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特許7554116天然安定剤を使用した水中油型エマルションの酸化安定性の向上
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】天然安定剤を使用した水中油型エマルションの酸化安定性の向上
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20240911BHJP
   A23D 7/005 20060101ALI20240911BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240911BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20240911BHJP
【FI】
A23L29/00
A23D7/005
A23L5/00 G
A23L5/00 K
A23L27/60 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020536152
(86)(22)【出願日】2017-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 US2017068904
(87)【国際公開番号】W WO2019132959
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514062242
【氏名又は名称】クラフト・フーズ・グループ・ブランズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】リーン エム バーデン
(72)【発明者】
【氏名】ジューディス ジー モカ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン エム ハイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ディー パットナム
【合議体】
【審判長】淺野 美奈
【審判官】天野 宏樹
【審判官】加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/039315(WO,A1)
【文献】特表2004-535793(JP,A)
【文献】特表2009-521450(JP,A)
【文献】特開平9-103264(JP,A)
【文献】特表2014-516249(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2198724(EP,A2)
【文献】特開平4-228051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L29/00-29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルションの形態の食品であって、
前記エマルションが0ppmのまたは1ppm未満のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含み、前記食品が21℃で少なくとも7か月間、前記食品に酸化安定性を提供するのに有効な非増粘量の高分子量キレート化ポリマーを含み、
前記高分子量キレート化ポリマーが、加水分解されていないアルギン酸塩および60,000~130,000g/molの分子量を有する低メトキシペクチンのうちの1つ以上を含み、
前記非増粘量が、前記食品の0.05~1.0重量%であり、
前記食品が、マヨネーズまたはサラダドレッシング製品である、食品。
【請求項2】
水中油型エマルションの形態の食品であって、
前記エマルションが0ppmのまたは1ppm未満のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含み、前記食品が21℃で少なくとも7か月間、前記食品に酸化安定性を提供するのに有効な非増粘量の高分子量キレート化ポリマーを含み、
前記食品が、65~80%の油を含み、
前記高分子量キレート化ポリマーが、カゼイネートを含み、
前記非増粘量が、前記食品の0.1~3重量%であり、
前記食品が、マヨネーズまたはサラダドレッシング製品である、食品。
【請求項3】
前記食品が、40%~80%の油を含む、請求項1に記載の食品。
【請求項4】
前記食品が、11%~49%の水を含む、請求項1または2に記載の食品。
【請求項5】
前記低メトキシペクチンが、25未満のDE値を有する、請求項に記載の食品。
【請求項6】
α-トコフェロール、β-カロテン、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物、ブドウ種子抽出物、チェリー抽出物、またはそれらの組み合わせから選択される天然抗酸化剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の食品。
【請求項7】
酸化的に安定した包装食品であって、
UV遮断剤を含む容器と;
請求項1~のいずれか一項に記載の水中油型エマルションの形態の食品と、
を含む、酸化的に安定した包装食品。
【請求項8】
前記容器が、単層のPET容器である、請求項に記載の酸化的に安定した包装食品。
【請求項9】
前記UV遮断剤が、酸素バリアまたはスカベンジャーなしで前記包装を形成する材料に含まれている、請求項またはに記載の酸化的に安定した包装食品。
【請求項10】
前記容器が、非着色でありかつ透明である、請求項のいずれか一項に記載の酸化的に安定した包装食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、食品および飲料製品の保存期間を延ばすための食品および飲料製品における天然安定剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化は、油を含有する食品および飲料製品で発生する一連の化学反応であり、その製品を腐らせ、味および/または外観を不快にすることがある。酸化反応とフリーラジカルの同時発生は、さまざまな速度で起こり、これらは水分、高温、UV光への露出、酸素および/または鉄または銅などの金属イオンの存在によって影響を受ける。油の多価不飽和脂肪酸含有量も、酸化に対する感受性に寄与する。食品および飲料製品の油脂の酸化は、酸敗を引き起こし、これは栄養価ならびに製品の食感、風味、色および香りなどの好ましい官能特性の低下を引き起こし得る。
【0003】
酸化安定性を改善するために、遊離金属イオン(鉄および銅イオンなど)は、食品および飲料製品にキレート剤を含め、キレート化によって除去され得る。非常に一般的に使用されるキレート剤の1つは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。EDTAは、比較的安価で金属イオンをキレート化する能力が高いため、食品業界で広く使用されている。EDTAは、製品を酸化および腐敗から保護し、風味の品質と色の保持を改善するためによく使用される。
【0004】
マヨネーズ製品は、大量の液体油(一般に少なくとも65%の油)と卵製品も含み、これは望ましい卵の風味を提供し、乳化剤として機能する。しかしながら、卵黄に存在する比較的高レベルの金属イオン、特に鉄は、脂質酸化反応を促進し(ppmレベルでも)、そのため、油含有製品の保存期間を制限する。局所的な水供給、処理装置、およびその他の成分も鉄分をもたらす可能性がある。これに対抗するために、EDTA(通常はカルシウムEDTAまたは二ナトリウムEDTA)がしばしば添加される。EDTAが合成または人工の成分であるという消費者の認識に少なくとも部分的に起因して、いわゆる人工成分の除去およびそれらを天然代替物で置き換えることに対する要求が継続的にあり、これは食品または飲料製品に「人工防腐剤なし」(NAP)ラベルを付けることがある。さらに、一部の国ではEDTAの使用が禁止されている。
【0005】
EDTAを天然成分で置き換える多くの試みは、商業的保存期間の制約を満たすことができず、費用が法外であり、または食品もしくは飲料製品に望ましくない風味および/または色をもたらした。例えば、自然に生成されたシデロフォア(酵母および真菌から)は、効果的な金属キレート剤であるが、食品の色を容認できないほど変える可能性がある。さらに、正確な活性化合物が知られている場合でも、植物抽出物はわずか2パーセントの活性化合物しか含まない場合がある。これらの抽出物は、製品に望ましくない風味、色、または食感を付与する追加の非有効化合物をさらに含むことがある。そのような抽出物の例は、抗酸化特性を有するローズマリー抽出物であるが、その抗酸化特性のためにローズマリー抽出物を食品または飲料に組み込むと、明確なローズマリー風味を与える可能性があり、これは多くの製品で望ましくない。
【0006】
EDTAの有効性および妥当なコスト、ならびに実行可能な代替物を特定することが困難であるため、EDTAは、代替が困難である。したがって、EDTAの使用を必要としないが、これらのタイプの防腐剤の使用によって現在提供される延長された保存期間を保持する、酸化的に安定な食品および飲料を提供することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、EDTAと比較した、天然成分を含む40%の油を含有するモデルランチドレッシングモデルシステムにおける時間の関数としてのフリーラジカル形成のグラフである。
図2図2は、EDTAと比較した、天然成分を含むマヨネーズサンプルにおける時間の関数としてのフリーラジカル形成のグラフである。
図3図3は、EDTAと比較した、天然成分を含むマヨネーズサンプルにおける時間の関数としてのフリーラジカル形成のグラフである。図3は、図2のデータポイントのサブセットを含む。
図4図4は、EDTAに代わる天然成分を含むマヨネーズサンプルにおける時間の関数としてのフリーラジカル形成のグラフである。
【詳細な説明】
【0008】
本明細書では、EDTAを実質的に含まないにもかかわらず、大幅に改善した酸化安定性を特徴とする水中油型エマルションの形態の食品および飲料製品が提供される。本明細書で提供される食品または飲料製品は、天然安定剤または複数の天然安定剤の組み合わせ、特にキレート官能基を有する高分子量ポリマーを含む。特に、キレート官能基を有する高分子量ポリマーは、アルギン酸塩および/または低メトキシペクチンを含む。本明細書で使用される場合、天然安定剤は、植物または他の天然供給源から得られる。アルギン酸塩は、褐色海藻(褐藻類)の細胞壁およびいくつかの種の細菌から通常得られる多糖類である。ペクチンは、植物細胞壁に天然に産生する多糖類であり、柑橘類の果皮とリンゴ搾りかすから商業的に抽出される。カゼイン塩、特にカゼインカルシウムは、一般的に牛乳から生産される。
【0009】
水中油型エマルションは、フリーラジカルを生成する傾向がある。理論に束縛されることを望まないが、本明細書に記載される天然安定剤は、その安定剤をエマルション界面に配置し、有効レベルの共役共有結合を提供してフリーラジカルを安定化し、十分な共鳴を提供することによって、フリーラジカル生成を低減するのに有効であると現在考えられている。有利には、本明細書に記載の天然安定剤は、EDTAを使用して得られるものと同様の酸化安定性を提供し、食品または飲料製品の風味、色、食感、またはレオロジー特性に悪影響を及ぼさない。結果として、本明細書に記載されている天然安定剤は、製品の品質または消費者の受容への悪影響が最小限であるか、まったくない状態で製品の保存期間を延長するのに効果的である。
【0010】
水中油型エマルションに天然安定剤を含めることによって、EDTAを添加せずにエマルションの保存期間を大幅に増大させることが示された。一般に、EDTAを含まないマヨネーズ製品は、室温(つまり、約70°Fまたは21℃)で3~4か月間のみ保存安定であると考えられている。EDTAをマヨネーズに加えると、室温での保存期間は、一般に約9~12か月に延びる。本明細書に記載の天然安定剤を含めることにより、室温で少なくとも7か月、別の態様では少なくとも8か月、別の態様では少なくとも9か月の保存期間を提供することが示された。保存期間は、30℃、相対湿度70%など、熱を嫌う試験条件でも測定することができる。そのような条件では、本明細書に記載されている天然安定剤を含めることによって、少なくとも7か月の保存期間が提供されることも示された。少なくとも一部の手法では、そのような保存期間は、追加の脱酸素剤、酸素遮断剤、または窒素ヘッドスペースフラッシングのない、非着色の透明な容器で達成される。食品が窒素で密度調整されている場合、その添加されている窒素の量は、製品全体の酸素濃度を変化させるのに十分ではない。
【0011】
本明細書で使用される場合、その保存期間中に許容可能な特性を有する製品は、分離しないエマルションを有し、製品の味、臭い、および色の劣化が最小限であり、そして食感または見かけの粘度が実質的に変わらないことを特徴とする。本明細書で製造される水中油型エマルションは、例えば、Titusらの「Emulsifier Efficiency in Model Systems of Milk Fat or Soybean Oil and Water」、Food Technology, 22:1449 (1968)およびActonらの「Stability of Oil-in-Water Emulsions. 1. Effects of Surface Tension, Level of Oil, Viscosity and Type of Meat Protein」J. Food Sci., 35:852 (1970)に記載されている手順などの公知の方法を用いて、物理的安定性について評価することができる。水中油型エマルションの形成と試験に関する追加情報は、BecherのEncyclopedia of Emulsion Technology (Volume 1, Basic Theory, Marcel Dekker, Inc., New York (1983)),およびShermanのEmulsion Science (Academic Press, New York (1968))にある。一次および二次酸化試験の方法(例えば、過酸化物価およびガスクロマトグラフィー測定)もアメリカ油化学会によって提供されており、それらの方法の本(<https://www.aocs.org/store/shop-aocs/shop-aocs?productId=70978091>)で見つけることができる。これらの参考文献のそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書に記載の水中油型エマルションは、概して、乳化剤、不連続油相、および連続水相を含む。食品は、例えば、サラダドレッシング、マヨネーズ、サンドイッチスプレッド、ディップ、クリーミーソース、ディッピングソース、アイスクリーム、無卵マヨネーズタイプの製品、タルタルソース、オレオマーガリン、およびカスタードとプリンなどの卵ベースおよびクリームベースのデザートなどが挙げられる。さらに、食品および飲料製品という用語は、医薬品、栄養補助食品などの他の消費可能な製品も含み得ることが意図されている。本明細書に記載される天然安定剤は、EDTAが一般的に使用される、化粧品、石鹸、およびシャンプーなどの非食品製品を含む、他のタイプの乳化製品に使用され得るとも考えられている。
【0013】
本明細書に記載される食品および飲料製品は、EDTAの代替としてキレート官能基を有する高分子量ポリマーを利用する。驚くべきことに、これらの高分子量ポリマーは、鉄(Fe3+)に対する同じキレート化親和性を有しないにもかかわらず、水中油型エマルションに望ましい保存安定性を提供するのに効果的であることがわかった。理論によって束縛されることを望まないが、それらの大きな分子サイズは、油/水エマルション界面で立体障害を生成することによって、鉄の反応性を遅くする可能性があるとさらに仮定される。再度、理論に束縛されることを望まないが、カルシウムの存在下でゲル化する、アルギン酸塩などの一部の高分子量ポリマーは、エマルションの製造中に局所的な水供給によって導入された個別のカルシウムイオンと反応することによって、界面での鉄の反応性に対するマイクロスケールの物理的障壁を生成する可能性がある。
【0014】
市販のペクチン製品は、一般に、約60,000~130,000g/molの分子量を有する。ペクチンは、エステル化度(DE)に基づいて、高メトキシペクチンと低メトキシペクチンの2つのクラスに分類される。本明細書で特に有用であることが見出されたペクチンのタイプは、低メトキシペクチンであり、より具体的には25%以下のエステル化度(DE)を有するものであり、さらにより具体的には12~18%の範囲のDEを有するものである。(1)より低いDEペクチンは粘度への影響がより低いため、および(2)より低いDEペクチンは鉄キレート化のためのより多くの反応部位を有するため、低メトキシペクチンは、本明細書において特に有用であると考えられる。ペクチンは、通常、純水に溶解性である。低メトキシペクチンは、水道水(炭酸カルシウムの形など)で一般的にみられるレベルであっても、カルシウムイオン(または他の2価カチオン)の存在下で、ゲル化する傾向が強い。製品に少量の糖が存在すると、ゲル形成を引き起こすのに必要なカルシウムの量を減らし得る。ペクチンは、約0.05~約1パーセントなど、別の態様では約0.1~約0.75パーセント、別の態様では約0.1~約0.6パーセント、および別の態様では約0.25~約0.35パーセントなどの任意の有効量で含まれてもよい。一般に、安定性の観点からはペクチンの量が多いほど効果的であるが、量が多いと製品に望ましくない厚さをもたらす可能性がある。
【0015】
アルギン酸塩は、様々な分子量で得ることができる。例えば、市販のアルギン酸ナトリウムは、典型的には35~50kDaの範囲の分子量を有する。アルギン酸塩溶液の粘度は、その使用率と鎖長に依存し、より長い鎖(より多くのモノマー単位)は、特定の濃度でより粘稠な溶液を生成する。製品および加工パラメーターもアルギン酸塩の粘度に影響するだろう。例えば、ゲル化は、カルシウム濃度とpH3.38~3.65(それぞれマンヌロン酸とグルロン酸のpKa)によって引き起こされるが、強酸性環境ではアルギン酸塩の分解が発生し、それによって鎖長が短くなり、粘度が低下する。
【0016】
ペクチンと同様に、アルギン酸塩を使用して、アルギン酸塩を二価カチオンなどのイオン性架橋剤と混合することによってゲルを形成することができる。したがって、アルギン酸塩が本明細書に記載の食品または飲料製品の粘度または他の食感属性に影響を与えるのを避けるために、製品の他の成分からの二価カチオンの可能な供給源を考慮および制御することが一般に望ましい。特定の一態様では、本発明で使用されるアルギン酸塩は、加水分解されていないアルギン酸塩である。別の特定の態様では、アルギン酸塩は、低粘度アルギン酸塩である。
【0017】
使用されるアルギン酸塩の量は、酸化安定性を提供し、製品に所望の食感を提供するのに有効でなければならない。例えば、アルギン酸塩の量は、製品の約0.05~約1.0重量パーセント、別の態様では約0.1~約0.5パーセント、別の態様では約0.15~約0.35パーセントであってよい。
【0018】
カゼイネート、特にカゼインカルシウムまたはカゼインナトリウムは、乳化剤または増粘剤として食品に一般的に含まれている。カゼイネートは、製品の約0.1~約3パーセントなど、別の態様では約0.1~約0.5重量パーセントなどの任意の有効量で含まれてもよい。カゼイネートはザラザラした食感を製品に導入する可能性があるため、含まれる場合、その量は、製品に望ましくない口当たりを付与することを回避するように選択し得る。
【0019】
低メトキシペクチン、カゼイネート、およびアルギン酸塩は、様々な食品の厚さを増すために食品業界で使用されてきたが、それらが本明細書に記載されているような高脂肪製品に、これらは高い油分によってすでに濃厚なコンシステンシーを有するため、含まれているとは考えられていない。
【0020】
本明細書で提供される食品または飲料製品において、これらの高分子量ポリマーは、金属イオンをキレート化するのに十分な量だが、最終製品の厚さまたは食感への影響を最小限に抑えるために、そのような少量で含まれ、それにより水中油型エマルションにおける油の酸化安定性を改善する。本明細書に記載される食品または飲料製品は、周囲温度または冷蔵温度で、エマルションの形態であり、ゲルの形態ではない。いくつかの手法では、本明細書で提供される食品または飲料製品は、約2~約40μm、別の態様では約2~約10μmの平均液滴サイズを有する油滴によって特徴付けられ得る。
【0021】
1つの態様では、マヨネーズまたはドレッシング製品であろうと、製品中の高分子量キレート化ポリマーの量は、「非増粘量」に含まれ、製品の食感に悪影響を与えることを回避するために最小限の増粘効果を与える。一態様では、高分子量ポリマーの非増粘量は、高分子量のキレート化ポリマーの量が水で置き換えられ、他の点では同一の(他のすべての成分の量が同じ)製品と比較して、複素粘性率の約35パーセント未満の変化、別の態様では複素粘性率の約25パーセント未満の変化、別の態様では複素粘性率の約15パーセント未満の変化、別の態様では複素粘性率の約10パーセント未満の変化、さらに別の態様では複素粘性率の約5パーセント未満の変化を与える。以下でより詳細に説明するように、一部の製品は、ずり減粘である可能性があるため、複素粘性率はゼロずり粘度よりも低い場合がある。
【0022】
本明細書で使用される場合、複素粘性率は、動的レオロジー実験から見積もられる粘度である。これは、応力/ひずみに対して適用された正弦波に対する応答としての材料の流動特性である。一部の手法では、高分子量のキレート化ポリマーの追加は、ずり減粘を生じ得る。生成物の硬さは、分子間結合のモル濃度に比例する。これは、G=nRTで与えられるせん断弾性率Gで表され、式中、「n」は、結合のモル濃度を表す。硬さは、材料の粘弾性挙動を考慮して、G’、G’の値によって計算される。これらすべての材料ではG’>>G”のため、G(せん断弾性率または硬さ)は、G’とほぼ同じになる。緩和時間は、適用された応力/ひずみを解放した後、材料がどれだけ速く平衡状態に緩和するかの尺度である。例えば、粘性液体は、流れによってエネルギーを散逸させることでより速く緩和し、0の緩和時間を有する。弾性固体は、伸長して平衡状態に達するまでより長い時間がかかる。したがって、緩和時間が短い材料は、均一なひずみが適用されると表面に付着する。緩和時間は、tanデルタに反比例する。任意の温度で、より高い緩和時間または低いtanデルタ値を有する材料に対して、粘弾性特性の変化に対するより高い安定性または抵抗が期待できる。tanデルタは、材料が応力またはひずみを受けたときに、粘弾性材料のエネルギーストアに散逸されるエネルギーの比率である。見かけのゼロせん断粘度は、硬さ(せん断弾性率)と緩和時間の積である。これは、材料の内部構造に関連する材料特性であり、適用されたひずみ速度とは無関係である。複素粘性率は、動的レオロジー実験から見積もられる粘度である。これは、応力またはひずみに対しててきされた正弦波に対する応答としての材料の流動特性である。この検討では、これは10rad/sの周波数で測定した。一部の材料はずり減粘する場合があり;したがって、10rad/sでの複素粘性率は、ゼロせん断粘度より低くなる可能性がある。
【0023】
例えば、水中油型エマルション製品の複素粘性率は、平行プレートアタッチメント(25mmのクロスハッチされた平行トッププレートと60mmのクロスハッチされたボトムプレートおよびプレート間の1mmのギャップ)を備えたDHRレオメーターを使用して、5~60℃のランプ温度範囲で測定することができる。具体的には、温度は2℃/分で上昇し、適用された応力は10Pa、周波数は10rad/sであった。エマルションの液滴が小さくなると、より粘性の高い製品が生成されるため、処理条件は、生成される製品の粘度に大きく影響する。これにより、クリーミング力に対してより安定する。この場合も、非増粘量は、製品をゲルの形態で提供しないためにも有効である。
【0024】
特定の一態様において、食品は、水中油型エマルションの形態であり、約40%~約80%の油、約0.5%~約5.5%の乳化剤、約11%~約52%の水、約3.1~約4.1の酸性pHを提供するのに有効な量の酸味料、およびエマルションが実質的にEDTAを含まない場合、23℃で少なくとも約5か月間、食品または飲料製品に酸化安定性を提供するのに有効な非増粘量の高分子量キレート化ポリマーを含む。
【0025】
別の態様では、食品は、伝統的な全脂肪マヨネーズ製品であり、約65%~約80%の油、約3%~約8%の卵ベースの乳化剤、約6%~約26%の水、約3.3~約4.1の酸性pHを提供するのに有効な量の酸味料、およびエマルションが実質的にEDTAを含まない場合、23℃で少なくとも約5か月間、食品または飲料製品に酸化安定性を提供するのに有効な非増粘量の高分子量キレート化ポリマーを含む。卵を含まないマヨネーズタイプの製品では、卵ベースの乳化剤の量を別の乳化剤で置き換えることができ、他の成分の範囲も異なる場合がある。低脂肪で軽いマヨネーズタイプの製品では、成分の範囲がここで指定されているものとは異なる場合がある。
【0026】
別の態様では、食品はドレッシングであり、約10%~約50%の油、約0.2%~約3.5%の乳化剤、約40%~約80%の水、約3.1~約3.8の酸性pHを提供するのに有効な量の酸味料、およびエマルションが実質的にEDTAを含まない場合、23℃で少なくとも約5か月間、食品または飲料製品に酸化安定性を提供するのに有効な非増粘量の高分子量キレート化ポリマーを含む。ドレッシングは、スプーンですくえるまたは注ぐことができる製品であってもよく、一相(例えば、クリーミーまたはチーズベースのドレッシング)または二相(例えば、ビネグレットドレッシング)の製品であってもよい。必要に応じて、キサンタンガムなどの親水コロイドを、高分子量のキレート化ポリマーの効力または最小限の粘度の寄与に悪影響を及ぼさないレベルで含めることができる。
【0027】
本明細書の実施形態のいずれかにおいて有用な油は、任意の食品グレードの油であり得、好ましくは、冷蔵温度で液体である。適切な油としては、例えば、キャノーラ、ダイズ、ベニバナ、ヒマワリ、ゴマ、ブドウ種子、アーモンド、綿実、ピーナッツ、オリーブ、カシュー、トウモロコシ、藻類、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの手法では、高オレイン酸油は一般により高い酸化安定性を有し、高分子量キレート化ポリマーの性能を大幅に向上させる可能性があるため、これらの油の高オレイン酸バージョンが好ましい場合がある。精油などの他の種類の油も含まれる場合がある。
【0028】
本明細書の実施形態のいずれかにおいて有用な乳化剤としては、例えば、卵ベースの乳化剤、レシチン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。卵ベースの乳化剤は、全卵、卵黄、酵素処理卵黄、またはそれらの組み合わせなどの、液体、乾燥、または冷凍の卵黄製品であってよい。必要に応じて、卵ベースの乳化剤に塩を追加してもよい。規制および消費者の要求が許す場合、例えば、ポリソルベートおよびプロピレングリコールエステルなどの合成乳化剤も使用することができる。酸味料は、例えば、食品グレードの酸(例えば、リンゴ酸、クエン酸、リン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、コハク酸、またはそれらの組み合わせ)、酢、レモン汁、ライム果汁、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0029】
本明細書の任意の実施形態において、必要に応じて、甘味料(例えば、スクロース)、塩、スパイス、ハーブ、香料(例えば、マスタードシード抽出物および/またはオレオレジンおよび/またはリボチド)、結晶化阻害剤(例えば、オキシステアリン、レシチン、または脂肪酸のポリグリセロールエステル)、乳成分(ホエイなど)、着色料(天然または合成)、および抗菌成分(例えば、ソルベートおよび/または培養ブドウ糖など)などの有用な追加の成分も含めることができる。デンプン(例えば、小麦、トウモロコシ、もちトウモロコシ、米または他の食用デンプン)および追加の親水コロイド(例えば、キサンタンガム)も、必要に応じて加えることができる。必要に応じて、粒子状物質(例えば、丸ごとの野菜、ハーブ、および/またはチーズ)を添加してもよい。
【0030】
有利には、本明細書の食品は、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムまたはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの形態などの、EDTAを実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「実質的にEDTAを含まない」は、約1ppm未満のEDTAを含む製品を意味することを意図している。さらに別の態様では、「実質的にEDTAを含まない」という用語は、製品がEDTAを全く含まないことを意味する。
【0031】
本明細書に記載される天然安定剤は、1つ以上の抗酸化剤と組み合わせて使用してもよく、これは、酸化が生じる速度をさらに遅くし得る。α-トコフェロール、カロチノイド(β-カロテンなど)、フラボノイド、カテキン、およびフェノール化合物などの天然の抗酸化剤を使用することが好ましい。追加される抗酸化剤は、分離株または植物抽出物の形であり得る。必要に応じて、GUARDIAN(登録商標)CHELOX(DuPontのカモミールとローズマリーエキスの市販ブレンド)などの市販の抗酸化剤を使用することもできる。少なくともいくつかの配合では、驚くべきことに、いわゆる「極性パラドックス」理論は、脂溶性抗酸化剤がより効果的であると予測しているが、水溶性抗酸化剤が特に効果的であることがわかった。食品または飲料製品に含まれる抗酸化剤は、単離された化合物(すなわち、比較的高純度のもの)として、またはパプリカエキスもしくはニンジンジュース濃縮液のベータカロチン、またはビタミンEサプリメント中のα-トコフェロールなどの別の成分の微量成分として提供されてもよい。ローズマリー抽出物、緑茶抽出物、ブドウ種子抽出物、サクランボ抽出物、およびそれらの組み合わせなどの他の抽出物も使用することができる。本明細書の天然安定剤を含まない1つ以上の抗酸化剤を含めることは、十分な製品保存期間を提供するのに十分長い間水中油型エマルションを安定させるのに効果的ではないことが見出された。
【0032】
少なくともいくつかの実施形態では、キレート官能基を有する高分子量ポリマーと抗酸化剤との特定の組み合わせが、製品の保存期間を延ばすのに特に効果的であることが判明した。これらの組み合わせには以下が含まれる:(1)油中の低メトキシペクチン(DE 18);(2)高オレイン酸油と低粘度アルギン酸塩;(3)低粘度アルギン酸塩、α-トコフェロール、およびβ-カロテン;(4)低メトキシペクチン(例えば、DE 12)およびGUARDIAN(登録商標)CHELOX L。
【0033】
方法
【0034】
高分子量ポリマーは、多くの方法を使用して食品または飲料に添加することができる。例えば、高分子量ポリマーは、食品または飲料の形成中に他の成分と共に添加されてもよく、または他の手法によって、他のすべての成分が添加された後に添加されてもよい。食品がマヨネーズである場合、高分子量ポリマーは、従来のマヨネーズプロセスに組み込むことができる。高分子量ポリマーは、油相または水相のいずれかに加えることができる。いくつかの手法において、高分子量ポリマーを他の乾燥成分と予備混合して、最終製品におけるいわゆる「フィッシュアイ」の形成を防ぐことが有利であることが見出された。
【0035】
マヨネーズタイプの製品を製造する場合、一般に、卵ベースの乳化剤、塩、砂糖、およびスパイスの水性混合物に油をゆっくりと加える。酢は、通常、油を加える前か後にゆっくりと加えられる。少なくともいくつかの手法では、他の成分に加える前に高分子量ポリマーを油と混合することが、有益であり得ることがわかった。
【0036】
有利には、本明細書に記載される食品および飲料製品は、従来の混合装置および技術を使用して調製することができる。使用される圧力、せん断速度、および/または混合のための時間は、使用される特定の機器に応じて大きく異なり得る。例えば、ピンまたは他のローターステーターミキサーを使用することができる。本明細書に記載される製品を製造するための方法は、わずかな追加コストで商業的製造業者によって容易に実行され得る。
【0037】
包装
【0038】
いくつかの手法では、本明細書に記載の包装された食品または飲料製品は、脂質酸化をさらに遅くするために例えば、包装技術または容器設計を通じて、酸素の減少から利益を得ることができる。例えば、酸素は、ヘッドスペースを窒素などの不活性ガスでフラッシュすることによって、または溶存酸素を減らすために窒素で製品を散布することによって、パッケージされた製品から除去することができる。少なくとも1つの態様では、包装された製品の酸素含有量は、約12.5%(散布前)から約2%未満(約1時間の散布後)に減少し得る。しかし、マヨネーズ製品に窒素を散布すると、製品の密度に悪影響を及ぼし、製品の視覚的に魅力がない場合がある「ピッチング」を引き起こす可能性がある。散布はまた、生産プロセスに費用と時間を追加する。
【0039】
本明細書に記載される食品または飲料製品は、ガラスまたはプラスチック容器などの様々なタイプの包装中で提供されてもよい。選択した包装のタイプは、包装内の酸素の量を制御し、UV光への露出を制限することによって、製品(特に製品内のオイル)の酸化速度に影響を与え得る。ガラスボトルは、一般にプラスチックボトルよりも良好な保護を提供し、カラーガラス(例えば、琥珀色または緑色のガラス)は、一般に透明なガラスよりも良好な保護を提供する。しかし、ガラスボトルは壊れやすく、重量が重いため、プラスチックほど望ましくない場合もある。耐久性と軽量性のため、プラスチック容器が一般的に望ましいが、酸素の透過性とUV光透過率によって、製品の保存期間が短くなる可能性がある。
【0040】
プラスチックに関して、食品容器は、通常、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)から作られる。製品への酸素の透過を減らすために、酸素バリア(例えば、エチレン-ビニルアルコール、酸化アルミニウム)またはスカベンジャー(例えば、Solo2.1、Amosorb)を容器に追加できる。しかしながら、驚くべきことに、酸素ではなく光が、水中油型エマルション、特にマヨネーズ製品に対して、最も重要な酸化促進剤であることがわかった。酸素バリアまたはスカベンジャーを有するPET容器は、EDTAのような人工防腐剤を欠く本明細書に記載された水中油型エマルションの保存期間に統計的改善を提供しないことがわかった。代わりに、UV光バリアを酸素バリアまたはスカベンジャーの不在下で包装材料に追加して、水中油型エマルションの保存期間を延長できることがわかった。例えば、Ultimate390、PET容器(酸素バリアやスカベンジャーを含まない)内で0.12%低下したPolyOneの市販のColorMatrix(商標)遮光剤、などのUVバリアが、本開示による1つ以上の天然安定剤を含有する水中油型エマルションの保存期間をさらに延ばすのに効果的であった。
【0041】
消費者が容器内の製品を容易に見ることができるように、UVバリアが容器に色または不透明度を与えないことも特に好ましい。
【0042】
本発明の利点および実施形態は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例に列挙される特定の成分およびその量、ならびに他の条件ならびに詳細は、本発明を不当に限定すると解釈されるべきではない。特に明記しない限り、部とパーセントはすべて重量による。
【実施例
【0043】
実施例1
【0044】
試料は、キレート剤または他の防腐剤を含まない、風味付けされていないランチベースのモデルを使用することによって調製した。風味の欠如はマヨネーズの中性味を模倣し、EDTAの代替物からの不要な風味と色の検出を可能にした。ランチベースは、38%の大豆油、45%の水を含み、pHは約3.8であった。以下の表1に従って、さまざまな天然のキレート剤と抗酸化剤をそのマヨネーズベースに加えて混合した。
【0045】
【表1】
【0046】
脂質酸化試験
【0047】
表1の試料は、定量的電子常磁性共鳴(「EPR」)法を用いて脂質酸化に対する安定性を試験し、37℃で3日間のさまざまな時点でのマイクロモル(microM)レベルでのフリーラジカル(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ(TEMPOL)同等物)として表される)の量を測定した。EPRは、インキュベーション期間中に形成されたフリーラジカルの量を測定することによって、相対的な安定性と保存期間の指標を提供し、フリーラジカルのレベルが低いほど、安定性が高いことを示す。EPR分析を実施するために、Bruker e-scan R機器(Bruker Corporation、Billerica、Mass)を使用し、試料を次のように準備して分析した。
【0048】
a)5~10個のガラスビーズおよび50μLのPBN溶液(Neobee油で希釈された200mMのα-フェニル-N-tert-ブチルニトロン(PBN、Alexis Biochemicals))を空の20mLシンチレーションバイアルに入れた。
【0049】
b)5.00gの新鮮でよく混合したサンプルをそのバイアルに入れた。そのバイアルを閉じ、ボルテックスミキサーを用いて完全に混合した。そのバイアルを37℃でインキュベートした。
【0050】
c)アスピレーターを使用して、20、44、および68時間で試料を50μLのピペットに抜き取り、そのピペットの底をCritosealワックスで密封した。サンプリング後、そのバイアルをインキュベーターに戻した。
【0051】
d)分析のために、各ピペットを3mmのEPR管に挿入し、その管をEPR機器のキャビティに挿入した。
【0052】
e)WIN EPR取得ソフトウェアでプログラムされたEPR機器は、TEMPOL(フリーラジカル)同等物に変換されたスペクトルファイルを生成した。
【0053】
表1の試料のEPR結果を図1に示す。EDTA以外で、最も性能の高い試料は、カゼイネート、アルギン酸塩、およびほぼ同じ結果の2つのペクチン試料であった。これらの成分は、すべてキレート剤として機能する。つまり、それらの負に帯電した部分は、正に帯電した鉄および脂質酸化の類似の金属ベースの触媒と相互作用することができる。対照的に、植物抽出物は、発生したフリーラジカルの非局在化と共鳴による安定化を通じて、抗酸化物質として機能する。言い換えると、キレート剤は、脂質酸化の誘発を防ぐのに対し、抗酸化剤は、伝搬速度を遅くする。その4つのキレート成分がEDTAを含まない製品を酸化から最も保護したが、カゼイネートは2.70%の使用レベルでザラザラした食感を与え、特定の製品用途では、アレルゲンの懸念がある場合とない場合がある牛乳タンパク質を導入したことに留意されたい。アルギン酸塩、LM-12ペクチン、およびLM-18ペクチンはすべて、異なる濃度の負に帯電した部分を含む。この電荷の集中と高分子量化合物に沿ったそれらの空間分布は、おそらく成分の全体的なキレート効果に影響を与えた。しかし、このロジックに基づくと、LM-12とLM-18のペクチンは、それらは理論的にはメトキシ基の濃度のみが異なるため、同様に機能することは驚くべきことであった。各高分子量化合物の特別な制約が、マトリックス内で溶解して展開する独自の能力に影響を与えた可能性がある。油/水界面で最もよく分配できる化合物は、脂質酸化を最小限に抑えるのに最も効果的である。したがって、ペクチンと比較してアルギン酸塩の有効性が高いのは、その電荷密度、分子骨格に沿ったそれらの電荷の分布、およびアルギン酸塩がエマルション中溶解/展開し、すべての脂質酸化反応の重要な部位である油/水界面で分配する能力の組み合わせによるものと考えられる。安定化効果は、カゼイネート>アルギン酸塩>ペクチンであり、これは、使用量(つまり、負の電荷の濃度が高くなる)にも対応する。繰り返しになるが、使用量は、成分の粘度への影響によって制限された。(1)防腐剤を含まないマヨネーズ、高粘度製品は、防腐剤を含まないランチドレッシングと同じくらい迅速に酸化し、(2)小分子である鉄の移動度は、拡散速度論によってのみ律速される、つまり、鉄は、水のように、粘度が増大しても系全体で非常に移動しやすいことを意味するため、粘度の増加自体が酸化安定性に影響を与えることはほとんどない。
【0054】
実施例2
【0055】
2つのマヨネーズベースを形成することによって試料を調製した。第1のマヨネーズベースは、通常の大豆油を含んでいた。2番目のマヨネーズベースは、高オレイン酸大豆油を含んでいた。適切な部分では、マヨネーズベースは、約80%の大豆油(通常または高オレイン酸)、5.2%の卵ベースの乳化剤、約0.9%の塩、約11%の水を含み、pHは3.6であった。そのベースは、砂糖、フレーバー、レモンジュースも含んでいた。対照は、EDTAあり、なしで調製し、実験試料は、以下の表2に従って、抗酸化剤あり、なしで高分子量キレートポリマーを用いて調製した。
【0056】
【表2】
【0057】
追加のキレート剤または他の防腐剤を含まないマヨネーズベースを陰性対照として使用した。残りの試料は、表2に従って調製した。試料13は、EDTA含有対照(0.0075%EDTA)であった。
【0058】
試料は、卵ベースの乳化剤、水、塩、砂糖、およびスパイスを予備混合することによって調製した。酸化防止剤(DaniscoまたはKalsecから)とEDTAもこの段階で添加した。次に、この混合物に一定の撹拌下で油をゆっくりと加えた。最後に、酢を一定の撹拌下でゆっくりと加えた。得られた生成物は、粗いエマルションであり、それをさらにせん断して平均液滴直径6~7μmの微細なエマルションを形成した。ペクチンまたはアルギン酸塩を含む試料の場合、粉末を最初に乾燥塩、砂糖、およびスパイスとドライブレンドし、次に一定の撹拌下でその卵ミックスに追加した。名前に略号PIO(油中に入れた)がついている試料は、ペクチンを一定の撹拌下でその油に直接加えたことを除いて、同様に調製した。具体的には、ストレートペクチンを1つの容器内でその油に入れた。別の容器で、卵ベースの乳化剤、水、塩、砂糖、およびスパイスをブレンドした。次に、油ペクチン混合物をゆっくりと撹拌しながらその卵ミックスに加えた。最後に、酢をゆっくりと加え、さらに強力なせん断ステップを続けた。
【0059】
脂質酸化試験
【0060】
表2の試料は、実施例1に記載したように、定量的電子常磁性共鳴(「EPR」)法を使用して、脂質酸化に対する安定性を試験した。表2の試料についてのEPR結果を図2および3に示す。試料に存在するTEMPOL同等物のレベルが高いほど、フリーラジカルの形成に抵抗または防止する能力が低いことを示す。TEMPOL同等物のレベルが低いほど、その試料が保護効果を有し、フリーラジカルの形成を防止するのに役立つことを示す。フリーラジカル形成を低減し、それにより製品中に存在するフリーラジカルの量を少なくすることによって、製品の酸化も低減される。
【0061】
最高性能の試料を、図3に別々に示す。EDTA対照(13)と比較して、最も性能の高い試料は、アルギン酸塩を含む2つの試料(7および8)、高オレイン酸オイル対照(12)、ローズマリー抽出物(11)、およびペクチンを含む2つの試料(5PIOおよび10)である。EPRは予測試験である。試料11と12は、EPR予測分析で良好に機能したが、保存期間終了後の官能検査で、訓練を受けたパネリストには全体的に好まれなかった。EPRは、脂質の酸化を悪化させる予測ツールであり、成分の相互作用に基づく他のすべての製品の変化を説明することはできない。また、これらの試料は、高オレイン酸油を含んでおり、これは従来の大豆油とは異なる量で異なる酸化化合物を生成する。試料11と12はパネリストに好まれなかった可能性は、そのユニークな酸化化合物が他の試料よりも心地よいものではなかったためである。他の高オレイン酸試料中のペクチンとアルギン酸塩は、これらのユニークな酸化性化合物と未知の方法で相互作用して、それらの有害な感覚的影響を最小限に抑えた可能性がある。
【0062】
保存期間試験
【0063】
また、表2の試料を以下の2つの条件下での保存期間試験にかけた:(1)加速保存期間試験(「ホットボックス」)において、試料を28~35℃および相対湿度70%で5か月間インキュベートした;(2)周囲保存期間試験(「周囲」)では、試料を23℃、周囲相対湿度で8か月間インキュベートした。
【0064】
その試料について様々な時点で味覚試験を行った。これらの試料を、高度に訓練された消費者で構成される定性的記述分析パネルによって試験し、保存期間の調査過程で、香り、風味、食感などの感覚的観点からマヨネーズ製品が悪くなったかどうかおよびいつ悪くなったかを判断した。毎月1回、試料の酸化レベルを評価するために試料を試験し、試料の「古いキャノーラ油」の香り、「酸敗」の香り、「古いキャノーラ油」の風味、「ハーブ/グラス」の風味、「酢」の風味、「人工」の風味、「厚みのある」口当たり、「クリーミーな」口当たりについて評価した。すべての処理で、保存期間を通じて対照マヨネーズと同様の異臭(例えば、ヘキサナール、ヘプタジエンタール)が発生した。これは、高分子量のキレート剤、高オレイン酸油、および抗酸化剤を含んでも、脂質酸化の機械的経路が従来とは異なる経路にシフトしなかったことを示している。言い換えると、EDTAを含まないマヨネーズは、脂質ヒドロペルオキシドの形成と最終的なベータ切断を含む従来の脂質酸化経路に従う。訓練を受けたパネリストは、抗酸化物質を含む処理から、より多くのハーブまたは草のような風味を検出しなかった。弱った草/ハーブのノートがないことは、草の臭いで知られる大豆油酸化の一般的なアルデヒドマーカーであるヘキサナールが有害な量で発生するのを防いだことを示している。最後に、すべての処理は、重要なプラスの属性であり、マヨネーズ好みの原動である口当たりも等しく「クリーミー」であると見なされた。したがって、当技術分野で試みられている他の多くの解決策とは異なり、高分子量のキレート化ポリマーを含有する本発明の製品は、マヨネーズの感覚特性に大きな影響を与えなかった。
【0065】
実施例3
【0066】
追加の試料は、キレート剤または他の防腐剤を含まないマヨネーズベースを形成することによって調製した。そのマヨネーズベースは、実施例1に従って調製した。追加のキレート剤または他の防腐剤なしのマヨネーズベースを陰性対照として使用した(試料301)。残りの試料は、表3(重量%での量)に従って調製した。特に、油溶性と水溶性の両方の抗酸化剤を評価し、特に、効果の違いを比較するために水溶性と油溶性の形で得られた緑茶抽出物について評価した。試料307は、EDTAを含む対照(0.0075%のEDTAを含む)であった。
【0067】
【表3】
【0068】
試料301~306を、PolyOneから市販されているColorMatrix(商標)光遮断剤Ultimate390の0.12%減少PETから作られたUV遮断容器および従来の単層PET容器の両方に配置した。試料306は、従来の単層PET容器にのみ配置した。試料301~307は、6週間、MacBeth Spectra Light IIIライトボックス(「冷白色蛍光灯+UV」を設定;電球から発生する熱のため温度30℃)と、6か月間30℃の暗いインキュベーターの両方に保管した。残りの試料(308~314)は、単層のPET容器に入れ、6か月間30℃で暗いインキュベーターで保管した。
【0069】
【表4】
【0070】
緑茶抽出物がマヨネーズの褐変を促進することが見出されたのに対し、試料310は、全保存期間を通じて最高の性能を発揮した。クローブ油は、特徴のないマヨネーズの風味に貢献することが分かったが、試料311ではその貢献は弱められた。
【0071】
実施例2と同様に、定量的電子常磁性共鳴(EPR)を使用して試料を評価した。EPRの結果を図4に示す。これらの試料の中で、試料310(アルギン酸塩、α-トコフェロール、およびβ-カロテンを含む)は、EDTA対照(試料307)後のフリーラジカル生成に対して最高の安定性を示した。試料310はEPR試験のEDTA対照ほど安定ではなかったが、30℃での6か月の保存期間に耐えるのに十分安定しており、これはほとんどの市販製品で満足できる。EPR試験では、暗いインキュベーター内で熱を加えられた新鮮な試料で試験を行うため、包装または保管条件の違いを考慮できない。
【0072】
実施例4
【0073】
EDTAのない水中油型エマルション製品において最も問題であった酸化の原因を特定するための研究を行った。まず、(1)ハーブ(感光性クロロフィルの源)とバターミルク(感光性リボフラビンの源)を含むランチドレッシング製品、および(2)ハーブまたはバターミルクを含まないランチドレッシングについて、光の影響を評価した。そのランチドレッシングは、40%大豆油を含んでいた。2つの生成物は、等しく速く酸化し、これは、光分解の影響を受けやすいのが、光合成剤ではなく、油自体(および初期の酸化反応中で形成されるヒドロペルオキシド)であることを示している。
【0074】
完全要因分析は、0、中レベル(2%)、および高レベル(4%)のAmosorb Solo2.1酸素バリア/スカベンジャー添加プラスまたはマイナス0、中レベル(0.125%)、高(0.25%)レベルのUltimate390バリア(ColorMatrix/PolyOneから)を有するPET包装を見て行った。その製品を、MacBeth Spectra Light IIIライトボックス(「冷白色蛍光灯+UV」を設定、電球の熱のため温度30℃)に保管し、一定のUVと可視光を与えた。酸素バリア/スカベンジャーは、最小限の効果を追加したが、コストが高いことがわかった。その試みから、包装は0%酸素バリア/スカベンジャーを含み、0.12%減少UVバリアを含むことで、ボトルの同様の視覚的特性を維持しながら、EDTAを含まないランチドレッシングを酸化から最も保護することが示唆された。
【0075】
実施例5
【0076】
従来のマヨネーズ製品を調製したが、EDTAは含まない。低粘度のアルギン酸塩と低粘度のペクチンを追加し、レオロジー分析を行って、マヨネーズの食感に対するEDTAの除去とアルギン酸塩とペクチンの添加の影響を評価した。表5に従って試料を調製した。
【0077】
【表5】
【0078】
レオロジー試験は、1.1mmのジオメトリギャップを有する60mmのクロスハッチされたボトムプレートを有する25mmのクロスハッチされた平行プレートを備える、DHRレオメーターを使用して完了した。この試験では、レオロジー特性を温度の関数として測定した:搭載温度:25℃;温度範囲:5~60℃(加熱RTA);加熱速度:2℃/分;応力:10Pa;および周波数:10rad/s。2つの重ね合わせ曲線が得られるまで、すべてのテストを繰り返した。その結果を表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
方法の性質および天然防腐剤を説明するために本明細書に記載および図示されたプロセス、製剤、およびそれらの成分の詳細、材料、および配置における様々な変更が、添付の特許請求の範囲に表現される本発明の原理および範囲内で当業者によって行われ得ることが理解される。
図1
図2
図3
図4