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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
B41J2/01 125
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020149406
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043904
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】重原 吏
(72)【発明者】
【氏名】大西 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138437(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175620(WO,A1)
【文献】特開2014-094495(JP,A)
【文献】特開2002-292845(JP,A)
【文献】特開2019-116028(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138438(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の搬送経路に沿って間隔をあけて複数配置され、各々が異なる色のインクを前記媒体へ吐出するインクジェットヘッドと、
前記媒体を挟んで前記インクジェットヘッドと対向する第1ヒータと、
隣り合う前記インクジェットヘッド間の前記搬送経路に配置され、前記媒体を挟んで互いに対向する1対の第2ヒータと、
を備え、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータは、前記搬送経路に沿って間隔をあけて配置され、前記媒体へ向けて風を送ることによって前記媒体を加熱し、且つ、互いの温度または風量を異ならせることができるように、温度または風量が個別に調整可能になっている印刷装置。
【請求項2】
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータは、前記媒体と対向する対向面を含み、
前記対向面に、前記媒体へ向けて風を送る送風孔が形成される、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータは、前記対向面と前記媒体との間に隙間が生じるように前記送風孔から前記媒体へ向けて風を送る、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
媒体の搬送経路に沿って間隔をあけて複数配置されたインクジェットヘッドから、異なる色のインクを前記媒体へ吐出する吐出工程と、
前記媒体を挟んで前記インクジェットヘッドと対向する第1ヒータによって前記媒体を加熱する第1加熱工程と、
隣り合う前記インクジェットヘッド間の前記搬送経路に配置され、前記媒体を挟んで互いに対向する1対の第2ヒータによって前記媒体を加熱する第2加熱工程と、
を含み、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータは、前記搬送経路に沿って間隔をあけて配置され、前記媒体へ向けて風を送ることによって前記媒体を加熱し、且つ、互いの温度または風量を異ならせることができるように、温度または風量が個別に調整可能になっている印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関し、より詳細にはインクジェット方式で印刷を行う印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビア等の版が不要なインクジェット方式の印刷装置が知られている。インクジェット方式のインクとしては、UVインクまたは水性インクが主流である。UVインクは、ヘッド詰まりの不具合は起こりにくいが、印刷物の臭気の問題およびインク未硬化物の容器内部へのマイグレーション等の問題がある。このため、近年は水性インクの開発が進んでいる。
【0003】
水性インクを乾燥させる方式としては、(1)インクを一色印刷するごとに乾燥させる方式と、(2)CMYKすべてを印刷した後に一度に乾燥させる方式とがある。また、(2)の方式に関連して、特許文献1には、媒体の搬送方向に位置をずらして複数のインクジェットヘッドを配置した印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-117921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記(1)の方式の場合、一色ごとに乾燥させるために色ごとに乾燥ユニットを配置すると、設備が大型化してしまう問題があった。一方、上記(2)場合、乾燥ユニットが1つで済むため設備が小型化できると共に色ずれが発生しにくいというメリットがある。その反面、インクが乾いていない状態で次のインクを印刷するため、色の滲みが発生するという問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、設備の大型化を伴わずに、色の滲みを低減した印刷装置および印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る印刷装置は、媒体の搬送経路に沿って間隔をあけて複数配置され、各々が異なる色のインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記媒体を挟んで前記インクジェットヘッドと対向する第1ヒータと、隣り合う前記インクジェットヘッド間の前記搬送経路に配置され、前記媒体を挟んで互いに対向する1対の第2ヒータと、を備える。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る印刷方法は、媒体の搬送経路に沿って間隔をあけて複数配置されたインクジェットヘッドから、異なる色のインクを前記媒体へ吐出する吐出工程と、前記媒体を挟んで前記インクジェットヘッドと対向する第1ヒータによって前記媒体を加熱する第1加熱工程と、隣り合う前記インクジェットヘッド間の前記搬送経路に配置され、前記媒体を挟んで互いに対向する1対の第2ヒータによって前記媒体を加熱する第2加熱工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、設備の大型化を伴わずに、色の滲みを低減した印刷装置および印刷方法を提供することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の構成例を示す模式図である。
図2図1に示されるインクジェットヘッドが備えるノズルの配列を示す平面図である。
図3図1に示される中間プレートヒータの対向面を示す平面図である。
図4図3に示される中間プレートヒータのA-A断面図である。
図5図3および図4に示される中間プレートヒータを用いたフィルムの加熱状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図1図5に基づいて説明する。ただし、以下の説明は本発明に係る印刷装置の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0012】
〔印刷装置の全体構成〕
まず、図1を参照して、本実施形態に係る印刷装置100の全体構成を説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置100の構成例を示す模式図である。印刷装置100は、フィルム(媒体)Fを一定の速度で搬送しつつ、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。印刷装置100は、ロール状のフィルムFを巻き出して印刷を行い、印刷後のフィルムFをロール状に巻き取るロールtoロール方式を採用する。なお、図中、矢印XはフィルムFの搬送方向(フィルムFの長さ方向)を示し、矢印YはフィルムFの厚み方向を示し、矢印ZはフィルムFの幅方向を示す。
【0013】
本実施形態では、印刷装置100で用いられるインクは主成分が水である水性インクであり、フィルムFはシュリンクフィルム、ストレッチフィルム、または非熱収縮性フィルム等のプラスチックフィルムである。印刷装置100は、厚み方向Yに対向するフィルムFの表面Faおよび裏面Fbのうち、表面Faにインクを吐出して印刷を行う。なお、フィルムFの素材は、プラスチックに限られず、紙、金属等であってもよい。また、インクは、水性インクに限られず、主成分が有機溶剤である溶剤インク等であってもよい。
【0014】
図1に示すように、印刷装置100は、搬送方向XへフィルムFを搬送する搬送機構として、巻出ローラ11と、搬送ローラ12~17と、巻取ローラ18とを備える。これらの各ローラ11~18は、回転可能に支持された円柱形状を有し、フィルムFの搬送経路に沿って配置される。巻出ローラ11から巻き出されたフィルムFは、搬送ローラ12~17を経由し、巻取ローラ18によって巻き取られる。この間に、フィルムFの表面Faへインクを吐出し、吐出したインクを乾燥させることによりインクを定着させる。
【0015】
この印刷装置100は、インクジェットヘッド2K、2C、2M、2Yと、1対の予熱プレートヒータ3と、直下プレートヒータ(第1ヒータ)4と、1対の中間プレートヒータ(第2ヒータ)5と、乾燥ユニット6とを備える。
【0016】
(インクジェットヘッド)
インクジェットヘッド2K、2C、2M、2Y(以下、インクジェットヘッド2K~2Y等と表記する場合がある)は、フィルムFの搬送経路に沿って間隔をあけてこの順番で配置される。インクジェットヘッド2K~2Yは、各々が異なる色のインクをフィルムFへ吐出する。具体的には、インクジェットヘッド2Kは黒のインクを吐出し、インクジェットヘッド2Cはシアンのインクを吐出し、インクジェットヘッド2Mはマゼンタのインクを吐出し、インクジェットヘッド2Yはイエローのインクを吐出する。これにより、インクジェットヘッド2K~2Yは、搬送経路におけるそれぞれ異なる位置において、黒、シアン、マゼンタ、イエローの順番でインクをフィルムFへ吐出する。
【0017】
なお、インクジェットヘッド2K~2Yの配置は、上述した順番に限られず、適宜変更可能である。また、印刷装置100は、インクジェットヘッド2K~2Yとは異なる色のインクを吐出する別のインクジェットヘッドをさらに備えてもよい。
【0018】
インクジェットヘッド2K~2Yは、フィルムFの表面Fa側に、フィルムFの幅方向Zと略平行になるように配置される。インクジェットヘッド2K~2Yは、フィルムFとの対向面2aに該フィルムFの幅方向Zに沿ってノズル21が複数配置されたラインヘッドである(図2参照)。インクジェットヘッド2K~2Yは、各ノズル21からフィルムFの表面Faへインクを吐出する。ラインヘッド型のインクジェットヘッド2K~2Yを採用することにより、インクジェットヘッド2K~2YのフィルムFの幅方向Zの移動が不要となる。このため、印刷装置100は、高速で印刷を行うことができる。
【0019】
(予熱プレートヒータ)
1対の予熱プレートヒータ3は、インクジェットヘッドの2Kの上流側に配置され、フィルムFを挟んで互いに対向する1対のフラットヒータである。1対の予熱プレートヒータ3は、インクジェットヘッド2Kによってインクが吐出される前にフィルムFを予め加熱する。
【0020】
予熱プレートヒータ3は熱源を内蔵しており、この熱源によってフィルムFとの対向面3aが加熱される。これにより、1対の予熱プレートヒータ3は、対向面3aの各々からの輻射熱によってフィルムFの表面Faおよび裏面Fbを加熱する。また、予熱プレートヒータ3にはダクト71が接続されており、ダクト71から供給される温風AをフィルムFへ向けて送る送風孔が対向面3aに形成される。1対の予熱プレートヒータ3は、輻射熱に加えて、対向面3aの各々からフィルムFへ温風Aを送ることによって、フィルムFの表面Faおよび裏面Fbを加熱する。この予熱プレートヒータ3によって温まったフィルムFにインクが印刷されるため、インクが乾きやすくなる。また、後述する中間プレートヒータ5によっても同様の効果が得られ、次に印刷されるインクが乾きやすくなる。
【0021】
なお、予熱プレートヒータ3は、熱源が内蔵されておらず、ダクト71から供給される温風AをフィルムFへ向けて送る構成であってもよい。
【0022】
(直下プレートヒータ)
直下プレートヒータ4は、インクジェットヘッド2K~2Yの各々の直下に配置され、フィルムFを挟んでインクジェットヘッド2K~2Yと対向するフラットヒータである。本実施形態では、4つのインクジェットヘッド2K~2Yの各々の直下に1つの直下プレートヒータ4が配置されるように、4つの直下プレートヒータ4が搬送経路に配置される。直下プレートヒータ4は、フィルムFの裏面Fb側に配置され、フィルムFの裏面Fbを加熱する。これにより、インクジェットヘッド2K~2YにおいてフィルムFの表面Faに着弾した瞬間にインクが加熱されるため、効率よくインクを加熱することができる。
【0023】
直下プレートヒータ4は、熱源を内蔵しており、この熱源によってフィルムFとの対向面4aが加熱される。これにより、直下プレートヒータ4は、対向面4aからの輻射熱によってフィルムFの裏面Fbを加熱する。また、直下プレートヒータ4にはダクト72が接続されており、ダクト72から供給される温風AをフィルムFへ向けて送る送風孔が対向面4aに形成される。直下プレートヒータ4は、輻射熱に加えて、対向面4aからフィルムFへ温風Aを送ることによって、フィルムFの裏面Fbを加熱する。
【0024】
(中間プレートヒータ)
1対の中間プレートヒータ5は、隣り合うインクジェットヘッド2K~2Y間の搬送経路に配置され、フィルムFを挟んで互いに対向する1対のフラットヒータである。一対の中間プレートヒータ5の各々は、フィルムFの表面Fa側および裏面Fb側に配置され、フィルムFの表面Faおよび裏面Fbの両面を加熱する。
【0025】
本実施形態では、インクジェットヘッド2Kとインクジェットヘッド2Cとの間、インクジェットヘッド2Cとインクジェットヘッド2Mとの間、およびインクジェットヘッド2Mとインクジェットヘッド2Yとの間の搬送経路の各々に、一対の中間プレートヒータ5が2つずつ配置される。これらの中間プレートヒータによって、隣り合うインクジェットヘッド2K~2Y間の搬送経路の各々においてフィルムFに印刷されたインクが加熱される。なお、隣り合うインクジェットヘッド2K~2Y間の搬送経路に配置される一対の中間プレートヒータ5の数は2つに限られない。ただし、設備の小型化の観点から、隣り合うインクジェットヘッド2K~2Y間の搬送経路に配置される一対の中間プレートヒータ5の数は2つ以下であることが好ましい。
【0026】
ここで、インクが乾いていない状態で次のインクを吐出した場合、インク同士の滲みが発生する。特に、本実施形態のように、水性インクを用いてプラスチックフィルムに印刷する場合、インク同士の滲みが発生しやすい。
【0027】
そこで、印刷装置100では、直下プレートヒータ4と、その下流側に配置された一対の中間プレートヒータ5とによってフィルムFに着弾したインクを加熱し、インクを半乾燥させる。半乾燥とは、インク同士が滲まない程度に、少なくともインクの表面を乾燥(硬化)させた状態をいう。これにより、次の異なる色のインクがフィルムFに着弾する際、先に印刷されたインクが半乾燥した状態になっているため、異なる色のインク同士の滲みを低減することができる。
【0028】
なお、上述の通り、直下プレートヒータ4は、フィルムFの表面Faに着弾した瞬間にインクを加熱するため、より効率的にインクを半乾燥させることが可能となる。このため、直下プレートヒータ4を配置することにより、その下流側に配置される1対の中間プレートヒータ5を比較的小型に設計してもインクを半乾燥させることが可能となる。したがって、直下プレートヒータ4を配置することにより、印刷装置100を小型化することができる。
【0029】
中間プレートヒータ5は熱源を内蔵しており、この熱源によってフィルムFとの対向面5aが加熱される。これにより、1対の中間プレートヒータ5は、対向面5aの各々からの輻射熱によってフィルムFの表面Faおよび裏面Fbを加熱する。また、中間プレートヒータ5にはダクト73が接続されており、ダクト73から供給される温風AをフィルムFへ向けて送る送風孔が対向面5aに形成される(図3参照)。1対の中間プレートヒータ5は、輻射熱に加えて、対向面5aの各々からフィルムFへ温風Aを送ることによって、フィルムFの表面Faおよび裏面Fbを加熱する。
【0030】
(乾燥ユニット)
乾燥ユニット6は、インクジェットヘッド2Yの下流側に配置される乾燥チャンバである。乾燥ユニット6は、インクジェットヘッド2K~2Yによって各色のインクが吐出された後にフィルムFを加熱する。これにより、フィルムFに印刷された各色のインクが完全に乾燥(以下、全乾燥と称する場合がある)し、インクがフィルムFに定着する。
【0031】
乾燥ユニット6の内部には、搬送経路に沿って温風ヒータ61が複数配置される。温風ヒータ61は表面Fa側に配置され、フィルムFの表面Faへ温風を吹きかける。吹きかけられた温風および乾燥ユニット6内の熱(昇温された空気)によってインクおよびフィルムFが加熱され、フィルムFの表面Faに印刷された各色のインクを全乾燥させることでフィルムFにインクが定着する。
【0032】
〔インクジェットヘッドの構成〕
次に、図2を参照して、印刷装置100が備えるインクジェットヘッド2K~2Yの構成を説明する。インクジェットヘッド2K~2Yは、基本的に同一構成である。このため、以下では、インクジェットヘッド2Kの構成例についてのみ説明し、インクジェットヘッド2C~2Yの構成については説明を省略する。
【0033】
図2は、図1に示されるインクジェットヘッド2Kが備えるノズル21の配列を示す平面図である。図2に示すように、インクジェットヘッド2Kは、フィルムFの表面Faと対向する対向面2aに、インクを吐出する複数のノズル21がフィルムFの幅方向Zに並んだノズル列を有する。図示の例では、インクジェットヘッド2Kは、互いに平行に配置される3列のノズル列を有する。ノズル列の各々は、複数のノズル21が千鳥状に配置されるように、フィルムFの幅方向Zに半ピッチずれて配置される。このように、複数のノズル21を千鳥状に配置することにより、印刷装置100の印刷速度が向上する。また、印刷装置100のドットピッチを細かくすることが可能となり、印刷精度が向上する。なお、インクジェットヘッド2Kが有するノズル列は、3列に限られず、2列であってもよく、4列以上であってもよい。
【0034】
〔プレートヒータの詳細〕
次に、図3から図5を参照して、印刷装置100が備える予熱プレートヒータ3、直下プレートヒータ4および中間プレートヒータ5の構成を説明する。予熱プレートヒータ3、直下プレートヒータ4および中間プレートヒータ5は、基本的に同一構成である。このため、以下では、中間プレートヒータ5の構成例についてのみ説明し、予熱プレートヒータ3および直下プレートヒータ4の構成については説明を省略する。
【0035】
図3は、図1に示される中間プレートヒータ5の対向面5aを示す平面図である。図4は、図3に示される中間プレートヒータ5のA-A断面図である。図3に示すように、中間プレートヒータ5は、フィルムFと対向する対向面5aが長方形であり、その短辺が搬送方向Xと平行となり、その長辺がフィルムFの幅方向Zと平行となる向きで搬送経路に配置される。
【0036】
中間プレートヒータ5の対向面5aには、フィルムFへ向けて温風Aを送る送風孔51が複数形成される。図示の例では、中間プレートヒータ5は、搬送方向Xに沿って6つの送風孔51が並んだ送風孔列を有する。これらの送風孔列は、フィルムFの幅方向Zにおいて所定の間隔をあけて、互いに平行となるように3列形成される。
【0037】
また、図4に示すように、中間プレートヒータ5の内部には、ダクト73から供給される温風Aを送風孔51へ導く流路52が形成される。流路52の一端52aはダクト73に接続され、一端52aから流路52へ温風Aが流入する。一方、流路52の他端52bにはキャップが嵌められ、他端52bから温風Aが漏出しないようになっている。図示の例では、フィルムFの幅方向Zに沿って6つの流路52が互いに平行に形成され、流路52の各々から3つの送風孔51が分枝している。
【0038】
中間プレートヒータ5は、対向面5aからの輻射熱によってフィルムFを一様に加熱する。このため、フィルムFに温風を直接吹き付けてインクを乾燥させる構成に比べて、フィルムFに印刷されたインクが風の影響を受けて流動することを抑えることができる。
【0039】
また、中間プレートヒータ5は、上述した輻射熱に加えて、送風孔51からフィルムFへ向けて微量の温風Aを送る。これにより、フィルムFに印刷されたインクをより効率的に加熱する。
【0040】
図5は、図3および図4に示される中間プレートヒータ5を用いたフィルムFの加熱状態を示す模式図である。図5に示すように、フィルムFを挟んで互いに対向する一対の中間プレートヒータ5は、フィルムFと対向する対向面5aの各々からフィルムFへ向けて温風Aを送る。この時、一対の中間プレートヒータ5は、フィルムFに印刷されたインクが流動しない程度に温風Aの風量が調整される。このため、フィルムFに印刷されたインクを流動させずに温風Aによって加熱することができる。
【0041】
また、一対の中間プレートヒータの各々は、対向面5aの各々とフィルムFとの間に隙間が生じるように熱風Aの風量が調整される。例えば、フィルムFの表面Faと該表面Fa側に位置する対向面5aとの間に隙間D1が生じ、フィルムFの裏面Fbと該裏面Fb側に位置する対向面5aとの間に隙間D2が生じるように、熱風Aの風量が調整される。これにより、対向面5aの各々とフィルムFとが接触しないフローティング乾燥が可能となり、対向面5aとフィルムFとの接触によるフィルムFの損傷を防ぐことができる。
【0042】
隙間D1および隙間D2は、何れも1mm程度であることが好ましい。隙間D1および隙間D2が大きすぎるとフィルムFの加熱効率が低下し、隙間D1および隙間D2が小さすぎるとフィルムFがバタつく、またはフィルムFが熱により悪影響を受ける等の不具合が生じる。そのため、隙間D1および隙間D2を何れも1mm程度に設定することにより、上述した不具合を抑えつつ、フィルムFを効率的に加熱することができる。
【0043】
なお、印刷装置100は、予熱プレートヒータ3、直下プレートヒータ4および中間プレートヒータ5を昇降可能に支持する昇降機構を備えていてもよい。昇降機構としては、例えばモータにより駆動される電動シリンダ、油圧により駆動される油圧シリンダ等が挙げられる。これにより、インクの種類、フィルムFの厚みおよび素材等に応じて、予熱プレートヒータ3、直下プレートヒータ4および中間プレートヒータ5の高さを容易に調整することができる。
【0044】
また、予熱プレートヒータ3、直下プレートヒータ4および中間プレートヒータ5の各々において、加熱温度および温風Aの風量等を異ならせてもよい。これにより、インクの種類、フィルムFの厚みおよび素材等に応じて最適な加熱条件を設定することができる。
【0045】
なお、予熱プレートヒータ3、直下プレートヒータ4または中間プレートヒータ5に代えて、プレートヒータ以外のヒータを採用することも可能である。ただし、インクの流動抑制および設備の小型化等の観点から、プレートヒータを採用することが特に好ましい。
【0046】
〔印刷装置の動作〕
次に、図1を参照して、印刷装置100の動作例(印刷方法)を説明する。なお、印刷装置100では、予熱プレートヒータ3、直下プレートヒータ4および中間プレートヒータ5は、各々の対向面3a、4a、5aからフィルムFへ向けて温風Aを送ることにより、フローティング状態でフィルムFを加熱するようになっている。
【0047】
フィルムFに印刷を行う場合、印刷装置100は、搬送機構を駆動させ、搬送方向Xへ向けてフィルムFを一定速度で搬送する。巻出ローラ11から巻き出されたフィルムFは、まず、巻出ローラ11から巻取ローラ18までの搬送経路において最も上流側にある1対の予熱プレートヒータ3を通過する。この時、1対の予熱プレートヒータ3からの輻射熱および温風Aによって、フィルムFの両面が加熱される。これにより、1対の予熱プレートヒータ3によって、フィルムFの表面Faおよび裏面Fbが予熱される。
【0048】
次に、フィルムFはインクジェットヘッド2Kを通過し、表面Faに黒のインクが着弾する(吐出工程)。この時、直下プレートヒータ4からの輻射熱および温風AによってフィルムFの裏面Fbが加熱される(第1加熱工程)。このため、黒のインクは、フィルムFの表面Faに着弾した瞬間に加熱される。
【0049】
次に、フィルムFは、インクジェットヘッド2Kの下流側に2つ配置された1対の中間プレートヒータ5を通過する(第2加熱工程)。この時、1対の中間プレートヒータ5からの輻射熱および温風Aによって、フィルムFの両面が加熱される。これにより、インクジェットヘッド2KおいてフィルムFに着弾した黒のインクは、流動することなく半乾燥する。
【0050】
次に、フィルムFはインクジェットヘッド2Cを通過し、表面Faにシアンのインクが着弾する(吐出工程)。この時、先のインクジェットヘッド2Kにおいて着弾した黒のインクが半乾燥しているため、インク同士の滲みが低減される。また、直下プレートヒータ4からの輻射熱および温風Aによって、フィルムFの裏面Fbが加熱される(第1加熱工程)。このため、シアンのインクはフィルムFの表面Faに着弾した瞬間に加熱される。
【0051】
次に、フィルムFは、インクジェットヘッド2Cの下流側に2つ配置された1対の中間プレートヒータ5を通過する(第2加熱工程)。この時、1対の中間プレートヒータ5からの輻射熱および温風Aによって、フィルムFの両面が加熱される。これにより、インクジェットヘッド2CにおいてフィルムFに着弾したシアンのインクは、流動することなく半乾燥する。
【0052】
次に、フィルムFはインクジェットヘッド2Mへ搬送され、表面Faにマゼンタのインクが着弾する(吐出工程)。この時、先のインクジェットヘッド2Cにおいて着弾したシアンのインクが半乾燥しているため、インク同士の滲みが低減される。また、直下プレートヒータ4からの輻射熱および温風Aによって、フィルムFの裏面Fbが加熱される(第1加熱工程)。このため、マゼンタのインクはフィルムFの表面Faに着弾した瞬間に加熱される。
【0053】
次に、フィルムFは、インクジェットヘッド2Mの下流側に2つ配置された1対の中間プレートヒータ5を通過する(第2加熱工程)。この時、1対の中間プレートヒータ5からの輻射熱および温風AによってフィルムFの両面が加熱される。これにより、インクジェットヘッド2MにおいてフィルムFに着弾したマゼンタのインクは、流動することなく半乾燥する。
【0054】
次に、フィルムFはインクジェットヘッド2Yへ搬送され、表面Faにイエローのインクが着弾する(吐出工程)。この時、先のインクジェットヘッド2Mにおいて着弾したマゼンタのインクが半乾燥しているため、インク同士の滲みが低減される。また、直下プレートヒータ4からの輻射熱および温風AによってフィルムFの裏面Fbが加熱される(第1加熱工程)。このため、イエローのインクはフィルムFの表面Faに着弾した瞬間に加熱される。
【0055】
次に、すべてのインクが印刷されたフィルムFは、乾燥ユニット6を通過する。乾燥ユニット6の内部に配置された複数の温風ヒータ61の各々から吹きかけられた温風および乾燥ユニット6内の昇温された空気によってインクおよびフィルムFが加熱される。これにより、フィルムFの表面Faに印刷された各色のインクを全乾燥させることでフィルムFにインクが定着する。
【0056】
インクが定着したフィルムFは、巻取ローラ18によって巻き取られ、印刷装置100の一連の動作が終了する。
【0057】
〔印刷装置の効果〕
このように、本実施形態に係る印刷装置100は、フィルムFの搬送経路に沿って間隔をあけて複数配置され、各々が異なる色のインクをフィルムFへ吐出するインクジェットヘッド2K~2Yと、フィルムFを挟んでインクジェットヘッド2K~2Yと対向する直下プレートヒータ4と、隣り合うインクジェットヘッド2K~2Y間の搬送経路に配置され、フィルムFを挟んで互いに対向する1対の中間プレートヒータ5とを備える。
【0058】
印刷装置100では、直下プレートヒータ4と、その下流側に配置された一対の中間プレートヒータ5とによって、フィルムFに着弾したインクを流動させることなく加熱する。このため、次のインクが着弾する時には先に着弾したインクが半乾燥しているため、インク同士の滲みを低減することができる。したがって、従来のCMYKすべてを印刷した後に一度に乾燥させる方式に比べて、色の滲みを低減することができる。
【0059】
また、印刷装置100では、各色を印刷した後に1つの乾燥ユニット6を用いて全乾燥させる構造にすることができる。このため、従来の一色ごとにインクを乾燥(全乾燥)させる方式のように複数の乾燥ユニットを配置する必要性がなく、印刷装置100を比較的小型に設計することができる。また、インクジェットヘッド2K~2Y間に乾燥ユニットを配置するためのスペースを確保する必要性がないため、設備の小型化だけでなく色間の印刷ずれが発生しにくく、高精度の印刷が可能となる。さらに、乾燥に使用される消費エネルギーを低減することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0060】
また、印刷装置100では、直下プレートヒータ4および一対の中間プレートヒータ5を用いることにより、輻射熱によってフィルムFを加熱する。このため、フィルムFに温風を直接吹き付けてインクを乾燥させる構成に比べて、着弾後のインクが風の影響を受けて流動することを防止することができる。
【0061】
したがって、本実施形態によれば、設備の大型化を伴わずに、色の滲みを低減した印刷装置100を実現することができる。
【0062】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
2K、2C、2M、2Y インクジェットヘッド
3 予熱プレートヒータ
4 直下プレートヒータ(第1ヒータ)
4a 対向面
5 中間プレートヒータ(第2ヒータ)
5a 対向面
21 ノズル
51 送風孔
100 印刷装置
D1 隙間
D2 隙間
F フィルム(媒体)
図1
図2
図3
図4
図5