、CI 69800、CAS 81-77-6としても知られる)、Pigment Red 177としても知られるビスアントラキノイル(Cromophtal Red A3B、CI65300、CAS 4051-63-2としても知られる)、Vat Orange 11(Cibanoneyellow 3R、CI 70805、CAS 2172-33-0)、Vat Brown 1(Cibanon Brown、CI 70800、CAS 2475-33-4)、Vat Green 8(Indanthrene Khaki、Vat Khaki 2G、CI 71050、CAS 14999-97-4)およびVat Yellow 28(Indanthren Yellow FFRK、CI 69000)である。
【0047】
限定されないが、アントリミドカルバゾールを含むアントラキノン誘導体をベースとする他のバット染料は、本発明に従って可能である。PAQS、AQS-オリゴマーおよびバット染料は、一般に、カルボニルベースの化合物として分類される。他のカルボニルベースの化合物、特にアンモニエートおよびアミンベースの電解質中での低溶解性を有するものは、本発明に従って可能である。
【0048】
図3は、NaI・3.3NH液体アンモニエート中でのIBベース電極に関するサイクリックボルタモグラムを示す。
【0049】
上記アンモニエートベースの電解質は、充電状態におけるセル組立てのためのアノードナトリウム電着の簡単な調製を支持するさらなる有用性を有する。金属ナトリウムアノードの非常に高い容量のため、非常に薄いアノードフィルムのみが必要とされ、これは、電着以外の手段によって調製することが難しい。電池操作間のいずれの過度に深い自己放電のため、正確なナトリウム厚さの電着は、セル分解を防ぐことにおいても有用である。銅析出上のナトリウムは、非常に高い析出電流レートでさえ、この電解質中で非樹枝状であり、かつ良好に粘着性のままである。そのようなアノード電着のための例示的なセットアップは、アンモニエートベース電解質中に浸漬されたセパレータ被覆フラットナトリウム表面からなる。銅フィルムは、このセパレータ上に配置され、そして電着電流が、この銅フィルムおよびその下のナトリウム金属の間に適用される。銅フィルムは、両側上での均一なナトリウム析出のため、プロセスの中間でひっくり返されてもよい。
【0050】
また、ナトリウムは、本発明に従って同時に両側上に析出され得る。
【0051】
電池セルが、全てのアノード表面にわたって、均一の析出を必要とすることなく、ナトリウムの供給源を使用することによって、充電状態において組み立てられ得ることが見出された。金属ナトリウムの供給源としては、限定されないが、バルクナトリウム、金属ナトリウム箔、金属ナトリウム粉末またはそれらの混合物が含まれる。ナトリウム試験片のこの供給源は、組立ての間、アノード末端と電気的接触させる。例えば、ポーチセル型セル組立ての場合、セルにおいて必要とされるナトリウムの全量の質量を有するナトリウム箔の一片がアノード集積体の1つ上に配置され得る。そのような組立ては二重の利点を有し;ナトリウム析出ステップは省略され得、そしてさらに、ナトリウム反応性は、その完全表面積と比例して減少する。セル組立ての後、セルは、単純に、その末端をレジスタを通して接続することによって放電され得、それによって、抵抗値は、いずれかの有意な電位降下勾配も生じず、全てのカソード材料を通して均一の放電を確実にするための適切に遅い放電レートをもたらすように調整される。この第1の放電のタイミングのための通則として、意図された標準的なセル放電レートは、最長セル寸法対電極の厚さの比率によって掛けられる。例えば、80mm長さ寸法および0.1mmカソード厚さを有する15分放電レートのために設計されたセルの場合、第1の放電の適切なタイミングは、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、より好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上、より好ましくは20時間以上、より好ましくは50時間以上、より好ましくは100時間以上、最も好ましくは200時間の規模である。その後の充電-放電サイクリングにおいて、互いに面する電極間で電気化学反応が生じ、全ての集電体表面にわたって本質的に均一の金属ナトリウム析出がもたらされる。本開示の組立て方法は、上記電解質配合物の強化されたイオン伝導性を利用し;それとは対照的に、従来の電解質配合物では、そのような組立て方法は、数倍長い第1の放電時間を必要とするであろう。
【0052】
カルボニル型PAQS、AQSオリゴマーまたはIBなどのバット染料材料から製造された電極は、充電状態におけるセル組立てのために適切である。さらに、IB材料ベースの電極に関しては、電気化学的にそれらの最大可逆容量まで減少された後、それらは、放電状態においてもセル組立てのために利用するために十分長い時間、乾燥空気中で安定なままであることが見出された。アンモニエートベースの電解質は、さらに、充電状態から放電状態までそれを還元する、カソード電極の費用効果が高い電気化学的還元を支持する。調製されたフィルムは、このセパレータ上に配置され、そして次に、Na/Na参照に関して望ましい電位しきい値(例えば、1.4V)に達するまで、適切なレートで放電することが可能となる。このプロセスの有効性は、アンモニエートベースの電解質の高いイオン伝導性および電極ポーラス構造への自己注入から生じる。特に、インダンスロンブルー活性材料をベースとする電極が、この方法を通して数分以内に、その最大可逆用量付近まで還元可能であることが見出された。カソード材料の電気化学的還元の代わりに、放電状態における上記カソード材料を得るために、化学環元経路も利用されてよい。そのような化学環元は、例えば、カソード材料の分解を避けるために1.4V未満であるべきであるNa/Na参照に関する所望の電位しきい値まで、カソード材料を放電することが可能な適切な還元剤の液体溶液中に、利用されるカソード材料を浸漬すること、それに続いて、カソード材料のろ過および乾燥によって実行され得る。
【0053】
カルボニル型コアードおよびベースの化合物は、本明細書中、カルボニル基またはそれらの誘導体を含有する化合物として定義される。他のカルボニル型/カルボニルベースの化合物は、PAQS、AQSオリゴマーまたはIBなどのバット染料材料に加えて、本発明に従って充電状態におけるセル組立てのために適切であり得る。
【0054】
ガラスマイクロファイバーセパレータは、これまで、上記液体アンモニエートを機能することが見出されている。また加えて、これらの電解質は、良好に湿潤し、かつ親水性型ポリプロピレンセパレータなどの親水性表面を有するセパレータと化学的に適合性がある。
【0055】
上記に加えて、限定されないが、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、LDPEおよびHDPEを含む、いずれの他のセパレータ材料も本発明に従って可能である。固有の浸潤がない場合、電解質は、十分な圧力の適用によって充填されてもよい。セパレータは、スパンデックス、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含んでよい。
【0056】
次のパラグラフは、金属ナトリウムアノードを利用する、エネルギー密度最適化電池セルの製造を記載する。高エネルギー密度は、NaAlCl・xSO型電解質を使用するナトリウムアノードベースのセルから得ることができる。周囲圧力および室温条件下、xは、好ましくは、1.5~2.0の範囲である。ナトリウム析出-溶解におけるナトリウムに関連して、そのような電解質の使用は[4~6]に発表されている。SOとの錯体形成のための純粋なNaAlCl塩の使用に加えて、NaAlClおよび追加的な塩の幾つかの混合物からなる塩混合物も使用されてよいことが見出された。NaAlClと混合するために適切な好ましい追加的な塩の例としては、NaBFおよびNaAl(BHが含まれる。塩の混合物を利用することの潜在的な利点は、NaAlCl・xSOの場合よりも低い周囲温度における塩:SO質量比を達成することである。「SOベースの電解質」という用語は、本明細書中、NaAlCl塩のみと、またはNaAlClおよび上記追加的な塩のいくつかの混合物とのSO溶媒の使用を示す。
【0057】
本発明によると、NaAlCl・xSO電解質組成のxは、0.5~10、より好ましくは1~5、より好ましくは1.25~3、最も好ましくは1.3~2.5で変動可能である。少なくとも1種がナトリウムおよび/またはホウ素を含む他の塩または塩の混合物は、本発明に従って可能である。(塩):xSO の前記モル比xは1~4であってよい。
【0058】
NaAlCl・xSO電解質を利用する電池セルの構成に関する、いくつかの先行文献が存在する[4~6]。これらの出版物は、充電状態における特定の電池セル型の構成を記載する。しかしながら、放電状態における電池セルを製造することが、より望ましい。したがって、本明細書の1つの目的は、金属ナトリウムの析出を支持する、SOベースの電解質を利用する放電状態の電池を組み立てるための実用的な溶液を開示することである。周囲空気下で合成されたSOベースの電解質中に浸漬された銅箔は、どちらかと言うと急速に腐食し、それで不適切な集電体基板となる。驚くべきことに、有意な水質汚染の排除を伴ってSOベースの電解質を合成することによって、そして、例えば、それがその後空気湿分に暴露されないことを保証することによって、この乾燥SOベースの電解質中に浸漬された銅箔は安定し、そして腐食しないままでいることが見出された。さらに、予想外なことに、銅集電体が、上記SOベースの電解質中での平滑かつ良好に接着性のナトリウム析出の調製を可能にすることが見出された。それによって、本質的に湿分を含まないSOベースの電解質と、銅または銅ベース合金から製造されたアノード集電体との組合せが、ナトリウム-アノードベースのセルの放電状態組立てを支持する。
【0059】
図4は、上記SOベースの電解質の典型的な例示的ナトリウム析出/ストリッピングボルタモグラムを示し、アノード操作の時間的安定性も示す。
【0060】
上記アノード-電解質系を補完し、カソードの放電状態に相当し、そして全電池セルの非常に高いエネルギー密度を提供する、2種のカソード材料が見出された。カソード材料の第1の種類はNaClである。好ましい実施形態において、NaClは、ポーラスカーボンフレームワーク上に析出される。利用されたポーラスカーボンフレームワークは、10~5000m/g、より好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも2000、最も好ましくは少なくとも3000m/gの表面積を有する。そのような析出は、例えば、NaCl用の溶媒として無水メタノールを使用することによって実行され得る。これは、次いで、カーボンを溶液中に含浸させ、溶媒を蒸発させ、そして乾燥させることによって、ポーラスカーボンフレームワーク上に析出される。
【0061】
他の溶媒および析出技術は、本発明に従って可能である。
【0062】
好ましい実施形態において、全て、または一部のNaClまたはカソードを構成する他のナトリウム含有材料は、電解質に由来しない。好ましい実施形態において、NaClまたはカソードを構成する他のナトリウム含有材料は、組立て前に調製されたカソード中に析出される。一実施形態において、電解質塩は、NaClまたはカソードを構成する他のナトリウム含有材料の100%未満、より好ましくは90%未満、より好ましくは80%未満、より好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、最も好ましくは50%未満の供給源である。
【0063】
得られたカソード材料は、非常に可逆性の電池セル操作を支持し、そして放電手順間の約3.2V平均セル電位を支持する。図5は、カーボンフレームワークとしてKetjen-Black材料(1400m/g表面積)を使用する場合の、充電/放電サイクリング間のセル電位発展を示す。理論によって拘束される意図はないが、図6は、このセル系のサイクリング間の提案された化学プロセスを示す。充電サイクルの間に、2Cl+SO→SOCl+2e酸化反応によって、SOClが発生する。この充電サイクルを可能にするカーボンフレームワークには、2つの有意な特性がある。第1に、NaClは、好ましくは、それが電極表面を不動態化しないような様式で結晶化する。言い替えれば、NaClの薄層は、カーボン表面を有意に被覆することなく、そしてこのことは、充電電位が3.3~3.35Vの比較的低値から開始することを説明する。第2に、カーボンは、高Cl圧力の発生を妨げる、SOCl形成のための触媒の役割を果たす[7]。ほとんどのNaCl材料は、電気的にカーボン表面から脱着するため、充電プロセスもAlCl+NaCl→NaAlCl反応を必要とし、これは、図6に示されるように、NaCl粒子を消費する。AlClの生成は、カーボン表面において電子移動によって生じる(2AlCl +SO→2AlCl+SOCl+2e)。したがって、NaAlCl電解質塩の役割は、セル操作にも必須である。放電操作は逆の手順である。放電曲線の下方傾斜部分は、カーボンフレームワークの電気化学的二重層の放電と一緒の、カソード表面上のNaCl層の成長に相当するが、放電曲線の平坦な部分は、脱着したNaCl粒子の成長に相当する。それによって、カーボン細孔中を収容され得るNaClの量の唯一の制限は、これらの細孔が完全にプロックされなければならない状態である。可逆セル操作のための他の必要条件は、金属アノード側のSEI層が、放電サイクルの間に損傷を受けてはならないということである。アノードナトリウム金属上のSEIは、少なくとも4.2V充電電位まで安定なままであり、4.3V充電電位までは限定的な損傷のみを被るが、充電電位が4.3Vしきい値を超える場合、セルのシャトル反応をもたらすことが見出された。図5の充電終了時の3.8Vは、SOの約半分がSOClに変換することに相当し、そして4.2Vの充電電位しきい値は、SOからSOClへのほぼ完全な変換に対応する。このセル挙動は、カソード側におけるLiCl不動態化およびアノード側におけるSEI損傷の組み合わせられた影響のため、LiAlCl・xSO電解質におけるLiClの再充電の試みが失敗する場合、このセル構造のLi-類似物とは驚くほど異なる[8]。このセルの操作原理は、電解質自体の酸化還元反応を利用する[4]に記載されるセル操作とは異なる。したがって、本開示は、今まで未知の電池セル化学を記載する。
【0064】
NaAlCl塩のみを利用する場合、セルのエネルギー密度は、それがNaAlCl4・2SO電解質組成物と組み立てられる場合に最適であり、すなわち、周囲条件において最大可能なSO濃度を利用する。NaCl活性材料を利用するそのようなセルの理論的エネルギー密度は、次の反応式に従って計算することができる:
4NaCl+NaAlCl・2SO⇔4Na+NaAlCl・2SOCl
この反応は、材料および電解質の質量に関して184mAh/gの理論的容量に相当する。対応するエネルギー密度は、カーボンフレームワーク表面積にわずかのみ依存し;より大きい表面積のカーボンは、より大きい二重層寄与のため、3.18Vの平坦電位領域と比較して、下方傾斜電位領域に延在する。全平均放電電位は、いずれの適切なカーボンフレームワークによっても、3.2Vレベル付近のままである。したがって、このセル型の対応する理論的エネルギー密度は、約590Wh/kgである。往復エネルギー効率が約85%の値を有することも顕著である。例示的なセルは、カソード側のアルミニウム集電体上のKetjen-Blackカーボンフレームワーク、アノード側の集電体としての銅箔、および本質的に湿分を含まないNaAlCl・2SO電解質を利用することによって構成された。カーボンフレームワークの内部空間は、上記溶媒蒸発ベースのNaCl析出およびその後の電解質充てんによって、モル比xが4:1(すなわち、NaCl:SO間の2:1のモル比)であるxNaCl:NaAlCl・2SOによって充てんされた。得られたセルを充電することが可能であり、この理論的容量が、非常に広範囲まで、実際のセルにおいて得ることが可能であることを示す。
【0065】
xNaCl:NaAlCl・2SO間の他のモル比は、本発明に従って可能である。xは、好ましくは1~40、より好ましくは2~20、より好ましくは3~10、より好ましくは3.5~4、より好ましくは3.75~4.5、より好ましくは3.9~4.1である。理論的セル容量に可能な限り近く達するために、NaCl:SOのモル比が可能な限り2:1に近い(xが4に近い)ことが望ましい。実際的なセルにおいて、有用なNaClの量は、カソードのカーボンモフォロジーによって、または意図された操作温度範囲の融点制限によって制限され得る。過剰量のNaAlCl・2SOが望ましい場合、x/2は、0より大きく1未満、より好ましくは0より大きく1.5未満、より好ましくは0より大きく1.75未満、より好ましくは0より大きく1.9未満、最も好ましくは0より大きく2未満で変動し得る。過剰量のNaClが望ましい場合、x/2は、20より大きく500まで、より好ましくは10より大きく400まで、より好ましくは5より大きく300まで、より好ましくは2.5より大きく200まで、最も好ましくは2より大きく100までで変動し得る。
【0066】
SOベースの電解質との使用のための第2に発見されたカソード材料は、好ましくは約1:1のモル比(x=1)で利用される脱水Na(亜ジチオン酸ナトリウム):xNaAlCl混合物である。好ましい実施形態において、Na:NaAlCl混合物は、ポーラスカーボンフレームワーク上に析出される。利用されたポーラスカーボンフレームワークは、10~5000m/g、より好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも2000、最も好ましくは少なくとも3000m/gの表面積を有する。そのような析出は、例えば、このNa:NaAlCl混合物用の溶媒として無水メタノール、グリオキサル、液体ホルムアルデヒドまたはメタノール-ホルムアルデヒド混合物を使用することによって実行され得る。これは、次いで、カーボンを溶液中に含浸させ、溶媒を蒸発させ、そして乾燥させることによって、ポーラスカーボンフレームワーク上に析出される。
【0067】
脱水Na(亜ジチオン酸ナトリウム):NaAlClのモル比xは、0.01~100、より好ましくは0.25~4、より好ましくは0.5~2、より好ましくは0.75~1.5、より好ましくは0.9~1.1で変動し得、最も好ましくは約1であり得る。セルが、NaAlCl・1.5SOなどの非常に濃縮された電解質と組み立てられる場合、過剰量のNaが望ましく、この場合、xは、0.01~100、より好ましくは0.25~5、より好ましくは0.5~1.25、最も好ましくは0.6~1で変動し得る。例えば、セルは、組立ての間により高沸点の電解質を有するように濃縮されたNaAlCl・1.5SOと組み立てられてもよく、これは次いで、カソード材料中のNa過剰量の使用によって第1の充電サイクルの終了までにほぼ最適なNaAlCl・2SO濃度まで希釈される。
【0068】
得られたカソード材料は、高度に可逆性の電池セル操作を支持し、そして放電手順間の約2.8V平均セル電位を提供する。NaClとは対照に、Na:NaAlCl混合物は、カーボン表面上に厚い層を形成し、それによって、再充電相のために厚さ依存電位平坦域を生じる。カーボンフレームワークとしてKetjen-Black材料(1400m/g表面積)を利用する場合、再充電可能なNa:NaAlClの最大質量は、1gのカーボンあたり約10.5gのNa:NaAlCl混合物に相当し、カーボン質量に関して1500mAh/gの再充電容量が得られる。Na:NaAlClのより少量の析出が実行可能であるが、Na:NaAlClのより高い量の析出は4.2Vのしきい値を越える再充電電位必要条件を生じ、それによって、アノード側でSEIを分解する。理論によって拘束されないが、SOへのNaの酸化は、第1の充電相の間に生じると思われる。次の放電-再充電サイクリングは、電解質としてNaAlCl・2SOを利用する、[4]に記載されるセル反応プロセスに類似していると思われる。このセル型の操作原理は、[4]に記載されるセル操作に類似しているが、本明細書に開示されるセル組成および調製プロセスは、このセル化学を利用する電池セルの望ましい放電状態調製を促進する。
【0069】
Na:NaAlClカソード材料を利用する上記セルの理論的エネルギー密度は、次の反応式によって計算することができる:
Na+NaAlCl→2Na+NaAlCl・2SO⇔2NaCl+NaAlCl(SO
この反応は、析出されたNa:NaAlCl質量に関して143mAh/gの理論的容量に対応する。対応するエネルギー密度は、カーボンフレームワーク表面積に依存し;より大きい表面積のカーボンは、3.0Vの初期放電電位に近い平均放電電位となる。Ketjen-Blackカーボンフレームワーク(1400m/g表面積)を利用する場合、平均放電電位は2.8Vである。それによって、このセル化学は、約400Wh/kgの理論的エネルギー密度に対応する。例示的なセルは、カソード側のアルミニウム集電体上のKetjen-Blackカーボンフレームワーク、アノード側の集電体としての銅箔、および脱水Na:NaAlCl混合物を利用することによって構成された。カーボンフレームワークの内部空間は、1gのカーボンあたり10.5gのNa:NaAlCl混合物の析出後、ほぼ完全に充てんされる。セル構成は、上記溶媒蒸発ベースの析出およびその後の電解質充てんによって実行される。Na:NaAlCl混合物が炭カーボンフレームワーク中の空間をほぼ充てんするため、例示的な実行は、理論的容量が、非常に広範囲まで、実際のセルにおいて得ることができることを示す。
【0070】
上記2種のカソード組成物が、ハイブリッドカソード中に組み合わされてもよく、それ自体のそれぞれの変形から実行可能なものより高いエネルギー密度を支持することが見出された。このハイブリッドカソード材料の実現可能性は、ほぼ完全な電極空間充てんにおいてNa:NaAlCl混合物を再充電する上記能力に基づき、すなわち、それは、再充電プロセスの間にNaAlCl・2SO電解質に変換されるNaClのほかに、残りの空間を占領し得る。この高エネルギー密度セルは、上記個々の組成物と同じ可逆性でサイクル可能である。第1の充電サイクルは、次式に相当する:
4NaCl+Na+NaAlCl→6Na+NaAlCl・2SOCl
理論によって拘束されるように意図されないが、2段階完全セル反応の結果として、改善されたエネルギー密度が説明され得る:
6Na+NaAlCl・2SOCl⇔2Na+4NaCl+NaAlCl・2SO⇔6NaCl+NaAlCl(SO
この最適化されたセルの理論的エネルギー密度は、次のように計算される。全ての活性材料に関して、SOCl還元を伴う第1の放電段階の容量は、170mAh/gである。上記で議論されるように、第1の放電段階の間の平均電位は3.2V付近である。第1の段階のエネルギー密度は、545Wh/kgである。全ての活性材料に関して、SO還元を伴う第2の放電段階の容量は、85mAh/gである。
【0071】
図7は、(炭素質量ベースの容量に関して)第2の放電段階の初期部分における放電電位発展を示す。セル中の大量のNaClの存在は、理論的SO還元電位に関して約0.6V低下した第2段階放電電位にシフトする。予想外であることに、おそらく、電極固体相の再配列のため、放電プロセスの開始において電位の初期増加があることに留意されたい。それによって、第2の放電段階の間の平均電位は2.4Vである。内部空間の多くが、すでにNaClによって占領されているため、SO還元の間の電位は、ほぼ一定の領域に留まり、それによって、この第2段階の放電容量は85mAh/gに制限され、これは、SOカソーライトベースのセルの場合の143mAh/g容量と対照的である。結果として、この第2の放電段階は、205Wh/kgのエネルギー密度をもたらす。そのために、発見されたハイブリッド電池組成の達成可能なエネルギー密度は、750Wh/kgである。このエネルギー密度は、単独でNaCl活性カソード材料から得ることができるものより約27%高い。このハイブリッドカソードによるセルを調製するための例示的な方法は、すでに記載されたNa:NaAlCl4材料ベースのセル調製と類似している。Na:NaAlCl混合物析出に関して記載されるものと同じ溶媒を使用することができるが、使用された塩混合物は、好ましくは、NaCl:Na:NaAlClの間で4:1:1のモル比である。
【0072】
他の塩混合物は、一般に、活性カソード材料が、Na(亜ジチオン酸ナトリウム):xNaAlCl混合物、またはiNaCl:jNa(亜ジチオン酸ナトリウム):kNaAlCl混合物(式中、x、i、jおよびkはモル比を定義する)を含む本発明に従って可能である。好ましくは、xは、0.1~10、より好ましくは0.5~2、最も好ましくは0.9~1.1である。好ましくは、iは1~50であり、jは0.2~5であり、kは0.2~5であり、より好ましくは、iは2~10であり、jは0.5~2であり、kは0.5~2であり、最も好ましくは、iは3.9~4.1であり、jは0.9~1.1であり、kは0.9~1.1である。活性カソード材料は、iNaCl:jNa (亜ジチオン酸ナトリウム):kNaAlCl 混合物を含んでよく、iが3~5であり、jが0.5~2であり、かつkが0.5~2であってよい。
【0073】
上記で開示されたセル配合物は、NaAlCl電解質塩の使用を考慮していたが、この塩は、セル-レベルエネルギー密度をさらに高めるために、部分的により軽量の塩によって置換されることができる。特に、主にNaCl活性カソード材料のみを利用するセルの場合、NaAlCl塩は、上記酸化還元シャトル反応のみに関与し、したがって、別の塩によって、かなりの範囲まで置換されてもよい。置換する塩がNaAlClより軽いこと、そして好ましい(ナトリウム塩)・2SO溶媒比において十分高い電解質沸点、好ましくは少なくとも20℃を支持することが望ましい。追加的な塩が、Na/Naに対して4Vより高い酸化電位を有し、そして室温においてSOと液体電解質を形成することがさらに必要とされる。驚くべきことに、いくつかの塩がSOベースの液体電解質配合物のために適切であり、そして最終電解質配合物のためのいずれかの比率においてNaAlCl含有SOベースの電解質と混合可能であることが発見された。これらの新たに発見された部分的NaAlCl置換塩は、好ましくは500℃未満の融点、より好ましくは100℃~300℃の範囲の融点を有する、低融点塩であるという一般的な特徴を共有し、好ましくはナトリウム含有、より好ましくは、ナトリウムおよびホウ素含有、より好ましくはナトリウム、ホウ素および炭素含有、より好ましくは、ナトリウム、ホウ素、炭素および窒素、またはナトリウム、ホウ素、炭素およびアルミニウム含有であり、最も好ましくは、NaB(CN)、NaBFCN、NaBF(CN)、NaBF(CN)またはNaAl(BHの群から選択される。他の低融ナトリウム含有塩は本発明に従って可能である。
【0074】
完全放電状態におけるセル組立ての代わりに、部分的充電状態においてセルを組み立てることも実行可能である。部分的充電状態を実行する1つの手段は、カソードフレームワーク中にNaClを注入すること、そしてアノード側上にナトリウム金属を析出させることである。次いで、セルにSOベースの電解質を充てんし、そして密封する。このセル調製法は、組立てにおいてセルがカソード側(NaCl)で放電活性およびアノード側(SOベースの電解質に反応し得る金属ナトリウム)で充電活性材料を有するため、部分的充電状態における組立てを表す。部分的充電組立ての他の手段は可能である。
【0075】
4:1のNaCl:NaAlCl・2SOセル形成を考慮して、NaAlCl塩の質量は、全電解質+活性材料質量の35%を表す。例示的な80% NaAlCl置換によって、全電解質+活性材料質量のほぼ20%還元を達成することができる。
【0076】
好ましい放電状態組立て方法に加えて、本発明による費用効果の高いセル組立ての他の望ましい態様は、単純な電解質充てん法である。セル構造の良好な湿潤性は、費用効果の高いセル構成のための有用な利点である。十分な湿潤性によって、電解質がセル中に自己注入し、そして全ての活性材料と完全に接触するため、電解質充てんは単純プロセスである。良好な湿潤性がない場合、セル組立ては、最初に減圧を生じ、次いで高圧の適用によって電解質をセル構造中に強制する、より複雑な充てん系を使用しなければならない。アノードに関して、金属表面は良好な湿潤性を提供し、そしてそれは、金属アノードベースのセルでの作用の1つの利点である。セパレータに関して、Liイオンセルで現在広く利用されているポーラスポリプロピレン型セパレータは、SOベースの電解質に関して湿潤性がないことが見出された。しかしながら、ポーラスポリエチレン型セパレータが、SOベースの電解質に良好な湿潤性を提供することが見出された。純粋ポリエチレンベースのセパレータのほかに、良好に湿潤するセパレータは、ポリプロピレン-ポリエチレン複合材料セパレータなどの、複合材料セパレータ構造を含有するポリエチレンも含む。その良好な浸潤特性のほかに、このセパレータ型は、それぞれの電解質を用いたセルサイクリングの間に化学的に安定していることが見出された。
【0077】
他のセパレータ材料は本発明に従って可能である。
【0078】
カソード構造の湿潤に関して、SOベースの電解質は、結合剤材料が、カーボン質量に関して10重量%未満である割合で利用される場合、カソード電極中に自己注入することが見出された。従来の電極製造技術では、電極中約10%の結合剤が必要とされるが、例えば、乾燥電極プロセス法の場合、10%未満の結合剤比が利用可能であることが最近開示された[9]。例示的な電極調製方法は、カーボン質量に関して6重量%のPTFEまたは熱処理されたPAN結合剤材料の使用、および乾燥プロセス法によるカソード電極の調製を必要とする[9]。アノード、セパレータおよびカソード湿潤に関するこれらの発見によって、上記電解質は、組立てプロセスの間にセル構造中に容易に注入可能である。結合剤材料は、PTFE、PVDF、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)または熱処理されたポリアクリロニトリルであってよい。
【0079】
好ましくは、結合剤の重量%は、1~20、より好ましくは2~10、より好ましくは3~8、最も好ましくは4~7である。
【0080】
浸潤試験は、カーボン質量に関して122重量%の注入NaClを含む、または含まない状態で、カーボン質量に関して6重量%のPTFEを含有するKetjen-Blackカーボンから製造された電極上で実行された。電極は、電解質中に含浸され、そして電極構造中への電解質注入は、含浸の前および後に重量測定によって確認された。セパレータの浸潤試験は同様に行なわれた。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、NaCl活性材料含有セルの第1の充電の間、発生したSOClが、ナトリウムフィルムによって完全に被覆される前にアノード表面上にクロスオーバーし得、それによって、充電反応が非常に遅く実行される場合、アノード側で連続的なシャトル反応が生じる。カチオン伝導性フィルムが、セパレータおよびアノード表面の間で有利に利用され得、これは効果的にSOClのクロスオーバーを阻害し、それによって、第1の充電サイクルを実行するためのより高い融通性がもたらされることが見出された。SOベースの電解質中で安定ないずれのカチオン伝導性フィルムも、この目的のために適切であり、そしてミクロメーター範囲の厚さのNafionフィルムが特に適切であることが見出される。そのようなフィルムがセル調製の間にセパレータ上またはアノード集電体上に析出され得るか、あるいはセパレータおよび集電体の間に挿入された自立フィルムであってもよい。利用されたフィルム材料がSOベースの電解質と適合性があることを条件として、カチオン伝導性フィルム析出のいずれの手段およびいずれのナトリウム伝導性フィルム材料も本発明に従って可能である。
【0082】
本発明のカソードおよびアノードに関して、カソードおよび/またはアノードは、伝導性集電体/機械的支持上に析出されてもよい。上記集電体/機械的支持は、金属を含んでもよいか、または金属表面を有する。金属表面は、例えば、アルミニウムAl、Cu、Ni、Cr、Pd、Pt、Au、Agおよび/または他のいずれかの適切な金属を含み得る。金属集電体表面は、機械的支持、例えば、非金属支持上に堆積されてもよい。上記金属集電体表面は、限定されないが、電気化学的析出、エレクトロスプレー、溶射、物理蒸着法、化学蒸着法、原子層析出無電解析出を含むいずれかの手段によって析出され得る。本発明によれば、カーボンを含む材料は、伝導性集電体/機械的支持フィルム上に適用され得る。
【0083】
本発明の好ましい実施形態は、電解質が、それぞれ、NaBF・2.5NHおよびNaBH・1.5NHのおおよその式を有する、アンモニア中NaBFまたはNaBH塩の高濃度溶液を含む、二次電池またはスーパーキャパシタ用の電気化学セルを含む。電解質塩の濃度は、所望の融点および沸点次第で、それぞれ、例えば、NaBF・2.3NHからNaBF・2.8NHおよびNaBH・1.2NHからNaBH・1.9NHのこれらの示された好ましい濃度値付近で変動し得る。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、アノード集電体基板は、アノード上の金属活性材料の析出を可能にする、銅またはその合金から選択される。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、活性カソード材料は、それらの初期状態または還元ナトリウム塩状態のいずれのセル組立てにおいて利用される、ポリ-アントラキノニル-スルフィドポリマー、AQS-オリゴマーおよびインダンスロンブルーまたは同様のアントリミドカルバゾール化合物を含むカルボニル型化合物から選択される。セルの調製方法の好ましい実施形態において、銅集電体上の金属ナトリウムフィルムは、電解質環境での金属ナトリウム対電極に対する電着によって得られる。セルの調製方法の好ましい実施形態において、充電状態から放電状態へのカソードの制御された還元方法は、電解質環境での金属ナトリウム対電極に対する電気化学的還元による。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、電解質は、好ましくはNaAlCl・2SOの比率でNaAlCl・xSO、((1-y)NaBF+yNaAlCl)・xSOまたは((1-y)NaAl(BH+yNaAlCl)・xSOを含み、かつアノード集電体基板は、アノード上の活性材料の析出を可能にする、銅またはその合金から選択される。電解質塩の濃度は、所望の融点および沸点次第で、好ましい・2SO濃度値周囲へ変動し得る。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、電解質は、アノード上での金属活性材料の析出を促進するために、低い水質汚染を有する。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、活性カソード材料は、NaClを含む。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、活性カソード材料は、好ましくは1:1のモル比のNa(亜ジチオン酸ナトリウム):NaAlCl混合物または好ましくは4:1:1のモル比のNaCl:Na(亜ジチオン酸ナトリウム):NaAlClを含む。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、セパレータは、電解質の良好な湿潤を支持するために、親水性型のポーラスポリプロピレンセパレータなどの親水性表面を含有する。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、セパレータは、電解質の良好な湿潤を支持するために、その構造において、ポーラスポリエチレンを含むか、またはポーラスポリエチレンを含有する。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、カソードは、電極中への電解質自己注入を支持するために、10重量%以下、好ましくは5~6重量%の結合剤比を有する。好ましい実施形態の電気化学セルにおいて、セルは、組立てセルの陰極としてアノード集電体のみを利用して、放電状態で調製される。
【0084】
上記で開示された電解質配合物を良好に補完する、新規ポリマー型高エネルギーカソード材料がさらに発見された。このカソード材料は、トリアジン環およびキノン環のコポリマーである。その構造を図7に示す。この材料は、式[CNaによって記載されてよく、そしてその合成の間に微孔性構造へと自己配列し、そこで明瞭な1~2nm幅のチャネルがイオン泳動を促進する。この材料は、Na/Naに対する1.3Vの低電位限界へと可逆的にサイクル可能である。トリアジンおよびキノン環の両方が、そのサイクリング容量に寄与し、300mAh/gを超過すると測定される非常に高い比容量をもたらす。
【0085】
上記トリアジン-キノンコポリマー合成のための例示的な手順は、2,5-ジクロロ-1,4-ヒドロキノン出発材料をベースとし得る。HからNaイオンへの交換を達成するために、この前駆体は、最初に、水系またははアルコールベースのNaOH溶液中で撹拌される。その次の溶媒の蒸発後に、塩化物からシアン化物への配位子交換を達成するため、それは、NaCNの熱DMSOベースの溶液中で撹拌される。この反応のための適切な温度範囲は、100~150℃である。その後、それをNaOH-NaCl塩共晶と混合し、そして300~400℃の温度範囲でイオサーマル熱処理を受けさせる。微孔性ポリマー構造は、この熱処理の間に自己組立てする。次いで、塩の洗浄除去およびろ過後、最終ポリマーが得られる。
【0086】
本発明の一実施形態は、活性カソード材料がトリアジン-キノンコポリマーを含む、電気化学セルを含む。
【実施例
【0087】
実施例
電解質の調製
実施例1
液体アンモニエートNaI・3.3NHは[1]に従って合成された。
【0088】
実施例2
液体アンモニエートNaBF・2.5NHは、-50℃において23gのNaBFにおいて過剰量のアンモニアを濃縮することによって合成された。反応は、磁気撹拌下で実行され、無色溶液が得られた。調製されたら、過剰量の金属ナトリウムを使用して溶液を精製し、溶液は、酸素および水などの不純物を取り除く溶媒和電子の発生のために青色に変わった。最終的に、溶液は室温に接近し、そして過剰量のアンモニアは、最終のアンモニエートを形成するために蒸発された。組成物は、連続計量によって追跡することが容易である。
【0089】
実施例3
液体アンモニエートNaBH・1.5NHは、実施例2の一般手順に従って合成された。NaBHの初期量は13gであった。
【0090】
実施例4
NaAlCl・2SO電解質は、[4]に従って合成された。
【0091】
約20℃のその沸点が観察された。NaAlCl:1.5SO電解質は、同じ初期手順に従って合成され、そしてその後、NaAlCl・1.5SOに達するまでSOを蒸発させるため、加温した。NaAlCl:1.5SOに関して、約40℃の沸点が観察された。
【0092】
活性材料の調製
実施例5
PAQS活性材料は、[2]に従って調製された。無水NaSは、いくつかのステップでの乾燥によってNaS・9HOから水和水を除去することによって得られ、最初に、NaS・9HOを50℃で240分間加熱し、次いで、温度を240分間、80℃まで増加させた。第3のステップにおいて、温度は2時間、120℃であった。最終的に、温度を2時間、160℃まで増加させ、乾燥NaSを得た。
【0093】
実施例6
インダンスロンブルーベースの電極のための活性材料は、溶媒熱法によって調製された。インダンスロンブルーおよびカーボンナノチューブは、伝導性カーボン添加剤として、磁気撹拌下、室温で、比率7/5でN-メチルピロリジン中に分散され、スラリーを形成した。次いで、混合物を一晩、180℃においてオートクレーブ中で加熱する。生成物をろ過し、そして数回、脱イオン水で洗浄した。最終的に、それを真空オーブン中で3時間、150℃において、次いで、8時間、80℃において乾燥させた。
【0094】
陽極の調製
実施例7
60重量%の実施例5からのPAQS、30重量%のカーボンナノチューブおよび10重量%の結合剤としてのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を350rpmにおいて2時間、ボールミル中で混合した。次いで、1.5トンにおいて2分間、水圧プレスを使用して、均質混合物を、カーボンコーティングされたアルミニウム箔上にプレスした。最終電極を一晩、真空オーブン中、60℃で乾燥させた。平均電極材料質量は、1.1cm基板面積を被覆する8mgである。
【0095】
実施例8
90重量%の実施例6からの活性材料を、10重量%のPVDF(ポリビニリデンフルオリド)と一緒に、磁気撹拌下、室温で、N-メチルピロリジン中に分散させ、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、カーボンコーティングされたアルミニウム箔上にコーティングした。最終的に、電極を一晩、80℃で乾燥させた。平均材料は、1.1cmにおいて3.5mgの混合物である。
【0096】
実施例9
90重量%の実施例6からのインダンスロンブルーおよびカーボンナノチューブの混合物および10重量%のPTFEを、2時間、350rpmにおいてボールミル中で混合した。1.5トンにおいて2分間、水圧プレスを使用して、均質混合物を、カーボンコーティングされたアルミニウム上にプレスした。最終的に、電極を5時間、130℃において真空オーブン中で乾燥させた。
【0097】
実施例10
電極フレームワークは、94重量%のKetjen-Blackカーボンおよび6重量%のPTFEの混合物から調製された。この混合物は、[9]の乾燥プレス手順に従って、カーボンコーティングされたアルミニウム集電体上に乾燥プレスされた。NaClを無水メタノール中に溶解し、そして溶液を、NaClおよびカーボン間で約2.5:1質量比を得るために十分な量で電極上にドロップキャストした。最終的に、電極を真空下で一晩、80℃において乾燥させた。
【0098】
充電状態組立てのための陰極の調製
実施例11
ナトリウム電極は、上記アンモニエート中、銅基板上で一定電位(Na/Naに対して-0.1V)での電着によって調製された。
【0099】
再充電可能な電池の調製
実施例12
ナトリウムアノード、NaI・3.3NH電解質に含浸された厚さ420ミクロンのガラスマイクロ繊維セパレータおよび実施例7からのPAQSベースのカソードを有する再充電可能なナトリウム電池が調製された。本実施例のために調製された電池は、150mA・h・g-1 PAQSの最大カソード容量を示した。セルに、Na/Naに対して2.6Vから1.2Vの限界を使用して7分の急速放電/充電サイクルを受けさせた。最初の50サイクル間の活性材料容量の平均利用率は64%であった。
【0100】
実施例13
ナトリウムアノード、NaI・3.3NH電解質に含浸された厚さ420ミクロンのガラスマイクロ繊維セパレータおよび実施例8からのインダンスロンブルーベースのカソードを有する再充電可能なナトリウム電池が調製された。本実施例のために調製された電池は、150mA・h・g-1 IBの最大カソード容量で、約600サイクルを示した。セルに、Na/Naに対して2.5Vから1.3Vの限界を使用して5分の急速放電/充電サイクルを受けさせた。活性材料容量の平均利用率は62%であった。
【0101】
実施例14
ナトリウムアノード、NaBF・1.5NH電解質に含浸された厚さ420ミクロンのガラスマイクロ繊維セパレータおよび実施例8からのインダンスロンブルーベースのカソードを有する再充電可能なナトリウム電池が調製された。本実施例のために調製された電池は、200mA・h・g-1 IBの最大カソード容量で、約100サイクルを示した。セルに、Na/Naに対して3Vから1.4Vの限界を使用して5分の急速放電/充電サイクルを受けさせた。放電/充電プロセス間の活性材料容量の平均利用率は77%であった。
【0102】
実施例15
ナトリウムアノード、NaI・3.3NH電解質に含浸された厚さ420ミクロンのガラスマイクロ繊維セパレータおよび実施例9からのインダンスロンブルーベースのカソードを有する再充電可能なナトリウム電池が調製された。本実施例のために調製された電池は、約550サイクルを示し、かつ容量損失は有意ではなかった。セルに、Na/Naに対して2.5Vから1.4Vの限界を使用して、種々のCレートを受けさせた(図8)。
【0103】
実施例16
銅箔陰極、厚さ15ミクロンのポーラスポリエチレンセパレータおよび実施例10からのNaClベースの陽極を有する再充電可能なナトリウム電池が調製された。セパレータおよび陽極の両方はNaAlCl・2SO電解質中に含浸された。本実施例のために調製された電池は、NaCl質量に関して435mAh/gの容量を示した。
【0104】
実施例17
電解質は、エチレンジアミン中に溶解された4モルのNaBFから調製された。ナトリウムアノード、NaBF・1.5NH電解質に含浸された厚さ420ミクロンのガラスマイクロ繊維セパレータおよび実施例8からのインダンスロンブルーベースのカソードを有する再充電可能なナトリウム電池が調製された。本実施例のために調製された電池は、200mA・h・g-1 IBの最大カソード容量で、約100サイクルを示した。セル容量は、サイクル間、安定なままであり、そして検証により、有意な電解質反応またはカソード材料クロスオーバーのいずれかの兆候も生じず、光沢ナトリウム表面を示した。
【0105】
実施例18
実施例16と同一の手順によるが、プレーンなポリエチレンセパレータの代わりに、ナトリウム化Nafionコーティングポリエチレンセパレータを使用して、再充電可能な電池を調製した。マイクロメートル厚のNafionコーティングは、[10]に記載の手順に従って、セパレータ上に析出された。セルは、実施例16のセルと同一の容量およびサイクリング安定性を示した。
【0106】
参照:
1. Goncalves et al. Portugaliae Electrochimica Acta (2006); 24: 117-127.
2. Deng et al. Nature Scientific Reports (2013); 3: 2671.
3. Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology.
4. G. Jeong et al. Nature Scientific Reports (2015); 5:12827.
5. Patent number US 2014/0220428 A1
6. Patent number EP 2860799 A1
7. R McKee et al. Industrial and Engineering Chemistry (1924); 16:4
8. S Hossain et al. LABCOM Contract DAAL01-89-C-0939; 2nd Quarterly Report
9. Patent number DE 10 2012 203 019 A1
10. Bauer et al. Chem. Commun. (2014); 50:3208-3210.
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