(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】コンクリート製造用複合繊維材料、その製造方法および超高強度コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 16/06 20060101AFI20240911BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240911BHJP
C04B 14/48 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C04B16/06 G
C04B28/02
C04B14/48 Z
(21)【出願番号】P 2020116083
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博幸
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024691(JP,A)
【文献】特表2016-534247(JP,A)
【文献】特開平10-245259(JP,A)
【文献】特開2002-069785(JP,A)
【文献】特開昭58-088160(JP,A)
【文献】特開平04-216749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
D01F 8/00- 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料であって、
前記超高強度コンクリートに構造性能を付与するための無機繊維と耐火性能を付与するための合成繊維とが一体化されかつ前記無機繊維の少なくとも一部が前記超高強度コンクリートとの付着用に
前記合成繊維から露出しているコンクリート製造用複合繊維材料。
【請求項2】
超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料であって、
無機繊維の内部空洞内に合成繊維が存在することで前記無機繊維と前記合成繊維とが一体化されたコンクリート製造用複合繊維材料。
【請求項3】
超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料を製造する方法であって、
合成繊維から構成された合成繊維シートを無機繊維の一部に巻き付けることで前記無機繊維と前記合成繊維とを一体化させるコンクリート製造用複合繊維材料の製造方法(但し、無機繊維をポリマーコーティングに含浸させて製造する方法を除く。)。
【請求項4】
超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料を製造する方法であって、
合成繊維を無機繊維の一部に溶着することで前記無機繊維と前記合成繊維とを一体化させるコンクリート製造用複合繊維材料の製造方法(但し、無機繊維をポリマーコーティングに含浸させて製造する方法を除く。)。
【請求項5】
請求項1または2に記載のコンクリート製造用複合繊維材料、または、請求項3または4に記載の製造方法により製造されたコンクリート製造用複合繊維材料を混合
する超高強度コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高強度コンクリートの製造の際に用いられる複合繊維材料、その複合繊維材料の製造方法およびその複合繊維材料を用いる超高強度コンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
70N/mm2を超える高強度コンクリートは、加熱を受けると部材のかぶり部分がはじけるように剥落する爆裂現象を発生し、火災時に所要の避難時間を確保できない状態になるおそれがある。さらに150N/mm2を超える超強度領域のコンクリートになると、柱部材が強い地震力を受けた場合、柱脚部が圧壊し、かぶり部分が剥落する現象が発生するおそれがある。
【0003】
かかる火災時の爆裂現象に対する耐火性能および地震時の圧壊現象に対する構造性能について従来の対策として次の方法がある。
(1)耐火仕上げ材被覆
避難時間に関わる耐火手法として、最も一般的な方法は、珪カル板などの耐火性能を有する仕上げ材で被覆する方法がある。珪カル板は、厚さ25mmであれば、十分な耐火性能が得られ、仕上げ厚さも接着剤貼付のため、耐火板の厚みのみとなり、有効室面積に及ぼす影響も少ない。
【0004】
(2)鋼繊維と合成繊維の併用
構造性能と耐火性能を複合的に付与する手法としては、最も一般的な方法である。地震時の圧壊現象を回避するには、鋼繊維など剛性の高い補強因子を混合し、均一に練り上げた超高強度コンクリートを製造し、柱部材に適用する必要があるが、加えて所要の耐火性能も付与しなければならないため、耐火性能を増進する因子をさらに混入する必要がある。このような超高強度領域のコンクリ―トの場合、所要の構造性能確保のためには、鋼繊維を所要量混入し、所要の耐火性能確保のためには、ポリプロピレン(PP)繊維を混入するという組合せが多い。
【0005】
特許文献1は、水結合材比が著しく低いコンクリートでも流動性を低下させることなく、効果的に火災時の爆裂を抑制することができる高強度の耐爆裂性コンクリートの提供のために、セメント、水、微粉末混和材料、骨材及び化学混和剤を含有し、さらに所要の有機繊維と、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維とを所定の含有比率で含有する高強度の耐爆裂性コンクリートを開示する。
【0006】
特許文献2は、圧縮強度が150N/mm2以上で爆裂防止可能な超高強度プレキャストコンクリートの提供のために、合成樹脂繊維が混入されたフレッシュコンクリートを打設・脱型し高温履歴養生した後、乾燥炉内で合成樹脂繊維が溶融する温度以上で養生し、溶融した合成樹脂を養生中のコンクリートの微小空隙に吸収させ、合成樹脂の占有空間の一部をセメント硬化体の空洞に変化させて爆裂を抑制することを開示する。
【0007】
特許文献3は、圧縮強度・曲げ強度・耐爆裂性に優れるコンクリート硬化体の提供のために、水と、セメントと、細骨材と、所定容積の粗骨材と、を含有し、さらに変形部がある変形型鋼繊維と、変形部がない直線型鋼繊維と、を所定の含有量比で含有するコンクリート組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-306366号公報
【文献】特開2012-153539号公報
【文献】特開2019-38721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
耐火仕上げ材被覆により耐火性能を得る手法は、もっとも経済的であり、構造性能については鋼繊維を使用する選択肢のみとなるが、意匠上の問題が残る。
【0010】
鋼繊維と合成樹脂繊維との併用は、練り混ぜにくい順に鋼繊維の混入量の50%を投入し一定時間攪拌混合し、残り50%を投入し一定時間攪拌混合し、次に合成樹脂繊維の混入量の50%を投入し一定時間攪拌混合し、残り50%を投入し一定時間攪拌混合する、というように両繊維をコンクリートに混合させるまでに非常に手間と時間を要する。両繊維を所要量順次混入すると流動性やフレッシュ性状の経時保持に難があり、フレッシュ性状を優先させると、構造性能と耐火性能が所要レベルに及ばなくなる。逆に、所要の構造性能と耐火性能を優先させると所要のフレッシュ性状が得られず、実施工には遠く及ばなくなる。すなわち、種類、銘柄にもよるが、鋼繊維はコンクリート容積の1.0%程度、合成樹脂繊維はコンクリート容積の0.25~0.30%程度、それぞれ混入する必要があるが、いずれも単独で混入させた場合の上限に近く、これらを併せて練り混ぜるのは非常に負荷が大きく、当該コンクリートのフレッシュ性状も所要領域には遠く及ばない場合が多く、実施工には遠く及ばない状態であるため、何らかの処置が必要である。
【0011】
また、耐火性能が期待されるPP繊維(ポリプロピレン繊維)などは構造性能にも幾分か寄与していることが、既往の実験結果からも読み取れ、合成樹脂繊維単体により両性能を達成可能の期待もある。しかしながら、鋼繊維を上回る構造性能を発揮する合成樹脂繊維は現時点では報告されていない。
【0012】
特許文献1は、有機繊維および金属繊維、炭素繊維などの無機繊維と、を所定量で個別に混合するものである。特許文献2は、脱型後の高温履歴養生および乾燥炉内でコンクリート内に混入された合成樹脂繊維が溶融する温度以上での養生が必要である。特許文献3は、変形部がある変形型鋼繊維と変形部がない直線型鋼繊維とをPP繊維等の有機繊維と個別に混合するものである。
【0013】
なお、高強度コンクリートが加熱を受けた場合の爆裂現象の発生メカニズムには二説ないしそれらの複合説が唱えられている。一説は、熱応力説で、加熱を受けた場合、部材内部方向へ温度差が発生し、それらにより各位置での応力差により破壊に到ることが要因とされる。もう一説は水蒸気圧説で、加熱を受けた場合、コンクリート内部に包含される水分が蒸発することにより、内部圧が発生し、破壊に到るというものである。PP繊維は、後者の水蒸気圧説に起因する材料であり、低融点(約170℃)のため、加熱初期に溶融し、その空隙が、コンクリート内部で発生した水蒸気圧を緩和すると推察される。
【0014】
上述のように、150N/mm2以上の超高強度コンクリートの場合、所要の構造性能と耐火性能を付与させるには、鋼繊維とPP繊維などの合成繊維とをそれぞれ上限近い混入量まで投入する必要がある。しかしながら、その領域まで繊維を混入すると、実際の製造および施工に耐え得るフレッシュ性状に遠く及ばないコンクリートとなる。
【0015】
本発明は、150N/mm2以上の超高強度領域のコンクリートの製造の際に実施工に耐えるフレッシュ性状および硬化後に所要の構造性能と耐火性能を付与可能なコンクリート製造用複合繊維材料、その製造方法および超高強度コンクリートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するためのコンクリート製造用複合繊維材料は、超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料であって、 前記超高強度コンクリートに構造性能を付与するための無機繊維と耐火性能を付与するための合成繊維とが一体化されかつ前記無機繊維の少なくとも一部が前記超高強度コンクリートとの付着用に前記合成繊維から露出している。
【0017】
このコンクリート製造用複合繊維材料によれば、無機繊維と合成繊維とが一体化されることで、繊維の総数が大幅に低下し、超高強度コンクリートの製造の際に両繊維を順番に攪拌し混合する場合よりも練混ぜが容易になり、所要のフレッシュ性状を確保することができるとともに、超高強度コンクリートに所要の構造性能と耐火性能とを付与することができる。なお、この場合の超高強度コンクリートとは圧縮強度が150N/mm2以上のコンクリートをいう。また、無機繊維としては、鋼繊維やステンレス鋼繊維等の金属繊維、または、ガラス繊維や炭素繊維等のセラミック繊維がある。合成繊維としては、PP繊維やポリビニルアルコール繊維やビニリデン繊維やポリ乳酸繊維等がある。
【0018】
上記目的を達成するためのコンクリート製造用複合繊維材料の製造方法は、超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料を製造する方法であって、合成繊維から構成された合成繊維シートを無機繊維の一部に巻き付けることで前記無機繊維と前記合成繊維とを一体化させるものである(但し、無機繊維をポリマーコーティングに含浸させて製造する方法を除く。)。たとえば、無機繊維の延びる方向の中央部分または両端部分に合成繊維シートを巻き付けるようにできる。また、巻き付けられた合成繊維シートを接着剤により接着するようにしてもよい。
【0019】
上記目的を達成するためのもう1つのコンクリート製造用複合繊維材料の製造方法は、超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料を製造する方法であって、合成繊維を無機繊維の一部に溶着することで前記無機繊維と前記合成繊維とを一体化させるものである(但し、無機繊維をポリマーコーティングに含浸させて製造する方法を除く。)。たとえば、無機繊維の延びる方向の中央部分または両端部分に合成繊維を溶着する。
【0020】
上記目的を達成するためのもう1つのコンクリート製造用複合繊維材料は、超高強度コンクリートの製造の際に他の材料とともに混合される複合繊維材料であって、無機繊維の内部空洞内に合成繊維が存在することで前記無機繊維と前記合成繊維とが一体化されたものである。たとえば、前記無機繊維の内部空洞内に前記合成繊維が詰められた構成にできる。
【0021】
上記目的を達成するための超高強度コンクリートの製造方法は、上述のコンクリート製造用複合繊維材料、または、上述の製造方法により製造されたコンクリート製造用複合繊維材料を混合し超高強度コンクリートを製造するものである。
【0022】
この超高強度コンクリートの製造方法によれば、無機繊維と合成繊維とが一体化されたコンクリート製造用複合繊維材料を用いることで、繊維の総数が大幅に低下し、超高強度コンクリートの製造の際に両繊維を別々に混合する場合よりも練混ぜが容易になり、所要のフレッシュ性状を確保することができるとともに、超高強度コンクリートに所要の構造性能と耐火性能とを付与することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、150N/mm2以上の超高強度コンクリートの製造の際に実施工に耐えるフレッシュ性状および硬化後に所要の構造性能と耐火性能を付与可能なコンクリート製造用複合繊維材料、その製造方法および超高強度コンクリートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態による鋼繊維の中央部分にPP繊維を巻き付けたコンクリート製造用複合繊維材料を示す正面図(a)および側面図(b)である。
【
図2】本実施形態による鋼繊維の両端部分にPP繊維を巻き付けたコンクリート製造用複合繊維材料を示す正面図(a)および側面図(b)である。
【
図3】本実施形態による鋼繊維の空洞内部にPP繊維が詰められたコンクリート製造用複合繊維材料を示す正面図(a)および側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による鋼繊維の中央部分にPP繊維を巻き付けたコンクリート製造用複合繊維材料を示す正面図(a)および側面図(b)である。
図2は本実施形態による鋼繊維の両端部分にPP繊維を巻き付けたコンクリート製造用複合繊維材料を示す正面図(a)および側面図(b)である。
図3は本実施形態による鋼繊維の空洞内部にPP繊維が詰められたコンクリート製造用複合繊維材料を示す正面図(a)および側面図(b)である。
【0026】
図1(a)(b)のコンクリート製造用複合繊維材料は、鋼繊維11の延びる方向の中央部11a
にPP繊維シート12を巻き付け接着剤により貼り付けることで、鋼繊維11とPP繊維
シート12とが一体化されている。PP繊維
シート12は、PP繊維から1枚のシート状に構成されている。たとえば、41μm(0.041mm)のPP繊維をシート状にしたものを使用できる。
【0027】
図2(a)(b)のコンクリート製造用複合繊維材料は、鋼繊維11の延びる方向の両端部11b
にPP繊維シート12を巻き付け接着剤により貼り付けることで、鋼繊維11とPP繊維
シート12とが一体化されている。
【0028】
なお、
図1,
図2において、鋼繊維11は、たとえば、長さが5~40mm程度、直径が0.05~2mm程度であってよいが、これらに限定されず、適宜変更可能であり、長さ形状としてはストレート型や波型やフック型であってよく、また、防錆のために亜鉛メッキを施したものが好ましい。鋼繊維の断面形状は、円形以外でもよく、長円状、四角形、五角形、六角形、八角形等であってもよい。
【0029】
図1,
図2のコンクリート製造用複合繊維材料は鋼繊維11とPP繊維
シート12とが一体化されているので、繊維の総数が大幅に低下し、かかるコンクリート製造用複合繊維材料を150N/mm
2以上の超高強度コンクリートの製造の際にセメント・水・骨材・混和材等とともに混合することで、両繊維を順番に攪拌し混合する場合よりも攪拌混合時間が削減されかつ練混ぜが容易になり、所要のフレッシュ性状を確保することができる。鋼繊維およびPP繊維はともに、それぞれの練混ぜ性状が各繊維量に大きく依存しており、練混ぜにおける繊維量とは、容積でも容量でもなく、繊維数であり、繊維の総表面積が練混ぜの難易度と相関関係にあることから、両繊維の一体化により繊維数(繊維の総表面積)が大幅に低下する結果、練混ぜが容易になる。
【0030】
また、鋼繊維11は、両端部11bまたは中央部11aにおいてコンクリートとの付着力により一体性を発現し強度が向上し、地震時の柱脚部の圧壊現象や被り部の剥落現象の発生を防止できる。また、鋼繊維11の中央部11aまたは両端部11bのPP繊維シート12は、コンクリートとの付着力には寄与しないが、加熱時に溶融して空隙を形成し、コンクリート内部に発生した蒸気圧を空隙に誘導し緩和し、火災時の爆裂現象の発生を防止できる。このようにして、超高強度コンクリートに所要の構造性能と耐火性能とを付与することができる。
【0031】
図3(a)(b)のコンクリート製造用複合繊維材料は、多数本の鋼繊維から円筒状に構成された鋼繊維13の内部空洞にPP繊維14が詰められた状態とされることで、鋼繊維13とPP繊維14とが一体化されている。
【0032】
図3(a)(b)のコンクリート製造用複合繊維材料は、板状の鋼繊維をその中央部分にPP繊維14を置いてから丸めて円筒状とし、所定の長さに切断することで、製造できる。または、円筒状の鋼繊維13の内部空洞にPP繊維14を挿入してから、所定の長さに切断するようにしてもよい。
【0033】
図3(a)(b)のコンクリート製造用複合繊維材料は、鋼繊維13とPP繊維14とが一体化されているので、繊維の総数が大幅に低下し、かかるコンクリート製造用複合繊維材料を150N/mm
2以上の超高強度コンクリートの製造の際にセメント・水・骨材・混和材等とともに混合することで、両繊維を順番に攪拌し混合する場合よりも攪拌混合時間が削減されかつ練混ぜが容易になり、所要のフレッシュ性状を確保することができる。また、円筒状の鋼繊維13は、通常の鋼繊維と同様にコンクリートとの付着力により一体性を発現し強度を向上でき、地震時の圧壊現象の発生を防止できる。また、鋼繊維13の内部空洞内のPP繊維14は、火災等による加熱時に溶融して鋼繊維13の内部が空隙となり、コンクリート内部に発生した蒸気圧を空隙に誘導し緩和し、火災時の爆裂現象の発生を防止できる。このようにして、超高強度コンクリートに所要の構造性能と耐火性能とを付与することができる。
【0034】
なお、
図1~
図3のコンクリート製造用複合繊維材料では、鋼繊維とPP繊維との割合は、体積比で、たとえば、鋼繊維:PP繊維=1:0.3程度とすることが好ましいが、これに限定されるものではなく、必要に応じて変更可能である。
【0035】
また、
図1~
図3のコンクリート製造用複合繊維材料は、ナノテクノロジーによってより微小な複合材料の製造が可能であり、類似の技術によって製造が可能である。
【0036】
また、各繊維の寸法、形状、容積などは、両繊維を別々に混入した調合による練混ぜ試験の結果により適宜決定することが好ましい。また、構造性能については、曲げ、曲げタフネス、曲げ靭性の各試験、および、耐火性能については、最終的には実大規模の柱試験体による載荷耐火試験を実施し、それら各試験結果に基づき数値化することが好ましい。
【0037】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態によるコンクリート製造用複合繊維材料において、鋼繊維はスレンレス鋼繊維や炭素繊維やガラス繊維等に代えてもよく、また、PP繊維はポリビニルアルコール繊維やビニリデン繊維やポリ乳酸繊維等に代えてもよい。
【0038】
また、
図2(a)のPP繊維
シート12を巻き付けた両端部11bの各長さ若しくは鋼繊維に対する各容積量は、コンクリートとの付着用に鋼繊維11の露出した長さが確保されれば、均等でなくてもよく、長短・大小があってもよい。また、
図2(a)において鋼繊維11の露出した長さを確保した上で鋼繊維11の両端部にではなく一端部にだけPP繊維
シート12を巻き付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、150N/mm2以上の超高強度コンクリートの製造の際に本発明のコンクリート製造用複合繊維材料をセメント・水・骨材・混和材等とともに混合することで、無機繊維と合成繊維とを別々に混合する場合よりも練混ぜが容易になり、所要のフレッシュ性状を確保できるので、超高強度コンクリートの生産性が向上するとともに、硬化後の超高強度コンクリートに所要の構造性能と耐火性能を付与することができる。
【符号の説明】
【0040】
11 鋼繊維(無機繊維)
11a 中央部
11b 両端部
12 PP繊維シート(合成繊維)
13 円筒状の鋼繊維(無機繊維)
14 PP繊維(合成繊維)