(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
F16C 19/36 20060101AFI20240911BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20240911BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F16C19/36
F16C33/58
F16H1/32 A
(21)【出願番号】P 2019119463
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】古田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】栩川 佑樹
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166678(JP,A)
【文献】特開2019-052755(JP,A)
【文献】特許第5180869(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,33/30-33/66
F16H 1/28-1/48,57/00-57/12,
48/00-48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターレース、インナーレース、および前記アウターレースと前記インナーレースとの間に配置された複数のころを有する円すいころ軸受と、
前記アウターレースとは別体に設けられているとともに前記アウターレースが装着された外側部材と、
前記インナーレースとは別体に設けられているとともに前記インナーレースが装着され軸部材が回転可能に支持される軸孔を有する内側部材と、を備え、
前記円すいころ軸受が前記軸孔の孔内周面を通らない荷重作用線を有する
減速機。
【請求項2】
前記円すいころ軸受の接触角は40°以上50°以下である
請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
前記インナーレースの軸線方向端面から前記インナーレースの表面と前記荷重作用線との交点までの前記軸線方向の距離Aと、
前記インナーレースおよび前記アウターレースの全体の前記軸線方向における寸法Bとが、
0≦A/B≦0.2
の関係を満たす
請求項1に記載の減速機。
【請求項4】
前記インナーレースの軸線方向端面から前記インナーレースの表面と前記荷重作用線との交点までの前記軸線方向の距離Aと、
前記インナーレースの前記軸線方向における寸法B1とが、
0≦A/B1≦0.3
の関係を満たす
請求項1に記載の減速機。
【請求項5】
円環状に形成され径方向の内側を向く外転動面を有するアウターレース、前記アウターレースと同軸に配置され前記径方向の外側を向く内転動面を有するインナーレース、および前記内転動面上および前記外転動面上を転動する複数のころを持つ円すいころ軸受と、
前記アウターレースが装着された外側部材と、
前記インナーレースが装着された軸受装着部を有し前記軸受装着部が軸線方向に貫通する軸孔を持つ内側部材と、
前記軸孔に挿入され前記内側部材に回転可能に支持された軸部材と、
前記軸受装着部と前記軸部材との間に介在し前記軸孔の内周面上を転動する複数の転動体を有する針軸受と、
を備え、
前記円すいころ軸受の荷重作用線は前記軸孔の内周面の全体よりも前記軸線方向の外側を通り、
前記円すいころ軸受の接触角は40°以上50°以下であり、
前記インナーレースにおける前記軸線方向の外側の端部から前記インナーレースの表面における前記荷重作用線との交点までの前記軸線方向の距離をAとし、
前記インナーレースおよび前記アウターレースの全体の前記軸線方向における寸法をBとし、
前記インナーレースの前記軸線方向における寸法をB1としたとき、
0≦A/B≦0.2
の関係、および
0≦A/B1≦0.3
の関係を満たす減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットや工作機械等においては、モーター等の回転駆動源の回転を減速するために減速機が用いられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の減速機は、外歯歯車と、外歯歯車が内接噛合する内歯歯車と、内歯歯車が設けられたケーシングと、ケーシングと相対回転するキャリアと、ケーシングとキャリアとの間に配置された主軸受と、円すいころ軸受を介してキャリアに回転自在に支持された偏心体軸と、を備える。この減速機では、外歯歯車が針軸受を介して偏心体軸の偏心体に取り付けられしている。
【0003】
ところで、主軸受に円すいころ軸受を用いることで、主軸受にアンギュラ玉軸受を用いた構成と比較して、許容モーメントや減速機の剛性等を向上させることができる。その反面、減速機にかかる負荷が増大するため、減速機の構成部品の変形量が増える懸念があり、減速機の構成部品を適宜肉厚に形成する必要がある。特に、主軸受の内輪が装着される部分は、主軸受の荷重がかかりやすいので、変形抑制のために肉厚に形成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、減速機の構成部品を肉厚に形成しなければならない場合、設計上の制約の増加や、減速機の大型化等が問題となる。したがって、従来の軸受にあっては、軸受が装着される減速機等の回転機器の構成部品が厚肉化することを抑制するという点で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、回転機器の構成部品を薄肉化できる軸受、およびその軸受を備える減速機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る減速機は、アウターレースを有する外側部材と、インナーレースおよび軸部材が回転可能に支持される軸孔を有する内側部材と、前記アウターレースと前記インナーレースとの間に配置された複数のころと、を有し、前記軸孔の孔内周面を通らない荷重作用線を有する円すいころ軸受を備える。
【0012】
本発明の一態様に係る減速機によれば、荷重作用線が軸孔の孔内周面を通過することを回避できる。これにより、内側部材の外周面と軸孔の孔内周面との間の薄肉に形成された部分が径方向の内側に向けて撓むように変形することが抑制され、内側部材におけるインナーレースが装着される部分にかかる負荷を低減できる。したがって、内側部材におけるインナーレースが装着される部分を薄肉化でき、減速機の小型化を図ることができる。
【0013】
上記態様の減速機であって、前記円すいころ軸受の接触角は40°以上50°以下であってもよい。
【0014】
上記態様の減速機であって、前記インナーレースの軸線方向端面から前記インナーレースの表面と前記荷重作用線との交点までの前記軸線方向の距離Aと、前記インナーレースおよび前記アウターレースの全体の前記軸線方向における寸法Bとが、0≦A/B≦0.2の関係を満たしてもよい。
【0015】
上記態様の減速機であって、前記インナーレースの軸線方向端面から前記インナーレースの表面と前記荷重作用線との交点までの前記軸線方向の距離Aと、前記インナーレースの前記軸線方向における寸法B1とが、0≦A/B1≦0.3の関係を満たしてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る減速機は、円環状に形成され径方向の内側を向く外転動面を有するアウターレース、前記アウターレースと同軸に配置され前記径方向の外側を向く内転動面を有するインナーレース、および前記内転動面上および前記外転動面上を転動する複数のころを持つ円すいころ軸受と、前記アウターレースが装着された外側部材と、前記インナーレースが装着された軸受装着部を有し前記軸受装着部が軸孔を持つ内側部材と、前記軸孔に配置され前記内側部材に回転可能に支持された軸部材と、前記軸受装着部と前記軸部材との間に介在し前記軸孔の内周面上を転動する複数の転動体を有する針軸受と、を備え、前記円すいころ軸受の荷重作用線は前記軸受装着部における前記軸孔の内周面よりも前記円すいころ軸受の軸線方向の外側を通り、前記円すいころ軸受の接触角は40°以上50°以下であり、前記インナーレースにおける前記軸線方向の外側の端部から前記インナーレースの表面における前記荷重作用線との交点までの前記軸線方向の距離をAとし、前記インナーレースおよび前記アウターレースの全体の前記軸線方向における寸法をBとし、前記インナーレースの前記軸線方向における寸法をB1としたとき、0≦A/B≦0.2の関係、および0≦A/B1≦0.3の関係を満たす。
【0017】
本発明の一態様に係る減速機によれば、軸受装着部を薄肉化でき、減速機の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転機器の構成部品を薄肉化できる軸受、およびその軸受を備える減速機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1に示す減速機の断面の一部を拡大して示す図である。
【
図3】
図2に示す減速機の断面の一部を拡大して示す図である。
【
図4】
図1に示す減速機の断面の一部を拡大して示す図である。
【
図5】実施例の減速機における第1主軸受の接触角と、寿命および剛性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る減速機1について添付の図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本実施形態の減速機1は、例えばロボットアームの関節部等に適用される偏心揺動型の歯車伝動装置である。
【0021】
図1は、実施形態に係る減速機の半断面図である。
図1に示すように、減速機1は、ケースとしての外筒2(外側部材)と、外筒2に回転可能に支持されたキャリア3(内側部材)と、キャリア3に回転可能に支持された複数のクランク軸4(軸部材)と、複数のクランク軸4に回転可能に取り付けられた第1揺動歯車5Aおよび第2揺動歯車5Bと、外筒2とキャリア3との間に介在する第1主軸受6Aおよび第2主軸受6Bと、キャリア3とクランク軸4との間に介在する第1クランク軸受7Aおよび第2クランク軸受7Bと、クランク軸4と第1揺動歯車5Aとの間に介在する第1偏心軸受8Aと、クランク軸4と第2揺動歯車5Bとの間に介在する第2偏心軸受8Bと、を備える。減速機1は、図示しない入力軸を外筒2に対して回転させ、入力軸の入力回転から減速した出力回転を得るように、外筒2とキャリア3とを軸線O回りに相対回転させる偏心揺動型の歯車伝動装置である。なお、以下の説明では、軸線Oに沿う方向を軸方向(軸線方向)といい、軸線Oに直交して軸線Oから放射状に延びる方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。また、以下の説明で用いる「軸方向の内側」は外筒2の中心側を意味し、「軸方向の外側」は外筒2の中心とは反対側を意味する。
【0022】
外筒2は、軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。外筒2の内周面は、複数のピン溝21aが形成された内歯部21と、第1主軸受6Aのアウターレース61Aを保持する第1アウターレース保持部22と、第2主軸受6Bのアウターレース61Bを保持する第2アウターレース保持部23と、オイルシール11が装着されるシール部24と、を備える。
【0023】
内歯部21は、外筒2の内周面における軸方向の中間部に形成されている。なお、本実施形態で用いる「中間」とは、対象の両端間の中央のみならず、対象の両端間の内側の範囲を含む意とする。複数のピン溝21aは、それぞれ軸方向に延びている。複数のピン溝21aは、周方向に等間隔に配置されている。各ピン溝21aには、円柱状の内歯ピン25が回転可能に保持されている。
【0024】
第1アウターレース保持部22および第2アウターレース保持部23は、内歯部21を挟んで互いに反対側に位置している。第1アウターレース保持部22および第2アウターレース保持部23は、それぞれ内歯部21に軸方向で隣接している。第1アウターレース保持部22は、内歯部21に対して軸方向の第1側に位置している。第1アウターレース保持部22は、軸線Oを中心として一定の内径で軸方向に延びている。第1アウターレース保持部22は、段差面26を介して内歯部21に接続している。段差面26は、軸方向の外側を向き、周方向および径方向に延びている。第2アウターレース保持部23は、内歯部21に対して軸方向の第2側に位置している。第2アウターレース保持部23は、軸線Oを中心として一定の内径で軸方向に延びている。第2アウターレース保持部23は、段差面27を介して内歯部21に接続している。段差面27は、軸方向の外側を向き、周方向および径方向に延びている。
【0025】
シール部24は、第1アウターレース保持部22を挟んで内歯部21とは反対側に位置している。シール部24は、第1アウターレース保持部22に軸方向で隣接している。シール部24は、軸線Oを中心として一定の内径で延びている。シール部24の内径は、第1アウターレース保持部22の内径よりも大きい。シール部24は、段差面28を介して第1アウターレース保持部22に接続している。段差面28は、軸方向の外側を向き、周方向および径方向に延びている。シール部24には、オイルシール11の外周部が接触している。
【0026】
キャリア3は、減速機1の出力回転を受け取る被駆動部が取り付けられる出力軸として機能する。キャリア3は、全体として軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。キャリア3は、外筒2の内周側に配置されている。キャリア3は、外筒2から軸方向の両側に突出している。キャリア3は、第1キャリアブロック30と第2キャリアブロック50とに軸方向に分割可能に形成されている。第1キャリアブロック30は、第2キャリアブロック50に対して軸方向の第1側に配置されている。第1キャリアブロック30における第2キャリアブロック50とは反対側(軸方向の第1側)を向く面は、被駆動部が装着される装着面30aとされている。第1キャリアブロック30および第2キャリアブロック50は、互いに締結されて一体化している。
【0027】
第1キャリアブロック30は、基部31と、図示しない複数の支柱部と、を備える。基部31は、外筒2の内歯部21に対して軸方向で第1アウターレース保持部22と同じ側に配置されている。基部31は、軸線Oを中心とする円盤状に形成されている。基部31は、第1主軸受6Aを介して外筒2に回転可能に支持されている。基部31は、第1主軸受6Aが装着される第1主軸受装着部32を有する。第1主軸受装着部32は、基部31における軸方向で第2キャリアブロック50側の端部に形成されている。
【0028】
基部31の外周面は、第1主軸受6Aのインナーレース62Aを保持する第1インナーレース保持部33と、オイルシール11が装着されるシール部34と、を備える。第1インナーレース保持部33は、第1主軸受装着部32の外周面である。第1インナーレース保持部33の少なくとも一部は、外筒2の第1アウターレース保持部22に径方向で対向している。第1インナーレース保持部33は、軸線Oを中心として一定の外径で軸方向に延びている。第1インナーレース保持部33は、基部31の外周面における軸方向の内側の端部を含む。シール部34の少なくとも一部は、外筒2のシール部24に径方向で対向している。シール部34は、第1インナーレース保持部33に軸方向で隣接している。シール部34は、第1インナーレース保持部33に対して軸方向の外側に位置している。シール部34は、軸線Oを中心として一定の外径で延びている。シール部34は、段差面35を介して第1インナーレース保持部33に接続している。段差面35は、軸方向の内側を向き、周方向および径方向に延びている。シール部34には、オイルシール11の内周部が接触している。
【0029】
基部31は、クランク軸4が挿入される第1軸取付孔41(軸孔)を有する。第1軸取付孔41は、複数のクランク軸4と同数設けられている。複数の第1軸取付孔41は、周方向に等間隔で配置されている。第1軸取付孔41の内周面は、軸方向から見て円形状に形成されている。第1軸取付孔41は、軸方向の内側に開口している。第1軸取付孔41の少なくとも一部は、第1主軸受装着部32に設けられている。第1軸取付孔41の内周面は、第1軸支持部42と、ブッシュ保持部43と、拡径部44と、連通部45と、を備える。第1軸支持部42および拡径部44は、第1主軸受装着部32に位置している。ブッシュ保持部43および連通部45は、第1主軸受装着部32よりも軸方向の外側に位置している。
【0030】
第1軸支持部42は、第1軸取付孔41における軸方向の内側の端部に形成されている。第1軸支持部42は、一定の内径で軸方向に延びている。ブッシュ保持部43は、第1軸支持部42に対して軸方向の外側に形成されている。ブッシュ保持部43は、第1軸支持部42と同軸に形成されている。ブッシュ保持部43は、一定の内径で軸方向に延びている。ブッシュ保持部43の内径は、第1軸支持部42の内径よりも小さい。拡径部44は、第1軸支持部42とブッシュ保持部43との間に形成されている。拡径部44は、第1軸支持部42およびブッシュ保持部43に接続している。拡径部44は、第1軸支持部42およびブッシュ保持部43よりも内径を拡大するように全周にわたって形成されている。連通部45は、ブッシュ保持部43に軸方向で隣接している。連通部45は、ブッシュ保持部43を挟んで第1軸支持部42とは反対側に形成されている。連通部45は、軸方向の外側に開口している。連通部45の内径は、ブッシュ保持部43の内径よりも小さい。連通部45の内側には、シールキャップ12が嵌入されている。ブッシュ保持部43と連通部45との間には、段差面46が形成されている。段差面46は、軸方向に直交する方向に延びている。段差面46は、軸方向の内側を向いている。
【0031】
図示しないが、複数の支柱部は、周方向における一対の第1軸取付孔41の間に1つずつ設けられている。複数の支柱部は、基部31から軸方向に突出している。複数の支柱部は、外筒2の内歯部21の内側に位置している。複数の支柱部は、基部31と一体的に設けられている。
【0032】
第2キャリアブロック50は、軸方向において外筒2の内歯部21を挟んで第1キャリアブロック30の基部31とは反対側に配置されている。すなわち第2キャリアブロック50は、基部31に対して軸方向の第2側に間隔をあけて配置されている。第2キャリアブロック50は、第1キャリアブロック30の複数の支柱部の突端部に締結され、第1キャリアブロック30と一体化している。第2キャリアブロック50は、軸線Oを中心とする円盤状に形成されている。第2キャリアブロック50は、第2主軸受6Bを介して外筒2に回転可能に支持されている。第2キャリアブロック50は、第2主軸受6Bが装着される第2主軸受装着部51を有する。第2主軸受装着部51は、第2キャリアブロック50における軸方向の内側の端部に形成されている。
【0033】
第2キャリアブロック50の外周面は、第2主軸受6Bのインナーレース62Bを保持する第2インナーレース保持部52を備える。第2インナーレース保持部52は、第2主軸受装着部51の外周面である。第2インナーレース保持部52の少なくとも一部は、外筒2の第2アウターレース保持部23に径方向で対向している。第2インナーレース保持部52は、軸線Oを中心として一定の外径で軸方向に延びている。第2インナーレース保持部52は、第2キャリアブロック50の外周面における軸方向の内側の端部を含む。第2インナーレース保持部52における軸方向の外側の端部には、周方向および径方向に延びる段差面53が接続している。
【0034】
第2キャリアブロック50は、クランク軸4が挿入される第2軸取付孔54(軸孔)を有する。第2軸取付孔54は、複数のクランク軸4と同数設けられている。各第2軸取付孔54は、第1キャリアブロック30の第1軸取付孔41と同軸に形成されている。第2軸取付孔54の内周面は、軸方向から見て円形状に形成されている。第2軸取付孔54は、軸方向の内側に開口している。第2軸取付孔54の少なくとも一部は、第2主軸受装着部51に設けられている。第2軸取付孔54の内周面は、第2軸支持部55と、めねじ部56と、を備える。第2軸支持部55の全体、およびめねじ部56の一部は、第2主軸受装着部51に位置している。
【0035】
第2軸支持部55は、第2軸取付孔54における軸方向の内側の端部に形成されている。第2軸支持部55は、一定の内径で軸方向に延びている。めねじ部56は、第2軸支持部55に軸方向で隣接している。めねじ部56は、第2軸取付孔54における軸方向の外側の端部に形成されている。めねじ部56の内径は、第2軸支持部55の内径よりも大きい。第2軸支持部55とめねじ部56との間には、段差面57が形成されている。段差面57は、軸方向に直交する方向に延びている。段差面57は、軸方向の外側を向いている。
【0036】
図2は、
図1に示す減速機の断面の一部を拡大して示す図である。
図2に示すように、第1主軸受6Aは、円すいころ軸受である。第1主軸受6Aは、外筒2と第1キャリアブロック30の基部31との間に配置されている。第1主軸受6Aは、アウターレース61Aと、インナーレース62Aと、複数のころ63Aと、保持器64Aと、を備える。
【0037】
アウターレース61Aは、軸線Oを中心とする円環状に形成されている。アウターレース61Aは、外筒2の第1アウターレース保持部22に嵌め合わされている。アウターレース61Aは、一定の外径で延びる外周面61aと、軸方向の内側を向く端面61bと、軸線Oに対して傾斜した外転動面61cと、を有する。端面61bは、段差面26に接触している。端面61bは、内歯ピン25の端部に対向し、内歯ピン25の軸方向の第1側への変位を規制している。外転動面61cは、径方向の内側かつ軸方向の外側を向いている。
【0038】
インナーレース62Aは、アウターレース61Aと同軸の円環状に形成されている。インナーレース62Aは、第1キャリアブロック30の基部31の第1インナーレース保持部33に嵌め合わされている。インナーレース62Aは、一定の内径で延びる内周面62a(孔内周面)と、軸方向の外側を向く端面62b(軸線方向端面)と、内周面62aと端面62bとの間に形成された面取り部62cと、軸線Oに対して傾斜した内転動面62dと、を有する。端面62bは、段差面35に接触している。面取り部62cは、内周面62aにおける軸方向外側の端部と、端面62bにおける径方向の内側の端部と、の間に形成されている。内転動面62dは、アウターレース61Aの外転動面61cに対向している。内転動面62dは、径方向の外側かつ軸方向の内側を向いている。
【0039】
複数のころ63Aは、それぞれアウターレース61Aとインナーレース62Aとの間に配置されている。複数のころ63Aは、周方向に等間隔に並んでいる。複数のころ63Aは、アウターレース61Aの外転動面61c上、およびインナーレース62Aの内転動面62d上を転動しながら軸線O回りを周回する。
【0040】
保持器64Aは、アウターレース61Aとインナーレース62Aとの間に配置されている。保持器64Aは、複数のころ63Aを保持する。保持器64Aは、アウターレース61Aと同軸の円環状に形成されている。保持器64Aには、複数のころ63Aを1つずつ保持する複数のポケットが形成されている。
【0041】
第1主軸受6Aの接触角θは、40°以上50°以下である。なお、接触角θは、軸線Oに対するアウターレース61Aの外転動面61cの母線の傾斜角度である。つまり、接触角θは、外転動面61cの任意点における法線と、軸線Oに直交して前記任意点を通る直線と、のなす角度である。
【0042】
ここで、第1主軸受6Aのインナーレース62Aの端面62bからインナーレース62Aの表面における荷重作用線AL1(後述)との交点Pまでの軸方向の距離をAとする(
図3参照)。さらに、インナーレース62Aおよびアウターレース61Aの全体の軸方向における寸法をBとする。このとき、第1主軸受6Aは、以下の式(1)に示す関係を満たすように形成されている。
0≦A/B≦0.2 ・・・(1)
【0043】
また、インナーレース62Aの軸方向における寸法をB1とする。このとき、第1主軸受6Aは、以下の式(2)に示す関係を満たすように形成されている。
0≦A/B1≦0.3 ・・・(2)
【0044】
図4は、
図1に示す減速機の断面の一部を拡大して示す図である。
図4に示すように、第2主軸受6Bは、円すいころ軸受である。第2主軸受6Bは、外筒2と第2キャリアブロック50との間に配置されている。第2主軸受6Bは、アウターレース61Bと、インナーレース62Bと、複数のころ63Bと、保持器64Bと、を備える。
【0045】
アウターレース61Bは、外筒2の第2アウターレース保持部23に嵌め合わされている。アウターレース61Bは、第1主軸受6Aのアウターレース61Aと同様に、一定の外径で延びる外周面61aと、軸方向の内側を向く端面61bと、軸線Oに対して傾斜した外転動面61cと、を有する。端面61bは、段差面27に接触している。端面61bは、内歯ピン25の端部に対向し、内歯ピン25の軸方向の第2側への変位を規制している。
【0046】
インナーレース62Bは、第2キャリアブロック50の第2インナーレース保持部52に嵌め合わされている。インナーレースは、第1主軸受6Aのインナーレース62Aと同様に、一定の内径で延びる内周面62aと、軸方向の外側を向く端面62bと、内周面62aと端面62bとの間に形成された面取り部62cと、軸線Oに対して傾斜した内転動面62dと、を有する。端面62bは、段差面53に対向している。端面62bと段差面53との間には円環状のスペーサ13が挟まれている。
【0047】
複数のころ63Bは、それぞれアウターレース61Bとインナーレース62Bとの間に配置されている。複数のころ63Bは、周方向に等間隔に並んでいる。複数のころ63Bは、アウターレース61Bの外転動面61c上、およびインナーレース62Bの内転動面62d上を転動しながら軸線O回りを周回する。
【0048】
保持器64Bは、アウターレース61Bとインナーレース62Bとの間に配置されている。保持器64Bは、複数のころ63Bを保持する。保持器64Bは、アウターレース61Bと同軸の円環状に形成されている。保持器64Bには、複数のころ63Bを1つずつ保持する複数のポケットが形成されている。
【0049】
第2主軸受6Bの接触角は、40°以上50°以下である。なお、接触角の定義は、第1主軸受6Aと同様である。また、第2主軸受6Bについても、第1主軸受6Aと同様に上記の式(1)および式(2)の関係を満たすように形成されている。
【0050】
図1に示すように、複数のクランク軸4は、外筒2の内周側において周方向に等間隔で配置されている。各クランク軸4は、一対の第1クランク軸受7Aおよび第2クランク軸受7Bを介してキャリア3に回転可能に支持されている。具体的に、各クランク軸4は、第1キャリアブロック30の第1軸取付孔41の内側で第1クランク軸受7Aを介して第1キャリアブロック30に回転可能に支持されている。また、各クランク軸4は、第2キャリアブロック50の第2軸取付孔54の内側で第2クランク軸受7Bを介して第2キャリアブロック50に回転可能に支持されている。各クランク軸4は、第1ジャーナル部71および第2ジャーナル部72と、第1偏心部73および第2偏心部74と、小径部75と、を有する。
【0051】
第1ジャーナル部71は、第1キャリアブロック30の第1軸支持部42の内側に配置されている。第2ジャーナル部72は、第1ジャーナル部71と同軸に形成されている。第2ジャーナル部72は、第1ジャーナル部71に対して軸方向に間隔をあけて配置されている。第2ジャーナル部72は、第2キャリアブロック50の第2軸支持部55の内側に配置されている。
【0052】
第1偏心部73および第2偏心部74は、第1ジャーナル部71と第2ジャーナル部72との間に配置されている。第1偏心部73は、第2偏心部74に対して第1ジャーナル部71側に配置されている。第1偏心部73および第2偏心部74は、それぞれ円柱状に形成されている。第1偏心部73および第2偏心部74は、第1ジャーナル部71および第2ジャーナル部72の共通軸心に対して偏心している。第1偏心部73および第2偏心部74は、それぞれ第1ジャーナル部71および第2ジャーナル部72の共通軸心から同一の偏心量で偏心している。第1偏心部73および第2偏心部74は、互いに所定角度(本実施形態では180°)の位相差を有するように配置されている。
【0053】
小径部75は、第2ジャーナル部72を挟んで第1ジャーナル部71とは反対側に配置されている。小径部75は、第2ジャーナル部72から軸方向の外側に突出している。小径部75は、第2ジャーナル部72と同軸に形成されている。小径部75は、キャリア3よりも軸方向の外側に突出している。小径部75には、例えば入力軸に噛み合う歯車が取り付けられる。
【0054】
各クランク軸4は、規制部材14によってキャリア3に保持されている。規制部材14は、第1規制部材15および第2規制部材16を備える。第1規制部材15は、第1キャリアブロック30の第1軸取付孔41の内側に配置されている。第1規制部材15は、第1軸取付孔41と同軸の円環状に形成されている。第1規制部材15は、第1軸取付孔41のブッシュ保持部43の内側に嵌め込まれている。第1規制部材15は、段差面46と第1ジャーナル部71との間に配置されている。第1規制部材15は、段差面46に軸方向の内側から接触しているとともに、第1ジャーナル部71における軸方向の外側を向く端面に軸方向の外側から接触または近接している。
【0055】
第2規制部材16は、第2キャリアブロック50の第2軸取付孔54の内側に配置されている。第2規制部材16は、第2軸取付孔54と同軸の円環状に形成されている。第2規制部材16は、めねじ部56に取り付けられている。第2規制部材16の外周面には、めねじ部56に噛み合うおねじ16aが形成されている。第2規制部材16は、小径部75を囲うとともに、第2ジャーナル部72における軸方向の外側を向く端面に接触または近接している。
【0056】
第1クランク軸受7Aは、針軸受である。第1クランク軸受7Aは、第1キャリアブロック30とクランク軸4との間に配置されている。第1クランク軸受7Aは、複数のころ81(転動体)と、複数のころ81を保持する保持器82と、を備える。
【0057】
複数のころ81は、第1キャリアブロック30の第1軸支持部42とクランク軸4の第1ジャーナル部71の外周面との間に配置されている。複数のころ81は、第1ジャーナル部71の周囲を等角度間隔に並んでいる。複数のころ81は、軸方向に延びる円柱状に形成されている。各ころ81は、第1軸支持部42上および第1ジャーナル部71の外周面上を転動する。すなわち、第1軸支持部42を内周面として有する第1主軸受装着部32は、第1クランク軸受7Aのアウターレースとして機能している。また、第1ジャーナル部71は、第1クランク軸受7Aのインナーレースとして機能している。
【0058】
保持器82は、第1軸支持部42に沿って円環状に延びている。保持器82には、複数のころ81を1つずつ保持するポケットが形成されている。保持器82は、複数のころ81よりも軸方向の両側に突出している。保持器82における軸方向の外側の端部は、第1規制部材15に軸方向の内側から接触可能となっている。
【0059】
第2クランク軸受7Bは、針軸受である。第2クランク軸受7Bは、第2キャリアブロック50とクランク軸4との間に配置されている。第2クランク軸受7Bは、第1クランク軸受7Aと同様に形成されている。すなわち、第2クランク軸受7Bは、複数のころ81と、保持器82と、を備える。
【0060】
複数のころ81は、第2キャリアブロック50の第2軸支持部55とクランク軸4の第2ジャーナル部72の外周面との間に配置されている。各ころ81は、第2軸支持部55上および第2ジャーナル部72の外周面上を転動する。すなわち、第2軸支持部55を内周面として有する第2主軸受装着部51は、第2クランク軸受7Bのアウターレースとして機能している。また、第2ジャーナル部72は、第2クランク軸受7Bのインナーレースとして機能している。保持器82における軸方向の外側の端部は、第2規制部材16に軸方向の内側から接触可能となっている。
【0061】
第1揺動歯車5Aおよび第2揺動歯車5Bは、第1キャリアブロック30の基部31と第2キャリアブロック50との間に配置されている。第1揺動歯車5Aは、第2揺動歯車5Bに対して第1キャリアブロック30の基部31側に配置されている。第1揺動歯車5Aおよび第2揺動歯車5Bは、外筒2の内歯部21の内径よりも小さい外径を有する円盤状に形成されている。第1揺動歯車5Aおよび第2揺動歯車5Bは、キャリア3に対して揺動回転可能、かつキャリア3と同期して軸線O回りを自転可能になっている。
【0062】
第1揺動歯車5Aは、外歯91と、複数のクランク軸4と同数の軸挿通孔92と、を有する。外歯91は、第1揺動歯車5Aの外周面に全周にわたって配置され、外筒2の内歯ピン25に噛み合うことが可能となっている。各軸挿通孔92には、複数のクランク軸4が1つずつ挿通されている。各軸挿通孔92の内側には、クランク軸4の第1偏心部73が配置されている。軸挿通孔92は、第1偏心軸受8Aを介して第1偏心部73に取り付けられている。
【0063】
第2揺動歯車5Bは、第1揺動歯車5Aと同様に形成されている。各軸挿通孔92の内側には、クランク軸4の第2偏心部74が配置されている。軸挿通孔92は、第2偏心軸受8Bを介して第2偏心部74に取り付けられている。
【0064】
第1揺動歯車5Aは、各クランク軸4が回転して第1偏心部73が偏心回転すると、第1偏心部73の偏心回転に連動して複数の内歯ピン25の一部に噛み合いながら軸線O回りを揺動回転する。第2揺動歯車5Bは、各クランク軸4が回転して第2偏心部74が偏心回転すると、第2偏心部74の偏心回転に連動して複数の内歯ピン25の一部に噛み合いながら軸線O回りを揺動回転する。このため、第1揺動歯車5Aおよび第2揺動歯車5Bに支持された複数のクランク軸4が軸線O回りを周回するとともに、複数のクランク軸4を支持するキャリア3が軸線O回りを回転する。
【0065】
なお図示しないが、第1揺動歯車5Aおよび第2揺動歯車5Bのそれぞれには、第1キャリアブロック30の複数の支柱部と同数の逃げ孔が形成されている。各逃げ孔には、複数の支柱部が1つずつ挿通されている。各逃げ孔は、各支柱部が第1揺動歯車5Aおよび第2揺動歯車5Bの揺動回転を妨げないように、支柱部に対して充分に大きい内径に形成されている。
【0066】
第1偏心軸受8Aは、針軸受である。第1偏心軸受8Aは、第1揺動歯車5Aとクランク軸4との間に配置されている。第1偏心軸受8Aは、複数のころ101と、複数のころ101を保持する保持器102と、を備える。
【0067】
複数のころ101は、第1揺動歯車5Aの軸挿通孔92の内周面とクランク軸4の第1偏心部73の外周面との間に配置されている。複数のころ101は、第1偏心部73の周囲を等角度間隔に並んでいる。複数のころ101は、軸方向に延びる円柱状に形成されている。各ころ101は、第1揺動歯車5Aの軸挿通孔92の内周面上および第1偏心部73の外周面上を転動する。
【0068】
保持器102は、軸挿通孔92の内周面に沿って円環状に延びている。保持器102には、複数のころ101を1つずつ保持するポケットが形成されている。保持器102は、複数のころ102よりも軸方向の両側に突出している。
【0069】
第2偏心軸受8Bは、針軸受である。第2偏心軸受8Bは、第2揺動歯車5Bとクランク軸4との間に配置されている。第2偏心軸受8Bは、第1偏心軸受8Aと同様に形成されている。すなわち、第2偏心軸受8Bは、複数のころ101と、保持器102と、を備える。
【0070】
複数のころ101は、第2揺動歯車5Bの軸挿通孔92の内周面とクランク軸4の第2偏心部74の外周面との間に配置されている。複数のころ101は、第2偏心部74の周囲を等角度間隔に並んでいる。複数のころ101は、軸方向に延びる円柱状に形成されている。各ころ101は、第2揺動歯車5Bの軸挿通孔92の内周面上および第2偏心部74の外周面上を転動する。
【0071】
第1主軸受6Aおよび第2主軸受6Bそれぞれの荷重作用線について説明する。荷重作用線は、各ころ63A,63Bの中心軸線(転動軸線)の中点から中心軸線に対して直交して延びる線である。
図2に示すように、第1主軸受6Aの荷重作用線AL1は、第1主軸受6Aのインナーレース62Aの内周面62aよりも軸方向の外側を通っている。すなわち、荷重作用線AL1は、第1主軸受6Aのインナーレース62Aの内周面62aを通っていない。より詳細に、荷重作用線AL1は、インナーレース62Aの面取り部62cを通っている。
【0072】
第1主軸受6Aの接触角θが40°以上50°以下であって、第1主軸受6Aが上記の式(1)および式(2)の少なくともいずれか一方の関係を満たすように形成されることで、荷重作用線AL1は、第1キャリアブロック30の第1主軸受装着部32の内周面(第1軸支持部42および拡径部44)よりも軸方向の外側を通っている。本実施形態では、荷重作用線AL1は、第1主軸受装着部32よりも軸方向の外側を通っている。さらに、荷重作用線AL1は、第1軸取付孔41の全体よりも軸方向の外側を通っている。
【0073】
図4に示すように、第2主軸受6Bの荷重作用線AL2は、第2主軸受6Bのインナーレース62Bの内周面62aよりも軸方向の外側を通っている。より詳細に、荷重作用線AL2は、インナーレース62Bの面取り部62cを通っている。荷重作用線AL2は、第2主軸受装着部51の内周面のうち、第2インナーレース保持部52よりも軸方向の外側を通っている。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態では、第1主軸受6Aの荷重作用線AL1はインナーレース62Aの内周面62aを通らない。この構成によれば、インナーレース62Aの内周面62aを保持する外周面を有する部材の肉部、すなわち第1主軸受6Aを支持するキャリア3の第1主軸受装着部32の肉部を荷重作用線AL1が径方向に横断するように通過することを回避できる。これにより、第1主軸受装着部32の肉部が径方向の内側に向けて撓むように変形することが抑制され、第1主軸受装着部32にかかる負荷を低減できる。したがって、第1主軸受装着部32を薄肉化できる。
【0075】
また、本実施形態の減速機1は、上述した第1主軸受6Aを備え、荷重作用線AL1は第1主軸受装着部32における第1軸取付孔41の内周面を通らない。この構成によれば、荷重作用線AL1が第1主軸受装着部32の外周面(第1インナーレース保持部33)および第1軸取付孔41の内周面を通過することを回避できる。これにより、第1主軸受装着部32における外周面と第1軸取付孔41の内周面との間の薄肉に形成された部分が径方向の内側に向けて撓むように変形することが抑制され、第1主軸受装着部32にかかる負荷を低減できる。したがって、第1主軸受装着部32の薄肉化による減速機1の小型化を図ることができる。また、第1軸取付孔41の大径化を図ることができる。
【0076】
なお、第1主軸受6Aは、荷重作用線AL1がインナーレース62Aの端面62bを通るように形成されてもよい。この構成によれば、第1主軸受6Aを支持するキャリア3の第1主軸受装着部32を荷重作用線AL1が通過しないので、第1主軸受装着部32にかかる負荷を低減できる。このため、第1主軸受装着部32の変形が抑制されるので、第1主軸受装着部32を薄肉化できる。
【0077】
ここで、実施例の減速機における、第1主軸受の接触角と、減速機の寿命および剛性と、の関係を説明する。実施例の減速機は、上記実施形態の減速機1に相当し、第1主軸受6Aのアウターレース61Aの外転動面61c、インナーレース62Aの内転動面62d、およびころ63の形状を適宜変更することで、第1主軸受の接触角を変化させたものである。なお、実施例の第1主軸受において、接触角が40°以上の場合に荷重作用線がインナーレースの内周面よりも軸方向の外側を通る。また、接触角が45°以上の場合に荷重作用線がインナーレースの端面を通る。
【0078】
図5は、実施例の減速機における第1主軸受の接触角と、寿命および剛性との関係を示すグラフである。
図5において、横軸は第1主軸受の接触角を示し、左側の第1縦軸は減速機の寿命を示し、右側の第2縦軸は減速機の剛性を示している。
図5に示すように、第1主軸受の接触角が少なくとも30°以上60°以下の範囲において、減速機の寿命は第1主軸受の接触角が大きくなるに従い伸びている。また、第1主軸受の接触角が少なくとも30°以上60°以下の範囲において、減速機の剛性は第1主軸受の接触角が小さくなるに従い大きくなっている。第1主軸受6Aの接触角を40°以上50°以下とすることで、減速機1の寿命および剛性の両方をバランスよく確保できる。
【0079】
また、第1主軸受6Aは、上記の式(1)の関係を満たすので、荷重作用線AL1を第1主軸受装着部32よりも軸方向の外側に通すことができる。よって、第1主軸受装着部32にかかる負荷を低減できる。
【0080】
また、第1主軸受6Aは、上記の式(2)の関係を満たすので、荷重作用線AL1を第1主軸受装着部32よりも軸方向の外側に通すことができる。よって、第1主軸受装着部32にかかる負荷を低減できる。
【0081】
また、減速機1は、ころ81を有する第1クランク軸受7Aを備える。ころ81は、第1軸取付孔41の内周面における第1軸支持部42上を転動する。この構成によれば、第1軸取付孔41が形成された第1主軸受装着部32を第1クランク軸受7Aのアウターレースとして機能させるので、別部品としてのアウターレースを省略できる分、第1主軸受装着部32の小径化、および第1軸取付孔41の大径化のうち少なくともいずれか一方を実現できる。第2クランク軸受7Bについても同様である。
【0082】
なお、以上では主に第1主軸受6Aに関する作用効果について説明したが、第2主軸受6Bについても同様の作用効果を奏する。ただし、第1主軸受6Aは、第2主軸受6Bよりもキャリア3の装着面30a側に配置されている。このため、第1主軸受6Aには第2主軸受6Bよりも大きなモーメントがかかるので、第1主軸受6Aでは上述した作用効果が大きく得られる。
【0083】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、第1クランク軸受7Aが針軸受であり、主軸受装着部32をアウターレースとして機能させているが、別部品としてアウターレースを備えていてもよい。第2クランク軸受7Bについても同様である。また、第1クランク軸受および第2クランク軸受が針軸受の構成に限定されず、例えば少なくともいずれか一方が円すいころ軸受であってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、キャリア3を出力軸として用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。すなわち、キャリア3を固定的に設け、ケース2を出力軸として用いてもよい。
【0085】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【0086】
(付記1)
所定の軸線を中心とする円環状に形成され前記軸線に沿う軸方向の第1側かつ径方向の内側を向く外転動面を有するアウターレースと、
前記アウターレースと同軸に配置され前記軸方向の第2側かつ前記径方向の外側を向く内転動面および一定の内径で前記軸方向に延びる内周面を有するインナーレースと、
前記内転動面上および前記外転動面上を転動する複数のころと、
を備え、
荷重作用線は前記内周面よりも前記軸方向の前記第1側を通る。
軸受。
【0087】
(付記2)
所定の軸線を中心とする円環状に形成され前記軸線に沿う軸方向の第1側かつ径方向の内側を向く外転動面を有するアウターレースと、
前記アウターレースと同軸に配置され前記軸方向の第2側かつ前記径方向の外側を向く内転動面および前記軸方向の前記第1側を向く端面を有するインナーレースと、
前記内転動面上および前記外転動面上を転動する複数のころと、
を備え、
荷重作用線は前記インナーレースの前記端面を通る
軸受。
【符号の説明】
【0088】
1…減速機 2…外筒(外側部材) 3…キャリア(内側部材) 4…クランク軸(軸部材) 6A…第1主軸受(軸受) 6B…第2主軸受(軸受) 7A…第1クランク軸受(針軸受) 7B…第2クランク軸受(針軸受) 32…主軸受装着部(軸受装着部) 41…第1軸取付孔(軸孔) 51…主軸受装着部(軸受装着部) 54…第2軸取付孔(軸孔) 61A,61B…アウターレース 61c…外転動面 62A,62B…インナーレース 62a…内周面 62b…端面(軸方向端面) 62d…内転動面 63A,63B…ころ(転動体) 81…ころ(転動体) AL1,AL2…荷重作用線 O…軸線