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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】エンジン駆動型発電機
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
H02P9/04 J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020185863
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075214
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古澤 孝志
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-110098(JP,A)
【文献】特開2015-201918(JP,A)
【文献】特開平06-237543(JP,A)
【文献】特開2003-235179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機本体と,前記発電機本体を駆動するエンジンを備えたエンジン駆動型発電機において,
前記発電機本体を,中性点を中心に120°の位相差でY結線された三相巻線と,前記三相巻線に接続された補助巻線を備えた交流発電機により構成し,該発電機本体に前記三相巻線で発生した所定電圧の三相交流を出力する三相出力部と,前記三相巻線の隣接する2線と前記補助巻線の組み合わせにより発生した所定電圧の単相交流を出力する単相出力部をそれぞれ設け,前記三相交流と単相交流を同時に取り出し可能に構成し,
前記発電機本体の前記単相出力部に,単相用遮断器と単相出力回路を介して単相出力端子台を接続すると共に,
前記発電機本体の前記三相出力部に,三相用遮断器と三相出力回路を介して三相出力端子台を接続し,
前記三相出力回路に,前記発電機本体が出力した三相交流を一旦直流に変換した後,指定された周波数の三相交流に変換して出力するインバータを設け,
前記インバータをバイパスして前記インバータの一次側と二次側で前記三相出力回路と連通するバイパス回路を設けると共に,
前記三相用遮断器と前記三相出力端子台間の接続を,前記三相出力回路,又は前記バイパス回路のうち選択したいずれか一方のみを介して行う,三相出力切替手段(ただし,予め設定された条件に従い選択する回路を自動的に変更するものを除く。)を設けたことを特徴とするエンジン駆動型発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,発電機本体を駆動するエンジンを備えたエンジン駆動型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場やイベント会場などの特に屋外において,電力により稼動する各種の作業機,照明器具,映像・音響機器,その他の機器(本明細書において単に「負荷」という。)を使用する場合,このような負荷に対する電力の供給源としてエンジン駆動型発電機が使用されている。
【0003】
この種エンジン駆動型発電機に発電機本体として搭載される交流発電機は,電機子コイルV,W,Uの結線を図5に示す三相結線から図6に示す単相結線に切り替えることで,1台の発電機本体で三相結線時には三相交流(一例として三相200Vの交流)が,単相結線時には単相交流(一例として,単相200V及び単相100Vの交流)が出力されるように構成されている。
【0004】
そして,後掲の特許文献1には,このような電機子コイルV,W,Uの結線状態の切り替えという複雑な作業を,単一のカムスイッチを一回操作するだけで簡単に行うことができるようにすることで,1台の交流発電機で選択的に単相交流と三相交流のいずれも出力することができるようにした可変設定型発電機が提案されている(特許文献1の請求項1,図1参照)。
【0005】
このように,特許文献1に記載の発電機では,1台の発電機で単相交流,三相交流のいずれの出力も得られるが,単相交流と三相交流の出力は択一的に行えるものであって,単相交流と三相交流を同時に出力することはできない。
【0006】
しかし,例えばエンジン駆動型発電機を工事現場に電源として設置する場合を例に考えると,工事現場で使用する負荷には,例えば作業現場に侵入した水を排出するための水中ポンプなどの三相交流電力の供給を必要とする負荷(本明細書において「三相負荷」という。)と,工事現場に設置された仮設事務所内の照明器具や空調設備(エアコン),その他の備品(パソコン)等の単相交流電力の供給を必要とする負荷(本明細書において,「単相負荷」という。)が存在する。
【0007】
そのため,特許文献1に記載の発電機を発電機本体として搭載したエンジン駆動型発電機をこのような工事現場に電源として設置する場合,三相負荷用の電源としてのエンジン駆動型発電機と,単相負荷用の電源としてのエンジン駆動型発電機をそれぞれ別個に準備する必要があり,発電機の調達,運搬,設置などに多大な労力負担や経済的負担が強いられるだけでなく,工事現場内における設置スペースの確保も必要となる。さらに設置する発電機の台数分の燃料を消費することから経済的負担だけでなく環境への負荷が高いものとなっている。
【0008】
このように,単相交流又は三相交流のいずれか一方を選択的にしか出力することができない従来の発電機に対し,単相交流と三相交流の出力を同時に行うことができるようにした発電機も提案されている。
【0009】
このような発電機の構成として,発電機本体10の電機子コイルに,図7及び図8に示すようにY結線された三相巻線V,W,Uの他に,所定の補助巻線N又はN,Nを追加することで,図5及び図6を参照して説明したように電機子コイルの結線状態を変更することなく,一台の交流発電機で単相交流と三相交流の同時出力が得られるようにした交流発電機も提案されている(特許文献2の請求項1,図1図2,及び特許文献3の請求項1,図3参照)。
【0010】
また,前掲の特許文献2又は3に記載の同期発電機(図7図8参照)では,出力周波数を変更するためには発電機の回転速度,従ってエンジンの回転速度の変更が必要となることに鑑み,後掲の特許文献4には,図9に示すように発電機本体の出力を整流器で直流電圧に変換した後,三相インバータで三相交流電圧に変換し,この三相交流電圧を,二次側結線をスター型結線とした三相変圧器に入力し,この三相変圧器の二次側結線の所定の位置間より出力を得ることで,エンジンの回転速度を変化させることなく,発電機本体が出力した三相交流を所望周波数の単相交流と三相交流に変更して同時に出力できるようにしたインバータ式のエンジン駆動型発電機も提案されている(特許文献4の請求項1,図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2006-87242号公報
【文献】特開2015-201918号公報
【文献】特開2004-72985号公報
【文献】特開2012-231567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで,三相負荷が三相誘導電動機を備えるものである場合,この三相誘導電動機は供給電力の周波数に比例して回転速度が変化することから,三相出力端子台より出力される三相出力の周波数を可変とすることができれば,三相負荷を定格回転速度で運転するだけでなく,工事現場の状況等に応じて定格回転速度以下の任意の回転速度で運転させることができるようになり,便利である。
【0013】
また,三相誘導電動機を備えた三相負荷では,定格電流の3~8倍の始動電流が流れるため,負荷容量の3倍以上の発電容量の発電機を使用する必要があると共に,このような負荷が頻繁に始動,停止を繰り返す用途で使用されると消費電力も大きくなってエンジンの燃料消費量も増大することとなるが,このような三相負荷の始動を,供給電力の周波数を無段階に上昇させながら行うことで,三相誘導電動機の始動電流を抑制することができ,既存のものに比較して発電容量の小さい発電機で三相負荷を始動させることができると共に,消費電力,従って燃料消費量を低減させることができる。
【0014】
そのため,三相出力端子台を介して出力される三相交流の周波数を変化させることができるエンジン駆動型発電機に対する要望は高い。
【0015】
ここで,前掲の特許文献2,3に記載の交流発電機を発電機本体として搭載したエンジン駆動型発電機を想定すると,このようなエンジン駆動型発電機においても,発電機本体の回転速度,従ってエンジンの回転速度を変化させれば,発電機本体が出力する三相交流の周波数を変化させることができる。
【0016】
しかし,発電機の回転速度を変化させて周波数を変化させる場合,発電機本体の出力電力が変化するために安定した出力での電力供給ができなくなるだけでなく,この方法では,三相交流の出力周波数だけでなく,単相交流の出力周波数も同時に変化させてしまうこととなる。
【0017】
一方,前掲の特許文献4に記載のエンジン駆動型発電機では,発電機本体の回転速度を変化させることなく三相インバータが出力する三相交流の周波数を変化させることで,負荷に供給する電力の周波数を変更することができることから,出力周波数を変化させた場合であっても安定した出力で電力供給を行うことができる。
【0018】
しかし,特許文献4に記載のエンジン駆動型発電機の構成でも,三相インバータが出力する三相交流の周波数を変化させると,三相出力端子台を介して出力される三相交流の周波数のみならず,単相出力端子台を介して出力される単相交流の周波数についても同時に変化させてしまうことになる。
【0019】
このように,従来のエンジン駆動型発電機においても出力する単相交流と三相交流の周波数を変更することはできるものの,単相出力端子台より出力される単相交流の周波数を所定の周波数に維持しつつ,三相出力端子台より出力される三相交流の出力周波数のみを変更することができるようになっていない。
【0020】
そのため,単相出力端子台に仮設事務所内の照明器具や空調設備(エアコン),その他の備品(パソコン等)を単相負荷として接続した状態で,三相出力端子台に接続された三相負荷に供給される三相交流の周波数を変更するために,エンジンの回転速度を変更し,又は,三相インバータが出力する三相交流の周波数を変化させると,単相出力端子台に接続された単相負荷に供給される単相交流の周波数も変化するため,単相負荷に作動不良や故障を生じさせるおそれがある。
【0021】
このことから,従来のエンジン駆動型発電機では,例えば,商用電源に対応して50Hzと60Hz間で周波数を切り替える場合のように,単相出力端子台より出力される単相交流と,三相出力端子台より出力される三相交流双方の周波数を同時に変更するような用途でしか出力周波数を変更することができず,単相負荷に対し供給される単相交流の周波数を一定に維持したまま,前述した三相負荷の回転速度の制御や始動電流の抑制を目的として,三相負荷に対して供給する三相交流の周波数のみを変化させることができるようにはなっていない。
【0022】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたもので,単相出力端子台に接続された単相負荷に対する一定周波数の単相交流の供給と,三相出力端子台に接続された三相負荷に対する,周波数が変更された三相交流の出力を同時に行うことができるエンジン駆動型発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0024】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動型発電機1は,
発電機本体10と,前記発電機本体10を駆動するエンジン(図示せず)を備えたエンジン駆動型発電機1において,
前記発電機本体10を,中性点Oを中心に120°の位相差でY結線された三相巻線V,W,Uと,前記三相巻線V,W,Uに接続された補助巻線(図7の例ではN,図8の例ではN1及びN2)を備えた交流発電機により構成し,該発電機本体10に前記三相巻線V,W,Uで発生した所定電圧の三相交流を出力する三相出力部(出力端子v,w,u)と,前記三相巻線V,W,Uの隣接する2線(図示の例ではW,U)と前記補助巻線(図7の例ではN,図8の例ではN1及びN2)の組み合わせにより発生した所定電圧(一例として100V又は200V)の単相交流を出力する単相出力部(図7の例では出力端子u,n,w,図8の例ではn1,o,n2)をそれぞれ設け,前記三相交流と単相交流を同時に取り出し可能に構成し,
前記発電機本体10の前記単相出力部(図7の例では出力端子u,n,w,図8の例ではn1,o,n2)に,単相用遮断器41と単相出力回路42を介して単相出力端子台52を接続すると共に,
前記発電機本体10の前記三相出力部(出力端子V,W,U)に,三相用遮断器31と三相出力回路32を介して三相出力端子台51を接続し,
前記三相出力回路32に,前記発電機本体10が出力した三相交流を一旦直流に変換した後,指定された周波数の三相交流に変換して出力するインバータ33を設け
前記インバータ33をバイパスして前記インバータ33の一次側と二次側で前記三相出力回路32と連通するバイパス回路34を設け,
前記三相用遮断器31と前記三相出力端子台51間の接続を,前記三相出力回路32,又は前記バイパス回路34のうち選択したいずれか一方のみを介して行う,三相出力切替手段35(ただし,予め設定された条件に従い選択する回路を自動的に変更するものを除く。)を設けたことを特徴とする(請求項1:図参照)。
【発明の効果】
【0027】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のエンジン駆動型発電機1によれば,発電機本体10が出力した所定周波数の単相交流をそのまま単相3線式の単相出力端子台52より出力しつつ,発電機本体10が出力した三相交流をインバータ33で周波数を変更して得た三相交流を,三相3線式の三相出力端子台51より同時に出力することができた。
【0028】
その結果,単相出力端子台52に,工事現場に設置された仮設事務所の単相100Vの照明やパソコン等の単相負荷66,単相200Vの空調設備(エアコン),パソコン等の単相負荷65を接続して作動させつつ,単相負荷65,66に供給する単相交流の周波数を変更することなく,三相出力端子台51に接続された三相負荷61に対する出力周波数のみを変更することができた。
【0029】
これにより,単相出力端子台52に接続されている単相負荷65,66の動作に影響を与えることなく,三相出力端子台51に接続された三相負荷61が三相誘導電動機を備えるものである場合,始動電流の上昇を抑制した状態で始動させることができ,また,三相負荷61の回転速度を定格回転速度以下の任意の速度に調整することが可能となった。
【0030】
前記インバータ33をバイパスして前記インバータ33の一次側と二次側で前記三相出力回路32と連通するバイパス回路を設けると共に,前記三相用遮断器31と前記三相出力端子台51間を,前記三相出力回路32,又は前記バイパス回路34のいずれか一方を介して行う,三相出力切替手段35を設けた構成では,三相出力端子台51からの出力を,インバータ33を介して周波数変更が行われた三相交流の出力と,インバータ33をバイパスして発電機本体10が出力した三相交流の直接出力とを択一的に選択することができた。
【0031】
その結果,三相出力端子台51に接続される三相負荷61が,スターデルタ起動の三相誘導電動機を備えた三相負荷である場合や,三相負荷61自体が制御用インバータを備えている場合等,インバータ33によって周波数が変更された三相交流の入力を必要としないものである場合には,三相出力切替手段35の操作によって三相出力回路32を介した出力を止めて,バイパス回路を介して発電機本体10が出力した三相交流を直接,三相負荷61に供給することができた。
【0032】
更に,前記三相用遮断器31と前記インバータ33間で前記三相出力回路32から分岐した分岐回路37と,該分岐回路37に接続された第2三相出力端子台51’を設けた構成では,インバータ33によって周波数が変更された三相交流と,単相交流の同時出力が行えるだけでなく,更に,インバータ33による周波数変更を経ることなく,発電機本体10が出力した三相交流についてもそのまま同時に出力させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のエンジン駆動型発電機の外観斜視図。
図2】本発明のエンジン駆動型発電機の説明図。
図3】本発明のエンジン駆動型発電機の変更例を示す説明図。
図4】本発明のエンジン駆動型発電機の別の変更例を示す説明図。
図5】従来の交流発電機の電機子コイル(三相結線)の説明図。
図6】従来の交流発電機の電機子コイル(単相結線)の説明図。
図7】単相-三相の同時出力が可能な交流発電機の説明図(特許文献2)。
図8】単相-三相の同時出力が可能な交流発電機の説明図(特許文献3)。
図9】単相-三相の同時出力が可能なエンジン駆動型発電機の説明図(特許文献4)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のエンジン駆動型発電機1の構成につき説明する。
【0035】
図1において符号1は本発明のエンジン駆動型発電機であり,このエンジン駆動型発電機1は,三相交流発電機である発電機本体10,該発電機本体10を駆動するエンジン(図示せず)等の,エンジン駆動型発電機1の構成機器を収容する防音箱2を備えている。
【0036】
この防音箱2のいずれかの側壁には,防音箱2の内部側に向かって陥没する凹部を形成し,この凹部内に,後述するインバータ33,及び,三相出力端子台51及び単相出力端子台52を備えた出力端子盤50が設けられている。
【0037】
また,インバータ33や出力端子盤50を設けた防音箱2の側壁と同一の側壁,又は別の側壁(図示の例では別の側壁)に,同様に防音箱2の内部側に向かって陥没する凹部を形成し,この凹部内に,各種スイッチ類や計器類を備えた発電機の制御盤20が設けられている。
【0038】
本発明のエンジン駆動型発電機1に搭載する発電機本体10は,三相交流と単相交流を同時に出力可能な発電機であり,図7及び図8を参照して説明したように,中性点Oを中心に120°の位相差でY結線された三相巻線V,W,Uと,前記三相巻線V,W,Uに接続された補助巻線N(図7参照),又はN及びN図8参照)を備える交流発電機を使用する。
【0039】
本実施形態では,一例として図7に示したように三相巻線V,W,Uのうち,V相巻線の誘起電圧に対しベクトル和で1/2で,かつ180°の位相差を有する誘起電圧を発生させる補助巻線Nが中性点Oに接続された交流発電機を使用している。
【0040】
このような補助巻線Nを備えた交流発電機では,図7に示すように三相巻線V,W,Uの各端部に設けられた出力端子v,w,uより所定電圧の三相交流(一例として200Vの三相交流)が得られると共に,図示の例ではU巻線の端部に設けた出力端子uと補助巻線Nの端部に設けた出力端子n間,又は,W巻線の端部に設けた出力端子wと補助巻線Nの端部に設けた出力端子n間で,前記三相交流の所定電圧に対し1/2の電圧の単相交流(一例として100Vの単相交流)が,また,U巻線の端部に設けた出力端子uとW巻線の端部に設けた出力端子w間で前記三相交流の電圧と同電圧の単相交流(一例として200Vの単相交流)が得られるように構成されている。
【0041】
従って,図示の例では出力端子v,w,uの組合せが発電機本体10の三相出力部を成すと共に,出力端子u,n,wの組合せが発電機本体10の単相出力部を成す。
【0042】
このように構成された発電機本体10を備えたエンジン駆動型発電機1において,発電機本体10の三相出力部(出力端子v,w,u)には,図2に示すように三相用遮断器31と三相出力回路32を介して防音箱2の側面に設けた出力端子盤50の三相3線式の三相出力端子台51に接続されていると共に,発電機本体10の単相出力部(出力端子u,n,w)には,単相用遮断器41及び単相出力回路42を介して防音箱2の側面に設けた出力端子盤50の単相3線式の単相出力端子台52が接続されている。
【0043】
前述の三相用遮断器31と単相用遮断器41は,いずれも防音箱2の側面に設けた制御盤20上に設けることが好ましく(図1参照),これにより,機外より三相用遮断器31及び単相用遮断器41を操作して三相200Vの三相負荷61や単相200Vの単相負荷65及び単相100Vの単相負荷66に対する電力の供給を開始/停止できるように構成されている。
【0044】
なお,本発明のエンジン駆動型発電機1に発電機本体10として搭載する交流発電機は,補助巻線N,又はNとNの追加によって三相交流と単相交流を同時に出力できるものであれば,図2及び図7に示す交流発電機に限定されず,図8を参照して説明した交流発電機,その他の既知の交流発電機を使用するものとしても良い。
【0045】
この場合,当該発電機本体10において三相交流,又は単相交流の出力が得られる出力端子を前述の三相出力部及び単相出力部とする。
【0046】
従って,図8に示す交流発電機を発電機本体10とする場合,出力端子v,w,uが発電機本体10の三相出力部を成す点については図7を参照して説明した交流発電機を発電機本体10とする場合と同様であるが,単相出力部については,補助巻線N,Nの端部に接続された出力端子n,nと中性点Oに接続された出力端子oが図8に示した交流発電機から成る発電機本体10の単相出力部となる。
【0047】
前述した三相出力回路32と単相出力回路42のうち,単相出力回路42は発電機本体10が出力した単相交流をそのまま単相出力端子台52を介して単相負荷65,66に対し出力することができるように構成されている一方,三相出力回路32は,発電機本体10が出力した三相交流を,オペレータ等によって指定された所定周波数の三相交流に変換して三相出力端子台51より出力することができるように構成されている。
【0048】
このような周波数の変更を可能とするため,三相出力回路32にはインバータ33が設けられており,このインバータ33において,発電機本体10が出力した三相交流をインバータ内に設けたコンバータで一旦直流に整流し,その後,オペレータ等によって指定された所定周波数の三相交流に再変換した後,三相出力端子台51を介して三相負荷61に出力する。
【0049】
このインバータ33が出力する三相交流の周波数は,例えば制御盤20に設けられたロータリースイッチなどによって構成される周波数設定手段21をオペレータが操作することにより指定できるように構成されている。
【0050】
なお,インバータ33に出力させる三相交流の周波数の指定は,発電機本体10が出力する三相交流の周波数とは異なる周波数を指定するものであっても良く,また,発電機本体10が出力する三相交流の周波数と同一の周波数であっても良い。
【0051】
従って,発電機本体10が商用電源に対応した50Hz又は60Hzの交流を出力するように設定されている場合,インバータが出力する三相交流の周波数の指定は,商用電源に対応した50Hz又は60Hzと同一周波数を指定するものであっても,これとは異なる任意の周波数を指定するものであっても良い。
【0052】
このインバータ33は,発電機本体10が出力した三相交流の入力が開始されると,出力開始から所定時間をかけて指定された所定の周波数となるまで,周波数を無段階に上昇させながら三相交流の出力を開始すると共に,その後,発電機本体10から三相交流の入力が継続されている間,周波数の指定変更がされるまで,指定された周波数の三相交流を継続して出力するように構成されている。
【0053】
以上のように構成された本発明のエンジン駆動型発電機1において,三相出力端子台51に三相負荷61を,単相出力端子台52に単相負荷65をそれぞれ接続した状態で,エンジンを起動して発電機本体10を一例として1500min-1又は1800min-1で運転して,発電機本体10より商用電源に対応した50Hz又は60Hzの交流を出力させる。
【0054】
この状態で,三相用遮断器31を閉じて,発電機本体10に三相出力回路32を接続すると,インバータ33に対し発電機本体10が出力した50Hz又は60Hzの三相交流の入力が開始される。
【0055】
インバータ33に対し発電機本体10からの三相交流の入力が開始されると,インバータの電源がONとなって出力待機状態となると共に,この状態で制御盤20上に設けられているインバータ出力スイッチ22をONにして出力の開始が指令されると,インバータ33は一例としてゼロ周波数から所定時間をかけて無段階に指定された周波数まで周波数を増加させるように三相交流の出力を開始する。
【0056】
このインバータ33が出力する三相交流の周波数の指定は,前述のように制御盤20に設けたロータリースイッチ等によって構成される周波数設定手段21をオペレータが操作することにより行えるように構成されている。
【0057】
このように制御盤20上に三相用遮断器31と単相用遮断器41,周波数設定手段21,インバータ出力スイッチ22を設けていることから,オペレータが速やかに操作することがきる。
【0058】
これにより,三相出力端子台51に接続された三相負荷61は徐々に回転速度を増大させながら始動されることで,三相負荷61の始動電流の上昇が抑制されると共に,その後,インバータ33は指定された周波数の三相交流の出力を継続することで,三相負荷61の回転速度を前述の周波数設定手段21で指定した周波数に応じた回転速度に維持させることができる。
【0059】
一方,単相出力端子台52に接続された単相出力回路42には,前述したインバータを設けることなく,発電機本体10が発生した単相交流をそのまま単相出力端子台52に出力するように構成されており,単相用遮断器41を閉じて単相出力端子台52に接続された単相負荷65に対する給電を開始すると,単相負荷65に対しては発電機本体10が出力した,商用電源に対応する50Hz又は60Hzの単相交流をそのまま供給することができる。
【0060】
このように構成することで,本発明のエンジン駆動型発電機1では,仮設事務所に設けた単相100Vの照明器具やパソコン等の単相負荷66,単相200Vの空調設備(エアコン)の単相負荷65に供給する単相交流の出力周波数を変化させることなく商用電源に対応した50Hz又は60Hzで一定に維持したまま,水中ポンプなどの三相負荷61に対し供給する三相交流の出力周波数のみをインバータ33で変更して,三相負荷61の始動や回転速度を好適に制御することができるものとなっている。
【0061】
これにより,三相負荷用の電源としてのエンジン駆動型発電機と,単相負荷用の電源としてのエンジン駆動型発電機をそれぞれ別個に準備する必要はなく,エンジン駆動型発電機を既存の発電量よりも小さい発電機にすることができると共に,三相負荷の回転速度を好適に低く制御できるから,エンジン駆動型発電機の燃料消費量を低減し,経済的負担だけでなく環境への負荷を低減することができるものとなっている。
【0062】
以上,図2を参照して説明した本発明のエンジン駆動型発電機1では,三相出力端子台51からはインバータ33によって周波数が変更された三相交流のみを出力できるようにした構成例を示したが,この構成に代えて,図3に示すように,三相出力端子台51からの出力を,インバータ33によって周波数が変更された三相交流と,周波数を変更することなく発電機本体10が出力したそのままの三相交流を選択的に出力させることができるように構成しても良い。
【0063】
このような三相交流の出力を選択可能とするために,図3のエンジン駆動型発電機1では,一端34aをインバータ33の一次側(入力側)で三相出力回路32に接続すると共に,他端34bをインバータ33の二次側(出力側)で三相出力回路32に接続してインバータ33をバイパスするバイパス回路34を設けている。
【0064】
そして,バイパス回路34の一端34aの接続位置とインバータ33間における三相出力回路32と,バイパス回路34の他端34bの接続位置とインバータ33間における三相出力回路32に,三相出力回路32を開閉する三相出力回路用開閉器351,352をそれぞれ設けると共に,バイパス回路34にバイパス回路34を開閉するバイパス回路用開閉器353を設け,三相出力回路用開閉器351,352とバイパス回路用開閉器353の動作を機械的又は電気的にリンクさせて構成された三相出力切替手段35を設けている。
【0065】
この三相出力切替手段35は,前述のリンクによって三相出力回路用開閉器351,352を閉じるとバイパス回路用開閉器353が開き,逆に三相出力回路用開閉器351,352を開くとバイパス回路用開閉器353が閉じるように構成されている。
【0066】
これにより三相出力回路用開閉器351,352を開いてインバータ33と三相出力回路32の電気的な接続を遮断すると,バイパス回路用開閉器353を閉じてバイパス回路34を通電させて三相出力端子台51から発電機本体10が出力した三相交流をそのまま出力させる。
【0067】
一方,三相出力回路用開閉器351,352を閉じてインバータ33と三相出力回路32を電気的に接続すると,バイパス回路用開閉器353を開いてバイパス回路34を遮断し,三相出力端子台51からインバータ33によって周波数が変更された三相交流を出力させるように構成されている。
【0068】
このように,三相出力端子台51の出力を切り替える三相出力切替手段35に前述の動作を行わせるための操作レバーや操作スイッチ等の,三相出力切替手段35の操作部36は,図1に示すように防音箱2の側壁に設けた制御盤20に設け,機外より三相出力の出力形式を切り替えることができるようにすることが好ましい。
【0069】
このように構成することで,三相出力切替手段35の切替により,三相出力端子台51にインバータ33によって周波数が変更された三相交流の入力が好ましい三相負荷61が接続されている場合には,三相出力回路32を介してインバータ33が変更した三相交流を出力し,一方,発電機本体10が出力した三相交流をそのまま入力することが好ましい三相負荷61に対し給電を行う場合には,バイパス回路34を介して発電機本体10が出力した三相交流をそのまま出力することができ,三相出力端子台51に接続されている三相負荷61の特性に応じて適切な三相交流を出力することが可能となる。
【0070】
更に,上記図3を参照した本発明のエンジン駆動型発電機では,1つの三相出力端子台51よりインバータ33によって周波数が変更された三相交流と,圧縮機本体10が出力したそのままの三相交流のいずれか一方を選択的に出力できるようにしたエンジン駆動型発電機1の構成例を示した。
【0071】
これに対し,図4に示すエンジン駆動型発電機1では,単相出力端子台52を介した単相交流の出力と,三相出力端子台51を介してインバータによって周波数が変更された三相出力の同時出力が行えるだけでなく,別途設けられた三相3線式の第2三相出力端子台51’を介して周波数変更することなく発電機本体10が出力した三相交流そのままの出力についても同時に行うことができるように構成されている。
【0072】
このような同時出力を可能とするために,図4に示すエンジン駆動型発電機1では,三相用遮断器31とインバータ33間の三相出力回路32より分岐する分岐回路37を設け,この分岐回路37の先端に第2三相出力端子台51’を接続する構成を採用している。
【符号の説明】
【0073】
1 エンジン駆動型発電機
2 防音箱
10 発電機本体
20 制御盤
21 周波数設定手段
22 インバータ出力スイッチ
31 三相用遮断器
32 三相出力回路
33 インバータ
34 バイパス回路
34a 一端(バイパス回路の)
34b 他端(バイパス回路の)
35 三相出力切替手段
351,352 三相出力回路用開閉器
353 バイパス回路用開閉器
36 操作部(出力切替手段の)
37 分岐回路
41 単相用遮断器
42 単相出力回路
50 出力端子盤
51 三相出力端子台
51’ 第2三相出力端子台
52 単相出力端子台
61 三相負荷(三相200V)
65 単相負荷(単相200V)
66 単相負荷(単相100V)
V,W,U 三相巻線
N,N,N 補助巻線
O 中性点
v,w,u,n,n,n,o 出力端子(発電機本体の)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9