IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マキタの特許一覧

<>
  • 特許-打ち込み工具 図1
  • 特許-打ち込み工具 図2
  • 特許-打ち込み工具 図3
  • 特許-打ち込み工具 図4
  • 特許-打ち込み工具 図5
  • 特許-打ち込み工具 図6
  • 特許-打ち込み工具 図7
  • 特許-打ち込み工具 図8
  • 特許-打ち込み工具 図9
  • 特許-打ち込み工具 図10
  • 特許-打ち込み工具 図11
  • 特許-打ち込み工具 図12
  • 特許-打ち込み工具 図13
  • 特許-打ち込み工具 図14
  • 特許-打ち込み工具 図15
  • 特許-打ち込み工具 図16
  • 特許-打ち込み工具 図17
  • 特許-打ち込み工具 図18
  • 特許-打ち込み工具 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
B25C1/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020177264
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068526
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 勲
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039064(JP,A)
【文献】特開2019-141952(JP,A)
【文献】特開2017-087414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/00 - 1/18
B25C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに内装され、打ち込み方向に移動して打ち込み具を打撃するドライバと、前記ドライバに打撃力を付与する圧縮バネとを具備する打撃機構と、
前記本体ハウジングに設けられ、前記圧縮バネの付勢力を打ち込み方向の前方で受ける前部フレームと、
前記本体ハウジングに設けられ、前記圧縮バネの付勢力を打ち込み方向の後方で受ける後部フレームと、
モータによって回転し、前記ドライバを前記圧縮バネの付勢力に抗して後退させるギヤと、前記ギヤを回転可能に支持する保持プレートを具備する戻し機構と
前記保持プレートの前部を前記前部フレームに保持する前部保持部材を有する打ち込み工具。
【請求項2】
請求項1記載の打ち込み工具であって、
前記前部フレームと前記後部フレームを連結する連結部材と、
前記後部フレームに設けられて、前記戻し機構の後部を保持する後部保持部材を有する打ち込み工具。
【請求項3】
請求項2記載の打ち込み工具であって、
前記前部フレームと前記後部フレームと前記前部保持部材と前記後部保持部材が金属製である打ち込み工具。
【請求項4】
請求項2又は3記載の打ち込み工具であって、
記保持プレートは、前記前部保持部材に保持される前記前部と、前記後部保持部材に保持される前記後部を有し、前記前部と前記後部の少なくとも一方が前記保持プレートの前後方向中央領域よりも幅広である打ち込み工具。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項記載の打ち込み工具であって、
前記戻し機構が、前記前部保持部材と前記後部保持部材で上下に変位不能に保持された打ち込み工具。
【請求項6】
請求項2~5の何れか1項記載の打ち込み工具であって、
前記前部保持部材と前記後部保持部材の少なくとも一方に、前記戻し機構の左右方向の位置ずれを規制するストッパ部を有する打ち込み工具。
【請求項7】
請求項4記載の打ち込み工具であって、
前記前部保持部材が前記前部フレームから下方へ延在され、前記後部保持部材が前記後部フレームから下方へ延在されており、前記前部保持部材と前記後部保持部材と前記保持プレートとの間に形成される領域内に前記ギヤが配置された打ち込み工具。
【請求項8】
請求項2~7の何れか1項記載の打ち込み工具であって、
前記前部フレームと前記後部フレームが、前記連結部材を介して左右両側で相互に連結された打ち込み工具。
【請求項9】
請求項2~7の何れか1項記載の打ち込み工具であって、
前記連結部材に軸部材を用いた打ち込み工具。
【請求項10】
請求項9記載の打ち込み工具であって、
前記軸部材は前記圧縮バネの内周側を貫通して配置された打ち込み工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば充電式のタッカ等の打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば石膏ボードや木材の結合に用いられるタッカ等の打ち込み工具には、圧縮バネの付勢力を打ち込み力として利用する、通称機械バネ式の打ち込み工具が提供されている。特許文献1に開示された機械バネ式の打ち込み工具は、電動モータを駆動源として打撃用のドライバを圧縮バネの打ち込み力(付勢力)に抗して後退端位置まで後退させるドライバ戻し機構を備えている。
【0003】
ドライバ戻し機構では、電動モータの回転出力により巻き上げギヤを回転させる。巻き上げギヤの上面に係合ピンが取り付けられている。係合ピンは巻き上げギヤの回転中心から偏心している。係合ピンが、ドライバを結合した打撃フレームに係合される。電動モータが起動すると巻き上げギヤが回転する。これにより発生する係合ピンのドライバ後退方向の変位により打撃フレームが圧縮バネの付勢力に抗して後退端位置にリフトされる。後退端位置において巻き上げギヤがさらに回転して係合ピンの打撃フレームに対する係合が外れることで、圧縮バネの付勢力によりドライバが下動して打ち込み具の打撃がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6704824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように機械バネ式の打ち込み工具におけるドライバ戻し機構では、係合ピン及び巻き上げギヤに対して圧縮バネの付勢力が打撃フレームを介して間接的に付加される。このため、圧縮ばねの付勢力を強くして打ち込み力を高めるためには、巻き上げギヤの支持剛性を高める必要がある。本開示は、巻き上げギヤの支持剛性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、打ち込み工具は、打ち込み方向に移動して打ち込み具を打撃するドライバと、ドライバに打撃力を付与する圧縮バネとを備える。圧縮バネの付勢力は、打ち込み方向の前方で前部フレームで受けられる。圧縮バネの付勢力は、打ち込み方向の後方で後部フレームで受けられる。戻し機構により、ドライバを圧縮バネの付勢力に抗して後退させる。戻し機構は、モータによって回転するギヤを有する。前部フレームに、戻し機構の前部を保持する前部保持部材が設けられる。
【0007】
従って、戻し機構の前部が前部保持部材を介して前部フレームに保持される。前部フレームは圧縮バネの付勢力を打ち込み方向の前方で受けることから高い支持剛性が確保されている。これにより、従来樹脂製の本体ハウジングに支持した構成に比して戻し機構の支持剛性が高まる。
【0008】
本開示の他の特徴によると、前部フレームと後部フレームは連結部材で連結されている。戻し機構の後部が、後部フレームに設けられた後部保持部材に保持される。従って、戻し機構の前部に加えて後部の支持剛性が高められることで戻し機構の支持剛性が一層高まる。
【0009】
本開示の他の特徴によると、前部フレームと後部フレームと前部保持部材と後部保持部材が金属製である。従って、これら部材としての剛性が確保されて、戻し機構の支持剛性が高まる。
【0010】
本開示の他の特徴によると、戻し機構は、ギヤを回転可能に支持する保持プレートを有する。保持プレートは、前部保持部材に保持される前部と、後部保持部材に保持される後部を有する。前部と後部の少なくとも一方が保持プレートの前後方向中央領域よりも幅広である。従って、保持プレートの幅方向(左右方向)について戻し機構の支持剛性が高まる。
【0011】
本開示の他の特徴によると、戻し機構が、前部保持部材と後部保持部材で上下に変位不能に保持される。従って、戻し機構の支持剛性が高まる。
【0012】
本開示の他の特徴によると、前部保持部材と後部保持部材の少なくとも一方に、戻し機構の左右方向の位置ずれを規制するストッパ部を有する。従って、ストッパ部により戻し機構の左右方向の位置ずれが規制される。これにより戻し機構の支持剛性が高まる。
【0013】
本開示の他の特徴によると、前部保持部材が前部フレームから下方へ延在され、後部保持部材が後部フレームから下方へ延在されており、前部保持部材と後部保持部材と保持プレートとの間に形成される領域内にギヤが配置される。従って、剛体で囲まれた領域内にギヤが配置される。これによりギヤのひずみが抑制される。
【0014】
本開示の他の特徴によると、前部フレームと後部フレームが連結部材を介して左右両側で相互に連結されている。従って、前部フレームと後部フレームが連結部材を介してその左右両側で相互に連結されることで、前部フレームと後部フレームの支持剛性が高まる。これにより戻し機構の支持剛性が高まる。
【0015】
本開示の他の特徴によると、連結部材に軸部材が用いられる。従って、前部フレームと後部フレームが軸部材を介して連結されている。これにより、前部フレームと後部フレームの支持剛性が高まる。連結部材には、軸部材に代えて又は加えて帯板鋼板を素材とする側壁部材を用いることができる。前部フレームと後部フレームの左右両側に側壁部材を掛け渡して結合することで、前部フレームと後部フレームが相互に連結される。
【0016】
本開示の他の特徴によると、軸部材は圧縮バネの内周側を貫通して配置されている。従って、圧縮ばねの付勢力に対する前部フレームと後部フレームの支持剛性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る打ち込み工具の右側面図である。本図は、右側の半割ハウジングを取り外した状態で示されている。また、打撃部を一部破断して示されている。
図2図1中II矢視図であって、打ち込み工具の後面図である。
図3図1中III矢視図であって、打ち込み工具の上面図である。
図4】工具本体部の縦断面図である。
図5図4中V-V線断面矢視図であって、工具本体部の横断面図である。
図6】戻し機構と戻し機構と打撃機構の斜視図である。
図7】戻し機構の斜視図である。
図8】後部フレームの斜視図である。
図9】前部フレームの斜視図である。
図10】工具本体の動作説明図である。本図は、ドライバが前端位置に移動した打ち込み時の状態を示している。
図11図10中XI-XI線断面矢視図である。本図は、戻し機構の第1係合ピンが打撃フレームの第1係合部に係合し始めた状態を示している。
図12】工具本体の動作説明図である。本図は、ドライバが打ち込み時の前端位置から後方へ戻される途中の段階を示している。
図13図12中XIII-XIII線断面矢視図である。本図は、戻し機構の第1係合ピンが打撃フレームの第1係合部に係合した状態を示している。
図14】工具本体の動作説明図である。本図は、ドライバが後方へ戻される途中の段階を示している。
図15図14中XV-XV線断面矢視図である。本図は、戻し機構の第2係合ピンが打撃フレームの第2係合部に係合し始めた状態を示している。
図16】工具本体の動作説明図である。本図は、ドライバが後端位置に戻された段階を示している。
図17図16中XVII-XVII線断面矢視図である。本図は、戻し機構の第2係合ピンが打撃フレームの第2係合部から外れる直前の状態を示している。
図18】工具本体の動作説明図である。本図は、ドライバが前端位置に移動して打ち込み具の打ち込みがなされた状態を示している。
図19図18中XIX-XIX線断面矢視図である。本図は、戻し機構の第2係合ピンが打撃フレームの第2係合部から外れた直後であって、戻し機構の第1係合ピンが打撃フレームの第1係合部に接近する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図1図19に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態では打ち込み工具1として、ばねの付勢力を打ち込み力として利用する打ち込み工具で、いわゆる充電式タッカと称されるものを例示する。本実施形態の打ち込み工具1は、工具本体部10と、駆動源としての電動モータ21を内装したモータ収容部20と、使用者が把持するグリップ部4を備えている。モータ収容部20の前方に沿って、多数の打ち込み具を装填するためのマガジン3を備えている。モータ収容部20の下部とグリップ部4の下部に跨ってバッテリ取り付け部5を備えている。バッテリ取り付け部5の下面に沿って、電源としてのバッテリパック6が取り付けられる。バッテリ取り付け部6の上方に沿って、矩形平板形のコントローラ7が収容されている。コントローラ7によって主として電動モータ21の動作制御がなされる。
【0019】
工具本体部10は、概ね円筒形で左右半割り構造の本体ハウジング11を有する。本体ハウジング11内に、打撃機構30と戻し機構40が内装されている。以下の説明では、打ち込み具の打ち込み方向を前側、反打ち込み方向を後側とする。従って、打撃ドライバ31が前進することにより、打ち込み具Tが打撃されて被打ち込み材Wに打ち込まれる。打撃後に、打撃ドライバ31が戻し機構40により後方へ戻される。使用者は当該打ち込み工具1の後方に位置する。従って、左右方向については使用者を基準として用いる。
【0020】
本体ハウジング11は、左右の半割ハウジング11L,11Rが図2,3中符号Jで示す結合部で突き合わされた左右半割り構造を有する。本体ハウジング11の下部にはグリップ部4とモータ収容部20とバッテリ取り付け部5のハウジングが一体に成形されている。これらを含めた全体として左右半割り構造のハウジングが用いられている。本体ハウジング11の上面には、前後に長い矩形の開口部11aが設けられている。開口部11aを経て打撃ドライバ31及びその周辺のメンテナンス作業(例えばドライバの交換作業)を行うことができる。通常の使用時には開口部11aは蓋部11bで塞がれる。
【0021】
工具本体部10の前部に打ち込みノーズ部2が設けられている。打ち込み具打撃用の打撃ドライバ31が打ち込みノーズ部2の打ち込み通路内を前進することにより打ち込み具Tが打撃されてその先端の射出口2aから打ち出される。打ち込みノーズ部2は、工具本体部10に対して前後方向(打ち込み方向)に一定の範囲で変位可能に設けられている。射出口2aを被打ち込み材Wに押し付けて打ち込みノーズ部2を相対的に後退させた状態でのみ打ち込み動作がなされる。打ち込みノーズ部2の後退動作は、作動アーム部2bを介してノーズセンサ8により検知される。
【0022】
電動モータ21は、打ち込みノーズ部2を後退動作させた状態で、グリップ部4の上部前面に設けたトリガ形式のスイッチレバー9を指先で引き操作することにより起動させることができる。スイッチレバー9の後方に起動スイッチ9aが内装されている。スイッチレバー9の引き操作により起動スイッチ9aがオンして電動モータ21が起動する。電動モータ21の起動により打撃ドライバ31が待機位置から後退端位置までリフトされ、その後打撃バネ17の付勢力により打撃ドライバ31が打ち込み方向に下動する。前進端に至った後、打撃ドライバ31は、電動モータ21を駆動源とする戻し機構40により待機位置まで戻される。電動モータ21は、スイッチレバー9を引き操作したままであっても、打撃後待機位置に至る段階で自動的に停止される。
【0023】
本体ハウジング11内には、前部フレーム12と後部フレーム13が設けられている。前部フレーム12は、本体ハウジング11の前部に固定されている。後部フレーム13は、本体ハウジング11の後部に固定されている。前部フレーム12の左右側部と後部フレーム13の左右側部との間は、鋼板製の側壁部材14により相互に結合されている。
【0024】
前部フレーム12と後部フレーム13は1本の軸部材15で相互に結合されている。図4に示すように軸部材15の前部は前部フレーム12の保持孔12aに保持され、軸部材15の後部は後部フレーム13の保持孔13aに保持されている。軸部材15はその前部でナット締めされて前部フレーム12と後部フレーム13に対して軸方向及び軸回りに変位不能に強固に固定されている。左右の側壁部材14と1本の軸部材15が、前部フレーム12と後部フレーム13を相互に強固に結合する連結部材として機能する。前部フレーム12と後部フレーム13との間に、打撃機構30が設けられている。打撃機構30は、打撃フレーム16と打撃バネ17を有している。
【0025】
図1,4に示すように軸部材15を介して打撃フレーム16が、前部フレーム12と後部フレーム13との間を前後に移動可能に支持されている。打撃フレーム16には円筒形の支持筒部16cが一体に設けられている。支持筒部16cに軸部材15が挿通されている。これにより、打撃フレーム16が軸部材15を介して前後に移動可能に支持されている。
【0026】
打撃フレーム16の上部に打撃ドライバ31の後部が1つの結合軸32を介して結合されている。打撃フレーム16と後部フレーム13との間に、打撃バネ17が介装されている。打撃バネ17の中心に軸部材15が挿通されている。打撃バネ17により打撃フレーム16が前進方向(打ち込み方向)に付勢されている。打撃バネ17の付勢力が打撃ドライバ31の打撃力となり、打ち込み具Tの打ち込み力となる。このため、打撃バネ17には、比較的線径及び巻き径が太い圧縮コイルバネが用いられている。
【0027】
打撃フレーム16の下面には、第1係合部16aと第2係合部16bが設けられている。打撃フレーム16の下面の前部側に第1係合部16aが設けられ、下面の後部側に第2係合部16bが設けられている。第2係合部16bは下方へ突き出す状態に設けられている。従って、第1係合部16aは、第2係合部16bよりも上方に配置されている。
【0028】
前部フレーム12の後面側且つ打撃フレーム16の前方には、前進端ダンパ18が取り付けられている。打撃時に打撃フレーム16が前進端ダンパ18に当接することで打撃時の衝撃が吸収される。一方、後部フレーム13の前面且つ打撃フレーム16の後方には、金属製のバネ座19が設けられている。バネ座19によって打撃バネ17の後部が位置ずれしないように保持されている。
【0029】
図1,4,6に示すように打撃機構30の下方に戻し機構40が設けられている。戻し機構40は、一つの戻しギヤ41を有する。戻しギヤ41には平歯車が用いられている。電動モータ21の出力軸に設けた駆動ギヤ21aが中間ギヤ42に噛み合わされている。中間ギヤ42が戻しギヤ41に噛み合わされている。電動モータ21の回転出力は、減速ギヤ列22により減速されて駆動ギヤ21aから出力される。電動モータ21の回転出力は、中間ギヤ42を介してさらに減速されて戻しギヤ41に出力される。電動モータ21が起動すると、戻しギヤ41が中間ギヤ42とは反対方向で、電動モータ21と同じ方向に回転する。図6,7中矢印で示すように本実施形態では、戻しギヤ41は図示反時計回り方向に回転する。
【0030】
戻しギヤ41と中間ギヤ42は、1つの保持プレート43の上面側にそれぞれ回転可能に支持されている。戻しギヤ41は、支軸46を介して保持プレート43に回転可能に支持されている。図5に示すように中間ギヤ42は支軸47を介して保持プレート43に回転可能に支持されている。保持プレート43の前部は、前部保持部材48により保持されている。前部保持部材48は前部フレーム12に一体化されている。保持プレート43の後部は、後部保持部材49により保持されている。後部保持部材49は、後部フレーム13に一体化されている。保持プレート43は、前部保持部材48と後部保持部材49により前後に挟まれた状態で保持されている。このように、保持プレート43は、前部保持部材48と後部保持部材49を介して前部フレーム12と後部フレーム13により強固に保持されている。保持プレート43の保持構造の詳細は後述する。
【0031】
戻しギヤ41の上面に、第1係合ローラ44と第2係合ローラ45が設けられている。第1係合ローラ44と第2係合ローラ45は、支軸46を中心とする同一円周上で、回転方向に相互に約120°の間隔をおいて配置されている。第1係合ローラ44に対して第2係合ローラ45が回転方向(反時計回り方向)の前側に位置されている。第1係合ローラ44は第2係合ローラ45よりも高さが高くなっている。
【0032】
図10以降に、戻し機構40による打撃フレーム16(打撃ドライバ31)の戻し動作が示されている。図10,11は、打撃機構30において打撃ドライバ31が打撃バネ17の付勢力により前進端に至って打ち込み具Tの打ち込みがなされた打ち込み完了段階を示している。この打ち込み完了段階でも電動モータ21の起動状態が継続されて、戻しギヤ41の回転が続行されている。これにより打ち込み完了段階で、第2係合ローラ45が第2係合部16bの前面側に係合される。
【0033】
図12,13に示すように第2係合ローラ45の第2係合部16bに対する係合状態で戻しギヤ41が図示矢印方向に回転することで、打撃フレーム16が打撃バネ17の付勢力に抗して後方へ戻される。図14,15に示すように電動モータ21により戻しギヤ41が矢印方向に回転することで、打撃フレーム16が後方へさらに戻される。この戻し途中の段階で、第2係合部16bに対する第2係合ローラ45の係合が外れると同時に、第1係合部16aの前面に第1係合ローラ44が係合される。これにより打撃フレーム16を打撃バネ17に抗して後方へ戻すための動力の受け渡しがなされる。第1係合部16aに対する第1係合ローラ44の係合状態により打撃フレーム16がさらに上動されてドライバ31が待機位置に戻される。ドライバ31が待機位置に戻された時点で電動モータ21が停止される。電動モータ21の停止のタイミングは、タイマー機能により予め下記の後退端センサ22により検知される上動端位置から一定時間の経過後に設定されている。打撃ドライバ31が待機位置に戻された時点で、電動モータ21が停止して一連の打ち込み動作が完了する。
【0034】
一連の打ち込み動作の完了後に、再度打ち込みノーズ部2を後退動作させた状態で、スイッチレバー9を引き操作すると電動モータ21が起動して打ち込み動作が開始される。待機位置では、第1係合部16aに第1係合ローラ44が当接された状態となっている。このため電動モータ21の起動により戻しギヤ41が回転することで打撃フレーム16が待機位置からさらに上動される。図16,17に示すように戻しギヤ41の回転により打撃フレーム16が後退端位置に戻されると、第2係合部16bにより後退端センサ23がオンされる。後退端センサ23がオンされることで上記したように電動モータ21を停止させるためのタイマー機能が作動開始される。
【0035】
打撃フレーム16が後退端位置に至った後、戻しギヤ41がさらに矢印方向に回転されることで、第1係合ローラ44が第1係合部16aから外れる。これにより、打撃フレーム16に対する戻し機構40の動力伝達が切り離される。このため、図18,19に示すように打撃フレーム16が打撃バネ17の付勢力により下動する。打撃フレーム16の下動により、打撃ドライバ31が打ち込みノーズ部2の打ち込み通路内を下動して打ち込み具Tの打ち込みがなされる。
【0036】
打撃フレーム16が下動する段階では、第1係合ローラ44と第2係合ローラ45が打撃フレーム16の移動経路外へ退出して干渉が回避される。上記したように打ち込み時点で電動モータ21の起動状態が続行されて戻しギヤ41の回転状態が継続される。このため、図19に示す状態から戻しギヤ41が矢印方向にさらに回転して、図11に示すように打撃フレーム16の第2係合部16bの前面に第2係合ローラ45が係合される。そのまま戻しギヤ41が矢印方向に回転することで打撃ドライバ31が待機位置に戻されるとともに、タイマー機能により電動モータ21が停止される。
【0037】
本実施形態は、戻し機構40の保持プレート43について特徴を有している。打撃ドライバ31の後退端位置への戻し動作では、打撃バネ17の大きな付勢力が第1係合ローラ44と第2係合ローラ45を介して戻しギヤ41に間接的に付加される。また、噛み合いを経て中間ギヤ42にも大きな回転抵抗が付加される。このため、特に戻しギヤ41と中間ギヤ42の支持構造については高い支持剛性が確保される必要がある。本実施形態は、戻しギヤ41と中間ギヤ42の支持剛性を高めるために保持プレート43に金属製の板材(板厚t)が用いられている。これにより、戻しギヤ41を例えば樹脂製の本体ハウジング11に直接支持する構成に比して支持剛性が高められている。
【0038】
保持プレート43の保持構造についても高い保持剛性が確保されている。上記したように保持プレート43の前部は前部保持部材48により保持されている。保持プレート43の後部は後部保持部材49により保持されている。図9に示すように前部保持部材48は、打撃機構30の前部フレーム12に一体に設けられている。図8に示すように後部保持部材49は、打撃機構30の後部フレーム13に一体に設けられている。打撃機構30の前部フレーム12と後部フレーム13は、左右の側壁部材14と軸部材15を介して直接的、間接的に大きな打撃力(打撃バネ17の付勢力)を受ける。大きな打撃力に対する剛性を確保するために、前部フレーム12と後部フレーム13は金属材(アルミニウム材)を素材として製作されている。このため、前部保持部材48と後部保持部材49も同じく金属材(アルミニウム材)を素材として製作されている。本実施形態では、前部フレーム12と前部保持部材48、後部フレーム13と後部保持部材49は、それぞれアルミダイキャストにより一体に成形されている。
【0039】
図7に示すように保持プレート43は、前部保持部材48に保持される前部43aと、後部保持部材49に保持される後部43bを有している。前部43aと後部43bの左右幅は前後方向の中央領域43cよりも幅広に設定されている。
【0040】
図9に示すように前部保持部材48は、前部フレーム12から下方へ延在されている。前部保持部材48の下部には、二股形の前保持部48aが設けられている。前保持部48aの左右幅は、保持プレート43の前部43aと同じ幅寸法に設定されている。前保持部48aの二股形状は後方へ向けて開口されている。前保持部48aの上縁部48aaと下縁部48abとの間に、保持プレート43の前部43aが進入されている。上縁部48aaと下縁部48abとの間隔は、保持プレート43を板厚tに合わせて適切に設定されている。これにより、保持プレート43の前部43aが板厚t方向にガタつきなく挿入されている。
【0041】
前保持部48aの左右幅方向の中央には、ブロック体形のストッパ部48bが設けられている。図7に示すようにストッパ部48bに対応して、保持プレート43の前部43aに矩形の位置決め凹部43dが設けられている。位置決め凹部43dは、前部43aの左右幅方向の中央に後方へ切り込むように設けられている。図5に示すように位置決め凹部43d内にストッパ部48bを挿入させた状態で前部43aが前保持部48aの上縁部48aaと下縁部48abとの間に進入される。これにより、保持プレート43の前部43aが前保持部48aに左右位置決めされた状態で保持されている。
【0042】
図8に示すように後部保持部材49は、後部フレーム13から下方へ延在されている。後部保持部材49の下部には、二股形の後保持部49aが設けられている。後保持部49aの左右幅は、保持プレート43の後部43bと同じ幅寸法に設定されている。後保持部49aの二股形状は前方へ向けて開口されている。後保持部49aの上縁部49aaと下縁部49abとの間に、保持プレート43の後部43bが進入されている。上縁部49aaと下縁部49abとの間隔は、保持プレート43の板厚tに合わせて適切に設定されている。これにより、保持プレート43の後部43bが板厚t方向にガタつきなく挿入されている。
【0043】
後保持部49aの左右幅方向の中央には、ブロック体形のストッパ部49bが設けられている。図7に示すようにストッパ部49bに対応して、保持プレート43の後部43bに矩形の位置決め凹部43eが設けられている。位置決め凹部43eは、後部43bの左右幅方向の中央に前方へ切り込むように設けられている。図5に示すように位置決め凹部43e内にストッパ部49bを挿入させた状態で後部43bが後保持部49aの上縁部49aaと下縁部49abとの間に進入される。これにより、保持プレート43の後部43bが後保持部49aに左右位置決めされた状態で保持されている。
【0044】
前部保持部材48の前保持部48aは、上縁部48aaの上面に設けた4つのリブ48dにより特に上下方向(保持プレート43の板厚t方向)の保持剛性が高められている。また、後部保持部材49の後保持部49aは、上縁部49aaの上面に設けた2つのリブ49dにより特に上下方向(保持プレート43の板厚t方向)の保持剛性が高められている。保持プレート43は、リブ48dで補強された前保持部48aとリブ49dで補強された後保持部49aとで前後を挟まれた状態で保持されている。
【0045】
以上のように構成した本実施形態に係る打ち込み工具1によれば、打撃ドライバ31を後退端側へ戻す戻し機構40(特に戻しギヤ41と中間ギヤ42)の支持剛性が高められる。これにより、戻し機構40の動力が打撃フレーム16に効率よく伝達されることから、打撃バネ17の付勢力を高めて打撃力の増大を図ることが容易になる。
【0046】
戻し機構40の少なくとも前部(保持プレート43の前部43a)が前部保持部材48を介して前部フレーム12に保持される。アルミダイキャスト製の前部フレーム12は打撃バネ17の付勢力(打ち込み力)を打ち込み方向の前方で受けることから高い支持剛性が確保されている。これにより、樹脂製の本体ハウジング11に直接支持した構成に比して戻し機構40の支持剛性が高まる。本実施形態では、戻し機構40の前部に加えて後部についても後部保持部材49を介して後部フレーム13に間接的に保持されることで、一層戻し機構40の本体ハウジング11に対する支持剛性が高められている。
【0047】
戻し機構40の前部と後部と保持する前部保持部材48と後部保持部材49がアルミダイキャストに成形された金属製であることで、戻し機構40の本体ハウジング11に対する支持剛性が高められる。
【0048】
保持プレート43は、前部保持部材48に保持される前部43aと、後部保持部材49に保持される後部43bを有する。前部43aと後部43bが前後方向の中央領域43cよりも幅広に形成されている。これにより、保持プレート43の前部保持部材48と後部保持部材49に対する左右傾き方向の保持剛性が高められる。
【0049】
前部フレーム12と後部フレーム13が連結部材としての軸部材15に加えて側壁部材14を介して左右両側で相互に連結されて相互の支持剛性が高められている。打撃機構30の前部フレーム12と後部フレーム13の支持剛性が高められることで、間接的に戻し機構40の支持剛性が高められている。
【0050】
戻し機構40の保持プレート43が、前部保持部材48と後部保持部材49で前後に挟まれて保持されることで、戻し機構40の支持剛性が一層高められている。
【0051】
前部保持部材48のストッパ部48bと、後部保持部材49のストッパ部49bによって、保持プレート43の左右方向の位置ずれが規制される。これによっても戻し機構40の主として左右方向の支持剛性が高められる。また、前部保持部材48のリブ48dと後部保持部材49のリブ49dにより保持プレート43の左右幅方向の傾きが規制される。これによっても戻し機構40の支持剛性が高められる。
【0052】
本実施形態によれば、図4に示すように戻し機構40の戻しギヤ41が、側面視で前部保持部材48(前部フレーム12)と後部保持部材49(後部フレーム13)と保持プレート43とで囲まれる領域内に配置される。このようにそれぞれ剛体である前部保持部材48(前部フレーム12)と後部保持部材49(後部フレーム13)と保持プレート43とで囲まれる領域内に配置されることで、戻しギヤ41のひずみが抑制される。
【0053】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、戻し機構40の前部と後部の双方について、金属製の前部保持部材48と後部保持部材49を介して前部フレーム12と後部フレーム13に支持する構成を例示したが、係る支持構造は大きな打撃力が付加される前部についてのみ適用し、後部については例えば樹脂製の本体ハウジング11に直接支持する構成としてもよい。
【0054】
また、前部フレーム12と前部保持部材48、後部フレーム13と後部保持部材49をアルミダイキャスト製の金属製とする構成を例示したが、これらを高剛性の樹脂製としてもよい。また、保持プレート43についても金属製とする他、高剛性の樹脂製としてもよい。
【0055】
さらに、前部フレーム12と前部保持部材48を一体で設け、後部フレーム13と後部保持部材49を一体で設けた構成を例示したが、別体で製作して例えばねじ結合あるいは接着により一体化する構成としてもよい。
【0056】
また、バッテリパック6を電源とする直流電源式の打ち込み工具1を例示したが、商用100V等の交流電源を電源とする打ち込み工具についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
T…打ち込み具
W…被打ち込み材
1…打ち込み工具(充電式タッカ)
2…打ち込みノーズ部、2a…射出口、2b…作動アーム部
3…マガジン
4…グリップ部
5…バッテリ取り付け部
6…バッテリパック
7…コントローラ
8…ノーズセンサ
9…スイッチレバー
9a…起動スイッチ
10…工具本体部
11…本体ハウジング
11L,11R…半割ハウジング、11a…開口部、11b…蓋部
J…半割ハウジング11L,11Rの結合部
12…前部フレーム
12a…保持孔
13…後部フレーム
13a…保持孔
14…側壁部材
15…軸部材
16…打撃フレーム
16a…第1係合部、16b…第2係合部、16c…支持筒部
17…打撃バネ
18…前進端ダンパ
19…後退端ダンパ
20…モータ収容部
21…電動モータ、21a…駆動ギヤ
22…減速ギヤ列
23…後退端センサ
30…打撃機構
31…打撃ドライバ
32…結合軸
40…戻し機構
41…戻しギヤ
42…中間ギヤ
43…保持プレート
43a…前部、43b…後部、43c…中央領域、43d,43e…位置決め凹部
44…第1係合ローラ
45…第2係合ローラ
46,47…支軸
48…前部保持部材
48a…前保持部、48aa…上縁部、48ab…下縁部
48b…ストッパ部、48d…リブ
49…後部保持部材
49a…後保持部、49aa…上縁部、49ab…下縁部
49b…ストッパ部、49d…リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19