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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】接岸速度計及び接岸速度計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
G01P3/36 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020194082
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082912
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】岡部 祐介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】坂田 政郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敦史
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-185944(JP,A)
【文献】特開2020-050251(JP,A)
【文献】特開2014-065495(JP,A)
【文献】特開2008-302746(JP,A)
【文献】特開2002-249097(JP,A)
【文献】実開昭62-111677(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00 - 85/00
B63J 1/00 - 99/00
G01P 1/00 - 3/80
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁に接近する船舶の接岸速度を計測する接岸速度計であって、
前記岸壁に設置され、前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離を繰り返し計測するミリ波センサと、
前記ミリ波センサに通信可能に接続され、前記ミリ波センサで計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離に基づいて、前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を算出する制御装置と、
前記船舶に乗り込んだユーザが視認可能となるように前記岸壁に設置され、前記制御装置で算出された前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を表示する表示装置と、
前記ミリ波センサ、前記制御装置及び前記表示装置を運搬する運搬車両と、
を備え、
前記ミリ波センサは、前記運搬車両から降ろし、離れた位置に設置できるように前記運搬車両に搭載され、前記表示装置及び前記制御装置は、前記運搬車両に固定されている、
接岸速度計。
【請求項2】
前記接岸速度計は、前記ミリ波センサで計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離を順番に記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御装置は、前記ミリ波センサで計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの第1の距離と、前記記憶部に記憶され、前記ミリ波センサで前記第1の距離の一周期前の時点で計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの第2の距離と、に基づいて、前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を算出する、
請求項1に記載の接岸速度計。
【請求項3】
前記ミリ波センサは、ケーブルを巻き付け可能であって、前記運搬車両に固定された電動ドラムを介して前記制御装置に接続されている、
請求項1又は2に記載の接岸速度計。
【請求項4】
前記運搬車両は、荷台を備えたトラックであり、
前記荷台には、前記制御装置及び前記表示装置が固定されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の接岸速度計。
【請求項5】
前記接岸速度計は、前記制御装置に接続され、前記制御装置に電力を供給する給電装置をさらに備え、
前記給電装置は、前記運搬車両に固定されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の接岸速度計。
【請求項6】
前記接岸速度計は、
前記岸壁に設置され、前記制御装置に通信可能に接続され、気象に関するデータである気象データを取得する気象センサと、
前記岸壁に設置され、前記制御装置に通信可能に接続され、前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離を計測するレーザ距離センサと、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記気象センサにより取得された気象データに基づいて、前記ミリ波センサ及び前記レーザ距離センサのいずれか1つを選択し、選択された前記ミリ波センサ及び前記レーザ距離センサのいずれか1つが計測した前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離に基づいて、前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を算出する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の接岸速度計。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の接岸速度計と、前記接岸速度計に対して通信可能に接続された通信端末と、を備える接岸速度計測システムであって、
前記接岸速度計は、前記制御装置で算出された前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を前記通信端末に向けて送信し、
前記通信端末は、前記接岸速度計から前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を受信し、ユーザに向けて表示する、
接岸速度計測システム。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の接岸速度計と、前記接岸速度計に対して通信可能に接続されたサーバと、前記サーバと通信可能に接続された通信端末と、を備える接岸速度計測システムであって、
前記接岸速度計は、前記制御装置で算出された前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を前記サーバに向けて送信し、
前記サーバは、前記接岸速度計から前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を受信し、受信した前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を表示する表示画面を生成し、生成された前記表示画面を前記通信端末に送信し、
前記通信端末は、前記サーバから受信した前記表示画面をユーザに向けて表示する、
接岸速度計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接岸速度計及び接岸速度計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型船の着港の際には、ダグボートで大型船の側面をプッシュすることで、大型船の向きを制御しながら低速で岸壁に接近させる方法が広く用いられている。タグボートの乗り手には大型船に乗り込んだ水先案内人が指示を与えるため、水先案内人は、岸壁に向かってくる接近する大型船の速度である接岸速度をリアルタイムで把握する必要がある。このため、大型船の着港の際には、例えば、特許文献1に開示されているような船舶の接岸速度を計測する接岸速度計が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-242243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の接岸速度計は、いずれも岸壁に設置され、岸壁から大型船までの距離をレーザ距離センサで計測することで、岸壁に対する大型船の接岸速度を計測している。とはいえ、レーザ距離センサは、外乱の影響を受けやすいため、特許文献1の接岸速度計では、雨や霧、雪といった悪天候時に大型船の接岸速度を計測できないという問題がある。そして、このような問題は、大型船の接岸速度を計測する場合に限られず、他の船舶の接岸速度を計測する場合にも存在している。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、悪天候時であっても船舶の接岸速度を計測可能な接岸速度計及び接岸速度計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る接岸速度計は、
岸壁に接近する船舶の接岸速度を計測する接岸速度計であって、
前記岸壁に設置され、前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離を繰り返し計測するミリ波センサと、
前記ミリ波センサに通信可能に接続され、前記ミリ波センサで計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離に基づいて、前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を算出する制御装置と、
前記船舶に乗り込んだユーザが視認可能となるように前記岸壁に設置され、前記制御装置で算出された前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を表示する表示装置と、
前記ミリ波センサ、前記制御装置及び前記表示装置を運搬する運搬車両と、
を備え、
前記ミリ波センサは、前記運搬車両から降ろし、離れた位置に設置できるように前記運搬車両に搭載され、前記表示装置及び前記制御装置は、前記運搬車両に固定されている。
【0007】
前記接岸速度計は、前記ミリ波センサで計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離を順番に記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御装置は、前記ミリ波センサで計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの第1の距離と、前記記憶部に記憶され、前記ミリ波センサで前記第1の距離の一周期前の時点で計測された前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの第2の距離と、に基づいて、前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を算出してもよい。
【0008】
前記ミリ波センサは、ケーブルを巻き付け可能であって、前記運搬車両に固定された電動ドラムを介して前記制御装置に接続されてもよい。
【0009】
前記運搬車両は、荷台を備えたトラックであり、
前記荷台には、前記制御装置及び前記表示装置が固定されてもよい。
【0010】
前記接岸速度計は、前記制御装置に接続され、前記制御装置に電力を供給する給電装置をさらに備え、
前記給電装置は、前記運搬車両に固定されてもよい。
【0011】
前記接岸速度計は、
前記岸壁に設置され、前記制御装置に通信可能に接続され、気象に関するデータである気象データを取得する気象センサと、
前記岸壁に設置され、前記制御装置に通信可能に接続され、前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離を計測するレーザ距離センサと、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記気象センサにより取得された気象データに基づいて、前記ミリ波センサ及び前記レーザ距離センサのいずれか1つを選択し、選択された前記ミリ波センサ及び前記レーザ距離センサのいずれか1つが計測した前記岸壁から前記船舶の船首及び船尾までの距離に基づいて、前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を算出してもよい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る接岸速度計測システムは、
前記接岸速度計と、前記接岸速度計に対して通信可能に接続された通信端末と、を備える接岸速度計測システムであって、
前記接岸速度計は、前記制御装置で算出された前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を前記通信端末に向けて送信し、
前記通信端末は、前記接岸速度計から前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を受信し、ユーザに向けて表示する。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る接岸速度計測システムは、
前記接岸速度計と、前記接岸速度計に対して通信可能に接続されたサーバと、前記サーバと通信可能に接続された通信端末と、を備える接岸速度計測システムであって、
前記接岸速度計は、前記制御装置で算出された前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を前記サーバに向けて送信し、
前記サーバは、前記接岸速度計から前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を受信し、受信した前記岸壁に対する前記船舶の船首及び船尾の接岸速度を表示する表示画面を生成し、生成された前記表示画面を前記通信端末に送信し、
前記通信端末は、前記サーバから受信した前記表示画面をユーザに向けて表示する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、悪天候時であっても船舶の接岸速度を計測可能な接岸速度計及び接岸速度計測システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る接岸速度計の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るミリ波センサが船舶との距離を計測する様子を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る接岸速度計のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る接岸情報記憶部のデータテーブルの一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る接岸速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態2に係る接岸速度計の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る接岸速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態3に係る接岸速度計測システムの構成を示す図である。
図9】本発明の実施の形態4に係る接岸速度計測システムの構成を示す図である。
図10】(a)~(c)は、いずれも本発明の変形例に係る距離計測手段の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る接岸速度計及び接岸速度計測システムを、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0017】
実施の形態では、岸壁の海水と接する面に垂直な方向をX軸方向、X軸に垂直であって岸壁が延びる方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に対して直交する方向(上下方向)をZ軸方向とする。また、「岸壁」は、コンクリートで形成された岸壁のみならず、船舶の係留、船荷の積卸し、又は船客の乗降のために設置されたあらゆる係留施設を含むものとする。
【0018】
(実施の形態1)
図1図4を参照して、実施の形態1に係る接岸速度計100の構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る接岸速度計100の構成を示す図である。接岸速度計100は、岸壁に設置される一対のミリ波センサ110と、一対のミリ波センサ110に接続され、一対のミリ波センサ110の計測結果に基づいて船舶の接岸速度を演算する制御装置120と、制御装置120に接続され、制御装置120に電力を供給する給電装置130と、制御装置120に接続され、制御装置120で演算された船舶の接岸速度を水先案内人(ユーザ)に向けて表示する表示装置140と、ミリ波センサ110、制御装置120、給電装置130及び表示装置140を運搬する運搬車両150と、を備える。
【0019】
ミリ波センサ110は、対象物に向けてミリ波を放射し、対象物で反射したミリ波を捕捉することで、ミリ波センサ110が設置された位置から対象物までの距離を計測する。ミリ波センサ110は、岸壁から船舶までの距離を計測する距離計測手段の一例である。
【0020】
ミリ波センサ110は、ミリ波を生成するシンセサイザと、シンセサイザで生成されたミリ波を送信する送信機と、対象物で反射したミリ波を受信する受信機と、送信及び受信したミリ波に基づいてミリ波センサ110が設置された位置から対象物までの距離を演算するプロセッサと、を備える。ミリ波センサ110は、周波数帯が20GHz~300GHzである電磁波であり、例えば、周波数帯が24GHzの電磁波である。ミリ波センサ110では、他の電磁波に比べて直線性が強いミリ波を用いるため、雨や雪が降っていたり霧が発生していたりする悪天候時でも、対象物との距離を計測できる。
【0021】
また、ミリ波センサ110では、波長が1nm程度と短いため、船舶の色(例えば、白、黄、オレンジ、赤)によっては反射率の変化が大きくなる特性を有するレーザ距離センサとは異なり、船舶における反射率の変化が少なく、船舶に塗装された色によらず安定的に距離を計測できる。
【0022】
図2は、実施の形態1に係るミリ波センサ110が船舶3との距離を計測する様子を示す図である。一対のミリ波センサ110は、ミリ波センサ111及びミリ波センサ112から構成される。ミリ波センサ111は、制御装置120からの制御信号に従って、一定の周期で岸壁2から船舶3の船首3aまでの距離L1を検知する。ミリ波センサ112は、ミリ波センサ111と同一のタイミングで岸壁2から船舶3の船尾3bまでの距離L2を検知する。以下、各ミリ波センサ111、112を区別する必要がない場合に、両者をまとめてミリ波センサ110と総称することがある。
【0023】
図1に戻り、ミリ波センサ110は、計測した距離に関するデータをリアルタイムで制御装置120に送信する。ミリ波センサ111は、ケーブルを巻き付け可能な電動ドラム113を介して制御装置120に接続されている。ミリ波センサ110は、例えば、三脚の先端部に取り付けられた状態で岸壁2に設置される。三脚は、船舶3の高さに応じてミリ波センサ110の高さを調整可能に構成されている。
【0024】
各ミリ波センサ110は、運搬車両150から降ろし、離れた位置に配置できるように構成されている。このため、各ミリ波センサ110は、船舶3の長さに合わせた間隔で岸壁2の任意の位置に設置可能である。例えば、船舶3の全長が100mであれば、一対のミリ波センサ110の間の間隔も船舶3の船首3a及び船尾3bの位置に合わせて100m程度にすればよい。
【0025】
図3は、実施の形態1に係る接岸速度計100のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置120は、ミリ波センサ110、給電装置(図示せず)及び表示装置140にケーブルを介して接続され、制御装置120は、各ミリ波センサ110の計測データを取得すると共に、各ミリ波センサ110及び表示装置140に対して制御信号を供給する。また、制御装置120は、給電装置からの電力により作動し、給電装置から供給された電力をミリ波センサ110及び表示装置140に供給する。
【0026】
制御装置120は、例えば、制御盤である。制御装置120は、操作部121と、表示部122と、通信部123と、記憶部124と、制御部125と、を備える。制御装置120の各部は、内部バス(図示せず)を介して互いに通信可能に接続されている。
【0027】
操作部121は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部125に供給する。操作部121は、例えば、ボタンスイッチ、ダイヤルを備える。操作部121は、例えば、ミリ波センサ110の計測周期、船舶3の接岸速度の計測開始や計測終了に関する指示を受け付ける。
【0028】
表示部122は、制御部125から供給される画像データに基づいて、制御装置120を操作するユーザに向けて各種の画像を表示する。表示部122は、例えば、ミリ波センサ110の計測周期、岸壁2から船舶3までの距離、船舶3の角度及び接岸速度をリアルタイムで表示する。
【0029】
操作部121と表示部122とは、タッチパネルによって構成されてもよい。タッチパネルは、所定の操作を受け付ける操作画面を表示すると共に、操作画面において作業員が接触操作を行った位置に対応する操作信号を制御部125に供給する。
【0030】
通信部123は、例えば、インターネット回線のような通信ネットワークに接続することが可能なインターフェースである。
【0031】
記憶部124は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブに例示される。記憶部124は、制御部125に実行されるプログラムや各種のデータ、各ミリ波センサ110の計測周期を記憶する。また、記憶部124は、制御部125が処理を実行するためのワークメモリとして機能する。さらに、記憶部124は、接岸情報記憶部124aを備える。
【0032】
図4は、接岸情報記憶部124aのデータテーブルの一例を示す。接岸情報記憶部124aは、接岸中の船舶3に関する情報である接岸情報をミリ波センサ110の計測日時に対応付けて記憶する。接岸情報は、例えば、岸壁2から船舶3の船首3a及び船尾3bまでの距離、船舶3の角度及び船舶3の船首3a及び船尾3bの接岸速度に関する情報を含む。
【0033】
図3に戻り、制御部125は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備え、制御装置120の各部の制御を行う。制御部125は、記憶部124に記憶されているプログラムを実行することにより、図5の接岸速度算出処理を実行する。制御部125は、機能的には、取得部125aと、算出部125bと、出力部125cと、を備える。
【0034】
取得部125aは、操作部121がユーザからの指示を受け付けると、各ミリ波センサ110で検知された岸壁2から船舶3の船首3a及び船尾3bまでの距離を取得する。
【0035】
算出部125bは、取得部125aで取得された計測回数n回目(n≧2)における岸壁2から船舶3の船首3a及び船尾3bまでの距離(第1の距離)と、接岸情報記憶部124aに記憶された計測回数n-1回目(計測回数n回目から一周期前の時点)における岸壁2から船舶3の船首3a及び船尾3bまでの距離(第2の距離)と、記憶部124に記憶された各ミリ波センサ110の計測周期と、に基づいて、計測回数n回目における船舶3の船首3a及び船尾3bの接岸速度を算出する。
【0036】
計測回数n回目における船舶3の船首3a及び船尾3bの接岸速度V1、V2は、それぞれ以下の式(1)、(2)で表される。ただし、tは、ミリ波センサ110の計測周期である。また、L1は、計測回数n回目における岸壁2から船舶3の船首3aまでの距離であり、L2は、計測回数n回目における岸壁2から船舶3の船尾3bまでの距離である。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
また、算出部125bは、取得部125aで取得された岸壁2から船舶3の船首3a及び船尾3bまでの距離L1、L2から、計測回数n回目における岸壁2に対する船舶3の角度θを算出する。計測回数n回目における船舶3の角度θは、以下の式(3)で表される。ただし、Lは、一対のミリ波センサ110の間の距離である。
【0040】
【数3】
【0041】
さらに、算出部125bは、計測回数n回目における距離L1、L2、接岸速度V1、V2及び角度θを、各ミリ波センサ110の計測日時に対応付けて接岸情報記憶部124aに記憶させる。ただし、n=1における接岸速度V1、V2は、存在しないため、接岸情報記憶部124aには記憶されない。
【0042】
出力部125cは、計測回数n回目における距離L1、L2、接岸速度V1、V2及び角度θを出力する。出力部125cは、例えば、距離L1、L2、接岸速度V1、V2及び角度θを表示装置140に表示させる。
【0043】
なお、接岸速度計100は、現在時刻を計測する計時部を備えていてもよく、計時部は、現在時刻を計測するRTC(Real Time Clock)を備えていればよい。RTCは、例えば、電池を内蔵し、接岸速度計100の電源がオフの間も計時を継続するように構成すればよい。そして、取得部125aは、例えば、計時部により計測された現在時刻であるRTC時刻に基づいて、計測周期tが経過したかどうかを判定し、計測周期tが経過した場合にミリ波センサ110に対して距離の計測を指示してもよい。
以上が、制御装置120のハードウェア構成である。
【0044】
再び図1に戻り、給電装置130は、ミリ波センサ110、制御装置120及び表示装置140に電力を供給する装置である。給電装置130は、発電機131と、ケーブルを介して発電機131に接続された無停電電源装置(Uninterruptible Power Supply:UPS)132と、を備える。
【0045】
発電機131は、例えば、ディーゼル式発電機である。発電機131は、制御装置120を起動する前に、ユーザの操作により発電を開始する。
【0046】
UPS132は、ケーブルを介して制御装置120に接続され、発電機131による発電が停止したことを検知すると、内部に蓄電された電気を放出し、制御装置120に電力を供給し続ける。
【0047】
表示装置140は、船上の水先案内人に向けて各種の情報を提供する大型のディスプレイである。表示装置140は、例えば、大型のLED(Light Emitting Diode)ディスプレイであり、距離L1、L2、接岸速度V1、V2及び角度θを表示する。表示装置140は、船上の水先案内人が視認可能な大きさのフォントで各種の情報を表示する。
【0048】
運搬車両150は、例えば、荷台を備えるトラックである。運搬車両150は、荷台に各ミリ波センサ110、制御装置120、給電装置130及び表示装置140を搭載し、制御装置120、給電装置130及び表示装置140は、運搬車両150の荷台に固定されている。このため、船舶3の入港していない時点では、接岸速度計100を安全な場所、例えば、車庫に待避させておき、船舶3が入港する時点で接岸速度計100を岸壁2の任意の位置に設置できる。
以上が、接岸速度計100の構成である。
【0049】
(接岸速度計の設置方法)
以下、作業者が実行する接岸速度計100の設置方法を説明する。まず、船舶3が入港する前に運搬車両150を岸壁2の所望の位置に配置する。運搬車両150は、例えば、船上の水先案内人が表示装置140を視認しやすい位置に配置される。
【0050】
次に、運搬車両150に搭載された各ミリ波センサ110を降ろし、岸壁2の所望の位置に設置する。各ミリ波センサ110は、ミリ波が船舶3の船首3a及び船尾3bに向けてそれぞれ放射されるように設置される。
【0051】
次に、給電装置130の発電機131及びUPS132を起動し、ミリ波センサ110、制御装置120及び表示装置140に向けて電力の供給を開始する。次に、ミリ波センサ110、制御装置120及び表示装置140を起動し、船舶3が入港するまで待機する。
以上が、接岸速度計100の設置方法である。
【0052】
(接岸速度算出処理)
次に、図5のフローチャートを参照して、実施の形態1に係る接岸速度計100の制御装置120が実行する接岸速度算出処理を説明する。接岸速度算出処理は、船舶3の接岸時に実行され、各ミリ波センサ110で計測された距離L1、L2を周期的に取得し、取得された距離L1、L2に基づいて接岸速度V1、V2を算出する処理である。
【0053】
まず、取得部125aは、接岸速度V1、V2の算出を開始する旨のユーザの指示を受け付けたかどうかを判定する(ステップS1)。ユーザの指示を受け付けたと判定された場合(ステップS1;Yes)、ステップS2に移動する。他方、ユーザの指示を受け付けていないと判定された場合(ステップS1;No)、ユーザの指示を受け付けるまで処理を待機する。
【0054】
次に、取得部125aは、各ミリ波センサ110に距離L1、L2の計測を指示し、各ミリ波センサ110で計測された距離L1、L2をそれぞれ取得する(ステップS2)。
【0055】
次に、算出部125bは、ステップS2の処理で取得された距離L1、L2から角度θを算出し、ステップS2の処理で取得された距離L1、L2と共に図3の接岸情報記憶部124aに記憶させる(ステップS3)。
【0056】
次に、出力部125cは、ステップS2の処理で取得された距離L1、L2と、ステップS3の処理で算出された角度θと、を表示装置140に表示させる(ステップS4)。
【0057】
次に、取得部125aは、ステップS2又は後述するステップS6の処理で、各ミリ波センサ110が計測回数n-1回目(n≧2)における距離L1n-1、L2n-1を取得してから、計測周期tが経過したかどうかを判定する(ステップS5)。計測周期tが経過していると判定された場合(ステップS5;Yes)、ステップS6に移動する。他方、計測周期tが経過していないと判定された場合(ステップS5;No)、計測周期tが経過するまで処理を待機する。
【0058】
次に、取得部125aは、各ミリ波センサ110に距離L1、L2の計測を指示し、各ミリ波センサ110で計測された距離L1、L2をそれぞれ取得する(ステップS6)。
【0059】
次に、算出部125bは、ステップS6の処理で取得された距離L1、L2から角度θを算出する。また、算出部125bは、図3の接岸情報記憶部124aに記憶された計測回数n-1回目(n≧2)における距離L1n-1、L2n-1と、ステップS6の処理で取得された計測回数n回目(n≧2)における距離L1、L2と、記憶部124に記憶された計測周期tと、に基づいて、接岸速度V1、V2を算出する。そして、算出部125bは、算出した角度θ及び接岸速度V1、V2を、ステップS6の処理で取得された距離L1、L2と共に図3の接岸情報記憶部124aに記憶させる(ステップS7)。
【0060】
次に、出力部125cは、表示装置140の表示を、ステップS6の処理で取得された計測回数n回目(n≧2)における距離L1、L2と、ステップS7の処理で算出された計測回数n回目(n≧2)における接岸速度V1、V2及び角度θと、に更新させる(ステップS8)。
【0061】
次に、取得部125aは、接岸速度V1、V2の計測を停止させる旨のユーザの指示を受け付けたかどうか判定する(ステップS9)。ユーザは、例えば、船舶3が岸壁2に到着した場合に、操作部121を操作して、接岸速度計100による計測を停止させる旨を指示する。ユーザの指示を受け付けたと判定された場合(ステップS9;Yes)、処理を終了する。他方、ユーザの指示を受け付けていないと判定された場合(ステップS9;No)、処理をステップS5に戻す。
以上が、接岸速度計100が実行する接岸速度算出処理の一連の流れである。
【0062】
以上説明したように、実施の形態1に係る接岸速度計100は、岸壁2に設置され、距離L1、L2を繰り返し計測するミリ波センサ110と、ミリ波センサ110に通信可能に接続され、ミリ波センサ110で計測された距離L1、L2に基づいて、接岸速度V1、V2を算出する制御装置120と、を備える。このため、悪天候時であっても安定して接岸速度V1、V2を算出でき、船舶3の接岸時における安全性を向上させることができる。
【0063】
港によっては、地形や海流の影響を受けて霧が頻繁に発生するため、船舶3に乗り込んだユーザ(水先案内人)が船舶3の接岸速度を把握できず、船舶3の着岸が遅延する一つの要因となっている。実施の形態1に係る接岸速度計100では、悪天候時であっても船舶3の接岸時における安全性を確保できるため、船舶3を迅速に着港させることができ、岸壁2及び船舶3の稼働率を向上させることができる。
【0064】
実施の形態1に係る接岸速度計100は、船上の水先案内人を含む船舶関係者に向けて接岸速度V1、V2を表示させる表示装置140を備える。このため、水先案内人を含む船舶関係者が接岸速度V1、V2をリアルタイムで共有でき、船舶3の岸壁2への接岸作業を円滑に行うことができる。
【0065】
(実施の形態2)
次に、図6及び図7を参照して、実施の形態2に係る接岸速度計100を説明する。実施の形態2では、岸壁2の気象状況に応じて選択されたミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれかを用いて距離L1、L2を計測する。以下、実施の形態1に係る接岸速度計100と異なる点を中心に説明する。
【0066】
図6は、実施の形態2に係る接岸速度計100の構成を示すブロック図である。接岸速度計100は、気象センサ160と、レーザ距離センサ170と、をさらに備える。気象センサ160は、岸壁2における気象に関するデータである気象データを取得するセンサである。気象に関するデータには、例えば、温度、湿度、風速、降雨量、照度に関するデータが含まれる。気象センサ160は、岸壁2に設置されると共に、制御装置120に通信可能に接続され、気象データを制御装置120に向けて周期的に送信する。
【0067】
レーザ距離センサ170は、レーザ光を対象物に向けて放射し、対象物で反射されたレーザ光を受信することで、対象物までの距離を計測するセンサである。レーザ距離センサ170は、夜間や悪天候時に計測精度が低下するが、それ以外の場合には、対象物の詳細な形状把握が可能であり、計測精度が高いという利点を有する。レーザ距離センサ170では、例えば、レーザ光を放射してから対象物で反射されたレーザ光を受光するまでに要する時間を距離に換算する。レーザ距離センサ170は、岸壁2に設置されると共に、制御装置120に通信可能に接続され、距離データを制御装置120に向けて周期的に送信する。なお、レーザ距離センサ170は、LiDAR(light Detection and Ranging)を含むものとする。
【0068】
制御装置120の制御部125は、機能的には、センサ選択部125dをさらに備える。センサ選択部125dは、気象センサ160で取得された気象データに基づいて、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれか1つを選択する。センサ選択部125dは、例えば、気象センサ160で取得された気象データに基づいて、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれを作動させるかを選択すればよい。このとき、取得部125aは、センサ選択部125dで選択されたミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれかに距離L1、L2を計測させればよい。
【0069】
センサ選択部125dは、例えば、気象センサ160から取得した気象データに基づいて気象データ取得時が夜間や悪天候時であると判別した場合にレーザ距離センサ170を選択し、気象データ取得時が夜間や悪天候時でないと判別した場合にミリ波センサ110を選択する。気象データ取得時が夜間や悪天候時であるかどうかは、平均風速、瞬間風速、降雨量、照度の少なくとも一つに基づいて判別すればよい。例えば、平均風速、瞬間風速、降雨量のいずれかが閾値以上である場合や照度が閾値以下である場合には、気象データ取得時が夜間や悪天候時であると判別すればよい。
以上が、接岸速度計100の構成である。
【0070】
(接岸速度算出処理)
次に、図7のフローチャートを参照して、実施の形態2に係る接岸速度計100の制御装置120が実行する接岸速度計測処理の流れを説明する。
【0071】
取得部125aが接岸速度V1、V2の算出を開始する旨のユーザの指示を受け付けたと判定された場合(ステップS1;Yes)、センサ選択部125dは、気象センサ160を制御して、気象センサ160に岸壁2における気象に関するデータである気象データを取得させる(ステップS1A)。
【0072】
次に、センサ選択部125dは、ステップS1Aの処理で気象センサ160から取得した気象データに基づいて、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれを作動させるかを選択する(ステップS1B)。例えば、平均風速、瞬間風速、降雨量のいずれかが閾値以上である場合や照度が閾値以下である場合に、レーザ距離センサ170を選択し、それ以外の場合には、ミリ波センサ110を選択する。
【0073】
次に、取得部125aは、ステップS1Bの処理で選択されたミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれかを制御して、距離L1、L2をそれぞれ取得させる(ステップS2)。以下、図5の処理と同様にステップS3~ステップS9の処理を実行し、処理を終了する。
以上が、接岸速度計測処理の流れである。
【0074】
以上説明したように、実施の形態2に係る接岸速度計100は、気象センサ160により取得された気象データに基づいて、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれを作動させるかを選択し、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれかに距離L1、L2を計測させる。このため、ミリ波センサ110では距離L1、L2を高い精度で計測できない場合であっても、代わりにレーザ距離センサ170を用いて距離L1、L2を高い精度で計測できる。
【0075】
(実施の形態3)
次に、図8を参照して、実施の形態3に係る接岸速度計100及び接岸速度計測システム1を説明する。実施の形態3では、水先案内人が所持する通信端末200に接岸速度計100で算出された接岸速度V1、V2を表示させる。以下、実施の形態1、2に係る接岸速度計100と異なる点を中心に説明する。
【0076】
図8は、実施の形態3に係る接岸速度計測システム1の構成を示す図である。接岸速度計測システム1は、接岸速度計100と、通信端末200と、を備える。接岸速度計100と通信端末200とは、インターネット等の通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
【0077】
接岸速度計100の通信部123は、通信回線を介して通信端末200と通信可能に構成されている。出力部125cは、通信部123を制御して、接岸速度計100で取得した接岸速度V1、V2を含む船舶3の接岸情報を通信端末200に向けて送信させる。
【0078】
通信端末200は、船上の水先案内人が所持する携帯端末であり、例えば、タブレット端末、スマートフォンである。水先案内人が通信端末200の操作部を操作し、通信端末200が接岸速度計100に船舶3の接岸情報の送信を要求すると、接岸速度計100の通信部123は、通信端末200に向けてリアルタイムで船舶3の接岸情報の送信を開始する。通信端末200は、船舶3の接岸情報を受信すると、通信端末200の表示部に表示させる。
【0079】
なお、接岸速度計100と通信端末200とは、中継器(図示せず)を介して通信可能に構成してもよい。1つ又は複数の中継器が、岸壁2又は船舶3の任意の位置に設置され、接岸速度計100と通信端末200との間の通信を中継する。中継器は、例えば、Bluetooth(登録商標)5.0のような無線通信技術を用いて各種データを送受信してもよい。
【0080】
以上説明したように、実施の形態3に係る接岸速度計測システム1は、接岸速度計100から接岸速度V1、V2を受信し、ユーザに向けて表示する通信端末200を備える。このため、大型で高価な表示装置140が不要であり、システム全体を安価に構成できる。また、港から離れた遠方でも接岸速度V1、V2を管理できる。
【0081】
(実施の形態4)
次に、図9を参照して、実施の形態4に係る接岸速度計100及び接岸速度計測システム1を説明する。実施の形態4では、接岸速度計100がサーバ300に向けて接岸速度をV1、V2送信し、水先案内人が所持する通信端末200がサーバ300に向けて接岸速度V1、V2の送信を要求する。以下、実施の形態3に係る接岸速度計測システム1と異なる点を中心に説明する。
【0082】
図9は、実施の形態4に係る接岸速度計測システム1の構成を示す図である。接岸速度計測システム1は、接岸速度計100と、通信端末200と、サーバ300と、を備える。接岸速度計100と通信端末200とサーバ300とは、インターネット等の通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
【0083】
接岸速度計100の出力部125cは、通信部123を制御して、取得部125aで取得された距離L1、L2と、算出部125bで算出された角度θ及び接岸速度V1、V2と、をリアルタイムでサーバ300に向けて送信させる。
【0084】
サーバ300は、例えば、汎用コンピュータである。サーバ300は、接岸速度計100から距離L1、L2、角度θ及び接岸速度V1、V2を含む船舶3の接岸情報を周期的に受信し、内部の記憶部に記憶させる。また、サーバ300は、通信端末200からの要求を受け付けると、接岸速度計100から受信した船舶3の接岸情報をリアルタイムで通信端末200に送信する。サーバ300は、例えば、接岸速度計100から受け取った船舶3の接岸情報をWebブラウザで表示させる表示画面を生成し、表示画面に関するデータである画面データを通信端末200に送信する。
【0085】
通信端末200は、ユーザの指示を受け付けると、サーバ300に船舶3の接岸情報の送信を要求する。そして、通信端末200は、例えば、サーバ300から画面データを受信すると、画面データに基づいて表示画面を生成し、Webブラウザに表示させる。
【0086】
以上説明したように、実施の形態4に係る接岸速度計測システム1は、接岸速度計100から接岸速度V1、V2を受信し、受信した接岸速度V1、V2に基づいて表示画面を生成し、生成された表示画面を通信端末200に送信するサーバ300を備える。このため、水先案内人は、専用のアプリケーションをインストールした専用端末を所持せずとも、自身の所持する通信端末200を操作して、Webブラウザ上に接岸速度V1、V2を含む表示画面を表示させることができる。
【0087】
本発明は上記の実施形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0088】
(変形例)
上記実施の形態では、ミリ波センサ110を高さ調整が可能な三脚の先端部で支持していたが、本発明はこれに限られない。例えば、岸壁2にミリ波センサ110が着脱自在に装着される架台を設置し、架台にミリ波センサ110を装着してもよい。また、岸壁2に沿って複数の架台を所定間隔で固定した状態で設置し、船舶3の長さに応じて適宜の架台にミリ波センサ110を着脱自在に装着してもよい。
【0089】
上記実施の形態は、各距離L1、L2をそれぞれ計測するために2台のミリ波センサ110を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、3台以上のミリ波センサ110を制御装置120に接続し、船舶3の3点以上の位置で距離L1、L2、…を計測してもよい。各ミリ波センサ110で計測された距離L1、L2、…をそのまま表示装置140に表示させてもよく、計測された距離データに統計処理を施してもよい。
【0090】
また、図10(a)に示すように、1台のミリ波センサ110を制御装置120に接続し、ミリ波センサ110から放射されたミリ波を走査器114で走査するように構成してもよい。走査器114は、制御装置120に接続され、制御装置120からの制御信号に基づいて、ミリ波センサ110からのミリ波を船舶3の長手方向に走査する。走査器114は、ミリ波センサ110に内蔵してもよく、ミリ波センサ110と別体であってもよい。
【0091】
また、図10(b)に示すように、1台のミリ波センサ110に方向切替器115及び反射器116を組み合わせてもよい。方向切替器115は、岸壁2の船舶3の船首3a及び船尾3bのいずれか一方に対応する位置に設置され、制御装置120に接続され、制御装置120からの制御信号に基づいて、ミリ波センサ110から放射されたミリ波をX軸方向及びY軸方向のいずれかに伝搬させるように周期的に切り換える。反射器116は、岸壁2の船舶3の船首3a及び船尾3bのいずれか他方に対応する位置に設置され、方向切替器115からY軸方向に放出されたミリ波をキャッチし、船舶3の船首3a又は船尾3bに向けてX軸方向に反射させる。接岸速度計100では、方向切替器115がミリ波の伝搬方向を周期的に切り換えることにより、岸壁2から各距離L1、L2を交互に計測すればよい。
【0092】
なお、方向切替器115及び反射器116には、メタマテリアルを用いてもよい。メタマテリアルは、波長の1/5~1/2程度の寸法の微細構造が繰り返し形成された材料であり、微細構造の寸法や配置等に応じてミリ波の伝搬方向や形状を任意に設計できる。
【0093】
さらに、図10(c)に示すように、1台のミリ波センサ110に反射器116及び分割器117(ハーフミラー)を組み合わせてもよい。分割器117は、岸壁2の船舶3の船首3a及び船尾3bのいずれか一方に対応する位置に設置され、ミリ波センサ110から放出されたミリ波をX軸方向及びY軸方向に分割する。反射器116は、岸壁2の船舶3の船首3a及び船尾3bのいずれか他方に対応する位置に設置され、分割器117からY軸方向に放出されたミリ波をキャッチし、船舶3の船首3a又は船尾3bに向けてX軸方向に反射させる。接岸速度計100では、船舶3の船首3a及び船尾3bにミリ波が照射されることで、各距離L1、L2を同時に計測できる。
【0094】
なお、分割器117は、1台のミリ波センサ110から放射されたミリ波を3つ以上の異なる方向に伝搬するように分割してもよい。
【0095】
1台のミリ波センサ110を用いて各距離L1、L2を同時に計測するには、周波数変調連続波(Frequency Modulated Continuous Wave:FMCW)を利用すればよい。FMCW方式は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように電波を変調する方式である。ミリ波をFMCW方式で変調することで、ミリ波センサ110で送受信した信号同士を比較でき、計測対象物の位置を検出できる。
【0096】
上記実施の形態では、各周期においてミリ波センサ110で計測された各距離L1、L2から各接岸速度V1、V2を算出していたが、本発明はこれに限られない。例えば、船舶3の表面形状や塗装状態の影響で船舶3からの反射波が散乱した結果、ミリ波センサ110で計測された各距離L1、L2が異常値であると判定された場合、各距離L1、L2から各接岸速度V1、V2を算出せず、各距離L1、L2を削除してもよく、前の周期で計測された各距離L1n-1、L2n-1に基づいて各距離L1、L2を補正してもよい。
【0097】
上記実施の形態では、各距離L1、L2から、各接岸速度V1、V2及び角度θを算出していたが、本発明はこれに限られない。例えば、各距離L1、L2から各接岸速度V1、V2だけを算出してもよい。
【0098】
上記実施の形態2では、ミリ波センサ110とレーザ距離センサ170とを併用していたが、本発明はこれに限られない。例えば、レーザ距離センサ170を超音波距離センサ等に置き換えてもよい。
【0099】
上記実施の形態2では、気象センサ160で取得された気象データに基づいて、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれか1つを選択していたが、本発明はこれに限られない。例えば、インターネットのような通信回線を介して気象データ提供サイトから取得した気象データに基づいて、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれか1つを選択してもよい。
【0100】
上記実施の形態2では、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれを作動させるかを選択し、選択されたミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170のいずれかに距離L1、L2を計測させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、取得部125aは、ミリ波センサ110及びレーザ距離センサ170の両方に距離L1、L2を計測させ、センサ選択部125dは、気象センサ160が取得した気象データに基づいて、どちらのセンサで計測された距離L1、L2を用いて接岸速度を算出するかを選択してもよい。
【0101】
上記実施の形態では、制御装置120の記憶部124に各種データが記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各種データは、その全部又は一部が通信ネットワークを介して外部のサーバやコンピュータ等に記憶されていてもよい。
【0102】
上記実施の形態では、制御装置120は、それぞれ記憶部124に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
【0103】
上記実施の形態では、制御装置120は、例えば、制御盤であったが、本発明はこれに限られない。例えば、制御装置120は、汎用コンピュータで実現してもよく、クラウド上に設けられたコンピュータで実現してもよい。
【0104】
上記実施の形態では、制御装置120が実行する処理は、上述の物理的な構成を備える装置が記憶部124に記憶されたプログラムを実行することによって実現されていたが、本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
【0105】
また、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical Disk)等のコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理動作を実行する装置を構成してもよい。
【0106】
上記実施の形態では、ミリ波センサ110、制御装置120、給電装置130及び表示装置140を運搬車両150で運搬していたが、本発明はこれに限られない。運搬車両150は任意の構成であり、例えば、制御装置120及び給電装置130を岸壁2に据え付け、ミリ波センサ110及び表示装置140を任意の位置に設置可能に構成してもよい。
【0107】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1 接岸速度計測システム
2 岸壁
3 船舶
3a 船首
3b 船尾
100 接岸速度計
110,111,112 ミリ波センサ
113 電動ドラム
114 走査器
115 方向切替器
116 反射器
117 分割器
120 制御装置
121 操作部
122 表示部
123 通信部
124 記憶部
124a 接岸情報記憶部
125 制御部
125a 取得部
125b 算出部
125c 出力部
125d センサ選択部
130 給電装置
131 発電機
132 UPS
140 表示装置
150 運搬車両
160 気象センサ
170 レーザ距離センサ
200 通信端末
300 サーバ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10