(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】核酸-ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体を安定化するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20240911BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
(21)【出願番号】P 2020559389
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 US2019022540
(87)【国際公開番号】W WO2019209426
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】311002665
【氏名又は名称】パシフィック・バイオサイエンシズ・オブ・カリフォルニア・インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブロック, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ミドルトン, モラッサ モフセニー
(72)【発明者】
【氏名】ウォレン, マーク シー.
(72)【発明者】
【氏名】イードガン, ピナール
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, マイケル ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ローマン, ブリタニー エー.
(72)【発明者】
【氏名】リュー, イン リン
(72)【発明者】
【氏名】オリファント, アーノルド
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045606(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0022553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6876
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライムされたテンプレート核酸を検出する方法であって、
(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、前記三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及び前記プライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、
前記混合物が、過剰なヌクレオチドをさらに含み、前記過剰なヌクレオチドの化学構造が、前記三元複合体に存在する前記ヌクレオチド同族体の化学構造と同じである、前記提供するステップと、
(b)前記過剰なヌクレオチドを、Li
+を含む流体で置き換えるステップと、
(c)前記三元複合体が前記流体と接触している間に、前記三元複合体を検出するステップと、を含み、
前記Li
+が、ステップ(c)中に5mM~250mMの濃度で存在する、方法。
【請求項2】
(d)ステップ(c)の結果から、前記プライムされたテンプレート核酸の次の正しい塩基を同定するステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(e)前記プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップ、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プライマーが、可逆的ターミネーター部分を含むヌクレオチドの付加によって伸長される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プライムされたテンプレートのプライマーが、可逆的ターミネーター部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(e)前記プライマーを脱ブロックするために前記可逆的ターミネーター部分を修飾または除去するステップ、をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(f)前記脱ブロックされたプライマーを伸長するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記脱ブロックされたプライマーが、可逆的ターミネーター部分を含むヌクレオチドの付加によって伸長される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記三元複合体が、固体支持体上に固定される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヌクレオチド同族体が、ステップ(c)で検出される外因性標識を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物が、前記テンプレート核酸に存在すると疑われる少なくとも2つの異なる塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記異なる塩基タイプの前記ヌクレオチド同族体が、それぞれ、異なる外因性標識を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリメラーゼが、ステップ(c)で検出される外因性標識を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物が、過剰なポリメラーゼをさらに含み、前記過剰なポリメラーゼの化学構造が、前記三元複合体に存在するポリメラーゼの化学構造と同じである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)が、前記過剰なポリメラーゼ及び前記過剰なヌクレオチドを、前記流体で置き換えることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記過剰なヌクレオチドが、前記流体に可溶性である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)が、Li
+を含み、かつ前記三元複合体に存在する前記ヌクレオチド同族体と化学構造が同じヌクレオチドを欠く流体を、前記三元複合体に送達し、それにより前記過剰なヌクレオチドを前記流体で置き換えることを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記Li
+が、ステップ(c)中に5mM~100mMの濃度で存在する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記流体が、ポリエチレンイミンをさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
三元複合体を安定化するための安定化流体であって、
前記安定化流体が、Li
+を含み、
前記Li
+が、5mM~250mMの濃度で存在し、
前記三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及び前記プライムされたテンプレート核酸の塩基のヌクレオチド同族体を含
み、
前記安定化流体が、前記テンプレート核酸に存在すると疑われる少なくとも4つの異なる塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む、安定化流体。
【請求項21】
前記Li
+が、5mM~100mMの濃度で存在する、請求項20に記載の安定化流体。
【請求項22】
前記安定化流体が、ポリエチレンイミンをさらに含む、請求項20に記載の安定化流体。
【請求項23】
前記三元複合体が、固体支持体上に固定化される、請求項20に記載の安定化流体。
【請求項24】
前記ヌクレオチド同族体が、外因性標識を含む、請求項20~23のいずれか1項に記載の安定化流体。
【請求項25】
前記安定化流体が、遊離ヌクレオチドを前記安定化流体と接触させる三元複合体の濃度よりも低い濃度でさらに含み、前記遊離ヌクレオチドの化学構造が、前記三元複合体中に存在する前記ヌクレオチド同族体の化学構造と同じである、請求項20~
24のいずれか1項に記載の安定化流体。
【請求項26】
プライムされたテンプレート核酸を検出する方法であって、
(a)三元複合体及びLi
+を含む流体を提供するステップであって、前記三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及び前記プライムされたテンプレート核酸の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む、前記提供するステップと、
(b)前記三元複合体が前記流体中にある間に、前記三元複合体を検出するステップと、を含み、
前記Li
+が、前記流体中に5mM~250mMの濃度で存在する、方法。
【請求項27】
(c)ステップ(b)の結果から、前記プライムされたテンプレート核酸の前記次の正しい塩基を同定するステップ、及び
(d)前記プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップ、をさらに含み、前記プライマーが、可逆的ターミネーター部分を含むヌクレオチドの付加によって伸長される、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記ヌクレオチド同族体が、ステップ(b)で検出される外因性標識を含む、請求項
26または
27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年4月26日に出願された米国仮出願第62/662,888号に基づき、かつその権利を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して、核酸の捕捉、検出及び配列決定に関する。より具体的には、本開示は、例えば、Sequencing By Binding(商標)(SBB(商標))方法において、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ及び同族ヌクレオチドをそれぞれ含む、三元複合体の形成及び検出に関する。
【背景技術】
【0003】
SBB(商標)技術は、プライマーの末端にあるテンプレート塩基を同定する手段として、ポリメラーゼと、プライムされたテンプレート核酸への同族ヌクレオチドの一過性結合を採用する。プライマーを伸長し、次のテンプレート塩基を検出する連続ステップにより、テンプレートの配列を決定することが可能になる。例示的なSBB(商標)技術は、例えば、共同所有の米国特許出願公開第2017/0022553 A1号及び同第2018/0044727 A1号、ならびに米国特許出願第15/873,343号(US 2018/0208983 A1として公開)及び同第15/851,383号(US 2018/0187245 A1として公開)に開示されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
SBB(商標)技術の問題点は、三元複合体が平衡結合生成物であることである。平衡結合生成物は、非結合の結合パートナーと溶液中に共存する。平衡反応からの非結合の結合パートナーの除去は、結合生成物を解離させる。SBB(商標)手順において標識ヌクレオチドを使用する場合、非結合の標識ヌクレオチドは、平衡を維持し、これが三元複合体を維持する、所望の機能を提供する。しかしながら、非結合の標識ヌクレオチドは、三元複合体の検出を不明瞭にし得るバックグラウンドシグナルを不必要に生成する。標識ヌクレオチドの代わりに標識ポリメラーゼを使用する場合、同様の問題が生じ得る。
【0005】
必要なのは、標識バックグラウンド成分の濃度を減少させながら、三元複合体の検出可能なレベルを維持する方法である。本発明はこの必要性を満たしており、かつ、関連する利点も提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、流体を含む方法、組成物、キット及び装置を提供し、流体は、三元複合体及びLi+を含有し、三元複合体は、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む。Li+の代替または追加として、流体は、Ca2+などのポリメラーゼ触媒作用を阻害するベタイン及び/または金属イオンを含有することができる。Li+に加えて、流体は、ベタインの有無にかかわらずポリエチレンイミン(PEI)を含有することができる。
【0007】
(a)三元複合体及びLi+を含有する流体を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む、提供するステップと、(b)三元複合体がLi+を含有する流体中にある間に、三元複合体を検出するステップと、を含む、プライムされたテンプレート核酸を検出する方法も提供される。任意に、方法は、(c)ステップ(d)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定することをさらに含む。Li+の代替または追加として、流体は、ベタイン及び/またはCa2+などの阻害金属イオンを含有することができる。Li+に加えて、流体は、ベタインの有無にかかわらずPEIを含有することができる。
【0008】
プライムされたテンプレート核酸を検出する方法は、(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、混合物が、三元複合体に存在する同じタイプの過剰なポリメラーゼ及び三元複合体に存在する同じタイプの過剰なヌクレオチドをさらに含む、提供するステップと、(b)過剰なポリメラーゼ及び過剰なヌクレオチドを、Li+を含有する流体で置き換えることと、(c)三元複合体がLi+を含有する流体と接触している間に、三元複合体を検出するステップと、を含むことができる。任意に、方法は、(d)ステップ(c)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定することをさらに含む。Li+の代替または追加として、流体は、ベタイン及び/またはCa2+などの阻害金属イオンを含有することができる。Li+に加えて、流体は、ベタインの有無にかかわらずPEIを含有することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、プライマーを伸長するステップを含むことができる。例えば、プライムされたテンプレート核酸を検出する方法は、(a)三元複合体及びLi+を含有する流体を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む、提供するステップと、(b)三元複合体がLi+を含有する流体中にある間に、三元複合体を検出するステップと、(c)ステップ(b)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定するステップと、(d)プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップと、を含むことができる。任意に、方法は、(e)プライムされたテンプレート核酸の代わりに、伸長したプライマーを有するプライムされたテンプレート核酸を使用して、ステップ(a)~(d)を繰り返すステップをさらに含むことができる。Li+の代替または追加として、流体は、ベタイン及び/またはCa2+などの阻害金属イオンを含有することができる。Li+に加えて、流体は、ベタインの有無にかかわらずPEIを含有することができる。
【0010】
プライマー伸長ステップを含む方法の別の例では、方法のステップは、(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、混合物が、三元複合体に存在する同じタイプの過剰なポリメラーゼ及び三元複合体に存在する同じタイプの過剰なヌクレオチドをさらに含む、提供するステップと、(b)過剰なポリメラーゼ及び過剰なヌクレオチドを、Li+を含有する流体で置き換えることと、(c)三元複合体がLi+を含有する流体と接触している間に、三元複合体を検出するステップと、(d)ステップ(c)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定するステップと、(e)プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップと、を含むことができる。任意に、方法は、(f)プライムされたテンプレート核酸の代わりに、伸長したプライマーを有するプライムされたテンプレート核酸を使用して、ステップ(a)~(e)を繰り返すステップをさらに含むことができる。Li+の代替または追加として、流体は、ベタイン及び/またはCa2+などの阻害金属イオンを含有することができる。Li+に加えて、流体は、ベタインの有無にかかわらずPEIを含有することができる。
【0011】
プライマー伸長ステップを含む方法のさらに別の例では、方法のステップは、(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、混合物が、三元複合体に存在する同じタイプの過剰なヌクレオチドをさらに含む、提供するステップと、(b)過剰なヌクレオチドを、Li+を含有する流体で置き換えることと、(c)三元複合体がLi+を含有する流体と接触している間に、三元複合体を検出するステップと、(d)ステップ(c)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定するステップと、(e)プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップと、を含むことができる。任意に、方法は、(f)プライムされたテンプレート核酸の代わりに、伸長したプライマーを有するプライムされたテンプレート核酸を使用して、ステップ(a)~(e)を繰り返すステップをさらに含むことができる。Li+の代替または追加として、流体は、ベタイン及び/またはCa2+などの阻害金属イオンを含有することができる。Li+に加えて、流体は、ベタインの有無にかかわらずPEIを含有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】様々な検査条件の「オン」及び「オフ」シグナル強度のプロットを示す。
【
図2】様々な検査条件の「オン」及び「オフ」シグナル強度のプロットを示す。
【
図4A】LiClの非存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる4つの異なる塩基タイプの「オン」及び「オフ」シグナル強度のプロットを示す。
【
図4B】5mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる4つの異なる塩基タイプの「オン」及び「オフ」シグナル強度のプロットを示す。
【
図4C】50mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる4つの異なる塩基タイプの「オン」及び「オフ」シグナル強度のプロットを示す。
【
図5A】LiClの非存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる4つの異なる塩基タイプの純度のプロットを示す。
【
図5B】5mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる4つの異なる塩基タイプの純度のプロットを示す。
【
図5C】50mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる4つの異なる塩基タイプの純度のプロットを示す。
【
図6A】LiClの非存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたるシグナル対ノイズ比のプロットを示す。
【
図6B】5mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたるシグナル対ノイズ比のプロットを示す。
【
図6C】50mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたるシグナル対ノイズ比のプロットを示す。
【
図7A】LiClの非存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる平均エラー率のプロットを示す。
【
図7B】5mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる平均エラー率のプロットを示す。
【
図7C】50mMのLiClの存在下で行われた20回の配列決定サイクルにわたる平均エラー率のプロットを示す。
【
図8】リチウム、カルシウムまたはベタインの異なる組み合わせの存在下での60秒後の三元複合体のシグナル強度の損失率を示す。
【
図9】リチウム、カルシウムまたはベタインの異なる組み合わせの存在下で実行した配列決定サイクルの純度値のプロットを示す。
【
図10】PEIの存在及び非存在下での三元複合体の安定性試験の結果を示す。
【
図11】異なる濃度のPEIの存在下での三元複合体の安定性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
プライムされたテンプレート核酸分子の集団のメンバー間での同族ヌクレオチドの迅速かつ効率的な同定を可能にする手順が、本明細書に記載される。以下に記載されるように、これは、異なる方法で達成され得る。
【0014】
一般に、検出可能な標識(例えば、標識ヌクレオチド)を有する予め形成された三元複合体は、非複合体化ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチド(例えば、非複合体化標識ヌクレオチドまたは非複合体化標識ポリメラーゼ)から分離され、次いで、ヌクレオチド同定を行うために、安定化流体の存在下で画像化され得る。安定化流体は有利に、長期間にわたって三元複合体検出を可能にする。三元複合体が形成され得る多くの方法が存在し、三元複合体が形成される方法が、本明細書に記載される安定化手順の有用性に概して影響を及ぼさないことを理解されたい。
【0015】
本明細書に記載される方法の実施形態を使用して、プライマーの3’末端における伸長を妨げながら、3つの成分が複合体を形成することを可能にする条件下で、ポリメラーゼ、ヌクレオチド及びプライムされたテンプレート核酸を接触させることによって、可逆的複合体(例えば、三元複合体)を形成することができる。伸長は、プライマー上のターミネーター部分の存在、阻害金属イオンなどのポリメラーゼ阻害剤の存在、触媒金属イオンの非存在、及び/またはプライマー伸長活性から阻害されるポリメラーゼバリアントの使用(例えば、ポリメラーゼの触媒ドメインの変異による)を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載される多くの手段によって妨げられる。プライムされたテンプレート核酸は、必要に応じて固体支持体に固定化され得る。三元複合体形成の程度は、それらの関連濃度での異なる結合成分(すなわち、ポリメラーゼ及び同族ヌクレオチド)の存在から生じる平衡結合条件を反映する。平衡の正味の効果は、形成される複合体がこの結合ステップ中に安定しているように見えることであるが、個々の複合体は、実際にはフラックスの状態にある。実際、複合体の成分は、それらが平衡状態でブロックされたプライムされたテンプレート核酸分子と連続的に会合及び解離しているが、遊離成分及び結合成分の濃度に正味の変化がない状況にあり得る。
【0016】
任意に、いったん形成された三元複合体を、検出の前に安定化流体と接触させることができる。安定化流体を使用して、三元複合体を含む化学環境を変化させることができる。これは、1つの条件下で形成された三元複合体が、異なる条件下で検出され得ることを意味する。提案された機構によって制限されることを必ずしも望むものではないが、安定化流体は、そうでなければ1つ以上の結合成分(例えば、ヌクレオチド及び/またはポリメラーゼ)の非存在下で生じる三元複合体の解離を遅らせることができ、それにより、延長された時間枠にわたる三元複合体の検出を可能にする。安定化流体は、三元複合体の検出または操作能力を改善する他の効果を有することができる。例えば、いくつかの安定化流体は、ポリメラーゼとプライムされたテンプレート核酸との間の二元複合体の形成を阻害すること(すなわち、同族ヌクレオチドが存在しない)、及び/または別様に、二元複合体に対する三元複合体の比を増加させるように作用することができる。
【0017】
本明細書に開示されるように、プライムされたテンプレート核酸、同族ヌクレオチド(任意に検出可能な標識を含む)、及びポリメラーゼ(任意選択に検出可能な標識を含む)を含む三元複合体は、非複合体化ポリメラーゼ及び非複合体化ヌクレオチドから三元複合体を分離する洗浄ステップ中または洗浄ステップ後に検出され得る。洗浄ステップは、(例えば、安定剤を欠く流体に対して)複合体を維持する安定剤を含む水性安定化流体を用いる画像化洗浄ステップであり得る。例示的な安定剤としては、リチウム(Li+)、ベタイン、及び/またはCa2+などの阻害金属イオンが挙げられる。特に有用な安定剤としては、ポリエチレンイミン(PEI)と組み合わせた、かつ任意にベタインとさらに組み合わせたLi+が挙げられる。Li+、ベタイン及び他の金属イオン(例えば、Ca2+)は、本明細書に記載される方法または組成物において有用であるために安定剤として機能する必要はないことが理解されるであろう。したがって、三元複合体の安定化は、本明細書に記載されるこれら及び他の試薬の任意の使用である。
【0018】
安定剤の存在は、検出または他の使用のために容器内に三元複合体を維持しながら、反応容器から過剰な標識成分(例えば、標識ヌクレオチドまたは標識ポリメラーゼ)の除去を可能にすることができる。したがって、フローセルなどの容器内で固定化された三元複合体は、安定化流体で洗浄され、安定化流体と接触している間に検出され得る。安定化流体洗浄を使用する利点は、実質的に、バックグラウンドシグナルを不必要に増加させる過剰な非複合体化結合成分(例えば、標識ヌクレオチド及び/または標識ポリメラーゼ)の非存在下で、三元複合体が検出され得ることである。したがって、安定化洗浄ステップ中に三元複合体を検出することは、変化した条件(例えば、三元複合体の形成から生じた平衡とは異なる条件)下で複合体を検出することを伴い得る。洗浄ステップ中、以前に三元複合体形成につながった正味の正反応は、もはや発生しないか、または少なくとも実質的に遅くなる。
【0019】
ヌクレオチドを含まない及びポリメラーゼを含まない安定化流体を、フローセルを通して流すことによって三元複合体を洗浄することは、非複合体化標識ヌクレオチド及びポリメラーゼを除去し、予め形成されたまたは既存の三元複合体の検出可能性を保持しながら、非特異的なバックグラウンドシグナル(例えば、蛍光バックグラウンド)を低減することができる。例えば、フローセル内に含まれる三元複合体は、少なくとも30秒、1分、5分、10分以上の安定化流体との接触期間の後に検出され得る。代替的または追加的に、最大で10分、5分、1分、30秒以下の安定化流体との接触期間後に、安定化三元複合体を検出することが望ましい場合がある。
【0020】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態で使用される組成物及び方法は、ポリメラーゼ、プライムされたテンプレート核酸及び同族ヌクレオチドを含む、三元複合体の結合特異性を利用する。この特異性を使用して、三元複合体に存在するヌクレオチドを同定することによって、プライムされたテンプレート核酸の次の正しいヌクレオチドを同定することができる。このアプローチによって、プライマーをその3’末端における伸長からブロックし、次いで任意に平衡結合条件下で、ホスホジエステル結合形成を妨げながら三元複合体の形成を検出することは、同じ反応混合物中で、かつ介在する試薬交換または洗浄ステップなしで起こり得る。代替的に、過剰なヌクレオチド及びポリメラーゼがシステムから除去されているときに、画像化洗浄ステップ中に三元複合体の形成が検出され得る。三元複合体の形成及び検査中の触媒金属イオンの任意の存在は、より自然な三元複合体条件を模倣することができ、したがって、触媒イオンを省略または置き換える方法よりも追加の利点を提供する。集計結果は、単一ヌクレオチド同定(例えば、遺伝子型決定手順または単一配列決定サイクル)及び配列同定(例えば、同族ヌクレオチド同定及びプライマー伸長の繰り返しサイクルを使用する循環プロセス)の速度の増加である。
【0021】
本開示は、Sequencing By Binding(商標)技術の文脈で三元複合体安定化のいくつかの態様を例示及び説明する。本明細書に記載される組成物及び方法は、核酸配列決定に限定される必要はないことが理解されるであろう。例えば、本開示は、プライムされたテンプレート核酸の単一ヌクレオチド部位を照合するための方法を提供する。単一ヌクレオチド部位の照合は、例えば、遺伝子型決定方法において、単一部位(例えば、単一ヌクレオチド多型またはSNP)でバリアントを検出するのに有用であり得る。典型的には、遺伝子型決定方法は、既知の遺伝子座を有するが、その遺伝子座における対立遺伝子変異が決定される、テンプレート核酸を使用して行われる。代替的に、単一ヌクレオチド部位の同定は、正しいヌクレオチドに結合するためのポリメラーゼの特異性など、標的ポリメラーゼの特徴を評価するために有用であり得る。テンプレート核酸中の単一ヌクレオチド部位のみを照合する方法は、本明細書に記載されるSequencing By Binding(商標)方法の単一サイクルを使用して行われ得る。任意に、単一ヌクレオチド部位は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる共同所有の米国特許第9,932,631号及び米国仮出願第62/448,630号に記載される方法または試薬と組み合わせて、本開示の方法または試薬を使用して照合され得る。
【0022】
本明細書に記載される組成物及び方法の別の例示的な適用は、対立遺伝子バリアントのポリメラーゼベースの捕捉である。捕捉方法は、ポリメラーゼがプライムされたテンプレート及び次の正しいヌクレオチドとともに安定化三元複合体を形成することができる特異性を利用する。例えば、安定化三元複合体は、ポリメラーゼ、標的対立遺伝子、及び対立遺伝子の同族ヌクレオチドの間で形成され得る。ポリメラーゼ特異性は、標的対立遺伝子が、例えば、単一ヌクレオチドによって標的対立遺伝子とは異なる他の対立遺伝子を含む他の核酸から分離されることを可能にする。例えば、三元複合体は、ポリメラーゼ、標的単一ヌクレオチド多型(SNP)対立遺伝子をコードするプライムされたテンプレート、及びSNP対立遺伝子の同族ヌクレオチドの間で形成され得る。三元複合体の捕捉は、同族ヌクレオチドがポリメラーゼと三元複合体を形成するときに標的SNPに対して選択的であるため、同じ遺伝子座における非標的SNP対立遺伝子と比較して、SNP対立遺伝子の選択的捕捉をもたらす。安定剤の使用は、これらの捕捉方法、及び参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第15/701,358号(現在は米国特許出願公開第2018/0208922A1号として公開)に記載される方法を向上させるために使用され得る。
【0023】
本明細書で使用される用語は、別段の定めがない限り、関連技術におけるそれらの通常の意味を有すると理解されるであろう。ここで使用されるいくつかの用語とその意味を以下に示す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「アレイ」という用語は、1つのフィーチャーにある分子を他のフィーチャーにある分子と区別できるように、1つ以上の固体支持体に結合している分子の集団を指す。アレイは固体支持体上の異なるアドレス可能なフィーチャーにそれぞれ位置する異なる分子を含むことができる。代替的に、アレイは、それぞれが異なる分子を有するフィーチャーとして機能する別個の固体支持体を含むことができ、異なる分子は、固体支持体が結合する表面上の固体支持体の位置に従って、または流体流などの液体中の固体支持体の位置に従って同定され得る。アレイの分子は、例えば、ヌクレオチド、核酸プライマー、核酸テンプレート、プライムされた核酸テンプレート、またはポリメラーゼ、リガーゼ、エキソヌクレアーゼもしくはそれらの組み合わせなどの核酸酵素であり得る。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「ベタイン」という用語は、水素原子を有さず、アニオン性原子に隣接していないオニウム原子を有する電荷分離形態を有する双性イオン分子を意味する。アニオン性原子は、カルボキシレート基であり得る。アンモニウムベタインは、第四級アンモニウムを含むカチオン性官能基を有する。特に有用なアンモニウムベタインは、N,N,N-トリメチルグリシン(TMG)である。ホスホニウムベタインは、ホスホニウムカチオンを含むカチオン性官能基を有する。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「二元複合体」という用語は、プライムされたテンプレート核酸の次の正しいヌクレオチドなどのヌクレオチド分子を除外した、ポリメラーゼとプライムされたテンプレート核酸との間の分子間会合を指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「ブロッキング部分」という用語は、ヌクレオチドに関して使用される場合、核酸重合反応の間にヌクレオチドの3’酸素が次の正しいヌクレオチドへの共有結合を形成することを阻害または防止するヌクレオチドの一部を意味する。「可逆的ターミネーター」ヌクレオチドのブロッキング部分は、ヌクレオチド類似体から除去するか、そうでなければ修飾して、ヌクレオチドの3’-酸素を次の正しいヌクレオチドに共有結合することを可能にできる。このプロセスは、ヌクレオチド類似体を「脱ブロック」することと呼ばれる。そのようなブロッキング部分は、本明細書では「可逆的ターミネーター部分」と呼ばれる。例示的な可逆的ターミネーター部分は、各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,427,673号、同第7,414,116号、同第7,057,026号、同第7,544,794号、もしくは同第8,034,923号、またはPCT公開第WO 91/06678号もしくは同第WO 07/123744号に記載される。ブロッキング部分または可逆的ターミネーター部分を有するヌクレオチドは、プライマーなどの核酸の3’末端にあってもよく、または核酸に共有結合されていないモノマーであってもよい。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「触媒金属イオン」という用語は、ポリメラーゼによる核酸(例えば、プライマー)の3’-OHと入ってくるヌクレオチドのリン酸との間のホスホジエステル結合形成を促進する金属イオンを指す。「二価触媒金属カチオン」は、2価を有する触媒金属イオンである。触媒金属イオンは、ホスホジエステル結合形成が生じない限り、金属イオンの非触媒濃度と称される、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、及びプライムされたテンプレート核酸の間の複合体の形成を安定化する濃度で存在することができる。金属イオンの触媒濃度は、ポリメラーゼが核酸(例えばプライマー)の3’-OH基と入ってくるヌクレオチドのリン酸基との間の反応を触媒するのに十分な金属イオンの量を指す。
【0029】
「含む(comprising)」という用語は、本明細書では、列挙された要素だけでなく、任意の追加の要素をさらに含む、無制限であることを意図している。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「サイクル」または「ラウンド」という用語は、配列決定手順に関して使用される場合、ヌクレオチドの存在を示すために繰り返される配列決定ランの一部分を指す。典型的には、サイクルまたはラウンドは、試薬の送達のためのステップ、未反応の試薬を洗い流すステップ、及び添加された試薬に応答して生じる変化を示すシグナルの検出ステップなどのいくつかのステップを含む。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「拡散交換」という用語は、結合複合体のメンバーに関して使用される場合、メンバーが互いに会合するか、または互いから解離するために流体中で移動する能力を指す。拡散交換は、メンバーが互いと相互作用して複合体を形成することを妨げる障壁がない場合に生じ得る。しかしながら、拡散交換は、アクセスが絶対に防止されるわけではない限り、拡散が遅延、低減、または変更されても存在すると理解される。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「各」という用語は、項目の集合体に関連して使用される場合、集合体内の個々の項目を特定することを意図しているが、必ずしも集合体内の全ての項目を指すとは限らない。明示的な開示またはコンテキストがそうでないと明示する場合、例外が発生する可能性がある。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「平衡」は、対向する力の等しい作用によるバランスの状態を指す。例えば、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ及び同族ヌクレオチドの間で形成される三元複合体は、三元複合体の形成速度がその溶解速度によってバランスが取られるとき、非結合ポリメラーゼ及び同族ヌクレオチドと平衡にある。この条件下では、可逆的結合反応は、反応物に対する生成物のその正味比を変化させなくなる。正反応(例えば、三元複合体形成)の速度が、逆反応(例えば、三元複合体解離)の速度によってバランスが取られる場合、正味の変化はない。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「過剰」という用語は、結合反応において複合体を形成することができる成分に関して使用される場合、結合状態にない成分を指す。三元複合体を形成する反応を例にとると、三元複合体を有する反応容器内の溶液中に遊離しているポリメラーゼまたはヌクレオチドは、過剰なポリメラーゼ及びヌクレオチドである。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「外因性」という用語は、分子の部分に関して使用される場合、分子の天然の類似体には存在しない化学的部分を意味する。例えば、ヌクレオチドの外因性標識は、天然に存在するヌクレオチドには存在しない標識である。同様に、ポリメラーゼに存在する外因性標識は、その本来の環境ではポリメラーゼには見られない。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「伸長」という用語は、核酸に関して使用される場合、少なくとも1つのヌクレオチドを核酸の3’末端に付加するプロセスを意味する。「ポリメラーゼ伸長」という用語は、核酸に関して使用される場合、核酸の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドを付加するポリメラーゼ触媒プロセスを指す。伸長により核酸に付加されるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、核酸に組み込まれると言われている。したがって、「組み込むこと」という用語は、ホスホジエステル結合の形成によってヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを核酸の3’末端に結合するプロセスを指すために使用することができる。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「伸長可能」という用語は、ヌクレオチドに関して使用される場合、ヌクレオチドが3’位に酸素またはヒドロキシル部分を有し、次の正しいヌクレオチドが核酸に組み込まれる場合及びそのときに、次の正しいヌクレオチドへの共有結合を形成できることを意味する。伸長可能なヌクレオチドは、プライマーの3’位にあってもよいし、単量体ヌクレオチドであってもよい。伸長可能なヌクレオチドは、可逆的ターミネーター部分などのブロッキング部分を欠いている。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「フィーチャー」という用語は、アレイに関して使用される場合、特定の分子が存在するアレイ内の場所を意味する。フィーチャーには、単一の分子のみを含めることも、同じ種のいくつかの分子の集団(すなわち、分子の集合)を含めることもできる。代替的に、フィーチャーは、異なる種である分子の集団(例えば、異なるテンプレート配列を有する三元複合体の集団)を含み得る。アレイのフィーチャーは通常、個別である。個別のフィーチャーは隣接していても、相互にスペースがあってもよい。本明細書で有用なアレイは、例えば、100ミクロン、50ミクロン、10ミクロン、5ミクロン、1ミクロン、または0.5ミクロン未満離れているフィーチャーを有することができる。代替的または追加的に、アレイは、0.5ミクロン、1ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンを超えて離れているフィーチャーを有することができる。フィーチャーはそれぞれ、1平方ミリメートル未満、500平方ミクロン、100平方ミクロン、25平方ミクロン、1平方ミクロンまたはそれ以下の面積を有することができる。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「標識」という用語は、検出可能な特性を提供する分子またはその部分を指す。検出可能な特性は、例えば、放射の吸収、ルミネセンスまたは蛍光発光、ルミネセンスまたは蛍光寿命、蛍光偏光などの光シグナル、レイリー及び/またはミー散乱、リガンドまたは受容体に対する結合親和性、磁気特性、電気的特性、電荷、質量、放射能などであり得る。例示的な標識には、フルオロフォア、発光団、発色団、ナノ粒子(例えば、金、銀、カーボンナノチューブ)、重原子、放射性同位元素、質量標識、電荷標識、スピン標識、受容体、リガンドなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「次の正しいヌクレオチド」という用語は、プライマーがハイブリダイズするテンプレート鎖の塩基と相補的なプライマーの3’末端に結合及び/または組み込まれるヌクレオチドタイプを指す。テンプレート鎖の塩基は「次の塩基」と呼ばれ、プライマーの3’末端にハイブリダイズするテンプレートの塩基のすぐ5’側にある。次の正しいヌクレオチドは、次の塩基の「同族体」と呼ばれ、逆も同様である。三元複合体または二本鎖核酸において互いに特異的に相互作用するヌクレオチド同族体は、互いに「対となる」と言われる。次のテンプレート塩基に相補的ではない塩基を有するヌクレオチドは、「正しくない」、「ミスマッチ」、または「非同族体」ヌクレオチドと呼ばれる。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「阻害金属イオン」という用語は、ポリメラーゼ酵素の存在下にあるとき、プライマーへのヌクレオチドの化学的組み込みに必要なホスホジエステル結合形成を阻害する金属イオンを指す。阻害金属イオンは、例えば、触媒金属イオンと比較して、競合結合を介して、ポリメラーゼと相互作用し得る。「二価阻害金属イオン」は、2価を有する阻害金属イオンである。二価阻害金属イオンの例としては、Ca2+、Zn2+、Co2+、Ni2+及びSr2+が挙げられるが、これらに限定されない。三価のEu3+及びTb3+イオンは、3価を有する阻害金属イオンである。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド」という用語は、天然のヌクレオチドまたはその類似体を指すために使用することができる。例には、リボヌクレオチド三リン酸(rNTP)、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)などのヌクレオチド三リン酸(NTP)、またはジデオキシリボヌクレオチド三リン酸(ddNTP)などの非天然類似体、または可逆的に終端したヌクレオチド三リン酸(rtNTP)が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「ポリエチレンイミン」または「PEI」という用語は、[NCH2CH2]nからなる反復単位を有するポリマーを指す。直鎖ポリエチレンイミンは、一次、二次及び/または三次アミノ基を含有する分岐PEIとは対照的に、全ての二次アミン(すなわち、[NHCH2CH2]n)を含有する。ポリマーは、ポリカチオン形態であり得る。ポリエチレンイミンは、当該技術分野では、ポリ(イミノエチレン)、ポリアジリジン、またはポリ[イミノ(1,2-エタンジイル)]としても知られている。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「ポリメラーゼ」という用語は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、プライマーゼ、及びトランスフェラーゼを含むがこれらに限定されない核酸合成酵素を指すために使用することができる。典型的には、ポリメラーゼは、ヌクレオチド結合及び/またはヌクレオチド重合の触媒作用が起こり得る1つ以上の活性部位を有する。ポリメラーゼは、二本鎖核酸分子の第1の鎖の3’末端へのヌクレオチドの重合を触媒することができる。例えば、ポリメラーゼは、ホスホジエステル結合を介して二本鎖核酸分子の第1の鎖の3’酸素基への次の正しいヌクレオチドの付加を触媒し、それによって二本鎖核酸分子の第1の鎖にヌクレオチドを共有結合的に組み込む。任意に、ポリメラーゼは、本明細書に記載される方法で使用される1つ以上の条件下でヌクレオチドを組み込むことができる必要はない。例えば、変異型ポリメラーゼは、三元複合体を形成することができるが、ヌクレオチドの組み込みを触媒することができない場合がある。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「プライムされたテンプレート核酸」という用語は、鎖の1つが、ポリメラーゼによって伸長できる3’末端を有するような二本鎖領域を有する核酸のハイブリッドを指す。二本鎖は、隣接する核酸分子(例えば、ヘアピン構造)の一部であり得るか、または二本鎖は、互いに共有結合されていない分離可能な分子であり得る。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「プライマー」という用語は、テンプレート配列またはその近くの核酸に結合する配列を有する核酸を指す。一般に、プライマーは、例えば、プライマーのポリメラーゼ伸長を介して、テンプレートの複製を可能にする構成で結合する。プライマーは、核酸分子の第2の部分に結合する核酸分子の第1の部分であり得、第1の部分はプライマー配列であり、第2の部分はプライマー結合配列(例えばヘアピンプライマー)である。代替的に、プライマーは、テンプレート配列を有する第2の核酸分子に結合する第1の核酸分子であり得る(例えば、解離可能なプライマー)。プライマーは、DNA、RNAまたはそれらの類似体からなることができる。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「反応容器」は、ある試薬もしくは反応(例えば、結合反応、組み込み反応など)を別の試薬もしくは反応から分離するか、または反応が起こり得る空間を提供する容器である。本開示の技術に関連して有用な反応容器の非限定的な例としては、フローセル、マルチウェルプレートのウェル、顕微鏡スライド、開管(例えば、毛細管)、閉管(例えば、マイクロ遠心管、試験管、またはEppendorf Tubes(商標))などが挙げられる。結合及び/または組み込み反応中に監視されるべきフィーチャーは、反応容器内に含まれ得る。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「固体支持体」という用語は、水性液体に不溶性である剛性基材を指す。基材は、非多孔質であっても多孔質であってもよい。基材は任意に、(例えば、多孔質のため)液体を取り込むことができるが、典型的には、基材が液体を取り込むときに実質的に膨張せず、液体が乾燥によって除去されるときに実質的に収縮しないように、十分に剛性である。非多孔質固体支持体は一般に、液体またはガスに対して不透過性である。例示的な固体支持体としては、ガラス及び改質または官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、ならびにスチレン及び他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、Teflon(商標)、環状オレフィン、ポリイミドなどを含む)、ナイロン、セラミック、樹脂、Zeonor(登録商標)、シリコン及び改質シリコンを含むシリカまたはシリカベースの材料、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバー束、ならびにポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「三元複合体」という用語は、ポリメラーゼ、二本鎖核酸、及びヌクレオチドの間の分子間会合を指す。典型的には、ポリメラーゼは、次の正しいヌクレオチドとプライムされた核酸のテンプレート鎖との間の相互作用を促進する。次の正しいヌクレオチドは、ワトソンクリック水素結合を介してテンプレート鎖と相互作用することができる。「安定化三元複合体」という用語は、存在が促進または長期化された三元複合体、または破壊が阻害された三元複合体を意味する。一般に、三元複合体の安定化は、三元複合体のプライムされた核酸成分への三元複合体のヌクレオチド成分の共有結合による組み込みを妨げる。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「タイプ」または「種」という用語は、同じ化学構造を共有する分子を識別するために使用される。例えば、ヌクレオチドの混合物は、いくつかのdCTP分子を含み得る。dCTP分子は、互いに同じタイプ(または種)のヌクレオチドであるが、dATP、dGTP、dTTPなどと比較して異なるタイプ(または種)のヌクレオチドであると理解される。同様に、ヌクレオチドの同じ配列を有する個々のDNA分子は、同じタイプ(または種)のDNAであるが、異なる配列のDNA分子は、異なるタイプ(または種)のDNAである。「タイプ」または「種」という用語は、同じ化学構造を共有する部分を識別することもできる。例えば、テンプレート核酸におけるシトシン塩基は、テンプレート配列におけるそれらの位置とは無関係に、互いに同じタイプ(または種)の塩基を有すると理解されるであろう。
【0051】
以下に記載され、特許請求の範囲に記載される実施形態は、上述の定義を考慮して理解することができる。
【0052】
本開示は、プライムされたテンプレート核酸を検出する方法を提供する。方法は、(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、混合物が、三元複合体に存在する同じタイプの過剰なポリメラーゼ及び三元複合体に存在する同じタイプの過剰なヌクレオチドをさらに含む、提供するステップと、(b)過剰なポリメラーゼ及び過剰なヌクレオチドを、Li+を含有する流体で置き換えることと、(c)三元複合体がLi+を含有する流体と接触している間に、三元複合体を検出するステップと、を含むことができる。任意に、方法は、(d)ステップ(c)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定することをさらに含む。Li+の代替または追加として、流体は、ベタイン及び/またはCa2+などの阻害金属イオンを含有することができる。Li+に加えて、流体は、ベタインの有無にかかわらずポリエチレンイミン(PEI)を含有することができる。
【0053】
高濃度の検出可能に標識された成分を使用して、検出される一過性または可逆的三元複合体の形成を駆動することができる。残念なことに、検出可能な標識を有し、特定の複合体の存在下に残る非複合体化試薬は、所望の検出を混乱させるかまたは隠すシグナルを発生させる可能性がある。これは、検出可能な標識によって発生するシグナルが、標識成分(例えば、ポリメラーゼまたはヌクレオチド)が溶液中に遊離しているか、または複合体(例えば、三元複合体)に含まれるかにかかわらず、実質的に類似している場合に特に問題となる。
【0054】
特定の実施形態では、ヌクレオチド濃度は、結合反応混合物中のポリメラーゼ濃度を実質的に上回り、したがって、三元複合体の検出のために標識ヌクレオチドを用いる手順は、三元複合体検出を不明瞭にする高バックグラウンドの影響を特に受けやすい可能性がある。さらに、三元複合体の動的性質(例えば、三元複合体がフラックスの状態にある場合、それらの化学環境において、成分と形成したり解離したり、交換される)は、非複合体化試薬をシステムから除去するために従来の水性洗浄ステップが実施されるとき、三元複合体生成物の検査を複雑にする可能性がある。これは、検出される可逆的複合体が、三元複合体を検査または監視するために使用される期間にわたって不安定であり得るためである。
【0055】
検出可能な標識を含む成分を使用する場合、2つの技術的な問題が多成分複合体の検出に影響する。第1に、標識された非結合成分に由来するシグナルは、特定の複合体の検出を不必要に不明瞭にする可能性がある。第2に、システムから1つ以上の成分を除去するための従来の洗浄は、検出される可逆的複合体の解離を促進する可能性がある。これらの各々は、配列決定データを収集する際の不利点であり得る。
【0056】
複合体を検出しながら結合複合体の安定性を維持することの重要性は、複数の画像がアレイの表面に沿って取得されるアレイに基づく用途の文脈で理解することができる。例えば、フローセルは、光学画像化システムの単一の視野よりも大きい表面積を有するアレイを含むことができる。結果として、光学システムは、走査またはステッピングプロセスによってアレイの異なる部分の画像を取得し得る。監視される一過性複合体が不安定である場合、以前の画像と比較して、後の画像についてより低い品質のデータが取得される可能性がある。本明細書に記載されるように、この問題は、高いシグナル対バックグラウンド比を有するデータの取得を可能にする条件下で複合体を安定化することによって克服され得る。
【0057】
例えば、三元複合体を安定化するための本開示の方法または組成物で使用するための特に有用な薬剤は、リチウムである。他のアルカリ金属と同様に、リチウムは、カチオン(Li+)を形成するために容易に放出される単一価電子を有する。リチウムは、塩形態、例えば、LiClの形態で反応に供給され得る。リチウムは、三元複合体と接触したとき、少なくとも5mM、10mM、25mM、50mM、100mM、250mM以上の濃度であり得る。代替的または追加的に、リチウムは、最大で250mM、100mM、50mM、25mM、10mM、5mM以下の濃度で存在し得る。
【0058】
例えば、三元複合体を安定化するための本開示の方法または組成物で使用するための別の有用な薬剤は、ベタインである。ベタインは、三元複合体と接触したとき、少なくとも1mM、10mM、50mM、100mM、500mM、1M、2M、3M、3.5M以上の濃度であり得る。代替的または追加的に、ベタインは、最大で3.5M、2M、1M、500mM、100mM、50mM、10mM、1mM以下の濃度で存在し得る。ベタインは、安定化効果をもたらすために、Li+と組み合わせて、またはLi+の非存在下で使用され得る。
【0059】
本開示の方法または組成物では、例えば、三元複合体を安定化するために、ポリエチレンイミン(PEI)が使用され得る。PEIは、三元複合体と接触したとき、少なくとも0.0001%、0.001%、0.01%、0.05%、0.1%、1%または5%(w/v)の濃度で存在し得る。代替的または追加的に、PEIは、最大で5%、1%、0.1%、0.05%、0.01%、0.001%または0.0001%(w/v)の濃度で存在し得る。PEIをLi+と組み合わせて使用して、三元複合体に安定化効果をもたらすことができる。PEI及びLi+が一緒に使用される場合、ベタインも任意に存在し得るか、またはベタインは存在しなくてもよい。
【0060】
阻害金属イオンもまた、例えば安定剤として本開示の方法または組成物で使用され得る。特に有用な阻害金属イオンは、Ca2+である。阻害金属イオンは、三元複合体と接触したとき、少なくとも0.1mM、0.5mM、1mM、5mM、10mM、25mM、50mM、100mM以上の濃度であり得る。代替的または追加的に、阻害金属イオンは、最大で100mM、50mM、25mM、10mM、5mM、1mM、0.5mM、0.1mM以下の濃度で存在し得る。Ca2+は、単独で、またはLi+、ベタイン及びPEIのうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。
【0061】
三元複合体を安定化するために使用される溶液、例えば、リチウム、ベタイン、PEI及び/または阻害金属イオンを含有する溶液は、所望のpHで緩衝され得る。例えば、溶液のpHは、少なくとも7.0、7.5、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9または9.0であり得る。代替的または追加的に、緩衝液は、pHを最大で9.0、8.9、8.8、8.7、8.6、8.5、8.4、8.3、8.2、8.1、8.0、7.5または7.0に維持するように選択され得る。有用な緩衝液としては、例えば、MOPS(pKa 7.2)、BES(pKa 7.2)、TES(pKa 7.5)、トリエタノールアミン(pKa 7.8)、EPPSもしくはHEPPS(pKA 8.0)、TRIS(pKa 8.1)、トリセン(pKa 8.1)、グリシルグリシン(pKa 8.3)、ビシン(pKa 8.3)、TAPPS(pKa 8.4)、モルホリン(pKa 8.5)、N-メチルジエタノールアミン(pKa 8.5)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(pKa 8.8)、ジエタノールアミン(pKa 8.9)、またはAMPSO(pKa 9.1)を含む、以下の実施例に記載される緩衝液または所望のpH範囲の適切なpKaを有する緩衝液が挙げられる。緩衝液は、例えば、約25mM~250mM、約25mM~100mM、約40mM~80mM、または他の範囲の三元複合体を安定化するための有効濃度で存在し得る。
【0062】
三元複合体を安定化するために使用される溶液、例えば、リチウム、ベタイン、PEI及び/または阻害金属イオンを含有する溶液は、以下の実施例のセクションに記載される塩などの塩を含み得る。特に有用な塩としては、NaCl、KCl、K-酢酸、NH4-酢酸、K-グルタミン酸、NH4Clまたは(NH4HSO4)が挙げられるが、これらに限定されない。塩は、例えば、少なくとも10mM、25mM、50mM、100mM、250mM以上を含む、三元複合体を安定化するための有効濃度で存在し得る。代替的または追加的に、塩濃度は、最大で250mM、100mM、50mM、25mMまたは10mMであり得る。
【0063】
三元複合体を安定化するために使用される溶液、例えば、リチウム、ベタイン、PEI及び/または阻害金属イオンを含有する溶液は、所望の粘度または分子クラウディングを提供する成分などの他の成分を含み得る。例示的な成分としては、例えば、スクロース、フィコールもしくはデキストランなどのポリサッカライド;リゾチーム、アルブミンもしくはカゼインなどのタンパク質;またはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどのポリマー(PEG 2050、PEG 4600、PEG 6000、PEG 8000、PEG 20000)が挙げられる。粘度または分子クラウディング剤は、少なくとも約0.5%、1%、3%、5%、10%以上の濃度で存在し得る。代替的または追加的に、濃度は、最大で10%、5%、3%、2%、1%、または0.5%であり得る。
【0064】
三元複合体を安定化するための溶液に含まれる他の有用な成分としては、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、アスコルビン酸塩、没食子酸またはそれらの誘導体などの褪色防止試薬または光保護試薬が挙げられる。他の有用な褪色防止試薬または光保護試薬としては、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,993,895号、同第9,115,353号、同第10,036,011号に記載されているものが挙げられる。そのような試薬は、ルミネセンス及び蛍光などの光学方法を介して検出される溶液に存在する場合、特に有用である。本開示の方法は、三元複合体を形成及び検出するための1つ以上のステップを含むことができる。方法の実施形態は、ポリメラーゼがプライムされたテンプレート核酸及び次の正しいヌクレオチドとともに安定化三元複合体を形成することができる特異性を利用する。次の正しいヌクレオチドは、安定化三元複合体に非共有結合で結合でき、非共有相互作用のみを介して複合体の他のメンバーと相互作用する。安定化三元複合体を形成するための有用な方法及び組成物は、以下でさらに詳細に、かつ共同所有の米国特許出願公開第2017/0022553 A1号もしくは第2018/0044727 A1号;米国特許出願公開第2018/0187245 A1号(米国特許出願第62/440,624号の優先権を主張)、または米国特許出願公開第2018/0208983 A1号(62/450,397の優先権を主張)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。典型的には、三元複合体の形成及び検出は、例えば、ステップ間の試薬交換により、プライマーを伸長するステップから分離される。しかしながら、いくつかの実施形態では、結合、検出及び伸長ステップは、同じ混合物中で起こり得る。
【0065】
三元複合体は、特定の触媒金属イオン(例えば、Mg2+)が存在しない場合、ポリメラーゼ、プライムされたテンプレート核酸、及び次の正しいヌクレオチドの間で形成できるが、触媒金属イオンがない場合、ヌクレオチドの化学的付加が阻害される。触媒金属イオンのレベルが低いか不足していると、安定化三元複合体の次の正しいヌクレオチドが非共有結合で隔離される。本明細書に開示される他の方法もまた、安定化三元複合体を生成するために使用され得る。
【0066】
任意に、プライムされたテンプレート核酸のプライマーが、プライマーに入ってくるヌクレオチドの酵素的組み込みを妨げるブロッキング部分(例えば、可逆的ターミネーター部分)を含む場合、安定化三元複合体を形成することができる。相互作用は、安定剤の存在下で起こり得、それにより、ポリメラーゼ-核酸相互作用は、次の正しいヌクレオチドの存在下で安定化される。プライムされたテンプレート核酸のプライマーは、任意に、伸長可能なプライマー、またはその3’末端で伸長からブロックされたプライマーのいずれかであり得る(例えば、ブロッキングは、プライマーの3’末端上の可逆的ターミネーター部分の存在によって達成され得る)。プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ及び同族ヌクレオチドは、同族ヌクレオチドの塩基がプライムされたテンプレート核酸の次の塩基に相補的である場合、安定化三元複合体を形成することができる。
【0067】
上記のように、三元複合体を支持または安定化する条件は、プライマーに入ってくるヌクレオチドの酵素的組み込みを妨げるブロッキング基(例えば、プライマーの3’ヌクレオチド上の可逆的ターミネーター部分)または触媒金属イオンの欠如によってもたらされる。他の有用な条件は、ポリメラーゼ触媒ヌクレオチド組み込みまたは重合を阻害する阻害金属イオン(例えば、二価または三価の阻害金属イオン)などの三元複合体安定剤の存在を含む。阻害金属イオンには、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、ロジウム、ユーロピウム及びテルビウムイオンが含まれるが、これらに限定されない。任意に、二元複合体(すなわち、ポリメラーゼとプライムされた核酸との間の複合体であるが同族ヌクレオチドを欠く)を不支持または不安定にする条件は、1つ以上の一価カチオン及び/またはグルタミン酸アニオンの存在によってもたらされる。安定化条件のさらなる例として、触媒活性が低下するように、または二元複合体形成の傾向が低下するように操作されたポリメラーゼが使用され得る。例示的な操作ポリメラーゼは、米国特許出願公開第2017/0314072 A1号または同第2018/0155698 A1号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
三元複合体安定化条件は、例えば、二元複合体を不安定化することによって、異なるヌクレオチドの存在下でのプライムされたテンプレート核酸に対するポリメラーゼの親和性の差を際立たせることができる。任意に、条件は、異なるヌクレオチドの存在下で、プライムされたテンプレート核酸に対するポリメラーゼの異なる親和性を引き起こす。例として、条件には、高塩及びグルタミン酸イオンが含まれるが、これらに限定されない。例えば、塩は水溶液に溶解して、一価金属カチオン(例えば、ナトリウムイオンまたはカリウムイオン)などの一価カチオンを生成することができる。任意に、一価カチオン(例えば、一価金属カチオン)を提供する塩は、グルタミン酸イオンをさらに提供する。任意に、グルタミン酸イオンの供給源は、グルタミン酸カリウムであり得る。場合によっては、プライムされたテンプレート核酸のポリメラーゼ親和性を変更するために使用できるグルタミン酸カリウムの濃度は、10mM~1.6Mのグルタミン酸カリウム、または10mM~1.6Mの間の任意の量に及ぶ。上記に示されるように、高塩とは、50mM~1.5Mの塩の塩濃度を指す。
【0069】
三元複合体を安定化するために本明細書に記載されている選択肢は、相互に排他的である必要はなく、代わりに様々な組み合わせで使用できることが理解されるであろう。例えば、三元複合体は、ポリメラーゼドメインの架橋の存在;ポリメラーゼの核酸への架橋;三元複合体を安定化するポリメラーゼ変異;少分子によるアロステリック阻害;Li+、PEI、ベタインの存在;非競合的阻害剤、競合的阻害剤もしくは非競合的阻害剤;触媒金属イオンの非存在;プライマー上のブロッキング部分の存在;または本明細書に記載される他の手段が挙げられるがこれらに限定されない、手段の1つまたは組み合わせによって安定化され得る。
【0070】
本明細書の方法または組成物で使用される核酸は、ゲノムDNA、合成DNA、増幅DNA、相補的DNA(cDNA)などのDNAであり得る。mRNA、リボソームRNA、tRNAなどのRNAも使用できる。本明細書では、核酸類似体もテンプレートとして使用できる。したがって、本明細書で使用されるテンプレート核酸は、生物学的供給源、合成供給源、または増幅産物に由来し得る。本明細書で使用されるプライマーは、DNA、RNA、またはそれらの類似体であり得る。
【0071】
特に有用な核酸テンプレートは、ゲノムの一部と同一の配列を含むゲノムフラグメントである。ゲノムフラグメントの集団には、少なくとも5%、10%、20%、30%、または40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のゲノムを含めることができる。ゲノムフラグメントは、例えば、ゲノムの少なくとも約25、50、70、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000、またはそれ以上のヌクレオチドと実質的に同一である配列を有することができる。代替的にまたは付加的に、ゲノムフラグメントは、ゲノムの1×105、1×104、1×103、800、600、400、200、100、75、50、または25ヌクレオチドと実質的に同一であるか、それ以下の配列を有することができる。ゲノムフラグメントは、DNA、RNA、またはそれらの類似体であり得る。
【0072】
核酸が由来し得る例示的な生物には、例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、有蹄動物、馬、羊、豚、ヤギ、牛、猫、犬、霊長類、ヒトもしくは非ヒト霊長類などの哺乳動物、シロイヌナズナ、トウモロコシ、モロコシ、エンバク、小麦、米、キャノーラ、もしくは大豆などの植物、クラミドモナスなどの藻類、Caenorhabditis elegansなどの線虫、キイロショウジョウバエ、蚊、ショウジョウバエ、ミツバチ、クモなどの昆虫、ゼブラフィッシュなどの魚、爬虫類、カエルもしくはアフリカツメガエルなどの両生類、dictyostelium discoideum、ニューモシスティスカリニ、タキフグルブリペス、酵母、サッカロモイセスセレビシエもしくはシゾサッカロミセスポンベなどの真菌、または熱帯熱マラリア原虫からのものが含まれる。核酸は、細菌、大腸菌、ブドウ球菌、肺炎マイコプラズマなどの原核生物、古細菌、C型肝炎ウイルスもしくはヒト免疫不全ウイルスなどのウイルス、またはウイロイドからも誘導できる。核酸は、上記の生物の均質な培養物または集団から、または代替的に、例えば、コミュニティまたは生態系内のいくつかの異なる生物のコレクションから得ることができる。核酸は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、またはAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1998)に記載される方法を含む、当該技術分野において既知の方法を使用して単離され得る。
【0073】
テンプレート核酸は、ゲノム単離、ゲノム断片化、遺伝子クローニング及び/または増幅などの調製方法から取得することができる。テンプレートは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多置換増幅(MDA)などの増幅技術から取得することができる。核酸を単離、増幅、及び断片化して、アレイ上で分析するためのテンプレートを生成する例示的な方法は、米国特許第6,355,431号または第9,045,796号に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。増幅は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、またはAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1998)に記載される方法を使用して行われ得る。
【0074】
様々なポリメラーゼのいずれかを、本明細書に記載される方法で使用され得る。本開示全体を通して例示されるものなどの特定のポリメラーゼへの言及は、別段の指示がない限り、その機能的バリアントを含むと理解されるであろう。ポリメラーゼの特に有用な機能は、既存の核酸をテンプレートとして使用した三元複合体の形成または核酸鎖の重合の触媒作用を含む。本明細書に記載される特定のポリメラーゼ活性または特徴、例えば、Li+、PEI、ベタイン、及び/またはCa2+などの阻害金属イオンなどの特定の試薬によって安定化される三元複合体を形成することは、既知の分類によってグループ化されたポリメラーゼによって共有され得る。特に有用な分類は、A、B、C、D、X、Y及びRTとして同定されるファミリーへのポリメラーゼの分類などの構造的相同性に基づく。ファミリーAのDNAポリメラーゼには、例えば、T7 DNAポリメラーゼ、真核生物ミトコンドリアDNAポリメラーゼγ、E.coli DNA Pol I、Thermus aquaticus Pol I、及びBacillus stearothermophilus Pol Iが挙げられる。ファミリーBのDNAポリメラーゼとしては、例えば、真核生物DNAポリメラーゼα、δ及びε、DNAポリメラーゼζ、T4 DNAポリメラーゼ、Phi 29 DNAポリメラーゼ、及びRB69バクテリオファージDNAポリメラーゼが含まれる。ファミリーCには、例えば、E.coli DNAポリメラーゼIIIアルファサブユニットが含まれる。ファミリーB古細菌DNAポリメラーゼには、例えば、Vent、Deep Vent、Pfu及び9oN(例えば、New England BioLabs Inc.,Ipswich,MAからのTherminator(商標)DNAポリメラーゼ)ポリメラーゼが含まれる。ファミリーDには、例えば、古細菌のEuryarchaeotaサブドメインに由来するポリメラーゼが含まれる。ファミリーXのDNAポリメラーゼには、例えば、真核生物ポリメラーゼPol β、pol σ、Pol λ、及びPol μ、ならびにS.cerevisiae Pol4が含まれる。ファミリーYのDNAポリメラーゼには、例えば、Pol η、Pol ι、Pol κ、E.coli Pol IV(DINB)、及びE.coli Pol V(UmuD’2C)が含まれる。DNAポリメラーゼのRT(逆転写酵素)ファミリーには、例えば、レトロウイルス逆転写酵素及び真核生物テロメラーゼが含まれる。例示的なRNAポリメラーゼには、T7 RNAポリメラーゼなどのウイルスRNAポリメラーゼ;RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、及びRNAポリメラーゼVなどの真核生物RNAポリメラーゼ;ならびに古細菌RNAポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
上記の分類は、例示の目的で提供される。分類システムの変形が可能であることが理解されるであろう。例えば、少なくとも1つの分類システムにおいて、ファミリーCポリメラーゼは、ファミリーXのサブカテゴリとして分類されている。さらに、ポリメラーゼは、機能的または構造的であるかにかかわらず、上記に例示される構造的特徴と重複してもしなくてもよい、他の特徴に従って分類され得る。いくつかの例示的な特徴は、以下にさらに詳細に記載される。
【0076】
本明細書に記載される方法または組成物で使用され得るポリメラーゼは、天然に存在するポリメラーゼ及びそれらの改変されたバリエーションを含み、バリアント、組換え体、融合体、遺伝子改変体、化学的改変体、合成物、及び類似体を含むがこれらに限定されない。三元複合体の形成及び検出に有用なポリメラーゼは、重合反応を触媒する能力を有するポリメラーゼに限定されない。任意に、有用なポリメラーゼは、安定化三元複合体の形成または検査中に使用されない少なくとも1つの条件で重合反応を触媒する能力を有する。任意に、安定化三元複合体に関与するポリメラーゼは、改変された特性、例えば、核酸への強化された結合親和性、核酸への低減された結合親和性、ヌクレオチドへの強化された結合親和性、ヌクレオチドへの低減された結合親和性、次の正しいヌクレオチドへの強化された特異性、次の正しいヌクレオチドへの低減された特異性、低減された触媒速度、触媒不活性などを有する。変異型ポリメラーゼとしては、例えば、1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置き換えられたポリメラーゼ、または1つ以上のアミノ酸の挿入もしくは欠失が挙げられる。安定化三元複合体を形成するために使用され得る例示的なポリメラーゼとしては、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第15/866,353号(現在は米国特許出願公開第2018/0155698 A1号として公開)、または米国特許出願公開第2017/0314072 A1号に記載される野生型及び変異型ポリメラーゼが挙げられる。
【0077】
ポリメラーゼを検出するために使用され得る、外因性標識部分(例えば、外因性フルオロフォア)を含有するポリメラーゼは、いくつかの実施形態において有用であり得る。任意に、タンパク質単離技法を使用して、ポリメラーゼが少なくとも部分的に精製された後に、標識部分が結合され得る。例えば、外因性標識部分は、ポリメラーゼの遊離スルフヒドリルまたは遊離アミン部分を使用して、ポリメラーゼに化学的に連結することができる。これには、システイン残基の側鎖を介した、またはN末端の遊離アミノ基を介した、ポリメラーゼへの化学結合が含まれる。外因性標識部分はまた、タンパク質融合を介してポリメラーゼに結合され得る。タンパク質融合を介して結合できる例示的な標識部分には、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコビリタンパク質(例えば、フィコシアニン及びフィコエリトリン)、またはGFPまたはフィコビリタンパク質の波長シフトバリアントが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ上の外因性標識は、FRETペアのメンバーとして機能することができる。FRETペアの他のメンバーは、安定化三元複合体のポリメラーゼに結合するヌクレオチドに結合している外因性標識であり得る。したがって、安定化三元複合体は、FRETを介して検出または同定できる。
【0078】
代替的に、安定化三元複合体に関与するポリメラーゼは、外因性標識に結合される必要はない。例えば、ポリメラーゼは外因性標識に共有結合する必要はない。その代わり、ポリメラーゼは、それが標識ヌクレオチド及び/または標識核酸(例えば、標識プライマー及び/または標識テンプレート)と会合するまで、標識を欠いていてもよい。
【0079】
本開示に従って作製または使用される三元複合体は、任意に、1つ以上の外因性標識を含み得る。標識は、三元複合体の形成前に、三元複合体の成分に結合(例えば、ポリメラーゼ、テンプレート核酸、プライマー、及び/または同族ヌクレオチドに結合)させることができる。例示的な結合には、共有結合または非共有結合、例えば、本明細書に記載されているか、本明細書で引用される参照文献に記載されるか、または当該技術分野で知られているものが含まれる。いくつかの実施形態では、標識された成分は、非標識成分に結合している固体支持体に溶液で送達され、それにより、安定化三元複合体を形成することにより、標識は固体支持体に動員される。そのため、支持体に結合した成分は、動員された標識の観察に基づいて検出または同定できる。外因性標識は、溶液相で使用する場合でも、固体支持体で使用する場合でも、検査ステップ中に、安定化三元複合体またはその個々の成分を検出するのに有用である。外因性標識は、安定化三元複合体を形成していた他の成分から成分が分離した後、成分に結合されたままとなり得る。例示的な標識、標識を結合するための方法、及び標識された成分を使用するための方法は、以下にさらに詳細に、あるいは共同所有の米国特許出願公開第2017/0022553 A1号もしくは第2018/0044727 A1号、または米国特許出願第15/851,383号(米国特許出願公開第2018/0187245 A1号として公開)、同第15/873,343号(米国特許出願公開第2018/0208983 A1号として公開)、または米国特許出願公開第2018/0208983 A1号(62/450,397及び62/506,759の優先権を主張)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
上述のように、ポリメラーゼの異なる活性は、本明細書に示される方法において利用され得る。ポリメラーゼは、例えば、検査ステップの一方もしくは両方において、または、以下にさらに詳細に記載されるように、伸長ステップにおいて有用であり得る。様々な活性が、構造の違いに従い得る(例えば、天然の活性、変異、または化学修飾による)。それにもかかわらず、ポリメラーゼは、様々な既知の供給源から得ることができ、本明細書に記載されている教示及び認められているポリメラーゼの活性に従って適用することができる。有用なDNAポリメラーゼには、細菌DNAポリメラーゼ、真核生物DNAポリメラーゼ、古細菌DNAポリメラーゼ、ウイルスDNAポリメラーゼ、及びファージDNAポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。細菌DNAポリメラーゼには、E.coli DNAポリメラーゼI、II、III、IV、V、E.coli DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント、Clostridium stercorarium(Cst)DNAポリメラーゼ、Clostridium thermocellum(Cth)DNAポリメラーゼ、及びSulfolobus solfataricus(Sso)DNAポリメラーゼが含まれる。真核生物DNAポリメラーゼには、DNAポリメラーゼα、β、γ、δ、ε、η、ζ、λ、σ、μ、及びk、ならびにRev1ポリメラーゼ(ターミナルデオキシシチジルトランスフェラーゼ)及びターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)が含まれる。ウイルスDNAポリメラーゼには、T4 DNAポリメラーゼ、phi-29 DNAポリメラーゼ、GA-l、phi-29様DNAポリメラーゼ、PZA DNAポリメラーゼ、phi-15 DNAポリメラーゼ、Cpl DNAポリメラーゼ、Cp7 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、及びT4ポリメラーゼが含まれる。その他の有用なDNAポリメラーゼには、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermus filiformis(Tfi)DNAポリメラーゼ、Thermococcus zilligi(Tzi)DNAポリメラーゼ、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus flavusu(Tfl )DNAポリメラーゼ、Pyrococcus woesei(Pwo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ及びTurbo Pfu DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(Tli)DNAポリメラーゼ、パイロコッカス属GB-Dポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Bacillus stearothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus Kodakaraensis(KOD)DNAポリメラーゼ、Pfx DNAポリメラーゼ、サーモコッカス属JDF-3(JDF-3)DNAポリメラーゼ、Thermococcus gorgonarius(Tgo)DNAポリメラーゼ、Thermococcus acidophilium DNAポリメラーゼ;Sulfolobus acidocaldarius DNAポリメラーゼ、サーモコッカス属N-7 DNAポリメラーゼ、Pyrodictium occultum DNAポリメラーゼ、Methanococcus voltae DNAポリメラーゼ、Methanococcus thermoautotrophicum DNAポリメラーゼ、Methanococcus jannaschii DNAポリメラーゼ、Desulfurococcus株TOK DNAポリメラーゼ(D.Tok Pol)、Pyrococcus abyssi DNAポリメラーゼ、Pyrococcus horikoshii DNAポリメラーゼ、Pyrococcus islandicum DNAポリメラーゼ、Thermococcus fumicolans DNAポリメラーゼ、Aeropyrum pernix DNAポリメラーゼ、及びヘテロダイマーDNAポリメラーゼDP1/DP2などの熱安定性及び/または好熱性DNAポリメラーゼが含まれる。操作及び改変されたポリメラーゼもまた、開示された技法に関連して有用である。例えば、高度に好熱性の海洋古細菌Thermococcus種9°Nの改変バージョン(例えば、New England BioLabs Inc.,Ipswich,MAからのTherminator(商標)DNAポリメラーゼ)を使用することができる。3PDXポリメラーゼを含むさらに他の有用なDNAポリメラーゼは、US8,703,461に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
有用なRNAポリメラーゼには、T7 RNAポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ、及びKllポリメラーゼなどのウイルスRNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、及びRNAポリメラーゼVなどの真核生物のRNAポリメラーゼ、ならびに古細菌RNAポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
別の有用なタイプのポリメラーゼは、逆転写酵素である。例示的な逆転写酵素には、ヒト免疫不全ウイルス1型(PDB 1HMV)由来のHIV-1逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルス2型由来のHIV-2逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス由来のM-MLV逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルスのAMV逆転写酵素、及び真核生物の染色体のテロメアを維持するテロメラーゼ逆転写酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
固有の3’-5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、いくつかの実施形態に有用であり得る。3’-5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いているポリメラーゼはまた、いくつかの実施形態、例えば、ほとんどの遺伝子型決定及び配列決定の実施形態において有用である。エキソヌクレアーゼ活性の欠如は、野生型の特徴、またはバリアントもしくは操作されたポリメラーゼ構造によって付与される特徴であり得る。例えば、エキソマイナスクレノウフラグメントは、クレノウフラグメントの変異バージョンであり、3’-5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を欠く。クレノウフラグメント及びそのエキソマイナスバリアントは、本明細書に記載される方法または組成物において有用であり得る。
【0084】
安定化三元複合体は、方法の特定の用途または構成に適合するように所望されるように、天然ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、または修飾ヌクレオチドを含むことができる。必要に応じて、ヌクレオチド類似体は、窒素塩基、五炭糖、及びリン酸基を有し、ヌクレオチドの任意の部分は、天然ヌクレオチドと比較して、改変、欠失及び/または置換され得る。ヌクレオチド類似体は、組み込み不可能なヌクレオチド(すなわち、プライマーの3’酸素と反応して共有結合を形成することができないヌクレオチド)であり得る。組み込むことができないそのようなヌクレオチドには、例えば、一リン酸及び二リン酸のヌクレオチドが含まれる。別の例では、ヌクレオチドは、ヌクレオチドを組み込み不可能にする三リン酸基への修飾(複数可)を含み得る。組み込み不可能なヌクレオチドの例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,482,120号に見出し得る。いくつかの実施形態では、組み込み不可能なヌクレオチドは、その後、組み込み可能になるように修飾され得る。組み込み不可能なヌクレオチド類似体には、アルファ-リン酸修飾ヌクレオチド、アルファ-ベータヌクレオチド類似体、ベータ-リン酸修飾ヌクレオチド、ベータ-ガンマヌクレオチド類似体、ガンマ-リン酸修飾ヌクレオチド、またはケージドヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチド類似体のさらなる例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,071,755号に記載されている。
【0085】
例えば、安定化三元複合体に関与するために本明細書で使用されるヌクレオチド類似体は、類似体がプライマーに組み込まれた後、プライマーの3’末端でのその後のヌクレオチド組み込みを可逆的に防止するターミネーターを含むことができる。例えば、米国特許第7,544,794号及び米国特許第8,034,923号(これらの特許の開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、3’-OH基が3’-ONH2部分により置換されている可逆的ターミネーターを記載する。別のタイプの可逆的ターミネーターは、例えば、米国特許第8,808,989号(その開示は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるように、ヌクレオチドの窒素含有塩基に連結される。本明細書に記載される方法に関連して同様に使用できる他の可逆的ターミネーターには、本明細書のいずこかまたは米国特許第7,956,171号、米国特許第8,071,755号、及び米国特許第9,399,798号に引用されている参考文献に記載されているものが含まれる(これらの米国特許の開示は参照により本明細書に組み入れられる)。特定の実施形態では、可逆的ターミネーター部分は、「脱ブロッキング」として知られるプロセスによってプライマーから除去することができ、その後のヌクレオチド組み込みを可能にする。脱ブロッキングのための組成物及び方法は、可逆的ターミネーターとの関連で本明細書に引用される参考文献に示されている。
【0086】
代替的に、ヌクレオチド類似体は、それらが組み込まれているプライマーの3’末端でのヌクレオチドの組み込みを不可逆的に防止する。不可逆的なヌクレオチド類似体には、2’、3’-ジデオキシヌクレオチド(ddGTP、ddATP、ddTTP、ddCTPなどのddNTP)が含まれる。ジデオキシヌクレオチドはdNTPの3’-OH基を欠いていて、そうでないときには、ポリメラーゼが介在するプライマー伸長に関与する。したがって、3’位は、天然のヒドロキシル部分の代わりに水素部分を有する。不可逆的に終端したヌクレオチドは、遺伝子型決定用途、またはテンプレート核酸に沿ったプライマー伸長や逐次検出が望ましくない他の用途に特に有用である。
【0087】
特定の実施形態では、例えば、安定化三元複合体に関与するために本明細書で使用されるヌクレオチド類似体は、類似体がプライマーに組み込まれた後、プライマーの3’末端でのその後のヌクレオチド組み込みを防止するブロッキング基(例えば、可逆的ターミネーター)を含まない。これは、ブロッキング基(例えば、可逆的ターミネーター)を有するヌクレオチド(複数可)を使用して伸長ステップが行われるかどうかにかかわらず当てはまり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、例えば、三元複合体の形成に関与するために本明細書で使用されるヌクレオチドは、外因性標識を含み得る。例えば、外因的に標識されたヌクレオチドは、可逆的または不可逆的なターミネーター部分を含み得、外因的に標識されたヌクレオチドは、組み込み不可能であり得、外因的に標識されたヌクレオチドは、ターミネーター部分を欠き得、外因的に標識されたヌクレオチドは、組み込み可能であり得るか、または外因的に標識されたヌクレオチドは、組み込み可能であるものと終端していないものの両方であり得る。外因的に標識されたヌクレオチドは、標識されていないポリメラーゼと安定化三元複合体を形成するために使用される場合に特に有用であり得る。代替的に、ヌクレオチド上の外因性標識は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対の一方のパートナーを提供することができ、ポリメラーゼ上の外因性標識は、対の第2のパートナーを提供することができる。このように、FRET検出は、両方のパートナーを含む安定化三元複合体を同定するために使用できる。
【0089】
代替的に、例えば、三元複合体の形成に関与するために本明細書で使用されるヌクレオチドは、外因性標識を欠く可能性がある(すなわち、ヌクレオチドは「非標識」であり得る)。例えば、非標識ヌクレオチドは、可逆的または不可逆的なターミネーター部分を含み得、非標識ヌクレオチドは、組み込み不可能であり得、非標識ヌクレオチドは、ターミネーター部分を欠き得、非標識ヌクレオチドは、組み込み可能であり得るか、または非標識ヌクレオチドは、組み込み可能であるものと終端していないものの両方であり得る。非標識ヌクレオチドは、安定化三元複合体を検出するためにポリメラーゼ上の標識が使用される場合、または無標識検出が使用される場合に有用である。非標識ヌクレオチドはまた、本明細書に記載される方法の伸長ステップにおいて有用であり得る。ヌクレオチドの部分または機能がないことは、そのような機能または部分を持たないヌクレオチドを指すことが理解されるであろう。しかしながら、ヌクレオチドまたはその類似体について本明細書に記載されている、またはそうでなくてもヌクレオチドまたはその類似体について当技術分野で知られている機能または部分の1つ以上は、本明細書に記載される方法または組成物において具体的に省略できることも理解されるであろう。
【0090】
任意に、ヌクレオチド(例えば、天然ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体)は、安定化三元複合体の形成の間またはその後に、混合物中に存在する。例えば、少なくとも1、2、3、4種類、またはそれ以上のヌクレオチドタイプが存在し得る。代替的に、または追加的に、多くとも4、3、2、または1種類のヌクレオチドが存在し得る。同様に、存在する1種類以上のヌクレオチドタイプは、テンプレート核酸の少なくとも1、2、3、または4種類の塩基タイプに相補的であり得る。代替的に、または追加的に、存在する1種類以上のヌクレオチドタイプは、テンプレート核酸中の多くとも4、3、2、または1種類の塩基タイプに相補的であり得る。異なる塩基の種類は、異なるヌクレオチド上の異なる外因性標識の存在によって同定可能であり得る。代替的に、2種類以上のヌクレオチドタイプは、区別できない外因性標識を有する場合がある。それにもかかわらず、後者の形式では、異なるヌクレオチドは、反応容器に別々に送達されるため、または例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第15/922,787号(米国特許出願公開第2018/0305749 A1号として公開)、もしくは米国特許第9,951,385号に記載されるコード化及び解読スキームにより、区別され得る。
【0091】
三元複合体においてポリメラーゼを安定化する任意のヌクレオチド修飾は、本明細書に開示される方法において使用され得る。ヌクレオチドは、永久的または一時的にポリメラーゼに結合することができる。任意に、ヌクレオチド類似体は、例えば、共有リンカーを介して、ポリメラーゼに融合される。任意に、複数のヌクレオチド類似体は複数のポリメラーゼに融合され、各ヌクレオチド類似体は異なるポリメラーゼに融合される。任意に、安定化三元複合体に存在するヌクレオチドは、三元複合体が安定化される手段ではない。したがって、ヌクレオチド類似体を利用する反応において、様々な他の三元複合体安定化方法のいずれかを組み合わせることができる。
【0092】
特定の実施形態では、安定化三元複合体に存在するプライムされたテンプレート核酸のプライマー鎖は、本明細書に記載される方法の1つ以上ステップ中に存在するポリメラーゼによって化学的に変化しない。例えば、プライマーは、新しいホスホジエステル結合の形成によって伸長される必要はなく、安定化三元複合体を形成するためのステップ中、または安定化三元複合体を検出するためのステップ中に核酸分解によって短縮される必要もない。
【0093】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態は、いくつかの成分を含む混合物を形成するステップを含む。混合物の成分は、任意の所望の順序で容器に送達され得るか、またはそれらは同時に送達され得る。さらに、いくつかの成分を互いに混合して、第1の混合物を形成し、その後、他の成分と接触させて、より複雑な混合物を形成することができる。プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ及び複数の異なるヌクレオチドタイプを含む混合物を形成するステップを例にとると、複数の異なるヌクレオチドタイプは、プライムされたテンプレート核酸との接触の前に互いと接触させることができることが理解されるであろう。代替的に、2種類以上のヌクレオチドタイプが、プライムされたテンプレート核酸及び/またはポリメラーゼに別々に送達され得る。したがって、第2のヌクレオチドタイプと接触させる前に、第1のヌクレオチドタイプをプライムされたテンプレート核酸と接触させることができる。代替的に、または追加的に、第1のヌクレオチドタイプは、第2のヌクレオチドタイプと接触させる前に、ポリメラーゼと接触させることができる。
【0094】
特定の実施形態では、ポリメラーゼ及びヌクレオチドは、三元複合体を安定化するために使用される流体に可溶性である。例えば、安定化流体は、有利には水性流体であり得る。安定化流体は、ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドを可溶化しない溶媒を欠く可能性がある。例えば、三元複合体安定化流体は、ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドを可溶化しないアルコールまたは油を欠いている可能性がある。ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドを可溶化しない例示的な流体は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第16/164,417号(米国特許出願第62/574,308号の優先権を主張)に記載されている。いくつかの実施形態では、三元複合体安定化流体は、固定化三元複合体から非複合体化ヌクレオチドまたはポリメラーゼを除去するための洗浄液として機能することができる。
【0095】
三元複合体安定化流体は、三元複合体と接触する前に、三元複合体の結合反応の1つ以上の成分を欠いている可能性がある。例えば、Li+、PEI、ベタインまたは阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)を含有する安定化流体は、三元複合体と接触する前に、ポリメラーゼまたはヌクレオチドを欠いている可能性がある。したがって、安定化流体は、以前に三元複合体を形成するように機能した結合反応から過剰なポリメラーゼまたはヌクレオチドを除去するための洗浄液として機能することができる。特定の実施形態では、安定化流体中の三元複合体の濃度は、流体中の遊離ヌクレオチド及び/またはポリメラーゼの濃度よりも大きい。この流体中の遊離ヌクレオチド及びポリメラーゼは、三元複合体に存在するのと同じタイプであり得る。三元複合体形成中に、Li+、PEI、ベタイン、阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)または他の三元複合体安定剤が存在し得ることが理解されるであろう。代替的に、三元複合体安定剤は、既に形成されている三元複合体に導入され得る。
【0096】
三元複合体は、複合体の1つ以上の成分上の外因性標識の存在を介して検出され得る。有用な外因性標識の例には、放射性標識部分、発光団部分、フルオロフォア部分、量子ドット部分、発色団部分、酵素部分、電磁スピン標識部分、ナノ粒子光散乱部分、及び当技術分野で知られている他の様々なシグナル生成部分のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。適切な酵素部分には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれる。例示的なフルオロフォア部分としては、ロードール;レゾルフィン;クマリン、キサンテン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、エリスリン;シアニン;フタルアルデヒド;ナフチルアミン;フルオレスカミン;ベンゾオキサジアゾール;スチルベン;ピレン;インドール;ボラポリアザインダセン;キナゾリノン;エオシン;エリスロシン;マラカイトグリーン;CY染料(GE Biosciences)(Cy3(及びその誘導体)ならびにCy5(及びその誘導体)を含む);DYOMICS及びDYLIGHT染料(Dyomics)(DY-547、DY-630、DY-631、DY-632、DY-633、DY-634、DY-635、DY-647、DY-649、DY-652、DY-678、DY-680、DY-682、DY-701、DY-734、DY-752、DY-777及びDY-782を含む);ルシファーイエロー;カスケードブルー;テキサスレッド;BODIPY(ホウ素-ジピロメテン)(分子プローブ)染料(BODIPY 630/650及びBODIPY 650/670を含む);ATTO染料(Atto-Tec)(ATTO 390、ATTO 425、ATTO 465、ATTO 610 611X、ATTO 610、ATTO 635を含む);ALEXA FLUORS(ALEXA FLUOR 633、ALEXA FLUOR 647、ALEXA FLUOR 660、ALEXA FLUOR 700、ALEXA FLUOR 750及びALEXA FLUOR 680を含む)(分子プローブ);DDAO(7-ヒドロキシ-9H-(1,3-ジクロロ-9,9-ジメチルアクリジン-2-オン、またはその任意の誘導体)(分子プローブ);QUASAR染料(Biosearch);IRDYES染料(LiCor)(IRDYE 700DX(NHSエステル)、IRDYE 800RS(NHSエステル)、及びIRDYE 800CW(NHSエステル)を含む);EVOBLUE染料(Evotech Biosystems);JODA 4染料(Applied Biosystems);HILYTE染料(AnaSpec);MR121及びMR200染料(Roche);Hoechst染料33258及び33242(Invitrogen);FAIR OAKS RED(分子デバイス);SUNNYVALE RED(分子デバイス);LIGHT CYCLER RED(Roche);EPOCH(Glen Research)染料(EPOCH REDMOND RED、EPOCH YAKIMA YELLOW、EPOCH GIG HARBOR GREENを含む);トーキョーグリーン(M.Kamiya,et al.,2005 Angew.Chem.Int.Ed.44:5439-5441);及びCF染料(CF 647及びCF555を含む)(Biotium)、ならびにPrinciples of Fluorescence Spectroscopy,Joseph R.Lakowicz(Editor),Plenum Pub Corp,2nd edition(July 1999)、及びthe 6th Edition of Molecular Probes Handbook by Richard P.Hoaglandに記載されるものなどの当該技術分野において既知のその他が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本開示の方法では二次標識を使用することができる。二次標識は、パートナー部分に特異的に結合できる結合部分である。例えば、リガンド部分をポリメラーゼ、核酸、またはヌクレオチドに結合させて、標識された受容体に対する特異的親和性を介した検出を可能にすることができる。使用することができる例示的な結合部分の対には、限定されないが、抗原と免疫グロブリンまたはそれらの活性フラグメント、例えばFAb、免疫グロブリンと免疫グロブリン(またはそれぞれ活性フラグメント)、アビジンとビオチン、またはアビジンに特異性を有するその類似体、ストレプトアビジンとビオチン、またはストレプトアビジンに特異性を有するそれらの類似体、または炭水化物とレクチンが含まれる。
【0098】
いくつかの実施形態では、二次標識は、化学的に修飾可能な部分であり得る。この実施形態では、反応性官能基を有する標識を、安定化三元複合体に組み込むことができる。続いて、官能基を一次標識部分と共有結合的に反応させることができる。好適な官能基には、アミノ基、カルボキシ基、マレイミド基、オキソ基、クリック反応に関与する基、及びチオール基が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
標識は、リンカーを介してヌクレオチド、ポリメラーゼまたは他の分子に結合され得る。ヌクレオチドまたはポリメラーゼに存在するリンカーは、開裂可能であり得るが、そうである必要はない。例えば、リンカーは、本明細書に記載される方法の任意の特定のステップ中、または全てのステップ全体を通して、リンカーの共有結合構造が変化しないように、本明細書に記載される方法で使用される条件に対して安定であり得る。ヌクレオチド類似体に存在するリンカーは、類似体中の1つ以上の他の部分と少なくとも同様に化学的に安定であり得る。例えば、リンカーは、本明細書に記載される方法の任意の特定のステップ中、または全てのステップ全体を通して、窒素塩基、糖及び/またはリン酸部分と同様に化学的に安定であり得る。
【0100】
別の実施形態では、三元複合体は外因性標識を欠く可能性がある。例えば、安定化三元複合体及び安定化三元複合体に関与する全ての成分(例えば、ポリメラーゼ、テンプレート核酸、プライマー及び/または同族ヌクレオチド)は、本明細書、または本明細書に引用され、組み込まれる参考文献に記載される外因性標識の1つ、いくつかまたは全てを欠く可能性がある。そのような実施形態では、三元複合体は、質量、電荷、固有の光学特性などのような、安定化三元複合体の固有の特性に基づいて検出することができる。非標識三元複合体を検出するための例示的な方法は、共同所有の米国特許出願公開第2017/0022553 A1号、PCT出願第PCT/US16/68916号(WO 2017/117243 A1として公開)、または米国特許出願第62/375,379号(現在は米国特許出願公開第2018/0044727 A1号として公開)、または15/677,870(米国特許出願公開第2018/0044715 A1号として公開)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
一般に、検出は、検査ステップにおいて、三元複合体またはそれに結合した標識部分に固有の特性を感知する方法によって達成することができる。検出の基礎となることができる例示的な特性には、質量、導電率、エネルギー吸収、ルミネセンス(例えば、蛍光)などが含まれるが、これらに限定されない。発光の検出は、核酸アレイに関する当該技術分野で既知の方法を使用して実施することができる。発光団は、例えば、発光波長、励起波長、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)強度、消光、異方性、または寿命を含む、様々な発光特性のいずれかに基づいて検出することができる。本明細書に記載される方法で使用することができる他の検出技術には、例えば、質量を感知するために使用することができる質量分析、表面への結合を感知するために使用できる表面プラズモン共鳴、標識が吸収するエネルギーの波長を感知するために使用できる吸光度、標識の存在による温度の変化を感知するために使用できる熱量測定、標識の電気特性を感知するために使用できる電気コンダクタンスまたはインピーダンス、または他の既知の分析技術が含まれる。安定化三元複合体を作成、操作及び検出するために使用され得る試薬及び条件の例には、例えば、共同所有の米国特許出願公開第2017/0022553 A1号、PCT出願第PCT/US16/68916号(WO 2017/117243 A1として公開)、または米国特許出願第15/677,870号(米国特許出願公開第2018/0044715 A1号として公開)、同第15/851,383号(米国特許出願公開第2018/0187245 A1号として公開)、同第15/873,343号(米国特許出願公開第2018/0208983 A1号として公開)、米国特許出願公開第2018/0208983 A1号(62/450,397及び62/506,759の優先権を主張)に記載されているものが含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
三元複合体の検出は、異なるタイプの反応混合物で行われ得るが、一般に、三元複合体を安定化する条件下で行われる。条件はまた、標識された種(例えば、標識ヌクレオチド)の濃度を、三元複合体を形成するために使用されたレベル未満に低減するように選択され得る。任意に、検査ステップまたはサブステップは、非複合体化標識ヌクレオチド及びポリメラーゼの非存在下で、プライムされたテンプレート核酸とポリメラーゼ及び同族ヌクレオチドの相互作用を検出することを伴う。任意に、検査ステップまたはサブステップは、非結合ヌクレオチドが安定化流体を使用して三元複合体との接触から除去された後に、安定化三元複合体中で標識されたヌクレオチドを検出することを伴う。三元複合体の形成は、三元複合体に関与するヌクレオチドに結合した標識を検出または監視することによって検出または監視され得る。任意に、三元複合体の形成の非存在が検出または監視される。任意に、三元複合体の解離が監視される。
【0103】
三元複合体を検出するためのステップは、三元複合体安定化流体を使用して行われる洗浄ステップ中に行われ得る。安定化流体は、Li+、PEI、ベタインまたは阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)を含有することができる。任意に、安定化流体は、検出ステップ中に静的に保持される(すなわち、移動または流動しない)。しかしながら、流体は、例えば、検出される三元複合体を含むフローセルを通って流れることができる。有利に、洗浄ステップ中の三元複合体の検出は、検出可能な標識を有し得る非結合ヌクレオチドまたはポリメラーゼと関連するバックグラウンドシグナルを低減することができる。この場合もやはり、このアプローチによって、三元複合体検出は、標識ヌクレオチド(複数可)をプライムされたテンプレート核酸分子に提供した反応混合物とは異なる反応混合物中で行われ得、これは任意に、可逆的ターミネーター部分でその3’末端においてブロックされ得る。
【0104】
安定化三元複合体の検査及び検出は、異なる方法で達成され得る。例えば、監視は、複合体の成分のうちの2つ以上の間の相互作用のための会合速度を測定することを含むことができる。相互作用を監視することは、平衡結合シグナルまたは平衡結合定数を測定することを含むことができる。したがって、例えば、監視は、標識ヌクレオチドのうちの1つ以上の存在下での平衡結合シグナルまたは平衡結合定数を測定することを含み得る。相互作用を監視することは、例えば、4つのヌクレオチドのうちのいずれか1つの存在下で、プライムされたテンプレート核酸からのヌクレオチドの解離速度を測定することを含むことができる。任意に、ヌクレオチド分子の存在下でプライムされたテンプレート核酸分子とポリメラーゼの相互作用を監視することは、閉鎖複合体の解離の速度を測定することを含む。会合、平衡及び解離速度を測定するための技術は既知であり、当業者によって本明細書に記載される方法で使用するために容易に修正され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Markiewicz et al.,Nucleic Acids Research 40(16):7975-84(2012)、Xia et al.,J.Am.Chem.Soc.135(1):193-202(2013)、Brown et al.,J.Nucleic Acids,Article ID 871939,11 pages(2010)、Washington,et al.,Mol.Cell.Biol.24(2):936-43(2004)、Walsh and Beuning,J.Nucleic Acids,Article ID 530963,17 pages(2012)、及びRoettger,et al.,Biochemistry 47(37):9718-9727(2008)を参照されたい。検出技術は、典型的には単一の時点取得であると理解されるように、比較的短い継続期間にわたってシグナルを蓄積することができることが理解されるであろう。代替的に、時間ベースの取得に典型的なように、シグナルは経時的に連続的に監視され得る。また、一連の時点を周期的に取得して、時間ベースの取得を得ることもできる。
【0105】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態は、安定化三元複合体を互いに区別するため、及び/またはテンプレート核酸中の1種類の塩基タイプを別の塩基タイプから区別するために2つ以上の区別可能なシグナルを利用する。例えば、2つ以上の発光団は、励起のための固有の波長または発光の固有の波長などの固有の光学特性に基づいて互いに区別することができる。特定の実施形態では、方法は、発光強度の差に基づいて、異なる安定化三元複合体を区別することができる。例えば、第1の三元複合体は、第2の三元複合体よりも低い強度で発光する状態で検出することができる。このような強度スケーリング(しばしば「グレースケーリング」と呼ばれる)は、任意の識別可能な強度の違いを利用できる。例示的な差異には、検出される別の安定化三元複合体の強度と比較して、10%、25%、33%、50%、66%、または75%の強度を有する特定の安定化三元複合体が含まれる。
【0106】
強度の違いは、それぞれが異なる消衰係数(すなわち、異なる励起特性をもたらす)及び/または異なる発光量子収量(すなわち、異なる発光特性をもたらす)を有する異なる発光団の使用に起因し得る。代替的に、同じ発光団タイプを使用することができるが、異なる量で存在することができる。例えば、三元複合体の第1の集団の全てのメンバーは、特定の発光団で標識することができるが、第2の集団は、発光団で標識されたそのメンバーの半分だけを有する。この例では、第2の集団は第1の集団のシグナルの半分を生成すると予想される。第2の集団は、例えば、標識されたヌクレオチドと非標識ヌクレオチド(主に標識されたヌクレオチドを含む第1の集団とは対照的)の混合物を使用することにより生成され得る。同様に、第2の集団は、例えば、標識されたポリメラーゼと非標識ポリメラーゼ(主に標識されたポリメラーゼを含む第1の集団とは対照的)の混合物を使用することにより生成され得る。代替的な標識スキームでは、三元複合体の第1の集団は、特定の発光シグナルを生成する複数の標識を有するポリメラーゼ分子を含むことができ、三元複合体の第2の集団は、発光シグナルを生成する標識のうちの1つのみをそれぞれ有するポリメラーゼ分子を含むことができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、検査ステップは、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、共同所有の米国特許第9,951,385号、または米国特許出願第15/922,787号(米国特許出願公開第2018/0305749 A1号として公開)に記載されているように、少なくとも1種類のヌクレオチドタイプの同定が帰属されるように行われる。例えば、検査ステップは、(a)三元複合体安定化条件下で、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、ならびにテンプレート中の第1、第2及び第3の塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む流体を提供するステップと、(b)任意に、流体から非結合ポリメラーゼ及び非結合ヌクレオチドを除去するステップと、(c)流体(Li+、PEI、ベタイン及び/または阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)を含む)を検査して、三元複合体が形成されたかどうかを判定するステップと、(d)プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しいヌクレオチドを同定するステップであって、ステップ(c)で三元複合体が検出された場合、次の正しいヌクレオチドが、第1、第2または第3の塩基タイプの同族体として同定され、ステップ(c)で三元複合体が存在しないことに基づいて、次の正しいヌクレオチドが、第4の塩基タイプのヌクレオチド同族体であると推定されるステップと、を含むことができる。
【0108】
帰属を使用することの代わりに、またはそれに加えて、検査ステップは、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、共同所有の米国特許第9,951,385号または米国特許出願第15/922,787号(米国特許出願公開第2018/0305749 A1号として公開)に記載されているように、解読または明確化スキームを使用して、1種類以上のヌクレオチドタイプを同定することができる。例えば、検査は、(a)三元複合体安定化条件下で、プライムされたテンプレート核酸をポリメラーゼ及びヌクレオチドの第1の混合物と接触させることであって、第1の混合物が、第1の塩基タイプのヌクレオチド同族体及び第2の塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む、接触させることと、(b)三元複合体安定化条件下で、プライムされたテンプレート核酸をポリメラーゼ及びヌクレオチドの第2の混合物と接触させることであって、第2の混合物が、第1の塩基タイプのヌクレオチド同族体及び第3の塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む、接触させることと、(c)プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ及び次の正しいヌクレオチドを含む三元複合体によって発生するシグナルについて、ステップ(a)及び(b)の生成物を検査することであって、ステップ(a)の生成物について取得されたシグナルが、第1及び第2の塩基タイプについて不明瞭であり、ステップ(b)の生成物について取得されたシグナルが、第1及び第3の塩基タイプについて不明瞭であり、ステップ(a)及び(b)の生成物が、Li+、PEI、ベタイン及び/または阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)の存在下で検査される、検査することと、(d)次の正しいヌクレオチドに結合する塩基のタイプを同定するために、ステップ(c)で取得したシグナルを明確化すること、とによって行われ得る。任意に、明確化を実現するために、(i)第1の塩基タイプはステップ(a)の生成物についてのシグナルの存在とステップ(b)の生成物のシグナルの存在とに相関し、(ii)第2の塩基タイプはステップ(a)の生成物についてのシグナルの存在とステップ(b)の生成物のシグナルの非存在とに相関し、(iii)第3の塩基タイプは、ステップ(a)の生成物についてのシグナルの非存在とステップ(b)の生成物についてのシグナルの存在とに相関する。任意に、ステップ(c)の前に、ステップ(a)及び(b)の生成物から非結合ポリメラーゼ及び/または非結合ヌクレオチドが除去される。
【0109】
開示される技術は、DNA配列決定分野で使用される様々な他の技術に対する優位性を提供する。例えば、ポリメラーゼまたはプライムされたテンプレート核酸上に標識(例えば、FRETパートナー)が存在する必要はない。実際、ある特定の実施形態において、ポリメラーゼは標識されていないか、または三元複合体において同族もしくは非同族ヌクレオチドを同定するために使用される任意のシグナルを発生させない。本開示の方法で三元複合体を検出可能にするために、シグナルエネルギー(例えば、FRET)が、ポリメラーゼと標識ヌクレオチドとの間で移動する必要はない。本明細書の方法で用いられる検出可能なヌクレオチドの標識または染料は、三元複合体に関与するとそのシグナル発生特性(例えば、蛍光出力)を変化させるインターカレート染料である必要はない(例えば、U.S.8,399,196に開示されるインターカレート染料ではない)。同様に、標識ヌクレオチド上に存在する標識または染料は、それが三元複合体に存在する同族ヌクレオチドである場合、スペクトル特性を変化させる立体構造感受性染料である必要はない。
【0110】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、プライマーを伸長するステップを含むことができる。例えば、プライムされたテンプレート核酸を検出する方法は、(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、混合物が、三元複合体に存在する同じタイプの過剰なポリメラーゼ及び三元複合体に存在する同じタイプの過剰なヌクレオチドをさらに含む、提供するステップと、(b)過剰なポリメラーゼ及び過剰なヌクレオチドを、Li+、PEI、ベタイン及び/または阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)を含有する流体で置き換えることと、(c)三元複合体が安定剤を含有する流体と接触している間に、三元複合体を検出するステップと、(d)ステップ(c)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定するステップと、(e)プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップと、を含むことができる。任意に、方法は、(f)プライムされたテンプレート核酸の代わりに、伸長したプライマーを有するプライムされたテンプレート核酸を使用して、ステップ(a)~(e)を繰り返すステップをさらに含むことができる。
【0111】
プライマー伸長ステップを含む方法のさらに別の例では、方法のステップは、(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、混合物が、三元複合体に存在する同じタイプの過剰なヌクレオチドをさらに含む、提供するステップと、(b)過剰なヌクレオチドを、Li+、PEI、ベタイン及び/または阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)を含有する流体で置き換えることと、(c)三元複合体がLi+、PEI、ベタイン及び/または阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)を含有する流体と接触している間に、三元複合体を検出するステップと、(d)ステップ(c)の結果から、プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定するステップと、(e)プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップと、を含むことができる。任意に、方法は、(f)プライムされたテンプレート核酸の代わりに、伸長したプライマーを有するプライムされたテンプレート核酸を使用して、ステップ(a)~(e)を繰り返すステップをさらに含むことができる。
【0112】
プライマー伸長ステップは、プライムされたテンプレート核酸を伸長反応混合物と接触させることによって行われ得る。通常、前の検査ステップで存在していた流体は除去され、伸長反応混合物で置き換えられる。代替的に、伸長反応混合物は、検査ステップに存在した流体に1つ以上の試薬を添加することによって形成され得る。必要に応じて、伸長反応混合物は、検査ステップとは異なるヌクレオチドの組成を含む。例えば、検査ステップは、伸長反応に存在しない1種類以上のヌクレオチドタイプを含むことができ、その逆も同様である。より具体的な例として、伸長ステップは、少なくとも1種類のタイプのヌクレオチドを省くことができ、検査ステップは、少なくとも4種類のタイプのヌクレオチドを使用することができる。必要に応じて、プライマー伸長ステップのために、1種類以上のヌクレオチドタイプが試験混合物に添加される。
【0113】
検査ステップに存在するヌクレオチドは、伸長ステップに持ち越された場合、不要なヌクレオチドの組み込みを引き起こす可能性がある。したがって、ヌクレオチドを除去するためにプライマー伸長ステップの前に洗浄ステップを使用することができる。任意に、遊離ヌクレオチドは、ホスファターゼなどの酵素によって、化学修飾によって、または物理的分離技術によって除去されてもよい。
【0114】
プライマー伸長ステップは、例えば、三元複合体を形成する文脈における上記のポリメラーゼを含む、様々なポリメラーゼのいずれかを使用することができる。しかしながら、伸長に使用されるポリメラーゼは触媒活性であり、触媒作用を妨げない状態で使用される。伸長ステップに使用されるポリメラーゼは、外因性標識に(例えば、共有結合的またはその他の方法で)結合される必要はない。代替的に、プライマー伸長に使用されるポリメラーゼは、外因性標識、例えば、前の検査ステップで使用された標識を含み得る。三元複合体形成及び伸長ステップは、異なる条件にもかかわらず、同じタイプのポリメラーゼを使用することができる。代替的に、2つのステップは、異なるタイプのポリメラーゼによって行われ得る。
【0115】
可逆的に終端したヌクレオチドをプライマーの3’末端に付加すると、伸長ステップ中に2つ以上のヌクレオチドがプライマーに追加されるのを防ぎ、さらに後続の検査ステップでプライマーが不要に伸長するのを防ぐ。したがって、特定のタイプのヌクレオチドに隣接するテンプレート内の位置を調べることができる。そのような実施形態では、安定化三元複合体をその位置に形成し、検査して、伸長した可逆的に終端したプライマーにハイブリダイズするテンプレートの次の正しいヌクレオチドを検出することができる。この方法は、その後、伸長した可逆的に終端したプライマーから可逆的ターミネーター部分を除去または修飾して、伸長可能なプライマーを生成することにより、段階的に繰り返すことができる。
【0116】
典型的には、本明細書に記載される方法でプライマーに付加される可逆的に終端したヌクレオチドは、外因性標識を有さない。これは、本明細書に記載される方法では伸長したプライマーを検出する必要がないためである。しかしながら、必要に応じて、本明細書に記載される方法で使用される1種類以上のタイプの可逆的に終端したヌクレオチドは、例えば、ヌクレオチドに結合した外因性標識を介して検出することができる。例示的な可逆的ターミネーター部分、それらをプライマーに組み込む方法、及びさらなる伸長のためにプライマーを修飾する方法(しばしば「脱ブロッキング」と呼ばれる)は、米国特許第7,544,794号、同第7,956,171号、同第8,034,923号、同第8,071,755号、同第8,808,989号、または同第9,399,798号に記載されている。さらなる例は、Bentley et al.,Nature 456:53-59(2008)、WO04/018497、米国特許第7,057,026号、WO91/06678、WO07/123744、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7,405,281号、及びUS2008/0108082に記載され、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。ポリメラーゼベースのプライマー伸長ステップに使用され得る試薬及び条件のさらなる例には、例えば、共同所有の米国特許出願公開第2017/0022553 A1号、または米国特許出願第15/677,870号(米国特許出願公開第2018/0044727 A1号として公開)、同第15/581,383号(米国特許出願公開第2018/0208922 A1号として公開)、または米国特許出願公開第2018/0208983 A1号(62/450,397及び62/506,759の優先権を主張)に記載されているものが含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
本開示の方法は、伸長したプライマーのハイブリッドを生成する条件下でプライムされたテンプレート核酸をポリメラーゼ及びヌクレオチドの混合物と接触させるステップを含むことができる。混合物中のヌクレオチドのうちの1種類以上を可逆的に終端させることができる。例えば、混合物中の少なくとも1、2、3、4種類、またはそれ以上のヌクレオチドタイプを可逆的に終端させることができる。代替的に、または追加的に、混合物中の多くとも4、3、2、または1種類のヌクレオチドタイプを可逆的に終端させることができる。同様に、混合物中の可逆的に終端した1種類以上のヌクレオチドタイプは、テンプレート核酸の少なくとも1、2、3、または4種類の塩基タイプに相補的であり得る。代替的に、または追加的に、混合物中の可逆的に終端したヌクレオチドタイプは、テンプレート核酸中の多くとも4、3、2、または1種類の塩基タイプに相補的であり得る。可逆的に終端したヌクレオチドと終端していないヌクレオチドとが伸長反応において同時に存在し得る。例えば、ヌクレオチドタイプのいくつかまたは全てを、単一の伸長反応で同時に送達することができる。代替的に、異なるヌクレオチドタイプは、それらが単一の伸長反応に組み合わされるように(個別にまたはサブセットで)連続的に送達され得る。終端し伸長可能なヌクレオチドの混合物の使用は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第16/265,942号(米国特許出願第62/626,836号の優先権を主張)に記載されるように、低分解能配列の決定、及び/またはリード長の伸長を可能にすることができる。
【0118】
特定の実施形態では、プライマー伸長ステップ中に使用される試薬は、プライムされたテンプレート核酸との安定化三元複合体を形成するステップの前に、プライムされたテンプレート核酸との接触から除去される。例えば、混合物中の1種類以上のヌクレオチドのタイプがその後の検査ステップでの三元複合体の形成または検出を妨害する場合、伸長ステップに使用されたヌクレオチド混合物の除去が望ましい場合がある。同様に、プライマー伸長ステップで使用されたポリメラーゼまたは補因子を除去して、検査ステップ中の望ましくない触媒活性を防止することが望ましい場合がある。除去に続いて洗浄ステップを行うことができ、不活性流体を使用して、伸長混合物の残留成分のプライムされたテンプレート核酸をパージする。
【0119】
洗浄ステップは、本明細書に記載されている様々なステップのいずれかの間で行うことができる。例えば、洗浄ステップは、三元複合体安定化条件下でプライムされたテンプレート核酸と接触した他の試薬から、プライムされたテンプレート核酸を分離するために有用であり得る。そのような洗浄は、混合物の検査を妨害することから、または以前に第1の混合物と接触していた基材上(または容器内)に形成される第2の混合物を汚染することから、1つ以上の試薬を取り除くことができる。例えば、プライムされたテンプレート核酸を、三元複合体安定化条件下でポリメラーゼ及び少なくとも1種類のヌクレオチドタイプと接触させて、第1の混合物を形成することができ、第1の混合物を検査することができる。任意に、検査の前に洗浄を行って、安定化三元複合体の形成に関与していない試薬を除去することができる。代替的または追加的に、検査ステップの後に洗浄を行って、プライムされたテンプレート核酸から第1の混合物の1つ以上の成分を除去することができる。次いで、プライムされたテンプレート核酸を、三元複合体安定化条件下でポリメラーゼ及び少なくとも1種類の他のヌクレオチドと接触させて、第2の混合物を形成することができ、第2の混合物を三元複合体形成について検査することができる。前と同様に、2回目の検査の前に任意の洗浄を行って、安定化三元複合体の形成に関与していない試薬を除去することができる。三元複合体と接触する洗浄液は、Li+、PEI、ベタイン、阻害金属イオン(例えば、Ca2+)、または本明細書に記載される他の三元複合体安定剤を含むものなどの安定化流体を含むことができる。
【0120】
本開示の方法は、本明細書に記載されるステップの複数の繰り返しを含み得る。そのような繰り返しは、テンプレート核酸の配列またはテンプレート核酸のシグネチャーを提供することができる。プライマーを脱ブロックするステップ、または不要な反応物や生成物を様々なステップの間に洗浄する任意選択のステップと同様に、検査と伸長のステップを複数回繰り返すことができる。したがって、プライムされたテンプレート核酸は、本明細書に記載の方法の少なくとも2、5、10、25、50、100またはそれ以上のステップにかけることができる。全てのステップを繰り返す必要はなく、繰り返されるステップは、各繰り返しで同じ順序で発生する必要はない。例えば、テンプレートの各位置における次の正しいヌクレオチドは、リアルタイム分析を使用して(すなわち、シーケンシング方法の流体及び検出ステップと並行して)同定することができる。しかしながら、リアルタイム分析は必須ではなく、代わりに、流体及び検出ステップの一部または全てが完了した後で、次の正しいヌクレオチドを特定できる。
【0121】
安定化三元複合体、または安定化三元複合体を形成する(すなわち、その形成に関与する)ことができる成分は、固体支持体に結合され得る。固体支持体は、生化学分析に使用される様々な材料のいずれかから作成できる。適切な材料には、ガラス、ポリマー材料、シリコン、石英(溶融シリカ)、ホウフロートガラス、シリカ、シリカベースの材料、炭素、金属、光ファイバーまたは光ファイバーの束、サファイア、またはプラスチック材料が含まれ得る。特定の材料は、特定の用途に望まれる特性に基づいて選択することができる。例えば、所望の波長の放射線を透過する材料は、その波長の放射線を利用する分析技法に有用である。逆に、特定の波長の放射線を通過させない材料(例えば、不透明、吸収性、または反射性)を選択することが望ましい場合がある。利用できる材料の他の特性は、本明細書に記載されているものなどの下流プロセスで使用される特定の試薬に対する不活性または反応性、または操作の容易さ、または製造コストの低さである。
【0122】
特に有用な固体支持体は、ビーズまたはミクロスフェアなどの粒子である。ビーズの集団は、安定化三元複合体の集団または複合体を形成することができる成分(例えば、ポリメラーゼ、テンプレート、プライマー、またはヌクレオチド)の結合に使用することができる。いくつかの実施形態では、各ビーズが単一のタイプの安定化三元複合体または複合体を形成することができる単一のタイプの成分を有する構成を使用することが有用であり得る。例えば、個々のビーズは、単一タイプの三元複合体、単一タイプのテンプレート対立遺伝子、単一タイプのテンプレート遺伝子座、単一タイプの対立遺伝子特異的プライマー、単一タイプの遺伝子座特異的プライマー、または単一タイプのヌクレオチドに結合され得る。代替的に、異なるタイプの成分をビーズごとに分離する必要はない。したがって、単一のビーズは、複数の異なるタイプの三元複合体、テンプレート核酸、プライマー、プライムされたテンプレート核酸及び/またはヌクレオチドを担持することができる。ビーズの組成は、例えば、使用される結合の形式、化学物質、及び/または方法に応じて異なり得る。例示的なビーズ組成物は、タンパク質及び核酸捕捉法で使用される、固体支持体、及びそれに付与された化学的機能性を含む。そのような組成物には、例えば、プラスチック、セラミック、ガラス、ポリスチレン、メラミン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾル、カーボングラファイト、二酸化チタン、ラテックス、またはSepharose(商標)、セルロース、ナイロン、クロスなどの架橋デキストラン、架橋されたミセル及びTeflon(商標)、ならびに参照により本明細書に組み込まれる、”Microsphere Detection Guide”from Bangs Laboratories,Fishers Ind.に記載されている他の材料が含まれる。
【0123】
粒子、ビーズ、またはミクロスフェアの形状も、多種多様な異なる形態及び形状に対応することができる。例えば、それらは、対称的な形状(例えば、球形または円筒形)、または不規則な形状(例えば、制御された細孔ガラス)であり得る。加えて、ビーズは多孔性であり得、したがって、三元複合体またはその成分の捕捉に利用可能な表面積を増加させる。本明細書で使用されるビーズの例示的なサイズは、ナノメートルからミリメートル、または約10nm~1mmの範囲であり得る。
【0124】
特定の実施形態では、ビーズは、配列され得るか、さもなければ空間的に区別され得る。使用され得る例示的なビーズベースのアレイには、限定されないが、Illumina,Inc.(SanDiego,CA)から入手可能なBeadChip(商標)アレイ、あるいは米国特許第6,266,459号、第6,355,431、第6,770,441号、第6,859,570号、もしくは第7,622,294号、またはPCT公開第WO00/63437号に記載されているようなアレイが含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。ビーズは、固体支持体上のウェルなどの別々の場所に配置することができ、それによって各場所は単一のビーズを収容する。代替的に、ビーズが存在する別個の場所は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0263923 A1号、同第2004/0233485 A1号、同第2004/0132205 A1号、または同第2004/0125424 A1号に記載されるような複数のビーズをそれぞれ含むことができる。
【0125】
上述のビーズアレイの実施形態から認識されるように、本開示の方法は、本明細書に記載される方法で複数の異なるタイプの核酸が並行して検出される多重フォーマットで実行することができる。本明細書に記載される方法の1つ以上ステップを使用して異なるタイプの核酸を連続的に処理することも可能であるが、並行処理は、コストの節約、時間の節約、及び条件の均一性を提供できる。本開示の組成物または方法は、少なくとも2、10、100、1×103、1×104、1×105、1×106、1×109、またはそれ以上の異なる核酸を含むことができる。代替的にまたは追加的に、本開示の組成物または方法は、最大で1×109、1×106、1×105、1×104、1×103、100、10、2、またはそれ以下の異なる核酸を含むことができる。したがって、装置または方法において有用であるものとして本明細書に記載される様々な試薬または生成物(例えば、プライムされたテンプレート核酸または安定化三元複合体)は、これらの範囲内の異なるタイプまたは種を有するように多重化され得る。
【0126】
使用可能な市販のアレイのさらなる例には、例えば、Affymetrix GeneChip(商標)アレイが含まれる。いくつかの実施形態によれば、スポットアレイ基質も使用することができる。例示的なスポットアレイは、Amersham Biosciencesから入手可能なCodeLink(商標)アレイである。有用な別のアレイは、Agilent Technologiesから入手可能なSurePrint(商標)テクノロジーなどのインクジェット印刷方法を使用して製造されたものである。
【0127】
他の有用なアレイには、核酸シーケンシングの用途で使用されるものが含まれる。例えば、ゲノムフラグメントのアンプリコン(しばしばクラスターと呼ばれる)を固定化するために使用されるアレイは、特に有用であり得る。本明細書で使用され得る核酸配列決定アレイの例には、Bentley et al.,Nature 456:53-59(2008)、PCT公開第WO 91/06678号、同第WO 04/018497号もしくは同第WO 07/123744号、米国特許第7,057,026号、同第7,211,414号、同第7,315,019号、同第7,329,492号もしくは同第7,405,281号、または米国特許出願公開第2008/0108082号に記載されるものが含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
核酸は、単一分子レベルまたはアンサンブルレベルでの検出を提供する方法で支持体に結合させることができる。例えば、支持体上の1つの核酸分子上に形成される個々の安定化三元複合体が、支持体上の核酸分子上に形成される全ての隣接する三元複合体と区別できるように、複数の異なる核酸を固体支持体に結合させることができる。このように、1つ以上の異なるテンプレートは、各単一分子テンプレートが物理的に分離され、単一分子が固体支持体上の他の全ての分子から解像されるように検出される形式で、固体支持体に結合させることができる。
【0129】
代替的に、本開示の方法は、1つ以上核酸アンサンブルについて実施することができ、アンサンブルは、共通のテンプレート配列を有するヌクレオチドの集団である。クラスター法を使用して、1つ以上のアンサンブルを固体支持体に結合させることができる。このように、アレイは複数のアンサンブルを有することができ、アンサンブルのそれぞれはそのフォーマットにあるクラスターまたはアレイフィーチャーと呼ばれる。クラスターは、ブリッジ増幅またはエマルジョンPCRなどの当該技術分野で公知の方法を使用して形成することができる。有用なブリッジ増幅方法は、例えば、米国特許第5,641,658号もしくは同第7,115,400号、または米国特許出願公開第2002/0055100A1号、同第2004/0002090A1号、同第2004/0096853A1号、同第2007/0128624A1号、もしくは同第2008/0009420A1号に記載される。エマルジョンPCR方法には、例えば、例えば、Dressman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:8817-8822(2003)、WO05/010145、または米国特許出願公開第2005/0130173A1号もしくは同第2005/0064460A1号に記載される方法が含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。表面上の核酸を増幅してクラスターを形成するための別の有用な方法は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Lizardi et al.,Nat.Genet.19:225-232(1998)、またはUS 2007/0099208 A1に記載されるようなローリングサークル増幅(RCA)である。
【0130】
特定の実施形態では、安定化三元複合体、ポリメラーゼ、核酸、またはヌクレオチドは、フローセル表面またはフローセル内の固体支持体に結合される。フローセルは、支持体に結合した三元複合体に接触する流体チャンバーに溶液を出し入れすることにより、便利な流体操作を可能にする。フローセルはまた、流体で操作される成分の検出を提供する。例えば、検出器は、安定化三元複合体の形成により固体支持体に動員される標識からのシグナルなどの固体支持体からのシグナルを検出するように配置することができる。使用され得る例示的なフローセルは、例えば、米国特許出願公開第2010/0111768 A1号、WO 05/065814、または米国特許出願公開第2012/0270305 A1号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
本開示は、例えば、本明細書に記載される方法を使用して、核酸を検出するためのシステムを提供する。例えば、システムは、ヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼとプライムされたテンプレート核酸との間の相互作用の検査を伴い、テンプレート核酸配列における1つ以上の塩基を同定することを含む反応のために構成され得る。任意に、システムは、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及び次の正しいヌクレオチドの間の少なくとも1つの安定化三元複合体を形成するステップ、三元複合体を安定化流体と接触させるステップ、安定化三元複合体(複数可)を検出するステップ、各プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップ、及び/またはヌクレオチド、ヌクレオチドの配列、またはテンプレートに存在する塩基マルチプレットの連続を同定するステップを含むがこれらに限定されない、本明細書に記載される1つ以上のステップを実施するための成分及び試薬を含む。
【0132】
本開示のシステムは、核酸検出方法を実施するための容器または固体支持体を含み得る。例えば、システムは、アレイ、フローセル、マルチウェルプレート、または他の便利な装置を含み得る。容器または固体支持体は取り外し可能であり得、それにより、それをシステムに配置したり、システムから取り外したりすることができる。したがって、システムは、複数の容器または固体支持体を順次処理するように構成することができる。システムは、本明細書に記載の1つ以上の試薬(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、テンプレート核酸、三元複合体形成用のヌクレオチド、プライマー伸長用のヌクレオチド、脱ブロッキング試薬、安定化流体またはそのような成分の混合物)を含むためのリザーバを有する流体システムを含むことができる。流体システムは、例えば、チャネルまたは液滴移送装置(例えば、エレクトロウェッティング装置)を介して、試薬を容器または固体支持体に送達するように構成され得る。様々な検出装置のいずれも、試薬が相互作用する容器または固体支持体を検出するように構成することができる。例には、発光検出器、表面プラズモン共鳴検出器、及び当該技術分野で知られている他のものが含まれる。本明細書のシステムで使用するために容易に修正され得る流体及び検出成分を有する例示的なシステムには、米国特許出願第62/481,289号もしくは同第15/922,661号(米国特許出願公開第2018/0280975 A1号として公開)、米国特許第8,241,573号、同第7,329,860号もしくは同第8,039,817号、または米国特許出願公開第2009/0272914 A1号もしくは同第2012/0270305 A1号に記載されているものが含まれるがこれらに限定されず、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
任意に、本開示のシステムは、システム成分を動作させるように構成されたコンピュータ処理ユニット(CPU)をさらに含む。同一または異なるCPUがシステムと対話して、シグナル(例えば、本明細書に記載される方法で検出されたシグナル)を取得、保存、及び処理できる。特定の実施形態では、CPUを使用して、シグナルから、テンプレート核酸の特定の場所に存在するヌクレオチドの同一性を決定することができる。場合によっては、CPUは、検出されたシグナルからテンプレートのヌクレオチドの配列を特定する。
【0134】
有用なCPUには、例えば、パーソナルコンピュータシステム、サーバーコンピュータシステム、シンクライアント、シッククライアント、ハンドヘルドもしくはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、プログラマブルコンシューマエレクトロニクス、ネットワークPC、ミニコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、スマートフォン、または上記のシステムもしくはデバイスのいずれかを含む分散クラウドコンピューティング環境などのうちの1つ以上が含まれる。CPUは、1つ以上のプロセッサまたは処理ユニット、RAM及び不揮発性メモリを含み得るメモリアーキテクチャを含むことができる。メモリアーキテクチャは、取り外し可能/取り外し不能、揮発性/不揮発性のコンピュータシステム記憶媒体をさらに含むことができる。さらに、メモリアーキテクチャには、ハードドライブなどの取り外し不能な不揮発性の磁気メディアを読み書きするための1つ以上のリーダー、リムーバブル、不揮発性磁気ディスクから読み取りまたは書き込みを行う磁気ディスクドライブ、及び/またはCD-ROMもしくはDVD-ROMなどの取り外し可能な不揮発性光ディスクから読み取りまたは書き込みを行う光ディスクドライブを含んでもよい。CPUはまた、様々なコンピュータシステム可読媒体を含むことができる。このようなメディアは、揮発性及び不揮発性メディア、取り外し可能及び取り外し不能メディアなど、クラウドコンピューティング環境からアクセス可能な任意の利用可能なメディアであり得る。
【0135】
メモリアーキテクチャは、本明細書に記載される方法の1つ以上のステップを実行するように構成された実行可能命令として実装された少なくとも1つのプログラムモジュールを有する少なくとも1つのプログラム製品を含み得る。例えば、実行可能な命令には、オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、及びプログラムデータが含まれる場合がある。一般に、プログラムモジュールは、本明細書に記載されている特定のタスクを実行するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、ロジック、データ構造などを含み得る。
【0136】
CPUの構成要素は、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、高速グラフィックスポート、及び様々なバスアーキテクチャのいずれかを使用するプロセッサまたはローカルバスを含む、いくつかの種類のバス構造の1つ以上として実装できる内部バスによって結合できる。限定ではなく例として、このようなアーキテクチャには、業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)バス、拡張ISA(EISA)バス、ビデオエレクトロニクス標準協会(VESA)ローカルバス、及び周辺機器相互接続(PCI)バスが含まれる。
【0137】
CPUは、キーボード、ポインティングデバイス(マウスなど)、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)などのディスプレイ、または使用と核酸検出システムの相互作用を促進するその他のデバイスなど、1つ以上の外部デバイスとオプションで通信できる。同様に、CPUは(ネットワークカード、モデムなどを介して)他のデバイスと通信できる。このような通信は、I/Oインターフェースを介して発生し得る。さらに、本明細書のシステムのCPUは、適切なネットワークアダプタを介して、ローカルエリアネットワーク(LAN)、一般的なワイドエリアネットワーク(WAN)、及び/またはパブリックネットワーク(例えば、インターネット)などの1つ以上のネットワークと通信できる。
【0138】
本開示は、例えば、三元複合体を安定化するための方法の文脈において、本明細書に記載される成分のうちの1つ以上を含む物質の組成物をさらに提供する。特定の実施形態では、組成物は流体を含み、流体は、三元複合体及びLi+を含有し、三元複合体は、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及びプライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む。流体は、ベタイン、PEIまたは阻害金属イオン(例えば、Ca2+)のうちの1つ以上をさらに含有することができる。任意に、三元複合体は、例えば、テンプレート核酸の固体支持体への結合を介して、固体支持体上に固定化される。固体支持体及び結合手段のための材料は、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において既知の様々なもののいずれかであり得る。例えば、固体支持体は、フィーチャーのアレイを含むことができ、各フィーチャーは、固定化三元複合体を含むことができる。フィーチャーは、本明細書で前述した開示に従って、サイズ、間隔、密度、または他の特徴を有することができる。三元複合体の1つ以上の成分、例えば、ポリメラーゼ及び/またはヌクレオチドは、本明細書に記載される発光団または別の標識などの外因性標識を含有することができる。流体は、テンプレート核酸中にあると疑われる少なくとも1、2、3、または4つの塩基の非結合ヌクレオチド同族体をさらに含むことができる。非結合ヌクレオチド同族体は、あるヌクレオチドタイプを別のヌクレオチドタイプと区別する異なる外因性標識を有することができる。代替的または追加的に、流体は、外因性標識を任意に含有する非結合ポリメラーゼを含むことができる。特定の実施形態では、プライムされたテンプレート核酸は、ブロックされたプライマー(例えば、可逆的に終端したプライマー)を含む。流体中の三元複合体の濃度は、非結合ヌクレオチドの濃度よりも大きく、かつ/または流体中の非結合ポリメラーゼの濃度よりも大きくなり得る。流体は、水性流体であり得る。流体は、アルコール、油、または例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第16/164,417号(米国特許出願62/574,308号の利益を主張)に記載されている非混和性流体を含む、ヌクレオチドまたはポリメラーゼを溶解しない他の溶媒を欠く可能性がある。
【0139】
この開示は、例えば、核酸を特徴付けるために使用され得るキットをさらに提供する。キットは、本明細書に記載される方法の1つ以上を実行するための試薬を含むことができる。例えば、キットは、1つ以上のプライムされたテンプレート核酸と混合されたときに安定化三元複合体を生成するための試薬を含むことができる。より具体的には、キットは、例えば、以下の実施例のセクションに記載される方法を含む、本明細書に記載される方法で使用されるLi+、PEI、ベタインまたは阻害金属イオン(例えば、Ca2+)のうちの1つ以上を含むことができる。加えて、キットは、少なくとも1つのヌクレオチドタイプ、及び安定化三元複合体を形成することができるポリメラーゼを含むことができる。伸長ステップに使用されるポリメラーゼもキットに含まれ得る。ヌクレオチド、ポリメラーゼ、またはその両方は、例えば、様々な方法の文脈で本明細書に示されるように、外因性標識を含み得る。
【0140】
したがって、本明細書に記載される方法を実行する際に使用される成分または物品のいずれも、キットに有用にパッケージ化することができる。例えば、キットは、本明細書に記載される方法を実施する際に使用される成分または物品の一部、多く、または全てを含むように梱包することができる。例示的な成分としては、例えば、本明細書及び本明細書に引用される参考文献に記載される、標識ヌクレオチド(例えば、伸長可能な標識ヌクレオチド);ポリメラーゼ(標識または非標識);ターミネーター部分を有するヌクレオチド(例えば、非標識、可逆的に終端したヌクレオチド);Li+、PEI、ベタイン及び/または阻害金属カチオン(例えば、Ca2+)を含有するものなどの安定化流体;脱ブロッキング試薬などが挙げられる。そのような試薬のいずれかは、例えば、プライムされたテンプレート核酸の分析のための後続のステップのうちの1つ以上を実施するために使用される流体、成分及び/または物品のうちの一部、多く、または全てを含むことができる。キットはプライマーまたはテンプレート核酸を含む必要はない。むしろ、キットのユーザーは、キットの成分と組み合わせられるプライムされたテンプレート核酸を提供することができる。同様に、キットは、本明細書に記載される成分のうちの1つ以上を除外することができ、任意に、そのような除外された成分は、エンドユーザーによって提供され得る。
【0141】
1つ以上の補助試薬もキットに含めることができる。そのような補助試薬は、上記で例示された試薬のいずれか及び/または本明細書に記載される方法を実施するのに有用な他のタイプの試薬を含み得る。説明書をさらにキットに含めることができる。説明書は、例えば、本明細書に記載される方法で使用される任意の成分を作製し、本明細書に記載される方法の任意の実施形態の1つ以上のステップを実施するための手順、及び/またはプライムされたテンプレート核酸を用いる後続の分析ステップのいずれかを実施するための指示を含むことができる。
【0142】
特定の実施形態では、キットは、試薬を収容するためのリザーバを有し、試薬をリザーバから検出機器に移送するための流体成分をさらに有するカートリッジを含む。例えば、流体成分は、安定化三元複合体が検出されるフローセルに試薬を移送するように構成され得る。本開示のキット(またはシステム)に含まれ得る例示的な流体カートリッジは、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第15/922,661号(米国特許出願公開第2018/0280975 A1として公開、62/481,289の優先権を主張)に記載されている。
【実施例】
【0143】
実施例I
ポリメラーゼ及びヌクレオチドを可溶化する水性安定化流体での三元複合体の安定化
本実施例は、4つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれの結合を個々に評価する方法で、ブロックされたプライムされたテンプレート核酸の検査を実証する。三元複合体を安定化することができた薬剤を含有する水溶液を使用して、(1)ポリメラーゼ、標識ヌクレオチド及びマグネシウムカチオンを含有する検査溶液を送達し、(2)非結合ポリメラーゼ及び標識ヌクレオチドとの接触から固定化三元複合体を分離し、かつ(3)画像化洗浄ステップ中に長期間にわたって三元複合体の検出を容易にした。手順で使用される異なるヌクレオチドを、同じタイプの蛍光検出可能な標識で標識し、各タイプのヌクレオチドを別々に送達及び検査した。代替的に、ヌクレオチドは、それぞれ異なる検出可能な標識を有することができ、いくつかの異なる標識ヌクレオチドタイプは、同時にブロックされたプライムされたテンプレート核酸と接触することができた。
【0144】
プライムされたテンプレート核酸を含有するフローセルを以下のように調製した。5’-ビオチン化プライマーを使用して12個のPCR反応で合成したテンプレート核酸鎖を調製し、次いで独立して、ストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズに結合した。これにより、12種類のビーズタイプの集団が得られ、各ビーズは、テンプレート鎖の均質な集合体を有していた。手順で使用したビーズは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1mMのNHS-PEG4-TCOで官能化されていた。次に、固定化テンプレート鎖を有するビーズを、テトラジンで官能化されていたアミノシランフローセル表面上に流した。混合物を1時間インキュベートして、フローセル内の官能化表面への装飾されたビーズの共有結合を可能にした。
【0145】
次に、配列決定プライマーをフローセルに流し、固定化テンプレート鎖にハイブリダイズさせた。ビーズの凝集集合体の中に、4つの塩基(すなわち、A、C、GまたはT)のそれぞれを次のテンプレートヌクレオチドとして有するプライムされたテンプレート核酸が存在した。次いで、可逆的ターミネーターヌクレオチドをハイブリダイズされた配列決定プライマーの3’末端に組み込んで、ブロックされたプライムされたテンプレート核酸分子の集合体を作り出した。これを、10U/mLのTherminator(商標)ポリメラーゼ、ならびにdATP、dGTP、dCTP及びdTTPの200nMの非標識の可逆的に終端したヌクレオチド類似体を含んだpH緩衝組み込み混合物を使用して達成した。この例示的な手順で使用される可逆的ターミネーターヌクレオチドは、NaNO2を含有する酢酸塩緩衝液との接触によって除去可能であった3’-ONH2可逆的ターミネーター部分を含んだ。この可逆的ターミネーターヌクレオチドの説明は、米国特許第7,544,794号で見ることができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
次に、ブロックされたプライムされたテンプレート核酸分子に結合した固定化ビーズを使用して、複数の検査条件をスクリーニングした。プライマー鎖の3’ヌクレオチド上の可逆的ターミネーター部分は、三元複合体の形成及び検出ステップ中のヌクレオチド組み込みを妨げた。これにより、同じ塩基位置を複数回検査して、どの条件が三元複合体の特定の形成及び検出を支持したかを決定することができた。Cy5部分でその塩基上に標識されたポリメラーゼ及び単一ヌクレオチドを含んだ4つの異なる溶液(すなわち、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/873,343号に記載されるCy5-dATP、Cy5-dGTP、Cy5-dCTPまたはCy5-dTTP)を、フローセルに個々に導入して、三元複合体の形成を可能にした。
【0147】
各ヌクレオチド及びポリメラーゼ含有溶液を送達して三元複合体の形成を可能にした後、フローセルを画像化溶液で洗浄して、非複合体化ヌクレオチド及びポリメラーゼを除去した。画像化洗浄ステップ中で三元複合体が検出された。固定化されブロックされた、プライムされたテンプレート核酸上に三元複合体の形成のためのポリメラーゼ及び標識ヌクレオチドを提供する溶液(検査溶液)、ならびに画像化溶液(IMG溶液)は両方、20mMのトリシン緩衝液(pH 8.42)、50mMのKCl、0.1%Tween-80、10mMの(NH4)2SO4及び3%スクロースを含んだ。三元複合体を形成するために使用した溶液は、20U/mLのTherminator(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs,Ipswich,MA)、1mMのMgCl2、ならびにCy5-dNTP(Cy5-dATP、Cy5-dGTP及びCy5-dCTPのそれぞれについて400nM、Cy5-dTTPについて800nM)をさらに含んだ。ポリメラーゼ、MgCl2及びヌクレオチドを、画像化流体ステップから省略した。2つの溶液の各々は、安定化添加剤としてLiCl及び/またはベタインをさらに含み、同じ手順で使用した溶液は、同様の濃度を含有した。
【0148】
画像化洗浄ステップ中に三元複合体を画像化した後、フローセルを緩衝EDTA含有グアニジウムチオシアネート溶液で洗浄することによって、ポリメラーゼ及び標識ヌクレオチドを三元複合体から除去した。次いで、フローセルを、組み込み前緩衝液(20mMのトリシン(pH 8.42)、50mMのKCl、0.1%Tween-80及び0.1%ヒドロキシルアミン)で洗浄することによって、次の塩基検査のために調製した。検査溶液及びIMG溶液は、画像化流体がポリメラーゼ、MgCl
2または標識ヌクレオチドを含まなかったことを除いて、同じ主要成分を含有した。手順で調査した可変条件は、1Mのベタイン(N,N,N-トリメチルグリシン)がある場合またはない場合で、5mMまたは50mMのいずれかでのリチウム塩(すなわち、LiCl)の使用を伴った。試験で使用したLiCl及びベタインの濃度が表1に要約される。これらの手順からの結果が
図1A及び
図1Bに示される。
【表1】
【0149】
図1Aは、4つの試験したヌクレオチドの各々について、蛍光「オフ」シグナルを上昇させることなく、リチウムカチオン(例えば、水中のリチウム塩の溶解から生じる)及び/またはベタインがどのように有利に蛍光「オン」シグナルを増加させたかを示す。「オン」強度は、全ての正しく呼び出されたヌクレオチドの画像カメラからのピクセルカウントの中央値であり、「オフ」強度は、同じフィーチャーで検出された残りの3つのヌクレオチド(すなわち、不正確なヌクレオチド)についての画像カメラからのピクセルカウントの中央値である。特に、標識dTTPヌクレオチドは、異なる条件に対する最大の感受性を示し、最も低い「オン」シグナルは、リチウムカチオン及びベタインの完全な非存在と関連付けられる。この傾向は、4つ全てのヌクレオチドで類似していた。特に、LiClの試験濃度のいずれかが実質的に飽和している「オン」強度をもたらしたが、これらの結果は、ベタインの添加によってさらに改善された。この添加剤の効果は、リチウムカチオン及びベタインが異なる機構を介して結合系を改善するように作用したことを強く示唆した。
【0150】
図1Bは、正しい塩基呼び出しの信頼性がより高いことが、リチウム及びベタイン添加剤の使用から生じたことをグラフで確認した。ここで、純度値を、最も明るいヌクレオチド強度値を、最も明るいヌクレオチド強度と2番目に明るいヌクレオチド強度値の合計で割ることによって計算した。0~1のスケールで表示するために、結果から0.5を引き、次いで2を掛けるような調整がある。示されるように、三元複合体の検出に使用される画像化溶液中にリチウムイオンを含むことで、特に標識dTTPヌクレオチドの純度値が改善された。リチウムがない場合、ベタインの添加は、dTTP-三元複合体の純度値を有利に増加させた。
【0151】
別個の実験(データは図示せず)は、LiCl濃度を最大で100mM、175mMまたは250mMまで増加させることも、三元複合体に対する安定化効果を示す高い「オン」シグナルを提供したことを実証した。しかしながら、500mMのLiClは、より低い濃度のLiClと比較して三元複合体の不安定化と一致して、「オン」シグナルの実質的な低減及び純度の低減をもたらした。
【0152】
これらの結果は、リチウムカチオン及びベタインが三元複合体の安定化を提供することができ、非複合体化標識ヌクレオチドの存在下で三元複合体を検出するときに、改善されたシグナル対ノイズ比を可能にするために水性検査流体に含まれ得ることを実証する。
【0153】
実施例II
経時的な三元複合体の安定化
本実施例では、リチウム及び/またはベタインを含有する画像化緩衝液で最大5分間洗浄することによる三元複合体の検出の改善を実証した時間滴定について説明する。
【0154】
SBB(商標)反応を、同じテンプレート位置を繰り返し検査するように伸長ステップを省略したことを除いて、実施例Iに記載される12個のPCR反応からのブロックされた3’-ONH
2のプライムされたテンプレートDNA上で行った。三元複合体を、実施例Iに記載される検査溶液で洗浄することによって形成させた。次いで、IMG溶液をフローセルに導入し、1μL/秒の流速で20秒間、2分半または5分間のいずれかで流して、検出前に非結合ポリメラーゼ-ヌクレオチド複合体を洗い流した。15回の検査サイクルで使用したIMG溶液の可変の洗浄時間及び含有物が表2に示される。
【表2】
【0155】
図2に示されるように、リチウム(50mM)及びベタイン(1M)は、サイクル1~3及び13~15に示されるように、三元複合体に対して増加した「オン」シグナル強度を提供した。リチウム及びベタインが存在しない場合、三元複合体が解離し、正しい塩基を正確に区別する能力が排除された(サイクル4~6に示される)。50mMのリチウムの添加(サイクル7~9)は、配列決定を可能にしたが、50mMのリチウムと組み合わせた1Mのベタインのさらなる添加(サイクル1~3及び13~15)は、相乗効果を示し、全体の品質を大幅に向上させた。
【0156】
図2の結果は、ベタインが三元複合体を安定化するのに短期間役立ったが、2分半後に全ての三元複合体が解離したことを実証する(サイクル11)。20秒、2分半及び5分の時点にわたって全体的な強度で線形減少が認められたが、
図3に示される結果によって実証されるように、純度値は高いままであり、「オン」強度は配列決定にとって満足できるものであった。収集したデータは、50mMのLiCl及び1Mのベタインが経時的に三元複合体の安定化をもたらしたことを示した。
【0157】
0mM、5mM及び50mMのLiClで配列決定反応を行い、それらの性質を20サイクルにわたって観察した。ベタインは、1Mの濃度で全ての条件下に存在した。
図4A~4Cに示される結果は、最大50mMのLiClの濃度の増加が、「オン」シグナルと「オフ」シグナルとの間の分離を増加させ、20サイクルにわたってより均一な強度をもたらしたことを実証する。「オン」強度は、5mMのLiClよりも50mMのLiClで高く、追加のリチウムが三元複合体のより大きい集団の形成及び安定化を補助したことを示唆した。
図5A~5Cは、LiClの濃度が増加するにつれて純度がより高かったことを示す。シグナル対ノイズ比(SNR)も、
図6A~6Cに示される結果によって実証されるように、最大50mMのLiCl濃度の増加で改善された。
図7A~7Cに示されるように、LiClの濃度が50mMに増加するにつれて、平均エラー率もより低かった。
【0158】
実施例III
リチウム、カルシウムまたはベタインを含有する水性安定化流体での、三元複合体の安定化
本実施例は、SBB(商標)検査ステップ中の三元複合体の安定性に対するリチウム、カルシウム及びベタインの様々な組み合わせの効果を実証する。
【0159】
SBB(商標)反応を、同じテンプレート位置を繰り返し検査するように伸長ステップを省略し、以下の修正を行ったことを除いて、実施例Iに記載される12個のPCR反応からのブロックされた3’-ONH2のプライムされたテンプレートDNA上でフローセルにおいて行った。検査溶液は、20mMのトリセンpH7.0、3%スクロース、50mMのKCl、10mMのNH4(SO)2、0.1%ヒドロキシルアミン、0.1mMのEDTA、0.1%Tween-80、1mMのMgCl2、20U/mLのTherminator(商標)DNAポリメラーゼ、ならびにCy5-dNTP(Cy5-dATP、Cy5-dGTP及びCy5-dCTPのそれぞれについて400nM、Cy5-dTTPについて800nM)を含有した。IMG溶液は、20mMのトリセン(pH 7.0)、3%スクロース、50mMのKCl、10mMのNH4(SO)2、0.1%ヒドロキシルアミン、0.1mMのEDTA、0.1%Tween-80を含有した。溶液の各々は、以下の表に示されるように、可変の添加剤をさらに含有した。
【0160】
検査溶液を、DNAビーズを含有するフローセル内に流すことによって三元複合体を形成した。次いで、フローセルを16μLのIMG溶液で16秒間洗浄した。IMG洗浄後、フローセル内のDNAビーズの第1の画像を取得した。60秒の遅延後、ビーズの第2の画像をフローセルから取得した。「オン」及び「オフ」シグナルの強度を2つの画像間で比較して、三元複合体の安定性を決定した。
【0161】
表3は、任意にリチウム、カルシウムまたはベタインを含んだ8つの検査の可変の内容物を示す。
【表3】
【0162】
各サイクルのシグナル強度の損失率(第1画像から第2画像まで)が
図8に示される。4つの異なる同族ヌクレオチドタイプの存在下で形成された三元複合体からのシグナルの損失率は、個々の棒(dATPについては白い棒、dGTPについては点線の棒、dCTPについては黒い棒、及びdTTPについては縦線の棒)で示される。最も劇的なシグナル損失(すなわち、最も低い安定性)は、ベタイン、カルシウム及びリチウムの非存在下でインキュベートされた三元複合体について見られた(サイクル2を参照)。1Mのベタインの添加は、dATP、dGTP及びdCTPで形成された三元複合体の安定化に対して中程度の効果を有したが、dTTPで形成された三元複合体を安定化しないように見えた(サイクル4を参照)。50mMのLiCl単独の添加(サイクル3を参照)は安定性を改善し、1Mのベタイン及び50mMのLiClの両方が存在したときに、dATP、dGTP及びdCTPで形成された三元複合体について、安定性のさらなる増加が観察された(サイクル1を参照)。ベタインとリチウムの組み合わせは、他の3種類のヌクレオチドタイプよりも顕著ではないが、dTTPで形成された三元複合体にも安定化効果を有した。
【0163】
図8の結果を続けると、0.5mMのCaCl
2単独の添加(サイクル5を参照)は、リチウム単独の結果と比較して、dATP、dGTP及びdCTPで形成された三元複合体の安定性のさらに大きい増加をもたらした。1Mのベタイン及び0.5mMのCaCl
2の存在(サイクル6を参照)もまた、三元複合体を安定化し、安定化は、カルシウム単独について観察されるよりもわずかに良好であった。50mMのLiClと0.5mMのCaCl
2の組み合わせ(サイクル7を参照)は、三元複合体、特にdATP、dGTP及びdCTPで形成された複合体に対して安定化効果を有した。1Mのベタイン、50mMのLiCl及び0.5mMのCaCl
2の3つ全ての存在(サイクル8を参照)もまた、三元複合体、特にdATP、dGTP及びdCTPで形成された複合体に対して安定化効果を有した。
【0164】
図9は、第2の画像から得られた純度値(すなわち、IMG溶液中での60秒のインキュベーション後)を示す。リチウム、ベタインまたはカルシウムの非存在下で実行されるサイクル2は、三元複合体の解離を示す最も低い純度スコアを有した。ベタイン単独の添加は、dTTPで形成された三元複合体の低い純度値をもたらした。リチウム(ベタインの有無にかかわらず)またはカルシウム(ベタインの有無にかかわらず)の存在下で行われるサイクルは、高い純度を有する複合体を生成した。
【0165】
これらの結果は、三元複合体の形成及び検査中のベタイン、リチウムまたはカルシウムの存在が、検出結果を改善したことを実証し、これは三元複合体を安定化することによる可能性が最も高い。独立して、リチウムとカルシウムが最も効果的であるように見えた。リチウムまたはカルシウムにベタインを添加することは、結果を改善する相乗効果を有した。DATP、dGTP及びdCTPで形成された三元複合体は、dTTPで形成された複合体と比較して、試験したほとんどの条件下でより有意に安定化された。それにもかかわらず、dTTPで形成された三元複合体は、ベタインによって、またはリチウム単独またはベタインとの組み合わせで安定化されるように見えた。
【0166】
検査溶液及びIMG溶液中の三元複合体を安定化する可能性について、いくつかの他の金属を評価した。三元複合体を検出するときに、KClの濃度の100mMのカリウムへの倍増、または50mMのナトリウムの添加が使用され得るが、三元複合体、特にCy5-dTTPで形成された三元複合体は、同様の濃度のリチウムまたはカルシウムの存在下よりも安定性が低かった。ストロンチウム(10mMのSrCl2)は、プリンヌクレオチド(Cy5-dATP及びCy5-dGTP)で形成された三元複合体にある程度の安定性を提供したが、試験した条件下においてピリミジンヌクレオチドで形成された三元複合体にはほとんどまたは全く安定性を提供しなかった。ニッケル(2.5mMのNiSO4)及びイッテルビウム(YbCl3)は、試験した条件下で三元複合体にあまり有効な安定化は提供しなかった。
【0167】
実施例IV
ポリエチレンイミンでの三元複合体の安定化
SBB(商標)反応を、実施例Iに記載される12個のPCR反応からのブロックされた3’-ONH
2のプライムされたテンプレートDNA上で、かつ以下の修正を伴い行った。IMG溶液は、20mMのトリシン緩衝液(pH 8.42)、50mMのKCl、0.1%Tween-80、10mMの(NH
4)
2SO
4及び3%スクロース、ならびに以下に記載される可変の添加試薬を含んだ。検査溶液は、IMG溶液と同じ固定及び可変の試薬を含み、20U/mLのTherminator(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs,Ipswich,MA)、1mMのMgCl
2、ならびにCy5-dNTP(Cy5-dATP、Cy5-dGTP及びCy5-dCTPのそれぞれについて400nM、Cy5-dTTPについて800nM)をさらに含んだ。
【表4】
【0168】
SBB(商標)反応を、表4に指定されるIMG及び検査溶液への可変の添加剤を含む条件下で実行した。全ての条件下で、ビーズは、安定化三元複合体の形成を示すシグナルを発生させた。しかしながら、PEIの濃度が増加するにつれて、標準洗浄プロトコルを介してビーズからPEI及び三元複合体を除去する能力が低下したことが観察された。高塩洗浄(4MのNaCl)は、PEIの大部分を除去するのに有効であり、塩基の区別は、高塩洗浄によるPEIの除去後に可能であった。しかしながら、高塩洗浄によるPEIの除去後に、SOP条件(すなわち、PEIなし、標準洗浄)のバックグラウンドと比較してより高いバックグラウンドが観察された。ヘパリンは、PEIを洗い流すための有効な薬剤であることも分かった。0.001%2k分岐PEIを有する検査溶液及びIMG溶液の使用後、少なくとも30μg/mLのヘパリンを含有した洗浄液を使用してPEIを除去することができた(最大100μg/mLのヘパリンを有する洗浄液を試験し、有効であることが分かった)。
【0169】
図10は、以下のように行った安定性試験の結果を示す。Tを次のテンプレートヌクレオチドとしてプライムされたテンプレートを有するビーズについて、検査及び画像化ステップを行った。フローセルの1レーンに対して、検査緩衝液及びIMG緩衝液は、0.001%分岐PEI 25k(
図10で「PEI」と表示)を含んだ。対照レーンを並行して処理したが、PEIの添加を欠いていた(
図10で「SOP」と表示)。標準画像を得て(
図10で「検査」と表示)、ビーズを暗闇で1分間インキュベートし、第2の画像を得て(
図10において「1分」)、次いでビーズをさらに1分間インキュベートしてから、第3の画像を撮影する(
図10で「2分」)ように、画像化ステップ修正した。
図10の結果から明らかであるように、PEIの存在は、3つの画像化時点にわたって三元複合体の安定性の著しい改善を提供した。
【0170】
図11は、以下のように行った安定性試験の結果を示す。様々なプライムされたテンプレートを有するビーズについて、検査及び画像化ステップを行った。ビーズをフローセルの6つの異なるレーンに分配した。6つのフローセルレーンを並行して処理したが、各レーンに使用した検査溶液及びIMG溶液は、以下のように異なった:PEIの添加なし(SOP)、0.01%分岐PEI 800、0.025%分岐PEI 800、0.05%分岐PEI 800、0.075%分岐PEI 800、0.1%分岐PEI 800。標準画像を得て、ビーズを暗闇で1分間インキュベートし、第2の画像を得て(
図11において「T=1分」)、次いでビーズをさらに1分間インキュベートしてから、第3の画像を撮影する(
図11で「T=2分」)ように、画像化ステップ修正した。
図11中、次の正しいヌクレオチドとしてdATPを示すシグナルを発生させた全てのビーズがAと表示された棒について平均化され、次の正しいヌクレオチドとしてdGTPを示すシグナルを発生させた全てのビーズがGと表示された棒について平均化され、次の正しいヌクレオチドとしてdCTPを示すシグナルを発生させた全てのビーズがCと表示された棒について平均化され、次の正しいヌクレオチドとしてdTTPを示すシグナルを発生させた全てのビーズがTと表示された棒について平均化されるように、いくつかの異なるビーズタイプから得られたデータを平均化した。結果から明らかなように、分岐PEI 800は、特に濃度が0.075%に近づくか、またはそれを超えたときに、改善された安定性を提供した。
【0171】
40μg/mL~100μg/mLのヘパリンを含んだ洗浄液は、分岐PEI 800及び三元複合体をDNAビーズから除去するのに有効であった(0.1%分岐PEI 800を有する検査及びIMGの送達後)。100μM~1mMのヘキサメタリン酸ナトリウムを含んだ洗浄液は、分岐PEI 800及び三元複合体をDNAビーズから除去するのに有効であった(0.075%分岐PEI 800を有する検査及びIMGの送達後)。
【0172】
この実施例の結果は、ポリエチレンイミンが三元複合体を安定化することができることを実証した。より大きいPEI分子は、より小さいPEI分子と比較して、より低い濃度で有効であった。しかしながら、より大きいPEI分子は、より小さいPEI分子よりもDNAビーズから除去することが困難である。より小さいPEI分子は、ヘパリン及びヘキサメタリン酸でDNAビーズから除去することができる。
【0173】
この出願を通して、様々な出版物、特許及び/または特許出願が参照されている。これらの文書の開示全体は、参照により本出願に組み込まれている。
【0174】
多くの実施形態が説明された。それにもかかわらず、様々な修正が行われ得ることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
さらなる実施形態は、以下のとおりである。
[実施形態1]
プライムされたテンプレート核酸を検出する方法であって、
(a)三元複合体を含む混合物を提供するステップであって、前記三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及び前記プライムされたテンプレート核酸の次の塩基のヌクレオチド同族体を含み、
前記混合物が、前記三元複合体に存在する同じタイプの過剰なヌクレオチドをさらに含む、前記提供するステップと、
(b)前記過剰なヌクレオチドを、Li
+
を含む流体で置き換えるステップと、
(c)前記三元複合体がLi
+
を含む前記流体と接触している間に、前記三元複合体を検出するステップと、を含む、方法。
[実施形態2]
(d)ステップ(c)の結果から、前記プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基を同定するステップ、をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
(e)前記プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップ、をさらに含む、実施形態2に記載の方法。
[実施形態4]
前記プライマーが、可逆的ターミネーター部分を含むヌクレオチドの付加によって伸長される、実施形態3に記載の方法。
[実施形態5]
前記プライムされたテンプレートのプライマーが、可逆的ターミネーター部分を含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態6]
(e)前記プライマーを脱ブロックするために前記可逆的ターミネーター部分を修飾または除去するステップ、をさらに含む、実施形態5に記載の方法。
[実施形態7]
(f)前記脱ブロックされたプライマーを伸長するステップをさらに含む、実施形態6に記載の方法。
[実施形態8]
前記脱ブロックされたプライマーが、可逆的ターミネーター部分を含むヌクレオチドの付加によって伸長される、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]
前記三元複合体が、固体支持体上に固定される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態10]
前記ヌクレオチド同族体が、ステップ(c)で検出される外因性標識を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態11]
前記混合物が、前記テンプレート核酸に存在すると疑われる少なくとも2つの異なる塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む、実施形態10に記載の方法。
[実施形態12]
前記異なる塩基タイプの前記ヌクレオチド同族体が、それぞれ、異なる外因性標識を含む、実施形態11に記載の方法。
[実施形態13]
前記ポリメラーゼが、ステップ(c)で検出される外因性標識を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態14]
前記混合物が、前記三元複合体に存在する同じタイプの過剰なポリメラーゼをさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態15]
ステップ(c)が、前記過剰なポリメラーゼ及び前記過剰なヌクレオチドを、Li
+
を含む前記流体で置き換えることを含む、実施形態14に記載の方法。
[実施形態16]
前記過剰なヌクレオチドが、前記流体に可溶性である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態17]
ステップ(b)が、Li
+
を含み、かつ前記三元複合体に存在する前記タイプのヌクレオチドを欠く流体を、前記三元複合体に送達し、それにより前記過剰なヌクレオチドを前記流体で置き換えることを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態18]
前記Li
+
が、ステップ(c)中に1mM~100mMの濃度で存在する、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態19]
前記流体が、ベタインをさらに含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態20]
前記流体が、ポリエチレンイミンをさらに含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態21]
流体を含む組成物であって、前記流体が、三元複合体及びLi
+
を含み、前記三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及び前記プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む、組成物。
[実施形態22]
前記Li
+
が、1mM~100mMの濃度で存在する、実施形態21に記載の組成物。
[実施形態23]
前記流体が、ベタインをさらに含む、実施形態21に記載の組成物。
[実施形態24]
前記流体が、ポリエチレンイミンをさらに含む、実施形態21に記載の組成物。
[実施形態25]
前記三元複合体が、固体支持体上に固定化される、実施形態21に記載の組成物。
[実施形態26]
前記固体支持体が、フィーチャーのアレイを含み、各フィーチャーが、前記フィーチャーにおいて、プライムされたテンプレート核酸分子、ポリメラーゼ、及び前記プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む固定化三元複合体を含む、実施形態25に記載の組成物。
[実施形態27]
前記ヌクレオチドが、外因性標識を含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の組成物。
[実施形態28]
前記流体が、前記テンプレート核酸に存在すると疑われる少なくとも4つの異なる塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む、実施形態21に記載の組成物。
[実施形態29]
前記異なる塩基タイプの前記ヌクレオチド同族体が、それぞれ、異なる外因性標識を含む、実施形態28に記載の組成物。
[実施形態30]
前記ポリメラーゼが、外因性標識を含む、実施形態21~29のいずれか1つに記載の組成物。
[実施形態31]
前記プライムされたテンプレート核酸分子が、可逆的に終端したプライマーを含む、実施形態21~30のいずれか1つに記載の組成物。
[実施形態32]
前記流体が、水性である、実施形態21~31のいずれか1つに記載の組成物。
[実施形態33]
前記流体が、遊離ヌクレオチドを前記流体中の三元複合体の濃度よりも低い濃度でさらに含み、前記遊離ヌクレオチドが、前記三元複合体中に存在する同じタイプである、実施形態21~32のいずれか1つに記載の組成物。
[実施形態34]
前記流体が、遊離ポリメラーゼを前記流体中の三元複合体の濃度よりも低い濃度でさらに含み、前記遊離ポリメラーゼが、前記三元複合体中に存在する同じタイプである、実施形態21~33のいずれか1つに記載の組成物。
[実施形態35]
プライムされたテンプレート核酸を検出する方法であって、
(a)三元複合体及びLi
+
を含む流体を提供するステップであって、前記三元複合体が、プライムされたテンプレート核酸、ポリメラーゼ、及び前記プライムされたテンプレート核酸分子の次の正しい塩基のヌクレオチド同族体を含む、前記提供するステップと、
(b)前記三元複合体がLi
+
を含む前記流体中にある間に、前記三元複合体を検出するステップと、を含む、方法。
[実施形態36]
(c)ステップ(b)の結果から、前記プライムされたテンプレート核酸分子の前記次の正しい塩基を同定するステップ、をさらに含む、実施形態35に記載の方法。
[実施形態37]
(d)前記プライムされたテンプレート核酸のプライマーを伸長するステップ、をさらに含む、実施形態36に記載の方法。
[実施形態38]
前記プライマーが、可逆的ターミネーター部分を含むヌクレオチドの付加によって伸長される、実施形態37に記載の方法。
[実施形態39]
前記プライムされたテンプレートのプライマーが、可逆的ターミネーター部分を含む、実施形態35に記載の方法。
[実施形態40]
(d)前記プライマーを脱ブロックするために前記可逆的ターミネーター部分を修飾または除去するステップ、をさらに含む、実施形態39に記載の方法。
[実施形態41]
(e)可逆的ターミネーター部分を含むヌクレオチドの付加によって、前記脱ブロックされたプライマーを伸長するステップ、をさらに含む、実施形態40に記載の方法。
[実施形態42]
前記三元複合体が、固体支持体上に固定される、実施形態35~41のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態43]
前記ヌクレオチド同族体が、ステップ(b)で検出される外因性標識を含む、実施形態35~42のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態44]
前記流体が、前記テンプレート核酸に存在すると疑われる少なくとも2つの異なる塩基タイプのヌクレオチド同族体を含む、実施形態43に記載の方法。
[実施形態45]
前記異なる塩基タイプの前記ヌクレオチド同族体が、それぞれ、異なる外因性標識を含む、実施形態44に記載の方法。
[実施形態46]
前記ポリメラーゼが、ステップ(c)で検出される外因性標識を含む、実施形態35~45のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態47]
前記流体が、遊離ヌクレオチドを前記流体中の三元複合体の濃度よりも低い濃度でさらに含み、前記遊離ヌクレオチドが、前記三元複合体中に存在する同じタイプである、実施形態35~46のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態48]
前記流体が、遊離ポリメラーゼを前記流体中の三元複合体の濃度よりも低い濃度でさらに含み、前記遊離ポリメラーゼが、前記三元複合体中に存在する同じタイプである、実施形態35~47のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態49]
前記流体が、ベタインをさらに含む、実施形態35~48のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態50]
前記流体が、ポリエチレンイミンをさらに含む、実施形態35~49のいずれか1つに記載の方法。