(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】風車翼、風車翼のモニタリング装置及び風力発電装置並びに風車翼のモニタリング方法
(51)【国際特許分類】
F03D 80/30 20160101AFI20240911BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D1/06 A
(21)【出願番号】P 2020176259
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青井 辰史
(72)【発明者】
【氏名】山本 修作
(72)【発明者】
【氏名】村田 直人
(72)【発明者】
【氏名】津村 陽一郎
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0041834(US,A1)
【文献】特開2017-150827(JP,A)
【文献】特開2012-117446(JP,A)
【文献】特開2019-120219(JP,A)
【文献】特開2017-020423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
F03D 17/00
F03D 80/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼本体と、
前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に配置され、該位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
を備え
、
前記少なくとも一対の磁界センサは、
前記長手方向に交差する断面内にて、前記ダウンコンダクタの設置位置を通る第1軸上に配置される第1センサと、
前記断面内にて、前記設置位置を通り前記第1軸に直交する第2軸上に配置される第2センサと、を含む
風車翼。
【請求項2】
前記ダウンコンダクタからグラウンドに向かう雷電流の経路上に設けられ、前記雷電流の極性を検出するための雷電流センサを備える
請求項1に記載の風車翼。
【請求項3】
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記断面内にて、前記ダウンコンダクタの前記設置位置を通り前記第1軸及び前記第2軸に交差する第3軸上に配置される第3センサを含む
請求項
1又は2に記載の風車翼。
【請求項4】
翼本体と、
前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に配置され、該位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
を備え、
前記長手方向に直交する断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの一方と前記ダウンコンダクタとの距離L1と、前記断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの前記一方と前記翼本体の表面との距離L2とは、0.75≦L1/L2≦1.25を満た
す
風車翼。
【請求項5】
前記ダウンコンダクタは、前記翼本体の内部に設けられる
請求項1乃至
4の何れか一項に記載の風車翼。
【請求項6】
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記長手方向において、前記翼本体の翼先端と翼根との中央位置よりも前記翼根側に設けられる翼根側センサを含む
請求項1乃至
5の何れか一項に記載の風車翼。
【請求項7】
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記長手方向における複数の位置にそれぞれ設けられる複数対の磁界センサを含む
請求項1乃至
6の何れか一項に記載の風車翼。
【請求項8】
翼本体と、
前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に配置され、該位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
を備え、
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記長手方向における複数の位置にそれぞれ設けられる複数対の磁界センサを含み、
前記複数対の磁界センサは、前記長手方向において、前記翼本体の翼先端と翼根との中央位置よりも前記翼根側に設けられる少なくとも一対の翼根側センサと、前記中央位置よりも前記翼先端側に設けられる複数対の翼先端側センサと、を含み、
前記複数対の翼先端側センサの個数は、前記少なくとも一対の翼根側センサの個数よりも多
い
風車翼。
【請求項9】
前記長手方向に直交する第1断面内における前記複数対の翼先端側センサの個数は、前記長手方向に直交する第2断面内における前記少なくとも一対の翼根側センサの個数よりも多い
請求項
8に記載の風車翼。
【請求項10】
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング装置であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられ、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部と、
を備え
、
前記少なくとも一対の磁界センサは、
前記長手方向に交差する断面内にて、前記ダウンコンダクタの設置位置を通る第1軸上に配置される第1センサと、
前記断面内にて、前記設置位置を通り前記第1軸に直交する第2軸上に配置される第2センサと、を含む
風車翼のモニタリング装置。
【請求項11】
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング装置であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられ、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部と、
を備え、
前記長手方向に直交する断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの一方と前記ダウンコンダクタとの距離L1と、前記断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの前記一方と前記翼本体の表面との距離L2とは、0.75≦L1/L2≦1.25を満たす
風車翼のモニタリング装置。
【請求項12】
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング装置であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられ、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部と、
を備え、
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記長手方向における複数の位置にそれぞれ設けられる複数対の磁界センサを含み、
前記複数対の磁界センサは、前記長手方向において、前記翼本体の翼先端と翼根との中央位置よりも前記翼根側に設けられる少なくとも一対の翼根側センサと、前記中央位置よりも前記翼先端側に設けられる複数対の翼先端側センサと、を含み、
前記複数対の翼先端側センサの個数は、前記少なくとも一対の翼根側センサの個数よりも多い
風車翼のモニタリング装置。
【請求項13】
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の風車翼を含む風車ロータと、
前記風車ロータの回転によって駆動されるように構成された発電機と、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部を含むモニタリング装置と、
を備える風力発電装置。
【請求項14】
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング方法であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられた少なくとも一対の磁界センサを用いて、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するステップと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るステップと、
を備え
、
前記少なくとも一対の磁界センサは、
前記長手方向に交差する断面内にて、前記ダウンコンダクタの設置位置を通る第1軸上に配置される第1センサと、
前記断面内にて、前記設置位置を通り前記第1軸に直交する第2軸上に配置される第2センサと、を含む
風車翼のモニタリング方法。
【請求項15】
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング方法であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられた少なくとも一対の磁界センサを用いて、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するステップと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るステップと、
を備え、
前記長手方向に直交する断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの一方と前記ダウンコンダクタとの距離L1と、前記断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの前記一方と前記翼本体の表面との距離L2とは、0.75≦L1/L2≦1.25を満たす
風車翼のモニタリング方法。
【請求項16】
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング方法であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられた少なくとも一対の磁界センサを用いて、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するステップと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るステップと、
を備え、
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記長手方向における複数の位置にそれぞれ設けられる複数対の磁界センサを含み、
前記複数対の磁界センサは、前記長手方向において、前記翼本体の翼先端と翼根との中央位置よりも前記翼根側に設けられる少なくとも一対の翼根側センサと、前記中央位置よりも前記翼先端側に設けられる複数対の翼先端側センサと、を含み、
前記複数対の翼先端側センサの個数は、前記少なくとも一対の翼根側センサの個数よりも多い
風車翼のモニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風車翼、風車翼のモニタリング装置及び風力発電装置並びに風車翼のモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風車翼には、風車翼を雷から保護するための装置として、レセプタ(受雷部)が設けられる。レセプタは、風車翼の先端部やその他の箇所に設けられ、風車翼及び風車タワーを延びるダウンコンダクタ(引き下げ導体)と電気的に接続される。レセプタに落雷した際の雷電流は、ダウンコンダクタを介して大地に導かれて放電されるようになっている。
【0003】
特許文献1には、複数のレセプタが設けられた風車翼の落雷検知システムが開示されている。この落雷検知システムは、複数のレセプタに対応してそれぞれ設けられる複数の電流センサを含む。複数の電流センサは、複数のレセプタと、風車翼の内部を延びる導体(ダウンコンダクタ)との間をそれぞれ接続する分岐ライン(導体)を流れる電流をそれぞれ検出する。そして、複数の電流センサでの検出結果に基づいて、風車翼に落雷があったことを検出したり、被雷したレセプタを特定したりするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レセプタが設けられた風車翼であっても、レセプタ設置部位以外の箇所、例えば翼本体(シェル等)の表面に雷撃を受けることがある。そこで、落雷により風車翼に損傷が生じた場合等にメンテナンスを適切又は迅速に行うために、風車翼における被雷位置を適切に特定できることが望ましい。
【0006】
しかし、特許文献1に記載される落雷検知システムでは、翼本体表面等のレセプタ以外の箇所に落雷する場合のことが考慮されておらず、レセプタ設置部位又はそれ以外の箇所のどちらに被雷したのかを特定することができない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、風車翼における被雷位置を適切に特定可能な風車翼、風車翼のモニタリング装置及び風力発電装置並びに風車翼のモニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風車翼は、
翼本体と、
前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に配置され、該位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るモニタリング装置は、
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング装置であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられ、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部と、
を備える。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置は、
上述の風車翼を含む風車ロータと、
前記風車ロータの回転によって駆動されるように構成された発電機と、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部を含むモニタリング装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、風車翼における被雷位置を適切に特定可能な風車翼、風車翼のモニタリング装置及び風力発電装置並びに風車翼のモニタリング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る風力発電装置の概略図である。
【
図4】一実施形態に係るモニタリングの概略構成図である。
【
図5A】一実施形態に係る風車翼の概略的な断面図である。
【
図5B】一実施形態に係る風車翼の概略的な断面図である。
【
図6A】一実施形態に係る風車翼の概略的な断面図である。
【
図6B】一実施形態に係る風車翼の概略的な断面図である。
【
図7】一実施形態に係る風車翼の概略的な断面図である。
【
図8】一実施形態に係る風車翼の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
(風力発電装置及び風車翼の構成)
図1は、幾つかの実施形態に係る風車翼又はモニタリング装置が適用される風力発電装置の概略図である。
図2及び
図3は、一実施形態に係る風車翼の模式図である。なお、
図2は、風車翼の長手方向に直交する断面図であり、
図3は、
図2のA-Aに沿った断面である。
図4は、一実施形態に係るモニタリングの概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、風力発電装置1は、少なくとも一本(例えば3本)の風車翼2及びハブ4で構成されるロータ(風車ロータ)5を備える。風車翼2は放射状にハブ4に取り付けられており、風車翼2で風を受けることによってロータ5が回転し、ロータ5に連結された発電機(不図示)を駆動するように構成されている。なお、
図1に示す実施形態において、ロータ5は、タワー6の上方に設けられたナセル8に支持されている。タワー6は、水上又は陸上に設けられた基礎構造又は浮体構造などの土台構造に立設されていてもよい。
【0016】
図1~
図3に示すように、風車翼2は、シェル(外皮)を含む翼本体10と、翼本体10の長手方向(以下、単に長手方向ともいう。)に沿って延在するダウンコンダクタ24と、翼本体10の内部に設けられる少なくとも一対の磁界センサ30と、を備える。
【0017】
図2に示すように、翼本体10は、風力発電装置1のハブ4に取り付けられる翼根15と、ハブ4から最も遠くに位置する翼先端16と、翼根15と翼先端16の間に延在する翼型部と、を含む。また、
図2及び
図3に示すように、翼本体10は、翼根15から翼先端16にかけて、前縁11と後縁12とを有する。また、翼本体10の外形は、負圧面(背面)13及び圧力面(腹面)14によって形成される。なお、翼本体10の負圧面13及び圧力面14は、シェルの表面を含む。翼本体10は、繊維強化プラスチックから形成されていてもよい。
【0018】
翼本体10には、レセプタ(受雷部)20が設けられる。レセプタ20は導電性材料から形成され、典型的には金属製である。レセプタ20は、翼先端16を含む領域に設けられるレセプタ21、及び/又は、該領域よりも長手方向における翼根15側の位置にて翼本体10の表面(負圧面13又は圧力面14)に設けられるレセプタ22を含んでもよい。
【0019】
風車翼2のダウンコンダクタ24は、例えば導線により構成され、上述のレセプタ20の各々に電気的に接続されるとともに、タワー6の内部を延びるダウンコンダクタ26に接続される。風車翼2(レセプタ20等)に落雷した際の雷電流は、ダウンコンダクタ24及びダウンコンダクタ26を介して、大地(グラウンド)等の風力発電装置1の外部に導かれるようになっている。
【0020】
ダウンコンダクタ24は、例えば
図3に示すように、翼本体10の内部において長手方向に沿って延在していてもよい。あるいは、ダウンコンダクタ24は、翼本体10の表面(負圧面13又は圧力面14)に沿って、長手方向に沿って延在していてもよい(
図6A、
図6B参照)。
【0021】
少なくとも一対の磁界センサ30は、翼本体10の内部にてダウンコンダクタ24を挟んで両側の位置に配置され、該位置の各々における局所的な磁界を検出するように構成される。すなわち、磁界センサ30の各々は、翼本体10の内部にてダウンコンダクタ24から離間した位置に配置され、この位置における磁界の向き等を検出するように構成される。したがって、ダウンコンダクタ24又は翼本体10に雷電流が流れて雷電流のまわり磁界が生じたとき、磁界センサ30の設置位置における該磁界の向き等を、上述の磁界センサ30の各々によって検出することができる。磁界センサ30は、翼本体10のシェルや桁に支持されていてもよい。
【0022】
磁界センサ30の設置位置の例については後で詳述する。なお、
図3に示す例では、ダウンコンダクタ24が翼本体10の内部に設けられるとともに、長手方向に直交する断面内にて、翼本体10の内部に複数の磁界センサ30A~30Dが設けられている。磁界センサ30Aはダウンコンダクタ24と負圧面13との間に、磁界センサ30Bはダウンコンダクタ24と圧力面14との間に、磁界センサ30Cはダウンコンダクタ24と前縁11との間に、磁界センサ30Dはダウンコンダクタ24と後縁12との間に、それぞれ設けられている。
【0023】
磁界センサ30の各々は、該磁界センサ30の設置位置における磁界の向きを検出可能なセンサである。磁界センサ30として、雷電流の周波数成分に対して有効な応答性を有するセンサを好適に用いることができる。磁界センサ30として、例えば、ループコイルセンサ、B-dotセンサ、又は、ホール素子センサを用いることができる。
【0024】
風力発電装置1は、ダウンコンダクタ24からグラウンドに向かう雷電流の経路上に設けられる雷電流センサ36を備えていてもよい。雷電流センサ36は、ダウンコンダクタ24からグラウンドに向かう雷電流の極性(正又は負)を検出するように構成されていてもよい。また、雷電流センサ36は、上述の雷電流の大きさを検出するように構成されてもよい。あるいは、雷電流センサ36は、上述の雷電流の電流値を計測するように構成されていてもよい。そして、後述の処理装置40等のプロセッサにより、雷電流センサ36による電流計測値の時間変化を示す電流波形から、雷電流の極性を特定し、又は、雷電流の大きさを特定してもよい。
【0025】
雷電流センサ36は、風車翼2のダウンコンダクタ24と、グラウンドとの間に設けられる。雷電流センサ36は、翼本体10の内部に設けられていてもよく、あるいは、ナセルの内部又はタワーの内部(
図1参照)に設けられていてもよい。
【0026】
なお、翼本体10をグラウンドに向かって流れる雷電流は、通常、グラウンドに到達する前にダウンコンダクタ24に流入する。よって、翼本体10に落雷して翼本体10を雷電流が流れる場合であっても、上述の雷電流センサ36によって、雷電流の極性を検出することができる。
【0027】
図1に示す風力発電装置1は、風車翼2を監視するためのモニタリング装置50をさらに備える。
図1、
図2及び
図4に示すように、モニタリング装置50は、上述の少なくとも一対の磁界センサ30及び/又は雷電流センサ36と、少なくとも一対の磁界センサ30及び/又は雷電流センサ36による検出信号を処理するための処理装置40と、を含む。処理装置40は、少なくとも一対の磁界センサ30及び/又は雷電流センサ36の検出信号に基づいて、風車翼2の被雷位置に関する情報を得るように構成された被雷位置情報取得部42を含む。少なくとも一対の磁界センサ30及び/又は雷電流センサ36からの検出信号は、ケーブル、光ファイバ、又は無線により、処理装置40に伝送されるようになっていてもよい。
【0028】
処理装置40は、プロセッサ(CPU等)、記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶部及びインターフェース等を備えた計算機を含む。処理装置40は、インターフェースを介して、上述の少なくとも一対の磁界センサ30及び/又は雷電流センサ36からの信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の被雷位置情報取得部42の機能が実現される。
【0029】
処理装置40での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは記憶装置に展開される。プロセッサは、記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0030】
処理装置40は、風力発電装置1のナセル8又はタワー6の内部に設けられていてもよい。あるいは、処理装置40の機能の一部又は全部が、風力発電装置1の外部(遠隔地等)に設けられていてもよい。
【0031】
(モニタリングのフロー及び磁界センサの配置例)
ここで、上述した風力発電装置1の風車翼2のモニタリング方法の概要を説明する。幾つかの実施形態では、上述の少なくとも一対の磁界センサ30を用いて、該磁界センサ30の各々の設置位置における局所的な磁界を検出する。そして、上述の被雷位置情報取得部42等により、磁界センサ30の各々での検出結果に基づいて、風車翼2の被雷位置に関する情報を取得する。
【0032】
以下、風車翼2における磁界センサ30の配置例と、各配置例を採用した場合の上述のモニタリングの特徴を説明する。
図5A~5B、
図6A~6B、
図7及び
図8は、それぞれ、一実施形態に係る風車翼2の概略的な断面図であり、風車翼2の長手方向に直交する断面図である。
【0033】
なお、
図5A~
図8において、X軸は、前縁11と後縁12とを結ぶ方向(すなわち風車翼2のコード方向)の軸であり(ただし、前縁11から後縁に向かう方向を正とする)、Y軸は、X軸に直交する方向(すなわち風車翼2の厚さ方向)の軸であり(ただし、圧力面14から負圧面13に向かう方向を正とする)、Z軸は、X軸及びY軸に直交する方向(すなわち風車翼2の長手方向)の軸である(ただし、翼先端16側(紙面手前側)から翼根15側(紙面奥側)に向かう方向を正とする)。
【0034】
また、
図5A~
図8において、符号Cは雷電流を示し、符号Mは雷電流のまわりに生じる磁界の向きを示す。また、
図5Aと
図5Bとは、同一の風車翼2の同一断面を示すものであるが、雷電流の流れる部位が異なっている。具体的には、
図5Aでは雷電流Cはダウンコンダクタ24を流れているのに対し、
図5Bでは、雷電流Cは翼本体10の表面(より具体的には、
図5Bでは負圧面13側の表面)を流れている。
図6Aと
図6Bについても同様である。
【0035】
以下の説明において、
図5A~
図8における雷電流Cは、正極性の雷電流であることを前提とする。なお、この場合、
図5A~
図8に示すように、雷電流Cのまわりに、紙面上で右回り(時計回り)方向の磁界Mが生じることになる。
【0036】
図5A~
図8に示すように、翼本体10の内部には、少なくとも一対の磁界センサ30が設けられる。
【0037】
なお、
図5A~5B、
図6A~6B、
図7及び
図8に示す実施形態では、ダウンコンダクタ24は翼本体10の内部に設けられている。また、
図5A~
図8において、磁界センサ30Aはダウンコンダクタ24と負圧面13との間に、磁界センサ30Bはダウンコンダクタ24と圧力面14との間に、磁界センサ30Cはダウンコンダクタ24と前縁11との間に、磁界センサ30Dはダウンコンダクタ24と後縁12との間に、それぞれ設けられる磁界センサ30である。
【0038】
雷電流Cが風車翼2を流れるとき、雷電流Cのまわりに磁界Mが発生する。ここで、磁界センサ30の位置における磁界Mの向きは、風車翼2において雷電流Cが流れる部位と、該磁界センサ30との位置関係によって異なる。
【0039】
幾つかの実施形態では、例えば
図5A~
図8に示すように、少なくとも1つの磁界センサ30は、ダウンコンダクタ24の両側に設けられる一対の磁界センサ30を含む。例えば、
図5A~5B、
図7及び
図8に示す例示的な実施形態では、Y軸の方向(厚さ方向)におけるダウンコンダクタ24の両側に、一対の磁界センサ30A,30Bが設けられている。また例えば、
図6A~6B、
図7及び
図8に示す例示的な実施形態では、X軸の方向(コード方向)におけるダウンコンダクタ24の両側に、一対の磁界センサ30C,30Dが設けられている。
【0040】
上述の実施形態によれば、一対の磁界センサ30(磁界センサ30Aと30B、又は、磁界センサ30Cと30D)をダウンコンダクタ24の両側に設けたので、雷電流Cがダウンコンダクタ24を流れたか否かを判別することができる。
【0041】
例えば、
図5A~5B、及び、
図6A~6Bに示す実施形態において、正極性の雷電流Cがダウンコンダクタ24を流れた場合には、
図5A及び
図6Aに示すように、一対の磁界センサ30A,30B又は一対の磁界センサ30C,30Dによって、互いに逆向きの磁界Mが検出される。一方、同実施形態において、正極性の雷電流Cが翼本体10を流れた場合には、一対の磁界センサ30によって検出される磁界Mの向きが、互いに逆向きではなくなる。具体的には、例えば
図5Bに示すように、負圧面13側における翼本体10に雷電流Cが流れた場合には、一対の磁界センサ30A,30Bの両方によって、X軸の負の向きの磁界Mが検出される。また例えば
図6Bに示すように、前縁11側における翼本体10に雷電流Cが流れた場合には、一対の磁界センサ30C,30Dの両方によって、Y軸の負の向きの磁界Mが検出される。
【0042】
このように、上述の実施形態では、一対の磁界センサ30によって検出される磁界Mの向きが逆向きであるときには、雷電流Cがダウンコンダクタ24を流れたと判別することができる。また、一対の磁界センサ30によって検出される磁界Mの向きが同一であるときには、雷電流Cがダウンコンダクタ以外の部位(翼本体等)を流れたと判別することができ、したがって、風車翼2のうちレセプタ20の設置部位以外の箇所(翼本体10等)に落雷したと特定することができる。すなわち、風車翼2の被雷位置に関する情報を取得することができる。よって、風車翼2における被雷位置を適切に特定することができる。
【0043】
なお、
図7~
図8に示す実施形態によっても、同様の効果が得られる。
【0044】
幾つかの実施形態では、磁界センサ30での検出結果に加え、雷電流センサ36で検出される雷電流Cの極性に基づいて、風車翼2の被雷位置に関する情報を取得するようにしてもよい。
【0045】
雷電流Cは、正極性をもつ場合と負極性をもつ場合とがあり、雷電流Cの極性に応じて、雷電流Cのまわりに発生する磁界の向きは異なる。すなわち、
図5A~
図8には、正極性の雷電流Cによって、紙面上右回り(時計回り)方向の磁界Mが生じることが示されているが、負極性の雷電流の場合には、紙面上左回り(反時計回り)方向の磁界Mが生じることになる。
【0046】
この点、上述の実施形態によれば、一対の磁界センサ30の各々での検出結果(すなわち、一対の磁界センサ30の各々の設置位置における磁界Mの方向)、及び、雷電流センサ36により検出される雷電流Cの極性に基づいて、風車翼において雷電流が流れた部位をより詳細に特定することができる。よって、風車翼における被雷位置をより詳細に特定することができる。
【0047】
なお、一例として、
図5A及び5Bに示す実施形態の風車翼2では、一対の磁界センサ30A,30Bでの検出結果、及び、雷電流センサ36により検出される雷電流Cの極性に基づいて、下記表1に示すように、風車翼2における雷電流Cの流れた部位又は被雷位置を特定することができる。
【0048】
【0049】
なお、雷電流Cが負圧面13側(又は圧力面14側)における翼本体10を流れたと判別される場合、風車翼2のうち負圧面13側(又は圧力面14側)における翼本体10に落雷したと特定することができる。また、雷電流Cがダウンコンダクタ24を流れたと判別される場合、ダウンコンダクタ24に導通されるレセプタ20に落雷したか、又は、翼本体10に落雷した際の雷電流Cがグラウンドに向かって翼本体10を流れる途中でダウンコンダクタ24に流入した、と特定することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、少なくとも一対の磁界センサ30は、長手方向に交差する断面内にて、ダウンコンダクタ24の設置位置を通る第1軸上に配置される一対の第1センサと、同一の断面内にて、ダウンコンダクタ24の設置位置を通り第1軸に直交する第2軸上に配置される一対の第2センサと、を含む。例えば、
図7及び
図8に示す例示的な実施形態では、長手方向に交差する断面内にて、ダウンコンダクタ24の設置位置を通るX軸(第1軸;直線Q2で示す)上に配置される一対の第1センサである磁界センサ30C,30Dと、同一の断面内にて、ダウンコンダクタ24の設置位置を通りX軸(第1軸)に直交するY軸(第2軸;直線Q1で示す)上に配置される一対の第2センサである磁界センサ30A,30Bと、を含む。
【0051】
上述の実施形態によれば、風車翼2の長手方向に交差する断面内にて、上述のX軸(第1軸)(例えばX軸)上に一対の第1センサ(磁界センサ30C,30D)を配置するとともに、第1軸(X軸)に直交する第2軸(例えばY軸)上に一対の第2センサ(磁界センサ30A,30B)を配置したので、風車翼2において雷電流Cが流れた部位をより詳細に特定することができる。よって、風車翼2における被雷位置をより詳細に特定することができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、少なくとも一対の磁界センサ30は、上述の一対の第1センサ及び一対の第2センサに加え、上述の断面内にて、ダウンコンダクタ24の設置位置を通り第1軸及び第2軸に交差する第3軸上に配置される一対の第3センサを含む。例えば、
図8に示す例示的な実施形態では、長手方向に交差する断面内にて、X軸(第1軸)及びY軸(第2軸)に交差する第3軸(直線Q3で示す)上に配置される一対の磁界センサ30E,30F(第3センサ)、及び、X軸(第1軸)及びY軸(第2軸)に交差する第3軸(直線Q4で示す)上に配置される一対の磁界センサ30G,30H(第3センサ)を含む。
【0053】
上述の実施形態によれば、風車翼2の長手方向に交差する断面内にて、上述の一対の第1センサ及び一対の第2センサに加え、第1軸及び第2軸に交差する第3軸上に一対の第3センサ(磁界センサ30D~30H)を配置したので、風車翼2において雷電流Cが流れた部位をより詳細に特定することができる。よって、風車翼2における被雷位置をより詳細に特定することができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、長手方向に直交する断面内における磁界センサ30とダウンコンダクタ24との距離L1と、同一断面内における磁界センサ30と翼本体10の表面との距離L2とは、0.75≦L1/L2≦1.25を満たす。なお、
図3において、磁界センサ30Aについての上述の距離L1及びL2を、L
1A及びL
2Aで示している。同様に、
図3において、磁界センサ30B~30Dについての上述の距離L1及びL2は、それぞれ、L
1B~L
1D、及び、L
2B~L
2Dである。
【0055】
上述の実施形態によれば、磁界センサ30とダウンコンダクタ24との距離L1と、磁界センサ30と翼本体10の表面との距離L2との比が1に近く、すなわち、L1とL2とは同程度である。したがって、雷電流のまわりに発生する磁場の磁界センサ30の位置での強度が、同じ大きさの雷電流がダウンコンダクタ24に流れた場合と翼本体10の表面を流れた場合とで同程度となる。よって、ダウンコンダクタ24及び翼本体10のどちらに雷電流Cが流れたとしても、磁界センサ30の位置における磁界Mを適切に検出することができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、例えば
図2に示すように、少なくとも一対の磁界センサ30は、長手方向において、翼本体10の翼先端16と翼根15との中央位置よりも翼根15側に設けられる翼根側センサ32を含む。なお、
図2において、長手方向における翼本体10の長さはSであり、翼根15又は翼先端16からその半分の長さ(S/2)の位置が上述の中央位置である。
【0057】
上述の実施形態によれば、風車翼2のうち、ダウンコンダクタ24又は翼本体10をグラウンドに向かって流れる雷電流が通過する翼根15側の領域に翼根側センサ32(磁界センサ30)を設けたので、雷電流Cのまわりに発生する磁界Mを適切に検出することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、例えば
図2に示すように、少なくとも一対の磁界センサ30は、長手方向における複数の位置にそれぞれ設けられる複数対の磁界センサ30を含む。
【0059】
上述の実施形態によれば、翼本体10の内部にて、長手方向における複数の位置に少なくとも一対の磁界センサ30をそれぞれ設置したので、長手方向の各位置における磁界センサ30の検出結果に基づいて、長手方向における被雷位置の範囲を特定することができる。また、長手方向の各位置での磁界センサ30の検出結果に基づく雷電流の流れた部位の判定結果に基づいて、例えば、翼本体10を流れる雷電流が、風車翼2における長手方向の途中でダウンコンダクタ24に流入したことを検出することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、例えば
図2に示すように、少なくとも一対の磁界センサ30は、長手方向において、翼本体10の翼先端16と翼根15との中央位置よりも翼根15側に設けられる少なくとも一対の翼根側センサ32と、上述の中央位置よりも翼先端16側に設けられる複数対の翼先端側センサ34と、を含む。そして、翼先端側センサ34の個数は、翼根側センサ32の個数よりも多い。
【0061】
風車翼2においては、翼根15側部分に比べて翼先端16側部分の方が落雷しやすい傾向がある。この点、上述の実施形態によれば、翼先端16側の領域に比較的多数の翼先端側センサ34(磁界センサ30)を設けたので、風車翼2のうち比較的落雷しやすい翼先端16側領域において、雷電流の流れる部位や被雷位置をより詳細に特定することができる。このため、風車翼2全体として、磁界センサ30の設置個数を抑えながら、効率的に被雷位置を特定することができる。
【0062】
幾つかの実施形態では、長手方向に直交する第1断面(例えば、
図2のA-Aの位置での断面)内における翼先端側センサ34の個数は、前記長手方向に直交する第2断面(例えば、
図2のB-Bの位置での断面)内における翼根側センサ32の個数よりも多い。例えば、翼根15側の第2断面では、
図7A~7Bに示すようにX軸方向にてダウンコンダクタ24の両側に一対の翼根側センサ32を配置するとともに、翼先端16側の第1断面では、
図9に示すようにX軸方向及びY軸方向の各々にてダウンコンダクタ24の両側に一対の翼根側センサ32(合計二対の翼根側センサ32)を配置するようにしてもよい。
【0063】
上述の実施形態によれば、長手方向に直交する断面における磁界センサ30の個数が、翼根15側に比べて翼先端16側にて多くなるようにしたので、風車翼2のうち比較的落雷しやすい翼先端16側領域において、雷電流の流れる部位や被雷位置をより詳細に特定することができる。このため、風車翼2全体として、磁界センサ30の設置個数を抑えながら、効率的に被雷位置を特定することができる。
【0064】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0065】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風車翼(2)は、
翼本体(10)と、
前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタ(24)と、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に配置され、該位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサ(30)と、
を備える。
【0066】
雷電流が風車翼を流れるとき、雷電流のまわりに磁界が発生する。ここで、磁界センサの位置における前述の磁界の向きは、風車翼において雷電流が流れる部位(ダウンコンダクタ又は翼本体(シェル等)等)と、磁界センサとの位置関係によって異なる。この点、上記(1)の構成によれば、風車翼の内部において一対の磁界センサをダウンコンダクタの両側に設けたので、風車翼に雷電流が流れたときに磁界センサによって検出される磁界の方向に基づいて、雷電流がダウンコンダクタを流れたか否かを判別することができる。例えば、一対の磁界センサによって検出される磁界の向きが同一であるときには、雷電流がダウンコンダクタ以外の部位(翼本体等)を流れたと判別することができるとともに、風車翼のうちレセプタの設置部位以外の箇所(翼本体等)に落雷したと特定することができる。よって、風車翼における被雷位置を適切に特定することができる。
【0067】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記ダウンコンダクタからグラウンドに向かう雷電流の経路上に設けられ、前記雷電流の極性を検出するための雷電流センサ(36)を備える。
【0068】
雷電流は、正極性をもつ場合と負極性をもつ場合とがあり、雷電流の極性に応じて、雷電流のまわりに発生する磁界の向きは異なる。この点、上記(2)の構成によれば、ダウンコンダクタからグラウンドに向かう雷電流の経路上に設けた雷電流センサにより、雷電流の極性を検出可能である。したがって、上述の磁界センサで検出される磁界の向き、及び、雷電流センサによって検出される雷電流の極性に基づいて、風車翼において雷電流が流れた部位をより詳細に特定することができる。よって、風車翼における被雷位置をより詳細に特定することができる。
【0069】
なお、翼本体をグラウンドに向かって流れる雷電流は、通常、グラウンドに到達する前にダウンコンダクタに流入する。よって、翼本体に落雷して翼本体を雷電流が流れる場合であっても、上述の雷電流センサによって、雷電流の極性を検出することができる。また、雷電流センサによって雷電流の大きさを検出すれば、検出された雷電流の大きさに基づき、落雷による風車翼の損傷の程度を推定することができる。よって、このようにして得られた風車翼の損傷の程度に係る情報を活用して風車翼のメンテナンスを効果的に行うことができる。
【0070】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも一対の磁界センサは、
前記長手方向に交差する断面内にて、前記ダウンコンダクタの設置位置を通る第1軸(例えば上述の直線Q2方向の軸)上に配置される第1センサと、
前記断面内にて、前記設置位置を通り前記第1軸に直交する第2軸(例えば上述の直線Q1方向の軸)上に配置される第2センサと、を含む。
【0071】
上記(3)の構成によれば、風車翼の長手方向に交差する断面内にて、上述の第1軸上に第1センサ(磁界センサ)を配置するとともに、第1軸に直交する第2軸上に第2センサ(磁界センサ)を配置したので、風車翼において雷電流が流れた部位をより詳細に特定することができる。よって、風車翼における被雷位置をより詳細に特定することができる。
【0072】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記断面内にて、前記ダウンコンダクタの前記設置位置を通り前記第1軸及び前記第2軸に交差する第3軸上(例えば上述の直線Q3方向又は直線Q4方向の軸)に配置される第3センサを含む。
【0073】
上記(4)の構成によれば、風車翼の長手方向に交差する断面内にて、上述の第1センサ及び第2センサに加え、第1軸及び第2軸に交差する第3軸上に第3センサ(磁界センサ)を配置したので、風車翼において雷電流が流れた部位をより詳細に特定することができる。よって、風車翼における被雷位置をより詳細に特定することができる。
【0074】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記長手方向に直交する断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの一方と前記ダウンコンダクタとの距離L1と、前記断面内における前記少なくとも一対の磁界センサの前記一方と前記翼本体の表面との距離L2とは、0.75≦L1/L2≦1.25を満たす。
【0075】
上記(5)の構成によれば、磁界センサとダウンコンダクタとの距離L1と、磁界センサと翼本体の表面との距離L2との比が1に近く、すなわち、L1とL2とは同程度である。したがって、雷電流のまわりに発生する磁場の磁界センサの位置での強度が、同じ大きさの雷電流がダウンコンダクタに流れた場合と翼本体の表面を流れた場合とで同程度となる。よって、ダウンコンダクタ及び翼本体のどちらに雷電流が流れたとしても、磁界センサの位置における磁界を適切に検出することができる。
【0076】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記ダウンコンダクタは、前記翼本体の内部に設けられる。
【0077】
上記(6)の構成によれば、ダウンコンダクタが翼本体の内部に設けられた風車翼において、磁界センサによって検出される磁界の方向に基づいて、雷電流がダウンコンダクタを流れた可能性の有無を判別可能である。よって、風車翼における被雷位置をある程度特定することができる。
【0078】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記長手方向において、前記翼本体の翼先端(16)と翼根(15)との中央位置よりも前記翼根側に設けられる翼根側センサ(32)を含む。
【0079】
上記(7)の構成によれば、風車翼のうち、ダウンコンダクタ又は翼本体をグラウンドに向かって流れる雷電流が通過する翼根側の領域に翼根側センサ(磁界センサ)を設けたので、雷電流のまわりに発生する磁界を適切に検出することができる。
【0080】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記少なくとも一対の磁界センサは、前記長手方向における複数の位置にそれぞれ設けられる複数対の磁界センサを含む。
【0081】
上記(8)の構成によれば、翼本体の内部にて、長手方向における複数の位置に少なくとも一対の磁界センサをそれぞれ設置したので、長手方向の各位置における一対の磁界センサの各々の検出結果に基づいて、長手方向における被雷位置の範囲を特定することができる。また、長手方向の各位置での少なくとも一対の磁界センサの検出結果に基づく雷電流の流れた部位の判定結果に基づいて、例えば、翼本体を流れる雷電流が、風車翼における長手方向の途中でダウンコンダクタに流入したことを検出することができる。
【0082】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記複数対の磁界センサは、前記長手方向において、前記翼本体の翼先端と翼根との中央位置よりも前記翼根側に設けられる少なくとも一対の翼根側センサ(32)と、前記中央位置よりも前記翼先端側に設けられる複数対の翼先端側センサ(34)と、を含み、
前記複数対の翼先端側センサの個数は、前記少なくとも一対の翼根側センサの個数よりも多い。
【0083】
風車翼においては、翼根側部分に比べて翼先端側部分の方が落雷しやすい傾向がある。この点、上記(9)の構成によれば、翼先端側の領域に比較的多数の翼先端側センサ(磁界センサ)を設けたので、風車翼のうち比較的落雷しやすい翼先端側領域において、雷電流の流れる部位や被雷位置をより詳細に特定することができる。このため、風車翼全体として、磁界センサの設置個数を抑えながら、効率的に被雷位置を特定することができる。
【0084】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記長手方向に直交する第1断面内における前記複数対の翼先端側センサの個数は、前記長手方向に直交する第2断面内における前記少なくとも一対の翼根側センサの個数よりも多い。
【0085】
上記(10)の構成によれば、長手方向に直交する断面における磁界センサの個数が、翼根側に比べて翼先端側にて多くなるようにしたので、風車翼のうち比較的落雷しやすい翼先端側領域において、雷電流の流れる部位や被雷位置をより詳細に特定することができる。このため、風車翼全体として、磁界センサの設置個数を抑えながら、効率的に被雷位置を特定することができる。
【0086】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るモニタリング装置(50)は、
翼本体と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタと、を含む風車翼のモニタリング装置であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられ、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するための少なくとも一対の磁界センサと、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部(42)と、
を備える。
【0087】
上記(11)の構成によれば、風車翼の内部において一対の磁界センサをダウンコンダクタの両側に設けたので、風車翼に雷電流が流れたときに磁界センサによって検出される磁界の方向に基づいて、雷電流がダウンコンダクタを流れたか否かを判別することができる。よって、風車翼における被雷位置を適切に特定することができる。
【0088】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置(1)は、
上記(1)乃至(10)の何れか一項に記載の風車翼を含む風車ロータ(5)と、
前記風車ロータの回転によって駆動されるように構成された発電機と、
前記少なくとも一対の磁界センサの各々の検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るための被雷位置情報取得部(42)を含むモニタリング装置(50)と、
を備える。
【0089】
上記(11)の構成によれば、風車翼の内部において一対の磁界センサをダウンコンダクタの両側に設けたので、風車翼に雷電流が流れたときに磁界センサによって検出される磁界の方向に基づいて、雷電流がダウンコンダクタを流れたか否かを判別することができる。よって、風車翼における被雷位置を適切に特定することができる。
【0090】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る風車翼のモニタリング方法は、
翼本体(10)と、前記翼本体の長手方向に沿って延在するダウンコンダクタ(24)と、を含む風車翼のモニタリング方法であって、
前記翼本体の内部にて前記ダウンコンダクタを挟む位置に前記風車翼内に設けられた少なくとも一対の磁界センサ(30)を用いて、前記位置の各々における局所的な磁界を検出するステップと、
前記少なくとも一対の磁界センサの検出信号に基づいて、前記風車翼の被雷位置に関する情報を得るステップと、
を備える。
【0091】
上記(12)の方法によれば、風車翼の内部において一対の磁界センサをダウンコンダクタの両側に設けたので、風車翼に雷電流が流れたときに磁界センサによって検出される磁界の方向に基づいて、雷電流がダウンコンダクタを流れたか否かを判別することができる。よって、風車翼における被雷位置を適切に特定することができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0093】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0094】
1 風力発電装置
2 風車翼
4 ハブ
5 ロータ
6 タワー
8 ナセル
10 翼本体
11 前縁
12 後縁
13 負圧面
14 圧力面
15 翼根
16 翼先端
20 レセプタ
21 レセプタ
22 レセプタ
24 ダウンコンダクタ
26 ダウンコンダクタ
30,30A~30H 磁界センサ
32 翼根側センサ
34 翼先端側センサ
36 雷電流センサ
40 処理装置
42 被雷位置情報取得部
50 モニタリング装置
C 雷電流
M 磁界