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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】トランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20240911BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20240911BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01F30/10 T
H01F27/30 160
H01F27/29 X
H01F30/10 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020153917
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047889
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】山田 将司
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089787(JP,A)
【文献】特開2018-133456(JP,A)
【文献】特開2003-264108(JP,A)
【文献】特開2015-185725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/30
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと、
バスバーを有し、前記一次コイルを内部に収容する二次コイルと、
前記二次コイルの周囲に形成されたコアと、
を備え、
前記二次コイルは、第1の樹脂体及び第2の樹脂体によって構成され、
前記第1の樹脂体及び前記第2の樹脂体は、トランスを設置対象物に固定する固定部をそれぞれ有し、
前記第2の樹脂体は、前記第1の樹脂体の上方に配置され、
前記第2の樹脂体の固定部は、前記第1の樹脂体に向かって延び、
前記第2の樹脂体の固定部の底面は、前記第1の樹脂体の固定部の底面と水平であり、前記設置対象物に当接すること、
を特徴とするトランス。
【請求項2】
前記第1の樹脂体及び前記第2の樹脂体は、前記固定部とともに前記バスバーが一体に成形されていること、
を特徴とする請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
前記第1の樹脂体又は前記第2の樹脂体は、一体に成形された前記固定部と前記バスバーが空間を介して配置されていること、
を特徴とする請求項2に記載のトランス。
【請求項4】
前記第1の樹脂体及び前記第2の樹脂体は、平面視すると概略円形状であり、
前記固定部は、前記第1の樹脂体及び前記第2の樹脂体それぞれ2つずつ設けられ、
各樹脂体に設けられた2つの固定部は、当該樹脂体の中心に対して対称となるように配置され、
各固定部を直線で結んで平面視すると、概略矩形状を有すること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のトランス。
【請求項5】
前記第2の樹脂体は、上蓋及び前記上蓋の縁から延びる壁部を有し
記第2の樹脂体が有する前記固定部は、前記壁部に沿って延びていること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のトランス。
【請求項6】
前記コアは、フェライトコアであること、
を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスの設置対象物に対する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、充電器など種々の電子機器の電源回路にトランスが用いられている。トランスは、例えば、一対のコアユニット、一次コイルユニット及び一対の二次コイルユニットを有する。一次コイルユニットは、一対の二次コイルユニットに挟み込まれ、さらに二次コイルユニットを挟み込みように一対のコアユニットが設けられている。そして、各ユニットは、接着剤やコアユニットの外周をテープで巻き付けることで固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-160616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなトランスを設置対象物に固定する場合に、板バネを用いることが多い。即ち、コアユニットの上面を板バネによって設置対象物の設置面に向けて押さえつけることで、トランスを固定していた。特に、振動条件の厳しい環境下に配置されるトランスは、板バネによるコアユニットを押し付ける力が大きくなり、コアにクラックが入り、場合によっては、割れてしまうという懸念があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コアのクラックを防止することができるトランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトランスは、一次コイルと、バスバーを有し、前記一次コイルを内部に収容する二次コイルと、前記二次コイルの周囲に形成されたコアと、を備え、前記二次コイルは、第1の樹脂体及び第2の樹脂体によって構成され、前記第1の樹脂体及び前記第2の樹脂体は、トランスを設置対象物に固定する固定部をそれぞれ有し、前記第2の樹脂体は、前記第1の樹脂体の上方に配置され、前記第2の樹脂体の固定部は、前記第1の樹脂体に向かって延び、前記第2の樹脂体の固定部の底面は、前記第1の樹脂体の固定部の底面と水平であり、前記設置対象物に当接すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コアのクラックを防止することができるトランスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のトランスの全体構成を示す斜視図である。
図2】実施形態のトランスの分解斜視図である。
図3】第2の樹脂体の底面から見た斜視図である。
図4】第1の樹脂体及び第2の樹脂体の平面図である。
図5】第1の樹脂体と第2の樹脂体を接合した状態の平面図である。
図6】従来のトランスの固定時のコアにかかる応力の状態を示す図である。
図7】実施形態のトランスの固定時におけるコアにかかる応力の状態を示す図である。
図8】他の実施形態における固定部の位置を示す図である。
図9】他の実施形態における固定部の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(構成)
本実施形態に係るトランスの構成について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るトランスの全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るトランスの分解斜視図である。なお、電線の巻軸方向は高さ方向であり、トランス1が設置対象物と接触する側を下方、その反対側を上方と称する。
【0010】
トランス1は、電磁誘導作用を利用して電圧の高さを変換する機器である。本実施形態のトランス1は、DC/DCコンバータ、インバータなどに用いられる。トランス1は、図1及び図2に示すように、一次コイルユニット2、二次コイルユニット3及びコアユニット4を備える。
【0011】
一次コイルユニット2は、絶縁ボビン21と電線22を有する。絶縁ボビン21は、絶縁性を有する樹脂から成る。樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、PET(Polyethylene terephthalate)等が挙げられる。絶縁ボビン21は、中心に円形の孔23が設けられたリング形状を有する。絶縁ボビン21の外周には凹みが設けられている。
【0012】
電線22は、エナメルなどで絶縁被覆した1本の導電性部材により構成される。電線22は、絶縁ボビン21の外周の凹みに巻回される。電線22は、その両端部が入力端子24となっている。一対の入力端子24は、絶縁ボビン21の外側に向けて延び、トランスの一方側面に横並びに配置されている。入力端子24が外部機器と電気的に接続される。外部機器から電力が供給されると、電線22に電流が流れる。
【0013】
二次コイルユニット3は、2分割で構成されており、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bを有する。二次コイルユニット3は、第1の樹脂体3Aと、第2の樹脂体3Bを別々に成形する。第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは、樹脂から成り、一次コイルユニット2が有する絶縁ボビン21と同様の種類の樹脂を用いることができる。
【0014】
第1の樹脂体3Aと第2の樹脂体3Bは、互いに向かい合わせにして接合することで二次コイルユニット3が形成される。二次コイルユニット3が2分割に構成されているのは、第1の樹脂体3Aと第2の樹脂体3Bによって一次コイルユニット2を挟み込んで二次コイルユニット3内に一次コイルユニット2を収容するためである。第2の樹脂体3Bは、第1の樹脂体3Aの上方に設けられる。換言すれば、第1の樹脂体3Aは、第2の樹脂体3Bよりもトランス1の設置対象物の設置面に近い位置に設けられる。
【0015】
第1の樹脂体3Aは、円形の平板形状を有する。第1の樹脂体3Aの中心には、絶縁ボビン21の孔23と略同一の大きさの円形の孔32が設けられている。この孔32が、後述するE字型コア4Bの中脚41に挿入される。E字型コア4Bを接触する第1の樹脂体3Aの端面と反対側の端面には、載置部33が設けられている。載置部33は、一次コイルユニット2を載置する端面である。
【0016】
図3は、第2の樹脂体3Bの底面から見た斜視図である。第2の樹脂体3Bは、円形の上蓋34と、上蓋34の縁から設置対象物の設置面(下方)に向かって延びる壁部35を有し、底面は開口している。上蓋34及び壁部35によって画成されたスペースに一次コイルユニット2が収容される。上蓋34には、絶縁ボビン21の孔23及び第1の樹脂体3Aの孔23と略同一の大きさの円形の孔36が設けられている。この孔36には、E字型コア4Aの中脚41が挿入される。なお、第1の樹脂体3Aの孔32、上蓋34の孔36及び一次コイルユニット2の絶縁ボビン21の孔23は、それぞれの中心軸が同軸になるように配置される。
【0017】
第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは、バスバー5及び固定部31が一体に成形されている。一体に成形するとは、モールド成型によってバスバー5と固定部31とが樹脂で固定されていることを意味する。
【0018】
バスバー5は、1本の導電性部材により構成される。バスバー5は、リング形状を有し、このリング形状の部分は、第1の樹脂体3A又は第2の樹脂体3Bを構成する樹脂によって被覆されている。バスバー5の両端部は、出力端子51となり、樹脂から露出している。即ち、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは、それぞれ2つの出力端子51を有する。なお、出力端子51の先端には、外部機器の端子と接続させるための円形の孔が設けられている。
【0019】
第1の樹脂体3Aが有する2つの出力端子51a、51bは、入力端子24とは反対側のトランス1の側面から外側に向かって延びている。出力端子51a、51bは、図4(a)に示すように、横並びに配置されている。出力端子51aは、コアユニット4の長手方向の中央の位置に配置され、第1の樹脂体3Aの外側に向けて延びている(図1参照)。出力端子51bは、出力端子51aと第2の樹脂体3Bの固定部31cの間に設けられている。
【0020】
第2の樹脂体3Bが有する2つの出力端子51c、51dは、入力端子24とは反対側のトランス1の側面から外側に向かって延びている。出力端子51c、51dは、図4(b)に示すように、横並びに配置されている。出力端子51は、コアユニット4の長手方向の中央の位置に配置され、第1の樹脂体3Aの外側に向けて延びている(図1参照)。出力端子51cは、出力端子51aの上方に設けられ、出力端子51cの先端の孔は、出力端子51aの先端の孔が重なっている。出力端子51dは、出力端子51cと第1の樹脂体3Aの固定部31bの間に設けられている。このように4つの出力端子51a、51b、51c、51dが設けられたトランス1を平面視すると、図5に示すように、3つの出力端子51を有しているように見える。
【0021】
固定部31は、トランス1を設置対象物に固定する。即ち、固定部31の底面は設置対象物と当接している。固定部31には、円筒状のカラー311が設けられている。カラー311の外周は樹脂によって覆われ、第1の樹脂体3A又は第2の樹脂体3Bと一体に成形されている。カラー311にボルト等の固定具を挿入して締結することで、設置対象物にトランスが固定される。本実施形態では、固定部31は、合計4つ設けられており、第1の樹脂体3Aと第2の樹脂体3Bは、固定部31をそれぞれ2つずつ有する。第1の樹脂体3Aが有する2つの固定部を31a、31bと付し、第2の樹脂体3Bが有する2つの固定部を31c、31dと付す。
【0022】
固定部31a、31b、31c、31dは、円形の第1の樹脂体3Aの外側に向かって延びている。固定部31a、31bの延び方向の延長線上は、図4(a)の一点鎖線に示すように、第1の樹脂体3Aの中心Cを通っていない。また、固定部31c、31dの延び方向の延長線上は、図4(b)の一点鎖線に示すように、第2の樹脂体3Bの中心Cを通っていない。
【0023】
固定部31a、31bは、図4(a)に示すように、円形の第1の樹脂体3Aの中心Cに対して対称となるように配置されている。即ち、固定部31aの位置から180度回転した位置に固定部31bが配置されている。固定部31aは、入力端子24が配置されている側でE字型コア4Bの外脚43に近接に配置される。
【0024】
固定部31bは、バスバー5の出力端子51a、51bが配置されている側でE字型コア4Bの外脚42に近接した位置に配置されている。固定部31bは、バスバー5の出力端子51aと空間(図4(a)の点線の丸)を介して近接した位置に配置される。この空間の大きさは、バスバー5の出力端子51dが固定部31bと出力端子51aの間に突出できる程度の大きさのことを指す。そして、この空間には、出力端子51dが配置している。
【0025】
第2の樹脂体3Bが有する固定部31c、31dは、図4(b)に示すように、円形の第2の樹脂体3Bの中心Cに対して対称となるように配置されている。即ち、固定部31cの位置から180度回転した位置に固定部31dが配置されている。固定部31cは、入力端子24が配置されている側でE字型コア4Bの外脚42に近接に配置される。
【0026】
固定部31dは、バスバー5の出力端子51c、51dが配置されている側でE字型コア4Bの外脚43に近接した位置に配置されている。固定部31cは、バスバー5の出力端子51cと空間(図4(b)の点線の丸)を介して近接した位置に配置される。この空間の大きさは、バスバー5の出力端子51bが固定部31cと出力端子51cの間に突出できる程度の大きさのことを指す。そして、この空間には、出力端子51bが配置している。
【0027】
このように、4つの固定部31a、31b、31c、31dは、トランス1の四隅に設けられている。即ち、固定部31a、31b、31c、31dのカラーの中心点を各頂点として直線で結んで、平面視すると概略矩形状になっている。換言すれば、第1の樹脂体3Aが有する固定部31a、31b又は第2の樹脂体3Bが有する固定部31c、31dは、各頂点の対角となる位置に設けられている。
【0028】
固定部31c、31dの底面は、固定部31a、31bの底面と設置面に対して水平となっている。そのため、第1の樹脂体3Aの上方に配置される第2の樹脂体3Bの固定部31c、31dは、第2の樹脂体3Bの壁部35に沿って下方に、即ち、第1の樹脂体3Aに向かって延び、その先端は外側に向かって延びている。
【0029】
コアユニット4は、磁性体から成り、例えば、圧粉磁心、フェライトコア、積層鋼板、などを用いることができる。本実施形態では、フェライトコアを用いている。
【0030】
コアユニット4は、一対のE字型コア4A、4Bにより構成される。E字型コア4A、4Bは、同形同大である。E字型コア4A、4Bは、円柱状の中脚41、中脚41を挟むように設けられた一対の外脚42、43、中脚41及び一対の外脚42、43を連結するヨーク部44を有する概略E字型形状となっている。
【0031】
E字型コア4Bは、トランス1の設置対象物の設置面と対向に配置され、E字型コア4AがE字型コア4Bの上面に配置され、接合される。具体的には、コアユニット4は、互いのE字型コア4A、4Bの中脚41及び一対の外脚42、43の端部を対向させ、中脚41及び一対の外脚42、43を接着剤等で接合することで閉じた磁気回路を形成する。
【0032】
中脚41は、絶縁ボビン21の孔23、第1の樹脂体3Aの孔32及び第2の樹脂体3Bの孔36に挿入される。即ち、中脚41の周囲には、一次コイルユニット2及び二次コイルユニット3が設けられている。コアユニット4は、一次コイルユニット2の電線22と二次コイルユニット3のバスバー5を電磁結合させる。
【0033】
なお、コアユニット4の外周には、テープ6が巻き付けられており、テープ6によって各部材が分解されないように固定されている。また、一次コイルユニット2と二次コイルユニット3、第1の樹脂体3Aと第2の樹脂体3Bなど各部材の接触面は、それぞれ接着剤で固定されている。
【0034】
(作用)
次に、トランスを設置対象物に固定されたときの応力のかかり方について図面を参照しつつ説明する。図6は、従来のように板バネによって固定されたトランスのコアにかかる応力の状態を示す図である。図7は、本実施形態のトランスが固定されたときにコアにかかる応力の状態を示す図である。
【0035】
従来のトランスは、図6に示すように、E字型コア100Aの上面から板バネによって押さえつけてトランスは固定される。E字型コア100Aの中脚101と外脚102、103の間は、空間になっている。そして、E字型コア100Aの上面から板バネにより押圧されているので、この空間の上面となるE字型コア100Aのヨーク部が押圧され、撓む。そのため、ヨーク部の角部に応力が集中し、図6に示すように、E字型コア100Aのヨーク部の角部にクラックが生じる虞がある。特に、振動条件が厳しい環境下に設置される場合、板バネによってより強固に押さえつける必要があるため、E字型コア100Aにクラックが生じやすくなる。
【0036】
しかし、本実施形態のトランス1は、設置対象物に設置する固定部31a、31b、31c、31dを備えているため、図7に示すように、空間の上面は押圧されないので、E字型コア4Aにクラックが生じることを防止できる。また、空間の下面には応力が働くものの、E字型コア4Bのヨーク部44が設置対象物に載置されている。そのため、従来のトランスのように空間で応力を受けとめるのではなく、E字型コア4Bのヨーク部44が受けとめることができるので、ヨーク部44が撓むことない。そのため、E字型コア4Bにクラックが生じることを防止できる。
【0037】
また、本実施形態では、第1の樹脂体3Aのみならず第2の樹脂体3Bも固定部31c、31dを有している。そのため、第2の樹脂体3Bに収容された一次コイルユニット2は、第2の樹脂体3Bによって押圧され、より強固に固定される。
【0038】
さらに、第1の樹脂体3Aが有する固定部31a、31b及び第2の樹脂体3Bが有する固定部31c、31dは、各樹脂体3A、3Bの中心Cに対して対称となるように配置されている。そのため、固定部31a、31b及び固定部31c、31dを片側に2つ横並びに配置させる場合より、共振周波数を高めることができるので、トランスをより強固に固定することができる。
【0039】
(効果)
以上のように、本実施形態のトランス1は、一次コイルユニット2と、バスバー5を有し、一次コイルユニット2を内部に収容する二次コイルユニット3と、二次コイルユニット3の周囲に形成されたコアユニット4と、を備える。二次コイルユニット3は、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bによって構成され、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3bは、トランス1を設置対象物に固定する固定部31をそれぞれ有する。
【0040】
これにより、トランス1は第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bが有する固定部31によって固定することができる。換言すれば、従来のように、トランス1の上面から板バネによって押圧してトランス1を設置対象物に固定する必要がない。そのため、E字型コア4Aに応力がかからないため、コアにクラックが生じることを防止することができる。
【0041】
また、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは、それぞれが固定部31を有しており、一次コイルユニット2は、第1の樹脂体3Aと第2の樹脂体3Bに挟まれるようにして、収容される。そのため、第2の固定部3Bの固定部31c、31dにボルト等が挿入されネジ締結されると、一次コイルユニット2は、第2の樹脂体3Bによって設置面に向けて押圧される。よって、一次コイルユニット2は、より強固に固定され、振動条件が厳しい環境下においても、トランス1の騒音を抑制することができる。
【0042】
第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは、固定部31とともにバスバー5が一体に成形されている。これにより、固定部31とバスバー5はより強固に固定されるので、トランス1の強度が向上するとともに、小型化することができる。また、バスバー5を固定する工程を省くことができるので、生産性も向上する。
【0043】
第1の樹脂体3Aは、一体に成形された固定部31bとバスバー5の出力端子51aが空間を介して近接して配置されている。第2の樹脂体3Bは、一体に成形された固定部31cとバスバー5の出力端子51cが空間を介して近接して配置されている。そして、この空間の大きさは、バスバー5の出力端子51b又は51dが外側に突出できる程度の大きさである。
【0044】
バスバー5の出力端子51aと固定部31bの間、バスバー5の出力端子51cと固定部31cの間に空間を設けることで、一体成形する際に、当該空間に金型を挿入することができ、固定部31とバスバー5を一体に成形することができる。また、当該空間からは、出力端子51b、51dが配置されている。このように、一体成形する際に金型を挿入するために生じた空間に出力端子51b、51dを配置させることで、デッドスペースとなく空間を有効に活用することができ、トランス1を小型化することができる。
【0045】
第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは、平面視すると概略円形状であり、固定部31は、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bそれぞれ2つずつ設けられ、第1の樹脂体3Aに設けられた固定部31a、31b又は第2の樹脂体3Bに設けられた固定部31c、31dは、当該樹脂体の中心に対して対称となるように配置され、各固定部を直線で結んで平面視すると、概略矩形状を有する。
【0046】
このように、4つの固定部31a、31b、31c、31dをトランス1の四隅に配置させ、さらに、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bそれぞれが有する固定部31a、31b、31c、31dは、対角となるように配置されている。換言すれば、第1の樹脂体3A又は第2の樹脂体3Bは、トランス1の片側のみを固定しているわけではない。そのため、トランス1をより強固に固定することができ、振動条件の厳しい環境下においても、騒音が生じることを抑制できる。
【0047】
第2の樹脂体3Bは、上蓋34及び上蓋34の縁から延びる壁部35を有し、第1の樹脂体3Aの上方に配置され、第2の樹脂体3Bが有する固定部31c、31dは、壁部35に沿って延びている。仮に、第1の樹脂体3Aに壁部35を設けると、第1の樹脂体3Aの高さ方向が大きくなる。その結果、第1の樹脂体3Aを成形するための金型も大きくなり、製造コストが増大する。
【0048】
一方、本実施形態のように、第1の樹脂体3Aの上方に配置される第2の樹脂体3Bの固定部31c、31dは、設置面まで延ばす必要がある。そのため、第2の樹脂体3Bに壁部35を設けても、予定されている金型のスペースのなかで壁部35を成形することができ、スペースを有効活用し、製造コストの増大を抑えることができる。また、固定部31c、31dは、壁部35に沿って下方に延びているため、壁部35がなく単体で設けられている場合と比べて、固定部31c、31dの強度が向上する。
【0049】
E字型コア4A、4Bは、フェライトコアである。フェライトコアは、強度低く脆い性質を有する。そのため、従来のように、板バネでトランスを固定すると、板バネの押圧によってフェライトコアにクラックが生じる可能性が高い。そこで、本実施形態のトランス1のように、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは固定部31を有するので、E字型コア4A、4Bにフェライトコアを用いた場合であっても、クラックが生じることを防止することができる。
【0050】
また、固定部31a、31bの延び方向の延長線上は、第1の樹脂体3Aの中心Cを通らず、固定部31c、31dの延び方向の延長線上は、第2の樹脂体3Bの中心Cを通らないように配置させることで、固定部31a、31b、31c、31dの位置を調整することができ、コアユニット4の近くに配置させることができる。より詳細に説明すると、固定部の延び方向の延長線上が各樹脂体の中心を通る場合、固定部の位置の調整は固定部の延び方向の1方向になる。一方、本実施形態のように、固定部31a、31b、31c、31dの延び方向の延長線上が第1の樹脂体3A又は第2の樹脂体3Bの中心Cを通らずに配置させると、固定部31a、31b、31c、31dの延び方向以外にも位置を調整できるため、バスバー5などと干渉せず、かつ、コアユニット4に近い位置に固定部31a、31b、31c、31dを配置させることができる。そのため、トランス形状の自由度を上げつつ、固定強度を向上させることができる。
【0051】
また、固定部31a、31bの延び方向の延長線上は、第1の樹脂体3Aの中心Cを通らず、固定部31c、31dの延び方向の延長線上は、第2の樹脂体3Bの中心Cを通らないように配置させることで、振動周波数を上げた場合であっても、共振点の増加を抑制でき、共振しにくい構造にすることができる。
【0052】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0053】
本実施形態では、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bは、固定部31とバスバーを一体に成形していたが、バスバー5は一体に成形されていなくてもよい。この場合、一対のバスバー5は絶縁性のボビンで被覆され、一方のバスバー5は、第1の樹脂体3Aと一次コイルユニット2の間に設けられ、他方のバスバー5は、第2の樹脂体3Bと一次コイルユニット2の間に設けられる。
【0054】
また、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bに設けられた固定部31の数、位置は実施形態の構成に限定されない。例えば、図8(a)に示すように、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bが有する固定部31の数は、それぞれ1つずつであってもよい。この場合、第1の樹脂体3Aが有する固定部31と第2の樹脂体3Bが有する固定部31は、中心に対して対称の位置に配置されていることが好ましい。
【0055】
また、第1の樹脂体3A及び第2の樹脂体3Bがそれぞれ2つずつ固定部31を有する場合であっても、本実施形態のように、各樹脂体が有する固定部は中心に対して対称に配置されていなくてもよい。例えば、図8(b)に示すように、片側にのみ設けられていてもよい。
【0056】
さらに、バスバー5が一体に成形されていない第1の樹脂体及び第2の樹脂体においては、図8(c)に示すように、バスバーの出力端子51dと第2の樹脂体3Bの固定部31の間に空間を設けず配置してもよい。バスバー5を別体として成形することで、第2の樹脂体3Bを成形する際に、バスバー5の出力端子51dが干渉して金型を挿入できないといったことはなくなる。そのため、固定部31の配置位置の自由度が上がる。
【0057】
固定部31a、31bの延び方向の延長線上は、第1の樹脂体3Aの中心Cを通っておらず、固定部31c、31dの延び方向の延長線上は、第2の樹脂体3Bの中心Cを通らないように配置した(図4参照)。しかし、図9(a)に示すように、固定部31a、31bの延び方向の延長線上は、第1の樹脂体3Aの中心Cを通っていてもよい。また、図9(b)に示すように、固定部31c、31dの延び方向の延長線上は、第1の樹脂体3Bの中心Cを通っていてもよい。このように、固定部31a、31b、31c、31dを配置しても、実施形態と同様に共振周波数を高めることができ、コアの損傷を防止しつつ、トランス1を強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 トランス
2 一次コイルユニット
21 絶縁ボビン
22 電線
23 孔
24 入力端子
3 二次コイルユニット
3A 第1の樹脂体
3B 第2の樹脂体
31 固定部
32 孔
33 載置部
34 上蓋
35 壁部
36 孔
4 コアユニット
4A、4B E字型コア
41 中脚
42、43 外脚
44 ヨーク部
5 バスバー
51、51a、51b、51c、51d 出力端子
6 テープ
100 トランス
100A、100B E字型コア
101 中脚
102、103 外脚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9