IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

特許7554083画像処理方法、画像処理装置および撮像装置
<>
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図1
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図2
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図3
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図4
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図5
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図6
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図7
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図8A
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図8B
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図9
  • 特許-画像処理方法、画像処理装置および撮像装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】画像処理方法、画像処理装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/73 20240101AFI20240911BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240911BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20240911BHJP
【FI】
G06T5/73
H04N23/60 500
H04N23/67 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020157369
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051094
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】安田 拓矢
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特許第4524717(JP,B2)
【文献】特許第6301416(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 5/00
H04N 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理方法であって
(a)焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより、複数の画素で構成される撮影画像をN個取得する工程と
(b)前記画素毎に、合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき前記撮影画像の番号である画像参照値および補正用鮮鋭度をそれぞれ1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)求める工程と
(c)座標毎に、前記画像参照値と前記補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する工程と
(d)算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する工程と、を備え、
前記工程(b)は、前記画素毎に
(b-1)各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を取得する工程と
(b-2)前記N個の個別鮮鋭度から前記補正用鮮鋭度および前記画像参照値を求める工程と、を有し、
前記工程(b-2)では、前記画素毎に、前記N個の個別鮮鋭度から前記M個の補正用鮮鋭度および前記M個の画像参照値を求める
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項に記載の画像処理方法であって、
前記工程(b-2)では、前記画素毎に、前記N個の個別鮮鋭度のうち上位M個を前記補正用鮮鋭度として抽出するとともに抽出された前記M個の補正用鮮鋭度にそれぞれ対応する前記撮影画像の番号を前記M個の画像参照値とする画像処理方法。
【請求項3】
複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理方法であって
(a)焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより、複数の画素で構成される撮影画像をN個取得する工程と
(b)前記画素毎に、合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき前記撮影画像の番号である画像参照値および補正用鮮鋭度をそれぞれ1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)求める工程と
(c)座標毎に、前記画像参照値と前記補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する工程と
(d)算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する工程と、を備え、
前記工程(b)は、前記画素毎に
(b-1)各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を取得する工程と
(b-2)前記N個の個別鮮鋭度から前記補正用鮮鋭度および前記画像参照値を求める工程と、を有し、
前記工程(b-2)では、前記画素毎に、前記N個の個別鮮鋭度のうち、最上位の個別鮮鋭度と、しきい値以上の鮮鋭度を有する次位の個別鮮鋭度から前記補正用鮮鋭度および前記画像参照値を求める
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項に記載の画像処理方法であって、
全個別鮮鋭度の最大値に対して一定の係数を掛けた値を前記しきい値とする画像処理方法。
【請求項5】
複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理装置であって、
焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより取得された複数の画素で構成される撮影画像を記憶する画像記憶部と、
前記画素毎に、各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を算出するとともに前記N個の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度を1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)算出する鮮鋭度算出部と、
前記画素毎に、前記補正用鮮鋭度に対応して合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき前記撮影画像の番号である画像参照値を決定する画像参照値決定部と、
座標毎に、前記画像参照値と前記補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する輝度値算出部と、
算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する合焦点画像生成部と、を備え、
前記鮮鋭度算出部は、前記画素毎に、前記N個の個別鮮鋭度から前記M個の補正用鮮鋭度を算出し、
前記画像参照値決定部は、前記画素毎に、前記N個の個別鮮鋭度から前記M個の画像参照値を決定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理装置であって、
焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより取得された複数の画素で構成される撮影画像を記憶する画像記憶部と、
前記画素毎に、各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を算出するとともに前記N個の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度を1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)算出する鮮鋭度算出部と、
前記画素毎に、前記補正用鮮鋭度に対応して合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき前記撮影画像の番号である画像参照値を決定する画像参照値決定部と、
座標毎に、前記画像参照値と前記補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する輝度値算出部と、
算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する合焦点画像生成部と、を備え、
前記鮮鋭度算出部は、前記画素毎に、前記N個の個別鮮鋭度のうち、最上位の個別鮮鋭度と、しきい値以上の鮮鋭度を有する次位の個別鮮鋭度から前記補正用鮮鋭度を算出し、
前記画像参照値決定部は、前記画素毎に、前記最上位の個別鮮鋭度と前記次位の個別鮮鋭度から前記画像参照値を決定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の画像処理装置と、
前記対象物を撮影する撮像部と、
前記対象物に向けて光を出射する照明部と、
前記撮像部の焦点位置を光軸に沿って変化させる移動機構と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理方法、画像処理装置および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞の培養および解析には、細胞を含む試料を撮像した画像が用いられることがある。試料は、ウェルプレートまたはマイクロプレート等と呼ばれる複数のウェル(凹部)が設けられた平板状の容器や、単一のウェルを有するディッシュと呼ばれる平皿状の容器を用いて作成される。撮像対象物である細胞はウェル内に培養液とともに保持される。このような細胞を含む試料を画像として記録する際、液中の種々の深さに細胞が分布することから、深さ方向の焦点位置を変えて複数回撮像を行い、得られた複数の画像を合成して合焦点画像を作成することが行われる。
【0003】
例えば本願出願人が先に開示した特許文献1では、焦点位置を変えながら撮像された複数の画像から合焦点画像を作成する技術が記載されている。この技術は、合焦位置を示す画素参照値を用いた合成方法に、空間距離と鮮鋭度による重み付け計算を加える事で、空間方向に違和感のない合焦点画像を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6301416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウェル内では複数の細胞が複雑に分布している。つまり、2つの細胞が高さ方向において大きく離れているものの、平面視では重なっていることがある。この場合、上記技術を用いると、1つの画素は1つの画像参照値のみを用いるため、画像参照値の対象となった細胞に対する重み付けが強くなり、後で説明する図3の左下段に示すように、他の細胞と重なり合う部分に欠け等が発生する問題があった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数の対象物が複雑に分布している場合であっても、各対象物が鮮明に映し出された合焦点画像を作成することができる画像処理方法、画像処理装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1態様は、複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理方法であって、(a)焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより、複数の画素で構成される撮影画像をN個取得する工程と、(b)画素毎に、合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき撮影画像の番号である画像参照値および補正用鮮鋭度をそれぞれ1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)求める工程と、(c)座標毎に、画像参照値と補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する工程と、(d)算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する工程と、を備え、工程(b)は、画素毎に、(b-1)各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を取得する工程と、(b-2)N個の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度および画像参照値を求める工程と、を有し、工程(b-2)では、画素毎に、N個の個別鮮鋭度からM個の補正用鮮鋭度およびM個の画像参照値を求めることを特徴としている。
また、この発明の第2態様は、複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理方法であって、(a)焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより、複数の画素で構成される撮影画像をN個取得する工程と、(b)画素毎に、合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき撮影画像の番号である画像参照値および補正用鮮鋭度をそれぞれ1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)求める工程と、(c)座標毎に、画像参照値と補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する工程と、(d)算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する工程と、を備え、工程(b)は、画素毎に、(b-1)各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を取得する工程と、(b-2)N個の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度および画像参照値を求める工程と、を有し、工程(b-2)では、画素毎に、N個の個別鮮鋭度のうち、最上位の個別鮮鋭度と、しきい値以上の鮮鋭度を有する次位の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度および画像参照値を求める
ことを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第3態様は、複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理装置であって、焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより取得された複数の画素で構成される撮影画像を記憶する画像記憶部と、画素毎に、各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を算出するとともにN個の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度を1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)算出する鮮鋭度算出部と、画素毎に、補正用鮮鋭度に対応して合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき撮影画像の番号である画像参照値を決定する画像参照値決定部と、座標毎に、画像参照値と補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する輝度値算出部と、算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する合焦点画像生成部と、を備え、鮮鋭度算出部は、画素毎に、N個の個別鮮鋭度からM個の補正用鮮鋭度を算出し、画像参照値決定部は、画素毎に、N個の個別鮮鋭度からM個の画像参照値を決定することを特徴としている。
また、この発明の第4態様は、複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理装置であって、焦点位置を光軸に沿ってN段階(ただし、Nは2以上の自然数)に変化させつつ対象物を撮影することにより取得された複数の画素で構成される撮影画像を記憶する画像記憶部と、画素毎に、各焦点位置での鮮鋭度を算出してN個の個別鮮鋭度を算出するとともにN個の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度を1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)算出する鮮鋭度算出部と、画素毎に、補正用鮮鋭度に対応して合焦点画像の各座標の輝度値として参照すべき撮影画像の番号である画像参照値を決定する画像参照値決定部と、座標毎に、画像参照値と補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する輝度値算出部と、算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像を生成する合焦点画像生成部と、を備え、鮮鋭度算出部は、画素毎に、N個の個別鮮鋭度のうち、最上位の個別鮮鋭度と、しきい値以上の鮮鋭度を有する次位の個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度を算出し、画像参照値決定部は、画素毎に、最上位の個別鮮鋭度と次位の個別鮮鋭度から画像参照値を決定することを特徴としている。
【0009】
さらに、この発明の第5態様は、撮像装置であって、上記画像処理装置と、対象物を撮影する撮像部と、対象物に向けて光を出射する照明部と、撮像部の焦点位置を光軸に沿って変化させる移動機構と、を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、各焦点位置での鮮鋭度が個別鮮鋭度として算出された後で、当該個別鮮鋭度から補正用鮮鋭度が1またはM個(ただし、Mは2以上かつN未満の自然数)算出されるとともに画像参照値が決定される。そして、画素毎に画像参照値と補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値が算出され、さらに、それらの輝度値を組み合わせることで合焦点画像が生成される。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、複数の対象物が複雑に分布している場合であっても、各対象物が鮮明に映し出された合焦点画像を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に使用されるウェルプレートの一例を示す図である。
図2】本発明に係る撮像装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
図3】従来技術により得られる合焦点画像と、本実施形態により得られる合焦点画像とを模式的に示す図である。
図4】本発明に係る画像処理装置の第1実施形態において演算処理部により実現される機能を概念的に示すブロック図である。
図5】演算処理部により実現される処理の流れを示すフローチャートである。
図6】演算処理部により実現される処理内容を説明するための図である。
図7】演算処理部により実現される処理内容の一例を示す図である。
図8A】本発明に係る画像処理装置の第2実施形態で行われる画像処理方法を説明するための図である。
図8B】本発明に係る画像処理装置の第2実施形態で行われる画像処理方法を説明するための図である。
図9】本発明に係る画像処理装置の第3実施形態で行われる画像処理方法を説明するための図である。
図10】本発明に係る画像処理装置の第4実施形態で行われる画像処理方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、本発明の「画像処理装置」は、セットされたウェルプレートを撮像する撮像装置として説明する。そして、その撮像装置において、本発明の「画像処理方法」が実行されるものとして説明する。
【0014】
図1は本発明に使用されるウェルプレートの一例を示す図である。具体的には、図1はウェルプレート9の斜視図である。ウェルプレート9は、複数のウェル91を有する略板状の試料容器である。ウェルプレート9の材料には、例えば、光を透過する透明な樹脂が使用される。ウェルプレート9の上面には、複数のウェル91が規則的に配列されている。ウェル91は、培地とともに撮像対象物となる複数の細胞を保持する。本実施形態では、上面視におけるウェル91の形状は、円形として説明する。ただし、ウェル91の形状は、矩形、角丸矩形等の他の形状であってもよい。ここで、各図における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。例えばXY平面を水平面、Z軸を鉛直軸と考えることができる。以下においては(-Z)方向を鉛直下向きとする。
【0015】
図2は本発明に係る撮像装置の一実施形態の概略構成を示す図である。この撮像装置1は、ウェルプレート9の上面に形成されたウェル91と称される凹部に担持された培地中で培養される細胞、細胞コロニー、細菌等(以下、「細胞等」と称し参照符号Cを付す)の生試料を本発明の「対象物」として撮像する装置である。なお、この撮像装置1が対象とするウェルプレートのサイズやウェルの数はこれらに限定されるものではなく任意であり、例えば6ないし384穴のものが一般的に使用されている。また、複数ウェルを有するウェルプレートに限らず、例えばディッシュと呼ばれる平型の容器で培養された細胞等の撮像にも、この撮像装置1を使用することが可能である。
【0016】
ウェルプレート9の各ウェル91には、培地Mとしての液体が所定量注入され、この液体中において所定の培養条件で培養された細胞等Cが、この撮像装置1の撮像対象物となる。培地は適宜の試薬が添加されたものでもよく、また液状でウェル91に投入された後ゲル化するものであってもよい。この撮像装置1では、例えばウェル91の内底面で培養された細胞等Cを撮像対象とすることができる。
【0017】
撮像装置1は、ウェルプレート9を保持するホルダ11と、ホルダ11の上方に配置される照明部12と、ホルダ11の下方に配置される撮像部13と、これら各部の動作を制御する演算処理部141を有する制御部14とを備えている。ホルダ11は、試料を培地Mとともに各ウェル91に担持するウェルプレート9の下面周縁部に当接してウェルプレート9を略水平姿勢に保持する。
【0018】
照明部12は、ホルダ11により保持されたウェルプレート9に向けて照明光を出射する。照明光の光源としては、例えば白色LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。光源と適宜の照明光学系とを組み合わせたものが、照明部12として用いられる。照明部12により、ウェルプレート9に設けられたウェル91内の細胞等が上方から照明される。
【0019】
ホルダ11により保持されたウェルプレート9の下方に、撮像部13が設けられる。撮像部13には、ウェルプレート9の直下位置に図示を省略する撮像光学系が配置されており、撮像光学系の光軸は鉛直方向(Z方向)に向けられている。図2は側面図であり、図の上下方向が鉛直方向を表す。
【0020】
撮像部13により、ウェル9内の細胞等が撮像される。具体的には、照明部12から出射されウェル9の上方から液体に入射した光が撮像対象物を照明し、ウェル9底面から下方へ透過した光が、撮像部13の対物レンズ131を含む撮像光学系を介して撮像素子132の受光面に入射する。撮像光学系により撮像素子132の受光面に結像する撮像対象物の像が、撮像素子132により撮像される。撮像素子132は二次元の受光面を有するエリアイメージセンサであり、例えばCCDセンサまたはCMOSセンサを用いることができる。
【0021】
撮像部13は、制御部14に設けられたメカ制御部146により水平方向(XY方向)および鉛直方向(Z方向)に移動可能となっている。具体的には、メカ制御部146が演算処理部141からの制御指令に基づき駆動機構15を作動させ、撮像部13を水平方向に移動させることにより、撮像部13がウェル91に対し水平方向に移動する。また鉛直方向への移動によりフォーカス調整がなされる。撮像視野内に1つのウェル91の全体が収められた状態で撮像されるときには、メカ制御部146は、光軸が当該ウェル91の中心と一致するように、撮像部13を水平方向に位置決めする。
【0022】
また、駆動機構15は、撮像部13を水平方向に移動させる際、図において点線矢印で示すように照明部12を撮像部13と一体的に移動させる。すなわち、照明部12は、その光中心が撮像部13の光軸と略一致するように配置されており、撮像部13が水平方向に移動するとき、これと連動して移動する。これにより、どのウェル91が撮像される場合でも、当該ウェル91の中心および照明部12の光中心が常に撮像部13の光軸上に位置することとなり、各ウェル91に対する照明条件を一定にして、撮像条件を良好に維持することができる。
【0023】
撮像部13の撮像素子132から出力される画像信号は、制御部14に送られる。すなわち、画像信号は制御部14に設けられたADコンバータ(A/D)143に入力されてデジタル画像データに変換される。演算処理部141は、受信した画像データに基づき適宜画像処理を実行する画像処理部として機能する。制御部14はさらに、画像データを記憶保存するための画像記憶部として機能する画像メモリ144と、演算処理部141が実行すべきプログラムや演算処理部141により生成されるデータを記憶保存するためのメモリ145とを有しているが、これらは一体のものであってもよい。演算処理部141は、メモリ145に記憶された制御プログラムを実行することにより、後述する各種の演算処理を行う。
【0024】
その他に、制御部14には、インターフェース(IF)部142が設けられている。インターフェース部142は、ユーザからの操作入力の受け付けや、ユーザへの処理結果等の情報提示を行うユーザインターフェース機能のほか、通信回線を介して接続された外部装置との間でのデータ交換を行う機能を有する。ユーザインターフェース機能を実現するために、インターフェース部142には、ユーザからの操作入力を受け付ける入力受付部147と、ユーザへのメッセージや処理結果などを表示出力する表示部148とが接続されている。
【0025】
なお、制御部14は、上記したハードウェアを備えた専用装置であってもよく、またパーソナルコンピュータやワークステーション等の汎用処理装置に、後述する処理機能を実現するための制御プログラムを組み込んだものであってもよい。すなわち、この撮像装置1の制御部14として、汎用のコンピュータ装置を利用することが可能である。汎用処理装置を用いる場合、撮像装置1には、撮像部13等の各部を動作させるために必要最小限の制御機能が備わっていれば足りる。
【0026】
図3は、従来技術により得られる合焦点画像と、本実施形態により得られる合焦点画像とを模式的に示す図である。例えば図2中の部分拡大図に示すように、ウェル91内に複数の細胞Cが鉛直方向(高さ方向)Zにおいて大きく離れているものの、平面視では重なっていることがある。ここで、撮像対象となっているウェル91について、その撮像部13の撮影視野内に、2つの細胞Cが存在するものとする。以下では、上記部分拡大図中の左側の細胞Cを第1細胞C1と称し、右側の細胞Cを第2細胞C2と称する。撮像部13の焦点位置をN段階、例えば5段階に変化させつつ上記ウェル91を撮像すると、例えば図3の上段に示すように、5つの撮影画像CI0~CI4が得られる。図3の例では、第1細胞C1については、焦点位置H0での撮影画像CI0において最も焦点が合っており、第2細胞C2については、焦点位置H4での撮影画像CI4において最も焦点が合っている。また、焦点位置H2での撮影画像CI2においては、細胞C1、C2が部分的に重なって映っている。
【0027】
こうして得られた5つの撮影画像CI0~CI4に対し、特許文献1に記載の従来技術を適用して合焦点画像AIを作成すると、次のような問題が発生することがある。従来技術では、撮影画像CI0~CI4のそれぞれについて、画素毎に、鮮鋭度が算出される。そして、撮影画像CI0~CI4の互いに対応する画素の間で鮮鋭度を比較することで、座標ごとに画像参照値が決定される。このように1つの画素に対し、1つの画像参照値のみが決定される。したがって、平面視で重なっている2つの細胞C1、C2のうち画像参照値の対象となった細胞C1に対する重み付けが強くなる。その結果、同図の左下段に示すように、細胞C1、C2同士が重なり合う部分に欠け等が発生することがあった。
【0028】
これに対し、本実施形態では、以下に詳述するように画素毎に複数の画像参照値を選択し、補正用鮮鋭度を基準とした合成を行うため、同図の左下段に示すように各細胞C1、C2が鮮明に映し出された合焦点画像AIを作成することができる。以下、図4ないし図7を参照しつつ本発明に係る画像処理装置および画像処理方法の第1実施形態について詳述する。
【0029】
図4は、本発明に係る画像処理装置の第1実施形態において演算処理部により実現される機能を概念的に示すブロック図である。演算処理部141は、撮像制御部141aと画像処理部141bとを有する。撮像制御部141aは、予めメモリ145に記憶された撮像用の制御プログラムに従って、照明部12、撮像部13および駆動機構15を動作制御する。これにより、ウェルプレート9の各ウェル91に保持された細胞Cの撮影処理が進行し、例えば図3に示すようにウェル91毎に5つの撮影画像CI0~CI4が取得され、画像メモリ144に記憶される。なお、撮影処理は特許文献1に記載の従来技術と同一であるため、ここでは撮影処理の説明は省略する。
【0030】
一方、画像処理部141bは、予めメモリ145に記憶された画像処理用の制御プログラムに従って、図5に示す画像処理を実行する。つまり、画像処理部141bは、
・画素毎に、鮮鋭度を算出する個別鮮鋭度算出部b1と、
・画素毎に、M個の補正用鮮鋭度を算出する補正用鮮鋭度算出部b2と、
・画素毎に、合焦点画像AIの各座標の輝度値として参照すべき撮影画像CI0~CI4の番号である画像参照値をM個決定する画像参照値決定部b3と、
・座標毎に、M個の画像参照値とM個の補正用鮮鋭度とに基づいて輝度値を算出する輝度値算出部b4と、
・算出された輝度値を組み合わせて、合焦点画像AIを生成する合焦点画像生成部b5と、
を有している。これらの各部が行う具体的な処理は以下の通りである。
【0031】
図5は、演算処理部により実現される処理の流れを示すフローチャートである。図6は、演算処理部により実現される処理内容を説明するための図である。図7は、演算処理部により実現される処理内容の一例を示す図である。
【0032】
演算処理部141が、上述した撮影処理によって得られた複数の撮影画像CI0~CI4を画像メモリ144から読み出す(ステップST1)。次に、演算処理部141の個別鮮鋭度算出部b1が、複数の撮影画像CI0~CI4のそれぞれについて、画素毎に、個別鮮鋭度を算出する(ステップST2)。より詳しくは、図6に示すように、撮影画像CI0を構成する画素の各々について個別鮮鋭度S0(0,0)~S0(xmax,ymax)を算出する。また、他の撮影画像CI1~CI4についても同様である。なお、同図中の点線は画素の区分を模式的に示している。また、本明細書中の「個別鮮鋭度」は、従来技術の「鮮鋭度」と同様に、その画素付近における画像の明瞭さ(sharpness)を示す指標である。本実施形態では、個別鮮鋭度S0(0,0)~S4(xmax,ymax)は、例えば、その画素を中心とする一定の領域における画素の輝度変化に基づいて計算される。ただし、個別鮮鋭度に、周辺画素の輝度の分散値、輝度の最大値、輝度の最小値、画素そのものの輝度値などが用いられてもよい。
【0033】
従来技術では、複数の撮影画像CI0~CI4の互いに対応する画素の間で、上記鮮鋭度を比較することにより、座標ごとに画像参照値Aを決定していた。これに対し、本実施形態では、x座標およびy座標をそれぞれ0から最大値maxに変化させながら補正用鮮鋭度算出部b2がM個の補正用鮮鋭度を算出するとともに画像参照値決定部b3がM個の画像参照値を決定する(ステップST3~ST7)。本実施形態では、発明内容の理解を容易なものとするために、図5図7では値Mを「2」に固定したケースを例示している。以下、図5図7を参照しつつ、補正用鮮鋭度の算出および画像参照値の決定について説明する。
【0034】
ステップST3では、図5および図6に示すように、補正用鮮鋭度算出部b2がステップST2で算出された個別鮮鋭度の全部から画素(xm,yn)に対応する個別鮮鋭度S0(xm,yn)、S1(xm,yn)、S2(xm,yn)、S3(xm,yn)、S4(xm,yn)を抽出する。それに続いて、補正用鮮鋭度算出部b2は抽出された個別鮮鋭度S0(xm,yn)~S4(xm,yn)から最上位の鮮鋭度を補正用鮮鋭度S(0,xm,yn)として決定する(ステップST4)。これに続いて、画像参照値決定部b3が最上位の補正用鮮鋭度S(0,xm,yn)に対応する画像参照値A(0,xm,yn)を決定する(ステップST5)。ここで、ステップST2により例えば図7に示す個別鮮鋭度が算出され、補正用鮮鋭度の算出の対象となっている座標(xm,yn)が座標(1,3)であると仮定して説明を続ける。この場合、補正用鮮鋭度算出部b2は、
S0(1,3)=70
S1(1,3)=30
S2(1,3)=10
S3(1,3)=5
S4(1,3)=10
を抽出する。そして、補正用鮮鋭度算出部b2は個別鮮鋭度S0(1,3)を補正用鮮鋭度S(0,1,3)と決定するとともに、画像参照値決定部b3は画像参照値A(0,1,3)を「0」と決定する。
【0035】
こうして、最上位の補正用鮮鋭度S(0,xm,yn)および画像参照値A(0,xm,yn)が求まると、補正用鮮鋭度算出部b2は次位の補正用鮮鋭度S(1,xm,yn)を算出する(ステップST6)。また、画像参照値決定部b3は上記補正用鮮鋭度S(1,xm,yn)に対応する画像参照値A(1,xm,yn)を決定する(ステップST7)。なお、上記座標(1,3)について、図7に示すように、補正用鮮鋭度算出部b2は個別鮮鋭度S1(1,3)を次位の補正用鮮鋭度S(1,1,3)を「30」と決定するとともに、画像参照値決定部b3は次位の画像参照値A(1,1,3)を「1」と決定する。
【0036】
なお、本実施形態では、画素毎に、上記したようにM=2、つまり上位2つの補正用鮮鋭度S(0,x,y)、S(1,x,y)を算出するとともに、それらに対応する画像参照値A(0,x,y)、A(1,x,y)を求めているが、Mの値はこれに限定されるものではなく、焦点位置の数Nよりも少ない範囲であることを条件に、3以上であってもよい。
【0037】
次に、演算処理部141の輝度値算出部b4が、上記複数の画像参照値Aと、各撮影画像CI0~CI4の輝度値とに基づいて、合焦点画像を構成する各座標の輝度値Vを算出する(ステップST8)。つまり、各座標の画像参照値Aが示す撮影画像CIの当該座標の輝度値に対して、周囲の座標の画像参照値Aが示す撮影画像CIの輝度値を反映させて、合焦点画像の当該座標の輝度値Vを算出する。具体的には、輝度値算出部b4は、例えば次の数式(1)を用いて、合焦点画像を構成する各座標の輝度値Vを算出する
【0038】
【数1】
ここで、数式(1)中のV(xn,yn)は、合焦点画像内の座標(xn,yn)における輝度値(算出すべき輝度値)を示す。数式(1)中のk,lは、それぞれ、着目する座標(xn,yn)からの周囲の座標までのx方向およびy方向の距離を示す。数式(1)中のfx,fyは、着目する座標からの考慮に入れる座標の範囲(輝度値を反映させる範囲)を示す。σdは、距離の重み付け係数である。σsは、補正用鮮鋭度Sの重み付け係数である。補正用鮮鋭度Sは、0~1の値に正規化されているものとする。M(x,y)は指定画素における採用された画像参照値Aおよび補正用鮮鋭度Sの数である(上記第1実施形態では、「2」に固定されている)。
【0039】
数式(1)は、距離の重み付け量と補正用鮮鋭度Sの重み付け量とを、それぞれガウシアン係数で表現し、それらの掛け合わせを行うことを意味する。すなわち、輝度値算出部b4は、着目する座標の輝度値に、周囲の座標の輝度値を、距離および補正用鮮鋭度Sに応じた重み付けで反映させて、合焦点画像の各座標の輝度値Vを算出する。より詳述すると、輝度値算出部b4は、まず、各座標について、画像参照値Aが示す撮影画像CIの当該座標の輝度値を参照する。そして、その輝度値に対して、周囲の座標の画像参照値Aが示す撮影画像CIの輝度値を反映させる。その際、着目する座標からの距離が近い座標ほど、輝度値を大きく影響させる。また、補正用鮮鋭度Sが高いほど、輝度値を大きく影響させる。
【0040】
その後、演算処理部141の合焦点画像生成部b5が、座標毎に算出された輝度値Vを組み合わせて、合焦点画像を生成する(ステップST9)。これにより、図3中の右下段に示すように、5つの撮影画像CI0~CI4に基づいて生成される合焦点画像AIには、細胞C1、C2同士が重なり合う部分に欠け等が現れることなく、細胞C1、C2が共にボケの少ない状態で現れる。
【0041】
以上のように、画素毎に、補正用鮮鋭度Sおよび画像参照値AをそれぞれM個(本実施形態では、2個)求め、これらに基づいて合焦点画像AIを生成している。このため、当該合焦点画像AIでは、鉛直方向(高さ方向)Zにおいて互いに異なる位置(高さ)に存在する細胞Cがそれぞれ鮮明に映し出されている。その結果、複数の細胞Cがウェル91内で複雑に分布している場合であっても、各細胞Cを明確に確認することができる。
【0042】
上記したように、第1実施形態では、図3の上段に示すように5つの撮影画像CI0~CI4を取得する工程が本発明の工程(a)の一例に相当している。また、図5のステップST2が本発明の工程(b-1)の一例に相当するとともに、ステップST3~ST7が本発明の工程(b-2)の一例に相当しており、それらステップST2~ST7が本発明の工程(b)の一例に相当している。さらに、図5のステップST8、ST9がそれぞれ本発明の工程(c)、(d)の一例に相当している。
【0043】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第1実施形態では、画素毎に、抽出した5つの個別鮮鋭度S0~S4から上位2つを補正用鮮鋭度S(0,x,y)、S(1,x,y)を算出するとともに画像参照値A(0,x,y)、A(1,x,y)を一義的に決定している。これに対し、本発明に係る画像処理装置の第2実施形態では、次の説明するように補正用鮮鋭度S(1,x,y)および画像参照値A(1,x,y)の設定を一部変更している。
【0044】
図8Aおよび図8Bは本発明に係る画像処理装置の第2実施形態で行われる画像処理方法を説明するための図である。例えば図8A中の丸印で示すように、同一座標において次位の画像参照値A(1,x,y)が画像参照値A(0,x,y)と隣接するとき、一方の細胞Cに焦点が合っている高さに対し、高さ方向を少しずらすと、同図中の符号Rで細胞Cの画像がボケることがある。そこで、これを効果的に回避するために、図8Bに示すように、更に次位(3番目)を画像参照値A(1,x,y)として設定してもよい。例えば図7に示す個別鮮鋭度が既に算出されている場合、図8Bにおいて太枠で囲ったように、上記隣接条件により画像がボケる座標(1,2)の補正用鮮鋭度S(1,1,2)を3番目に大きな個別鮮鋭度の値「50」とするとともに画像参照値A(1,x,y)を「1」から「4」に変更してもよい。こうすることで、同図に示すように、ボケのない鮮明な合焦点画像AIが得られる。
【0045】
また、上記第1実施形態では、個別鮮鋭度の値にかかわらず上位M個を補正用鮮鋭度として採用するとともに画像参照値AをM個決定している。ここで、補正用鮮鋭度の採用基準として、所定のしきい値を設定してもよい(第3実施形態)。
【0046】
図9は本発明に係る画像処理装置の第3実施形態で行われる画像処理方法を説明するための図である。この第3実施形態では、第1実施形態と同様にして個別鮮鋭度S0~S4が算出される。一方、ステップST3では、補正用鮮鋭度算出部b2がステップST2で算出された個別鮮鋭度の全部から画素(xm,yn)に対応する個別鮮鋭度S0(xm,yn)、S1(xm,yn)、S2(xm,yn)、S3(xm,yn)、S4(xm,yn)を抽出する。それに続いて、補正用鮮鋭度算出部b2は抽出された個別鮮鋭度S0(xm,yn)~S4(xm,yn)のうち所定のしきい値(例えば「30」以上)で、しかも最上位の鮮鋭度を補正用鮮鋭度S(0,xm,yn)として決定する(ステップST4)。これに続いて、画像参照値決定部b3が最上位の補正用鮮鋭度S(0,xm,yn)に対応する画像参照値A(0,xm,yn)を決定する(ステップST5)。
【0047】
このように第3実施形態では、上記しきい値条件を加えているため、例えば図9に示すように、画素によっては抽出された個別鮮鋭度S0(xm,yn)~S4(xm,yn)のいずれもがしきい値を超えない場合がある。そこで、本実施形態では、上記個別鮮鋭度S0(xm,yn)~S4(xm,yn)のうち最大値を例外的に補正用鮮鋭度S(0,xm,yn)として決定するとともに、それに対応する画像参照値A(0,xm,yn)を決定する(ステップST5)。例えば、図9中の画素(xmax,ymax)の個別鮮鋭度S0~S4は、
S0(xmax,ymax)=0
S1(xmax,ymax)=0
S2(xmax,ymax)=2
S3(xmax,ymax)=1
S4(xmax,ymax)=0
であるため、補正用鮮鋭度算出部b2は補正用鮮鋭度S(0,xmax,ymax)を「2」に設定するとともに画像参照値決定部b3は画像参照値A(0,xmax,ymax)を「2」に設定する。
【0048】
また、補正用鮮鋭度算出部b2は、上記しきい値条件を満足し、しかも次位となる補正用鮮鋭度S(1,xm,yn)を算出する(ステップST6)。また、画像参照値決定部b3は上記補正用鮮鋭度S(1,xm,yn)に対応する画像参照値A(1,xm,yn)を決定する(ステップST7)。ここで、しきい値条件を満足しない画素について、最上位の補正用鮮鋭度S(0,xm,yn)では例外規定を設けているが、次位となる補正用鮮鋭度S(1,xm,yn)では、同図に示すように、補正用鮮鋭度S(1,xm,yn)を「0」に設定するとともに画像参照値A(1,xm,yn)を「なし」とし、輝度計算(ステップST8)の対象から外している。すなわち、画素毎に、補正用鮮鋭度Sの個数および画像参照値Aの個数をそれぞれ1またはM個に可変となっている。このため、次のような作用効果が得られる。
【0049】
第1実施形態および第2実施形態では、画素毎の画像参照値Aの個数Mを固定しており、弱い鮮鋭度であっても、それを輝度値Vの算出に用いている。このことが合焦点画像AIにボケ領域が含まれる要因となることがある。これに対し、第3実施形態では、上記個数Mを可変とし、弱い鮮鋭度については輝度値Vの算出から除外している。したがって、合焦点画像AIにボケ領域が含まれるのを抑制し、より鮮明な合焦点画像AIを作成することができる。
【0050】
また、上記第3実施形態では、所定のしきい値「30」を予め設定しているが、個別鮮鋭度S0~S4の最大値を基準としてしきい値を設定してもよい(図4実施形態)。
【0051】
図10は本発明に係る画像処理装置の第4実施形態で行われる画像処理方法を説明するための図である。この第4実施形態が第3実施形態と大きく相違する点が、ステップST3~ST7を実行する前に、ステップST2で算出された全個別鮮鋭度のうち最大値を求め、その最大値に係数(例えば0.4)を掛けたものを上記しきい値として設定する工程が含まれている。当該しきい値の設定が完了すると、それ以降については第3実施形態と同様にして合焦点画像AIを作成する。このように第4実施形態においても、第3実施形態と同様に、合焦点画像AIへのボケ領域の混入を抑制し、より鮮明な合焦点画像AIを作成することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、焦点位置を光軸に沿って5段階に変化させつつ対象物を撮影することにより、5個の撮影画像CI0~CI4を取得している、つまりN=5である。このNの値は5に限定されるものではなく、2~4または6以上であってもよい。
【0053】
また、輝度値Vを上記の数式(1)により算出しているが、数式(1)に代えて、他の計算式を用いてもよい。計算式は、各座標の画像参照値Aが示す撮影画像の輝度値に対して、周囲の座標の画像参照値Aが示す撮影画像の輝度値を反映させるための計算式であればよい。
【0054】
また、上記実施形態では、1つのウェル91に対して1つの視野が設定され、当該視野において、焦点位置を変えて撮影を行う場合について説明した。しかしながら、1つのウェル91を複数の視野に分けて、各視野の間で撮像部13を移動させつつ、視野毎に複数の撮影画像を取得してもよい。その場合、視野毎に、上記画像処理を行って合焦点画像を生成し、得られた合焦点画像を合成(タイリング)して、1つのウェル91の画像を生成すればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、撮影対象物となる細胞Cが、ウェルプレート9の複数のウェル91内に保持されている。しかしながら、細胞Cは、ウェルプレート9以外の容器に保持されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、単体の細胞Cを撮影対象物としていた。しかしながら、撮影対象物は、複数の細胞が立体的に集合した細胞集塊(スフェロイド)であってもよい。また、撮影対象物は、細胞以外の試料であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、撮影対象物の上方に照明部12が配置され、撮影対象物の下方に撮像部13が配置されていた。しかしながら、撮影対象物の下方に照明部12が配置され、撮影対象物の上方に撮像部13が配置されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、撮像部13の光学系に含まれる一部の光学部品を移動させることにより、撮像部13の焦点位置を変化させていた。しかしながら、撮像部13全体を昇降移動させることにより、ウェル91内における撮像部13の焦点位置を、光軸に沿って変化させてもよい。また、撮影対象物を保持する容器を昇降移動させることにより、容器に対する撮像部13の焦点位置を、相対的に変化させてもよい。すなわち、本発明における「移動機構」は、撮像部13全体を移動させる機構または容器(ウェルプレート9)を移動させる機構であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、細胞Cを保持する容器の位置が固定され、照明部12および撮像部13が水平方向に移動していた。しかしながら、照明部12および撮像部13の位置を固定して、容器を水平方向に移動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明は、複数の撮影画像に基づいて合焦点画像を生成する画像処理技術および当該画像処理技術を用いる撮像装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…撮像装置
9…ウェルプレート
12…照明部
13…撮像部
141…演算処理部
141a…撮像制御部
141b…画像処理部
144…画像メモリ(画像記憶部)
A…画像参照値
AI…合焦点画像
b1…個別鮮鋭度算出部
b2…補正用鮮鋭度算出部
b3…画像参照値決定部
b4…輝度値算出部
b5…合焦点画像生成部
C,C1,C2…細胞
CI0~CI4…撮影画像
H0~H4…焦点位置
V…輝度値
Z…鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10