(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】プリンタシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240911BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240911BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20240911BHJP
【FI】
G06F3/12 331
G06F3/12 353
G06F3/12 371
G06F3/12 304
B41J29/38 202
G16Y20/10
(21)【出願番号】P 2020141588
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 倫靖
(72)【発明者】
【氏名】原 翔吾
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-049481(JP,A)
【文献】特開2017-011660(JP,A)
【文献】特開2018-063513(JP,A)
【文献】特開2008-305345(JP,A)
【文献】特開2005-033676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/00-29/70
G16Y20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタの位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定するサーバと、
前記サーバが特定したプリンタの役割に応じた情報を取得し、取得した情報に基づいて動作するプリンタと、を備え
、
前記サーバは、前記プリンタが位置するエリアに対応するプリンタの役割と、前記プリンタが位置するエリアの周囲の別のエリアに対応するプリンタの役割とを含む複数のプリンタの役割に応じた複数の情報を前記プリンタに送信するプリンタシステム。
【請求項2】
プリンタの位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定するサーバと、
前記サーバが特定したプリンタの役割に応じた情報を取得し、取得した情報に基づいて動作するプリンタと、を備え、
前記サーバは、前記プリンタが位置するエリアに複数のプリンタの役割が定められる場合、前記プリンタが位置するエリアに対応する複数のプリンタの役割に応じた複数の情報を前記プリンタに送信するプリンタシステム。
【請求項3】
前記プリンタは、前記サーバから複数のプリンタの役割に応じた複数の情報を取得した場合、前記複数のプリンタの役割のいずれかをユーザが選択するための操作画面を表示する請求項
1または
2に記載のプリンタシステム。
【請求項4】
前記サーバは、前記特定したプリンタの役割に応じた印刷データの格納場所を特定し、
前記プリンタは、前記特定された格納場所に格納される印刷データを取得し、取得した印刷データに基づいて印刷する請求項1
から3のいずれか一項に記載のプリンタシステム。
【請求項5】
プリンタの位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定するサーバと、
前記サーバが特定したプリンタの役割に応じた情報を取得し、取得した情報に基づいて動作するプリンタと、を備え、
前記プリンタは、前記プリンタを操作するユーザを識別するためのユーザ情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記プリンタの位置情報および前記プリンタから取得したユーザ情報に基づいて、前記プリンタの役割を特定し、前記特定したプリンタの役割に応じた印刷データの格納場所を特定し、
前記プリンタは、前記特定された格納場所に格納される印刷データを取得し、取得した印刷データに基づいて印刷するプリンタシステム。
【請求項6】
プリンタの位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定するサーバと、
前記サーバが特定したプリンタの役割に応じた情報を取得し、取得した情報に基づいて動作するプリンタと、を備え、
前記プリンタは、前記プリンタを操作するユーザを識別するためのユーザ情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記特定したプリンタの役割に応じた印刷データの格納場所を特定し、前記プリンタから取得したユーザ情報と、プリンタの役割ごとに利用可能なユーザが定められる認証情報とに基づいて、前記特定したプリンタの役割を利用可能なユーザであるか否かを判定し、前記判定に基づいて前記特定したプリンタの役割に応じたプリンタの動作を有効化または無効化する指令を前記プリンタに送信し、
前記プリンタは、前記特定されたプリンタの役割に応じたプリンタの動作を有効化する指令を受信した場合、前記特定された格納場所に格納される印刷データを取得し、取得した印刷データに基づいて印刷するプリンタシステム。
【請求項7】
前記サーバは、前記特定したプリンタの役割に応じた設定データを前記プリンタに送信し、
前記プリンタは、前記サーバから取得した設定データに基づいてプリンタ設定を更新する請求項1
から6のいずれか一項に記載のプリンタシステム。
【請求項8】
前記サーバは、前記プリンタから位置情報を取得する請求項1から
7のいずれか一項に記載のプリンタシステム。
【請求項9】
前記サーバは、前記プリンタの周囲に存在する機器が測位する位置情報を取得する請求項1から
8のいずれか一項に記載のプリンタシステム。
【請求項10】
前記サーバは、エリアごとにプリンタの役割が定められるエリア情報に基づいて前記プリンタが位置するエリアを判別し、判別したエリアに対応するプリンタの役割を特定する請求項1から
9のいずれか一項に記載のプリンタシステム。
【請求項11】
前記エリア情報は、高さ情報を有し、高さごとに異なるプリンタの役割を定めることが可能であり、
前記サーバは、取得した位置情報に基づいて前記プリンタが位置する高さを判別し、判別した高さに対応するプリンタの役割を特定する請求項
10に記載のプリンタシステム。
【請求項12】
前記サーバは、前記プリンタの位置情報に基づいて前記プリンタが位置するエリアの変更を検出し、前記プリンタが位置するエリアの変更の検出を契機に、変更後のエリアに対応するプリンタの役割に応じた情報を前記プリンタに送信する請求項
10または
11に記載のプリンタシステム。
【請求項13】
前記サーバは、前記プリンタが位置するエリアの変更の検出を契機に、変更前のエリアに対応するプリンタの役割に応じた前記プリンタの動作を無効化する指令、および、変更後のエリアに対応するプリンタの役割に応じた前記プリンタの動作を有効化する指令の少なくとも一方を前記プリンタに送信する請求項
12に記載のプリンタシステム。
【請求項14】
プリンタの位置情報を取得する機能と、
前記取得した位置情報に基づいて
、前記プリンタが位置するエリアに対応するプリンタの役割と、前記プリンタが位置するエリアの周囲の別のエリアに対応するプリンタの役割とを含む複数のプリンタの役割を特定する機能と、
前記特定した複数のプリンタの役割に応じた複数の情報を前記プリンタに送信する機能と、をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項15】
プリンタの位置情報を取得する機能と、
前記取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定する機能と、
前記特定したプリンタの役割に応じた情報を前記プリンタに送信する機能と、
前記プリンタが位置するエリアに複数のプリンタの役割が定められる場合、前記プリンタが位置するエリアに対応する複数のプリンタの役割に応じた複数の情報を前記プリンタに送信する機能と、をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項16】
プリンタの位置情報を取得する機能と、
前記プリンタから前記プリンタを操作するユーザを識別するためのユーザ情報を取得する機能と、
前記取得した位置情報および前記取得したユーザ情報に基づいて、前記プリンタの役割を特定する機能と、
前記特定したプリンタの役割に応じた印刷データの格納場所を前記プリンタに送信する機能と、をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項17】
プリンタの位置情報を取得する機能と、
前記プリンタから前記プリンタを操作するユーザを識別するためのユーザ情報を取得する機能と、
前記取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定する機能と、
前記特定したプリンタの役割に応じた印刷データの格納場所を前記プリンタに送信する機能と、
前記プリンタから取得したユーザ情報と、プリンタの役割ごとに利用可能なユーザが定められる認証情報とに基づいて、前記特定したプリンタの役割を利用可能なユーザであるか否かを判定する機能と、
前記判定に基づいて前記特定したプリンタの役割に応じたプリンタの動作を有効化または無効化する指令を前記プリンタに送信する機能と、をコンピュータに実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
小売店などの店舗では、商品名、価格、バーコードなどが記載される商品ラベルを発行したり、顧客向けのレシートやクーポンを発行したりするためのプリンタが利用されている。プリンタの印刷内容は、ネットワーク経由でサーバから取得されることがある。印刷内容の取得先となるサーバのアドレスなどの設定情報は、プリンタにパソコンや専用装置を接続することで書き換えされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリンタを店舗で利用するためには、店舗に応じたプリンタの事前設定が必要である。百貨店やショッピングモールなどの多数の店舗が収容される施設の場合、施設全体で使用する多数のプリンタについて、どのプリンタをどの店舗で利用するかを管理し、利用する店舗に応じた設定をプリンタごとにしなければならない。プリンタの設定変更には専門の技術者を必要とすることもある。客が急増した店舗にプリンタを急遽追加する、故障したプリンタを即時交換するといったニーズに対し、技術者が不在であっても迅速かつ簡便に対応できることが好ましい。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、プリンタの役割を簡便に変更する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様のプリンタシステムは、プリンタの位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定するサーバと、サーバが特定したプリンタの役割に応じた情報を取得し、取得した情報に基づいて動作するプリンタと、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、プログラムである。このプログラムは、プリンタの位置情報を取得する機能と、取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定する機能と、特定したプリンタの役割に応じた情報をプリンタに送信する機能と、をコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、プリンタの役割を簡便に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るプリンタシステムの機能構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】プリンタに表示される役割選択画面の一例を模式的に示す図である。
【
図5】プリンタに表示される設定更新画面の一例を模式的に示す図である。
【
図6】プリンタシステムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図7】プリンタシステムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
本実施の形態の概要について説明する。本実施の形態は、サーバと、プリンタとを備えるプリンタシステムである。サーバは、プリンタの位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいてプリンタの位置に対応するプリンタの役割を特定する。プリンタは、サーバが特定したプリンタの役割に応じた情報を取得し、取得した情報に基づいて動作する。本実施の形態によれば、プリンタを使用したい場所にプリンタを持ってくるだけで、プリンタの設定が自動更新され、その場所に応じた役割をプリンタが発揮できるようになる。例えば、多数のプリンタが使用される施設であれば、プリンタごとに設置場所を決定し、設置場所に応じた初期設定をプリンタごとに事前にしておく必要がなくなる。また、特定の場所でプリンタの使用台数を一時的に増やしたり、故障したプリンタを交換したりする必要がある場合、別の場所からプリンタを持ってくるだけで設定を自動変更できる。その結果、様々な場所でプリンタをフレキシブルに運用することができ、限られた数のプリンタを様々な場所で必要なときに必要なだけ使用するプリンタシェアリングを実現できる。
【0012】
本実施の形態に係るプリンタシステムは、百貨店やショッピングモールなどの大規模商業施設で利用できる。商業施設では、建物のフロアごとに複数の店舗が設けられる。各店舗では、レシートやクーポンを発行したり、商品ラベルを発行したりするためのプリンタが使用される。プリンタの印刷内容は店舗ごとに異なるため、店舗ごとにプリンタの設定が必要である。また、同一の店舗内であっても、レジに設置してレシートを発行するプリンタと、商品在庫を保管するバックヤードで商品ラベルを発行するプリンタとでは印刷用紙や印刷内容が異なりうるため、用途に応じてプリンタの設定を変える必要がある。本実施の形態では、このようなプリンタの使用場所に応じたプリンタの役割の自動更新を可能にする。
【0013】
本実施の形態において、プリンタの「役割」は、プリンタのユーザや用途によって定義される。プリンタの役割が変わると、プリンタが提供すべき具体的な機能が変わる。プリンタが商業施設で用いられる場合、プリンタの役割は、商業施設名や店舗名といったユーザ名と、施設内や店舗内での用途とによって定義できる。プリンタの用途として、売り場用、レジ用、倉庫用などを定めることができる。例えば、衣料品を扱う店舗Aのレジ用の役割が付与されたプリンタは、店舗Aのロゴおよび店舗Aの商品情報が印刷されたレシートやクーポンを発行する機能を提供できるように構成される。プリンタは、役割に応じた情報を取得することで、役割に応じた機能を提供可能となる。ここで、役割に応じた情報とは、プリンタが役割に応じた機能を提供するために使用する任意のデータを指し、プリンタの設定データ、プリンタの印刷データ、プリンタが実行すべきコマンドやプログラムなどが含まれる。
【0014】
本実施の形態に係るプリンタシステムは、商業施設以外においても利用可能であり、事務所やオフィスビル、工場、倉庫、医療機関、教育機関、官公庁などの様々な施設で用いるプリンタに適用できる。これらの施設でプリンタが使用される場合、プリンタの役割は、法人名、会社名、組織名、施設名、部門名、部署名といったユーザ名と、用途とによって定義できる。例えば、工場や倉庫で使用される場合、プリンタの用途として、入荷用、検品用、仕分け用、製造管理用、検査用、出荷用などを定めることができる。
【0015】
以下、本実施の形態について、商業施設での利用を例示しながら詳述する。
【0016】
図1は、実施の形態に係るプリンタシステム10の機能構成を概略的に示すブロック図である。本実施の形態において示される各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0017】
プリンタシステム10は、管理サーバ12と、プリンタ14とを備える。管理サーバ12は、プリンタ14の位置に基づいてプリンタ14の役割を特定するよう構成される。プリンタ14は、管理サーバ12が特定した役割を発揮するように動作する。管理サーバ12およびプリンタ14は、インターネットなどのネットワーク60に接続されている。ネットワーク60には、周辺機器16と、複数の外部サーバ18a,18b,18cとが接続されている。管理サーバ12およびプリンタ14の構成を詳述する前に、周辺機器16および外部サーバ18a~18cについて説明する。
【0018】
周辺機器16は、プリンタ14の周囲に存在する機器であり、プリンタ14の位置を測定するための測位機器として機能する。周辺機器16として、アクセスポイント62、ロケータ64、GPS装置66、ユーザ端末68などが挙げられる。
【0019】
アクセスポイント62は、Wi-Fi(登録商標)などの規格で無線通信するための無線基地局である。アクセスポイント62は、プリンタ14を使用する施設の壁や天井などに設けられ、プリンタ14がネットワーク60に接続するために用いられる。アクセスポイント62は、Wi-Fi信号に基づく測位技術を用いてプリンタ14の位置を特定するために使用できる。例えば、Wi-Fi信号の電波強度を計測したり、Wi-Fi信号の伝搬時間をTOF(Time of Flight)方式で計測したりすることで、プリンタ14とアクセスポイント62の間の距離を測定できる。さらに、プリンタ14の周囲に存在する複数のアクセスポイント62とプリンタ14の距離を測定することで、三角測量の原理に基づいてプリンタ14の位置を特定できる。なお、プリンタ14と接続可能なアクセスポイント62の位置をプリンタ14の位置とみなしてもよい。
【0020】
ロケータ64は、Bluetooth (登録商標)などの規格で送受信されるビーコン信号を用いてプリンタ14の位置を特定するための装置である。ロケータ64は、プリンタ14を使用する施設の壁や天井などに設けられる。ロケータ64は、例えば、プリンタ14から送信されるビーコン信号の到来角度(AOA:Angle of Arrival)を計測し、得られた到来角度に基づいてプリンタ14の位置を特定する。なお、ロケータ64がビーコン信号を送信し、プリンタ14がビーコン信号を受信して自身の位置を特定してもよい。プリンタ14は、複数のロケータ64から送信されるビーコン信号に基づいて自身の位置を特定してもよい。
【0021】
GPS装置66は、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite Systems)などの衛星測位システムにおける測位信号を受信して自身の位置を特定する。プリンタ14は、プリンタ14の周囲に存在するGPS装置66から位置情報を取得し、GPS装置66の位置をプリンタ自身の位置とする。GPS装置66は、ネットワーク60と接続されてもよく、GPS装置66から管理サーバ12にプリンタ14の位置情報が送信されてもよい。GPS装置66は、プリンタ14と有線で接続されてもよく、プリンタ14に内蔵されていてもよい。
【0022】
ユーザ端末68は、スマートフォンやタブレットなどのポータブル端末である。ユーザ端末68は、任意の手法を用いて自身の位置情報を取得する。ユーザ端末68は、アクセスポイント62との間で送受信されるWi-Fi信号を用いて位置を特定してもよいし、ロケータ64との間で送受信されるビーコン信号を用いて位置を特定してもよいし、GPS機能によって位置を特定してもよい。プリンタ14は、プリンタ14の周囲に存在するユーザ端末68から位置情報を取得し、ユーザ端末68の位置をプリンタ自身の位置とする。なお、ユーザ端末68から管理サーバ12にプリンタ14の位置情報が送信されてもよい。
【0023】
プリンタ14の位置の特定方法は、上記に限定されず、任意の他の手法が用いられてもよい。また、周辺機器16として、図示されていない任意の測位装置が用いられてもよい。また、プリンタ14の位置は、複数の手法を組み合わせることで特定されてもよく、上述の手法や他の手法によって特定される位置情報を総合的に用いることでプリンタ14の位置が精度良く特定されてもよい。
【0024】
外部サーバ18a~18cは、管理サーバ12とは別に用意されるサーバである。外部サーバ18a~18cは、プリンタ14を使用するユーザごとに用意される専用サーバであり、店舗別または複数の店舗を運営する会社別に用意される。第1外部サーバ18aは、例えば、店舗Aの専用サーバであり、店舗Aでプリンタ14を使用する場合に用いる印刷情報84および認証情報86を有する。第2外部サーバ18bは、例えば、店舗Bの専用サーバであり、店舗Bでプリンタ14を使用する場合に用いる印刷情報および認証情報を有する。第3外部サーバ18cは、例えば、店舗Cおよび店舗Dを運営する会社の専用サーバであり、店舗Cまたは店舗Dでプリンタ14を使用する場合に用いる印刷情報および認証情報を有する。なお、プリンタシステム10にて利用する外部サーバの数は特に限定されず、プリンタシステム10を使用する組織または部門の数に応じた外部サーバが用意されてもよい。なお、プリンタシステム10は、外部サーバ18a~18cを利用しない構成であってもよい。
【0025】
つづいて、管理サーバ12の機能構成について説明する。管理サーバ12は、位置管理部20と、役割管理部22と、設定管理部24と、印刷管理部26とを備える。管理サーバ12は、エリア情報30と、設定情報32と、印刷情報34と、認証情報36とを有する。
【0026】
位置管理部20は、プリンタ14の位置情報を取得し、プリンタ14の現在位置を把握する。位置管理部20は、ネットワーク60を通じてプリンタ14または周辺機器16からプリンタ14の位置情報を取得し、プリンタ14の三次元座標(例えば、経度、緯度および高度)を特定する。位置管理部20は、プリンタ14の位置の精度を特定してもよく、プリンタ14の位置の誤差範囲やプリンタ14が位置する可能性のある範囲を特定してもよい。位置管理部20は、プリンタ14の位置情報を継続的に取得し、プリンタ14の位置変化を追跡する。
【0027】
役割管理部22は、プリンタ14の位置情報に基づいてプリンタ14の役割を特定する。役割管理部22は、エリア情報30を用いて、位置管理部20が特定したプリンタ14の位置に対応する役割を特定する。エリア情報30は、エリアを識別するための識別子と、エリアの範囲を指定するための範囲情報と、エリアにおけるプリンタ14の役割を示す役割情報とを定める。
【0028】
図2は、エリアの設定例を模式的に示す図であり、商業施設の1階フロア100に設定される複数のエリア101~107の配置例を示す。複数のエリア101~107のそれぞれの範囲は、各エリア101~107に設けられる店舗やブースが占める範囲に相当する。各エリア101~107の位置、形状および大きさは様々である。例えば、第1エリア101は、ドラッグストアの店舗Aであり、第2エリア102は、雑貨を扱う店舗Bである。第3エリア103は、商業施設の案内所であり、第4エリア104は、衣料品を扱う店舗Cである。なお、エリア101~107が設定されていない範囲110は、通路などの店舗やブースが存在しない場所に相当する。
【0029】
商業施設が複数のフロア(階層)を有する場合、フロアごとにエリアが設定可能である。したがって、エリアの範囲は、水平方向のみならず、高さ方向にも設定可能である。各フロアに設定される複数のエリアは、フロアごとに異なることができる。例えば、1階フロア100に設定される複数のエリア101~107の位置、形状および大きさは、2階フロアに設定される複数のエリアの位置、形状および大きさと異なってもよい。
【0030】
エリア内にはサブエリアを設定することも可能である。サブエリアは、エリアと重複する範囲に設定される。
図2の例では、第4エリア104内に複数のサブエリア104a~104eが設定されている。例えば、第1サブエリア104aは、商品が陳列される売り場であり、第2サブエリア104bは、レジ端末が設けられる会計場所であり、第3サブエリア104cは、試着室である。第4サブエリア104dおよび第5サブエリア104eは、商品在庫を保管するための倉庫(バックヤード)である。第4サブエリア104dおよび第5サブエリア104eは、高さ方向に区分されている。例えば、第4サブエリア104dは、倉庫の下段の収納棚に対応し、第5サブエリア104eは、倉庫の上段の収納棚に対応する。したがって、サブエリアの範囲についても、水平方向のみならず、高さ方向にも設定可能である。
【0031】
図3は、エリア情報30の一例を示すテーブルであり、
図2のエリア設定に対応する。エリア情報30は、識別子と、範囲情報と、役割情報とを有する。エリア情報30の識別子として、施設IDとエリアIDの組み合わせが用いられる。施設IDは、複数のエリアが設定される施設や建物を特定するための識別子である。エリアIDは、施設内に設定される複数のエリアを識別するための識別子である。例えば、1階フロアに設定される複数のエリア101~107に対して、エリア番号101~107が付与される。また、2階フロアに設定される複数のエリアに対して、エリア番号201~204が付与される。さらに、複数のサブエリア104a~104eに対して、エリア番号104a~104eが付与される。
【0032】
範囲情報は、各エリアの三次元の範囲を指定する座標を定める。各エリアの範囲は、箱状の空間として定められ、水平方向の範囲によって箱の底面に相当する平面形状が定義され、高さ方向の範囲によって箱の高さが定義される。
図3の例では、水平方向の範囲を指定する経度(X座標)および緯度(Y座標)と、高さ方向の範囲を指定する高度(Z座標)とが別々に設定されている。したがって、エリア情報は、高さ情報を有し、高さごとにプリンタの役割を定めることができる。
【0033】
エリアの水平方向の範囲は、例えば、エリアの外周を規定する多角形の複数の頂点の座標(X,Y)を順に指定することで定義される。例えば、矩形状のエリアであれば、四つの頂点のそれぞれの経度および緯度が設定される。なお、エリアの水平方向の範囲の設定方法は特に限られず、任意の手法が用いられてもよい。例えば、エリアの中心座標(X,Y)と、中心座標からの経度方向および緯度方向の距離(Lx,Ly)とによって水平方向の範囲が定義されてもよい。
【0034】
エリアの高さ方向の範囲は、例えば海抜を基準とする標高Zによって定義され、各フロアにおいてプリンタ14を標準的に使用する高さ、例えば床から1m程度の高さが設定される。例えば、1階フロアであれば高度Z1が設定され、2階フロアであれば高度Z2が設定される。高さ方向に区分されるサブエリア104d,104eについては、各サブエリアの高さに対応する個別の高度Z1d,Z1eが設定される。なお、エリアの高さ方向の範囲の設定方法は特に限られず、任意の手法が用いられてもよい。例えば、各エリアの高度の下限値と上限値によって高さ方向の範囲が定義されてもよく、例えば、床面の高度と天井の高度によって定義されてもよい。
【0035】
役割情報は、各エリアに対応するプリンタ14の役割を識別する役割IDを定める。例えば、第1エリア101には、店舗Aの役割IDが設定され、第2エリア102には、店舗Bの役割IDが設定され、第3エリア103には、商業施設の案内所の役割IDが設定される。第4エリア104には、店舗Cの役割IDが設定され、第4エリアのサブエリア104a~104eには店舗Cにおける個別の用途に対応する役割IDが設定される。
図3では、分かりやすさのため、役割IDの意味を説明する備考欄を設けているが、役割情報として備考欄が設けられなくてもよい。
【0036】
エリア情報30は、複数のテーブルによって段階的に定義されてもよい。エリア情報30は、例えば、施設テーブル、エリアテーブルおよびサブエリアテーブルにより構成される三段階のデータ構造を有してもよい。施設テーブルは、プリンタ14が使用可能な施設IDと、施設の位置座標とを含んでもよい。エリアテーブルは、施設ごとに作成され、施設内に設定される複数のエリアIDと、各エリアの範囲情報および役割情報を含んでもよい。サブエリアテーブルは、エリアごとに作成され、エリア内に設定される複数のサブエリアIDと、各サブエリアの範囲情報および役割情報を含んでもよい。
【0037】
役割管理部22は、エリア情報30を参照して、プリンタ14の位置に対応するエリアを判別する。役割管理部22は、プリンタ14の位置に基づいて範囲情報を検索し、プリンタ14の位置が含まれるエリアを判別する。例えば、プリンタ14の位置が地点Pである場合、役割管理部22は、地点Pを含む第1エリア101を判別する。役割管理部22は、プリンタ14の位置にエリアが設定されていない場合、例えば、
図2の地点Qにプリンタ14が位置する場合、エリアの設定がないと判別してもよい。
【0038】
役割管理部22は、プリンタ14が位置する可能性のある複数のエリアを判別してもよい。例えば、プリンタ14の位置精度が低い場合、プリンタ14の位置を中心とする誤差範囲と重なる複数のエリアを候補エリアとして判別してもよい。例えば、
図2の第1エリア101に含まれる地点Pにプリンタ14が位置する場合、第1エリア101と、第1エリア101の周囲の第2エリア102を候補エリアとして判別してもよい。また、
図2の地点Qにプリンタ14が位置する場合、地点Qの周囲の第1エリア101、第2エリア102および第3エリア103を候補エリアとして判別してもよい。
【0039】
役割管理部22は、エリア情報30を参照して、判別したエリアに対応するプリンタ14の役割を特定する。役割管理部22は、プリンタ14が第1エリア101に位置すると判別した場合、プリンタ14の役割として第1エリア101に対応する「店舗A」を特定する。役割管理部22は、プリンタ14が第4エリア104のサブエリア104bに位置すると判別した場合、プリンタ14の役割としてサブエリア104bに対応する「店舗Cのレジ」を特定する。役割管理部22は、複数の候補エリアが判別された場合、プリンタ14の役割の候補として複数の候補エリアに対応する複数の役割を特定してもよい。
【0040】
役割管理部22は、プリンタ14が位置する高さを判別し、判別した高さに対応するプリンタの役割を特定する。役割管理部22は、プリンタ14が位置する高さに基づいて、プリンタ14がいずれのフロアのいずれのエリアに配置されているかを判別してもよい。例えば、1階フロア100に設定される複数のエリア101~107に配置されているのか、2階フロアに設定される複数のエリア201~204に配置されているのかを判別してもよい。役割管理部22は、プリンタ14が位置する高さに基づいて、プリンタ14が位置するサブエリアを判別してもよい。例えば、プリンタ14が第4エリア104の第4サブエリア104dと第5サブエリア105eのいずれに位置するかを判別してもよい。
【0041】
役割管理部22は、プリンタ14から取得するユーザ情報に基づいて、プリンタの役割を特定してもよい。ここで「ユーザ情報」とは、店舗や会社といったプリンタ14を使用する組織を識別するための情報や、店舗や会社の従業員等であってプリンタ14を操作する個人を識別するための情報である。役割管理部22は、役割IDとユーザIDを対応付ける認証情報36を参照して、プリンタ14から取得したユーザ情報に対応する役割を特定してもよい。認証情報36は、例えば役割IDごとに利用可能なユーザIDを定める。なお、管理サーバ12に用意される認証情報36の代わりに、外部サーバ18a~18cのいずれかに用意される認証情報86を用いてもよい。外部サーバ18a~18cに保存される認証情報86は、例えば、特定の役割IDを利用可能なユーザIDを定める。役割管理部22は、プリンタ14の役割の候補として複数のエリアに対応する複数の役割が特定された場合、ユーザ情報に基づいて複数の役割のいずれかに絞り込んでもよい。役割管理部22は、プリンタ14の位置にエリアの設定がなく、プリンタ14の役割が不明である場合、ユーザ情報に基づいてプリンタ14の役割を特定してもよい。
【0042】
役割管理部22は、プリンタ14の位置が変化した場合、プリンタ14が位置するエリアが変更されたか否かを検出し、エリア変更によってプリンタ14の役割が変更されたか否かを検出する。役割管理部22は、プリンタ14が位置するエリアまたはプリンタ14の役割の履歴情報を保持してもよい。役割管理部22は、履歴情報を参照することで、プリンタ14の現在位置に対応するエリアまたは役割が変更されたか否かを検出してもよい。役割管理部22は、プリンタ14のユーザ情報の履歴情報を保持してもよく、プリンタ14のユーザの変更を検出してもよい。役割管理部22は、ユーザ変更の検出を契機としてプリンタ14の役割の変更を検出してもよい。
【0043】
設定管理部24は、役割管理部22が特定したプリンタ14の役割に応じた設定データをプリンタ14に送信する。設定データには、プリンタ14の設定を更新するための設定コマンド、プリンタ14の画面に表示させる画像データ、プリンタ14で実行するアプリケーションプログラムなどが含まれる。設定コマンドは、プリンタ14の印刷動作を設定するものであり、印刷速度、印刷濃度、印刷用紙、印刷モードなどを設定する。印刷モードには、連続発行モード、剥離発行モード、ティアオフモードなどがある。画像データは、店舗や企業のロゴ画像などであり、プリンタ14の起動時の画面やメニュー画面などに表示される。アプリケーションプログラムは、例えば、印刷内容を編集するためのアプリケーションをプリンタ14で実行するためのプログラムである。これらの設定データは、店舗や用途といった役割ごとに異なるのが通常である。
【0044】
設定データは、設定情報32としてプリンタ14の役割ごとに事前に用意される。設定情報32は、例えば、複数の役割IDに対応する複数の設定データを含む。設定情報32は、役割に応じた設定データを生成するためのパラメータ情報を有してもよい。設定管理部24は、設定情報32に定められるパラメータに基づいて、役割に応じた設定データを生成し、プリンタ14に送信してもよい。設定管理部24は、プリンタ14からの要求に基づいて設定データをプリンタ14に送信してもよい。
【0045】
設定管理部24は、役割管理部22によるエリアまたは役割の変更の検出を契機として、変更後の役割に対応する設定データをプリンタ14に送信してもよい。設定データは、プリンタ14の変更後の役割に応じた動作を有効化する指令(コマンド)を含んでもよい。プリンタ14は、受信した設定データに基づいてプリンタ14の設定を更新し、変更後の役割に応じた機能を発揮してもよい。設定データは、プリンタ14の変更前の役割に応じた動作を無効化するコマンドを含んでもよい。例えば、プリンタ14の位置に対応するエリアが設定されておらず、プリンタ14の役割が不明な場合、プリンタ14の特定の役割に応じた動作が無効化されてもよい。プリンタ14は、設定データを受信することで、変更前の役割に対応する設定データを削除し、変更前の役割に応じた機能を発揮できない状態になってもよい。プリンタ14は、変更前の役割に対応する設定データを削除する代わりに、変更前の役割に応じた機能を発揮させるためのメニュー操作が不可となる状態になってもよい。
【0046】
設定管理部24は、役割管理部22によって複数の役割が候補として特定されている場合、複数の役割に対応する複数の情報をプリンタ14に送信してもよい。この場合、プリンタ14を操作することで複数の役割のいずれかを選択可能であってもよい。設定管理部24は、プリンタ14からの要求に基づいて、選択された役割に対応する設定データをプリンタ14に送信してもよい。設定管理部24は、複数の役割に対応する複数の設定データを一括してプリンタ14に送信してもよい。この場合、プリンタ14は、複数の設定データを保存し、プリンタ14の操作に応じて複数の役割を切り替えできるように構成されてもよい。
【0047】
設定管理部24は、プリンタ14から取得するユーザ情報と、認証情報36または86とに基づいて、プリンタ14の特定の役割を利用可能なユーザであるか否かを判定してもよい。設定管理部24は、プリンタ14の特定の役割を利用可能なユーザであると判定した場合、プリンタ14の動作を有効化する指令をプリンタ14に送信してもよい。設定管理部24は、プリンタ14の特定の役割を利用可能なユーザではないと判定した場合、プリンタ14の動作を無効化する指令をプリンタ14に送信してもよい。
【0048】
印刷管理部26は、役割管理部22が特定したプリンタ14の役割に応じた印刷データをプリンタ14が取得できるようにする。印刷データは、文字データ、文字のフォントデータ、ロゴなどの画像データ、1次元または2次元コードの描画データ、印刷される文字や画像などの配置を定めるテンプレートデータなどを含む。プリンタ14のユーザは、プリンタ14にて実行されるアプリケーション上で印刷内容を編集してもよい。印刷内容の編集は、例えば、テンプレートの選択、テンプレートに挿入する文字列の入力、テンプレートに挿入する画像の選択および配置の決定などにより行われる。印刷内容の編集によって最終的な印刷内容が確定され、印刷データを利用して印刷処理が実行される。これらの印刷データも、店舗や用途といった役割ごとに異なるのが通常である。
【0049】
印刷管理部26は、管理サーバ12が有する印刷情報34に基づいて印刷データを生成し、プリンタ14に送信してもよい。印刷情報34は、複数の役割IDに対応する複数の印刷データを含んでもよい。印刷情報34は、役割に応じた印刷データを生成するためのパラメータ情報を有してもよい。設定管理部24は、印刷情報34に定められるパラメータに基づいて、役割に応じた印刷データを生成し、プリンタ14に送信してもよい。
【0050】
印刷管理部26は、プリンタ14の役割に応じた印刷データを設定データとともにプリンタ14に送信してもよい。印刷管理部26は、プリンタ14からの要求に応じてプリンタ14に印刷データを送信してもよい。例えば、プリンタ14で編集作業や印刷処理を実行しようとする場合に、プリンタ14からの要求に基づいて印刷処理に必要な印刷データをプリンタ14に送信してもよい。印刷データは、最終的な印刷内容に対応するデータであってもよく、文字、画像、バーコードなどがテンプレートに埋め込まれた形式のデータであってもよい。
【0051】
印刷管理部26は、外部サーバ18a~18cのいずれかに用意される印刷情報84に基づく印刷データを取得してプリンタ14に送信してもよい。印刷データは、店舗または会社ごとに用意され、外部サーバ18a~18cに格納されることがある。印刷管理部26は、プリンタ14に印刷データの格納場所を指定する情報を送信し、プリンタ14が指定された格納場所から印刷データを取得できるようにしてもよい。印刷データの格納場所は、管理サーバ12であってもよいし、外部サーバ18a~18cのいずれかであってもよい。
【0052】
印刷データの格納場所は、役割に応じて異なってもよい。例えば、店舗Aの印刷データは、第1外部サーバ18aに格納され、店舗Eの印刷データは、管理サーバ12に格納されてもよい。この場合、印刷管理部26は、プリンタ14の役割に応じて印刷データの格納場所を特定する。プリンタ14は、特定された格納場所に格納される印刷データを取得する。プリンタ14は、格納場所に直接アクセスして印刷データを取得してもよい。なお、プリンタ14が直接印刷データを取得するのではなく、印刷管理部26が格納場所から印刷データを取得してプリンタ14に送信してもよい。
【0053】
つづいて、プリンタ14の機能構成について説明する。プリンタ14は、第1通信部40と、第2通信部42と、表示操作部44と、印刷機構46と、記憶部48と、制御部50とを備える。
【0054】
第1通信部40は、ネットワーク60を通じて管理サーバ12や外部サーバ18a~18cと接続するための通信インターフェースである。第1通信部40は、例えば、アクセスポイント62と無線接続するよう構成される。第1通信部40は、ネットワーク60と有線接続するよう構成されてもよい。
【0055】
第2通信部42は、周辺機器16と近距離通信するための通信インターフェースである。第2通信部42は、Bluetoothでロケータ64、GPS装置66およびユーザ端末68などと無線接続し、位置情報を取得してもよい。第2通信部42は、ユーザ端末68やユーザカード70とNFC(Near field communication)で無線接続し、位置情報やユーザ情報を取得してもよい。プリンタ14は、バーコードリーダ(不図示)と接続されてもよく、バーコードリーダで読み取ったユーザ情報を取得してもよい。
【0056】
表示操作部44は、タッチパネル式のディスプレイで構成され、プリンタ14を動作させるための画面表示および入力操作を実現する。表示操作部44は、表示部と操作部が別々に構成されてもよく、液晶ディスプレイなどで構成される表示部の周囲にボタンやスイッチなどで構成される操作部が配置されてもよい。表示操作部44は、ユーザからの音声入力操作を受け付けるためのマイクを有してもよいし、ユーザの身振りや手振り(ジェスチャー)による入力操作を受け付けるためのカメラを有してもよい。
【0057】
印刷機構46は、ラベルなどの用紙に印刷をする。印刷機構46は、用紙を搬送する搬送機構と、用紙に文字や画像を印刷する印刷ヘッドとを有する。印刷機構46は、文字や画像が印刷されたラベルを台紙から剥がすための剥離機構や、印刷されたラベルを所定のサイズにカットする切断機構などを有してもよい。
【0058】
記憶部48は、プリンタ14が取得したデータを記憶する。記憶部48は、役割に応じた設定データや印刷データを記憶する。記憶部48は、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置や、ハードディスクなどの磁気記憶装置で構成される。
【0059】
制御部50は、プリンタ14の動作全般を制御する。制御部50は、管理サーバ12から情報を取得し、取得した情報に基づいてプリンタ14の動作を制御する。制御部50は、管理サーバ12が特定した役割に応じた情報を取得することで、プリンタ14が特定の役割に対応する機能を提供できるようにする。制御部50は、設定更新部52と、表示制御部54と、印刷制御部56とを有する。
【0060】
設定更新部52は、管理サーバ12から設定データを取得し、取得した設定データに基づいてプリンタ14の設定を更新する。設定更新部52は、管理サーバ12から取得する特定の役割に応じた設定データに基づいてプリンタ設定を更新することで、プリンタ14が特定の役割に対応する機能を提供できるようにする。設定更新部52は、設定データに基づいて表示操作部44に表示させるロゴ画像やメニュー表示を更新し、印刷機構46の印刷速度、印刷濃度、印刷モードといった動作パラメータを更新する。設定更新部52は、設定データに基づいてアプリケーションプログラムをインストールし、表示操作部44を通じてアプリケーションを利用できるようにする。
【0061】
設定更新部52は、管理サーバ12に対して設定データを要求するコマンドを送信してもよい。設定更新部52は、プリンタ14の電源オンや再起動を契機として管理サーバ12にコマンドを送信してもよい。設定更新部52は、プリンタ14の位置情報を周辺機器16から取得した場合、位置情報の取得を契機として管理サーバ12にコマンドを送信してもよい。設定更新部52は、取得した位置情報をコマンドとともに管理サーバ12に送信してもよい。設定更新部52は、ユーザ端末68やユーザカード70からユーザ情報を取得した場合、ユーザ情報の取得を契機として管理サーバ12にコマンドを送信してもよい。設定更新部52がコマンドを送信することで、最新の設定データが必要となるタイミングを管理サーバ12に通知することができ、プリンタ14の現在位置に対応する役割に応じた設定データを迅速に取得できる。
【0062】
設定更新部52は、複数の役割に対応する複数の設定データを記憶部48に保存し、複数の役割のいずれかを選択する操作に応じてプリンタ設定を切り替えてもよい。例えば、更新前の役割に対応する設定データと、更新後の役割に対応する設定データとを記憶部48に保存しておき、ユーザの操作を契機としてプリンタ設定を更新してもよい。設定更新部52は、管理サーバ12から複数の役割に対応する複数の情報が送信された場合、複数の情報を記憶部48に保存しておき、複数の役割のいずれかを選択する操作に応じてプリンタ設定を更新してもよい。設定更新部52は、プリンタ設定を更新した場合、更新前の設定データを記憶部48から削除してもよいし、記憶部48に残しておいてもよい。
【0063】
設定更新部52は、管理サーバ12から受信するコマンドに基づいて、特定の役割に応じた動作を有効化または無効化してもよい。設定更新部52は、プリンタ設定を更新することで特定の役割に応じた動作を有効化し、プリンタ設定を削除して初期化することで特定の役割に応じた動作を無効化してもよい。設定更新部52は、プリンタ設定を変更せずに特定の役割に応じた動作を有効化または無効化してもよい。例えば、表示操作部44を通じたメニュー画面の設定を変更することで、特定の役割に応じた操作が可能な状態と不可な状態を切り替えてもよい。
【0064】
設定更新部52は、設定された役割に応じた印刷データを取得し、記憶部48に保存する。設定更新部52は、管理サーバ12に対して印刷データを要求するコマンドを送信し、管理サーバ12から印刷データが送信されるようにしてもよい。設定更新部52は、管理サーバ12に対して印刷データの格納場所を示す情報を要求するコマンドを送信してもよい。設定更新部52は、管理サーバ12が指定する格納場所にアクセスして印刷データを取得してもよい。設定更新部52は、管理サーバ12または外部サーバ18a~18cのいずれかから印刷データを取得してもよい。設定更新部52は、設定された役割に応じて印刷データの取得先を変更してもよい。
【0065】
表示制御部54は、特定の役割に応じたプリンタ設定にしたがって表示操作部44の動作を制御する。表示制御部54は、プリンタ14の起動時の画面やメニュー画面などに特定の役割に応じたロゴ画像を表示させ、特定の役割に応じたメニュー画面を表示させる。表示制御部54は、特定の役割に応じたアプリケーションを起動し、アプリケーションの利用を可能にする。
【0066】
表示制御部54は、プリンタ14の起動時などに複数の役割のいずれかを選択する役割選択画面を表示させてもよい。
図4は、プリンタ14に表示される役割選択画面の一例を模式的に示す図である。
図4では、選択肢として、
図2の第1エリア101に対応する店舗A、第2エリア102に対応する店舗B、および、第3エリア103に対応する案内所が表示されている。役割選択画面では、プリンタ14の位置に対応する限られた数の役割のみが選択肢として表示される。役割選択画面において、一つの役割のみが選択肢として表示されてもよい。
【0067】
表示制御部54は、プリンタ設定の更新中に設定更新中である旨の画面を表示してもよい。
図5は、プリンタ14に表示される設定更新画面の一例を模式的に示す図である。
図5では、店舗Aのプリンタ設定に更新中の画面例を示し、更新中の役割が表示されるとともに、設定処理の進捗状況が表示されている。
図5の画面は、例えば、
図4の画面において店舗Aを選択した後に表示されてもよい。表示制御部54は、プリンタ設定が完了してプリンタ14が再起動された場合、再起動後に設定された役割に応じた起動時画面やメニュー画面を表示してもよい。
図5の例の場合、店舗Aのロゴ画像が起動時に表示されてもよい。
【0068】
表示制御部54は、特定の役割に応じた動作の開始時にユーザ認証を求める画面を表示させてもよい。
図5の例の場合、「店舗Aのユーザカードをかざしてください」といったメッセージが表示されてもよい。表示制御部54は、特定の役割に対応したユーザがログインした場合、特定の役割に応じたメニュー画面を表示させ、特定の役割に応じたメニュー操作が可能な状態にしてもよい。表示制御部54は、特定の役割に対応したユーザがログインしない場合、特定の役割に応じたメニュー画面の操作ができない状態にしてもよい。
【0069】
印刷制御部56は、特定の役割に応じたプリンタ設定にしたがって印刷機構46の動作を制御する。印刷制御部56は、表示操作部44を通じて印刷実行の操作がなされた場合、記憶部48に保存される特定の役割に応じた印刷データに基づいて印刷機構46を動作させる。
【0070】
つづいて、プリンタシステム10の動作の流れを説明する。
図6は、プリンタシステム10の動作の一例を示すシーケンス図である。プリンタ14は、周辺機器16に位置情報を要求する(S10)。周辺機器16は、プリンタ14に位置情報を送信する(S12)。なお、プリンタ14がGPS装置などを有する場合は、プリンタ14が自身の位置を測定してもよい。プリンタ14は、プリンタ14の位置情報を管理サーバ12に送信する(S14)。管理サーバ12は、取得した位置情報に基づいてプリンタ14の役割を特定し(S16)、役割に応じた設定データをプリンタ14に送信する(S18)。プリンタ14は、取得した設定データに基づいてプリンタ設定を更新する(S20)。
【0071】
プリンタ14は、役割に応じた印刷データの格納場所を示す情報を管理サーバ12に要求し(S22)、管理サーバ12は、役割に応じた印刷データの格納場所を示す情報を送信する(S24)。プリンタ14は、管理サーバ12から通知された格納場所にアクセスする(S26)。
図6の例では、印刷データの格納場所が管理サーバ12であり、プリンタ14は管理サーバ12にアクセスする。格納場所である管理サーバ12は、プリンタ14に印刷データを送信する(S28)。なお、格納場所が外部サーバ18a~18cのいずれかであれば、S26において、プリンタ14は外部サーバ18a~18cのいずれかにアクセスする。この場合、S28において、格納場所である外部サーバ18a~18cのいずれかは、プリンタ14に印刷データを送信する。プリンタ14は、取得した印刷データを用いて印刷を実行する(S30)。
【0072】
図7は、プリンタシステム10の動作の一例を示すシーケンス図である。
図7は、位置情報の取得経路と印刷データの取得方法が
図6とは異なる。周辺機器16はプリンタ14の位置を測定し(S32)、管理サーバ12にプリンタ14の位置情報を送信する(S34)。管理サーバ12は、取得した位置情報に基づいてプリンタ14の役割を特定し(S36)、役割に応じた設定データをプリンタ14に送信する(S38)。プリンタ14は、取得した設定データに基づいてプリンタ設定を更新する(S40)。
【0073】
プリンタ14は、役割に応じた印刷データを管理サーバ12に要求する(S42)。管理サーバ12は、役割に応じた印刷データを用意し(S44)、印刷データをプリンタ14に送信する(S46)。S44において、管理サーバ12は、管理サーバ12が有する印刷情報34に基づいて印刷データを生成してもよい。S44において、管理サーバ12は、外部サーバ18a~18cのいずれかから印刷データを取得してもよい。プリンタ14は、取得した印刷データを用いて印刷を実行する(S48)。
【0074】
なお、
図6および
図7に示される動作は、適宜組み合わされてもよい。管理サーバ12は、
図6のようにプリンタ14から取得する位置情報のみを用いてもよいし、
図7のように周辺機器16から取得する位置情報のみを用いてもよい。管理サーバ12は、プリンタ14から取得する位置情報と周辺機器16から取得する位置情報の双方を用いてもよく、これらの位置情報を総合的に利用することでプリンタ14の位置を特定し、プリンタ14が位置するエリアを判別し、プリンタ14の役割を特定してもよい。また、印刷データは、
図6のようにプリンタ14が格納場所にアクセスして取得してもよいし、
図7のように管理サーバ12が用意してプリンタ14に提供してもよい。
【0075】
本実施の形態によれば、プリンタ14の使用場所に応じてプリンタ14の役割を自動更新できる。その結果、プリンタ14の使用場所を考慮して事前設定をする必要がなくなり、プリンタ14の役割を簡便に変更できる。また、場所を移動させるだけでプリンタ14の役割が自動変更されるため、複数の場所でプリンタ14をシェアする使い方が可能となる。プリンタ14の不足や故障が生じたとしても、予備のプリンタ14や他店舗で利用しているプリンタ14を持ってくるだけで問題を解消できる。
【0076】
本実施の形態に係るプリンタ14は、自立運搬ロボットなどに搭載して使用されてもよい。この場合、プリンタ14が必要となる場所に自立運搬ロボットが移動することで、プリンタ14の役割が自動更新され、その場所に必要な機能を提供できる。
【0077】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0078】
上述の実施の形態では、一つのエリアまたはサブエリアに対して一つの役割のみが設定される場合について示した。別の実施の形態では、一つのエリアまたはサブエリアに対して複数の役割が設定されてもよい。この場合、プリンタ14において複数の役割のいずれかを選択できるよう構成されてもよい。
【0079】
上述の実施の形態では、各エリアが互いに重複しないように設定される場合について示した。別の実施の形態では、複数のエリアが互いに重複するように設定されてもよい。この場合、複数のエリアが重複する場所では、複数のエリアに対応する複数の役割が特定されてもよい。例えば、施設全体にわたる大きなエリアを設定し、各店舗としての役割ではなく、施設としての役割を付与できるようにしてもよい。この場合、各店舗に対応するエリアに位置するプリンタは、各店舗としての役割または施設としての役割のいずれかを選択できるよう構成されてもよい。
【0080】
別の実施の形態では、管理サーバ12が提供する機能の一部が別の独立したサーバによって提供されてもよい。例えば、管理サーバ12が役割管理部22、設定管理部24および印刷管理部26の機能を提供し、管理サーバ12とは別の位置管理サーバが位置管理部20の機能を提供してもよい。この場合、位置管理サーバは、プリンタ14の位置情報を管理サーバ12に送信してもよい。管理サーバ12は、位置管理サーバからプリンタ14の位置情報を取得し、位置に応じた役割を特定し、役割に応じた情報をプリンタ14に送信してもよい。
【0081】
上述の実施の形態では、例示的な機能ブロックを示しながら、サーバが提供する各種機能および各種機能の関係性について示した。上述の機能ブロックの境界は、説明の便宜のために任意に決められたものであり、各種機能および各種機能の関係性が適切に実現される限り、上述の機能ブロックとは別の境界が決められてもよい。また、サーバが提供する各種機能は、単一のサーバ装置で実現されてもよいし、複数のサーバ装置の連携によって実現されてもよい。したがって、特定のサーバが特定の機能を提供するということは、特定の機能が単一のサーバ装置で実現される場合と、特定の機能が複数のサーバ装置で実現される場合とを含み、特定の機能が特定のサーバ装置のみによって実現されなければならないことを必ずしも意味しない。
【符号の説明】
【0082】
10…プリンタシステム、12…管理サーバ、14…プリンタ、16…周辺機器、20…位置管理部、22…役割管理部、24…設定管理部、26…印刷管理部、30…エリア情報、32…設定情報、34…印刷情報、36…認証情報、40…第1通信部、42…第2通信部、44…表示操作部、46…印刷機構、48…記憶部、50…制御部、52…設定更新部、54…表示制御部、56…印刷制御部、60…ネットワーク、62…アクセスポイント、64…ロケータ、66…GPS装置、68…ユーザ端末、70…ユーザカード、86…認証情報。