IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイカ工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】反射防止フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20240911BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240911BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20240911BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240911BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
C08J7/046 CER
C08J7/046 CEZ
B32B7/023
B32B27/30 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021023832
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126018
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正章
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111793(JP,A)
【文献】特開2010-14819(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114945(WO,A1)
【文献】特開2009-42647(JP,A)
【文献】特開2020-42199(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199847(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10- 1/18
B32B 1/00-43/00
C08J 7/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、少なくともハードコート層と低屈折率層とを有する反射防止フィルムであって、前記ハードコート層が、エチレングリコールとイソホロンジイソシアネートを反応させたジイソシアネートに、ペンタエリスリトールトリアクリレートを更に反応させたウレタンアクリレート(A)と、光重合開始剤(B)を含むハードコート樹脂組成物の硬化物であり、
前記低屈折率層が、前記ウレタンアクリレート(A)と、光重合開始剤(B)と、中空シリカ(C)と、を含む低屈折率樹脂組成物の硬化物であって、
低屈折樹脂組成物における(A):(C)の固形分比率が45:55~5:95であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記(A)の重量平均分子量が1500~30000であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
低屈折率層の希釈溶剤がケトン系およびアルコール系を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
成形用のフィルムであることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
透明支持体上にハードコート樹脂組成物を塗布し、直接または他の層を介して低屈折率樹脂組成物を塗布することを特徴とする請求項1~4いずれか記載の反射防止フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性のハードコート層と低屈折率層とを有する反射防止フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の光硬化型樹脂は、プラスチックフィルムやプラスチック成形物表面に特別な性能を付与するために多くの分野で用いられており、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布して高硬度を付与したハードコートフィルムは、タッチパネル用フィルムや成形用フィルムとして大量に使用されている。
これらのなかで特に成形用としては、フィルム表面に絵柄を印刷後、加熱により軟化させた状態で3次元成形を行うインサートフィルムが良く知られているが、フィルムに塗布されたハードコート樹脂層を硬くすると、立体形状に加工する際に曲面においてマイクロクラックが入りやすくなり、加工形状には制約があった。そのため過去に出願人は、表面硬度と成形性を両立させるインサート成形用のハードコート樹脂として、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーと平均一次粒子径が80~500nmの有機微粒子を含むハードコート剤を発明した(特許文献1)。このハードコート剤は膜厚が1~10μmで十分な柔軟性と表面物性が両立可能な優れるものであった。
こうした成形用途に適したハードコート剤を選定することで、加工面での制約はある程度緩和されてはきたが、近年では更に反射防止特性を要求されるようになり、伸び性も不足する場合があった。また頻繁に人手に触られる用途、例えば自動車の内装分野等では、手の表面についているハンドクリームがハードコートの表面皮膜を侵し、長期にわたる使用では表面皮膜がはがれると言う課題があり、良好な反射防止特性に加えて、加工特性(伸び性)と耐薬品性を並立させるためには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4848200号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は良好な反射防止特性を有し、且つ破断伸度が高く成形性が良好であると共に、耐薬品性にも優れ、インモールド成形やアウトモールド成形などに適した反射防止フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、透明支持体上に、少なくともハードコート層と低屈折率層とを有する反射防止フィルムであって、前記ハードコート層が、エチレングリコールとイソホロンジイソシアネート(以下IPDI)を反応させたジイソシアネートに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETA)を更に反応させたウレタンアクリレート(A)と、光重合開始剤(B)を含むハードコート樹脂組成物の硬化物であり、
前記低屈折率層が、前記ウレタンアクリレート(A)と、光重合開始剤(B)と、中空シリカ(C)と、を含む低屈折率樹脂組成物の硬化物であって、
低屈折樹脂組成物における(A):(C)の固形分比率が45:55~5:95であることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0006】
請求項2の発明は、前記(A)の重量平均分子量が1500~30000であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムを提供する。
【0007】
請求項3の発明は、低屈折率層の希釈溶剤がケトン系およびアルコール系を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止フィルムを提供する。
請求項4の発明は、成形用のフィルムであることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の反射防止フィルムを提供する。
【0008】
請求項5の発明は、透明支持体上にハードコート樹脂組成物を塗布し、直接または他の層を介して低屈折率樹脂組成物を塗布することを特徴とする請求項1~4いずれか記載の反射防止フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルムは、良好な反射防止特性を有し、且つ破断伸度が高く成形性が良好であると共に、耐薬品性にも優れているため、インモールド成形やアウトモールド成形などに用いる成形用反射防止フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の反射防止フィルムは、エチレングリコールとIPDIを反応合させたジイソシアネートに、PETAを更に反応させたウレタンアクリレート(A)と、光重合開始剤(B)を含むハードコート(以下HC)樹脂組成物を硬化させたHC層と、同じく(A)及び(B)と、中空シリカ(C)を含む低屈折率樹脂組成物を硬化させた低屈折率層を有する。なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0011】
本発明に使用されるウレタンアクリレート(A)の合成で使用する脂環式ジイソシアネートのIPDIは、黄変が無く耐候安定性に優れると同時に剛性が高く、硬化物の硬度を上げることができる。炭素鎖が非常に短いエチレングリコールと反応させることで、分子内のウレタン結合濃度を高くすることが可能となり、耐薬品性に優れた剛性の高い直鎖構造の主骨格を形成できる。エチレングリコールの代わりにポリエチレングリコールを用いると、ウレタン結合の濃度が低くなり耐薬品性が低下するため不適である。
【0012】
前記(A)の合成方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。反応は無溶媒下でも良いが、(A)の分子量が大きくなるにつれて攪拌が困難となる場合があるため、ブタノン等のケトン類、キシレン等の芳香族不活性溶媒などを用いても良い。またエチレングリコール及びPETAの水酸基と、イソシアネート基との反応には、触媒を用いることが好ましい。その場合の例としては、ジブチルスズジラウレート等の錫系、ナフテン酸コバルト等の金属アルコキシド系が挙げられる。反応温度は適宜設定可能であるが40~120℃が好ましく、60~100℃が更に好ましい。
【0013】
前記(A)の重量平均分子量(以下Mw)は1500~30000が好ましく、2000~15000が更に好ましく、3000~10000が特に好ましい。1500以上とすることで充分な破断伸度を確保でき、30000以下とすることで作業性の良い粘度に調整しやすくなる。(A)のMwは、反応させるエチレングリコールとIPDIのモル比により調整が可能で、エチレングリコールに対するIPDIのモル比を近づけると、Mwは大きくなる傾向がある。なおMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、スチレンジビニルベンゼン基材の充填剤を用いたカラムでテトラハイドロフラン溶離液を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定、算出した。
【0014】
HC樹脂組成物における前記(A)の配合量は、全固形分に対し50~99重量%が好ましく、75~98重量%が更に好ましく、90~97重量%が特に好ましい。50重量%以上とすることで十分な破断強度を確保することができ、99重量%以下とすることで十分な硬化性を確保することができる。
【0015】
本発明に使用される光重合開始剤(B)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
HC樹脂組成物の場合は、前記(B)として黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad127D、Omnirad184、Omnirad2959(商品名:IGM Resins社製)などが挙げられる。これらの中では、特に黄変が少なく耐擦傷性に優れるOmnirad2959が好ましい。前記(B)のHC樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は1~10重量部が好ましく、3~8重量部が更に好ましい。
低屈折率樹脂組成物の場合は、前記(B)としてHC樹脂組成物の場合と同様にα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、特に薄膜における硬化性の点でOmnirad127Dが好ましい。前記(B)の低屈折率樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は1~10重量部が好ましく、3~8重量部が更に好ましい。
本発明に使用される中空ナノシリカ(C)は低屈折率層の塗膜強度を保持しつつ、その屈折率を下げる機能を有し、内部に屈折率1の空気を含む空洞を有するシリカ粒子である。中実シリカ粒子の屈折率が1.45程度に対し、(C)の屈折率は内部の空洞の占有率が高くなるにつれて低下し、1.20~1.40程度である。
【0017】
前記(C)の一次粒子径は5~150nmが好ましく、10~100nmが更に好ましく、40~80nmが特に好ましい。この範囲とすることで、低屈折率層の透明性を損なうことなく、良好な分散性を得られる。特に40~80nmであれば、強度不足とならない外殻の厚みを確保しつつ、空洞の占有率を上げて屈折率を下げることができる。市販品としてはスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、一次平均粒子径60nm)が挙げられる。
【0018】
前記(C)の配合量は、(A):(C)の固形分比率が45:55~5:95であり、40:60~10:90が好ましく、35:65~15:85が更に好ましい。(A):(C)の固形分比率を45:55以上とすることで屈折率を十分低下させることが可能となり、5:95以下とすることで十分な成形性や耐薬品性を確保できる。
【0019】
本発明の組成物には、性能を損なわない範囲で必要に応じて、反応性希釈剤、紫外線吸収剤、密着促進剤、酸化防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤、抗菌剤、ワックス、つや消し剤、親水剤、撥水剤、無機フィラー、有機微粒子等を添加してもよい。
【0020】
上記反応性希釈剤としては6官能未満の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。例えばブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。反応性希釈剤の配合比率としては全固形分に対し20重量%以下が好ましい。
【0021】
HC樹脂組成物及び低屈折率樹脂組成物を透明支持体上に塗工する際には、塗工特性を向上させるため溶剤にて希釈してもよい。希釈溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(以下IPA)、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(以下MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、PGM,ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。
希釈する場合の固形分としては特に指定は無く、塗工しやすい粘度となるように適宜設定可能である。HC樹脂の場合、固形分として10~50重量%が例示され、揮発性と相溶性とのバランスが良好で外観が良好な皮膜を形成できる点で酢酸ブチル及びPGMの混合溶媒が好ましい。また低屈折率樹脂の場合、固形分として0.5~10重量%が例示され、揮発性と相溶性とのバランスが良好で外観が良好な皮膜を形成できる点でMIBKとIPAの混合溶媒が好ましい。
【0022】
本発明の低屈折率樹脂組成物をHC層上に塗布した際には、固形分が低く溶剤成分の比率が高いため、HC樹脂層中のウレタンアクリレート樹脂を若干溶解する。そのため、低屈折率層をその最表面からHC層へ向かって断面を観察すると、最上部は空気中に中空シリカが露出しており屈折率が最も低く、その下部はHC層から溶出したウレタンアクリレートの影響で中空シリカの比率が徐々に低くなり、結果として屈折率が傾斜的に緩やかに増加した構成となっている。そのため外部からの光の反射を効果的に低減できる。低屈折率樹脂組成物における(A):(C)の固形分比率が45:55よりも(A)比率がアップすると、HC樹脂層からのウレタンアクリレート樹脂成分の溶解性が低下し、屈折率に影響を与えるため、結果として外部からの光に対し反射率が大きくなる。
【0023】
HC樹脂組成物が塗布される透明支持体としては、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネート(以下PCと表記)フィルム、ポリスルフォンフィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンフィルム、アクリル(以下PMMAと表記)フィルム、ポリイミドフィルム、ABSフィルム、ポリオレフィンフィルム、PVCフィルム、PVAフィルム等を挙げることができる。なかでも耐候性、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムが好ましく用いられる。更に自動車内装加飾用では、PMMAフィルムやPCフィルム及びこれらの積層フィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね20μm~500μmであればよい。
【0024】
前記透明支持体基材は、HC樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、プライマー処理やサンドブラスト法、溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0025】
前記樹脂組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。
HC樹脂組成物の膜厚は乾燥時で1μm~10μmが例示できるが、これに限定されるものではない。又HC樹脂層上に塗布する低屈折率樹脂組成物の膜厚は乾燥時で50~200nmであることが好ましく、80~150nmであることが更に好ましい。低屈折率層の厚さがこの範囲であれば、反射率を十分低くすることが可能となる。
【0026】
前記樹脂組成物を硬化させる際に用いる紫外線照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがあり、また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。また紫外線照射時にバックロールの加温や、IRヒーターなどにより塗膜を加熱することで、より硬化性を上げることができる。照射条件としては照射強度500mW/cm~3000mW/cm、露光量50~400mJ/cmが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明の反射防止フィルムは、130℃雰囲気下での破断伸度が100%以上であることが好ましく、200%以上が更に好ましい。破断伸度が100%未満では、深絞りのある用途で成型時にひび割れが発生する場合がある。
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。また配合表の単位は重量部を示す。
【実施例
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレート(以下ウレアク)1の調製
エチレングリコール(以下EG)200重量部とIPDI(住化バイエルウレタン株式会社製 商品名デスモジュールI NCO基37.5%)835重量部とを、触媒と共にMEK溶剤中(固形分50%)に加え30℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークが所定の量になった時点で反応を終了させた。次にPETA(日本化薬株式会社製 商品名PET30 固形分100%)230重量部を添加し、10℃で30分攪拌・反応させた後、60℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基の消滅したことを確認し、MEKにより固形分を50%に調整して、Mw.6,600の6官能のウレアク1を得た。
ウレアク2の調製
エチレングリコール(以下EG)200重量部とIPDI(住化バイエルウレタン株式会社製 商品名デスモジュールI NCO基37.5%)798重量部とを、触媒と共にMEK溶剤中(固形分40%)に加え30℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークが所定の量になった時点で反応を終了させた。次にPETA(日本化薬株式会社製 商品名PET30 固形分100%)150重量部を添加し、10℃で30分攪拌・反応させた後、60℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基の消滅したことを確認し、MEKにより固形分を50%に調整して、Mw.8,000の6官能のウレアク2を得た。
ウレアク3の調製
エチレングリコール(以下EG)200重量部とIPDI(住化バイエルウレタン株式会社製 商品名デスモジュールI NCO基37.5%)922重量部とを、触媒と共にMEK溶剤中(固形分60%)に加え30℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークが所定の量になった時点で反応を終了させた。次にPETA(日本化薬株式会社製 商品名PET30 固形分100%)400重量部を添加し、10℃で30分攪拌・反応させた後、60℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基の消滅したことを確認し、MEKにより固形分を50%に調整して、Mw.4,200の6官能のウレアク3を得た。
上記製法に準じて、以下の骨格を有するウレアク4を得た。
ウレアク4:PETA-IPDI-ポリエチレングリコール-IPDI-PETA骨格、
6官能、固形分50%、Mw.5500
HC樹脂組成物の作成
上記で調整した(A)に該当するウレアク1~3と、(A)に該当しないウレアク4およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下DPHA)と、(B)としてOmnirad2959(商品名:IGM Resins社製社製)を用い、固形分換算で表1記載となるよう配合し、更に固形分が30重量%となるよう酢酸ブチルとPGMの混合溶媒(混合比率1:1)で希釈して、均一に溶解・分散するまで撹拌しHC1~5のHC樹脂組成物を得た。
実施例1~6
HC樹脂組成物として上記で調整したHC1~3を用い、低屈折樹脂組成物としては(A)としてウレアク1~2を、(B)としてOmnirad127D(商品名:IGM Resins社製)を、(C)としてスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、一次平均粒子径60nm)を用い、固形分換算で表2記載となるよう配合し、更に固形分が1.5重量%となるようMIBKとIPAの混合溶媒(混合比率1:1)で希釈して、均一に溶解・分散するまで撹拌し実施例1~6の樹脂組成物を得た。
比較例1~6
実施例で用いた材料の他、HC樹脂組成物として上記で調整したHC4~5を、低屈折樹脂組成物としてはDPHAを用い、固形分換算で表2記載となるよう配合し、更に固形分が1.5重量%(比較例1~2、4)及び2.7重量%(比較例5~6)となるようMIBKとIPAの混合溶媒(混合比率1:1)で希釈して、均一に溶解・分散するまで撹拌し比較例1~6の樹脂組成物を得た。
表1
【0029】
表2
【0030】
評価方法は以下の通りとした。
HCフィルムの作成
HC樹脂組成物HC1~5を用い、PMMA/PCフィルムDF02UL(商品名:三菱ガス化学社製、厚み125μm)に乾燥膜厚で3μmとなるように光硬化性樹脂を塗布して、80℃で1分乾燥後、高圧水銀ランプ200mJにて硬化させHCフィルムとした。
【0031】
反射防止フィルムの作成
表2の低屈折樹脂組成物を用い、上記で作成したHC層上に乾燥後の膜厚で100nmとなるよう低屈折率層を塗布し、80℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプ200mJにて硬化させHCフィルムとした。
成形性:上記で作成した反射防止フィルムを横25mm×縦50mmにカットし、Minebia製TechnoGraph TGI-1KNを用い、雰囲気温度130℃、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行い、目視で割れを確認し、伸び率が100%以上を○、200%以上を◎とした。
計算式:50mmを基準として何mm伸びたかで計算。
伸びた長さ(mm)/50mm×100=伸び率%
反射率:塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて380nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットし、最低の反射率を測定した。反射率が1.0%未満を◎、1.0~2.0%を〇、2.0%超を×とした。
【0032】
耐薬品性:硬化皮膜にハンドクリーム、ニュートロジーナSPF45(商品名:ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を塗布し、80℃24時間放置させ、その後室温に戻し、拭き取ったのち表面を観察した。塗布外観の白化なしを○、白化ありを×とした。
評価結果
表3
【0033】
実施例は成形性、反射率、耐薬品性全ての面で問題はなく良好であった。
一方(C)の配合量が少ない比較例1及び低屈折率層が無い比較例3は反射率が高くなり、低屈折率層とHC層が(A)に該当しないバインダーを用いた比較例2及び比較例5は成形性が劣り、HC層のウレアク原料がPEGである比較例4及びHC層が無い比較例6は耐薬品性が悪く、いずれも本願発明に適さないものであった。