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特許7554069加工ツールの異常検知装置および切削加工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】加工ツールの異常検知装置および切削加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20240911BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20240911BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20240911BHJP
   A61C 5/77 20170101ALI20240911BHJP
【FI】
B23Q17/09 F
B23Q17/09 G
B23Q17/09 D
G05B19/18 X
G05B19/4155 V
A61C5/77
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020128243
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2021175589
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2020076783
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】速水 悟
(72)【発明者】
【氏名】元水 健人
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 和也
(72)【発明者】
【氏名】小山 司
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-137102(JP,A)
【文献】特開2006-300896(JP,A)
【文献】特開2018-018313(JP,A)
【文献】特開2019-049904(JP,A)
【文献】特開2018-030192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416,19/42-19/46;
B23Q 15/00,17/09;
A61C 5/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工装置で被加工物を切削加工する際に使用される加工ツールの異常を検知する異常検知装置であって、
前記切削加工装置で使用される前記加工ツールの振動情報、前記切削加工装置における切削加工中の音情報、および、前記切削加工装置において前記加工ツールを回転させるスピンドルに供給される電流値に関する情報である電流値情報のうちの少なくとも1つを含む切削加工情報を入力することで、自己符号化器に対して深層学習によるモデル化を行う学習フェーズ処理部と、
前記学習フェーズ処理部において学習された学習済みの自己符号化器に前記切削加工情報を入力し、前記学習済みの自己符号化器から前記加工ツールの異常度を出力し、前記異常度が所定の閾値より大きいとき、前記加工ツールに異常が発生したことを検知する推論フェーズ処理部と、
を備え、
前記学習フェーズ処理部は、
前記切削加工情報を取得する第1取得処理部と、
前記第1取得処理部によって取得された前記切削加工情報を、所定のフレームシフトの間隔で第1フレーム化処理を行い複数のフレームを作成する第1フレーム化処理部と、
前記第1フレーム化処理によって作成された複数の前記フレームに対してそれぞれ周波数分析を行い、スペクトル情報に変換する第1スペクトル変換部と、
前記第1スペクトル変換部によって変換された前記スペクトル情報をまとめて入力することで、畳み込み自己符号化器に対して深層学習によるモデル化を行う学習処理部と、
を備え
前記推論フェーズ処理部は、
前記第1取得処理部と同じ種類の前記切削加工情報を取得する第2取得処理部と、
前記第2取得処理部によって取得された前記切削加工情報を、所定のフレームシフトの間隔で第2フレーム化処理を行い複数のフレームを作成する第2フレーム化処理部と、
前記第2フレーム化処理によって作成された複数の前記フレームに対してそれぞれ周波数分析を行い、スペクトル情報に変換する第2スペクトル変換部と、
前記第2スペクトル変換部によって変換された前記スペクトル情報を、前記学習フェーズ処理部において学習された学習済みの前記畳み込み自己符号化器に入力し、前記第2フレーム化処理によって作成された複数の前記フレームのそれぞれにおける前記異常度を出力する異常判定処理部と、
を備えた、加工ツールの異常検知装置。
【請求項2】
前記第1フレーム化処理部によって実行される前記第1フレーム化処理の前記フレームシフトと、前記第2フレーム化処理部によって実行される前記第2フレーム化処理の前記フレームシフトは、前記切削加工装置による切削加工中における前記加工ツールの時間当たりの回転量に基づいてそれぞれ決定される、請求項1に記載された加工ツールの異常検知装置。
【請求項3】
前記加工ツールを回転させて被加工物を切削加工する切削加工装置と、
請求項1または2に記載された加工ツールの異常検知装置と、
を備えた、切削加工システム。
【請求項4】
前記切削加工装置は、デンタル分野で使用される歯科材料で形成された被加工物を切削加工する、請求項に記載された切削加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ツールの異常検知装置および切削加工システムに関する。詳しくは、本発明は、切削加工装置で使用される加工ツールの異常を検知する加工ツールの異常検知装置、および、加工ツールの異常検知装置と切削加工装置とを備えた切削加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、刃物部を有する棒状の加工ツールを使用して被加工物を切削加工することで所望の対象物を作製する切削加工装置が知られている。この種の切削加工装置は、例えば加工ツールを把持する把持部と、加工ツールが中心軸周りに回転するように把持部を回転させるスピンドルとを備えている。切削加工装置では、加工ツールを回転させながら、加工ツールと被加工物との相対的な位置を変更することで、被加工物を切削加工する。
【0003】
ところで、切削加工装置において、加工ツールを使用して切削加工しているとき、加工ツールが折れるなどの異常が発生することがあり得る。加工ツールに異常が発生したときであって、例えばスピンドルへの負荷が大きい場合には、スピンドルへの電流負荷エラーが発生することで停止する。加工ツールに異常が発生したときであって、例えばスピンドルへの負荷が小さい場合には、切削加工が継続される。そして、切削加工終了時に、把持部に把持された加工ツールを所定の検出センサに接触させて加工ツールの軸方向の長さを推定することで、加工ツールの折れなどの異常を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-135511号公報
【文献】特開2018-94686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の切削加工装置では、加工ツールの異常が発生したことは、スピンドルへの電流負荷エラーが発生したとき、または、加工ツールの軸方向の長さを推定することで検知されていた。本願発明者は、加工ツールの異常の発生を更に高精度で検知することを望んでいる。
【0006】
ところで、棒状の加工ツール以外の切削工具の異常を検出する方法として、例えば特許文献1には、切削工具の一例であるディスカッターの異常を検出する加工異常検出方法が開示されている。特許文献1に開示された加工異常検出方法では、加速度センサによって得られたデータを周波数分析したスペクトルの情報を利用している。当該加工異常検出方法では、2つの加速度センサから得られたデータを周波数解析した複数のスペクトルの平均値を算出して切削工具の異常を検出する。特許文献1に開示された加工異常検出方法では、特徴とする周波数の設定を人為的に設定する必要があるため、高い精度が得られないことがあった。
【0007】
例えば特許文献2には、工作機械における工具のビビり発生の予兆を検知する機械学習方法が開示されている。特許文献2に開示された方法では、工具の振動に加えて、工作機械本体や建屋の振動、可聴音、アコースティックエミッション、モータ制御電流を用いて、機械学習によって加工プログラムや工具の状況に応じたビビり発生の予兆の検出を行う。ここで使用される機械学習の手法としては、全結合ニューラルネットワーク(FCNN:Full Connection Neural Network)などが例示されている。工具の振動に関する特徴量としては、第1振動および第2振動のパワースペクトルの増加度合いや全周波数帯の増加度などが開示されている。特許文献2に開示の機械学習方法では、ビビり発生の予兆を対象としているが、加工ツールの折れについては対象としていない。
【0008】
このように、従来では、加工ツールを使用して被加工物を切削加工する切削加工装置の分野において、加工ツールの折れなどの異常の発生を高精度で検知することができなかった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削加工装置における加工ツールの折れなどの異常を高精度で検知することが可能な加工ツールの異常検知装置および切削加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る加工ツールの異常検知装置は、切削加工装置で被加工物を切削加工する際に使用される加工ツールの異常を検知する異常検知装置である。前記異常検知装置は、前記切削加工装置で使用される前記加工ツールの振動情報、前記切削加工装置における切削加工中の音情報、および、前記切削加工装置において前記加工ツールを回転させるスピンドルに供給される電流値に関する情報である電流値情報のうちの少なくとも1つを含む切削加工情報を入力することで、自己符号化器に対して深層学習によるモデル化を行う学習フェーズ処理部と、前記学習フェーズ処理部において学習された学習済みの自己符号化器に前記切削加工情報を入力し、前記学習済みの自己符号化器から前記加工ツールの異常度を出力し、前記異常度が所定の閾値より大きいとき、前記加工ツールに異常が発生したことを検知する推論フェーズ処理部と、を備えている。
【0011】
前記加工ツールの異常検知装置によれば、切削加工中に加工ツールの折れなどの異常が発生するときには、振動情報、音情報および電流値情報に変化が見受けられる。よって、振動情報、音情報および電流情報のうちの少なくとも1つを含む切削加工情報に基づいて深層学習によるモデル化を行うことにより、加工ツールの折れなどの異常の検知に有効な特徴表現を、多数の切削加工情報からの学習によって獲得することができる。したがって、特許文献1の開示のように、様々な条件での加工に有効な特徴を人為的に与える必要がないため、加工ツールの異常を高精度で検知することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切削加工装置における加工ツールの折れなどの異常を高精度で検知することが可能な加工ツールの異常検知装置および切削加工システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る切削加工システムの概念図である。
図2】切削加工装置の加工機構を示す正面図である。
図3】切削加工装置のクランプおよびツールマガジンを示す斜視図である。
図4】切削加工システムのブロック図である。
図5】切削加工装置から得られた切削加工情報のスペクトログラムの一例を示す図である。
図6】畳み込み自己符号化器の構成を示す概念図である。
図7】加工ツールの折れの検知の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る加工ツールの異常検知装置と、切削加工装置とを備えた切削加工システムについて説明する。なお、ここで説明される実施の形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る切削加工システム1の概念図である。図1に示すように、切削加工システム1は、切削加工装置10と、加工ツール8の異常検知装置(以下、異常検知装置という。)30と、を備えている。切削加工システム1では、切削加工装置10で使用される加工ツール8(図2参照)の折れなどの異常を異常検知装置30が検知する。以下、切削加工装置10、異常検知装置30の順で説明する。
【0016】
図2は、切削加工装置10の加工機構13を示す正面図である。図3は、切削加工装置10のクランプ19およびツールマガジン18を示す斜視図である。切削加工装置10は、図2に示す加工ツール8を使用して、図3に示す被加工物5を切削加工する装置である。切削加工装置10が使用される分野は特に限定されないが、切削加工装置10は、例えばデンタル分野で使用される。切削加工装置10が被加工物5を切削加工することで作製される対象物は、例えば歯冠補綴物である。歯冠補綴物として、例えばインレー、クラウン、ブリッジなどが挙げられる。
【0017】
図1に示すように、切削加工装置10は、内部に空間を有し、前方に開口した筐体11と、筐体11の開口を開閉可能に筐体11に設けられた扉12とを備えている。
【0018】
筐体11の内部の空間は、被加工物5が切削加工される空間である。当該空間には、例えば図2に示す加工機構13、図3に示すツールマガジン18およびクランプ19などが配置されている。
【0019】
図2に示すように、加工機構13は、加工ツール8を回転させながら被加工物5に接触させることで、被加工物5を切削加工する。加工機構13は、ツール把持部15と、スピンドル16とを有している。ツール把持部15は、加工ツール8を把持するものである。ツール把持部15は、いわゆるチャックである。加工ツール8はツール把持部15に固定される。
【0020】
本実施形態では、加工ツール8は、棒状であり、下部に刃物部8aを有している。刃物部8aが被加工物5に当接することで、被加工物5が切削加工される。ツール把持部15は、加工ツール8の上端部を把持する。ツール把持部15が加工ツール8を把持したとき、加工ツール8の刃物部8aは、ツール把持部15から下方に突出した状態となる。なお、デンタル分野で使用される加工ツール8、言い換えると、歯冠補綴物を作製する際に使用される加工ツール8は、比較的に径が小さいものである。デンタル分野で使用される加工ツール8の径は、数mm以下である。
【0021】
スピンドル16は、ツール把持部15、および、ツール把持部15に把持された加工ツール8を、長手方向(例えば上下方向)を軸にして、例えば矢印R1の向きに回転させるものである。スピンドル16は、上下方向に延びており、ツール把持部15の上部に設けられている。スピンドル16は、例えば図示しないモータを有しており、モータが駆動することで回転する。ここでは、スピンドル16(詳しくは上記モータ)に対して所定の電流値が供給されると、スピンドル16は、供給された電流値に応じて所定の時間当たりの回転数で回転する。スピンドル16が長手方向の軸を中心に回転することで、ツール把持部15、および、ツール把持部15に把持された加工ツール8は、加工ツール8の中心軸周りに回転する。
【0022】
本実施形態では、上述のように、図1に示す筐体11の内部の空間には、図3に示すように、複数の加工ツール8が収容されるツールマガジン18と、被加工物5を支持するクランプ19が設けられている。ツールマガジン18は、箱状に形成されており、上面には、加工ツール8を収容する複数の収容孔18aが形成されている。加工ツール8は、その上部が露出された状態で収容孔18aに挿通されている。
【0023】
クランプ19は、被加工物5を切削加工する際に被加工物5を支持する部材である。クランプ19は、被加工物5の形状の一部に対応した形状を有している。本実施形態では、被加工物5は円盤状であり、クランプ19は略C字状である。詳しい図示は省略するが、クランプ19は、前後方向に延びた軸周り、および、左右方向に延びた軸周りに回転可能に構成されている。
【0024】
被加工物5は、歯科材料で形成されており、例えば歯冠補綴物で用いられる材料で形成されている。被加工物5は、比較的に柔らかい歯科材料によって形成されている。歯科材料は、例えばジルコニア、ワックス、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ハイブリッドレジン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、石膏などである。歯科材料としてジルコニアを用いるときには、例えば半焼結したジルコニアが用いられるとよい。
【0025】
本実施形態では、加工機構13、言い換えるとツール把持部15に把持された加工ツール8は、被加工物5を支持するクランプ19に対して相対的に3次元方向に移動可能に構成されている。ここでは、図2に示すように、加工機構13には、移動機構20が接続されている。移動機構20は、クランプ19に対して加工機構13を3次元方向に移動させる機構である。移動機構20は、例えば加工機構13、言い換えるとツール把持部15に把持された加工ツール8を左右方向および上下方向に移動させるように構成されている。ただし、移動機構20は、加工機構13を前後方向に移動させるように構成されてもよい。なお、本実施形態では、移動機構20には、加工機構13を回転させる回転機構も含まれ得る。当該回転機構は、例えば予め定められた2つの軸(例えば前後に延びた軸と、左右に延びた軸)を中心に加工機構13を回転させる。ただし、加工機構13を回転させる回転機構は、省略することも可能である。
【0026】
図4は、切削加工システム1のブロック図である。切削加工装置10は、図4に示すように、振動センサ25と、マイクロフォン26とを備えている。振動センサ25は、加工機構13のツール把持部15に把持された加工ツール8の振動(以下、単に加工ツール8の振動ともいう。)を検知するものである。本実施形態では、振動センサ25によって検知された加工ツール8の振動情報D11(図4参照)に基づいて、加工ツール8の折れなどの異常を検知することができる。振動センサ25は、例えば筐体11の内部の空間に設けられているが、振動センサ25の配置位置は特に限定されない。また、振動センサ25は、切削加工装置10に必ずしも設けられる必要はなく、設けられなくてもよい。振動センサ25の種類も特に限定されず、例えば加速度センサである。
【0027】
マイクロフォン26は、筐体11内の切削加工中の音を検知するものである。ここでは、マイクロフォン26は、切削加工中の加工ツール8と被加工物5とが接触したときに発生する音を検知する。本実施形態では、マイクロフォン26によって検知された切削加工中の音情報D12に基づいて加工ツール8の折れなどの異常を検知する。マイクロフォン26は、例えば筐体11の内部の空間に設けられているが、マイクロフォン26の配置位置は特に限定されない。
【0028】
本実施形態では、切削加工装置10は、制御装置27を備えている。制御装置27は、被加工物5の切削加工に関する制御を行う装置である。また、制御装置27は、加工ツール8の折れなどの異常を検知する際に使用される切削加工情報D1を取得し、取得した切削加工情報D1を異常検知装置30に送信する。制御装置27は、マイクロコンピュータからなっており、筐体11に設けられている。制御装置27は、例えば中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。
【0029】
本実施形態では、制御装置27は、加工機構13のスピンドル16、移動機構20、振動センサ25、および、マイクロフォン26と通信可能に接続されており、スピンドル16、移動機構20、振動センサ25、および、マイクロフォン26を制御する。制御装置27は、振動センサ25によって検知された加工ツール8の振動情報D11を取得する。制御装置27は、マイクロフォン26によって検知された切削加工中の音情報D12を取得する。また、制御装置27は、スピンドル16に供給される電流値に関する情報である電流値情報D13を取得する。ここでは、振動情報D11、音情報D12、および、電流値情報D13のことを総称して、切削加工情報D1という。切削加工情報D1は、振動情報D11と、音情報D12と、電流値情報D13のうち少なくとも何れか1つを有している。
【0030】
以上、本実施形態に係る切削加工装置10について説明した。ところで、切削加工装置10において、加工ツール8で被加工物5を切削加工しているときに、加工ツール8の折れなどの異常が発生することがあり得る。そこで、本実施形態に係る異常検知装置30は、切削加工装置10の切削加工中に発生する加工ツール8の折れなどの異常を検知する。
【0031】
次に、異常検知装置30について説明する。本実施形態では、異常検知装置30は、切削加工装置10の制御装置27で取得された切削加工情報D1を用いて、人工知能技術分野の深層学習により加工ツール8の折れなどの異常を検知する。異常検知装置30は、例えばパーソナルコンピュータによって実現されるものである。異常検知装置30は、汎用のコンピュータによって実現されるものであってもよいし、専用のコンピュータによって実現されるものであってもよい。また、異常検知装置30は、切削加工装置10に組み込まれたものであってもよい。
【0032】
異常検知装置30は、例えば中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。図4に示すように、異常検知装置30は、切削加工装置10の制御装置27と通信可能に接続されている。本実施形態では、制御装置27から異常検知装置30に向かって切削加工情報D1が送信される。
【0033】
本実施形態では、異常検知装置30は、記憶部31と、学習フェーズ処理部33と、推論フェーズ処理部35とを備えている。学習フェーズ処理部33は、取得処理部51と、フレーム化処理部52と、スペクトル変換部53と、学習処理部54とを備えている。推論フェーズ処理部35は、取得処理部61と、フレーム化処理部62と、スペクトル変換部63と、異常判定処理部64とを備えている。学習フェーズ処理部33の各部51~54、および、推論フェーズ処理部35の各部61~64は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば学習フェーズ処理部33の各部51~54、および、推論フェーズ処理部35の各部61~64は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、学習フェーズ処理部33の各部51~54、および、推論フェーズ処理部35の各部の処理内容については後述する。
【0034】
図4に示す学習フェーズ処理部33は、深層学習における学習フェーズで行われる処理を行う。学習フェーズ処理部33は、切削加工装置10で切削加工中に使用される加工ツール8の切削加工情報D1を入力することで、自己符号化器に対して深層学習によるモデル化を行う。ここでは、学習フェーズ処理部33は、加工ツール8の折れなどの異常が発生していない正常なときの切削加工情報D1に基づいた深層学習を行い、学習モデルを作成する。以下、学習フェーズについて詳しく説明する。
【0035】
学習フェーズ処理部33の取得処理部51は、まず切削加工装置10の切削加工中の切削加工情報D1をリアルタイムで取得する。ここでは、切削加工装置10の切削加工中、制御装置27は、予め設定された所定の間隔で切削加工情報D1(例えば振動情報D11、音情報D12、電流値情報D13)を取得する。制御装置27は、所定の間隔で切削加工情報D1を異常検知装置30に送信する。取得処理部51は、所定の間隔で切削加工情報D1を受信する。
【0036】
なお、本実施形態では、切削加工情報D1は、振動情報D11と、音情報D12と、電流値情報D13とを有している。ただし、切削加工情報D1には、振動情報D11、音情報D12、および、電流値情報D13のうちの少なくとも1つが含まれているとよい。取得処理部51が取得する切削加工情報D1は、振動情報D11のみであってもよいし、音情報D12のみであってもよいし、電流値情報D13のみであってもよい。また、切削加工情報D1には、振動情報D11および音情報D12が含まれ、電流値情報D13が含まれていなくてもよい。切削加工情報D1には、振動情報D11および電流値情報D13が含まれ、音情報D12が含まれていなくてもよい。切削加工情報D1には、音情報D12および電流値情報D13が含まれ、振動情報D11が含まれていなくてもよい。
【0037】
なお、取得処理部51によって取得された切削加工情報D1は、例えば一時的に記憶部31に記憶されてもよい。図5は、切削加工装置10から得られた切削加工情報D1のスペクトログラムの一例である。図5において、縦軸は周波数を示し、横軸は時間を示す。
【0038】
次に、切削加工情報D1を取得した後、学習フェーズ処理部33のフレーム化処理部52は、切削加工装置10から取得した切削加工情報D1を使用して、切削加工情報D1における時系列信号を所定のフレームシフト(言い換えると所定の時間間隔)で区切って、フレーム化処理を行う。このフレーム化処理によって、切削加工情報D1は、複数のフレームに区切られる。
【0039】
ここで、フレームシフトの具体的な数値は、実験的に決定されるものである。加工ツール8の折れなどの異常を判断するために有効な特徴は、加工ツール8を回転させるスピンドル16の回転速度や加工速度の影響を受ける。例えば特徴的な周波数は、スピンドル16の時間当たりの回転数に依存する。上記加工速度は、移動機構20による加工ツール8の移動速度や加工条件によって影響を受ける。これらの影響を適切に表現できるように、フレームシフトを設定する。また、学習のデータ量はフレームシフトに依存する。すなわち、フレームシフトは、学習フェーズ処理部33によって行われる深層学習で対象となる切削加工情報D1のデータ量に基づいて決定されるものである。例えばフレームシフトを小さくすることで、切削加工情報D1のデータ量を多くすることができる。
【0040】
以上のように、切削加工情報D1を所定のフレームシフトの間隔でフレーム化処理した後、学習フェーズ処理部33のスペクトル変換部53は、フレーム化処理によって作成された各フレームに対して、周波数分析を行い、スペクトル情報に変換する。本実施形態では、スペクトル情報としてパワースペクトル情報を使用する。ただし、スペクトル情報の種類は特に限定されない。スペクトル情報として、例えば振幅スペクトル情報、あるいは対数スペクトル情報を使用してもよい。また、スペクトル情報の周波数軸は、線形で表されるものであってもよいし、対数で表されるものであってもよい。
【0041】
その後、学習フェーズ処理部33の学習処理部54は、フレーム処理化後のフレームに対して周波数分析を行って変換したスペクトル情報を入力として、自己符号化器(Auto Encoder)を用いた深層学習(機械学習)を行い、学習モデルを作成する。本実施形態では、自己符号化器として、畳み込み自己符号化器(Convolutional Auto Encoder)40を用いている。ただし、自己符号化器の種類は、畳み込み自己符号化器に限定されず、例えば変分自己符号化器(Variational Auto Encoder)を用いてもよい。
【0042】
本実施形態では、学習処理部54は、フレーム化処理および周波数分析されたスペクトル情報を入力とした畳み込み自己符号化器40を用いて、切削加工中の切削加工装置10から得られる切削加工情報D1に関する周波数領域と時間領域の特徴表現を学習させる。以上のような処理手順で学習させることで得られた畳み込み自己符号化器40のことを、学習済みの畳み込み自己符号化器40という。学習済みの畳み込み自己符号化器40は、加工ツール8の異常が発生していないときの切削加工情報D1に基づいて深層学習されたものである。
【0043】
なお、畳み込み自己符号化器40に入力されるスペクトル情報に対応したフレームの数は複数である。すなわち、学習処理部54は、複数のフレームに対して変換されたスペクトル情報をまとめて入力することで、深層学習によるモデル化を行う。ここでは、学習処理部54は、連続する複数のフレームを変換したスペクトル情報を入力して、畳み込み自己符号化器40に対して深層学習によるモデル化を行う。ここで、複数のフレームとは、時間的に連続する2つ以上のフレームのことをいう。ただし、畳み込み自己符号化器40に入力されるスペクトル情報に対応したフレームの数は、1つであってもよい。
【0044】
なお、畳み込み自己符号化器40は、例えば図6に示すような構成を有している。図6に示すように、畳み込み自己符号化器40は、所定の入力値41aが入力されるエンコーダ42aと、潜在変数42bと、所定の出力値41bを出力するデコーダ42cとを有する。入力値41aは、例えば上記の切削加工情報D1(例えば振動情報D11、音情報D12、電流値情報D13など)をフレーム化処理した後に周波数分析を行って得られたスペクトル情報である。出力値41bは、例えば後述する異常度である。ここでは、潜在変数42bを用いて、入力値41aを出力値41bに変換する。
【0045】
推論フェーズ処理部35は、深層学習(機械学習)における推論フェーズに関する処理を行う。推論フェーズでは、学習フェーズ処理部33において学習された学習モデルである学習済みの畳み込み自己符号化器40を用いて、加工ツール8の折れを検知する。推論フェーズ処理部35は、学習済みの自己符号化器(ここでは、学習済みの畳み込み自己符号化器40)に切削加工情報D1を入力し、学習済みの自己符号化器から加工ツール8の異常度を出力する。そして、推論フェーズ処理部35は、異常度が後述の所定の閾値Th1より大きいとき、加工ツール8に異常が発生したことを検知する。以下、推論フェーズについて詳しく説明する。
【0046】
本実施形態では、推論フェーズ処理部35の取得処理部61は、まず学習フェーズ処理部33と同様に、切削加工装置10から切削加工情報D1を取得する。なお、学習フェーズ処理部33の取得処理部51で取得した切削加工情報D1が振動情報D11のみの場合、推論フェーズ処理部35の取得処理部61で取得する切削加工情報D1も振動情報D11のみである。すなわち、学習フェーズ処理部33の取得処理部51で取得した切削加工情報D1の情報の種類と、推論フェーズ処理部35の取得処理部61で取得した切削加工情報D1の情報の種類とは同じである。
【0047】
次に、推論フェーズ処理部35のフレーム化処理部62は、切削加工装置10から取得した切削加工情報D1を使用して、切削加工情報D1における時系列信号を所定のフレームシフトで区切って、フレーム化処理を行う。推論フェーズ処理部35におけるフレーム化処理のフレームシフトは、学習フェーズ処理部33のフレーム化処理部52で実行されるフレーム化処理のフレームシフトと同じであり、スピンドル16の時間当たりの回転数に基づいて決定されるものである。この推論フェーズのフレーム化処理によって、学習フェーズと同様に、切削加工情報D1は複数のフレームに区切られる。
【0048】
次に、推論フェーズ処理部35のスペクトル変換部63は、フレーム化処理によって得られた各フレームに対して、周波数分析を行い、スペクトル情報に変換する。推論フェーズにおけるスペクトル情報は、例えばパワースペクトル情報であってもよいし、振幅スペクトル情報であってもよい。
【0049】
その後、推論フェーズ処理部35の異常判定処理部64は、学習フェーズ処理部33の学習処理部54で学習された学習済み畳み込み自己符号化器40を用いて、加工ツール8の折れなどの異常の判定を行う。ここでは、異常判定処理部64は、フレーム化処理されたスペクトル情報を、学習済み畳み込み自己符号化器40に入力し、各時刻(フレーム)における異常度を出力する。ここで、学習済みの畳み込み自己符号化器40に入力されるスペクトル情報に対応したフレームの数は、学習フェーズと同様に、複数である。図7は、加工ツール8の折れの検知の一例を示すグラフである。図7において、縦軸は異常度を示し、横軸は時間を示す。図7において、範囲Aは、図5における範囲Aに対応している。
【0050】
異常判定処理部64は、学習済み畳み込み自己符号化器40から出力された異常度が所定の閾値Th1よりも大きいか否かを判定する。この閾値Th1は、記憶部31に予め記憶部31に記憶されている。異常度の閾値Th1は、実験的に決定された値である。本実施形態では、学習フェーズにおいて、加工ツール8の折れなどの異常が発生していないときの切削加工中の切削加工情報D1に基づいて深層学習によるモデル化を行っている。ここでは、異常度の閾値Th1は、加工ツール8の異常が発生していないときの切削加工情報D1に基づいた深層学習に対する再構成誤差によって決定されている。
【0051】
本実施形態では、異常度が閾値Th1よりも大きいと判定されたとき、異常判定処理部64は、加工ツール8の折れなどの異常が発生したことを検知する。図7の一例では、時間T1のときの異常度B1が閾値Th1よりも大きい。よって、この場合、異常判定処理部64は、時間T1のときに加工ツール8の異常が発生したことを検知する。
【0052】
本実施形態では、切削加工装置10の切削加工中において、推論フェーズ処理部35は、リアルタイムで切削加工情報D1を取得し、加工ツール8の折れの有無を判定する。このことによって、切削加工中において、加工ツール8が折れた場合であっても、加工ツール8が折れた直後(詳しくは、タイムラグなどを考慮して、任意の時間経過後)に、作業者は、加工ツール8の折れなどの異常が発生したことを知ることができる。
【0053】
以上のように、本実施形態では、図1に示すように、切削加工システム1は、加工ツール8(図2参照)を回転させて被加工物5(図3参照)を切削加工する切削加工装置10と、加工ツール8の異常検知装置30と、を備えている。図4に示すように、加工ツール8の異常検知装置30は、学習フェーズ処理部33と、推論フェーズ処理部35とを備えている。学習フェーズ処理部33は、切削加工装置10で使用される加工ツール8の振動情報D11、切削加工装置10における切削加工中の音情報D12、および、切削加工装置10において加工ツール8を回転させるスピンドル16に供給される電流値に関する情報である電流値情報のうちの少なくとも1つを含む切削加工情報D1を入力することで、自己符号化器に対して深層学習によるモデル化を行う。推論フェーズ処理部35は、学習フェーズ処理部33において学習された学習済みの自己符号化器に切削加工情報D1を入力し、学習済みの自己符号化器から加工ツール8の異常度を出力し、異常度が所定の閾値Th1より大きいとき、加工ツール8に異常が発生したことを検知する。
【0054】
例えば切削加工装置10において、切削加工中に加工ツール8の折れなどの異常が発生するときには、振動情報D11、音情報D12および電流値情報D13に変化が見受けられる。よって、振動情報D11、音情報D12および電流値情報D13のうちの少なくとも1つを含む切削加工情報D1に基づいて深層学習によるモデル化を行うことにより、加工ツール8の折れなどの異常の検知に有効な特徴表現を、多数の切削加工情報D1からの学習によって獲得することができる。更に、例えば特許文献2に開示された方法のように、第1振動および第2振動のパワースペクトルといった特定の周波数成分の増加度合いなどを用いるのではなく、加工ツール8の折れの検知に有効な特徴表現を多数の切削加工情報D1からの深層学習によって獲得することができる。したがって、特許文献1の開示のように、様々な条件での加工に有効な特徴を人為的に与える必要がないため、加工ツール8の異常を高精度で検知することができる。
【0055】
本実施形態では、切削加工装置10による切削加工中に、推論フェーズ処理を実行してリアルタイムに加工ツール8の異常度を出力する。そして、当該異常度が所定の閾値Th1より大きいときに加工ツール8の異常を検知することで、比較的に短時間で加工ツール8の異常を検知することができる。
【0056】
本実施形態では、図4に示すように、学習フェーズ処理部33は、取得処理部51と、フレーム化処理部52と、スペクトル変換部53と、学習処理部54とを備えている。取得処理部51は、切削加工情報D1を取得する。フレーム化処理部52は、取得処理部51によって取得された切削加工情報D1を、所定のフレームシフトの間隔でフレーム化処理を行い複数のフレームを作成する。スペクトル変換部53は、フレーム化処理によって作成されたフレームに対して周波数分析を行い、スペクトル情報に変換する。学習処理部54は、スペクトル情報を入力することで、自己符号化器に対して深層学習によるモデル化を行う。このように、切削加工情報D1に対してフレーム化処理を行い、フレーム化処理後の各フレームをスペクトル情報に変換するという手順を行うことで、加工ツール8の折れなどの異常の検知に有効な特徴表現を獲得し易い。
【0057】
本実施形態では、学習処理部54は、畳み込み自己符号化器40に対して深層学習によるモデル化を行う。このことによって、周波数領域だけでなく、時間領域の情報も合わせて用いることができる。そのため、加工ツール8の異常をより高精度で検知することができる。
【0058】
本実施形態では、学習フェーズ処理部33のフレーム化処理部52で実行されるフレーム化処理のフレームシフトは、切削加工装置10による切削加工中における加工ツール8の時間当たりの回転量に基づいて決定される。図5に示すように、例えば範囲Bは、加工ツール8の折れなどの異常が発生していないときの切削加工情報D1のスペクトログラムの一例を示している。図5では、色が薄い部分が、周波数が低いことを示している。範囲Aのように、周波数が低い部分が、所定の時間の間(長時間)、連続することで、加工ツール8の異常が発生していると検知される。範囲Bのように、周波数が低い部分が短時間かつ不連続で表れている場合には、加工ツール8の異常が発生していないと検知される。しかしながら、「周波数が低い部分が短時間かつ不連続で表れている」場合を、加工ツール8の異常が発生していると誤検知することがあり得る。
【0059】
本願発明者は、当該誤検知が発生することを抑制するためには、フレームシフトを調整するという知見を得ている。さらに、本願発明者は、加工条件とデータ量に基づいてフレームシフトを調整することで、当該誤検知が発生することを抑制することができるという知見を得ている。よって、学習フェーズ処理部33のフレーム化処理部52で実行されるフレーム化処理のフレームシフトを、スピンドル16の単位時間当たりの回転量、言い換えると切削加工装置10による切削加工中における加工ツール8の時間当たりの回転量や移動機構20による加工ツール8の移動速度などに基づいて決定することで、加工ツール8の異常をより高精度に検知することができる。
【0060】
本実施形態では、学習フェーズ処理部33の学習処理部54は、複数のフレームに対して変換されたスペクトル情報をまとめて入力することで、深層学習によるモデル化を行う。本願発明者は、複数のフレームに対して変換されたスペクトル情報をまとめて入力して深層学習することで、図5の範囲Bにおける「周波数が低い部分が短時間かつ不連続で表れている」部分を、加工ツール8の異常が発生していると誤検知することを抑制できるという知見を得ている。よって、複数のフレームに対して変換されたスペクトル情報を入力して深層学習することで、加工ツール8の異常をより高精度に検知することができる。
【0061】
本実施形態に係る切削加工装置10は、デンタル分野で使用される歯科材料で形成された被加工物5を切削加工する。デンタル分野で使用される被加工物5は、比較的に柔らかい材料で形成されている。そのため、デンタル分野で使用される加工ツール8は、比較的に径が小さい細いものである。このように径が小さい加工ツール8が折れたときの振動の振幅は、比較的に小さい。そのため、デンタル分野で使用される加工ツール8の折れなどの異常を検知することは、従来では困難であった。しかしながら、本実施形態に係る異常検知装置30のような深層学習を行うことにより、加工ツール8の折れなどの異常の検知に有効な特徴表現を、多数の切削加工情報D1(例えば振動情報D11)からの学習によって獲得することができる。そのため、加工ツール8の振動の振幅の僅かな変化から加工ツール8の異常を検知することができる。よって、デンタル分野で使用されるような径が比較的に小さい径の加工ツール8であっても、加工ツール8の異常を高精度で検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本実施形態では、デンタル分野で用いられる切削加工装置10を対象としているが、他の工作機械への適用も可能である。他の工作機械として、例えばフライス加工、旋盤、ボール盤、研削などが挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
1 切削加工システム
5 被加工物
8 加工ツール
10 切削加工装置
16 スピンドル
25 振動センサ
30 異常検知装置
31 記憶部
33 学習フェーズ処理部
35 推論フェーズ処理部
40 畳み込み自己符号化器(学習済みの畳み込み自己符号化器)
51 取得処理部
52 フレーム化処理部
53 スペクトル変換部
54 学習処理部
D1 切削加工情報
D11 振動情報
D12 音情報
D13 電流値情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7