(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】回路部品及び回路部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/22 20060101AFI20240911BHJP
C23C 18/20 20060101ALI20240911BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20240911BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240911BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20240911BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C23C18/22
C23C18/20 A
C25D7/00 G
H05K3/00 K
H05K3/00 N
H05K3/38 A
H05K1/02 F
H05K1/02 C
H05K1/02 J
H05K1/02 Q
(21)【出願番号】P 2020066410
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2022-12-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100174285
【氏名又は名称】小宮山 聰
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 朗子
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 敦
(72)【発明者】
【氏名】北村 敏幸
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-188935(JP,A)
【文献】特開2006-120840(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172405(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08
C25D 5/00-7/12
H05K 3/00
H05K 3/10-3/26
H05K 3/38
H05K 1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路部品であって、
金属部材と、
前記金属部材上に形成されている絶縁性樹脂層と、
前記絶縁性樹脂層上に形成されているメッキ膜を含む回路配線と、
前記回路配線上に実装され、前記回路配線と電気的に接続する実装部品とを有し、
前記絶縁性樹脂層の表面において、前記回路配線が形成されている配線領域に、前記メッキ膜で充填されている複数の非貫通孔が形成されており、
前記非貫通孔の幅Dに対する前記非貫通孔の深さdの比率d/Dが、0.5~5であり、
前記非貫通孔の幅Dに対する前記非貫通孔間の距離Pの比率P/Dが、0.3~3であり、
前記非貫通孔の幅Dは20μm以上であり、
かつ、前記非貫通孔の深さdは24μm以上であり、
前記非貫通孔は、前記配線領域における密度が略平均化するように点在して形成されている、回路部品。
【請求項2】
前記非貫通孔以外の前記配線領域の表面粗さ(Ra)が、前記非貫通孔の深さdの1/5以下である請求項1に記載の回路部品。
【請求項3】
前記回路配線の厚さが、前記非貫通孔の深さdの1/2より大きいか、又は幅Dの1/2より大きい請求項1又は2に記載の回路部品。
【請求項4】
前記非貫通孔の幅Dが、
20~200μmである請求項1~3のいずれか一項に記載の回路部品。
【請求項5】
前記絶縁性樹脂層の、前記回路配線と前記金属部材に挟まれ且つ前記非貫通孔が形成されていない部分の厚さが、30~200μmである請求項1~4のいずれか一項に記載の回路部品。
【請求項6】
前記非貫通孔の底から前記絶縁性樹脂層の前記金属部材と対向する面までの距離が、5~100μmである請求項1~5のいずれか一項に記載の回路部品。
【請求項7】
前記絶縁性樹脂層が、熱硬化性樹脂を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の回路部品。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項7に記載の回路部品。
【請求項9】
前記絶縁性樹脂層が、絶縁性熱伝導フィラーを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の回路部品。
【請求項10】
前記金属部材と前記絶縁性樹脂層との間に、無機酸化物層を更に有する請求項1~9のいずれか一項に記載の回路部品。
【請求項11】
前記実装部品は、端子が設けられた面を前記回路配線に対向させて配置され、前記端子と前記回路配線がハンダにより電気的に接続されている請求項1~10のいずれか一項に記載の回路部品。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の回路部品の製造方法であって、
前記金属部材を用意することと、
前記金属部材上に前記絶縁性樹脂層を形成することと、
前記絶縁性樹脂層の前記配線領域に、レーザー光を照射して前記複数の非貫通孔を形成することと、
前記配線領域に、電解メッキにより前記回路配線を形成することと、
前記回路配線上に前記実装部品を実装することを含む回路部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部品及び回路部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MID(Molded Interconnected Device)が、スマートフォン等で実用化されており、今後、自動車分野での応用拡大が期待されている。MIDは、樹脂成形体の表面に金属膜で回路を形成したデバイスであり、製品の軽量化、薄肉化及び部品点数削減に貢献できる。
【0003】
発光ダイオード(LED)が実装されたMIDも提案されている。LEDは、通電により発熱するため背面からの排熱が必要であり、MIDの放熱性を高めることが重要となる。特許文献1では、MIDと金属製の放熱材料とを一体化した複合部品が提案されている。また、特許文献1のMIDでは、メッキ膜により回路配線を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器は高性能化及び小型化し、これに用いられるMIDも高密度、高機能化が進み、より高い放熱性が要求されている。放熱材料である金属部材上に樹脂層を設けたMIDにおいて、樹脂層を薄くすることは、樹脂層上の回路配線から金属部材への熱伝導を向上させるために有効である。しかし、樹脂層は熱伝導を担うフィラーとして、アルミナやシリカ粒子が含有されている場合も多く、樹脂層の厚さを薄くすることのみにより放熱性を向上させることには限界があった。本発明は、これらの課題を解決するものであり、高い放熱性を有する回路部品(MID)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、回路部品であって、金属部材と、前記金属部材上に形成されている絶縁性樹脂層と、前記絶縁性樹脂層上に形成されているメッキ膜を含む回路配線と、前記回路配線上に実装され、前記回路配線と電気的に接続する実装部品とを有し、前記絶縁性樹脂層の表面において、前記回路配線が形成されている配線領域に、前記メッキ膜で充填されている複数の非貫通孔が形成されており、前記非貫通孔の幅Dに対する前記非貫通孔の深さdの比率d/Dが、0.5~5である回路部品が提供される。
【0007】
前記非貫通孔以外の前記配線領域の表面粗さ(Ra)が、前記非貫通孔の深さdの1/5以下であってもよい。前記非貫通孔の幅Dに対する前記非貫通孔間の距離Pの比率P/Dが、0.3~3であってもよい。前記回路配線の厚さが、前記非貫通孔の深さdの1/2より大きいか、又は幅Dの1/2より大きくてもよい。前記非貫通孔の幅Dが、10~200μmであってもよい。前記絶縁性樹脂層の、前記回路配線と前記金属部材に挟まれ且つ前記非貫通孔が形成されていない部分の厚さが、30~200μmであってもよい。前記非貫通孔の底から前記絶縁性樹脂層の前記金属部材と対向する面までの距離が、5~100μmであってもよい。前記非貫通孔は、配線領域における密度が平均化するように点在して形成されていてもよい。
【0008】
前記絶縁性樹脂層が、熱硬化性樹脂を含んでもよい。前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であってもよい。前記絶縁性樹脂層が、絶縁性熱伝導フィラーを含んでもよい。金属部材と前記絶縁性樹脂層との間に、無機酸化物層を更に有してもよい。前記実装部品は、端子が設けられた面を前記回路配線に対向させて配置され、前記端子と前記回路配線がハンダにより電気的に接続されていてもよい。
【0009】
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の回路部品の製造方法であって、前記金属部材を用意することと、前記金属部材上に前記絶縁性樹脂層を形成することと、前記絶縁性樹脂層の前記配線領域にレーザー光を照射して前記複数の非貫通孔を形成することと、前記配線領域に、電解メッキにより前記回路配線を形成することと、前記回路配線上に前記実装部品を実装することを含む回路部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回路部品は、高い放熱性と、回路配線の高い密着性を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態の回路部品の上面模式図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示すIIA領域の拡大図であり、
図2(b)は、
図1のIIB-IIB線断面模式図である。尚、
図2(a)において、実装部品は省略している。
【
図3】
図3(a)~(c)は、開口部の形状が楕円である非貫通孔が形成されている配線領域の上面模式図であり、
図3(d)及び(e)は、種々の形状の開口部を有する非貫通孔が形成されている配線領域の上面模式図である。
【
図4】
図4(a)は、略平均化された密度で非貫通孔が形成されている配線領域の上面模式図であり、
図4(b)は、不均一な密度で非貫通孔が形成されている配線領域の上面模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態の回路部品を製造する方法を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、レーザー光の照射によって非貫通孔を形成する場合のレーザー描画パターンの一例である。
【
図7】
図7(a)~(e)は、実施形態において基材上にメッキ膜を形成する様子を説明する図である。
【
図8】
図8(a)~(e)は、比率d/Dが小さい非貫通孔を有する基材上にメッキ膜を形成する様子を説明する図である。
【
図9】
図9は、変形例の回路部品の一部の断面模式図である。
【
図10】
図10(a)は、実施例13で製造した回路部品の上面模式図であり、
図10(b)は、
図10(a)のXB-XB線断面模式図である。
【
図11】
図11は、実施例14で作製した回路部品の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[回路部品]
図1及び
図2(a)、(b)に示す回路部品100について説明する。回路部品100は、金属部材50及び絶縁性樹脂層10を含む基材70と、基材70の絶縁性樹脂層10上に形成されているメッキ膜を含む回路配線20と、絶縁性樹脂層10上に実装され、回路配線20と電気的に接続する実装部品30とを含む。実装部品30は、回路配線20上に配置されて実装されている。絶縁性樹脂層10の表面10aにおいて、回路配線20が形成されている配線領域10Aに、回路配線20のメッキ膜で充填されている複数の非貫通孔11(凹部)が形成されている。
【0013】
金属部材50は、絶縁性樹脂層10に実装される実装部品30が発する熱を放熱する。したがって、金属部材50には放熱性のある金属を用いることが好ましく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼(SUS)等を用いることができる。中でも、軽量化、放熱性及びコストの観点から、マグネシウム、アルミニウムを用いることが好ましい。これらの金属は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。金属部材50の熱伝導率は、例えば、80~300W/m・Kである。
【0014】
金属部材50の形状及び大きさは特に限定されず、回路部品100の用途に合わせて任意に設計できる。例えば、金属部材50の形状は、板状体(金属板)でもよいし、放熱フィンであってもよいし、ダイカストで成形される複雑形状であってもよい。
【0015】
絶縁性樹脂層10は、回路配線20と金属部材50とを絶縁させて短絡を防止するため、絶縁性を有する。絶縁性樹脂層10の絶縁性の程度は、回路部品100の用途(アプリケーション)にもよるが、例えば、16Vの電圧を印可したときの回路配線20と金属部材50の間の抵抗が、1MΩ以上である。回路配線20と金属部材50の間の抵抗が1MΩ未満であると、回路配線20から金属部材50へ微小電流が流れ、回路配線20が機能できなくなる虞がある。また、絶縁性樹脂層10は、回路部品100の放熱性を高めるため、ある程度の熱伝導率を有する。このように、絶縁性樹脂層10は、絶縁性とある程度の熱伝導率とを併せ持つ、絶縁放熱樹脂層である。絶縁性樹脂層10の熱伝導率は、例えば、1~5W/m・Kである。
【0016】
絶縁性樹脂層10は、樹脂を含む。実装部品30がハンダ付けにより絶縁性樹脂層10に実装される場合、絶縁性樹脂層10に用いる樹脂は、ハンダリフロー耐性を有する耐熱性のある高融点の樹脂が好ましい。絶縁性樹脂層10に用いる樹脂の融点は、260℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましい。尚、実装部品30の実装に、低温ハンダを用いる場合はこの限りではない。
【0017】
絶縁性樹脂層10に用いる樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂を用いることができる。中でも、薄く成形することが容易であり、成形精度が高く、更に硬化後は高耐熱性及び高密度を有する熱硬化樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。光硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、6Tナイロン(6TPA)、9Tナイロン(9TPA)、10Tナイロン(10TPA)、12Tナイロン(12TPA)、MXD6ナイロン(MXDPA)等の芳香族ポリアミド及びこれらのアロイ材料、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSU)等を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0018】
絶縁性樹脂層10は、絶縁性熱伝導フィラーを含んでもよい。絶縁性熱伝導フィラーは、絶縁性樹脂層10の絶縁性を維持しながら熱伝導性を向上させることができる。絶縁性熱伝導フィラーとは、ここでは、熱伝導率1W/m・K以上のフィラーであり、カーボン等の導電性の放熱材料は除外される。絶縁性熱伝導フィラーとしては、例えば、高熱伝導率の無機粉末である、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等のセラミックス粉が挙げられる。フィラー同士の接触率を高めて熱伝達性を高めるために、ワラストナイト等の棒状、タルクや窒化ホウ素等の板状のフィラーを混合してもよい。これらの絶縁性熱伝導フィラーは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0019】
絶縁性熱伝導フィラーの最大直径(最大粒子サイズ)は、例えば、比較的安価なセラミック粒子を用いる場合、30μm~100μmが好ましい。また、絶縁性樹脂層10の厚さを薄くする場合には、絶縁性熱伝導フィラーの最大直径は、10μm~60μmが好ましい。
【0020】
絶縁性熱伝導フィラーは、絶縁性樹脂層10中に例えば、10重量%~90重量%含まれ、30重量%~80重量%含まれることが好ましい。絶縁性熱伝導フィラーの配合量が上記範囲内であると、回路部品100は、十分な放熱性を得られる。
【0021】
絶縁性樹脂層10は、更に、その強度を制御するために、ガラス繊維、チタン酸カルシウム等の棒状又は針状のフィラーを含んでもよい。また、絶縁性樹脂層10は、必要に応じて、樹脂成形体に添加される汎用の各種添加剤を含んでもよい。尚、これ以降、絶縁性樹脂層10を構成する樹脂、絶縁性熱伝導フィラー等を全て含む材料を「樹脂材料」と記載する場合がある。
【0022】
図2(a)及び(b)に示すように、絶縁性樹脂層10の表面10aの回路配線20が形成されている配線領域10Aに、回路配線20のメッキ膜で充填されている複数の非貫通孔(凹部)11が形成されている。非貫通孔11の幅Dに対する、非貫通孔11の深さdの比率d/Dは、0.5~5である。比率d/Dは、好ましくは、0.8~3.0μm、又は1.0~1.6μmであってもよい。比率d/Dが上記範囲内の非貫通孔11に回路配線20のメッキ膜が充填されることで、回路配線20の絶縁性樹脂層10に対する密着性が向上する。また、比率d/Dが上記範囲内の非貫通孔11においては、回路配線20のメッキ膜と金属部材50との距離が短くなるため、回路配線20及びその上に配置される実装部品30が発する熱を金属部材50へ逃がし易くなる。この結果、回路部品100の放熱性が向上する。このように、比率d/Dが上記範囲内の非貫通孔(凹部)11を設けることにより、回路部品100の放熱性、及び回路配線20の密着性が向上る。更に、比率d/Dが上記範囲内の非貫通孔11が形成された配線領域10A上に形成される回路配線20は、その表面20aの十分な平坦性(平滑性)を得られる。
【0023】
一方、比率d/Dが上記範囲外であると、以下に説明するように回路部品100の放熱性と回路配線20の密着性を両立できない。また、回路配線20の十分な平坦性(平滑性)が得られない。比率d/Dが上記範囲の下限値未満である場合は、幅Dに対して深さdが小さい(浅い)ため、回路配線20の密着性が十分に得られず、回路部品100の放熱性も低下する虞がある。また、深さdに対して幅Dが大きいため、メッキ膜で非貫通孔11を充填することが難しく、回路配線20の平坦性が低下する虞がある(後述する
図8(a)~(e)参照)。反対に、比率d/Dが上記範囲の上限値を超える場合は、深さdを大きく(深く)する必要がある。しかし、絶縁性樹脂層10の厚さ以上にdが大きくなると、回路配線20が金属部材50に接触してしまい、回路配線20と金属部材50とを絶縁できない。深さdを大きく(深く)するために絶縁樹脂層10を厚くした場合は回路配線20と金属部材50とを絶縁できるが、回路配線20から金属部材50への熱伝達が阻害され放熱性が低下する。
【0024】
本願明細書において、非貫通孔11の幅Dとは、表面10a(配線領域10A)における非貫通孔11の開口部11aの形状が真円である場合はその直径を意味する。非貫通孔11の開口部11aの形状は、回路配線20を構成するメッキ膜の平滑性及び密着性の向上の観点からは円形が好ましいが、特に限定されない。例えば、
図3(a)~(c)に示すように楕円であってもよいし、
図3(d)及び(e)に示すような形状であってもよい。開口部11aの形状が真円でない場合は、開口部11aの面積と同じ面積の真円の直径を意味する。また、非貫通孔11の深さdとは、非貫通孔11の最も深い部分(底11b)の深さ、即ち、表面10aから非貫通孔11の底11bまでの距離(長さ)である。
【0025】
非貫通孔11の幅Dは、比率d/Dが上記範囲を満たしていれば特に限定されないが、例えば、10~200μm、20~150μm又は30~50μmとしてよい。幅Dが上記範囲の下限値未満であると、回路配線20の密着性を十分に得られない虞がある。幅Dが上記範囲の上限値を超えると、比率d/Dを上述の適正な範囲内に収めることが難しくなる虞がある。
【0026】
非貫通孔11の深さdは、比率d/Dが上記範囲を満たしていれば特に限定されないが、例えば、20~200μm、30~150μm又は50~100μmとしてよい。深さdが上記範囲の下限値未満であると、回路配線20の密着性を十分に得られない虞がある。深さdが上記範囲の上限値を超えると、回路配線20と金属部材50との十分に絶縁できない虞、又は絶縁性を得るために絶縁性樹脂層10を厚くするために放熱性が低下する虞がある。
【0027】
非貫通孔11の幅Dに対する非貫通孔11間の距離Pの比率P/Dは、0.3~3、0.5~2.5又は1.0~1.5であることが好ましい。ここで、非貫通孔11間の距離Pとは、絶縁性樹脂層10の表面10a(配線領域10A)において、1つの非貫通孔11と、それに隣接する別の非貫通孔11との間の最短距離であり、1つの非貫通孔11の開口部11aの縁からそれに隣接する別の非貫通孔11の開口部11aの縁までの最短距離である。比率P/Dが上記範囲の下限値未満であると、非貫通孔11間の距離Pが近過ぎるため、その上に形成される回路配線20の平坦性が不十分となる虞がある。比率P/Dが上記範囲の上限値を超えると、非貫通孔11間の距離Pが大きくなるため、配置できる非貫通孔11の数が少なくなり、回路部品100の放熱性、及び回路配線20の密着性が不十分になる虞がある。
【0028】
非貫通孔11間の距離Pは、比率P/Dが上記範囲を満たしていれば特に限定されないが、例えば、20~300μm、又は50~150μmとしてよい。
【0029】
非貫通孔11の深さd及び幅D、並びに非貫通孔11間の距離Pは、例えば、所定範囲(測定範囲)に存在する複数の非貫通孔11の平均値として求められる。例えば、以下に説明するように、光学的測定法による配線領域10Aの高さ測定から求めてもよい。まず、絶縁性樹脂層10から回路配線20を剥離して配線領域10Aを露出させる。レーザー顕微鏡等の光学測定装置を用いて、配線領域10Aの所定範囲(測定範囲)全体の表面粗さ(Ra)を測定する。測定範囲全体の表面粗さ(Ra)の2倍以上の深さを有する部分を非貫通孔(凹部)11と判定し、個々の非貫通孔11の幅D及び非貫通孔11間の距離Pを測定して、平均値を求める。尚、非貫通孔11の深さdについては、光学測定におけるノイズを排除するため、深さdのバラつきを考慮し、非貫通孔11を10個以上測定し、それらの平均を求めることが好ましい。
【0030】
また、非貫通孔11の深さd及び幅D、並びに非貫通孔11間の距離Pは、以下に説明するX線CTによる形状分析法により求めてもよい。例えば、金属部材50がアルミニウム、回路配線20が銅で形成されている場合、回路部品100の回路配線20を含む部分を所定のサイズに切り出し、X線CTで測定する。これにより、アルミニウムよりもX線透過性の低い銅を含む回路配線20のみのX線CT像が得られる。このX線CT像を深さ方向の平面ごとにスライスデータとして抽出し、回路配線20が見えなくなるスライス深さを非貫通孔11の深さdとし、絶縁性樹脂層10の表面10aでスライスした像の形状から、非貫通孔11の幅D及び距離Pの値を測定する。このようにして得られた個々の非貫通孔11の深さd、幅D及び距離Pから、平均値を求める。尚、X線CTによる形状分析法は、サンプリングの容易さと検出感度の観点から、面積が3~15mm2の配線部を切り出して測定することが好ましい。
【0031】
また、非貫通孔11の深さd及び幅Dは、回路部品100の回路配線20の断面観察により求めてもよい。断面観察は、
図2(b)に示すように、非貫通孔11の深さd及び幅Dが測定可能な断面において行う必要があり、例えば、以下のように行ってもよい。まず、回路部品100を切断して、非貫通孔11の断面を観察する。その後、紙やすり等で2~3μm断面を研磨して切削し、再度、断面を観察する。これを繰り返し、非貫通孔11の深さが最も深く観測される位置の断面写真を得て、そこから求められる非貫通孔11の深さを、深さdとする。
図2(b)に示すように非貫通孔の形状が円錐であれば、深さdを求められる断面写真から、同時に幅Dも求められる。深さd及び幅Dのバラつきを考慮し、同様の手法により非貫通孔11を10個以上測定し、それらの平均を求めることが好ましい。
【0032】
非貫通孔11の構造は、特に限定されず、任意の形状としてよい。
図2(a)及び(b)に示すように、本実施形態の非貫通孔11の形状は、底面を表面10a(配線領域10A)に配置した円錐である。したがって、非貫通孔11の開口部11aの形状は真円である。しかし、非貫通孔11の形状はこれに限定されず、例えば、三角錐や四角錘等の多角錐であってもよいし、底面が複雑形状の錐体であってもよい。また、円柱、多角柱、又は底面が複雑形状の柱体であってもよいし、半球であってもよい。非貫通孔11の形成のし易さ(加工容易性)の観点からは、非貫通孔11の内部は、開口部11aよりも広がらない方が好ましい。即ち、非貫通孔11の内部の表面10aと平行な断面の面積は、開口部11aの面積以下であることが好ましい。したがって、非貫通孔11の形状が錐体、柱体、又は半球である場合、その底面を表面10a(配線領域10A)に配置することが好ましい。
【0033】
非貫通孔11は、配線領域10Aに形成されている。また、非貫通孔11は、配線領域10Aのみに形成され、配線領域10Aを除く表面10aには形成されていないことが好ましい。これにより、非貫通孔11を形成するための時間(加工時間)が短縮され、回路部品100の製造効率が向上する。また、非貫通孔11は、配線領域10Aにおける密度が略平均化するように点在して形成されていることが好ましい。これにより、回路部品100の放熱性、及び回路配線20の密着性を均一化できる。例えば、
図4(a)及び(b)に示す配線領域10A全体の非貫通孔11の密度は、同一である。しかし、
図4(a)に示す非貫通孔11は、配線領域10Aにおける密度が略平均化するように点在して形成されており、一方、
図4(b)に示す非貫通孔11は、その密度に偏りがる。
図4(b)において、左上部分は非貫通孔11の密度が高く、右下部分は非貫通孔11の密度が低い。
図4(a)に示す配線領域10A上には、均一に回路配線20のメッキ膜が成長する。一方、
図4(b)に示す配線領域10A上の右下部分はメッキ膜が成長し難い。このため、4(b)に示す配線領域10A上では、メッキ膜が不均一化し、メッキ膜の平滑性が低下する。
【0034】
また、配線領域10Aにおける密度が略平均化するように非貫通孔11を点在して形成するためには、以下の条件を満たすことが好ましい。配線領域10Aにおいて、距離P(1つの非貫通孔11の開口部11aの縁からそれに隣接する別の非貫通孔11の開口部11aの縁までの最短距離)の最大値と最小値との差が、配線領域10Aにおける距離Pの平均値の50%未満であることが好ましい。また、配線領域10Aにおいて、非貫通孔11の最も密度の高い領域における密度(個/mm2)と、最も密度の低い領域における密度(個/mm2)との差が、配線領域10Aにおける非貫通孔11の平均密度(個/mm2)の50%未満であることが好ましい。
【0035】
絶縁性樹脂層10の厚さは特に限定されず、回路部品100の用途に合わせて任意に設計できる。絶縁性樹脂層10の厚さは、略一定であってもよいし、場所によって変動していてもよい。絶縁性樹脂層10の厚さが薄いほど、回路部品100の放熱性は向上する傾向があるため、発熱の大きい実装部品30の近傍の絶縁性樹脂層10の厚さは小さい方が好ましい。一方、絶縁性樹脂層10の厚さが小さ過ぎると、絶縁性樹脂層10の成形において樹脂の流動抵抗が大きくなり、成形不良(充填不良)が発生する虞がある。また、十分な深さを有する非貫通孔11を形成することが難しくなる。これらの観点から、絶縁性樹脂層11の、回路配線20と金属部材50に挟まれ且つ非貫通孔11が形成されていない部分の厚さB(回路配線20の下の絶縁性樹脂層11の膜厚B)は、30~200μm、50~150μmであることが好ましい。厚さBが場所によって変動している場合は、最も小さい値(最も薄い部分の厚さ)が上記範囲内であることが好ましい。
【0036】
また、絶縁性樹脂層10の非貫通孔11が形成されている部分の厚さ、即ち、非貫通孔11の底11bから絶縁性樹脂層10の金属部材50と対向する面10bまでの距離(最短距離)Cは、5~100μm、20~80μm又は、30~60μmであることが好ましい。距離Cが上記範囲の下限値より小さいと、回路配線20と金属部材50とを十分に絶縁できない虞がある。また、距離Cが上記範囲の上限値より大きいと、回路部材100の放熱性が低下する虞がある。
【0037】
非貫通孔11以外の配線領域10Aの表面粗さ(Ra)は、非貫通孔11の深さdの1/5以下、又は1/10以下が好ましい。本実施形態では、非貫通孔11を設けることで回路配線20の密着性が向上するため、配線領域10Aの表面粗さ(Ra)を小さくしても十分な密着性を保持できる。そして、非貫通孔11以外の配線領域10Aの表面粗さ(Ra)を小さくできるため、その上に形成される回路配線20の平坦性が向上する。一方で、回路配線20のメッキ膜を配線領域10Aのみに選択的に形成し易くする観点からは、配線領域10Aの表面粗さ(Ra)は、配線領域10A以外の表面10aの表面粗さ(Ra)よりも大きい方が好ましい。また、配線領域10Aの表面粗さ(Ra)は、例えば、1~30μm、3~20μm又は、5~10μmであってもよい。
【0038】
回路配線20は、絶縁性樹脂層10の表面10aの配線領域10Aにメッキ膜により形成されている。回路配線20は、配線領域10A上に形成される無電解メッキ膜21と、無電解メッキ膜21上に形成される電解メッキ膜22から構成されることが好ましい(
図7(e)参照)。
【0039】
無電解メッキ膜21としては、例えば、無電解ニッケルリンメッキ膜、無電解銅メッキ膜、無電解ニッケルメッキ膜が挙げられ、中でも、無電解ニッケルリンメッキ膜が好ましい。電解メッキ膜22としては、電解ニッケルリンメッキ膜、電解銅メッキ膜、電解ニッケルメッキ膜が挙げられる。また、メッキ膜のハンダの濡れ性を向上させるために、金、銀、錫等のメッキ膜を回路配線20の最表面に形成してもよい。
【0040】
回路配線20を構成するメッキ膜が非貫通孔11を充填しているため、回路配線20は絶縁性樹脂層10に対して強く密着できる。回路配線20の厚さAは、非貫通孔11の深さdの1/2及び幅Dの1/2の小さい方より大きいことが好ましい。即ち、回路配線20の厚さAは、非貫通孔11の深さdの1/2、又は幅Dの1/2より大きいことが好ましい。回路配線20の厚さAが上記範囲内であると、回路配線20を形成するメッキ膜の平坦性が更に向上する。但し、非貫通孔11の大きさが比較的小さい場合は、回路配線20の厚さAが上記範囲より薄くともメッキ膜で非貫通孔11を充填でき、回路配線20の平坦性を担保できる。非貫通孔11の大きさが比較的小さい場合、放熱性の低下が懸念されるが、例えば、絶縁性樹脂層10の厚さBを小さくすることにより非貫通孔11の底11bと金属部材50を近づけることで(距離Cを小さくすることで)、回路部品100の放熱性を十分担保できる。
【0041】
回路配線20の厚さAとは、非貫通孔11に充填されている部分を含まない厚さを意味する。即ち、回路配線20の厚さAは、絶縁性樹脂層10の表面10aから回路配線20の実装部品30に対向する面20aまでの距離である。回路配線20の厚さAは、例えば、10~100μm、又は20~80μmであってもよい。
【0042】
図2(b)に示すように、実装部品30は、端子が設けられた面(底面)30bを回路配線20に対向させて配置され、端子と回路配線20がハンダにより電気的に接続されている。ハンダは、特に限定されず、汎用のものを用いることができる。実装部品30は、通電により熱を発生して発熱源となる。実装部品30は任意のものを用いることができ、例えば、LED(発光ダイオード)、パワーモジュール、IC(集積回路)、熱抵抗等が挙げられる。
【0043】
本実施形態では、実装部品30が実装される回路配線20の表面20aが平坦であるため、実装部品30の回路配線20への密着強度が高まり、実装部品30から回路配線20への熱伝導性が向上する。これにより、回路部品100の放熱性が更に向上する。
【0044】
[回路部品の製造方法]
図5に示すフローチャートに従って、回路部品100の製造方法について説明する。まず、金属部材50を用意する(
図5のステップS1)。金属部材50は、市販品の金属板(板状体)、放熱フィン等であってもよいし、ダイカストにより任意の形状に成形したものであってもよい。
【0045】
金属部材50の絶縁性樹脂層10が形成されている表面は、その上に積層される絶縁性樹脂層10との密着性を高めるために粗化してもよい。金属部材50の表面の粗化には、化学エッチング、特開2009-6721号公報、特許第5681076号公報等に開示されているナノモールディングテクノロジー(NMT)を用いてもよい。あるいはレーザー粗化を行ってもよい。
【0046】
次に、金属部材50上に絶縁性樹脂層10を形成する(
図5のステップS2)。例えば、絶縁性樹脂層10はインサート成形(一体成形)によって形成してもよい。具体的には、金属部材50を先に金型内に配置し、その金型の空き部分に樹脂材料を射出充填する。これにより、金属部材50と絶縁性樹脂層10とが一体に成形される。インサート成形としては、射出成形、トランスファー成形等を用いることができる。このように、絶縁性樹脂層10と金属部材50とは、一体成形した一体成形体であってもよい。ここで、一体成形体とは、別個に作成された金属部材50と絶縁性樹脂層10とを接着や接合(二次接着や機械的接合)するのではなく、絶縁性樹脂層10の成形時に金属部材50と接合する加工(典型的にはインサート成形)により製造したものを意味する。
【0047】
次に、絶縁性樹脂層10の配線領域10Aに、複数の非貫通孔11を形成する(
図5のステップS3)。非貫通孔11を形成する方法は特に限定されないが、例えば、レーザー光を照射して絶縁性樹脂層10の表面10aを切削して、非貫通孔11を形成してよい(レーザー加工)。レーザー加工は、複数の非貫通孔11を効率よく形成でき、非貫通孔11のサイズ(幅D、深さd)の調整も容易である。非貫通孔11の形成と同時に、配線領域10A全体にレーザー光を照射して配線領域10Aを粗化ししてもよい。配線領域10Aを粗化することで、配線領域10Aに選択的に回路配線20(メッキ膜)を形成し易くなり、また、回路配線20の密着性を高められる。但し、上に形成される回路配線20の平坦性を担保するため、非貫通孔11以外の配線領域10Aの表面粗さ(Ra)は、非貫通孔11の深さdの1/5以下、又は1/10以下とすることが好ましい。非貫通孔11のレーザー加工に用いるレーザー光の種類、レーザー加工装置は特に限定されず、絶縁性樹脂層10の種類等を考慮し、適宜選択して用いることができる。
【0048】
レーザー加工によって非貫通孔11を形成する場合、例えば、
図6に示すように、非連続ラインから構成されるパターンのレーザー描画を行うことが好ましい。
図6に示すレーザー描画について説明する。まず、所定方向(
図6に示すY方向)に延びる非連続ラインL1を描画する。非連続ラインL1は、長さN
1の線分(レーザー描画部)が、長さN
2の間隔(スペース)で配置されたパターンである。次に、非連続ラインL2として、ラインL1と同様のパターンを、ラインL1から所定方向と垂直な方向(
図6に示すX方向)に長さN
3平行移動させ、且つY方向に長さN
4平行移動させて、レーザー描画する。このとき、N
4=(N
1+N
2)/2とする。同様の作業を繰り返し、Y方向に延びる複数の非連続ラインLnを、X方向に等間隔(長さN
3)に描画する。これにより、
図6に示すように、長さN
1の線分(レーザー描画部)がX方向に長さ(N
1+N
2)のピッチで、且つY方向に長さ2×N
3のピッチで並んだレーザー描画パターンが形成できる。レーザー光は、長さN
1の線分のみに照射されるが、レーザー光はスポット径と呼ばれる幅を持った光であるため、描画パターン線の周辺部の絶縁性樹脂層10も切削される。線長さN
1が短い場合、スポット径による幅の広がりと切削深さはほぼ一致し、レーザー加工痕が円錐の非貫通孔11となる。長さN
1のレーザー照射部から広がって切削されて形成された非貫通孔11の直径をDとすると、間隔Pは、P=√[(N
3)
2+(N
4)
2]-Dとなる。長さN
1~N
4の数値を変えることで、様々な大きさの非貫通孔11のパターンを作成できる。また、このようなレーザー描画を用いると、容易に、配線領域10Aに密度が略平均化するように非貫通孔11を点在させて形成できる。レーザー光よって複数の非貫通孔11を形成する方法としては、描画パターンを非連続とすることの他に、レーザー光をパルスで照射する手法を用いてもよい。
【0049】
次に、絶縁性樹脂層10の配線領域10Aに、メッキ膜に含む回路配線20を形成する。回路配線20を形成する方法は、特に限定されず、汎用の方法を用いることができる。例えば、表面10a全体にメッキ膜を形成し、メッキ膜にフォトレジストでパターニングし、エッチングにより回路配線以外の部分のメッキ膜を除去する方法、回路配線を形成したい部分にレーザー光を照射して樹脂層を粗化し、レーザー光照射部分のみにメッキ膜を形成する方法等が挙げられる。特に、絶縁性樹脂層10にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いた場合は、配線領域10Aをレーザー光で粗化することでメッキ触媒である金属イオンの吸着を促進でき、配線領域10Aのみに無電解メッキ膜を形成し易くなる。
【0050】
回路配線20を構成するメッキ膜の一部は、非貫通孔11を充填する。回路配線20の形成は、
図7(a)~(e)に示すように、配線領域10A上に無電解メッキ膜21を形成することと(
図7(a)参照)、無電解メッキ膜21上に電解メッキ膜22を形成すること(
図7(b)~(e)参照)を含んでもよい。
【0051】
無電解メッキ膜21を形成する方法は特に限定されず、汎用の無電解メッキ方法を適宜選択して用いることができる。絶縁性樹脂層10上に導電性の無電解メッキ膜21を形成することで、無電解メッキ膜21上に電解メッキが可能となる。このように、無電解メッキ膜21は電解メッキ膜22を形成するための下地膜である。
【0052】
電解メッキ膜22を形成する方法は特に限定されず、汎用の電解メッキ方法を適宜選択して用いることができるが、均一電着性の高い電解メッキ方法が好ましい。電解メッキでは、メッキ膜形成面のコーナー部分や突起では電流が多く流れ、中央部や凹部では電流が少なく流れる。電解メッキ膜の厚さは電流の強さに比例する傾向があるため、メッキ膜形成面に凹凸がある場合、電解メッキ膜の膜厚に偏りが生じる。均一電着性の高い電解メッキ方法では、このような電解メッキ膜の膜厚の偏りを抑制できる。この結果、
図7(b)~(e)に示すように、電解メッキ膜22a、22b、22cは、非貫通孔11の開口部11aの縁(コーナー部分)に厚く形成されることなく、非貫通孔11の内壁及び面10aから、ほぼ均一な膜厚で成長する。これにより、非貫通孔11を容易に充填でき、更に、電解メッキ膜23cの表面(回路配線20の表面20a)の平坦性をより高められる。
【0053】
上述のように、非貫通孔11の幅Dに対する深さdの比率d/Dは、0.5~5である。非貫通孔11の比率d/Dが上記範囲内であるため、電解メッキ膜22は、非貫通孔11を容易に充填でき、更に回路配線20の表面20aの平坦性(平滑性)を高められる。一方、比率d/Dが上記範囲外である場合、メッキ膜により非貫通孔11を充填することは難しく、また、回路配線20の平坦性を高められない。例えば、
図8(a)~(e)に、比率d/Dが0.5より小さい非貫通孔111、即ち、幅Dが高さdに対して広すぎる貫通孔111を有する基材上にメッキ膜を形成する様子を示す。非貫通孔111の内壁から成長していく電解メッキ膜22a、22b、22cは、膜厚に対して非貫通孔111の幅Dが大きいため、容易に非貫通孔111を充填できない。
図8(e)に示すように、深さdと同程度の厚さメッキ膜を形成することで非貫通孔111を充填することはできるが、非貫通孔111の開口部111aの端にはメッキ膜の盛り上がりが形成されてしまい、回路配線20の表面20aを平坦にできない。回路配線20の表面20aを平坦にするためには、更に電解メッキ膜22を厚く形成する必要があり、非効率であり製造コストも上昇する。
【0054】
絶縁性樹脂層10に回路配線20を形成した後、回路配線20上に実装部品30を実装する(
図5のステップS5)。これにより、本実施形態の回路部品100が得られる。実装部品30の実装方法は特に限定されず、汎用の方法を用いることができ、例えば、回路配線20上に常温のハンダと実装部品30とを配置して高温のリフロー炉に通過させるハンダリフロー法、又はレーザー光を絶縁性樹脂層10と実装部品30の界面に照射してハンダ付けを行うレーザーハンダ付け法(スポット実装)により、実装部品30を絶縁性樹脂層10にハンダ付けしてもよい。
【0055】
以上説明した本実施形態の回路部品100では、配線領域10Aに比率d/Dが特定の範囲内である非貫通孔11を設けることで、高い放熱性と、回路配線20の絶縁性樹脂層10に対する高い密着性を両立できる。また、実装部品30が実装される回路配線20の表面20aが平坦であるため、実装部品30の回路配線20への密着強度が向上し、実装部品30から回路配線20への熱伝導性が向上する。これにより、回路部品100の放熱性が更に向上する。
【0056】
[変形例]
以上説明した本実施形態の回路部100では、金属部材50の上に直接、絶縁性樹脂層10が形成されているが、本実施形態はこれに限定されない。
図9に示すように、金属部材50と絶縁性樹脂層10との間にセラミックス層60が形成されていてもよい。本変形例では、
図9に示すセラミックス層60を有する回路部200について以下に説明する。回路部200の構成は、セラミックス層60を有すること以外、上述した
図2(a)及び(b)に示す回路部品100と同様である。したがって、本変形例では、セラミックス層60以外の構成要件の説明を省略する。
【0057】
セラミックス層60は、金属部材50上に形成されている。セラミックス層60は、絶縁性樹脂層10よりもレーザー光により切削され難い。これにより、レーザー光照射により非貫通孔11を形成する場合、非貫通孔11が金属部材50に達してしまうことを防止できる。また、セラミックス層60は、絶縁性樹脂層10と共に回路配線20と金属部材50とを絶縁させて短絡を防止するため、絶縁性を有する。この絶縁性の程度は、回路部品100の用途(アプリケーション)にもよるが、例えば、500V電圧の印加により5000MΩ以上の抵抗を有することが好ましい。
【0058】
また、セラミックス層60は、回路部品100の放熱性を高めるため、高い熱伝導率を有することが好ましい。このように、セラミックス層60は、絶縁性と高い熱伝導率とを併せ持つ、絶縁熱伝導層(絶縁放熱層)であることが好ましい。セラミックス層60の熱伝導率は、例えば、5~150W/m・Kである。また、絶縁性樹脂層10上の実装部品30の発する熱を効率的に金属部材50へ逃すため、セラミックス層60の熱伝導率は、金属部材50の熱伝導率より低く、絶縁性樹脂層10の熱伝導率より高いことが好ましい。
【0059】
セラミックス層に含まれるセラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、イットリア、ジルコニア、二酸化チタン、二酸化珪素、粘土鉱物等が挙げられ、中でも、低コストで緻密な薄膜を形成し易いイットリアやアルミナが好ましい。これらのセラミックスは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0060】
セラミックス層60の膜厚は、例えば、1μm~100μm、5μm~20μm又は、5μm~10μmであってもよい。
【0061】
次に、本変形例の回路部品200の製造方法について説明する。まず、金属部材50を用意する。
【0062】
次に、金属部材50上に、セラミックス層60を形成する。セラミックス層60の形成方法は特に限定されないが、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング等の物理的蒸着法(PVD)、プラズマCVD等の化学的蒸着法(CVD)、エアロゾルディポジション(AD)法、スパッタリング、溶射法、コールドスプレー法、ウォームスプレー法等を用いることができる。金属部材50にアルミニウム及びその合金を用いる場合、陽極酸化により、セラミックス層60として、アルマイト層(酸化アルミニウム(アルミナ)の被膜を形成してもよい。アルマイト層は、金属部材50の一部のみに形成してもよいし、金属部材50の全面に形成してもよい。また、以上説明した複数の成膜方法を用いて、多層膜からなるセラミックス層60を形成して、膜強度を高めてもよい。
【0063】
次に、セラミックス層60上に絶縁性樹脂層10を形成し、絶縁性樹脂層10の配線領域10Aに複数の非貫通孔11を形成し、絶縁性樹脂層10の配線領域10Aにメッキ膜に含む回路配線20を形成し、そして、回路配線20上に実装部品30を実装して、本変形例の回路部品200を得る。絶縁性樹脂層10の形成、複数の非貫通孔11の形成、回路配線20の形成、及び実装部品30の実装は、上述した回路部品100の製造方法と同様に実施できる。
【0064】
本変形例の回路部品200は、上述の回路部品100と同等の効果を奏する。更に、回路部品200は、セラミック層60を有することにより、回路配線20と金属部材50とをより確実に絶縁できる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
【0066】
[実施例1]
本実施例では、
図1に示す回路部品100を製造した。実装部品30として、LED(発光ダイオード)を用いた。
【0067】
(1)金属部材の用意
金属部材50として、アルミニウム板(A1050、アルミニウム成分:99%以上、8cm×12cm)を用意した。
【0068】
(2)絶縁性樹脂層の形成
次に、金属部材50の表面に、汎用の成形機を用いて、最大直径が35μmのアルミナ粒子(酸化アルミニウム)を75重量%含むエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂、熱伝導率:1W/m・K)をインサート成形(トランスファー成形)し、絶縁性樹脂層10を形成した。これにより、アルミニウム板(金属部材)50及び絶縁性樹脂層10から構成される基材70を得た。絶縁性樹脂層10の大きさは、40mm×40mm×厚さ200μmとした。また、絶縁性樹脂層10は、金属部材50の中央に形成した。
【0069】
(3)非貫通孔の形成
絶縁性樹脂層10の表面10aの回路配線20を形成する予定の領域(配線領域10A)にレーザー光を照射して配線領域10Aの加工を行った。レーザー加工(レーザー描画)は、3Dレーザーマーカ(キーエンス製、YVO4レーザー、MD-9920A、13W)を用いた。
【0070】
まず、レーザー光を照射して、絶縁性樹脂層10の表面10aの回路配線20を形成する予定の領域(配線領域10A)を粗化した。具体的には、配線領域10Aに、40μmピッチ間隔で並んだ平行線のパターンをレーザー描画した(レーザー描画条件:線速2000mm/s、周波数40kHz、パワー20%)。これにより、配線領域10Aの表面粗さ(Ra)は13μmとなった。
【0071】
次に、配線領域10Aに、レーザー加工により複数の非貫通孔(凹部)11を形成した。具体的には、配線領域10Aに
図6に示す非連続ラインから構成されるパターンをレーザー描画し(レーザー描画条件:線速30mm/s、周波数50kHz、パワー80%)、複数の非貫通孔11を形成した。レーザー描画の回数(繰り返しレーザー描画回数)は、1回とした。レーザー描画パターンの各サイズは以下である。N
1=35μm、N
2=365μm、N
3=200μm、N
4=200μm。形成された非貫通孔11の形状は、
図2(a)及び(b)に示すように、底面を表面10a(配線領域10A)に配置した円錐であった。
【0072】
形成した貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離Pをレーザー顕微鏡(キーエンス製レーザー顕微鏡VK-9700、対物レンズ20倍)を用いて測定した。深さdについては、1つの非貫通孔11の深さ分布を算出し、深さの値が最も大きい累計頻度1%未満の範囲は光学ノイズとして無視することとし、累積頻度1%となる深さの値を、その1つの非貫通孔の深さdとして算出した。また、幅Dについては、1つの非貫通孔11の開口部11aの面積を計算し、開口部11aの形状を真円と見なした場合の直径を、1つの非貫通孔11の幅Dとして算出した。測定視野内に存在する全ての非貫通孔11それぞれについて、同様の手法により、幅D及び深さdを求め、更に、これら幅D及び深さdの平均値を求めた。
【0073】
また、非貫通孔11間の距離Pについては、まず、1つの非貫通孔11の開口部11aの重心と、それに隣接する非貫通孔11の開口部11aの重心との距離を測定した。測定視野内に存在する全ての非貫通孔11について、同様の手法により、隣接する開口部11aの重心間の距離を求め、更に、これら重心間の距離の平均値を求めた。次に、重心間の距離の平均値から、先に求めた幅Dの平均値を差し引いた値を非貫通孔11間の距離Pとした。
【0074】
上述のようにして算出した非貫通孔11の幅D(平均値)は155μm、深さd(平均値)は178μm、非貫通孔11間の距離Pは、128μmであった。したがって、比率d/Dは、1.15であった。算出した貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離P、比率d/Dの値を表4に示す。
【0075】
(4)回路配線の形成
(a)無電解メッキ触媒の付与
非貫通孔11を形成した基材70を30℃に調整した市販の塩化パラジウム(PdCl2)水溶液(奥野製薬工業製、アクチベータ)に5分間浸漬した。その後、基材を塩化パラジウム水溶液から取り出し、水洗した。
【0076】
(b)無電解メッキ、及び電解メッキ
次に、60℃に調整した無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンLPH-L、pH6.5)に、基材を10分間浸漬した。配線領域10Aにニッケルリン膜(無電解ニッケルリンメッキ膜)が約1μm成長した。
【0077】
ニッケルリン膜上に、更に、電解銅メッキ膜95μm、無電解ニッケルリンメッキ膜4.0μm、無電解金メッキ膜0.1μmを、この順に積層し、回路配線20を形成した。電解銅メッキには、均一電着性の高い電解メッキ方法を用いた。電解銅メッキ液には、A液:奥野製薬社製、トップルチナ2000と、B液:ローム&ハース電子材料社製、カパーグリームHS-200との混合液を用いた。これにより、レーザー光を照射した配線領域10Aに、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜から構成される回路配線20を形成した。
【0078】
(5)実装部品の実装
実装部品30として、面実装タイプの高輝度LED(日亜化学製、NS2W123BT、3.0mm×2.0mm×高さ0.7mm)を用いた。まず、
図1に示すように、5個の実装部品30を回路配線20の上に常温のハンダを介して配置した。各実装部品30間の間隔は、0.5mmとした。次に、LEDを配置した基材をリフロー炉に入れた(ハンダリフロー)。リフロー炉内で基材は加熱され、基材の最高到達温度は240℃~260℃となり、基材が最高到達温度で加熱された時間は約1分であった。ハンダにより、実装部品30は樹脂部10に実装され、
図1に示す本実施例の回路部品100を得た。
【0079】
[実施例2~12]
実施例2~12では、絶縁性樹脂層10の厚さ、レーザー描画条件、
図6に示すレーザー描画パターンの各サイズ(N
1~N
4)及び回路配線の厚さ(メッキ膜の厚さ)を表1、2及び4に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により回路部品100を製造した。尚、実施例5~12では、実施例1で用いたYVO
4レーザーに代えて、UVレーザー(キーエンス製、3Dレーザーマーカ、MD-U1000C、出力2.5W)を用いた。
【0080】
また、実施例1と同様の方法により、貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離Pを算出した。算出した貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離P、比率d/Dの値を表4及び5に示す。
【0081】
[実施例13]
本実施例では、
図10(a)及び(b)に示す回路部品300を製造した。回路部品300は、
図10(b)に示すように、樹脂層310の厚さが一定でない。それ以外の構成は、
図1に示す回路部品100と同等である。
【0082】
本実施例では、樹脂層310の最も薄い膜厚X1を75μmとし、最も厚い膜厚X2を450μmとした。絶縁性樹脂310には、最大粒子径35μmのフィラー(アルミナ粒子)が混合されているため、絶縁性樹脂310全体を75μmの厚さで成形することは難しいが、部分的に厚さを75μmとすることで成形が可能となった。部分的に膜厚が薄い領域(膜厚X1の領域)を設けることで、回路部品300の放熱性がより向上する。また、膜厚が薄い領域(膜厚X1の領域)は、発熱源である実装部品(LED)30が実装される部分に設けることが好ましい。
【0083】
本実施例では、絶縁性樹脂層310の厚さ、レーザー描画条件、
図6に示すレーザー描画パターンの各サイズ(N
1~N
4)及び回路配線の厚さ(メッキ膜の厚さ)を表2及び5に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により回路部品300を製造した。尚、本実施例では、非貫通孔11の形成に実施例5で用いたUVレーザーを用いた。
【0084】
また、実施例1と同様の方法により、貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離Pを算出した。算出した貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離P、比率d/Dの値を表5に示す。
【0085】
[実施例14]
本実施例では、
図10(a)及び(b)に示す回路部品300のように樹脂層310の厚さが一定でなく、且つ
図9に示す回路部品200のように、セラミックス層60を有する回路部品を製造した。本実施例で製造した回路部品は、樹脂層の厚さが一定でないこと、及びセラミックス層を有すること以外の構成は、
図1に示す回路部品100と同等である。本実施例では、樹脂層の最も薄い膜厚X1を65μmとし、最も厚い膜厚X2を450μmとした。
【0086】
まず、実施例1で用いたものと同様の金属部材に、脱脂及び化学エッチングを施した後、硬質アルマイト処理を行った(東亜電化、TAF-TR)。これにより、金属部材の全面に陽極酸化皮膜(アルマイト)が形成された。陽極酸化皮膜の膜厚は、50μmであった。
【0087】
陽極酸化皮膜を形成した金属部材を用い、絶縁性樹脂層の厚さ、レーザー描画条件、
図6に示すレーザー描画パターンの各サイズ(N
1~N
4)及び回路配線の厚さ(メッキ膜の厚さ)を表2及び5に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、本実施例の回路部品を製造した。尚、本実施例では、非貫通孔の形成に実施例5で用いたUVレーザーを用いた。
【0088】
また、実施例1と同様の方法により、貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離Pを算出した。算出した貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離P、比率d/Dの値を表5に示す。
【0089】
更に、マイクロスコープ(キーエンス製、VH-6000)を用いて、本実施例の回路部品の断面観察を行った。
図11に示すように、絶縁性樹脂層に非貫通孔が規則的に形成されている状態が観察された。
【0090】
[比較例1]
本比較例では、非貫通孔11に替えて、基材70の配線領域10A全面に溝(凹部)によって構成される格子パターンを形成した。
【0091】
(1)基材の作製
絶縁性樹脂層の厚さを150μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、金属部材上に絶縁性樹脂層を形成した基材を製造した。
【0092】
(2)格子パターンの形成
絶縁性樹脂層の表面の回路配線を形成する予定の領域(配線領域)に、表3に示すレーザー描画条件で、レーザー加工により格子パターンを形成した。格子パターンは、200μmピッチの格子パターンとした。格子パターンを形成する溝の深さ(レーザー加工部の深さの最大値)は、130μmであった。
【0093】
(3)回路配線の形成及び実装部品の実装
格子パターンを形成した基材に、実施例1と同様の方法により、回路配線を形成して、実装部品を実装した。これにより、本比較例の回路部品を得た。尚、電解メッキは、実施例2と同じ条件(メッキ液組成、電流密度、時間)で行い、回路配線の平均厚さが実施例2と同様になるように調整した。回路配線の平均厚さを表5に括弧書きで示す。
【0094】
[比較例2~4]
比較例2~4も、比較例1と同様に、非貫通孔11に替えて、基材の配線領域全面に溝(凹部)によって構成される格子パターンを形成した。比較例2~4では、絶縁性樹脂層10の厚さ、レーザー描画条件及び回路配線の平均厚さを表3及び5に示すように変更した以外は、比較例1と同様の方法により回路部品を製造した。尚、比較例3及び4では、比較例1で用いたYVO4レーザーに代えて、UVレーザー(キーエンス製、3Dレーザーマーカ、MD-U1000C、出力2.5W)を用い、80μmピッチの格子パターンをレーザー描画した。
【0095】
[比較例5]
本比較例も、比較例1と同様に、非貫通孔11に替えて、基材の配線領域全面に溝(凹部)によって構成される格子パターンを形成した。但し、本比較例では、
図10(a)及び(b)に示す回路部品300のように樹脂層310の厚さが一定でなく、且つ
図9に示す回路部品200のように、セラミックス層60を有する回路部品を製造した。本比較例で製造した回路部品は、樹脂層の厚さが一定でないこと、及びセラミックス層を有すること以外の構成は、比較例1で製造した回路部品と同等である。本比較例では、樹脂層の最も薄い膜厚X1を65μmとし、最も厚い膜厚X2を450μmとした。
【0096】
まず、比較例1で用いたものと同様の金属部材に、脱脂及び化学エッチングを施した後、硬質アルマイト処理を行った(東亜電化、TAF-TR)。これにより、金属部材の全面に陽極酸化皮膜(アルマイト)が形成された。陽極酸化皮膜の膜厚は、50μmであった。
【0097】
陽極酸化皮膜を形成した金属部材を用い、絶縁性樹脂層の厚さ、レーザー描画条件及び回路配線の平均厚さを表3及び5に示すように変更した以外は、比較例1と同様の方法により、本比較例の回路部品を製造した。尚、本比較例では、比較例1で用いたYVO4レーザーに代えて、比較例3で用いたUVレーザーを用いた。
【0098】
[比較例6及び7]
比較例6及び7では、絶縁性樹脂層10の表面10aの回路配線20を形成する予定の領域(配線領域10A)に、複数の貫通孔11を形成した。比較例6及び7では、絶縁性樹脂層10の厚さ、レーザー描画条件、
図6に示すレーザー描画パターンの各サイズ(N
1~N
4)及び回路配線の厚さ(メッキ膜の厚さ)を表3及び5に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により回路部品100を製造した。尚、比較例6及び7では、実施例1で用いたYVO
4レーザーに代えて、比較例3で用いたUVレーザーを用いた。
【0099】
また、実施例1と同様の方法により、貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離Pを算出した。算出した貫通孔11の幅D、深さd、非貫通孔11間の距離P、比率d/Dの値を表5に示す。但し、比較例7の非貫通孔11の深さdは、断面観察により求めた。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
[回路部品の評価]
以上説明した実施例1~14及び比較例1~7で作製した回路部品について、以下の評価を行った。評価結果を表4及び5に示す。また、表4及び5には、評価結果に併せて、実施例1~14及び比較例1~7の回路部品に関する下記の値も記載する。非貫通孔11の幅D及び深さd、比率d/D、非貫通孔11間の距離P、比率P/D、配線領域10Aの表面粗さ(Ra)、比率d/5、回路配線の下の樹脂層の厚さB、距離C、回路配線の厚さA、D/2又はd/2の小さい方の値。また、比較例1~5に関しては、非貫通孔11の深さd、及び回路配線の厚さAに替えて、格子パターンを形成する溝の深さ、及び回路配線の平均厚さを、それぞれ表5に括弧書きで記載した。
【0104】
(1)回路配線(メッキ膜)の密着性試験
上述した実施例1~14及び比較例1~7で作製した回路部品とは別に、各実施例及び比較例の密着性試験用の試料を以下の方法で作製した。まず、実施例1~14及び比較例1~7に用いたものと同じ材料の金属部材及び絶縁性樹脂層からなる基材を用意した。基材の絶縁性樹脂層上に、各実施例及び比較例と同様のレーザー描画を行った。レーザー描画を行った基材上に、無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm形成し、更にその上に、40μmの電解銅メッキを形成して、密着性試験用の試料とした。尚、試料上のメッキ膜の大きさは、幅2mm、長さ40mmとした。垂直引っ張り試験により、測定用試料のメッキ膜の密着強度を測定し、回路配線(メッキ膜)の密着性を以下の評価基準に従って評価した。
【0105】
<密着性の評価基準>
A:測定用試料のメッキ膜の密着強度が15N/cm以上であった。
B:測定用試料のメッキ膜の密着強度が10N/cm以上、且つ15N/cm未満であった。
C:測定用試料のメッキ膜の密着強度が1N/cm以上、且つ3N/cm未満であった。
E:測定用試料のメッキ膜の密着強度が1N/cm未満であった。
【0106】
(2)絶縁性樹脂層の絶縁性試験
実施例1~14及び比較例1~7で作製した回路部品において、500Vの電圧を回路配線20と金属部材50との間に印加して、テスターを用いて回路配線20と金属部材50との間の抵抗値を測定し、以下の絶縁性の評価基準に基づいて、絶縁性樹脂層の絶縁性を評価した。尚、実施例14及び比較例5においては、絶縁性樹脂層が形成されていない箇所のアルマイト層の一部を金属やすりで切削して金属部材を露出させ、回路配線20と金属部材50との間の抵抗を測定した。
【0107】
<絶縁性の評価基準>
A:回路配線20と金属部材50との間の抵抗値が5000MΩ以上であった。
B:回路配線20と金属部材50との間の抵抗値が100MΩ以上、且つ5000MΩ未満であった。
C:回路配線20と金属部材50との間の抵抗値が1MΩ以下であった。
E:回路配線20と金属部材50とが短絡していることが確認された。
【0108】
(3)回路部品の放熱性試験
実施例1~14及び比較例1~7で作製した回路部品において、実装部品(LED)30の端部に熱電対を接着させてから、一定電流(0.8A)を流してLED30を点灯させ、点灯してから30分後のLED30の温度を測定した。回路部品上の全てのLED30の平均温度を計算し、以下の評価基準に従って、回路部品の放熱性を評価した。但し、上述の(2)絶縁性樹脂層の絶縁性試験において、回路配線20と金属部材50とが短絡が確認された(評価結果:E)回路部品については、電流が金属部材を介して流れてしまい、正確な値が測定できないため、本試験は行わなかった。
【0109】
<回路部品の放熱性の評価基準>
A:点灯してから30分後のLED表面温度が90℃以下であった。
B:点灯したから30分後のLED表面温度が90℃を超え、且つ100℃以下であった。
C:点灯してから30分後のLED表面温度が100℃を超え、且つ120℃以下であった。
E:点灯してから30分後のLED表面温度が120℃を越えた。
【0110】
(4)回路配線(メッキ膜)の平坦性評価
実施例1~14及び比較例1~7で作製した回路部品において、マイクロスコープを用いて回路配線20のメッキ表面を観察し、回路配線の幅方向における断面プロファイル(高さプロファイル)から最大高さと最小深さの差を測定した。この測定を3視野行い、平均値を回路配線の表面粗さとし、以下の平坦性の評価基準に基づいて平坦性を評価した。
【0111】
<平坦性の評価基準>
A:回路配線の表面粗さが5μm以下であった。
B:回路配線の表面粗さが5μmを超え、且つ10μm以下であった。
C:回路配線の表面粗さが10μmを超え、且つ20μm以下であった。
E:回路配線の表面粗さが20μmを超えていた。
【0112】
【0113】
【0114】
表4及び5に示すように、実施例1~14で作製した回路部品は、全ての評価結果が良好であり、高い放熱性と回路配線の高い密着性とを両立しており、更に、回路配線と金属部材が確実に絶縁されており、回路配線の表面が平坦であることが確認できた。また、実施例1~14の回路部品では、配線領域10Aの表面粗さ(Ra)が非貫通孔11の深さdの1/5以下であり、比率P/Dが0.3 ~3であり、回路配線(メッキ膜)20の厚さAが非貫通孔の11深さdの1/2より大きいか、又は幅Dの1/2より大きく、非貫通孔の幅Dが10~200μmであり、樹脂層の厚さBが30~200μmであり、距離Cが5~100μmであった。
【0115】
一方、非貫通孔11を形成するのに替えて、配線領域10Aの全面に溝(凹部)により構成された格子パターンを形成した比較例1~5は、平坦性の評価結果が不良であった(評価結果:E)。これは、配線領域10A全面に格子パターンによる凹凸が形成されたため、その上に形成されるメッキ膜の平坦性を悪化させたと推測される。
【0116】
更に、比較例1、3及び5では、平坦性の評価結果に加えて、絶縁性の評価結果も不良であり(評価結果:E)、このため、放熱性試験は行わなかった。この原因は以下のように推測される。レーザー描画により格子状の溝形状を形成する場合、交点部分はレーザー光が2回照射されるため、溝の深さのバラつきが大きくなる。顕微鏡観測では、絶縁性樹脂層の厚さよりも浅い深さの溝しか観測されなかった。しかし、実際の格子パターン内には、絶縁性樹脂層の厚さよりも深い溝が形成された箇所が存在し、このため、絶縁性が低下したと考えられる。
【0117】
また、比較例2及び4では、平坦性の評価結果に加えて、放熱性の評価結果も不良であった(評価結果:E)。この原因は以下のように推測される。まず、1つ目の要因として、メッキ膜の平滑性が低下したことで、メッキ膜と実装部品との間のハンダの膜厚が厚くなったと推測される。また、2つ目の要因として、比較例2及び4は、それぞれ、比較例1及び3と比較して、溝の深さを小さくすることで絶縁性が向上したが、メッキ膜と絶縁性樹脂層との密着性が低下した(評価結果:C)。このため、メッキ膜から絶縁性樹脂層への熱抵抗が増大したと推測される。更に、3つ目の要因として、溝の深さを浅くしたことで、メッキ膜と金属部材との間の絶縁性樹脂層の厚さ(距離C)が厚くなり、金属部材への熱伝達が低下したと推測される。
【0118】
また、非貫通孔11の比率d/Dが0.5未満である比較例6は、密着性及び放熱性の評価結果が不良であった(評価結果:E)。比較例6では、上述した比較例2及び4の放熱性低下の2つ目、及び3つ目の要因と同様に、メッキ膜と絶縁性樹脂層との密着性の低下、メッキ膜と金属部材との間の絶縁性樹脂層の厚さ(距離C)の増加によって、放熱性が低下したと推測される。
【0119】
また、非貫通孔11の比率d/Dが5以上である比較例7は、絶縁性の評価結果が不良であり(評価結果:E)、このため、放熱性試験は行わなかった。この原因は以下のように推測される。比較例7では、非貫通孔11を深くするため、レーザー描画回数を増やした(レーザー描画回数:10回)。断面観察では、非貫通孔11の底と金属部材との間の絶縁性樹脂層の厚さ(距離C)は93μmであったが、レーザー描画回数が多いため、非貫通孔11と金属部材との間の絶縁性樹脂層は脆くなったと推測される。脆くなった絶縁性樹脂層にメッキ液が浸透してメッキ膜が成長し、これにより、回路配線(メッキ膜)と金属部材とが短絡した推測される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の回路部品は、放熱性が高い。このため、本発明の回路部品は、LED等の実装部品を実装した部品に適しており、スマートフォンや自動車の部品に応用可能である。
【符号の説明】
【0121】
10 絶縁性樹脂層
11 非貫通孔(凹部)
20 回路配線
30 実装部品(LED)
50 金属部材
70 基材
100 回路部品