(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】運行管理システムおよび運行管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240911BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240911BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20240911BHJP
G07C 5/08 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06Q50/40
G07C5/00 Z
G07C5/08
(21)【出願番号】P 2020045024
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏明
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】月野 洋一郎
【審判官】間野 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138395(JP,A)
【文献】特開2002-140446(JP,A)
【文献】特開2013-214196(JP,A)
【文献】特開2013-186717(JP,A)
【文献】特開2003-006691(JP,A)
【文献】特開2006-215749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G06Q 50/40
G07C 5/00
G07C 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載器に設けられ、前記車両の運行データを取得する第一取得部と、
前記車載器に設けられ、前記車載器における故障情報を取得する第二取得部と、
前記車載器に設けられ、前記運行データおよび前記故障情報を外部に送信する第一送信部と、
前記第一送信部から受信した前記運行データおよび前記故障情報を前記車両の車種と関連づけて保存する保存部と、
前記故障情報に基づいて、前記車載器の整備時期を車種毎に算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記整備時期を送信する第二送信部と、
前記第二送信部から受信した前記整備時期に基づいて管理対象の車両の運行計画を設定する設定部と、
を備え
、
前記故障情報は、前記車載器が前記車両に搭載されてからの前記車載器の累積稼働時間を含む
運行管理システム。
【請求項2】
更に、前記車載器の整備時期を迎えた車両を運行管理者に通知する通知部を備え、
前記算出部は、車種毎に、故障が発生するまでの前記車載器の平均稼働時間に基づく上限稼働時間を算出し、
前記通知部は、
前記累積稼働時間が前記上限稼働時間を超えた前記車載器が搭載されている車両を前記運行管理者に通知する
請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項3】
前記車載器は、車載器本体と、前記車載器本体に接続された周辺機器と、を有し、
前記故障情報は、前記車載器本体についての前記故障情報である第一情報、および前記周辺機器についての前記故障情報である第二情報を含み、
前記算出部は、前記第一情報に基づいて前記車載器本体についての整備時期を算出し、前記第二情報に基づいて前記周辺機器の整備時期を算出する
請求項1または2に記載の運行管理システム。
【請求項4】
車両の運行データを取得し、
前記車両に搭載された車載器の故障情報を取得し、
前記運行データおよび前記故障情報を前記車両から外部に送信し、
前記運行データおよび前記故障情報を前記車両の車種と関連づけて保存し、
前記故障情報に基づいて車載器の整備時期を車種毎に算出し、
前記整備時期に基づいて管理対象の車両の運行計画を設定する、
各処理をコンピュータに実行させ
、
前記故障情報は、前記車載器が前記車両に搭載されてからの前記車載器の累積稼働時間を含む、運行管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行管理システムおよび運行管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運行管理システムがある。特許文献1には、車輌に対して実行されたメンテナンスの履歴情報を管理するメンテナンス実行制御部と、次回実行すべき新たなメンテナンスの実行時期及び前記新たなメンテナンスに必要な交換部品を表す予測情報を生成するメンテナンス予測制御部を持つ運行管理センタを有する車輌運行管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載される車載器に対して、適切な整備スケジュールを設定できることが望ましい。運行計画において適切に整備スケジュールを設定することができれば、車載器の突発的な故障による運行計画の修正を抑制することができる。
【0005】
本発明の目的は、車載器に対する適切な整備時期を設定することが可能な運行管理システムおよび運行管理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運行管理システムは、車両に搭載された車載器に設けられ、前記車両の運行データを取得する第一取得部と、前記車載器に設けられ、前記車載器における故障情報を取得する第二取得部と、前記車載器に設けられ、前記運行データおよび前記故障情報を外部に送信する第一送信部と、前記第一送信部から受信した前記運行データおよび前記故障情報を前記車両の車種と関連づけて保存する保存部と、前記故障情報に基づいて、前記車載器の整備時期を車種毎に算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記整備時期を送信する第二送信部と、前記第二送信部から受信した前記整備時期に基づいて管理対象の車両の運行計画を設定する設定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る運行管理システムは、車両の運行データを取得する第一取得部と、車載器における故障情報を取得する第二取得部と、運行データおよび故障情報を外部に送信する第一送信部と、第一送信部から受信した運行データおよび故障情報を車両の車種と関連づけて保存する保存部と、故障情報に基づいて、車載器の整備時期を車種毎に算出する算出部と、算出部によって算出された整備時期を送信する第二送信部と、第二送信部から受信した整備時期に基づいて管理対象の車両の運行計画を設定する設定部と、を備える。本発明に係る運行管理システムによれば、故障情報に基づいて車種毎の整備時期が算出されることで、車載器に対する適切な整備時期を設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両管理システムを示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の故障情報データベースを示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の統計データベースを示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の車載器における処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態のサーバにおける処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態の事務所PCにおける処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態における運行計画の設定手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態の運行計画表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る運行管理システムおよび運行管理プログラムにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図8を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、運行管理システムおよび運行管理プログラムに関する。
図1は、実施形態の車両管理システムを示す図、
図2は、実施形態の故障情報データベースを示す図、
図3は、実施形態の統計データベースを示す図、
図4は、実施形態の車載器における処理を示すフローチャート、
図5は、実施形態のサーバにおける処理を示すフローチャート、
図6は、実施形態の事務所PCにおける処理を示すフローチャート、
図7は、実施形態における運行計画の設定手順を示すフローチャート、
図8は、実施形態の運行計画表の一例を示す図である。
【0011】
図1に示す本実施形態の運行管理システム1は、車両100の運行を管理するシステムである。運行管理システム1は、例えば、貨物自動車運送事業、旅客自動車運送事業等の事業者の設備として導入される。運行管理システム1は、車両用の運行管理プログラムに従って動作する。運行管理システム1は、車載器2、サーバ6、および事務所PC7を有する。
【0012】
事務所PC7は、例えば、運送事業者の事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成される。事務所PC7は、管理対象の各車両の運行状況を管理する機能を有している。管理機能には、各車両の整備を含む運行計画を作成する機能が含まれる。事務所PC7は、CPU70、通信部71、不揮発性メモリ72、揮発性メモリ73、および外部入力インタフェース74を有する。事務所PC7は、通信部71およびインターネット網NWを介してサーバ6および無線基地局5のそれぞれと通信を行なう。事務所PC7は、例えば、不揮発性メモリ72からCPU70に読み込んだプログラムに従って、運行計画の作成、および運行状況の管理を実行する。
【0013】
サーバ6は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。サーバ6は、例えば、インターネット上の任意の箇所に配置されたサーバであってもよく、企業内のローカルネットワーク上に配置されたサーバであってもよい。サーバ6は、通信サービスを提供するデータセンタに配置されてもよい。サーバ6には、車両の運行状況に関する情報や、車載器2の故障情報などが保存される。本実施形態のサーバ6は、複数の事業者の運行データおよび故障情報を蓄積する。サーバ6は、蓄積した故障情報に基づいて各事業者に対して点検・修理計画の立案を支援する。
【0014】
無線基地局5は、広域の無線通信を行なう基地局である。無線基地局5は、例えば、移動体無線通信サービスを提供する通信事業者の設備である。車載器2は、無線基地局5との間で無線通信を行なう。
【0015】
車載器2は、車両100に搭載されている装置であり、自車両の入出庫や走行情報を含む運行データを記録する。車載器2は、例えば、車両100の運行状況を記録するデジタルタコグラフ、ドライブレコーダー、タクシーメーター等である。
図1には、車載器2の構成の一例として、デジタルタコグラフの構成が示されている。車載器2は、車載器本体2A、および車載器本体2Aに接続された周辺機器を有する。車載器本体2Aは、速度インタフェース21、エンジンインタフェース22、GPS受信部23、アナログインタフェース24、外部入力インタフェース25、広域通信部26、不揮発性メモリ27、揮発性メモリ28、カードインタフェース29、スイッチ30、および表示部31を有する。車載器2は、周辺機器として、ハンディテンキー32、カメラ33、およびアンテナ34を有する。
【0016】
速度インタフェース21は、車両100の走行速度を取得してCPU20に出力する。エンジンインタフェース22は、車両100に搭載されたエンジンの回転速度を取得してCPU20に出力する。GPS受信部23は、GPSアンテナを含む受信回路である。GPS受信部23は、GPS衛星から送信される信号を受信し、車両100の現在位置を算出する。GPS受信部23は、算出した現在位置の情報をCPU20に出力する。アナログインタフェース24は、車両100の状態を検知するセンサに接続されている。アナログインタフェース24は、例えば、エンジン温度を検出するセンサや、燃料量を検出するセンサに接続されている。外部入力インタフェース25には、各種の外部機器が接続される。外部入力インタフェース25は、カメラ33が接続されるコネクタや、ハンディテンキー32が接続されるコネクタを有していてもよい。
【0017】
広域通信部26は、無線基地局5との間で通信を行なう通信モジュールである。広域通信部26はCPU20の指令に従い、アンテナ34を介して無線基地局5と無線通信を行なう。不揮発性メモリ27は、CPU20によって実行される処理プログラムや各種データを記憶している。揮発性メモリ28は、例えば、CPU20による演算結果等を記憶するメモリである。カードインタフェース29は、例えば、メモリカードが挿抜されるスロットである。乗務員は、車両100に乗務するときに、所持するメモリカードをカードインタフェース29に差し込む。カードインタフェース29に挿入されたメモリカードには、車両100の車両コード、乗務員コード、運行状況、故障情報等のデータが記録される。
【0018】
スイッチ30は、乗務員による操作入力を受け付ける。表示部31は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置である。表示部31は、CPU20からの指令に応じて、車載器2の動作状態、通信状態、時刻、運行状況、注意、警告、故障情報等を表示する。
【0019】
ハンディテンキー32は、車載器本体2Aを遠隔操作する端末である。ハンディテンキー32は、例えば、外部入力インタフェース25に接続される。ハンディテンキー32には、テンキー、十字キー、各種ボタン等が配置されている。乗務員は、ハンディテンキー32に対する入力操作により車載器本体2Aに対する指令を行なうことができる。カメラ33は、車両100の外部を撮像する撮像部であり、例えば、車両100の前方や後方を撮像するように配置されている。アンテナ34は、広域の無線通信で使用される周波数帯の電波を送受信する。
【0020】
CPU20は、第一取得機能20A、第二取得機能20B、および第一送信機能20Cを有する。第一取得機能20Aは、第一取得部の一例である。第二取得機能20Bは、第二取得部の一例である。第一送信機能20Cは、第一送信部の一例である。第一取得機能20A、第二取得機能20B、および第一送信機能20Cは、不揮発性メモリ27からCPU20に読み込んだプログラムによって実現される。
【0021】
第一取得機能20Aは、車両100の運行データを取得する機能である。第一取得機能20Aは、例えば、速度インタフェース21、エンジンインタフェース22、GPS受信部23、およびアナログインタフェース24を介して車両100の運行データを取得する。第一取得機能20Aは、取得した運行データを不揮発性メモリ27や揮発性メモリ28等に適宜記憶させる。取得された運行データは、車両100の運行が終了する際にメモリカードに記憶される。
【0022】
第二取得機能20Bは、車載器2における故障情報を取得する機能である。故障情報の取得は、例えば、車両100が運行している間に取得される。第二取得機能20Bは、車両100の運行が開始されるときに故障情報を取得してもよく、車両100の運行中に的的に故障情報を取得してもよく、車両100の運行が終了するときに故障情報を取得してもよい。
【0023】
車載器本体2Aは、自己診断機能を有している。第二取得機能20Bは、車載器本体2Aの各機器が正常に作動しているか否かを診断する。第二取得機能20Bは、診断の結果に基づき、車載器本体2Aの故障情報を保存する。車載器本体2Aの故障情報は、車載器本体2Aの各機器の故障の有無についての情報である。
【0024】
第二取得機能20Bは、周辺機器が正常に作動しているか否かを診断する。例えば、第二取得機能20Bは、周辺機器に対して自己診断の結果を要求する。周辺機器は、第二取得機能20Bの要求に応じて、自己診断の結果を第二取得機能20Bに送信する。第二取得機能20Bは、周辺機器の自己診断の結果を故障情報として保存する。周辺機器の故障情報は、各周辺機器の故障の有無についての情報である。
【0025】
第一送信機能20Cは、運行データおよび故障情報を無線基地局5に送信する。送信される運行データは、第一取得機能20Aによって取得されたデータである。故障情報は、例えば、車両100の車両コード、車載器本体2Aにおける故障の有無に関する情報、周辺機器における故障の有無に関する情報、および車載器2の故障の有無を確認したときの累積稼働時間が含まれる。車載器本体2Aの累積稼働時間は、例えば、車載器本体2Aが車両100に搭載されてから故障の有無を確認するまでの車両100の稼働時間の累積値である。周辺機器の累積稼働時間は、例えば、周辺機器が車両100に搭載されてから故障を確認するまでの稼働時間の累積値である。
【0026】
無線基地局5によって受信された運行データおよび故障情報は、サーバ6に保存される。サーバ6は、CPU60、通信部61、不揮発性メモリ62、揮発性メモリ63、および外部入力インタフェース64を有する。CPU60は、保存機能60A、算出機能60B、および第二送信機能60Cを有する。保存機能60Aは、保存部の一例である。算出機能60Bは、算出部の一例である。第二送信機能60Cは、第二送信部の一例である。保存機能60A、算出機能60B、および第二送信機能60Cは、不揮発性メモリ62からCPU60に読み込んだプログラムによって実現される。
【0027】
保存機能60Aは、車載器2の第一受信部から受信した運行データおよび故障情報を車両100の車種と関連づけて保存する機能である。車両100の車種についての情報は、例えば、運行データまたは故障情報に含まれていている。車種についての情報は、サーバ6が予め記憶していてもよい。この場合、サーバ6は、車両コードと、車両コードに対応する車種との対応関係を予め不揮発性メモリ62等に記憶していてもよい。
【0028】
保存機能60Aは、例えば、故障情報を
図3に示す故障情報データベースDB1に保存する。故障情報データベースDB1が有する項目は、顧客コード、車両コード、運行日、車種、カードインタフェース29の累積稼働時間および故障フラグ、カメラ33の累積稼働時間および故障フラグ、ハンディテンキー32の累積稼働時間および故障フラグを含む。カードインタフェース29の故障は、車載器本体2Aの故障に含まれる。車種は、例えば、大型トラック、中型トラック、小型トラック、路線バス、高速乗合いバス等に分類されている。
【0029】
故障情報データベースDB1の各レコードにおいて、故障している機器の故障フラグが「有」と記録される。例えば、
図2に例示された一番上のレコードでは、カメラ33の故障フラグが「有」とされる。カメラ33の故障が検出されたときのカメラ33の累積稼働時間は、8,000時間である。この場合、累積稼働時間が8,000時間となった時点でカメラ33に故障が発生したとみなされる。以下の説明では、機器の故障が判明したときの、その機器の累積稼働時間を単に「故障時の累積稼働時間」と称する。例えば、二番目のレコードのカメラ33では、故障時の累積稼働時間が7,000時間である。
【0030】
算出機能60Bは、故障情報に基づいて、車載器2の整備時期を車種毎に算出する。
図3には、算出機能60Bによって生成される統計データベースDB2が示されている。算出機能60Bは、故障情報データベースDB1から車種毎の故障データを抽出して、統計データベースDB2を生成する。算出機能60Bは、車種毎に故障実績を統計したテーブルを生成する。統計データベースDB2が有する項目は、機器の種類、故障時の平均稼働時間、および点検時間である。
【0031】
故障時の平均稼働時間は、故障した機器において故障が発生するまでの稼働時間の平均値である。例えば、
図2に示す故障情報データベースDB1では、大型の車種について、カメラ33の故障情報が2件登録されている。この2件について、故障時の累積稼働時間の平均値は、7,500時間である。この場合、大型の車種について、カメラ33の平均稼働時間が7,500時間とされる。
【0032】
算出機能60Bは、故障時の平均稼働時間に基づいて、点検時間を設定する。点検時間は、故障時の平均稼働時間に基づく上限稼働時間である。点検時間は、例えば、故障時の平均稼働時間に対して所定の安全率を乗じて算出される。点検時間は、故障時の平均稼働時間よりも身近な短い時間である。本実施形態の運行管理システム1では、機器の累積稼働時間が点検時間を超えた場合に、その機器が整備時期を迎えたと判定される。
【0033】
第二送信機能60Cは、算出機能60Bによって算出された整備時期を送信する。ここで、整備時期の送信とは、例えば、整備時期を迎えた機器を識別する情報を送信することである。第二送信機能60Cは、整備時期を迎えた機器がある場合、その機器が搭載されている車両100の車両コードおよび整備すべき機器の種類を広域通信部26によって送信させる。
【0034】
事務所PC7のCPU70は、設定機能70Aおよび通知機能70Bを有する。設定機能70Aは、設定部の一例である。通知機能70Bは、通知部の一例である。設定機能70Aおよび通知機能70Bは、不揮発性メモリ72からCPU70に読み込んだプログラムによって実現される。
【0035】
設定機能70Aは、サーバ6の第二送信部から受信した整備時期に基づいて管理対象の車両の運行計画を設定する機能である。通知機能70Bは、車載器2の整備時期を迎えた車両100を運行管理者に通知する機能である。通知機能70Bは、例えば、事務所PC7のディスプレイのポップアップによって整備対象の車載器2、およびその車載器2が搭載された車両100の車両コードを運行管理者に通知してもよく、電子メールによって整備対象の車載器2および車両コードを運行管理者に通知してもよい。
【0036】
図4を参照して、本実施形態の車載器2における処理について説明する。ステップS10において、車両100の運行が開始される。車載器2の第一取得機能20Aは、車両100の運行が開始されると運行データの取得および運行データの記録を開始する。また、第二取得機能20Bは、車載器2における故障情報の取得を開始する。ステップS10が実行されると、ステップS20に進む。
【0037】
ステップS20において、第一送信機能20Cは、機器の故障が発生しているか否かを判定する。第一送信機能20Cは、自車両において車載器本体2Aおよび周辺機器の何れかに故障が発生している場合、ステップS20で肯定判定する。ステップS20で肯定判定された場合にはステップS30に進み、否定判定された場合には、故障情報の取得およびステップS20の判定が繰り返される。
【0038】
ステップS30において、第一送信機能20Cは、運行データおよび故障情報を広域通信部26から無線基地局5に送信する。送信される故障情報には、車両コード、車載器本体2Aの故障の有無、および各周辺機器の故障の有無が含まれる。ステップS30が実行されると、ステップS40に進む。
【0039】
ステップS40において、CPU20は、車両100の運行を終了するか否かを判定する。ステップS40で肯定判定された場合には本フローチャートによる処理を終了し、否定判定された場合にはステップS20に移行する。
【0040】
図5を参照して、サーバ6における処理について説明する。ステップS110において、サーバ6の通信部61は、車載器2の第一送信部から送信されたデータを受信する。受信するデータは、例えば、ステップS30において送信された運行データおよび故障情報を含む。ステップS110が実行されると、ステップS120に進む。
【0041】
ステップS120において、サーバ6は、受信したデータを蓄積する。保存機能60Aは、運行データおよび故障情報を車両100の車種と関連づけて故障情報データベースDB1に蓄積する。ステップS120が実行されると、ステップS130に進む。
【0042】
ステップS130において、算出機能60Bは、各接続機器の累積稼働時間が点検時間を超えているか否かを判定する。算出機能60Bは、ステップS120において蓄積したデータに基づいて、統計データベースDB2を更新し、車種毎の故障実績のテーブルを更新する。より詳しくは、算出機能60Bは、車種毎に、各機器の故障時の平均稼働時間、および点検時間を算出する。算出機能60Bは、更新後の点検時間に基づいて、ステップS130の判定を行なう。
【0043】
例えば、
図3の統計データベースDB2では、大型の車種について、カメラ33の点検時間が7,200時間である。この場合、算出機能60Bは、大型の車種に属する車両100について、カメラ33の累積稼働時間が7,200時間を超えているか否かを判定する。また、算出機能60Bは、大型の車種に属する車両100について、カードインタフェース29やハンディテンキー32の累積稼働時間が統計データベースDB2の点検時間を超えているか否かを判定する。算出機能60Bは、判定対象とする車両100の接続機器の何れかにおいて累積稼働時間が点検時間を超えている場合、ステップS130で肯定判定する。
【0044】
ステップS130で肯定判定された場合にはステップS140に進み、否定判定された場合には、他の車両100に対してステップS130の判定を行なう。算出機能60Bは、管理対象の全ての車両100について、ステップS130の判定を順番に実行するように構成されている。
【0045】
ステップS140において、第二送信機能60Cは、点検情報を送信する。点検情報は、例えば、車種毎の各機器の点検時間、累積稼働時間が点検時間を超えている機器、およびその機器が搭載されている車両100についての情報である。つまり、送信される点検情報は、点検すべき機器の種類、および車両コードを含む。第二送信機能60Cは、通信部61によって点検情報を事務所PC7に送信する。ステップS140が実行されると、本フローチャートによる処理は一旦終了してステップS110に移行する。
【0046】
次に、
図6を参照して、事務所PC7における処理について説明する。ステップS210において、事務所PC7は、点検情報を受信する。受信する点検情報は、例えば、ステップS140においてサーバ6の第二送信部によって送信された点検情報である。受信した点検情報は、例えば、不揮発性メモリ72に保存される。ステップS210が実行されると、ステップS220に進む。
【0047】
ステップS220において、CPU70の通知機能70Bは、ポップアップ通知を実行する。受信した点検情報をポップアップウインドウに表示して運行管理者に通知する。ポップアップウインドウには、例えば、車両コード、整備、点検を要する機器の種類などが表示される。ステップS220が実行されると、ステップS230に進む。
【0048】
ステップS230において、設定機能70Aは、運行計画へ点検情報を反映させる。運行計画の設定手順の一例について、
図7を参照して説明する。
【0049】
ステップS310において、設定機能70Aは、運行計画の作成を開始する。ステップS320において、設定機能70Aは、機器の累積稼働時間が点検時間を超えているか否かを判定する。設定機能70Aは、管理対象に含まれる車両100のそれぞれについて、ステップS320の判定を行なう。設定機能70Aは、取得した点検情報に基づいて、対象の車両100に搭載されている機器が点検時期を迎えているかを判定する。対象の車両100において、点検時期を迎えている機器が一つでもある場合、ステップS320で肯定判定される。ステップS320で肯定判定された場合にはステップS330に進み、否定判定された場合には次の車両100についてステップS320の判定が実行される。
【0050】
ステップS330において、設定機能70Aは、対象の車両100に対する点検日をセットする。
図8には、運行計画表の一例が示されている。
図8の運行計画表には、車両Aから車両Jまでの各車両の運行計画が示されている。点検日には、マークMIが表示されている。
図8の例では、車両Bおよび車両Gに対して車両100の点検を行なう点検日のマークMIが表示されている。ステップS330が実行されると、ステップS340に進む。なお、点検時期を迎えているか否かの判定が終了していない車両100が存在する場合、更にステップS320の判定に移行してもよい。
【0051】
ステップS340において、設定機能70Aは、各車両の運行計画を作成する。設定機能70Aは、ステップS330でセットされた点検日を反映させて各車両の運行計画を作成する。ステップS340が実行されると、本フローチャートによる処理が終了し、ステップS230に戻る。ステップS230が実行されると、
図6のフローチャートによる処理が終了する。
【0052】
設定された点検日には、車載器2の点検が行なわれる。点検日に実行される点検内容には、車載器2における故障の有無を点検すること、車載器2の故障している機器を修理すること、故障している機器を交換すること、が含まれる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の運行管理システム1は、第一取得機能20Aと、第二取得機能20Bと、第一送信機能20Cと、保存機能60Aと、算出機能60Bと、第二送信機能60Cと、設定機能70Aと、を有する。第一取得機能20Aは、第一取得部の一例であり、車両100に搭載された車載器2に設けられ、車両100の運行データを取得する。第二取得機能20Bは、第二取得部の一例であり、車載器2に設けられ、車載器2における故障情報を取得する。第一送信機能20Cは、第一送信部の一例であり、車載器2に設けられ、運行データおよび故障情報を外部に送信する。
【0054】
保存機能60Aは、保存部の一例であり、第一送信部から受信した運行データおよび故障情報を車両100の車種と関連づけて保存する。算出機能60Bは、算出部の一例であり、故障情報に基づいて、車載器2の整備時期を車種毎に算出する。第二送信機能60Cは、第二送信部の一例であり、算出部によって算出された整備時期を送信する。設定機能70Aは、設定部の一例であり、第二送信部から受信した整備時期に基づいて管理対象の車両100の運行計画を設定する。
【0055】
本実施形態に係る運行管理システム1は、車載器2から取得した故障情報に基づいて整備時期を車種毎に算出し、この整備時期に基づいて運行計画を設定する。よって、車種毎に適切な整備計画を設定し、突発的な故障による運行計画の修正を抑制することができる。
【0056】
本実施形態の運行管理システム1は、更に、通知機能70Bを有する。通知機能70Bは、通知部の一例であり、車載器2の整備時期を迎えた車両100を運行管理者に通知する。算出部は、車種毎に、故障が発生するまでの車載器2の平均稼働時間に基づく上限稼働時間を算出する。通知部は、累積稼働時間が上限稼働時間を超えた車載器2が搭載されている車両100を運行管理者に通知する。本実施形態の運行管理システム1によれば、運行管理者は整備対象の車両100が新たに発生したことを容易に知ることができる。
【0057】
本実施形態の車載器2は、車載器本体2Aと、車載器本体2Aに接続された周辺機器と、を有する。故障情報は、車載器本体2Aについての故障情報である第一情報、および周辺機器についての故障情報である第二情報を含む。算出部は、第一情報に基づいて車載器本体2Aについての整備時期を算出し、第二情報に基づいて周辺居住者の整備時期を算出する。車載器本体2Aおよび周辺機器の各々について故障情報および整備時期が算出されることで、より精度の高い整備計画を設定することが可能となる。
【0058】
本実施形態の運行管理プログラムは、以下の(1)から(6)の各処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
(1)車両100の運行データを取得する処理
(2)車両100に搭載された車載器2の故障情報を取得する処理
(3)運行データおよび故障情報を車両100から外部に送信する処理
(4)受信した運行データおよび故障情報を車両100の車種と可憐づけて保存する処理
(5)故障情報に基づいて車載器2の整備時期を車種毎に算出する処理
(6)整備時期に基づいて管理対象の車両100の運行計画を設定する処理
【0059】
(1)の処理は、車載器2によって適宜実行される。ステップS20は、(2)の処理に相当する。ステップS30は、(3)の処理に相当する。ステップS120は、(4)の処理に相当する。ステップS130は、(5)の処理に相当する。ステップS310からステップS340は、(6)の処理に相当する。本実施形態の運行管理システム1および運行管理プログラムは、車載器本体2Aの故障および車載器本体2Aに付属する部品の故障に対して、車両100のタイプ別に故障時期の事前予測を行なうことができる。これにより、運行計画の修正を最小限とすることが可能である。
【0060】
上述した実施形態で説明した運行管理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0061】
[実施形態の変形例]
点検時間は、複数の事業者の故障情報に基づいて算出されてもよい。例えば、
図2に示すように、故障情報データベースDB1には、顧客コードが異なる車両の故障情報が蓄積される。算出機能60Bは、顧客コードが同一であるか否かにかかわらず、同一車種の故障情報から故障時の平均稼働時間および点検時間を算出してもよい。
【0062】
故障の有無が確認される機器は、上記実施形態において例示されたものには限定されない。例えば、第二取得機能20Bは、GPS受信部23、広域通信部26、表示部31等の故障の有無を取得してもよい。
【0063】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 運行管理システム
2 車載器
2A:車載器本体
5 無線基地局
6 サーバ
7 事務所PC
20 CPU
20A:第一取得機能、 20B:第二取得機能、 20C:第一送信機能
21:速度インタフェース、 22:エンジンインタフェース、
23:GPS受信部、 24:アナログインタフェース、
25:外部入力インタフェース、 26:広域通信部、
27:不揮発性メモリ、 28:揮発性メモリ、
29:カードインタフェース、 30:スイッチ、 31:表示部
32:ハンディテンキー、 33:カメラ、 34:アンテナ
60 CPU
60A:保存機能、 60B:算出機能、 60C:第二送信機能
61:通信部、 62:不揮発性メモリ、 63:揮発性メモリ、
64:外部入力インタフェース
70 CPU
70A:設定機能、 70B:通知機能
71:通信部、 72:不揮発性メモリ、 73:揮発性メモリ、
74:外部入力インタフェース
100 車両
DB1:故障情報データベース、 DB2:統計データベース
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