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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240911BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F16H57/04 G
F28D1/06 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020214344
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100150
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】大森 克之
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110630731(CN,A)
【文献】特開2016-022799(JP,A)
【文献】特開2020-114717(JP,A)
【文献】特開平09-210097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F28D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成体としてハウジング及びケースを備えるケーシングの内部空間のオイルを冷却媒体との熱交換により冷却する冷却装置であって、
冷却媒体を流入させるための冷却媒体流入領域を形成する冷却ジャケット部を有し、
前記冷却ジャケット部として、前記ハウジングに一体的に形成された第一冷却ジャケット部と、前記ケースに一体的に形成された第二冷却ジャケット部と、を備え、
前記冷却ジャケット部が、
前記内部空間と前記冷却媒体流入領域とを隔てる部分に凹凸が形成されており、
前記凹凸のうち、前記内部空間に向けて突出するように形成された部分を凸部とし、前記内部空間から窪むように形成された部分を凹部とした場合、
前記凸部と前記凹部とが交互となるよう形成されていることを特徴とする、冷却装置。
【請求項2】
前記第一冷却ジャケット部の前記凹凸と前記第二冷却ジャケット部の前記凹凸とが、向き合うように形成されている、請求項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスアクスル内のオイルを冷却するための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスアクスル内のモータを冷却するために、オイル(ATF)をモータにかけ、熱くなったオイルを冷却水で冷やすといったことが行われており、オイル(ATF)の冷却手段としてオイルクーラが使われている。また、ミッションケースにジャケット構造を設け、ジャケット構造に冷却水を通すことで、ケース内のモータを冷やしているものがある。例えば、下記特許文献1には、ミッションケースの底部にジャケットを設け、冷却液とモータとの間で熱交換を行うことでモータを冷却するモータの冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-194362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷却装置では、外付けのオイルクーラを廃止し、その代わりにミッションケース底面に設けたジャケットで冷却することで原価低減を図っている。ここで、軽自動車のトランスアクスルでは、底面の面積が少なく、オイルと冷却水との間で熱交換を行うための十分な面積がとれない。そのため、底面の面積が少ないトランスアクスルでは、ジャケット構造を設けてもオイルを十分に冷却することができない。しかしながら、軽自動車など、トランスアクスルの底面の面積を十分に取ることが難しい車両に用いられるトランスアクスルでも、オイルクーラを設けずにオイルの冷却を行いたいという要望がある。
【0005】
そこで本発明は、オイルクーラを設けずにトランスアクスル内のオイルを十分に冷却することができる冷却装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題について本発明の発明者が検討したところ、冷却ジャケット部に凹凸を設けることで伝熱面積を大きくすることができ、オイルクーラを設けずとも十分にオイルを冷却することができるとの知見に至った。また、本発明の発明者がさらに検討したところ、冷却ジャケット部の内部に冷却媒体の流路を形成する仕切り部を設けると、略均一に冷却水を流すことができ、冷却効率をさらに向上させることができるとの知見に至った。
【0007】
(1)上述の知見に基づき提供される本発明の冷却装置は、トランスアクスルを構成するケーシングの内部空間のオイルを冷却媒体との熱交換により冷却する冷却装置であって、冷却媒体を流入させるための冷却媒体流入領域を形成する冷却ジャケット部を有し、前記冷却ジャケット部が、前記ケーシングを構成する複数の構成体のうち、少なくとも一つの前記構成体に対して一体的に形成されているものであり、前記内部空間と前記冷却媒体流入領域とを隔てる部分に凹凸が形成されており、前記凹凸のうち、前記内部空間に向けて突出するように形成された部分を凸部とし、前記内部空間から窪むように形成された部分を凹部とした場合、前記凸部と前記凹部とが交互となるよう形成されており、前記冷却媒体流入領域を区画して冷却媒体の流路を形成する仕切り部が設けられており、前記冷却ジャケット部の内部には、蛇行するような前記流路が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の冷却装置によれば、冷却ジャケット部に凹凸部分を複数設けて伝熱面積をかせぐことができる。すなわち、本発明の冷却装置は、冷却ジャケット部のケーシング内部(オイル収容領域)と隣接する部分が凹凸になっているため、オイルとの接触面積(伝熱面積)が大きくなり、冷却媒体(例えば水)との伝熱面積を増やすことができる。これにより、本発明の冷却装置は、冷却効率を向上させることができる。その結果、本発明の冷却装置は、オイルクーラを廃止あるいは熱交換性能の高くないものとして原価を低減し、コストダウンに貢献することができる。また、外付けのオイルクーラを廃止することで、トランスアクスルのコンパクト化に貢献することができる。
【0009】
また、本発明の冷却装置では、冷却ジャケット部の内部に冷却媒体の流路を形成する仕切り部が設けられている。これにより、本発明の冷却装置では、例えば、冷却ジャケット部の内部(冷却媒体流入領域)で蛇行するような(ジグザクを描くような)冷却媒体の流路を形成する等して、冷却媒体が部位によらず略均一に行き渡るよう(よどまないように)流すことができ、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の冷却装置では、ケーシングと一体的に形成された冷却ジャケット部において内部空間と冷却媒体流入領域とを隔てる部分に凹凸が形成されている。これにより、本発明の冷却装置では、冷却ジャケット部の凹凸がケーシングにおいてリブと同様の機能を発揮して、ケーシング(ハウジングやケース)の剛性アップに貢献することができる。
【0011】
ここで、一般的にトランスアクスルの収容体(ケーシング)では、組み立ての都合上、中央付近でハウジングとケースとに分割可能な構成とされている。また、ケーシングの合わせ面(ハウジングとケースとの合わせ面)となる部分では、鋳造の形成都合により、ジャケット構造(冷却ジャケット部)を一体的に設けることができない。
【0012】
本発明の発明者がこのようなハウジングとケースとを構成体として備えるケーシングに対して伝熱面積を大きくすることについて検討した結果、ハウジング及びケースのそれぞれに冷却ジャケット部を設けることで、伝熱面積を大きくすることができるとの知見に至った。
【0013】
(2)上述の知見に基づき提供される本発明の冷却装置は、構成体としてハウジング及びケースを備えるケーシングの内部空間のオイルを冷却媒体との熱交換により冷却する冷却装置であって、冷却媒体を流入させるための冷却媒体流入領域を形成する冷却ジャケット部を有し、前記冷却ジャケット部として、前記ハウジングに一体的に形成された第一冷却ジャケット部と、前記ケースに一体的に形成された第二冷却ジャケット部と、を備え、前記冷却ジャケット部が、前記内部空間と前記冷却媒体流入領域とを隔てる部分に凹凸が形成されており、前記凹凸のうち、前記内部空間に向けて突出するように形成された部分を凸部とし、前記内部空間から窪むように形成された部分を凹部とした場合、前記凸部と前記凹部とが交互となるよう形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の冷却装置では、ハウジングには第一冷却ジャケット部が形成され、ケースには第二冷却ジャケット部が形成されている。別の言い方をすれば、本発明の冷却装置では、冷却ジャケット部が、ハウジング側の部材(第一冷却ジャケット部)とケース側の部材(第二冷却ジャケット部)との二つに分割されており、二つの冷却ジャケット部により伝熱面積を稼いでいる。これにより本発明の冷却装置は、狭い設置面積(トランスアクスルの設置面積)であっても伝熱面積を広く取ることができ、冷却性能を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の冷却装置によれば、冷却ジャケット部に凹凸部分を複数設けて伝熱面積をかせぐことができる。すなわち、本発明の冷却装置は、冷却ジャケット部のケーシング内部(オイル収容領域)と隣接する部分が凹凸になっているため、オイルとの接触面積(伝熱面積)が大きくなり、冷却媒体(例えば水)との伝熱面積を増やすことができる。これにより、本発明の冷却装置は、冷却効率を向上させることができる。その結果、本発明の冷却装置は、オイルクーラ(外製品)を廃止して原価を低減し、コストダウンに貢献することができる。また、外付けのオイルクーラを廃止することで、トランスアクスルのコンパクト化に貢献することができる。
【0016】
さらに、本発明の冷却装置では、ケーシングと一体的に形成された冷却ジャケット部に凹凸が形成されている。これにより、本発明の冷却装置では、冷却ジャケット部の凹凸がケーシングにおいてリブと同様の機能を発揮して、ケーシング(ハウジングやケース)の剛性アップに貢献することができる。
【0017】
ここで、ハウジングとケースとの合わせ面近傍はケーシングの中央部分となり、中央部分の底部(中央底部)ではデフリングギアでのオイル掻き上げや、ストレーナによるオイル吸い上げが行われている場合がある。そのため、ケーシングの中央底部にはオイルが流下しやすく、ケーシングの中央底部のオイルを効率的に冷却可能であることが望ましい。
【0018】
(3)上述の課題に対応するため、本発明の冷却装置は、前記第一冷却ジャケット部の前記凹凸と前記第二冷却ジャケット部の前記凹凸とが、向き合うように形成されているものであるとよい。
【0019】
上述の構成によれば、ケーシングの中央底部近傍に凹部が配置されることとなり、凹部に溜まったオイルを効率的に冷却することができる。また、凹凸によりケーシング底部の油面が高くなり、オイルが少ない場合でもストレーナが常にオイルに浸かっている状態とすることができる。
【0020】
(4)本発明の冷却装置は、前記冷却ジャケット部の内部には、前記冷却媒体流入領域を区画して冷却媒体の流路を形成する仕切り部が設けられており、前記冷却ジャケット部は、カバー体により閉塞されて内部に前記冷却媒体流入領域が形成されるものであり、前記冷却ジャケット部の内部には、前記凹部と前記カバー体との間に冷却媒体が入り込む隙間が形成されているものであるとよい。
【0021】
上述の構成によれば、隙間に冷却媒体が流入して、凹部の深部(凹部の谷底となる部分)に流入したオイルを冷却することができる。別の観点から説明すると、冷却装置では、凹部の側方壁面においてオイルを冷却する冷却領域を形成することができることに加え、凹部の底部にもオイルを冷却する冷却領域を形成することができる。すなわち、冷却装置では、ケーシングの深部(谷底となる部分)にも冷却水を流して冷却面積を増やしている。これにより、オイルとの接触面積(伝熱面積)を稼ぎ、冷却水との伝熱面積を増やして冷却効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、オイルクーラを設けずにトランスアクスル内のオイルを十分に冷却することができる冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る冷却装置を備えるトランスアクスルを示す斜視図である。
図2図1のトランスアクスルのハウジング及びケースを示す斜視図である。
図3図2のケースのハウジング側を示す斜視図である。
図4図2のケースのリアカバー側を示す斜視図である。
図5図1のトランスアクスルのケーシングにおいて、本発明の冷却装置を構成する部分を抜き出して示す斜視図である。
図6図5の冷却装置を示す底面図である。
図7図5の冷却装置の断面を示す図である。
図8図5の冷却装置に形成される流路を示す図である。
図9】本発明の冷却装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る冷却装置20について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1に示すとおり、冷却装置20は、トランスアクスル1に設けられている。より具体的に説明すると、トランスアクスル1は、収容体をなすケーシング10を備えており、冷却装置20はケーシング10に一体的に設けられている。
【0026】
トランスアクスル1は、図示を省略した第一電動機、及び第二電動機を備えており、ケーシング10の内部には第一電動機や第二電動機が収容されている。また、トランスアクスル1の内部には、各電動機を冷却するため、あるいはギアを潤滑するためのオイル(ATF)が収容されており、オイルは電動機を冷却した後にケーシング10の底部に溜まるようになっている。さらに、トランスアクスル1には、ケーシング10の内部空間R1のオイルを汲み上げるためのストレーナ(図示を省略)が設けられている。
【0027】
なお、以下の説明では、トランスアクスル1を車両に搭載した状態における上下方向を、単に「上下方向H」と記載して説明する場合がある。また、上下方向Hにおける上方を単に「上方Up」と、下方を単に「下方Lw」と記載して説明する場合がある。
【0028】
ケーシング10は、第一電動機や第二電動機等を収容するための収容体である。図1及び図2に示すとおり、ケーシング10は、複数の構成体11を締結することによりひとつの収容体をなしている。
【0029】
図1に示すとおり、本実施形態では、ケーシング10は、第一の構成体11であるハウジング12、第二の構成体11であるケース13、及び第三の構成体11であるリアカバー14からなる三つの構成体11を締結して一体化したものとされている。別の観点から説明すると、ケーシング10は、中央底部15付近でハウジング12側とケース13側に分割可能な構成とされている。
【0030】
以下の説明では、ハウジング12、ケース13、及びリアカバー14を総称して、「ケーシング10」と記載して説明する場合がある。なお、本実施形態では、ケーシング10を三つの構成体11により構成されるものとした例を示したが、ケーシングは、二つ、あるいは四つ以上の構成体により形成されるものであってもよい。
【0031】
図1に示すとおり、ハウジング12とケース13とは、ハウジング12に合わせ面として形成されたフランジ部12aと、ケース13に合わせ面として形成されたフランジ部13aとがボルトを介して締結されて接合されている。また、ハウジング12とケース13との合わせ面近傍であってケーシング10の内部空間R1の底部(以下、「中央底部15」と記載する場合がある)では、デフリングギアによるオイル掻き上げや、ストレーナによるオイル吸い上げが行われている。
【0032】
なお、後で詳述する冷却装置20(冷却ジャケット部30)は、トランスアクスル1の底部となる位置に設けられている。また、冷却ジャケット部30は、鋳造で抜くことができる形状とされている。
【0033】
<冷却装置の構成について>
続いて、冷却装置20の構成について図面を参照しつつ説明する。冷却装置20は、トランスアクスル1内のオイル(ケーシング10の内部空間R1のオイル)を冷却水(冷却媒体)との熱交換により冷却するためのものである。図1に示すとおり、冷却装置20は、トランスアクスル1の底部(ケーシング10の底部)となる位置に設けられている。
【0034】
図5に示すとおり、冷却装置20は、冷却ジャケット部30、連通部34、仕切り部50(図7参照)、及びカバー体60を備えている。
【0035】
冷却ジャケット部30は、冷却水を流入させるための冷却水流入領域R2(冷却媒体流入領域)を形成している。図2に示すとおり、本実施形態の冷却装置20では、冷却ジャケット部30として、ハウジング12に一体的に形成された第一冷却ジャケット部32と、ケース13に一体的に形成された第二冷却ジャケット部33とを備えている。図6に示すとおり、第一冷却ジャケット部32及び第二冷却ジャケット部33は、底面視において略矩形の形状とされている。
【0036】
また、図7に示すとおり、冷却ジャケット部30は、カバー体60により閉塞されて内部に冷却水流入領域R2が形成される。より具体的に説明すると、第一冷却ジャケット部32は、カバー体60により閉塞されてハウジング12側の冷却水流入領域R2が形成される。また、第二冷却ジャケット部33は、カバー体60により閉塞されてケース13側の冷却水流入領域R2が形成される。なお、本実施形態の冷却装置20では、カバー体60は平坦な形状のものとされている(カバー体60が平らなものとされている)。このように、冷却装置20では、カバー体60は製造しやすい形状とされている。
【0037】
図5に示すとおり、第一冷却ジャケット部32及び第二冷却ジャケット部33は、連通部34を介して連結されている。なお、連通部34の接合部分には、Oリングでシールされている。冷却装置20では、ハウジング12及びケース13を接合した状態において、第一冷却ジャケット部32と第二冷却ジャケット部33とが離間するように形成されている。より詳細に説明すると、図1に示すとおり、冷却ジャケット部30は、ケーシング10の合わせ面(フランジ部12a,13a)を避けるように第一冷却ジャケット部32と第二冷却ジャケット部33とが離間するように形成されている。
【0038】
さらに、第一冷却ジャケット部32及び第二冷却ジャケット部33には、冷却水を流入あるいは流出させる出入口35が形成されている。また、第一冷却ジャケット部32及び第二冷却ジャケット部33の間は、連通部34を介して連通しており、連通部34を介して冷却水が流出入可能とされている。
【0039】
ここで、図3及び図7に示すとおり、出入口35は、冷却ジャケット部30の上方面(内部空間R1との境界となる面)よりも高い位置に設けられている。そのため、冷却ジャケット部30内に冷却水を流入させたときに、冷却ジャケット部30内に空気が残留することを抑制することができる。その結果、冷却ジャケット部30内に冷却水を行き渡らせ、確実にオイルを冷却することができる。
【0040】
なお、図8に示す例では、第二冷却ジャケット部33に形成された出入口35から冷却水を流入させ、第一冷却ジャケット部32に形成された出入口35から冷却水を流出させることとしているが、第一冷却ジャケット部32の出入口35から冷却水を流入させ、第二冷却ジャケット部33の出入口35から流出させるものとしてもよい。
【0041】
図7等に示すとおり、冷却ジャケット部30(第一冷却ジャケット部32及び第二冷却ジャケット部33)には、複数の凹凸が形成されている。より具体的に説明すると、冷却ジャケット部30には、内部空間R1と冷却水流入領域R2とを隔てる部分(内部空間R1と冷却水流入領域R2とが隣接する境界部分)に凹凸が形成されている。
【0042】
なお、冷却ジャケット部30(第一冷却ジャケット部32や第二冷却ジャケット部33)に形成された凹凸のうち、内部空間R1に向けて突出するように形成された部分(上方Upに向けて突出するように形成された部分)を単に「凸部40」と、内部空間R1から窪むように形成された部分(下方Lwに窪むように形成された部分)を単に「凹部42」と記載して説明する場合がある。
【0043】
図3及び図4に示すとおり、冷却装置20では、合わせ面(中央底部15)近傍となる部分に複数の凹部42と複数の凸部40とが形成されている。また、図6に示すとおり、冷却装置20では、中央底部15近傍では凸部40と凹部42とが交互となるよう形成されている。また、冷却装置20では、合わせ面(中央底部15)から離れた部分(冷却ジャケット部30の外側)にも凸部40が形成されている。
【0044】
なお、第一冷却ジャケット部32に形成された凹部42と第二冷却ジャケット部33に形成された凹部42とは、凹部42の幅などが不等ピッチになっている(冷却ジャケット部30の左右で不等ピッチとなっている)。このような構成とすることにより、例えば、ストレーナなどの部材を配置されるスペースの確保等を行いつつ、オイルを十分に冷却できるように凸部40や凹部42の配置を最適化することができる。
【0045】
図7に示すとおり、仕切り部50は、冷却ジャケット部30の内部に形成されており、冷却水流入領域R2を区画して冷却水の流路を形成している。すなわち、仕切り部50は、冷却ジャケット部30の内部(冷却水流入領域R2)を仕切るように形成されている。
【0046】
より具体的に説明すると、図7に示すとおり、本実施形態の冷却装置20では、仕切り部50として、凸部40からカバー体60に至るように上下方向Hに延びるように板状に形成された板状仕切り部52と、凹部42の底面から下方Lwに突出するように形成された凸状仕切り部54とが設けられている。
【0047】
板状仕切り部52は、凸部40の上方面からカバー体60に至るように形成されている。板状仕切り部52により、凸部40の内部には往復するような流路が形成されている。また、凸状仕切り部54は、凹部42の底面からカバー体60に至るように形成されている。すなわち、仕切り部50は、冷却ジャケット部30の冷却水流入領域R2内を上下方向Hに仕切るように(区画するように)設けられている。凸状仕切り部54により、凹部42の底面部分に形成された隙間Sが仕切られている。
【0048】
図6に示すとおり、冷却ジャケット部30内では、仕切り部50により冷却水流入領域R2が仕切られて、冷却水が、仕切り部50と仕切り部50との間に形成される流路に沿って往来するように進む経路が形成されている。すなわち、冷却ジャケット部30内では、冷却水が蛇行するように(ジグザグを描くように)迷路のような経路(ラビリンス状の経路)が形成されている(図8参照)。さらに付言すると、冷却ジャケット部30内では、一筆書きとなるような冷却水の流路が形成されている(図8参照)。
【0049】
また、図7に示すとおり、冷却装置20では、冷却ジャケット部30の内部に、凹部42とカバー体60との間に冷却水が入り込む隙間Sが形成されている。より詳細に説明すると、冷却ジャケット部30の凹部42の底部であって、カバー体60と凹部42との間には、隙間Sが形成されている。そのため、冷却装置20では、隙間Sに冷却水が流入して、凹部42の深部に流入したオイルを冷却することができる。別の観点から説明すると、冷却装置20では、凹部42の側方壁面においてオイルを冷却する冷却領域を形成することができることに加え、凹部42の底部にもオイルを冷却する冷却領域を形成することができる。すなわち、冷却装置20では、ケーシング10の深部(谷底となる部分)にも冷却水を流して冷却面積を増やしている。
【0050】
図6に示すとおり、冷却装置20では、中央底部15から離れた位置(外側)の両側に凸部40が形成されている。また、第一冷却ジャケット部32の凹部42と第二冷却ジャケット部33の凹部42とは、向き合うように形成されている。
【0051】
<冷却装置によるオイルの冷却効果について>
続いて、冷却装置20によるオイルの冷却効果について説明する。
【0052】
図8に示すとおり、冷却装置20では、第二冷却ジャケット部33の出入口35を介して第二冷却ジャケット部33の内部に流入した冷却水は、出入口35が設けられた側から第二冷却ジャケット部33の側方面に沿って他方に直進するように進み、その後凹部42を迂回するように蛇行する流路を進む。その後、冷却水は、第二冷却ジャケット部33の連通孔から連通部34を通って第一冷却ジャケット部32の連通孔に到達する。冷却水は、第一冷却ジャケット部32の凹部42を迂回するように蛇行する流路を進み、やがて第一冷却ジャケット部32の側方面に沿って直進するように進み、第一冷却ジャケット部32の出入口35に到達する。
【0053】
このように、冷却装置20では、冷却水が第二冷却ジャケット部33に流入し、第一冷却ジャケット部32から流出するまでに、仕切り部50により形成された流路に沿って、凹部42の回りを蛇行するように進む。より詳細に説明すると、冷却装置20では、凸部40に形成された板状仕切り部52によって流路が区画されており、冷却水は凸部40内で板状仕切り部52に沿って形成された流路を進む。
【0054】
上述のとおり、冷却ジャケット部30には、内部空間R1と隣接する部分(内部空間R1と冷却水流入領域R2との境界部分)に凹凸が形成されている。そのため、冷却装置20では、冷却ジャケット部30の凹凸部分により、オイルと冷却水との伝熱面積をかせぐことができる。すなわち、冷却装置20では、ケーシング10の内部(内部空間R1)と隣接する部分が凹凸になっているため、オイルとの接触面積(伝熱面積)が大きくなり、冷却水との伝熱面積を増やすことができる。これにより、冷却装置20は、冷却効率を向上させることができる。その結果、冷却装置20は、オイルクーラを廃止あるいは熱交換性能の高くないものとして原価を低減し、コストダウンに貢献することができる。また、外付けのオイルクーラを廃止することで、トランスアクスル1のコンパクト化に貢献することができる。
【0055】
ここで、上述のとおり、ケーシング10は、中央付近でハウジング12とケース13とに分割可能な構成とされている。また、ケーシング10の合わせ面(ハウジング12とケース13との合わせ面)付近では、鋳造の形状都合により、ジャケット構造(冷却ジャケット部30)を一体的に設けることができない。
【0056】
このような課題に対応するため、冷却装置20では、ハウジング12には第一冷却ジャケット部32が形成され、ケース13には第二冷却ジャケット部33が形成されている。別の言い方をすれば、冷却装置20では、冷却ジャケット部30が、ハウジング12側の部材(第一冷却ジャケット部32)とケース13側の部材(第二冷却ジャケット部33)との二つに分割されており、二つの冷却ジャケット部30により伝熱面積を稼いでいる。これにより冷却装置20は、狭い設置面積(トランスアクスル1の設置面積)であっても伝熱面積を広く取ることができ、冷却性能を向上させることができる。
【0057】
このように、冷却装置20では、ケーシング10を二つ以上の構成体に分割しつつ、これらの構成体(ハウジング12及びケース13)にそれぞれ冷却ジャケット部30(第一冷却ジャケット部32及び第二冷却ジャケット部33)を設け、各冷却ジャケット部30の間に接合箇所(連通部34)を設けることで、設置面積を広くとることができる。また、ハウジング12側の冷却ジャケット部30(第一冷却ジャケット部32)とケース13側の冷却ジャケット部30(第二冷却ジャケット部33)とが連通しているため、冷却のための配管を複数設けることを要さない。
【0058】
また、冷却装置20では、冷却ジャケット部30の内部に冷却水の流路を形成する仕切り部50が設けられている。これにより、冷却装置20では、冷却ジャケット部30の内部(冷却水流入領域R2)で略均一になるようジグザグに冷却水を流すことができ、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0059】
さらに付言すると、冷却ジャケット部30内では、一筆書きとなるような冷却水の流路が形成されている(図8参照)。これにより、各箇所の水量を略一定とし(冷却水が滞留することを抑制し)、冷却水が部位によらず略均一に行き渡るように(よどまないように)流すことができる。その結果、冷却装置20は、ケーシング10内(ケーシング10の底部)のオイルを効率的に冷却することができる。
【0060】
さらに、冷却装置20では、ケーシング10と一体的に形成された冷却ジャケット部30に凹凸が形成されている。これにより、冷却装置20は、冷却ジャケット部30の凹凸がケーシング10においてリブ(補強部)と同様の機能を発揮して、ケーシング10(ハウジング12やケース13)の剛性アップに貢献することができる。
【0061】
さらに、上述のとおり冷却装置20では、第一冷却ジャケット部32の凹部42と第二冷却ジャケット部33の凹部42とが、向き合うように形成されている。ここで、凹部42が位置する中央底部15(ケーシング10の合わせ面近傍)では、デフリングギアによるオイル掻き上げや、ストレーナによるオイル吸い上げが行われる。また、冷却装置20の中央底部15には、凹部42に向けてオイルが流入しやすくなっている。これにより、冷却装置20では、オイルが溜まりやすい凹部42において、オイルを効率的に冷却することができる。また、凹凸によりケーシング10の中央底部15の油面が高くなり、オイルが少ない場合でもストレーナが常にオイルに浸かっている状態とすることができる。
【0062】
このように、冷却装置20では、オイルが流れて集まる位置(中央底部15)に合わせ、冷却ジャケット部30のジグザグ状の流路(ラビリンス状の流路)が形成されている。これにより、オイルが滞留する箇所を減らし、冷却効率を上げることができる。別の言い方をすれば、冷却装置20では、中央底部15に相当する位置に形成された複数の凸部40を、外側の凸部40と繋ぐように形成することで(繋ぎを外側にすることで)、オイル流れを最適化し、冷却効率の向上を実現している。このように、冷却装置20では、ハウジング12とケース13の底面となる位置にオイルを冷却水で冷やす冷却ジャケット部30を設けて伝熱面積を増やしつつ、オイルの流れる経路を最適にできる形状となっている。
【0063】
また、上述のとおり、冷却装置20では、冷却ジャケット部30の内部に、凹部42とカバー体60との間に冷却水が入り込む隙間Sが形成されている(図7参照)。これにより、隙間Sに冷却水が流入して、凹部42の深部に流入したオイルを冷却することができる。別の観点から説明すると、冷却装置20では、凹部42の側方壁面においてオイルを冷却する冷却領域を形成することができることに加え、凹部42の底部にもオイルを冷却する冷却領域を形成することができる。すなわち、冷却装置20では、ケーシング10の底部(谷底となる部分)にも冷却水を流してオイルとの接触面積(伝熱面積)を稼ぎ、冷却水との伝熱面積を増やしている。これにより、オイルとの接触面積(伝熱面積)を稼ぎ、冷却水との伝熱面積を増やして冷却効率を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態に係る冷却装置20について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態では、ハウジング12及びケースのそれぞれに冷却ジャケット部30を設けた例を示したが、本発明の冷却装置は、ハウジング及びケースのうち一方に冷却ジャケット部が設けられたものであってもよい。すなわち、本発明の冷却装置は、冷却ジャケット部が、ケーシングを構成する複数の構成体のうち、少なくとも一の構成体に対して一体的に形成されているものであってもよい。
【0065】
また、上述の実施形態に係る冷却装置20では、冷却ジャケット部30の内部で冷却水が直進するように進む流路を設けた例を示したが、本発明の冷却装置は上述の実施形態に限定されず、冷却水が直進するように進む流路を設けないものとしてもよい。例えば、本発明の冷却装置は、図9に一例として示す冷却装置120のような流路が形成されるものであってもよい。すなわち、本発明の冷却装置は、冷却ジャケット部の内部で蛇行するような経路が形成されるものであれば、どのような形状の経路が形成されるものであってもよい。
【0066】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、トランスアクスル内のオイルを冷却するための構造として、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 ケーシング
11 構成体
12 ハウジング(構成体)
13 ケース(構成体)
20 冷却装置
30 冷却ジャケット部
32 第一冷却ジャケット部(冷却ジャケット部)
33 第二冷却ジャケット部(冷却ジャケット部)
34 連通部
40 凸部
42 凹部
50 仕切り部
52 板状仕切り部(仕切り部)
54 凸状仕切り部(仕切り部)
R1 内部空間
R2 冷却水流入領域(冷却媒体流入領域)
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9