(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】プログラム、電子マネーのチャージ方法、決済アプリ、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/36 20120101AFI20240911BHJP
G06Q 20/38 20120101ALI20240911BHJP
【FI】
G06Q20/36
G06Q20/38 310
(21)【出願番号】P 2020213992
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 ちひろ
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160181(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042533(WO,A1)
【文献】特許第6518996(JP,B1)
【文献】特開2010-055412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子マネーによる決済を実行可能な決済アプリが複数インストールされたコンピュータを、
金融機関口座を含む電子マネーの
複数のチャージ元
のそれぞれからチャージされた電子マネーを
、当該チャージ元を識別可能に記憶する仮想口座部、
及び、前記決済アプリのそれぞれから電子マネーのチャージ要求を受けた場合に、前記仮想口座部に記憶されている電子マネーを当該決済アプリにチャージするチャージ部
として機能させるプログラム。
【請求項2】
前記決済アプリは、決済時の決済額と同額の電子マネーのチャージ要求を前記仮想口座部に対して実行し、
前記チャージ部は、前記同額の電子マネーのチャージ要求を前記決済アプリから受けた場合に、前記仮想口座部に記憶されている電子マネーの範囲内において、前記同額の電子マネーを当該決済アプリにチャージする、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
前記決済アプリのそれぞれに対するチャージ額を決定するチャージ額決定部
としてさらに機能させ、
前記チャージ部は、前記チャージ額決定部によって決定されたチャージ額の電子マネーを前記決済アプリのそれぞれにチャージする、
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記チャージ額決定部は、前記決済アプリのそれぞれの決済履歴に基づいて、前記チャージ額を決定する、
請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記チャージ部は、前記決済アプリ毎に電子マネーのチャージ元を特定し、特定したチャージ元からチャージされた電子マネーを当該決済アプリのそれぞれにチャージする、
請求項1乃至4の何れかに記載のプログラム。
【請求項6】
前記チャージ部は、支払い用途毎に電子マネーのチャージ元を特定し、特定したチャージ元からチャージされた電子マネーを前記決済アプリのそれぞれにチャージする、
請求項1乃至4の何れかに記載のプログラム。
【請求項7】
前記仮想口座部は、異なる通貨建ての複数の前記チャージ元のそれぞれからチャージされた電子マネーを記憶し、
前記チャージ部は、前記決済アプリ毎にチャージ可能な通貨を特定し、特定した通貨建ての前記チャージ元からチャージされた電子マネーを当該決済アプリのそれぞれにチャージする、
請求項1乃至6の何れかに記載のプログラム。
【請求項8】
電子マネーによる決済を実行可能な決済アプリが複数インストールされたコンピュータに、
金融機関口座を含む電子マネーの
複数のチャージ元
のそれぞれからチャージされた電子マネーを
、当該チャージ元を識別可能に記憶させ、
前記決済アプリのそれぞれから電子マネーのチャージ要求を当該コンピュータが受けた場合に、記憶している電子マネーを当該決済アプリにチャージさせる
電子マネーのチャージ方法。
【請求項9】
電子マネーによる決済を実行可能な決済アプリが複数インストールされたコンピュータと通信する通信部と、
金融機関口座を含む電子マネーのチャージ元からチャージされた電子マネーを記憶する仮想口座部と、
前記決済アプリのそれぞれから電子マネーのチャージ要求を受けた場合に、前記仮想口座部に記憶されている電子マネーを当該決済アプリにチャージするチャージ部と
を備える、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子マネーのチャージを実現するためのプログラム、電子マネーのチャージ方法、決済アプリ、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの情報端末にインストールされ、電子マネーによる決済を実行するアプリケーションである決済アプリが近年普及している。このような決済アプリでは、金融機関口座からチャージ(入金)された電子マネーを用いて決済が行われる(例えば、特許文献1及び2などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-25618号公報
【文献】特開2013-140432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各事業者から多くの異なる決済アプリが提供されている現状において、ユーザ側には、例えば支払い用途などに応じて各決済アプリを使い分けたいなどの要望がある。しかしながら、各決済アプリに対してユーザの金融機関口座を紐付けるなどした場合、その口座に関する情報の漏洩等の問題を招くおそれが高くなる。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、各決済アプリと金融機関口座とを直接紐付けることなく電子マネーによる決済を行うことを可能にするプログラム、電子マネーのチャージ方法、決済アプリ、及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一の態様のプログラムは、電子マネーによる決済を実行可能な決済アプリが複数インストールされたコンピュータを、金融機関口座を含む電子マネーのチャージ元からチャージされた電子マネーを記憶する仮想口座部、及び、前記決済アプリのそれぞれから電子マネーのチャージ要求を受けた場合に、前記仮想口座部に記憶されている電子マネーを当該決済アプリにチャージするチャージ部として機能させるものである。
【0007】
前記態様において、前記決済アプリは、決済時の決済額と同額の電子マネーのチャージ要求を前記仮想口座部に対して実行し、前記チャージ部は、前記同額の電子マネーのチャージ要求を前記決済アプリから受けた場合に、前記仮想口座部に記憶されている電子マネーの範囲内において、前記同額の電子マネーを当該決済アプリにチャージしてもよい。
【0008】
また、前記態様において、前記コンピュータを、前記決済アプリのそれぞれに対するチャージ額を決定するチャージ額決定部としてさらに機能させ、前記チャージ部は、前記チャージ額決定部によって決定されたチャージ額の電子マネーを前記決済アプリのそれぞれにチャージしてもよい。
【0009】
また、前記態様において、前記チャージ額決定部は、前記決済アプリのそれぞれの決済履歴に基づいて、前記チャージ額を決定してもよい。
【0010】
また、前記態様において、前記仮想口座部は、複数の前記チャージ元のそれぞれからチャージされた電子マネーを、当該チャージ元を識別可能に記憶してもよい。
【0011】
また、前記態様において、前記チャージ部は、前記決済アプリ毎に電子マネーのチャージ元を特定し、特定したチャージ元からチャージされた電子マネーを当該決済アプリのそれぞれにチャージしてもよい。
【0012】
また、前記態様において、前記チャージ部は、支払い用途毎に電子マネーのチャージ元を特定し、特定したチャージ元からチャージされた電子マネーを前記決済アプリのそれぞれにチャージしてもよい。
【0013】
また、前記態様において、前記仮想口座部は、異なる通貨建ての複数の前記チャージ元のそれぞれからチャージされた電子マネーを記憶し、前記チャージ部は、前記決済アプリ毎にチャージ可能な通貨を特定し、特定した通貨建ての前記チャージ元からチャージされた電子マネーを当該決済アプリのそれぞれにチャージしてもよい。
【0014】
また、本発明の一の態様の電子マネーのチャージ方法は、電子マネーによる決済を実行可能な決済アプリが複数インストールされたコンピュータに、金融機関口座を含む電子マネーのチャージ元からチャージされた電子マネーを記憶させ、前記決済アプリのそれぞれから電子マネーのチャージ要求を当該コンピュータが受けた場合に、記憶している電子マネーを当該決済アプリにチャージさせる。
【0015】
また、本発明の一の態様の決済アプリは、前記態様のコンピュータにインストールされる決済アプリであって、前記コンピュータを、前記仮想口座部にアクセスするためのアクセス情報を取得するアクセス情報取得部、前記アクセス情報に基づいてアクセスした前記仮想口座部に対して、電子マネーのチャージ要求を行うチャージ要求部、及び、前記チャージ要求に応じてチャージされた電子マネーを用いて決済を実行する決済部として機能させるものである。
【0016】
また、本発明の一の態様の情報処理装置は、電子マネーによる決済を実行可能な決済アプリが複数インストールされたコンピュータと通信する通信部と、金融機関口座を含む電子マネーのチャージ元からチャージされた電子マネーを記憶する仮想口座部と、前記決済アプリのそれぞれから電子マネーのチャージ要求を受けた場合に、前記仮想口座部に記憶されている電子マネーを当該決済アプリにチャージするチャージ部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各決済アプリと金融機関口座とを直接紐付ける必要がなくなるため、情報漏洩等の問題の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1の電子マネー決済システムの構成を示すブロック図。
【
図2】実施の形態1の電子マネー決済システムの構成を概念的に示す説明図。
【
図4】仮想口座データベースのレイアウトの一例を示す図。
【
図5】仮想口座チャージ処理の手順を示すフローチャート。
【
図6】電子マネーによる決済処理の手順を示すフローチャート。
【
図7】電子マネーのオートチャージ処理の手順を示すフローチャート。
【
図8】実施の形態2の電子マネー決済システムの構成を示すブロック図。
【
図9】実施の形態2の電子マネー決済システムの構成を概念的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、スマートフォン等のユーザ端末が、金融機関口座から電子マネーのチャージを受け付け、そのチャージされた電子マネーを仮想口座にチャージする。この仮想口座にチャージされた電子マネーは、そのユーザ端末にインストールされている決済アプリにチャージされて利用される。以下、当該ユーザ端末を含む電子マネー決済システムの構成及び動作について説明する。
【0021】
[電子マネー決済システムの構成]
図1は、本実施の形態の電子マネー決済システムの構成を示すブロック図である。本電子マネー決済システムは、各ユーザによって用いられるユーザ端末1及び各金融機関によって運用される金融機関システム2によって構成されている。各ユーザ端末1及び各金融機関システム2は、インターネット101を介して相互に通信することが可能である。
【0022】
金融機関システム2は、銀行及び信用金庫等の金融機関によって運用されるコンピュータシステムであって、各ユーザが保有する金融機関口座を管理するために用いられている。この金融機関口座は、ユーザ端末1によって利用される電子マネーのチャージ元となる。
【0023】
なお、本実施の形態では、電子マネーのチャージ元が金融機関口座である場合を例示しているが、これに限定されるわけではなく、クレジットカードがチャージ元となってもよい。その場合、クレジットカード会社によって運用されるシステムが上記の金融機関システム2に対応することになる。例えば、
図1には複数の金融機関システム2が示されているが、このうちの少なくとも1つがクレジットカード会社によって運用されるシステムであってもよい。
【0024】
図2は、上記の電子マネー決済システムの構成を概念的に示す説明図である。各ユーザ端末1には、複数の決済アプリ121と、仮想口座プログラム122とがインストールされている。決済アプリ121は、電子マネーの決済サービスを実施している各事業者によって提供されるアプリケーションプログラムであって、ユーザ端末1を用いて電子マネーによる決済を行うために用いられる。
【0025】
また、仮想口座プログラム122は、各金融機関口座から電子マネーのチャージを受けるとともに、チャージされた電子マネーを各決済アプリ121に対してチャージする機能を有するコンピュータプログラムである。そのため、決済アプリ121からすると、仮想口座プログラム122は、仮想的な金融機関口座(仮想口座)として機能するものといえる。以下では、仮想口座プログラム122を単に仮想口座と称する場合がある。また、各金融口座から仮想口座へのチャージを入金と称し、仮想口座から各決済アプリ121へのチャージを出金と称する場合がある。
【0026】
決済アプリ121がユーザ端末1にインストールされるとき、又はインストール後に各種の設定が行われるときなどに、仮想口座プログラム122にアクセスするためのアクセス情報(アドレスなど)が決済アプリ121に付与される。但し、決済アプリ121に予めアクセス情報が組み込まれていても構わない。決済アプリ121は、このアクセス情報を用いることにより、仮想口座プログラム122にアクセスして、仮想口座からチャージを受ける。
【0027】
本実施の形態では、各決済アプリ121が各金融機関システム2から直接チャージを受けるのではなく、各金融機関システム2から仮想口座プログラム122がチャージを受け、その後に各決済アプリ121が仮想口座プログラム122からチャージを受けることになる。そのため、各決済アプリ121を各金融機関口座に直接紐付ける必要がなく、金融機関口座に関する情報の漏洩等の問題の発生を抑制することが可能になる。なお、仮想口座プログラム122には、ユーザによって各金融機関口座が予め登録されている。そのため、仮想口座プログラム122は、各金融機関口座に係る情報(名義及び口座番号など)を取得することができる。
【0028】
[ユーザ端末の構成]
ユーザ端末1は、例えば、スマートフォン等の携帯電話機又はタブレット端末等の情報端末である。各ユーザは、ユーザ端末1を用いて、電子マネーによる決済を行う。以下、ユーザ端末1の詳細な構成について説明する。
【0029】
図3は、ユーザ端末1の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ユーザ端末1は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、入力部14と、表示部15と、マイク16と、スピーカ17とを備えている。
【0030】
制御部11は、図示しないCPUと、SRAM又はDRAM等のRAMとを少なくとも備えている。制御部11のCPUが、RAMにロードされた各種のコンピュータプログラムを実行する。
【0031】
記憶部12は、フラッシュメモリ等で構成されており、制御部11にて実行されるオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等の各種のコンピュータプログラム、並びにその実行の際に用いられるデータ等を記憶する。このコンピュータプログラムには、上述した複数の決済アプリ121及び仮想口座プログラム122が含まれる。なお、仮想口座プログラム122は、仮想口座データベース(DB)123及び設定ファイル124を有している。これらのデータベース及びファイルの詳細については後述する。
【0032】
通信部13は、3G(Generation)、4G、5G、及びLTE(Long Term Evolution)等の長距離無線通信方式、並びにNFC(Near Field Communication)、Wi-Fi(登録商標)、BLUETOOTH(登録商標)等の近距離無線通信方式に対応する通信モジュールで構成されている。ユーザ端末1は、この通信部13を介して、電子マネーのチャージの際に各金融機関システム2との間で通信を行ったり、電子マネーによる決済の際にPOS(Point Of Sales)端末及び自動改札機などとの間で通信を行ったりする。
【0033】
入力部14は、静電容量方式のタッチパネル等で構成されており、ユーザからの入力を受け付け、その入力に基づく電気信号を制御部11に出力する。ユーザは、入力部14を用いることにより、ユーザ端末1に対して必要な操作を行う。
【0034】
表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等で構成されており、制御部11から入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0035】
マイク16は、外部から音声の入力を受け付けて、その入力に基づく電気信号を制御部11に出力する。上記の入力部14による入力に代えて、マイク16による音声入力を行うことも可能である。
【0036】
スピーカ17は、制御部11からの指示にしたがって、外部に音声を出力する。上記の表示部15による表示の代わりに、スピーカ17による音声出力によって各種のメッセージ等を出力することができる。
【0037】
[仮想口座データベースの内容]
図4は、上記の仮想口座DB123のレイアウトの一例を示す図である。仮想口座DB123には、チャージ元(金融機関口座)から電子マネーのチャージを受けたときの処理結果を示す入金情報、及び各決済アプリ121に対して電子マネーをチャージしたときの処理結果を示す出金情報が格納される。なお、本実施の形態では入金情報及び出金情報が同一のデータベースに格納されているが、各情報が異なるデータベースに各別に格納されてもよい。
【0038】
図4に示すように、入金情報及び出金情報は、処理日時、入金及び出金の種別、金額(入金額又は出金額)、金融機関口座の識別情報、決済アプリの識別情報、金融機関口座別の電子マネーの残高(口座別残高)、及び電子マネーの全体残高を含んでいる。入金情報に含まれる金融機関口座の識別情報は、仮想口座に電子マネーがチャージされた場合にそのチャージ元の金融機関口座を識別するための情報である。例えば、電子マネーのチャージ元としてユーザが金融機関口座A及びBを所有している場合において、それらの口座A及びBの何れかから仮想口座に対してチャージが行われたときでは、その何れかの口座を識別するための情報が当該識別情報に該当する。これに対し、出金情報に含まれる金融機関口座の識別情報は、各決済アプリ121に電子マネーをチャージした場合にその電子マネーのチャージ元の金融機関口座を識別するための情報である。例えば、金融機関口座Aからチャージされた電子マネーを決済アプリ121に対してチャージする場合では、その口座Aを識別するための情報が当該識別情報に該当する。
【0039】
上記の口座別残高は、各金融機関口座からチャージされた電子マネーの最新の残高を金融機関口座別に示す値である。例えば、金融機関口座Aから仮想口座に対して電子マネーがチャージされた場合、そのときの処理結果を示す入金情報における口座別残高は、金融機関口座Aから仮想口座にチャージされた電子マネーのその時点における残高と今回チャージされた電子マネーの額との合計額となる。また、チャージ元が金融機関口座Bである電子マネーが決済アプリ121にチャージされた場合、そのときの処理結果を示す出金情報における口座別残高は、金融機関口座Bから仮想口座にチャージされた電子マネーのその時点における残高から今回出金された電子マネーの額を差し引いた額となる。なお、この口座別残高の合計額が、上記の全体残高になる。例えば、入金又は出金時において、金融機関口座A及びBからチャージされた電子マネーの残高(口座別残高)がそれぞれ5,000円及び3,000円であった場合、全体残高はそれらの合計額である8,000円となる。
【0040】
[設定ファイルの内容]
設定ファイル124は、ユーザによって登録された金融機関口座と各決済アプリ121との対応関係を規定するファイルである。各決済アプリ121は、設定ファイル124によって、登録済みの金融機関口座のうちの少なくとも1つと紐付けられる。例えば、ある決済アプリ121は金融機関口座Aと紐付けられ、別の決済アプリ121は金融機関口座A及びBと紐付けられる。仮想口座プログラム122は、決済アプリ121からチャージ要求があった場合に、登録済みの金融機関口座のうちのどの口座から入金を受けた電子マネーをその決済アプリ121に出金するのかを、設定ファイル124に基づいて決定する。
【0041】
設定ファイル124は、ユーザによって定義される。例えばユーザが、食事・買い物・交通機関の運賃などの支払い用途によって金融機関口座を使い分けることを希望する場合、当該ユーザは、設定ファイル124によって、各支払い用途に利用する決済アプリ121を所望の金融機関口座と紐付ける。これにより、買い物の際には特定の決済アプリ121を用いることにより金融機関口座Aからチャージされた電子マネーを使用したり、交通機関を利用する際には別の決済アプリ121を用いることにより金融機関口座Bからチャージされた電子マネーを使用したりするなど、支払い用途毎に電子マネーのチャージ元を使い分けることが可能になる。その他にも、仮想口座プログラム122が、決済アプリ121による決済の都度その支払い用途を特定し、その用途に基づいてチャージ元を使い分けるようにしてもよい。
【0042】
上記のとおり、本実施の形態では設定ファイル124がマニュアルで定義されているが、仮想口座プログラム122が設定ファイル124を自動的に定義するようにしてもよい。例えば、各金融機関口座からチャージされた電子マネーのチャージ頻度及び残高、並びに各決済アプリ121の利用頻度及び利用額などに基づいて、仮想口座プログラム122が各金融機関口座と各決済アプリ121とを自動的に紐付けるようにすることなどが想定される。この場合、仮想口座プログラム122は、チャージ額が不足して決済ができないような事態が可能な限り発生しないように、各金融機関口座と各決済アプリ121とを紐付けるようにしてもよい。その他にも、仮想口座プログラム122が、登録済みの金融機関口座を各決済アプリ121にランダムに割り当てるようにしてもよい。
【0043】
[電子マネー決済システムの動作]
次に、特にユーザ端末1の動作に着目した上で、電子マネー決済システムの動作を説明する。本電子マネー決済システムでは、(1)各金融機関口座からユーザ端末1への電子マネーの入金処理、(2)電子マネーによる決済処理、及び(3)電子マネーのオートチャージ処理の各処理が行われる。以下、これらの処理の詳細について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0044】
(1)入金処理
ユーザは、各決済アプリ121を用いて電子マネーによる決済を行うために、仮想口座に予め電子マネーを入金しておく。そのための処理が以下の入金処理である。
図5は、ユーザ端末1及び金融機関システム2によって実行される入金処理の手順を示すフローチャートである。なお、この入金処理中のユーザ端末1における各処理は、仮想口座プログラム122が実行されることにより実現される。
【0045】
仮想口座プログラム122はまず、予め登録されている金融機関口座を表示部15に表示させる(S101)。ユーザは、表示部15に表示されている金融機関口座の中から、今回の入金処理においてチャージ元に設定する金融機関口座を選択する。また、ユーザは、その金融機関口座から受ける入金の金額(チャージ額)を入力する。
【0046】
仮想口座プログラム122は、金融機関口座の選択及びチャージ額の入力を受け付けると(S102)、その金融機関口座を管理する金融機関システム2に対して、当該チャージ額のチャージ要求を送信する(S103)。
【0047】
金融機関システム2は、チャージ要求を受信すると(S201)、そのチャージ要求にて指定されている金融機関口座の残高を用いて、同じく指定されている金額の電子マネーをチャージする(S202)。なお、当該金融機関口座の残高が不足しているなどの場合は、チャージすることができない旨を示す情報がユーザ端末1へ送信されて処理が終了することになる。
【0048】
仮想口座プログラム122は、金融機関システム2による電子マネーのチャージを受け付けると(S104)、そのチャージ額を含む入金情報を仮想口座DB123に書き込む(S105)。このとき、今回の入金後の口座別残高及び全体残高が仮想口座DB123に書き込まれる。
【0049】
以上により、電子マネーの入金処理が完了する。これ以降、ユーザは、各決済アプリ121を用いて、入金されている電子マネーの額の範囲内で電子マネーによる決済を行うことが可能になる。
【0050】
(2)決済処理
ユーザは、店舗(仮想店舗を含む)にて商品を購入したり電車等の交通機関の運賃を支払ったりする場合に、ユーザ端末1にインストールされている決済アプリ121を利用する。このときに実行される処理が以下の決済処理である。
【0051】
図6は、ユーザ端末1において実行される決済処理の手順を示すフローチャートである。この決済処理は、仮想口座プログラム122及び決済アプリ121が実行されることにより実現される。
【0052】
ユーザによる指示にしたがって起動している決済アプリ121は、電子マネーによって代金を支払う場合に、予め登録されているアクセス情報を記憶領域から取得する(S301)。次に、決済アプリ121は、取得したアクセス情報を用いて仮想口座プログラム122にアクセスし、今回の決済額と同額のチャージ要求を仮想口座プログラム122に渡す(S302)。
【0053】
仮想口座プログラム122は、決済アプリ121からチャージ要求を受け付けると(S401)、その決済アプリ121に対してチャージする電子マネーのチャージ元を特定する(S402)。このチャージ元の特定は、設定ファイル124に基づいて行われる。より具体的に説明すると、仮想口座プログラム122は、設定ファイル124において、チャージ要求元の決済アプリ121と紐付けられている金融機関口座を、今回チャージする電子マネーのチャージ元として特定する。
【0054】
次に、仮想口座プログラム122は、ステップS402で特定した金融機関口座からチャージされた電子マネーの残高を用いて、今回の決済額と同額の電子マネーを決済アプリ121にチャージする(S403)。なお、当該金融機関口座からチャージされた電子マネーの残高が不足しているなどの場合は、チャージすることができない旨を示す情報が決済アプリ121へ渡されて処理が終了する。但し、この場合に、他の金融機関口座からチャージされた電子マネーの残高を用いてチャージするようにしても構わない。また、この場合に、仮想口座プログラム122が、ステップS402で特定した金融機関口座に対して所定額のチャージ要求を行うようにしてもよい。
【0055】
決済アプリ121は、仮想口座プログラム122による電子マネーのチャージを受け付けると(S303)、その電子マネーを用いて代金の決済を行う(S304)。他方、仮想口座プログラム122は、決済アプリ121に対するチャージ額を含む出金情報を仮想口座DB123に書き込む(S404)。このとき、今回の出金後の口座別残高及び全体残高が仮想口座DB123に書き込まれる。
【0056】
以上により、電子マネーによる決済処理が完了する。上記の決済処理の場合、決済の都度、決済額と同額の電子マネーが仮想口座プログラム122から決済アプリ121にチャージされることになる。そのため、各決済アプリ121において予め電子マネーをチャージしておく必要がなく、各決済アプリ121における電子マネーの残高を常時ゼロとすることができる。これにより、決済アプリ121において少額の電子マネーが残ってしまうなどの問題が発生することを防止できる。
【0057】
なお、上記のように決済額と同額ではなく、決済額よりも多い額または少ない額の電子マネーを仮想口座プログラム122がチャージするようにしてもよい。例えば、決済アプリ121における電子マネーの残高が今回の決済額よりも少ない場合に、その不足額の電子マネーを仮想口座プログラム122がチャージしてもよい。
【0058】
また、上記の決済処理では、決済アプリ121毎に電子マネーのチャージ元が振り分けられるため、特定のチャージ元の電子マネーのみが使用されて不足するなどの問題の発生を抑制することができる。また、支払い用途毎に電子マネーのチャージ元が振り分けることができるため、各用途において想定される決済額に合わせた額の電子マネーを仮想口座に入金しておくなどの運用を実現することができる。
【0059】
(3)オートチャージ処理
決済アプリ121は、電子マネーの残高が設定されている金額未満となった場合に、仮想口座プログラム122に対してチャージ要求を行う。このときに実行される処理が以下のオートチャージ処理である。
【0060】
図7は、ユーザ端末1において実行されるオートチャージ処理の手順を示すフローチャートである。このオートチャージ処理は、決済処理の場合と同様に、仮想口座プログラム122及び決済アプリ121が実行されることにより実現される。
【0061】
決済アプリ121は、電子マネーの残高が設定されている金額未満となった場合に、予め登録されているアクセス情報を記憶領域から取得する(S501)。次に、決済アプリ121は、取得したアクセス情報を用いて仮想口座プログラム122にアクセスし、オートチャージ要求を仮想口座プログラム122に渡す(S502)。
【0062】
仮想口座プログラム122は、決済アプリ121からオートチャージ要求を受け付けると(S601)、その決済アプリ121に対してチャージする電子マネーのチャージ元を特定する(S602)。このチャージ元の特定は、上記の決済処理におけるステップS402と同様である。
【0063】
次に、仮想口座プログラム122は、今回のオートチャージにおけるチャージ額を決定する(S603)。この場合、仮想口座プログラム122は、決済アプリ121毎に予め設定されている額をチャージ額とすることができる。この予め設定されている額は、決済アプリ121からのオートチャージ要求に含まれていてもよく、設定ファイル124などによって規定されていてもよい。その他にも、仮想口座プログラム122が各決済アプリ121の決済履歴を取得し、その決済履歴に基づいて必要な額を特定して、これをチャージ額としてもよい。例えば、ある決済アプリ121が毎月3,000円程度の決済を行っている場合であれば当該決済アプリ121についてチャージ額を3,000円としたり、別の決済アプリ121が特定の月だけ他の月よりも多く決済を行っている場合であれば当該決済アプリ121の当該特定の月におけるチャージ額を通常時のチャージ額よりも多めにしたりすることが想定される。
【0064】
次に、仮想口座プログラム122は、ステップS602で特定した金融機関口座からチャージされた電子マネーの残高を用いて、ステップS603にて決定された額の電子マネーを決済アプリ121にチャージする(S604)。なお、当該金融機関口座からチャージされた電子マネーの残高が不足しているなどの場合は、チャージすることができない旨を示す情報が決済アプリ121へ渡されて処理が終了する。但し、この場合に、他の金融機関口座からチャージされた電子マネーの残高を用いてチャージするようにしても構わない。また、この場合に、仮想口座プログラム122が、ステップS602で特定した金融機関口座に対して所定額のチャージ要求を行うようにしてもよい。
【0065】
決済アプリ121は、仮想口座プログラム122による電子マネーのチャージを受け付けると(S503)、その電子マネーの額だけ残高を増額する(S504)。他方、仮想口座プログラム122は、決済アプリ121に対するチャージ額を含む出金情報を仮想口座DB123に書き込む(S605)。このとき、今回の出金後の口座別残高及び全体残高が仮想口座DB123に書き込まれる。
【0066】
以上により、電子マネーのオートチャージ処理が完了する。上記のオートチャージ処理では、決済処理の場合と同様に、決済アプリ121毎に電子マネーのチャージ元を振り分けたり、支払い用途に応じて当該チャージ元を振り分けたりすることが可能である。また、上述したように各決済アプリ121の決済履歴に基づいてチャージ額を決定する場合であれば、その決済履歴に応じた適切な額をチャージすることが可能になる。
【0067】
上記のとおり、本実施の形態では、仮想口座を設けることによって、各決済アプリ121と金融機関口座とを直接紐付ける必要がなくなるため、情報漏洩等の問題の発生を抑制することができる。その上で、各決済アプリ121と各金融機関口座とを柔軟に紐付けることが可能になるため、利便性を向上させることができる。
【0068】
(実施の形態2)
実施の形態1ではユーザ端末1内に仮想口座が設けられているが、本実施の形態では、ユーザ端末1とは別の装置内に仮想口座が設けられる。以下、本実施の形態の電子マネー決済システムの構成及び動作について説明する。
【0069】
図8は、本実施の形態の電子マネー決済システムの構成を示すブロック図である。また、
図9は、その構成を概念的に示す説明図である。本電子マネー決済システムは、ユーザ端末1及び金融機関システム2に加えて、仮想口座が設けられるサーバ3を備えている。各ユーザ端末1、各金融機関システム2、及びサーバ3は、インターネット101を介して相互に通信することが可能である。なお、ユーザ端末1には、実施の形態1の場合と同様に複数の決済アプリ121がインストールされている。
【0070】
サーバ3は、パーソナルコンピュータなどで構成され、実施の形態1における仮想口座プログラム122と同様の仮想口座プログラム322がインストールされている。この仮想口座プログラム322が実行されることによって、サーバ3内に各ユーザの仮想口座が設けられることになる。
【0071】
電子マネーの入金処理は、ユーザによる指示を受けたユーザ端末1からの入金指示にしたがって、仮想口座プログラム322を実行するサーバ3と金融機関システム2との間で実行される。これにより、サーバ3内に設けられた当該ユーザの仮想口座に電子マネーがチャージされる。
【0072】
電子マネーによる決済処理は、決済アプリ121を実行するユーザ端末1と仮想口座プログラム322を実行するサーバ3との間で実行される。これにより、サーバ3内の仮想口座からユーザ端末1の決済アプリ121に電子マネーがチャージされ、決済アプリ121によって決済に利用される。
【0073】
電子マネーのオートチャージ処理も、決済アプリ121を実行するユーザ端末1と仮想口座プログラム322を実行するサーバ3との間で実行される。これにより、決済アプリ121内の残高が少なくなったときに、サーバ3内の仮想口座から必要額の電子マネーがチャージされる。
【0074】
本実施の形態でも、実施の形態1の場合と同様、各決済アプリ121と金融機関口座とを直接紐付ける必要はなく、しかも、各決済アプリ121と各金融機関口座とを柔軟に紐付けることが可能になる。
【0075】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態では、仮想口座プログラム122(322)によって実現される仮想口座が一つの通貨(円)建ての口座であるが、ユーザ毎に複数の仮想口座を設け、各仮想口座を異なる通貨建てのものとすることも可能である。この場合、仮想口座プログラム122(322)は、決済アプリ121からチャージ要求(オートチャージ要求を含む)を受けた場合に、その決済アプリ121にチャージ可能な通貨を特定し、その特定した通貨建ての仮想口座にチャージされた電子マネーを当該決済アプリ121にチャージする。なお、チャージ可能な通貨は、決済アプリ121からのチャージ要求に含まれている情報に基づいて特定されてもよく、設定ファイル124などによって規定されている情報に基づいて特定されてもよい。
【0076】
なお、上記の各実施の形態では仮想口座DB123が電子マネーの全体残高に加えて口座別残高を管理しているが、これに限定されるわけではなく、全体残高のみを管理する構成であってもよい。また、上記の各実施の形態では各決済アプリ121が口座別残高に対して決済処理を行っているが、一部又はすべての決済アプリ121が、全体残高に対して決済処理を行ってもよい。また、上記の各実施の形態では各決済アプリ121が口座別残高に基づいてオートチャージ処理を行っているが、一部又はすべての決済アプリ121が、全体残高に基づいてオートチャージ処理を行ってもよい。さらに、決済アプリ121ではなく仮想口座プログラム122(322)が全体残高に基づいてオートチャージ処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ユーザ端末
11 制御部
12 記憶部
121 決済アプリ
122 仮想口座プログラム
123 仮想口座データベース
124 設定ファイル
13 通信部
14 入力部
15 表示部
16 マイク
17 スピーカ
2 金融機関システム
3 サーバ
322 仮想口座プログラム
101 インターネット