(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/06 20060101AFI20240911BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240911BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240911BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01F17/06 D
H01F17/06 A
H01F17/06 F
H01F27/00 160
H01F27/28 104
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2020149796
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019172334
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】寺内 直也
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆幸
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-014720(JP,A)
【文献】特開2000-323336(JP,A)
【文献】特開2019-153644(JP,A)
【文献】特開2019-041096(JP,A)
【文献】特開2014-175349(JP,A)
【文献】特開平11-040426(JP,A)
【文献】特開平11-307346(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-17/08
H01F 27/00
H01F 27/28-27/29
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に対向する実装面、前記実装面と対向する上面、及び前記実装面と前記上面とを接続する端面を有する基体と、
前記基体の前記実装面に取り付けられた第1外部電極と、
前記基体の前記実装面に前記第1外部電極から前記端面と垂直な長さ方向において離間して取り付けられた第2外部電極と、
前記基体内に設けられ、一端が前記第1外部電極に電気的に接続され他端が前記第2外部電極に電気的に接続されており、前記実装面に垂直な厚さ方向から視た平面視において前記第1外部電極から前記第2外部電極に向かって直線状に延びる内部導体と、
を備え、
前記厚さ方向及び前記長さ方向に垂直な幅方向から見た正面視において、前記内部導体の軸線上で前記実装面から最も離れた位置と前記実装面との距離が、前記上面と前記実装面との間隔の2分の1よりも小さ
く、
前記正面視において、前記基体は、前記内部導体と前記実装面とに囲まれた第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とに区画され、
前記第1領域の面積は、前記第2領域の面積よりも小さく、
前記第1領域は、前記第2領域よりも飽和磁束密度が高い材料から形成され、
前記内部導体の前記一端及び前記他端はいずれも、前記実装面から前記基体の外部に露出している、
インダクタ。
【請求項2】
前記基体は、前記実装面及び前記上面と平行に延びており前記実装面及び前記上面から等距離にある中間面によって前記中間面と前記上面との間にある上部領域と前記中間面と前記実装面との間にある下部領域とに区画され、
前記内部導体は、その全体が前記下部領域に配置されている、
請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記第1外部電極は、前記基体に対して前記実装面のみにおいて取り付けられている、請求項1
又は2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記第2外部電極は、前記基体に対して前記実装面のみにおいて取り付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記内部導体は、前記第1外部電極の材料よりも高い電気伝導率を有する導電性材料から形成される、
請求項1~
4のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記基体は、金属磁性粒子を含む、
請求項1~
5のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項7】
前記内部導体は、第1内部導体パターンと、前記基体内に前記
第1内部導体パターンから離間して配置される第2内部導体パターンと、を有し、
前記第1内部導体パターン及び前記
第2内部導体パターンの各々は、前記実装面に垂直な厚さ方向から視た平面視において前記第1外部電極から前記第2外部電極に向かって直線状に延び、一端が前記実装面から露出して前記第1外部電極に接続され他端が前記実装面から露出して前記第2外部電極に接続される、
請求項1~
6のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のインダクタを備える回路基板。
【請求項9】
請求項
8に記載の回路基板を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10-144526号公報(特許文献1)に開示されているように、フェライト材料による磁性基体と、その磁性基体内に設けられた直方体形状の内部導体と、当該内部導体の一端及び他端にそれぞれ接続された2つの外部電極と、を有するインダクタが従来から知られている。この内部導体は、平面視において一方の外部電極から他方の外部電極に直線状に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電装部品を中心として機器や回路の大電流化が進んでいるため、インダクタの磁性基体の材料として大電流が流れても磁気飽和が発生しにくい軟磁性金属材料が使われるようになってきている。しかしながら、軟磁性金属材料から作製された磁性基体においては、フェライト材料から作製された磁性基体に比べて渦電流が発生しやすく、渦電流により発生するジュール熱により温度上昇が起きやすい。
【0005】
また、インダクタに大電流が流れると、インダクタにおける電流経路からの発熱が大きくなる。インダクタの電流経路において発生した熱の多くは、当該インダクタが搭載されるプリント基板への熱伝導により放熱される。しかしながら、インダクタに大電流が流れる場合には、プリント基板への熱伝導による放熱だけではインダクタで発生した熱が十分に放熱されないことがある。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決又は緩和することである。本発明のより具体的な目的の一つは、インダクタにおける放熱特性を改善することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるインダクタは、回路基板に対向する実装面、前記実装面と対向する上面、及び前記実装面と前記上面とを接続する端面を有する基体と、前記基体の前記実装面に取り付けられた第1外部電極と、前記基体の前記実装面に前記第1外部電極から前記端面と垂直な長さ方向において離間して取り付けられた第2外部電極と、前記基体内に設けられ、一端が前記第1外部電極に電気的に接続され他端が前記第2外部電極に電気的に接続されており、前記実装面に垂直な厚さ方向から視た平面視において前記第1外部電極から前記第2外部電極に向かって直線状に延びる内部導体と、を備える。一態様において、前記厚さ方向及び前記長さ方向に垂直な幅方向から見た正面視において、前記内部導体の軸線上で前記実装面から最も離れた位置と前記実装面との距離が、前記上面と前記実装面との間隔の2分の1よりも小さい。
【0008】
本発明の一態様において、前記基体は、前記実装面及び前記上面と平行に延びており前記実装面及び前記上面から等距離にある中間面によって前記中間面と前記上面との間にある上部領域と下部領域とに区画されている。本発明の一態様において、前記内部導体は、
その全体が前記下部領域に配置されている。
【0009】
本発明の一態様において、前記基体は、前記正面視において、前記内部導体と前記実装面とに囲まれた第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とに区画され、前記第1領域は、前記第2領域よりも飽和磁束密度が高い材料から形成される。
【0010】
本発明の一態様において、前記第1外部電極は、前記基体に対して前記実装面のみにおいて取り付けられている。
【0011】
本発明の一態様において、前記第2外部電極は、前記基体に対して前記実装面のみにおいて取り付けられている。
【0012】
本発明の一態様において、前記内部導体は、前記第1外部電極の材料よりも高い電気伝導率を有する導電性材料から形成される。
【0013】
本発明の一態様において、前記基体は、金属磁性粒子を含む。
【0014】
本発明の一態様において、前記内部導体は、第1内部導体パターンと、前記基体内に前記内部導体パターンから離間して配置される第2内部導体パターンと、を有し、第1内部導体パターン及び前記内部導体パターンの各々は、前記実装面に垂直な厚さ方向から視た平面視において前記第1外部電極から前記第2外部電極に向かって直線状に延び、一端が前記実装面から露出して前記第1外部電極に接続され他端が前記実装面から露出して前記第2外部電極に接続される。
【0015】
本発明の一実施形態は、上記の何れかのインダクタを備える回路基板に関する。
【0016】
本発明の一実施形態は、上記の回路基板を備える電子機器に関する。
【発明の効果】
【0017】
本明細書の開示によれば、インダクタにおける放熱特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】回路基板に実装された本発明の一実施形態によるインダクタの斜視図である。
【
図6】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図9】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図10】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図11】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図12】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図13】本発明の別の実施形態によるインダクタの断面図である。
【
図14】本発明の別の実施形態によるインダクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0020】
図1から
図5を参照して本発明の一実施形態に係るインダクタ1について説明する。まずは
図1~
図3を参照してインダクタ1の概略について説明する。
図1は本発明の一実施形態によるインダクタ1の斜視図であり、
図2はインダクタ1の正面図であり、
図3はインダクタ1の平面図である。図示のように、インダクタ1は、基体10と、この基体10内に設けられた内部導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。
【0021】
各図には、互いに直交するL軸、W軸、及びT軸が記載されている。本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、インダクタ1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1の「L」方向、「W」方向、及び「T」方向とする。この方向の定め方に従えば、外部電極22は、長さ方向(L方向)において外部電極21から離間した位置に配置されている。
【0022】
インダクタ1は、例えば、大電流が流れる大電流回路において用いられる。インダクタ1は、信号回路や高周波回路において用いられてもよい。インダクタ1は、ノイズ対策用のビーズインダクタとして用いられてもよい。
【0023】
インダクタ1は、回路基板2に実装されている。回路基板2の実装基板には、2つのランド3a、3bが設けられている。外部電極21は、インダクタ1を回路基板2に実装する際にランド3aに対向するように配置されており、外部電極22は、インダクタ1を回路基板2に実装する際に回路基板2のランド3bに対向可能に配置されている。インダクタ1は、外部電極21とランド3a及び外部電極22とランド3bとをそれぞれはんだにより接合することで当該回路基板2に実装されてもよい。回路基板2には、インダクタ1以外にも様々な電子部品が実装され得る。回路基板2は、様々な電子機器に実装され得る。回路基板2が実装され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。インダクタ1は、回路基板2の実装基板の内部に埋め込まれる内蔵部品であってもよい。
【0024】
基体10は、磁性材料から直方体形状に形成されている。本発明の一実施形態において、基体10は、長さ寸法(L方向の寸法)が0.4mm~10mm、幅寸法(W方向の寸法)が0.2~10mm、高さ寸法(T方向の寸法)が0.2~10mmとなるように形成される。本発明は、比較的小型のインダクタから比較的大型のインダクタまで幅広く適用され得る。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」というときには、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。
【0025】
基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第1の主面10aと第2の主面10bとは互いに対向し、第1の端面10cと第2の端面10dとは互いに対向し、第1の側面10eと第2の側面10fとは互いに対向している。第1端面10c及び第2端面10dの各々は、第1主面10aと第2主面10bとを接続し、また、第1側面10eと第2側面10fとを接続している。回路基板2を基準としたとき第1の主面10aは基体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。インダクタ1は、第2の主面10bが回路基板2と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」又は「実装面10b」と呼ぶこともある。インダクタ1の上下方向に言及する際には、
図1の上下方向を基準とする。インダクタ1又は基体10の厚さ方向は、上面10a及び実装面10bの少なくとも一方に垂直な方向とすることができる。インダクタ1又は基体10の長さ方向は、第1端面10c及び第2端面10dの少なくとも一方に垂直な方向とすることができる。インダクタ1又は基体10の幅方向は、第1側面10e及び第2側面10fの少なくとも一方に垂直な方向とすることができる。インダクタ1又は基体10幅方向は、インダクタ1又は基体10の厚さ方向及び長さ方向と垂直な方向とすることができる。
【0026】
図示の実施形態において、外部電極21は、基体10の実装面10b、第1の端面10c、及び上面10aに接するように設けられている。外部電極22は、基体10の実装面10b、第2の端面10d、及び上面10aに接するように設けられている。外部電極21及び外部電極22の少なくとも一方は、実装面10bのみに接するように基体10に設けられてもよい。外部電極21、22がいずれも実装面10bのみに接するように設けられたインダクタ1が
図15に示されている。外部電極21、22の形状及び配置は、本明細書において明示的に説明されたものには限られない。
【0027】
基体10は、磁性材料から作製される。基体10用の磁性材料は、複数の金属磁性粒子を含んでも良い。基体10用の磁性材料に含まれる金属磁性粒子は、例えば、(1)Fe、Ni等の金属粒子、(2)Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Ni合金等の結晶合金粒子、(3)Fe-Si-Cr-B-C合金、Fe-Si-Cr-B合金等の非晶質合金粒子、または(4)これらが混合された混合粒子である。コア10に含まれる金属磁性粒子の組成は、前記のものに限られない。例えば、コア10に含まれる金属磁性粒子は、Co-Nb-Zr合金、Fe-Zr-Cu-B合金、Fe-Si-B合金、Fe-Co-Zr-Cu-B合金、Ni-Si-B合金、又はFe-AL-Cr合金であってもよい。基体10に含まれるFe系の金属磁性粒子は、Feを80wt%以上含有してもよい。金属磁性粒子の各々の表面には、絶縁膜が形成されてもよい。この絶縁膜は、上記の金属又は合金が酸化してできる酸化膜であってもよい。金属磁性粒子の各々の表面に設けられる絶縁膜は、例えばゾルゲル法によりコーティングされた酸化ケイ素膜であってもよい。
【0028】
一実施形態において、金属磁性粒子は、1.5~20μmの平均粒径を有する。基体10に含まれる金属磁性粒子の平均粒径は、1.5μmより小さくてもよいし20μmより大きくても良い。基体10は、互いに平均粒径の異なる2種類以上の金属磁性粒子を含んでもよい。例えば、複合磁性材料用の金属磁性粒子は、第1平均粒径を有する第1の金属磁性粒子と、この第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子と、を含んでもよい。
【0029】
基体10は、金属磁性粒子と結合材とを含む複合磁性材料から形成されてもよい。基体10が複合磁性材料から形成される場合、当該複合磁性材料に含まれる結合材は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂である。結合剤として、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。また、結合剤としては、金属磁性粒子の各々の表面の酸化膜、または酸化膜とは別の酸化物でもよい。金属磁性粒子同士は、これらの酸化物により結合されてもよい。
【0030】
内部導体25は、基体10内において外部電極21と外部電極22とを電気的に接続するように設けられている。内部導体25は、複数の内部導体パターンを有していてもよいし、単一の内部導体パターンのみを有していてもよい。図示の実施形態において、内部導体25は、6つの内部導体パターン25a~25fを有している。内部導体パターン25aは、その一端及び他端が実装面10bから基体10の外側に向かって露出しており、当該一端において外部電極21と接続され、当該他端において外部電極22と接続されている。内部導体25のうち外部電極21と接する端面は、インダクタ1を回路基板2に実装する際にランド3aと対向し、内部導体25のうち外部電極22と接する端面は、インダクタ1を回路基板2に実装する際にランド3bに対向するように設けられる。内部導体25b~25fは、内部導体25aと同じ又は相似形の形状を有する。内部導体パターン25a~25fは、基体10内において互いから離間して配置されている。このように、内部導体25a~25fは、基体10内に、外部電極21と外部電極22との間に並列に配置されている。内部導体パターン25a~25fの各々は、隣接する内部導体パターンと接続されていてもよい。例えば、内部導体パターン25bの一部分又は全体は、内部導体パターン25a及び内部導体パターン25cの少なくとも一方を基体10内において接続されていてもよい。
【0031】
内部導体パターン25aは、
図3に示されているように、平面視において(T軸から見た視点において)外部電極21から第2外部電極22に向かって直線状に延びている。つまり、内部導体パターン25aは、平面視したときに基体10内で互いに対向して配置される部分を有していない。本明細書においては、内部導体パターン25aが基体10内において平面視で互いに対向する部分を有しないときに、当該内部導体パターン25aは、外部電極21から外部電極22に向かって直線状に延びるという。内部導体パターン25aは、外部電極21から第2外部電極22に向かって引いた直線上に配置されていてもよい。内部導体パターン25b~25fも、内部導体パターン25aと同様に、平面視において(T軸から見た視点において)外部電極21から第2外部電極22に向かって直線状に延びている。
【0032】
次に、
図4をさらに参照して、積層プロセスで作成されるインダクタ1の積層構造について説明する。
図4には、インダクタ1の分解図が示されている。
図4においては、説明の便宜のために、外部電極21,22の図示が省略されている。
図4に示すように、基体10は、磁性体層11a~11f、カバー層12、及びカバー層13を備える。磁性体層11a~11f、カバー層12、及びカバー層13の各々は、磁性材料から作製される。基体10は、W軸方向の正側から負側に向かって、カバー層12、磁性体層11a~11f、及びカバー層13の順に積層されている。カバー層12,13はそれぞれ複数の磁性体層を有していても良い。インダクタ1は、積層プロセス以外の方法で作成されてもよい。例えば、インダクタ1は、薄膜プロセス又は圧縮成形プロセスにより作成されてもよい。
【0033】
磁性体層11a~11fの一方の表面には内部導体パターン25a~25fがそれぞれ設けられている。図示の実施形態では、磁性体層11a~11fのW軸方向と交わる一対の表面のうちW軸方向の負側にある表面に、内部導体パターン25a~25fが設けられている。内部導体パターン25a~25fは、例えば導電性に優れた金属又は合金から成る導電性ペーストをスクリーン印刷法で印刷することにより形成される。この磁性体層11a~11fの表面のうち内部導体パターン25a~25fが形成される面がコイル形成面の例である。この導電性ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。内部導体パターン25a~25f、スクリーン印刷法以外の方法、例えば、スパッタ法、インクジェット法、又はこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。一実施形態において、内部導体パターン25a~25fは、外部電極21及び外部電極22よりも電気伝導率が高い材料から形成される。
【0034】
次に、
図5をさらに参照して、内部導体パターン25aについて説明する。
図5は、インダクタ1のX-X線断面図である。インダクタ1のX-X線断面は、LT平面に平行で内部導体パターン25aを通過する切断面で切断した基体10の断面を示す。
図5は、W軸方向から(つまり、幅方向から)の正面視において内部導体パターン25aが見えるように基体10を透過した図を示していると考えてもよい。内部導体パターン25aに関する説明は、文脈上可能な限り、内部導体パターン25b~25fにも当てはまる。つまり、以下では、内部導体パターン25aを例にして、内部導体パターン25a~25fについての説明を行う。
【0035】
基体10は、上面10a及び実装面10bに平行に延び、上面10a及び実装面10bから等距離にある中間面Bによって上部領域と下部領域とに分けられる。すなわち、基体10は、中間面Bによって、中間面Bと上面10aとの間にある上部領域と、当該中間面Bと実装面10bとの間にある下部領域とに区画される。この定義から明らかなように、上部領域に含まれる任意の位置において、上面10aからの距離は実装面10bからの距離よりも小さく、下部領域に含まれる任意の位置において、上面10aからの距離は実装面10bからの距離よりも大きい。
【0036】
図示のように、内部導体パターン25aは、外部電極21から外部電極22へ延びる軸線Aに沿って外部電極21から外部電極22まで延びている。内部導体パターン25aは、その下端が実装面10bから露出しており当該一端からT軸の正方向及びL軸の正方向に延びる第1部分25a1と、その下端が実装面10bから露出しており当該一端からT軸の正方向及びL軸の負方向に延びる第2部分25a2と、第1部分25a1の上端と第2部分25a2の上端とを接続する第3部分25a3と、を有する。第1部分25a1の下端が外部電極21に接続され、第2部分25a2の下端が外部電極22に接続される。図示の実施形態において、第3部分25a3は、上面10aと平行に延びている。
【0037】
内部導体パターン25aは、軸線Aと実装面10bとの間において外部電極21から外部電極22まで軸線Aと平行に延びる内周面25Xと、軸線Aと上面10aとの間において外部電極21から外部電極22まで軸線Aと平行に延びる外周面25Yと、を有する。内部導体パターン25aの軸線Aは、内周面25Xを基準として定めてもよい。例えば、軸線Aは、内周面25Xから等距離にある点の集合であってもよい。軸線Aは、内周面25X上にある点と当該点における法線と当該法線が外周面25Yと交わる点に挟まれた線分の中点の集合であってもよい。軸線Aは、概ね内部導体パターン25a内において電流が流れる方向と一致する。
【0038】
一実施形態において、内部導体パターン25aは、軸線A上で実装面10bから最も離れた位置と実装面10bとの距離が、上面10aと実装面10bとの間隔(T1)の2分の1よりも小さくなるように構成及び配置される。一実施形態において、内部導体パターン25aは、第1の部分25a1、第2の部分25a2、及び第3部分25a3がいずれも基体10の下部領域に含まれるように構成及び配置される。
【0039】
一実施形態において、軸線Aに垂直な方向に沿って内部導体パターン25aを切断した断面の断面積(内部導体断面積)は、外部電極21のうち第1端面10cと接している部分を実装面10bに平行な方向に沿って切断した断面積(外部導体断面積)よりも大きい。一実施形態において、軸線Aに垂直な方向に沿って内部導体パターン25aを切断した断面の断面積は、外部電極22のうち第2端面10dと接している部分を実装面10bに平行な方向に沿って切断した断面積よりも大きい。外部電極21の実装面10bに沿う断面積が一定でない場合には、T軸方向において均等な間隔に配置された3点を通過する断面の各々における外部電極21の断面積の平均を当該外部電極21の断面積とすることができる。外部電極22の断面積についても同様である。
【0040】
内部導体パターン25aは、上面10aから上部マージンD1だけ隔てた位置に配置される。より具体的には、内部導体パターン25aは、基体10の上面10aと内部導体パターン25aの外周面25Yとの距離が上部マージンD1となるように配置されている。図示の実施形態では、上部マージンD1が基体10の高さ方向の寸法T1の2分の1(T1/2)よりも大きくなるように、内部導体パターン25aが構成及び配置されている。
【0041】
一実施形態において、内部導体パターン25aは、軸線Aと基体10の上面10aとの間の距離T2がX-X線断面における上面10aと実装面10bとの距離の2分の1よりも大きくなるように構成及び配置される。図示の実施形態においては、上面10aと実装面10bとの距離は、基体10の高さ方向の寸法T1と等しい。よって、図示の例では、T2>T1/2の関係が成り立つ。
【0042】
X-X線断面において(つまり、W軸から見た正面視において)、基体10は、内部導体パターン25aによって内部導体パターン25aと実装面10bに囲まれた第1領域10r1と、第1領域10r1以外の第2領域10r2とに区画される。より具体的には、第1領域10r1は、W軸から見た正面視において、内周面25XととX-X線断面との交線である内周縁と、実装面10bとX-X線断面との交線である底縁とに囲まれた領域である。第2領域10r2は、W軸から見た正面視において、外周面25YととX-X線断面との交線である外周縁と、上面10atp第1端面10cとX-X線断面との交線である上縁、第1端面10cとX-X線断面との交線である右側縁、及び第2端面10dとX-X線断面との交線である左側縁とに囲まれた領域である。第1領域10r1の面積は、第2領域10r2と比べて小さい。このため、第1領域10r1と第2領域10r2とが同じ磁性材料から形成されていると、第1領域10r1において磁気飽和が起こりやすくなり、インダクタ1の直流重畳特性が劣化する原因となり得る。そこで、一実施形態においては、第1領域10r1を飽和磁束密度が比較的高い磁性材料から形成し、第2領域10r2を第1領域10r1よりも飽和磁束密度が低い磁性材料から形成してもよい。例えば、第1領域10r1に含まれる金属磁性粒子のFeの含有量を第2領域10r2に含まれる金属磁性粒子のFeの含有量よりも多くすることで、第1領域10r1の飽和磁束を高くすることができる。
【0043】
内部導体パターン25aの形状及び配置は、
図5に例示したものには限られない。内部導体パターン25aは、
図5に例示されている形状・配置とは異なる様々な形状・配置を取り得る。内部導体パターン25aの変形例について
図6~
図13を参照して説明する。
【0044】
内部導体パターン25aの変形例としての本発明の別の実施形態では、
図6に示されているように、内部導体パターン25aは、湾曲面を有していてもよい。外周面25Yが直線同士の交わる交点を有する場合には、その交点付近に磁束が集中する可能性がある。
図6に示されている内部導体パターン25aによれば、直線同士が交わる交点を有していないため、その交点付近において磁束が集中することを防止でできる。これにより、インダクタ1の直流重畳特性がさらに改善される。
【0045】
内部導体パターン25aの変形例としての本発明の別の実施形態では、内部導体パターン25aは、その内周面25X及び外周面25YのそれぞれがW軸方向から見た断面において曲線だけで構成されていてもよい。例えば、
図7に示されているように、内周面25X及び外周面25Yを構成する曲線は、長軸がL軸と平行な又は長軸がL軸と一致する楕円の部分楕円弧であってもよい。
図8に示すように、内周面25X及び外周面25Yを構成する曲線は、短軸がL軸と平行な又は短軸がL軸と一致する楕円の部分楕円弧であってもよい。
図7及び
図8に示されているように、内部導体パターン25aが上面10aに平行な直線状の部分を有していない場合には、内部導体パターン25aの外周面25Yのうち上面10aに最も近い位置と上面10aとの間隔が上部マージンD1とされる。内周面25X及び外周面25Yを構成する曲線は、部分円弧であってもよいし、楕円の部分楕円弧であってもよい。W軸方向から見た断面視において内周面25X及び外周面25Yを曲線のみで構成することにより、基体10内の一部の領域に磁束が集中することを防止し、その結果、インダクタ1の直流重畳特性が改善される。特に、内周面25X及び外周面25Yを構成する曲線が楕円の部分楕円弧や部分円弧であることにより、磁束の集中の防止に加えて、インダクタンス値を確保しながら直流抵抗(Rdc)を低くすることが可能となる。
【0046】
内部導体パターン25aの変形例としての本発明の別の実施形態では、
図9及び
図10に示されているように、内部導体パターン25aの第1部分25a1及び第2部分25a2は、T軸と平行な方向に延びていてもよい。これらの実施形態において、第1部分25a1と基体10の第1端面10cとの間の間隔であるサイドマージンD2は、上部マージンD1よりも小さい。図示の実施形態では、第2部分25a2と基体10の第1端面10cとの間の間隔は、サイドマージンD2に等しい。第2部分25a2と基体10の第2端面10dとの間の間隔は、サイドマージンD2より大きくても小さくてもよい。
図9に示されている内部導体パターン25aは、第1部分25a1の下端部から第1端面10cに向かって突出する第1突出部25a4と、第3部分25a3の下端部から第2端面10dに向かって突出する第2突出部25a5と、を有する。第1突出部25a4及び第2突出部25a5によって内部導体パターン25aの第1部分25a1と第1端面10cとの間の領域における面積は減少するが、当該領域は、内部導体パターン25aに電流が流れ始めて直ぐに磁気飽和するため、当該領域の面積を減少させても直流重畳特性への影響は小さい。よって、第1突出部25a4及び第2突出部25a5により、直流重畳特性に実質的な悪影響を与えることなく、内部導体パターン25aと外部電極21、22との接触面積を増やし、両者を電気的に確実に接続することができる。また、内部導体パターン25aと外部電極21、22との接触面積が増えることにより、外部電極21、22からランド3a、3bを経由してより効率的にインダクタ1内の熱を放熱)することができる。
図10に示されているように、内部導体パターン25aは、第1突出部25a4及び第2突出部25a5を有しておらず、実装面10bのみから露出するように構成されてもよい。別の実施形態においては、サイドマージンD2はゼロであってもよい。
【0047】
内部導体パターン25aの変形例としての本発明の別の実施形態では、
図11~
図13に内部導体パターン25aのさらなる変形例を示す。
図11~
図13おいては、図示を簡略化するために、外部電極21、22が省略されている。
図11は、
図8に示されている内部導体パターン25aの変形例を示す。
図11の内部導体パターン25aは、内側の仮想楕円C1と外側の仮想楕円C2との間に配置されている。仮想楕円C1は、X-X線断面において実装面10bに対応する辺のL軸方向における中点を中心とし、T軸方向に延びるG4/2の長さの短軸とL軸方向に延びるL1/2の長さの長軸とを有する。L1は、基体10のL軸方向における寸法であり、基体10の高さ方向の寸法の2倍よりも小さい。つまり、L1<2T1の関係が成り立つ。G4は、0よりも大きく、好ましくはT1/4よりも小さい。これにより、内部導体パターン25aを実装面10bの近傍に配置することができるので、放熱効率を高くすることができる。G4は、インダクタンスを取得し第1領域10r1における磁気飽和を抑制するために、好ましくはT1/8よりも大きい。この内部導体パターン25aの幾何学的配置に加えて、第1領域10r1を飽和磁束密度が比較的高い磁性材料から形成し、第2領域10r2を第1領域10r1よりも飽和磁束密度が低い磁性材料から形成することにより、第1領域10r1で集中的に磁気飽和が起こることをさらに抑制することができる。外側にある仮想楕円C2は、仮想楕円C1と同心であり、T軸方向に延びるT1/2の長さの短軸とL1の長さの長軸とを有する。
【0048】
図12は、
図11に示されている内部導体パターン25aの変形例を示す。
図12の内部導体パターン25aは、仮想円C11と仮想円C12との間に配置されている。
図12に示されている内部導体パターン25aは、
図11に示されている内部導体パターン25aをL軸方向に引き延ばした形状を有している。
図12の実施形態において、仮想楕円C1は、L軸方向における中点を中心とし、T軸方向に延びるG4/2の長さの短軸とL軸方向に延びるT1の長さの長軸とを有する。L1は、基体10の高さ方向の寸法の2倍と等しい。つまり、L1=2T1の関係が成り立つ。外側にある仮想楕円C2は、仮想楕円C1と同心であり、T軸方向に延びるT1/2の長さの短軸とL1の長さの長軸とを有する。
【0049】
図13は、
図11に示されている内部導体パターン25aの変形例を示す。
図13の内部導体パターン25aは、内側の仮想線C21と外側の仮想線C22との間に配置されている。
図13の実施形態において、仮想線C21及び仮想線C22は、両端における曲線と、その曲線間を接続する直線の線分とから成る。仮想線C21及び仮想線C22の一方の曲線は、L軸方向において第1端面10cの位置からL軸方向においてT1の長さだけ延びており、他方の曲線は、L軸方向において第2端面10dの位置からL軸方向においてT1の長さだけ伸びている。仮想線C21及び仮想線C22の直線の線分は、L1から2T1を除した長さを有する。
【0050】
図11~
図13に示されている実施形態によれば、内周面25X及び外周面25Yを構成する曲線が楕円の部分楕円弧や部分円弧であることにより、磁束の集中の防止に加えて、インダクタンス値を確保しながら直流抵抗(Rdc)を低くすることが可能となる。
【0051】
続いて、本発明の一実施形態によるインダクタ1の例示的な製造方法について説明する。インダクタ1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、積層プロセスによるインダクタ1の製造方法の一例を説明する。この説明のために、
図4が適宜参照される。
【0052】
まず、磁性材料から成る複数の未焼成磁性体シートを作成する。この未焼成磁性体シートは、焼成後に磁性体層11a~11f及びカバー層12、13になる。未焼成磁性体シートは、例えば、結合材及び複数の金属磁性粒子を含む複合磁性材料から形成される。次に、未焼成磁性体シートの各々の表面に導電性ペーストを印刷することで、焼成後に内部導体パターン25a~25fとなる未焼成導体パターンを形成する。
【0053】
次に、未焼成導体パターンが形成された未焼成磁性体シートを積層して中間積層体を得る。この中間積層体の積層方向における一端にカバー層12となる複数の未焼成磁性体シートを積層し、他端にカバー層13となる複数の未焼成磁性体シートを積層して未焼成積層体を得る。
【0054】
次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記の未焼成積層体を個片化することで、未焼成チップ積層体が得られる。次に、この未焼成チップ積層体を脱脂し、脱脂された未焼成チップ積層体を焼成することで、焼成されたチップ積層体を得る。次に、この焼成されたチップ積層体に対して、バレル研磨等の研磨処理を行う。
【0055】
次に、このチップ積層体の表面に外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21及び外部電極22は、例えば、チップ積層体の実装面10bに相当する表面に導電性ペーストを塗布して下地電極を形成し、この下地電極の表面にめっき層を形成することにより形成される。めっき層は、例えば、ニッケルを含むニッケルめっき層と、スズを含むスズめっき層の2層構造とされる。外部電極21及び外部電極22には、必要に応じて、半田バリア層及び半田濡れ層の少なくとも一方が形成されてもよい。以上により、インダクタ1が得られる。
【0056】
上記の製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。インダクタ1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のインダクタ1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のインダクタ1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【0057】
次に、上記の実施形態による作用効果について説明する。上記の一実施形態によるインダクタ1によれば、正面視において、内部導体25(例えば、内部導体パターン25a)の軸線A上で実装面10bから最も離れた位置と実装面10bとの距離が、上面10aと実装面10との間隔(例えば、基体10の高さT1)の2分の1よりも小さいので、内部導体25において発生したジュール熱を基体10の実装面10bからより効率的に放熱することができる。内部導体の全体が基体10の仮想線Bよりも下方にある下部領域に配置されている場合には、さらに効率よく実装面10bから放熱することができる。内部導体25において発生したジュール熱の多くの部分は、内部導体25からランド3a、3bを経由して回路基板2を構成する別の部材へ熱伝導により移動するが、この熱伝導による放熱だけでは内部導体25で発生したジュール熱を全て放熱できないことがある。そこで、内部導体25の軸線Aと実装面10bとの距離(T1-T2)が上面10aと実装面10bとの間隔(例えば、基体10の高さT1)の2分の1よりも小さくなるように内部導体25を配置することにより、コイル導体25で発生したジュール熱を基体10の実装面10bから回路基板2に効率よく伝導させることができる。
【0058】
上記の一実施形態によれば、内部導体25の全体が基体10の仮想線Bよりも下方にある下部領域に配置されているので、内部導体が基体10の上部領域を通過する場合と比べて基体10内における内部導体の長さを短くすることができる。これにより、内部導体の直流抵抗を下げることができるので、内部導体25から発生するジュール熱を低減することができる。
【0059】
上記の一実施形態によれば、平面視で直線状に延びる内部導体25が実装面10bから基体10の外側に露出して外部電極21、22と接続されている。よって、ランド3aから外部電極21を介して内部導体25に流れ込んだ電流は、内部導体25を通過し、外部電極22を介してランド3bに流れる。このように、インダクタ1を流れる電流は、ランド3aと内部導体25の一端との間及びランド3bと内部導体25の他端との間のわずかな距離(外部電極21、22のT軸方向の厚さに相当する距離)だけ外部電極21、22を流れる。一般に、インダクタの外部電極は、内部導体よりも電気伝導率が低い材料から形成される。また、外部電極のうち基体の端面(実装面と上面とを接続する面)と接する部分は、内部導体よりも小さい断面積を有する。このため、内部導体が直線状に延びる従来のインダクタのように内部導体を基体の端面から露出させると、この内部導体の露出位置からランドまでの区間において電流は外部電極を通過することになる。基体の端面における内部導体の露出位置からランドまでの距離は、基体の実装面からランドまでの距離よりも長いため、内部導体の露出位置からランドまでの区間に介在する外部電極がインダクタの直流抵抗の増加要因となる。本発明の実施形態によるインダクタ1においては、内部導体25が基体10の実装面10bから露出しているため、インダクタ1を通過する電流は、ランド3aと内部導体25の一端との間及びランド3bと内部導体25との間のわずかな距離だけ外部電極21、22を通過する。このように、インダクタ1によれば、電流経路に占める外部電極21、22の割合が従来のインダクタと比べて少ないため、従来のインダクタよりも直流抵抗を低減することができる。
【0060】
基体10に含まれるFe系の金属磁性粒子におけるFeの含有量を80wt%以上とすれば、インダクタ1は、単位体積当たりの電流値として0.15A/mm3以上が要求される用途に用いられ得る。基体10に含まれる金属磁性粒子におけるFeの含有量を85wt%以上とすれば、インダクタ1は、単位体積当たりの電流値として0.2A/mm3以上が要求される用途に用いられ得る。基体10に含まれる金属磁性粒子におけるFeを90wt%以上とすれば、インダクタ1は、単位体積当たりの電流値として0.25A/mm3以上が要求される用途に用いられ得る。上記のとおり、本発明の一又は複数の実施形態によるインダクタ1の基体10においては磁気飽和が抑制されているので、内部導体25に大きな電流を流すことができる。例えば、インダクタ1のインダクタンスLを300nHより小さくした場合に、単位体積当たりの電流値を0.15A/mm3以上とすることができる。また、インダクタ1のインダクタンスLを150nHより小さくした場合場合に、単位体積当たりの電流値を0.2A/mm3以上とすることができる。また、インダクタ1のインダクタンスLを75nHより小さくした場合に、単位体積当たりの電流値を0.25A/mm3以上とすることができる。Feの含有量が80wt%以上の金属磁性粒子を含む基体10を備えるインダクタ1においては、電流印加による発熱が小さい。また、高い周波数の用途に用いることができ、例えば、5MHz以上の周波数である。
【0061】
インダクタ1を回路基板2に実装する際に、内部導体25のうち外部電極21と接する端面と回路基板2のランド3aを対向させ、内部導体25のうち外部電極22と接する端面と回路基板2のランド3bを対向させることで、インダクタ1の発熱を抑制するだけでなく、インダクタ1とランド3a,3bとの間の領域における発熱も抑制することができる。インダクタ1とランド3a、3bとの間の外部電極21,22を電気伝導率の低い材料から形成しても、電流印加時の外部電極21、22における発熱を抑制することができる。
【0062】
上記の一実施形態によれば、外部電極21及び外部電極22の少なくとも一方が実装面10bのみに接するように設けられているので、基体10の第1端面10c及び第2端面10dには外部電極21、22が接していない。これにより、インダクタ1のL軸方向の寸法が定められているときに、外部電極21、22の幅の分だけ基体10のL軸方向における寸法を大きくすることができる。
【0063】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 インダクタ
2 回路基板
3a、3b ランド
10 基体
10a 上面
10b 実装面
10r1 第1領域
10r2 第2領域
21、22 外部電極
25 内部導体
25a~25f 内部導体パターン