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  • 特許-空調システム及び住宅 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】空調システム及び住宅
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240911BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F3/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021011929
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115368
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関谷 佳子
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-51874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱された床下空間と、前記床下空間の上に設けられた床上空間とを具えた住宅を空調するための空調システムであって、
熱交換器を有する空調装置と、
前記床下空間の空気を前記空調装置側に圧送するための第1ファンを含み、かつ、前記床下空間の空気を前記空調装置に供給するための第1流路と、
前記空調装置で熱交換された空調空気を前記床上空間に供給するための第2流路と、
外気を除湿又は加湿して前記床下空間に供給するための調湿装置と
前記調湿装置、及び、前記第1ファンの運転を制御する制御装置とを含み、
前記制御装置は、除湿又は加湿された外気の前記床下空間への第1供給量と、前記床下空間の空気の前記空調装置への第2供給量とが略一致するように、前記調湿装置及び/又は前記第1ファンの運転を制御する、
空調システム。
【請求項2】
前記空調装置は、前記空調空気を濾過するための第1フィルターを含む、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記調湿装置は、前記外気を濾過するための第2フィルターを含む、請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記調湿装置は、デシカント型である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記調湿装置は、調湿性能を回復させるための外気を供給可能な外気供給経路を有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項6】
住宅であって、
断熱された床下空間と、
前記床下空間の上に設けられた床上空間と、
熱交換器を有する空調装置と、
前記床下空間の空気を前記空調装置側に圧送するための第1ファンを含み、かつ、前記床下空間の空気を前記空調装置に供給するための第1流路と、
前記空調装置で熱交換された空調空気を前記床上空間に供給するための第2流路と、
外気を除湿又は加湿して前記床下空間に供給するための調湿装置と、
前記調湿装置、及び、前記第1ファンの運転を制御する制御装置とを含み、
前記制御装置は、除湿又は加湿された外気の前記床下空間への第1供給量と、前記床下空間の空気の前記空調装置への第2供給量とが略一致するように、前記調湿装置及び/又は前記第1ファンの運転を制御する、
住宅
【請求項7】
前記床下空間を区画する基礎と、前記床上空間を区画する外壁とをさらに具え、
前記調湿装置は、前記基礎又は前記外壁の近傍に取り付けられる、請求項6に記載の住宅
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム及び住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物の居室を換気しながら空調しうる空調システムが記載されている。この空調システムには、熱交換器を有する空調装置と、床下空間の空気を空調装置に供給するためのダクトと、空調装置で熱交換された空調空気を床上空間に供給するためのダクトとが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-83097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の空調システムでは、建物の必要換気量分の床下空間の空気が、熱交換器にそのまま供給される。このため、外気が高湿の場合には、前記熱交換器の冷房運転時の潜熱処理の割合が増加し、ひいては、顕熱比が小さくなる。したがって、床上空間の温度を低下させるための冷却効果が十分に得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、床上空間の温度調節性能を向上させることが可能な空調システムを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、断熱された床下空間と、前記床下空間の上に設けられた床上空間とを具えた住宅を空調するための空調システムであって、熱交換器を有する空調装置と、前記床下空間の空気を前記空調装置に供給するための第1流路と、前記空調装置で熱交換された空調空気を前記床上空間に供給するための第2流路と、外気を除湿又は加湿して前記床下空間に供給するための調湿装置とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記空調システムにおいて、前記空調装置は、前記空調空気を濾過するための第1フィルターを含んでもよい。
【0008】
本発明に係る前記空調システムにおいて、前記調湿装置は、前記外気を濾過するための第2フィルターを含んでもよい。
【0009】
本発明に係る前記空調システムにおいて、前記調湿装置は、デシカント型であってもよい。
【0010】
本発明に係る前記空調システムにおいて、前記調湿装置は、調湿性能を回復させるための外気を供給可能な外気供給経路を有してもよい。
【0011】
本発明に係る前記空調システムにおいて、前記第1流路は、前記床下空間の空気を前記空調装置側に圧送するための第1ファンを含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記空調システムにおいて、前記調湿装置、及び、前記第1ファンの運転を制御する制御装置がさらに含まれてもよい。
【0013】
本発明に係る前記空調システムにおいて、前記制御装置は、除湿又は加湿された外気の前記床下空間への第1供給量と、前記床下空間の空気の前記空調装置への第2供給量とが略一致するように、前記調湿装置及び/又は前記第1ファンの運転を制御してもよい。
【0014】
本発明は、住宅であって、断熱された床下空間と、前記床下空間の上に設けられた床上空間と、熱交換器を有する空調装置と、前記床下空間の空気を前記空調装置に供給するための第1流路と、前記空調装置で熱交換された空調空気を前記床上空間に供給するための第2流路と、外気を除湿又は加湿して前記床下空間に供給するための調湿装置とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る前記住宅において、前記床下空間を区画する基礎と、前記床上空間を区画する外壁とをさらに具え、前記調湿装置は、前記基礎又は前記外壁の近傍に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の空調システムは、上記の構成を採用することにより、顕熱の処理の負荷を削減することができ、床上空間の温度調節性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】住宅の一例を概念的に示す断面図である。
図2】調湿装置の一例を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0019】
[住宅の全体構造]
図1には、住宅1の一例を概念的に示す断面図が示されている。本実施形態の住宅1は、例えば、優れた断熱性能を具えた工業化住宅として構成されている。なお、住宅1は、工業化住宅に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態の住宅1は、断熱された床下空間2と、床下空間2の上に設けられた床上空間3とを含んで構成されている。
【0021】
[床下空間]
床下空間2は、基礎5と床6と土間7とで区画されている。
【0022】
[基礎]
基礎5は、住宅1の外周に連続して配置されている。本実施形態の基礎5は、例えば、鉄筋コンクリート製の布基礎として構成されているが、ベタ基礎であってもよい。本実施形態の基礎5には、断熱材8が配されている。これにより、床下空間2が断熱されている。
【0023】
[断熱材]
本実施形態の断熱材8は、基礎5の床下空間2側の側面に沿って、上下に延びている。このような断熱材8は、基礎5を介して伝えられる外気の熱を遮断することができる。これにより、住宅1は、床下空間2の空気(以下、単に「床下空気」ということがある。)A3の温度変化を小さくすることができる。断熱材8としては、例えば、ポリスチレンフォーム等が適宜採用されうる。
【0024】
[床]
図1に示されるように、床6は、基礎5、5の間をのびている。本実施形態の床6は、例えば、複数の板パネルが並べられたフローリングとして構成されている。
【0025】
[土間]
土間7は、床下空間2の底面を構成している。本実施形態の土間7は、基礎5、5間に敷設される土間コンクリートとして構成されているが、このような態様に限定されない。土間7には、一年を通して温度変化が小さい地中熱が伝達されている。これにより、土間7は、地中熱と、床下空気A3とを熱交換することができる熱交換部として構成される。したがって、床下空間2には、夏季は外気A1より冷たく、かつ、冬季は外気A1よりも暖かい床下空気A3が蓄えられる。
【0026】
本実施形態の住宅1は、床下空間2が断熱されているため、上記のような床下空気A3を、床下空間2に効果的に蓄えることができる。
【0027】
[床上空間]
床上空間3は、床下空間2の上に、床6を介して設けられている。本実施形態の床上空間3は、床6、天井11、外壁12、及び、間仕切り壁13で区画されている。床上空間3には、居室14が含まれている。
【0028】
[空調システム]
本実施形態の住宅1には、住宅1を空調するための空調システム10が設けられている。本実施形態の空調システム10は、空調装置16、第1流路17、第2流路18及び調湿装置19を含んで構成されている。
【0029】
[空調装置]
本実施形態の空調装置16は、熱交換された空調空気A4を生成するためのものである。したがって、空調装置16は、熱交換器41を有している。
【0030】
[熱交換器]
本実施形態の熱交換器41は、空気調和機42の室内機42Aの内部に配されている。本実施形態の空気調和機42は、一般的な家庭用のセパレート型エアコンである場合が例示される。空気調和機42は、室内機42Aと、住宅1の外部に設置される室外機(図示省略)とセットとして構成されている。本実施形態の室内機42Aは、熱交換器41に空気を供給するための吸込口43と、熱交換器41で熱交換された空調空気A4を吐出するための吹出口44とを有している。
【0031】
[チャンバー]
本実施形態の空調装置16は、空気調和機42(室内機42A)を内部に収容したケーシング45が含まれる。ケーシング45は、その内部に空間(スペース)を有する箱状に形成されている。本実施形態のケーシング45には、床上空気A5を取り込むための空気導入口46が設けられている。本実施形態の空気導入口46は、空気調和機42の吸込口43に隣接して設けられている。これにより、吸込口43には、床上空気A5が供給されうる。
【0032】
本実施形態のケーシング45(空調装置16)は、床6の上に設置されているが、例えば、床下空間2に設置されてもよいし、小屋裏30に設置されてもよい。また、ケーシング45は、住宅1の1階に設置されているが、例えば、2階以上に設置されても良い。
【0033】
[第1フィルター]
本実施形態の空調装置16には、空調空気A4を濾過するための第1フィルター51が含まれている。本実施形態の第1フィルター51は、ケーシング45の内部において、吹出口44から吐出される空調空気A4の下流側に配されている。これにより、空調装置16は、空調空気A4に含まれる粉塵やウイルス等を、効率よく除去することができるため、床上空間3の空気質を向上させることが可能となる。
【0034】
第1フィルター51には、公知のフィルター部材が適宜選択されうる。本実施形態のフィルター部材には、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルター、光触媒フィルター、活性炭脱臭フィルター、又は、電気集塵フィルター等が採用されうる。また、これらを組み合わせて、第1フィルター51が構成されてもよい。
【0035】
[第1流路]
第1流路17は、床下空気A3を空調装置16に供給するためのものである。本実施形態の第1流路17は、第1ダクト53を含んで構成されている。
【0036】
本実施形態の第1流路17(第1ダクト53)の一端は、床下空間2に連通している。一方、第1流路17(第1ダクト53)の他端は、空調装置16(ケーシング45)に連通している。これにより、第1流路17は、床下空気A3を、床下空間2から空調装置16に供給することができる。
【0037】
本実施形態の第1流路17(第1ダクト53)には、床下空気A3を、空調装置16(ケーシング45)側に圧送する(搬送する)ための第1ファン61が設けられている。これにより、第1流路17は、床下空気A3を、空調装置16(ケーシング45)内に円滑に供給(圧送)することができる。本明細書において、「ファン」は、空気を圧送するための機械である。したがって、ファンは、空気を圧送可能なものであれば、特に限定されない。
【0038】
本実施形態の第1流路17(第1ダクト53)の他端は、空気調和機42の吸込口43に隣接して設けられている。これにより、吸込口43には、床下空気A3が供給されうる。
【0039】
[第2流路]
第2流路18は、空調装置16で熱交換された空調空気A4を、床上空間3に供給するためのものである。本実施形態の第2流路18は、第2ダクト54を含んで構成されている。
【0040】
本実施形態の第2流路18(第2ダクト54)の一端は、空調装置16(本例では、ケーシング45内の空調空気A4の下流側)に連通している。一方、第2流路18(第2ダクト54)の他端は、床上空間3(居室14)に連通している。これにより、第2流路18は、空調空気A4を、空調装置16から床上空間3に供給することができる。本実施形態の第2流路18は、その一端が第1フィルター51の下流側に配されているため、第1フィルター51で浄化された空調空気A4を、床上空間3に供給することができる。
【0041】
本実施形態の第2流路(第2ダクト54)には、空調空気A4を床上空間3側に圧送する(搬送する)ための第2ファン62が設けられている。これにより、第2流路18は、空調空気A4を、床上空間3に円滑に供給(圧送)することができる。
【0042】
[調湿装置]
調湿装置19は、外気A1を除湿又は加湿して、床下空間2に供給するためのものである。調湿装置19は、外気A1を除湿又は加湿した空気(以下、単に「調湿空気」ということがある。)A2を得ることができれば、特に限定されない。本実施形態の調湿装置19は、デシカント型である場合が例示される。
【0043】
デシカント型の調湿装置19は、他の種類の調湿装置(図示省略)に比べて、小さく形成されうる。このため、調湿装置19は、住宅1内での占有スペースを小さくすることができる。図2は、調湿装置19の一例を概念的に示す断面図である。
【0044】
本実施形態の調湿装置19は、チャンバー21と、デシカントロータ22と、第1加熱冷却コイル23と、第2加熱冷却コイル24と、第1送風機25と、第2送風機26とを含んで構成されている。
【0045】
チャンバー21は、筐体27と、その内部の空間を2つに区分する仕切部28とを含んで構成されている。このような仕切部28により、チャンバー21には、互いに独立した第1チャンバー31と第2チャンバー32とが設けられる。
【0046】
第1チャンバー31には、その内部に外気A1を案内するための第1入口31aと、その内部の空気を排出するための第1出口31bとが設けられている。第1入口31aは、屋外33に連通している。一方、第1出口31bは、床下空間2に連通している。
【0047】
第2チャンバー32には、その内部に外気A1を案内するための第2入口32aと、その内部の空気を排出するための第2出口32bとが設けられている。第2入口32a及び第2出口32bは、屋外33に連通している。
【0048】
デシカントロータ22は、従来のものと同様に、軸方向(厚さ方向)に通風可能な円筒構造体に、シリカゲルやゼオライトなどの吸湿剤が担持されることによって構成されている。本実施形態のデシカントロータ22は、その回転軸22sを中心として、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間を回転可能に配置されている。デシカントロータ22の回転速度は、従来と同様に設定されうる。
【0049】
第1加熱冷却コイル23及び第2加熱冷却コイル24は、ヒートポンプユニット(図示省略)によって循環する冷媒により、空気を加熱又は冷却するためのものである。
【0050】
第1加熱冷却コイル23は、第1チャンバー31において、デシカントロータ22よりも第1入口31a側(上流側)に設けられている。これにより、第1加熱冷却コイル23は、第1チャンバー31に案内された外気A1を加熱又は冷却して、その外気A1をデシカントロータ22に供給することができる。
【0051】
第2加熱冷却コイル24は、第2チャンバー32において、デシカントロータ22よりも第2入口32a側(上流側)に設けられている。これにより、第2加熱冷却コイル24は、第2チャンバー32に案内された外気A1を加熱又は冷却して、その外気A1をデシカントロータ22に供給することができる。
【0052】
第1送風機25は、第1入口31aから第1チャンバー31内に空気(外気A1)を案内し、第1チャンバー31内の空気(調湿空気A2)を第1出口31bから排出するためのものである。本実施形態の第1送風機25は、ファンとして構成されている。第1送風機25は、デシカントロータ22に対して第1出口31b側(下流側)において、第1出口31bに向かって送風する向きに配置されている。これにより、第1送風機25は、第1チャンバー31内を負圧にして、第1入口31aから外気A1を案内することができる。
【0053】
第2送風機26は、第2入口32aから第2チャンバー32内に空気(外気A1)を案内し、第2チャンバー32内の空気A6を第2出口32bから排出するためのものである。本実施形態の第2送風機26は、第1送風機25と同様に、ファンとして構成されている。第2送風機26は、デシカントロータ22に対して第2出口32b側(下流側)において、第2出口32bに向かって送風する向きに配置されている。これにより、第2送風機26は、第2チャンバー32内を負圧にして、第2入口32aから外気A1を案内することができる。
【0054】
[調湿装置の運転]
次に、調湿装置19の運転が説明される。本実施形態の調湿装置19では、冬季に比べて外気A1の湿度(絶対湿度)が高くなる夏季において、除湿運転が行われる。一方、夏季に比べて外気A1の湿度(絶対湿度)が低くなる冬季では、加湿運転が行われる。
【0055】
[除湿運転]
除湿運転では、先ず、第1送風機25及び第2送風機26の運転により、第1チャンバー31及び第2チャンバー32内に外気A1がそれぞれ案内される。
【0056】
第1チャンバー31内に案内された外気A1は、第1加熱冷却コイル23によって冷却される。これにより、外気A1の温度が低下し、その湿度(相対湿度)が高められる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、外気A1に含まれる水蒸気がデシカントロータ22に効果的に吸着されうる。これにより、調湿装置19は、外気A1の湿度を低くした(外気A1を除湿した)調湿空気A2が得られる。調湿空気A2は、第1出口31bから床下空間2に供給される。
【0057】
第2チャンバー32内に案内された外気A1は、第2加熱冷却コイル24によって加熱される。これにより、外気A1の温度が上昇し、その湿度(相対湿度)が低くされる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、デシカントロータ22に吸着されている水蒸気が、外気A1に効果的に放出されうる。これにより、調湿装置19は、デシカントロータ22を再生(即ち、再び除湿できるように調湿性能を回復)することができる。水蒸気が放出された空気A6は、第2出口32bから屋外33に排出される。
【0058】
デシカントロータ22は、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間で回転しているため、第1チャンバー31での除湿と、第2チャンバー32での再生(調湿性能の回復)とを連続して行うことができる。したがって、調湿装置19は、外気A1の除湿を継続して行うことができる。
【0059】
[加湿運転]
加湿運転では、先ず、第1送風機25及び第2送風機26の運転により、第1チャンバー31及び第2チャンバー32内に外気A1がそれぞれ案内される。
【0060】
第1チャンバー31内に案内された外気A1は、第1加熱冷却コイル23によって加熱される。これにより、外気A1の温度が上昇し、その湿度(相対湿度)が低くされる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、デシカントロータ22に吸着されている水蒸気が、外気A1に効果的に放出されうる。これにより、調湿装置19は、外気A1の湿度を高く(外気A1を加湿)した調湿空気A2が得られる。調湿空気A2は、第1出口31bから床下空間2に供給される。
【0061】
第2チャンバー32内に案内された外気A1は、第2加熱冷却コイル24によって冷却される。これにより、外気A1の温度が低下し、その湿度(相対湿度)が高められる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、外気A1に含まれる水蒸気がデシカントロータ22に効果的に吸着されうる。これにより、調湿装置19は、デシカントロータ22を再生(即ち、再び加湿できるように調湿性能を回復)することができる。水蒸気が吸着された空気A6は、第2出口32bから屋外33に排出される。
【0062】
デシカントロータ22は、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間で回転しているため、第1チャンバー31での加湿と、第2チャンバー32での再生(調湿性能の回復)とを連続して行うことができる。したがって、調湿装置19は、外気A1の加湿を継続して行うことができる。
【0063】
このように、本実施形態の空調システム10は、調湿装置19によって、外気A1を除湿又は加湿して得られる調湿空気A2を、床下空間2に供給することができる。したがって、空調システム10は、床下空間2を調湿することができる。
【0064】
[外気供給経路]
本実施形態の調湿装置19は、調湿性能を回復させるための外気A1を供給可能な外気供給経路35を有している。本実施形態の外気供給経路35は、外気A1が供給される第2入口32a及び第2チャンバー32によって構成されている。このような外気供給経路35は、例えば、調湿性能の回復に、床上空気A5(図1に示す)が用いられていた従来の調湿装置とは異なり、床上空間3の環境に左右されることなく、調湿性能の回復に必要な外気A1を、調湿装置19に供給できる。したがって、調湿装置19は、調湿性能を効率よく回復させることができる。さらに、空調装置16(住宅1)は、床上空間3と調湿装置19との間を接続するダクト(図示省略)等を設ける必要もないため、初期導入コストを低減しうる。
【0065】
[バイパス経路]
図2に示されるように、調湿装置19は、第1チャンバー31、第1入口31a及び第1出口31bにより、通風可能なデシカントロータ22を介して、屋外33と床下空間2との間を連通させることができる。これにより、調湿装置19は、除湿運転及び加湿運転を停止している間において、第1チャンバー31、第1入口31a及び第1出口31bを、床下空間2に外気A1を供給可能なバイパス経路36として構成することができる。したがって、調湿装置19は、外気A1の除湿や加湿が必要のない時期において、外気A1を床下空間2に供給することができるため、その床下空気A3が床上空間3に供給されることにより、住宅1の全体を換気することが可能となる。
【0066】
[調湿装置の設置位置]
調湿装置19は、図1に示した住宅1の内外において、適宜設置されうる。なお、調湿装置19と屋外33との距離が大きくなると、調湿装置19に外気A1を案内するためのダクト(図示省略)や、調湿装置19から屋外33に外気A1を排出するためのダクト(図示省略)を設置して、それらのダクトを長くする必要が生じる。このような長いダクトは、空調システム10の初期導入コストの増大や、圧力損失の増加に伴う送風機(図2に示した第1送風機25や第2送風機26)の動力の増大を招く傾向がある。このため、調湿装置19は、基礎5又は外壁12の近傍に取り付けられるのが望ましい。ここで、「近傍に取り付けられる」とは、基礎5又は外壁12からの距離が2.0m以下の領域内に、調湿装置19が取り付けられることを意味している。
【0067】
このように、本実施形態の調湿装置19は、基礎5又は外壁12の近傍に取り付けられるため、屋外33との距離を小さくすることができる。これにより、調湿装置19は、上述のようなダクト(図示省略)を短くでき、或いは、ダクトの設置を不要にすることができるため、空調システム10の初期導入コストの増大や、送風機(図2に示した第1送風機25や第2送風機26)の動力の増大を抑制できる。このような作用を効果的に発揮させるために、調湿装置19は、好ましくは、基礎5又は外壁12からの距離が0.5m以下の領域内に配されるのが望ましく、さらに好ましくは、基礎5又は外壁12に面するように取り付けられるのが望ましい。本実施形態の調湿装置19は、外壁12に面するように取り付けられているため、上述のようなダクトが不要となる。
【0068】
[空調システム(住宅)の作用]
本実施形態の空調システム10(住宅1)では、図1に示されるように、調湿装置19によって、外気A1が除湿又は加湿された調湿空気A2が、床下空間2に供給されるため、床下空間2が調湿される。床下空気A3は、床下空間2の断熱によって温度変化が抑制されるため、その湿度(相対湿度)が安定する。さらに、床下空間2には、一年を通して温度変化が小さい地中熱が伝達されているため、温度変化が効果的に抑制され、床下空気A3の湿度をより安定させることができる。
【0069】
本実施形態の空調システム10(住宅1)では、床下空気A3(調湿空気A2)が、第1流路17を介して、空調装置16(ケーシング45)に供給される。さらに、空調システム10(住宅1)では、床上空気(リターン空気)A3が、空気導入口46を介して、空調装置16(ケーシング45)に供給される。これにより、空気調和機42の吸込口43には、床下空気A3及び床上空気A5の混合気が供給される。これらの混合気は、空気調和機42の熱交換器41で熱交換され、吹出口44から空調空気A4が吐出される。
【0070】
本実施形態の空調システム10(住宅1)では、空調空気A4が、第2流路18を介して、床上空間3に供給される。これにより、本実施形態の空調システム10(住宅1)は、床上空間3を空調及び換気することができる。
【0071】
本実施形態の空調システム10(住宅1)では、例えば、冬季に比べて外気A1の湿度(絶対湿度)が高くなる夏季において、調湿装置19に除湿運転をさせることにより、外気A1に含まれる水蒸気を除去した調湿空気A2が得られる。これにより、空調システム10は、除湿された調湿空気A2が床下空間2に供給されることで、床下空気A3の湿度(相対湿度)を低くすることができる。そして、除湿された床下空気A3(調湿空気A2)が、冷房運転中の熱交換器41に供給されることにより、例えば、高湿の床下空気A3(外気A1)がそのまま供給されていた従来の空調システムに比べて、熱交換器41の潜熱処理の割合を小さくできる。これにより、空調システム10(住宅1)は、冷房運転開始時から、熱交換器41の顕熱比を大きくできるため、空調空気A4の温度を効果的に低下させることができる。したがって、空調システム10(住宅1)は、床上空間3の温度を低下させるための冷却効果が十分に得ることができるため、床上空間3の温度調節性能を向上させることができる。
【0072】
本実施形態の空調システム10(住宅1)では、例えば、夏季に比べて外気A1の湿度(絶対湿度)が低くなる冬季において、調湿装置19に加湿運転をさせることにより、外気A1に水蒸気が放出された調湿空気A2が得られる。これにより、空調システム10(住宅1)は、加湿された調湿空気A2が床下空間2に供給されることで、床下空気A3の湿度(相対湿度)を高くすることができる。そして、加湿された床下空気A3(調湿空気A2)が、暖房運転中の熱交換器41に供給されることにより、例えば、低湿の床下空気A3(外気A1)がそのまま供給されていた従来の空調システムに比べて、空調空気A4の湿度が効果的に高められる。したがって、空調システム10(住宅1)は、温度調節機能を維持しつつ、床上空間3を効果的に加湿することができる。
【0073】
本実施形態の空調システム10(住宅1)は、床下空間2及び床上空間3の双方を調湿することができる。これにより、空調システム10は、住宅1の全体として、湿度環境を安定化させることができるため、住宅1の快適性を向上しうる。また、空調システム10は、床下空間2の調湿により、床6の反りや、床下空間2でのカビの発生等を効果的に抑制できる。したがって、空調システム10は、住宅1の耐久性を向上させることができる。
【0074】
空調システム10(住宅1)は、外気A1が調湿(除湿又は加湿)された調湿空気A2(床下空気A3)を、調湿装置19から空調装置16に供給する(搬送する)経路として、第1流路17とともに、床下空間2を利用することができる。したがって、本実施形態の空調システム10(住宅1)は、ダクト(例えば、第1ダクト53)の使用量を少なくできるため、初期導入コストを低減しうる。
【0075】
[第2フィルター]
図2に示されるように、本実施形態の空調システム10(住宅1)には、調湿装置19に、外気A1を濾過するための第2フィルター52が含まれてもよい。本実施形態の第2フィルター52は、第1チャンバー31の第1入口31aに設けられているが、外気A1を濾過できれば、特に限定されない。
【0076】
第2フィルター52は、外気A1に含まれる粉塵やウイルス等を除去することができるため、床下空気A3(調湿空気A2)の空気質を向上させることができる。そして、図1に示されるように、浄化された床下空気A3が、第1流路17を介して、空調装置16の第1フィルター51に供給されることにより、第1フィルター51を延命させることができる。第2フィルター52は、特に限定されるわけではなく、上述のフィルター部材で適宜構成されうる。
【0077】
[制御装置]
本実施形態の空調システム10(住宅1)には、調湿装置19及び第1ファン61の運転を制御する制御装置40がさらに含まれてもよい。制御装置40は、CPU(中央演算装置)からなる演算部(図示省略)と、制御手順が予め記憶されている記憶部(図示省略)と、記憶部から制御手順を読み込む作業用メモリ(図示省略)とを含んで構成されている。このような制御装置40は、例えば、間仕切り壁13等に設置されうる。
【0078】
本実施形態の制御装置40には、調湿装置19及び第1ファン61が接続されている。このため、制御装置40は、調湿装置19及び第1ファン61に信号を伝達することで、調湿装置19及び第1ファン61の運転を制御することができる。これにより、制御装置40は、除湿又は加湿された外気A1(調湿空気A2)の床下空間2への第1供給量と、床下空気A3の空調装置16への第2供給量とを制御しうる。
【0079】
本実施形態の制御装置40には、第2ファン62及び空調装置16(空気調和機42)が接続されている。このため、制御装置40は、第2ファン62及び空気調和機42に信号を伝達することで、第2ファン62及び空気調和機42の運転を制御することができる。これにより、制御装置40は、空調空気A4の床上空間3への第3供給量と、空気調和機42の運転(冷房運転及び暖房運転等)を制御しうる。
【0080】
本実施形態の制御装置40は、外気A1(調湿空気A2)の第1供給量、及び、床下空気A3の第2供給量が略一致するように、調湿装置19及び/又は第1ファン61を制御してもよい。なお、「略一致」には、第1供給量と第2供給量との差の絶対値が、第1供給量の20%以下となる態様が許容されるものとする。
【0081】
本実施形態の制御装置40は、外気A1(調湿空気A2)の第1供給量、及び、床下空気A3の第2供給量を略一致させることにより、床下空間2が負圧になるのを防ぐことができるため、調湿されていない外気A1が、床下空間2に浸入するのを防ぎうる。これにより、空調システム10(住宅1)は、調湿された床下空気A3を空調装置16に確実に供給することができるため、熱交換器41の顕熱比を大きくして、床上空間3の温度調節性能を向上させることが可能となる。
【0082】
第1供給量と第2供給量とを略一致させるために、調湿装置19及び第1ファン61の双方の運転が制御されてもよいが、いずれか一方の運転のみが制御されてもよい。例えば、第1供給量に対して第2供給量が一致するように、第1ファン61の運転のみが制御されてもよいし、第2供給量に対して第1供給量が一致するように、調湿装置19の運転のみが制御されてもよい。
【0083】
本実施形態の制御装置40は、空調空気A4の第3供給量が、床下空気A3の第2供給量よりも大きくなるように、第1ファン61及び/又は第2ファン62を制御してもよい。これにより、空調システム10(住宅1)は、空調空気A4(床上空気A5)を、床上空間3に効率よく循環及び拡散させることができるとともに、第1フィルター51による浄化機能を発揮させることが可能となる。
【0084】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0085】
下記の仕様に基づく住宅に、図1及び図2に示した空調システムが設置されたコンピュータモデルが作成された(実施例)。比較のために、実施例と同一の住宅に、調湿装置を含まない空調システムが設置されたコンピュータモデルが作成された(比較例)。
【0086】
そして、実施例及び比較例のコンピュータモデルを用いて、床下空間の相対湿度が10%RHに低減したときの空気調和機(熱交換器)の顕熱比、及び、空調空気の吹出温度が評価された。共通仕様は、次のとおりであり、テストの結果が表1に示される。
外気:
温度:35℃
相対湿度:45%RH
絶対湿度:15.95g/kg
床下空間:
温度:25℃
比較例:床下空間の相対湿度80%RH
実施例:床下空間の相対湿度が70%RHになるまで除湿
住宅:
温度:27℃冷房運転時
床面積:123.04m2
気密C値が4.0cm2/m2時の室内外温度差による漏気量(11.5m3/h)を考慮
内部発湿:240g/h(1人あたりの内部発湿(60g)×在室人数(4人))
空気調和機(熱交換器)
冷房能力:8200W
風量:1428m3/h
第1流路(第1ファン):
第2供給量:195m3/h
第2流路(第2ファン):
第3供給量:1600m3/h
【0087】
【表1】
【0088】
テストの結果、実施例は、比較例に比べて、床下空間の相対湿度を低下させることができ、床下空間の空気が供給される空調装置(熱交換器)の顕熱比を大きくすることができた。これにより、実施例は、比較例に比べて、空調空気の温度を低下させることができるため、床上空間の温度調節性能を向上させることができた。
【符号の説明】
【0089】
1 住宅
2 床下空間
3 床上空間
10 空調システム
16 空調装置
17 第1流路
18 第2流路
19 調湿装置
41 熱交換器
図1
図2